1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年三月二十日(木曜日)
午前十一時二十五分開議
出席委員
委員長 仲内 憲治君
理事 近藤 鶴代君 理事 並木 芳雄君
足立 篤郎君 石原 登君
大村 清一君 北澤 直吉君
中山 マサ君 福田 篤泰君
水田三喜男君 守島 伍郎君
小川 半次君 西村 榮一君
林 百郎君 武藤運十郎君
黒田 寿男君
出席国務大臣
国 務 大 臣 岡崎 勝男君
出席政府委員
外務政務次官 石原幹市郎君
外務事務官
(大臣官房長) 大江 晃君
委員外の出席者
専 門 員 佐藤 敏人君
専 門 員 村瀬 忠夫君
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三月十九日
委員林百郎君辞任につき、その補欠として今野
武雄君が議長の指名で委員に選任された。
三月二十日
委員飛嶋繁君、樋貝詮三君、戸叶里子君及び今
野武雄君辞任につき、その補欠として石原登君、
足立篤郎君、西村榮一君及び林百郎君が議長の
指名で委員に選任された。
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三月十九日
千九百二十七年九月二十六日にジユネーブで署
名された外国仲裁判断の執行に関する條約の締
結について承認を求めるの件(條約第三号)
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する
件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律
案(内閣提出第八八号)
外国人登録法案(内閣提出第八九号)
の審査を本委員会に付託された。
三月十九日
出入国管理令反対に関する陳情書外五十九件
(第九〇六号)
同外二十七件
(第九〇七号)
同外十七件
(第九〇八号)
同外六件(第
九〇九号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセ
スで署名された議定書によつて改正された麻薬
の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一
年七月十三日の條約の範囲外の薬品を国際統制
の下におく議定書への加入について承認を求め
るの件(條約第二号)
外務公務員法案(内閣提出第四五号)
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する
件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律
案(内閣提出第八八号)
外国人登録法案(内閣提出第八九号)
国際情勢等に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/0
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001・仲内憲治
○仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。
まず外務公務員法案を議題といたします。本案につきましては質疑を終了しておりますので、ただちに討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。近藤鶴代君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/1
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002・近藤鶴代
○近藤委員 ただいま議題となりました外務公務員法案に関し、私は自由党を代表いたしまして賛成の意見を述べたいと存じます。
平和條約発効の日も近づいており、わが国としては外交再開に備えて諸般の準備を怠つてはならないのでございます。諸外国との平常な外交常時関係を維持するにあたりまして、この重要な国務を担当する外務公務員の職責は国の内外各地にわたるのでありますし、また外交機密の重要性を考慮しますとき、外務公務員を規律する外務公務員法を制定し、国家公務員法に対するある程度の特例を規定することは当然であると思います。従いまして委員会の審議中常に問題となりました大公使、政府代表、全権委員等の人選には適正を期し、また人事審議会委員の選任については、その職務遂行の公正が期せられるように、政令制定の場合に十分考慮して、適当な人選をされるよう政府に要望して、本案に賛成の意を表するものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/2
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003・仲内憲治
○仲内委員長 並木芳雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/3
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004・並木芳雄
○並木委員 わが改進党においては、本外務公務員法案を慎重に検討した結果、結論として條件をつけて賛成することに決定いたしました。しかし昨日もそうでございましたが、本日もそうであるごとく、本法案に対する審議については政府当局のみならず、與党の態度というものは、われわれから見て非常に不満足な点が多いのであります。かくのごとき重要法案を提案をしておいた政府当局においては、所管の大臣は一度も首を出しておりません。この法案は、吉田外務大臣に対してわれわれとして要望する幾多の点があるので、絶対にその出席を求めておつたのでありますけれども、これに応じなかつたということははなはだ残念であります。従つて幾たびかこういう点を考慮して、われわれとしてはあ法案に反対してやろうかとずいぶん考えたくらいでありますけれども、政局の事態というものは、やがてわが党の天干になることも間近いことと考えますから、こういうことを考えますと、一概に血気にはやることもあとで因る場合も出て参りますので、結論としては條件をつけて賛成ということになつたのであります。
講和條約が効力を発生しまして、外交関係が復活し、大使、公使その他の外務公務員を諸外国に派遣することのできる道が開かれるということは、これは私どもひとしく喜びをわか点でございます。それについては、国家公務員法で十分足れりという主張もあるでしようけれども、これは政府の答弁にもありました通り、国家公務員法制宗当時において、すでに外務公務員に対しては特例法を設ける措置というものは予定せられたことでございまして、外務公務員の特殊性にかんがみて、その特例法として新たに外務公務員法案を提出されたことに対しては、私どもは反対はないのでございます。これを検討した結果、要するに私どもとしては運用いかんにかかつて来る点が多いというのでございます。ただいまも近藤委員からその点に触れられておつたようでありますけれども、大使、公使その他の任免に関する事柄、あるい人事審議会の人選、その運営などについては、十分これを運用する上において効力を発揮するように望むものであります。特に大使、公使その他の任免は、外務大臣の専権に属しております。外務大臣がこれを申し出て、そうして内閣が行うということになつておりますので、外務公務員に対する人事を一手に外務大臣が掌握するといつて過言でないのであります。特に現在のように外務大臣と総理大臣が兼務しておるときにおいては、一層その人事が一手に握られてしまつて、他から制肘する道が開かれていないという点は、よほど考慮していただかないと、一方に偏した人事が行われるおそれがあるのであります。こういう点は吉田首相がなかなか外務大臣のいすを讓らない、なるほどとうなずける理由の一端になるのであつて、私どもとしてはかわいそうに岡崎国務大臣は遂にうなぎのにおいをかがされたばかりで、つなぎ船のように専任の外務大臣になれないで世を過すのではないかと思う。実際この外務公務員法を検討してみると、総理大臣と外務大臣を掌握した者は、事外交に関しては専権を握つてしまうのであつて、この点については私どもじかに吉田外務大臣に対して要望しようと思つたのです。それが出て来ないために、その要望も届かないということははなはだ残念であります。とくとこの点を吉田首相兼外務大臣に伝えてほしいと思います。
それから人事審議会の構成、選任などについては、わが党の小川委員からも特に質問もあり、要望もあつたのでありますけれども、これもあつてもなくてもいいような審議会に終らないように、その人選については十分この法案の目的とするところが達せられるように留意してもらいたいのであります。そうでありませんと、外務公務員にせつかくなつた人々の身分、給與、そういうものを保障する道がとざされてしまう。せつかく人材を得て、これから民主外交、国民外交の基礎をつくつて行こうとする外務公務員法案のねらいも、水泡に帰するのではないかと思うのであります。その他数え上げますと、相当要望する点がありますけれども、私どもはとにもかくにも講和條約発効を日前に控えておる際でございますし、大公使その他を送る道を開かれた点を喜びとして、この法案が成立したあかつきには、十分運用の妙を発揮するということを期待し、かつ要望しつつ、本案に賛成の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/4
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005・仲内憲治
○仲内委員長 林百郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/5
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006・林百郎
○林(百)委員 私は日本共産党を代表して、この法案に反対するものであります。
反対の第一の点は、この法案によりますと、大使、公使の任免はもちろん、選考による外務職員の任命制をとることによつて、外務公務員の任免の実権はまつたく外務大臣の掌中に握られておるのであります。さらに官職の格付も第五條によりますと、これは外務大臣の掌中に握られておるのでありまして、これはあたかも外務省の中に外務大臣という天皇があつて、そのもとに外務省という天皇制をしくのとまつたくかわりがないのでありまして、これは明らかに天皇制の官僚機構の復活以外の何ものでもないと思うのであります。しかもこの外務省公務員法が将来再び日本の全公務員の制度として、これが採用せられる一つの先例をなすものであるというふうにわれわれは考えるのであります。ということは、昨日の夕刊にもあつたように、日本の行政機構の改革あるいは日本の公務員法に対する新しい忠誠、誠をささげる忠誠制度を設けるというような、政府の意向から考えましても、これは單に外務公務員だけの問題ではなくして、この天皇制的機構が日本の全官僚機構に及ぶのではないかというふうに考えるのであります。しかもこの外務大臣の独裁制を強化する一つの方法として、査察の制度があるのでありますが、この査察制度はこれはまつたく徳川時代の幕府の密偵の制度とかわりがないのでありまして、外務大臣がみずから使命したところの査察使を国外に派遣いたしまして、この査察使の報告に基いて必ず外務大臣は必要な措置をとらなければならないということが規定してあるのであります。こうなりますと、良心的な外交官はまつたくしりぞけられまして、もう外務大臣の鼻息をうかがうに汲々たる茶坊主的の外交官のみが用いられることは明らかであるのであります。ことにこの査察使というのは、外務大臣が自分で選ぶことができるのあでりますから、吉田外相のごとく、非常に側近制度をたくらむことのすきな人は、この査察使に自己の側近、たとえば白洲次郎とかあるいは麻生和子女史とか、こういうような人をかりに用いたとするならば、日本の外交はまつたく吉田一家の私物となるのでありまして、かくのごときは日本の外交を一外務大臣の専断と私物に化す道を法制化することになるのでありまして、こういう点からいいまして、われわれはまつたく民主主義に逆行するような本法案には、第一にこの点において反対するのであります。
第二の点は、機密の漏洩の点でありますが、外交の機密を漏洩した者は一年以下の懲役、三万円以下の罰金に処するとあるのでありますが、これはさらに第十九條によりますと、外務職員が外交の機密を漏洩して、国家の重大な利益を毀損して懲戒処分を受けた場合に、それに対する不服の申出は、一般の公務員のように人事院に提訴する道がとざされまして、外務人事審議会の審議にかけるということになつております。ところがこの外務人事審議会の審議は、法案によりますと、まつたく秘密であつて、しかも黒田委員からも指摘がありました通り、弁護人すらつけることができない。しかもこの外務人事審議会の委員五名のうち過半数である三名は、みずから懲戒処分に付した外務大臣が任命することになるならば、この外務大臣の処分に対して不服を申し立てるという道は、実質的にはまつたくとざされているのであります。これはもう切捨てごめんの封建時代の大名と家臣との関係と何らかわりないのであります。こうなりますと、良心的な外務公務員はまつたく機密の漏洩の名のもとに、いつでも懲戒処分に付せられ、追放されるということになつてしまうのであります。それでは今の吉田外交の外交の機密というのは一体何をさすのであろうか。吉田外交は国会と国民の意思を無視して行政協定を締結しまて、日本をアメリカの植民地とし、日本を中国、ソビエトを仮想敵とした反共の軍事基地にして、さらには最近のアメリカの上院の討議を見ますと、明らかにアメリカの首脳部では、将来日本と李承晩と蒋介石等のアジアの亡命諸政権と太平洋同盟を結成するということをすでに公然と表明しておるのでありまして、このことは日本の国土と国民をあげて反共の侵略戦争のえじきにしようということであります。これが要するに吉田外交の外交機密なのであります。このようなことは、むしろ外交の機密の名のもとに、日本の国を外国の植民地と軍事基地に提供するということを、国民の目から欺瞞するものでありまして、こんな秘密はあばくことこそが、むしろ国民の利益になるのでありますが、こういう吉田外交の機密を、懲役と罰金、あるいは懲戒処分によつて守ろうというのが、本法案の一つのねらいだと思うのであります。
さらにわれわれが憂べきことは、外務省が、おそらく将来設けられる日米合同委員会の事務を担当する担当行政官庁となると思うのでありますが、そうなりますと、行政協定の第二十三條によりまして、米軍の軍機保護の名のもとに、たとえば記録の保持というようなことの責任すら、これを負うことになるの零ありまして、行政協定第二十三條によりまして、新しいアメリカ軍の軍機保護の立法、あるいはその他の措置による取締りが、厳重に外務省にかかつて来るのであります。そうすると、実質的には、外務省の機密漏洩れというのはアメリカ軍の機密ということになるのでありまして、これはむしろ日本の国家の利益というよりは、アメリカ軍の利益を、機密を守るということになるのであります。(「こじつけだよ」と呼ぶ者あり)これはこじつけでも何でもないのでありまして、外務省が合同委員会の事務を担当する限り、これは明らかに外務公務員法による取締りと、行政協定第二十三條によ、る取締り、この二軍の取締りが来るということは、否定できないと思うのであります。そうして日本の外務省でありながら、実際はこれはアメリカの国防省の下請機関となり、アメリカの秘密特務機関となることは明らかだと思うのであります。私はこのようなまつたく外国の軍の機密を守らなければならないというようなことが、外務職員の重大な圧力になり、外務省がまつたく外国の国防省、あるいは国務省の下請機関になるようなことを法則化しているところのこの法案には、賛成できないのであります。これが反対の第二の点であります。
第三の点は、本法案によりますと、外務大臣は外務省本省並びに在外公館に外国人を採用することができるという規定があるのであります。この外国人は、ただいま吉田内閣がとつておる外交方針、要するに向米一辺倒的な吉田外交の行き着くところを考えますと、これはアメリカ人を採用するということは、想像にかたくないのであります。しかもこれが相当の重要なる地位につけられるということも、またわれわれは想像がつくのであります。ところがこの外務省に採用された外国人が外交の機密を漏洩した場合には、これは公務員でないという名のもとに、まつたく刑罰を科する道が開かれておらないのであります。日本人は外交の機密を漏洩したといつて、懲戒処分にし、刑罰を科しておきながら、外国人に対しては、われわれの国費で、まつたく実質的には外務公務員と同じ待遇、同じ地位にありながら、日本の外交秘密を漏洩し、国家の重大な利益に毀損を與えた場合の刑罰規定がないということは、これはまつたく買弁的な法律だと思うのであります。このことは行政協定の中におけるところのいわゆる治外法権、あるいは行政協定中にアメリカ人が日本の国内において、日本の反国家的行動に出た場合も、それが駐留軍あるいはその関係者であると称することによつて、日本の国の政府としては、外国に追放する処置のとり得ないことと相まちまして、まつたく吉田内閣の屈辱的な植民地的な態度を天下に表明する以外の何ものでもないと思うのであります。われわれは昨夜これを十分検討したのでありますが、たとえばこの第二條の「この法律において「外務公務員」とは、左に掲げる者をいう。」という中に、七として、特に外務省において採用した外国人は、この法律に関する限りは外務職員と同一の取扱いをする。という規定を入れるか、あるいは第二十七條の中に、本処罰規定については、外国人であつても外務省に採用されている者については、日本の公務員と同様にみなす。という規定を入れることによつて、外務省が採用している外国人に対して、機密を漏洩し、国家の重大なる利益をを損した場合の処罰の道というものはあり得るのであります。その措置を故意にしてないということは、これは明らかに日本の国がまつたく対外的に植民地的な立場にあると、むしろ法律の上からも表明することになると思うのであります。このような屈辱的な法律に対しましては、日本の国民の名誉にかけても、われわれは断じて賛成することができないのであります。
以上の三点からいたしまして、私はこの外務公務員法については賛成をすることができないのであります。岡崎国務大臣は非常にうれしそうな顔をして聞いておられますが、何がうれしいのか私にはまつたくわからないが、かような屈辱的な法律については断固反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/6
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007・仲内憲治
○仲内委員長 黒田寿男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/7
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008・黒田寿男
○黒田委員 私は結論から先に申しますと、本案に反対であります。反対の論点といたしまして、ただいま並木君並びに林君が申されましたことを、第一点として援用したいと思います。次に、残された問題につきまして、多少私の見解を申し述べてみたいと思います。
反対の第二点——それは昨日政府に質問したことと関連するものでありますが、私はこの法律案の第九條に憲法違反の疑いがあると思うのでありまして、どうも昨日の政府委員の御釈明では、私には納得できないものがあるのであります。それについて私少し申し述べさせていただきたいと思いますが、この大使及び公使の信任状及び解任状、全権委任状を天皇が認証するとしてありますことは、これは憲法の定めるところで当然のことでありますが、「領事官の委任状」まで天皇の認証を要するといたしましたところに問題がありはしないかと思います。これはしかし研究事項として申し上げるのであります。私ははつきりと憲法違反とは申しません。しかし憲法違反の疑いがある、多分に疑いを含んでおると私は思うのであります。その点を明らかにしてみたいと思います。そのために、第一に私は実質論としてこれを論じてみたいと思います。それから第二には憲法の條文の配置の形式上から見て、憲法違反の疑いがある、この二点から論じてみたいと思うのであります。
元来認証というものは、内閣または内閣総理大臣の権限に属する行為につきまして、その事実の存在を公に証明するために天皇の行う行為である、このように私は理解しております。行為それ自身が非常に重要な行為でありますから、特にその行為に荘重さと尊厳さとを與えるために、すなわちその行為に権威あらしめるために、このような天皇認証という形式をとるというのが、私はこの認証の制度の設けられたゆえんであると考えるのであります。ただこの点につきましては、行為の存在を公に証明するにとどまるという議論と、そうでなくて、天皇の認証が一つの意思表示として創設的な効果を持つ、言いかえれば、その行為の効力発生の要件になるという議論もありまして、このように両論がありますけれども、しかしそれには今日深く触れる必要がないと思います。しかし、どういう解釈であるといたしましても問題があると思います。ただいま申しましたように、認証とは内閣または内閣総理大臣の権限に属する行為についてその効力の発生の條件となるものでありますか、あるいは別の議論によれば、その行為の権威を重からしめるために行われるにすぎないものでありますか、そのいずれであると考えましても、さてその次に、大使、公使あるいは全権及び全権代理の場合と領事官の場合と、どのような相違があるかということを研究してみなければならぬと思います。この差異の中から私は問題が起ると考えます。しかしながら今日は私は私の議論の範囲を限定して研究してみたいと思います。
まず第一に私は任免の方法にその差異が現われておると考えるのであります。この外務公務員法第八條によりますと、「大使及び公使の任免は、外務大臣の申出により内閣が行い、」それから「政府代表及び全権委員並びにそれらの代理、顧問及び随員の任免は、外務大臣の申出により内閣が行う。」とある。しかるに領事官の場合はどうであるか、第十條によりますと、外務大臣が領事官を任命することができるということになつておるのであります。私は條文の上におけるこの相違から見て、任命の方法それ自身に差異が現われておると思います。一は外務大臣でやれる、一は内閣がやる。このような、軽重と申しましては、はたして正確な表現であるかどうかわかりませんが、とにかく任命の方法に関しまして、そのような差があるのであります。そしてこれを旧憲法時代の例に見ましても、大使、公使あるいは全権大使と申しますような外国に対し日本を代表する使節に関します場合は、従来は認証というような制度はなく、そのかわりに親任式という制度があつたのであります。天皇みずからこれを任命するという特別な形式がとられたのであります。しかるに旧憲法時代に領事官についてはどうであるか。これは「外交官及領事官官制」によつてこれを見ますと、領事官のうちの最高の地位にある総領事にいたしましても、勅任または奏任となつておるのでありまして、任命の形式がこのように違うのであります。このように大使や公使の場合には、これを任命するという行為の形式を重からしめるために、権威を與えるために、特に認証行為というものを設けておるのであります。それがすなわち旧憲法時代の親任式に当るものである。実質上そうであるかどうか、ぴつたりと内容が一致するものであるかどうかは別といたしまして、大体対応したものとして考えることができると私は思うのであります。しかるにただいま申しますように、領事官の場合は違うのであります。さような差別が設けられたということからいたしましても、領事官に対する委任状に天皇の認証を要するといたしました第九條は、憲法違反の疑いがある、こう私には疑われるのであり、この疑いがいまだに氷解しないのであります。しかし、これは私もなお研究してみたいと思います。
それから次に憲法の條文の配置の形式上から見ましても、第九條には私はどうも違憲の疑いがあるように思うのであります。元来憲法の規定から見まして、外交使節に対する委任状または信任状の認証は、憲法第七條の五号の問題として取扱うべきものであると私は考えます。これを八号の問題とすべきではないと思うのであります。八号では、なるほど「批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。」ということになつておりますけれども、この八号の場合の「その他の外交文書」というその文書の中には——委任状はなるほど外交文書ではありますけれども、この委任状という外交使節に対する文書は含めるべきものではない。こう考えるのが私は憲法の本格的な、真正面から取組んだ解釈であると考えます。そこで八号に政府の御説明のようにこの文書をもぐらせるということになりますと、実質上において五号を変更することになのであります。外交使節に対する認証は、「全権委任状及び大使及び公使の信任状」というふうに憲法で限定されておると私は考えておりましたのに、この法律案によりますと、第八号に新たに委任状に対する認証事項をつけ加えることになり、外交使節に対する委任状及び信任状の認証をする場合の五号の限定を破るものでありまして、実質上憲法の改正になる、こういうふうに私どもに見なければならぬと思います。憲法を正面から改正し、五号に領事官に対する委任状も、天皇の認証事項として付加するというふうに出ておいでなりますならば、これは私ども一個の問題として十分に考慮してみてもよろしいと思います。領事官に対しては天皇の認証を要するような性質の委任状が出されるべきものであるから、そこでこの委任状には認証をするというような御意見でありますならば、事実上は困難でありましようが、私は憲法の第五号を真正面から改正する問題としてお出しになるのが正当な方法であると考えます。それをそのようにしないで、第八條の外交文書の中に領事官に対する委任状を含めて、そしてこれを認証事項とするというやり方は、そしてそれによつて五号を改正したと同様な効果を発生させようというふうに政府がお考えになつておりますことは、私にはそれは不当なやりかたであると考えられるのであります。憲法に基いて法律をつくるということは、これは合法的でありますけれども、法律制定によつて憲法改正の効果を上げようとすることは許されないと思います。何となれば、憲法改正の手続は第九十六條に定められておるのでありまして、法律制定の手続とは異なるからであります。私はこういうふうに考える。政府はただいま申しますように、八号の文書の中にこの問題を含ませるという解釈であります。なるほどそのように取扱うことができないこともありますまい。新しい法律をつくつて、それが「法律の定めるその他の外交文書」というものになるのだというように解釈すること——なるほど私はそういう解釈が全然できないとは考えません。しかしそれはいかにも苦しい解釈でありまして、決して憲法と本格的に取組んだ態度ではないと私は考えます。こういうもぐり的な解釈をとて、憲法第七條第五号を実質的に改正するような効果を生ぜしめるやり方に対しましては、私は憲法違反の疑いがあることをどうしても否定することができないのであります。この点はひとつ與党の諸君も十分に御研究願いたいと思います。私もなお研究してみたいと思います。とにかくこういう憲法違反の疑いがある。これはもぐり的解釈である。こういうことはやるべきことではない、こう私は言いたいのであります。
次に、最後の問題に簡単に触れてみたいと思います。これは私の反対の第三点であります。外務職員の機密漏洩によりまして、国家の重大な利益を毀損したという理由で、懲戒処分を受けます場合においての審査の請求に関する規定が憲法違反である。この場合は疑いがあるというのではなくて、憲法違反であると思う。すなわち外務公務員法第二十條は憲法違反であると私ははつきり申したいのであります。これは前々回の外務委員会におきまして私の所信を述べておきましたので、きようは再び同じことを繰返すことはいたしません。ただ、政府の仰せられましたことにつきまして、多少私はつけ加えて意見を申し上げておきたいと思うのであります。私は外務職員に対してのみ、何ゆえ審理の場合に弁護人の依頼権を剥奪するか。ここに憲法違反があるとこう申すのであります。普通の裁判においてはもちろんでありますが、本條のごときいわゆる審理の場合におきましても、審理される者は弁護人依頼権を持つということは、基本的人権の尊重から申しまして当然のことであると考えます。この権利は憲法で認められた基本的人権でありまして、これを蹂躙することは許されないのであります。そうでありますからこそ、国家公務員法では第九十一條によりまして、審理の場合にもその権利を認めているのであります。しかるに外務職員の場合に限つて、しかも第十九條の場合のような重大な案件として取扱われるような場合であるにもかかわらず、この権利を剥奪するということは、明らかに基法的人権の蹂躙であり、憲法違反であると考えます。外務次官に御注意申し上げておきますが、外務次官は先日私のこの問題に関する質問に対する御答弁の中で、弁護人をつけると何か機密の漏洩がなされるというような御見解でありました。なるべく弁護人を入れない方がよいのだと、こういうように仰せられたのでありますが、これは私は外務当局として御反省願いたいと思います。もし弁護士会の人が外務次官の仰せられるようなことを聞きましたら、これは糾弾に値することだと言つて憤慨するかもしれません。弁護人に対する侮辱であるからであります。弁護人を秘密裁判につければ、機密が漏れるかもしれないというようなことをお考えになることは、これは私がしばしば政府を戒めておりますところの官僚的態度というものです。そういう官僚風に考えるべきではない。戦時中に国防保安法によつて尾崎秀實、ゾルゲなどが死刑に処せられた。あのいわゆる重大な国家の機密漏洩事件におきましてさえ弁護人がつけられた。そうしてその弁護人は何らの非難を現在まで受けていないのであります。機密漏洩の事案について弁護人をつけることは、何だか機密が漏洩する一つの手段になるかもしれないなどというお言葉は私は断じて将来お慎み願いたいと思います。次になお本案には非常に大きな矛盾があると思います。元来軽微な事案については、あるいは弁護人はつけなくてもよいというようなことがありましても、事案が重くなればなるほど、かえつて弁護人をつけなければならぬということは大原則であります。しかるに本案の場合は、軽い一般の公務員の機密漏洩の場合には、その審理に際して弁護人依頼権を認めておいて、そうしてより重大な事案につきましては、審理の場合に弁護人依頼権を剥奪するということになつておる。これはまさにこの大原則に対する反則であります。私はこのような基本的人権尊重に違反したことを、平気で政府がおやりになつていることにどうしても納得が行かない。そこで私は先日政府に対しまして、進んでこの点を御訂正になつたらどうかと勧告したのでありますけれども、どうもさようになさるような形勢もありません。あくまで元の通りの案を提出して、それに対する賛否を求めるという態度を固執しておいでになりますから、そこで私は非常に遺憾でありますが、このような憲法違反の疑いがあり、いな私としては憲法違反であると考えますような條項を含んでおりますこの法案に対しましては、林君あるいは並木君の御主張になる論点をあわせて、私は反対せざるを得ないのであります。これをもつて私の反対討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/8
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009・仲内憲治
○仲内委員長 西村榮一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/9
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010・西村榮一
○西村(榮)委員 私は日本社会党を代いたしまして、本案は憲法違反の疑いがあり、かつ運用の面について多くの不備欠陥を有するゆえをもつて反対いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/10
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011・仲内憲治
○仲内委員長 武藤運十郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/11
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012・武藤運十郎
○武藤(運)委員 私もこの法案に反対をいたします。その理由はただいままで反対の各位によつて述べられた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/12
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013・仲内憲治
○仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。
外務公務員法案について採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/13
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014・仲内憲治
○仲内委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/14
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015・仲内憲治
○仲内委員長 次に千九百四十六年十二月十一月にレーク・サクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の條約の範囲外の薬品を国際統制の下におく議定書への加入について承認を求めるの件を議題といたします。
本件は質疑を終了しており討論もないようでありますので、ただちに採決いたします。本件を承認すべきものと議決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/15
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016・仲内憲治
○仲内委員長 御異議がなければ本件は承認すべきものと決しました。
なおただいま採決いたしました二件につきましての報告書の作成は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/16
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017・仲内憲治
○仲内委員長 御異議がなければさようとりはからいます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/17
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018・仲内憲治
○仲内委員長 次にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案及び外国人登録法案の二案を本日の日程に追加いたしまして、二案を一括議題といたします。政府側より逐次提案理由の説明を求めます。石原外務政務次官。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/18
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019・石原幹市郎
○石原(幹)政府委員 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案の提案理由を御説明いたします。
この法律案は平和條約の発効に伴ういわゆるポツダム命令の措置の一環として、外務省関係の諸命令の改廃をしようとするものであります。
外務省関係のポツダム命令は出入国管理令、外国人登録令、北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令、朝鮮人、中華民国人、本島人及び本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県または沖縄県に有する者登録令及び入国管理庁設置令の五件でありますが、このうち出入国管理令及び入国管理庁設置令につきましは、一部改正の上存続し、北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令及び朝鮮人、中華民国人、本島人及び本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿児島県または沖縄県に有する者登録令は廃止することとし、また外国人登録令に関しましては、この際これを廃止した上、新たにこれにかわるべき外国人登録法を制定することとし、別途法律案を提出いたしております。
この法律案のおもな内容といたしましては、第一は出入国管理令及び入国管理庁設置令の一部を改正することであります。すなわち占領終結に伴い、現行の連合国最高司令官による入国許可の制度、その他占領に付随する内容の諸規定を削除するとともに、平和條約の発効に伴い新たに日本の国籍を離脱する朝鮮人及び台湾人に対する取扱い等の経過規定を設けることであります。
第二は北緯二十九度以南の南西諸島人の内地渡航制限令の撤廃であります。現在占領下の特殊事情として行われております内地渡航の制限は、平和條約発効後においては、南西諸島と本邦との関係を考慮し、将来特別の事情がない限り、この地域より内地渡航の自由を確保いたしたい考えでございます。
第三は出入国管理令及び入国管理庁設置令を、平和條約発効後も法律として効力を與え、存続せしめることであります。この二つの政令は昨年十一月、わが国の入国管理に関する既存の法令及び機構を再検討し、一般に認められた国際慣行に一致せしめ、司法保護組織または警察組織とまつたく関係のない機構のもとに、外国人の管理業務が運営されるべきであるとの連合国最高司令官の覚書に基いて制定されたものであります。この趣旨精神は平和條約発動後もあくまで尊重し維持すべきものと考えまして、とりあえずこれを法律に切りかえる措置を講じた次第であります。
以上が本法律案の提案理由でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望いたします。
次に外国人登録法案の提案理由を御説明いたします。
現行の外国人登録令は、昭和二十二年五月ポツダム勅令として、終戦後における最初の外国人管理法規として制定実施せられたものであります。その後昭和二十六年十一月、出入国管理令の施行に伴い、一般外国人の出入国については、管理令の適用を受けることとなり、従つて外国人登録令は、一般外国人の登録関係と朝鮮人及び台湾人の出入国の規則とがその内容をなすに至つたのであります。
平和條約発効後においては、朝鮮人及び台湾人は日本の国籍を離脱し、外国人として出入国管理令の適用を受けることと相なりました。従つて現行の外国人登録令の連合国最高司令官の入国許可及びこれに付随する不法入国者の退去強制等の規定は、外国人登録令としては不必要となり、ここに根本的な改正を必要とするに至りましたと同時に、登録関係の規定の内容においても不備な点が多々ございますので、この際政府としましては、外国人登録令を廃止し、新たに外国人登録法を制定いたしまして、平和回復後の在留外国人の管理の適正を期して参りたい所存であります。
以上が本法律案の提案理由であります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに可決せられまするよう希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/19
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020・仲内憲治
○仲内委員長 ただいまの二案に関する質疑は次回に譲ることといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/20
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021・仲内憲治
○仲内委員長 次に国際情勢等に関する件について質疑を行うことといたします。質疑を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/21
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022・黒田寿男
○黒田委員 ちよつとその前にただいま政府が御説明になりました法案に関連して、議事進行として発言をお許し願います。
今日突如として御提出になりましたこの両法律案は、わが国の国際的地位、国際関係という面から見まして、非常に重大な内容を持つ法律であります。ことに現在進行中と伝えられております蒋介石政府との平和條約締結問題、あるいはまた日韓会談等にも重要な関係を持つものでありまして、そのような問題を無視して、この法律案だけを審議するということは不可能であると考えます。両案はこのような重要な法律案であります。そこで私は、この間から繰返してお願いしておるのでありますけれども、吉田総理大臣に、ぜひ一度この委員会に御出席を願いたい。実質上岡崎さんが外務大臣であられましようから、もう吉田総理は外務委員会に出席する必要はないというふうにお考えになつておるかもしれませんが、やはり私は総理大臣に直接いろいろとお尋ね申し上げてみたいと思うことがあります。何回もと申しましては、御老体のことでありますから、御迷惑であろうと思いますが、せめて一回だけでも、ことにこの法律案の審議にあたりましては、ぜひ吉田総理の御出席をおとりはからいいただきますように、この点特にお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/22
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023・仲内憲治
○仲内委員長 その点はよく了承して、極力とりはからうことにいたします。
それでは国際情勢等に関する件について質疑を行うごとといたします。質疑を許します。林百郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/23
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024・林百郎
○林(百)委員 時間の関係上、二問だけお聞きしたいと思います。一つは細菌戰の問題について、日本の政府としても看過しがたい事態が発生しておるのでありまして、これについて政府の責任ある答弁を求めたいと思うのであります。ロンドンの十六日発のUPによりますと、国際民主主義法律家協会のオーストリア代表あるいはベルギー代表の調査によりますと、この国際民主主義法律家協会の調査団は、米軍が朝鮮で細菌戦術を行つている多くの証拠を集めた、それから細菌戰武器が実際に使用されているのを目撃した。これはそれぞれオーストリア代表、ベルギー代表の発表であります。これにつきまして、われわれが看過しがたいということを申し上げましたのは、実はこの二月二十三日の平壌発の朝鮮民主主義人民共和国の外相たる朴憲永氏の声明によりますと、米帝国主義者は、この犯罪の準備を進めるにあたり、日本軍国主義の御用学者である日本の細菌戰犯から公然と協力を受けた、彼らは日本の戦犯石井四郎、若松有次郎、北野マサゾウを朝鮮で指揮した、これらの連中に対しては、一九五〇年二月一日、ソビエト政府は主要細菌戦犯として国際軍事法廷に引渡すことを提案したものであるという声明がありまして、さらに一九四七年七月十一日の極東委員会の対日基本政策の決定によりますと、戦争犯罪人につきまして、連合国の他の国によつて、その国民に対する犯罪を理由に要求された者は、最高司令官によつて、裁判のため、または証人として、あるいは他の理由で必要とされない限り、右の他の国に引渡し、拘禁さるべきであるという規定があるのであります。そこで私は本日政府にお聞きしたいことは、ソ同盟政府が一九五〇年二月一日、細菌の戦犯として石井、北野、若松らの引渡しを要求したのでありますが、これについて日本の政府からは何らの回答もなさず、またこの戦犯について、いかなる処置をしていたかということについての発表も、われわれ聞いておらないのであります。事国際的な問題となり、日本人の名前がここに出ておる。しかも細菌戦については、日本のかつての関東軍が一九四〇年から四五年の五箇年間にわたつて、三千人の人員を殺傷して、実験をして、相当細菌戦の研究をしたということは、すでに日本の普通の雑誌、週刊誌にすら発表されておるのであります。そこで私はこの戦争犯罪人としてソ同盟から引渡しを要求されておる戦犯の石井四郎、若松有次郎、北野マサゾウ、この三名について、日本政府は現在いかなる処置をしており、どこに所在し、どういう監督をしておるかということについて、政府の責任ある答弁を聞きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/24
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025・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 林柔いろいろ述べられましたが、国際民主主義何とか、北鮮民主主義何とか、民主主義というと非常に混同しますが、それは共産主義のことなのかどうか、それを言われると、もつとはつきりすると思います。そういうことを、いくら名前だけ民主主義連盟とか言われても、非常に卑怯なやり方だと思います。もう少し正体を明らかにされた方が、お互いにいいだろうと思います。そこで御質問の点ですが、われわれはまだそういうことについては何ら承知しておりません。従つて調べたこともなければ、所在を確かめたこともございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/25
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026・林百郎
○林(百)委員 岡崎国務大臣の答弁は非常にふまじめだと思うのであります。あなたの言うことこそ私は何を言つているかわからないのであります。少くとも北鮮の外務大臣あるいは中華人民共和国の外相である周恩来が、これを国連に報告をし、国連でもソ同盟代表がこれを取上げ、しかもロンドンからの十六日のUP電報によれば、これは国際民主主義法律家協会の調査の結果であります。こういう結果に基いて、日本人の名前が出て、この三省の協力をアメリカ側では求めておるということを言つておるのでありますが、戦争犯罪人に対して、政府が適当な措置をとることは、当然の国際的な義務でありますから、私はこの戦犯である石井四郎、若松有次郎、北野マサゾウの三人を、日本政府はどういろ処置をしておるのか、またこの所在がどこにあるかということの報告をあなたに聞いておるのであります。これはむしろ、こうした国際的に疑惑をもつて見られておるのでありますから、もし政府に確信があるならば、関係がないと言えば、むしろ日本政府のためにもなるのであります。あなたはわれわれの質問に対して全然誠意がない。そういうふまじめな態度でなくして、今政府はこれに対してこう考えておるとか、あるいは、石井、若松、北野に対しては、目下こういうところにこういて、ソ同盟からこういう要求があつたけれども、日本政府としてはこういう措置をとつたということを、もつとまじめな答弁をしてもらいたい。あまり人をなめたような態度はやめてもらいたいと私は思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/26
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027・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 私はそのようないいかげんな質問に対して答えるのがいやなのです。何とかいう人が戰犯だとだれも認めておらない。あなたがかつてに戰犯だと言つておる。われわれはソビエトから何も要求を聞いたことはない。何ら公式に受けたことはないからないと言つておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/27
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028・林百郎
○林(百)委員 これは一九五〇年二月一日ソビエト政府から司令部並びに日本政府に対して要求があつたことは公知の事実であります。そんなことを知らないのだつたら、あなたは職務の怠慢ですよ。だからきようもしあなたが答弁できないというなら、十分調査してからでけつこうです。また無責任な質問だと言いますけれども、少くとも朝鮮人民共和国の外務大臣に、あるいは中華人民共和国の外務大臣——あなたはそう言えばげらげら笑つているけれども、一体あなたが対象としておる台湾の蒋介石だとかなんとかと、中華人民共和国と、どちらが中国人民四億の支待を受けているのですか。台湾と交渉しても、来るのはバナナくらいのものだ。しかもソ同盟も入つた人口何億という人たちが、この細菌問題について真剣に考えておるときに、あなたは無責任な質問だとは何です。あなたこそ何です。李承晩だとか蒋介石だとかいうような、幽霊みたいな政権と仲好くして、心中しようとし、中華人民共和国とかソ同盟とかの外交関係を全然無視しておるじやないか。どつちがふまじめか。蒋介石や李承晩の肩を待つのがまじめで、人民の圧到的な支待を受けておる朝鮮人民共和国や中華人民共和国の立場から立つて、こういう疑いをかけられておるのはどうかと質問するそれが、何でふまじめなのか、はつきり言つてもらいたい。それともきよう答弁できないなら、私は何もきよう短かい時間に、あなたから決定的な答弁をもらうつもりはありませんけれども、この次にあなたの方から、もう少し調査してもらつてからでけつこうです。少くとも常識からいつても、関東軍の細菌戰犯としてソ同盟から指名されている者が、日本国内で戦犯でも何でもないということがどうして言へるのですか。少くとも陸軍の中将、少将、しかも関東軍でこういう特別な任務に服していた者です。私はあなたにもう少し根拠を申しますれば、ジユネーヴ條約によりますと、窒息性のガスあるいは毒性のガスあるいは細菌学的戦争方法を戦争に使用することは禁示する、こういう国際條約もあるのです。それに対して、少くともこういう日本人の名前が出ておる以上、政府も、これは調査したところが、実はこれこれこういうわけで、関係がないならない、あるいはそういう疑いがあるならあるということを、堂々と国会に表明することが、またわれわれがそれを質問することが、何でふまじめなんだ。もう一度あなたの答弁を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/28
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029・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 第一あなたは正確にものを言つておられない。ソ連邦から最高司令官並びに日本政府に戦犯の引渡しの要求があつたと言われるけれども、ソ連邦から直接に、日本政府にそういう申入れはない。従つて日本政府としては、最高司令官から何か申出があるなら別であるけれども、今までそういう申入れは一つもない。調査する必要も何もない。今までないのだから、従つてわれわれは何も関知してない。これは当然のことじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/29
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030・林百郎
○林(百)委員 それでは、司令部にあつたとあなたは考えられますか、ソ同盟から日本の占領司令部にそういう申入れがあつたということを、あなたは認められるかどうかという点が一つ。それから戦犯に対する取締りというものは、司令部の命令がなければやれないということじやないですよ。これは極東委員会の諸決定、あるいはポツダム宣言からいつても、日本の民主化のために、日本の国を誤りなくするため、あの太平洋戦争に導いたところのわがままな軍閥、軍国主義者、これに対して日本政府独自の立場から取締れということは、国際的に命令されておるじやないですか。だから第一に、司令部にそういう申入れがあつたかどうか。また日本政府は独自にそういうも
のを取締る意思があるかどうかということを聞いて、この問題についての質疑はこれで打切りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/30
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031・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 司令部にあつたかどうかは、私は知りません。ただ司令部から日本政府に何らそういう話はない。これだけを申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/31
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032・林百郎
○林(百)委員 この問題は私はこれで打切ります。
岡崎国務大臣がそういうふまじめな答弁をしますから、今度はあなたの選挙地盤で、あなたが行つて、みずから善処するという約束を農民にしておる神奈川県高座郡相模原町の土地の接収問題について、あなたに質問したい。ここではその後YEDが三十町歩の土地を新しく取上げている。ドーソンという大佐が来まして、直接百姓と話をしておる。百姓はわからないから、今町長に話をしている。町長もどうしていいかわからなくて、あなたに相談したり、いろいろしている。そして今町長とドーソン大佐とが、やむを得ないから折衝しておる。ところがその後突然、最近その三十町歩の土地の周囲に札が立てられた。どういう札かというと、上の方には英語で書いてあつて、下の方には日本語で書いてあつて、六月三十日までにこの土地は立ちのかなければならない、農作物の作付は増加してはならないという。しかも日本の政府なのか、あるいは司令部なのか、どこが立てた札かわからないものが、三十町歩の土地にずつと立てられている。しかもこれは一月末にあなたが行つて、善処すると百姓に約束されているにかかわらず、その後全然善処されていないどころか、農民の土地は無條件で取上げられようとしている。そこで百姓はどう言つているかというと、われわれの土地はアメリカの基地じやないのだ、かつてにアメリカが来て出せと言つても、われわれは出せないのだ、こうなつたら一人くらいの佐倉宗五郎ではだめだ、皆が佐倉宗五郎でなければだめだ、と言つている。そこへあなたは行つて、みずから善処するという公約をしたが、どういう善処をされたか、この問題を聞きたい。これはあなたが行かないとか、そういうことを言わないとは言わせない。あなたの選挙地盤で、あなたの自転車会社も直接関係がある。ちやんと知つている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/32
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033・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 私の選挙地盤のことを御心配くだすつて、まことにありがたいことです。相模原の土地の使用の問題につきましては、農民の間にいろいろ心配があつて、町長が私のところへやつて来たことは確かにあります。だんだん調べてみましたならば、それは何ら根拠のないことであつて、ただとられるかもしれないという心配であつたのであります。現に私がもらつておる請願書には、元の車工廠の横だから、とられるかもしれないから、とられないように努力を願いたいという請願が来ておる。それから調べてみましたところが、予備作業班の話合いによりまして、講和條約発効までは、新しい接収はいかなる場合においても行わない、こういうことになつておりました。ただ相模原の付近におきましては、林君とは言いませんが共産党員が盛んにビラをまいて、お前たちの土地はみなとられてしまうのだ、というビラを戸ごとにまいておる。そのビラは私も持つております。まつたく事実にないことを、ビラで農民あたりにまき散らして、非常に不安をかもしておる。そのために農民も心配して、まだとられもしないところをとられるかもしれぬと言つて来ております。私のここで申し上げることは、そういう土地はとられるはずがない、とられないということは確かであります。共産党員にも林君がもし連絡があるならば、そんな心配はないからビラなどはまかないようにしてもらいたいということを伝えておいてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/33
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034・林百郎
○林(百)委員 実は私はあなたのふまじめな答弁に驚き入つている。あなたは一体その後あそこへ行きましたか、私はつい四、五日前に行つて来た。上には英語、下には日本語で、六月三十日までに立ちのかなければならない、農作物の作付は現在以上に増加してはならないと書いてある。その札はただのいたずら者が立てた札として、みなひつこ抜いて町長のところへ持つて行つていいですね、それでどつからも文句が来ないですね、そんなら私はそういうふうに共産党に言います。農民に言いますよ。あまり無責任なことを言わないでください。しかも林君かだれか知らないが、ビラをまいてはいかぬというが、こつちのビラが問題なのか、それとも英語と日本語で書いた札がちやんと三十町歩にわたつて立ててあるのが問題なのか、どつちが問題なんですか。それならあそこは絶対にとられない、司令部がそんなことを言つて来たら拒否をしろと岡崎が言つた、英語と日本語で書かれた札はとつてもいいのだということを言つていいですね。町長に外務委員会で岡崎がこう答弁をしたからと行つて言いますよ。あなたはいつもちやらんぽらんだからそれを締める意味で、今度は事実を調べて持つて来たのです。それでなければあなたのちやらんぽらんな性質が直らぬから言うのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/34
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035・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 私の性格を直してくださるそうで、まことにありがたいのですが、そういう札は私は見たことはありません。従つて知りませんが、そういうような種類の札を出すわけはないから、それは間違いに違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/35
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036・林百郎
○林(百)委員 そうすると、そういう札はとつて、これを町長のところへ持つて行つていいですね。それが英語で書いてあつても、だれかがいたずらをしたものと見ればいいですね。それをもう一度確かめるために私質問したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/36
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037・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 それは私はまだ調べてないからわからないけれども、もしあるとすれば間違いに違いない、こう言つておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/37
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038・林百郎
○林(百)委員 間違いだからそんなものは町長のところへ持つて行つていいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/38
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039・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 間違つたものは、それぞれの手続によつて取除けばよろしいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/39
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040・林百郎
○林(百)委員 なおこの問題は私の方でもう少し調査して、もう一度岡崎さんに聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/40
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041・仲内憲治
○仲内委員長 並木君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/41
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042・並木芳雄
○並木委員 私は三月八日付の総司令部指令として出た覚書について、お尋ねしておきたいと思います。それは兵器とか航空機その他の生産を日本に許されるという覚書であります。その内容は大体新聞に報道されたところのものかどうか。それからこの指令による武器の製造禁止の緩和ということはどういうところにねらいがあるか。この指令がなくても、平和條約の効力が発生すれば、当然日本としては兵器の製造が許されるものと了解しておりましたけれども、それには間違いはないかどうか。それから武器製造禁止の緩和のねらいに相呼応して、賠償工場の指定の解除ということが出て参りましたけれども、賠償工場の指定の解除は三月八日付のこの指令と関連があるのかどうか。賠償工場で兵器とか弾薬とかそういうものをつくらせるために、今度急いで解除になつたのかどうか。それから武器製造禁止の緩和の目的とするところは、国際連合に協力する線で出て来ておるのか、あるいはこれから日本に駐留する米軍のために使われる線で出て来ておるのか、あるいは日本の警察予備隊や海上保安隊で使う装備をつくるための線から出て来ておるのかどうか、そしてもし将来日本がつくる意思があれば、原子兵器というものも、これでつくる道が開かれたのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/42
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043・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 この緩和の措置は、たとえばアメリカの駐留軍に武器を供給しようとか、予備隊に供給するとか、そういう直接の目的でやられたのではないと私は了解しております。元来平和條約が効力を発生いたしますれば、少くとも法律的といいますか、條約的といいますか、日本はまつたく自由な立場に立ちまして、何ら制限を受けておらないのであります。でありますから、国内でこういうものはつくらない方がいいからといつて、つくらないならばこれは別でありますが、国際的にこういうものをつくつちやいかぬという禁止は何もないのであります。従つて平和條約の効力発生は間近ではありますが、ただいままだ形式的には占領下にあるわけであります。そこで占領軍としましては、できるだけ講和條約発効の前にも、それに沿つたものに日本の国内の態勢をすべて持つて行つた方がいいという建前から、この緩和をいたしたのでありまして、それには並木君も御承知かと思いますが、「フアーザー・アプルーヴ・オブ・ヘッド・クオーター」という文字があるのでありまして、占領下という関係から、全然制限なしというのでなくして、司令部の了解さえあればということになつておるのであります。将来どうなるかというお話でありますが、これは今申した通り、日本としては條約の表面からいえば、たとえば軍隊を将来国民が持ちたければ、陸軍でも海軍でも空軍でも、何でも持つことについて制限はないのであります。それと同様に、こういういろいろの製作についても何にも制限はないのであります。ただ憲法その他の関係上、考慮すべき点はむろんありますから、国内の措置としては別でありますが、国際関係だけからいいますれば、武器製造につきましても、軍隊の維持につきましても、何ら制限がない状況になるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/43
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044・並木芳雄
○並木委員 賠償工場の指定解除の覚書も出たようでございますけれども、それはこの三月八日付の司令部の指令と関連があるのじやないですか、賠償工場の指定解除をやつて、そこで急いで兵器というようなものをつくらせよう、そういう目的があるのではないかと思うのですけれどもいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/44
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045・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 これは全然関係がありません。賠償工場の方はただいまでも賠償の指定はされておりますが、日本の経済その他に有益な工作機械であるとかその他の機械は賠償に指定されながらも、使用を認められて現在に来ておるのであります。そこで実は講和條約の発効がまだはつきりいつということがわかりませんが、日本の会計法規からいいますと、四月一日と三月三十一日では会計年度がわかれるわけであります。そこで賠償庁では、三月三十一日までに賠償指定の解除が行われるとすれば、四月一日からはそれの管理に要する費用等を予算に計上する必要がなくなりますので、また賠償庁の解体ということも年度末でできるかもしれぬと思いまして、それで実は年度末までに解除をしてもらつた方が会計上は都合がいい、こういうつもりでおりましたが、先方ではどうせ講和條約が発効すれば全面的にこれはなくなるんだからして、今一つの措置をとつて、また講和條約発効になつて別の措置をとるというのでは、かえつてやつかいであろうと考えたのでありましよう。それでこの際は特に措置はしない、但し民間所有の賠償指定物件についてはアメリカ側で今使つてないものは使わない、要するに現状のまま講和條約発効まで行こう、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/45
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046・並木芳雄
○並木委員 日本として将来原子兵器というものをつくりたければ、つくることはさしつかえないという点は、先ほどの答弁零その通りだというふうに了解していいわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/46
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047・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 講和條約が発効になりますれば、條約面からいえば何にも制限はないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/47
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048・並木芳雄
○並木委員 倭島局長が台湾から帰つて来たようでございますけれども、大臣としては報告を受けられましたか。報告を受けられましたら、それをお知らせ願いたいと思う。最近、台湾独立同盟というものがあつて、島民が必ずしも蒋介石政権とぴつたり行つていないのだという報道があるのですけれども、台湾との間に日華條約が結ばれることを前にして、そういう事実があることは、相当関心を持たなければならぬと思います。どうなつておりますか、報告をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/48
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049・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 倭島局長は一昨日の夜帰つて参りました一昨日いろいろ報告を聞きましたが、まだ今話合いの最中でありますから、ここで交渉の内容を申し上げることは差控えたいと思うのであります。ただ御承知かとも思いますが、交渉においてのおもなる点は、国民政府側では、サンフランシスコ條約の條項をできるだけ多く取入れて、できればサンフランシスコ條約と同じような形の條約をつくりたいという希望であります。またわれわれの方からいいますと、吉田・ダレス書簡にありますように、国民政府が統治しております領域が一定の定まつた地域内でありますので、その現実の事態とサンフランシスコ條約の條項とを、いかに調整して行くかという点でありまして、これが基本的に重点の置き方が違うといいますか、先方は現実の事態よりも、サンフランシスコ條約を取入れるということに重点を置いておる。われわれの方では現実の事態になるべく重点を置こう。むろんサンフランシスコ條約の趣旨を取入れることは異存がないのですが、その点で條約のタイトルをどうするかとか、いろいろな問題が出て来ておるのでありまして、倭島局長の報告では、原則的には相互の了解が非常に進んで来ましたので、初め心配していたような、意見がとうてい合わないというような問題はなくして、いかにお互いにその相手の意見を取入れた双方に満足なものをつくり上げるかという程度の問題になつて来ましたので、まだ時間は多少かかりますが、話合いができないというような心配はおそらくない、いずれはまとまるものというふうに聞いております。また事実そうだろうと思います。
それから台湾の状況でありますが、いろいろ今言われたようなお話も報道としてはあるようでありますけれども、現実に台湾内の治安は非常によく保たれておりますし、当初のような、国民政府側と台湾土着の島民との間の気持の合わないというような点も、この数年間のうちに非常になくなりまして、また食糧も輸出できるくらい豊富でありますから、治安とか人心の安定とかいうことは、案外想像したよりもはるかによろしいようであります。台湾自体については今のところ何ら危惧されるようなことはないようであります。非常に平和にみな満足して暮しているというのが、現実の状況のように思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/49
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050・並木芳雄
○並木委員 これは大体いつごろ日華條約の調印を見る予定ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/50
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051・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 これは実はまだちよつといつごろという見当は私も申し上げかねますが、一つは、少し遅れておりますので、私ども国会でも、台湾との間の條約の締結が、アメリカの平和條約批准の條件みたいにされているのではないかというような非難をしばしば聞いたのでありますが、幸か不幸か、條約の交渉が遅れているうちに、アメリカの批准はどんどん進んで、あすにもできそうな形勢になつておりますので、この点は事実が説明して来たのでありまして、これは遅れたことがいいとは決して申しませんが、一つの事実の証明になつておると思います。まつたくアメリカの批准等とは関係なくこの交渉は進めておるのであります。またアメリカ側も、台北にランキンという代理大使がおられますが、アメリカ側が何とか口出しをするというような印象を與えることを極力避けておりまして、交渉自体はまつたく国民政府と日本との間だけでやつているような次第であります。かなり意見の調整は出て来ておりますが、さていつできるかと言われると、ちよつとまだ御返事はできないのでありますが、そうおそくなくできようかと考えております。いずれできますれば、国会の批准、承認を得るために提出いたしますが、そうおそくなくできると思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/51
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052・黒田寿男
○黒田委員 私は外務当局に対しまして資料の御提出を求めたいと思います。それは本日のこの委員会に上程になりました二つの法案、すなわち出入国管理及び外国人登録、これらの法律案に関しまして、諸外国の立法例を至急参考資料として御提出願いたいと思いますので、この要求をしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/52
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053・仲内憲治
○仲内委員長 本日はこれにて散会いたします。
次会は三月二十五日午前十時より開会いたします。
午後零時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01119520320/53
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