1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十月二十四日(水曜日)
午後一時四十二分開議
出席委員
委員長代理 理事 押谷 富三君
理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君
理事 中村 又一君
鍛冶 良作君 佐瀬 昌三君
古島 義英君 松木 弘君
山口 好一君 大西 正男君
石井 繁丸君 田万 廣文君
梨木作次郎君
出席政府委員
法制意見長官 佐藤 達夫君
検 事
(法制意見参事
官) 位野木益雄君
委員外の出席者
判 事
(最高裁判所事
務総局民事局
長) 関根 小郷君
專 門 員 村 教三君
專 門 員 小木 貞一君
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十月二十二日
北区簡易裁判所及び検察庁移転の請願(鈴木仙
八君外一名紹介)(第一四五号)
高須町に簡易裁判所設置並びに岐阜法務局高須
出張所廃止反対の請願(武藤嘉一君紹介)(第
一四六号)
鷹巣町に簡易裁判所設置の請願(石田博英君紹
介)(第一四七号)
鷹巣町に検察庁設置の請願(石田博英君紹介)
(第一四八号)
福岡法務局大渕出張所存置の請願(龍野喜一郎
君紹介)(第一四九号)
津地方法務局五ケ所出張所存置の請願(石原圓
吉君紹介)(第一五〇号)
金沢地方法務局南大海出張所存置の請願(南好
雄君紹介)(第一五一号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
不良文化材取締法制定に関する陳情書
(第一五四号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
参考人招致に関する件
会社更生法案(内閣提出、第十回国会閣法第一
三九号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/0
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001・押谷富三
○押谷委員長代理 これより会議を開きます。
本日の日程は、会社更生法案、破産法及び和議法の一部を改正する法律案でありますが、まず会社更生法案について、政府委員より提案理由の説明を求めます。佐藤法制意見長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/1
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002・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 それでは私から、会社更生法案につきまして、概略の御説明を申し上げます。
会社、ことに株式会社が近代の企業形態の代表的なものでありまして、現在の経済社会において非常に大きな役割を果しておるということは、いまさら申し上げるまでもないところでございます。ところがこの会社が一たびその事業に破綻を来しました場合には、どうなるかということを考えますと、終局的には申すまでもなく破産ということになるのであります。破産をいたしますと、その財産を換価して債権者に分配することになりますから、通常その企業は解体されてしまつて、関係当事者はもとより、社会的にも大きな損失をこうむることになるわけでございます。
それでは破産をしないで事業を更生させるためには、現行法上どういう方法があるかと申しますと、まず第一に破産予防のための和議の制度がございます。この制度はいわゆる強制和議の性質を持つておりまして、強力な制度でありますけれども、何分にも画一的、包括的な制度であり、またその性質上からも、会社にはあまり用いられていないようであります。次には、御承知のように商法の規定によるところの会社の整理の制度があります。この制度は補助的手段としては、かなり強力な措置を認めておりますけれども、整理自体はあくまでも任意的なものでありまして、整理の成立を強制しないということが特徴であります。それだけにまた弱いということでありまして、これまたあまり用いられておらないのでございます。そこで窮状にある会社ごとに株式会社について、その事業の維持更生をはかりますために、何かそれに適合した強力な制度が必要であるということが、かねてから痛感されておつたのでございます。英米等におきましては、早くからこのような制度が広く行われておりました。特にアメリカにおきましては、その運用の実績において著しい成果を改めておる模様であります。政府は一昨年八月以来この研究に着手いたしまして、法制審議会に諮問して、ずつと調査審議を続けて参つたのでございますが、その結果成案を得まして、この法案を提出いたすことになつたわけでございます。
この法案の目的といたしますところは、経済的に窮境にあるが、なお再建の見込みのある株式会社につきまして、その会社、または一定の資格を有する債権者、あるいは株主の申立てによりまして、裁判所の監督のもとに更生手続を開始いたしまして、更生計画を作成して、会社の資本構成を変更し、あるいは新会社を設立するというような方法によりまして、債権者、株主等の利害を適当に調整しながら、会社の債務を整理し、もつて会社の事業の維持更生をはかるというところにあるのであります。その対象といたしましては、さしあたつては株式会社に限定いたしたわけでございます。
次にこの法案の特徴とも申すべき点を中心として、項目をあげて簡軍に御説明をいたします。まず第一点は、手続開始の原因を広く認めていることであります。すなわち早期に更生をはかることができるようにするために、会社に破産の原因たる事実の生ずるおそれがあるという場合のほか、会社がその事業の継続に著しい支障を来たすことなしには弁済期にある債務を弁済することができないときにも、会社から手続開始の申立てをすることができるようにしていることであります。
第二点は、強度の強制和議の性質を有することであります。すなわち更生計画の成立を容易にいたしますために、権利者のうち、多数の者の同意がありますれば、一部の者が不同意であつても更生計画は成立し、またある組の権利者について多数決が得られないときでも、その組の者に対してある程度以上の権利保障の措置を講じさえすれば、その組の多数決を得ないで計画を成立させることができるということにいたしております。
第三点は、会社の資本構成の変更、あるいは新会社の設立等と、債務の整理とを結合させておることであります。すなわち会社更生の方法といたしまして、軍に債務の減免等によつて、整理をするだけでなく、新株を発行し、または新会社を設立いたしまして、その株式を元の債権者に與えて債務を決済するという方法で、更生することができるように考えておるのであります。第四点は寸担保権者を手続に参加させることであります。すなわち担保権者の参加なしには更生計画は成立しがたいことが多いのでありまして、その権利を保護しながら、手続に参加させるということにいたしたのであります。
第五点は、株主を手続に参加させることであります。すなわち、会社の資本構成の変更と債務の整理とを結合させる結果、計画が株主の権利に影響を及ぼすことも必然的に多くなりますので、株主をも個々に手続に参加させることといたしているのであります。
第六の点は、債権者、担保権者及び株主の持つておりまするそれぞれの権利の性質に従いまして、計画の條件に一公正公平な差等を設けなければならな一いといたしますなど、各権利者の利害の調整をはかつておることであります。すなわち違つた性質の権利を持つております者が手続に参加いたしますので、その有する権利の性質に従つて、計画の條件に公正公平な差等を設けるべきものとして、株主は債権者より有利に、また債権者は担保権者より有利に取扱つてはならないということにいたしました。この順序を破つた更生計画は、かりにこれが多数決で可決いたされても、裁判所は認可をしないというようにいたしまして、各権利者の利害の調整をはかつておるのであります。
第七点は、租税等の徴収手続との調整をはかつておることであります。すなわち租税その他の請求権を有しております者も手続に参加させ、手続が開始すると、一定の期間、たとえば租税等の滞納処分を中止いたしましてまた徴収権者の同意があれば、徴収の猶予等ができることにいたしております。
次に第八点は、免責の制度をとつたということであります。すなわち更生後の会社の法律関係を明確にいたしまして、なお更生を容易ならしめるために、債権の届出をしないものはその権利を失つてしまう。また更生計画の認可決定があつたときには、計画によつて認められた権利、及びこの法律で認められた権利を除いて、会社はすべての債務から免責されるということにいたしておるのであります。
第九点は、更生計画の遂行の確保ということをはかつておるのであります。すなわち更生計画の確実迅速な実行をはかりまするために、計画はできる限り手続の継続中に遂行して、新会社設立の場合には、管財人があれば管財人が発起人の職務をも行うことにして、その迅速な実行をはかつたということでございます。
第十といたしましては、裁判所の裁量権を相当に、認めておることであります。すなわちこの手続は営業継続中の会社を対象としております。また関係人の利害が非常に錯雑しておりますので、迅速公平な処置ができるように、裁判所に相当程度の裁量権を認めておるということでございます。
第十一点は、これは最後の点でありますが、監督行政庁等の手続べの関與を認めておるのであります。すなわち更生計画は経済界の実情に適合したものでなければなりませんので、会社の監督行政庁、証券取引委員会、その他の行政庁というような役所の関與を求めるということになつておるのであります。
以上で、非常に簡単でございますが、大略の項目の御説明を終りましたが、なおこまかくわたりましては別に他の政府委員から御説明いたさせたいと存じます。よろしく御審議のほどをお願いいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/2
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003・押谷富三
○押谷委員長代理 提案理由の説明はこれにて終了いたしました。
次に章を追つて政府より説明を願い、それについて質疑を行いたいと存じます。それではまず第一章及び第二章について政府よわ説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/3
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004・位野木益雄
○位野木政府委員 それではお手元に配付いたしました会社更生法案逐條説明という文書、これに基きまして、重要なる條文を適宜選択して、章別に御説明を申し上げます。
まず第一章でございますが、この第一章は、この法律の目的、更生手続開始の時、人及び地域に関する効力、更生事件の管轄、更生事件に関する裁判所の裁判その他の行為に関する通則、破産及び和議手続への移行等、この法律の実体的及び手続的な通則を定めております。
第一條はこの法律の目的を規定し、あわせてこの法律の対象となる会社は株式会社に限ることを明らかにしております。
第二條は、更生手続の効力発生の時期について定めておりまして、更生手続はその開始決定のときから効力を生ずるということにいたしております。
第三條は、外国人の地位について規定いたしておりますが、いわゆる無條件平等主義を採用いたしております。
第四條は、更生手続の国際的効力について定めておりまして、いわゆる属地主義を採用したわけであります。
第五條は、更生手続の参加の時効の関係を定めたものでありまして、更生手続の参加によりまして、更生債権者の債権について中断の効力を認めたわけであります。
第六條は、更生事件の管轄について定めました。会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所を管轄裁判所とするということを定めたわけであります。
第七條は、更生事件の特別の必要のある場合における移送について定めたものであります。
第八條から第十條までは、更生手続に適用すべき手続的な百原則を定めたものであります。
第十一條は、更生手続に関する裁判に対する即時抗告について定めてあります。
それから第十二條から第十六條まで、これは更生手続においてなすべき公告及び送達について定めたものであります。これは詳細な説明は省略いたします。
次に第十七條から第二十二條まで、これは更生手続における登記及び登録の関係について規定したものであります。これにつきましても説明を省略いたします。
次に第二十三條ないし第二十六條でございます。これは更生手続が結局において不成功に終つた場合に、破産手続に移るという場合があるわけでありますが、その破産手続への移行について定めたものであります。更生手続が、不成功に終つた場合といえども、必然的に破産には入らないということにしておる点が特徴であります。
それから第二十七條及び第二十八條でございます。これは更生手続が不成功に終つた場合の和議手続への移行について定めたものであります。
第二十九條、これは破産等の申立の義務がある場合に、更生手続開始の申立をすれば足りるということを定めた規定であります。
以上で第一章の概略な説明を終ります。
次に第二章でございます。第二章は更生手続開始の原因、申立権者及び申立の手続、申立後の手続、保全処分、調査委員、更生手続開始決定及びその効力、他の手続との関係、取戻権、株金拂込み請求権等の査定手続、それから否認権等について規定いたしております。
まず第三十條でございますが、これは更生手続の開始の要件を定めたものでございまして、重要な規定でございますので、やや詳細に説明いたしたいと思います。第三十條は更生手続開始の原因及び申立権者について定めたものでございます。「事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」云々という言葉を使つております。これは会社に流動資産が乏しく、弁済期の到来した際にも、債務を弁済するには会社の事業の継続に欠くことのできない営業用の固定財産を処分しなければならないような場合をいうわけでありまして、「会社に破産の原因たる事実の生ずる虞がある」場合も開始原因の一つになつておりますが、これは商法の整理の規定において定められておる「支拂不能又ハ債務超過二陷ルノ虞アリ」というのと同様の意味であります。今申しました前の場合、すなわち「事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」という開始原因のある場合は、会社のみが申立ができることになつております。
なお債権者または株主の申立に必要な債権額及び株式数は、数人のものを合計したものでもよいというふうに考えております。
次に第三十一條は、解散後の会社の申立についての特則を定めております。
第三十二條は更生手続開始の申立の方式及び申立書の記載事項について定めたものであります。
第三十三條は疎明について規定いたしております。
次に第三十四條でございますか、これは手続費用の予納について規定いたしております。この第二項及び第三項には予納金額決定の基準を規定し、また予納に関する裁判に対して即時抗告ができることといたしまして、申立人の権利の保護をはかつております。なお手続の費用の予納のないときは、申立は却下されることになつております。
次に第三十五條、これは監督行政庁への通知等について定め、第三十六條は審尋について定めておりますが、これらについては説明を省略いたします。
第三十七條でございますが、これは更生手続の開始の申立があつた場合における他の手続との関係について規定いたしたものでありまして、必要の場合には他の手続、すなわち破産手続、和議手続、整理手続、強制執行手続、租税滞納処分等の中止等も命じ得ることになつております。非常に強力な力が認められているわけなんであります。
次に第三十八條でございますが、これは手続開始の條件について定めております。申立が適法でありかつ更生続開始の原因たる事実がある場合におきましても、本條に掲げるような一定の事由がある場合におきましては、申立が誠実にされたものでないと認められますので、裁判所は申立を棄却すべきものとしておるわけであります。
次に第三十九條は、保全手続を定めております。
それから第四十條から第四十四條、これは調査委員について規定いたしております。調査委員と申しますのは、あたかも和議開始前における整理委員の任務に類似した役目を持つ機関でございます。しかしながら整理委員のような必須のものではないわけであります。裁判所が必要と認めた場合に任命し得るということになつております。なお調査の公正を期するために、第二項におきまして調査委員になる、へき者の資格について規定いたしております。
次に第四十六條に移ります。第四十六條におきましては、更生手続開始と同時に決定すべき事項を規定いたしておりまする債務が二千万円以下の会社につきましては、管財人の選任を必ずしも必要としないというとにいたしておりますが、これは小規模の更生事件については、費用の節約ができるよう参にいたしたわけであります。
次に第四十七條、四十八條、四十九條、五十條、五十一條等につきましては説明を省略いたしまして第五十二條に移ります。
第五十二條は、更生手続中は更生手続によらなければ、会社の資本構成等を変更し、利益または利息の配当をすることはできないということを定めたものであります。
それから第五十三條であります。それは更生手続開始後におきまして、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権限は管財人に専属することを定めたものであります。手続の運営の公正をはかる意味からこういうことにいたしたわけであります。
第五十四條及び第五十五條、これらの條は、管財人または会社が会社の財産の処分、その他会社財産に重要な関係ある行為をする場合に、裁判所の許可を得なければならないことを定めたのであります。
次に、第五十六條から六十條までにつきましては、更生手続開始後の会社の行為の効力、更生手続開始後にされた登記登録等の効力、更生手続開始後に会社に対してなされた弁済の効力等について定めたものであります。
次に、第六十二條から第六十六條まで、これは取戻権について定めております。破産法で認められておりまする取戻の規定とほぼ同様の内容の取戻権が認められております。
次に、六十七條、これは更生手続開始決定があつた場合の他の手続に及ぼす効力について規定いたしております。和議手続、整理手続等の競合的な手続は効力を失い、破産手続、強制執行、競売手続等は中止されることにいたしております。なお租税滞納処分は、公益上の理由からあまり長く停止させることは適当でございませんので、決定の日から六箇月間当然中止ということになりますが、必要があればさらに三箇月間だけはその期間を伸長することができることにいたしておりまして、その後におきましては徴収権者がその本来の権限に従つて処置することができるようにいたしております。
次に第六十八條から第七十一條まででございますが、これは訴訟の手続の中断、受継、移送等について定めております。
次に第七十二條、これは更生手続開始後の裁判所のなす処分について定めております。
第七十三條から第七十七條まで、これは会社の取締役等に対する損害賠償請求権または株金拂込請求権等の査定手続について規定いたしております。これは商法の会社の整理の規定にありまする査定の手続にならつたものであります。
次に第七十八條から第九十二條までは、破産法で認められておりまする否認権と類似の否認権、言葉は同様でありますが、否認権を認めております。否認権の性質とか否認すべき行為の範囲等は、大体破産法の否認権と同様でありまするが、否認の請求という、否認権行使の略式の手続を認めておる点が特徴であります。以上で第二章の概略の説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/4
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005・押谷富三
○押谷委員長代理 ただいまの第一章及び第二章について質疑の通告がありますからこれを許します。北川定務君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/5
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006・北川定務
○北川委員 提案者に対しまして二、三の点を伺いたいと存じます。まず第一点は、財界の一部におきましては、この法案がありまするために、銀行や信託会社が資金を融通することを躊躇するのではないかという意見があります。この種の、融資を特に懸念する方面に対しまして、法案においていかなる準備がいたしてありましようか。まずこの点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/6
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007・位野木益雄
○位野木政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、これは大体通常の債権者と担保権を有する債権者と、二つにわかつて考える方が適当かと思います。まず通常の債権者についてでございますが、これにつきましては、ただいま申されたような杞憂は当らないのではないかというふうに考えております。むしろこの手続がもしできますると、銀行、信託会社等の企業会社に対する融資がかえつてその安全性を増すと申しますか、利益を受ける面の方が多いのじやなかろうかと考えます。この手続によりましては、債権者の立場は非常に強く認められておりまして、たとえば従前の和議手続でございますと、和議の内容というものは、株主は何らの不利益をこうむらない。そうして債権者のみが、債権を減額するとか、あるいは延期するとかいうふうに定められるということになると考えられるのでありまするが、この手続におきましては、債権者の権利を制限するためには、その前に、まず株主がその権利をみずから制限せざるを得ないというふうなことになつております。すなわち先ほど提案理由にもうたわれておりましたように、債権者の権利は株主の権利よりも不利に扱つてはならないというふうなことを特に規定いたしておりまして、債権者には和議の場合なんかと比較いたしまして有利な立場が保障されているわけであります。また債務の履行の点におきましても、和議法なんかでは、單に債権を減額するという和議ができますれば、その認可決定があつた以後は、履行の有無にかかわらず、ただちに手続は終了いたしまして、その後はいわばほつたらかすというふうなことになるのでありますが、この手続におきましては、最後まで履行をさせてそうして手続を終るというふうな点も考慮いたしておるわけであります。そういうふうな点から、通常の債権者につきましては、むしろ有利になるということが言えると考えるのであります。
次に担保権を有する債権者との関係でございます。これにつきましては、従来担保権を有するものは、和議手続が始まりましても、もちろんそれに強制的に参加させられるということもございませんし、また破産手続が開始せられました場合におきましても、別除権者として保護されて来たわけであります。ところがこの手続におき」ましては、担保権を有する債権者といえども、更生担保権者として当然にこめ手続に参加せざるを得ないという建前になつておりますので、あるいは御指摘のような杞憂と申しますか、そういうふうな御懸念が生ずるかというふうな気もいたすのでございますが、会社の更生をはかるためには、担保権者の参加がなくては不可能の場合が非常に多い。従前の実例に徴しましても、担保権者ががんばつておるために、手続がうまく運ばないということが非常に多くてこの種の手続のがんであるというふうに考えられておつたと考えるのでありますが、その反面、担保権者は形式的にその権利を保護されるということで、常にその利益を確保されておつたかと申しますと、必ずしもそうではなかつたのであります。会社がうまく行かなければ、かりに抵当権の実行というような担保権の実行に移りましても、これはその値段が非常にたたかれまして、所期の効果を収めることができないというようなことでありまして、結局において必ずしも満足を得ていない。むしろ会社を更生させてそうして十分にその債権の回収をはかる方が有利ではないかということも、十分考えられたわけであります。この手続におきまして更生担保権者を参加させるということにつきましては一方担保権者の利益を害するのじやないかという懸念が相当ございましたので、これにつきましては、たとえば計画案の可決につきましては、通常の債権者は三分の二という多数決で足りるのでありますが、担保権者につきましては四分の三の同意を得なければならないということにいたしてあります。それからまた計画案の内容につきましても、担保権者につきましては最も有利に取扱わなければならないということを法定いたしまして、その保護をはかる。なおこの権利の取扱いにつきましては、この権利の性質によりまして、公正公平な取扱いをしなければならないというふうな認可の要件ともなつておりまして、実体及び形式的に、結局会社を更生させて、相ともに十分な満足を得ることができるような仕組みに考えたわけでございます。結局に、おきまして、この手続が始まりますと、担当権者は形式的には拘束されるということになりますので、その点は何と申しましても制限を受けるようになるのではないかと思いまするが、しかしながら、会社の更生をはかるという立場からはその点は忍んでいただいて、実質的に満足を得るようにということを考えた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/7
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008・北川定務
○北川委員 次にお伺いいたしたい点は、この法案に対しまして賛意を表しておりまする事業会社では、この法案に示されている通りに進行しますると、その終了までには数年を要するのではないか、これを二年くらいに終らしめることが実際に必要ではないかと言うておるのでありますが、二年くらいで更生手続を仕上げるには一体どうすればいいかということにつきまして、当局に御意見がありまするか。また裁判所におきまして、更正手続を促進しまするのに、特別な方策を準備してあるかどうかということについて、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/8
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009・位野木益雄
○位野木政府委員 更生手続に要する日時の点でございまするが、提案者といたしましては、ただいま仰せられましたような長期間を要するものとは考えていないのであります。手続が非常に順調に進みますれば、更生手続開始後六箇月ないし九箇月で更生計画の認可の運びに至るものと考えております。個々の事件につきましては、なお長日月を要することもあるかと存じますが、順調に運べばその程度で十分ではないかと考えておる次第でございます。なおこの更生計画認可後の遂行の部面における期間でございまするが、更生計画認可後の計画の内容によりまして、決定はいたしておりませんが、これも早ければ特別の手続を要せずして遂行が完了する場合もございます。
これはもうほんの十日か一週間、一箇月もあれば十分にできるという場合が相当あると思います。あと会社を設立する場合ということでありますれば、これには数箇月の日時は必要かと思います。また年賦で償還するというふうなことでございますれば、これはまたその期間を要するわけでございまするが、それにいたしましても、これは特に手続が長引いて困るというふうなことはないと考えておるのであります。法律の中におきましても、たとえば更生手続が開始いたしますれば、一定の時間内に債権者集会を開け、届出の期間後一定の期間内に開かなければならないというふうなことを法定いたしております。それから更生計画案も裁判所が定めた期間内に提出しなければならないということになつておりまして、この期間内に提出がなければ、手続を廃止するということになつております。また更生計画が認可されますと、これは確定を待たずにただちに効力を生ずるということにいたしまして、計画の実行が迅速になされるような手段を講じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/9
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010・押谷富三
○押谷委員長代理 この際お諮りいたします。国会法第七十二條によりまして、最高裁判所関根民事局長の出席、説明を承認いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/10
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011・押谷富三
○押谷委員長代理 それでは異議がなければ、これを許します。関根民事局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/11
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012・関根小郷
○関根最高裁判所説明員 ただいま北川委員からの御質問、非常にごもつともだと思います。実はこういつた会社、危殆に瀕した会社を生き返らせる起死回生の実を與えるというような、非常に大きな仕事を裁判所でやるこれ表裁判所でやらせるという法律を国会でおつくりになりました以上は、裁判所側といたしましても、できる限り御協力申し上げる、そのためにはどうしても現在の裁判官の数ではだめ、あるいは補助機関が少いといつた御疑問が出ることは当然でございます。しかしながら現在の状態におきましては、この法律が通りまして、すぐに裁判官をふやすということは、とうてい不可能でございますし、また国家的の予算の立場から申しましても、この事件ばかりのために予算的措置を講ずるということも、非常にその他の事柄から考えまして、困難の事態でございます。それで、できますれば、そういつた方向を考えていただければありがたいのでありますけれども、裁判所側といたしましては、現在の人員におきまして現在の補助機構を使いまして、できる限りの努力をしたいという考えでございます。それで今お話がございました、二年内にこの危殆に瀕した会社を生き返らせるというためには、どうしてもほかの事件麦あとまわしにせざるを得ないということが出て来るかと思います。これはこういつた行き方をせざるを得ないということは、当該事件を扱いまする裁判官といたしまして、当然考えられることでございますし、これらのことにつきましては、事前に会同、その他裁判官の打合せの機会を十分つくりましで、その趣旨の徹底に努めたいと存じます。
御参考に申し上げますと、現在の制度におきまして、御承知の通り会社を生き返らせると申しますか、これに似たような制度は、会社法にございまする整理の手続でございますが、この整理の事件は現在ございますけれども、非常に事件として出て来るのが少いのであります。これはなぜかと申しますと、先ほど政府委員からの御説明がありましたように、整理では、債権者全員の同意がなければ、その生き返らせる案をつくり出すわけに行かないということになつておりますが、今度は、一部では異議があつても、いい案と認めれば、それが最後の案として認可されるということになりますので、債権者側、株主側といたしましても、一部の異議がありましても進むという結果に相なります。従つてそういう債権者全部の同意をまつまでもなく、手続として進行できる。それからもう一つは、そういつた点から申しまして会社整理よりも早くできるのではないかということが考えられる。現在の会社整理の事件におきまして、どのくらい時間がかかつているかと申しますと、大体二年以内には片づいているのでございます。これはお手元に、たしか表が参つているかと思いますが、おおむね二年以内ということでございますので、それから考えましても、御質問がございました二年以内で片づけるようにとりはからえるのじやないか、こう考えておる次第でございます。
それからなお非常に危殆に瀕しました会社といたしましても、生き返るとなれば割合に当事者側も急ぐのじやないか。むしろ病人がなおるということになれば、急いでいろいろな措置をする、当事業者側におきましても協力してくれるのじやないか。それでございますので、破産手続などがある程度延びておりまするけれども、経済的に致命的な結果を與えまする破産と違いまして、更生手続におきましては、当事者も一緒になつて、結果を急ぐということが考えられる、いろいろ考えますると、二年以内ということが可能ではないか、こう考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/12
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013・北川定務
○北川委員 公租や公課、特に税金の支拂いにつきまして、期間の延長だけではなくて、分割拂いとか、その他の支拂いの方法につきまして、会社更生のための便宜をはかる手続があつてもよいではないかと思うのでありまするが、この点につきましてのお考えを伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/13
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014・位野木益雄
○位野木政府委員 この点は非常に問題の点でございまして、更生の手続を円滑に運ぶという点から申しますれば、場合によつて税金も減額をするということは、できれば非常に好ましいということが言えるかと存じますが、他面この租税は、やはり何と申しましても、国家の財政の基礎をなすものでございまして憲法におきましても、納税の義務ということは特に定められておる次第であります。従いまして租税を減免するということは、これは相当考慮すべきことでありまして、この間の調整をいかにとるかということが、非常に困難な重要な問題になつて来ると存ずるのであります。その間の調整といたしましては、立案当時相当考慮いたしましたし、またいろいろ当局間で折衝もいたしたわけでございましたが、結局におきまして、この法律におきまじては、租税徴収の手続は強制的に延期するということになりまして、この点は非常に強力なことが認められたのでございまするが、租税の減免の内容のいかんにつきましては、これは国税徴収法の規定に従うというふうなことになつたわけでございます。この法律におきましては、この法律自体で租税の徴収権者に減免ないし猶予の権限を與えることは適当でございませんので、そういうふうなことができるという規定は、これは国税徴収法に讓つたわけです。国税徴収法の内容といたしましては、こちらの更生法の規定も考慮いたしまして、会社の更生をはかつた方が、徴税のためから見ましても好ましいというふうな場合には、この徴収の猶予または滞納処分の猶與という二つの手段を認めております。これは一年ないし二年というふうに一応法律の規定にはなつておりまするが、場合によつて更新できるというふうなことになつておるようでございます。従いましてこれを活用いたしますれば、相当程度租税につきましても、更生のための調整をはかれるのじやないかと信じておるのであります。
なおこの実績によりまして、将来この制度がうまく行くようであれば、なお調整をはかる余地もあるんじやないかというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/14
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015・北川定務
○北川委員 最後に一点だけ伺いたいと思いまするが、危殆に瀕しておりまする会社の更生につきまして、法律面では詳細な規定がなされておるのでありまするが、それだけではなくして、真に会社を更生せしめるためには、経済面においても方策を講ずるのが必要じやないかと思うのであります。たとえば資金を融通してやる、そして更生せしめるというような方法が最も重要ではないかと思うのでありまするが、政府におかせられましては、これらの点についても、お考えになつておるかどうかということを伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/15
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016・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 御質疑の点は、われわれとしても、財界、経済界の要望いたしまして、従来しばしば承つておるとこちであり、またごもつともな要望であると考えておるわけであります。ただ私ども、ここに出ております者の所感といたしましては、一応多少、はずれることは存じますけれども、政府の一員として御趣旨の存ずるところは、さらに関係の当局者の方へ十分反映いたしたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/16
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017・鍛冶良作
○鍛冶委員 今関根局長からのお答えで考えたのですが、これを見ますると、附則は昭和二十七年一月一日施行になつておりまするが、これはやはり相かわらずその目的でおやりですか、それとも事情によつては御変更なさるお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/17
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018・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは政府案として御提案申し上げました時期から考えましてきめた附則でございます。従いまして今回この時期にこれが成立いたしますといたしますれば、多少周知その他準備等のために、この施行期日をずらしていただかなければならぬのじやないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/18
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019・鍛冶良作
○鍛冶委員 さらに関根民事局長に聞きたいのですが、これはあなたのおつしやつたことは非常に重大だと思いますが、それについては裁判所における準備期間としてどれくらいの期間がいるものか。これは一月一日になつておるが、どうも今あなたのお答えを聞くと、とてもできそうもないから私は今聞くのですが、そこでもし何だとすれば、どれくらいあればやれるとお思いになるか、それを参考にお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/19
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020・関根小郷
○関根最高裁判所説明員 今鍛冶委員からありがたいお話を承つたのですが、実はとうてい来年の一月一日からでは準備が十分じやないと思います。でき得べくんば少くとも半年くらいは先にしていただきたい。でありますので、あるいは七月一日施行、その程度にいしていただきまして、公布後六箇月、その期間内にできるだけこの法律の趣旨につきまして徹底をはかりたいと存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/20
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021・田万廣文
○田万委員 少し会社更生法案自身とは関係は薄いようですが、本法の対象となる会社は株式会社に限るとしてあります。私ここでお尋ねしたいのは、いわゆる中小企業者の破産というものに対しては、別途に何かお考えになつている点があるのでありましようか。中小企業者の破産を助けてやるために、あなたはやはり本法と同じような精神の法案を、何か、別途にお考えになつている点があれば承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/21
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022・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 中小企業者といえども株式会社でございます限りは、この適用はあるわけでございますが、御指摘の点はおそらく株式会社以外のものについてのことだと存じます。われわれの聞いておりますところでは、この会社更生法のお手本といいますか参考にいたしましたアメリカあたりでは、あらゆる業態に即応した適切な更生法というのが各種あつて、ちようど薬の種類がいろいろあるように、それぞれ適切な法制ができておるように承知いたしております。ただ私どもといたしましては、まず第一着手として、この会社について、ことに株式会社について、これを立案いたしまして、さらにその効果等をまた勘案いたしまして、広くあらゆる部面に持つて行きたいという気持ではおりますけれども、今日具体的に御指摘のような中小企業を対象としての法律を立案するというところまでに着手はいたしておりません。研究はいたしておるという段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/22
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023・田万廣文
○田万委員 ありがたい話で、研究をなさつておるそうでありますが、そのありがたさをもつと推進していただきましていわゆる株式会社ではないところの中小企業者というものの、今後の生活の見通しというものを考えた場合には、本法の成立を願うとともに、やはりその線に沿うた中小企業者の破産に瀕した者を救済するという意味の法案を、急いでおつくりになることを私は要望したいのです。
それから次にお尋ねしたいのは、ただいまのお話によりますると、普通、会社の破産手続が開始して終結に至るまでは、二年ぐらいで終るという関根民事局長のお話だつたように思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/23
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024・関根小郷
○関根最高裁判所説明員 会社の破産ではございませんで、整理のことで申し上げたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/24
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025・田万廣文
○田万委員 破産の方はいかがになつておりましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/25
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026・関根小郷
○関根最高裁判所説明員 破産の方は、これは破産の申立てがありまして、破産の宣告をいたしますまでには、やはり相当な期間を要しますし、これは二年以内ということは多数とは申されません。破産の問題は、実は打明話を申し上げますと、破産の申立てが起きまして、破産ということは御承知の通り経済的に人を殺す結果になりますので、そういつた手続をとつた申立人の側におきましても、結局最後のところまで参りそうになりますると、ちよつと待つてくれといつた事案が多いわけでございまして、結局命取りになつてしまうような結果を来さないようにというところから、現実におきましては、申立人自身もあまり最後の破産宣告を受けさせたくないという事件が多いわけでございます。その結果早く片づくということが結果において出て来ない。それで先ほど申し上げましたのは、この手続に似ております会社の整理の事件を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/26
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027・田万廣文
○田万委員 大体この法律の性質が、破産に瀕するおそれのある、あるいは破産に瀕しかけておるところの会社を更正さすということを目的とした法律であると私は解しております。その意味からいつて、ただいま関根民事局長のお話では、普通破産には相当長い期間がかかる。それにはいろいろな理由があるのでございますが、それと反対に、先ほどからお話を聞いておると、債務者、会社としましても早く更正したいというので、早く債権者の満足を受けたいというので、整理が早くできるだろうというお話でございましたが、私どう考えても、今までの経験上からいつて、いかに努力なさつても、二年くらいで済めば早い方じやないかと思うのです。その見通しについては、実際に実務に当つていらつしやる関根民事局長は、この法案が通過して適用のあかつきに、どういう期間で大体処理せられる見通しであるか。私ども考えるところでは、そう簡単には参らぬのじやないかと思う。なお、つけ加えて申したいのは、更生さすのが目的ですから早く処理しなければならない。その意味からいつて、先ほど提案理由を承つておりますると、大体高度の強制和議という方法をとられておるというお話がある。そうすると、促進する、事件終結を急ぐという意味において、高度の強制和議、この方法がとられる危険性が多分にあるのじやないか、高度の強制和議という方法をとることによつて、会社としましても、また債権者としましても、それが非常にプラスになるかどうか。あまり急ぎ過ぎて更生という目的から逸脱して行くような不満足な結果が起りはしないかということが一応懸念されるのでありますが、この点について一応納得の行くように御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/27
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028・関根小郷
○関根最高裁判所説明員 ただいまの田万委員からのお話、非常にごもつともなお話でございまして、実は私どもといたしましても、全部が全部二年以内に終るということは、とうてい申し上げられません。しかし大体の趨勢といたしまして、先ほど申し上げましたように、現在ございます制度に一番似た制度といたしましては、整理の手続、これがおおむね二年に終つているのが多いことから考えましての予想でございますが、二年以内に終らせたい希望を加えながら、二年以内にできるのじやないかということを申し上げたわけでございます。それから今御心配になりました点は、われわれも同様に考えておりますが、今、急病人をすぐなおすというためには、どうしても早く措置をとらなければだめだということは、これは常識から考えましても、当然のことでございまして、その起死回生の手術をやるということを関係人が全部意識しておれば、やはり早くやろうという気持をみなが持ち、裁判所も同時に同じ熱意を持たなければなりませんが、破産とか、今までの強制和議とは違つた味を持つてやる気構えができて来るのじやないかと思います。
それから今お話のございました促進ということでございますが、これはやはり裁判所に係属しております事件のうちでも、当事者があまり先を急がない事件が割合多い、それとこういう事件と比較いたしますると、どうしてもこういつた事件を先にやらざるを得ない。やはり優先的に取扱うべき事件として、こういつた事件が出て参ると思います。そういつたことから考えましても、いろいろ、不安は伴いますけれども、二年以内に何とか措置できるようにしたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/28
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029・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 ただいま関根民事局長並びにその前に位野木君から申し上げました通りでございまして、実は位野木君は大分遠慮して九箇月とかいうようなことを申しましたけれども、この法定の期限がいろいろございます。それをうまくつなぎまして、非常にスピード・アツプされた場合を実はここに書いてあるのであります。約三箇月でできると書いてあるのです。しかし、それはあまりにも早過ぎるというようなことで、おそらく位野木君は遠慮して九箇月ぐらいと申し上げたのでありましよう。もつとも、こういうことは当事者の納得ずくで行きませんと、幾ら急ぎましても、かえつて効果を失うようにもなりますので、ただいま関根さんが言われましたように、二年以内には、たしかに終るであろうというところが、ほどのいいところじやないかと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/29
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030・田万廣文
○田万委員 それからさつきの御質問にお答えをいただきたいのですが、高度の強制和議の方法をおとりになる可能性が多い。その結果、促進のために、かえつてマイナスになるような危険性がある。会社としても、他の債務者としても、債権者としても、そういう影響を受けるのじやないかこの点はどういうふうに御答弁願えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/30
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031・位野木益雄
○位野木政府委員 当事者の間に十分納得が行きまして、意見の相違が少いという場合におきましては、ただいま申し上げましたように、非常にうまく行けば数箇月で済むということが考えられるわけでありますが、この手続におきましては、利害関係が非常に異なる人が参加いたしますので、この間の利害の調整ということは、相当困難な問題であります。従いまして、その間に十分な折衝がなされるということは、予想されるのでありまして、この間に十分な理解ができ、そうして合意ができない限りは、手続は運び得ないわけであります。多数決を得られないわけでありますから、これは手続を進め得ないわけであります。従いまして大多数の当事者間に意見の一致がなくて、手続が無理やりに進められるということはないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/31
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032・田万廣文
○田万委員 私は頭が悪いのか、どうもわかりませんが、意見の相違がなければ、もちろん早いのですが、意見の相違があるときに、高度の強制和議という手を裁判所がおとりになるのじやないか。いわゆる文字のごとく強制ですから、双方に不満足なものがある場合に行われるのが強制和議だと私は考える。その際に、あまりに事件促進のために強制和議をとることによつて、会社なり、あるいは他の債権者というものが、逆効果になつて、救済する法律が、強制和議というものによつて、どちらもマイナスになるようなことがありはしないかという点に対する御答弁を願いたいという質問であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/32
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033・位野木益雄
○位野木政府委員 この当事者間に十分なる納得が行きまして円満に話を進め得ます場合なれば、必ずしもこの手続によらなくても、整理の制度もございますし、また任意にできる場合もあるわけでありますが、どうしても一部の反対があつて、必ずしもうまくまとまらないというふうな場合、これはやむを得ず、この手続によつて一部の反対者も押し切つて会社の更生をはかるというふうなことを考えたわけであります。もちろん、一部の人の意見を無視するということはこの手続が始まつた以上あり得ると思いますが、これはまあやむを得ないことではないかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/33
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034・鍛冶良作
○鍛冶委員 ちよつと取違えておられるのではないか。かえつて強制和議になるとこれは困りはしないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/34
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035・位野木益雄
○位野木政府委員 質問を取違えましたが、従前の和議法による強制和議ができなくなるのじやないかというふうな点でございますと、これは向うの手続によれば足りるということでございますれば、向うの手続を利用されてけつこうなんでございます。ただ向うの手続で不十分であるという場合にはこちらの手続を始める、そうしてこちらの手続が始まれば向うの手続を中止するというふうなことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/35
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036・田万廣文
○田万委員 最後に一点だけ関根民事局長さんにお尋ねいたします。強制和議というものをわれわれは存じておりますが、普通の調停でも強制調停というものがあるように伺つております。その全国的な強制による調停あるいは強制和議というものの統計がありますか。裁判所はいずれかと申しますと実際は強制はあまりお好みになつておらないようですから、ただいまその数が非常に少いと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/36
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037・関根小郷
○関根最高裁判所説明員 今田万委員からの御質問は、おそらく政府側から資料を差上げてあると存じますが、今お話の通り、やはり強制和議事件は数えれば非常に少いのであります。しかし強制和議が少いということから、強制的にやることを裁判所が好まないということはないと思います。職権があります以上は……。これはたとえて申し上げますると、今調停のお話が出ましたが、これは鍛冶委員から御提出になつた今度の民事調停法、こちらで御審議してつくつていただいた法律、あれにも調停にかわる裁判、あれは強制で当事者同士が納得いたしませんでも、裁判所が案をつくつてやる、これの利用程度でございますが、これは今までございました制度から申しますると、たとえば人事関係の家」事調停、これなどは相当利用しております。ただあの事件は当事者が文句があると、結局だめになりますけれども、文句が出るということはあとまわしでございまして、その前は強制的につくつてしまう。裁判所が一旦やつた以上はやむを得ないから納得するといつた事件が非常に多いのであります。でありますので強制を裁判所がいやがつていたら裁判官の仕事はまず勤まらないじやないかということにも考えられますので、その点は御心配はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/37
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038・田万廣文
○田万委員 強制という言葉は何だかいやな感じを持つのです。従つて民主的な裁判所としてなるべくその当事者双方の納得の上に裁判なり議論して行くという方針をとつておられるように私は考える。従つて強制調停、強制和議というものは非常に少い結果になつていると私は考える。そういうような実態において、そういうようなあり方の裁判所が、今度この会社更生法案というものができた場合、先ほどからの提案理由を聞いてみますと、高度の強制方法をとられるということになるが、はたしてねらつている実績は上げ得るかどうかということ、これは私どもひとつ研究したいと思う。それに対する見通しはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/38
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039・関根小郷
○関根最高裁判所説明員 今田万委員からのお話、これもごもつともだと存じます。実は強制的な権能を裁判所がやる場合には、その権能は伝家の宝刀として奥にとつておけということをいうのです。伝家の宝刀だからいよいよにならなければ拔かれない。しかし最後の必要なときは抜かざるを得ない、拔かなければ腐れ刀になつてしまう、これは御承知の通りだと思う。今度のこの法案を拝見いたしますると、実は裁判所が強制する、刀を抜く前にいろいろな補助機関として補助機関と申しますとあるいは語弊があるかと存じますが、管財人、それから調査委員、その他いろいろな裁判所を助けてくれる補助的機能を果す方がおるわけであります。それで管財人がいい案をつくつてくれれば結局当事者が納得する率が多くなる。反対する率が少くなれば裁判所で気が軽くなる。この法案はその点についても今日心身配りておるのではないかとわれわれ考える。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/39
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040・押谷富三
○押谷委員長代理 次に山口委員より質疑の通告がありますからこれを許します。山口好一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/40
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041・山口好一
○山口(好)委員 各委員から総括的な御質疑がございましたが、少しく内部にわたつて質疑いたしたいと思います。
まず第一に、第一條でありますが、本法適用の対象は、第一條で株式会社に限定されている。田万委員からもこの関係の御質疑がありましたが、ほかの会社もあり、特に有限会社、これも相当ありますが、なぜ有限会社を除外しておるかということを承りたい。本法案は株式会社だけに適用があるとすれば、名前も株式会社更生法といたすべきものじやないか、この点御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/41
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042・位野木益雄
○位野木政府委員 この法案の対象となるものを株式会社に限定いたしましたのは、この更生手続がわが国におきましてはまつたく新しい制度でございますので、さしあたり企業形態の最も代表的なものであります株式会社に一応限定して規定したというにとどまるのでありまして、企業の維持更生をはかるという必要性は有限会社等についても考えられますので、この株式会社についての実績を見た上、将来有限会社等につきましてもこの制度を拡張いたしたい、こういうふうなつもりでおります。
それから法案の名称でございまするが、ただいま申しましたように、この更生手続は将来他の会社にも及ぼしたいという含みを持たせまして、なおかつこの会社が株式会社というのでは少し狭いという点もありますので、両方の理由から会社更生法といたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/42
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043・山口好一
○山口(好)委員 これはその程度にいたしまして、しかしなお有限会社を区別するというような理由は、まずもつてその試験的にやつてみるといたしましても、これは理由がないのではないかと当委員は考える次第であります。この点を御再考願いたいと思つております。
次にこの法案を見ますると、裁判所の権限が非常に強力かつ広汎に規定されております。会社を運営しつつ更生させようという本法の特殊性にかんがみますれば、ただ法律知識を持つのみの裁判所にかかる権限を與えることがはたして妥当であるかどうか、この法律の目的をほんとうに達成し得るかどうかという疑問があります。この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/43
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044・位野木益雄
○位野木政府委員 御指摘の点はごもつともなところもあると存ずるのでありますが、この更生手続は、会社に関する特別和議手続とも申すべきものでありまして、しかも債権者の権利の一定の手続というものも中に含まれておるわけであります。従いまして、当事者の権利に重大なる影響を及ぼす手続でございますので、当事者の権利の保護という見地から、やはり裁判所に取扱わせるのが一番適当ではなかろうかというふうに考えたわけであります。ただ経済的な知識と経験というふうな点から申しますれば、裁判所が最も適当であるということは申せないと存じますが、監督行政上あるいは経済関係官庁の協力を得られるし、また管財人その他の機関に適当な人物を選任して行くようにすれば、所期の目的を達し得るのではないかと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/44
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045・山口好一
○山口(好)委員 次に第八條でございますが、ここでは民事訴訟法を準用しております。ところが更生手続の本質から考えますと、非訟事件手続法を準用することの方が筋が通ると思うのであります。この法律の精神は、利害関係者が相争うのではなくて、相和して更生させるというのが目的でありますから、率直に非訟事件手続法を準用してしかるべきものではないかと考えるのでありますが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/45
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046・位野木益雄
○位野木政府委員 御指摘のように、この手続は、性質といたしましては非訟事件の部類に属するかと考えるのであります。従いまして、非訟事件手続法を準用することが適当というふうな見方も出て来るかと存じますが、この手続におきましては、訴訟的法な要素も多分にあるわけであります。非訟事件手続法の準用のみでは不十分であると考えます。のみならず、非訟事件手続法の規定しております特則的な規定は、この法案に十分盛り込まれておりまして、この点におきましても非訟事件を準用する余地は少いのではないか、むしろ民事訴訟法の規定が警備いたしております関係からも、民事訴訟法を準用する方が適当ではないかと考えまして、第八條におきましては民事訴訟法を準用いたしたわけであります。このことは、和議法におきましてもいろいろございまして、和議事件は性質上非訟事件に属すると解せられておりまするが、やはりこれと同様民事訴訟法を準用いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/46
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047・山口好一
○山口(好)委員 次に第三十條でありますが、これは本法の條文のうち一番重要な点と思われますので御質問をいたします。
三十條の観念は新しい観念でありまして、「事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないときは」云々、こういうふうになつております。この表現が、先ほどの提案理由の御説明のようであるとすると明確を欠いているきらいがあるのであります。第一に、三十條に定められました手続の開始されまする條件、これにつきまして具体的な例をあげて説明をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/47
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048・位野木益雄
○位野木政府委員 三十條の御指摘の字句は、具体的に申しますとこういうふうなことを考えているわけであります。たとえばある会社が、不動産や何かの固定資産が非常に多い。そうして流動資産が枯渇している。債務はたくさんにあるけれども、しかしながら、固定資産を評価した場合は、その総額がなお赤字というふうには至つていない。であるから、破産の原因とかいうふうな点から考えてもそういうふうな事態には立至つていない。しかしながら、当面する債務の支拂いには事を欠いておる、当分その資金を得る見込みがない、信用もないというふうな場合に、これを放置いたしますると会社はどんどん強制執行を受ける。そうすると、事業の方もうまく行かない。ほかの債権者も皆争つて攻勢に出て来て、はては破産に至つたというふうな、本来ならば、財産状態自体としてはそれほど悪化していない場合におきましても、流動資産の枯渇によつて債務が拂えないためにそういうふうな悲惨な状態に陷るということがあり得るわけであります。そういう場合に、これは固定資産を売れば十分債務を弁債し得るわけであります。しかしながら、その固定資産を売るということになりますと、もうあと事業が成り立つて行かないというふうな場合のことを指しているのであります。「事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁債期に債務を弁済することができないとき」というふうな字句を使つたわけでありまするが、逆に考えますと、弁済金、いわゆる債務を弁済すれば事業の継続に著しい支障を来すというふうな場合ということも言えるわけでありまするが、字句の関係からこれをこういうふうな表現にいたしたのでありまして、この開始原因はアメリカにも同様の取扱いがございまするが、この手続においても同様な開始原因が認められておるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/48
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049・山口好一
○山口(好)委員 それでは先ほど提案理由の説明があつたときには、この字句を、事業の継続に著しい支障をきたすことなしには、というふうに言つたようですが、そういう字句の方がはつきりするのではないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/49
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050・位野木益雄
○位野木政府委員 なしにはといつた方が、あるいはわかりやすいかとも存じまするが、法文の書き方からあまりくだけ過ぎるといいますか、そういうことになるおそれもありましたので、「きたすことなく」というふうにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/50
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051・山口好一
○山口(好)委員 その点はこまかいですから、なおわれわれも考えることにいたしたいと思います。
次に第二章になりますが、現在税金攻勢で相当に困つている会社が多いのでありますが、これは本法のこの更生の対象となり得るかどうか、特に第三十八條第六号との関係はどうであるかということを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/51
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052・位野木益雄
○位野木政府委員 税金が非常にかさみまして、そういうふうな困難な状態に陷つた会社につきましても、この手続はもちろん適用になると考えております。ただ第三十八條の六号におきましてこの税金の債務を負けてもらうことを主たる目的として、この手続を始めるということは許さないということにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/52
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053・山口好一
○山口(好)委員 次に三十條第二項の申立者、これは百万円以上の債権者というふうになつておりまするが、百万円とした基準は何によつたか。
それから次に四十六條の管財人の選任について、会社の債務が二千万円以下のときは管財人を置かなくともよろしいという規定がありまするが、この二千万円との関連もどういうふうになつているか、これを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/53
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054・位野木益雄
○位野木政府委員 まず三十條二項の百万円でございますが、これは現在の経済状態から申しますならば、百万円程度の債権を有する者は、資本の十分の一の金額に満たなくても、更正手続を開始し得ることにして適当じやなかろうかという考え方から、こういうふうにいたしたのでございまして、特に数学的な根拠があるわけではありませんが、現在の経済状態から見て、このような金額にいたしたわけであります。
それから二千万円の点でございますが、これは会社の賠償を一応どの程度で切るかということが問題でございまして、いろいろ考えることができるわけでありますが、戦前におきまして会社の賠償を定める基準といたしまして、資本金二十万円という基準が設けられていたのです。資本と債務とは必ずしも一致しないし、ことに現在のような経済情勢では、その点の食い違いもあることと思いますが、とりあえずその辺に基準を設けまして、その百倍の二千万円という程度ということにいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/54
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055・山口好一
○山口(好)委員 今の管財人の問題ですが、四十六條で会社の債務が二千万円以下のときは、管財人なしでもよろしいという規定になつておりますが、いろいろわれわれが調査いたし、業界の意見などを聞きますと、これはやはり必ず置いた方がいいという意見の方が多いのでありますが、この点についてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/55
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056・位野木益雄
○位野木政府委員 更正手続の公正をはかる点から申しますれば、常に管財人を置くことは好ましいわけでございます。しかしながら会社の規模が小そうございまして、あまり費用を出せば、その費用のために更生ができなくなるというふうな場合があるかと存じます。そのような場合にも常に必ず管財人を置かなければならないということにいたしますれば、せつかくの手続を利用させ得ないということになりますので、裁判所もこの程度ならば置かなくてもさしつかえないということを認めますれば、置かなくてもいいということを認めたのでありまして、裁判所の運用がよろしきを得れば弊害はさほどないのではないかというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/56
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057・山口好一
○山口(好)委員 次にその費用に関連した問題を伺いますが、三十四條の手続費用の予納規定でありますが、この費用の使途の内容は、何を予定しておりますか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/57
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058・位野木益雄
○位野木政府委員 予納されますものといたしましては、手続開始後における公告、及び送達の費用が大なるものであります。そのほか管財人の報酬等も場合によつて相当額積ませる必要があるのではないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/58
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059・山口好一
○山口(好)委員 この費用の予納制度は、財界一般の最も心配している点でありまして、管財人あるいは審査人、調査委員、法律顧問というようなものなどに対しまする報酬とか、会社の労務や財産管理に対する費用なども、この予納金でまかなうということになりますと、莫大な予納金か必要とすることになり、とても支抑えない、従つてこの法律はできても使うことができないというような結果にもなりますが、この点いかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/59
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060・位野木益雄
○位野木政府委員 御懸念はごもつともと存ずるのでありまするが、更生手続が開始いたしました後におきましては、その費用は会社の財産の中から支拂うのが建前であります。従いまして管財人その他の機関に対する報酬等も、そのうちからまかない得る場合が多いと存じます。そういうものはもちろん予納させる必要はないのでありまして、ただ開始直後、一、二箇月はあるいは会社から急に支弁できないような場合があるかもしれない。そういうふうな場合のことを考慮いたしまして、一、二箇月分というものを管財人について予納させるというふうな程度で済むのじやなかろうかと考えるわけであります。この点ほ第三十四條の二項におきましても、特にそういうふうな規定を設けまして、予納費用がかさまないようにということを顧慮いたしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/60
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061・山口好一
○山口(好)委員 この三十四條の二項ですが、これを見ますると、会社が申し立てる場合と、会社以外の考が申し立てる場合と、こうありまして、この両者の場合において、裁判所が予納金を決定するのに、基準が違つて来る。会社以外の者にとつては、その結果申し立てにくいという結論になる危険はないかどうかということを伺います。それと、さような点から、この予納の費用の基準を法律をもつて大体示しておいてやつたならば、一層効果が上るのではないかと思うのでありますが、この二点について伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/61
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062・位野木益雄
○位野木政府委員 会社以外の者が申立てをしたときと、会社が申立てをした場合と、原則は同じであります。ただ会社が申立てをした場合には、更生手続開始後におきましては、会社から当然支弁することになりますので、ただ予納というのは、本来自分の方から出すのを少し早目に出すというだけの違いでありましてこの二項の後段におきましては、会社以外の者が申立てをしたときには、会社から出せるのであるから、その点を考慮して少くしろということを定めたにすぎないのであります。特に会社以外の者が申立てを上た場合に、よけい予納させられるということはないと考えます。
それから基準を法定すればどうかという点でございまするが、基準は非常ないろいろな点が考えられますので、非常にこまかく規定いたしますと、これはたいへんなことになるのじやないかと存ずるのでありまして、ここでは最小限度の、「事件の大小等を考慮して定める。」というふうにいたしまして基準を定めたのでありまするが、それ以上の点は事件々々によつて違いますので、なかなか法律に全部規定しますことは、いろいろ困難があるのではないかというふうな気もいたしまして、この程度にとどめた次第であります。これは運用によりまして、あまりに過大でありますれば、抗告もできますので是正されるというようなことで、何とかまかなえるのじやないかというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/62
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063・山口好一
○山口(好)委員 次に四十條に規定されております調査委員でありますが、この調査委員の選任は、裁判所の運用にまかせるのか、あるいは最高裁判所規則、ルールでも制定してやつて行くのか、この点を伺います。
それから実際には調査委員はどの程度の範囲から選任されるかという点をあわせて伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/63
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064・位野木益雄
○位野木政府委員 調査委員の選任は裁判所が適当にその裁量によりまして選任し得るということを考えておるのでありまして、その資格要件としては第二項に規定したものであれば足りるのであります。それ以上につきましては裁判所の裁量にまかした方がより適当ではないかと考えておる次第であります。
なお具体的な人選の範囲はどうかということでございますが、これは弁護士とか、あるいは公認会計士とか、あるいは実業家からとかいうふうに、それぞれ適当な必要な学識経験を持つておられれば、そういうふうな範囲の人から、選任されるものと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/64
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065・山口好一
○山口(好)委員 いま少し伺いますが、調査委員の調査期間はどのくらいに大体予定しておりますか、一般財界の意見を徴しますと、更生決定は裁判所がやる、先ほどもいろいろと御説明がありましたが、おそらく調査だけでも一年くらいかかるのではないか、こういうふうに考えております。経済界の事情も刻々に変動して行くという今日の状態でありますので、この調査もすみやかにやつて、むしろ拙速主義でも早くやるということでなければ、効果が上らないと思うのであります。この点いかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/65
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066・位野木益雄
○位野木政府委員 調査の期間はその事案の内容にもよりますが、急げば半月もあれば十分にやり得るのではないかというふうに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/66
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067・山口好一
○山口(好)委員 次に五十三條は、管財人の権限を規定しておりまするが、取締役の権限は、この際どうなるか、「会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利は、管財人に専属する。」ことになるのでありますが、取締役はいかなる範囲で仕事ができるのか、たとえば株主総会を招集するというようなことができるか、この際の総会費用の支出はどうなるかということを承りたいと思います。
なお商法上の取締役の責任追求の訴えとの関係はどうなるかということを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/67
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068・位野木益雄
○位野木政府委員 更生手続開始後、管財人が置かれました場合には、取締役はその地位は失いませんが、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権限は持たないわけであります。従いまして財産関係の権限は一切失うということになるのでありますが、人格権的な権利、これは依然として失わないというふうに考えております。たとえば取締役の改選をする事態になつたというふうな場合には、取締役は株主総会を招集して、その改選の手続をとるということができるというふうに考えております。その費用は、やはり財産関係のことになりますので、共益債権として支出してもらうということになります。
次に取締役の責任追求の訴えとの関係でございまするが、これは更生手続開始後、管財人が置かれました場合には、取締役は経営管理に関與しないのでございまするから、その間の責任を追求されるということはないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/68
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069・山口好一
○山口(好)委員 次に五十四條の第九号であります、「その他裁判所の指定する行為」、五十四條は裁判所の許可を要する行為でありますが、そのうちの第九号の「その他裁判所の指定する行為」というのは、何でありますか。これを伺つておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/69
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070・位野木益雄
○位野木政府委員 第五十四條第一号によりますと、会社財産の処分につきましては、原則として裁判所の許可を要することになりますが、五十四條の但書によりますると、裁判所の定める金額以上の価額を有しないものにつきましては、裁判所の許可を要しないわけであります。しかしながら、特に重要な行為、たとえば現金の支出、あるいは不動産の処分というふうなことにつきましては、金額のいかんにかかわらず、裁判所の許可を要するというふうなことにしたいという場合には、この第九号によりまして、裁判所はそういうふうな行為を指定すればそういう行為をすることにつきましては、裁判所の許可を要するということになるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/70
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071・山口好一
○山口(好)委員 次に第六十七條、これは他の手続の中止に関する規定でありますが、先ほどもどなたからかちよつと質疑があつたようですが、租税滞納処分などを六箇月間中止あるいはいたさない、さらに必要な場合には、管財人、あるいは会社の申請により、あるいは職権をもつてなお三箇月間伸長することができるとなつておりますが、これは実益の点からいつてどうかということを伺いたい。それからさらに減免の規定がありますが、減免には徴収権限を有するものの同意を要件としております。そうすると、はたしてこの徴収権限を有するものの同意が得らるるかどうか、こういう疑問があります。この二点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/71
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072・位野木益雄
○位野木政府委員 租税滞納処分の中止期間は、御指摘のように六箇月、長くて九箇月ということがございまして、必ずしも十分とは申せないと存じまするが、これは手続が始まつた後、最小限度この程度はどうしても手続には期間がかかるという期間でありまして、その期間は当然とまるということにはいたしましたが、その期間を過ぎましても、これはただちに滞納処分を続行するというふうなこととには限らないのでありまして、それ以後は税務当局の裁量によりまして、滞納処分を続行し得るということになるだけであります。もちろん税務当局といたしましても、滞納処分を続行すれば手続がうまく行かない、失敗に帰するということは、承知いたしておりまするので、手続が円満に運ぶようでありますれば、これはもう十分自制して手続に協力するであろうということが考えられるわけであります。それ以後どのくらい期間を延ばせばいいかということを考えますと、これはまた延ばせば切りがないことであります。最小限度、法定的に法定期間として中止の期間を定めましたが、あとはそういうわけでありまするから、場合によつて、個々の場合に応じて徴税当局の裁量による。そうしてしかるべく協定してもらうというふうな立て方にいたしたわけであります。
租税の延納等について、徴税当局の同意を得られるかどうかという点でございますが、会社をつぶしてしまえば、税金といえどもこれは取りようがないのでありますから、生かして取る、その方が徴税プロパーの見地からも有利であるということは、十分考えられることでありまして、国税関係の当局におきましても、そういうふうな意向も漏らしておりました。従いましてこれは運用によつて十分同意を得る見込みがあるものというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/72
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073・山口好一
○山口(好)委員 次に七十八條以下の否認権の規定でありますが、これは破産法と同様の趣旨であると考えますが、この訴えまたは請求もまた数年を要するということにはならないでありましようか。位野木君と裁判所の関根君にお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/73
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074・位野木益雄
○位野木政府委員 御指摘のように、従前の破産手続等につきましては、否権行使のために破産手続が非常に延引している事例がしばしばあるように承知いたしております。従つてこの立案にありましても、否認権については何とか早く片づく方策がないかといろいろ考えをめぐらしましたが、何としましてもこれは実体権の存否を判定するものでございますから、あまりに略式の手続で片づけてしまうということは、これはやはり相当考慮しなければならぬということから、ここでは特に略式の否認の行使の方法を認めましてできるだけ否認の請求がすみやかに運ぶようにというふうなことを考慮いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/74
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075・関根小郷
○関根最高裁判所説明員 今山口委員からのお話の点、否認権の訴訟が長びくということはごもつともでございまして、ただ今位野木政府委員から申されたように、今度は略式の手続も認められましたし、この手続全体といたしまして急ぐということは当然裁判官としても考えざるを得ない。否認権の訴訟におきましては、ほかの事件よりも先にやるという気構えで行きたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/75
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076・山口好一
○山口(好)委員 政府委員の説明が第二章まででありましたから、ここで私の第一段の質問を打切りまして、次の御説明を承つてからまた御質問をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/76
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077・押谷富三
○押谷委員長代理 次に梨木作次郎君より質疑の通告がありますからこれを許します。梨木作次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/77
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078・梨木作次郎
○梨木委員 第一に伺いたいのは、この会社更正法によつて更正を期待しておるような会社が日本に現在どのくらいあるのか、これを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/78
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079・位野木益雄
○位野木政府委員 お答えいたします。この手続を適用するに適当な会社と申しますと、これはちよつと調べることも困難でありますから、どのくらいあるということは客観的には申せませんが、ただ現在会社の破産の事件が非常に増加しております。従前この破産事件のうちで法人の破産というものは、通常二割程度でなかつたかと思います。割合におきましては非常に少なかつたわけでありまするが、最近におきましては半数近くが会社の破産ということになつておるようであります。個人につきましても、会社の関係で申立を受けておるのが多い。たとえば取締役、社長に対する個人的な破産というふうなものが多いと承知いたしておりまするが、そういうふうな会社はもし適当なる更生手続があつて、もし関係者の方で利用を考えつきますれば、当然この手続を利用し得る立場にあると考えられるわけであります。またこの会社の整理の事件というのは商法にございますが、この事件も最近まではあまりなかつたようでありますが、一、二年前から非常に増加いたしまして、現在東京地方裁判所等におきましても十数件係属しておるようであります。これらの手続も、もし更生手続ができれば、すみやかにこちらの方に切りかえたいというふうなことを申しておる事件もあるように聞いております。従いまして、これを利用し得る事件というものはそう少なくないのではないかというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/79
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080・梨木作次郎
○梨木委員 この法案を見ますと、会社以外の債権者側からの申立には百万円以上というような制限、あるいは資本の十分の一というような制限があります。そこで会社に関する破産事件が多くなつておるというような現象だけから見て、本法案の対象により得るような会社がどれくらいあるかということの説明にはならないと思うのであります。私はそう考える。そこで今御説明のあつた点についてもう少し掘り下げてお伺いいたしますが、それでは、今法人の破産事件がふえておるとおつしやいますが、法人といつても、先ほども質問が出たように、有限会社とか合資会社もあります。株式会社がそのうちどれくらい占めておるのか。そしてまた今破産事件として係属しておる中においては、資本の十分の一以上にあたる金額あるいは百万円以上の債権を有しておるものから、申立のできるような條件を備えておるものはどれくらいあるのか、こういう点についての詳しい資料的な御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/80
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081・位野木益雄
○位野木政府委員 ただいま手元には、今何件……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/81
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082・押谷富三
○押谷委員長代理 梨木君、この資料は、ずつと言つてもらつて明日続行しますから、明日報告してもらつたらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/82
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083・位野木益雄
○位野木政府委員 数字的なことについては後に御説明いたしますが、従前の統計なんかによりますます法人の中の大多数は株式会社であります。でございますから、法人の統計というものは株式会社がほとんど大多数を占めておるものと存ずるわけでありますが、この計数は後にお知らせいたしたいと思います。
それから申立権者がどの程度の債権を持つておるかというふうなことは、これは破産事件におきましては、そういう点は御承知のように條件になつておらないのでありますから、必ずしも的確にわからないわけでありまするが、会社の更生をはかるために、それに同意のものを組合すれば資本の十分の一程度の債務者はこれを組合し得るのではないかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/83
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084・梨木作次郎
○梨木委員 この点を的確に御説明いただかないと、この法案がどういう目的で出されておるのか理解に苦しむのであります。というのは、軍にこの法案の第一條を見ますと「窮境にあるが再建の見込のある株式会社について債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的とする。」となつております、しかしこの法案全体を見ますと、非常に強力な財産権に対する制限であるとか、あるいは判決の執行を停止するような強力な力を與えておるのであります。これは反面、この法案の適用を受ける相手方から言えば、非常に経済的な犠牲を強制することになるのであります。従つてこの法律の適用を受けるような対象となる会社というものは、新しい日本を建設して行く上においてやはりこれに重点的に役立つような企業にこの法律を適用するということが、主眼点にならなければならないと私は考える。ところがこれには単に抽象的に窮境にあるが再建の見込みがある株式会社というだけで、企業別に、また今後の日本の経済の平和的な発展のために役立つような会社にこの法律の適用を制限するということが、最も多数の国民の利益に役立つと私は考えるのであります。もしも日本の多数の国民に犠牲を押しつけるような会社の更生―大きな経済的な負担をかけながらそのものを保護するような更生であつてはならないと考える。私はあとでまた外国法人の問題について、特にこの点が重要になつて来ると思うから、質問するのでありますが、日本の再建にとつて最も重要な重点的な産業にこれを制限するという意思は持つておるのかどうか、この点について運営の面について政府はどういうふうに考えておるのか、これをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/84
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085・位野木益雄
○位野木政府委員 この法律が非常に協力な権限を裁判所に認めておるということは御指摘の通りでございますが、御承知おき願いたいと思いますのは、この法案は必ずしも会社の理事者を保護して債権者等を圧迫するというような手続ではないのでありまして、企業の維持存続をはかる、企業の主体はたれであつても、この企業自体をつぶしては元も子もなくなつて、結局国民経済に大きな損失を與えるということを顧慮した法案であります。従いましてこれは重点的にある会社にのみ適用するのではなくて、すべての企業、すべての更生に値する企業を対象として、これを更生せしむるということが適当でありまして、対象を持に限るということは、むしろこの恩典に浴させないということになつて、好ましくないのではないかというふうに考えておるわけであります。しかもこの強制的な要素といたしましても、これは裁判所が一方的に何らの意見を聞かずきめるというふうなものではもちろんございませんで、大多数の権利者の納得の上でやるとう手続でございますので、結局において、この企業の更生というために、お互いが少しずつ譲り合つて、お互いに繁栄して行こう、こういうふうな精神でこの法案が構成されておると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/85
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086・梨木作次郎
○梨木委員 そうすると、今の御説明では、企業の種類、国民経済に寄與する比重、そういう点を全然考慮しないで、無差別に、どんな会社についてもこの法案を適用するのだという御説明であつたと思うのでありますが、私はこれは非常に重大な問題であると思うので、もう一度念を押して政府の御意見を聞いておきたいのでありますが、今日日本の大きな会社というものは、たとえば日立とか東芝とかいうような会社がありますが、これは実際はその会社でいろいろな仕事をやつておるだけではなくして、たくさんの下請の会社も持つておるのであります。従つてこの元の会社がこういう会社更生法の適用を受けるようなことになつた場合に、その波及するところは非常に大きいのであります。だからこの適用にあたりましては、国民経済に積極的に寄與するような重点的な産業に、この法律の適用を限定することによつて、ほんとうに国民経済の発展に寄與することになると、かように私は考える。だからこれはやはり制限この適用する会社をすべきじやないか。現に法案を見ますと、金額の上から行きましてたとえば資本の十分の一以上だとか、あるいは百万円以上の債権と、こういうぐあいに限定しておる。この面では限定しておるのだから、それでは企業別に国民経済に寄與する強度を考えてやつて行くということが最も望ましいと思うのでありますが、この点はお考えになつたのかどうか。そしてその点についての政府の見解を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/86
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087・位野木益雄
○位野木政府委員 大会社が破綻いたしますと、下請会社等に影響するところが非常に大であるということは十分考えられることでございます。この更生手続が大会社に適用されるということになりますと、自然精神的にもあるいは経済的にも、下請会社にも影響があるということは考えられると思いまするが、これは大会社がつぶれた場合を考えますと、その影響は非常に小さい。これはそういう場合と比べてやむを得ない最小限度の犠牲ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。先ほども申しましたように、この「事業の維持更正を図る」という点は、これは特に重要な産業というふうなことに限定するまでもなく、すべての事業について言えることじやないかというふうに考えておるわけであります。「資本の十分の一」と申しますのは、これは別に株式会社の規模が大きくなければならないというわけではございません。その規模に応じまして、資本の十分の一の債権者が集まれば手続の開始がなされ得るというだけのことでございますので、その点は特に大会社ということには関係がないというふうに考えておるわけであります。重点的に、特に国民経済に重大な役割をになうというものにつきましては、これはもちろんこの手続で更生をはかりますれば、十分利用し得べきものと考えますが、それ以外にももし更生の見込みがあるというような会社でありますればそういうものに限らず、すべて利用の道を開くべきではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/87
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088・梨木作次郎
○梨木委員 この点、私も非常に重要な点と思うので、明日また質問を続行したいと思います。きようはこの程度で終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/88
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089・押谷富三
○押谷委員長代理 この際お諮りいたしますが、この法案につきまして利害関係者、学識経験者より意見を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/89
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090・押谷富三
○押谷委員長代理 異議がなければさよう決定いたします。
なお参考人よりの意見の聽取は、大体来る二十六日午後一時より行いたいと存じますが、参考人の指名につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/90
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091・梨木作次郎
○梨木委員 二十六日は、大体これから議運できまるだろうと思いますが、平和條約が本会議に上程されるかもしれない。だからどうもその日には……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/91
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092・押谷富三
○押谷委員長代理 大体の予定ですから、そういうことがあつたら変更いたします。
では人選につきましては御一任願えますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/92
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093・押谷富三
○押谷委員長代理 ではさようとりはからいます。
本日はこの程度にいたし、明日午後一時より質疑を続行いたします。本日はこれにて散会いたします。
午後四時十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00519511024/93
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