1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月十二日(月曜日)
午後一時二十四分開会
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出席者は左の通り。
委員長 伊藤 修君
委員
岡部 常君
鬼丸 義齊君
政府委員
法制意見長官 佐藤 達夫君
法制意見参事官 位野木益雄君
事務局側
常任委員会專門
員 長谷川 宏君
常任委員会專門
員 西村 高兄君
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本日の会議に付した事件
○会社更生法案(内閣提出、衆議院送
付)(第十一回国会継続)
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001・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それではこれより会社更生法案等に関する
小委員会を開きます。前回に引続きまして質疑を継続することにいたします。他に御質問なければ私から質問させて頂きます。この前御質問申上げたうち、その説明があつたのですが、本法案中の財産権の制限に関する規定は憲法第二十九條に違反しないか、こういう質問に対しまして、多数決原理によつて債権者なり、担保権者なり、そのグループの権利を制限するのであるから、別に憲法第二十九條には違反しないと答弁されておられるのですが、この御説明によりますと、多数決原理によれば常に憲法に違反しないというような解釈上誤解を生ずるのですが、これだけでは財産権を制限するということに対するところの答弁には不十分だと思うのですが、この点に対してなお十分御説明願つておいたほうがいいと存じますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/1
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002・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 前回の小委員会におきまして、一応の御説明を申上げてあるのでありますが、多数決原理云々ということも一つの理由であると存じますけれども、最初の段階といたしましては、二十九條の條文に照してこれを考えて見ることが自然ではないかと存じますので、その方向から私の考えを申上げてみたいと存じます。この二十九條の問題といたしましては、結局第二項の「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」という、この財産権の内容の問題がこの会社更生法に出て来る諸権利の変更ということに繋がるのであろうと存ずるのであります。で、この二十九條の第二項は申上げるまでもないことで、新らしく権利を、財産権を創設する場合はもとよりのこと、一応きまつておる財産権の枠というものを縮めたり、拡げたり、その変更を加える場合もここに含まれておるということは多くの学者も承認しておるところであります。本件の場合におきましては、この財産権が不利益に変更されるという場合に先ず当るわけであります。いずれにいたしましても、ここに一応條件が上つております公共の福祉に適合するようにというこの言葉に嵌るかどうかということを一応究めて見なければならないのではないかというふうに考えております。この憲法の中にはかく自由権の保障の條文が並んでおりますが、この公共の福祉に適合するようにというような文字が、公共の福祉云々の文字が出ておりますのは、例の職業選択の自由等の條文に出ておりまして、学者によつてはそういう條文の中にそういう文字の現われておるようなものは、何と申しますか、比較的に制限されやすいと言つては語弊がありますが、そういうような多少の差異がある、ほかの條文とは多少の差異があるというようなことを言つておる人もあります。それは私どもにわかにその考え方をとつておるわけではございませんが、平らたくこの公共の福祉という関係から本件の場合を考えて見ますと、これは結局この本案の狙いといたしますところは、会社の潰れることを防ごう、成るべく生かしてやろうというところが狙いでありまして、およそ企業と言います以上は、仮にそれが小さな企業でありましても、会社が潰れるということは極く卑近に考えて見ましても、或いは従業員がその職を失う、或いは又下請業者が得意先を失うという不利益を周囲に與えるということは言うまでもないことでございますが、延いてこれが経済社会の正常な運行というところから見ましても、これに及ぼす害惡ということは必然的に多かれ少かれ考えられるわけであります。この意味で潰れかかつた会社を生かすというようなことは、これらの害惡を防ぐというような面からいつて、まさに公共の福祉に適合するものと考えるのであります。そのために債権等の権利が或る程度の犠牲を分担するということは止むを得ないことでありまして、これが公共の福祉に反する制限であるというようなことにはならないと考えておるわけであります。手続から申しましても、この場合には先ほど最初にも触れましたように、関係者の集会という形によりまして、権利者の参加する決議ということは必要な前提の手続となつておるのであります。而も又それが最終的には裁判所の公正な判断によつて決せられるものということになつております。それらのことはこの手続の面からも憲法に適合するという証拠と申上げることができると存ずるのであります。同様の例は従来の立法例で探して見ますというと、例えば和議法等においても見られるものがありますし、或いは又破産法の中にも同じようなことが窺われるのでございますが、それらのことはやはり私の今申しましたような意味もあつて、憲法違反ではないという扱いと申しますか、一般にそう思われておるのではないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/2
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003・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に更生手続開始の決定があつたときは和議手続、整理手続及び特別清算手続は失効するものであるということになつておりますが、六十七條、二十條三項において、更生手続開始決定取消の場合は、その抹消した登記を回復すべきものとされておりますが、一度失効したものは、当然その効力を回復するということになるのですが、その理由を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/3
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004・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 和議手続、整理手続等は更生手続開始決定によつて効力を失うことになつておりますが、この開始決定が取消されますと、本来ならば開始決定がなかつたと同じような状態に置かるべきものでありまするから、特別のものを除きまして、原則として開始決定によつて生じた効力はすべて遡及的になかつたものと同様な状態に戻すということが法律上の当然の要求であると思うのであります。従いましてこの抹消された和議手続等の開始の登記等はこれを回復すべきものといたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/4
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005・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そうするというと、取消なかりしことになつて、最初に復活するということになると、今までのなされておつた手続を当然訴訟手続、非訴事件手続と、そういうものが当然復活して来ることになるのでありますが、新たに手続しなければならんのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/5
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006・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) これは改めて手続を要しないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/6
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007・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そうすると、裁判所のほうで従来効力を失つてしまつたのですが、それが既済事件となつておるものが、裁判所が職権で以てすれば事件を再び復活させるという手続が行えるのでありますか、この條文でそういうふうに解釈できるのでありますか、効力を失うとこうなつてしまつておるのでありますから、そういう法文の上で以て明確にして置かんというと、裁判所はどういう手続がとれるのでありますか、登記についてはそういう明文があるから、あなたのような御説明で行きまするというと、我々権利を失つたものが法律の規定によつて回復する、だから原状回復のような形においてなされた登記だけは抹消するということは、これは一つの考え方として事後処理としてあり得ると思うのでありますが、訴訟手続、いわゆる裁判所の手続の上において果してそういうことができるのでありますか、明文がなくて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/7
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008・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) これは本来こういうふうな創設的な効力と申しますか、継承的な効力と申しますか、そういうふうな効力を生ずるものは、その元となる裁判などが確定して後生ぜしめるということが通常好ましいことでありまして、そういうふうなことであれば、こういう混乱は生じないのでありますが、この更生手続開始決定は特に確定を待たずに、その効力を生ぜしむるといたしました関係上、そういうふうなやや手続上混雑を生ずるというふうなことになるわけでありまするが、これは特にそういうふうな必要性から生じたものでありまして、そういうふうな必要性を認める以上は、これは止むを得ないことと考えておるのでありまして、確定まではこの和議手続というものも一応失効するのであるが、まだそれは最終的な失効ではないというふうに見なければならないのでありまするから、裁判所においても、手続上そういうふうなことを考慮して運用すれば、これは支障なく手続が運べるものと、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/8
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009・伊藤修
○委員長(伊藤修君) あなたの立法者のお気持はよく我々は了解できるし、そうあるべきであると思いますが、併しこの條文の立て方だけで、権利を失いつ放しでおいて、そうして取消されたときは登記だけは回復するということは明記しておるのでありますけれども、その先ず登記が回復するという根拠が私にはちよつと理解できないのでありますけれども、なお今のお話によつて、この裁判手続をも元に復活し得るということが條文から解釈できないと思うのでありますが、そう扱われることは非常に結構なんですよ。そう行けば望ましいのでありますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/9
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010・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 必ずしもそういう点が明確でないということは或いは申せるかとも思いまするが、取消という以上は、その取消という効力は遡及的に効力をなくするという意味でありまするから、おのずからそこに現われておるものというふうに考えます。破産法等におきましても、特に手続の失効というような効力はないのでありまするが、いろいろ相当実体的に重要な効果を生ずるわけでありますが、この取消の効果についても特に明文がなかつたと存ずるのであります。で、取消という性質上、そういうところから出て来るものではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/10
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011・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 問題は結局効力を失うと前提を置くものですから、そこで問題が生じやしないでしようかと思いますが、そこに表現方法を何とか立法者の気持が、そういうようなお気持を表現できるような態度に出たほうがいいのではないでしようかね。どうも御説明だけでは納得できんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/11
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012・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 効力を失うという言葉でございますが、これはやはりこの法律的にはこういうふうな表現にせざるを得ないのではないかというふうに考えるのでありますが、何かより適当なる法律構成の考え方がございますれば、なお研究させて頂きたいというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/12
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013・伊藤修
○委員長(伊藤修君) ではその点はなお研究することにいたしまして、次に第三十條の第一項は、「弁済期にある債務を弁済することができないとき」とあるが、弁済期が到来したときではなくて、弁済期が来ておつても、而もその取立がきびしいというような場合でなくてはならん、こういうような御説明があつたのですが、そういうようにきびしいというような場合というふうに限定して解釈していいですか、先の御説明はそういうような御説明でしたが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/13
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014・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 先に御説明いたしました際に取立がきびしい場合に限るというふうに若し説明いたしたとしますれば、これは或いは誤解があつたかと思います。必らずしもきびしいということでなくてもよろしいかと思いますが、ただ弁済期は到来しておつても事実上弁済の猶予を與えておつて、これを特に親会社或いは縁故関係とかで融資を受けておつて、まあ弁済期の延期までは得てないけれども、たつてまでは取立てるということはないということが確実であるというふうな場合に、そのほかの債務については別にどんどん弁済しておる、それだけは非常に大口であつて、それを拂うとすれば、これはとても企業の維持がむつかしいというような場合に、そういう場合までも弁済期が到来しているということだけによつて更生手続を開始すべき事由に該当するということを考えますと、これはやはりそこまではやや広過ぎるような考えがされるのであります。弁済期は到来しておつても弁済する猶予を得ている。そこに今差当つてどうしても弁済をしなければならないという事情がないというふうな場合には、これは三十條の第一項の前段には該当しないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/14
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015・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に第四十七條第四項でございますね、会社に対する債務の届出義務違反の場合にのみ損害賠償の責任を認める、会社に対する弁済又は会社財産の交付禁止に対する違反につきましては、特に損害賠償する義務を認めていないのですが、これは均衡を失するように思われるのですが、如何ですか。又説明によれば、これが不法行為に該当する場合は損害賠償する義務ありとして不法行為に当る場合はどんな場合が想像されるか、それをお伺いしたいと思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/15
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016・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 届出の義務は、これは四十七條の第一項第四号の命令によつて初めて生ずる義務であると考えられるのであります。従いまして、これの違反については、特にここにその効果を規定する必要があると存ずるのでありまするが、債務の弁済或いは財産の交付等につきましては、これは特にここに命令をされたから初めて生じた義務というふうには考えられないのでありまして、すでに更生手続が開始になるということになりますと、ほかの規定等から、これは会社に弁済すべからざるものであるということがおのずから出て来るわけです。で、会社に仮に弁済しても、それは第五十九條の規定等がありましても、惡意の弁済は、これは利益の限度においてのみ効力を生ずるというふうな、いろいろの効果をすでに生じているわけであります。そういう本来の効果からおのずから賄われるというふうな建前になつていると考えております。で、不法行為に該当する場合はどうかと言われますが、これは例えば会社の財産の所持者が会社の理事者と通謀してその財産を隠匿する、或いは他に讓渡する、或いは会社の理事者に渡してそれを費消させてしまうというふうな、故意に会社の財産を侵害するような場合、これはやはり不法行為として損害を負うべきものではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/16
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017・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に第五十四條ですが、共益債権のみ対象としていることが明確を欠くのではないかと思うのですが、この百十二條で、更生債権は更生手続によらなければ弁済をすることができないということになつておりますが、この「更生手続によらなければ」の意味が明確ではないのでありますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/17
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018・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) この五十四條は御指摘のように共益債権を対象といたした規定といつて差支えないと考えるのであります。これは規定の位置から申しましても、他の規定との関連、前後の関係を見ましても、そういう点がおのずから現われているというふうにも考えられます。又規定の字句を見ましても、管財人行為をする場合、管財人がない場合には、その会社がやる場合、会社が行為をする場合というふうになつておりますので、そこにおのずからそういうような意味が出ているものというふうに考えております。のみならず、更生債権の弁済につきましては別に條文がございまして、それはそちらのほうで賄われるというふうなことはおのずから現われておるものというふうに考えております。それから今申しました更生債権の弁済についての條文と申しますのは第百十二條でございます。この第百十二條で更生手続によらなければ弁済ができない、この「更生手続によらなければ」の意味は、更生計画の定めによつてなされるというのが一番主なる内容であると言えると思うのでありますが、やはり正確に言えば更生手続で定める方法によらなければということになるかと思うのです。こういう言葉は破産手続におきましても使われておるのでありまして、破産法の十六條或いは破産法の四十九條等にも同様の表現があつたと考えますが、この字句に従つた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/18
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019・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に五十九條の第二項、会社財産が受けた利益の限度について、その弁済した財産がなお会社の財産中に現存しておるという場合と説明されたのですが、これによりますと、現に利益の存する限度と同じ意味になるのですが、この点どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/19
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020・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) これはこの前の説明が大変不十分であつたと思います。本来会社にした弁済というものは、その弁済の目的物が管財人の占有にならないというのが通常であります。併しながら場合によつて会社がその弁済の目的物を管財人に引渡したというふうな場合、これはその限度で弁済の効力は認めてもいいのじやないかということで認めたのが、この第二項の趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/20
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021・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そうすると、現に利益の存する限度というのじやなくして、どういうような意味になるのですか。この前の説明はそういうふうに伺われるのですが、そうすると、現存する利益のみと、こういうふうに表現したほうがいいのじやないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/21
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022・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 類似の現存している利益というふうに申しても差支えないと思うのでありますが、何と言いますか、表現の目的がおのずから違つて来ると思います。現に利益の存する限度と申しますと、本来会社にした弁済で、本来会社にすべき弁済でその会社が費消したというふうなものを除いて、なお現存している利益というふうな場合は、これは現存利益といつたほうが適当かと思いますが、これは弁済すべき相手方と申しますか、そういうものが違つておる場合でありまするから、現存利益というよりも、受けた利益というほうが表現が的確であるというふうに考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/22
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023・伊藤修
○委員長(伊藤修君) だから私のお尋ねしているのは、法文には「受けた利益の限度」という幅の広い言葉が使つてあるのですが、あなたの御説明は、現に利益の存する限度にと、こういうふうに速記録に出ておりますのですが、そうすると、現存利益ということになれば、法文のほうも現に受けた利益、こういうふうに表現したほうがはつきりすると思うのですが、この場合としては恐らく立法者の考え方、又我々の考え方としても、会社が弁済を受けたことによつて、これは有形無形に会社に何らかの形において存在するものと考えるのですが、現在それがあるかないかということになると、実はそれはおのずから範囲が違つて来ることになると思うのです。それから御説明のように「現に」という言葉にとらわれるとそこに大きな開きが出て来ると思う。百万円弁済を受けて現にそれが百万円あるかどうかということはこれは問題です。恐らくそういう場合におきましては、百万円あり得ないですがね、併し会社全体の考課状から眺めれば、それは百万円の利益がいろんな面に流れて、有形無形にあるでしよう。で、そこのところですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/23
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024・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) わかりました。その点はやはりこの前の説明の不十分であつた点かと思います。現存しなくても会社が受けた利益の限度で主張することができるという趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/24
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025・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そういうふうに幅広く伺つておけば、更生手続に大きな基本的な誤まりが出て来ると思うのです。六十三條において売渡し担保の場合は取戻権が認められることが規定されているのですが、この反対解釈として、買戻付売買の場合は取戻権を行使することができるものと解せられるというように思うのですが、そうすると、均衡を失するのじやないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/25
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026・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 六十三條は売渡担保のことのみを、一応対象として規定しておりまするが、買戻付売買の場合も同様にこれは取戻権は行使できないというふうに考える次第であります。それは買戻付売買の場合でも物権的にはすでに所有権は会社のほうに移つておる次第でありまするから、單に債権的効力として買戻権が付いておるというに過ぎないのでありますから、取戻しはできないというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/26
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027・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に百三條の規定は、消費貸借の予約には適用がないと思うのですが、その場合には、民法の五百八十九條の消費貸借の予約の破産宣告による失効のような規定を要するのではないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/27
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028・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 御指摘のように百三條の規定は、消費貸借の予約が双務契約でないというふうに考えられまするので、適用がないと考えるのでありますが、この更生手続は破産手続と異なりまして、従前の会社の財産関係をすべて総決算いたしまして、これを換価配当するという手続ではなくて、企業は依然として存続するという建前になつておりまするので、従前の継続的な契約もできる限りこれを存続せしめるという建前をとつております。従いまして例えば委任契約等も、これは民法には破産によつて当然終了原因として規定されておりまするが、ここでは、ここと申しますか、更生手続ではそういうふうな建前をとつておりませんし、又第百三條の規定等におきましても、破産法とおのずから構成を異にしまして、原則として契約は存続せしめるという建前の規定の仕方をいたしております。そのような見地から消費貸借の予約なんかも、これは失効させるということではなくて、やはり存続させて置くということが適当と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/28
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029・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に百十三條に関連して、期限附利息附債権額の算定について、更生手続開始のときにおいて期限の到来したものは、開始当時の元金と、その当時までの利息との合計額、期限の到来しないものは元金だけという御説明だつたのですが、この期限の到来しないものについて、更生手続開始のときまでの利息を加えない理由をお伺いしたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/29
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030・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) これもやはり説明が不十分だつたかと思います。期限の到来しないものも、利息附でありますれば、開始決定までの利息も附加されるということに相成ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/30
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031・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に百七十二條及びこれに関連する第三百條です。更生債権、更生担保権の讓渡は別に禁止されておらず、又おのおのの利害を考慮して議決権を行使する、その多数決によつて議決するのである、右のようにこの議決権を制限して処罰する根拠がないように思うのですが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/31
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032・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 御意見のように更生債権、更生担保権の讓渡は別に禁止はされておらないのであります。場合によつてこれは讓渡されて差支えないのみならず、好ましい場合もあるかも知れないわけであります。併しながら特に当初から更生手続の機会を利用して、不当な不益を得ようとするという目的で売買を行う者がないとは限らない。例えばまあ非常に惡質な場合を考えて見ますと、余り事情を知らない債権者とか、或いは株主のところへ行つて、言葉巧みに非常に安く債権なり、株主権を買取つて、そうして相当の票と申しますか、権利を集めて、この議決権の行使についてのキャステング・ボートを握る、そうして会社の更生の有無は、更生の整理はむしろ度外視して、自分の利益のためにこれをどちらかに高価にふつかけて売り付けるというふうなことが非常に害惡を及ぼす、手続にも非常に障害を與えるというふうなことが考えられるわけであります。そういうふうな特に惡質な者を決議に加わらせるということになりますと、單に刑罰等で防止するということでは不十分であると考えられますので、実体的にもそういうものについては議決権を認めないというふうにするのが適当じやないかと考えて、ここで第百七十二條にそのような趣旨の規定を設けたわけであります。三百條でございまするが、これは同様の趣旨の規定は、和議法等にもございますようでありまして、更生手続の公正を期する上からは、このような罰則は必要でないかというふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/32
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033・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に百七十三條の一号の「更生計画によつてその権利に影響を受けない者」の意義をお伺いしたいのですが、これについては全額弁済を受ける更生債権者、更生担保権者が入るとの説明であつたが、全額弁済を受けるか否かは議決集会によつて決定せられるものと思われます。その議決権も行使できなかつたため、その組の同意が得られず、裁判所が計画を変更して認可をする場合等もあるのでありますから、これらの者にも議決権を行使させるべきではないでしようか、そう思われるのですか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/33
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034・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 第百七十三條の第一号の「更生計画によつてその権利に影響を受けない者」と申しますのは、今言われましたように、全額弁済を受ける更生債権者等も指すのであります。全額弁済を受けるかどうかは計画案が可決されて、而も裁判所によつて認可された後に初めて確定するわけでありますが、すでに計画案が一応作成されました以上は、その案においては、全額弁済を受けるかどうかということはすでに明らかになつておるわけであります。従いましてそのような案について決議をするについては、そのようなものは決議に加わらせなくてもいいのじやないか、権利に影響を受けないという関係に立つておるものでありまするから、そういうものまでも決議に加わらせる必要はないじやないかという考え方から、これらのものは決議に加わらせなくてもいいというふうにいたしたのであります。決議に加わらせない以上は、もはや二百四十二條のような処置をこれらのものについてとる必要はないわけであります。でありますから、二百四十二條との関係においては、この点は支障は来たさないのじやないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/34
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035・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 併し議決集会の場合においていろいろ発言して、その決定が将来修正されるというようなこともあり得るのですが、自分の権利にやはり重大な影響を及ぼすのじやないのでしようか。そういうものをただ單に案だけで除外されているからと言つて、決議権を奪うということはどうも納得行かないのです。それは将来復活するかわからないし、やはりその案に含まれてない部分に対するところの発言権も認むべきじやないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/35
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036・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 計画案は一応決定して当事者に送達した以上は、その後は関係人に不利なよりな変更は許されないのであります。従いましてその後の変更によつて権利に影響を受けるという場合はないと考えておるのであります。それからこの自分の権利に影響がなくても、他の部分については発言を許すべきじやないかということも考えられるわけでありまするが、自分の権利に影響がない以上、他人のことにのみ嘴を入れさせることは、これはやはりその決議に加わらせる以上は、その組のものの多数決の同意を得なければならないのですから、いろいろやはり成立に支障を来たす場合も考えられまするので、他人のことのみに嘴を入れさせるということは、これは適当じやないのじやないかというふうに考えまして、これは決議に参加させないというふうにいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/36
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037・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 只今の御説明ではありますが、この議決権を行使できなかつたために、その組の同意を得られんという場合も想像せられるのですが、又裁判所が計画案を変更して認可する場合も想像されるのですが、して見ますれば、自分の権利に対しても、やはり発言というものが重大な影響を持つことになるのじやないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/37
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038・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) これは決議に加わらせないというのは、その組の同意は問題にしないという趣旨でありまするから、それの当否は先ほど申上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/38
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039・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それは御説明は、加わらせないということが前提だから、御説明はよくわかるのですよ。併し私のお聞きしたいことは、若し加わつておつたならば同意が得られる、十分自分のあれを納得せしめて同意が得られるということもあり得るでしようし、又裁判所が公平に考えて、どうもあれだけを剥奪することはいけないからといつて、又変更するということもあり得るのですから、して見ますればその人にやはりそれだけの、額面だけの発言権を認めるということも民主主義にかなうのじやないでしようか。いきなり案だけで以て権利を剥奪してしまうということはどうですかね。法文の立て方はわかつておりますよ、法文の立て方はわかつておりますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/39
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040・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) そこの点でありまするが、すでに自分としてはもう何にも影響を受けないのだ、そのものの同意を、これは事実上もう自分の権利の影響を受けない以上は恐らく同意を得られると思いまするが、併し場合によつて自分も満足するが、そのほかのものもこういうふうにしてもらいたいという意見を持つかも知れない。而もその意見があまり感心しないということもあるかも知れない。その場合にやはりその組の意見をどうしても聞かなければならないというふうに拘束的なものにいたしますと、これはやはり計画の成立にも支障を来たすということになると考えますので、そういうふうな見地からこの法案におきましては、これは決議に参加させないというふうな建前にいたしたのであります。これはアメリカの制度でも同様なことになつておるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/40
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041・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次にこの法案によりますと、決議の際、更生計画案の修正を許さないということになつておるのですが、一体集会をする以上は、集会された人々によつて又いい案があろうとも限らんし、そうすることによつて成立するということも、これは事実上予想されるのですが、これは絶対修正を許さないという建前をとつたもう少し理由をお伺いしたいのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/41
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042・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 御指摘のように、決議の際にも相当自由に計画案の変更と申しますか、修正を許すということができれば、非常に便利であると考えるのでありますが、一方手続の面から見ますと、計画案を決議にする前には相当の手続を経ているわけなんです。先ず案ができたら、その案を裁判所が検閲しまして修正を命ずるものは修正を命じ、そして認可できそうであるというふうに認めた場合に、初めてこれは当事者と申しますか、関係人にその案を送りまして、そして決議に付することになつておる。でその前になお関係人の意見も関係人集会を開いて聞くわけです。そういうふうな手続を経て固まつた案を、又決議の際に変更するということになりますと、もう一度前のことから……いろいろ関係人の意見もあつたかも知れんし、又安心して案を見てこの決議に出席してない、この程度の案ならいいだろうということで、特に決議に出席してないような人もあるかも知れない。そういうような人の関係もあるというふうなことから、急にその場で変更されては手続上、又非常ないろいろな支障が生じて来るということが考えられますので、修正を決議の際ならば許さない。それまでは、或る一定の段階まではうんと検討させるけれども、併し固まつた以上は、これで決議をするというふうな建前をとつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/42
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043・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それは御趣旨はよくわかるのですが、仮に一、二、三と各グループがある。そのグループのうちで、成るほどその案を作るときに一のグループの趣旨がよく盛り込まれておる、二のグループの趣旨が相当抑えられているとか、三のやつは中間的なものだとか仮にいたしますと、その場合に各グループの決議というものに対して調和はとれていないわけですね。それをちよつと調和したならば、その案が可決されるとか、承認されるというような場合もあり得ると思う。だからそういう場合においては、その各グループの代表者の、議会で言えば両院協議会とかいうようなものを、裁判所とこの決議の段階との間に作つて、各グループの代表者を出して、そしてそこで調整さして修正を認めるというようなことをしたらば、もつと円滑に行くのではないでしようか。いきなり裁判所に持つて行くということをせずに、もう一つ段階を設けるということも一つの考え方じやないですか。その意味において修正ということも、そういう段階においてならば許すという考え方もどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/43
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044・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) そういうことも十分考えられるのでありまするが、そういうふうな交渉はやはり計画案審理のための関係人集会の段階において分十やれることである。そうして固めて置いて、これを関係人に広く送達して知らせて置いて、そうして期日を定めて集めて決議するというわけでありまするから、後の段階においては、もはや許すということになると、又もう一度送達し直すということを繰返すことになりまするので、こういう建前をとつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/44
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045・伊藤修
○委員長(伊藤修君) とすると、立法者の考え方としては、結局この最後の総会は呑むか呑まぬかということで、ノーかイエスかだけで、或いは形式的なとにかく承認を経るというだけの手続だというようなお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/45
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046・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) そういうふうな、手続上やや不便がありまするが、許せば繰返されるということも考えられますので、そういう建前をとつたわけです。和議法等においても、これは決議の際における変更は不利な変更はできないということになつているようなわけで、やはりそういうふうな点を考慮したものじやないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/46
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047・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 第二百五條で、裁判所は更生計画案の提出者に対して計画案の修正を命ずることができるのでしようか、どうでしようか。先ず提出者はその修正する命令に従わないときはその案はどうなるか、その点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/47
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048・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 修正命令に従わない場合には、若しその案が……ちよつと言い直します。この修正命令に従わないような場合には通常その案は不適法であるか、或いは公正、公平なものでないか、或いは遂行可能なものでないというふうに認められるものと思われますので、関係人集会の審理或いは決議には付されないということになると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/48
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049・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 必ずしも不適法の場合ばかりではないかと思うのですがね。御説明は不適法の場合のみに限るというふうな御説明であつたのですけれども、そうでない場合もあり得ると思うのですがね。裁判所のほうがむしろ事業家の実際を御存じなくて間違つてる場合もあると思うのですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/49
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050・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 二百七條で、裁判所が更生計画案が公正、公平なものでないか、又は遂行が不可能なものであると認めれば関係人集会の審理又は決議には付さないということになつているのであります。修正を命じたけれども二百七條には該当しないというふうに若し考えるものがあるとすれば、これはそのまま関係人集会の審理に、決議に付されるというようなことがあり得るかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/50
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051・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そういう場合は差支えないのですね、と解釈してよろしいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/51
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052・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/52
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053・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 数個の更生計画案が提出された場合にはどのような手続で進められるのですか。今少し具体的に御説明を願いたいと思うのですが、特に最初に決議に付された計画案が或る組において否決された場合においても、裁判所は他の計画案を決議に付することなくこれを変更して認可することができるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/53
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054・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 数個の更生計画案が提出された場合には、すでに決議のための関係人集会の前に、これらの計画案は各関係人に送達されておるわけでありまするから、各関係人はその期日にはどういうふうな案が出されておるかということはすでに了解しておるわけであります。で、その期日におきましては、順次更生計画案が決議に付されることになりまするが、例えばA、B、Cの三案があつて、A案が先ず決議に付される。そうしてそれが可決されれば、これで計画案のすでに可決があつたわけでありまするから、それについての認否の決定を裁判所がするというふうになつて、B案、C案のほうはおのずから廃案になるというわけであります。A案、B案が可決されずに、C案が可決されるということになると、これはC案についての認否の決定がされるというふうになると考えています。併しながら、このA案が可決されないというふうな場合に、B案とC案があるにもかかわらず、そのA案について同意しなかつた組の権利について二百四十二條のような措置をとつて認可をするというふうなことは、これはできないというふうに考えております。で、二百四十二條は、この可決された案がない場合のことをおのずから当然の前提として規定しておるものというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/54
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055・伊藤修
○委員長(伊藤修君) その場合ですが、数個の案が同時に提案されるのですか、或いは順次に提案されるのですか。順次の場合はあらかじめA、B、Cというふうに順序を付することが通知されておるのですか。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/55
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056・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) A、B、Cの三案がある場合に、その決議に付する案の順序までも通知するということは、これは法文上要求されておりません。決議に付するには、これは数案を同時に決議に付するということは手続上困難と思いますので、議題として意見を交換するということでありますれば、これは同時に付することは差支えないし、又好ましいと思いまするが、決議に付することは、これは一つずつ裁判所が定める順序で順次やつて行くというように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/56
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057・伊藤修
○委員長(伊藤修君) だから意見を述べるにしても、一括上程ができるということにならんと、その数個に対して取捨選択ということができないと思うのですがね。一つだけほか議題にかけられないということになれば、先ずそれによつて意見を述べる、次の案のほうがよいのだがと思つておつても、前のやつと比較検討が、いろいろの自分の考えは別として、他の意見もそこで聞いて、どちらをとるかということがあり得ると思うのですがね。一括することも、順序を付することも、裁判所の職権でできるという解釈ならよろしいですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/57
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058・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 立案の考え方といたしましては、最後の決議のための関係人集会では、若しA案、B案、C案、いずれがよいかというようなことをいろいろ議論をするということは、もはやその段階ではないというふうに考えておるわけであります。従いまして法律的には決議だけをするという集会であると考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/58
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059・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それは一つの案の場合はそういう御説明も納得できるのですが、A、B、Cと三つ出ておれば、少くとも意見が三つあつたわけです。最良と考える意見が三つあつた以上は、その三つに対して最後の段階に来て比較検討して、他人の意見も聞き、集会者のいろいろの意見を聞いて、果してAがいいか、Bがいいかという選択をさせるために、A、B、Cと少くとも数個の案が出たはずですから、してみれば、そこの段階に来るまで十分研究したんだから、ノー、イエスをきめればいいというのでなくして、少くともノー、イエスをきめる対象が三つあるのだから、その三つに対してどれをとるかという研究も必要でしようし、意見を聞くことも必要だろうと思うのですが、その機会が與えられないようなことになつては、折角数個の案を出すということに対して何にもならんということになりはしないかと思う。それはやはり同時に提出して、同時にそれを審議するという行き方でないと、折角三つの案ができても、それを研究するいとまがないのじやないかと思う。機会を失うじやないかと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/59
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060・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) お尋ねは御尤ものように考えるのでありますが、やはりこの法律の建前といたしましては、とにかく審議のための関係人集会においてなすべきものでありますから、決議のための集会では、これは自分がそういうふうな今までの審議の状態或いは計画案の内容を見てA、B、CのCが一番いい、Aにも反対する、Bにも反対する、Cには賛成するということをおのずから考えておる。おのずからすでに決心もできておるのじやないかというふうに考えられるわけです。事実上この集会においていろいろ論議されることは、これは好ましいことでありまするが、法律的にはこれはもはや決議のみをやる、決議としてはやはり一括して決議ということは困難じやないかというふうに考えられるので、順次やればおのずから最良のものがこれは現われるのじやないかというふうに考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/60
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061・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 立案者のお考え方は、議会などのように各政党があらかじめ討議できめておいて、採決だけで行つて立つたり坐つたりするだけのようにお考えのようですが、どうも実際生きた事業というものは、そんな杓子定規で行けるかどうか、少くともあなたは、立案者のお考えとしては、裁判所が同時にお出しになろうと、順序を付してお出しになろうと、それは自由であろうということは言えるのですね、その点は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/61
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062・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) そういうふうな議論につきましては、もうそういう……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/62
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063・伊藤修
○委員長(伊藤修君) いや、計画案の提出ですね、議題に供すること……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/63
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064・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) それは差支えないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/64
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065・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 差支えない。二百九條の陳述は、債務引受契約の申込の性質を有するものとの説明があつたのですが、この場合、従前の債務を引受けるのではなくて、新たなる債務を負担することになるのではないでしようか、又その契約は陳述したときに初めて成立するものであるのか、申込者、申込を受ける者等について、今少し何らかの規定が必要ではないかと思われるのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/65
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066・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 二百九條の陳述は、債務引受契約の申込のような性質を有する場合もあるかと存じまするがそれのみでは勿論ございませんので、従前の債務を保証する場合、その人が新たに債務を負担する場合というふうな場合もあるわけであります。で、この陳述したときに初めて契約としての効力を生ずるかどうかという点でありまするが、これは実体的にはすでに裁判外と申しますか、手続外においてそういうふうな合意がなされているということであれば、勿論そういう実体的な効力としては、この手続における陳述を待たずして効力を生じているということは考えられるわけでありまするが、この手続においていろいろな効力を認められる、例えば更生計画成立後においてその債務引受をしたような人に対して、強制執行するとか、更生債権者表に基いて強制執行するとかというふうな効力は、これは二百九條の陳述があつた場合にのみ認められるということになるかと思います。それから申込をする人或いは申込を受ける人等について、もう少し規定が必要ではないかという点でありまするが、これは御承知のように和議法とか、破産法の強制和議の規定にも同様和議のために債務を負担する者というふうな者があるわけでありまして、その者につきましては、手続上期日に出席して陳述しなければならないという規定はないわけであります。併しながら、今申しましたような債務名義の効力を生ずるというためには、解釈上期目に出席して陳述することが必要であるというふうになつておるようであります。この更生法案におきましては、その点を明文化いたしまして、この二百九條にその趣旨が規定いたしてあるわけでありまして、申込をする人とか、そういうふうな点については、申込みと言いますか、更生のために債務を負担する者というような者は、どういう者であるかというふうな点につきましては、二百二十二條におきまして、その者を明示して且つ債務の内容を定めなければならないというふうにいたしておりまするので、これはこの程度で明確になつておるというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/66
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067・伊藤修
○委員長(伊藤修君) もう一つ簡單にお尋ねしますが、二百四十九條に「責を免かれ」とありますが、この意味をお伺いしたい。いわゆる自然債務であるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/67
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068・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) これはやはり更生債権自体は全然消滅してしまうということは言えないと考えます。それはその前の二百四十八條の第二項にもございますが、更生債権者の保証人と申しますか、更生債権についての会社の保証人等はやはり依然としてその債務を負担しておるということになつておりまするので、責任を免かれる、会社は責任を免かれるということに考えなければならない。従いまして、これはやはり一種の自然債務的なものというふうに考えられます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/68
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069・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に議決権の行使ですが、特に担保債権者の場合ですね。それは担保債権者の場合は、御承知の通り第一、第二、第三とか、担保権の設定順位があつて、或いは債務を負担するような会社であるとするというと、殆んど担保力のない三番抵当権者あたりが、最後に厖大な債権を付するというようなことが往々実社会にはあり得るのですが、そういうものもやはり同じように一番抵当権者と同様な権利行使の待遇を受けるということになるのではないでしようか。だから非常に一概に担保債権者として同順位に扱つて、この更生債権者としての手続に参加させるかどうかということはどうも考えられないのですが、いわゆる担保債権者の中に順位を設ける必要があるのではないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/69
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070・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 例えば抵当権について考えますと、一番抵当、二番抵当、三番抵当というのがありまして、三番抵当は実質的に担保されていないというふうな場合があるわけでございます。そういうものはこれは更生債権として取扱うという考え方なのであります。第百二十三條に更生担保権の定義がございます。これは更生債権又は更生手続開始前の原因に基いて生じた会社以外の者に対する財産上の請求権で、更生手続開始当時会社財産の上に存する抵当権等で担保された範囲のものは更生担保権とするという趣旨は、実質的に担保されたものを更生担保権とするという趣旨でありましてそれは次の第百二十四條の第二項からもそういう趣旨が出るかと思いますが、その同條項は「更生担保権者は、その債権額のうち担保権の目的の価額をこえる部分については、更生債権者として更生手続に参加することができる。」ということになつておりまして、実質的に担保されていない部分は更生債権者として参加する、こういうことになつております。従いまして今申しました三番抵当のような場合には、これは更生債権者として手続に参加するわけであります。一番抵当と二番抵当のほうは、若し二番抵当も実質的に担保されるということでありますれば、これは特に、一番、二番と区別しなくても、実質的に担保されているという限度において平等の取扱いをしても、これは差支ないものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/70
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071・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そうすると、この担保される範囲のものは、この枠の時期はいつ頃を指すのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/71
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072・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 更生手続開始当時。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/72
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073・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そうすると更生手続開始当時、それは誰が定めるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/73
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074・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) これは結局更生担保権の確定の問題になるのです。関係人に届出についての争いがなければ、それで確定いたしますし、争いがあれば結局確定訴訟で裁判所がきめるということになるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/74
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075・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そうすると、例えば百万円なら百万円という担保物の価値があるかということは、つまり容易に集まつた債権者にはわかるでしようかね。恐らく関係者は裁判所の手続でありますから、不用意にそういうことに対しては争いを起すとか、何とかということはあり得ないと思う。例えば実質上三番抵当権者がどんどん発言するということになりはしませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/75
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076・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) これは非常に重要なことでありまするから、関係人も相当注意すると思います。のみならず、管財人がおりますから、管財人としては、そういう点が重要な調査ということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/76
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077・伊藤修
○委員長(伊藤修君) そうすると、管財人がそれに対していわゆる予め算定するとかということにならないというと、基準が惡いのじやないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/77
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078・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 管財人としては、当然そういうような手続をとるべきものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/78
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079・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それまでに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/79
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080・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) さようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/80
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081・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 御承知の通り現在の企業界におきましては、その統計は私のほうでちよつとわかりませんけれども、日本全国において相当多くの会社が銀行の管理融資になつているということは現在の実情です。そういうような場合において更生手続を開始された場合に、この銀行が挙げて応援しておるところの管理融資に対して、更生手続は非常に大きな影響をもたらすと思う。こういうものに対するところのお考え方としては、現在どういうふうに処置なさろうとしておりますか、依然としてこの更生手続でそういうものを無視してやるという考え方ですか、或いはそういうものに対しては、特別に考えるというような考え方ですか、その点を一つお伺いしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/81
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082・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 現在銀行の事実上の管理の下にある会社が相当数あるということは、仰せのように承知をいたしておりまするが、この法律自体としては特にそういうものについては例外を設けるという建前はとつておりません。併しながら事実におきましては、これは銀行の管理の下にあるということは、私的に更生手続が円満に行われておるというふうに考えられるわけでありますので、この手続の厄介にならなくて、これは十分更生が可能じやないかというふうに考えるわけであります。どうしてもそう行けなければ、結局この手続によつて解決するという建前になるかと思います。この手続が非常に法律的に不公平である、この手続で行きますと、事実上の銀行の管理のやり方が非常に不公正であるということでありますれば、これはそれに不満を持つて、この更生手続に乗換えて来るということが或いはあり得るかと思いますが、これは若しそういうことがあれば、それでも止むを得ないということを考えるわけであります。併し恐らくこれは公正に行われているのであれば、これは円満に解決されるし、又そのほうが非常に望ましいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/82
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083・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 御説明のように不公正だとか、それに対していろいろ不満があるかという場合において、他の債権者が銀行管理から脱するために、この手続をあえて求めて来る場合もあるでしようが、必ずしも、債権者というものは苦し紛れですから、みずからその銀行管理から脱却したいという意味において申立てる場合もあるし、銀行を逆に苦しめるような立場に入つて来る場合も想像されると思うのですが、銀行のほうでは、自分の多数の預金者から預つた金を損害なからしめようとして、理事者に任しておかれんから、銀行が管理して、なおその清算に対して銀行が余力を以て応援しておるというような、善意でやつておるのですが、債権者としての立場と債務者としての立場とはおのずから一致しない。債権者のほうでは何とかしてその債権を保全するために随分経理も窮窟なことを言うし、人員の淘汰もしようとする。或いは清算についても理事者とは一致しないことは、これは通例である。そういう覊絆を脱却しようと思つてこの更生手続に出て来る場合も相当あり得ると思います。そうすると、折角銀行のほうでは従来の貸金を生かす、新らしく又銀行管理をして融資しておる、こういうような重大な投資をしておるものを更生手続に一様に追込んでしまう。そうして一般債権者と同じように、或いは担保権者と同じようにこれを叩き込んでしまうということになりますと、銀行の最初の思惑とはうんと違つて来ることになると思います。これは今後の経済界に至大な影響を及ぼすと思うのですが、恐らく銀行管理を受けておるものは窮窟ですから、この手続に出て来やしないかと思うのですが、そうすると、これは非常な銀行の破産ということに追込まれる結果を生ずるのではないか、こう思うのですが、この点は立案の当時お考えになつたかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/83
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084・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) その点は非常に重大な問題だと考えられます。債務者といたしましては、そういうふうなまじめな更生の目的でなくて、債権者に対する嫌がらせと申しますか、そういうふうにも見えるような目的で手続の申立をするということはないとは保しがたいと思いますが、これは三十八條あたりの手続開始の條件という規定がございまするが、そういうこの各條項に該当いたす場合があるのじやないかというふうに考えますので、こういう点からこれは防止し得る面も相当あるのじやないかと考えられます。更はこれは債務者自体が何らかの法律的手段に訴える、事実上の管理に満足せずに法律的な手段に訴えるということは、これは防止し得ないわけであります。これは現在でも、例えば自分から進んで破産をしたい、或いは自分から進んで和議をしたいというふうなことであれば、これはそれを防止する方法は別にないわけであります。濫用でない限りはそういうふうな手段、これはまあほかにもとり得るわけであります。特にこのためどうしても不都合であるという点は、これは必ずしも当らないというふうに考えるわけでありますが、まあ運用上相当愼重にやるべきものというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/84
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085・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それは必ずしも今御説明のように三十八條に列挙された場合のみでなくして事業上の考え方が相違する場合があるわけですね、そういう場合が実際の企業運営において多いと思いますが、銀行の管理というものは実に苦しいものでありますから、だから銀行の管理を受けているよりは、銀行は金を出し切つてしまつたのだから、これ以上はあと出してくれはしない、それで従来の投資及び新らしい投資を受け切つておるのですから、これの範囲において新らしい更生計画を立ててやるという考え方を持つ。それは今お説のように、それをとめるということはよくないとおつしやればそれまでだが、飜つて銀行の立場から見ると、大きな生命線に影響すると思うのです。債務者のほうから見れば、それでとめるべきものじやないということは御説明の通りです。併しそれは一面だけを見て他面を見ないことです。金融界がそれによつて非常に萎縮してしまう。又現在の金融界のあれを阻害するようなことがあつては、延いては企業の破綻じやないか、全企業の破綻じやないかと思いますが、そういう点ですね、債務者から見れば勿論お説御尤もですよ。それをあえてとめることは、破産を申立ててもいいし、和議を申立ててもかまわないし、それは権利でしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/85
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086・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) お説誠に御尤もと思うのでありますが、事実上の銀行の管理が、これが大局的に見て最もいい方法であるかどうか、これは必ずしも言い切れないのではなかろうか、或いはその銀行自体にとつては最も都合のいい手続であるかも知れませんが、大局的に債務者或はほかの債権者、或いは社会的に見て果してそれが最もいい更生の方法であるか、この法律による更生手続というのも、これはやはりいろいろまあ特徴も持つおるし、まあ手続の公正という点においては、これは事実上の管理よりもやはり優れておると言わざるを得ないのであります。債務者といえども、これはこの法律による更生手続によるよりも、事実上の銀行の管理に属するほうが、費用の点、いろいろな点から見て有利であると思えば、これはおのずから自制することと思います。併しながら更生手続によりたいということの希望を持ち、そういう原因が十分ある、手続の申立自体も非常に誠実な動機からされておる、銀行の意見といえども最もいいとは限らない、銀行の意見よりも、こういう考え方があるというふうなことで、そういうような申し分の聞くべきものもあるかと思います。そういうような場合にも、この手続をとるべきものじやないとして排斥するということは、これは必ずしもとるべきものとは考えないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/86
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087・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 御説明よくわかるのですが、私の心配することは、現在の日本の経済界において銀行管理というものが相当数あるのですが、それが一部債権者の申立により、直ちにこの手続に入られた場合に、銀行がどうなるか、日本の金融界がどうなるかということを心配するのですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/87
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088・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 銀行自体もこの手続が始まつたら、これは大損害をこうむるだろう、必ずしもそうじやなくて、この手続が始まつたために却つて公正に取扱われて、自分も非常に有利な立場に立つということは、これは十分あり得ることというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/88
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089・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それは銀行管理の場合においては、公正、不公正というようなことは殆んどあり得ないと思う。これは銀行あたりは恐らく公正にやられることは当然のことだと思うのですが、個人の管理している場合とは違うのですから……。ただ銀行がその金融的において非常に困るのじやないか、こう思うだけです。まあこれは後に研究することにいたします。次に国税徴收法の第三條によると、債権が国税よりも優先することがあるのですが、その場合において更生手続との関係はどうなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/89
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090・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 御指摘のように、質権又は抵当権の設定が国税の納期限一年前にある場合は、国税徴収権よりも質権、抵当権のほうが優先するということになつておるわけであります。従いまして例えばこの本法案におきまして申しますと、二百三十六條で第一項の更生担保権の中にはと申しますか、むしろ大部分は国税徴收権よりも優先することになろう、併しながらこれを法律的に常に更生担保権の次に位すべきものとするかどうか、こういうことはいろいろな点から又考察しなければならない点であります。やはり国税は国家の財政の基礎を成すものでありまして、一般債権とはおのずから取扱いを異にすべきものと考えて、ここに二項を設けまして、国税等につきましては、第一項の順序に従わなくてもよいということにいたしたわけであります。併しながら権利の強弱はおのずからすでにきまつておるわけであります。従いまして担保権者は、これは自分がどうしても本年の権利よりも不利に取扱われるというふうに考えるならば、そういう計画案には反対をせざるを得ないわけであります。そうすると、更生計画案はできない、できないと会社は場合によつて破産するということになります。そうすると、国税徴収のほうが担保権に遅れるということになるわけでありまするから、そこにおのずから調整ができまして、案としては妥当なものができるのじやないかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/90
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091・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 次に更生計画が認可後更生手続が廃止される場合があるでしよう。遂行ができないで……、そういうような場合には担保権者が復活しないように考えられるのですが、非常に担保権者としては迷惑至極な話じやないでしようか。これは何とか遂行ができなかつたら、従前の担保権者の地位に復活せしめるような手当をする必要がないのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/91
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092・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) その点も非常に大きな問題であります。この立案の過程におきましても、法制審議会等でもこれは最も活発に論議された点の一つであります。更生計画が一旦認可されたけれども、その遂行の途上において挫折したというような場合には、できればこれは認可前の状態に復するということが好ましいわけでありまするが、すでに認可決定があつて、而も確定した、それでどんどん計画が遂行された。又認可手続によつて法律上当然生ずべき効果が生じてしまつた。それを今度送行の過程において不可能になつたからと言つて覆えすということは、これはどうであろうか。大体そういう場合は非常に困難になる、むしろ不可能に近いのじやなかろうかということがまあ考えられるわけであります。それでそういうふうな不都合と同時に、本来担保権を持つている人は、更生計画案においてもそれはそれ相応の取扱いを受けて、それ相応の分け前をすでに受けておるはずである。であるから、仮に元通り担保権が復活しなくても、それ相応の権利はすでに與えられておるのであるから、この担保権者の権利もそれほど侵害するということはないであろうというふうなことから、このようなことにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/92
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093・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 一応理窟はわかりますが、ちよつと納得のできないようなところもあります。本法において担保権に対する制約から来るところの大きな問題だと思うのですが、延いて企業界に及ぼす影響は、金融面においては非常に梗塞されると思うのです。これも後に研究することにいたします。銀行あたりではこの本法が施行されると、現在日本の大会社たる百四十社くらいは別問題としまして、それ以外の日本の大部分の会社というものは現在全く行詰つちやつておるのです。それが実情なんです。これが本法を利用して殆んど申立てるということになつたら、大混乱を来たすというような気がするのですが、そういうような御懸念はないのですか。又そういう点について従来立案の際にお調べになつたことがおありになるかどうか、若しあるとすれば、そういうふうな資料を一つ頂きたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/93
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094・位野木益雄
○政府委員(位野木益雄君) 現在の我が国の経済状態は必ずしも正常ではないと考えるのでありまして、相当会社の経理状態も惡いものが多いように聞いております。併しながら更生手続におきましても、この財産の評価というものは、これはおのずから、おのずからと申しますか、清算価格によらないで、いわゆるゴーイング・コンサーン・バリユー、企業が存続しておるという前提による評価というものを考えておるわけであります。そういうような建前から申しますと、会社のいろいろなバランスなんかも相当何と申しますか、惡く言う、不当に惡く考えられておる場合もあるというふうに考えるわけであります。この法律におきましては、これはそういう評価なんかにおきましても、十分ゴーイング・コンサーン・バリューとしての評価をして行くというふうなことを考えておるわけであります。又三十條の規定なんかにおきましても、これは事実上どうしても今困つておるというふうな場合に初めてできるということを考えておるのでありますから、それほどひどく濫用されるということはない、又会社の整理なんかの規定が商法にございまするが、これも大同小異の開始原因になつております。併しながらそのために実業界がそれか濫用された結果、非常に混乱を来たすということも未だないように承知いたしておりまするので、それほどこれは、そういう点は憂うる必要ないのじやないかと、まあ相当これは重要な問題でありまするが、そういうふうなことを考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/94
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095・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それでは本日はこの程度にいたしまして、次は次回に讓ることにいたします。ではこれを以て散会することにいたします。
午後三時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00219511112/95
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