1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月十日(土曜日)
議事日程 第十三号
午後一時開議
第一 地方財政平衡交付金増額に関する決議案(廣川弘禪君外十二名提出)(委員会審査省略要求事件)
第二 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、検疫所の支所及び出張所の設置に関し承認を求めるの件
第三 会社更生法案(第十回国会内閣提出)
第四 破産法及び和議法の一部を改正する法律案(第十回国会内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
日程第一 地方財政平衡交付金増額に関する決議案(廣川弘禪君外十二名提出)
日程第二 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、検疫所の支所及び出張所の設置に関し承認を求めるの件
日程第三 会社更生法案(第十回国会内閣提出)
日程第四 破産法及び和議法の一部を改正する法律案(第十回国会内閣提出)
午後一時八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/0
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001・林讓治
○議長(林讓治君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/1
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002・林讓治
○議長(林讓治君) 日程第一は提出者より委員会の審査省略の申出があります。右申出の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/2
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003・林讓治
○議長(林讓治君) 御異議なしと認めます。日程第一、地方財政平衡交付金増額に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。塚田十一郎君。
〔塚田十一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/3
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004・塚田十一郎
○塚田十一郎君 各派共同提案になつております地方財政平衡交付金増額に関する決議案について趣旨弁明をいたします。
まず最初に決議案文を朗読いたします。
地方財政平衡交付金増額に関する決議案
政府は、この際、全国一万余の市町村の熱望に応え、地方財政の現状にかんがみ、地方公務員の給與ベース改訂その他の財源を確保するため、地方財政平衡交付金の配分基準並びに所要総額等について地方財政委員会の意見を尊重して善処すべし。
右決議する。
以下、趣旨を簡單に弁明申し上げます。民主政治を確立いたしますためには、地方自治の確立がなくてはならないことは申し上げるまでもないのであります。この意味におきまして、新憲法第八章におきましては、特に地方自治について一章を設けておりますし、またこの基本條項に基いて地方自治法、地方財政委員会法等が制定せられておることは、これまた御承知の通りであります。地方自治の確立を期しまするためには、地方財政の確立がまたその基本になくてはならないことも、これまた申すまでもありません。そのために、地方財政法、地方財政平衡交付金法等の法律がまた用意せられておるのであります。
この法律ができました以後において政府がいろいろ打ちました手を振り返つてみますと、まず昭和二十五年の地方税制改革におきまして、四百億の地方の増収を期するような改革が行われたのであります。このときにおきましては、国税において九百億の減税を企図したにかかわらず、地方税において四百億の増税をあえてしたということは、いかに国が地方財政の窮状に考慮を拂つたかということの一つの証左であります。そのとき同時に創設せられました地方財政平衡交付金制度におきましては、一千五十億の平衡交付金が予算の上に計上せられたのであります。この一千五十億という数字は、その前の地方配付税その他の交付金を整理統合いたして出て参りましたものでありまするが、しかし結果において約八十億の純増になつておるのであります。それでも不足いたしまして、昨年の補正予算におきましてなお三十五億の追加、しかして一千八十五億が、昨年度の予算においての平衡交付金の総額でありました。そのほかに起債のわく約七十億の拡大が行われております。本年の当初予算におきましては、さらに昨年より十五億の増加、それに起債のわく三十億の増加をたしておりまするが、それをもつてもなお不足であるというので、今回の補正におきまして平衡交付金百億、起債のわく行徳の拡大を見、なお政府側の言明によりまするならば、短期債について若干の考慮があるということが言われておるのであります。それにもかかわりませず、私どもは、今地方団体側及び地方財政委員会当局より熱心に地方財政の窮状を訴えられておることは、御承知の一通りであります。
このように、国が地方財政において格段の注意を抑う必要がありとし、そうして画期的な改正をいたしましてから、地方財政が非常に窮乏を訴え、しかもその窮乏が年々その度を増して参りまして、そうして地方財政の窮乏、言いかえますならば、平衡交付金の額をめぐつて、毎年々々国と地方団体との間に非常な熾烈な争いが起るようになつたのは、一体何に原因しておるでありましようか。この点につきましては、私どもは、地方財政の基本的な構想そのものになお考慮の余地があるのではないかと考えるのであります。
今、平衡交付金の問題だけを考えてみましても、一体平衡交付金というものは、地方財政平衡交付金法の規定を見ますと、第二條第一項に、地方財政平衡交付金とは「地方団体がひとしくその行うべき事務を充分に遂行することができるようにするために国が地方団体に交付する交付金をいう。」と書いてあります。また第三條第一項には、「国は、毎年度各地方団体が提出する資料に基き、すべての地方団体について、この法律に定めるところにより、財政需要額と財政収入額とを測定し、財政需要額が財政収入額をこえる場合における当該超過額を補てんするために必要且つ充分な額を、地方財政平衡交付金として、国の予算に計上しなければならない。」と書いてあるのであります。つまり地方財政平衡交付金は、地方自治団体の必要とする額と収入額との差額を見て、そうして足りない分を国から当然出してやれという義務づけになつておるわけであります。この点につきまして、本制度創設以来すでに二年でありますが、二年間におきましての政府の平衡交付金の算定に対するいろいろなものの考え方が、はたしてこの地方財政平衡交付金法の趣旨を十分にくんでおつたかどうかということには、私どもにも若干の疑念があるわけであります。
広く国の政治行政は、国と府県と市町村の三者によりまして分担して行われておるものであります。中央においても、府県や市町村においても、それぞれ地域ことに住民が創意くふうを盡すことによつて国の発展は期待されるのであります。従つて、地方財政の財源を考えます場合には、従つてまた平衡交付金の額の決定にあたりましては、国がその出先機関に予算を配付するような考え方によつてはならないのであります。
地方財政は、ここ連年非常に膨脹いたして参つております。昭和二十四年におきましては四千百十七億、二十五年におきましては四千五百八十一億、二十六年におきましては、今回の補正予算を含めますと五千八百九億ということになるのであります。しかも、この三年間におきましては、国の中央財政は異常な努力をもつて緊縮をして参つた時代であります。中央の財政が非常に緊縮をして参つた時代に、地方財政が今申し上げるように膨脹しておりますので、何らかこの地方財政の膨脹に不健全な面があるのではないかということが、国民の間に広く疑われておるのであります。そうしてまた、その疑いを裏づけるような事実といたしまして、ときどき新聞紙上などに載せられますところの地方団体の不正もしくは疑獄、あるいは地方からの出張が多過ぎるというような事実がその裏づけになるのだといわれておるのであります。もちろん、こういうような事実もあるでありましよう。そういうような事実は、嚴に政府によつて監督是正をしていただかなければな。ませんが、しかし、累年の地方財政の膨脹というものは、決してその全部の原因がここにあるのではないのでありまして、むしろ大部分の原因はほかにあると私どもは考えておるのでのあります。
その一つは、申すまでもなく諸物価の騰貴と、給與べースの引上げであります。さらにいま一つ、最もわれわれが重大な関心を持ちまする点は、地方負担を加重する新しい法律が、年々実に多数に制定せられておるのであります。今、第一国会から第十国会までの間におきまして、地方負担を伴います法律で、新しく国会によつて制定せられたものがどれだけあるか、これを拾つてみますと、実に二百七十三件の多きに達しておるのであります。しかも、そのうち財源措置を伴つておるものはわずかに九十件であります。しかも、この財源措置を伴つておるものも、その予算の基礎の計算をいたします場合に、あるいは單価が十分でないとか、あるいは数量が十分でないとか、あるいはまた人員の新しい雇用を必要といたします場合の給料の予算が十分でないとかいうことで、結局その不足分を地方団体が負担しているものが相当あると考えられます。私どもは、近年の地方財政の膨脹は多分にこれらの面に原因があると確信をいたしておるのであります。
もちろん、地方財政が窮乏を訴えます場合に、平衡交付金の配分基準が適正でないことから来る面があることも否定できないのであります。この現象がもしも極端になりますと、一方に余つておる自治団体を生ずる、そしてその場合には、当然冗費もしくは浪費が出て参ります。それと同時に、他面におきましては、一層他の団体の窮乏の事実が出て参るのであります。もし地方団体の窮乏がこのような原因に発生いたしますならば、これは配分基準の適正によつて是正しなければなりません。私どもは、このような原因に基く地方団体の窮乏も確かに存在すると考えております。従つて、この機会に、政府に配分基準の徹底的な再検訂、是正を希望する次第であります。
国会は、今地方財政の窮乏ということをめぐつて三つの数字を聞きまして、まことに当惑をいたしておるのであります。まず地方団体側は、本年度の地方財政の不足額は七百六十二億あると申しております。これに対して地方財政委員会は、その不足は四百三十八億であると、こういう。これに対して大蔵当局は、いや不足はない、七十七億の余剰がある、こういう意見であります。地方自治団体側の意見と、大蔵当局の意見との差は実に八百三十九億、地方財政委員会と大蔵当局の意見の相違でも五百十五億であります。一体どの数字がほんとうなのか、どの数字が地方財政の窮乏の実態を表わしておるのかということは、実に判断に苦しむのであります。
先回本院を通過いたしました補正予算は、このうち二百億だけを措置いたしたのでありまして、その百億が平衡交付金の増額、百億が起債のわくの増額で措置したことは、御承知の通りであります。しかもそれに対して、それでもなお最低限度百五十億はまだ足りない、従つてさらに百億の平衡交付金の増加と、五十億の起債のわくの拡張を願いたいというのが、このたび地方財政委員会から本院に提出せられておる意見書の内容であります。つまり百五十億。ほんとうは四百三十八億足りないのでありますが、二百億今まで補充した。さらに百五十億、そうすると、なお八十八億の不足は、地方財政委員会の計算によつてもあるのであります。しかし、この八十八億は、地方財政委員会の意見によるならば、これは節約によつて何とか消化する、こういうことになつている。私どもは、今日の国家財政の上におきまして、できるだけ国もしくは地方団体が節約をしてくださることを衷心から希望いたしております。しかし、今のような物価騰貴の情勢で、あの上に自然増収を目一ぱい見積つた上に、なお八十八億という節約ができるかどうかということについては、私どもは、なお若干疑念を持たなければならないのであります。
大蔵省は、昨年は補正予算を含めて千八十五債、それに起債のわく七十億の拡張をいたしております。それで大体あるはずだということになつておりました昨昭和二十五年の決算が、最近なつて逐次明らかにされております。その決算の結果を見ますと、まず都道府県のうち鹿児島、宮崎、高知、京都、宮城、青森の六府県が赤字決算をいたしております。市の中におきましては、大阪、神戸、横浜の三大都市のほか八十一市が赤字決算をいたしております。町村はまだ全部わかつておりませんが、わかつております約七千二百のうち二百六十八箇町村が赤字決算をしておるのであります。つまり、予算の繰上げ充用によりまして、かろうじて、つじつまを合せて決算をしたのであります。そして、その赤字総額は五十三億ということになつております。
一体、地方団体がこの繰上げ充用によつて決算をいたしますのはよくよくのことでありまして、これをいたします場合には、その背後に、これまでにはならないでも、実際は事業の繰延べ、打切り、その他非常な無理なやり繰りをいたしまして、表面に赤字を出さない決算をしているものが相当数あると考えておかなければなりません。そういうような事実を考えるときに、私は、政府の側におきましても、よほど再考をお願いしなければならない点があるのではないか、こういうふうに思うのであります。
大体、地方財政の財源は、皆さん方も御承知のように、税収と平衡交付金と起債という三本がおもなものであります。今度補正予算を含めました地方財政の財源におけるこれらの比率を見ましても、まず税收が四三%余、平衡交付金が二〇%余、起債が七%、こういうことになつております。税収は、御承知のように、物価の騰貴や給與ベースの引上げがあります場合には、自然増収で伸びて参ります。しかし、平衡交付金と起債は、それらの事情につれては伸びないのであります。従つて、この平衡交付金や起債のわくを、国の財政で、中央におきまして極度に引締めをいたしております場合には、どうしてもこの面から地方財政の困難な事情が出て来ることは、これは当然に考えられることなのであります。
今かりに、税収と同じような比率で平衡交付金が増額されるものと仮定いたしますならば、昨年度は税收対平衡交付金の比率は約二三%になつております。本年はそれが、今度の増加を含めても二一%でありますが、もし二三%まで伸ばし得るといたしますと、一千三百三十六億という平衡交付金総額の数字が一応出て来るのであります。そういたしますと、なお百三十六億くらいの増加の余地があるのではないかという一応の推定がつくのであります。
以上は、ごく概略の議論でありますが、とにかく今日の状態といたしましては、率直に言つて地方財政は窮乏の状態にある。その額がどの程度であるかは、私どもは、今申し上げましたような事情で、にわかにその数字の捕捉ができにくい状態になつておるのであります。よつて本員は、この際政府に対して、地方財政委員会の意見を十分に尊重し、従来の行きがかりや先入観念を捨てて地方自治団体の意見を聞くとともに、誠意をもつて地方財政の実情を調査し、早急に平衡交付金の配分基準の是正、その総額の再増加、または起債のわくの再拡張等適切なる措置をとり、地方自治行政の円満なる途行を期せられんことを望む次第であります。(拍手)
なお最後に、地方団体側におきましても、国家財政の現状と、国民負担の実情にかんがみまして、今後一層節約を行うとともに、地方費の最も能率的な使用を期していただきたいということをお願いいたしまして、趣旨弁明といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/4
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005・林讓治
○議長(林讓治君) これより討論に入ります。藤田義光君。
〔藤田義光君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/5
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006・藤田義光
○藤田義光君 私は、ただいま議題となつている地方財政平衡交付金増額に関する決議案に対し、国民足立党を代表して賛成の意を表する次第であります。(拍手)
終戰以来すでに六年、この間、民主主義の基盤たる地方自治は堅実な発展を遂げて参つたのでありまするが、この地方自治の運命は、だだちに日本の民主主議の興廃を左右する重大問題であります。にもかかわりませず、今ここに地方自治存立の基盤である地方財政平衡交付金を増額せよとの決議案を提出せざるを得ない事態に立ち至つたことは、新日本の前途に一抹の暗影を投げる不祥事であります。私が喋々するまでもなく、本決議案の根本目的は、古川内閣の民主主義、地方自治に対する認識を是正し、政府を除く全国民の熱望を果したいからであります。(拍手)
地方自治に対する政府、なかんずく池田大蔵大臣の失政は、いまさらいうまでもないところであります。昭和二十四年度に、まず平衡交付金の前身たる地方配付税を半減し、地方財政破綻の第一歩を踏み出したのも現政府であり、その後シヤウプ藩士の勧告をいれて、現政府みずからつくりました地方財政委員会は、池田氏の率いる大蔵官僚とは、地方財政問題をめぐり常に対立相剋を継続して参つております。(拍手)その間にあつて、地方自治庁の長官たる岡野国務大臣は、銀行家出身でありながら、池田大蔵大臣の数字の魔術に奔弄圧倒されて、手も足も出ない現状でございます。(拍手)
池山大蔵大臣の唯一最大の武器たる数字が、時により所に従つて激動することは、大蔵官僚すら認むるところで、たとえば今回の補正予算も、サンフランシスコ会議の前後で一千億円も変更されたことで明白であります。特に地方財政の資料に関しては、過日地方行政委員会におきまして、大蔵省の事務当局が、地方財政の実態はつかんでいない、ある基準町村を一部調査して、すなわち一万有余の市町村のうち一千余を調査して重大な資料をつくつておることを暴露しております。また都道府県職員の給與については、世論調査様式の推定を資料としております。世論調査様式がいかにずさんであるかは、先般のアメリカにおける大統領選挙に際し世論調査様式を用い、当落予想を行つた結果、デユーイ氏が圧倒的優勢を伝えられながら、トルーマン氏が大勝を博した一事をもつても、はつきりいたしておるのであります。
一例を言えば、今年度市町村財政につき、大蔵省は、昨年度より平衡交付金七十五億円を減じて、なお四百億の余剰を見込んでおるのに対し、地方財政委員会側は、今回の補正予算のほかに、一部府県分を合せ、さらに平衡交付金百億円、起債五十億円の増額に加え、八十数億円の節約を必要とする意見書を国会に提出いたしておることは御存じの通り。
そもそも地方事務の六〇ないし八〇%が国家の委任事務でありながら、税收の面から見れば、地方税二千億円に対し国税六千億となつておることは、事務と財源との不公正を如実に示しております。この矛盾した現実は、一刻もすみやかに解決を要する当面の急務でありまして、塚田氏の言うごとく、地方団体の出張が多いというのならば、中央集権の行政を即時是正すべきであります。(拍手)真に中央集権を排除して完全な地方分権を確立し、民主主義の発展をはからんとすれば、この税制の不合理を是正するとともに補助金制度を全廃し、地方公共団体に十分なかわり財源を與えることが、シヤウプ博士の勧告にもある通り、今日民主主義国家の常識であります。従つて、かりに国税として吸い上げたものを、地方公共団体の必要額だけ平衡交付金として拂いもどすことは理の当然であり、従来の政府の地方財政に対する出し惜しみ措置は、地方公共団体住民の公金を横領したものと言つても過言ではないのであります。(拍手)
その事実を知つてか知らずにか、二百八十名の絶対多数を擁する與党諸君は、先般来野党各派において本決議案の提出計画を進めるや、同調を申し入れて参つたのであります。われわれは、吉田内閣は地方財政に関する施策を誤り、遂に今日の窮迫の事態に立ち至らしめた、政府はこの際地方自治団体、市町村の熱望にこたえ、地方財政の危機を打開するとともに、地方公務員の給與ベース改訂に伴う財源を確保するため、地方財政委員会の意見を即時実施すべきである、との決議を用意しておりましたが、もし與党がにわかに用意した、善処すべきであるというなまぬるい決議案に同調せざれば、絶対多数の與党から一事不再議の原則を発動され、野党連合のいわゆる即時実施決議案はやみに葬られる関係も考えまして、形式上同調したのであります。われわれは、本決議案のいわゆる善処すべきであるとの日本語は、自由党総務会長廣川弘禪君外十二名提出の決議案が増額決議案と言つているごとく、即時平衡交付金の増額を実施すべきであるとの解釈を下していることを、ここに明言したいのであります。この意味からいたしまして、本決議案を提出した與党諸君が過日予算案に無條件賛成したことは不可解千万でありまして、もし真に地方財政委員会の要望意見を尊重するならば、予算を組みかえることが何よりも先決であります。たとい真に地方自治の発展を考えてのことにいたしましても、この矛盾を解消されないのであります。国会の廊下すずめが自由党の選挙対策であるとさえずつていることが真相であるかもしれません。(拍手)
これを要するに、池田大蔵大臣健在なる限り、吉田内閣の存立する間は本決議案の具体化が遅延することをおそれながらも、あえて本案に賛成の意を表した次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/6
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007・林讓治
○議長(林讓治君) 門司亮君。
〔門司亮君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/7
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008・門司亮
○門司亮君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されておりまする地方財政平衡交付金の増額に関する決議案に対しまして賛成の意を表するのであります。
地方財政の窮迫せる実情は、すでに提案者でありまする塚田君あるいは藤田君等から申し上げられておりまするので、私はこの点の重複は避けたいと思うのであります。問題は、かくのごとき決議案を、しかも従来に見ざる財政問題に対して、衆議院各派が全会一致をもつてここに提案しなければならなかつたということが、いかに大蔵当局の、並びに自由党内閣の失政であるかということを、はつきりと知つてもらいたいと思うのであります。(拍手)私は、この問題がこういう形で出て来たところに、大蔵省の地方財政に対しまするきわめて不認識な状態を遺憾なく暴露したものであるということを、また言わなければならないのであります。
すなわち、われわれは、先ほど塚田議員から申されましたように、地財委の勧告案、地方の公共団体から提出されました資料と大蔵省の資料との間にきわめて大きな食い違いがあつて、このどれを取捨することが正しいかというような、きわめてあいまいなお話がございましたが、そもそもかくのごとき状態を来すということは、この地方財政平衡交付金自体にも問題があるのであります。塚田君は、先ほど、前の配付税法にかわる法案であるということを申しておりましたが、その通りであります。われわれは、地方配付税法を制定いたしまして、法人税と所得税の三三・一四は必ず地方財政に寄與するために拂いもどさなければならないという法律を制定いたしました。地方財政の全きを期するために努力して参つたのであります。しかるに、自由党が内閣を組織されまするや、ただちに三三・一四を一夜にして一六・二九に半減されたという事実、さらにその次の国会において、この配付税法が地方財政平衡交付金という形にかわつて出て来たところに今日この問題が起つたということを、はつきりと認識していただきたいと思うのであります。われわれは、地方財政の全きを期するためには、地方の住民の納めた税額の中から、当然国家はこれを地方の負担能力に応じて拂いもどすという法律を制定いたしました。この地方財源の確保に努めたことを破壊されたということは、重ねて申し上げまするが、自由党の大きな失政であつたということを、私ははつきり申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)
こうした観点に立つて、この決議案の内容を少しく説明をいたしておきたいと思うのであります。それは、地方財政委員会の勧告に対しまする——大蔵省の地方財政に対する認識の誤りであります。すなわち、先ほど塚田君も言いましたように、地財委では四百三十八億余の赤字があると言つておるときに、大蔵省が七十七億の黒字があると言つております。この原因であります。どこにこういう大きな原因があるかということを、まずわれわれは究明しなければならない。
案の内容に上りますると、これは地財委から出されました勧告案の内容でありまするが、これによりますと、既定財政規模において、地財委は四千五百八十一億円余の財源を必要とすると言つておる。大蔵省は四千四百十二億で足りるとして、ここで差引百六十八億の減を主張いたしておるのであります。さらに重要なる問題は、昭和二十六年度の新規財政需要額において、地方財政委員会が千四百六十六億を要求しておりますときに、内閣は千九十九億でいいと申しておるのであります。二の差額は三百六十七億になつておる。
今日の日本の地方自治体というものは、アメリカの地方自治体とは非常に大きな開きを持つておる。アメリカの地方自治体は、御承知のように完成された都市計画、完成された上下水道というように、すべての設備が完成いたしております関係から、その地方財政に要求いたしております額は、これらの完成した部分を差引いて、残りの、将来の発展と、さらに住民の利福のためにのみこれが計上されておりまするので、非常に小さく見えるようではありますが、すべてがドツジ氏のさしずによつて行われておりまする今日の大蔵省の行き方は、ここに大きな誤認をしておるのではないかと私は思うのであります。
すなわち、今日の地方財政の新規需要額と申しましても、日本の百数十の都市は、戰災によつてまつたくその施設をすべて破壊されておる。破壊されておりません地方の公共団体にいたしましても、戰争の間は住民の負託にこたえることができないで、すべての事業というものが戰争の犠牲として放置されておつたということは事実であります。従いまして、戰後における地方自治体の仕事というものは、これらの復旧事業、あるいは住民の負託にこたえる新規事業というものが当然なければならぬはずであります。しかるに、この新規事業の財政需要額を三百六十七億も削るというようなところに、今日の地方行政に対しまする大蔵省のきわめて大きな誤認があつたということを、はつきりわれわれは指摘しなければならないのであります。(拍手)
次に問題になつて参りますものは、すなわち物価騰貴によりまする一般物件費の増額であります。これは地財委が二百億を計上しておりますときに、内閣はまつたくこれを認めていないのであります。今日、皆さんも御承知のように、物価の騰貴というものは、主食その他を中心といたしまする生活費の一八%、あるいは工事その他に使いまする資材は、卸物価において五割ないし六割、小売物価において三割ないし四割も騰貴しておるということは万人の認めるところであり、大蔵当局もまたこれを認めておるのであります。しかるにその物価騰貴による一般物件費の増は、物価の騰貴は認めるが、大蔵省の方針はこれ々認めない方針であるということだけで、これが片づけられて参つておるのであります。(拍手)地方の自治体は、中央の官庁と違つて、單なる机の上における仕事でないのであります。現業庁として、いろいろな事業、工事をなさなければならないという一つの性格を持つておる。この性格の上に立つて地方庁を考えて参りますならば、この物件費の騰貴というものは、きわめて大きな役割を財政の上に及ぼすものであります。しかるに、これが一銭も認められていないというところに、また大きな大蔵省の考え違いがあると思うのであります。
具体的に申し上げまするならば、地方の官庁が、政府の意向は官庁の工事あるいは事業の中で物件費の値上りは認めていないからというだけで、はたして資材がそれだけ安く購入できるでございましようか。おそらく商人には、政府の方針がいかに物件費の増は認めないといつても、物価の上つただけは必ず支拂わなければならないと私は考えるものであります。従つて、これらのものをわれわれ十分に考えなければ、今日の地方財政というものはやつて行けないと思うのであります。しかるに、これらのものを大蔵省は認めておらない。ここに私は、今日のこうした問題が起る最も大きな原因があるということを考えなければならない。
その次に問題になつて参りまするものは地方公務員の給與の問題でありまするが、これにつきましては、先ほど趣旨の弁明、あるいは藤田君等から申されたのでありますが、都道府県の一般職員の給與が四百六十二円、あるいは教員の給與が三百七十五円、市町村の一般職員の給與が五百七十六円、中央の国家公務員よりも高いから、今度のベース・アツプのときに、これだけ引下げなければならないということが、また大蔵省の意見であります。今日の地方自治体の情勢は——従来地方の公共団体において優秀な人を求めようといたしまするならば、その権限の大きさ、あるいは文化の施設の点等を考えまして、どうしても財政的に多額の給與を拂わなければ、地方の公共団体においては優秀な技能を持つ人が雇えなかつたということは、諸君もお認めになると思うのであります。こうした経緯と実情を無視して、しかも給與の安い方に右へならえするというような、まつたく働く者のことを考えない、べらぼうなものの考え方が大蔵省にあつたということを、われわれは指摘せざるを得ないのであります。(拍手)
こういう観点からわれわれが考て参りまするときに、この平衡交付金の総額が非常に減つておるという一つの大きな原因——この地財委の意見と大蔵省の意見との食い違いは一体どこにあるかということである。地方財政委員会といえども、大蔵当局の言つておりますように、地方の財政がきわめて放漫であつて、きわめてむだ使いをしておるというようなことに対して、地方財政平衡交付金の観点とこれをからみ合せて考えておりまするが、しかも地財委から出しておりまするところのあの内容を見まするときに、地財委みずからも、また地方公共団体みずからも、その経費の中で八十八億有余というものは予算の中から節約するということが、地財委の要求書の中にはつきり書いてあるのであります。このように自粛した地財委の要求であり、しかもこの自粛した地財委の要求に対して、なおかつ二百億の物件費の値上りを内閣が認めないとするならば、地方の公共団体は、みずから節約いたしまする八十八億と、政府の認めない二百億と、二百八十八億の歳出の節約をしなければならないでございましよう。今日、地方かの公共団体が、みずから節約するものは節約し、この自粛した態度に出ておりまするときに、なおかつ物件費二百億を削つて、これに追討ちをかけようとする内閣の態度は、私はどう考えても了解に苦しむのであります。もしこういうことが、そのままの姿において地方にかぶせられて参りまするならば、おそらく地方財政は破綻いたしまするか、あるいは地方の公共団体は住民の負託にこたえることができなくて、何らの事業もなすことができ得ないであろうということを、私どもははつきり言い得るのであります。こういう状態になつて参りまするならば、塚田君が冒頭に申し上げましたように、日本の民主化、日本の文化は地方公共団体の自主的自立性にあるといいながら、実際は自主的自立性が崩壊させられて、日本の文化というものはまつたく発達する余地を失うであろうということを、私は非常に憂慮するものであります。
われわれは、こういう意味から、今回提案されておりまする決議案の内容、決議案の主文に対しましては、先ほど藤田君も言いましたように、きわめてなまぬるいと思うのであります。われわれは、この決議案の中に、どうしても公平に見て、地財委の要求する百億だけはぜひ大蔵省に出させるというかたい決意のもとに百億の数字を明記いたしまして、これを政府に要求すべきであつたと思います。しかるに、これが全会一致になることのために、自由党の諸君の気持も十分われわれは参酌いたしまして本案に賛成をいたしておるのであります。ことに大蔵大臣は、先ほど藤田君の演説の中にありましたように、池田財政が健在である限りにおいては地方財政は疲弊するであろうというような、その汚名をそそがれる意味におきましても、どうかこの決議案の趣旨を十分に体得せられまして、この実現方に最大の努力を携われますることをお願い申し上げ、本案に対する賛成の意見を終りたいと思うのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/8
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009・林讓治
○議長(林讓治君) 立花敏男君。
〔立花敏男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/9
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010・立花敏男
○立花敏男君 日本共産党は、本決議案に賛成するものであります。しかし、われわれは、本決議案が自由党から提案されたことに関しまして重大な不満を持つと同時に、また重大なる疑惑を抱かざるを得ないのであります。ただいまの自由党の提案理由を承りまして、なおこの感を深くするものでありますが、しかもなお共産党がこの決議案に賛成するゆえんのものは、まず第一に、地方財政の窮乏が一日もゆるがせにできぬ緊迫状態にあるということ、さらに第二には、内外の反動勢力の日本財政に対する圧力が日にその強度を加えて参りまして、そのしわ寄せが地方財政にいよいよ加重されて参りまして、来年度予算における平衡交付金の削減の危機がまさに切迫しつつあるという理由からであります。
最近全国市長会が行いましたところの赤字郡市の実態調査によりますれば、昭和二十五年度におきまして、全国二百五十六の都市のうち八十一の都市、すなわち総都市の三二%が赤字都市であります。しかして、昭和二十六年度のこれらの都市の赤字見込額は二百六十七億に達するのでありまして、この金額は全国都市の歳入見込み総額の約三C%に達しておるのであります。ゆえに、昭和二十六年度におきましては、全国ほとんどすべての都市が赤字都市となり、しかも各都市がその財政の平均三C%の赤字に悩むこととなるのでありまして、まことに恐るべき実態であると申さねばなりません。しかも、地方自治体の中においても財源上比較的裕福なる都市においてすでにかくのごとくでありまして、さらに弱小なる町村財政に至りましては、その窮乏はまさに言語に絶するものがあるのであります。さらにシヤウプ税制の欠陷が如実に暴露されておりますところの府県財政に至りましては、特に農業府県の困難に至りましては、その財政の窮乏は特にはなはだしいものがあるのは申すまでもありません。
しかして問題は、かくのごとき地方財政の破綻の結果といたしまして、地方自治体の行政がまつたく混乱し、破局の様相を呈しつつあるということであります。その実例といたしましては、先般本国会の行政監察委員会で調査いたしたところの、石川県庁における天狗橋切落し事件のごときも、つまるところは公共事業費の不足に遠因するものであることが明白になつております、あるいは同時に調査いたしましたところの、佐賀県庁における砂利食い事件のごときも明らかにその一つでありまして、佐賀県の土木出張所長は、次のごとく委員会で説明しておるのであります。一昨年秋から堤防の架空工事に二十七万円、久留米線の修理として砂利を購入したことにいたしまして二十五万円、その他一年平の間に七十万円の予算をとつて、これを接待費、食糧費にまわしたが、これは上司の命令によつてやむを得ずとつたものである云云、以上二つの事件で明らかなように、地方行政機関が、現在の財政窮乏のもとにおきましては、いかに不正と腐敗に満ち満ちており、かつ反人民的なものであるかが明白になつておるのであります。
また先般新聞紙上を騒がしましたところの、埼玉県飯能町における町当局及び町会議員と町民との間に発生いたしました暴行事件も、そのきつかけとなりましたものは、住民に必要なる橋がかけられないこと、あるいは住民の要望いたしますところの新制中学が建てられないこと、この二つであります。ゆえに、飯能事件の真の原因は、地方財政の確立ということが当事者のいずれの側にも知られていないところにあるのでありまして、さらに一歩を進めれば、町村窮乏の真の原因を国民に知らしめないところの、古田自由党内閣の植民地的な愚民政策にその原因があることは申すまでもありません。
しかして、さらに重大なことは、これら地方自治機関の行政の混乱、その不正腐敗等は、地方財政の窮乏と相重なりまして、地方住民の生活並びにその生命に重大なる脅威を加えるに至つておるという事実であります。ことしの夏、神戸市に集団赤痢が発生いたしましたときに、わずか三万円の緊急防疫費の支出がどうしてもできなかつたのであります。しかも、赤痢発生の現場はいわゆる不良住宅街でありまして、この長屋には、第一に下水施設がないのであります。水道は共用栓であり、便所は共同便所であり、四つ辻には塵芥がうず高く積まれ、銀ばえが群がつております。雨水にあふれます共同便所からは、共同炊事場の付近に汚水が氾濫しておる。しかも当時、神戸市におきましては、一日に平均二十数名の赤痢患者が発生しつつあり、市民は戰々兢々としておつたのでありますが、地方財政の窮乏は、遂に市民の生命をすら守ることができない現状であつたのであります。病魔に倒れました市民は、実は地方財政を無視して軍事予算に狂奔する吉田自由党内閣の戰争政策の犠牲に供されたことは申すまでもありません。
昨夜の夕刊に発表されておりましたところの、大阪における小学校児童の中に、結核に上る長期休校者が急激に増加しつつあるという報道も、最も新しい犠牲の一つでありまして、児童の給食の大豆を横取りし、児童をガラスのない教室にほうり込んでおくところの政策が、どうして児童の健やかな身体をつくり出すことができましようか。政府は、小学校の児童よりも警察予備隊の方がかわいいのであります。何となれば、補正予算において、政府は警察予備隊費百五十億を支出しながら、学校給食費に対しましては、わずかその六分の一に達しない額しか支出していないのであります。これが平和と繁栄を保障するサンフランシスコ講和條約を裏づける予算の実体であります。
また一方、地方財政の窮乏は、地方自治体の職員に対しましても、経済上、肉体上の大きな負担を強要しつつあるのであります。超過勤務手当の未拂額が数百万円に達する自治体も決して少くないのでありまして、これは地方自治体が、薄給にあえいでおりますところの地方職員より、数百万円の金を、権力を利用いたしまして無理に借金しておるということにはかならないのであります。また年末あるいは年度末に近づいて給料の遅配欠配が生ずることは必至でありましようが、さらに財政上の必要から極度に切詰めました定員より来るところの労働強化は、慢性的栄養失調をもたらしますところ極度の低賃金と相まちまして、たとえば教職員等のごときは、結核罹病者の数が急激に増加しつつあるのは事実でありまして、かかる地方職員の生活の困難を無視いたしました政府は、今回国家公務員に対する地方公務員の給與の割高というデマをでつち上げまして、これを口実に、地方公務員の給與の切下げを地方に通達せんとしておるのでありますが、このことは明らかに地方自治の侵害であり、政府の越権行為であると考えるものであります。ひいては地方自治行政をまつたく不可能に陷れるものといわざるを得ないのであります。しかも、この地方公務員のベースの切下げによつて政府が真にねらつておりますものは、平衡交付金の減額にほかなりません。また最近政府が地方に強要せんとしております、十数万に達する地方公務員の首切りも、これまたその真のねらいとしますところが平衡交付金の削減にあることは明白であります。
以上のごとく、地方財政の窮乏は、地方行政を根本から破壊いたしまして、遂には地方住民の生活と生命を脅かし、地方職員のべースの切下げとなつて現われておるのであります。かかる地方の財政の不足及び種々の困難を救済防止するものとして、実は平衡交付金制度が設定されておるのであります。何となれば、平衡交付金法案提出の際の政府の提案理由によりますれば、地方団体に豊富潤沢な財源を與えることが平衡交付金制度の目的であると、当時財政は明言いたしておるのであります。従つて、平衡交付金法第一條におきましては、地方自治団体に適当なる財源を與えることをその目的とするということがうたわれておるのであります。従つて政府は、以上のような地方財政の窮乏が原因であるところの種々の事件が全国至るところの自治体に発生しつつある以上は、これらの事実がなくなるまで当然平衡交付金を支出するところの、法律上、政治上の義務が明白に規定されておると思うのであります。しかるに政府は、わずか百億で事を済まそうといたしておりますが、この額は地方公務員のべース・アツプにすら足りないのでありまして、いわんや、以上のごとき多くの大問題の解決に対しましては、まさに九牛の一毛といわればなりません。政府は、この百億すら恩に着せようとしておるのでありますが、これはとんでもないことでございまして、実は地方は黙つておつても、政府から三百億近いものは受取る権利があるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/10
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011・林讓治
○議長(林讓治君) 立花君、時間が参りました。簡單に結論をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/11
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012・立花敏男
○立花敏男君(続) 何となれば、追加予算に組まれておるところの所得税、法人税の自然増加は八百億に達するのでありまして、少くともそれの三分の一は、政府は平衡交付金として出すべき義務があるのであります。政府はこのことにはまつたくほおかむりをいたしまして、與党と結託いたしまして、今国会において地方行政委員会をサボタージユいたしまして、あるいは予算委員会において地方財政委員会の意見書を審議することなくして、強引に、わずか百億の増額を含む予算案を通過せしめておるのであります。その経緯を熟知しておりますところのわれわれといたしましては、本決議案を與党が提出することは、まつたく不可解であります。もし與党にして一片の良心があるならば、今からでもおそくはないのでありまして、ただちに予算案の修正あるいは再補正をなすべきであると考えます。この点に関しまして、池田大蔵大臣あるいは岡野国務大臣の明確なる所信を承りたいと存じます。それをなさずいたしまして、單なる一片の決議案によつてお茶を濁さんとするがごときは、公党としてはまつたく卑怯なる態度といわざるを得ないと思うのであります。(拍手)しかしこれは、主食の統制撤廃で自主性の完全喪失を暴露いたしました政府、與党に求めることは、まつたく木によつて魚を求めるものといわざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/12
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013・林讓治
○議長(林讓治君) 簡單に結論を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/13
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014・立花敏男
○立花敏男君(続) しかも、かかる自由党の欺瞞的態度が国家財政上真に余裕がなく、平衡交付金の増額が不可能であるという事実の上に立脚するならば一応了とすることができるのでありますが、事実はまつたく逆でありまして、金は十分にあるのであります。九月現在において、資金運用部の会計において約七百億円の余裕金を残しておるのでありまして、しかもこの金の大部分は来年度に繰越されるものであります。従つて、政府、與党がやろうと思えば、今ただちにでもやれるのであります。先般、今国会におきまして、山形県の知事が参りまして、政府は出そうと思えば出せるのだ、ただ出さないのだ、ということを明言いたしております。
われわれは、かつて国会におきまして、預金部資金の資金は、地方財政に対して優先的に支出すべきである、という意味の決議を行つているのであります。(「もう時間だ」「やめろ」と呼び、その他発言する者あり)政府は、なぜこの莫大なる余裕金を地方に與えないのでありましようか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/14
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015・林讓治
○議長(林讓治君) 立花君——立花君、残余は速記録に載せることといたしまして、この程度でおやめを願いたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/15
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016・林讓治
○議長(林讓治君) 久保田鶴松君。
〔久保田鶴松君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/16
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017・久保田鶴松
○久保田鶴松君 私は、日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、平衡交付金増額の決議案に賛成の意を表するものであります。
地方財政のはなはだしい窮乏と、平衡交付金の増額の問題につきましての各種の要求につきましては、今までしばしば論じられたのであります。また各方面から陳情もなされました。各党の委員におきましても今まで論ぜられました。わが党におきましては、すでに八月の中旬、全国知事会議の要求いたしまする国庫負担五百六十七億の増額を政府に申し入れ、その実現のために全力を振つて努力して参つたのでありますが、現実はそれに反して、このたびの臨時国会における補正予算の審議におきましても、さらにまたドツジ氏との政府の交渉経過におきましても、地方財政は、軍事、警察偏重の中央財政のもとに、ますます圧迫されつつあるのであります。すなわち、政府機関たる地方財政委員会においてすら、二十六年度地方財政修正計画において、最低の案としてどうしても平衡交付金約二百億、地方債百五十億の増額をしなければ地方財政は危機に陷るという意見書をもつて明らかにされておるのであります。しかるに政府は、このたびの補正予算におきまして、平衡交付金はその半額の百億増で打切つているために、知事以下地方自治体の不満はきわめて大きなものとなつているのでありますが、その一方で、政府は、警察予備隊の経費その他約百九十億をも増額している。これはまさに軍事同盟的予算のもとに地方財政を圧迫しているものといわざるを得ないのであります。(拍手)
二十七年度の予算におきましては、さらに講和関係の費用計二千億を見積られ、しかもドツジ氏はインフレの危機をしばしば警告しているため、どうしても平衡交付金の削減や、あるいは重税の必至等も言われているのであります。このような状態では、地方の財政の危機は深まり、きわめて危ういものとなつて来るのであります。特に市町村財政におきましては、すでに六・三制も不満足で、多くが二部制ないし三部制教育を行い、また教員や地方公務員の給與べースに至りましては中央より下まわり——事実上は政府の認めた乏しいペース・アツプ等によりましても、これがそれよりも下まわつている。また、かわいい児童の校舎も老朽化しておる。なお市町村道におきましても、これまた荒廃しつつ放置されておる。住宅の問題につきましても、何ら解決を見ていないのであります。
さらに重大なことは、市町村関係の承認済みの公共事業でございます。六・三制建築、災害復旧事業等、これらの問題につきましては、一刻も急を要する事業である。ところが、この問題についての物価の騰貴等もございまして、その事業量が三割減となつている。そのために、満足な予算の計画の実行もできない。なお失業対策の遂行すらもむずかしくなる実情にあるのであります。
こういうようなことで、地方財政の窮乏は国土の荒廃を招く状態になつているのでございます。このような事態が今後さらに悪化するならば、地方都道府県民の生活を圧迫するという経済的な問題のみでなく、社会不安の助成をももたらすと同時に、民主主義の基礎にして、地方自治の真の根拠である市町村自治そのものを圧殺し、過去の独裁政治あるいは中央集権制への復帰を策するものと申さなければなりません。このことは、全国市長あるいは市会議長あるいは村長、村会議長の連絡をもつて強調しているところでありまして、單に社会党が強調するのでみなく、実に全国民的な危惧でございます。
特に今回、衆議院が、超党派的に一致して国民生活と地方自治の民主主義政治防衛のために平衡交付金増額の決議案を提案いたしましたことは、わが日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、きわめて喜ぶところでございます。願わくは、さらに百尺竿頭一歩を進められまして、自由党も真に誠意あるところを示して、これが増額は、最低においても地方財政委員会の意見書による二百億増額として、現在参議院に回付されております補正予算に即時織り込まれるよう努力されんことを希望いたしまして、賛成のあいさつにかえる次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/17
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018・林讓治
○議長(林讓治君) 羽田野次郎君。
〔羽田野次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/18
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019・羽田野次郎
○羽田野次郎君 私は、ただいま議題となつております平衡交付金増額の決議案に対しまして、農民協同党を代表して賛成の意見を表明したいと思います。すでに各党の代表諸君によつて増額の必要性が強調せられましたし、その背景をなすところの地方財政の窮乏が述べられましたから、私はきわめて簡潔に意見を表明したいと思います。
すでに指摘されましたように、このたびの補正予算編成にあたりまして、地方財政委員会が平衡交付金二百億を要求いたしましたのに対しまして、予算案にはわずかにその半分の百億しか計上されていないという点でございます。もちろん予算案でありますから、これを修正し、あるいは組みかえることが可能であつたならば問題はないのでありますけれども、不幸にして本衆議院におきましては可決をされておるのであります。それで、試みにさかのぼつて予算編成当時においてどのような問題があつたかということについて究明したいと存じます。
それは、地方財政委員会は地方団体の歳入欠陥を四百三十数億と計算しておりますのに、大蔵省当局は、地方財政は七十億円以上の黒字であると計算しておるところに問題があるのであります。地方財政委員会では、それが地方財政の専門機関として存在しておりますし、法律の命ずる方法によつて一万以上の町村の財政を調査し、四十数都道府県の実態調査による数字を積み上げての計算でございます。それに対して、大蔵省はこれが専門の機関ではございませんから、当然きわめて少数の府県市町村について抽出調査をやつて、それによつた推計にすぎないものでございます。従つて、そのいずれの数字を尊重すべきであるかということは、言わずして明らかであります。
しかもまた御承知の通り、先般府県知事は、あれほど熱烈なる、示威運動にもひとしき運動を展開いたしまして平衡交付金の増額を要求し、また全国町村長大会におきましても熱烈な叫びをあげております。さらに昨日は、全国町村の議長の大会におきましても熱烈な要求をしておるようであります。その事実に徴しましても、決して地方財政が黒字であるとかなんとかいつたようなものではなくして、地方財政委員会の調査のごとく、地方財政は今や厖大な赤字を抱いて深刻な苦悶をしておるということは、否定すべくもない事実でございます。(拍手)
しかるに、予算編成にあたりましては、先ほど申し上げましたように、大蔵当局は、あくまで地方財政は黒字だとの主張を曲げず、地方財政委員会要求の二百億をいれないで、わずか百億を計上して、その主張を貫いておるのであります。地方財政委員会のこれに対する態度は、削減を食らつても、大蔵省側が削減の理由として、国全体の財政上これ以上計上することが不可能であるというならば釈然とするというのであります。しかるに、専門機関として科学的に積み上げた数字を、大蔵省はまつこうから頭こなしに否定するのだから承服できぬと、こう言つておるのでありまして、これが巷間伝えられますところの、地方財政委員会と大蔵省との間における不幸なる軋轢の真相なのであります。もし、かくのごとくであるといたしますならば、この大蔵省の横暴独善の態度は、これを糾弾して是正するのでなければ、地方財政委員会の存在理由も今やない。(拍手)また平衡交付金制度の理想も蹂躪し去られるのではないかと疑わざるを得ないのであります。(拍手)
このような事実は、皮相観いたしますれば、例によつて役所同士の勢力争いか、あるいはまた單に行政技術上の問題であるかのごとく見えますけれども、これを深く掘り下げまして、大蔵省は何ゆえかくのごとき行動をとるかについて究明いたしますならば、まつたくこれは大蔵省の現段階におきまする地方財政に対する認識、そしてまた平衡交付金の社会経済的な意義に対する認識の問題であるといわざるを得ません。すなわち、申しまするまでもなく、現在のわが国のこの資本主義経済の復興の様相を見ますると、大資本企業に集中生産が行われまして、農業あるいは中小企業は急激に沒落しつつあるのでありまして、大企業の集中する大都市と、その周辺地方の経済が発達して、ゆたかになります反面、地方農業あるいは小都市の経済は衰微し、貧弱化することは、不可避の事実なのであります。(拍手)この片寄つた、でこぼこの、均齊のとれない国民経済の発展は、再び民主政治を逆行せしめるといわざるを得ません。この不均衡の調整をはかり、地方行政の強化を促進することによりまして、わが国民主化の基盤を守ろうというのが、平衡交付金の本来の趣旨でなければならないのでありまするが、大蔵当局のこの態度はその認識を欠きまして、従つて、そのやり口は、戰前の軍国主義時代における地方財政軽視の認識に基いておると断ぜざるを得ません。
以上、大蔵省の態度というものは、当然池田大蔵大臣の政治感覚あるいはイデオロギーの反映であるということは申すまでもございません。(拍手)大蔵大臣の考え方の転換こそは大問題であると存じます。せつかく大蔵大臣がおいでございますから、後ほどこれに対する見解を明確に承りたい。しかして、このまれに見る全会一致の決議案の趣旨を体して、はたして増額の意思ありやいなやについて御意見を承りたいと存じます。
これを要するに、地方配付税制度が、とかく地方自治の中央集権化的傾向を誘致いたしましたにかんがみまして、平衡交付金制度は、内閣に対しまして十分にその独立性を保持し、かつ地方団体の利益を容易に反映することができるような機構でありますところの地方財政委員会に運営させるものでありますから、その勧告を最大限に尊重して、補正予算編成に際して、この地財委が要求いたしました二百億にすみやかに増額されんことを政府に要請いたしまして討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/19
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020・林讓治
○議長(林讓治君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/20
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021・林讓治
○議長(林讓治君) 起立総員。よつて本案は全会一致可決いたしました。(拍手)
この際大蔵大臣から発言を求められております。これを許します。大蔵大臣池田勇人君。
〔国務大臣池田勇人君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/21
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022・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) ただいまの本院の決議を尊重いたしまして、今後中央地方の財政状況を検討勘案し、善処いたしたいと存じます。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/22
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023・林讓治
○議長(林讓治君) 日程第二、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、検疫所の支所及び出張所の設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。厚生委員会理事亘四郎君。
〔亘四郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/23
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024・亘四郎
○亘四郎君 ただいま議題となりました、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、検疫所の支所及び出張所の設置に関し承認を求めるの件について、厚生委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
最近、出入港船舶の増加に伴い、その検疫事務を促進するため、新たに室蘭港、釜石港、舞鶴港、下津港及び徳山下松港にそれぞれ検疫所の支所または出張所を設け、外航船舶の運航経済に利便を與えるとともに、海外貿易を促進して業務の万全を期したいというので、ここに地方自治法第百五十六條第四項の規定により国会の承認を求めて参つたのでのであります。
本件は、十月三十一日、本委員会に付託せられ、十一月九日、政府より提案理由の説明を聴取し、審議を経て、討論を省略し、採決いたしましたところ、本件は全会一致をもつて承認を與うべきものと決した次第であります。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/24
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025・林讓治
○議長(林讓治君) 採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/25
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026・林讓治
○議長(林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて本件は委員長報告の通り承認するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/26
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027・林讓治
○議長(林讓治君) 日程第三、会社更生法案、日程第四、破産法及び和議法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員会理事押谷富三君。
〔押谷富三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/27
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028・押谷富三
○押谷富三君 ただいま議題と相なりました会社更生法案並びに破産法及び和議法の一部を改正する法律案につきまして、それぞれの提案の趣旨及び法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げたいと存じます。
まず会社更生法案について御説明いたします。
本案は、株式会社の経営する事業が破綻に瀕し、債務弁済上窮境に陷つたとき、一定の手続を経て、裁判所の監督のもとに、会社自身はもちろん、債権者、株主、従業員等がおのおのその立場で相協力して事業を維持更生させ、いわゆる生かしてとる主義の内容を持つた法律であります。御承知のように、現行法といたしましては、企業を解体させずに更生させるためには強制和議の制度がありますが、これは画一的、包括的でありまして、あまり効果がないようであります。また商法の規定による会社整理の制度がありますが、これもあまり任意的でありまして、微力のために制度の利用度が少いようであります。そこで、これらの欠陥を補うために本法案を必要とするわけであります。
本案の特長の第一点は、更生手続開始の原因として、会社がその事業の継続に著しい支障を来すことなしには弁済期にある債務を弁済することができないとき更生手続開始の申立てができることといたしております。第二点は、高度の強制和議の性質を有することであります。第三点は免責制度を採用いたしていることでありまして、更生計画認可決定後は、計画によつて認められた権利及びこの法律で認められた権利を除いては、会社はすべての債務から免責されることにいたしたのであります。第四点は特に重要な点でありまして、租税公課の請求権を有するものをも手続に参加せしめまして、一定期間その滞納処分を中止し、また徴税猶予ができることになつているのであります。
さて、法務委員におきましては、第十国会後、全国に委員を派遣し、主要都市の商工会議所において懇談会を開催し、財界並びに朝野法曹界の本案に対する忌憚なき意見を聴取いたしました。さらにまた今国会におきましては、産業界、金融界、弁護士、裁判所、労働組合関係の有力なる代表者より参考意見を徴し、愼重審議いたしたのであります。
質疑の詳細につきましては速記録に譲りたいと存じますが、そのうちのおもなるものを申し上げますと、第一に、更生法をつくることよりも、この際更生、整理、清算、和議、破産といつた一連の法律を改正することが望ましいのではないか。第二に、財界の輿論としても、現在窮境にあるのは中小企業者が大部分であつて、その窮境の原因たるや、おおむね税金対策と、高歩の利息支拂いにある。しかるに、これらに対する規定が不十分であつて、本法の成立を待望している中小企業会社を失望せしめるのではないか。第三に、会社の債務が二千万円以下のときは管財人を置かなくともよいとしているが、会社更生の成否は一にかかつて管財人の人選いかんにあるのであつて、はたして適材を得らるるであろうかどうか。また更生計画送行上、輸血的な新しい融資問題が起るものと考えられるが、この点について考慮が拂われていない。裁判所の監督下にあつて一切の手続を履行するとすれば、その終了までには相当の年月を要することになり、結果としては財界の実情に沿わないものになるきらいはないか。第四に、労働協約を圧迫し制約するがごとき規定があるが、従業員の積極的な協力なくしては会社更生の成果は期せられない。第五に、外国法人に適用することによつて、日米経済協力に参加しない会社に事実上更生できないのではないか、というような問題があつたのであります。
かくて討論に入り、一部修正案が提出されたのであります。すなわち、原案附則の施行期日の「昭和二十七年一月一日」とあるのを「昭和二十七年七月一日」とするものであります。
次いで討論を終結し、採決の結果、修正案並びに修正部分を除く政府原案はいずれも多数をもつて可決せられた次第であります。(拍手)
次に、破産法及び和議法の一部を改正する法律案につきまして御報告申上げます。
今回の改正点の最も重要なる点は、破産における免責制度の採用であります。現行法におきましては、破産者は、破産手続終了後におきましても、弁済されなかつた残余債務についてはなお弁済の責に任ずることになつております。それで破産者は終生債務の重圧に苦しまなければならないのでありますが、これを救済するために、英米などで古くから行われております債務の免責制度を採用しようとするものであります。これによりますと、破産者は免責を得るために誠実に行動をする結果、破産財団の確保ができまして、かえつて債権者のためにもなることが多いのであります。ことに破産者は免責によつて当然復権しますので、すみやかに更生して社会のためにも活動する結果となるのであります。
以上が提案の要旨でありますが、当委員会におきます質疑の詳細につきましては、速記録に譲ることにいたします。
かくて、十一月九日採決の結果、全会一致をもつて政府原案通り可決いたした次第であります。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/28
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029・林讓治
○議長(林讓治君) まず日程第三につき採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/29
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030・林讓治
○議長(林讓治君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。
次に日程第四につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/30
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031・林讓治
○議長(林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時四十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101205254X01419511110/31
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