1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月十二日(月曜日)
午前十時三十八分開議
出席委員
委員長 木村 公平君
理事 青木 正君 理事 江花 靜君
理事 坂田 英一君 理事 船田 享二君
青木 孝義君 井上 知治君
大内 一郎君 尾関 義一君
鈴木 明良君 高橋 英吉君
松木 華寿君 山口六郎次君
金子與重郎君 村濃 宣親君
川島 金次君 松岡 駒吉君
加藤 充君 小平 忠君
出席国務大臣
国 務 大 臣 橋本 龍伍君
出席政府委員
行政管理政務次
官 城 義臣君
行政管理庁次長 大野木克彦君
委員外の出席者
専 門 員 亀卦川 浩君
専 門 員 小関 紹夫君
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十一月十二日
委員池田勇人君、橋本龍伍君及び平澤長吉君辞
任につき、その補欠として尾関義一君、寄木孝
義君及び高橋英吉君が議長の指名で委員に選任
された。
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十一月十日
警察予備隊による開拓地接収等反対に関する請
願(田中啓一君紹介)(第八四五号)
恩給法の一部改正に関する請願外八件(岡谷光
衛君紹介)(第九八二号)
の審査を本委員会に付託ざれた
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本日の会議に付した事件
行政機関職員定員法の耳印を改正する法律案(
内閣提出第一八号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/0
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001・木村公平
○木村委員長 これより会議を開きます。
行政機関職員定員法の一部を改正する法律案、及びこれに対して自由党青木正君並びに国民民主党船田享二君よりそれぞれ提出せられたる両修正案を、一括しで議題といたします。質疑は前会において終了いたしました。これより討論に入ります。討論は通告順に従つてこれを許します。青木正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/1
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002・青木正
○青木(正)委員 自由党を代表いたしまして、行政機関定員法の一部を改正する法律案に関しまして、国民民主党提出の修正案に反対し、自由党提出の修正並びにその修正部分を除く政府原案に賛成の意見を表明したいと存じます。
御承知のごとく、戦時から戦後に引続きまして、行政の規模は非常に複雑、厖大となつているのであります。これを行政機関等の職員数についてみますと、現在は昭和六年に比較しまして約二倍半となつているのであります。その膨脹は特に終戦後著しいのでありまして、主として占領関係事務、経済統制事務その他各般の行政事務の複雑膨脹に原因するものと考えるのであります。今や平和條約の実施を間近に控えまして、経済上の自立を達成せねばならないときにあたり、現在のわが国力を考えますると、この厖大化した行政をできるだけ簡素化し、能率化することによつて、財政の健全と国民負担の軽減をはからねばならぬということは、国民のひとしく期待するところでありまして、いわば国民的輿論と申しても過言ではないと思うのであります。政府の今回提出しました原案によりますると、政府のとらんとする定員整理の方針は、各種行政事務の簡素合理化をはかりまして、各省庁の事務の実態に即して定員を整理せんとするものであります。すなわち占領事務の終結に伴い不要となる事務、経済統制の撤廃により縮小し得る事務、その他不要不急となつた事務について、大幅に定員を整理しているのでありますが、一方治安関係、職業安定、郵政、電気通信、病院その他試験研究機関等の職員につきましては、きわめて軽微な整理にとどめているのであります。この方針は単なる一率の整理と異なりまして、行政の実態に即応するもので、まことに合理的であると私どもは賛意を表するものであります。
今回の整理によりまして、明年度は約百五十億円、平年度におきましては約二百億円の節約が可能となるのであります。これによつて国家財政、ひいては国民の負担軽減に費すること、きわめて大なるものがあると申さねばならぬのであります。
しかしながらこの定員の縮小、縮減によりまして退職を余儀なくされる方方に対しましては、まことに御同情にたえないのでありまして、これらの方方に対する退職手当及びその再就職の問題はきわめて重大であります。これに対し政府におきましては、今回の退職手当は従来の行政整理の場合に比し、明年三月までの早期退職者には八割増、それ以後は原則として四割増とい止しており、さらにまた退職手当に対する所得税も、大幅に軽減されることになつているのであります。また再就職の問題につきましては、政府は公務員の営利企業に対する就職制限を大幅に緩和し、当該官庁においてできるだけ就職のあつせんに努めるほか、職業安定所を中心として、全国的求人開拓の特別措置を講ずるとともに、一方今回の補正予算に計上した職業補導施設拡充費によりまして、技術の短期習得をはかり、堅実な就職を確保する等、万全の措置を講ずることを約束しているのであります。この点に関しまして政府は最大の努力を払い、退職者に対して新しい希望を持たしめるよう、十分配慮せられんことを特に要望いたしたいのでありまして、一方公務員の方々におきましても、国家の大局から見て、今回の整理に御協力あらんことを切に私ども望む次第であります。
次に政府原案は、米穀の統制撤廃を前提として定員を整理し、その実施が明年四月一日までに行われなかつた場合の措置を、附則第三項に規定しているのでありますが、諸般の事情によりまして、その実施を延期することが明らかとなりましたので、わが党から附則第三項を削り、食糧庁、運輸省及び労働省に、これに伴う必要な増員を行わんとする修正案を提出いたしたのでありまして、これによつて米の統制撤廃が実現されるまでの必要な統制、その他の事務を確保せんとするものであります。この修正以外の部分につきましては、政府原案を私どもは適当と認めるのであります。
以上の理由によりまして、自由党は国民民主党提出の修正案に反対し、自由党提出の修正案及びその修正部分を除く原案に賛成を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/2
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003・木村公平
○木村委員長 次に国民民主党船田享二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/3
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004・船田享二
○船田委員 議題となりました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、国民民主党を代表して、わが党がすでに提出いたしました修正案を支持しで、政府原案並びにこれに対する自由党の修正案に対して反対の意を表明するものであります。
政府は、すでに昨年行政制度審議会をつくつて、行政機構の根本的な改革に関する案の作成を求め、本年はまた政令改正諮問のための委員会をつくつて、同様の趣旨をもつてする案の作成を求めており、そうしてこれらの審議会や委員会は、それぞれの立場から行政機構の改革、行政事務の簡素化に関する案の答申を行つているのであります。かつこれらの審議会や委員会の案とど弔いう関係に立つのか、われわれよくわからないのでありますが、大臣の名をつけただれだれ試案と称するものが、昨年来何度となく無秩序に発表されておるのであります。これらのいわゆる行政整理の案は、いずれも大幅な人員整理案を伴うものでありまして、従つてこれらの安によつて整理の対象とざれる行政職員は、こういつた案がつくられ、こういつた案が発表されるごとに一喜一憂して、いつ首を切られるのかわからないという状態のもとに、戦々きようきようとして月日を送るありさまに陥つたのであります。ために行政事務能率は驚くべく低下しまして、これによつて国民のこうむつた損害ははかり知るべからざるものがあるのであります。ところがそのあげくのはてに、政府が決定し本国会に提出するに至つた行政整理の案は、これら各種の行政機構改革の案によらないで、まつたく単なる人員整理案であり、首切り案にすぎないのであります。定員法改正法案について、政府は近く行政機構改革を断行する方針であるということを明らかにし、今回はこういうような行政機構改革を予想して、前もつて人員の整理を行うものであり、従つて今回の整理案による整理が行われれば、近き将来における行政改革によつて、あらためて人員の整理は必要とされないものだ、こういろふうに説明しております。しかしこういうような考え方は本末転倒もはなはだしいものでありまして、およそ必要な行政職員の数は、行政機構が定まつて、行政事務の内容の分量が定められて、それに応じて初めて明らかにされるということは申し上げるまでもないことであります。かつ政府は近く機構の改革を行ろのだという方針を漠然と述べておるだけでありまして、その改革案がどういうものであるかということは、少しも明らかにしておらないのであります。従つて今回の人員整理の後にも、かような機構改革に伴つて、さらに人員整理が行われねばならないという状態を生ずるかいなか、まつたく明らかにされておらないのでありまして、おそらくはこういうような再度の人員整理を必要とするに至るであろうということは、およそ常識のあるものならばだれでも考えるところであります。従つて長い間、政府の行政整理のかけ声によつて不安と動揺の月日を送つて来た行政職員は、いよいよ不安混乱の状態に陥つて、行政事務の進行はまつたく停頓するに至つているありさまであります。そうした状態の原因は、すべて政府がこういうような不用意なやり方で、こういうような不合理きわまる行政整理の案を決定し、これを強行しようとしているところに存するといおなければならないのであります。政府はこの定員法改正法案提案の理由として、行政事務の簡素化等に伴つて各省庁の定員を改正する必要を生じた、こう説明するのでありますけれども、かような行政機構改革に関する政府の案は、まだまつたく明らかにされておりません。従つてどういう事務がどういうふうに簡素化され、あるいは廃止されるか、ほとんどまつたく明らかにされておらないのでありまして、法案は単に天引式に人員の整理を行つて、それによつて逆に行政事務の縮減を強行しようとする、きわめて幼稚な、行政整理といえば首切りと考えるような、素朴な考え方に基くものといわなければなりません。しかもその天引式整理の基準はきおめてあいまいなものでありまして、かつまた各省庁の間の均衡をまつたく無視したものなのであります。こういうような方針をもつてする政府の行政整理によつては、政府自身がつくつた政令諮問委員会の答申がすでに指摘しておりますように、行政整理は一般の期待に反して中途半端に陥り、かつ一、二年の後にはまた同じ問題を繰返さねばならなくなるということは、火を見るよりも明らかであります。のみならず、かような政府の整理案の実行によつて生ずる犠牲者の数は、最小限に見積つても六万ないし六万五千に及ぶと説明されるにもかかわらず、かような犠牲者に対する政府の対策は、退職金を多少多額に支出するという以外にはほとんど何の見るべきものもないのであります。こういつた整理案による行政整理によつてはいたずらに行政事務の能率を低下せしめるにとどまらず、さらに社会不安を引起して、いよいよ国民の負担を増大せしめるものといおなければなりません。
さらにこれを法案の個々の内容について見ましても、たとえば文部省において国立学校教職員の定員を三千四百七十二人も整理するというような整は、終戦後新たに発足した教育制度の本旨の実現を妨げる以外の何ものでもないばかりか、ことに附属中学のような特殊な意義を有する教育機関の、その特殊性も無視して一律に首切りを行うというようなことは、学校教育制度を危機に陥れるものと考えるのであります。また特別調達庁について見ましても、平和條約は締結されましても、日米安全保障條約によつてアメリカ軍は日本に駐留することになると思われるのであります。従つて、そのための調達業務が現在までよりも一層複雑となることが考えられます。ざらに接収不動産の大幅解除につれて、補償業務が著しく拡大されることも予想されるのであります。それにもかかわらず政府案は、六千八百二十五人の定員のうち千九百八十人を削つて、これをほぼ四分の三に押し縮めてしまおうとしているのであります。ことに特別調達庁の業務が平和條約の効力発生とともにどういうふうになるかということについては、まだ政府ははつきりした見通しを持つておらないのであります。それにもかかわらず天引式の整理を強行しようとすることは、今回の整理案がいかにいいかげんな根拠に立つものであるかを示す標本ということができると思うのであります。ことに不可解なことは、人員整理の焦点を農林省に集中して、ことに統計調査関係の職員及び食糧庁の職員の定員について、他の省庁との間の均衡をまつたく無視して、驚くべく大幅な整理を行おうとしていることであります。法案は農林統計調査関係職員の定員の一万四千九百四十二人のうち六千五百二十人を整理し、また食糧庁の定員三万一千二百五十六人のうち一万六千十四人を整理しよろとするのであります。その整理率は実に、前者において四三・六%、後者において五一・二%の高きに達しております。ことに前者の定員は最近すでに千五百名減少せしめられているのでありまして、その上さらにかような大幅な減少を行おうとするのであります。かような大幅な整理を行う理由として、政府は、米の統制撤廃を前提とすると説明されたのでありますが、政府のたびたびの言明にもかかわらず、統制撤廃が行方不明になつてしまつたことは周知の事実でありまして、そうした統制撤廃が行い得なくなつた以上、こういろような前提による整理が行われないことは言うまでもないのであります。自由党の諸君は、この統制撤廃問題の情勢急転に狼狽して、食糧庁の定員を多少復活する修正案を提出しておりますけれども、こういうような修正案はなおきわめて不徹底、不合理なものでありまして、これによつて政府の原案の欠点が除かれることにはならないのであります。ことに統制撤廃と関連して整理人員を算出した統計調査、関係職員については、何らの修正をも施こそうとしないということは、明らかに矛盾でありまして、こういうような修正によつてはいよいよもつて原案の不合理性を増加せしめるのみと考えられます。かつ統計調査事務にせよ、食糧管理及び検査の事務にせよ、これらはいずれも主食統制のみと関連するものではないのでありまして、現在の定員は、必ずしも主食の統制のためのみに必要なものとして定められているものではないのであります。ことに統計調査関係について言えば、今度の平和條約に伴う宣言において、わが国は、ジユネーヴで署名された経済統計に関する国際條約及び議定書に加入する意思を表明しておるのであります。そうして右の国際條約及び議定書は、主要作物に関する栽培面積の分布及び作物の収穫高に関する毎年の統計を提出すべきことを約しておるのであります。さらにわが国が主食の絶対量不足によりまして相当多量の外米、外麦の輸入を行わなければならないことは、政府もまた認めるところでありますが、外貨はたとい一ドルでも節約しなければならないときに国内産食糧がどれだけの量に上り、従つてどれだけの不足量を輸入しなければならないかということは一トン一石もゆるがせにせずに精密に計算しなければならないことは言うまでもないのであります。こういうような国際関係において必要とざれる統計調査事務のことをあおせて考えまするならば、統計調査の事務がいよいよ拡充されねばならないことは明らかであるにもかかわらず、政府案によれば、その必要量小限度の正確度を持つ統計をつくり得るかいないかも疑おしくなつて来ているのであります。食糧管理及び食糧検査の職員についても、統制を続けるにもかかわらず、なお修正案によつても大幅な整理を強行しようとするのは理解に苦むところであります。ことに、食糧検査の職員を整理して、その犠牲者とともにその検査事務を各県の農業協同組合等に押しつけようという政府の方針は、現在弱体化している農業協同組合に相当に多額の補助金でも出さなければ実行されることができないのでありまして、そのためにかえつて国費の負担を増すおそれがあるばかりでなく、検査事務がせつかく現在のように全国統一的に、また中立的に行われる段階にまで発達して参りましたものを、何十年も前の欠点の多い制度に押しもどそうとするものと言おなければなりません。わが党は、せめてこの点についてだけでも政府案を修正して、整理の案を多少でも合理的な方向に近づけなければならないというふうに考えまして最小限度における修正案を提出した次第であります。
さらに土地改良法関係職員とか、統計以外の農業改良局の職員について一律に整理を行おうとしているがごときは、これらの事業がいよいよ拡充されなければならない現在、従つてむしろ増員を必要とする現在、これに対して明らかな逆行をなすものでありまして、これがさらに地方公務員の整理に反映するというようなことになりましたならば、非常に憂慮すべき事態を引起すおそれが十分にあると思うのであります。大体行政を簡素化し、現下のわが国力にふさわしい行政体制を樹立するという政府の方針それ自身にはわが党もまた賛成でありまして、わが党はできるだけ早く行政機構の根本的な改革を行つてこれを縮小し、行政事務を簡素化して、国民の負担を軽くすべきことを主張し来つたのであります。しかしこういうような行政整理は、合理的な行政機構の確立と事務の簡素化等を行つて、それに必要な行政職員を算出して、余つた人員を整理するという行き方で行わなければならないことは、言うまでもないところでありまするし、かつまた整理される人員に対しましては、最低三年間は現職にあると同じ待遇を与えるというような方法を講じまして、その猶予期間内にできるだけほかの方面への転出を勧めて、そのために必要な施策を行うべき必要があるのであります。こういうような方法によつて、初めてほんとうに国力にふさわしい合理的な行政機構が確立されて、行政整理の目的は達せられると考えられるのでありますが、これを政府案のように、逆にまず首を切つて、しかも犠牲者に多くの考慮を払わないような行き方では、いたずらに行政事務能率を低下せしめ、社会不安を引起すにとどまつて、整理の目的が達せられるとは思わないのであります。現状に見るような行政事務の停滞、綱紀の頽廃、これらすべては政府がこういうような無謀な整理の案を、しかもきおめて不用意につくつて強行しようとすることによるのでありまして、わが党は本法案に量られるような行政整理に対しては、断固反対するものであります。従つて本法案に対して、さらにこれに対する自由党の修正案に対しては、反対の意思を表明するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/4
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005・木村公平
○木村委員長 次に日本社会党川島金次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/5
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006・川島金次
○川島委員 私は本案に対して、日本社会党を代表して、総括的反対の意見を表明するものであります。
政府は今年当初以来、行政機構の根本的な合理化を目標とする改革を実施する旨、天下に明らかにされて来たのであります。われわれといえども、行政機構の根本的な再検討を行い、しこうして行政事務の明朗と能率をはかるための基本的な改革を行おうとするその目標に対しましては、あえて異議あるものではございません。しかるに政府は天下に明らかにし約束をいたしておりました最も根本的な行政機構の改革は、行われるがごとく行われざるがごとく、ジグザグのコースをたどりましたが、遂に政府部内におけるところの意見の不一致や、またその改革の具体的ではないこと、その内容についてずざんなものがあり、また輿論の趨向に一致しない点なども暴露されるに至つて、遂にこれはたな上げといろざんたんたるうき目を見て今日に至つておる。ちようど政府がざきに公約し、また今臨時国会の堅頭において吉田総理大臣みずからが全国民に明らかにした米麦統制撤廃問題が、果然院の内外の国論的な反撃にあい、遂に政府の無方針と無定見とが天下に暴露されるに至つて、これまたたな上げのやむなきに至つたということ等を考え合せまして、吉田内閣のこれら一連の現象は、もはや吉田内閣が真に国政を担当するに足るだけの感覚を喪失しつつあるのではないかといろ感を、今や国民全般に与えておるようなありさまであります。ともかく政府は行政整理に先立つて、根本的な行政機構の合理的な改革を行おうとするその方針をすらもたな上げするに至つて、ただいま民主党の船田氏からも意見が開陳されましたように、この根本的な機構の改革に先立ちていたずらなる行政整理、すなわち人員の整理を行おうとすることは、まことに順逆を誤るもはなはだしいものであつて、この点でも政府の無方針と無定見とを暴露したものにほかならぬと断せざるを得ないのであります。ことに最近における政府部内の現業庁方面におけるところの職員の実情は、むしろ生産の増強あるいはまた事務の迅速化あるいは輸送量の増大等を目標として、最低生活の保障すらされていない職員ではあるけれども、これら一連の現業に携おつております職員は、政府のいわゆる経済再建に協力するという熱意から、輸送の面においては順次倍加され、また能率、迅速化のためにも非常な注目すべき数字を現実において示している。また専売公社のごときところにおいては、その人員は逐次減少ざれながらも、その生産量は上昇線をたどつているということは、まぎれもない事実であります。一方において国鉄のごときは、人員の輸送、貨物の輸送力が増大しており、専売公社の生産量が増大して、その専売利益が補正予算においてもざらに追加ざれるというような増大ぶりを見ていることによりましても、いふに現場におけるところの職員の諸君が、その待遇が最も悪い條件のもとにあるにもかかわらず、歯を食いしばつた形で日本の経済再建態勢の確立の上に、格段の協力的な熱意を示しているかは、明らかなところであります。しかるにこれらのことすらも政府は無視いたしまして、行政機構においては根本的の先決要件である機構改革の具体方針を明らかにされず、一方においてはこれらの現場における実情というものをまつたく無視して、一方的天くだり的、一律的に生首をかき切ろうとするようなこの暴挙に対しましては、あまねく官公職員はもちろん地方の公務員、またこれらに対する理解を持つ国民大衆が、これに対して心から反対の意見を表明しておることは当然の事柄とわれわれは信ずるのでございます。ことに農林省関係のごときも、食糧統制の撤廃がたな上げとなり、これに伴うところの当然の法律を、政府みずからが修正をして出直しをしなければならぬという責任があるにかかわらず、それはほおかむりして、与党の方からそつと修正案を出させるというよろな形をとつたり、さらにその形も満足であればいざ知らず、政府の統制撤廃ができなかつたときでもやるのだという、当初の定員におちつけるという修正案にほかならないのである。ことに農林省の食糧庁関係においては、米穀の検査員、あるいは農林統計という、かりにいかなる事態になりましても、さらにさらに質的にも量的にも必要性を増大するとわれわれは信じておるところの農林統計、あるいは食糧の検査、これらの現場に働く、しかもますますその必要性が倍加するであろうというところの方面にまでむ、相かわらず一律にこれを整理する。この事柄にも、まことに私は政府の実情を無視した感覚に唖然たらざるを得ない一人であり、自由党の修正案に反対いたす点も、このようなところにあるのであります。
さらにまた、私どもはかりに一歩退いて、政府がしやにむにこの行政整理を実行しようとするならば、その整理によつて退職のやむなきに至る多数の公務員に対して、完璧を期する底の、熱意のある、愛情がそこに打立てられなければならないにかかわらず、相かわらず二階から目薬にもひとしいような退職手当で、せつかくの公務員諸氏の生首をかき切り、折から差迫る冬室のちまたのもとにほうり出して、てんとして顧みないといつたごとき態度に対して、われわれはこの点においても全国官公庁職員とともに、明白に反対なる意思を表明せざるを得ないのであります。
さらにまた政府は、この行政整理によつて当面の節約額は幾らであるかと言えば、わずかに四億円内外。そして当面この行政整理によつて必要なる経費は、驚くなかれ四十八億、実に差引四十四、五億に上ろうという新しい経費を必要といたしております。この数字から見ても、いかに当面の整理が新たな国家経費を増大するかということが明瞭であります。
またさらに一歩観点をかえて、政府はこの行政整理によつて、平年度において今後二百億の経費が節減できるという旨を明らかにしてます。吉田内閣が成立いたしまして、ここに行政整理もしくは整理にひとしきものを行われること再三にわたり、その都度平年次における経費の一大節約が行われるがごとく国民に明示して参りました。しかしながらぞの整理の後において、政府が前もつて明らかにして来たように、行政費、ことに人件費の実際的な節約が行われたことは、いまだかつてわれわれ募間にしてそのことを聞いておらないのであります。繰返せば、政府は行政整理を行つて、国の費用の節約をはかつて、国民の負担の軽減をはかるのだと称しながら——その言はよろしい。がしかし実際において、いまだかつて人件費において名実ともに備わつた減額が実現されたことは断じてないのであります。このことは、いかに吉田内閣の行政整理が、国民負担の軽減にありと言い、財政規模の縮小にありと言つても、それは単なる羊頭を掲げる狗肉の政策以外の何ものでもなかつたということは、今日までの実績に示しておるのであります。われわれが推測いたし達して、政府の今回の行政整理、自由党の修正せるところの行政整理が本国会を通過いたしましても、おそらく明年度からの平年度において、人件費の政府の寄与がごとき節約が真実に実行いたされるといたしますならば、俗な言葉で恐縮でありますが、それこそわれわれはお目にかかりたいと申し上げざるを得ないのであります。このような観点から、私どもは政府がもし国内のこの厖大な行政機構——今日より以後に独立を期する日本において、日本独自の行政機構の再検討を行い、単なる首切りを目標とするものでないところの根本的な機構の改革を行おうとするならば、それも一日も早くわれわれ国民に具体的にこれを明らかにしてほしい。そのことなくして、単なる以上のような観点に立つての政府の行政整理に対しては、断固われわれは反対の意思を表明しておかなければならないのであります。
そこでわれわれは結論として、この政府の単なる天くだり的な、一律的な、しかもそこに何らの満足すべき政治的な見解も織り込まれておらないような、機械的な行政整理に対しては、断固重ね重ね反対の意思を表明いたしまして、社会党を代表する討論にかえる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/6
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007・木村公平
○木村委員長 次に日本共産党加藤充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/7
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008・加藤充
○加藤(充)委員 日本共産党の定員法の一部改正法案並びにその修正案に対する態度を明確にいたします。
まず第一に、行政機構の改革等の事柄をやるにあたつて、根本的に考えてみる必要がある。国政とはそもそも何ぞやということであり、公務員とはそもそも何たるものであるかといろ本質の問題であります。対日講和、日米安全保障協定の調印と批准によりまして、わが祖国と民族の独立は失われ、国民生活の自由と安定は、今や残酷きおまりなき戦争へのかり立てによつて、破壊されようとしているので踊ります。われわれは日本人としてこれを押し返し、平和と独立と安定とをとりもどさなければならないものであります。同時に、この日本民族の民族的大事業の達成は、世界の平和と世界の人人の幸福につながるものであつて、この民族的大業の達成は、同時に世界に対する日本民族の責任を果すことにも相なるものだとわれわれは確信いたします。ここに当面の国政の根本態度と国政運用の根本方針があらねばならぬと思いまするし、公務員はそのためにこそ国政を執行運用し、初めて国民の公僕となり得るものであります。しかるに、残念ながら吉田首相を初めといたしまして、自由党の人々は、今日このときにあたつて政権を把持担当しながら、この條約を国民の総意と潜称して欣然受諾して参つたのであります。私は、だから今の自由党吉田政府に国政を担当する資格、同時にその前提に立つた国政の運営、すなわちその面から来る行政機構の改革、公務員の首切りというよろな資格は絶対にあり得ないものである。これが反対の第一点であります。
なお最近の新聞をごらんになれば、だれしもがわかりまするように、いろいろな高級官僚を中心にした不正と腐敗は、実にとうとうとして大河の流れるごとき状態であります。給食児童に配る大豆等を中心にして大豆をさかなにして児童を食つた、ころいうようなことがあるかと思えば、国庫補助金をよけいにとる謀略のもとに、石川県では天狗橋の切落し事件すらが行われておるのでありまして、そのために殺傷されました被害者は、明らかに県知事、土木部長、課長等のたくらみによつて謀殺されたとすら言つていいものなのであります。新聞の論調を紹介しただけでも獣よりも劣る、強盗でも千や二千の金がほしさにからだを張つた仕事をするのである。官公庁の汚職ときては、くわえタバコで片目をつぶつて判こを押せばオーケーだ、しかも犯罪が確定しても量刑はきわめて軽いのであり、さらに法の網にひつかかるのは、よほど目に余るものか、これには注釈を要す、太いものは網にかかつておらないのだ、運の悪いものであろう、法網にひつかかつても、時の勢、力、つまり権力でうやむやになることがないとは言えないというていたらくであります。この徴税地獄の中に、かかる国民の血税の濫費と損失と、それに対する国民の大きな不満は、八万人の生首を切るというようなことでは断じてごまかされはいたしません。首を切つて、こういうようなところに目をふさいで国民負担の軽減であるというのは、俗な言葉で恐れ入りますが、どこを押したらそういう音が出るかを私は聞きたいのであります。国民負担の軽減と言つておりますけれども、このたびの補正予算は千三百億を越えておりまして、当初予算と加算すれば実に七千九百三十七億、日本財政史上最大の予算であつたと言われた昭和二十四年度の予算を、五百億以上も上まわるものであります。そうして、しかもその七割ないし八割が、明らかな軍事費及び産業の軍備化に充てられておる実情であります。講和條約調印批准に際して、吉田内閣は幾多の、この條約に反対し、戦争に反対し、独立を回復したいと念願する多くの運動者、あるいはそのことを主張し、国民に訴えるいろいろな刊行物、出版物を多量に弾圧し、投獄いたしました。しかしながら、さきに申し上げました予算を見ましても、明らかに、このたびの本年度の予算の中に、八百億の今申し上げたような戦争への準備の隠し金があることは明瞭な事実であります。私はこういう根本的なところにほおかぶりをいたして、春三月卒業春心多い、また一部特需軍需工場を除いては、とうとうとして倒産、店じまいの状態の失業地獄の中に、国民負担の軽減と称して、たくさんの生首を切つて行くのでありますが、これほど人をばかにした話はないのであります。これほど残忍な話はないと思います。機関銃一台は十坪の、住宅一戸に相当し、ライフル銃二十個師団分は結核病床二十六万ベツトの費用に相当すると言われております。社会福祉厚生の場面を機構、人員の縮小整理というままに、ほとんど無にひとしくしてしまうようなこういうやり方をやつておること、また人員整理という形の中で失業対策、職業安定あるいは勤める者の生活や給料を保障するに役立つ労働基準法というようなものの実質が打ちこわされて行つてしまうのであります。
私たちは満州事変から太平洋戦争にかけて、やれ準戦体制とか国防国家体制とか、さらに決戦体制とふ、しやにむに行政組織の統合と戦争遂行のための権力の一元化が遂行ざれた歴史を今振り返つて、忘れることはできないのであります。このたびの行政整理は、定員の首切りというものは、新しい形で継続される占領管理のもとに日米合同委員会を最高機関として、日本の軍事基地化を推し進め、日本の行政経済をアメリカ国防産業の中に編入し、日本の再軍備を行うためのものであり、それは同時にサンフランシスコの両條約の調印の、そして批准への裏づけをなすものであると考えます。そのための権力の統合と集中一元化、そしで公然と戦争への政治体制を確立しようとするものでありまして、忘れてならないのは、こうした行政機構の改革と並行して団体等規正令、ゼネスト禁止法、労働三法の改悪、そして労働者を低賃金と労働強化と無権利状態に突き落すための、この諸施策が一体となつておることであります。私どもはこういうような性格の行政整理には断固として反対いたします。
また内部に入りまして、行政整理をやるにいたし幸しても、やり方がてんでなつておりません。大体行政事務の縮小整理、行政機構の改革及び行政事務の処理方式の合理化に伴つて大幅の人員整理が可能であるのであります。数だけ端数を並べて天引き的に定員法の一部改正として提案されましても、この審議はナンセンスにひとしいのであります。われわれはそういうような提案を受け、ほとんど無意味に近い審議をさせられたのであります。これは一面的にいえば、首切りに対する真剣な考え方がないのと国会の審議権を無視する明らかな現出れが、ここに出て来ておるのだと思うのであります。しかも首を切つた二十四年の整理のときにも、常勤職員九十万に対して四十八万という非常勤職員がすぐにふえておるのであります。一割から三割支給の起動手当すらが九十億を数えておると私どもは聞いておるのであります。さきに申し上げました非常勤職員の中で、明らかに政府みずからも二万三千人の常勤者がいるということを言つております。これは二十四年度の首り切が明らかに無理なものであり、ごまかしであり、またこのたびの定員法の改正が、首切りが実に無理なものであり、何らの合理的な理由を持たないことを政府の報告する数字自体が物語つており、証明しているところだと確信いたします。私どもはむしろ定員をふやすべきではないか、こうすら考えるのであります。またふやしてもやつて行けるのであります。金がないのでは断じてありません。しかも今度の首切りたるや何らの基準を示さず、めつた切り、抜打ちであります。しかも国家公務員に残された唯一の不利益処分に対する救済の制度としてありまする審査請求権というものが、全然認められておりません。これはまつたくの切捨てごめんであります。民主主義に反するのであります。国家の権威のもとに、公務員はもちろん国民自体が全部これになびき、切捨てられても文句を言うおけに行かないというこの思想こそが、恐るべき私は国家主義の現出れであると断ぜざるを得ないのであります。しかも大整理は社会不安を巻き起す原因となる可能性があるから、政府としては実施上十分適切なる対策を樹立する必要があり、万全の措置が講ぜられなければならないというのが常識でありまするのに、四千万円ほどの職業補導で一万人ほどのむのを何とかするというようなやり方では、私どもはこれほどたくさんの首を切る政府を国民の政府であると信頼し、これに期待するわけには行ふないのである。その支持を政府みずからが裏切つたものであると思うのであります。また整理後の公務員については当然一人当りり行政事務分量が増大化することは必至であるし、事務処理の能率化と関連して公務員の給与の改善を考慮しなければならないというのも、これまたりくつじやなく当然の常識であります。しかし問題になつておりましたあの最低にもなつていないよらなこの人事院の勧告すらも——政府は残された公務員に給与の引上げをしようとしないのであります。これでは、ほうり出された者は失業地獄に泣き、残された者は、また労働強化と低賃金の中に泣かざるを得ないという、まつたく暗澹たる暗黒政治であるといわざるを得ません。主食の統制撤廃に関連して、まことに大貝得の切れない首切りをやろうとしたことについても、われわれはその不見識と、その自主性を喪失したやり方について指摘せざるを得ないのでありまするが、これはよその党派の方々が意見を開陳されましたので、私はこれには触れません。
要するに今度の行政整理というものは、軍人と警官と、すなわちピストルと公務員の首とをかえただけのものだ。簡素化にも民主化にも事務の能率化にもなりませんし、国民の負担の軽減にも断じてなりませんばかりでなく、このために日本国民は莫大な、旧に倍した大きな負担と圧迫とを受けるむのでありまして、こめたびの行政整理は、公務員はもちろんのこと、国民もともに犠牲にされたもので出る。われわれはこういう見地から、国民と公務員と一体になり、民族的大業をなし遂げるためにも、こういうような軍国的な、売国的な、残忍な首切りには断じて賛成することには参りません。以上のような意味合いにおいて、政府原案にも反対であり、修正案にも反対いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/8
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009・木村公平
○木村委員長 次は小平忠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/9
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010・小平忠
○小平(忠)委員 私は農民協同党を代表いたしまして、この法案に反対をいたします。
戦時戦後を通じまして、わが国の行政機関職員の定員が画期的な増加を見ましたことは、周知の事実であります。詳細なる統計、的確なる数字は把握できませんが、大体の統計によりまして、国民十四、五人で一人の役人をかかえているというような現状であります。このことが必然的に国民の負担をますます倍加して行くということは当然のことであります。そういう見地から政府が今回行政整理を行うという趣旨に対しましては、われわれは根本的に反対をするものではありません。
しかしながらわが国がすでに両條約に調印し、すでに衆議院におきましては批准を終つた現状におきましては、戦時中あるいは戦後の占領政策下、統制経済下において画期的な膨脹をいたし、あるいは複雑化した機構を急速に整理改革いたし、ここに日本の新発足に備える新しい態勢を急速に樹立せねばならないのであります。そのような見地から簡単に結論を申し上げますと、わが党は政府がかねてから主張いたしてわりまするように、行政機構整理と同時に職員の整理を行うというものでなければならぬという考え方を堅持いたしているのであります。ことにわが国の現段階において考えなければならぬことは、すでに独立への第一歩を踏み出しつつあるのであります。すなわちただいま申し上げましたように、従来の幾多の複雑な行政機構を簡素化し、あるいは職員を最も合理的に配置することが刻下の急務であります。これを急速に行うことに関しましては次のような裏づけが必要であろうと思うのであります。そのことは無定見なる計画のもとに、整理をすればそれだけ国家、国民の負担が少くなるという考え方では私はいかぬと思います。何といつても国民の公僕として第一線に働く行政機関の職員というものは、優秀なエキスパートで、日夜努力をしている。終戦以来、特にこれは政府当局においても認めておりますように、現在の物価指数をよく検討して見ますのに、この生活の状態というものは必ずしも安定しているのではない、きわめて貧困なる生活の中に孜々営々として働いでいるのであります。こういろような見地から、頭から整理をすればいいのであるという考えのもとに整理をしても、その結果というものは、生産を高めるとか国民の負担を軽くするということは言えない。その前提となるべきものは生産を高めるというがまず第一條件でなければならない。その次には現在整理をいたしまして残りました職員は、その職域に全力を傾倒してその職務を完遂するというよろな態勢を立つることが必要である。さらに整理をされた職員に関しましては、後顧の憂いのないように、その生活を安定せしめるような失業対策を確立することが必要である。
次に一番大事なことは、まず民心の安定、民主の安定であります。私は先般来本院におきましても強く主張いたしておりますこどは、わが国が両條約に調印し、そうしてわれわれの理想であつた全面講和が不幸にして達成でき得なかつたということは、客観的情勢の変化に従つてこれはやむを得ません。従つて日米安全保障條約に対しまして調印し、われわれが賛成いたしましたのも、この客観情勢によつてやむを得なかつた。しかしその瞬間に国民の一人々々が決意をしなければならぬことは、やがては日本の国力が充実した場合において、日本がいわゆる国防的見地に立つてやがて国防軍が創設されるであろうということを国民が多く考えているという点であります。このことに関しましては、これは吉田総理もおつしやつております。われわれは今ただちに再軍備の論などは軽々しく言うべきでない。何といつても国力を充実して、国民がすべてわが国はいい国である、この吊るおしい国を国民が守らなければならぬという愛国心の発露から、喜んで国防軍に志願をして行くというような態勢ができて来てこそ、それがりつぱな軍隊である。すなわち今の段階において警察予備隊を天くだり的に強化をした力、あるいは再軍備などをしても、かえつて他国を刺激するだけであつて、わが国のプラスにはならない、すなわちほんとうに中に筋の通つたものでなければならぬということを総理はおつしやつている。私はまことに同感であります。そういうような見地に立つて、わが国が今後纂進するならば、国民の公僕として第一線に働く国家公務員、行政機関の職員の整理については、政府はもつと真剣なる態度を私は持つてもらおなければならなかつたと思うのであります。少くともこの整理問題に関しましては、政府は春以来強調されております。すでにわが国が、去る九月サンフランシスコで講和会議に臨んで調印をするという腹ぎめをしたときに、政府は今回の行政整理、いわゆる職員の整理を行うと同時に、日本が再出発をするに備えての行政機構の整理を断行しなければならぬ、これと並行して、すなわち行政事務の簡素化あるいは職員の合理的な配置を行うならば、私は納得し得るのであります。しかるに、今回提案されました事項については、行政整理はたな上げして、単に職員の整理だけを行うという考え方であります。さらにはなはだしきに至りましては、今日国民のすべてが大いなる関心を持つております主食の統制撤廃に関しましては、総理大臣も、あるいは閣議においても、主食の統制撤廃は明年四月から行うということを断言せられておる。ところがこれが風前のともし火のごとく消え去つてしまう。そうして整理に関しましても、政府当局はあくまでも原案を支持しておりますが、与党たる自由党において修正案を出しておる。これは実にナンセンスと言わなければならない。一貫性がない。特に私はここで一点指摘いたしたいことは、農林省所管の食糧庁関係の職員の整理問題であります。今日わが国の農林統計の事務というものは、戦後非常に画期的に強化せられまして、特に米国においても、わが国の農林統計については賞讃をいたしておるのであります。しかし私は、現在の統計調査事務に関しましては、幾多の改正をし、是正をしなければならぬ点があると思います。しかしながら今後わが国の食糧行政を円滑に遂行して行く、わが国の経済再建という意味からも、食糧統計調査事務の重要性を、政府は十分認識していただきたい。ある程度の職員の整理はやむを得ないといたしましても、これを軽視してはならない。特に食糧検査員の問題に関しましては、今度の政府の原案たる五割減のごとく、これは農産物を少しでもよき物を生産して、その商品価値を高く評価しようというような考え方に立ちまするならば、まつたく現実を無視するもはなはだしいと言わなければなりません。食糧検査の重要性は、統制経済下、いな自由経済下にありましても、これはまつたくそう大差はないというような見地に立ちまして、私は今回の、特に食糧検査員の整理に関しましては、断固反対であります。この声は、単に検査に従事する職員の意見だけではない。すでに全国農民、農業団体、あるいは農民組織、こぞつて反対をいたしております。これを政府はあえて押し切つて整理を今やろうとされておるのでありますが、もしこれをかりに断行するならば、農産物の増産と、あわせて優秀なものを生産しようといろ意欲に燃えておる農民の意思を根底から阻害するばかりでなく、今自由経済に移行しようとする場合において、商取引の上においても円滑を欠くであろうことを、私は明言しておきます。
以上のよろな見解のもとに、私は今回の法案に関しましては、すなわち政府原案並びに自由党、民主党の修正案、この三案に対し断固反対いたします。あくまでもわれわれは、行政機構整理という考えのもとに、新しい日本の再出発の線に沿つた、いわゆる合理的な、計画的な整理を行うということでなければならぬことを最後につけ加えて、私の討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/10
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011・木村公平
○木村委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決いたします。まず、国民民主党船田享二君提出の修正案について採決いたします。この修正案に賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/11
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012・木村公平
○木村委員長 起立少数。よつて船田享二君提出の修正案は否決されました。
次に、自由党青木正君提出の修正案について採決いたします。この修正案に賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/12
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013・木村公平
○木村委員長 起立多数。よつて青木正君提出の修正案は可決いたしました。
次に、ただいまの修正部分を除いた他の部分について、原案に賛成の諸君は起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/13
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014・木村公平
○木村委員長 起立多数。よつて修正部分を除いては、原案の通り決しました。これにて本案は修正議決いたしました。
なお本案に関する委員会報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/14
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015・木村公平
○木村委員長 御異議なければその通り決します。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01219511112/15
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