1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月二日(金曜日)
午後二時二十一分開議
出席委員
委員長代理理事 押谷 富三君
理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君
鍛冶 良作君 佐瀬 昌三君
古島 義英君 牧野 寛索君
松木 弘君 眞鍋 勝君
小野 孝君 石井 繁丸君
田万 廣文君 梨木作次郎君
出席政府委員
法制意見長官 佐藤 達夫君
検事(法制意
見参事官) 位野木益雄君
委員外の出席者
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小木 貞一君
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十月一日
委員猪俣浩三君辞任につき、その補欠として稻
村順三君が議長の指名で委員に選任された。
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十月三十日
土地家屋調査士法の一部改正に関する請願(江
花靜君紹介)(第五〇一号)
福島地方法務局松川出張所存置の請願(大内一
郎君紹介)(第五三九号)
の審査を本委員会に付託された。
十一月一日
治安態勢強化に関する陳情書
(第四〇五号)
荻原法務局出張所存置に関する陳情書
(第四一二
号)
国家安全保障法案反対に関する陳情書
(第四一三号)
石川町に簡易裁判所並びに検察庁設置に関する
陳情書
(第四五五号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
会社更生法案(内閣提出、第十回国会閣法第一
三九号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/0
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001・押谷富三
○押谷委員長代理 これより会議を開きます。
会社更生法案を議題といたし、先日に引続き質疑を続行いたします。梨木委員より質疑の通告がありますからこれを許します。梨木作次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/1
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002・梨木作次郎
○梨木委員 百三條の第四項に「前三項の規定は、労働協約には適用がないものとする。」となつておりますが、労働協約の分はそれでわかりますが、個々の労働契約についてはどういうことになるのか伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/2
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003・位野木益雄
○位野木政府委員 個々の労働契約は、百三條の規定によりまして解除できるというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/3
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004・梨木作次郎
○梨木委員 個々の労働契約は、百三條によつて解除することができるというお答えでありますが、そうなりますと、労働組合があり労働協約のあるところは、ある程度労働者の権利の保護ができますが、労働協約のないところでは、この面から受ける労働者の権利の保護には不十分なものがあると思うのでありますが、この点はどういうようにお考えですか伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/4
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005・位野木益雄
○位野木政府委員 百三條は、更生手続が開始したために、その更生の必要上やむなくこういうふうな権限を行使せざるを得ない場合の措置を認めたのであります。これにつきましては、管財人といえどもこれはよほど慎重に運用されるものと考えますが、さらに第五十四條第四号で、この契約の解除につきましては裁判所の許可がいるというふうなことになつております。これによりまして十分保護されるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/5
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006・梨木作次郎
○梨木委員 労働協約と個々の労働契約との関係については、学説上でもいろいろ問題がありますが、今御答弁を伺いましたので、この点についての私の疑問点は、次会に質問することにいたしまして、これはその程度にいたします。
それからその次に百十九條について伺いたいと思います。ここで、「更生手続開始前六月間の会社の使用人の給料」ということが規定されておりますが、この使用人の給料とは基本給だけの意味ですか。それとも労働者側から見て、一切の諸手当を含めたすべての手取りを意味しているのかどうか、その辺のところを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/6
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007・位野木益雄
○位野木政府委員 すべての使用人の受ける報酬が入るかどうかということは、一概に言い切れないと思いますが、いわゆる扶養手当とか、あるいは勤務地手当とか、そういうような種類のものは、この給料の中に入ると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/7
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008・梨木作次郎
○梨木委員 これはもう少し明確にしていただかないと困る。今、労働者の賃金支払いの実情というものは、毎月もらう収入のうちの半分ぐらいが基本給となつておりまして、あとは能率給だとかいろいろな名目の複雑な項目を設けて支給をされているというのが、実情であります。従つて、たとえば今、扶養手当だとか勤務地手当だとか言われますが、公務員の場合は、こういうような分については法律上の規定や習慣もかなり確立されている面もありますが、しかし労働者の給料ということになりますと、個々の企業についてもまちまちでありますし、非常に問題が多いのであります。これはどういうように扱う考えでおるのか、もう少しその点を明確に聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/8
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009・位野木益雄
○位野木政府委員 御指摘のように、できれば給料の範囲を一々列挙した方が好ましいと考えるのでありますが、この内容も、またその名称も、その都度非常に変更しやすいわけでありまして、法律がかわるたびにそういうものがかわるということでありまして、それを一々ここに表示するということは困難ではないかと思います。この給料というものの中には、どういうものが入るということは、従前の民法の先取特権の解釈などでも給料というものがありまして、その解釈はおのずからきまつておると思います。この法律でも、民法のこの言葉に従いまして給料といたしたのでありまして、その内容も同様というふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/9
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010・梨木作次郎
○梨木委員 そういたしますと、ここでいう給料というのは、労働の提供に対する一切の対価というように解釈してよろしいのかどうか伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/10
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011・位野木益雄
○位野木政府委員 先ほど申しましたように、個々の場合について検討いたしませんと、明確なことは言いがたいと思いまするが、大体において仰せの通りと考えていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/11
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012・梨木作次郎
○梨木委員 それに関連してでありますが、使用人と申しました場合に、臨時工も含むのかどうか。これは当然なことのように思いますけれども、今企業では、労働基準法の適用からのがれようとする手段といたしまして、臨時工を非常にたくさん使用しておるのであります。本法でいう使用人という中には、臨時工は含んでおるのかどうか、明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/12
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013・位野木益雄
○位野木政府委員 含むと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/13
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014・梨木作次郎
○梨木委員 百四條の第二項の中で「会社の受けた反対給付が会社財産中に現存するときは、相手方は、その返還を請求し、」云々とあります。この解釈でありますが、会社の使用人から申しますならば、労働を提供しておるわけであります。この提供によつて会社のいろいろな財産はふえて行くわけであります。そういたしますると、常に使用人の労働提供によるところの成果が、会社財産中に現存することになると思うのであります。会社財産に対しましてそこの労働者からいいますならば、すべて共益債権者として権利を行うことができると考えられますが、その通り解釈してよろしいのかどうかお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/14
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015・位野木益雄
○位野木政府委員 百四條二項の会社財産中に反対給付が現存するときはというのは、やはり具体的に把握し得るようなものが存在する場合を想定しているものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/15
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016・梨木作次郎
○梨木委員 それではよくわからないのでありますが、たとえばある商品を生産する工場におきましては、どんどん物が生産されて、具体的に商品が会社にある。これはきわめて具体的であります。それに対しまして、労働者が共益債権者として権利を行使することを認める趣旨であるのかどうかということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/16
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017・位野木益雄
○位野木政府委員 具体的な事例が必ずしもはつきりいたしませんので、十分なお答えができないと存じますが、大体更生手続開始前の使用人の労働の対価というものは、百十九條によつて十分保護されておるというふうに考えております。で、それ以上何らかそういうふうなものが権利として残るかという点は、これはどういう場合のことをいうのか、もう少し具体的な場合を考えてみないと何とも言えない、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/17
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018・梨木作次郎
○梨木委員 私は具体的に伺いたいと思うのでありますが、物を製造する会社では、労働者は労務を提供いたします。その結果といたしまして物が生産されます。この物は会社の財産だろうと思います。これらの物が存在するときに、これを会社から返還を請求するとか、それをほかへ売つた場合には、その代金について共益債権者としてその権利を行うことを認める、こういう趣旨でこれが規定されておるのか、そういうことを聞いておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/18
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019・位野木益雄
○位野木政府委員 労働者がその労務を提供した場合の対価は、これは給料というもので十分に保障されておると考えられます。従いましてそういう場合に、なお物品の代金までも請求するという権利は、通常の場合はないというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/19
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020・梨木作次郎
○梨木委員 二百三條について伺います。この「労働組合がないときは、会社の使用人の過半数を代表する者の意見を聞かなければならない。」ということになつておりますが、まず手続上のことを伺いたいのであります。経営者側のいろいろな労働組合対策上労働組合を分裂さして、第一組合、第二組合、第三組合なんというものができているのがありますが、こういうように幾つもの労働組合がある場合には、どの労働組合の意見を聞かなければならないということになるのか、その辺のところをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/20
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021・位野木益雄
○位野木政府委員 そのうちの過半数で組織する労働組合について意見を聞かなければならないというのが、二百三條の要求するところであります。しかしながら現実には、これはその以外の労働組合の意見も聞くのが相当と考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/21
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022・梨木作次郎
○梨木委員 過半数で組織する労働組合があるときはそれでよろしいが、たとえば三つくらいある場合があるわけですが、そのいずれもが過半数で組織しておらない場合、しかしとにかく労働組合はあるわけなんです。そういう場合には、この規定で参りますと、この規定の予想しておるところは、幾つもの組合がある場合のことでなくて、「過半数で組織する労働組合がないときは、会社の使用人の過半数を代表する」云々、これは個々ばらばらの一つの集団の意見ということになるらしいのでありますが、労働組合はとにかく組織されている、しかし組合が幾つもある場合にはどういうようになるのか、もう少し具体的に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/22
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023・位野木益雄
○位野木政府委員 労働組合が数箇あつて、使用人の過半数で組織する労働組合がないような場合に、この二百三條の後段の規定が働くわけであります。従いまして、労働組合の組織いかんにかかわらず、その中で過半数を代表する者の意見を聞くということになるわけであります。それが法律上要求しているところでありますが、事実上は、さらに各労働組合の意見を聞くという措置がとられることが望ましいと思います。なおこの表現は労働基準法の九十條の就業規則についての意見を聞く場合の規定と同様のものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/23
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024・梨木作次郎
○梨木委員 これは意見を聞かなければならないということになつておりますが、意見を聞かないで会社更生計画案をつくつたら、その案の効力はどうなるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/24
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025・位野木益雄
○位野木政府委員 これは二百四十一條の第一項の第一号に掲げております要件、すなわち更生手続が法律の規定に合致していることという要件に反することになりますので、計画は認可されないことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/25
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026・梨木作次郎
○梨木委員 そこで今お示しになつた二百四十一條の第二項によりますと、「違反の程度、会社の現況その他一切の事情を考慮して計画を認可しないことが不適当と認めるときは、裁判所は、計画認可の決定をすることができる。」ということになつておりまして、必ずしも法律の規定の手続上合致しておらなくとも許可する場合を予想しているのであります。そこで労働組合の意思を聞かない場合には、これはいわば絶対的な条件として認可決定をしてはいけないような重要度を法律は認めているのかどうかという問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/26
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027・位野木益雄
○位野木政府委員 これは個々の場合によつて異なると思いますが、しかし二百三條の條件は、通常相当重要なことでないかというふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/27
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028・梨木作次郎
○梨木委員 これはこの法律をつくるときの解釈を立法者はどういうように考えておつたか、また提案者が考えておつたかということが、その施行の上において非常に重要だと思うので、もう少し念を押して聞きたいのであります。それでは、今の御見解だと、二百三条の労働組合の意見を聞かない場合でも、裁判所は場合によつては認可の決定を与えることが違法ではないというような御趣旨になるわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/28
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029・位野木益雄
○位野木政府委員 これは結局裁判所の認定にまつわけでありますが、二百三條の規定に違反する態様も軽重種々あると思います。形式的に二百三條に違反する場合でも、実態は二百三條と同様の手続がとられておるというような場合もないとは言えないと思います。いろいろ軽重がありますので、これは場合によつて判断すべきであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/29
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030・梨木作次郎
○梨木委員 しかし一体そういう労働組合あるいは企業の使用人というものは、実際は企業の経営にとつては不可欠の要素であります。従つてこの意見を聞かないで更生計画を立てるというようなことは、もしそういうものを立てた場合には認可をしてはいけないのだという強い労働者側の意見を尊重する建前をとらないと、裁判所の認定にまかせろというようなことでは、実際は裁判所はそのような企業の実態をつかめるはずのものではありませんから、従つて法律をつくる場合におきましても、特に労働組合の更生計画に対する意見の陳述の手続というものは、絶対的な條件にしなければならないものではないかと思うのでありますが、今の御説明だと、この更生手続においては非常に労働組合の発言を重要視しておらないような結論になると思うのでありまして、やはり一切は裁判所の裁量にまかせるというようなことで、これではこの法律が目的とする会社の更生ということについてはきわめて不公正だ。場合によつては、経営者側の利益のみをはかつて労働者側の犠牲が強制せられるということになることも考えられるわけであります。これを絶対の條件にするというようなお考えをお持ちであるかどうかを念のために聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/30
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031・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私から大きなところを一応申し上げますが、まさに梨木委員のおつしやる通りに、労働者側の協力があつて初めて完全に更正ができるということも言い得ると思います。従いまして、この法律におきましては、御指摘の二百三條という條文を入れて、その点についての十分な考慮を加えておるわけですが、二百三條に言つておりますのは、文字に現われておるように、裁判所がみずから直接に過半数の労働者の意見を聞かなければならぬということを、裁判所自身に実は義務づけておるわけであります。これによつて裁判所が結局その許否をきめるわけでありますから、更生計画案を裁判所に持ち出す前に、その準備の段階において労働者の意見をおそらく取入れて、その更生計画案ができて来るであろう。しかもその後において、さらに裁判所が直接に過半数の労働者の意見を聞けということを裁判所自身に命じておるのでありますから、これは非常に強い保障じやないかと私は考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/31
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032・梨木作次郎
○梨木委員 それ以上は意見になりますから、その点はそれとしまして、政府がこの法案をお出しになつて、実際会社の更生をはかろうと意図されている本法案の対象となるような会社を私考えてみまするに、ここで十月三十日の日本経済新聞の記事を見ますと、最近では二百億、三百億の債務を持つている企業がありまして、これらが銀行から取引停止処分を受ける寸前にあるというような状態を報道しております。こういう事態の中でこの法案が実施される場合におきまして、日本の大きな、ほとんど一流会社にまでもこういう会社更生法の適用をいたしまして、一時的な支払いの停止をやるようなことをやつた場合におきまして、それから受ける下請その他の国民経済に及ぼす影響は非常に大きいと思うのであります。ところで、一体政府の方では、今この一流の大企業におきましてこのような法律の対象となるものがどれくらいあるか。その大企業における債権者——大企業ではその債権者は大体銀行だろうと思いますが、銀行の関係、つまりこの会社更生法の適用を受けそうな大きな企業と、その大きな企業に対する銀行の融資状況がおわかりになつておりますか。これがわからないと、本法を適用した場合の経済界に及ぼす影響をわれわれは測定することができないのであります。この辺の資料はどういうことになつているかを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/32
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033・位野木益雄
○位野木政府委員 現在のわが国の大資本の会社について、どの程度更生手続を開始すべき原因があるかというふうなことは、調査も困難でありますので、今のところお答えできるまでの資料を持つておりません。そういうふうに一流会社と申しますか、大資本の会社、そういうものがもしつぶれるということになりますと、これは銀行とか、それに一連の大賢本の経営体が続続と倒れることになるということですが、こういうことはほとんどよほどの事態がない限りあり得ない、あつてもこれは国家的なこととして。相当重要視しなければならないと考えますので、そういうふうな憂いはないように考えるわけであります。さらにこの法律は、そういうふうな会社がつぶれるのを防ごうというわけでありますから、その影響たるやつぶれるよりもましであるということは、これは明白であります。そういうような点は、それほど懸念することもないではないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/33
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034・梨木作次郎
○梨木委員 私が聞きたいのは、こういうことなのであります。この企業がつぶれることから来る国民経済に及ぼす影響、もちろんこれはきわめて重要であります。従つてできればつぶれないようにするということは、国民経済の上から考えなければならぬことは当然でありますが、しかしながら、私はこの前の委員会におきましても政府に聞いたのでありますが、だからそこの更生法を適用いたしまして、一時支払を停止するというのですが、そのことから来る停止される方の犠牲というものは、非常に大きいのであります。そういう大きな犠牲を払つてまで会社を更生させるということになりますならば、国民経済の観点から見まして、今日本でどういう企業が一番重要か、どういう企業に一番保護を与えなければならぬか、これは無差別であつてはならない、やはり一つの基準というものがなければならぬということを聞いたのでありますが、政府の説明は無差別だとおつしやいます。そういうことになりますならば、やはりこの法律というものが、実際の運用の面におきまして非常に国民経済に悪い、健全なものを育てて行くというのならいいが、そうでなくて、まことに不健全な企業の更生に役立つようなことになつて、そこから来るところの一般経済に及ぼす悪影響というものを考慮しなければならぬのでありますが、この点はこの前伺つて、私は大体政府の考え方はわかりましたし、それ以上は意見になりますから私は申し上げませんが、ここで大きな企業と申しましても、この企業の中にも生産的な企業もあればあるいは非生産的な、国民経済の平和的発展の面から申しますならば、どうかと思れるようなものもいろいろある。そこで私はこの法案の賛否の態度を決する上におきましても、一体どの程度の会社がこの更生法の適用を受けるような実情にあるかということ、それからそれに対して債権者側、特に銀行というものはどういうような程度につながつておるかということは、きわめてこの法案の審議の上において重要な問題になると思うのであります。この点なかなか資料を集めるということは困難かもしれませんが、しかし法律というものは、やはり現実の事態を前提といたしまして、これを解決する方法として法律が出て来るわけでありますから、やはり現実の状態というものはどうなつておるかということをお示しくださらないと、この法案の賛否の意見というものが、われわれとしては非常に困難になる、あるいは正確を欠くことになるのでありますが、おわかりになりませんか。もう少し何か資料を出してもらいたいと思いますが、大企業の中でどれくらい不渡手形を出しておつて、そういう大企業の中でも、それに銀行がどれくらい金を貸しておるか、その銀行がどういう態度をとつておるかというようなこと、それは企業の中でも生産的な企業であるか、あるいは非生産的な企業であるかというようなことがわかりますと、この法律というものの値打を判断するのに非常に便利なんですが、いかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/34
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035・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 大体お心持、私推測できるのでありますが、今の資料の点は、先ほど位野木政府委員が答えましたように、はたして御希望通りの資料が整いますかどうかわかりません。しかし努力いたします。ただこの法案のねらいとするところについて、今のお言葉を拝聴しておりますと、あるいは大企業の中で、しかも生産的な、たとえば鉄鋼業とか、こういうものだけに限つてこれを適用したらどうか、私の耳の聞き違いかもしれませんが、そういろ御趣旨も含まれておるようにうかがわれましたけれども、私どもの立案の趣旨は、これは大企業たると、中小企業たると、あるいは非生産的企業であろうと生産的企業であろうと、一律に考えております。ただ会社の実態は中小企業が非常に多うございます。しかもこれにはまるような事態が生ずることは、中小企業に一番多いと思いますから、おのずからその結果においては、中小企業の更生ということに現実の結果としては、一番多く役立つことになるだろうと思いますけれども、ねらいとしては、そういう差別はしておりません。この考え方は、非生産的の事業であろうと生産的の事業であろうと、その事業がつぶれたことによつて、先ほどお話の国民経済、国民生活にどういう影響を及ぼされるかということを考えれば明瞭なところでありまして、非生産的な事業といえども、多くの勤労者をかかえておるわけであります。またそれの下請業者というものがあるわけであります。そういう企業がつぶれてしまうということは、勤労者が職場を失い、あるいは下請業者が仕事を失うということになつて、その点における害悪というものはやはり一応は一律に考えるのが筋じやないかという頭でおります。従つてこの法案としては、建前は一応みな含めております。ただ現実の結果としては、中小企業が恩恵に浴することが多いであろうというようなことを考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/35
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036・梨木作次郎
○梨木委員 中小企業が対象に多くなるだろうという見通しをお持ちのようでありますが、これはしかしこの法律を見ますと、またこれまでの政府側の説明によりましても、裁判所の現在の能力から行きまして、ほぼ二年くらいかかるというようなこと、あるいはこれには百万円云々という、債権でありましたか何か制限がありまするし、それから費用の予納というようなことをしなければならぬ。いろいろなことを考えますと、つぶれかかつたような企業の場合におきまして、一体資力的にこれを利用するというようなことが可能かどうかを、私は非常に疑問に思つておるのでありますが、もしその点について、何か政府の方でお考えがありますならば承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/36
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037・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 二年というのは、この間裁判所側からの発言で、これは間違いのないところを二年と申したと私は了承しております。私の方の他の政府委員は六箇月と言い、私自身は三箇月と言つたくらいでありまして、これは物事によつて迅速に行くものがたくさんあるということを証明するものだろうと思います。実際の費用の関係につきましては、やはりおのずから会社の規模の大小に応じまして、更生の仕事というものも大きい小さいがあるわけで、小さいものは小さいなり、大きいものは大きいなりということは事理の当然ではないかと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/37
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038・松木弘
○松木委員 ちよつと私の方から伺います。大分むずかしい問題でありますが、憲法の第二十九條によりますと、「財産権は、これを侵してはならない。」第二項に「財産権の内容は公共福祉に適合するように、法律でこれを定める。」こういう規定になつております。それから民法の第百七十五條に「物権ハ本法其ノ法律二定ムルモノノ外之ヲ創設スルコトヲ得ス、」第百七十六條に「物権ノ設定及移転ハ当事者ノ意思表示ノミニ因リテ其効力ヲ生ス」こういうことになつておるのでございますが、この更生法案によりますと、更生担保権、更生債権というものがあるのであります。それは百二十三條に「更正債権又は更生手続開始前の原因に基いて生じた会社以外の者に対する財産上の請求権で、更生手続開始当時会社財産の上に存する特別の先取特権、質権、抵当権又は商法による留置権で担保された範囲のものは、更生担保権とする。」これも更生担保権となつております。そして二百十三條を見ますと、「関係人集会において更生計画案を可決するには、更生債権者の組においては議決権を行使することができる更生債権者の議決権の総額の三分の二以上に当る議決権を有する者の同意、更生担保権者の組においては議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の四分の三以上に当る議決権を有する者の同意、」こういうことになつて、この議決権によつてこれを決することになつておるのであります。それから二百四十二條に「更生計画案につき関係人集会において法定の額又は数以上の議決権を有する者の同意を得られなかつた組がある場合においても、裁判所は、計画案を変更し、その組の更生債権者、更生担保権者又は株主のために、左に掲げるいずれかの方法によつてその権利を保護する條項を定めて、計画認可の決定をすることができる。」「更生担保権者について、その担保権の目的たる財産を、その権利を存続させたまま新会社に移転し、他に譲渡し、又は会社に留保すること。」こういうふうに権利の処分をこの法律で規定するということは、この憲法の精神に反しないかどうかという点であります。これは会社の更生のためにすることは、憲法上からいう公共の福祉に関係するのではないのでありまして、私権であるから、この憲法の精神及び民法の規定から行きますと、こういう権利の処置ということが憲法に反しないかどうかという疑いがあるわけであります。この点はどういうふうに見て行つていいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/38
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039・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 非常に適切な御質疑と拝承いたします。この関係において憲法上問題になつておる條文を洗えば、御指摘の通り二十九條であろうと存じます。ただお話のように二十九條の、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」この第二項と思うのでありますが、先ほど来あるいはまた提案理由においても御説明申し上げましたように、会社のつぶれることを防ぐということが周囲の経済界というものにどれだけ有益であり、かつ国家全体の国民経済から申しましても有益であるかということは、当然申し上げ得るところであります。逆に言えば、この会社がつぶれるということによる損害ということを考えますれば、さらにそれは現実的に了解できるところであろうと考えるわけであります。お示しのような例は、実は立法例といたしましても御承知のように破産の場合は当然でありますが、会社の整理等の場合においても、権利者に対する若干の犠牲というものを法律上予定しておるわけであります。さようなことも今の説明に該当して憲法違反ではないということになると存じますが、この会社更生法案の場合におきましては、さらにそれが現実的な意味において十分御説明ができるものと考えております。結論を申しますれば、やはり公共の福祉に適合する範囲において、ここで財産権がきめられたということに承知いたすわけであります。この民法等の関係におきましていろいろお話がござましたが、お示しの民法の條文にも、この財産権というものは民法のほかに別に法律で定めるということになつておりますので、この会社更生法案は結局その民法で言ういわゆる別の法律ということに相なると思います。従つて民法との関係は法律同士の関係でありますから、心配はないと思いますが、憲法との関係におきましても、ただいま申しましたような趣旨によりまして、幾多の立法例もございますし、この場合も自信をもつて憲法違反ではないという御説明ができる、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/39
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040・松木弘
○松木委員 私はこの案に反対する意味ではないのです。ただしかし、法律的な見解からすると、なるほどまさに倒れんとする会社を救済するという趣旨はきわめてけつこうなことであるけれども、株式会社というものは営利会社でありますから、営利会社を救済するのが公共の福祉になるかならぬかということは、よほど問題ではないかと思います。個人でも同じことでありましよう。個人の破産せんとするものを助けるという方法もありますが、一営利会社にすぎないものである以上は、何かそこに特別なる公共の福祉に合致するというような意味がなければ、ちよつと問題ではないかと思うのであります。しかしこの点をしいて私は主張せんとするものではありませんが、あなたの方の意見をお聞きして参考にしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/40
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041・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 まさに営利会社である場合において、その営利会社だけの利益のためにこれを更生させるということでありますれば、お話のような御心配も出て来るわけでございますけれども、先ほど申しましたように、この会社がつぶれるということによつてどういう悪い影響を周囲に与えるか、周囲に及ぼすその犠牲ということを考えてみました場合においては、やはりつぶさないで生かすということができれば、それだけ周囲の被害というものがなくて済むという趣旨から私どもは会社そのものはもちろんでありますけれども、そのために周囲の受ける福祉と申しますか、その点にも重点を置いて本法案を考えているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/41
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042・松木弘
○松木委員 この上議論はいたしません。いずれよく研究してみます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/42
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043・押谷富三
○押谷委員長代理 ほかに御質疑がなければ本日はこれにて散会いたし、次会は来週水曜日午前十一時より委員会を開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205206X00919511102/43
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