1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月八日(木曜日)
午前十一時十四分開議
出席委員
委員長代理 理事 奧村又十郎君
理事 内藤 友明君
淺香 忠雄君 有田 二郎君
大上 司君 佐久間 徹君
島村 一郎君 清水 逸平君
塚田十一郎君 三宅 則義君
宮幡 靖君 荒木萬壽夫君
宮腰 喜助君 上林與市郎君
深澤 義守君
出席政府委員
外国為替管理委
員会委員 大久保太三郎君
法務府事務官
(法制意見第二
局長) 林 修三君
大蔵政務次官 西川甚五郎君
大蔵事務官
(主計局法規課
長) 佐藤 一郎君
大蔵事務官
(理財局長) 石田 正君
委員外の出席者
大蔵事務官
(理財局外債課
長) 上田 克郎君
大蔵事務官 上東野正二君
通商産業事務官
(臨時通商業務
局経理第一課
長) 羽柴 忠雄君
專 門 員 椎木 文也君
專 門 員 黒田 久太君
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十一月七日
未復員者給與法の適用患者に対する療養期間延
長に関する請願(高橋等君紹介)(第七〇二
号)
在外公館等借入金返済実施に伴う現地通貨の換
算率に関する請願外一件(若林義孝君紹介)(
第七〇四号)
家具に対する物品税撤廃の請願(北澤直吉君紹
介)(第七三六号)
医療法人の医療施設に対する所得税免除の請願
外一件(川野芳滿君紹介)(第七三七号)
ふん尿輸送用ガソリン税免除に関する請願(山
村新治郎君外一名紹介)(第七三八号)
水あめ、ぶどう糖に対する物品税撤廃の請願(
福田昌子君紹介)(第七八五号)
たばご小売人の利益率引上げに関する請願(大
上司君紹介)(第七八六号)
旧陸軍共済組合員に年金交付に関する請願(尾
竹弌君紹介)(第七九二号)
呉市平和産業港湾都市建設総合計画に関する請
願(宮原幸三郎君紹介)(第八二〇号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
一般会計の歳出の財源に充てるための資金運用
部特別会計からする繰入金に関する法律案(内
閣提出第一三号)
在外公館等借入金の返済の実施に関する法律案
(内閣提出第一四号)
外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律
案(内閣提出第一六号)
米国対日援助物資等処理特別会計法の一部を改
正する法律案(内閣提出第一七号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/0
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001・奧村又十郎
○奧村委員長代理 これより会議を開きます。
一般会計の歳出の財源に充てるための資金運用部特別会計からする繰入金に関する法律案、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案、及び米国対日援助物資等処理特別会計法の一部を改正する法律案、在外公館等借入金の返済の実施に関する法律案、右四法律案を一括議題といたしまして質疑に入ります。
ただいまお見えの政府委員は、法制意見第二局長林修三君、外国為替管理委員会委員大久保太三郎君、大蔵省理財局長石田正君、通商産業省臨時通商業務局経理第一課長羽柴忠雄君、主計局法規課長佐藤一郎君であります。質疑を許します。内藤君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/1
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002・内藤友明
○内藤(友)委員 一般会計の歳出の財源に充てるための資金運用部特別会計からする繰入金に関する法律案は、佐藤さんの係だと思いますが、この法律案はきわめて漠然としているのですが、今までやはりこういう形でありましたか。金額を示してこれだけ繰入れるということなのですか。それとも白紙委任状をとるような形になつておりましたか。今まではどういう形になつておりましたか。ひとつ教えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/2
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003・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 これは御承知のように資金運用部特別会計ですが、これは従来は預金部特別会計ということになつております。二十六年度から資金運用部特別会計、こういうことになつたわけであります。説明のとき申し上げましたように、資金運用部特別会計法の中には、剰余金を積み立てまして、剰余金が生じたときにはそれを一般会計に繰入れるという規定がございます。ところが今回ここに御審議願いますのは、従来の預金部特別会計の時代、すなわち昭和二十五年度までに生じました積立金がございます。この積立金の処置については、実は法律上別に繰入れるというような規定を欠いておつたわけであります。その積立金が約八億ほどございますが、今回それを補正予算の財源に組み入れる必要上、あらためて特にこの規定を置くようになつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/3
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004・内藤友明
○内藤(友)委員 ただいま佐藤さんのお話では八億という数字が出たのですが、これは計算によりまして、八億が九億になつたり七億になつたり六億になつたり動く可能性がある。そのためにこういうふうに漠然と書いてあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/4
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005・佐藤一郎
○佐藤(一)政府委員 これは昭和二十五年度までの分でございますので、金額はほぼ確定したものと御了承願つてよろしいと思います。内藤さんのおつしやいます意味は、この法律案の中に金額が入つておらないじやないかという御質問と思いますが、これは金額を入れても入れませんでもよろしいのでありまして、一応決算ができておりますから、はつきりした金額を入れてさしつかえないのですけれども、従来から一般会計に繰入れる場合に、積立金等に対してはこういうふうに金額を入れないでやつております。繰入れの法律で、そのほかの場合には金額をよく入れておりますが、一般に金額を入れる場合と少し違つておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/5
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006・塚田十一郎
○塚田委員 それでは在外公館等の借入金について、前会保留になつておりました憲法上の問題点について、お伺いをいたしたいと思うのであります。法制意見局の方が見えておりますね。理財局の方々からいろいろ今までの審議のいきさつを、お聞きくださつていると思うのですが、今私どもの委員会で問題になつておる点は、大蔵当局の御意見では、どこまでもこの法律によつて確認された債権債務関係というものは、この法律で創設されたものなんだから、従つて五万円で打切ろうが三万円で打切ろうが、これはこの法律の決定するところによるのであつて、この点においては違憲という問題は出て来ないのだ、というように御説明を伺つたのであります。先般来私どももいろいろ参考人の意見や、また政府当局の答弁で、確かにこの問題になつておる債権債務関係の大部分は、そういう性質のものであるだろうというように想像されるわけであります。ただしかしそれと同時に、その中にやはりそういう性質でないものもあるのじやないか。この法律によつて何も生み出してもらわないでも、債権債務関係というものが、はつきりとあるものもあるのじやないか。具体的にはあるかどうかわかりませんが、考え方の上ではたしかあるのじやないか、こういうように想像される。そういうものはどういうものに考えられるかと申しますと、政府からの指令で出先在外公館が金を借りた。その借りた金がはつきりと在外公館の人たち自体の給料とか、その他の当然国の事務をやつて行く上に必要な仕事に使われている部分があるのじやないか。そういうものがもしあるとすると、しかもその借り手が出先公館の責任者であるというようなことがはつきあしておるものは、何もこの法律によつて創設をしていただかなくても、債権債務関係というものは当然あるのだから、そういう債務がある場合に、この法律で一体縛れるのかどうか。また縛つたつもりでおられるのかどうか。ここが非常に問題点になつておるわけであります。それで私どもが今までの理財局の御説明によりまして、大体到達しておる結論は、この法律では、そういうはつきりした債務がもしあるとすれば、それはこの法律外なんだ、こういうように一応了解するところまで到達しておるのですが、その通りであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/6
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007・林修三
○林政府委員 お答えいたします。この在外公館借入金の今回の返済の実施につきましての、この法律上の性質でございますが、これにつきましては、ただいま塚田委員が仰せられました通り、また大蔵当局がお答えいたしました通り、この法案に関する限りにおきましては、これは創設的な国の債務を、ここで認めたものであると考えておる次第でございます。ただあとで塚田委員が仰せられました、在外公館が邦人の引揚費、救済費等でなく、別途の用途に使うために借りたものがあるかどうか。これは実際そういうものがあつたかどうか存じないのでございますけれども、この法律案は一昨年の第五国会で制定せられました、在外公館等借入金整理準備審査会法でございますが、あの法律にも大体趣旨がうたつてございます通りに、在外公館等におきまして、邦人の引揚費、救済費のために、一応現地で借り入れたと申しますか、資金を受け入れた、こういうことに関する処理の問題でございまして、ただいま塚田委員の仰せられましたあとの問題につきましては、初めからここでは触れていない問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/7
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008・塚田十一郎
○塚田委員 それで明瞭になつたのでありますが、ついでにお尋ねしておきます。そういうものがある功合に、そういうものの救済は、旧憲法時代のものであるのか、あるいは新憲法によつて規制されるものになるのか、どちらにしてもそういうものの救済は、今日においても民訴の手続に従つて権利の主張ができるかどうか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/8
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009・林修三
○林政府委員 御承知のように、旧憲法時代におきましても、国が借入れをいたしますのには、議会におきまして、法律または予算外国庫の負担となるべき件につきまして、国がそういう借入れの権限を與えておりませんと、実は正式な政府の債務にはならないわけでございます。終戰当時のどさくさのときにおきまして、そういう経費を現地において借りたかどうかは、私どもつまびらかにしないのでありますが、おそらく当時といたしましては、まだ当時の帝国議会に、そういうことについての御協賛を経てはおらなかつたのではないかと思うのでございます。従いまして、そういうことがございましても、一応正式に国の債務になつたかどうかにつきましては、私多少疑問を持つております。しかしこれが民事訴訟法において争われました際に、裁判所がその際の出先機関の行為をどういうふうに判断いたしまして、どういう解決を下すかは、裁判所の認定の問題でございまして、私どもただちにここで、それに対する想像を申し上げるまでの確信がないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/9
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010・塚田十一郎
○塚田委員 それでは理財局長にお尋ねをするのでありますが、事柄の筋だけははつきりしたのであります。そこで実際問題として、審査会が債権の借入金の確認をなさる場合に、そういうことをはつきりと頭に置いて確認をしておられるかどうか。と申しますのは、本来的にはこの法律によつて何も創設してもらわぬでもいいものも、申出があつて確認をしているようなことがないかどうか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/10
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011・石田正
○石田政府委員 審査会は外務省の所管でありまして、外務省が主となつてやつております。私どももそれに一枚加わりまして、審議にあずかつておるわけでありますが、一応われわれが確認をいたしますのに引揚費、救済費その他この審査会法によりまして一応取上げるべきものであるかどうかということを、審査いたしております。それに該当しないものはお断りする、こういうような態度をとつております。いろいろとわれわれが今まで調べました以外の事情が出て参りまして、そうして御質問のような事実が明らかになりまして、前の確認が誤りであつたということがあるいは起るかもしれぬと思つておりますが、しかし心がけといたしましては、法律の趣旨に従いまして確認事務をやつておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/11
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012・塚田十一郎
○塚田委員 そうすると、この法律の規定は、準備審査会によつて確認されてはならないものが、誤つて確認されておるということがはつきりすれば、当然これは除外されるということになる。しかし一応現在まで確認いたしたものは、そういう点がはつきりしておらない。従つておそらくこれにかかる性質の債務である、こういう御見解でありまするか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/12
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013・石田正
○石田政府委員 各地の参考人の方からお話のありました際にも、大体の事情は御想像願えたかと思うのでありますが、現地におきまして行われました借入金は、本件に該当するものが大部分であります。それからまたある地域におきましては、会舘の費用等に借り入れてはならぬということを、はつきり言つている地区もございますので、われわれの方でも気をつけてはおりますが、今まで確認いたしましたものは、大体これに該当するものと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/13
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014・塚田十一郎
○塚田委員 了承いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/14
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015・宮腰喜助
○宮腰委員 関連質問でありますが、そうすると在外公館が当時借り入れた金が、国の債務であるかどうか疑わしい問題が起きて来ると、本法で創設的に認めるということになれば、在外公館で借り入れた金は国の債務にならないとお考えになるのでありますかどうか。その点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/15
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016・石田正
○石田政府委員 従来二つの法律がございまして、また今回法律案が出たのでございますが、その対象としておる借入金は、本来的に国の債務にならぬと考えておるかという御質問かと思いますが、その点につきましては、これはその当時の借入金に関する国内的な措置等から申しまして、明確でない点がありまして、自動的に内容の確定した国の債務とはなつておらぬものである、こういう解釈をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/16
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017・宮腰喜助
○宮腰委員 そうすると、在外公館で借り入れた金について、それが国の債務であるか、公館の当時の担当者の個人の債務であるか疑わしい問題が起きて来る。もし個人の債務であるということを考える場合に、国がこういうことを追認的に認めて、本法で創設的な債務を認めるんだ、こういう解釈とはずいぶん矛盾して来ると思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/17
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018・石田正
○石田政府委員 国の債務であるという点をきわめて嚴格に法律的に解した場合に、どういうことであるかというのが塚田先生の御質問でありまするし、今までの議論はそういう点でいろいろと応答があつたのだろうと思うのであります。今の実体的な問題として、今度それであるから逆に不当なものを政府が創設する、こういうことであるかという点につきましては、これは別問題であろうかと思うのであります。累次御説明申し上げましたごとく、終戰のいろいろ困難をいたしておりますときにおきまして、こういう事実が起つたのであります。この事実はやはり国がその点を知つておつて、そうしてそれが行われたものである。それからお借入れになりました当事者は、自分のためにされるというような意図ではなく、国のためにするのだ、こういう御意図でおやりになつたものである。こういう事実は疑いないと思います。そこでそれをどう処理するかということになりますと、民事訴訟の問題になつて来るわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/18
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019・宮腰喜助
○宮腰委員 そうすると、国に対して貸した者が、国に対して民事訴訟の訴えができない。その当時の個人に対しても民事訴訟法の訴えができないということになれば、これはどうもおかしな問題が起るのじやないか。現実に金を貸しておるにかかわらず、国に対して民事訴訟法の訴えもできないし、それから個人に対しても民事訴訟法の訴えができないということになれば、これは当然本法によつて創設的に考えることが、妥当のように思いますが、日本の法律では両方へ民事訴訟もできない請求権というものは、私はないのじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/19
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020・石田正
○石田政府委員 われわれがいろいろ法律を出しますが、その場合に民事訴訟を起すところの権利を奪つてしまうということはできないことであります。また考えてもおらないわけであります。これは私たちの法案の趣旨といたしましては、こういうものは国がこういうふうに処理するという法案を出したのでありまして、従いまして事柄の実体その他を考えてみますと、これによつて処理されるという帰結が妥当であろうと思つておる次第であります。なおこれに御不服の方がありまして民事訴訟を提起されました場合に、その訴訟すること自体ができないということを規定したものではございません。またその結果どうなるかということは、裁判所において決定せられる問題でありまして、その決定がどうなるかということをわれわれはあらかじめきめることもできませんし、また考えてもおらない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/20
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021・宮腰喜助
○宮腰委員 それから千円未満を千円に引上げるということがありますが、これなども三百円貸したものが千円拂うのだという法律をつくつた場合には、何だか救済的な感じがありますが、将来これがいろいろな法律をつくる場合に、惡例を残すようなことになるのじやないかと考えるのであります、その点は政府の方でどういうお考えですか、伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/21
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022・石田正
○石田政府委員 これは今のお尋ねの点につきましては、われわれの提出いたしました法律案におきましては、千円以下のものは千円にするということは考えておらぬわけであります。またそれを改正するということも今のところ考えておらないわけであります。大体お話がありましたのと同じような趣旨におきまして考えまして、本法律案はできておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/22
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023・塚田十一郎
○塚田委員 法律問題がありましたが、事実上の問題としてもう少しお尋ねしたい。この前お尋ねをしたときも、五万円で打切るということの技術的な問題としての妥当さということをいろいろお尋ねしたのですが、いろいろ考えてみると、私どもにもめんどうな問題が起つて来るような感じもするわけであります。まず第一に感ぜられることは、一体この借入金は五万円返すということになると、在外財産は一体どうなるのか。在外財産と借入金は、これは大分性質が違いますけれども、しかしそれをもつとさかのぼつて見ると、在外財産を物で持つていた人はとられてしまつて、何も補償がない。売つて金にかえて、ここのところに貸しておいた五万円だけ返つて来たという、事実上非常に不公平が出て来る。そういうことになると、借入金を返すということは、当然その裏に、一体今度の講和條約によつて没收されることになつておる在外財産に対するところの国としての処理は、どうなるのだろうかということが、問題になつて来るわけであります。この問題は、先般私が條約特別委員会におきまして質疑をいたしましたときに、大蔵大臣からは積極的にこれを補償するという御答弁はなかつたのでありますが、消極的には全面的に全然補償しないというような考え方も持つていないという、非常に味のある御答弁をいただいておる。そういうことになると、これはこの借入金の五万円という金額と関連して、相当微妙な問題点が出て来る。これは在外財産の補償も五万円程度ということになつた場合に、おそらくこれは相当大きな金額に上るのではないかということが、想像されるわけであります。そこでその辺の考慮もあるいは政府側におありになつて、この辺の金額をおきめになつておるのじやないかという感じもせぬではないであります。そこでそういう気持を含めて、一体この五万円におきめになつた政府のものの考え方をひとつ聞きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/23
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024・石田正
○石田政府委員 在外財産の問題につきまして、一番端的な御質問といたしまして、補償をどうするかという点が一つあろうかと思うのであります。この問題は、今のお話にありましたごとく、大蔵大臣から答弁がありました含意からしまして、われわれはその通りと申し上げるよりほかないのであります。ただ本件に関連いたしまして、いろいろとその関係について全然考えなかつたかどうかという問題があろうかと思います。この点につきましては、一般的に在外財産ということを申しますと、国外において財産を持つておるということであります。それからまたそれは物権的なものばかりでなく、債権的なものも含むということに相なろうかと思うのであります。その面だけから見ますならば、この際本件の借入金も、在外において行われたところのものでございますので、その債権をお持ちの方からいえば、これは一応在外財産という観念の中に入るものだ、こういうことが言えるかと思います。しかしそれでは在外財産の問題と関連せず、一応切り離して本件の処理をどうしてするのか、こういう問題が起つて来るかと思うのでありますが、これはもうすでに二つの法律が出ておるのでありまして、そのときの考え方というのは、在外資産の中に先ほど申しましたようなものが入るとは言うものの、これは一つには、国の債務というべきものではないか。法律的な問題は別問題といたしまして、事実問題といたしまして、国の債務たるべきものではないかという点が一つと、それからもう一つは、終戰後において行われたものではないか。それからまた実体的な問題といたしまして、その使われた用途等において異なるものがあるのではないか。こいうふうな御配慮から、一応在外財産の問題の帰趨がわからぬままに、これを別に扱うということが、すでに国会の御承認を得て、考え方として出ておるのではないかと思うのであります。ただ前段の問題と、それから今申しました第二段の問題を、どういうふうに考えるかというふうな問題は、これはむずかしい問題なのでございますが、しかしまるつきり無関係ということも、実体的には言いかねる面もあろうかと思うのであります。そこで今度の法案で、五万円までは最高を出すということになれば、在外財産としての補償問題についても五万円まで出すつもりかどうか、こういう御質問の要旨になつて参るかと思うのでございますが、この点につきしましては先ほど冒頭に申し上げましたごとく、大蔵省といたしましても、いろいろ検討いたしておるのでございます。在外財産と申しましても、中身によりましていろいろ種類も違いますし、それからまた所在しておるところの土地につきましても、あるいは連合国にあるものもございますし、あるいは中立国にあるものもございまして、いろいろ複雑でございます。それからまた平和條約によつて、国が在外財産を積極的に自己の用に供したとか、供さないとかいう問題がございます。その点におきまして、補償という問題をよく言葉で申しますが、それをどういうふうに考えるかということも、また一つの研究点であろうかと思うのであります。いろいろ考えて処理しなければならぬと思うのでありますが、ただ在外財産一般の問題に相なりますると、関係する人の数も相当多うございますし、また金額も多いのでございまして、これは新しい財政負担ということを考え合せますると、なかなか処理困難な問題ではないだろうか。私は、かりに在外財産を補償するということに相なつた場合、それからまた補償の限度をある程度きめるということに相なりました場合に、どういう金額がきまるかということを、ここであらかじめ確定的に申し上げることは不可能でございますが、感じといたしまして、どうも五万円を越えるということは、財政負担という点からいつてなかなか困難ではなからうか、かような感じがいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/24
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025・塚田十一郎
○塚田委員 もう一つ、私どもが五万円という金額を見ますときに、終戰後の国内におきましていろいろな非常事態を前提にした、財政もしくは経済関係の処理に、金額で打切つた幾つかの事例があるのですが、ああいうものがどんなぐあいであつたか。そういうものとの関連というものも、やはり考慮しておられるのかどうか。この点をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/25
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026・石田正
○石田政府委員 本件をいろいろと考えます段階におきまして、やはりそういうものもまた考えなければならぬかと思います。もちろん戰後におきまして、いろいろな戰時補償の打切りが政府によつて行われました。その中身の問題につきましては、これは内地のことでございまするので、割合に政府の債務であることが明確であるというものが多かつたかと思うのでございますが、その場合におきまして、御承知の通りに、たとえば個人の国に対する戰時的な債権につきましては、一般的に見ますと、一件一万円ということに相なつております。法人もまた同様でありまして、最高は十万円というふうなことに相なつております。それが一つ。それから保険の問題につきましては、これは人が死にました場合でありましても、あるいは物的な損害が起りました場合におきましても、一件五万円ということで打切つてあるわけであります。なおその後におきまして、御承知の通りにいろいろな金融機関の再建整備というような問題もございまして、出しました金がそのまま現金で拂われた分と、それから封鎖勘定に入れられた分がございまして、封鎖勘定に入れられました部分につきましては、それぞれの当該機関によつて支拂い可能の限度におきまして打切られた、こういうこともあるわけでございます。それらの事態も一応見ました上で、大体このくらいのところではないかということを考えて来ておつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/26
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027・荒木萬壽夫
○荒木委員 ただいまの在外公館借入金返還の法案につきまして一、二お伺いしたいのですが、前数回欠席いたしまして、あるいは塚田委員から御質問のありましたことと重複するかもしれませんが、その点はお許しをいただきたいと思います。
まず第一に、法案の第四條の「百分の百三十に相当する金額とする。」とございますが、この三割増しにするということは、どういう趣旨のものか御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/27
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028・石田正
○石田政府委員 この在外公館等の借入金の問題は、ずつと前から問題になつておりました点でございます。それにつきまして、だんだんと処理が遅れて参りまして、これはどういうふうに処置をするかという点については、一応問題があるのでございます。大体その借り入れましたときにおける状況を中心といたしまして、内地の状況を勘案して一応額を見て行く、こういうことにいたしたわけでございます。それに関連いたしまして、先ほど申し上げましたようなぐあいに、大体処理が遅れておる、もう少し早く処置すればよかつたではないかというお気持も、債権者の方としてはおありになるであろうと思うのであります。これは金銭債権でございますので、その間においていろいろ物価その他が変動いたしましたが、それをそのまま見るということは——政府のいろいろな金銭債権、そういうものにおきまして、物価関係を無視するということは不可能であろうと思いますが、しかし他面におきまして非常に遅れたということで、御迷惑をかけたということもあろうかと思うのであります。しかしその遅れましたことを考えまして、いささか返済額をよけいにすると申しますか、そういう気持から申しまして、もう六年ばかりたつておりますので、そこで三割ぐらい増すことにしたらというふうな気持できておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/28
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029・荒木萬壽夫
○荒木委員 そういたしますと、三割増しというのは、計数的に申しますか、何らかの具体的な根拠に基いての結果の妥当性から生れた三割増しにあらずして、今のお話によりますと、大体の気持を現わした見当であるというふうに伺いますが、その辺はどんなものでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/29
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030・石田正
○石田政府委員 先ほども申し上げましたようなぐあいに、物価の変動ということは考えられませんが、他面において考えられることは、それでは利子に相当する分でもあれしてくれぬだろうか、こういうお気持もあるだろうと思うのであります。しかしいろいろ期日等も違つておりますから、いつからの利子ということもなかなか見当がつかないのじやないか。大ざつぱに申しまして六年間たつておるということに相なりますれば、かりに利子的な観念をもちまして年五分ということをいいますれば、三割に相なるわけであります。大体そういうふうな腹づもりから、百分の三十といたしたのでありまして、はつきり利子という観念をとりますれば、処理におきましてたくさんな案件の中でむずかしい問題が起りますので、その点ははつきりせずにまるめまして三割といたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/30
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031・荒木萬壽夫
○荒木委員 百分の三十そのものは、議論めいて申し上げればいろいろあるかと思いますが、お話の通りだといたしまして、さらに五万円で打切る話がすでに塚田委員からも出ておりまして、いまさらどうかと思わぬでもありませんが、私の疑問を解明する意味において、重複をいとわずお尋ねをいたしたいと思いますが、お許しをいただきます。
先ほど来の御説明によりまして、憲法第八十五條でございますか、国が債務を負担する場合においては、国会の承認を受けねばならないという点については、この法律によつて債権債務関係が創設されるので、この法律により初めて憲法にいうところの第八十五條の承認も、あわせて国会が與えるということになろうかと想像するわけですが、そういう意味において御説の通りだとするならば、八十五條の関係は解消するとも思いますけれども、一体三割増しした金額、その根拠そのものを御説の通りだといたしましても、括孤内に書いてある五万円で打切るということは、どういう理由によつて打切られるのか。重複しておると思いますが、御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/31
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032・石田正
○石田政府委員 憲法の問題に関連してのお尋ねでございますが、この法律案を出しますまでにおきまして、在外公館等の借入金の整理準備に関する法律が一番初めに出ている。その法律の中におきましては、現地の借入金を将来返済すべき国の債務として確認する義務を行うということが、中心になつているのでありまして、その場合におきましてその借入金の性質にかんがみまして、どういう内容の国の債務にするかということにつきましては、法律の定めるところに従つて、かつ予算の範囲内においてする、こういうことで、その内容自体の確定する場合につきましては、條件がついているわけであります。
それから第二の段階といたしまして、この借入金の返済の準備に関するところの法律があるわけでございます。これはいろいろと返済に関係いたしまするところの準備的な仕事をすることを内容としたものでありますが、この第二條におきましては、その返済の中身をきめます場合においては「衡平の見地から、公平且つ妥当な基準に基いて定められなければならない。」こういうふうに書いてあるわけであります。その点は先ほど塚田委員から御質問がありまして答えましたごとく、その法律論とそれから具体的の内容に対することを勘案いたしまして、その結果最高五万円にするのが妥当ではなかろうかということでやつたわけでありまして、憲法論といたしましては別段支障ないものと、こういうふうに考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/32
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033・荒木萬壽夫
○荒木委員 準備関係の法律で生れ出た基礎数字であることはわかりますが、その調査審議に基きまして審議会と申しましたが、審議会でもつて調査されました結論としては、ここに調書が出ておりまするように、十数億の債務があると一応結論が出ておるようでありますが、それを五万円に切られるということについては、そのことが公共の福祉に適合するのだということが、特に具体的に明らかでない限りにおいては、憲法二十九條でございましたか、それとの関連が出て来ると思うのでありますが、その点に関しての法制局の方の御見解を一応承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/33
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034・林修三
○林政府委員 ただいまの大蔵省の理財局長からお答えいたしました通りでございまして、そもそも初め現地におきまして、現地の市外会舘なりあるいは邦人の自治団体等が借り入れました当時におきましては、もちろん外務大臣等の指示があつたとは存じまするが、その当時において旧憲法時代におきまする憲法上の手続によつて、国が正当な債務としてこれを借り入れるという権限は、国としては持つておらなかつた。議会の協賛を経ておらないわけでありまして、そういう意味におきましては、当時は正式な法律的な意味におきましての国の債務とは申し上げかねると思います。ただ現地におきまするいろいろの当時の状況からかんがみまして、これを法律的に国の債務でないからといつてしまうことは、政治的にも道議的にもどうかということがありまして、一昨年の第五国会におきまして、在外公館等借入金整理準備審査会法というものが通りまして、将来別に法律で定めるところによりまして、かつ予算の範囲内において、国がその債務を引受けるという前提のもとに、実際にどういうふうな状態によつて、まあ現地通貨でどういう主体とどういう主体の間でこの資金の授受が行われたか、また現地通貨ではたしてどういう金であり、どういう目的のためにそれが行われたか、こういうことにつきましての準備確認をいたすための審査会ができたわけであります。この審査会では約二年間仕事をいたしまして、相当仕事が進行いたしました関係上、本年の春の国会におきまして、在外公館等借入金の返済の準備に関する法律というまた別な法律が制定せられまして、これにおきましてただいま理財局長が御答弁申し上げました通りに、この返済の方法は公正かつ妥当な基準で、国民負担の権衡を考慮してきめなければならない、こういうような方針をそこへうたわれたわけであります。こういうことを考えてみますると、先ほど塚田委員の御質問にもございましたが、この借入金は国の法律的な債務としては、今回のこの法律によりまして創設的に国の債務として政府が認めよう、こういう趣旨のものであると考えるわけでございまして、従つて従来国が当然に法律的に負つておつた債務の一部を切り捨てたものではございませんので、この五万円ときめました過程におきまして、五万円がいいか、何万円がいいかという妥当性の問題はあろうと思いますが、法律的には国の有権的に成立いたしました債務の一部を、切り捨てたものではないと考えておるわけであります。従つて憲法二十九條の問題ではないと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/34
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035・荒木萬壽夫
○荒木委員 法律によりまして準備審査会ができて、その審査会が結論づけましたところの国の債務金額というものは、いただいておる調書通りでありますかどうか。その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/35
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036・石田正
○石田政府委員 これは準備審査会におきまして外務省からいろいろと確認請求を受付けまして、これに基きましていろいろ確認書を出しておるものも、すでに出したものもございます。それらを今審議をいたしまして、毎日毎日確認の手続を進めておるわけでありますが、それから申しまして大体こういう数字であろうというぐあいであります。なお確認が済みました場合におきまして、一応その数字ではありまするが、多少の変化はあろうかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/36
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037・荒木萬壽夫
○荒木委員 このいただいた調書の金額そのものは仰せの通りであろうと、私らも想像にかたくないのでありますが、すでにわかつております件数、具体的な人別の債権債務の関係そのものは、すでに具体的に確定しておることと思いますが、その範囲につきましてその一々に対して五万円でぶつた切るという点です。先ほど法制局の御見解ではまだどうもはつきりいたしませんですが、理財局長が先ほどおつしやつたところの準備会における公正妥当な基準というのは、表示通貨も異なつておりまするし、換算率をどうするかというようなことも問題でございましようし、あるいはまた金利の関係等をどう考慮するかということもいろいろとございましようから、そういう点については公正妥当なる一定の基準に基いて、公平を期する上において当然だと思いますが、そのことと五万円でぶつた切るということとは別問題かと思います。私の考え方に従いまするならば、憲法第三十九條の財産権を尊重するという建前から行きまするならば、準備会において具体的に債権債務の関係が一々の個人についてはつきりしたものはその通りを国が確認し、これを支拂うことが第二十九條に適合するゆえんであつて、それを五万円でぶつた切るんだということにつきましては、準備会の公正妥当なる基準という問題を離れまして、何ゆえに五万円が公共の福祉との関連において妥当かということの御見解がはつきりしませんければ、疑問は解消しないと思いますが、その点についての御見解をお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/37
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038・石田正
○石田政府委員 本件につきましては法律がだんだんと一回でなく、すでに二回出ておりまするし、また第三回の法律案を今お手元で御審議願つているわけであります。そういうふうにこの問題につきまして、一ぺんにたつた一回の法律できめてしまえば非常にわかりやすかつた点が、何回かにわかれて出ておりますために、幾らか何になつているかと思います。
一番初めの御質問といたしまして、審議会においてどういうことをしたかという点があろうかと思います。これは現地通貨の借入金であつて、そうしてこの公館等借入金という概念に当るところのものはどうであるかということを確認する。これが審査会の仕事でございます。どれだけ現地で借り入れているか、この法律に入りますところのものは、現地の通貨としてどれだけの額になつておつたのか、こういうことをきめまするのが、第一回の審査会法に基く審査会の仕事でございます。それから次に評価の問題につきまして、お手元に換算率表が行つておりますので、それは何かというそれと関連いたしまして、評価審議会というのが第二回の法律において設けられまして、その答申に基いてその換算率がどうなるか、その評価審議会のしたことがどういうことかということに、御質問はなろうかと思うのでございます。これにつきましては、第一回の審議会におきまして現地借入金がどうあるかということを調べることと、今度はそれを確定的な国の債務といたしまして、幾らでどれだけどういう時期に返すかということは、これは一応別問題になつております。と同様にこの評価審議会におきまして答申するに際しまして、政府が審議会に尋ねましたことは、その当時の現地通貨によるところの借入金を評価するということに関連して、どういう率が妥当と思うであろうかということを尋ねたわけであります。このときにおきましても、返済するにあたつて、公正妥当な見地から現実問題として幾らにきめるか、幾ら返すことにするか、そのことについての諮問はいたしておらないのであります。非常に混乱したむずかしいことでありますが、各地のことを御存じになつている委員の方がいろいろ御勉強くださいまして、大体こういう方法で、こういうふうに評価したらどうかということを答申願つたわけであります。それから先が、今度は一番最後の法律の問題といたしまして、一番初めに現地で幾ら借りたかということをひとつ見る。それからまた評価審議会におきまして、どういう方法でどう評価したらいいかということを見る。それから全般的な問題を考えまして、公正妥当なところでどういうふうにやるか。この三点をあわせ考えまして、そうして出したのが今度の最後の法律案でございます。一番初めにきまつたものを途中で削るのがこの法律案ではございませんで、今申しましたように、だんだん参りましたいろいろの要素をかみ合せまして、最後にこれがいいということになりましたのが、政府の案といたしまして今回提出いたしたものになつておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/38
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039・荒木萬壽夫
○荒木委員 そうしますと、この五万円でぶつた切るということは、そのことが審査会とは関係なしに、政府当局として五万円でぶつた切つた方が公正妥当であるとお考えになつたわけですか。五万円でぶつた切つたことが、それ自身公正妥当であるという点をもうちよつと御解明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/39
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040・石田正
○石田政府委員 これは金額の点から言つて、公正妥当というのをそろばんではじくわけに参りませんので、先ほど塚田先生からお話がありましたごとくに、この借入金の性質、それから過去におきまして政府がいろいろな債務につきまして戰後打切ることにいたしましたこと、それからまたこれから後いろいろと、対内対外関係におきましても、国の債務であるとか、あるいは債務でなくてもお前の責任ではないかということで、処理さるべき案件が将来いろいろ考えられるわけであります。それらのところも考えまして、まあ五万円くらいのところがいいのではないか、こう思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/40
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041・荒木萬壽夫
○荒木委員 大体わかつたような気もしますが、私がお尋ねしていることは幾分主観的な気持もないとは申し上げかねますけれども、たとえば戰時国債を、さつき塚田君も仰せになつておりましたが、戰時国債をキヤンセルする、ぶつた切るということとおのずから違うのじやないか。戰争に負けた、その善後措置をどうするかといういろいろ困難なことが、こういうことを結果づけたと思いますけれども、戰争のための国の債務という意味においては、国債その他の打切りの問題と同等だと言えぬこともないでしようけれども、戰後の問題であつて、しかも終戰直後の新たなる事態に対して、国として当然なすべき事柄を処理するための経費として借入れをなした。そのことをこの法律で創設的に確認をして支拂いをしようという以上は、一件々々借り入れた金額が幾らだ、それを公正妥当な基準によつて、ある具体例に対しては幾らだということが具体的にきまつたならば、そのきまつた通りを支拂うことこそが最も公正なる、憲法二十九條の趣旨に沿うゆえんだと私は思うのですけれども、それを最高五万円で、それ以上は拂わぬのだとされることは非常に不当である、あるいは憲法第二十九條違反であるとも考えられるほど、問題としては重要なことじやなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、そういう点について今の御説明によりますと、いろいろなことを考え合せて五万円でぶつた切ることが最も公正だと言われる。その点をもうちよつと、私ぴんと来ませんですけれども、御説明をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/41
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042・石田正
○石田政府委員 終戰後におきましていろいろと困難した問題がございます。だんだんと状態が正常化いたして参りました。また平和條約がそのうち発効するということに相なりますれば、いろいろな問題も出て来るかと思うのであります。国といたしましてその処理に当らねばならぬところの問題は、今後において多々起つて来ると思うのであります。そういう場合に、およそ政府といたしまして、関係のあるところのものを全部拂うことができるようでありますれば、まことに仕合せかと思うのでございますが、なかなかそうは参りかねるのではないだろうか、こういうふうに考えている次第でございます。その点を非常に強調いたしますと、五万円ということは多きに過ぎるのではないか。ほかの振合いから見て、あるいはそういうことが起つて来ることも懸念ざれるのではないか。しかし先ほどお話のありましたように、これは終戰後におけるところの特殊のものである、そういう点も考えまして、まあ五万円で何したらどうか、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/42
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043・宮腰喜助
○宮腰委員 先ほど法制局長からのお話によると、憲法八十五條の解釈の問題ですが、国の債務は国会の承認を得なければならないというような場合に、これを私法上の債務も公法上の債務も、全部含むとなると仮定した場合に、そうするとお金を貸したような場合は国の債務と認めがたい。ところが、私法上の行為でも、あるいは物品を公館で買い入れた場合の代金を拂わない場合には、これは国の債務と認めることができないかどうか。その点を伺いた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/43
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044・林修三
○林政府委員 憲法八十五條で国が債務を負いますには、国会の議決にまたなければならないということになつております。もちろんそれによりまして国が借入れをするのは、国会の議決によりまして、法律の形式なりあるいは予算の形式によりまして、政府といたしまして、何らかの権限を得ておくことが必要だと思うのであります。それから物品のことでございますが、物品の買入れをやることは、もちろん大体予算によつて国会の御承認を得て、国が物品を買うわけであります。そういう買う予算があれば当然支拂うべきものであります。予算がないのに買つて、借金になるということはあり得ないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/44
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045・宮腰喜助
○宮腰委員 そうすると、在外公館でたとえば日常の必要品を購入する場合も、この法律で拘束を受けるかどうか。あるいは予算の範囲内でやる場合には、これはかまわないのだというお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/45
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046・林修三
○林政府委員 当時在外公館は予算を持つております。その予算の範囲内でもしも支出したものであれば、これは借入れでございませんで、予算の支出でございます。借入れとしては残つておらないのでございます。但し先ほど塚田委員から仰せられましたように、実は私そういうことがあつたかどうか存じませんが、当時の終戰後の混乱状態におきまして、そういう予算も現地でなかつた場合に、そういう借入れが、在外公館自体の経費のための借入れ——いわゆる救済費、引揚費でございませんで、公館自体の経費のための借入れ、こういうことがあつたとすれば、これは一昨年の法律以来この法律の対象外としておつたことである、さようにお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/46
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047・奧村又十郎
○奧村委員長代理 在外公館の御質疑はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/47
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048・清水逸平
○清水委員 先ほど来の五万円の件、憲法の件は大体了承いたしました。一言、この引揚げの際に、日本人でなくて外人から借りたり、もらつたりして、それが引揚げの費用として使われたようなものは、どういうふうな処理をなさるか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/48
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049・林修三
○林政府委員 ちよつとただいまの御質問の意味を了解いたしかねたのでございますが、現地におきまして、日本人以外の現地人等から借り入れた金の性質でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/49
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050・清水逸平
○清水委員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/50
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051・林修三
○林政府委員 これはもちろんこの法律の範囲外でございまして、その借入金がはたして政府の債務となるやいなやにつきましては、よく事情を調査いたしますし、また向う側の請求等も考えまして、もしもどうしても拂わなければならないものであれば、国会の御承認を得て拂うことになろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/51
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052・奧村又十郎
○奧村委員長代理 本日はこれをもつて散会いたします。
午後零時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204629X01219511108/52
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