1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月十五日(木曜日)
午前十一時四十一分開議
出席委員
委員長 前尾繁三郎君
理事 野村專太郎君 理事 龍野喜一郎君
理事 床次 徳二君 理事 門司 亮君
大泉 寛三君 尾関 義一君
角田 幸吉君 門脇勝太郎君
川本 末治君 小玉 治行君
田中 啓一君 吉田吉太郎君
鈴木 幹雄君 藤田 義光君
久保田鶴松君 立花 敏男君
出席国務大臣
国 務 大 臣 岡野 清豪君
出席政府委員
地方自治庁次長 鈴木 俊一君
委員外の出席者
専 門 員 有松 昇君
専 門 員 長橋 茂男君
十一月十五日
委員佐藤親弘君及び宮腰喜助君辞任につき、そ
の補欠として田中豊君及び河野金昇君が議長の
指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
小委員及び小委員長選任に関する件
参考人招致に関する件
地方税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二七号)
地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案
(内閣提出第二九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/0
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001・前尾繁三郎
○前尾委員長 それではこれより会議を開きます。
私のことにわたりますが、先般来欧米出張を命ぜられまして、非常に忙しい国会開会中にもかかわりませず、留守にいたしまして皆さんに非常に御迷惑をおかけしましたことを、おわび申し上げます。
それでは地方税法の一部を改正する法律案及び地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。両案につきましては、昨日質疑を終了いたしましたので、これより討論採決を行いたいと思います。まずこれより討論に入ります。床次徳二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/1
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002・床次徳二
○床次委員 ただいま提案せられました二つの案に対しましては、国民民主党を代表いたしまして、賛成の意を表するものであります。しかしながら現在の地方財政の状況を見ておりますると、地方財政平衡交付金に関する法律並びに地方税に関する法律が提案せられましたということに対しましては、実は私どもは根本的な解決を政府も意図せられて、またこれに対して相当努力せられたあとがあるのではないかということを、期待しておつたのでありまするが、御提案になりましたのは、きわめて事務的なもので、本論は後日に残されているのでありまして、はなはだ遺憾に思うのであります。すでに過般の質疑においても明らかにいたしましたが、平衡交付金に関しましては、その法律の性質から申しまして、当初の期待を裏切つたような現実における運用が行われておりまして、これがために著しく地方財政を毒しているということは、すでに明らかになつておることでありまして、私どもはその内容において、今回の改正案のごとき部分的な修正を行うことは、これまたけつこうでありますが、その根本における政府の態度とか意見というものが、確立しておらない状態に対しては、私はまことに不十分な改正案だという気がいたすのであります。政府はすみやかにこの地方財政平衡交付金の制定の趣旨というものにのつとりまして、今後遺憾のない運用をしていただきたい。財政の現実から見まして、著しく法の精神と反するような運用をいたしまするならば、むしろ平衡交付金法自体を改正いたしまして、地方財政に累の及ばぬようにいたされることが必要だと私は思います。
なおこの平衡交付金法に関しまして、要望を申し上げておきますると、本年度におきましては、ただいま申し上げましたように、平衡交付金の総額そのものが、所要せられておる額よりも著しく少いのであります。これを配分するにあたりましては、よほど特別な配慮を要するものと考えておるのであります。すなわち少い金額をわけるのでありますから、十分な金額をわけるときと同じような考え方をもつて配分せられましたならば、ある程度までの不合理が出て来るということは争われない事実でありまして、この点に関しましては、本年度の配分に関しましても、十分御配意を願いたいのであります。なお本年度は、災害その他の事件も出ておるのでありまして、十分この要素を考えていただきたいのであります。
今度の改正法案に盛られましたことく、もとよりこれは必要なる調整措置ではありまするが、かかることはむしろ非常に末節の事務的なものだと思うのであります。本年度の配付方法は、実体的に大きな問題を含んでおるということを、この際特に申し上げまして、政府の留意を要望しておく次第であります。
また地方税法案につきましては、これまた他の法律との関係上、やむを得ない整理であるということについては了とするのでありますが、これまた質疑において明らかにされましたるごとく、将来の地方税に関しましては、本買的な改善が予期せられておるのであります。特に附加価値税等に関しましては、早晩これが問題となることが予期せられておるのでありまして、その也の法案におきましても、今日同様の問題を含んでおるのであります。この際政府が基本的な態度を明らかにせられるということは、まことに大事なことだつたのでありまするが、残念ながりこれを承ることができなかつたのであります。できるだけすみやかな時期におきまして、政府は地方財政の確立ということを考えられまして本質的な地方税法の改正案を御提案せられんことを要望するのであります。なおこの地方税に関しまして、政府は将来の附加価値税等に関しまして、また固定資産税等に関しまして、その運用をできるだけ是正いたすがごとく配意せられたのであります。この配意ほもちろん必要であります。しかしながらこの問題は、本年度におきましてもやはり出ておるのでありまして、むしろ将来生ずる結果よりも、本年度においていろいろな資料等が間に合わず、また早急でありました関係上、ふなれな点がありまするので、大きな不公平と申しまするか、あるいは過誤を化していることが少くないと思うのであります。これまたやむを得ないことと思うのでありまするが、政府におきましても、地方財政委員会等を督励せりれまして、でき得る限り本年度の地方税の実施にあたつて、遺憾なきを期するよう今日から努力をしていただきたい。この点を要望いたす次第であります。以上簡単でありますが、所見を述べまして、この両案に賛成する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/2
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003・前尾繁三郎
○前尾委員長 門司亮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/3
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004・門司亮
○門司委員 私は日本社会党を代表いにしまして、今上程されておりまする地方税法の一部を改正する法律案並びに地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案につきまして、賛成の意見を申し上げたいと思うのであります。われわれは両案に対しましては、やむを得ざる経過規定としての観点かつ、これに賛意を表するものでありまり。ただいま床次委員からも話がありましたように、地方税法の問題はきわめて重大な問題でありまして、この法案が経過規定のような形で出されておりまするが、実際はその内容に大きな改革を要する点があるということは、十分われわれにはうかがい知れます。この税法の一部改正が、単に附加価値税と固定資生税の事務的の改正にとどまつておりますが、実際はそれだけでは済まないのであります。われわれの期待しておりますのは、この地方税法の改正ということと同時に、最も大きな問題は地方財政の確立の問題であります。従つて地方の財政確立に必要な税法を定めるということが、ごく近いうちに行われなければならないと考えておるのであります。それは御承知のように、地方の財政が非常に逼迫しておるということは、言をまたない事実であります。これらの財政をどうして行くかということと、もう一つは、国と地方との事務の再配分の問題が、必然的に起つて参りますと同時に、ほんとうに地方自治体を健全な自治体としての観点から運営をせしめることのためには、財源もまた自治体において十分これをまかない得るだけの税法の改正を行わなければならない段階に立ち至つておると思うのであります。従つて近い機会に、政府は思い切つた地方財政全般に対することをにらみ合せて、この税法の改正の案を出される用意があるということを一応伺つておりますが、すみやかにこれらのものを立案せられ、そして地方財政の確立のために寄与せられんことを、この機会に要望をいたしますると同時に、この案の内容自体の中には、やむを得ざる結果、あるいは徴収の便宜という名前で、法人に対する固定資産税の三箇月の猶予期間を認めておるのであります。これらの問題は、単に経過規定としての見方というよりも、むしろわれわれは、個人の納めまする税金と法人とのつり合いというようなものを、やはり十分考慮しなければならないのです。これをそのままわれわれはこれでいいという筋合いのものではないのでありまして、先ほどから申し上げておりますように、次の近い機会に行われる税法の改正のときに、これらの点につきましてはわれわれは十分審議し、十分われわれの意見を申し述べたいと考えておるのであります。
それからこの平衡交付金の問題でありますが、これも単なる経過規定にすぎないような、取扱いの、事務的の処理に関する問題のように考えられておるのでありますが、もちろんこうした事務も必要だとは思いますが、平衡交付金自体に対する根本的の考え方というものを、考えて行かなければならないとわれわれは思つておるのであります。この点は長く議論になつておりますので、もはや多言を要しませんが、現行の地方財政平衡交付金の制度で、将来いいか悪いかということ、この点を特にわれわれは重視をしなければなりませんのと、同時にまた、これが研究についても、政府といたしましても十分ひとつ考えていただきたい。現在の地方財政平衡交付金の形が、このままの姿で残つて行きますならば、地方財政の健全化ということは、なかなか困難であります。従つてこれもやはり、こういう平衡交付金というような、国の配分の非常に力の強い行き方を避けて、でき得るだけこれらの権限を縮めて、そうして税法改正と同時に、地方の財源が独立してまかなえるような形に、ぜひしなければならないと考えておりまするので、これもあわせてこの機会に要望をいたしておきます。それは近い機会に、そういうこともひとつ十分政府はお考えになつて、そうして地方財政平衡交付金に対する根本的の改正をせられんことを、この際やはり要望いたしまして、両案に対しましては、一応経過規定として、この際われわれは賛意を表する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/4
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005・前尾繁三郎
○前尾委員長 大泉寛三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/5
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006・大泉寛三
○大泉委員 自由党を代表して、両法案に対して賛成をするものであります。
この両法案は、大体において、いわゆる事務的な一つの期間の延長でありまして、当然政府が地方税全般にわたつて改正をしようとする意を有しておるところの提案を得るまでの期間、通常国会において審議し、あるいはまた法律としてこれを決定する前提としては、どうしてもこの期間を延長する立場が必要なのでありますから、私どももこれは当然の措置として賛成するものであります。
ただ、岡野国務大臣にも再々申し上げておる通りに、われわれ自由党といたしては、あくまで国民の期待に沿うべく、また要望にこたうべく、この地方税を抜本的に改革しなければならぬ、こういう大きな問題をかかえ込んでいるわれわれは、この機関を利用して、万全を尽さなければならぬと思いますので、この際この時間的、事務的な処置に対しては、この問題を解決するための期間として利用されたいということを、私どもは特に政府に要望するものであります。
まず法人税割の問題については、これは地方税としてはあまり歓迎できない税である。いわゆる事業のあるところに、たいてい法人税がつきまとつておるにかかわらず、法人のないところには何らの潤うところがない。いわゆる地方公共団体として、法人のあるところとないところとがあるのであります。そうしてないところには潤わない。こういう点がまず指摘されなければならないと私は思います。また法人の事業税に対しても、その通りであります。
次にこの附加価値税の問題は、先ほど民主党からも指摘されたように、非常に各方面の事業家から問題が多いようであります。私どもは、本来はこの附加価値税こそは、どうしても実施をしてもらわなければならぬということを強く要望をし、これによつていわゆる中央、地方あるいは市町村自治体の公平なる税制の分配が、この附加価値税を仲介としてなされるべきである、こういうふうに私は考えておる。けれども事業界を初めあらゆる面から、この改革に対しては異論が続出しておるようでありますが、けれどもやはり地方税の公平な負担、あるいは中央の所得税一本に対する裏づけ的な地方税に対しては、私は税の完全な、公平な負担とはいえない。あくまでも、やはり地方の自主性を発揮し、また完全なる検討のもとに公平を期待するならば、この附加価値税が最もよろしい、こういうふうに私は考えておる。今は論ずる時期でもありませんけれども、政府においては、特に慎重にこれを取扱つていただきたいということを要望しておきます。
また地方税全般にわたつて検討しなければならない中に、今回問題になつておりまする平衡交付金の問題がありまするが、平衡交付金それ自体は、本来は中央と地方とのつながりを円満にし、しかも国政と地方団体との運営は、やはり歩調を合せて運営されなければならない立場から、もちろん私どもは非常に歓迎しておつたのでありますけれども、どうしてもこの財政面の立場になると、その区分が、それぞれ責任範囲が違つて来て、ただもらえるなり、要求して強引にこれをとるという考えで、お互い財政の区分を個々にされているので、とつたり出したりするということが、お互いの力づくまでにも延びて来る。そこにまた感情的な立場も出て来る。あるいはそこに介在して、政治問題あるいは選挙にまで利用して、これが解決に当るというような弊害が出て来る。地方団体は、あくまでも地方みずからの力に依存して、そうして農民が納得し、地方民が納得するような、いわゆる財政面において初めて国家がこれに対する資金を出す、あるいは援助するという方向に持つて行かなければならない。あくまでもやはり平衡交付金は地方財政の完全なる運営に対する補強的な立場で行かなければならない、こういうふうに思うのであります。地方の自主性を発揮する財政面の改革に、重点を置いていただきたい、こういうふうに思うのであります。特にまた政府の財政面を担当する大蔵省が、地方の問題になりますと、あるいはほかの問題のように、これを苛酷に取扱う、こういうことではいけないので、地方行政に関する限り、あるいは地方財政に関する限りは、あくまでも自治庁あるいは地方財政委員会が強力なる主体性を発揮して、そして大蔵省はあくまでも国全体の立場から、これに対して提携をされるという行き方で、行つてもらわなければならぬと思うのであります。あくまでも大蔵省の自主性に従属して行くような自治庁あるいは地方財政委員会では、地方住民として、地方庁として、私はあまり歓迎できない。大いに改善すべきところは、こうした根本問題にあると思います。この機会に岡野国務大臣に強く要望しておく次第であります。両法案に対して、自由党としては、もちろんこれは事務的な処置として、通常国会においてわれわれの要望が成果を上げられることを期待して賛成するものであります。
最後に御注意申し上げますが、これはあくまでも通常国会に対する一つの対策としての処置でありまするけれども、期日の延期処置に対して、政府の方針通り、必ずこれががつちり合せられるように、政府においても特に格段の努力をせられて善処せられることを要望して、本案に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/6
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007・前尾繁三郎
○前尾委員長 立花敏男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/7
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008・立花敏男
○立花委員 共産党といたしましては、地方財政平衡交付金の一部改正には賛成いたしますが、地方税法の一部改正には反対であります。
まず第一に地方財政平衡交付金でありますが、質疑の過程におきまして、この改正の重点であります「錯誤」という問題が、意見の相違やあるいは見解の相違から生ずるところの修正あるいは訂正を意味するものではなくて、単に平衡交付金の算定上の純粋技術的な「錯誤」というものに限定するということが明確なりましたので、われわれといたしましては、この改正にはあえて反対するものではありません。しかしこの審議の過程におきまして、重大な問題が出て参りましたので、その点につきましては、一応党の見解を述べてみたいと思います。それは岡野国務大臣が、平衡交付金法が地方行政の支障となるというようなお考えを述べられました。それに対する対策としては、中央の税収にスライドするような形で、平衡交付金を決定するように、平衡交付金法の修正をやりたい考えがあるというふうに言われたのでありますが、これはなかなか重要な問題でございまして、地方の不足な財源をまかなうのに足る十分な平衡交付金の額を、中央の税収にスライドさせるなら、それはけつこうであると言えますが、平衡交付金法が規定しておりますように、地方行政に適当なる財源を付与するというに足りないような低い額をもつて、中央の税収にスライドされましたのでは、これはたいへんなことになりますので、私どもはそういう大臣の発言に対して、強く関心を持たざるを得ないわけであります。何となれば、きのうのこの委員会におきましても、すでに鈴木次長からも、平衡交付金は来年度の予算において、大幅に削減するのだという意見の発表が明らかにしておりますように、すでに平衡交付金の削減が考えられておるわけでありまして、非常に低くなりました平衡交付金が、今度は中央の税収にスライドして、くぎづけになるということになりますと、現在地方の自治体がこぞつて要求しておりますところの平衡交付金の増額、あるいは平衡交付金によつての赤字の補填すなわち平衡交付金自体が、目ざしておりますところの地方財政の確立あるいは地方の行政に必要な、適当なる財源を地方財政平衡交付金から得るという目的が、根本的に阻害されますので、私どもは地方に必要な額にも足りない少額をスライドするような考え方には、反対なわけなのであります。こういう非常に少い額をスライドするようなやり方であるならば、そういう改正はおやめになつて、むしろ現在のままで、平衡交付金法はその運用のいかんによりましては、十分地方の財政にこたえ得る余地があるだろうと思います。現在平衡交付金が不足でありますのは、実際は平衡交付金法の不備にあるのではなしに、政府の運用いかんにあることは明らかでございまして、先般この委員会に陳情に参りました各知事が、そのことを明らかに申しておりましたし、特に山形県の知事などは、政府がやろうと思えば出せるのだということも、はつきりこの委員会で言つております。問題は地方財政平衡交付金法の不備にあるのではなしに、法の運用を政府が十分にやらない、法の精神自体を政府が無視しておるということにあるのでありますので、こういうふうな部分的な改正をお出しになる前にお出しになるのもけつこうでしようが、そういうことよりももつと根本的に、現在あります地方財政平衡交付金法の適正妥当な運用を、政府に考えていただきたいと思います。最近の国会におきまして、たとえば資金運用部の金が一般会計に繰入れられるということが決定されておりますが、こういうような預金部資金の金などは、本国会の意思表示といたしまして、地方財政に優先的にまわすのだということも決定されておりますので、現在の地方財政平衡交付金の不足などは、そういうものを運用されれば、十分まかなえると思います。そういうものを十分まかなつていただきますように、地方財政平衡交付金法を運用していただくことを要望いたしまして、この改正には賛成をいたしておきたいと思います。
それから地方税法の一部改正でありますが、これは他の党派から言われましたように、なるほど一応の経過規定のような形をとつておりますが、単に経過規定だから賛成するというわけには参らないところの内容を含んでおりますので、遺憾ながら反対であります。すなわちこの改正は三つの点を含んでおるわけでございます。三点ともに共通いたしますところは、持てる者に対する、特に法人あるいは大資本に対する猶予規定でありまして、一般市民、一般地方住民、あるいは勤労階級に対する何らの猶予も見られないわけであります。これは私どもといたしましては納得いたしかねますので、たとい経過規定でありましても賛成することはできません。特に第一点に掲げてあります市町村民税、あるいは市町村民税の法人割、あるいは法人の事業税等の猶予につきましては、まつたくこれは法人の偏重でありまして、現在市町村民税あるいは事業税の納付に困窮いたしておりますものは、決して法人だけではございませんで、個人の勤労所得者あるいは個人の事業者、これがほとんど言語に絶する苦しみをしておるのは、岡野国務大臣も御存じないとは言えないと思う。単に法人だけを猶予する、しかもその法人を猶予いたします理由が、金融が逼迫しておる、あるいは取引の実情が苦しいからというような理由で、徴収を延期するのでありますが、金融に困つておりますのは決して法人だけではございませんで、個人の事業者も、あるいは勤労階級も、その日その日あるいは毎月の月末のやりくりに困つておりますので、単に金融の梗塞ということからだけで、法人だけにこの延期を認めるということは、まつたくりくつに合わないことであります。ここにも本改正案が明らかに法人偏重であり、持てる者のみの特典であるということが明らかであると思いますので、まつたくこれは反対せざるを得ないわけであります。また附加価値祝の問題につきましても、数箇年前ですか、私どもが反対いたしました附加価値税を、強引に押し切つておつくりになつて、しかも前代未聞と言われるような二箇年間の猶予をもつておつくりになつて、しかもさらにまたこれを延長なさるということは、これまつたく政府自体の無定見を、遺憾なく暴露したものといわざるを得ないのであります。しかもこういう実施もできないような法案をおつくりになつて、ただいたずらに関連産業に混乱を起こさせ、あるいは地方財政に迷惑をかけたこいう罪は、どうしても私どもはこれは免れることができないと思います。しかも私どもが重大に感じますことは、大臣の説明の中に、いかに反対がのつたといいながら、せつかくおつくりになつた法律、国会を通過した法律で、附加価値税の施行がはつきり決定されておりますが、附加価値税の施行に関しては結論を得るに至らないということでありますが、これはまつたく国会を無視した態度といわざるを得ないと思います。こういうわけで反対を押し切つて通過させた附加価値税が、二年たつた今でも実施の目途がつかない、実施する気持もない、さらにこれを数箇月延期するというに至りましては、まつたくこれは言語道断だと思いますので、これはもちろん賛成することはできないわけであります。
それから最後に固定資産税の問題につきましても、現在固定資産税を納めております者は、大体小所有者、自分で住んでおる家とか、自分で持つておる畑とか、こういうものに対する固定資産税は、十分納まつておるわけであります。納まつておりませんのは、大産業の償却用資産、あるいは大固定資産であります。特に納まつておりませんのは、中央の地方財政委員会が決定するところの巨大産業の固定資産税で、これはほとんど納まつていないわけであります。たとえば神戸市の例をとりましても、神戸市の固定資産税収入は、予定で約五億でございますが、そのうち三億は大体そういう小さい連中が納めております。ところがあとの一億はほとんど納まつていないわけです。御承知の通り、神戸には大きな船会社がありますし、船が出入りしております。こういうものは納まつていない。あるいは神戸を起点といたします大きな私鉄、そういう大きいところが、現在ほとんど納まつていないわけなんで、固定資産税について、評価あるいは納期等について問題がありますのは、大固定資産税あるいは大産業の償却資産で、大体こういうものが現在遅れておるのは疑うことのできない事実なのであります。小さい者が納めて
大きい者が納めない。いわば大きい者の肩がわりを小さい者がさせられるという現実を、法律の上で認めるようなこの改正には、もちろん私どもは賛成することはできないのであります。
こういうふうに、固定資産税の問題、あるいは附加価値税の問題、あるいは法人の事業税、あるいは法人の市町村民税の問題につきまして述べましたように、本改正案のすべての点が、法人尊重であり、勤労大衆の問題をいささかも考えていない、言及すらしていないという点につきましては、非常に遺憾の意を抱かざるを得ないのであります。特にこの問題は、経過規定であるから、賛成しておいてもいいじやないかというお考えもあるかと思いますが、特にこの問題は、来国会に提出されます地方税法の改正とからみまして、重大な問題だと思いますので、強く反対せざるを得ません。ある意味におきまして、本改正案は、某国会に提出を予定されております地方税法の改正の先駆とも考えられますので、東国会の地方税の改正が、こういう法人偏重的な考え方からなされますと、実は勤労階級のこうむります被害はたいへんだと思いますので、強くこの際反対しておきたいと思うのであります。これは決して私どもの杞憂ではありませんので、実はきのう岡野国務大臣でございましたか、鈴木次長でございましたかがおつしやられましたように、来年度は平衡交付金を大幅に減額して、地方税の増収をもつて、それに充てるんだということを言われました。じや、いかなる地方税を増収するのかとお聞きいたしますと、酒の消費税、タバコの消費税をもつて、大体これをカバーしたいというふうなお考えでございましたが、御承知のように、タバコを吸います者は、やはり勤労大衆が一番多い。酒を飲みます者も、お役人も大分飲むようでございますが、これもやはり勤労大衆が絶対量としては多い。こういう酒、タバコに対する消費税、すなわちこの大衆に対する間接的な負担をもつて、平衡交付金を切り下げようとし、そのために地方税の改正を行おうとする意図が、非常に明らかでございまして、いわば来年度お出しになる地方税の改正は、この改正案に現われておりますところの法人偏重、負担の勤労大衆への転嫁ということが、明白になつておりますので、私どもはあえて経過規定ではありますが、本改正案に反対せざるを得ないわけであります。
大体そういう意味で、私どもはこの二つの法案のうち、地方財政平衡交付金法の一部改正には賛成でありますが、地方税法の一部改正には、賛成することができないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/8
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009・前尾繁三郎
○前尾委員長 ほかに討論の通告もありませんので、これにて討論は終局いたします。
これより採決いたします。まず地方税法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/9
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010・前尾繁三郎
○前尾委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
次に地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/10
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011・前尾繁三郎
○前尾委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
ただいまの両案に関する報告書作成の件については、委員長に御一任を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/11
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012・前尾繁三郎
○前尾委員長 この際、小委員会設置の件についてお諮りいたします。本委員会におきましては、地方財政に関し大なる関心を有するところであり、調査を進めておるところでありまするが、小委員会を設けて、さらに具体的に研究すべきであるとの御意見もありまするので、地方財政に関する小委員会を設置するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/12
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013・前尾繁三郎
○前尾委員長 御異議なしと認め、さよう決します。つきましては、その小委員及び小委員長の選任は、委員長より指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/13
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014・前尾繁三郎
○前尾委員長 御異議なしと認め、委員長より指名することにいたします。
小委員には
大泉 寛三君 川本 末治君
門脇勝太郎君 龍野喜一郎君
尾関 義一君 野村專太郎君
河原伊三郎君 床次 徳二君
鈴木 幹雄君 門司 亮君
立花 敏男君 久保田鶴松君
大石ヨシエ君
小委員長には野村專太郎君を指名いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/14
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015・前尾繁三郎
○前尾委員長 次にお諮りいたします。本委員会にすでに付託されました請願は全部で六十四件でありますが、今後付託される請願を含めまして、これら各請願を審査するため、小委員会を設置いたしたいと思いまするが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/15
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016・前尾繁三郎
○前尾委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。つぎましては、小委員及び小委員長の指名は、委員長より指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/16
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017・前尾繁三郎
○前尾委員長 御異議なしと認め、委員長より指名いたすことにいたします。
小委員には
河原伊三郎君 野村專太郎君
龍野喜一郎君 大泉 寛三君
川本 末治君 尾関 義一君
床次 徳二君 門司 亮君
立花 敏男君 久保田鶴松君
大石ヨシエ君
小委員長には龍野喜一郎君を指名いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/17
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018・前尾繁三郎
○前尾委員長 この際お諮りいたします。川本消防に関する小委員長より、小委員会において消防事情に関し、関係者より参考人として意見を聽取したいとの申出がありまする、が、小委員会において参考意見を聽取することに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/18
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019・前尾繁三郎
○前尾委員長 御異議なしと認め、さよう決します。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204720X00919511115/19
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