1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月六日(火曜日)
議事日程 第十一号
午後一時開議
第一 漁業法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第三 千九百二十年六月二十一日にパリで署名された国際冷凍協会をパリに創設することを目的とする国際條約を修正する條約の締結について承認を求めるの件
第四 連合国財産補償法案(内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
証券取引委員会委員長任命につき同意の件
日程第一 漁業法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第三 千九百二十年六月二十一日にパリで署名された国際冷凍協会をパリに創設することを目的とする国際條約を修正する條約の締結について承認を求めるの件
日程第四 連合国財産補償法案(内閣提出)
午後二時四十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/0
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001・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これより会議を開きます。
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002・岩本信行
○副議長(岩本信行君) お諮りいたします。内閣から、証券取引委員会委員長に島居庄藏君を任命するため本院の同意を得たいとの申出がありました。右申出の通り同意を與えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/2
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003・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて同意を與えるに決しました。
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第一 漁業法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/3
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004・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第一、漁業法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。水産委員会理事松田鐵藏君。
〔松田鐵藏君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/4
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005・松田鐵藏
○松田鐵藏君 ただいま上程されました漁業法の一部を改正する法律案につきましてその要旨と、水産委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。
この法律案は、さきの第十国会における漁業法等の一部改正案の内容の一部でありましたが、予算措置を欠く点で実行不可能であるとして、委員会において修正削除した問題であります。
まずその概要について申し上げます。漁業の民主化という見地から、許可漁業について再検討を加え、漁業制度改革を円滑に実施せんとするものでありまして、次に申し上げる三つの許可漁業についてその定義を明確にし、資源保護、その他漁業調整上、都道府県知事の許可することができる最高限度を農林大臣が定めることができるようにし、漁船の数を抑制し、あるいは減船整理して、将来にわたつて沿岸漁業の発達を期さんとする次第であります。
次に、その具体的内容について申し上げます。第一点は、まき網漁業について現状を圧縮整理しようとする点であります。現在まき網漁業はすべて都道府県知事の許可になつておりますが、このたびの改正により、六十トン以上の漁船を使用するものは農林大臣の許可にし、五トン以上六十トン未満の漁船を使用するものを中型まき網漁業としてこの定義を明確にし、これについても、三陸あるいは日本海のごとく、農林大臣が指定する特殊海域で操業するものは農林大臣の許可漁業とし、その他については、農林大臣が各都道府県別ごとに定める最高限度のわく内で知事が許可するごとにして、現在三千箇統にも達し、ますます増勢の傾向にある本漁業を極力圧縮整備して行こうというのであります。もちろん、この中型まき網漁業に相当するもので、本法施行の際現に効力を有するものについては、農林大臣の定める最高限度を越える場合においても、その許可の満了するまで、あるいは今後一箇年間はその効力を認めるよう措置がとられてあります。
第二点は、小型機船底びき網漁業の整理であります。本漁業は、僅少の資本で経営ができる上に漁獲能率が高いので、沿岸至るところで操業され、戰時中あるいは終戰後の食糧不足、その他秩序の弛緩から急激に増加し、無許可操業が常態化し、その数実に三万五千に達し、その上逐次大型化した結果、資源の枯渇を招来し、沿岸漁業の秩序維持にゆゆしい事態を惹起している現況であります。従つて、急速に本漁業の秩序を回復するとともに、極端なる資源との不均衡を是正するため、小型底びき網漁業は十五トン未満の漁船を使用するものに限定し、農林大臣が都道府県別の許可わくを定め、あるいは瀬戸内海その他についてはその漁船の馬力数の最高限度を定める等、適正なる操業状態に減船整理して、この漁業の健全な発達と他の沿岸漁業との円滑なる調整を期そうとするものであります。この場合においても、中型まき網漁業と同様の経過措置をとつているのであります。
第三点は、瀬戸内海機船船びき網漁業の減船整理であります。この漁業はパツチ網漁業といわれている漁業であつて、主としていわし及びその稚魚を対象としているのでありますが、現状のまま放任すると、いわし資源の危機を招来するばかりでなく、内海における資源にまつたく破壊的影響を與えるおそれがありますので、稚魚の成育場である瀬戸内海においては、五トン以上の動力漁船で操業するものについては農林大臣が定めるわく以上の許可を認めないよう措置しようとするのであります。この場合にも前と同様の経過措置をとつております。
以上が本案の趣旨及び内容でありまして、去る十月二十日、水産委員会に付託となり、同月二十五日、農林大臣より提案理由の説明を聞き、引続き質疑に入り、その後二十七日、三十日と委員会を開き、種々熱心なる審犠をいたしたのであります。
その中で最も真劍に討議された点は、小型底びき網漁業の減船整理に関する点でありまして、特に瀬戸内海等、農林大臣の定める特殊海域における小型底びき網漁船の制限馬力数についてでありました。この制限馬力数については、極力十馬力程度の小馬力にするという基本的な考え方と、現実問題としての予算的措置その他実情との調整の点でありました。この点については、協力して早期に所期の目的が達せられるよう努力するこことし、それまでの過渡的措置をとることに了解ができた次第であります。
このことに関連して、十一月一日の委員会において、川村委員より本案に対する修正案が提出され、その趣旨及び内容の説明があつたのであります。その内容について申し上げますと、まず第一ば附則の修正であつて、原案により、総トン数十五トン以上は小型機船底びき網漁業でなくなり、本法施行と同時に、この種の船舶による底びき網漁業は操業できなくなるのでありますが、実際問題として、一時にかかる措置をとる場合には、漁業経営が破壞され、漁村経済の破綻を来すおそれがあるので、昭和二十九年三月三十一日までの二箇年間は、総トン数十五トン以上で、農林大臣の定めるトン数に達しないものは小型機船底びき網漁業とみなすよう措置しようとする点であります。その第二は、これら三つの許可漁業に対して、農林大臣が船舶の隻数あるいは馬力数等について最高限度を定めようとするときは、中央漁業審議会のみでなく、関係都道府県知事の意見を聞かなければならないことにした点であります。
次に討論に入り、自由党石原委員、民主党小松委員、共産党木村委員の各委員より、減船の対象として政府買上げされた漁船の価格に対しては非課税にすべきであり、またこれが漁民の失業対策についても急速になすべきである等の希望意見を付して賛成の旨を開陳されたのであります。
討論を終り、まず修正案について採択し、続いて修正部分を除く原案について採決いたしましたところ、いずれも全会一致をもつて可決されたのであります。よつて本案は修正議決された次第であります。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/5
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006・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/6
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007・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り決しました。
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第二 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第三 千九百二十年六月二十一日にパリで署名された国際冷凍協会をパリに創設することを目的とする国際條約を修正する條約の締結について承認を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/7
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008・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第二、日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案、日程第三、千九百二十年六月二十一日にパリで署名された国際冷凍協会をパリに創設することを目的とする国際條約を修正する條約の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長守島伍郎君。
〔守島伍郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/8
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009・守島伍郎
○守島伍郎君 ただいま議題と相なりました日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案に関し、本委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。
まず政府が提出いたしました本法案の内容の概要について申し上げますと、要点は次の三点となります。すなわち今次の改正は、さきに政令で設置いたしました台北外四在外事務所と法律の中に規定することと、将来在外事務所を廃止する必要が生じました場合に、これを政令で廃止することのできるようにすること及び在外事務所の権限を拡大することの三点であります。
日本政府は、在外邦人の保護と、通商上の利益の増進をはかるために、在外事務所のいまだ設置されていない国にも設置できるよう関係諸国と交渉しておりましたところ、さきに台北、ボン、ローマ、マドリツド及びジユネーヴの五箇所に在外事務所を設置いたしますことについて関係諸国の承諾がありました。ところが、当時は国会閉会中でありましたが、一日も早く設置することが希望されましたので、日本政府在外事務所設置法第二條第二項に基く政令によつてこれらを増置したというのであります。それで、これらの在外事務所をすでに設置されております他の在外事務所と同様、同法第二條第一項の表に追加するとともに、同表を整理するのが改正の第一点であります。
次に第二点といたしまして、政令によつて在外事務所を廃止することもできるように、第二條第三項が新たに追加されたのであります。現在設置されております三十箇所に及ぶ在外事務所は、正常な外交関係の復活に伴い大使館、公使館、総領事館、領事館等が設置されるに従いまして、近い将来において廃止すべき必要が生じて来るわけであります。この場合、国会が閉会中であり、かつその廃止が緊急を要します場合には、やむを得ず政令によつて廃止することが必要となりますので、これを可能とするために、すなわち将来大使館、公使館、総領事館または領事館が設置され、その管轄区域内にある在外事務所を廃止する必要が生じた場合において、特別の事情があるときには、これを政令で廃止することができるようにしたというのであります。
第三の点は、在外事務所の権限の拡大についての規定であります。本年九月下旬、総司令部からの覚書によりまして、日本政府在外事務所に対して従来課せられておりましたすべての制限を撤廃して、その権限について、日本政府が相手国ととりきめを締結することが許可せられたということであります。これによりまして、在外事務所は、相手国とのとりきめを締結しさえすれば、外国において外務省のあらゆる所掌事務を行うことができることになるわけであります。そこで第三点として、在外事務所の所掌事務を規定しております第三條を改め、その第十五号に、在外事務所は外国において外務省の所掌事務を行うことができるという規定が設けられたのであります。
なお附則におきましては、この法律の施行期日を定め、さらに今回の改正によりまして法律の中に追加されます五箇所の在外事務所を増しました日本政府在外事務所増置令廃止の規定があるのであります。
本委員会は、十月三十一日と十一月二日の委員会において愼重に審議いたしました。まず政府当局より本法案提出の理由の説明があり、続いて各委員との間に活発な質疑応答がありましたが、その詳細については、これを委員会議録に讓ります。
質疑終了後、国民民主党並木芳雄委員の賛成討論の後採決、多数をもつて原案の通り本法案を可決すべきものと決定いたしたのであります。
次に、ただいま議題となりました千九百二十年六月二十一日にパリで署名された国際冷凍協会をパリに創設することを目的とする国際條約を修正する條約案に関し、本委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。
まず政府が本国会にその締結について承認を求めるために提出いたしました本條約案件の内容について、政府当局の説明に基いてその概要を申し上げます。
国際冷凍協会をパリに創設することを目的とする国際條約という原條規は、一九二〇年六月二十一日パリで署名され、わが国は一九二四年三月四日批准書を寄託して、同條約の締結国となつたのであります。ところが、一九三七年五月三十一日、国際冷凍協会の財政確保のため締結国の分担金額を増加することを主たる目的として、千九百二十年六月二十一日にパリで署名された国際冷凍協会をパリに創設することを目的とする国際條約を修正する條約が締結されたのであります。わが国はこの修正條約に署名いたしましたが、当時すでに悪化しつつありました国際情勢に影響されて批准を差控えているうちに欧洲大戦が勃発し、続いて太平洋戰争が起りましたために、遂に批准しないままに今日に至つておるのであります。
現在のわが国におきまして、冷凍業が産業の各分野にわたつて重要な役割を果しており、この方面の進歩発達のために、国際冷凍協会を通じて冷凍に関する諸国の科学上、技術上及び経済上の最新の知識を導入することは、きわめて有益であります。この意味からいたしまして、同協会との円滑な協力が学界からも業界からも切望されておるのであります。しかしながら、戰前・戰後を通じて貨幣価値の変動がはなはだしかつたために、原條約に基いてわが国が分担金を負担することはますます非合理となり、協会との協力にも困難を生じますので、修正條約を批准することが必要となつて参つたというのであります。なお、本年八月二十九日から九月二十一日までロンドンで開催されました国際冷凍会議には、わが国から代表が参加・出席いたしたのであります。
本條約案件は十月二十六日に外務委員会に付託されましたので、本委員会は、十月三十一日及び十一月二日の委員会において愼重に審議いたしました。まず政府当局より提案理由の説明があり、続いて各委員との間に活発な質疑応答がありました。その詳細な点は委員会議録に讓ります。
質疑応答を終了いたしました後、討論を省略いたし、採決いたしました。その結果、本條約の締結について承認すべきものと全会一致をもつて議決いたしました。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/9
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010・岩本信行
○副議長(岩本信行君) まず日程第二につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/10
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011・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
次に日程第三につき採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/11
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012・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本件は委員長報告の通り承認するに決しました。(拍手)
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第四 連合国財産補償法案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/12
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013・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第四、連合国財産補償法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事西村直己君。
〔西村直己君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/13
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014・西村直己
○西村直己君 ただいま議題となりました連合国財産補償法案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果につき概略御報告申し上げます。
この法律案は、平和條約第十五條の規定に基き、連合国または連合国人が開戰時日本国内に有していた財産について、戦争の結果生じた損害の補償を行うために必要な事項を規定するものであります。
内容を概略申し上げますと、第一は補償の原則に関する規定でありまして補償を受ける主体、補償の対象となる財産及び損害の原因等について種々の制限規定を設けております。第二は損害額の算定に関する規定でありまして、原則としては財産を開戦時の状態に回復するために必要な金額によることになつております。第三は補償金の支拂い方法についての規定であります。補償請求権者は、平和條約の効力発生のときから十八箇月以内に、日本政府に対し請求を行わなければならないこととなつております。この期間内に請求しないときは、請求権は放棄したものとみなされるのであります。また補償金の支拂いは原則として円貨でされることとし、またわが国の財政状態及び為替状態を考慮して、補償金の支拂い限度は一会計年度百億円を限度といたしておるのであります。
この法律案は、十月二十二日、本委員会に付託され、二十四日政府より提案理由の説明を聽取し、二十五日より数回にわたつて愼重審議いたされました。
特に重要なる論議の対象の第一点は、この法律と平和條約第十五條との関係についてでありまして、この法案の国会における審議権は平和條約第十五條によつて拘束されるものかどうかとの質疑がありました。これに対しまして、法務総裁より、法律上の問題としては国会が自由に修正する権限があるが、條約の趣旨に反する修正を行つても條約上の義務を免れるわけではなく、従つて條約を承認すれば、これと相表裏する、一体となる法律案に対して、国会の意思が二つにわかれるということは考えられないという旨の答弁がございました。
次に、今回の平和條約はいわゆる和解と信頼に基く條約であるといわれるが、本法律案によつて連合国の戦鬪行為による損害までも補償しなければならない理由いかんとの質疑がありましたが、これに対し、政府より、この種の規定は従来の平和條約にも見られる例であり、なおまた補償するにしても、この法律案中にいろいろな限定が設けられているのであつて、敗戦国の立場よりして、この程度の負担はやむを得ないと考えられるとの答弁がありました。
三十日質疑を打切りまして、十一月五日討論に入りましたところ、共産党を代表して深澤委員、社会党第二十三控室を代表して上林委員はそれぞれ反対の旨討論されました。次いで採決の結果、起立多数をもつて本案は原案の通り可決いたしました。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/14
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015・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。深澤義守君。
〔深澤義守君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/15
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016・深澤義守
○深澤義守君 ただいま上程されました連合国財産補償法案に対しまして、日本共産党は反対するものであります。
本法案は、昭和十六年十二月八日、すなわち開戰時に本邦内に有していた連合国及び連合国人の財産について、戦争の結果生じた損害を日本政府が補償することを目的とするものであります。
これに対して反対の第一の理由は、本法案は、吉田内閣が講和会議に臨むに先だちまして、一九五一年七月十三日の閣議で決定をいたしまして、平和條約第十五條(a)項に挿入いたしまして、本法案の定める條件よりも不利でない條件で連合国財産の補償をすることになつておるのであります。いうまでもなく、このたびの平和條約の締結は、憲法七十三條によつて、サンフランシスコにおいて調印して、その事後に国会の承認を求めておるのであります。従つて国会が完全に承認を與えるまでの行為は一切内閣の責任であるのであります。そこで、本法案は、本来ならば国会の議決を経て初めて平和條約に挿入することが当然であるにもかかわらず、国会の議決を経ずして平和條約に挿入して連台合国に有利に、すなわち日本国に不利に修正することはできるが、連合国に不利に、すなわち日本にとつては有利に修正することはできないと、あらかじめ国会の立法権を制限しておるのであります。これは明らかに行政府の立法府に対するところの越権行為であり、国会の立法権を制限するところの違憲行為であるといわなければならないのであります。(拍手)国会が最高の立法機関として、不可侵の立場を憲法によつて保障されておるのは、国民によつて選ばれ、国民の利益に奉仕することを使命とするからであります。ここに民主主義の大本があるといわなければなりません。しかるに吉田内閣は、本法案を、平和條約の中に、国会の議決を経ずして挿入いたしまして、国会を、連合国財産の補償について、もつぱら連合国の有利になるように、日本国民にとつて不利になるように奉仕させられる立場に置いたことは、国会の権威と使命とを無視したものであるといわなければなりません。明らかに民主主義の蹂躪であります。
先日の大蔵委員会におきましてこの点に疑問を持つて質問をいたしました民主党の内藤委員と私の質問に対して、大橋法務総裁は、国会の審議権を何ら制限するものではないが、しかし国会が本法案によつて連合国に不利に、日本に有利に修正したとしても、それは対外的には何ら効力がない結果となるのであるから、そのような修正は無意義である旨の答弁をされておることによつても、わが国会がいかに無力な、かかし同然の存在になつておるということが明らかであります。
第二の反対の点は、本法案の審議にあたりまして、政府はただ一片の表を参考資料として提出しただけであります。漠然と建物が十六億、動産が八十七億、株式が百十四億、預金が一億、債権が五千万円、工業所有権が五十億、合計二百六十九億が補償の対象になることが予想されておるということだけが明らかになつたのであります。私は国民も国会も十分納得し得る具体的資料の提出を求めたのであります。そうして夏堀大蔵委員長を通じて政府に交渉したのでありますが、政府は具体的な資料の提出を遂に拒否したのであります。昭和十六年以来の敵産処理の問題及び戰時特別措置がいかに連合国財産に行われておるか、どの程度の損害を與えたか、終戰後それがいかようになつているかということを具体的に国会と国民の前に明らかにするということこそ政府の責任であるとわれわれは考えるのであります。(「その通り」拍手)しかるに、ただ一片の表だけで、これだけの莫大な、これだけ重大な問題を解決しようとしているところに一国民とともにわれわれは疑惑を抱かなければならない問題が伏在しておると考えるのであります。これが第二の反対の理由であります。
第三の点は、本法案の補償の大部分が米英の大国の関係であります。補償の具体的な内容を国民と国会の前に隠蔽して、この大国の分のみを優先的に補償することを急ぐ根拠が一体どこにありますか。大東亜戦争によつて日本が最も迷惑をかけたのはアジアの諸国ではありませんか。この諸国に対するところの賠償問題が何ら具体的に、友好的に処置されていないものにかかわらず、米英の大国のみの利益に奉仕することに汲々たるところの態度は、日本をアジアの孤児にする結果となるのであります。口を開けば敗戦国だからといつて米英に屈服するところの卑屈なる事大主義は、決して国家の前途に希望と再建の道を開くものではありません。今こそわれわれは民族自決の独自性を発揮いたしまして、民族解放の大道を開くべきときであると考えるのであります。アジアの諸国は、今、欧米の介入は政治的たるとあるいは経済的たるとこれを排除するという毅然たる民族的自覚の上に立つて立ち上つておるのであります。われわれは、本法案が米英にのみ屈従するところの卑屈なる根性の現われであるという立場から反対するのであります。
第四の反対の点は、本法案の補償の根拠に、交戰国の戰鬪行為による被害の一切をわが国が補償しなければならないということがあります。戰時中国家の意思によつて行つた敵産処理や、あるいは戰時特別措置等によつて與えられましたところの損害を補償することについては何ら回避すべきではないのでありますが、戰時中アメリカ空軍の━━━爆撃によりまして受けたところの被害の一切をわが国が補償しなければならないということは、あまりに苛酷に過ぎるとわれわれは考えるのであります。イタリアの平和條約ですら損害補償必要額の三分の二を補償させることになつていることと比較いたしまして、あまりに苛酷に過ぎることは明らかであります。
吉田総理が和解と信頼の講和であるといつて欣然として調印して帰つて参りました平和條約のわずかの一部分であるこの連合国財産補償の問題だけを見ましても、国会の立法権を無視したものであり、国会と国民に具体的に何らの発表もできない疑惑に包まれたものであり、東亜の諸国との善隣友好を阻害するものであり、懲罰的なイタリアの平和條約よりもなお苛酷なものであるということが明らかになるのであります。これが和解と信頼の本質であるとわれわれは主張しなければなりません。この意味において、わが党は断じて本法案に反対するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/16
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017・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 上林與市郎君。
〔上林與市郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/17
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018・上林與市郎
○上林與市郎君 私は、日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、ただいま議題となりました連合国財産補償法案に対しまして、簡單に反対の理由を述べたいと存じます。
われわれは、過去において不幸にしてわれわれと干戈を交え、損害を與えました連合国の財産を補償することそれ自体に反対するものではなく、それは根本的には支拂うべきものであると考えるものであります。しかしながら、中国、すなわち中共、国府の問題が解決されていない今日、また連合国人財産補償の範囲に入つておるかどうかも判明しておらない今日、賠償の金額もまだ不明であり、しかも日本の負担能力についても不明である今日において、連合国人財産補償のみを法律化することについてわれわれは反対するものであります。(拍手)
日本は、かつて十年前に、まつたく愚かなる帝国主義侵略戦争を起しまして、連合国人の人命と財産に莫大な損害を與えたのであります。われわれが中国、フイリピン等、アジア諸国に與えた人的、物的損害はきわめて大きいものがあることは、いまさら申し上げるまでもございません。それゆえに、賠償や連合国人の財産補償支拂いそのものについてはわれわれとして反対するものではなく、わが国の国力の限度内において、できる限りの誠意をもつてこれが支拂いの義務を負うものであることは、先ほど申し上げました通りであります。しかしながら、サンフランシスコの講和條約には、約十数年にわたつてわれわれが最も大きな損害を與えました中国が不当にも含まれていないために、賠償にしても、連合国人の財産補償にしても、今これらを日本で法律化したといたしましても、本来の趣旨、目的は少しも徹底しないおそれがきわめて大であるのであります。しかも、賠償にしても、財産補償にしても、まだその金額が最終的にはきまつていない今日、しかもわが国が経済自立をはかるために精一ぱいの経済状態において、国際的支拂いの緩急順序をもきめなければならない今日におきまして、主として英米等西欧各国の商社の財産のみを優先的に支拂うごときは、国際的にも好ましくない印象を與えることは当然でありましよう。
この意味合いからいつても、この法律案は時期尚草というばかりでなく、国際信用を高めるどころか、かえつて国際的信用について逆効果のおそれがあると思う。われわれは、政府の英米資本への国際信用をつなぎとめることに汲々とするがごとき趣旨のこの法案に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/18
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019・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/19
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020・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01219511106/20
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