1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月十二日(月曜日)
午後一時三十四分開会
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出席者は左の通り。
委員長 木下 辰雄君
理事 松浦 清一君
千田 正君
委員
秋山俊一郎君
玉柳 實君
櫻内 義雄君
政府委員
外務省調査局長 土屋 隼君
水産庁次長 山本 豐君
事務局側
常任委員会専門
員 岡 尊信君
常任委員会専門
員 林 達磨君
常任委員会調査
員 西村 清俊君
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本日の会議に付した事件
○水産物増産対策に関する調査の件
(漁業協定に関する件)
(災害対策に関する件)
○派遣議員の報告
○漁業法の一部を改正する法律案(内
閣送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/0
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001・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。調査局長と山本次長がお見えになつておりますが、調査局長は本日漁業條約会議の議長を勤められる関係上、二時十五分前に退席されますからそのつもりで御質問を願います。今から漁業條約に関する御質問を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/1
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002・千田正
○千田正君 太平洋漁業條約という問題が頗る重要性を帶びておるということは私が質問申上げるまでもないことでありまするが、ただ先般吉田、ダレス氏の会談においても、こういう問題及び通商條約というような問題は関係当局が批准後において直ちに行うということを言明しておつたはずであります。にもかかわらず、批准のまだ終らないうちに、殊に日本ばかりでなく、アメリカなどは来年でなければ国会が召集されない現状において、その前にこの條約が結ばれなければならないという理由はどこに存してあるかということと、このアメリカ並びにカナダの漁業條約の代表委員を日本側が招集したということろに我々は解せない点が一点あるということと、この條約が平和條約の一環となつておるかどうかということを質しておきたいと思うのであります。ということは、アメリカ或いはカナダと、最高の理念の下に、魚族保存と、それから世界の食糧の蛋白給源の源を絶やさないという理論においては、我々も同感であり、そうあるべきはずであると思いますが、それと同時に、実際の問題として、国際法上に及ぼすところの、いわゆる公海の自由という問題と、更に現実的においては、日本が、先般の新聞によりまするというと、日本もカナダもアメリカも、いわゆる権利を放棄するという字を使つておりますが、これは字句の上から見て、頗る不穏当であると思うのであります。この点を質したいという点と、平和條約の一環としてこれを結んだ場合においては、仮にアメリカ、カナダ、日本との間には條約が結成されて、更にほかの国から、日本と批准を同じうしたところのほかの国から、これと同様の條約を要求された場合においては、多分これを拒否することはできないはずでありまするが、そういう問題が将来起きた場合、三国以外の国から同様の條件の下に同じような條約を要求された場合に、これは拒否はできない。そうした場合に日本の漁業に及ぼす影響というものは、北太平洋とは異なつた意味において、南太平洋或いは支那海その他の日本と近接するところの海洋におけるところの日本の水産業というものが、壊滅に瀕するという虞れを我々は抱かざるを得ない。或いは杞憂かも知れません。その点を、この條約が全く準備の段階でありまするが、その点をはつきりしておいて頂きたい。この点を伺いたいと思うのであります。
それから今の会談はいわゆる條約に対するところの準備会談であるか、それとも直ちにこの会談によつて一応の結論が出たならば直ちに條約として各国の代表間において、これが批准される問題になつてまではつきりして行くところの会談であるかどうか。以上の点につきまして調査局長から外務省が持つておるところの見解を表明して頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/2
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003・土屋隼
○政府委員(土屋隼君) 只今先ず講和條約批准前において、好んで早めに漁業協定の打合せ或いは交渉をする必要はなぜあつたかという点を先ずお取上げになられたようであります。これは御存じの通り、ダレス、吉田書簡というものおきまして、日本は講和條約批准後マッカーサー・ラインが必然的に消滅しますので、その後の事態に備えて、日本側としての自制の手段をとりますということを約束してありますわけであります。この吉田、ダレス書簡によつて謳われました日本の自制手段というものは、そういう講和條約批准後におきまして、日本と各国との間に漁業に対する何らの協定若しくは了解もなく、従つて外国がよく心配し、事実宣伝いたしましたように、濫獲なり、或いは資源枯渇の虞れがあるという魚族に対しまして保証手段にならないわけでありますから、従つて吉田、ダレス書簡は、そういう無條約の状態におきましても、日本側としては立派に国際的な信義を重んじて自制手段をとりますということを約束したことは御存じの通りなのであります。ただこれは飽くまで暫定的のそういう事態を予想いたしまして、それに備えた、そういう不測な事態に備えたところの手段でありますので、私どもといたしましては、一日も早くこの外国との了解によつてそういつた濫獲なり、資源枯渇の虞れのあるという事態を発生しないということが一番大事なわけであります。そこで講和條約の第九條に謳つてありますように、日本は一日も早く希望する連合国との間に漁業問題を協定しましようという約束をして、これは調印してあるといういきさつなのでありますが、こういう事態から見まして、私どもはあえて條約批准後の事態を待たず、條約批准前においても、本問題は大きな影響を各国に及ぼす問題でありますから、忌憚なく両者で協議交渉を遂げたほうがよろしいというので、今回の漁業会談を講和條約批准前でありますが、開くということを大体まあ政策としてわけであります。
第二に日本が現在主催国として、アメリカ並びにカナダにこういう漁業交渉の問題につきまして招待を一体出したという理由は那辺にあるかという御質問でありまするが、私どもは未だに條約が批准を見ません現在におきましては、法律上から申しますと、被占領国であります。従つて被占領国の建前から、諸般の外国との條約の交渉をするということは、いわば被占領下におきまして、つまり自分の自由がきかないにもかかわらず、他国との條約の交渉に当るということになります。その結果は、日本が独自の考えと、そして独自の方法とが採用できないという心配が多分にあるわけであります。そこで私どもは、日本とアメリカ、カナダとの漁業協定が若しここで交渉をするとすれば、日本は仮に條約批准後において独立国となるという、その仮にという点を実現いたしまして、何ら占領軍並びにほかの連合国から制肘を受けることなく、完全なる独立国としてならこの交渉を、漁業交渉をしてもいいという考えを以ちまして、この司令部と交渉の結果、リツジウエイ総司領官から今回の漁業協定に関しまして、日本は完全なる独立国の建前で交渉をしてもよろしい、その結果といたしまして、GHQの許可を得る必要のないことは勿論のこと、交渉の中途においてもGHQにこの交渉の経過を報告するの要なしという一札をもらいまして、これが総司令部の覚書として会議前に内示をされましたので、これに従いまして、日本は然らば漁業條約を交渉するの意図も表明してあるのだし、又批准を待つということはいろいろの事態が輻輳いたしますから、その点において却つてみずからアメリカ並びにカナダという関係国を呼びまして、漁業問題について隔意なく日本の立場も説明し、各国の立場も聞いた上で、協定を結んだほうがよかろうという結論に達しましたので、尚早に外部的には見えるかも知れませんけれども、今回の時機を捉えて、ここに日本が主催国として、アメリカ、カナダを日本に呼び、日本の漁村の実際の状態、日本の国民に漁業関係が及ぼす重要性というものを、アメリカ、カナダの代表に十分認識して頂いて、そしてこの認識に基いて今回の協定においては日本側の立場を理解して欲しい、こういう建前から主催国をあえて買つて出たわけであります。今又講和條約のこの一環をなすという意味で、漁業條約は考えられて来るのではないか。特に他国との関係におきまして、今後日本がほかの国から同種類の條約を強いられる、或いは望まれた場合におきましてはこれは断われないのじやないかということでありますがね断わり得ない、又断わるべきべきでないと私も考えます。そこで今回のアメリカ、カナダとの條約におきましては、この條約が今後日本が他の諸外国との間に漁業協定を結びます場合、雛形、範例となりますので、このアメリカ、カナダ、日本との今回の漁業條約につきましては、この條約の中に日本のみに不利益なる條件を盛るということは絶対に避けなければならないと考えております。又そういう趣旨で私どもも交渉をしているつもりであります。只今公海自由の原則を必ず堅持すべきであり、又あの只今の交渉の過程にある、アメリカ、カナダとの條約におきまして権利放棄という点が見えるのは甚だ好ましくないという御意見がございました。公海自由の原則は私どもも飽くまで遵守しなければならんし、又これは仮にアメリカ、カナダ、日本だけの漁業條約で公海自由の原則を変えるということがあつたとしても、これは国際法上私は有効でなかろうと思うのであります。つまり国際法上の原則、公海自由の原則というものは、世界の各国が実際上の問題として認めておるところの権利でありまして、これを日本、アメリカ、カナダという三国だけが変更するということはでき得ないわけであります。ただこの三国が一つの例をここに作つて権利の放棄なりなんなりによつて公海自由の原則というものを仮に事実上無視して来るということになりまして、これが世界各国、今後の世界の情勢としてそうあるべきだということで各国がついて来るということになりますと……、公海自由の原則という従来認められた国際法上の原則がこの各国間の協定、若しくは黙認によりまして、解決されるということになるわけであります。併し私は今回の日本、アメリカ、カナダの漁業協定におきまして、そういう国際法上の原則を変えるということは考えておりません。現にすでに提出を見ましたアメリカの案の中にも従来の国際法上の諸権利というものを尊重しつつあるという一文がありましたので、この点から見ましてもアメリカにその意図がないということは、先ず断言できるかと思うのであります。ただ今回の議題になつております中に、アメリカ側の提案の中には、権利の放棄という点が書いてございますが、アメリカ側もこの点にはよほど気をつかつたと見えまして、権利の行使の放棄と書いてあるわけでございます。つまり国際法上各国が自由平等の原則を以て、魚族資源の枯渇を防ぐという、人類共通の目的を増進するための権利は持つているが、その権利をお互に合意で行使することを放棄しようじやないかということを謳つているわけであります。そこで権利の行使を放棄するということは、飽くまで合意的であつて、他国の強制を受けるべきでない。それが今回の漁業協定につきまして特に強調すべき点かと思うのであります。つまり、併し日本ならば日本は権利は持つておる、その権利の行使は公海においては自由なはずであります。自由なはずでありますが、もうこれは人類の目的に副つてこの権利の行使を各国が差控える、そしてその差控えるということについて、相手方と協定を結ぶと相手方も又行使を放棄するという義務を持つわけでありますが、この権利放棄の義務というものはお互いの相対ずくできめられた合法上の、法律上の行為であつて、これによつて私は国際法上の公海自由の原則が無視されたということにはならないだろうと思うのであります。
そこで私どもは今回の條約につきましては、こういつたいろいろの原則なり、或いは趣旨というものを如何に條約の中で盛り出すか。こういうこと、又この盛られたものが誰が見ても公平なものであり、日本としては特に他国から今後こういう種類の條約の提案を受けました際に、日本側は特に不測の利益を不測に侵害されないということを主眼にして、今回の條約を交渉して行かなければならないと考えているわけであります。
又只今今回の会談は一体今後できるだろうところの協定の予備会談なのか、それともここにおいて調印を済ます予定かどうかという御質問がございましたが、私どももまだこの点についてはどの段階で……この交渉が終止府を見るかということについては確たる考えをまだ持つていないわけであります。若しアメリカなり、カナダなりが、非常に合意的な、日本に受入れられるところの協定案に賛成してくれるとすれば、ここに調印等を見るという段階を考慮しなければならなくなるかも知れませんけれども、又そうでない限りにおいては、今回の会談は一に予備的な会談を遂げたということになるかも知れないのであります。この点につきましてはアメリカ並びにカナダの代表が、現在日本に来ております代表がどの程度までのことを考えているか、私もまだつまびらかにはいたしておりません。ただ先日アメリカ代表主席のヘリングトン氏はアメリカ人、日本人の記者の会談におきまして、今回の交渉はここで調印するのかしないのかという質問に対して、恐らくここでは調印しなかろうということを言つておりますので、これが若し本当であるといたしますと、アメリカの全権は準備会談にここに来たというふうに考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/3
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004・千田正
○千田正君 もう一点……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/4
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005・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 時間が来ましたので、次の委員会に又来て頂きまして続行したいと思います。漁業條約に対する質問は次回の委員会に譲りまして、これから玉柳さんに災害の調査報告をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/5
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006・玉柳實
○玉柳實君 私ども第一班の台風災害視察団は、先月の二十六日、大分県を皮切りにいたしまして、宮崎県、鹿兒島県に亘りまして、十一月二日まで調査をいたしまして、帰京をいたした次第でございますが、その災害視察の一般概況につきましては、去る九日の本会議におきまして島津団長より報告がございましたので、私はこの機会に水産関係についての概況を御報告申上げ、併せて今後の施策を考究する上においての、御参考に供したいと考える次第でございます。
先ず今回台風の特徴とも申すべきものは、時たまたま一年の最も高潮の時期とこの台風上陸の時間が合致いたしましたために、想像も及ばない高潮を伴い、前例のない強烈な風速であつたわけでございまして、これがために特に甚大な被害を各方面に及ぼしたわけであります。今その被害の概況を簡單に申上げますと、先ず大分県におきましては、漁港、船だまり、船揚場等の災害二億円、漁船、これは動力船双方含めまして被害漁船九百五十九雙で、その損害六千百三十五万円、漁網、共同施設、水産製品等が八千七百十万円、合計いたしまして三億四千八百四十五万円、こういう数字を示しておるのであります。次に宮崎県におきましては、これは災害、水産関係方面におきましては、被害が僅少でございまして、漁港、船だまり方面につきましては被害の見るべきものはございません。漁船におきましては、被害百六十五雙で一千百八十九万五千円、魚具施設その他合計いたしまして四千七百九万一千円、合計五千八百九十八万六千円でございます。鹿児島県におきましては、すでにお聞き及びの通り、想像外の甚大な打撃をこうむつておるのであります。特にその被害の甚大なことを示す証左といたしまして、潮位並びに波の高さ等を御参考に申上げますと、鹿児島港におきましては波の高さが三・五メーター、潮位が五・0二メーター、枕崎港におきましては波の高さが四・二メーター、潮位が五・三メーター、薩摩半島の西端の野間池港におきましては、これは特に津浪と称するものになつているのでありまして、水位平均干潮面上実に十・七メートルの高きに及んでいるのでありまして、これがために被害額におきましてもほかの県に比較いたしまして群を抜いて高額に上つているのであります。漁港、船だまり関係におきまして被害個所百十七個所で五億五千二百二十万、漁船におきまして三千九百五十隻の被害で、実に十八億円の被害に上つております。漁具、資材関係におきまして三億九千万、その他九千七百万、合計いたしまして約三十七億一千二百万円という巨大な被害をこうむつている次第でございますが、なおこのほかに家屋の流失、全壞が非常に多いのでありまして、大分県におきまして千七百九十五戸、宮崎県において五千百八戸、鹿兒島県におきまして一万三千三百九十二戸と相成つております。この中には漁民の家屋がその過半を占めるものと考えられるのでありまして、而もこれら家屋と同時にその中の家財道具の殆んどを失いました点等を考慮いたしますと、被害漁民の窮状誠に同情に堪えないものがあると存ずる次第でございます。特に被害地を観察いたしまして印象的でありました二、三の例を御参考までに申上げますと、先ず御承知の日本かつお漁業の中心地であります沈崎市でございますが、これは丁度台風の上陸が枕崎のやや西方に上つた関係がございまして、特に甚大なる被害をこうむつております。この枕崎市におきまして流失、全壞が一千百二十五戸、半壞千五百八十二戸、大破、中破等を合せますと実に全市の八〇%の家屋がその被害を受けている状況でございます。先ず被害の中心である枕崎漁港に参つたのでありまするが、枕崎港におきましては相当規模の大きな防波堤も非常に甚大な損害を受けておりますが、その護岸のごときは殆んど全部見るかげもなく壞れておりまして、海岸から約一町余に亘りまして、その間にありました家屋は全部見るかげもなく流失全壞いたしているのでありますが、その港湾だけにおきまして約四百六十戸の住宅が流失をいたしているのであります。更に漁船は三百四十七隻を失い、その他陸上の製氷施設も甚大なる損害を受けております。又燃料油施設のごときは殆んど全滅をいたしている次第であります。参つて見ますると百トン前後の幾つかのかつお船が遥か陸上に打揚げられ民家に突入いたしまして、無残な恰好を呈しているような状態でございます。この枕崎市におきまして、市だけにおいて別に二十五億の被害を受けておるのでありますが、このうち水産関係のみにおきましても相当大なる被害を受けておると考えられるのであります。更に西に参りまして、このまぐろ漁業の根拠地である串木野市に参つたのでありますが、ここもやはり台風の通過したところでございまして、非常に甚大なる打撃を受け この一市のみにおきましても実に総額十四億に余る被害を受けておるのであります。この中で水産関係におきまして約五億八千万の被害を受けておるようであります。この内訳を申しますと、港湾関係におきまして一億九千四百万余円、漁船におきまして一億二千五百万余円、漁具におきまして一億二千二百万余円、その他港湾の陸上施設等一億三千九百万程度でもあります。非常に甚大なる被害を受けておるのでありますが、この串木野の一部であります、何と申しましたか……、この串木野には四つの漁業協同組合があるのでありますが、このうちの一漁業協同組合の管内にございます羽島と申しまして、羽島漁業協同組合の管内でございますが、そこにおきましては百二十隻あります船の中で助かつた船は僅か一隻に過ぎない被害を受けまして。百十九隻の中で修繕のきくものが僅か四隻でありまして、残る百十五隻というものは見るかげもないまでに壤わされたのであります。而も漁民の家屋の殆んどが流失、全壤の被害を受けておる次第でございまして、これらの漁民等にいろいろ実情をお聞きし、お見舞を申上げたのでありますが、誠に悲痛な面持でございまして、自分ら漁民といたしましては、たとえ家屋を失つても、船さえあれば穴居生活をしてでもその日の生活を稼ぐことはできるのであるけれども、家を失い、更に所有の全部を失つた今日、今日明日からの生活に困窮し、前途に生きる望みを失つた。というような非常に悲痛な叫びであつたのでございます。それから薩摩半島の西南端にあります笠砂町の野間池港に参つたのでありますが、これは太平洋岸からその北側にあります野間池港の間、僅か陸上が二、三町に過ぎないのであります。その間に約百戸ばかりの漁民が生活いたしておるのでありますが、ここは先ほど申上げました通り約十米に上る大津浪の襲来によりまして、約十分間の間にこの百戸の部落は全部太平洋岸から内側の野間池港の中に全部押し流されたのでありまして、当時死亡者十八名に上つておりましたが、そのほかにたまたま附近の難波船救助に赴きました当部落の消防団員、青年団員二十名が又尊い犠牲に相成つておるわけであります。丁度使節団一行が参りました際に、その三十八名の合同慰霊祭がしめやかに行われておりました際でございまして、丁度団長から丁重なるお見舞の言葉を申述べた次第であります。さような点が極めて印象的でもあつたのでございますが、その他の各海岸各町村におきましても、大小の違いこそあれ、ほぼ同様の、我々東京で想像いたしました以上の悲惨なる状態を示しておつた次第であります。
それでそれら漁民のかたがた、並びに県庁その他の関係者のかたがたからいろいろな要望があつたのでございますが、そのうち主な点についてのみ申述べて、今後の策を講ずる上においての参考に資して頂きたいと思うのでございます。
これは一番要望の多うございましたのは、何と申しましても当面の資金の点でございまして、住宅の救済は勿論でありまするが、漁民といたしまして、先ず以て漁船の建造、漁網その他の購入を主とするわけでありまして、その融資に対する要望が非常に多かつたわけでございまして、特に農林漁業資金特別融通法の中に、この特別に災害復旧の資金の枠を設定して頂き、これによつて漁船の建造、漁具の購入、その他施設建造等が円滑に行いやすいように格段の盡力を願いたいという要望が強かつたのであります。それからこれらの正規の資金の融通を受けますまでの暫定的な繋ぎ資金といたしまして、例の漁業権証券の全面的な買上げ償還を早急に行なつて欲しいという要望が各県共にございました。更に被害漁民の多くは極めて零細漁民でございまするので、国民金融公庫による融資を円滑にやつてもらいたいという希望も非常に多かつたのであります。更に従来の各種の漁民の債務につきましては、今後これが償還が極めて困難視せられますので、償還期限の延長、その他の緩和方の策を講じてもらいたいというような希望も幾多各所からございましたような次第でございます。それからこれら漁船の建造等によりまする各資材の不当な値上りを防止いたしますために、政府におきまして漁船建造に要する木材の、即ち国有林等を安く拂下げて便宜を与えてもらいたいというような要望も強かつたのであります。
更に又この鹿児島県等におきまして特に話があつたわけでありまするが、これが復旧の場合におきまして、沿岸漁業の一つの対策ともからみ合せまして、この際二、三トンに過ぎないような小さい無動力船の建造は極力制限いたしまして、もう少し大規模な動力船に切替えるように指導をして行きたい、従つてこのための円滑なる融資と、動力船の枠の擴大というものを是非図つてもらいたいという要望があつたのであります。そのほか例えば漁港の早急の整備につきましては勿論でございますが、御承知の通り従来の漁港の復旧にいたしましても、数年を要しているような状態で、これが完成を見ないうちに又次の災害に出遭いまして非常に甚大な被害を受けるということが殆んど常例に相成つているような現状におきまして、これは一刻も早く漁港の修築をやつてもらいたいということ、並びに今回の経験によりましても従来のような原形復旧というような観念にとらわれ過ぎて、それを繰返しておつたのではかような災害の際に再びその過ちを侵すわけであるから、是非ともこの機会に改良的な考え方を取入れて、相当大きな災害に対しても破壊されない堅牢なる漁港の施設の整備を図つて欲しいというようなことが当然のことながら各県共に強い要望があつたわけであります。その他恒久的な漁業災害補償制度の確立等についてもいろいろあつたのでありますが、以上要望の主な点のみを申上げた次第でございますが、只今申上げました通り今回のルース台風の被害は我々の予想を遙かに上廻つた非常に激甚な被害でございますので、これが復興につきましては単に各地元県の力を以てしてはどうすることもできないのでありまして、政府並びに国会の全面的な協力なくしてはできないものを考えるのでありまして、関係方面の御善処を願いたいと思うのであります。
以上簡單でございますが、災害視察の御報告に代える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/6
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007・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 次に本委員会から調査員西村君を違う方面の調査に派遣せられましたので、西村君からその報告を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/7
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008・西村清俊
○調査員(西村清俊君) 私は水産だけでなく、他の全般的な調査も含めまして参議院全体の調査団の一行に随行いたしましても島根県、山口県、福岡県、熊本県の四県を視察いたしましたのでありますが、只今玉柳委員からのお話の通り、この四県におきましても水産関係の被害が極めて甚大でありまして、簡単に被害の程度を申上げますと、島根県におきましては、場所といたしましては隠岐島が最もひどく被害を受けているのでありますが、全体といたしましては漁港関係が二十六カ所、一億四千九百七十万円の被害額になつております。それから漁船が流失沈没百九十隻、二百八万七千円、全損が八十二隻、九百十三万六千円、それから半損が百九十二隻、千二百十一万三千円、それから漁具及機能施設といたしまして二千八百八十一万二千円、以上の総計島根県関係全体といたしまして一億三千三百七十八万二千円の被害になつております。
次に山口県関係でありますが、仙崎港を初めといたしまして日本海側、又瀬戸内海側の殆んどの漁港が未曽有の被害を受けておりまして、被害額を申上げますと、漁港施設として七億九千七百六十万九千円、水産施設として二千九百十一万八千円、漁船関係として一億三千百七十九万六千円、漁網等の資材が五千七百七十五万五千円、以上合計いたしまして十億一千六百二十七万八千円の総被害となつております。
次に福岡県関係でございますが、これは豊前海、周防灘等の漁港又は漁船等の被害が極めて甚大でありまして、又この地区は桝網漁業の多いところでありますが、いずれも流失いたしまして、又流失後の手当等にも米軍の演習関係等において事後の対策も困難であつたといつたような状況であります。被害額を申上げますと、漁港関係として二億二百十六万八千円、漁船関係が六千十万六千円、漁具関係が一億三千二百七十八万七千円、共同施設関係が一千四百八十六万五千円、その他の関係が四千三百三十六万円、以上福岡県関係総計が四億五千三百二十八万六千円になつております。
最後に熊本県でありますが、天草郡本渡を中心といたします天草島の北部沿岸が軒並に殆んど漁港が壊滅いたしておりまして、この地区は従来余り災害がなかつた地区だそうですが、今度のルース台風では北東から風と高潮をもたらしたためにこの地区が特に被害が多かつた状況であります。金額を申上げますと漁港関係が三十三港で七千百四十六万六千円、漁船の被害が千四隻で二千十五万七千円、一般水産、この地区はのりの養殖資材であるとか、車えびの養殖資材である等特殊な地でありますが、そういつた一般水産関係が二千八百五十二万円、合計一億二千十四万三千円になつております。ところで各県のこれに対する対策といたしましては、直ちに農林中金等からの短期融資を受けますと同時に、又政府の緊急融資を要望する。それから漁船については代り漁船を他から買入れる措置、又借上げの措置等を講じているそうでありますが、各県とも、これは各県の知事を初め関係者全部の共同の強い要望でありますが、別の災害についてはいろいろ制度があつて、措置をすることができるが、水産関係の被害、殊に漁船漁具については何らの制度がないので、県としても一番困つている。従つて至急にこれに対する復興資金の融資を低利長期のものをお願いしたい。そこで根本的には漁船保険制度、災害補償、社会保障的な漁船保険制度を一刻も早く国家において制度化されたいということに対する要望が各県とも一致した強い要望でありました。
以上簡單に御報告申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/8
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009・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 水産庁としての災害に対する対策を一つお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/9
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010・山本豐
○政府委員(山本豐君) 今回の台風は只今御出張の委員その他から御報告があつたのでありますが、水産庁におきましても、発生以来共に資料を持つて陳情もありましたし、又県庁のほうにも通牒を出しまして報告を受取つておるのであります。従いまして数字も時々刻々変つて参つておりますが、もう大体ほぼ今後の被害はそうひどくはなかろう、とまあ想像されるのでありますが、只今私の手許に全国的に集計いたしました被害の関係を申しますると、これは十月三十日現在、これによりますると漁港の被害が約件数で千参百二十港でありまして、金額で四十億四千八百万円であります。次に漁船でありますが、漁船におきましては一万九千五百九隻になつておりまして、その金額が二十八億三千六百万円ぐらいになつております。それから漁具でありますが、これは頭数でありますけれどもこれが件数で一万六千七百二十一でありまして、その約四億六千七百万円ばかりであります。それから共同施設とか養殖施設その他が若干あるのでありますが、共同施設で七億七千万円ばかり、養殖施設で三億四千万円ばかり、その他で七億四千万円ばかり、総計しまして九十九億、こういうことになつております。それから県別には只今御出張のかたの御報告がありましたが、総計におきましては大体大した違いはないようであります。特にひどいところは玉柳委員からお話がありましたように、鹿児島が最もひどいのでありまして、漁船において四千隻以上をなくしております。金額で私のほうの数字では三十七億八千万円ばかりであります。その次にひどいのは山口でありまして、これが十億一千万円ばかり、船の数では二千三百七十隻ばかりであります。それから大きいものを申しますると愛媛の七億九千万円、福岡の四億五千万円、佐賀の八百百円、長崎の七百五十万円、熊本の一億二千万円、大分の三億四千万円、愛知の二億一千万円、兵庫の一億四千万円、大体億以上になつておるのはそういうふうな県であります。これに対する対策の問題でありますが、実は特に山口県が非常に早く農林省のほうに見えまして、たしか私は直接会わなかつたのですが、次官のところで、農林次官にいろいろとまあ対策、要望を述べて帰られたのでありますが、それらを中心にいたしまして、農林省といたしましては横に連絡をとつていろいろ内部で官房が中心になりまして、いろいろ対策として研究し、又数学の整理もいたしたのであります。ところが今回の台風は只今委員のかたからお話がありましたように、特に水産の関係が最もひどいような感じがいたすのでありまして、そこで全体のそういう計画の問題もありまするけれども、遅れないようにというので、水産庁といたしましては水産の関係だけをいろいろ取上げて、恒久、応急の対策をいろいろ練つ参つておるのであります。御承知のように只今西村さんからのお話もありましたように、要するにこういう台風のときに一番困りますのは水産関係におきましてはレールがない、融資をするレールがないので、いつでも継子扱いになりまして、結局後廻わしになる、そのうちには世の中が落着いてしまうというような虐待を受けておるのであります。そこで昨年もデラ台風のあとで以て特にあのときは参議院の委員長その他にいろいろとお願いしておりました、例のいわゆる災害に伴う措置、補償融資法案でありますが、いろいろ智慧を絞りましたのでありますが、特にああいうふうな特に漁船とか、漁具についてはああいうような制度がやはりとられないと如何に繋ぎを出すと言いましても資金の枠がなかなか容易でありませんし、なけなしの枠を出すということになりますとやはり道の通じてあるものでなければ出ないということで、あの法案を更に検討するここと、もう一つはこれも一、二カ月前から特に参議院等でお世話になつておりました例の漁船の保險の問題であります。これもなかなか予算の関係でうまくはかどりませんので、実を申しますると今回の台風以前に何とか実現したいというので、法案は何遍も練り直したのでありますけれども、予算の点がなかなか補正予算の際にも見当がつかなかつたのであります。そこで二十七年度の予算には是非というので、その後大蔵省方面にも縷々説明をいたしまして、最近の模様ではいろいろこれは国会方面の趣きもありまして、いわゆる大蔵事務当局も何とかしてやらなければという気持になつて来つつあるように思うのであります。これは只今西村さんからもお話がありましたように、要するに従来の漁船保險の制度を一つの社会保險になりまするが、特に二、三トンとか五トンくらいの小さい船を保險の対象にします場合に、現在の漁船保險制度では、保險料率その他の関係でなかなか加入が困難である。これはある程度強制加入的なものにいたしまして、その代りに国で保險金の半分くらいは持つてやるというふうな、殊にまあ一つの社会保險的な思想を或る程度取入れて、直ちに法案を整備したい、かように考えまして、その線で現在要綱なり、法案、大体できておるのでありますが、それに要しまする予算でありまするが、大体いわゆる社会保險的な部面につきましては、まあ二億円ばかりの予算であります。その他に従来の基金の問題でありますとか、或いは保險組合自体の事務費の問題でありますとか、こういうものは他に今までは保險料で賄つておるというふうな関係がありますので、これらは正々堂と組んで見るということで持つて参りますと、全部で四億五千万円の金額になるのでありますが、これを二十七年度には是非実現したいということでいろいろと政調会或いは総務会あたりにも御相談いたして、この保險制度と先ほど申しましたいわゆる災害に伴ういわゆる補償附の融資法案でありますが、これはよく皆さんも御承知と思うのであります。去年考えました案を練り直しまして、あのときの案では漁具と養殖施設だけに限つておつたのであります。と申しますのは、これも純理論的に考えますと、漁船のほうは漁船保險でやればいいとか言われる虞れもありますので、大体漁具と養殖施設とを去年は考えておつたのでありますが、殆んど今年の台風におきましてもまざまざと被害の実情もはつきりいたしましたし、保險の制度も充実いたしました曉には別でもありまするが、仮に制度が次の通常国会に出されても、その内容が充実するまでには一、二カ年かかりますので、その間台風の関係もありますので、現在の零細漁船等についての融資というものはどうしても考えなければならんということで漁船、漁具を新らしく加えまして、そうして国が補償する額を大体三割見当見る、これにできれば府県も二割ぐらい補償してもらうべくこれは相談ものでありますけれども、そういこうとが一点、それからもう一つは融資いたしました場合の利子補給を四分ぐらい見たい、この二つを内容にいたしまして、一応の仮案要綱ができておるのであります。これも先般来自由党の政調会並びに総務会で多数の賛成を得まして趣旨はこれで結構である、是非こういう線でやれということに一応決定を見ております。ただこの案におきましては保險の場合と同様に予算が伴つておるわけでありますしてこの予算の内容を詳しく申す機会はないのでありまするが、簡単に申しますると、大体その補償の問題は三割持ちましてもこれは新年度にすぐ要るわけでないのでありまして、我々の考えでは漁船については償還期限も七、八年ぐらい見たい。漁具にもこれは二年くらい、又養殖施設については五年くらいというふうに考えて見ますると、いわゆる償還期限が参りますまでは補償の実際問題は受けないわけであります。併し仮に今回のルース台風等を対象にいたしますると、大体そういう意味の漁港を除いてのそういう施設で取上げる被害額が大体四十億程度であるのでありまするが、そういたしましてもこれの補償は大体十億足らずになるのでありますが、これが実際に必要になるのは早いものは二年、遅いもので八年目、中間が六年目に出て来るので、そこで特にその腹さえきめれば出発できる。それから利子補給の点は仮に今回からやりますというと二十六年度分だけは見なければならんので、これが一億足らずのものであります。そこでそれだけを一つ予算に組んで是非これをものにしたいというので今やつておるのであります。そこでかようにいたしましてもこのいわゆる法案の裏付は結構でありまするが、この法案に基いて出す金のいわゆる財源であります。これがやはり問題の癌になりますので、やはりこれは預金部資金から何か出してもらわなければどうにもならないという事情からそれらに関連いたしまして農林、建設、大蔵三大臣と二三日前からたびたび折衝されておるようであります。その内容を詳しく承知しないのでありまするが、一つの考え方として先ほど玉柳委員からも冒頭にお話がございましたように別案の法律、私の申しましたように法律を作ることも根本的には結構でありますが、急場の間に合いませんので、応急的な繋ぎを出す一つの裏付としましては、農林特別融資の一つの枠に、仮に漁船、漁具関係でまあ三十億と言いたいところでありますけれども、仮に二十億でも何とかあれを別枠に突つこんでもらいたいと、そういうことにして繋ぎをやつておきまして、将来先ほど私が申しましたような、法案で裏付をして一度に切替えて行くと、こういうふうな二十億の金額につきましてはいろいろ諸論がございます。三閣僚の当初の懇談会では、農林、漁業つき混ぜて十億ぐらいでどうだというふうな話も出ておるようであります。併し我々は、それでは到底この厖大な水産を賄えないのでありまして、とにかくまあその他の方法と合せるのは別でありまするが、その方法一本でやるといたいまするならば、少くとも水産関係だけで二十億ぐらい、これは幾ら割つても十五億ぐらいまでの別枠で一つ持ち込まない限りはなかなか解決が困難であるというので、そういうふうな線で大体上司のほうでいろいろと今折衝中のようであります。その或る程度の結論が出ますれば我々はそれを受けまして一つの地方に流すように極力努力いたしたいというふうに考えておるわけであります。
簡單でございまするけれども以上で大体の要点の報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/10
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011・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 御質問ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/11
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012・玉柳實
○玉柳實君 先ほど次長からお話のございました融資につきまして、いろいろの施策を御研究になつておられますことは非常に結構だと思うのでありますが、ちよつと聞き漏らしたのかも知れませんが、先ほどお話の政府補償三割云々のお話は、先般この委員会で一応研究されました漁業災害復旧資金融通に関する臨時措置法と又別な問題でございましたかどうかということと、それから次に漁港の損失の関係でございますが、いつかの機会に建設大臣から公共事業の復旧につきましては、初年度少くも三割、二年度に五割、三年目には二割程度の国庫補助を行つて三年間には完成をいたしたいというようなことを、述べられたかと記憶するのでありますが、漁港関係におきましても、少くとも同じような方針で進んで頂きたいと思いまするが、この点どのようにお考えになつておりますか。それから私考えまするのは、まだこの程度の考え方は一つの原則的な行き方に過ぎないのであつて、枕崎或いは串木野市の災害に見ごとく、日本の最も重要な漁業の根拠地であり、而もその被害が極めて莫大であつて、今度殆んどその機能を喪失しかけておるような特別な災害地帯に対しましては、又特別な措置を講じなければならんかと思うのでありまして、従つてかようなところには特別な枠を設けると申しますか、一定基準以上の災害激甚地に対しましては、三年というような期間を置かないで、もう一年のうちにも公共事業の復旧を完成するというような方法で進まなければ、到底漁業の復興は図ることができないと、かように考えるのでありますが、それについてのお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/12
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013・山本豐
○政府委員(山本豐君) 第一点の、前にほかの委員会で研究した案の三割と同じであるかどうかという御質問でありますが、その通りでありまして、前にこの委員会でもいろいろ御研究願つたその案の線で考えておるわけであります。ただそのときは、これを国の補償のみを三割計上しておつたのでありますが、その後先般来衆議院の政調会あたりでいろいろ議論をしておりますうちに、県もやはり或る程度見るのだから県も一、二割持つてもらわなくちやあならんだろうというような話がありまして、一応最終的には国が三割、県が大体二割という案で付けて、これはいろいろあとで議論が出ると思うのでありますが、そういうところで進めて行きたいということになつておる次第であります。
それから第二点の災害の復旧についての御質問でありますが、これは我々といたしましても非常に苦慮しておるのであります。この漁港関係のことにちよつと触れまするが、このルース台風が起る少し前までに、大体過年度災害の一応の予算の内訳と申しますか、案本でいろいろと折衝した結果、これは港湾も漁港も、一応でございますが、或る程度の目安がつきかかつておつたのであります。それは本年度の、いわゆる災害予備費が、たしか八十億ぐらいあつたわけであります。それを何年度の過年度災害費幾らというふうな式でいろいろと計算をさせまして、最後にこれが五億ばかりの残が残つておる。それで一応過年度災害を片付けようという段取になつておりますところへ、ルース台風が参りまして、五億やそこらのものは問題でなくなり、従つてきまりかかつておつた過年度災害の問題も、一応御破算というような恰好になつたわけでございます。我々そういう事情で、このいわゆる災害の、特に公共施設につきましても、只今も御説にございましたように、單に場当りの復旧をするということよりももつと突き進んで、もつと見地の高い立場で完全な工事をするということは、先般も予算委員会等でも二、三の関係議員のかたから御質問があつたわけであります。そういうふうに我々も考えておるのでありますが、御承知のように漁港自体の予算関係は総額その他においていろいろ事情があつて、ここにいわゆる高度の施設をやりたいのは一ぱいでありますが、それを中心にしますとやはりどういうふうに漁港に手を着ける数を殖やすかという面といつも見合いになりますので、非常に苦しんでいるのであります。それから、いわゆる復旧事業の三・五・二どいうお話があるが、漁港についても同様か、これも私、しかと確かめてはいないのでありますが、係の話によりますと、御説のような意見はあるようであります。従つてその場合には勿論港湾についてそうでありますれば、漁港についても同様な一つ方針の下に復旧費の策定をいたしたいというふうに考えているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/13
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014・玉柳實
○玉柳實君 ちよつとなおお話の中ではつきりしなかつた点でありますが、枠崎、串木野等に見受ける、特に重要な枕港の根拠地であつて、而も他に類例を見ないほどの甚大な被害を受けて、殆んど機能を喪失しているというような特別な地帶に対しては、この災害事業の復旧につきましても特別な措置を講じたい。かような地方の要望も伺い、尤もだと考えまして御質問申上げたのでありますが、この点につきましてお答えがなかつたように思いますので、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/14
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015・山本豐
○政府委員(山本豐君) その点につきましては、実はものが違うのでありますが、農地の災害の復旧の場合にも同じような問題があるわけであります。先般も省内で次官会議があつた場合にも特に山口、鹿児島の同じようなルース台風におきましても、最も多額なところにおいては農地の補助率等をどうするかというふうな問題も議論になつておつたのでありますが、これは玉柳委員が前の経験でよく御承知の通りだと思いますが、それはそういう方法も一つ研究しようということになつているのでありますが、実際問題としまして、例えば一まとめにやるという條件と言いましても、その県内でやはりいいろいろ事情が違いましようし、広いところと、そうでないところとありましようし、村を指定するというようなこともありましようし、過去においてもいろいろ検討したのでありますが、なかなかむずかしい問題でありまして、漁港につきましても大体においては、お気持ちはそういう気持で我々も対処したいと思つているのであります。従いまして例えば災害復旧の予算が参りますれば、率先して一つ今のようなところについては予算の許す限り率先、優先的に考えたい。又その施設の完成の期間の問題でありますが、これは今の三・五・二というようなものは一応これはありましても、これは何にも表立つは法律の上とか、或いは記録の上ではつきり出ておるわけでありませんから、裁量で或る程度の初年度に相当な手順を加えて考えるということは可能であると思うのでありまして、できるだけそういう趣旨に副うように努力はしたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/15
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016・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) ほかに御質問はありませんか。それでは災害に関する件の質疑応答はこれで打切ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/16
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017・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 漁業法の一部を改正する法律案を議題に供します。何かこれに対して御質問がありましたらお願いいたします。……ございませんければ私がちよつと質問します。この前松浦委員から質問がありました附則の第三の衆議院が修正した「主務大臣が定める海域において、」云々、これは告示になりますか、主務大臣がその都度掲示するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/17
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018・山本豐
○政府委員(山本豐君) これはこの前衆議院のほうからも松田委員が見えまして、一応御説明になりましたように、これは実は瀬戸内海、特に紀伊水道方面につきまして川村委員が調査委員としてあの辺を一月ばかり前にいろいろ実地調査して帰られたのであります。その結果あの辺ではこの大臣が定める内容はきまつておりませんが、仮に十五トン以上でも二十馬力、三十馬力とか申しましても、仮に二十馬力と申しましても、二十馬力で抑えて、これは紀伊水道全体としては大体それがいいことに相成りましても、例えば一つの村で殆んどそれが制限馬力以上の船ばかりたまたまあるというような事例がある。というわけでありまして、そういう所は若し一挙にそういうことになられますると、直ちにその村自体の漁業の生業の破壞になる、こういうようなお話がありました。従つてそういうところは一挙にせずに、相当に経過年数を置きまして、そうして、その相当な期間の間に、例えばこれを小さくして法定の範囲内において抑えて存続いたしますか、或いは或る程度これはやめていいのでありますから、やめさせるようにいたしますか、そういう按配をやるためにこの暫定期間を置いたらどうかということでありまして、そこでお尋ねのそれをいつきめるか、又どういうきめ方をするかというお話だと思うのでありますが、その点につきましてはこの法律施行の際までによく検討いたしまして、例えば具体的な村というわけにはちよつと行かないと思うのでありまして、紀伊水道なら紀伊水道方面については或いは実情調査等によつてこれを一つ取上げて、そうしてそういうものをはつきりしたものについては恐らく告示か何かの方法でこれは明瞭にいたさせるというような方法をとつたほうがいいのではないかというように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/18
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019・松浦清一
○松浦清一君 こういう法律の改正案が出た場合の審議のやり方なんですが、大体ずつと全文を見てみるというと、総体的にはどういうふうに改正しようということの趣旨はわかるのですが、併し念には念を入れて審議するためには、逐條、各項目別に、やはりこれでいいか悪いか、例えば第六十六條の二にある「中型まき網漁業、」云々というようなことについて、これはこういう工合にきめれば一体瀬戸内の漁船はどうなるのか、紀伊水道の漁船はどうなるのか。どの辺でどういうふうにやつておればどうなるのかということを、もう少し検討したいと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/19
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020・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 総体の質問が終りましたから、そのあとで改めて逐條審議をやりましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/20
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021・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 総括的な質問を今日お願いしておりますけれども、次の委員会にこの法案をかけまして、逐條審議をいたすことにいたしましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/21
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022・松浦清一
○松浦清一君 ちよつと資料の提出を求めたいのですが……。今のアメリカ、カナダとの漁業協定の、あの協定をしようという目的の海域というものはどの海域であるかということを地図によつて表示して頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/22
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023・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 速記をとめて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/23
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024・木下辰雄
○委員長(木下辰雄君) 速記を始めて。
それでは本日の委員会はこれで開会いたしまして、次回は、明後日水曜日午後一時から行うことにいたします。その場合もやはり外務省のほうを呼びますし、それから本案の逐條審議をいたしたいと思います。
午後三時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214562X00519511112/24
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