1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月二十二日(木曜
日)
午後二時二分開会
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出席者は左の通り。
委員長 伊藤 修君
委員
鬼丸 義齊君
一松 定吉君
須藤 五郎君
委員外議員
栗栖 赳夫君
政府委員
法制意見長官 佐藤 達夫君
法制意見参事官 位野木益雄君
事務局側
常任委員会專門
員 長谷川 宏君
常任委員会專門
員 西村 高兄君
法制局側
法 制 局 長 奧野 健一君
説明員
最高裁判所長官
代理者
(事務総局民事
局長) 關根 小郷君
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本日の会議に付した事件
○会社更生法案(内閣提出、衆議院送
付)(第十一回国会継続)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/0
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001・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それではこれより会社更生法案等に関する小委員会を開きます。
前回に引続きまして質疑を継続たします。
最高裁判所側にお尋ねいたしますが会社更生法が施行されるといたしますれば、その予算関係はどのくらい要するのか、その点が第一、それから次に機構として新たに人員の増加を要するのではないかと考えますが、それが第二、第三として現在の裁判官のうちにおいて、この種の法律を完全に運営し得るところのいわゆる経済的な能力を有する判事が得られるかどうか、相当数の事案が継続するに至るであろうと思われるのですが、この三点をお伺いいたしたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/1
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002・關根小郷
○説明員(關根小郷君) 今お話がございました予算関係でございますが、これは若しこの法律が通過いたしまして施行の関係になりましたといたしますと、相当期間準備期間を置いて頂きまして、その間にいろいろな準備をせざるを得ません関係から、予算の面におきましても相当額要求しております。実はこの予算の要求に当りまして、裁判官その他の職員の増員も最初考えて下案には入つていたのでございますが何分にも人件費に関します限りは、御承知のように国家の公務員の範疇に入ります関係から、いろいろな面から制約を受けます。それからもう一つは、一応施行いたしまして、どの程度に事件が出て来るかということが、かなり計数上明らかにすることが困難でございまして、今お話がございましたように、破産事件或いは和議事件、或いは会社法に基きまする整理事件等がこの会社更生法の事件に移り変つて出て来ることは予想できますけれども、それ以上にどの程度に出て来るかということが計数上はつきりできかねます関係で、来年度の予算といたしましては大体準備に必要な予算だけを計上いたしたわけでございます。それで大体会同を開催いたしまして、裁判官にこの法律の趣旨を徹底させ、それから法規集、解説書等の刊行物の配付、それから参考の図書の配付等、これらを併せまして非常に大まかに申しますると、大体三百万円くらいになります。そういたしまして結局できるだけの準備態勢を整えて、その上で施行して頂くように、こちらのほうで又お考えを頂くという点が第一点に対しまするお答えでございますが、第二点といたしましては、人員の問題でありますが、只今予算の要求に関しまして申上げましたように、現在の人員のままで一応やつて見る、やつて見ると申しますと非常に責任がないようでございますけれども、大体現在やつております会社の整理事件、和議事件並びに破産事件、そういつたものの移り変りと考えますれば、現在の裁判官でやつて見ることも責任上できるのじやないかというふうに考えられますので、定員の増加ということを只今のところは考えておらないわけでございます。
それから裁判所の能力の問題でございますが、これが一番こういつた経済関係に関します法案の御審議を頂けるのに非常に不安をお感じになるのではないか。我々といたしまましても、この問題は当然問題となるべき一つの大きな点でございますが、結局のところ多数の権利者の複雑な権利関係を処理される関係かち、どういたしてもやはりほかの機関よりも公正な機関であります裁判所がやるということに案をお立てになるといたしますれば、これをお引受けせざるを得ません。それと公正な権利関係の調整ということになりますと、やはり裁判官が従来やつておりました非訟事件、私法関係の事件と同じような関係でやり得るのじやないか。それから又併せまして補助機関と申しますと或いは語弊があるかも存じませんが、管財人それから審査人、整理委員、調査委員、これらの機関を動員すると申しますと、これも語弊があるかも存じませんが、これに人を得て裁判官の足りないところはそれによつて補充するということで行かざるを得ないのではないか。何分にも裁判官の経済的知識の不足ということは、これは一面において否むととができないことでございますけれども、これに対しまする補充はあらゆる研修なり会同の機会を捉えまして、更に又個人的な教養を高めるという意味におきまして補充して行きたい、こういう考えでおります。なお足りない点は又御質問受けまして、お答えいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/2
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003・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 第一点の質問に対しまして、御説明は準備期間におけるところの予算関係の御説明でありますが、私のお尋ねしたいのは、本法案が来年の七月一日施行ということになつておりますから、少くとも来年度予算にはこの施行に伴うところの予算関係を御考慮にならなければならないはずですが、ですから準備じやなくて実行に対する予算を如何ほどお考えになつておられまするか、その点をお答え願いたい。
それから第二点は人員の点ですが、勿論現在の政府の方針としては、新らしく人員を賄うということは、整理時代であるから、それは基本的な理念としては反対の現象を呈するので阻止されるとは思われますけれども、併し国家が必要として新らしくこういう制度を設ける以上は、それに伴うところの人員がなくては賄えないはずですからこれは当然その要求は得られるものと考えられるのです。又今お話のような従来の破産及び和議、そういう係判事の担任で事足るというような安易なお考え方は、私は本法案の全体をお考えにならん御答弁だと思うのですが、少くともこの法案を実行される場合においては、従来の破産及び和議の片相手にやるというようなお考えならば、この法案はむしろ公布しないほうがいいと思うのです。それであつてはならんと思うのですが、この法律の全体の趣旨は、従来の和議及び破産、整理と、こういう三つの整理手続じやなくて、それに併行して、より以上、主として会社を経営して更生させるというところにあるのですから、経営だけでなしに、それを更生させるというところに積極的な面があるのですね。だから單純なる経営以上に苦心を払われなくちやならない。だから通常の状態の会社を経営する以上の練達堪能な経済人でなくてはこれは経営できないですよ。その経営の面を主として裁判所が監督して行くのです。整理の面ではないのですから、重点はそこにあると思うのです。この法律の重点も又生命もそこにあり、目的もそこにあると思うのです。でありますから、そういう面を考えたならば、破産や和議の係判事がただ書類に目を通してぴたり判を押してやるということでは、この法律は賄えないと思うのです。従つてこれには專任の堪能な判事をそこに据え置かなかつたならば、到底この法律を賄うことはできないと思うのです。で現在和議及び破産及び整理事件が何ほどありますか、統計はあとでお出し願うとしてその半数はこの手続によつてやつて行かれることは想像に難くないのです。そうして見れば、そうした安易なお考え方は、本法を施行する上においては全くこれは死法に帰してしまうことになるのです。
第三の能力の点は、そういう御方針は結構なことでありますが、これから養成して行くということよりも、現在そういうような、まあ検事のほうでは経済検事というのがありますのですが判事のほうでも経済係判事というような人を相当数見込まれているかどうかというような点、この三点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/3
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004・關根小郷
○説明員(關根小郷君) 今お話の点、いずれも御尤もな点でありまして、実は先ほど申上げました予算の三百万円これは準備期間中だけの予算じやないか、それから実際に施行後の予算は、何も組んでいないじやないか、これはおつしやる通りでございます。実は準備を整えれば一人前になるという考えでは毛頭ありませんけれども、結局今までおりまするところの裁判官、これは今お話がございましたが、和議と破産だけの係判事を充てるというわけではございませんで、商法関係、商事関係、大都会におきましては商事部という係の判事がございますが、こういつた判事を廻すということも考えられます。それで結局のところは、新らしい三百カ条もある大法典でありますが、これの周知徹底に努めまして、そういつた従来商事関係に明るい判事をこの事件の担当係に廻すということが考えられると思います。そういたしまするというと、予算関係も、実行に入りましても、現在のままでやつて見ざるを得ないのではないか。それから人員の要求が予算の問題と常に裏と表の関係に相成ります。けれども、結局只今直ちに人員を殖やしましても、その予備軍と申しますか、経済判事として直ちにその仕事を十分にやりこなし得る人を得られないことは、これは委員長御存じの通りだと思います。修習生として相当の期間をやり、而もその修習生をやりまして、判事補として十年やる。そういつた修習期間と申し、予備期間と申も、相当の期間を経なければ一人前にこの事件を取扱う人は出て来ない。従いまして来年度予算面におきまして、この事件に匹敵する人を増員するといたしましても、直ちに間に合わないことは、これは火を見るよりも明らかなことであります。まあ言葉を換えて申しますと、十年先ということにならざるを得ない。でありまするので、只今では現在の商法関係に明るい判事を廻すということで考えて行つていいのではないかと思います。
それからなお事件の数字がどの程度に出ますかということは非常に面倒でございますが、和議、破産、会社の整理と、今委員長の申されましたように半分くらいは或いは廻つて来るかも知れません。或いはそれ以外にどの程度に出るかわかりませんが、出ましてその上で、どうにも手に負えなくなれば更に又考えなければなりませんけれども、今のところではその点増員いたしましても直ちにその増員が能力ある経済判事の補充になり得ないという点から、今のところで大体いいのではないかという考えでおります。非常に裁判官の予備軍があり得ないのでございますので、その点から考えまして、非常に安易だとは仰せられますけれども、止むを得ざる事態ではないかと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/4
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005・伊藤修
○委員長(伊藤修君) だから、止むを得ざる事態だから、法律を作ることのよしあしと、実行性があるかないかということをお伺いしておるわけですが法律が出てしまつてからならば止むを得ざるということにもなりますが、今出るか出ぬかという境ですから、受人態勢が整つていないのに、法律だけ作つて、果して運営ができるかどうかという点を見越してお尋ねしておるわけです。只今判事のほうは仮にそうするとしたところが、若しそういうことに、なりますれば、今日日々仕入れもしなくちやならん、販売もしなくちやならん、生産もしなくちやならんという生きた会社運営を捉まえて、判事が兼務しておつたのでは、到底私はその生産というものは継続できないと思うのです。それから、少くともこういう法律ができれば、今度は商事部とか整理部とかいうものを各裁判所に置かないというと、本法の円滑なる運用は賄い切れないと、こう考えます。又、今判事さんだけの御説明がありましたが、事務局の問題にしても、従来会社でやつておつても、御承知の通り、日発が総会を開きますれば、招集状だけでトラツクに八台要るのですよ。トラツクに八台積むほどの招集状を書かなくちやならないのです。今の貧弱な裁判所の事務局制度で以て、一体債権者集会の通知を、日坂高の場合は、トラックに八台も書ける能力があるかどうか。一体この事案に該当するような会社は二千万円以上となつているのです。二千万円以下は俗に言う小破産みたいなことになつておりますが、二千万円以上の資産関係のあるものなら、少くとも取引関係というものは相当数のものですよ。それに対する事務取扱というものは、現在の貧弱な能率の惡い裁判所の書記制度では到底賄えないのです。だからそういう点に対して相当予算のお手当を考えられないというと、実行できませんよ。その点に対して一つ御答弁をお願いしたい。どうも関根さん、法律さえできれば何とか考えようというような安易な考え方を持つているのではないかと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/5
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006・關根小郷
○説明員(關根小郷君) 非常に先の見通しが、どの程度に事件が出て参りますか、この点よくわかりませんので、非常に面倒な問題でありますが、少くともこの法律が若し制定されまして、施行するといたしますれば、必ず事件が出て来る。全然出て来ないということはもう考えられませんので、今申されたその事件が出て参りまして、裁判所の裁判官又それを補助する事務機構が非常に貧弱であるからできないじやないか。でこれは実は御承知だと思いますが、この管財人或いは又それの補助機能ということの活用によりまして或る程度は経済的な事件も処理はできるのじやないか。それでその補助的な仕事を会社のほうで受持つということも考えられる。かなり裁判所自身が動かなくても済む場合もあり得るのじやないかと考えられます。で実はこういつた新らしい法案につきまして、必ず我々としてはできる限りの予算の手当を一応考えて折衝を始めております。御承知のようにかなり厖大な予算も組んでいたのでありますが、これは全体の国家予算の睨み合せから申しまして、実績が上らないと出て来ない。どうしても予算の要求が困難だ、これを国会側におきましてもつと予算を立てろと言つて御援助下されば、私のほうも遠慮なく事務機構その他においてもう一度やり直すという考えでおります。でこれは国会のほうでそういうお考えを頂ければ有難いので、むしろ感謝して余りある問題でございます。
で最初の内訳で申上げますと、最初は非常に厖大なことを考えたのでありますが、こういつた新らしい法律の施行につきましては、常に実績がどうなるかということを問われまして、計数の基礎を出しまして、これは架空じやないかということで、この予算関係がもう非常に折衝困難であります。でありますので、少くとも、施行いたしまして、半年くらいたちまして、その間一年にどのくらいの件数が実績上出て来るという、確実な数字が出まするとそれに輪をかけて実は予算の要求ができると思うのでございますけれども、何分にも現在の予算の要求ができますのは、一昨年なり昨年なりの現実出ておりまする破産、和議、整理の事件を基準とせざるを得ないのでございまして、現在の、たとえて申上げれば、会社の整理事件などは非常に利用価値が少いと申しますか、事件が少いのでございまするので、それをもとにいたしまして、予算の要求をやるということは殆んどもう実績が出て来ない。でこの点はこちらのほうで予算の点をお考え頂ければ、私どものほうではそれに一緒に同調してお願いしたいと思つております。ただどうしても実績がはつきり出ないうちは、止むを得ないと思いますのは、実はこれも打明け話でございますが、終戦後再建整備法関係の法令が随分出まして、終戦後の経済関係におきまして、いろいろな裁判所が関與し、特別清算事件、或いは特別和議事件、いろいろ新らしい事件が法律で制定されまして、どの程度出るかわかりませんので、当時はかなり予想件数を上廻つて出して予算をとれたこともあります。ところが実績を見ますと、殆んど二、三件しか出ない、そういつた事態もございまして、今度はまあそういつたことから考えまして、実績を先ず作つてかちのほうがいいのじやないか。実績を作るために実績の標本となる事件は、それでは結局十分な手当をしないでやられてしまうじやないか。この点は現在の裁判所の能力から申しまして、やり得るのじやないか。ただ事件が厖大に出て来れば別でありますけれども、只今の見通しではどの程度出るか、むしろ先ほど委員長が申されましたように、現在の破産、和議、整理の半分ぐらいということも予想される。これは蓋をあけて見ませんとわかりませんので、その代り準備態勢はもう十分整えて、いつでも試合に臨み得る態勢を整えて、そのほうの予算は十分頂いたらどうかというふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/6
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007・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 今、栗栖さんが見えておるから栗栖さんから一つ聞いて…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/7
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008・伊藤修
○委員長(伊藤修君) では栗栖さん。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/8
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009・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) 委員外の私が発言を求めてお許しをして頂いてどうも有難うございます。実は私長いこと病気をやりましたり、そのほか会社や何かのことで忙しうございまして、会社更生法案がここまで具体化しておるということを実は知らなかつたのでありますが、先だつて或る財界と銀行の人々との会合に出まして、いろいろ銀行のうち若干の人々は、この立案にも参画いたしましたということも承わりましたのでございます。而してその折財界及び銀行の両方からいろいろな議論が出まして、結局まあ昔の関係から私に一言国会に代弁してもらつたら結構じやないか、こういうように申しますので、実は甚だ差出がましいとは存じながら本日推参した次第でありまして、どうか一つ聞いて頂きたいと思うのでございます。
この法案は全体としては非常に結構な法案であると、こう思うのでありまして、元来私は長く銀行員として各種の事業の整理、即ち各種の事業に対する銀行の貸付金の整理をいたして参りまして、いろいろ苦労に直面したことがあるのでございます。ところで若しその当時この法律が設けられておりましたならば、このような整理も非常に簡便に実行することができたろうと思うことも少くないのであります。昭和二年のパニツクの際、和議法で整理をいたしましたあの川崎浩船所の問題なども若し当時この法律があつたならばもつと簡便に実行ができたのではないか、こうも考えておる次第でございますが、併しこの際、是非五点でございますが、五つの点をお考えを願いたいと、こう思うのでございます。そのうちの四つだけは、こうして頂いたならばなおよくなるのじやないか、こういう点であります。それから一点は、こうしてもらつたら困るのじやないか、もう少し再考をお願いせんと困るのだというのが一点であります。
極く、メモのようなものを書いておきましたけれども、その中で、一、二、三と五は、前に申しましたこうもお考えを願つたならばなおよく円滑に行くのじやないか、こう思う点でありますそれから四の点は、こういうことで非常に困ることがあるのである。その点で御再考を願つて調整を、調和をとつて頂きたい、こう申す点であります。
第一の点は、管財人を選任する範囲をもう少し広げて頂けないかという点であります。それから第二の点は、管財人が経営に参画いたしますので、その経営をいたす、このことについては、運転資金その他の資金、借入金が要るのであります。これを或る種の条文を補足して頂きますれば、その借入金が非常に円滑に行くようになりませんかという点であります。それから第三の点は、これはこの会社の経営を管理いたしまして生じた利益金の処分の問題についてであります。それから第五の点は、四はちよつと抜かしますが、第五の点は、いま少し祉債権者との関係、殊に担保附社債との関係を連絡をとつてもらつたらいいのじやないか、こういう点であります。それから第四に挙げましたのは、これは困るのだというのは、抵当権者の問題でありまして、第一の点は書いておきましたから、そう申上げなくてもいいと思うのでありますが、経営までも管理ができるということは、これは非常に結構な規定であると私は思つております。これは御案内と思いますが、明治三十八年にできました鉄道抵当法の中にあるだけでございまして、鉄道抵当法の場合には、二、三、実験した例もあると記憶いたしております。そのほかにはどうも十分ではなかつたのであります。でありますから工場財団の管理をする場合に経営にまで入るということができなくて非常に不便を感じたのであります。そこで経営にまで参画して頂くということは非常に結構だと思うのであります。これは会社の整理はつい三月や四月でできるものではございません。実は長くて四、五年もかかるものもあるし、少くとも一年や二年はかかるのであります。昭和二年のパニツクの結果整理をいたしました多くの事業会社におきましても、どうしても早くて一年、長くて三、四年はかかつておるのであります。その間に事業経営をもやつてゴーイング・コンサートとしての会社の価値を維持すると同時に、利益を挙げて行くということは非常に結構なことであると思うのであります。昭和十四年の会社の、つまり商法の改正のときに会社の整理なる規定が新たに設けられたのであります。この中には経営的なことも業務の管理ということで若干できるようになつておると思うのであります。併し経営なる文字を使つて頂いたのは、この民事関係、殊に会社関係では初めてだろうと思いますが、非常に結構だと思うのであります。併しその点から見て今度は管財人の選任される範囲を考えて見るということが起つて来ると思うのであります。小さい事業の管理ならば管財人も要らんくらいでありますけれども、大きな事業が管理に付せられることが非常に多いと思うのであります。殊更そう思うのであります。そういたしますというと、これによりますと管財人は一人の場合もあります。数人を選ぶ場合もあると認められておるように思うのであります。数人選びました場合においては利害関係人のうちから一人だけはできる、こういう点があると思うのであります。併しとこをもう少し拡げて頂けないものかと思うのであります。これは会社の関係を見ますというと、経営のうちでも営業関係、経理関係、それから技術関係と、非常な大きな部門に亘つており、工場のごときものも單に一カ所じやなしに数カ所或いは十を起えるような工場に跨がつておるような場合があるのであります。そうしましてこの管財人が経営を管理しまして、そうして有効適切にやるにつきまして、どうしても多数の従業員なり多数の社員を相当使いこなす人が入りませんというと、これは何にもならんことになるのであります。そこで使いこなす人を入れるということになりますというと、或いは技術と申しますか、技術であるならば、例えば日本鋼管でありますならば、あの鉄の穴をくつて、そうしてパイプを作るやつが有名なあすこの特殊な技術であります。或いは大同製鋼というようなものが名古屋にありますが、ここでもあの鋼管を作るのは特殊なものであります。そうして特殊の技術家の重役もおるわけであります。今は顧問になつておる大同製鋼の錦織博士は有名な技術家で重役であります併しこういうような人を抜いてずぶの素人を持つて来たのでは本当に経営はできないのであります。そこで勿論会社の経営を管財人によつて管理さすということになりますというと、公平に行われなければならん点が先ず第一であります。そういうことになりましたときに会社が例えば景気不景気の波によつて失当の措置をとつてうまく行かなかつた。非常に骨を折つたけれども、昭和二年のパニツクのように大部分は景気不景気の波によつてうまく行かなかつた、こういうようなこともあろうかと思います。多数の軍役の中には、経営の失当によつて責任を負わなければならん者もありますけれども、又その代りには責任を負うには余り軽過ぎるし、又そういう人には是非経営になくてはならん、参加してもらわなければならん者もあるのであります。そういう者もこれはオミットされることになるのじやないか、そういう人を管理人の下で補助的に使うと、その他じやこれは威令もきかなくてどうにもならんのであります。真に会社の更生を策するならばすべてをそういうもののために作つて頂きたいというのじやありませんが、その場合において公正で公平な人で、而も技術的に或いは経営的に、或いは営業的に或いは経理的に練達な人がおらなければならん。こういうような人はやはり管財人の中へ入れ得る余地を開いて頂いたらどうか、これが私の申す第一の点の半分であります。
それから第一の点のあとの半分は、これは大口の債権者とか或いは担保権者等の意向に反して、会社の経営と更生が和議法によろうと、その他の場合によろうとできたためしは私はないと思います。川崎浩船所の問題にいたしましても、そのほかの問題であつても皆そうであります。これは企業再建整備法の規定によりますというと、あれは会社の重役の中から半分とそれから大口の債権者から、大口の債権者のみならず債権者全体を代表して半分、普通は二名ずつであります。そうして特別管理人というものを出し七、あれだけの企業再建整備をとにかく形なりにも成功したのであります。これは会社の技術関係その他を維持するということと、そうしてその上に大口の債権者というものの支持を得る。大口の債権者は多くは金融機関その他でありますけれども、これが会社の経理その他をよく見知つておりますし、その上に一番利害関係が強いわけであります。その大口の債権者のみの利益を追求するということではいけませんけれども、又そういうふうな人は入れるわけに行きませんけれども、然らざるものであれば、最も利害関係があり、最も熱心な者という意味でこれも入れて初めて調和がよくとれると思うのであります。そこで管財人を御選任になるときには、半数を超えてはこれは私はどうかと思うのでありますけれども、半数未満のものは、こういうような優秀なる適任者をも入れ得る余地を残して頂いたならば、初めて会社更生の目的を達成するのじやないかと、こう思うのであります。法文では利害関係のある者は一人とありますけれども、これは狭きに失しておりますし、例えばその例を挙げちや工合が悪いのでございますが、或る光学会社が今困つておるのであります。これはこう申上げましたらおわかりのかたがあると思いますが、これは経営の失当によります。併し何か金融機関その他がやはり貸した金を活かす上において、事業は輸出貿易に非常に必要なんだから誰か適当なる者を入れて、そうして会社を更生しようじやないかという、こういう話を私今相談に預つております。そういうようなものもあるのであります。これは一億や三億の資本で、入つておる金が六億であります。そういうような場合においては利害関係人だからいかんいかんと蹴られては却つてできるものができんのじやないか、こう思う次第であります。
これが第一点でありまして、第二の点は、これは経営はしなくても、管理の費用だけでも随分金がかかると思います。私学校を出て間もなくでありましたが、上毛モスリンの四百万円の社債を出した。それを整理したときにがかつた金が八十万円であります。今も覚えておるのであります。八十万円をちよつと超えておる。それだけの金がかかるのであります。経営をすれば日々の運転資金その他が相当かかるのであります。そこでこの経営をするにはやはりどうしても運転資金、それから最小限度の維持の設備資金というものはかかるのであります。経営をして会社の更生をなお容易にするためには、それだけの資金を調達することができるような後詰めの規定を置いて頂かないといかんのじやないかと思うのであります。今ちよつと、例えば四、五億の会社でありますというと、これは事業が四、五億の事業をしておりましても、どんなに少くても二億やその内外の運転資金というものは、これはもうよほど無理をしても必要であります。それだけの金を借りるには相当の途を開いておかなければいかんのじやないか、こう思うのであります。これはこの間も法務府の佐藤長官その他にもお尋ねしまして共益債権として優先に取り得るいう規定が入つておるのであります。ただそれだけでは私は魚を生のままくれて、さあお食べなさいというだけであつて、一つ箸でもとろうかという銀行家を動かすだけの魅力が付かんのじやないかと思うのであります。それにはこれは長官からお話が出たのですが、レシーバース・サーテイフイケートというものが英米でも出ておるのであります。これもいろいろな意味にもとられておりますけれども、併し運転資金などのレシーバース・サーテイフイケートというこの管財人の出す一つの証券でありますが、それによつてこれが簡便に行くということがあるのであります。今でもGHQの人もニユーヨークでやつておると言つておりますが、金利の標準にはレシーバーの出した証券がどれくらいで割引されるかということがニユーヨークの、主にニユーヨークでありますが、市中金利の標準になつておるのであります。一番低いのであります。私の行きましたときには二円以下でございましたが、これは十何年前でございます。今でもそんなものだと思います。これはどうかというと非常に保護せられまして、優先に保護してありまして、そうしていつでも返済が必ず確実だということになつておりますから、短期証券としてこれは使えると思うのであります。詳しいことはここにいろいろありますけれども、英文については読上げないことにいたします。併し日本ではこういうものを単純に出しても工合が悪いと思うのでありますが、少くとも管財人が手形を発行しまして、その手形、借入れをするいう場合に、少くともこのレシーバース・サーテイフイケートの譲渡は、管財人が発行したむので、こういう共益債権のところでこういう確実な保護を受けておるの港ということを、ぽんとスタンプか何かを押してもらうようにしておくというと簡便になると思うのであります。その規定は或いは法文には、ただ命令の定むるところによつてするということにするくらいでいいかと思いますが、そうして頂きまして、そうすると市中銀行は、それは、スタンプが押してあるので安心して割引する。そうしていつでも日本銀行が再割ができるようになりますというと資金が流れる。従つて管財人は資金を日本銀行から市中銀行を通じて十分に得られる、こういうように相成るのじやないかと思うのであります。そういう点をお考え願いますというと非常にいいのじやないかと思うのであります。大蔵省では或いはそれは余分な面倒なことだということをお話になるかも知れませんけれども、私ども多年の経験によりますというと、そこまでお考え願うことによつてこれが活きて来る、こういうふうに考えるのであります。これが第二点であります。
第三は、そういうふうにして管理をなさいますというと、管理の経費とか、それによつて直接に起る公租公課を差引きましてもなお利益金が残るわけでございます。これはこういうことがございます。実は神田銀行というのが受託しておりました後藤毛織の社債であります。岐阜にありまして今焼けてしまいましたが駅の前であります。そこに抵当権を執行いたしますときに、賃貸をいたしまして賃貸料のほかに利益金の一部をもらつたのであります。そうすると相当の利益が出て来たのであります。でありますからやはり経営管理をされますというと、相当の利益が出て来ると思う。このものによると利益金の処分について、これは更生計画に入れて定めるというだけでありまして、何ら一応のよりどころがないように思います。併しこれは一応のよりどころを考えて頂く必要があるのじやないか、こういうふうに思つております。これは英米でもレシーバーの場合、マネージヤーの場合に、やはり大体抵当権者ならば申立をしますが、その抵当権者の順序によつて、順位によつて分けているようであります。そして一般債権者に與えるものは與えるように出しておるようでございます。そういうようなことを御採用願つたらいいのじやないかと思うのであります。それは丁度日本には先例が、その法文はあるのであります。鉄道抵当法の中の八十七条にあるのであります。これだけがレシーバーが一番早く入つておるのでありますが、八十七条には「管理人ハ毎営業年度ノ終ニ於テ鉄道財団ノ收入ヨリ順次ニ管理ノ費用、管理人ノ報酬及租税其ノ他ノ公課ヲ控除シ共ノ残額ヲ抵当権者二交付スヘシ」、こういう規定が八十七条にあります。それから八十八条には「管理人ハ毎営業年度ノ終ニ於テ計算報告書ヲ監督官庁ニ差出スヘシ」それから二項が「監督官庁ハ前項計算報告書ノ謄本ヲ債務者、鉄道財団ノ所有者及抵当権者ニ送付シ且一定ノ期間内ニ異議アラハ之ヲ申出ツヘキ旨ヲ催告スヘシ」、三項には「前項ノ期間内ニ異議ヲ申出サリシ者ハ計算ヲ承認シタルモノト看做ス」、四項に「異議ヲ申出テタル者アリタルトキハ監督官庁ハ管理人ノ陳述ヲ聽キタル後之ヲ裁定ス此ノ裁定ハ終局トス」とあります。それから八十九条に「管理人ハ前条第二項ノ期間ヲ過キ又ハ前条第四項ノ裁定ヲ経タル後二非サレハ抵当権者二対シ配当額ノ交付ヲ為スコトヲ得ス」、こういうようにあるのであります。これは抵当権者が抵当権執行の形として強制管理をしたときの規定であります。こういうような大体その抵当権の種類によつて、而もその順位によつてそして差異を附け、或いは当事者が同意をした場合においては、その順位を多少変えるとかいうようにして行かれたならば、この利益金の分配その他にも役立つのではないか、こういうように考える次第であります。こういうような点も考慮されませんというと、例えば私どもよく出会つた例でありますが、抵当権者として一億なら一億、五千万円なら五千万円の債権を持つわけであります。それを何とか歩みよつて、その更生の経営計画には御協力申上げましよう。併し利息なり何かは最低のところまではお払いを願わんというと、これはなかなかこちらとしては預金の利息を払つて銀行をいたしておるのでありますから、どうも困りますというようなことで、却つてこういうようなことをすることによつて、抵当権者その他にも更生計画の同意を求めるように持つて行くこともできるのではないか、こういうように考える次第であります。
それから第四の点ですが、これは非常に大事な問題ですが、これは私は相当大幅に変えて頂かないといかんのではないかと思います。それは、大きな会社で見ますと、大体抵当権を以て或いは担保権を以て借入れ、つまり債権者は多く社債等である、或いは社債の前貸として金融機関が参加しておるのであります。これは適法に抵当権をとる。社債の場合には信託証書によつて大蔵大臣まで届出をし、物によつては認可を得てこの抵当権を設定し、社債を適法に発行しておるわけであります。而も抵当権の登記までしておるのであります。ところが社債は相当……、或いは五年とか、場合によつては、私どもの経験では十五年という長いものがあります。その間には経済界の景気不景気浮き沈みがあつて、会社更生の問題が起るというということもあろうと思います。起つた場合において抵当権者も抵当権執行を、この更生の申立をしてから手続開始の決定があるまでの間は大した問題はないのでありますが、開始決定があつてから、更生計画を立てて抵当権を執行ずることをストツプされる、これはひどいじやないか、而も原則的に全部ストツプされる。ということは、特別の事情があれば止むを得ないが、原則としてはストツプされる。これは私は非常な問題だと思うのであります。それは、一般の多くの債権者、つまり今まで申したようなもの以外の無担保債権者は、原料を貸付けたり、原料を売渡した債権者である。或いは取引をして、その半製品を持込んだ債権者である。こういうように会社と特別の長い取引のある者が多いのであります。ところがそれは、見れば会社の設備その他の抵当権、担保権があつたということは当然皆わかるはずであります。ところが会社がうまく行かなくなつたので、抵当権者が、まあ言葉が悪いですが、少し譲れというようなことで、原則的に皆ストップする、而も関係人集会で以ていろいろ多数決できめてしまう、こういうことは本当に大きな問題で、戰争中といえども、私は極力私自身の経験から言つても反対をしたのであります私の経験を申してはいけませんけれども、いろいろな命令融資というようなものがありまして、これは、臨時資金調整法、それから資金規正令、それから国家総動員法の或いは十二条でしたか十一条でしたか、あの命令についても極力反対をしたくらいであります。ところがあの命令の中にもこういう規定はありません。ところが平和になつたときに、それが一様にストップされる、特別の事情があつたというようなことで、而も登記があつて、登記は当然すべきものであるのであります。或いは動産である場合は占有されておるのであります。これが突然ストップを命ぜられるということは、全く戦争中といえどもお探しになつてもない規定であります。どこにも実例がないのであります。破産、和議のときには別除債権者としての取扱いを受けております。担保権の執行によつて弁済を受けることができぬものについては、或いは和議債権者その他で救済を受けた例もあるのであります。併し、私は別除債権者としてのお扱いを願いたいというのではありません。ところが、会社の整理、商法の会社の整理でありますが、これは佐藤長官も当時御関係になつたと思うのであります。私も丁度委員補助として出ておりまして関係したのであります殊に実例を持つて来たのでありますが、併し、あれを見ましてもこういうことが書いてある。あれでも、抵当権者に対して、競売の手続の中止とかその他をする場合には、債権者、つまり抵当権者です、一般の債権者、すべての債権者の一般の利益に適応し、且つそれらの競売申立人に不当の損害を及ぼす慮れがないものと認めるときには、例外的に裁判所は競売手続の中止を命ずることができる。その中止も相当の期間を定めて競売手続の中止を命ずることができる、こうあるわけであります。私はあの委員会の末席に出ておりましたが、実例をいろいろ申上げたのであります。この精神は私はいいと思いますけれども、当然原則的に皆ストップするのだというのでは、登記の制度もなければ、その他抵当権を附ける制度もないことになる。これは非常な問題であるのであります。戦争中といえども、ここで申して憚らないのは、戦争中といえども、こういう乱暴なことは、私どもいろいろやつて来ましたけれども一回もないのです。ここは一つお考えを願いたい。実例としてこれは一回もあつたことがありません。併し大体抵当権者としても、何といひますか、競売をするときには景気のいいときでないのであります。なかなか買手がないのであります。でありますから買手を他に探して、その競売代金を貸して上げて買取らすか、或いは一つの新らしい会社を作つて、そうして買取らせる。そうして新らしい会社を作つて買取らす場合には、買取るほう、或いは無担保債権者のうちで相当の希望者がある場合には、株を持たして一緒に参加してやつておるのであります。上毛モスリンの例もあります。後藤毛織の場合は貸付けて整理させたのであります。それでありますから、そう大きな目で見ましても、常に抵当権者が抵当権の執行を拔け駈けして、一般債権者や会社を潰すというようなお考えは要らないのではないか。大きなものについてはなかなかこれは努力が要る。それから金融機関をそう手荒くすると、その他の社債権者にいたしましても、更生できるものまでできなくなるのでありますから、お互いに歩み寄り、そこから更生計画をお立てになるべきだと思うのであります。そこでやはり私は抵当権者をすべてストツプするというのではなしに、せめて商法の会社の整理にありますようにこの会社の債権者の一般の利益に適応し、而も競売の申立をしておる者に不当な損害を及ぼさぬ場合には、一定の期間を定めてストツプしてもいい、その間に計画を立てて協力さして行く、こういうようにおさせになるのがいいのではないかと思います。そうでなくてストツプされますと、抵当債務でありますから、そう手荒くなさいますと却つて怒らせてしまう。すべてこういうことは互譲ということでやらなければならんと思います。調和して行くようなことにお考えを改めて頂きたいのであります。これは原則としてストツプするということは戦争中でもなかつたということを強く申上げます。そうして今のような会社の整理のところにあります文言などを私は申上げるのではありませんが、そういう趣旨を入れて、そういう場合には当事者の納得の行くような、或いは抵当権者の納得の行くような程度において抱きかかえて適当に譲歩させて行く。そして例外的に同意をした場合には、会社の整理の場合に挙げておりますような条件を満たす場合には、やつて頂くということならばいいと思うのであります。こういうように考えるのであります。この点は、私は戰争中でもこんなことを受けた例は一回もありません。二十八年間銀行をやつておりまして、ここに初めてこういうものを見るわけであります。これを一つ申上げておきたいと思います。
それから第五の点は社債の点であります。これは今少し社債権者との連絡をして頂いたらいいのではないかと思うのであります。これは、この社債は無担保社債の場合、商法上の社債の場合でも個々に社債権を行使させたのでは非常に弱い、千円持つているとか、或いは一万円持つているだけの社債権者では非常に弱いのであります。そこでそれを結集して、一つの祉債権者団体としてこの権利を主張さすということが必要である。そのためには社債権者団体の意思を決定する機関として社債権者集会制度ができ、而も商法上の社債についても担保附社債に倣つて、いわゆる無担保社債の受託会社、募集の委託を受けた会社というものをこしらえて、これがこの社債の償還を得るに必要な裁判所の裁判所外の一切の行為をなす権限を與えられるというのであります。これが中心になつて初めてできるのであります。昔日本アルカリの社債という問題が大正八年頃にあつたのであります。これは弱い点を逆に行つて抜け駈けをして、社債を安く買つて来て、百円くらいずつ会社に高く売り付けて金を儲けたという例があります。こういうことをさすのはやはり面白くないのでありまして、この全体から見て、全体の意向によつて動かす、それには幸いにも商法上の社債についても受託会社の制度があり、立派な権限が與えられる、受託会社は銀行又は信託会社でなければできぬということに信用の高いものにはつきり施行法によつてきまつたものでございますからこれをもう少し活用されるほうが、この更生の計画をする話の相手にも非常に楽じやないかと思うのであります。社債は記名のものは少いのであります。無記名であり、而も放している間に転々流通して売られて行くのでありまして、すべての社債権者を捉まえるということは到底できないのであります。それでたしか川崎造船所の一つの社債だけでも、あれは人は万人を超えておつたのではないかと記憶いたしております、或いは万人近いものじやなかつたかと思いますが、それを一々集めたりしたつてしようがない。新聞に公告をお出しになりましても、それで来手は少い、こういうように気付いて来る人も少いということになりますから、やはり受託会社中心主義にして更生の計画をおやりになるいいのではないかと、こう考える次第であります。
それからなお担保附社債においては担保権というものが受託会社に帰属いたしておりまして、これは非常に受託会社の社債権者団体の結合が強くなつております。受託会社の権限も強いし單に社債の弁済を受けるに必要な裁判所の裁判所外の行為をするという以外に、担保権を実行し弁済を受けるという義務まで負わしたのであります。これなどはなお更のこと、この社債権者の意向をきめるためには、受託会社を通じておやりになるといいのではないかと思うのであります。規定を見ますと、受託会社も何々をすることを得とありますけれども、得では工合が悪いのではないか、こう思つております。それからなお社債権者はこの更生に参加する者と、参加しない者と出て来るこの法案の規定によるとそういうものが出て来る、これは一体どうなりますか。担保附社債でも、商法の社債でも決議をするのは法定上の規定があるのであります。それは何もできなくなるということは、單に抵当権実行とか或いは支払の猶予、或いは和解をするとか、こういうようないい点をもやることができなくなるのじやありませんか。そこでやはり両方ししも、殊に担保附社債は強く受託会社中心に計画して行く、こういうことをおやりになるといいのではないかと思うのであります。社債につきましては、大体引受会社、受託会社になるものは銀行、信託会社でありまして、これの線を外して占有しようといたしましても、さつき申上げましたような管財人の借入金にも支障を来たし、その点うまく行かないのではないかと、こう思う次第でございます。それで何も私、長官その他と論争をする意味でもなく、お願いする意味でございますけれども、是非お考えを願つて、早急にこれが通るならば、その点を酌んで頂いてやつて頂いたら結構だと思います。そうすれば財界、殊に講和後の財界は相当不況が来ると思います。政府は非常に安心しておりますが、私は非常な不況が来ると思う。それを乗り切るためにも、一日も早くこの更生法は通して頂きたい、こう思う次第であります。
勝手なことを申上げまして、どうも有難うございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/9
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010・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 何か政府の関係者に御意見はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/10
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011・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) 私はよく知つておりますから、別に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/11
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012・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 今の第二の費用調達若しくは資金調達の管財人の手形発行、これは外国ではどういうふうになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/12
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013・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) 外国の見本は明日差上げてもよいと思います。サーテイフイケーツと言いまして、一種の有価証券であります。手形のようなものでありまして、それを銀行が割引をしまして、そうして更にそれは再割のきくようになつております。文言はここに一部だけ抜いて来ましたけれども、全部ございませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/13
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014・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それじやあとで資料を頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/14
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015・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) これは外国の場合を日本にすぐ入れるということは、ちよつとむずかしいかとし思いますが、せめてスタンプ手形、その他貿易のLCと同じくらいにまで持つて行つて、これは確実なものだということを知らすことで行つたらいいのではないかと思つている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/15
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016・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 本法の一番の穴は、立派な法律ができましても、お金の裏付けがちつともない。裁判所はそういうことは縁の遠いものですから、どうしても金の裏付けをしなければ、これは実行できないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/16
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017・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 スタンプ手形は、法的根拠があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/17
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018・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) スタンプ手形は二つあります。戰争中のスタンプ手形と前のそうでないものとあります。法的と言いますか、法律という意味ではなしに、大蔵省が指令でやつたり、或いは臨時資金調整法に基いて一連の取扱い方をきめて、それを発表してやらしたり、それから日銀が優先して割引、或いはこれは的確な手形として面倒を見る、こういうことをきめて行きまして、発表すれば、それで行われるわけであります。ここでは少くとも私はそういう手形の記載事項の所に簡單に管財人の印を押さすくらいにして頂くといいのではないかと、こう思つております。これは或いは施行令か細則でもできると思います。その程度で十分だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/18
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019・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 そうすると、臨時資金調整法の中に、何か法的に記載は……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/19
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020・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) それは記載はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/20
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021・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 特別にそれに対して優先権を與えるのでなく、ただわかりいいというだけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/21
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022・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) いや優先権を……、つまり手形はここで申請しますが、証券ですからその記載事項によつて取引しているわけであります。それを一見してそうだというのがわかればいいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/22
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023・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 だから形式だけでなく実質を伴う特権があるわけですか、そういうのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/23
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024・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) それはつまりなにがありましよう、共益債権として優先に弁済を受けるというのがあります。例えば、よくありますが、あれは会社がちよつとうまく行かない、だからこの手形は取りのけなければいかんじやないか、こういうように銀行でも、日銀でも、敏感ですから用心します。ところがそれを見るときに、管財人の印を押した手形だ、それならとれは優先に保護されておるのだからいいのではないか……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/24
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025・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 それでいいのですが、あなたの言われる仮にこの法案中に、特殊な效力を與えることをこれに規定するのには実体法ではなくて……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/25
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026・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) 私はそれでもいいと思います。ただ優先の点が請求権とありますが、法文のあれを何か借入金その他の請求権くらいして置いていいかも知れません、銀行とか何とかいうのはよく知りませんから。それから施行規則の細則の中には、手形を発行するについては、必ず裁判所の同意を求めるとか何とか、こういうことをさして確実なものだということにしておかなければいかんと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/26
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027・伊藤修
○委員長(伊藤修君) だから本法では基本的な管財人がそういう優先的支払を受け得る手形を発行できるということの、明らかに根拠を與える必要があるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/27
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028・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) それはあの中でも、管財人は業務の執行で以てこれはできると思いますが、特に明示してもらえばそれは非常に違うと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/28
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029・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それはいわゆる共益債権として優先弁済を受けられるということになれば、金融業者としても安心してその手形を割引できると思うのでありますが、ただ管財人だけで振出し場合には、なかなか内容を説いて聞かせなければ、銀行では首肯しないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/29
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030・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) そうです。これはこういうことをならして行くのには、やはり一年もかかるかも知れませんが、金融市場へ……。併しそういう方法があれば、これは念のため規定であつて、必ずしも必要ではないかも知れません。そうすれば非常に早く……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/30
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031・伊藤修
○委員長(伊藤修君) やつぱり日本人は法的根拠がないと心配しますからね。今の現行法でも発行はできると思いますけれども、その割引率が低いですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/31
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032・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/32
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033・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それから第四点の担保権のストツプの問題ですね。基本債権は仰せの通り結構だと思われるのですけれども、利息債権はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/33
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034・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) 利息債権は私どもの例では抵当権を実行すると競売法で二年となつております。ところがまあ大体一年くらいというのが普通でございます。ところがそれはその中に入れてそういうことができると思います。最終の期限が来て、社債が払われないとか、借入金が支払われないという場合でなしに、この信託証書とか、その他の金銭消費貸借契約の中に特約を入れて、会社更生の申立があつたときには、期限の利益を失うという特約を入れる、そうした場合には皆期限が来ます。この場合のことが多かろうと思います。この場合は我々でもうまくやれば、今度は支払猶予の決議をしまして、八十七条とか八十六条なんかで、そうしてなお残存期間だけはそのままやつて行く。或る場合には金利を七分であつたものを五分にまける、ものによつては西武電車が三分五厘にまけた、そんなことまでもやれる。或いは法律上一応二年間は優先に弁済が受けられますけれども、併しそれを譲歩せいというようなことは、これはできると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/34
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035・伊藤修
○委員長(伊藤修君) これは銀行でも或る程度までは御承認願えるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/35
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036・栗栖赳夫
○委員外議員(栗栖赳夫君) それからそのときに一番大事なことは、私が申上げるのはどうかと思いますけれども、日本銀行とか、どこかの銀行の人を管理委員に入れることです。実際もやつておる。そうすればこれは非常に円満に行くと思うのです。それからもう一つ私が思いますのは、これはここで申上げるまでもないと思つたのですが、これは速記をとめて……発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/36
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037・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/37
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038・伊藤修
○委員長(伊藤修君) 速記を始めて下さい。それではこの際一つ参議院の法制局長の御意見を伺いたいと思います。私がお伺いしたいのは、従来破産法、和議法、整理法と整理に関する各法律が出ておるのですが、そこへ本法が、特殊な法律が今度施行されるという場合において、これらとの関係ですね、率直に申せば、本法は整理も含んでおる更生経営手続ですが、法律が重複しやしないかという点に関して、その他本法案に何かいろいろ差支えがあるというような点がありましたら、御指摘願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/38
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039・奧野健一
○法制局長(奧野健一君) 私一個人的に考えますれば、会社の整理、特別清算、破産法上の強制和議とか、或いは和議法の任意和議というような規定を、これを十分運用すれば、この法律は果して要るかどうかということに多少の疑問があるのでありますが、まあ何か屋上屋のような気がちよつといたします。少くとも会社の整理なんというもの等については、これがあればむしろ会社法のほうから除いてしまうほうが、法律関係がすつきりしていいのではないかというふうに漠然と考えております。そこで私が憲法上心配に考えるのは、この法律によりますと、整理計画を立てて、そうして多数決によつて、まあ少数者の反対にかかわらずその者の権利を奪うて消滅せしめてしまうという建前になつておるのでありまして、これも本当を言えば、いろいろ憲法上の多少の疑義があると思いますが、これはまあ現在破産法上の強制和議及び和議法の和議の場合でも、多数決によつて少数者の権利の譲歩を強制するということになつておりますから、先例もありますので、この点はそれほど憲法上、憲法違反になるかどうかということは、先例もあることですからなんでありますが、併し只今も問題になりましたように、抵当権とか質権を持つているいわゆる更生担保権者については、これはよほど考えなきやならんのではないか。破産法でもそれから和議法でも、強制和議の場合でも、すべて今まではこれは別除権を與えて、これだけはもう非常に優遇されておつたのでありますが、即ち担保権を持つておるので、担保権さえ握つておれば、会社が破産しようがどうなろうが、殆んど自分は安泰な地位にあるわけで、担保権のない債権者は、会社を破滅せしめては自分の債権が実效を得られない虞れがあるから、これはいろいろ和解的な譲歩をするということがありますが、抵当権とか質権を持つて十分担保されておるものは、これはもう圏外に立つて別除されるべきものなんでありますが、それをこの法律じや更生手続に引ずり込んであるわけなんでありますが、これを中に入れて、場合によつてはその権利の或る部分を強制的に譲歩せしめるということは多少問題ではないかと思います。先例といたしましては、その特別和議法というような、これは私が民事局長のときこしられたのでありますが、これは担保権者といえども和議債権者に入れておるのでありますが、この法律はもう御承知のように、戰時補償打切りに基いて、各種の再建整備法、金融機関等の再建整備法と一環を成す特別措置法でありまして、これをやらないと、財界が破綻に瀕するというふうなことで殊に又その時分にはまだ旧憲法の時代でありまして、法律を以てすれば何でもできるような状態であつたので、ここに先例があるからと言つて、今度の中に特別担保権者を強制的に譲歩せしむるというのは如何かと思います。その点、それから又この手続は開始がありますと、公告をするのでありますが届けてない債権者は、全部権利を消滅せしむることになつております。これは非常に例のないことでありまして、和議法でも、強制和議でも、多数決によつて債権は半分にされますが、そこに参加しなかつた者でも、半分というふうには打切られますけれども、全然なくなつてしまうことはないのでありますが、この法案ですと、届出しない参加しない者は、もうまるまる消滅してしまうという非常に大胆な規定でありまして、又そのほかに普通の和議法或いは強制和議で一旦讓歩いたしましても、その後会社が、会社と申しますか、債務者が不誠意で、この條件を履行しない場合は、譲歩を取消すことができたり、或いは和議そのものを取消すことができるのでありますが、この法律にはそれもない、結局一旦更生計画が認可されますと、その後実行しなくても何の救済の方法がないということになつて、債権者の権利が相当強制的に剥奪されておる、この点がやはり憲法問題に多少なるのではないかということを非常に恐れておるわけなんであります。その点が憲法上多少の疑義ありと思う点であります。
それからいま一つの点は、裁判所に非常に裁量的な権能を與えておるものを拾つて見ますと、たくさんありますが、これが果して裁判官がそういう能力と言つては失礼でありますけれどもそういうことをうまくやれるか知らんということが非常に危惧され、或いは又裁判所の書記官等が或いは財産を評価したり何かしておりますが、こういうこともやれるのかどうか。或いは又裁判官が、例えば或る組の同意が得られないような場合でも、計画を修正したりして認可するというような裁量を持つたり、或いは普通ならば清算から除外されるであろうと思われるような債権者を除外してしまう、更生計画から外してしまうというような裁量権を持つておる。その他いろいろこれに類するような、裁判所の裁判官が果してそういう能力があり得るかどうかという疑点を持たれるような條文がよほどあるように見えます。それが第二点、第三点といたしまして、計画に基いていろいろなことをやる。定款変更とか、営業の譲渡とか、或いは取締役等の変更とか、資本の減少とか、新株発行、社債の発行、合併、解散、新会社設立というようなことは、すべて商法の規定にかかわらず、殊に商法の株主総会とか、或いはその他の取締役の決議、そういうものにかかわらず、定款の規定にもかわからず、法令にかかわらず、やつてしまう。これは私はこの企業再建整備法等で、先ほど申しました戰時補償打切りの場合に、旧債を棚上げして第二会社を作つたり何かした場合に、こういう非常な措置をやつた例がありますが、それ以外には例がないと思います。これを将来の恒久法として、そういう例外的な規定でやつて行こうということは、折角会社法というものを作つて、会社全体の規律をきめておるのに、この会社だけに特別なそういつたような会社法の横車のような措置を認めて、殊に例えば社債なんかやるのには一定の制限があるのでありますが、こういうものの規定にかかわらず、社債が発行できるとかいつたような、ほかの公的な考慮から出ておる、商法の規定も無視してやれるようになつておりますが、これは会社としては法の下に平等でない取扱を受けることになるのではないかというふうに思いますのと、それから最後に、だから殆んど会社法のむつかしい規定を適用しないで、計画でどんどんやつてしまうことになると、或いは八百長的に会社法のいろいろな規定を免れるために、こういう整理をやつてそのあれをやるということも考えられますし、又逆に債権者のほうでその債権届出をして、それから債権の調査をやつて異議がないということになれば、債権表に記載して、これによつて確定判決と同一の效力を持ちますから、その確定判決を待つてから、今度いよいよ計画の決議のときに反対して、更生計画がない、でただ判決を簡單にやるということに利用される虞れはないかということもちよつと疑問になります。それと又逆に、会社のほうで計画を認可してもらつて、債権者の債権を譲歩してもらつて、それからあと利用しないことになりましても、先ほど言いましたように、取消しというようなことはありませんから、半分になつた債券でまけてもらつて得をするというようなことで、会社のほうからも悪用されはしないかといつたようなことが多少心配になるわけでありますが、なお個々の規定についてはいろいろありますが、大きな点について心配と思われる点を述べたのであります。併しまあこれは司令部等においても非常に推奨しておるようでありますし、今栗栖さんも言われたように、これによつて非常に財界の役に立つということであれば趣旨においては非常に結構ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/39
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040・鬼丸義齊
○鬼丸義齊君 今日は実は私もこれから急に総会があつて待つておりますから、二人がいなくなるとあなた一人になりますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/40
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041・伊藤修
○委員長(伊藤修君) それでは栗栖さんの発言許可はこの前たしかお諮りしてあつたかと思いますので、若しお諮りしてなかつたら今日お諮りして御承認を得たものとしてよろしうございますか。
それでは本日はこの程度で散会いたします。
午後三時三十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215217X00419511122/41
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