1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月十六日(金曜日)
午後二時六分開議
出席委員
委員長 木村 公平君
理事 青木 正君 理事 江花 靜君
理事 坂田 英一君 理事 鈴木 義男君
大内 一郎君 大西 弘君
近藤 鶴代君 牧野 寛索君
松本 善壽君 千葉 三郎君
松岡 駒吉君 加藤 充君
出席政府委員
警察予備隊本部
次長 江口見登留君
宮内庁次長 宇佐美 毅君
外務事務官
(大臣官房会計
課長) 高野 藤吉君
外務事務官
(政務局長) 島津 久大君
委員外の出席者
議 員 庄司 一郎君
総理府事務官
(恩給局審査課
長) 城谷 千尋君
専 門 員 亀卦川 浩君
専 門 員 小関 紹夫君
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十一月十六日
委員池田勇人君、橋本龍伍君及び平澤長吉君辞
任につき、その補欠として牧野寛索君、近藤鶴
代君及び大西弘君が議長の指名で委員に選任さ
れた。
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十一月十五日
恩給法の一部改正に関する請願(江花靜君紹
介)(第一二七二号)
同(林好次君紹介)(第一二七三号)
元軍人老齢者の恩給復活に関する請願(青柳一
郎君紹介)(第一二七四号)
建設省職員の定員改正に関する請願(成田知巳
君紹介)(第一三三六号)
戦傷病者に対する恩給増額の請願外五件(坂田
英一君紹介)(第一三三八号)
定員法の一部改正反対に関する請願(岡田春夫
君紹介)(第一四三七号)
同(青野武一君紹介)(第一四三八号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
地方自治省設置に関する陳情書
(第七〇九号)
水産省設置に関する陳情書
(第七一〇号)
厚生省並びに都道府県衛生部局廃止に関する陳
情書外十二件
(第七一一
号)
老年者の低額恩給増額に関する陳情書
(第七一二号)
行政機構改革に関する陳情書
(第七二四号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
外務省設置法案(内閣提出第二〇号)
請願
一 恩給法の一部改正に関する請願(松本善壽
君紹介)(第一号)
二 公務員の新恩給制度確立に関する請願(立
花敏男君紹介)(第二号)
三 元陸軍教授に恩給復活の請願(志田義信君
紹介)(第八五号)
四 元軍人老齢者の恩給復活に関する請願(青
柳一郎君紹介)(第一一七号)
五 戦傷病者に対する恩給増額の請願(福田昌
子君紹介)(第一一八号)
六 戦傷病者に対する恩給増額の請願(鈴木仙
八君外一名紹介)(第二二一号)
七 戦傷病者に対する恩給増額等の請願(菅家
喜六君紹介)(第三八六号)
八 皇居再建に関する請願(庄司一郎君紹介)
(第五六七号)
九 恩給法の一部改正に関する請願(松田鐵藏
君紹介)(第六七三号)
一〇 元軍人老齢者の恩給復活に関する請願(宇
野秀次郎君紹介)(第七七六号)
一一 戦傷病者に対する恩給増額の請願(青柳一
郎君紹介)(第七七七号)
一二 恩給法の一部改正に関する請願(鈴木義男
君紹介)(第八二五号)
一三 水産省設置に関する請願(圖司安正君外三
名紹介)(第八五四号)
一四 同(石原圓吉君外一名紹介)(第九〇一
号)
一五 皇居再建に関する請願(庄司一郎君紹介)
(第八八五号)
一六 警察予備隊による開拓地接収等反対に関す
る請願(田中啓一君紹介)(第八四五号)
一七 恩給法の一部改正に関する請願外八件(圓
谷光衞君紹介)(第九八二号)
日程追加
一 恩給法の一部改正に関する請願(江花靜君
紹介)(第一二七二号)
二 同(林好次君紹介)(第一二七三号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/0
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001・木村公平
○木村委員長 これより会議を開きます。
まず請願及び陳情書の日程の審査に入りますが、昨日付託並びに送付されましたる請願第一二七二号ないし第一二七四号、第一三三六号、第一三三八号第一四三七号及び第一四三八号、陳情書第七〇九号、第七一〇号ないし第七一二号及び第七二四号を日程に追加して審査をいたします。同請願につきまして、紹介議員の見えておらない分は文書表の朗読をいたさせるはずでありますが、審査の関係上、文書表の朗読は省略いたします。省略して審査を進めます。
日程第八、及び同一趣旨の第一五について、紹介説明を求めます。庄司一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/1
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002・庄司一郎
○庄司一郎君 ただいま一括上程され議案と相なりました請願は、一つは宮城県の婦人会、女性方面よりの請願、一つは明治大学の学生諸君の連署連名による請願でございまして、本請願の趣旨は、天皇陛下のお住いであられ、同時に新しい憲法の精神によつても、内閣総理大臣の勧告あるいは助言等によつて御認証等をいただく陛下の御政所等のあらるる、いわゆるわれわれの俗に申し上ぐる皇居でございまするが、戦争中に再三空襲のために戦災され、過般本国会の衆議院の予算委員会が予算委員会の総意によつて皇居の拝観を許していただき、法制的に言うならば国政調査のために国会議員、予算委員等がまかり出たのでございました。まことに皇居の中は荒廃その極に達しております。講和條約の成立と同時に、間もなく諸外国の重要なるところの外交上あるいは観光上、その他各国の代表、要人の方々がわが日本に来られ、同時に天皇陛下に謁見を申し込まれたり、あるいは陛下の方におかれても御陪食を賜わる等々の重要な事柄が今後発生すると思うのであります。すなわち戦争状態前の状態のようなものがここに再現されると思うのでございます。陛下におかれましては、ただいままことにみすぼらしい質素きわまるところの御住宅にお住いになられ、時折側近の方々には、戦災をこうむつて住宅が焼けた、その住宅の復興もいまだならざるうちに、御自分だけ住宅再建というようなことは、まかりならないという強い御反対の御意思の表現があるやに承つておりまするけれども、ただいま議題となつておりまするところの請願の趣旨は、国民の税金によらずして、あるいは一円あるいは二円というような零細な、しかもまことにうるわしい盛り上る浄金をもつて、あるいは向う三年あるいは向う五年、計画的に預貯金をして、やがて国民の大多数の諸君とともに、零細な、しかもうるわしいところの浄金をもつて皇居の再建をしてあげたいという、まことにうるわしい精神の発露の請願でございます。現に宮城県あるいは福島県その他の県において、皇居の再建のために荒廃その極に達したるところの復旧作業、作業奉仕、さような方面に勤労をささげられたるところの御婦人や青少年の諸君は、各町村においてそれぞれ発起人となられ、零細な浄金を集められておるのであります。そこには何らの無理がございません。東條内閣時代のようなフアッシヨ的な強制的な、そういうものはありません。ほんとうに盛り上るところの国民のあたたかい愛情の発露が一円、二円の預貯金となつておるのであります。よつて請願の趣旨は、かくして皇居の再建の、全額には及ばないとしても、その一端たりとも国民として陛下の皇居の再建のために御奉仕したいという、このとうとい精神の上において、政府も宮内庁もあるいは国会も、適当なる御指導と御誘えきのもとに、何とか所期の目的を達成させていただきたいという趣旨から、婦人会あるいは大学生諸君の請願がここに提出されました次第でございます。どうかよろしく御審議を賜わり、本内閣委員会においては満場一致の御賛成をちようだいすることはもちろんのこと、宮内庁当局におかれましても、お考えのあるところは忌憚なく御所感を御発表いただいて、本請願の趣旨だけは、これをおくみとりいただきたいということをお願い申し上げて、紹介議員の蕪辞にかえる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/2
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003・木村公平
○木村委員長 次に宮内庁の御所見を求めます。宇佐美宮内庁次長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/3
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004・宇佐美毅
○宇佐美政府委員 ただいま請願の趣につきまして、るる御説明をいただきました。拝聴いたしましても、まことに感激にたえないところでございます。しかしながら現在の状況につきましては、ただいまお言葉のうちにもございました通り、まだ條約も成立いたしませず、国民生活も容易ならず、また国家財政も容易でない時期でございまして、おそらく多額を要しまする皇居再建につきましては、今ただちに行うということにつきましては、しばらく時期を見るべきものであるというような考え方をいたしておるのでございます。しかしながら現在の状況は、お住いも宮殿もすべて烏有に帰しておりまして、講和條約成立後、各種の儀式、儀礼が行われますには、とうていこのままでは放置できませんので、とりあえずの措置は来年度の予算でお願いをいたしたいと考えておるのでございます。根本的な再建につきましては、今後ただいま申し上げました事情をよく勘案し、実際の状況の調査も進めまして、しかるべきときに実現をいたしたいと考えておるのでございます。国民の各方面に起りまする熱誠につきましては、まことに感激にたえず、いずれはおこたえする時期があるかと存じますが、現在のところはもう少し検討を加えて参りたい、かように考えておる次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/4
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005・木村公平
○木村委員長 次に日程第一、第一二、第一七及び追加日程中の第一二七二号は、同一趣旨の恩給法の一部改正に関する請願でありまするので、一括して議題といたし、政府の意見を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/5
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006・城谷千尋
○城谷説明員 ただいま議題となりましたところの請願は、昭和二十三年七月前に退職しました者と、その後に退職しました者との恩給額の間におきまして、著しい不均衡があるから、これを是正するような立法措置を講じてほしい、こういうような請願の趣旨であります。これにつきましては先国会におきましても、いろいろと論議されたことがあるのでございますが、御承知の通り恩給は、退職当時の俸給を基礎にして、その年額を算出しております。従いまして退職当時の俸給年額の多い者ほど恩給額も自然多くなるというかつこうになつておるわけであります。ところが御承知の通りこの俸給は、それぞれの退職の時期によりまして、でこぼこと申しますか、低いときもあり、高いときもあり、あるいは初任給が高かつたり安かつたり、あるいはまた在職中の昇給が早かつたりおそかつたり、いろいろなあやがございまして、必ずしも同一には参つておらないのであります。その後給与ペースのたびたびの変更あるいは給与法の改正というふうな問題がありまして、給与の組織が根本からかわつたというふうな状況になつております。従いまして退職の時期によりまして、俸給額に低いときもあり、高いときもあるということは、一面やむを得ないことだと私は考えておるのであります。ここにある請願の趣旨は、おそらくそういう場合の顕著な場合かとも考えますが、いずれにしましても俸給それ自体は、一応過去においては均衡のとれたものであるというふうにわれわれは考えておるのであります。その均衡のとれた俸給それ自体を今後恩給法で直してかかるということは非常に困難な問題が生じまして、これを改正することにつきましては、とくと検討しなけばならない問題である、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/6
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007・木村公平
○木村委員長 御質疑はありませんか。鈴木義男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/7
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008・鈴木義男
○鈴木(義)委員 この請願については、私も紹介者の一人になつておるのでありますが、貨幣価値の変動ということについては、政府としてどういうふうにお考えになつておられますか。昔ほど安かつたのは当然のことであります。それを今の貨幣でただ機械的に倍数を出して、それを与えろということは、不公平なことであります。貨幣価値の変動を合理的に計算して、基本給は動かさなくとも、恩給だけを動かすことはできるはずであります。その点について御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/8
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009・城谷千尋
○城谷説明員 今の御質問の点につきましては、俸給のベースアップに伴いまして、国会で御審議を願いまして、その前の俸給に対応しまして、現行法令の俸給に改めて、恩給額を算出しておるわけなのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/9
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010・木村公平
○木村委員長 他に御質疑ありませんか。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/10
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011・木村公平
○木村委員長 次に第九、追加日程一二七三号の恩給法の一部改正に関する請願を一括して審査いたします。政府の意見を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/11
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012・城谷千尋
○城谷説明員 この請願の趣旨は、樺太におりました特定郵便局長が、終戦とともに内地へ引揚げて来ておるわけでありますが、この者の恩給の基礎在職年を恩給法的に通算するようにしてほしい、こういう請願のように思うのであります。これにつきましては、先国会に御審議を願いまして、昭和二十五年の法律百八十五号としまして公布になつております。内地の特定郵便局長につきましては、現在その在職年を二分の一だけ公務員の在職年に通算いたしておるのであります。御承知の通りこの特定郵便局長は、制度上は文官になつておるのであります。ところがこれが俸給は国庫から給されませんで、従来は手当を給しておつたわけであります。そこで恩給法の扱いとしましては、これを準文官というふうにしまして、従来その準文官の者につきましては、それだけでは在職年を恩給法的に見ておらなかつたのであります。それで先国会で、従来特定郵便局長であつた準文官の在職年のものは、これが続いて公務員になつた場合には、その在職年の半分だけ見る、こういうふうな立法措置を講じていただいたのであります。ところが本件請願の場合におきましては、ちようど引揚者でありましたので、内地へ帰つて来て、すぐに一般の文官に就職し得なかつた、つまり郵便局長だけで終つた、こういう状況に相なつておるのであります。そこでその者は今度の改正法律の適用を受けることができなかつたと思うのであります。しからばこういうものを将来とも恩給法的にこの価値を見るかと申しますと、各方面に影響するところが大きなものでありますから、よほど慎重にこれを研究しなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/12
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013・木村公平
○木村委員長 次に日程第三、元陸軍教授に対する恩給復活の請願を議題といたし、政府の意見を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/13
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014・城谷千尋
○城谷説明員 ただいま議題になわましたのは、陸軍教授の在職年を恩給法的に見てほしい、こういう請願のように思うのであります。この点につきましては、御承知の通り昭和二十年十一月四日に連合軍の最高司令官から日本政府に発せられました覚書によりまして設けられました昭和二十一年の勅令六十八号で、この軍属の在職年には恩給を給しないということに相なつておるのであります。そこで本件請願者のように、陸軍教授であつた者につきましても、恩給を給することができなくなつたのであります。従いまして現在もこれに対しては恩給を給しておりません。しからばこういう者の恩給を将来どうするかということにつきましては、いろいろと御意見もあり、またわれわれとしても事務的にはいろいろと研究をいたしておるのでありますが、何分にもまだ成案を得ておらないのであります。目下いろいろと関係方面におきましても研究されておるようでありますが、政府部内におきましても、まだ何も結論を見ておりません。さよう御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/14
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015・木村公平
○木村委員長 次に第一六次の警察予備隊による開拓地接収等反対に関する請願を議題といたし、警察予備隊本部次長江口見登留君の御所見を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/15
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016・江口見登留
○江口政府委員 警察予備隊の発足が非常に急がれたために、その営舎を設けまする場合に、その付近に適当な射撃場とか訓練場とかがあるとかないとかいうことの調査がまだ完成しないうちに、既存の建物を利用して入りました関係上、訓練が進むにつれまして、そういう射撃場、訓練場の土地が必要になつて参つたのであります。しかしながら適地が付近にありませんために、開拓地その他に目をつけまして、土地所有者などと相談した結果、随時使わせていただいておるというような状態でありまして、今後ともそういう事態を多数予想せられるのであります。もちろん発足早々のことでありますので、各地元の営舎におきまして、それぞれ個別的に土地所有者、開拓者とも相談して使わせてもらつておりますが、農林省当局に対する交渉と申しますか、折衝が今日まだ行われておりませんでしたので、農林当局を通じまして、これらの開拓者と円満なる協議をした上で、できろだけいい耕地は使わない、不毛地とかいうようなものを使うことにいたしまして、開拓者に御迷惑をかけないように今後とも処置いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/16
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017・木村公平
○木村委員長 御質疑はありませんか——御質疑がなければ、本日の請願の審査はこの程度にいたし、その委員会の態度の決定は後日に譲りたいと考えます。なお残余の請願の審査も後日に譲ります。
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018・木村公平
○木村委員長 次に外務省設置法案を議題といたし、質疑の後討論採決を行いたいと存じます。質疑の通告がありますから、これを許します。加藤充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/18
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019・加藤充
○加藤(充)委員 私は一点お伺いしたいのですが、それは第二十四條の問題であります。問題のまず目に浮かぶのは、いわゆる朝鮮と呼ばれている地域並びにその公館の問題であり、もう一つの問題は、中国と呼ばれている地域並びにその公館の問題であります。御承知のようにいろいろいきさつはございますけれども、朝鮮の停戦会談というようなものの結果によりましては、朝鮮の問題に大きな変化が予想されると同時に、ただいまの台湾海峡を中心にいたして、いわゆる中国の海域に派遣されておりまする米国の派遣海軍の撤退の問題も出て参りまして、そのことは同時に、さつき申し上げましたいわゆる中国の問題に大きな影響を持つて来る問題だと私は考えます。しかもなお民族自決の原理に基くものであり、民族の統一というものは、他国他民族の容喙、干渉すべからざるものであります。そういう点でいわゆる韓国の李承晩政府を承認し、これと外交的な折衝をやる、並びにその在外事務所、在外公館というようなものの設置、増設あるいはまた一面中華人民共和国とそれから台湾の蒋介石政府、こういうようなものとの外交折衝というようなものは、日本の将来の問題と関連いたしまして、同時に外交の方針と関連して、重大な意味を持つものである。軽々に短期間にこれを決定することはならないと思うのでありまして、そういうふな意味合いをもちまして、在外公館の設置並びにその増設というような問題、並びにその格付の問題等については重要なものがあると私は信じます。なおいろいろな制約のもとにおきまして、附則の3に書かれておる在外公館の問題と、在外事務所の問題との将来のことを考えればいろいろなところでずれがあり、問題を介在しておると思うのであります。そういう意味合いにおいて法律で定めるという二十四條の原則のほかに、臨機応変に、あるいは国会の閉会中には、政令で今申し上げましたような諸点が一般的に授権されてきめ得るような規定を持つということは、運営いかんによつては非常な問題を惹起いたしますし、しかもまた従来の政令というような扱い方自体の実績にかんがみまして、われわれはこの授権というものに多くの危惧を持たざるを得ないのであります。以上のような点について、第二十四條の事柄をお尋ねいたしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/19
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020・島津久大
○島津政府委員 在外公館の設置につきまして、第二十四條に原則として法律で定める建前が揚げてあるわけであります。在外公館の設置につきましては、一方的にきめることはもちろんできないのでございまして、相手国と十分の話合いがあつた上で設置の合意に達して、その後に初めてできろわけです。もちろんこの法律でできる限り設置いたすことになるわけであります。ここに例外といたしまして、「特別の必要がある場合」と書いてありますのは、国会の閉会の期間が相当長きに及びまして、その間実際上相手国との間に話が進みまして国交が正式に開かれる、これに伴いまして正式の諸種の條約が締結されるという段階になりまして、なおかつ公館の設置が遅れるというような場合がありましては困りますので、そのために例外が設けてあるわけでございます。あくまで本則の法律で定めるという建前は堅持して行く考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/20
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021・加藤充
○加藤(充)委員 これは卑俗な記事並びにその記事に盛られた意見を引用してどうかと思うのでありますが、先般対日理事会の英連邦代表だつたW・マクマホン・ボール氏の、日本の雑誌に寄せられた記事を見ますと、アジア、とりわけ東アジアにおける最近の民族運動の動向並びにその性格について論じておるのであります。第一に、それらの民族運動のうちの勢力といいますか、性格といいますか、そういうものについては、この民族の革命運動は外国の政治的支配に対する植民地政策と帝国主義に対する反抗であり、民族自決と完全な民族独立の要求である。この反抗は主として西欧の植民地列強に向けられている。第二に、この革命は自己の貧窮を敏感に自覚し、貧富のはなはだしい懸隔に対する反感を高めた民衆による社会的、経済的反抗である。第三に、この革命は、ほかに適当な言葉がないが、一つの人種的反抗である。すなわち西洋に対する東洋の反抗——アジアの運命はアジア人の手で決定さるべきであり、東洋に新しい諸国民が生れることは、それ自体が目的であつて、西洋の目的に使われる手段ではないという決意を意味するものであるというような、要約された記事を私は読んだのであります。これらの問題は日本がアジアの一環として、日本民族がアジア民族の一環として、しかも敗戦の結果今日日本民族が置かれている立場、同時にその中にわき起つて来る自覚、民族的な将来の運命というものは、W・マクホン・ボール氏が、対日理事会の英連邦代表として日本におられた間の、そうしてその学者としてアジア民族問題を研究された結果の御意見は、われわれが民族として、日本人として大いに考えてみなければならないところがあると私はかたく信ずるものであります。二十四條の政令に授権されましたこの運営というものによつて、いわゆるアジアの孤児になるような道にみずから急いでさまよい出るようなことになつては、私はたいへんだと思いますので、原則を守るという御答弁でありましたけれども、私は政令というようなものに授権すべきでないという立場と意見をここに強く持つものであります。原則を守るという運営の御意見を聞かされましたので、これ以上私の質問は続けないことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/21
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022・木村公平
○木村委員長 他に御質疑はありませんか——他に質疑がなければ質疑はこれにて終局いたしました。
これより討論を行います。青木正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/22
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023・青木正
○青木(正)委員 私は自由党を代表いたしまして、政府原案に賛成の意見を簡単に申し述べたいと思います。
申し上げるまでもなく、わが国は今まで連合軍の占領下にありましたので、外交自主権がなかつたのであります。従いまして外務省はいわば連合国との連絡機関というにすぎなかつたのでありますから、今までの機構は本来の外交を担当するのにあまりにも小さ過ぎると申しますか、機構が適当でなかつたのでございます。そこで近く日本の独立も予想されまして、やがて日本の外交自主権が回復するのでありますから、これに照応しますように、わが外務省の機構をこの際元来の姿に復帰せしめ、そうして目前に迫つた独立に備えるということは、まことに当然のことと思うのであります。しかも今回の改組と申しますか、廃止して新しくつくりまする設置法の内容を拝見いたしますと、今までありました外務省と異なりまして、その内容もまことにすつきりした形になつておりますので、この際こういう姿にかえるごとにむしろ私どもは積極的に進んで賛成をいたしまして、一日も早く独立を迎え、そうして独立を迎えたあとの日本の外交を活発に活動できるようにすべきである、かような見地から原案に対しまして賛成をいたすものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/23
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024・木村公平
○木村委員長 次に千葉三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/24
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025・千葉三郎
○千葉委員 国民民主党を代表いたしまして、二、三の希望條件を付して原案に賛成したいと思います。
すなわちこの法案は完全なものではございません。われわれから見るならばこの際修正をいたしたいのでありまするが、時間も許しませんので、他日政府におきましてしかるべく御処置を願いたいと思います。と申しますのは第一に海外の渡航、移住、旅券の発給及び査証に関することが欧米局のみの所管とされておることは不合理でありまして、これはむしろ大臣官房に置くか、あるいは大臣官房その他で総括的に行うことが適当ではないか。また第二にこの法案の第十二條の二号、三号四号のごときは占領治下にある間必要な規定でありまするから、むしろこれは附則に移した方が適当ではないか。また第三に国際協力局という名称はどうも不適である。こういうような点につきまして政府で十分お考え願いまして、適当な機会に御修正を願いたい、こういう希望をつけまして原案に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/25
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026・木村公平
○木村委員長 鈴木義男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/26
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027・鈴木義男
○鈴木(義)委員 私は日本社会党を代表いたしまして本案に賛成をいたします。但し、国民民主党と同じように一、二の留保的希望を申し上げておきたいのであります。
これは平和條約ができますると、いらなくなるようなものも多々入つておりまして、できるならば、立法の体裁としてそういう暫定的なものは別に規定せられることが望ましかつたように思われるのであります。いずれ平和條約発効とともに再検討する必要があると私どもは存じております。
それから第二には、各省の行政機構全般の改革とにらみ合せて、なおいま一応検討する必要が将来生ずるであろうということを考えておるのであります。そのときに再検討することを留保いたしまして、ここに賛成の意を表しておく次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/27
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028・木村公平
○木村委員長 次は加藤充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/28
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029・加藤充
○加藤(充)委員 日本共産党は本法案に対して反対であります。
本法案は、「平和條約の調印に伴い」というのが提案の理由の根本であり、そして外務省設置法案の説明書によりますれば、外務省の任務、権限等の規定は、」中略いたしまして「従前どおりであります。」そして今右に中略いたした部分を埋める文字は「多少の技術的な修正を除いては」という文字で埋められておるのであります。そしてこの建前から国際協力筒と情報文化局の三局が新たに増局されたのであります。共産党は次の理由で反対を申し上げたいと思います。こまかな点についての問題点は、質疑のうちに一応明らかにされたと思いますので、そういう点については省略さしていただきます。
日本はその憲法において、ただ、戦争と武力による威嚇または武力の行使はせぬと宣言しただけではなく、その宣言を履行するために、陸海空軍その他の戦力は一切保持せず、国の交戦権を認めないと規定しておるのであります。だから戦力である迫撃砲やロケット兵器を持つような警察予備隊や国警、海上保安隊を持つこと、及び軍事協定により日本が提供するものが、軍事力であろうと、軍事基地その他の方法であろうと、他国と共同防衛の協定を結ぶがごときは明らかに憲法違反であります。このことは自衛権だというようなごまかしは断じて許されないのであります。と申しますのは、近年の戦争が多くは国家防衛権の名において行われたことは顕著なる事実であります。ゆえに正当防衛権を認めることがたまたま戦争を誘発するゆえんであると思うのでありますと答弁したのは先般の吉田首相であつたのであります。また自衛上とは申しながら、他国の軍事力を借りて守るというのでありまして、これは自衛権というその自衛という言葉自体に矛盾をいたします。また経済的に申しましても、工業の発達した日本はアジアの原料に頼らなければ生きて行けない。日本はアジア経済の一環であり、ことに中国市場というものがいかに重要な意義を持つものであるかということは、中国市場との関係を断てば、日本の経済はその存立が危うくなるものであるということによつても明瞭な事実であります。先般北京の人民日報が報ずるところによれば、対日単独講和と日本の再軍備は、日本が中ソ両国に対して戦争状態を続けることを意味し、日本は中ソ両国と敵対することを意味する、これは日本人民にとつて極度に不利な危険なことである、というのであります。だれが何と申しましても、ソ同盟と中華人民共和国と米、英、仏とは、並んで世界の五大国であつて、中国、ソ同盟などを除いて、世界の平和的な発展、と同時に日本の平和的な発展を期待することはできないというのが現状だと思います。しかも世界の民主的平和的勢力が——先般もラウ国連代表がパリで演説されたと報道されておりまするが、四大国のこの不戦條約、平和條約によつてのみ日本の安全というものが保障されるのでありまして、こういうような安全保障の力と結びつくというところに日本の将来の外交の方針がなければならないと信じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/29
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030・木村公平
○木村委員長 加藤君、結論を早くお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/30
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031・加藤充
○加藤(充)委員 同時に、ノーモア広島、長崎という言葉は、リメンバー・パール・ハーバーのあのアメリカのスローガンだつたものと同じで、原爆を初めてまかれた日本民族、あるいは日本国民の忘れることのできない、そうして高く揚げ続けなければならない旗じるしであると信ずるのであります。しかるに吉田氏は、首相として外相として、これに反するようなこの條約に調印して参つたのであります。外務省は、かかる国を危うくし、戦争に近づくような方針をとり、またその案行に当つて来たものであるということは、過去の実績に徴して明らかな通りであります。こうして平和條約の調印に伴つて国際協力局を新設して、大いにますますがんばろうとしておるのでありますが、外交にわざわざ国際協力局というような局を設けるというその魂胆というものは、二つの世界、すなわち米ソ二大陣営の一方に加担し、これとは協力するが他方を敵視しているという立場が、問うに落ちず語るに落ちて、国際協力局という部局に現われたものだと私は指摘せざるを得ない。そしてさらに情報文化局を設けて、新聞、通信、放送、その他の方法によつて対外政策及び国際情勢の対内報道、対外政策及び国内情勢の対外報道並びに今日必要な情報収集をやり、各国との文化交流及び国際文化機関との協力に関することをやろうというのでありますが、ここで各国ということが書かれておりまするけれども、限られた一方だけの各国であることは経験、実績上明らかなことであります。これはたいへん危険なことであります。そしてこの一方の自由の国、国際連合といわず国際協力というようなことで、一例を申し上げまするならば、スペインのフランコ、アルゼンチンのペロンというようなフアシストと同盟して、反共が自由というのだと放送するのでありましよう。また公然奴隷の売買を許されておるようなサウジ・アラビアというような国も、反共だから自由だというので提携をするのでございましよう。こういうようなやり方によるこういう国々との集団保障をやる。そして先ほどマクマホン・ガール氏の記事を引用いたしましたように、外国の帝国主義によつて植民地奴隷にされて憤激し、独立を求めているアジアの諸国民、諸民族に対して、資本主義が自由の世界だとしてどなり立てて、アジアの孤児になる道を選ぶのであるということを、私どもは明らかにこの外務省設置法案の中に見受けることができるのであります。私は大体反共とか自衛という看板で、戦争をやらされた過去の経験を忘れることはできないのであります。しかもなお條約により強大な軍事力と資本を持つて駐留する国の影響というものが、政治上経済上に大きな支配をもたらすものであることは事実に徴しても実績に徴しても明かなのであります。国の独立がないところに、いくら大きな外務省をつくり、あるいはいくらりつぱな方針を掲げたところで、それはまつたくのポンチ絵でしかないのであります。こういうような外務省の設置で、あたかも独立権があるかのごとく粉飾をするに至つては、私はそのずるさとそのインチキをここに強く指摘しなければならないと思うのであります。
以上の諸点が日本共産党の当法案反対の理由であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/31
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032・木村公平
○木村委員長 これにて討論は終局いたしました。採決を行います。外務省設置法案について御賛成の方の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/32
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033・木村公平
○木村委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
なお本案についての委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/33
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034・松岡駒吉
○松岡委員 ちよつと申し上げます。このことを騒々しく言うのではありませんが、過ぐる本会議の席における委員長の報告は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/34
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035・木村公平
○木村委員長 ちよつとお待ちください。これをやりますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/35
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036・松岡駒吉
○松岡委員 それに関連しているのです。委員長の報告はあまりにもふざけた報告で、必要以上に、むしろ議場の空気を悪化せしむることに興味を感じての報告ではないかと感ずるほどのはなはだ適当ならざる報告であつたことだけは、何人も認めていると信ずるのであります。従つて理事がみな目を通してとまでは言いませんが、今後の報告は十分にその点御注意をいただきまして、いたずらに必要以上に刺戟することのないように、私としてはこの希望を率直に申し上げます。(「同感」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/36
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037・木村公平
○木村委員長 委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任を願つたものとし、さよう決定いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/37
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038・木村公平
○木村委員長 御異議なければさようとりはからいます。
本日はこの程度にいたし、次会は公報をもつてお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時五十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204889X01419511116/38
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