1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月十七日(土曜日)
午前十時四十五分開議
出席委員
委員長 千賀 康治君
理事 河野 謙三君 理事 野原 正勝君
理事 松浦 東介君 理事 小林 運美君
宇野秀次郎君 遠藤 三郎君
小笠原八十美君 小淵 光平君
川西 清君 中馬 辰猪君
幡谷仙次郎君 原田 雪松君
平野 三郎君 八木 一郎君
大森 玉木君 吉川 久衛君
坂口 主税君 足鹿 覺君
石井 繁丸君 井上 良二君
竹村奈良一君 横田甚太郎君
出席国務大臣
農 林 大 臣 根本龍太郎君
出席政府委員
農林事務官
(蚕糸局長) 青柳 確郎君
食糧庁長官 安孫子藤吉君
委員外の出席者
専 門 員 難波 理平君
専 門 員 岩隈 博君
専 門 員 藤井 信君
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十一月十七日
委員石井繁丸君辞任につき、その補欠として井
上良二君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
繭糸価格安定法案(内閣提出第三一号)
食糧問題に関する件
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001・千賀康治
○千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。
繭糸価格安定法案を議題といたします。本案につきましては昨日をもちまして質疑を終局いたしましたので、これより討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。八木一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/1
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002・八木一郎
○八木委員 ただいま上程されました繭糸価格安定法案に対しまして、私は自由党を代表して本案に賛成するものであります。
本法律案を提案いたしました根本の趣旨については、何人も反対していないことは内外世論の熾烈な要望があり、わが衆議院におきましても院議をもつて第五国会においてすでに決議いたしまして以来今日まで推移いたして参つた事実が、これを証明しております。また国際絹業大会におきましても、この会議に関連した諸般の会合が一九四八年にはスイスに、またフランスに一九四九にはイタリアに、また一九五〇年にはアメリカに、本一九五一年にはイギリスでと、国際的な世論は年ごともに高まりまして、昨年ニューヨークで開かれた第二回国際絹業会議では、公式に日本は糸価安定制度を実施すべきだという決議が行われ、一方国内では全国農民大衆の請願決議運動が活発になりまして、オール蚕糸界の支持する熱望となつて今日に及んでおりますことは、何よりも雄弁に本法提案の根本趣旨に合致すべきものであることを見まして、われわれは本案に賛成をいたし、すみやかにその成立を期待するゆえんであります。
本法の三大目的と申しますのは、一には、繭価格及び生糸価格の異常なる暴騰、暴落の防止。二には、これによつて蚕糸業経営を安定し、蚕糸の生産増強についていそしみつつある国民の生活安定にも資して参りたい。三には、結果として生糸の輸出を増進して国家目的に合致させる、こういうところにあると思いまして、私は十分この目的が達せられるものであると確信するのであります。反対論者は、本目的達成の手段において消極的な異議を唱えておるかのように見受けられます、生糸の買入れはだめだというような御所論でありますけれども、直接繭を買入れるごこと、生糸の買入れによつて繭の価格を安定することを静かに、慎重に検討を加えてみるならば、これは養蚕農民の犠牲とか、繭の価格の不当な圧迫とかいうことは、杞憂にすぎないものであるということが明白になると思います。このくらい法案の精神を曲解し、認識不足の見解に立つていろいろと述べられることについては、私は簡単にその事由を述べざるを得ないのであります。
なぜならば現在の需給事情は、需要に対しまして供給は半分とも言うべく、需給のアンバランスの現実の状態が続いております。いわば繭は売手市場の形に置かれておるのであります。しかしそれでも万一生糸の買入れだけでは、繭の価格の維持をはかることが困難な事態があつた場合を考慮いたしまして、政府においては「必要な措置を行うものとする。」という明文を法十條に掲げて、行政上、指導上の全責任を政府に義務づけ、政府の農民に対するあたたかい親心を明らかに規定しているのであります。
次に問題にしております点は、繭の生産費を保障することに関してでございまするが、自由経済を本旨といたしまして、創意とくふうと競争の妙味を生かす自由主義を採用いたしておりますが、野放しの自由ではないという建前に立つて最低価格を指示する価格政策をとつたというのであります。生産の合理化によつて廉価生産された場合の生産費は保障し得るという政府の言明もあつたのであります。以上の事由によりまして、われわれは限りある財政の三十億円のわく内で、この費用のかさむ繭の直接買入れよりも生糸の買入という手段が本目的を達成する唯一、最上適切なものであるという確信に立うてこれに賛成するものであります。
次に消極的ではあるが、反対的な意見となつた問題点は、価格の安定を目的としているのにかかわらず、本法案では高値を押えることが困難であるという点であります。われわれは思惑や買いあふり、投機のような暴利取締り的な措置は、現在有効に施行されておりますところの物価統制令にゆだねられてしかるべきだという見解でありまして、単なる法律命令で自由取引商品の繭、生糸のごとき商品に対し禁止條項的なものをきめて、総動員法的感覚で強力に発動をするというような、一方的な権力を政府に与えるという立法に対しましては、これはとらざるところであるのであります。従つて他にこの企業に対しては適切な方法を考慮すべきものだと信じておりますので、あえて売渡し操作以外の方法については、立法によらずしばらく情勢の推移を見守つていることにいたしたいと思つているのであります。
以上のほか本法案審議の過程におきまして問題となつた予算措置について、政府は本法による価格安定政策に並行いたしまして、画期的に蚕糸業の振興をはかり、今後一層必要なる予算的措置を考慮するとの言明を得たのであります。以上述べました観点からわれわれは自由党といたしまして、ただいま提案ざれた繭糸価格安定法案に対して絶対賛成を表する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/2
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003・千賀康治
○千賀委員長 次は小林運美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/3
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004・小林運美
○小林(運)委員 私は民主党を代表いたしまして、本法案につきまして以下二、三の理由を申し上げまして討論を行わんとするものであります。
現在政府が行つております施策を検討いたしますと、今回の国会においても非常な論議となりました米の統制撤廃の問題は、世論の前に吉田内閣、与党自由党はこれに屈服いたさざるを得なかつた大きな政治問題として、われわれはこれを見のがすわけには参りません。こういう時勢にありまして本法案が国会に提案されたことは実に奇異の目をもつて見られるのであります。と申しますのは、政府は何でもかんでも統制を撤廃してむちやくちやな経済政策をやつている。ところがこの蚕糸業の問題については、世界各国はもちろん、わが国内におきましてもこの産業の重要なるを認めまして、ただ手放しの自由経済ということではやつて行けないということがわかりまして、本法案が提案されたものとわれわれは信ずるものであります。根本農林大臣のもとにおきまして、この法案が提案されたことは、私はむべなるかなと感ぜざるを得ない。個人的にわたりますが、根本農林大臣はわれわれと同じように修正資本主義を信奉し、計画経済を行うというような政治的な感覚をもつて国会に出て参りました。現在自由党に籍を置くといえども、その根本理念はやはりかえていないということは私は見のがすわけには行かないと思う。この法案につきまして内容を検討いたしますならば、さような面が多々あるのであります。すなわち農産物の価格を支持して行こう、またかような情勢にあつてある種の統制を行おうとする、これが本法の至大な眼目であるのでございます。かような観点からいたしまして、今回の繭糸価の安定法案は、われわれの計画経済をここに現実の問題として現わしたものと私は信ずるのであります。従いまして本法案の精神にはわれわれは満腔の賛意を表するものでありますが、内容に至りましては多々われわれが希望するところがあるのであります。すなわち当初におきまして、糸価を安定するならば繭価も安定するだろうというようないいかげんな考えを是正いたしまして、経済の逼迫いたしておりますわが国の内情からいたしまして、今回三十億という金を支出いたしまして、この法律の目的を達成するために使つておるのでございます。この意味は決して資本家の擁護でもない、製糸家や、輸出業者や、そういつた特別な業界のためにやるのではなくて、養蚕大衆のためにするというのが本法の精神でなければならぬと私は考えるのであります。さような意味におきまして本法律案におきまして繭価の安定をどうしてもやらなければならないということは、数日来の本委員会におきまする各員の非常に強い要望でございました。これが第十條におきまして、繭価の異常なる低落を来したときには特別なる措置を講ずるというようなあまい、実に漠然としたる法案でございましたが、先般私が農林大臣にこの件に関しまして特に質疑をいたしましたところ、根本農林大臣からは、現在の予算の範囲内においては、繭の買入れというようなことは非常に困難である。しかし本法は恒久法である建前からいたしまして、将来かような問題が解決され、すなわち予算措置が講じられるならば、またその他繭の買入れ等につきましての具体的な方策が得られるならば、この法律において繭も買い入れることが可能である。またそうして行きたいというはつきりした言明がありましたので、この問題につきましては私はぜひさようなことを実行してもらいたいという一つの大きな條件をここに付したいと考えるのであります。
次に繭糸価の安定と称しておりますが、この法案によりますと生糸の買入れ、すなわち下値によつて買入れ、上値によつて売り出す、この範囲もこの法律では明確にされておりませんが、われわれが考える一応の線におきましても、三十億の金では異常な繭糸価の騰落に対しては、この程度では全然防止ができないということが考えられます。従いましてかような異常の際にはやはり特別な措置を講ずることが私は必要であると思う。従いまして下値に対してはただいま申し上げましたような繭の買入れというようなことによつてこれを防止し、また上値に対しましては、ただいま八木委員から御意見がありましたけれども、私はかようなことはそう軽々に論ずべきものでない。過去の蚕糸業の実例を見ましても、繭糸価の暴騰、暴落というものは、われわれが想像する以上に大幅なものでございまして、かかる三十億程度の生糸の買入れや売渡しでこれを防止できないということは、もうだれにも考えられるのであります。昨日の参考人を招致しましての各界の見通し等におきましても、この法律だけでもつて蚕糸業の安定を期するということを望むなら、これは少し甘きに失するというような御意見もあつたのであります。かような意味におきまして、真に蚕糸業の安定をはかるならば、やはり上値というものもある程度押えて行かなければいかぬというのがわれわれの考えであります。この具体的の措置としまして、ここに上値に対する禁止令というようなものも一応考えられたのでありますが、これも現在の状況からいたしましては、あるいは多少の無理を伴うかもしれませんが、本法の精神はやはりどこまでも繭糸価の安定をはかるという点においては、かような條項は絶対的な必要な條項ではないかと考えるのであります。かような見解からいたしまして、上値に対しましても、政府は真剣にこれを考えて、適正な処置を講ずべきであると私は考えるものであります。
次に第三点といたしまして、この法律に付随いたしまして、糸価の安定のための特別会計の法律案が、現在国会に提出されております。この特別会計の内容からいたしましても、三十億円では、これはなかなかたいへんでございますが、特に現在蚕糸業の実態からいたしまして、ただちに生糸を買入れて、下値を維持するというような状態は、今のところ考えられないような状態でありますが、これからも蚕糸業の過去の経験からいたしまして、いついかなる状態が起るかもしれません。従いまして近い将来に下値で生糸を買入れ、またときに生糸が上りまして上値で売出すというような際に、ここに繭糸価安定のための特別会計から相当の利益金が生ずることはわかり切つたことでありまするが、これに対してただ積立金をして余つたならば一般会計に繰入れるというようなことでなくて、私は昨日も本委員会において大蔵当局に特に要望をいたしておきましたように、かような剰余金が出ますならば、今まで蚕糸業の改良発達のための国庫の支出というものが非常に少かつた。こういうような観点からいたしまして、この特別会計による剰余金というものが、ただちに蚕糸業の改良発達のために各般の施策を講じまして、各方面にこの資金を運用いたしまして、蚕糸業の改良発展の資に供したい、かような意見を持つておるものでありますので、この点につきましても、特に要望をいたしておきたいと考えるものであります。
以上私の申し上げました繭価の低落に対する養蚕業者に対するしわ寄せ、かような事態が起りましたならば、政府はただちに予算的措置を講じまして、繭の買入れを行う、次に先ほど申しましたように、上値に対する禁止的な措置を講ずる、また第三点といたしましては、特別会計の剰余金は蚕糸業の改良発達のためにひもつきとして業界にこれを支出するというような、三つの強力なる條件を付しまして、私は本法案に賛成をするものであります。
以上をもつて私の討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/4
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005・千賀康治
○千賀委員長 石井繁丸君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/5
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006・石井繁丸
○石井委員 日本社会党を代表して本法案に賛成の意見を申し上げます。
本法案については自由党も民主党も賛成をいたしておるのであります。本法案の構想が妥当であるということにつきましては、ほとんど異論がなかろうかと思うのであります。社会党として日本の今後の蚕糸問題を考えると、現在ある意味におきましては売手市場という傾向が現われておりますが、将来においては相当に買手市場になるような場面が展開するのではなかろうかと考えております。農産物の増産ということにつきまして農林当局もいろいろと施策を講じたようであります。たとえば主穀について千二百万石増産するとか、何とかいろいろ申しますが、ほとんどから念仏に終りまして、実際の効果は収められておらないのであります。しかし戦時中異常に生産が減少しているところの繭、生糸につきましては、農林省のこの蚕糸五箇年計画が実際上達成せらるることを私たちは予見をいたして疑わないのであります。大体農村における換金作物としまして、非常に繭は短期間において現金収入が得られる。かつまた年間には三回あるいは四回にわたつて収益が得られるというようなことでありまして、この点からいたしましても、農産物主穀等のやみのできなくなつたあと、現金収入を必要とする農民が養蚕に努力をしてつくるであろうということは、明らかに見られるわけであります。そこで現在のごとき大体系の価格、あるいは繭の価格が維持せられるときにおきましては、この農林省の五箇年計画は、予想を上まわつて繭の増産がされるであろうということは、われわれつとに農村の養蚕農家に接している者は明らかに看取できるわけです。私は大体繭の価格が千三百円から四百円台が維持された場合においては、この五箇年計画、三十年台において三千二、三百万貫を越え、四千万貫台になり、桑園も二十五万町歩を上まわつて二十七、八万町歩には行くのではないかと考えているわけであります。そこでこういうふうに農民に対しまして養蚕奨励をいたし、また桑園増殖等をいたさせまして、いろいろと犠牲を払わせたときにおいて、これがかえつて売手市場より買手市場に転換するということになり、製糸業者の思惑等によつて非常に繭価の大暴落を来すことになりますと、農民指導の立場にあるわれわれとしまして、まことに農村に対しましても申訳ないし、日本の養蚕業に対して非常に恐るべき悪影響を来すであろうということを心から考えているものであります。こういう大局的なる見地に立ちまして、われわれとしましては第五国会以来、いかにして国際市場にデヴューをいたしたるところの生糸を安定させて、養蚕農家の収入を確保させるかということにつきまして、努力を払つて参つたのでありまするが、幸いに今回この法案が上程をせられまして、多数をもつて委員会も通過するという段取りになつたことにつきましては、養蚕農民こともに心から喜びを禁じ得ないわけであります。そこで私農林大臣にも十分その点についての努力を要望しておいたのでありまするが、とにかく繭が増産される、そうして農民のこの増産されたる繭による現金収入を確保するごとによつて生活を向上する、こういうことに非常に大きな期待をかけておる。しかしながら相当数の増産がはかられた後においては、市場が売手市場より買手市場にかわつて来るというような形になつたときにおきまして、非常に不利な立場になるのであります。幸いに海外の競争相手であるところの中国等が、現在生糸の輸出がほとんどとまつており、日本において国際的には独占市場を支配しておる、こういう状態のときにおいて、農民の要求を大体満足し得るところの繭価、こういう條件のもとにおいて海外販路の拡張並びにこの安定に努力をしてもらわなければいかぬ。その点につきましては、アメリカあるいはフランスの大公使館等においては、その方面のエキスパートを大公使館の要員として派遣をいたして、常にそのために努力をして、そうして日本の生糸といろものを、国際的の絹糸布の需要者あるいは製造業者と結びつきまして、確固不動なる立場にしてもらわなければいかぬではないかという点を申したのであります。農松大臣もまた蚕糸局長も、その点については大蔵省、外務省等と連繋をとつて、大体の方針もきまつており、なお一層の努力をするという意見が述べられましたが、われわれはその点今後の努力を大きく期待をしてやまないものであります。つまり現在独占市場であり、中国等がいろいろな国際関係で生糸の輸出ができないようになつたこの状態に甘んじて、そうして目を国際大局に注がないでかつてな議論をいたしておつたのではだめだ。将来においては生糸の市場に中国あるいはブラジル等が出て来るかもしれない、こういうことを考えて、そうして日本の現在の優位なる地位を活用いたして、海外においての安定市場を確保するために努力してもらいたい。そういうふうにして最後の結論として年間一億二、三千万ドルくらいの輸入代金を獲得するようにはからなければいかぬという点を申し述べたのであります。この点各党とも全部賛成をしてくださるはずである。われわれはこういう見地をもつて、この期待に沿うためには、かような国際絹業会議等の要望いたしておる糸価の安定ということが絶対に必要である、こういうふうに考える。
そこで養蚕農家の立場としまして一言申し上げたいのは、下値をどうするかということである。農民の立場からは、繭の再生産費を償うということにつきまして、この法案はその点が保証されないではないかという意見が一番強い反対意見の立場であろうと思うのであります。蚕糸局長も今回の三十億円、二万俵、一俵十四万五千円というのは別段深い根拠のあるものではない、最低価格は繭糸価格安定審議会において最終決定を見るのであるが、一応の考えといたしては、大体基準農家の生産費を償うものをもつて最低価格にしたという腹案を申されております。われわれは今後この審議会に養蚕農家を多量に参加せしめて、そうしてこれらについての正しい主張を貫徹するように努力をいたしますれば、この点はまた確保できるのではないか、こういうふに考えるわけであります。つまりこの点について今後養蚕農家に重点を置いて審議会等が運営されることを希望してやまない次第であります。こういうふうな点を考慮に入れて最高価格を案ずるときにおきまして、一部思惑業者の操作によつて八万円から三十万ぐらいの大きな変動があるというようなことにつきましては、いろいろとけんけんごうごうたる非難があるのでありますが、昨日の参考人の意見等においても、製糸業者方面においても、繭の下値の不安定が非常に自分たちの事業を脅かし、健全なる金融等が得らないということに最近は着目をされまして、糸価の安定ということにつきまして、値幅を狭い範囲において安定をさしてもらいたい、みなこういう要望を出されておる。これを見まして、今後かような心構えを製糸業者が持ち、また政府が最悪の場合においては物統令を発動するということになりますれば、一部思惑業者の操作によりまして日本の養蚕業全体、蚕糸業合体が国際的不信を買うようなことはなかろうと考えるのでありますが、しかしこの点については、一部思惑業者の行動等による不当な値上り等については、適切なる措置を講じてもらいたいと考えるわけであります。ただいま小林委員が申しました通り、この法案は、日本の国際的商品である生糸を、いかに国際市場に確保するかという点を構想として持ち、いわゆる単純なる自由経済を脱却いたし、そうして計画的に国際関係とにらみ合せて合理的な把握をいたすというわれわれの多年の構想を盛り込まれた法案でありまして、一言にして言いますれば、自由党がこの法案に賛成することは非常に大きな進歩を見たというふうな賛辞を惜しまない法案であります。
〔委員長退席、松浦委員長代理着席〕
希望いたしますれば、なお若干の希望点はありますが、それらは今後の運営によつて善処されたいということを最後に申し上げまして、私の賛成討論を終りたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/6
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007・松浦東介
○松浦委員長代理 竹村君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/7
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008・竹村奈良一
○竹村委員 私は共産党を代表いたしまして、本法案に反対するものであります。
その理由を二、三申し上げたいと思うのでありますが、まず第一に繭糸価格安定法案と銘打たれた以上は、少くともその法律の精神がほんとうに繭糸価格を安定するという前提と内容を具備しなければならないと私は思うのでございます。しかしながら遺憾ながらその点がはつきりしていない。というのは先般来の政府に対するいろいろの質疑、あるいはまた参考人等の意見を聞きましたならば、まず第一にわれわれは、第五国会等において決議された意見においてこれが生れたと言われておりますけれども、しかし今日に至つて生れたこの法案の内容というものが、それとはおおよそ本質を異にしている提案の趣旨がはつきりくみとれるわけであります。その第一の理由といたしましては、まずこの法案の生れました直接的な原因は、海外におけるところの絹業会議の勧告が第一の原因をなしておる。つまり糸価を安定するために日本の政府において、少くと毛糸価安定の立法を希望するという勧告に基いている。従つてまずこの蚕糸価格安定法という法案が出されておりますけれども、もしその内容がほんとうにそのものであるとするならば、養蚕家の繭の価格の安定を第一にはからなければならぬ。少くとも養蚕家なくして蚕糸業はあり得ない。従つてまず養蚕家に対する繭の価格の安定——養蚕家は決して騰貴を好むものではありません。養蚕家は桑園を有し、そうして蚕を飼い、繭を売る。その価格というもの、は時の経済的な実情に応じたところの生産費、しかも今日の経済的な状態によつて拡大再生産に向うところの生産費が保障されるならば、特に暴利をむさぼろうと考えている養蚕家は、日本農民においては一人もないのであります。しかもまず蚕糸価格安定法が実質的な内容を備えようとするのであつたならば、養蚕家の再生産を償うところの繭価の安定を第一義として、これに基いて蚕糸業に対しましては、これの一切の生産費等が確保され、確定されて、しかもはつきり断定されて、まずこれらをもつて最低線とし、最低価格としてそれから出発しなければ、日本の養蚕家あるいは製糸業者に対するところの事業の一切の経済的な保障というものはないと私は考えるものであります。ところがそういう明文はない。しかもいろいろ問題になつておりますところの第十條におきましては、繭価の異常な低落を防止するためには諸般の準備を講ずるということがうたわれておりますけれども、しかし今回これと表裏一体をなすところの特別会計法の提案理由を見ますならば、これは蚕糸価のための特別会計法ではなくして、いわゆる糸価安定のための特別会計であつて、繭価を安定するための予算的措置その他については一切拔きにされておる。ということは、この法案そのものが結局繭糸価格安定法案ではなくて糸価安定法案の性格をはつきりしているということを、政府みずから暴露している以外の何物でもないと私は考えるのであります。
第二点といたしましては、まず問題は、日本の生産者価格を計算し、その上に立つた輸出価格を決定する’ならば、海外の需要にあるいは応じられるかもわからないというような意見が流布されておるのであります。このことをわれわれはよく考えなければならない。輸出優先あるいはその他の面が唱えられておりますけれども、われわれは、国内生産物を海外に輸出することは、決して生産費を割つて国が貧乏になることを希望しているのではないのであります。国内の産物を海外に出すゆえんは、国内におけるところの利潤を確保するために輸出するのであつて、国の生産費を割つて海外に輸出するという輸出優先方針なんかは、最も外国の植民地化に進むところの一つの方法であるといわざるを得ないのであります。現在日本の生糸輸出の占めるところの世界における地位は非常に重要な地位を占めている。外国から希望されたところの繭糸価格安定法案では、このものに対しては安定を希望すると言われておりますけれども、たとえばいわゆる米綿等のあの厖大な騰落の大きな値幅の動きに対して、米綿の安定法というものがアメリカにおいて立法され、そうして日本に輸出されるところの綿花を安定した価格で輸出しておるか、このことと対比しましたときに向うの輸出するものは、思う存分自由な所に輸出して、日本の生糸輸出の面に対しては、なるべく低いところで押えようとするところの海外の手が動いておつて、それに応じてこの法案が提案されたというのが最も根本的な骨子であると私は思うのであります。こういうことでは、少くとも日本の産物を海外に輸出する場合に、輸出すればするほどそれは国内におけるところの資源を海外に放出する以外の何物でもないということになります。こういう点から考えますならば、日本の重要な産業であり、重要な産物であり、しかも大きな地位を占めている生糸が輸出されるための安定法案を出されるならば、おそらくアメリカにおいても日本に輸出するところの米綿の安定法が出さるべきだ。このときにおいて初めてわれわれは対等の立場いうことが言えるのであつて、現在は生糸にいたしましても、アメリカにおいては最近非常に需要が増大している。しかもごの増大する需要を安い価格で満たすために、この法案を無理に押しつけようとしておるのである。従つてわれわれはそういう点から考えましても、少くともそうでないとするならば、先ほど冒頭に申し上げましたように、なぜ政府は繭価の安定を優先して繭価に対するところの予算措置を講じないのか。ここには繭糸価格安定法と書いてあるけれども、先ほど言いましたように、特別会計の点から見ましても、それは結局においては農民に対する欺瞞以外の何物でもない。特別会計の提案理由を見ましても、糸価を安定するためにやつている。しかもそれは安い価格で海外に出しても、特別会計でそれに対する補償を製糸業者にするという法案である。だからもしそういうふうにして安くなつて参りますならば、結局において転業のでき得ないところの養蚕家は、ますます製糸業者に圧迫され、そうしてそれが転業のでき得ない養蚕業者にしわ寄せされ、あるいは生糸を生産する労働者諸君の賃金にしわ寄せされる、こういう結果を生むことは当然でありまして、わが共産党は、この法案に対してこういう意味から反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/8
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009・千賀康治
○千賀委員長 足鹿覺君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/9
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010・足鹿覺
○足鹿委員 私は、本法案につきまして反対の意見を述べたいと存じます。
まず第一点は、本法案は法案の名前は繭糸価格安定法となつておりますが、法第一條並びに第十條あるいは第十四條、第十五條等を見ますならば、あくまでもそれは糸価優先であり、輸出優先の根本思想によつて立案をせられ、法案が構成されており、養蚕農民の立場がきわめて稀薄に取扱われているという点に基本的な誤謬があることを指摘いたしたいと思うのであります。元来糸価の安定を望まない者は何人といえどもありません。私どもといえども、これに対しては何らの異論を持つものではありません。しかしながらこの糸価の安定と並行して繭価の安定が確保されて、初めてここに日本の蚕糸業の総合的な発展が期し得られるのである。にもかかわらず、われわれがこの法案を先日来検討いたしました結果をもつて判断いたしますならば、繭価安定に対するところの具体的な措置が認められないということが、私どもの基本的な反対の第一点であります。
第二点は元来本法案の原案は、糸価安定法として出発したことは天下周知の事実であります。現に大蔵委員会に付託になり、昨日審議をいたしました特別会計法案につきましても、すでにそれは糸価安定と銘が打つてあることをもちましても、当初これは糸価安定法であつた。十月十五日全国農民代表者大会が東京において開催され、養蚕農民は、その大会において、本法案の糸価安定の基本的な方針に不満を持ち、これを繭糸価安定としてあくまでも乾繭の買上げ、あるいはこれに対するところの具体的な措置を要求し、なお繭の生産費はどこまでも糸価に優先する立法を当路にも要求し、政府当局にも要望し、関係各政党にも熱心にこの運動を展開したことは、すでに皆さんも御存じの通りであります。にもかかわらず、その農民の声に抗し得ずして、わずかに糸価安定の上に、繭の一字を冠し、そして法第十條にもし繭価が生糸の買上げによつてもなお著しく変動を来し、防止し得ないときには、必要な措置を行うという、きわめて抽象的な、何ら具体的な内容を伴わない字句を挿入したことによつて、養蚕農民の憤顧を押えようとしたのにすぎないのでありまして、そういつた面からこの法案があくまでも糸価優先、輸出業者優先の基本的な立場に立つており、その結果は廉価へのいろいろな形におけるしわ寄せが起るということをわれわれは考えます。そういつた面から私どもは、この法案が名前と内容との一致しておらないという点において、養蚕農民の立場から反対の第二点といたしたいのであります。
第三点は、いわゆる本法案の一番欠陥であり、繭糸価安定法の名にふさわしくないゆえんのものは、いかにして繭の再生産を保障するかという具体的な施策が法案にもなければ、また政府当局の基本方針にもないという点であります。すなわち昨日も参考人の側からいろいろな意見を聴取したのでございますが、かりに糸価そのものが安定をいたしまして、いわゆる最低値が保証されたといたしましても、そのことはすなわち繭の再生産を保障する安定ということは断定はできないので、あくまでもいわゆる蚕の生産費加える加工賃イコール生糸価格、こういう基本方式によらなかつたならば養蚕農民の真に要求するところの蚕糸業の振興にはならないということを私どもは指摘いたしたいのであります。本法案において望まれておるという点は、わずかに糸価が安定すれば第二次、第三次的に繭価にも影響が及ぶであろうというにすぎないのでありまして、あるはなきにまさるという程度の内容しか期待できないということは、昨日の参考人の意見について見ましても、われわれは完全にこれを知ることができたのであります。そういつた意味から糸価の安定は必ずしも繭の再生産を保障する繭価の安定を意味しない。繭価の安定を意味するためには別個な基本的な施策が当然講ぜらるべきである。そういう点において、私は第三点の反対理由といたしたいと思います。
第四点は、本法案によつて従来不合理な取引が行われた繭の取引の合理化は一向行われないということである。現在日本の養蚕業が遅々として振興しないのは、今申し述べましたように繭の再生産を保障する施策が講ぜられなかつたということが一点と、今一点は、その不合理な農民の犠牲において生産された繭の取引過程において、歴然たる不合理が横行しておるということである。これに対して本法案は何ら具体的な改善の措置を講じておらない。現に養蚕農民は生繭をまず出しておいて、しかる後に製糸業者から繭価を決定することを余儀なくされておる。すでに長いものにつかまれておつて、不満であるけれども泣く泣く繭価を承諾しなければならない立場に置かれておる。これに対して、養蚕農業協同組合等が微力ながら対策を講じておるけれども、
〔松浦委員長代理退席、千賀委員長着席〕
政府の企業施策は、この養蚕農業協同組合に対して一銭一厘の金融措置も講じておらないのである。こういつたために、養蚕農業協同組合等の団体によつて製糸業者との自主的な対抗が十分に実力的になされずして、あくまでも製糸資本の大きな圧力の前に、養蚕農民は犠牲を余儀なくせしめられた繭の売買を受諾しなければならないというのが日本の繭の取引の実態である。これに対して根本的な対策を何ら明示せずして、どこに日本の蚕糸業の発展があると言い得るのでありますか。そういう点を第四点として私どもは本法案に反対せざるを得ない。
第五点は、養蚕振興に対する政府の基本方針がきわめて貧弱であるということである。昨日来農林大臣なり蚕糸局長からいろいろ御答弁がありまして、聞くべき点は聞きましたけれども、ほとんどそれはきわめて抽象的であり、具体性に欠けるものがあり、また来年度の予算を要求されるに際しても、わずかな金額に対しても日本の蚕糸業振興の基本的な方針が立案されておらず、その基盤をなす養蚕業自体の振興に対しても、桑園の補助であるとか、あるいは桑苗の育成に対する考慮であるとかいつた、きわめて部分的な施策しか見ることができない。本法案をもつて、日本の蚕糸業の中興の祖にしたいと石井君は先般おつしやいましたけれども、中興の祖どころか、私どもをもつてしますならば、この法案をもつてしてはとうていさような大きな目的は達成できない。問題は、日本の蚕糸業に対するところの基本をなす養蚕農民の経営規模の改善、その経営の近代化、そうしたものを貫く養蚕業の進展の上に、この基盤の上に、製糸業、輸出業の問題も総合的に、蚕糸対策が考えられ、その一つの部分としてのかくのごとき糸価安定の法案が出さるべきであつて、これによつて養蚕農民が救われるがごとき大きな印象は与えても、得るものは養蚕農民をして失望のみであるといわなければならぬ。そういう面から第五点として反対をしたい。
第六点は、第十四條第十五條に見られる審議会の構成についてである。政府は本法案の審議の過程を通じて、養蚕農民の意思が反映していないというわれわれの攻撃に対して、いわゆる審議会を設けて、この問題については養蚕農民の意思が通ることをしばしば説明されました。しかし法案自体を見ますならば、明らかに行政庁に対し、農林大臣の諮問に応ずるこの審議会に、行政庁の役人をも委員とし、しかも学識経験者のみをもつて構成するが、ごとき審議会で、どこに養蚕農民の利益の徹底がありますか。問題は農民代表を加え、利害の代表者を加えて、米価に対しても不満足であるけれども米価審議会が有能な役割を果しておるがごとく、真に公明なる委員の構成をして初めてここに養蚕農民の声を審議会に反映し、蚕糸行政に反映することができると言うべきでありましよう。にもかかわらず、いわゆる行政庁の諮問機関に行政庁の役人と学識経験者をもつて委員構成とするがごときことによつて、断じて養蚕農民の利益は徹底しないと私は思う。これが第六点の反対の理由であります。
最後にこれを結論的に要約いたしまするならば、従来日本の蚕糸業の基本対策であつたところの、あくまでも製糸資本、輸出業者を重点的にした一つの蚕糸業振興の基本方針は何ら変更を見ておらない。養蚕農民の利害を守り、日本の農業経営の合理化の一環としての養蚕の地位を確認し、その養蚕が日本農業の経営を通じて農民生活の安定に寄与するという基本的な立場に立つて、日本の蚕糸業の全面的な転換が期せらるべきであるにもかかわらず、本法案はあくまでも製糸業者及び輸出業の利害をまず第一点に考え、二次的、三次的に養蚕農民の問題を付随的に取扱つておる。主従の関係がまるで転倒しており、極論をするならば、一貫して養蚕農民の犠牲の上に大資本への奉仕をも意味するのではないかという点が多々身受けられるのでありまして、かような意味におきましてはわれわれはとうてい賛成することができないのであります。むしろ政府はこの際根本的に構想を一新し、養蚕農民の立場から真に日本の蚕糸業の発展の基本の上に立つ法案を再提出すべきである、かように結論づけたいと思う次第であります。
以上の理由によりまして、日本社会党第二十三控室を代表し、反対の意見を開陳した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/10
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011・千賀康治
○千賀委員長 これをもつて討論は終局いたしました。
これより繭糸価格安定法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/11
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012・千賀康治
○千賀委員長 起立多数。よつて本案は可決すべきものと決しました。
なお衆議院規則第八十六條の規定による本案に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/12
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013・千賀康治
○千賀委員長 御異議なしと認め、さよういたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/13
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014・千賀康治
○千賀委員長 引続き、これより食糧問題に関する調査を行います。
本委員会におきましては去る十月二十四日、食糧統制撤廃問題等につきまして政府の所信を伺い、質疑を行つたのでありますが、本日は本問題に関するその後の経過並びに結果、さらに本年産米の供出割当数量に関しまして政府の説明を求めます。根本農林大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/14
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015・根本龍太郎
○根本国務大臣 食糧問題につきましては、すでに再三本委員会におきまして御質疑を受けまして、その都度報告いたしたのでありまするが、その後の経過について御報告申し上げたいと存じます。
先般も御説明申し上げましたごとくに、政府といたしましては、明年四月以降において米の統制を撤廃するという基本方針のもとに諸般の準備を進めて参り、閣議におきましてもこの方針のもとに諸般の準備をすることを方針として決定しておつたのであります。この構想の基本については、しばしば御説明申し上げましたごとく、配給、供出ともにこれを撤廃いたしましてそのままに放置するということではないのでありまして、依然として食糧の国民生活に及ぼすところの重要性にかんがみまして、需給調整の方策を講じて国民生活の安定を期するとともに、生産農民に対する価格支持をいたすということが基本の方針でございます。この構想に基いて第一に問題になりまするのは、現在日本の国民生産による主食だけではどうしても国民全部に食糧を供給することが困難な状況にありますので、当分の間は相当量の外国食糧を輸入いたさなければなりません。この観点に立ちまして第一に考えらるべき点は、何と申しましても国内食糧の増産による自給度の向上ということであり、第二におきましては、当分の間足らざるものについては、でき得るだけ有利に、そうして必要な量を十分に確保するということでございます。
かような観点に立ちまして需給並びに価格の安定を期するということになりますれば、どうしても外国食糧につきましてはこれを一般輸入業者にそのまま自由に輸入せしむるということではその目的を達成することが困難でございます。そこで、たとい自由にいたしましても、この外国食糧につきましては、輸入並びにこれが国内における放出につきましても政府はこれを管理いたす、これが第一の構想になつておるのでございます。従いましてこの外国食糧の管理につきましては、配給はいたしませんけれども、大体政府が全面的に管理するという基本方針をとつておるのでございます。次に、食糧の配給はいたしませんけれども、しかしながら他面におきましては、先ほど申したように、主食が国民生活に及ぼす影響の広汎な事実にかんがみまして、政府は相当量内地主食につきましてもこれを確保し、適切なる措置を講じてこれを放出して、需給と価格の調整をはかりたいと考えておるのであります。この意味におきまして需給調整法を立法いたしまして、諸般の措置ができることにするとともに、なお食管特別会計もこれに伴いまして需給調整に基くところの特別会計といたしたいと考えていたものでございます。その際におきまして問題になるのは、食管特別会計を清算してこれを引継ぐということになりますとたいへんな手数と時間がかかりますので、これを需給調整特別会計法にそのまま引継ぐ、こういう構想のもとに考えておつたのであります。
このような構想において次に問題になりますのは、生産者の価格支持の問題でございますが、これにつきましては価格支持政策をとり、農民の要望する場合におきましては一定価格で無制限にこれを買い取る、そうして価格支持をいたすことが第一の要点になつておるのであります。なおこれに伴いまして、もし統制撤廃がなされますと、現在の農業手形制度は実は供出に裏づけされておる金融措置でございますので、その点は不可能になりはしないかという心配がありますので、この農業手形については供出制度がなくなりましても改良を加えて、大体現行のような農業手形制度を確立して、生産資金を確立する。なおまた出まわり期における集荷資金を十分に協同組合等に与えておかなければ、需給関係が実質上時間的にずれが出て参りまして、そのために農民が不利になるおそれがありますのも、協同組合等については財政資金を農林中金等に投入して、系統的にこれを流すことによつて確立したい。また販売業者、却売業者についても、十数年の長きにわたる統制の結果、その信用並びに資金面において困難を生じておりますので、これに対しても同様な資金の裏づけをしてやりたい、これが大体構想であつたのであります。
この構想のもとに諸般の準備を進め、関係当局とその折衝に入つたのでありますが、関係当局における政府案に対する検討において、相当時間的な余裕を持たなければならない、またこれの及ぼす影響についても広汎な問題がありますので、その点についてもいま少しく検討を進めたい。かような意向のもとに、統制を撤廃するということについて原則的な了承を得たのでありますが、その実施の時期並びに方法については、当分の間これをもう少し検討をいたしたい、こういう状況になりましたので、御承知のように政府声明において明らかにした通り、方針は堅持するけれども、時期方法においてはいましばらく検討いたすということに相なつたのでございます。
なおこの問題と関連いたしまして、統制を四月一日から撤廃するということになりますれば、現在の供出は配給をするという前提のもとにやつておりますので、供出量もそれに従つて減らすべきであるという意見のもとに検討を進めておつたことは事実でございますが、ただいま申し上げたような理由によつて、当分の間配給を続けて行くという方針になりましたので、本年の供出は現行の食管法の立場において割当をするということになつたのであります。しかるところ本年の作柄については、皆さん御承知のように、本年の春における冷害ぎみで、初期においては相当憂慮されたのでありますが、七月、八月と気候が非常に順調になりまして、春における気候の不順が完全に回復したがごとくにわれわれは見ておつたのでありますが、その後さらに台風、病虫害、それに加うるに秋における低温の結果、これまた例年に比して相当減収の予想が出て来たのであります。第一回予想高においては六千二百数十万石になつておつたのが、第二回の予想収穫高においてはずつと減つて六千六十六万石ということになつたのであります。時期が若干遅れたということについて、何か政治的な意図のもとに遅らせたのではないかというお話がありましたが、さようなわけではありませんで、御承知のように第二回の予想収穫高が実は割当の基本の数字になるのでございます。この意味におきまして、できるだけ実収に近い線をもつて割当てなければ、供出の円滑を期するわけには行かない。そこで本年は秋の気候の不順というここと、さらに病虫害並びに災害に基く減収率をできるだけ見込むということで、若干これを遅らせたのでございます。この六千六十六万石を基本数字といたしまして本年の割当数量につきまして、関係当局との折衝に入つたわけでございます。御承知のように米の供出量につきましては、例年のように総司令部のアプルーヴアルをもつて初めてこれをやつているのでございまして、この折衝の過程におきまする詳細については、本日発表することをはばかる次第でございますが、実は総司令部当局において、本年は六千六十六万石だということを仮定いたしたとしても、国内の状況、さらに経済九原則の線に沿うならば、本年においても二千七百万石を割当てるべきであるという強い主張があつたことは事実でございます。その理由といたしまして、二十三年におきまして、予想実収高が六千四十万石程度であるにかかわらず、当時米だけで二千九百万石出している。例年において常に二千七百万石以上を出している。従いまして本年におきましても二千七百万石以上を供出せしめるべきであるとの強い意思表示があつたことは事実であります。しかしながら私はいろいろの事情を具体的に申し上げて、特に本年における天候その他の災害からして、六千六十六万石というのは決して政治的に加工をしたところの数字ではない。従つて六千六十六万石というこの基本数字はわれわれ科学的に立証するものであるから、これは決して政治的な加工でないということを強調するのが第一点。その次には、昨年は農民の要望に沿いまして、保有率を相当高めて考えているのでございます。この昨年度同様の保有米を農村に確保するとともに、他面におきましては、例年要望されておつて実現を見なかつた、採種圃の設定によるところの採種圃から上る主食につきましても、供出を命じておつたのでございます。採種圃の設置は、優良種苗を農村にあまねく普及させるという前提のもとに立つたのであります。これに供出をいたさせますことは非常な矛盾が多い、せつかくできたところの採種圃を普通の供出の対象にすべきではない、こういう観点からいたしまして、昨年に比しまして、この採種圃を供出の対象の外に置くという新たなる一項を加え、さらに政治的な今までのいきさつが相当ありまするので、若干の減額をいたしまして、二千五百五十万石という線に最終的な了承を得たのでございます。これに基いて割当をいたしたのでありまするが、この割当につきましては、御承知のように知事会議において政府が指示するのでございます。昨年までは農業調整委員が常に列席しておりましたが、今回新たにできた農業委員の諸君も全部以前の慣例によりまして同席いたしまして、この会議を開催したのであります。この知事会議におきまする知事側並びに委員側からの要請事項は次のようなものでございます。その第一は、本年六千六十六万石の予想収穫高というものは過大ではないが、県並びに食糧事務所あるいは農業委員会において策定したところの実収見込高に比べると過大である、従つてこの過大なる予想収獲高を基礎としての割当はいかぬ、農業委員会の要請は二千万石程度の供出以上はできないという、われわれの常識からかなり離れた要請でございます。知事側の割当数量につきましては、政府の内部におきまして問題になつたことがございますが、供出後の自由販売、しかして四月一日から統制を撤廃するという場合において、われわれが一案つくつた場合の供出旦二千三百五十二万石ならいいけれども、それ以上の供出は困難である旨の要請が強く出ておつたのでございます。
なおそのほかに、本年は政府の主食統制撤廃に関していろいろの経過的な情報が農村に飛んでおるために、供出意欲が非常に減退しておる。この意味におきまして、いろいろの阻害があるから、ぜひとも次の七項目について政府が明確なる態度を示していただきたい。その第一項は、明年の十月まで統制は継続するということを明確に示してもらいたいということ。第二項におきましては、供出にあたりまして麦、雑穀の代替供出を認めるということ、第三項は、特別報奨金、すなわち集荷ができました場合、完納した場合に供出完了したものに対して、相当量の金額になりまするが、報奨金を出してくれということ第四項は、集荷委託費を増額してくれとう点、第五項におきましては、価格について、すみやかに米価を決定し、しかもその米価は再生産を償うところのものであるべきこと。第六項におきましては、取締りを強化すべしということ、それから第七項は強権発動はしないようにしてくれ、こういうようなものが主たる内容でございます。
これに対しまして政府といたしましては、第一項については了承いたすことにいたしました。第二項の雑穀並びに麦との代替供出は、これは原則として認められないことでございます。雑穀、米、麦ともに供出をお願いしておつたときにおいては雑穀、麦の代替はできるのでありまするけれども、今回は米のみを対象にし、しかも米につきまして本年の割当はいわゆる基準規格に基いてやつているのでございまするので、この点については了承いたしかねるが、今後善処する、十分考慮するということにいたしたのであります。第三項の奨励金につきましては、報奨金につきましてはこれは現行の建前においてはつける理論的な理由がございません。なお予算的にも非常に困難ではございまするが、知事並びに農業委員会の強い要請がありまするので、政府は今後これについては知事の要望に沿うて、これが実現のために善処する旨を約束したのでございます。なお集荷委託費については、現在項目が生きておりまするので、これについての増額について、政府は必ず実現することを約束いたした次第であります。なお米価につきましては、御趣旨に沿うようにとりはからいたい、かように約束いたしました。取締りについては、現行法規に従つてこれをいたす、かようなことで大体知事側もその意思を了承したのでありまするが、農業委員会方面におきましては、その次の——先ほど落したのに減額補正の問題がございます。この減額補正につきましては、知事側並びに農業委員会の強い要請でありましたが、これは現在の食管法に基く政令において実収高がはつきりわかり、その結果著しく減少した場合には、減額補正するという政令の立場がございまするので、これは当然認めることにいたしたのであります。
その結果、知事側においては大体了承したのでありまするが、農業委員会側としては、どこまでもこの二千五百五十万石の割当数量そのものが過大である。かような見解を堅持して譲らず、第二回目の日にあたりまして、ぜひともこの点については、再折衝を総司部にしてもらいたい、こういう要請がありまして、そのときには知事、農業委員会ともに協議の結果、二千三百五十万石に減額してほしいという強い要請がありまして、私は知事並びに委員会の諸君の要望を受けまして、総司令部に天然資源局のドナルドソン氏を尋ね、約一時間四十分にわたり経過の状況並びに知事側の意向を伝え、折衝いたしたのでありまするが、これに対しまして、ドナルドソン氏は非常に慎重に意見を聞くこともに、さらに天然資源局長あるいはその他の総司令部の幹部の人々に電話連絡をとりましたが、さきに総司令部が、正式に農林大臣にあてた供出量に関する覚書以外には現在どうにもならない。これが最終の総司令部の意思の決定である。そうして今日のような状況であるならば、先般私に対して与えられた覚書を知事並びに委員に公表することについて了承を与える、ぜひそういうふうにしていただきたい、かような結論になりましたので、私は知事会議においてこれを発表した次第であります。これに対しまして、委員会側はわれわれの要望がここに受入れられないから、われわれはこのまま退場するということで、委員会の諸君は知事会議から退場いたしたのであります。そこで第二日はこれで一応散会いたしました。
その翌日三日目になりまして、私は知事の代表の諸君と、農業委員会の代表の諸君の合同を求めまして、そこで私は政府を代表いたしまして、知事並びに委員からのあらゆる方面にわたる質問に対し、誠意ある態度をもつてこれに一々答弁を申し上げ、私の意の存するところも申し上げたところ、ほとんど大部分が了解点に達したのでございます。そこで知事会議を再開するごとに相なつたのでありまするが、委員会の方におきましては、正式の代表ではないのだ、われわれは委員会の総会に諮つて態度を決する旨を約束し、知事側はさらに知事側として合同いたした結果、当日の八時ちよつと過ぎに再開いたしたのであります。これに対しまし委員会側としては、われわれは供出そのものには反対はしない、妨害はしない。現地におきましては知事と一体になつてこの推進をはかるけれども、政府のわれわれに対する回答については完全に了承するわけには行かぬから、知事会議には列席しないという答弁でございます。そこで委員会側の正式の出席を待たずして知事会議を開催することになりました。知事側は安井知事が代表いたしまして、諸般の事情をいろいろ考慮してわれわれは食管法に基く指示は受けるべきである。従つて二千五百五十万石の指示は受けますけれども、これが実現は非常に困難であつて、自信のない点がある。しかし政府の今後の誠意ある善処をわれわれは要望してこれをお引受けする、こういう旨の発言がありまして、われわれは二千五百万石を各県別に割当ててこの問題が終了した次第でございます。
右のような次第でございまして、減額補正については、知事特に農業委員会からすみやかに本年実収を調査の上、しかもこれの補正にあたりましては、従来は作報のみの数字を使つておつたのであるが、今後は府県側並びに委員会側の資料をも十分付度し、公平適正にこれを実施するという要請を受けまして、その旨を約束して割当をいたしたのでございます。
なお各府県別の割当の状況につきましては、事務当局から御説明をいたさせるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/15
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016・千賀康治
○千賀委員長 これより農林大臣の発言に対する質疑を行います。通告がありますから、通告順に許します。吉川久衛君。十五分で切り上げてください。今十二時十五分であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/16
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017・吉川久衛
○吉川委員 ただいま農林大臣から米の統制撤廃に関するその後の経過、あろいは知事会議に関連しまして、御報告を伺つたのでございます。私はこの米の統制撤廃問題について、これが中止になつたときの政府の声明を開きましてからも、ただいま農林大臣の御報告の通りはなはだ不明確な点がございましたので、各方面から国会内における審議状況を尋ねられるのでありますが、明快な答弁ができなくて困つていたのでございます。この点は与党の諸君も同様でございますので、私はこの不明確な点について、時間がございませんから、簡単にお伺いをいたしたいと思います。
米の統制撤廃の問題については、根本農林大臣は非常にまじめな純情な方でございますので、御郷里の秋田県で統制撤廃問題を御放送になつた直後でございましたが、私は秋田へ参りまして、農相の言われたことを伺つてみましたところが、いますぐにやるのではない。将来そういう方向へ行くべきだ。そして今御説明になつたような構想の基本方針を述べられたということが私はわかりまして、ある程度安心をしていたのでございますが、この農林大臣が、財政上の支出の節約の関係等からいたしまして、大蔵大臣に遂に強勧をされて、そうしてこういう問題が表面へ出て来たということに相なつたのでございまして、われわれはこの点についてはなはだ遺憾に存じていたのでございます。知事会議においても割当数量の問題等について大層問題になつたそうでございますし、総司令部との交渉の過程におきましても、非常にこの数量の問題で困難な問題があつたと思いますけれども、統制撤廃の問題を軽々に口にされ、あるいは発表されたことによつて、農民の供出に封ずる考え方が非常にかわつて参りまして、供出のために大きな影響を及ぼしているということは事実でございます。こういうような、生産者はもちろん——この数量の確保ができないで、需給調整がうまく行かないために消費者が生活を脅かされるというような、国民をあげての重大な問題と相なつたことについて、政府はどのような責任をおとりになるのか、ただいまのところ明確にされておりません。純情な根本農林大臣を私は責めようとは思いませんが、閣僚のお一人として、ただいま政府は、この統制撤廃の中止になつたことによつていろいろの責任問題が起きて来るわけでございますが、どのような責任をお考えになつておいでになりますか。その点をまずお伺いをいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/17
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018・根本龍太郎
○根本国務大臣 ただいま御指摘になりましたことくに、この統制問題にからみまして、生産者並びに消費者に非常に御迷惑をかけたことにつきましては、私衷心からおわびを申し上げます。責任を痛感しているのでありますが、この問題につきましては、まず第一にこの混迷をなくして、国民に食生活における全面的な安心感を与えるのが政府の最大の責任であると存じております。この素地をつくりまして後における責任の問題については、今申し上げる段階ではございませんが、現在の政府といたしましては、まず供出を完了いたさせまして、さらに配給についても消費者に何ら不安なからしめる、そうして増産と生活の安定を得せしめるということが最大の責任であると考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/18
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019・吉川久衛
○吉川委員 知事会議で、政府は供出量を二千三百五十万石くらいが妥当であるとお考えになつて、総司令部と交渉をなさつたのではないかと思いますが、その辺はどいうことになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/19
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020・根本龍太郎
○根本国務大臣 二千三百五十二万石は政府が妥当として折衝したものではございません。知事並びに委員会が、ぜひともこれについて折画してくれということでありましたので、私は知事並びに農業委員の意向をそのまま代表して伝えたのでございます。政府はすでに御報告申し上げましたように、二千五百五十万石が本年度割当すべき妥当なる数字なりと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/20
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021・吉川久衛
○吉川委員 知事会議におきまして、減額補正の問題を政府は承知された。しかし特別奨励金と申しますか、完納農家に対する特別の報奨金の問題については、これは今の制度では考えられないというようなお答えをなさつたようでございますが、私はその通りだろうと思います。知事会議における減額補正の問題は、必ず確約されるものと思いますが、この点はどうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/21
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022・根本龍太郎
○根本国務大臣 御承知のように、実収高が明確になりました際、予想収穫高よりその差が著しくあり、しかも減収しておる場合においては、現行の政令においても減額補正すべく規定されておるのであります。従いまして現行の政令に基きましても減額補正を必ず実施いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/22
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023・吉川久衛
○吉川委員 代替供出の問題でございますが、雑穀等の代替はできないということでございましたが、麦の統制が撤廃されるといたしますと、麦の統制撤廃後における、麦をもつての代替供出ということは認められないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/23
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024・根本龍太郎
○根本国務大臣 現在におきましては、麦の代替供出を認めるという立場に立つておりません。従いましてわれわれとしては、この代替供出は原則的にお断りしているのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/24
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025・吉川久衛
○吉川委員 ただいまのところでは麦は統制撤廃をされておりませんで、米と同様な取扱いでございますから、それは代替供出の意味をなしません。しかしながら先日の連合審査会のときに、農林省の私に対するお答えの中に、来年の一月から六月までの間に麦の統制撤廃をいたすというお答えがございました。そこで来年の一月から六月の間に麦が統制撤廃をされました後において、供出が米だけでは完納できないという場合に、麦をもつて代替できないだろうか。もう一応伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/25
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026・根本龍太郎
○根本国務大臣 現在のところ代替供出をさせるという意図は持つておりませんが、但し知事並びに委員会側の再三の強い要請がありましたので、今後研究して善処したいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/26
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027・吉川久衛
○吉川委員 麦が統制を撤廃されれば問題は起りませんが、撤廃されない前に供出後の自由販売をお認めになるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/27
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028・根本龍太郎
○根本国務大臣 麦につきましては全面的に統制撤廃の措置を講ずるべきだと思いまするので、供出後の自由販売ということはただいまのところ考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/28
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029・吉川久衛
○吉川委員 私は先日大臣に申し上げた通り、米麦不可分論者でございます。そこで私がなぜ米麦不可分論を申し上げたかと申しますと、日本の食生活の実情からでございますが、米の統制が撤廃されない前に麦のみの統制撤廃をされるということになりますと、米の供出制度に影響を及ぼすということを私は憂慮しておるのでございます。その点はどうでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/29
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030・根本龍太郎
○根本国務大臣 これは見解の相違と相なりまして議論になると思いますが、麦につきましては、御承知のように現在マル公といわゆるやみとの差がほとんどない、こういう現状でございますし、なおまた配給辞退も相当多いのでございます。これが自由になりますれば、加工の方面においてもさらに精度を増し、またその意味において需要も相当増す、しかも国民生活に及ぼす影響ははとんどない、こういう観点からいたしますれば、主食の一部ではありまするけれども、内地産米と麦とは、国民の食生活の慣習並びに嗜好の面からいたしましても、需要供給の面からしても、これは別箇に取扱つてしかるべきものと私は考えております。この意味におきまして、政府といたしましては米と麦とは別に取扱いたい。しかしながら一面におきましては、この米と麦とは、そういうふうな意味においてはわかれておりまするけれども、農業生産者にとりましては一体的に考えられるべきものであります。すなわち米が有利になつても麦の方で不利な立場に置かれるということは農業経営の安定を欠く、この意味では、まさしく吉川さんが言われる通り、これは一体的に考えなければならぬ問題だと思います。その意味におきまして、われわれ農林省といたしましては、統制を撤廃いたした場合におきまして起るであろうという心配の点は、あるいは麦については価格がくずれて行きはしないか、この点でございます。従いましてこれにつきましては、配給、供出はやめまするけれども、価格維持政策をもちまして麦価の安定をはかり、これによつて農業経営の安定を期した
い、かように考えておる次第であります。一部についてはあなたと意見を異にしまするけれども、後者の点においては私も同意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/30
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031・千賀康治
○千賀委員長 吉川君結論にしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/31
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032・吉川久衛
○吉川委員 私はこの問題について大分農林大臣と所見を異にするのでございます。ごとに麦のマル公とやみ値との差がなくなつて来たということ、あるいは配給辞退をするというような問題等は、これはまた別の角度から論ぜらるべき問題で、ございまして、大臣のお言葉を伺つておりますると、大臣は麦飯を召し上つたことがないのではないかというような感じがしてならないのでございますが、この問題を論じておりますと、委員長からまた時間だ時間だという御注意がありましようから、これは別の機会にいたします。先ほど農林大臣は、当分の間米の統制は撤廃しない言われましたが、この当分の間ということが国民は非常に気になつておるのでございます。米の統制撤廃につき先日大臣がお答えくださつたときには、来年の十月までは配給制度を続けて行くということをはつきりおつしやつた。そこで十一月一日から統制が撤廃されると解釈してさしつかえないと思うのでございますが、そういうようにわれわれ解釈してよろしいかどうか、その点をはつきりしていただきたいのであります。これは大臣御存じだと思いますが、一粒の米をつくるのには、苗しろをつくつたときから米をつ、くるのではなくて、今年の米を収穫したその翌日が来年度の収穫の手始めであるということは御存じだろうと思います。そこで農民はそのつもりで今から準備にとりかからなければならない。少くとも作付け前にこれがはつきりしないと次の生産に重大な影響がございますので、この点をはつきりお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/32
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033・根本龍太郎
○根本国務大臣 御指摘の通り、この問題につきましては先般お答えした通り、また知事会議において政府を代表して私の申した通り、来年の十月末日まで配給をいたす、従つて本年の二千五百五十万石もその前提に立つてわりますので、供出配給ともに来年の十月末日までこれを実施するという方針で進めておるのであります。この点は明確にお答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/33
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034・千賀康治
○千賀委員長 井上良二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/34
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035・井上良二
○井上(良)委員 今吉川さんの御質問に対し、大臣は非常に率直に米麦の統制撤廃に関する政府の不手ぎわについて国民に遺憾の意を表せられましたが、私どももまつたく今度の米麦統制撤廃の政府の声明というものが、いろいろな観点から非常に大きな問題を生んだということについて遺憾に存じております。ただ一応はああいう声明をされましたけれども、依然として米麦問題に対する国民の不安は払拭できない状態にあります。そこで一番問題になりますのは、政府が今御答弁になりました通り、麦は一月から六月までの間にはずしたい、米は十月一ぱいではずしたい、この言葉が政府の口から出る限り国民の食糧に対する不安は除かれないのであります。少くともこういう主食のごとき国民のあらゆる生活に、またわが国の産業経済全般に及ぼす重大な政策を論議いたします場合は、政府によほどの準備とよほどの対策ができてから即時断行するということでなかつたら、国民の不安はつきまとうのであります。この点はあなたと私との立場が違いますから、意見の相違だと言われればそれまきでありますが、今政府の説明にもありました通り、一月から六月の間に麦をはずす、はずした後を一体どうするかということであります。吉川委員もお話になりました通り、米麦一体の主食構成になつている国民の主食生活の現状において、麦をはずした後に政府は白米をもつて幾ら配給しようといたしますか、これをまず伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/35
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036・根本龍太郎
○根本国務大臣 大体現行の米食率を基準といたしまして、麦を除いた米だけの分は配給を続けて参りたいと思つております発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/36
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037・井上良二
○井上(良)委員 現在米食率は大体六〇%くらいだろうと思いますが、さように配給されると見てさしつかえありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/37
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038・根本龍太郎
○根本国務大臣 全体平均して五六%程度でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/38
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039・井上良二
○井上(良)委員 それだけは麦をはずした後でも政府で確実に内地米が配給できるという確信がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/39
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040・根本龍太郎
○根本国務大臣 これは井上君も御承知のように、外米も入れてございます。そして若干地域差はございますけれども、現行の配給基準で実施いたす方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/40
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041・井上良二
○井上(良)委員 問題は、外米をもつて米食率を維持する、これならば別に問題はない。現在政府が配給している外米が国民の嗜好の上からどういう現実にあるかということは、政府もよく御存じの通りであります。われわれが麦の統制撤廃後において米の配給量を維持することをここで問題にいたしておりますのは、内地米がいかにして従来通り配給されるかされぬかという問題であります。問題はそこにあるのであります。外国米をもつて穴埋めするということならば何も食糧政策は必要ない。二千五百五十万石供出してもらえば十月末まで従来通り、内地米が配給できるという見地に立つて二千五百五十万石が割当てられているのじやないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/41
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042・根本龍太郎
○根本国務大臣 内地米だけをもつてやるといたしますれば、大体二千八百万石程度の内地米を供出させなければできないのであります。従いまして従来もさようでございましたが、内地米だけでは足りないので外米を輸入しているのでございます。もし内地米だけで配給させることになりますと、裸供出を農民にしいなければなりませんので、それは実際上不可能でございます。本年は二千五百五十万石を供出いたさせましても、従前に比べて約三十万トン分外米に依存する度が多くなる勘定になります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/42
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043・井上良二
○井上(良)委員 内地米で足らぬ部分を外米君つていることはわれわれもよく知つております。問題は二千五百五十万石の供出がかりに完納だとしても、これが十月まで内地米のみでは維持できないというここにはつきりした数字が現われて来ます。そうなつて来ると、端境期のさ中において大消費地におります者は外米だけを食わなければならない事態が起つて来はしないか、そういう不安はないか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/43
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044・根本龍太郎
○根本国務大臣 これは内地米だけを四月から八月までやつて、それ以降から外米をやるということではない、両方とも相調整していたす予定でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/44
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045・井上良二
○井上(良)委員 御存じの通り、現実に少くとも一箇月に百四、五十万石の内地米を確保していなければ、現行の内地米の配給量を維持することはできません。そこへ持つて行つて、この前も質問いたしました通り、労務加配米が米で配給されることになり得るのです。そうなつて参りますと、現実に内地米の配給量というものは減つて参ります。そこで少くとも四月以降になつて参りますと、内地米というものに対する需要が、この場合に実際上非常に強くなつて参ります。そこでかりに、私どもの推定でありますけれども、四月以降十月までの七箇月間に、政府の倉庫に残ります場内地米は千百万石くらいではないかと押えております。その千百万石のうちで約二百万石が労務その他の加配米に差引かれやせぬかと思うのであります。そういうことになつて参りますと、実際政府の手持米というものは、内地米において九百万石を切れるのであります。この九百万石をもつて七箇月もまかなわなければならぬ現実になつてしまいます。そうすると現実に今までの外米と内地米の配給のバランスが破れて、つまり現在では内地米を十日分、外地米を五日分大消費地で渡しておりますが、これが逆のようになりはせぬかということを私は心配しておるのであります。現在の通り内地米がかりに十日なり、十二日なり渡されて、あと外米ということでずつと十月まで補つて行く自信があるということをあなたが御言明をなされますならば、私は心配をいたしません。それが逆になる危険がありますから、その点に対して明確に、そういうことはない、依然として現在通り内地米は十日分、外米は五日分——全国平均では内地米の消費量はもつとふえて来ますけれども、現在の状況では大都市においてはそういう状態でありますが、そういう配給率はくずさない、こういう御言明できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/45
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046・根本龍太郎
○根本国務大臣 これは先ほども申し上げましたが、現在配給は内地米、外米一貫してやつておるのであります。従いまして、御指摘の通り本年の収穫が少く、従つて供出量が少くなりますと、内地米が減つて参りまするので、そのために外米と内地米との比率が現行より若干変化することも、これまたやむを得ないものと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/46
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047・井上良二
○井上(良)委員 そういたしますと、現在二千五百五十万石という政府が割当てましたものも、実際はまだ政府がこれを完全に供出さすために、たとえば集荷委託手数料を増額してやるという手が打たれていないし、また特別報奨金といいますか、いわゆる知事側が要求しておりますものが、何ら予算的にも、また食管特別会計の中の操作においても、この点が全然明らかにされていない。あるいはまた減額補正においてもまだまつたく未知数のものである。こういう知事側とあなたとの間において約束されましたものが、何ら具体的に解決されていない現段階において、二千五百五十万石を政府の倉庫に入れるということは容易ならぬ状態ではないかと思う。その上にまだ米価審議会においても米価の決定が非常に遅れるというような悪條件が重なつておるわけです。そういうことは、いずれ時間的に解決されるといたしましても、本年の作柄あるいは今度の主食騒動において与えたところの影響等がたたつて、実際現実に政府の手に入るのは、知事側の主張している二千三百万一石くらいのところではないかという想定を私はいたしておるのです。しかしこれは減額補正が何ぼされるか、二百万石か百五十万石か知りませんけれども、これによつてまたここに相当減りましよう。そうなつて来ると、この数字はさらに下まわつて来まして、一層米を食う率は減つて来ます。そうなつた場合、実際上内地米価が暴騰する危険性が起つて来ます。この暴騰を食いとめる手として、あなたは麦の統制をはずすか。そういうような状態では、国民としてはこの夏どうするか。あなたみずからが、今度の主食統制撤廃で国民に不安を与えたことはまことに遺憾である。今後は食糧に関して国民に安心感を与えて行きたい。あくまでも主食の統制確保をやつて行きたいと申されておるけれども、実際打たれて行く手は、逆に不安定感を与えるようないろいろな條件がここに備わつておりますが、このものが一掃されない限り非常に逆な結果を招くのです。私は何もあなたを政府だということで責めておるのではない。これから十月までの政府の食糧政策についていろいろな悪條件があるので、そういうことをほんとうに心配している。また報奨金を考慮するということを言われておるが、実際この問題は非常にやつかいな問題を生んで来ます。政治的な言葉を使われて現実に解決しなければならぬ問題であります。報奨金を考慮するなんて言うことは、一体何を意味しておるのか。あなたみずから食管特別会計をかつてに使うわけには行かない。補正予算の通つた現段階において、二十七年度予算に組めば別ですけれども、そうなると困りますので、この点を十分にひとつお考えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/47
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048・根本龍太郎
○根本国務大臣 簡単にお答えいたします。報奨金の問題につきましては、知事側によくその困難性を指摘しております。但し知事側は、今はだめであらうけれども、通常国会になつた場合にはいろいろな操作もあるのではないか、向うの方の了承も得たならばぜひやつてくれということでありますので、われわれは、現在は不可能であるけれども、知事側の要請に従つて努力をいたします、こう言つたのであります。
それからもう一つ井上さんが御指摘になりましたこの食糧問題に対する今後の措置についても、混乱をなからしめる意味において、政府の方針としてやる場合においても、万全の策ができたときに初めてやる、こういうことであります。私も主管大臣としてぜひそうしたいと存じます。その意味におきまして、先ほどの御質問に関連いたしまして、政府として、これは特に来年の十月までは現行で参るということを明確にいたした次第でありますが若干不明確でありましたので、これはあらためて申し上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/48
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049・千賀康治
○千賀委員長 竹村奈良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/49
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050・竹村奈良一
○竹村委員 まず第一点としては、先ほど農林大臣は、現在の二千五百五十万石の割当は、集収が正確にきまつた場合においては減額補正するとはつきり言明されました。そこで私は、府県知事あるいは農業委員あるいは食糧事務所あるいは作報等が各県の実収高を見、農家が収穫をやりまして減収した場合においては、それ以上にその額は補正されろものだと、先ほどの農林大臣の言明からいつても確信するものであります。そこで県の方が今度の減額補正数量をあらためて政府に要求した場合に、たとえば司令部の指示があつたとか何とかで、この補正数量というものを減額されたり、その他の方法をされないかどうか。つまり要求があつただけは必ず減額されるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/50
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051・根本龍太郎
○根本国務大臣 減額補正については現行の政令に基いて実施いたします。なお従来府県側が政治的な意図のもとに、あまりかけ離れた数字を出しておりますが、それだけではいけませんので、そこで知事側も了承して帰りましたのは、知事側の数量も公正にいたすとともに、現行査定の方法を基本として、知事側並びに農業委員会の方面の実情も聞いてきめるということにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/51
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052・竹村奈良一
○竹村委員 それから、先月二十五日の委員会で、大臣は、農家の保有量は本年度は若干考慮したいという御意向であるということでございますが、これはいつも議論されることであるけれども、実際的には末端においては行われる例が少い。もちろん現行の食管法でははつきりしておりますけれども、実際に農家のいる保有量は必ず優先する、現行よりも引上げるということ之確認していただきたいと思いますが、ここではつきりその意見をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/52
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053・根本龍太郎
○根本国務大臣 保有量については、先ほど申し上げた通り、従来たとえば長崎とかその他においては、実は作付等がいもで相当代替されて、それを保有に入れたのがありますが、これも大体今までから見て相当程度引上げておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/53
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054・竹村奈良一
○竹村委員 今度の割当にあたりましては、各府県に実際に割当てる場合においては非常に困難が伴うと思う。その割当の技術や方法については、政府は知事側に一任されて、知事側はこれを議するためにいろいろな割当方法をやる。それに対して政府は干渉されるのかどうか。たとえて申しますならば、知事側においては、農業委員その他の実情から見て現在政府から指示された数量よりも実際には下まわつておる。つまり現在政府から指示された府県別の割当よりも、実際は何%になるかわかりませんが、八〇%くらいしかない、あるいは六〇%くらいしかないといつた場合に、まず第一に実際に府県で出だ数量を割当てて、農民が収穫いたしました後に、なおそれ以上あるとするならば、それ以上割当てて行くというような方法を講じても、政府はそれに対して干渉するのかしないのかお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/54
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055・根本龍太郎
○根本国務大臣 割当は現行食管法において実施されますので、知事がさような方法をとるとは、私は考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/55
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056・竹村奈良一
○竹村委員 そこに問題があるのですが、実際において生産量が少かつた場合においては、全国的に見て二千五百万石が当然だとして政府が幾ら指示されても当然だとして、政府が幾ら指示されても、これは想定に基く数字である。従つて二千二百万石しか供出できない場合もあるわけです。これは実際に収穫しなければわからない。先ほど農林大臣は減額補正をするとはつきり言つておられる。従つて実際収穫した上において、政府がいうところの六千六十万石が五千八百万石になつたとすれば、二千五百五十万石の割当をするということは不当になる。もしそれを割当しようとすれば、先ほどお認めになつた農家保有量の優先確保ということがふいになる。実際の収穫がそれだけ少い場合においては、府県知事はみずから実収量によつて割当する。これは現行法の精神だと思います。それをしないということはないと思う。実際それだけしか収穫がなかつたならば、減らして割当をすべきだと思いますが、これに対してどういうお考えを持つておられるか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/56
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057・根本龍太郎
○根本国務大臣 それは減額補正をすべきであります。あなたが先ほど言つたのは、大体これほどよりなかろうから、たとえば百万石のうち八十万石を割当てて置いて、あとは別に見るということはなし得ないと思います。現実に実収高が減つておる場合においては、政府が減額補正を認める、ごとく知事といえども町村別に減額補正をするでありましようから、その点は解決されると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/57
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058・竹村奈良一
○竹村委員 もう一つ、たとえば麦は来年度から統制を撤廃すると言つておられますので、現在日本の麦作農家は相当具の作付の転換をやつておる。これは相当な数になる。つまり二割の転換をやるかもしれない。もし農家がそういうように作付の転換をいたしますならば、日本の食糧需給の建前からいうて、ますます外国食糧の輸入を増大しなければならない。こうなつて参りまずと結局大麦、小麦あるいはその他の物は、外国食糧に依存度をだんだん高めて行く、そのことは国有の食糧需給の立場から申しましても非常に憂慮すべきことであると思いますが、これに対する対策——麦を自由販売にしても、政府は麦をどれだけの価格で買入れるから麦をつくれという方針は、当然早急に示さるべきだと思うのであります。少くともそれには最低買入れ価格の決定がなされなければ、国内における麦作生産は自然と減退して来る。これに対して政府は、一体いつ麦の最低買入れ価格を決定されるのか。あるいは転作をさせないような対策を、現実にどういうふうにされるのか、これをひとつ聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/58
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059・根本龍太郎
○根本国務大臣 この問題につきましては、すでに予算委員会その他において政府の構想を申した通りでございます。具体的には後、はど検討の上、現実に統制を撤廃するときにあたつて具体的な内容を申し上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/59
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060・千賀康治
○千賀委員長 足鹿君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/60
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061・足鹿覺
○足鹿委員 なるべく重複を避けてお尋ねいたしたいと思いますが、難航を重ねた割当会議を農相は御収拾になつたのであります。その収拾の條件はいろいろあるように私どもは聞いておりますが、その内容について具体的にせんさくしようとは思いません。しかしながら現に国会が開会中であります。その収拾策には、いわゆる集荷の督励費あるいは供出完了の場合の報奨金といつたような、予算との関連のある問題があるやに承つておりますが、これに対して当局はいかように予算的な措置をお講じになるのでありますか。その点をまず明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/61
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062・根本龍太郎
○根本国務大臣 これは先ほど質問がありましたときにお答えした通りでありまして、報奨金につきましては、現行の立場においては出し得ません。従つて今後これは検討してみろつもりでございます。それから集荷委託費につきましては、これは現行においてすでに二億六、七千万円行つておるのでございまして、今後の状況を見まして予算的な措置を講じたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/62
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063・足鹿覺
○足鹿委員 まず督励費から少し具体的にお尋ねをしたいと思いますが、なるほど農業調整委員会の構成は、法によつてかわつて参りまして農業委員会になりましたが、しかし供米の完遂ということは系統農業委員会が協力しなかつたならば、絶対に完遂はできないと思う。そういう意味において、督励費に対する当局の流し方というものは、末端系統的な農業委員会に対して考慮しておるかどうか。この点はどういうふうにお考えになつておられますか、お伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/63
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064・根本龍太郎
○根本国務大臣 集荷委託費は県に交付しておりますので、県が農業委員会その他に出すかどうかについては、政府は具体的な指示はいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/64
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065・足鹿覺
○足鹿委員 これは当然御指示になるべき筋合のものであろうと思いますが御指示にならないのでありますか。伝え聞くところによりますと、その金額も相当増額されるやに聞いております。しかしこれが県庁の役人の、いわゆる集荷対策のいろいろな食糧費その他に費消されるという危険もなきにしもあらずであります。その点につきまして、真に末端の農民の協力を求められるような形に支出すべきであると思いますが、御考慮になる余地はないのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/65
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066・根本龍太郎
○根本国務大臣 従来におきましても、これは府県に交付し、それにまかしておつたのでありますが、御指摘の点もありますので、十分検討いたしまして、増額の場合においては、これについて具体的に指示すべきであるならば、指示いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/66
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067・足鹿覺
○足鹿委員 それ以上は申し上げませんが、しからば報奨金の場合、いわゆる供米削減が問題になつており、割当会議の暗礁の一つの山は供米削減の問題にあつたと思う。伝え聞くところによりますと、二千五百五十万石を完納した場合、その完納額に対して若干の報奨金が出るやに私どもは伝え聞いておる。もしかりに本年の作況からして、割当補正が適正に行かないで、かりにその農家が十分に供出ができない場合には、その農家は報奨措置から全然オミットされて行くのであるか。この点は輿際の運用上において非常に大きな問題であろうと思いますが、どういう御構想でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/67
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068・根本龍太郎
○根本国務大臣 先ほど申したように、特別報奨金の問題については、まだはつきりと、どれだけの金額をいかにするかということはきまつていないので、内容に触れるわけには行きませんが、原則としてもし報奨金の出される場合におきましては、完納奨励金と銘を打つている限りにおいて、やはり完納したものに行くのは当然であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/68
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069・足鹿覺
○足鹿委員 完納ではありますが、しかし従来ややともすると、いわゆる補正の割当が必ずしも適正に行つていないので、ここに問題が起るのである。従つて名前は完納奨励金でありますけれども、農家がほんとうに協力した場合に、なお完納の文学にこだわつてこれをオミツトされるということになることは、非常に実情と離れた結果になりはしないかと思います。また県全体としては、あるいは村全体としては完納になつた。けれども個人の農家には完納しない農家もあれば、また完納した農家もあるという場合もあり得るのである。完納というものの内容は具体的にはどういうことでありますか。個人の場合でありますか、部落単位でありますか、それとも町村単位でありますか、一体何を単位にお考えになつておるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/69
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070・根本龍太郎
○根本国務大臣 先ほど申したように、これはまだ確定したものではありませんから、その点は深く申し上げても意味をなさないと思いますが、大体今の構想におきましては、町村単位もしくは部落単位ということが至当であろう、知事側においても大体そういう意見のようでありますので、そういう意見を尊重して今後きめたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/70
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071・足鹿覺
○足鹿委員 それは初めて承つたのでありますが、そうしますと、その部落の自主性において報奨金という問題は結局処理をしてよいのでありますか。これは仮定だとおつしやいますけれども、それが條件になつて供米の難関を突破しておられるのである。従つてそれらの問題は、仮定だ、仮定だ、まだきまつておらないとおつしやるけれども、ある程度きめておいでになるに相違ない。その内容をある程度われわれがお聞きするのは、あえて国会がこれをお聞きするのは、そう支障があることではないと私は思う。農相は常に良心的な御答弁をしておられますが、これらの点については、もう少し農民に対して親切な御答弁があつてしかるべきではないかと思います。そうしますと部落が単位になるのでありますから、結局部落内において適当にこれを処理するというふうに措置して、まあ大体よろしいと解釈してよいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/71
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072・根本龍太郎
○根本国務大臣 これはきまつてないからまだ何とも申し上げられませんが、いろいろとそういうふうな御意見もありますので、知事側並びに各関係方面の意見も十分にそんたくして、実情に即するようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/72
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073・足鹿覺
○足鹿委員 時間がないようでありますので、あえてこれ以上追求することは避けたいと思いますが、その点については、今度の問題で、供米問題については農林大臣の政治的責任もあります。これらの問題をほんとうに農民の理解の行くように、農相の責任においておやりになることを特に私は要望しておきたいと思います。
最後に価格の問題についてでありますが、七千三十円を想定米価として、麦価をはじき出されて、爾来今日までパリテイの指数が変動したというので、七千円をわずかに割つた価格をもつて一般的なパリティ米価と公表されておりますが、正確にいつて、政府はごの七千三十円をほんとうに本年度産米価格として確保して行く考えであるか、いかような考えを持つておられるか、基本的に明らかにしていただきたい。同時に、米価の問題につきましては、審議会が開かれなければならぬのでありますが、審議会はいまだにその構成が明らかにされておらないようであります。この点について、審議会の開催の亀通し、また米価に対する見通し、また先刻も質問がありましたが、麦の統制撤廃の際における麦の対米比価はどういう計算になつておりますか。これは来年度の予算と関係があります。麦は一月から六月の間にはずつとおつしやつておられますが、いずれにいたしましても政府買上げのあることは先刻の答弁で明らかであります。従つてその麦を買い上げて行く基準は、いわゆる予算単価は幾らにお考えになつておりますか。いわゆる麦の対米比価の点について、この際明らかにしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/73
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074・根本龍太郎
○根本国務大臣 米価につきましては私は予算において想定しておる七千三十円を堅持したいと考えております。米価審議会の構成メンバーがまだきまつていないということは、結局において生産者団体に割当てられたところの人数に対して、生産者団体の意見がまとまらないために、まだ向うの方から推薦が来ていないというのが実情であります。この米価審議会の主催者は物価庁長官でございますので、物価庁長官の方に、すみやかにその構成をいたし、この決定を促進してもらうように要請しておる次第であります。
麦の対米比価については、目下検討中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/74
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075・千賀康治
○千賀委員長 会期の件がまだ正式に決定しておりませんし、請願審査の関係もありますので、暫時休憩をいたします。
午後一時十一分休憩
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休憩後は開会するに至らなかつた。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101204988X01219511117/75
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