1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月十四日(水曜日)
午前十時三十三分開議
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議事日程 第十六号
昭和二十六年十一月十四日
午前十時開議
第一 社会保障制度推進に関する決議案(中山壽彦君外六名発議)(委員会審査省略要求事件)
第二 国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
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001・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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002・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
この際、お諮りいたします。昨日大隈信幸君から外務委員長を辞任いたしたいとの申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/2
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003・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。
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004・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) つきましては、この際日程に追加して、常任委員長の補欠選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/4
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005・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/5
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006・油井賢太郎
○油井賢太郎君 只今の常任委員長の補欠選挙は成規の手続きを省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/6
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007・木村守江
○木村守江君 私は只今の油井君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/7
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008・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 油井君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/8
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009・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長は外務委員長に有馬英二君を指名いたします。(拍手)
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010・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) この際日程に追加して、証券取引委員会委員長の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/10
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011・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。去る五日、内閣総理大臣から、証券取引法第百六十六條の規定により、島居庄藏君を証券取引委員会委員長に任命することについて本院の同意を求めて参りました。本件に関し同意を與えることに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/11
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012・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本件は同意を與にることに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/12
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013・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 文部大臣から京都大学事件に関して発言を求められました。この際発言を許します。天野文部大臣。
〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/13
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014・天野貞祐
○国務大臣(天野貞祐君) 天皇陛下の京都大学御視察に際し、一部学生のとつた行動について御報告をいたします。
天皇陛下には、御巡幸第二日の十一月十二日午後一時十八分、京都大学玄関前に御到着遊ばされ、お召自動車から御下車になり玄関に入らせられました。その直後に、奉迎のため玄関前に整列していた約千五百名の学生のうち約百五十名の学生は、入口の空のお召自動車を取囲み、プラカード数本を押立てたり、平和を守る歌などを合唱したりいたしました。学校当局は直ちにこれらの学生に退去を命ずると共に、警察官の出動を要請いたしましたので、警察官が出動し、これを鎮静させると共に、お満筋を確保することに努めました。この間陛下には、教授たちの御進講をお聞きになり、学内の御視察を終えさせられて、午後二時十三分、予定より十三分遅れて同大学をお立ちになりました。
以上のような状況で、陛下の御到着までは学生も平穏にお迎えしたので、学生の右のような行動については陛下のお目にはとまらなかつたのであります。なおお立ちの時間が十三分遅れましたのは、以上の学生の整理に手間取つたからではなく、学内で学長、学部長の御説明が多少予定より長引いたためでございます。かような事件の起りましたことにつきましては何とも申訳なく存じておりますので、取りあえずここに御報告をいたす次第でございます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/14
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015・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、社会保障制度推進に関する決議案(中山壽彦君外六名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題といたします。本決議案につきましては、中山壽彦君外六名より委員会審査省略要求書が提出されております。発議者の要求通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/15
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016・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対上趣旨説明の発言を許します。中山壽彦君。
〔中山壽彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/16
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017・中山壽彦
○中山壽彦君 只今上程になりました社会保障制度推進に関する決議案につきまして、発議者を代表いたし、私よりその趣旨を御説明申上げたいと存じます。
先ず第一に決議案を朗読いたします。
社会保障制度推進に関する決議案
国民福祉の向上と民生の安定を基本とし、民主的社会の平和と繁栄をはかることは日本国憲法に一貫せる精神である。いまやわが国は講和條約を転機として自主独立の日を迎えんとしている。尚條約の前文にも、日本国の安定と福祉の向上は誓約せるところである。従つてこのことは、ひとり国民のためのみでなく、日本が、国際社会の一員として民主主義的信頼を得るためにも必要な條件である。
かかる意味において向後の日本においては社会保障制度の推進が一層重視されねばならない。客年十月社会保障制度審議会は政府に対し社会保障制度に関する勧告を行い、さらに去る十月その重点的な推進について第二次勧告を行つた。
政府は速やかにこれら勧告の趣意を尊重し社会保障制度の推進をはかるべきである。
特に、直面する国民生活の実情に鑑みるとき、国民医療の確保をはかることが社会保障制度としての最大緊急事である。何となれば現在国民は個々の力をもつてしては医療費の負担に耐え得ないのであつて、これが即ち貧困の最大原因をなしているからである。しかるに、これをまもるための健康保險、国民健康保險等の医療保險制度は財政的危機におそわれ、将に崩壊の寸前にある。かかる現状に照らし、医療保險の健全性を維持し、かつ、その普及充実をはかるために強力な施策を講ずることは刻下最大の急務である。これがためには政府は万難を排し尠くとも医療保險の給付費に対しては速やかに国庫負担の措置を講ずべきである。
右決議する。
御承知の通り社会保障制度審議会におきましては、昨年十月我が国の社会保障制度確立に関する勧告を行なつたのであります。当時二十六年度の予算はすでに確定をいたしておりましたが、結核予防に対しまする対策費は、大体勧告案の線に沿い八十億の予算が計上をされまして、現にその実行を見ておるのであります。
今や我が国は講和條約締結を契機といたしまして、新たに自主独立の日を迎え、国際社会の一員として発足いたすことに相成りましたため、社会保障制度の実現は国民のひとしく待望いたしているところであります。昨年の勧告案の内容は広範囲に亘つておりまして、これを全面的に実施いたしまするためには多額の国費を要するのであります。我が国財政の現状に照らし、これを全面的に実施いたしますることは困難が伴うことと存じます。従つてこの社会保障制度審議会におきましては、先ずその急施を要しまする事項より推進をいたし、漸次その全面的の実現に移らんとする理想の下に、明二十七年度には如何なる点に重点を置くべきかと数次検討を加え、先月二十日第二次の勧告を行なつたのであります。この勧告におきまして、予算の措置を要しまするものは、戦争犠牲者に対する援護費と社会保險の医療給付費の国庫補助の二項目とであります。前者に対しましては、すでに本年度の補正予算にその調査費が計上をされておるのでありまするから、明年度において必ずや相当の措置をされることと存じております。併し後者に対しましては、一昨日堂森議員の質問に対しまして池田大蔵大臣は、今はなお明確に答弁をするの段階に至つていないということを申されております。我が国民の日常生活を顧みますると、国民医療を確保いたしますることが社会保障制度としては最大の緊急事であるのであります。然るに健康保險、国民健康保險等の医療保險制度は今や財政的の危機に襲われまして、極めて窮屈なる運営に陷つておるのであります。私は政府がこの点に特に留思をされて、万難を排し、明年度の予算に医療費国庫負担を計上されるべきであると存じます。かくして初めて医療保險制度の健全なる発達を期し、同時に国民生活の安定を図り得ると存ずるのであります。
次に健康保險、国民健康保險等の運営状況を申述べて見たいと存じます。我が国における健康保險法は、昭和二年の一月より実施をされ、すでに二十六年の歴史を持つております。この間多少の消長はありましたが、終戰を契機といたしまして適用事業所も増加をいたし、又従つて被保險者も殖えまして、現在におきましては政府管掌の健康保險の被保險者は三百八十万に達し、組合管掌み被保險者の総数は三百万であり、又これらの扶養家族の数は千二百五十万に達しておるのであります。更に又国家公務員共済組合の被保險者の数は二百三十万、船員保險の被保險者は十数万でありまして、これを加えまするというと、九百三十万の被保險者の数に達し、その扶養家族の千八百万を加算をいたしまするというと、約二千七百万の被用者関係の人々が現行保險制度のいずれかにおいて医療給付の対象となつておるのであります。
終戦後急激に起りました社会不安と国民経済の動揺とによりまして、保險を利用いたしまする率が非常に高まつたのであります。由来我が国民の富の程度は、遺憾ながら欧米先進国の国民に比較いたしますると劣つております。これに反して罹病率は非常に高いのでありまして、終戦後被保險者の受診率は著しく高まり、その医療費は私どもの想像以上の巨額に上昇いたしたのであります。現行保險制度におきましては、保險料によつて賄い得ることに相成つておりまするので、この医療給付を支拂いますることのできないような状態に陷つたのであります。前々国会に論議されましたように、保險料を値上をするとか、或いは一部負担を増加いたしまするとか、或いは又制限診療をいたしまして、保險の診療費の上昇を防止するとかいうような方法は、現在の世相においてはでき得ない実情にあるのであります。社会保障制度審議会におきましては、その勧告の中に、現行の健康保險、国民健康保險、失業保險、船員保險、労災保險、国家公務員共済組合等、これらの保險制度を適当に統合をして事務の簡素化を図りますと同時に、無駄な費用を節約し、根本的の建直しをいたさなければならんということを要請いたしているのでありまするが、保險経済はこの実現を待つまでの時間がないほど危機に瀕しているのであります。更に国民健康保險で申しますると、一層その経営が困難になつているのであります。国民健康保險は昭和十三年七月に、農山漁村の少額所得者を被保險者の対象として実施されたのでありますが、これ又終戰後の影響は、只今申述べました健康保險と同じようなコースを辿りまして、非常な経営難に陥つているのであります。昭和十八年、法の強化をいたしまして、国民健康保險の結成されました組合の数は全国で約一万を算し、その被保險者の総数は四千六百万人に及んでおつたのでありまするが、今申上げました理由によりまして、だんだんに組合の休止、廃止が続出いたしたのであります。健康保險は保險料が事業主と被保險者と半々負担をいたしておるのでありまするが、国民健康保險におきましては、被保險者がその全部を負担いたしておりまするので、一層保險経済は困難に相成つたのであります。政府は二十三年に法の改正をいたしまして、この組合をば市町村に移管をいたし、又保險料を保險税として徴収するような改正を加えまして、この組合の維持を図つたのでありまするが、なかなかかような方法ではその目的を達することができ得なかつたのでありまして、現在におきましては組合の総数が約四千九百、被保險者の総数が二千四百万、当初の半分に減退をいたしたのであります。この残された四千九百の組合も、真に活動をいたしまして、その使命を遂行いたしておりまする組合は約その三分の一と伝えられておるのであります。二十三年に市町村に移管をされました当時、全国の組合の赤字は二十六億に達してこれが引継がれております。この二十六億の大部分は医療費の未拂いの額でありまして、この赤字は現在におきましても、全然解消されておりません。このように健康保險、国民健康保險共に経営難に陷つていることを御了承願いたいと思います。
私は、現在イギリスにおいて行われておりまするいわゆるビヴアリツジ氏の社会保障制度を我が国に移すというような意思は全然ございません。我が国は我が国情、民度に適応したものでなければならないのであります。かようなわけでありまするが、只今申述べました通り我が国民は貧困であります。又四囲の環境から罹病率が高いのでありますから、せめて病気にかかりましたときには、たやすく医療を受けられるように医療保障をいたしますることは、もとより一大緊急事と私は信じておるのであります。医療給付費の国庫二割負担ということは決して少額のものではございません。又我が国現在の財政状態において、この額を捻出いたしますことの容易でないことは承知をいたしております。併しながら政府当局が断乎としてこれを決意いたしましたならば、いずれかの方法においてこの金額は捻出し得ることを私は信じておるのであります。税を軽減をいたしますることは全国民の要望いたしておるところでありまするが、病気の際にたやすく医療を受け得るということは、国民に大きな減税をいたしたと同じ結果をもたらすことと私は考えておるのであります。かような点から、私どもは社会保險制度の健全なる発達により、国民の福祉と生活の安定のでき得ますことを念願いたしておるのでありまして、社会保障制度審議会におきまして、このたび第二次の勧告案を作成いたしましたことも、かようなる理念において行われたのであります。
又近来、社会保障制度審議会の勧告を待つまでもなく、全国の町村長或いは又保險に関係のありまする各種団体の人々が、中央に、地方にそれぞれ大会を開催いたし、医療給付費二割国庫負担の決議をされておりますることは、皆さんの御存じのことと存じます。これは全く今日まで社会保險を経営されておりました人々の尊き体験に基きました結果であると私は信じておるのであります。私ども議員の立場において、この全国的の世論を尊重し、その実現に対しましては全努力を傾注いたさなければなりません。又私どものごとく国会より社会保障制度審議会の委員となり、勧告案を作成いたしました立場においては人一倍その責任を痛感いたしておるのであります。これらの理由によりまして、今日ここに参議院各派代表者各位の御賛同を得て、この決議案を提案するの止むなきに至つたのであります。どうか皆さんにおかれましても、この決議案の趣旨を十二分に御理解を賜わり、満場一致を以て御賛同下さいますることを私は衷心よりお願いを申上げる次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/17
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018・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 本決議案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。山下義信君。
〔山下義信君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/18
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019・山下義信
○山下義信君 私は日本社会党を代表いたしまして、本決議案に対し賛成の意を表せんとするものであります。
社会保障制度が今日窮乏せる我が国に果して実現し得るや否やという論者があります。日本におきましても、封建軍閥が久しく無辜の民を欺瞞し来たつたその慈善恩恵政策から、自由資本主義が労働大衆に妥協を求めた二十数年来の社会保險時代を一応経過し来たつたのでありますが、今日に及びましては、かかる姑息なる方法を以てしては到底国民大衆の福祉を増進し得ない段階に突入し参つたのであります。
社会保障制度は資本主義社会崩壊の支柱であるという説もありますが、我我といたしましては、一には生存権の確保という基本人権の立場から、一には民主主義国家の本質である生活保障の立場から、更に第二次大戰以来各国のとり来たつた所得再分配の重要政策といたしまして、本制度の完全実施を主張して止まざるものであります。(拍手)併しながら、窮乏日本の現状におきましては、互いにその窮乏を分ち合い、互いに力を協せ合い、これを生産性に直結せしめ、日本再建のために本制度を前進せしむべきであると考えるものであります。
実は我が国の社会保障制度は、今一歩というところに来ておるのであります。他の列国に比較いたしまして、決して遜色のない制度の確立が期待し得られるほどの素地があるのであります。政府は何が故にその今一歩という努力を惜しまんとするのでありますか。現行制度を一瞥いたしますと、社会保險は八種類に分れ、所管省は五省に跨がり、その保險内容は種々複雑雑多でありまして、極めて難解であります。保險料の支拂方法も区々でありまして、被保險者自身ですらよく樣子がわかりませんくらいで、従つて自然保險経営がルーズと相成つて行くのであります。現在勤労者一人の支拂います保險料は、月額にいたしまして、健康保險に対して二百七十円、失業保險に百円、厚生年金に九十三円と、平均一カ月四百六十三円、年にいたしまして五千五百五十六円を納めておるのであります。被保險者九百万といたしますと、年間四百九十九億の保險料を納めておるのでありますが、この五百億の保險料及び百億に及ぶ一部負担金にも、ことごとく所得税が課せられておるのであります。国は勤労階級からかくのごとく巨額の徴收をなしながら、二の種保險制度に対しまして、若干の事務費を除きましては、実質的には一文の負担もいたしていないのであります。これでは余りにも冷淡でありまして、保障制度があるとは義理にも言えたわけではないのであります。又しばしば問題になりまする労働者の厚生年金積立金も、この春三百六十六億円となつておりましたが、今年度末には四百八十八億円に達すると予想されております。これ又未だに還元融資の要望が容れられておりません。この厚生年金制度をどうするか、積立金方式でよいか惡いか、給付開始の近接に当りまして、これが改善は目前に追つておるのであります。
かくて現行制度の最大の欠点は、全般に亘りまして一貫せる理念と体系がなく、ばらばらの状態に置かれおるのでありまして、非能率、不均衡のままになつておるのでありまするから、先ほど提案者が申したように、これを社会保障制度として統一組織化し、国家財政の許す限りこれを援助いたしまして、各種保險加入の勤労者並びにその家族を合して三千万の勤労大衆の生活保障を確立いたし、更にこれを中小企業者、農民等に及ぼしまして、日本再建の基礎條件としますことは、けだし当面の急務であり、且つ国家当然の責務であると信ずるものであります。なお崩壊寸前にあると言われる国民健康保險のごとき、苦心惨但せる町村は六千を超えております。一般の加入者二千五百万人に及ぶのでありますが、政府は一方においてその設立を奨励しながら、他方危機の救済に対しましては我関せず焉では、全く無責任のそしりを免れ得ないと存じます。
以上はその一端を申述べたのでありますが、然らば幾何の国費を投ずれば、やや目鼻が付くかと申しますれば、いわゆる医療給付の二割負担といたしますと、健康保險において政府管掌三十七億、組合管掌二十八億、国保五十一億、共済二十二億、船員保險一億、計百四十億であります。我々の希望はまだまだありますけれども、これが一応勧告の線となつておるのであります。この国庫の負担が実現いたしますれば、どうなるかと申しますと、保險経済は確立いたしまして、健康保險におきましては、現行の保險料率を千分の六十から千分の五十八に引下げることができるのであります。国保におきましては、その普及が順調に進みまして、その利用者は三千七百万人に増加することができるのであります。政府はこの大利益がありましても、なお且つ躊躇する理由がどこにあるでありましようか。
私はこの機会に社会福祉関係の対象者を申上げておきたいと思います。最近の統計によりますと、生活困窮者は二百十万に増加いたしております。加えて身体障害者六十六万五千人、孤兒その他の收容兒童が二十五万人、その他保護を要する児童が百五十万人、悲惨なる未亡人母子が百八十万人等、国家扶助の対象者は六百三十万に達し、その他或いは病床に呻吟して社会保障制度の確立強化を首を長くして待つておる者などを加えますと、実におびただしい数に上るのであります。如何に本制度が重要であるかを御了承願いたいのであります。然るに政府は本年度予算におきまして、僅かに七%、四百数十億を振向けたに過ぎないのでありまして、一昨日の我が堂堂森議員の質疑に対しましても、大蔵大臣は如何にもそれで十分であるかのごとく申されておりますが、財政上に占むるその割合が西ドイツの三五%、イギリスの二六%、アメリカの二二%は別といたしましても、一〇%以下であるという国は一つもないのでありまして、審議会がこの上僅かに三百数十億を奮発するだけで一応の社会保障制度ができると勧告いたしましても、一向に耳を傾けようとしない現政府の態度は、全く文化性の低劣を暴露するものでありまして(拍手)どうしてもこれをやらぬというならば、民生安定などという看板は引下ぐるがよろしいと私は思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)岡崎官房長官は閣僚懇談会を作つていろいろ調査していると、しらじらしい答弁をされましたが、本当に良心を以てさようにおつしやることができるのでありましようか。政府は具体的には何ら研究をいたしてはいないのであります。人或いは英国の例を引いて、我が国において社会保障制度を実施せんはユートピアを夢見るものであるということを言う者がありますが、世界の社会保障制度は何も英国式に一定したものではありません。又我が国におきましては、新たにこれを創設しようというのではないのであつて、すでに現行諸制度の下地のあることは何と言つてもその強味とするところでありまして、従つて徒らに厖大なる国費を要し、これをやれば国が破産するようなことを申しまして、社会保障制度の恐怖病にでもかかつたような人がありますが、例えば池田さんのごときはそれでありますが、恐らく大蔵大臣は無知で言うのではなくして、殊更に言を左右にいたし、国民の窮乏に頬かむりして行こうとするのでありましようが、どうか本決議案によつて閣僚諸公は飜然と覚醒し、善心に立返り、(拍手)少くとも明年度予算におきましては、社会保障行政の一元化、医療保險の強化、社会福祉の充実、戰争犠牲者の援護等積極的に推進されるよう、関係閣僚を通じ強く政府に要望して止まないものであります。我々は幾十万の軍隊よりも、社会保障こそ最上の安全保障であると確信するものであります。(「そうだ」「よく聞け」と呼ぶ者あり、拍手)
本日の決議案は自由党諸君が賛成し、殊に提案理由の説明に立つて、與党みずからこの決議案に参加する以上、その実行について重大なる政治責任のあることを指摘いたしまして、私の賛成演説を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/19
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020・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 石原幹市郎君。
〔石原幹市郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/20
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021・石原幹市郎
○石原幹市郎君 只今上程に相成つておりまする社会保障制度推進に関する決議案に対し、私は自由党を代表いたしまして賛成の意を表せんとするものであります。(拍手)
今や我々は講和條約締結を契機といたしまして、国民待望の独立の日を迎えんとするものでありますが、国民福祉の向上を図り、且つは世界の信頼に応えるためには、今後日本は健全なる民主主義社会の発展のために、更に格段の努力をいたさなければならないと思うものであります。これがためには産業、経済の繁栄を図ると共に、一面国民としてそれぞれ所を得しめ、個々的にも生活の安定が確保されることが基本的な前提條件と考えるものであります。国民のすべてが欠乏と恐怖から解放された真に安定した健康なる社会への発展こそ、民主日本の今後歩むべき指標と言わねばならんと思います。このことはすでに憲法の上にも宣示されておる基本精神でありますが、かかる見地より勘案いたしまするとき、社会保障制度の推進こそは今後ますます重視されなければならん問題と思うのであります。
先ほど来お話のありましたように、社会保障制度審議会は、憲法の上に示された生活保障の見地に立脚し、昨年十月社会保障制度の全面的整備に関して勧告を行なつておりますが、去る十月二十日、再度社会保障制度の推進に関する勧告を行い、現下の情勢に対応して重点的な実施を政府に要望しております。我々は審議会のかかる努力に敬意を表すると共に、これが実現を待望する国民の世論に鑑み、速かなる社会保障制度の整備を熱望して止まないものであります。もとより近年政府の努力と相待ち、社会保障制度は漸進的な進展を見つつあるのでありまして、本二十六年度においても結核対策の推進その他前年度予算に比し、百億円以上の社会保障関係予算の増大をみておりますことは、国民福祉向上の見地により誠に喜びに堪えないところであります。
而して、現在社会保障制度としてなされなければならないことは、戰争の打撃の深刻なりし日本として余りにも多いのでありますが、又一方国民経済力乃至国家財政も窮乏を極めておりまことは言うまでもないところであります。従つてこの際社会保障制度はその緊急度に従い、重点的に且つ集約的に実施すべきであり、他は年次的に完成を期するほかはないと考えるものであります。かかる観点において国民生活の現況に鑑みるときは、国民医療の確保を図ることこそ最も緊急を要する当面の問題と考えられるのであります。勿論これに対しては、現在被用者については健康保險、一般国民については国民健康保險の制度があり、又生活困窮者については生活保護の制度があることは言うまでもありません。併し健康保險等の制度はいずれも財政の逼迫を来たし、特に国民健康保險のごときは今や崩壞の危機が叫ばれているところであります。又生活保護法による医療扶助は増大して止まず、保險制度の崩壞はこれに拍車をかけんとしておるのであります。若し保險制度の瓦解をみんか、その影響するところ極めて重大と言わねばなりません。今日個人の力を以て医療費の負担に耐え得る者は殆んどないと言つても過言でないと思うのであります。医療は進歩し、国民所得は極めて低位にあります。而も結核は国民を重圧しております。ために医療費は貧乏の、貧困の最大原因となつておるのであります。
御承知のごとく国民健康保險制度は、昭和初頭における農山漁村不況対策の一環として、我が国独特の構想の下に生れ出たものでありまして、今日まで民生の安定に重大なる役割を果しつつあるものと信ずるのであります。而も社会保障制度の確立が叫ばれ出しましてから、国民健康保險こそは社会保障制度の中核的存在としていよいよその重要性を認識せられておるのであります。
今やすべての国民が医療費の負担におののいているのであります。従つてこの際健康保險、国民健康保險等の医療給付の健全な発展を図り、これを全国民的に普及せしむることは刻下喫緊の要務と言わなければなりません。国民をして医療費の負担の脅威から解放し、その生活の安定を図ることは現下最大の社会保障と言わねばなりません。これがためには、これら保險制度の医療給付費に対し、国が応分の負担を行うことが緊要の必要事であると存ずるものであります。かくして、これら医療保險制度の健全な発展普及を図ることは、国民をして自主的に医療費負担を解決せしむるための最善の方途であり、他面生活保護のごとき公費負担による医療扶助を節減せしめ、爾余の社会保障制度推進の基盤をなすものであると確信いたすのであります。
以上の趣旨を以ちまして本案に賛成の意を表せんとするものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/21
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022・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 藤森眞治君。
〔藤森眞治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/22
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023・藤森眞治
○藤森眞治君 只今議題となりました決議案につきまして、私は緑風会を代表いたしまして簡單に賛成の意見を申述べたいと存じます。
社会保障制度審議会が設置されまするや、国民はこれに対して非常な期待をかけてその成果を待つたのであります。漸く昨年十月審議会から政府に対して社会保障制度に関する勧告を行いますると、国民一般はこれがすぐにも実現されるものとして、それのためには、たとえそれが全面的に十分なものでないといたしましても、少くも国民生活の安定と福祉の向上の上に大きな光明を與えるものであると信じて、喜んで一日も早くその実現を希望したのであります。ところがこれに対する過去一年間における政府の態度はどうであつたかと申しますと、残念ながら極めて消極的なものであつて、国民の満足に値いするものが大してなかつたのであります。この点は皆さんもすでに御承知の通りだろうと存じます。
勿論これには現在の我が国の国情或いは国家財政等々の点から意のごとくならなかつたということも考えられないでもないのでありまするが、併しそれに籍口して徒らに日を空しくすることも許されないのであります。即ち万難を排して解決されなければ、国民生活の基礎を危くする虞れのある問題が今まさに目睫に迫つていることを我々は直視しなければならんのであります。去る十月二十日の社会保障制度推進に関する第二次勧告は、このために行われたものと思うのであります。
それでは、第一次勧告によつて何ができたかと申しますると、まだ十分とは申せませんが、比較的忠実に且つ勧告案の線に沿うて実現いたしておりまするものは、結核予防対策があるのみだと申上げても過言ではないのであります。併しこれとてもまだ漸く軌道に乘りかかつたという程度で、今後における相当強力な推進がなければ、到底所期の目的を達することができない状態にあるのでございます。社会保障制度の実施に対して余り積極的でない現政府が、国策として結核問題を取上げましたことは吉田内閣の大きな業績であつて、この功績は国民も率直に認めるところであると思うのでありまするが、併し近頃吉田総理が結核予算についてとかくの批判を加えられたとかいう噂がありましたり、又厚生大臣が結核予防法について疑点を狹まれた等の問題がありまして、国民は現政府の結核対策の方針が変るのではないかと非常な不安を持つておりまするが、併し今日この決議案が政府與党の自由党を中心といたしまして、同僚中山議員によつてこの社会保障制度推進の提案がされましたことによりまして、国民の疑惑もここに一掃されるだろうと思われるのであります。
社会保障制度審議会の第二次勧告の主要点は、決議案文にもありましたように、国民医療の問題であります。殊にその中心点は医療保險の危機打開に関する国庫負担の点であります。一昨日本議場におきまして、同僚堂森委員からの社会保險、なかんずく健康保險、国民健康保險の危機に対する医療給付費の国庫負担の緊急質問がありましたが、池田大蔵大臣はこれに対して、医療給付費に対する国庫負担は今の財政状態から見ると、直ちに給付費まで国が或る程度負担することはお答えしかねる、こういうふうにこれを否定した答弁をされております。この医療給付費に対する国庫負担の問題が国民挙げての熱烈なる要望であるにもかかわりませず、大蔵大臣によつてすげなくしりぞけられたふとにつきましては、私は多大の失望と極めて遺憾の意を表するものであります。これはひとり私だけでなく、恐らく満場の皆樣も御同感であつたことと思うのであります。(拍手)
併しながら幸い今日は間髪を入れず、政府與党の自由党が中心となりまして本決議案が提出されまして大蔵大臣の答弁にもかかわらず、この点を強く推進されることに相成りましたので、私は釈然として国民と共に喜ぶものであります。自由党の諸君のこの機宜を得た措置をとられた賢明を讃えると共に、(拍手)今後の万全を期せられんことを切望いたしまして、本決議案に全幅の賛意を表するものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/23
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024・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 谷口弥三郎君。
〔谷口弥三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/24
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025・谷口弥三郎
○谷口弥三郎君 只今提案されました社会保障制度推進に関する決議案に対しまして、私は国民民主党を代表して賛意を表するものでございます。
昨年の五月に社会保障制度審議会が設置せられまして、その後愼重審議の結果、我が国の社会経済事情並びに日本国憲法第二十五條の本旨に鑑みまして、緊急に社会保障制度を整備確立するの必要を認めまして、同年十月十六日に吉田総理に対しまして、社会保障制度に関する勧告をしたのでありますが、不幸にもまだ総合的に見るべき反応がないのであります。従つて去る十月二十日に更に社会保障制度の推進に関しまして、九項目に亘つて勧告をしておりましたところ、自由党の諸君は国民医療の確保を図ることが社会保障制度としての最大緊急事なることにお気付きになりまして、今回の本決議案に対しましては、特に同党の長老の中山壽彦君をして提案説明の重任を負わされまして、なお従つて本案可決後は十分責任を持つて措置する決意を示されていることに対しては大いに敬意を表するものでございます。(拍手)
私ども国民民主党におきましても、これまで社会保障制度実現の一日も早からんことを念願いたしまして、種々計画はしておりましたが、まだその実現を見ませんうちに、提案者の説明の中にもありましたように、健康保險、国民健康保險その他医療保險は共に財政的危機に陥りまして、まさに崩壊の寸前にあるのでございます。
先ず健康保險から申上げますというと、ペニシリンとか、パスとか、マイシンのような新らしい特効薬ができましたが、経済上の関係からいたしまして、その使用に手加減を加えんければならん状態でございまして、例えば化膿性の病人を手術いたします場合に、ペニシリンを用いる腹膜炎を予防し得ると思いましても、保險診療ではこれが許されませず、又肺結核患者にパスとマイシンを併用いたしますと、著しい効果があることはわかつておりましても、保險ではこれが認められないなど、治療上又は患者取扱上差別診療のような状態になりますので、担当医師は良心的な医療が施しがたく、患者からは折角の希望である完全治療が行われないために、或るときは患者自身がその高価薬を買求めまして治療を受けるような場合も出て来るのでございます。それかといつて被保險者の保險料率は、只今千分の六十という国際的にも例を見ないほどの高率を課しておりまする関係上、これ以上引上げることは絶対不可能であるのであります。一方診療報酬は、昭和二十三年七月の賃金ベースが三千七百円当時に決定しました一点單価大都市は十一円、そのほかは十円というのに釘付けされておりますために、税金の必要のないところの公立病院におきましてすら、昨年度は平均一割程度の赤字を出しております。本年に入りましてからは三割を超えるところの赤字でありますため、その従業員の月給も近々支拂不能の状態に陷りますので、今直ちに適正なる医療費の値上げができませんならば、折角であるが社会保險の診療は断わりたいと言つているのでございます。又私立大学などにおきましても、社会保險の患者数が六割まではその不足分を普通患者の収入で賄うことができますが、それ以上になると赤字になるからして、お断わりする以外に方法はないと言つているのでございます。開業医は公立と違いまして高い税金が加算されておりますために、而も医療費の支拂いが遅れますため、種々工夫いたしまして、先ず生計費を切下げまして、使用人を減らしまして、昭和二十四年頃には平均二人くらいの看護婦その他の人々を雇うておつたのでございますが、現在は一人も雇えないという医者が次第に増加しておるのでございます。而も医者は日進月歩の医学に遅れぬために医学雑誌、図書などの購入の必要もございますが、これが不可能でありますので、その上良心的な医療を施すことができぬようなれば、いつそ社会保險医を辞退したほうがいいと、悲壯な決意を固める者がだんだんと多くなつて来ておりますので、今までに私の知つておる範囲だけでも山梨、千葉、栃木、長野、群馬、茨城、埼玉、新潟、東京、京都、福岡、長崎、佐賀、広島、岡山、奈良、三重、石川、富山、神奈川など二十府県の広範囲に亘ります。なお次々と拡大しておりますので、若しこれらの地方におきまして、保險医の総辞職が決行されました場合には実に憂慮すべき事態が起ることと思いまして、一昨日平澤厚生政務次官が堂森議員の質問に対しまして答弁されましたような生やさしい時代ではないのでございます。政府当局におかれましても十分これらの点を考慮されたいのでございます。
次に国民健康保險におきましても、保險料の收入が惡い結果、その結果は直ちに担当医師に転嫁されまして、昭和二十二年から只今までの医療費の支拂不能額が、累計いたしまして二十六億八千万円という額に達しておる状況でありますから、一日も早く国庫で医療給付費二割の補助がなければ、もはやその事業は継続不可能であると言つておるのでございます。政府はよろしく人命尊重の本義に基きまして、速かに社会保險における制限診療を撤廃いたしまして、診療内容の向上を図り、給付費の大幅国庫負担の実現を断行いたしまして、適正な社会保險医療費を確立して、以て医学、医術の高度活用ができるように努力すべきである旨を政府に警告して、私の賛成演説とする次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/25
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026・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 須藤五郎君。
〔須藤五郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/26
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027・須藤五郎
○須藤五郎君 私は日本共産党を代表いたしまして、社会保障制度推進に関する決議案に賛成するものであります。(拍手)
なぜならば社会保障制度を確立し、国民の健康と生活を守ることは憲法の精神であり、又全国民の要求でもあるからであります。だが現状はどうでありましようか。この際私は特に健康保險の問題について強調したいと思います。即ち現在健康保險の適用を受けておる労働者の賃金は月平均六千八百円でありますが、このうちから三%、又事業主が同額の三%の保險料を出し合つておるのであります。この貧しい労働者の保險料が一〇〇%労働者の医療費に向けられておるかどうか、実はその四八%は事業主が当然負担すべき傷病手当に使われ、残りの五二%が労働者の医療費に使われておる状態であります。これは私の友人が最近結核にかかつて入院した話でありますが、ストレプトマイシン等の注射で完全な医療をしようすると、ほかの医療費として一日四百円、月に一万二千円も取られ、とても安月給では肺病にはなれないと歎いておる次第であります。これはほんの一例に過ぎません。又保險医に対する税金は、抑えない場合は保險組合からの支拂を差押えをするほどのきびしさであります。最近の労働強化と低賃金のため患者は増加するばかりで、保險積立金は食いつぶされ、医師への支拂は滯りがちであります。このため一部では一点の單価十円を十八円五十銭にしろ、或いは保險料を上げろとの声も上つておりますが、月收六千八百円の労働者が二倍に近い医療費の負担に堪えることができるでありましようか。我が党は労働者の健康を守り、良心的なる医療を守る立場から医療費の全額国庫負担と保險医に対する税金の基礎控除をこの決議案に併せて要求するものであります。
次に結核病床の不足についてでありますが、我が国には二百万人の結核患者がおり、これには最低三十万のベツドが必要とされておるのでありますが、僅か十万床、更に三百数十万戸に上る住宅の不足は、絶対安静の患者まで健康な人との雑魚寝を余儀なくされ、患者の吐き散らす病菌は隣り近所の人々をも蝕ばんでいるのであります。政府はこれらの貧困と疾病に悩む労働者に僅か二十数億の結核療養費を與えているだけであります。これは実にB二九の一機の製作費にしか当らないのであります。又生活保護法に計上されている予算は僅か二百十億であります。このたびの補正予算には一文も組んではおりません。これは東京療養所の最近の例でありますが、生活保護法を受けている引揚の結核患者に二千三百円の自己負担を申渡している事実もあります。以上のように金がなくては医師にもかかれない、薬は高くて買えない、家では落着いて寝ていられない貧困な患者は、怪しげな薬を飲んで僅かな気休めとしているのであります。その買薬による治療者は昭和二十三年八月に全疾病者のうち三〇・五%、二十五年九月には四一・五%と年々増加しておる状態であります。
このような例は日本だけではありません。戰争と貧乏があり、労働者の基本的人権が蹂躪され、その所得が低下しているところはすべて同じであります。これは第一次大戦後のアメリカの古い数字でありますが、週給六・五ドル以上の労働者の年間疾病日数は五・八日でありますが、收入が四・五ドルに下りますと、疾病日数は一二・七日と二倍以上の増加を示して来ているのであります。日本国民はこのような悲惨の中に置かれておりながらも、なお且つ戰争に負けたんだから、占領下だから仕方がない、講和條約が結ばれたら占領制度はなくなり、平和な国になり、よい医者にもかかれ、薬も安く飲めるだろうと、歯を食い縛つてひたすら講和の日を待ち望んで来たのであります。併しながら先日政府が衆議院を通過させたところの平和と安全保障の二條約は、貧困と疾病に悩む国民の期待に対し一体何を報いているのでありましようか。和解と信頼の美名とは全く逆に、安全保障條約の結果、————————————————————その軍事基地とする以外の何ものでもありません。その証拠として、伝えられる行政機構の改革は、この屈辱的條約に反対する愛国運動は必至と見てか、これを彈圧するための警察予備隊、特審局、国家警察等、治安機構のみを一強化し、半面国民の最も希望する社会福祉、保健衛生、民生安定の行政を縮小し、又は廃止し、或いは国立病院、療養所の仕事を地方に押付け、地方財政を破綻させ、ますます社会保障制度の危機に拍車をかけているのであります。(「それが條約だ」と呼ぶ者あり)
およそ軍備拡張と社会保障制度の充実は全く対立するものであります。イギリス労働党のペヴアン氏も、四月二十二日内閣を去るに当り、予算は非常な浪費を伴う軍事予算を基準に立てている。これは労働党の誇りとする社会事業計画を打壊わそうとする初めであると述べているのであります。日本においても例外ではあり得ません。この矛盾を急速に理解した国民は、先月二十九日労働組合及び医師会を中心として社会保障医療国民大会を開き、軍備費、警察予備隊の予算を社会保障費に廻せ、医療費を国庫負担にせよと政府に対し大きな抗議運動を進めることを決議したのであります。満場一致で可決されるであろうこの決議案を空文にすることなく、これを推し進める一つの途は、政府がこれら平和と独立を求める国民の声に耳を傾け、平和国家再建への努力を妨げる單独講和と日米安全保障條約を廃棄し、(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)全面講和條約を締結することこそ最大の社会保障制度確立への途であることを賛成議員諸君に訴えて、私の決議案賛成の討論とするものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/27
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028・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論ば終局したものと認めます。これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/28
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029・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本決議案は全会一致を以て可決せられました。
只今の決議案に対し、厚生大臣より発言を求められました。橋本厚生大臣。
〔国務大臣橋本龍伍君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/29
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030・橋本龍伍
○国務大臣(橋本龍伍君) 社会保障制度の向上充実は極めて緊切な重要問題でありますので、政府といたしましても、勧告の御趣旨に副うべく検討しつつ進んで参つた次第であります。昨年勧告せられましてから、差当り現行の制度に基きまして、逐次その内容の整備強化を推進して参つた次第でございまするが、これを更に一層強化推進して、是非決議案の御趣旨に副いたいと考えております。
国民福祉のために社会保險の充実強化が切望せられております今日、健康保險の收支も相当骨であり、又特に国民健康保險の現状が極めて困難な状況にありますので、疾病保險の健全強化が差迫つての必要であると考えまして、二十七年度予算におきましては、給付費に対する国庫補助及び国民健康保險の赤字対策につき努力中でございます。決議の御趣旨に副うように極力善処いたしたいと存じております。(「よろしい、答弁よろしい」と呼ぶ者あり)
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〔河崎ナツ君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/30
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031・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 河崎ナツ君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/31
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032・河崎ナツ
○河崎ナツ君 私はこの際社会保障制度推進に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/32
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033・菊川孝夫
○菊川孝夫君 私は只今の河崎ナツ君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/33
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034・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 河崎ナツ君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/34
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035・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。河崎ナツ君。
〔河崎ナツ君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/35
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036・河崎ナツ
○河崎ナツ君 私は只今社会保障制度推進に関します決議が満堂各派の皆樣の御賛同によりまして可決され、又これに対しまして精進するという政府の宣誓を得ましたことは心から喜びに堪えない次第でございます。それは言うまでもなく、独立日本の目標は自立経済の確立と健全なる社会の育成にあり、従つて産業を発展せしめると共に、国民一人々々の最低生活が確保されることがその基本條件であり、社会保障制度はここにかかつていることにしおいて、今日の決議は持に意義の深きを感ずるのでございます。それにいたしましても、私はここに二、三の疑点につきまして政府の所信をお聞きいたしまして、一層はつきりと心から喜びたいと思うものでございます。
その第一点は、昨年の勧告案には戰争犠牲者、わけても働き手に死なれた妻と遺兒の問題が取り外されておりまして、多くの未亡人とその子供たちを淋しがらせていたのでございましたが、今度の勧告案にも、又推進の決議にも、戰争犠牲者の援護を進め、又政府もすでに一億円を計上いたしまして、その実態調査に当る気がまえを見せて下さいましたことは、何としても朗報の大いなるものでございます。元軍人、軍属の遺族、家族、傷痍者たちへの相当な援護は当然のことでありまして、今日まで放置して参りました責任は実に政府に大いにあるものと思うものでございます。来たる二十七年度には、これらのかたがたに対しまして、速かに予算措置を講ぜられんことを望んでやみません。併し私はここに次の事実を述べまして政府の考慮を促すものでございます。と申しますのは、戰争犠牲者の三分の二近くは遺族未亡人とその子供でございます。又その三倍近くが遺族ならぬ引揚未亡人、戰災未亡人であり、一般未亡人とその子供らでございます。これら百七十余万人の未亡人と二百万に近い幼いその子供らとの生活が、このたび遺族未亡人とその子供らの集団から取り残される驚きに、今全国未亡人会の騒然たる声を私は耳をふさぐわけには行かないのでございます。一方はお国に召されての死であり、他方は戰災に会い、又病に死んだ相違はあつても、残された子供とその母は共に頼りの少い子供とその母親であります。皆、国を継で大切な子供であり、共にその養い手の母たちであります。ところで日本ではその九五%までが生活技能を持たされていない女性である未亡人の子供を抱えての生活には、ややもすると今日二十万人に及ぶ集娼、散娼に繋がりやすく、東京では集娼の三分の二、名古屋では半分に及ぶ子供をかかえた売笑者を数えるということを宮城タマヨ氏の調査が報告しております。又全国旅館に働く二十七、八歳以上のお座敷女中の殆んどはこれらの未亡人で、その子供を細腕に養つたり教育したりして、一縷の望みをその将来に繋いで、佗しい生活を雄雄しく生き抜いております。これら雇用婦人は他の雇用婦人と共に実に七十万人に上るものでございますが、その生活の逼迫は、その生活を暗い日々に引落さないと誰が保証し得るでございましよう。聞くところによりますると、政府はこのたび勅令第九号によりまして取締られておりましたところの売笑に関する処罰令を講和締結と共に法律化して、不法に強いた者は三年以下の懲役若しくは十万円以下の罰金に処して取締る親心を見せようと準備しているとのことでございますが、これには自分の意思で就業する者はその限りでないと、言外にちやんと大きな抜け穴を掘つてはあるにいたしましても、一応はかく不法者を処罰して、強いられた女を守る親心があることは喜ばしいことでありますが、それならばなぜ百尺竿頭一歩を進めて、かかる途を選ばずとも生きて行けるように、未亡人たちをしてその生活への支柱を、社会保障制度の内容として一日も早く準備しようとしないのでありましようか。スウエーデンもイギリスもニユージーランドも、すでに太くこの支柱を立てております。日本と同じく戰いに敗れましたフインランドもドイツも、今やこの生活の支柱の準備に努めております。池田大蔵大臣は、全未亡人とその子供にまでその実態調査を拡めるため、予算の一億円を更に増すつもりはございませんでしようか。更に又近く組まれるであろう二十七年度国家予算に、これら全未亡人とその遺兒のために、よしささやかなりとも、先ず一本の生活支柱をお立てになる熱意はございませんでしようか。且つ又関係厚生大臣はこれら未亡人とその子供への遺兒年金或いは母親年金について何かの企画をお持ちでありましようか。謹んで御所見を伺いたいと思うものでございます。
第二に、社会保障制度推進と関連いたしまして現下の日本では人口問題の解決を抜きにしてはできないことは言うまでもありません。第二次勧告案にも指摘されております日本の人口問題につきましては、アツカーマン博士も指示するごとく、その第一方法として妊娠調節を取上げることにあります。これは婦人の生活に曾つてないかかわりのあることでありまして、今日婦人は政府のこれに対する施策を注目しております。一昨二十五年度には二十六万人、昨二十六年度には五十万人の妊娠中絶者のあつたことは、待ち切れずに踏み出した庶民行動の別方面の一端であります。その最も多くが経済的理由であり、従つて勤労階級の多くが、その生活安定のために適切な指導を待ち抜いておることは今日の事実であります。厚生省は先に調節の薬の検定をされましたが、もはや今日はこれが実行指導をなすべきのときではありますまいか。これに対する厚生大臣の御所見をお伺いいたします。若しこれが指導に進まれるとするならば、如何なる方法を考えておいでになるでありましようか。一昨年の国会の自由討議に、日本医師会の一議員のかたは、日本の若い助産婦四万人を各県の医師会がそれぞれ再教育して、各家庭で個々に指導をさせてはと語つておいでになりました。又諸方の保健所ではすでに相談室を設けて、その相談に当つている所もありました。アメリカでは薬局に別室を設けて、薬と器具を売るかたわら、良心的な指導をしておる報告を受けております。それは主として西欧諸国にも見受けられたことでございました。一体政府は如何なる施策を考えておられるでありましようか。私の恐れておりますのは、今日地方の各地に参りますと、薬屋がその宣伝班に自家の薬と説明の幻燈機を担がせて、薬の効果九五%と吹聴し、やや良心を欠いた方法、指導をして廻つているのを至る所に見る事実でございます。如何に統制撤廃、自由放任好みの御時世とは言え、無責任な方法と薬で勤労庶民のふところと、女性の肉体とを荒し廻るに任せておいてよいものでありましようか。あえて諸事に経綸多き橋本厚生大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
更に私は、日本の今日社会保障のすでに推進して来たところの一角が危く崩れかけておる事実を指摘して、岡野国務大臣の考慮を促したいと思うのでございます。日本の社会保障制度の面ですでに大きく実施に踏み出しておりますのは、兒童福祉事業であり、その保護施設でございます。ところでこの保護費が、ドツジ氏の示唆による地方平衡交付金に盛込まれていることによつて兒童の上に流されて来ず、福祉施設の貧しい不幸な兒童と、これを養護しておる婦人勤労者の三十余万人が一昨年このかた日々にますます干ぼしになりつつある事実でございます。このことは一昨年来私のしばしば指摘したるところでありまして、地方財政のやり繰りのため、他に流用されることのないように平衡交付金の枠から取出して、生活保護法による補助金のように、じかに兒童の福祉に生かされるようにと、岡野国務大臣にもたびたび申上げたのでありましたが、二十六年度予算にもこの措置がなされず、今や大臣の無関心が積り積つて、この六月の調べでは、保護費の五カ月、六カ月未拂い、又は支拂遅延の施設が何と三十県七十四カ所に及んでおります。又保護兒童を断わつたり、保護するのを避けるという事実が十七県二十三カ施設に見られます。又保護費の徴收が不当に強かつたり、さては費用の拂える富裕兒童に限定するといつた、施設の精神と逆行する事実が五県に六カ施設も現われてさえ来ておるのでございます。その他十八県に二十七事件の逆行事実、併せて計百三十施設に起つている非人道事件のほかに、私立経営者はこれが切抜けに私産を傾け盡してさえおります。日本の社会保障制度の哀れなる一事実でございます。昨年厚生委員会で岡野国務大臣は、善処を促した私に答えて、私も考えている、手許にも少しは事例があるが、もつと事例を示して欲しいと言われたのでありましたが、以上百三十六事例ではまだまだ不足でございましようか。(笑声、拍手)それとも又これは不憫だと、二十七年度からは平衡交付金の枠から取出して、じかに不幸な兒童たちを守り抜き、以て日本の社会保障制度を実あらしめることに努められるお考えはおありでありましようか。又一方施設の所管大臣であるところの橋本厚生大臣は、如上の事実に対して如何なる手を打たれたでございましようか、BCG接種待つたを宣言したり(笑声、拍手)公務員の首切りに忙しくて、それどころではないとでも言われるのでございましようか。(拍手)大臣が十三万人の首切りに專念しておられる間に、一方には三十万人の施設の兒童と、その薄給なる養護勤労婦人とを文字通りに干ぼしにしていることをお考にはなりませんか。橋本厚生大臣の御所見をお伺いいたしたいと存じます。
以上を以ちまして、私の社会保障制度施設推進に関する質問とするところでございます。(拍手)
〔国務大臣橋本龍伍君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/36
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037・橋本龍伍
○国務大臣(橋本龍伍君) 河崎議員の御質問にお答えをいたします。
第一は、一般の未亡人を如何に援護するかという問題でございまするが、これに関しましては、お話のございましたように、戰残者遺族たる未亡人につきましては、目下遺族及び傷痍軍人等に関しまする援護の法案を立案中でございまするので、これでかなりな程度に生活の基礎の確立という点もできるかと存じております。一般未亡人の生活保障の点に関しましては、御指摘のございましたような問題を未亡人のかたがたから私もいろいろお話を承わつております。今日の生活保護法、兒童福祉法を初めといたしまして、関係諸法令を強化いたしますると共に、母子寮、保育所、授産所等を拡充して対策を進めておるのであります。目下のこの対策で十分であるとは思いませんが、こういう面の対策を充実して参るつもりでおります。お話のございました一般未亡人について年金を給したらどうかということにつきましては、これは生活保護法の建前その他から見まして、よほど考えて見なければならないと思つております。今日のところ実効的な方策を講ずる段階まで考えておりません。
次に、受胎調節の問題でございますが、受胎調節の普及につきましては、従来とも優生結婚相談所の整備でありまするとか、指導者の養成、知識の普及等の種々対策をとつて参つたのでございますが、これは誠に御指摘のように微温的なものでございまして、私は今日の日本の人口問題、御指摘にございました人口問題という観点から、或いは海外でよく言われますように、日本の人口が多過ぎるのだ、日本の国民の生活に困るのは人口が多いせいだというふうに考えたくないと存じております。やはり今後日本の資源の開発、貿易の拡充、移民というようなものに進んで参りまして、より多くの人口が世界で仕合せに暮し得るようにするのが本体だと思つておりますが、ただ今日の現実の姿といたしまして、敗戰後特に多くの人口が日本の四つの島の中に閉じこめられましたこの現状におきましては、やはり受胎調節が非常に必要であるのでありまして、特に最近の数字で、人工妊娠中絶が極めて激増の傾向を辿つているということは、その母体に及ぼす影響についても誠に考慮すべきものがあつて、人工妊娠中絶をするくらいならば、先ず受胎調節をできるだけ積極的にやらなければならないことを明らかに示すものでございます。優生保護法によりまする正規の届出によります妊娠中絶が昭和二十四年には約二十五万、二十五年が約四十九万、二十六年が六月末までで三十万九千であります。誠に面白くないことではございますが、正規の届出のございまするものと殆んど同数くらい、隠れて人工妊娠中絶が行われているのではないかと考えられるのでありますが、こういたしますと、年に百万人にも及ぶ人工妊娠中絶があり、折角妊娠してから体を傷めて中絶をするというふうなことは、公衆衛生の見地から見まして、母体の保護の面で極めて積極的に受胎調節の普及を行う必要を示すものでございますので、去る十月二十六日の閣議で決定をいたしまして、政府といたしまして、受胎調節の普及を新らしい観点から積極的に行うことにいたしました。ただその実施に当りまして、いろいろ社会風教に及ぼします影響でありますとか、河崎議員から御指摘のありましたように、確実で、そうしてこれがまじめな方法で経費も安く適正に行われるように十分考慮すべき点がございまするので、近く有識者の意見等も参考といたしまして、その具体的な方法をきめまして、強力に推進して参りたいと考えております。
それから最後に兒童福祉費の問題でございますが、これは私も兒童福祉費を平衡交付金から外して、單独の補助にする必要があると思いまして、二十七年度の予算にも、夏以来その考え方でこれを組みまして、今日まで努力をいたして参りました。私は関係の向きにつきましても積極的にいろいろ相談をいたし、働きかけました結果、大体河崎議員の御要望の通り実現のできるものと今日では考えております。(拍手)
〔国務大臣岡野清豪君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/37
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038・岡野清豪
○国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。
只今厚生大臣から御答弁申上げました通りの事情になつておりますが、河崎議員から先般の国会でお尋ねがございましたときに、私が申上げましております通り、平衡交付金法は昨年初めて出発いたしたものでございまして、まだ実施日なお浅くて、その結果を見ております次第でございますが、僅かの期間とは申しながら、いろいろ遺憾の点があつたことは皆樣御承知の通りでございます。その点におきまして、私は平衡交付金法を改正する腹案を今検討中でございまして、お説は十分考慮しておりまして、その結果が厚生大臣の答弁に現われたような情勢になつておりますから、河崎議員の熱烈なる御示唆はすでに政府としても織込まれまして、寄り寄り協議中でございまして、恐らくお説の通りのような結果が出て来ることと存じますから、暫く時日をおかし下さることをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/38
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039・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 大蔵大臣の答弁は他日に留保されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/39
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040・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第二、国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長平沼彌太郎君。
〔平沼彌太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/40
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041・平沼彌太郎
○平沼彌太郎君 只今上程せられました国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
先ず本案の内容について申上げます。全権委員等に至給する旅費、即ち日当、宿泊料、食卓料及び支度料の定額は全権委員等の使命の特殊性等に鑑みまして、一般の場合の旅費の定額といたしますことは妥当でありませんので、先般の平和條約締結のための会議に際して、国家公務員等の旅費に関する法律の附則第十項の規定に基きまして、政令を以て臨時に増額せられたのでありますが、これはこの法律が改正せられまするまでの暫定措置でありましたので、今回この政令を廃止すると共に、国家公務員等の旅費に関する法律を改正して、政令と同樣の規定を設けようとするものであります。
さて、本案の審議に当りまして、委員諸君から熱心な質疑があり、これに対して政府委員からそれぞれ懇切な答弁がありましたが、その詳細は速記録によつて御承知をお願いいたします。質疑を終了し、討論に入り、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました次第であります。
右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/41
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042・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/42
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043・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時十五分散会
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○本日の会議に付した事件
一、常任委員長辞任の件
一 常任委員長の補欠選挙
一、証券取引委員会委員長の任命に関する件
一、京都大学事件に関する文部大臣の報告
一、日程第一 社会保障制度推進に関する決議案
一、社会保障制度推進に関する緊急質問
一、日程第二 国家公務員等の旅費に関する法律の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101215254X01719511114/43
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