1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年三月二十九日(土曜日)
午前十時四十八分開議
出席委員
委員長 仲内 憲治君
理事 足立 篤郎君 理事 佐々木盛雄君
新井 京太君 植原悦二郎君
大村 清一君 菊池 義郎君
北澤 直吉君 澁谷雄太郎君
飛嶋 繁君 中山 マサ君
西村 久之君 山本 利壽君
戸叶 里子君 林 百郎君
成田 知巳君 黒田 寿男君
出席国務大臣
国 務 大 臣 岡崎 勝男君
出席政府委員
外務政務次官 石原幹市郎君
外務事務官
(大臣官房長) 大江 晃君
外務事務官
(大臣官房審議
室勤務) 三宅喜二郎君
入国管理庁長官 鈴木 一君
外務事務官
(入国管理庁審
判調査部長) 鈴木 政勝君
委員外の出席者
專 門 員 佐藤 敏人君
專 門 員 村瀬 忠夫君
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三月二十九日
委員福田篤泰君、水田三喜男君及び守島伍郎君
辞任につき、その補欠として西村久之君、澁谷
雄太郎君及び新井京太君が議長の指名で委員に
選任された。
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三月二十八日
在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する
法律案(内閣提出第一三六号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する
件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律
案(内閣提出第八八号)
外国人登録法案(内閣提出第八九号)
在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する
法律案(内閣提出第一三六号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/0
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001・仲内憲治
○仲内委員長 ただいまより外務委員会を開会いたします。
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案及び外国人登録法案を一括議題といたします。質疑を許します。佐々木盛雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/1
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002・佐々木盛雄
○佐々木(盛)委員 私は出入国管理令及び外国人登録法に関連いたしまして、国籍問題についてこの際岡崎国務大臣の明確な御答弁を要求いたしたいと思います。
先般来本委員会におきましてこれらの法案の審議にあたりまして、いわゆる朝鮮人並びに台湾人を主とした国籍の問題につきまして非常に前途を不安がり、あるいは憂慮されている向きもあるようでございまして、それらの朝鮮人や台湾人に対しましてわれわれも心情は十分察するに余りあるわけであります。従いまして、この際私は政府の明確な答弁を要求いたしまして、それらの人々の人心安定にも資したいと考えるわけであります。
そこでこの国籍問題に関連いたしまして、今日まで各委員からあらゆる再度から真剣な質疑が行われておりますのに対して、担当の大臣や政府委員から示されました答弁を総合いたしますと、国際間の現実の事態にかんがみて、原則的な方針は別といたしまして、実行の面においては何らか特別の考慮あるいは便法を考えておつて、不必要な混乱を起さないように措置をする意向であるというふうに承つて参つたわけであります。この際さらにこれらを具体的に明確にすることが最も望ましいことであると考えますので、以下の二点について政府の方針を明確に示されたいと思います。
まず第一は、平和條約発効後六箇月後に行われます登録切りかえの際には、必ずしも国籍証明書の提出を要しないで、現在の登録証明書に記載されておる国籍名のままで書きかえを行うことになる、かように承知してよろしいかどうかという点が第一点であります。
さらに第二点は、最近の新聞その他の報道から判断いたしますと、目下行われております日韓の会談の内容につきまして、朝鮮人の永住許可の申請は、平和條約の効力発生後二年以内にすればよろしい。従つて永住許可を受ける者も、しからざる者も、おおむね三年間は、国籍のいかんを云々されることなく、一応在留することが許されるというふうな報道もあるわけであります。従つてこれらの点につきましては、朝鮮の人々も非常に憂慮しておる点でありますから、この報道のようにあることを私たちも期待をし、希望しておるわけでありますが、この際政府はどういうふうな所信で臨んでおられるか。もとより日韓会談でどのような結末に到達するかということにつきましては、軽々に予測はできないところであると思いますが、政府の日韓会談に臨むにあたつて有するこの国籍問題に対する所信というものを、この際明確にしておいていただきたいと考えるわけであります。まず以上の二点につきまして、この際明確な御返答を要望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/2
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003・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 政府としましては、今まで長い間平穏に国内に暮しておりまして、日本人として待遇されておつた人々が、今回国籍を変更することになるわけでありますから、長い間の日本と朝鮮の間の緊密な関係にもかんがみまして、不必要な混乱とか不必要な損害を與えることは、極力避けようというつもりでおります。従つて今佐々木君のお話のように、国籍問題等は原則は国際慣行できまつておるものでありますから、これを曲げるわけには行きませんけれども、実際の取扱いにおいては、できるだけ不必要の摩擦を避け、そうして長い間日本に対して功績のあつた朝鮮人の過去の状況も考慮に入れまして、できるだけ便宜をはかる、こういうつもりでおるのが根本の考え方でございます。
そこで今お話の二点でありますが、第一点につきましては、登録の切りかえが約六箇月以後に行われるわけになると思うのでありますが、そのときは今お話のように、登録証明書という今までの書類に記載されてある国籍名で、そのまま切りかえを行うということになり、またしようと考えております。それから第二点でありますが、これはただいま御承知のように日韓会談が進行中でありますので、この会談の内容についてここで言明するという段階に至つておりませんが、今お話のような趣旨のことに大体方向は向いておると申し上げてさしつかえないと思います。政府の考え方も大体お話のような筋合いでありますから、おそらくそういうふうになるであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/3
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004・北澤直吉
○北澤委員 ただいまの佐々木委員の質問に関連してお尋ね申し上げたいのであります。日本が世界各国と善隣友好を樹立するいわゆる善隣外交ということは、吉田内閣の基本政策であると私は思うのであります。従いまして終戰以前から日本人として長く日本におられました朝鮮の方々につきましては、このいわゆる善隣外交の根本方針から取扱つていただきたいと思うのでありますが、この外務委員会における質疑を通じてわかりましたことは、この登録の切りかえは、日本におる韓国代表部の証明書等もなくして行けるということでありますのでその点問題がないのであります。ところがいよいよ日本に永住の許可を求める場合には、韓国代表部の証明書か何かがなければ、できないというふうにわれわれは説明を聞いているわけであります。ところが御承知のように、朝鮮の動乱はまだ解決されておらず、従いまして、いつ朝鮮の動乱が終結して朝鮮に統一政府ができるかということの見通しは、まだできないのでございますが、そういう状態でありますと、日本に在留する朝鮮人の方で、現在戰争しておる二つの政府のどちらかに対して、はつきり忠誠を誓うということをきめるにつきましても、いろいろ事情があると思うのであります。従いまして、永住の許可を得る場合に、韓国代表部に行つて向うから証明書をもらうということにつきましても、いろいろ考える点もあると思うのでありますが、理想から申しますと、永住の許可を得るのは、朝鮮の方々の希望では、朝鮮に統一政府ができて、その証明書によつて永住許可の手続ができるのだ、こういうことでありますが、これがいつごろになつたらできるか今のところ見通しがないのであります。そこで政府といたしましては、この出入国管理令の今度の法案の第二條の六におきまして、別に法律で定めるところによつて、たとえば今後二年間とか三年間とかいう期間を置いて、その間に永住許可の手続をすればいい、こういうふうに考えていると思うのでありますが、一体永住許可の手続をとる期間であります。大体三年くらいとか二年くらいとか政府の腹案があると思います。一応三年としてきめておいても、もしまだそれでも朝鮮の事態が安定しないで統一できないというなら、そのときにおいてまた考えるというふうな便法もあると思うのでありますが、この点は日韓会談との関係もありまして、ここで政府として明言はできないかとも思うのでありますが、大体どのくらいの期間を見ておるか。もしその期間内に朝鮮の統一政府ができないというならば、さらにその場合において便法を考える、そういうふうなお考えがあるかどうか、この点をひとつはつきりしていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/4
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005・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 今北澤君のお話のように、まだ日韓会談の進行中でありますから、ここではつきり何年ということは、これは韓国側の代表者の考えを不当にここでもつて牽制するような結果にもなりますので、何年と申すことはひとつお許しを願いたいと思うのでありますが、まあ大体常識的に見て二年くらいはその間の期間があるであろうと申し上げ得ると思います。そこで元来一つの国、ことに大して大きくない朝鮮のようなところに二つの争う政権があるというのは、非常にこれはアブノーマルな事態でありまして、普通にいえば当然統一した政府ができるわけであります。がしかし、今のところはそういうわけでできておりませんが、われわれの考えでは、今後に相当期間があれば、その間に統一した政府ができるであろうと強く期待しております。がまあ先のことはわかりませんから、もし将来また不当に在留民に苦痛を與えるような事態が起る場合には、そのときさらに適当な考慮をいたそう、われわれの考え方は、在留民に対して不必要に苦痛を與えたり困難を與えたりすることは、極力避けようという考えでありますから、もしそういう事態がありますれば、そのときに十分考慮しよう、こう思つております。ただこれはむろん平穏に国内で生業を営む人に対してでありまして、もし国法を乱したり、自分かつてな行動をするというようなことがありますれば、これはとうてい看過できないのでありまして、これに対しては嚴重な処置を講ずるつもりでおります。一般に平穏無事に、法を守つて国内に暮しております人に対しては、極力保護を與えるというつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/5
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006・北澤直吉
○北澤委員 そうしますと、ここに書いてあります「別に法律で定めるところにより」というその法律は、大体日韓会談の話がまとまつたあとでこの法律が出る。その法律におきまして、ただいま大臣からお話がありましたように、日韓会談できまつて、たとえば今後二年とかあるいは三年とかいう期間を置いて、その間に永住許可の手続をとればいいということがこの法律の中にきまるであろう、こう思うものでありますが、ただいまの大臣の説明によりまして、政府におかれても、特に日韓の国交回復を害するとか、日本におきます破壞的行動に出るような者は別であるが、それ以外の善良なる朝鮮人に対しましては、できるだけ好意的な考慮を加える、そうしてそういう方々に不必要な不安を與えるようなことはしない、こういうような大臣の言明をいただいたわけで、われわれも安心しておるわけであります。どうぞ政府におかれても、そういう精神で日韓交渉に当ると同時に、在日朝鮮人の待遇につきましても、ただいま申されたように、悪質でない者については、できるだけの好意的の取扱いをしてもらいたいということを要望いたしまして私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/6
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007・仲内憲治
○仲内委員長 黒田寿男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/7
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008・黒田寿男
○黒田委員 私は、ただいま佐々木委員と北澤委員とがお尋ねになりました点に関連いたしまして質問してみたいと思います。なお強制退去の問題につきましても、多少質問を申し上げたいと思います。大体において、昨日までの政府側の御答弁と比較いたしまして、きようは岡崎国務大臣から多少積極的な御意見が示されまして、その点は私どもたいへんよかつたと思います。しかしなお多少確かめておきたい点がありますので、御質問申し上げます。
さて、今日日本に在留しておる朝鮮人、台湾人及び中国大陸出身の人々の御心配になつております点は、單に登録を切りかえて、在留資格を一定の期間更新しようという意味での在留の問題ではなくて、永住許可に関する問題、それが最も大きな問題となつておるのであろうと思います。單に在留資格を変更することなくして、在留期間の変更を申請するという意味だけのことでございますならば、国籍証明というような問題に触れることなくして簡單に従来の登録切りかえということでできると思いますけれども、永住許可の申請ということになつて参りますと、国籍証明書の提出という問題が起りますので、その点につきましても、昨日まで熱心に政府に対して私ども質問をしたのであります。きようは岡崎国務大臣の御説明によりまして、この問題につきまして一歩前進したと申しますか、解決に向つて相当進んで来たようでありましたので、ある程度私は安心できると思います。しかしなお念のためにお聞きしておきたいと思います。それは、朝鮮人及び台湾人の場合は、在留資格なくして在留し得られる期間及び資格につきましては、別に定める法律によるということになつており、その別に定める法律は、日韓会談等の関係もあるのではつきりしたことは言えないけれども、大体二箇年間ぐらいは余裕があるだろうというような大臣のお話であつたように思います。すなわち二箇年ぐらいは在留資格なくして、新たに退去を強制せられるような理由の発生しない限り、在留することができる、こういう一応の安心ができると思います。そうだとすれば、それだけの期間が経過いたします間に、朝鮮問題も何らか平和的な解決に到達するに違いないと、一応常識上想像されますので、国籍問題等につきましてもそれだけの余裕を與えておいていただきますれば、国籍証明書提出という問題なくして、とにかく二箇年間は在留し得る、その間に朝鮮問題も解決できるから、従つてまた在留問題につきましても、解決できる、その方法が見出される、こう私ども考えます。このように了解をいたします。そこで朝鮮の人につきましては、これで永住許可申請の問題に関連いたしましての国籍証明問題につきましては、大体一応の安心が行くと考えます。
そこで次に、中国の人の問題であります。これも実は昨日政府委員といろいろと質疑をかわしまして、大体安心の行く程度の御言明を得たのでありますけれども、念のために国務大臣からも御答弁を伺つておきたいと思います。大陸出身の人につきましては、この法律の改正案によりまして、在留資格なくして滞在し得る期間は、この法律が効力を発生いたしましてから六箇月間である、それから、永住許可の申請をする期間は三箇月だ、こういうことになつております。従つて三箇月の間に国籍証明書を付して、永住許可の申請をしなければならないということになつて来ます。そういたしますと、中国大陸出身の人々には非常に困難な問題が起る。なぜかと申しますと、たとえば日華條約――これは新聞に出たものでありますから、これを引用することは非常に迷惑だとおつしやるかもしれませんけれども、この間も問題になりましたが、読売新聞三月二十六日の朝刊に出ております日華條約の條文の第十一條によりますと、「本條約の適用上中華民国国民とは台湾、澎湖島の住民であつて」云々ということになつております。そこで国民政府から中華民国国民としての国籍証明書を得られる人々は、台湾及び澎湖島の住民ないしその出身の人に限るというように解決しなければならぬと思います。中国大陸に住んでおります人につきましては、本條約の適用上は中華民国国民とは称しない。中華民国国民とは台湾、澎湖島の住民であるということになつておりますので、従つて大陸出身の人々につきましては、国民政府から中華民国国民としての国籍の証明を得るということができない。こういうふうに見なければなりません。別の面から見て、中華民国国民政府の国籍は自発的にとりたくないという意味におきまして、これをとらない人もあるかもわかりませんが、そうでなくても、今申しましたような日華條約の條文からいたしましても、中華民国国民というのは、台湾、澎湖島の住民でありますから、それ以外の中国大陸に住んでおります者は、この條約上は中華民国国民ではないというふうに取扱われ、そうだとすると、大陸出身の人が中華民国の国籍証明書を得るということはできない。そうしますと、結局国籍証明をとることができない。しかも他方、三箇月の間に永住許可の申請をするために、国籍証明書をとらなければならない。こういうふうに短期間に限定せられておるのでありますから、そこで何か国籍証明書にかわる書類をもつてこれにかえるという便法をとつていただかなければ、大陸出身の人たちは在留期間の六箇月が経過してしまえば、永住許可の申請ができないという理由で、場合によつては、それが強制退去の理由にされて追放せられるということになる。この改正法ではそうなつておりますので、そういう場合に落ち込むという危險が出て来るのであります。そこで昨日いろいろと私どもは政府委員に質問いたしまして、国籍証明書というような公文書でなくても、何か従来日本に長く住んでおつたということの証明される書類があれば、国籍証明書にかえるものとして申請を受付けるというような便法をはかる。入国管理庁長官は、昨日そのようなお話であつたと思いますが、私はそれははなはだけつこうなことであると思います。そのように外務省令が――この管理令が法律化されるに従いまして、外務省令も新たに制定されることと思いますが、その外務省令におきまして、大陸出身の人々が永住許可を申請する場合に、国籍証明書がなくても、他の書類をもつて国籍証明書にかわるものとして受付ける。このことを新たに制定される外務省令の中ではつきりと書いていただきたい。長官は書くというような御言明でありました。私どもはそれで安心したのでありますが、それを念のために岡崎国務大臣からも承つておきたいと思います。これについてまずお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/8
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009・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 これはもう私からお答え申すまでもなく、何べんも繰返して申しておるのであつて、今度の台湾での交渉は、今まで台湾の人々は日本の国籍を持つていたわけであります。それが今度日本の国籍を失うのでありますから、何か国籍をとらなければならぬ。そこで台湾、澎湖島出身の人、あるいは居住者は、今度中国国籍をとる、こういうことをきめただけであつて、それ以外のことをきめておるわけではない。つまり国籍のなくなる心配のある人に対する規定なのであります。そこで大陸の方の人はわれわれの考えでは、それは政府が二つあるか、幾つあるかわかりませんが、中国人として過去何千年来ずつとおる中国の人というものは、上にある政府はかわるかもしれませんけれども、これは動かない。そこで中国の人は国籍は中国人と考えるのは、常識上当然であります。そこで中国人でこの国内にある人は、国籍証明書というはつきりしたものはないと想像されますから、従来の資料によつて、日本人でもない、ほかの国の人でもない、中国人であるという、ことがわかる程度の資料があれば、これでもつてその資料に基いて、その国籍証明書にかえて取扱いをする。むろんそういう趣旨のことは、外務省令等必要な箇所に掲載いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/9
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010・黒田寿男
○黒田委員 きようは質問の最終日になると思いましたので、念のために大臣からも伺つておきたいと思つたので右の質問をしたのでありますが、ただいまのようなお話でありましたので、安心いたしました。そこで朝鮮人、台湾人、及び中国大陸出身の人の、永住許可申請に関する手続の問題については、私は一応質問を終りたいと思います。
そこで次に強制退去の問題につきまして、念のために岡崎国務大臣に御質問申し上げたいと思います。私どもは強制退去の問題が起ることは、はなはだ好ましくないことと思うのでありまして、ただいま御説明のありましたような方法で、永住の許可が得られ、将来も無事平穏に日本に生活できるということになればけつこうなことだと思います。しかし、出入国管理令には、私どもの了解しがたいようなことが、強制退去の理由として列挙せられておりますので、そういう理由で強制送還を受けますような場合が起ると、そこに新たな問題が起ると思います。これは好ましくないことでありますが、万一そのようなことが起つたらそれは重大な問題になると思います。そこで、お尋ねしてみたいのであります。この強制送還の場合の送還先といたしまして、第五十三條に「強制退去を受ける者は、その者の国籍又は市民権の属する国に送還されるものとする。」こういうふうになつております。そこで問題になりますのは、朝鮮人にして大韓民国の国籍を持つていないもの、これは私の伝え聞くところによりますと、在留朝鮮人のほとんど大部分は、大韓民国の国籍を持つことを欲しないようです。何人ということは確かめておりませんが、大体大部分がそうだというように承つておるのでありますが、そうしますと、大韓民国の国籍を持つていない人が、不幸にして強制退去を受けるような問題が発生いたしましたような場合には、その者の国籍の属する国に送還されるというのでありますから、大韓民国に送還されることはない、こう考えなければならない、それからいま一つは、中国人の場合でありますが、中国、大陸出身の人が、強制退去を受けます場合には、台湾及び澎湖島の出身者としての中華民国国籍を持つておる者でないのでありますから、台湾及び澎湖島に送還されるということはない、こう一応解釈しなければならぬ。それではどこに送られるかということは、第二の問題といたしまして少くとも今申しましたように、台湾及び澎湖島に送られることはない、こう言えるのではなかろうかと考えます。何となれば、それらの地域に国籍がないからであります。ところが皆が心配しておりますのは、大韓民国の国籍を持つていない朝鮮人が、強制送還を受ける場合、大韓民国へ送還されるのではないか、この心配がある。それから大陸出身の人が強制送還を受ける場合に、台湾へ送られるのではないかという心配があるのであります。私は法文上から申しますれば、そういうことにはなり得ないと思いますけれども、そういう心配をみな持つており、もしそういうことになりますと、現在の国際情勢なり、政治情勢なりからいたしますと、強制送還を受ける人々の生命権の問題にも関するようなことになるのでありまして、万一日本がそのような取扱いをするということになつて参りますと、私は人道上から見ましても、非常に大きな問題になると思います。そこでどこに送られるかということは第二としまして、繰返して申しますが、大韓民国の国籍を有せざる朝鮮人は、大韓民国へ強制送還を受けることはない、それから大陸出身の人で、中華民国の国籍を持つていない人は、台湾、澎湖島等に強制送還をされることはない、そうであるかどうか、この点を確かめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/10
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011・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 大韓民国といいますか、先ほどから申しているように、統一した政府がないという状況が元来おかしいのであつて、われわれはそのうちには統一した政府ができるということを期待しております。その間に、かなり時間的にはまだ余裕がありますからして、適当な調整は講じられるものと考えております。しかしこの法文にもありますように、第一項で明らかにこう書いてあります。またそういうことができない場合には、第二項でどうするということが書いてあります。その法文に従つて行うのでありまして、われわれはまたここで特に申し上げておけば、大体実質的に強制送還をやられるものは、これはまあずつと先のことでありますが、不法に入国した者、それから国内で法を乱した者、この二つに主として限定される。そのほか非常に貧困で、日本国民の税金で長く養わなければならぬというような者は考えなければならぬと思いますが、主としてそういう問題に限られるのであります。ただ手続的の不備によつて、平穏無事におる人だけれども、何か手続がうまく行かないで強制送還というようなことはないつもりでおります。従つて強制送還される者に対しましては、われわれは同情は持たないのであります。同情は持たないのでありますが、そうかといつてそうむちやくちやをするわけでは、むろんない。そのときの事態に応じて適当な措置を講ずる、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/11
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012・黒田寿男
○黒田委員 いろいろとお話を国務大臣から承りましたけれども、私の質問いたしましたことに答えられていない。簡單にお答え願えばよろしいのでございまして、要するに大韓民国の国籍を持たぬ者は、大韓民国へは送られないのだ、大陸出身の人は、台湾へは強制送還を受けるということはないのだ、なぜならば、これらの人々は、それらの地域に対して国籍を持つていないのであるから。そういう国には送られないのだということをはつきり言つていただけばよろしい。そうするとどこへかということについては、第二項の問題になるのだ、こうおつしやつていただけば、それでよろしいのです。ただいまの岡崎国務大臣の御答弁ではその点はつきりしません。要するに私が申しましたような人々は第二項の問題になるのだ、第二項の第一号ないし第六号に列挙された国に対し本人の希望により送還されることになるのだ、こういうふうにおつしやつていただけばけつこうなのです。先ほども申しましたような心配がある、岡崎国務大臣は追放される者には同情しないとおつしやいましたが、これは何の気もなくおつしやた言葉かもしれませんが、私どもには非常にするどく響いて来るので、それを心配しておるのであります。強制送還に値するやつは、どんなふうになつてもいいというようなことで、万一大韓民国の国籍を持つていない人が、大韓民国に送還せられて生命の危險にさらされるというようなことがあつたら、これは重大な問題である、日本人は外国人がどういう思想を持つておりましようとも、外国人に対して冷血的態度をもつて対処すべきではない、私どもは国際間にお互いにあたたかい気持をもつて対処しなければならぬと考えます。そこで岡崎国務大臣は、同情を持たないとおつしやいましたが、そういう心持でおられるから、国籍を持つていない国に送還されるというようなことが起りはしないかという心配が起るのであります。そこでこうやつて私はしつこくお尋ねをしておるのであります。ですから私の指摘いたしますような者は、第五十三條第一項の適用を受ける人々ではなくて、第二項の適用になるのだ、こうはつきり言つていただきますれば、それで問題は解決できるし、私も安心できる。そうしてまたみんな安心すると思います。私の質問の趣旨はそこにあるのでありますから、どうかそれをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/12
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013・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 政府はむろん法律によつて行うのでありますから、この法律の解釈はこの通りであります。ただあなたのおつしやるのは、今二つの政府があるから、そこでそれを前提にして言つておられますが、私の方はそうじやなくて、もうこういうことが行われる時分には、一つの統一した政府ができるであろうという期待を持つておるという点で、違うだけであります。実際の措置は第五十三條なら第五十三條の法文の通り行うのでありますから、何も御懸念はない、またあなたのおつしやるようにイデオロギーが違うから、大韓民国に北鮮の人が連れて行かれたら殺されてしまう、そんなばかな話はこの世の中にあり得ないと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/13
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014・仲内憲治
○仲内委員長 簡單に、質問だけにしてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/14
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015・黒田寿男
○黒田委員 どうもしつくりしません。私は岡崎国務大臣と同じように、朝鮮が早く統一されることを望んでおります。かりに大韓民国政府によつて三十八度線以北鴨緑江東岸まで事実上の支配を受けるようになつて参りますれば、好むと好まざるとにかかわらず、そこで一つ問題の解決ができる。あるいはその反対に朝鮮人民共和国と申しますか、そういう名前を持つております別の政府が、朝鮮全体を事実上支配するようになりましても、そこでやはり問題は解決するのであります。けれども私が今問題にしておりますのは、そういう解決の行われない前に、万一強制退去の問題が起るようなことがあつたときに、私の考えますような心配が起るということであります。これは現実の問題でありますから、近いうちにわれわれが理想とする状態が起るのだから、何も現在の場合のことを考えなくてもいいというようには考えられないのであります。これはほんとうに朝鮮の人々の身になつて私どもも考えてみなければならないと思います。ことに岡崎国務大臣は、思想上の問題などで簡單に強制送還をするというようなことはしないとはおつしやつておりますけれども、昨日私が指摘いたしましたように、強制送還の理由の中には、「外務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行つたと認定する者」というようなことも最後の締めくくりとして書いてあります。いろいろと数項目にわたりまして、どういう行為をしたならば強制送還の理由になるかということが書いてありまして、そのあとにその他「外務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行つたと認定する者」は、強制送還をすると書いてある。日本の旅券法にはこれに似たような言葉が用いられておりますが、しかしその場合は「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為」こうなつております。この出入国管理令の場合は「著しく且つ直接に」という限定がないのでありますから、非常に広く解釈できる、ある一個の思想を持つておれば、その者がどんなことをやつても、それが日本の利益に反するというように、あるいは公安を害する行為を行つた、ちよつとしたことでもそういうように解釈できるおそれがあるのです。これは私は昨日も申しましたが、非常に悪い條文である、そういう條文があるから朝鮮の人々は心配しておる。そこで私はそういう人々に心配を與えないように政府がしていただきたいと思いますので、これをお尋ねしておるのであります。一切の仮定論をやめて、法文の上に立つて、もう一度繰返しますが、大韓民国の国籍を持たぬ者、それから中華民国の国籍を持たぬ者が、大韓民国及び台湾に送還されることはない、そういう人々は第二項によつて送還されるのである。そうであるかどうか、イエスかノーかというだけのお答弁えを願えばそれではつきりします。それでよろしい、ほかのことはおつしやらなくても、私に対し答弁してくださいましたことになるのであります。私はそれだけをはつきりしていただきませんと安心ができない。委員長から私に対し発言の時間が長くなつたという御注意もありますし、なるべくはつきりと簡單にお話願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/15
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016・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 黒田君の第一点の問題は、いやしくも日本国に居住する者は、日本国の利益もしくは公安に害になるような行為をすべきものではないということは当然であります。それを旅券の発給の條件なんかと一緒にされてははなはだ迷惑でありまして、ここに居留を許す以上は、日本の利益、公安は一切害さない、こういうことでなければならないのであります。
第二の点は、私も簡單に申します、この法文の通り行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/16
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017・黒田寿男
○黒田委員 そうしますと、法文の通りということになると、国務大臣のおつしやる法文の通りということを具体的に言いかえると、どうなるか。具体的な問題として取扱わなければなりません。大臣はお答えになりませんので、私から具体的に言えば、先ほど申しましたように大韓民国の国籍を有せざる朝鮮人は、大韓民国に強制送還されるということにはならないのだ。それから中国大陸出身の人で條約上いわゆる中華民国の国籍を持つと解釈せられない者は、台湾に送還されないということになるのだ。このことがこの第五十三條の第一項について言える。第一項の適用を受けないとすれば、そういう人々のことは第二項の問題になるのだ、法文を具体的に解釈すればこうなると思うのですが、どうですか、こう質問しておるのでありますから、そうなるかならぬかをお答えを願いたいと思います。法文の通り解釈するというだけでなくて、私の言う通りになるかならぬか、イエスかノーかだけでけつこうであります。どうもそうしないと安心できないのであります。その点を御答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/17
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018・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 だからこれは先ほどから申すように、今はまだ仮定の問題であつて、そこにどういう政府がそのときにあるのか、これは別問題でありますから、そのときの政府を見て法文通りを行う、今とは違うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/18
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019・仲内憲治
○仲内委員長 もう黒田さんに許しません。大臣も参議院の本会議に出なければなりませんから、どうぞひとつ……。林百郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/19
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020・林百郎
○林(百)委員 私は要約して簡單に四点だけ質問させていただきます。
第一はこれは朝鮮の諸君のあげての希望でありますが、外国人登録令あるいは出入国管理令というのは、これは新たに終戰後日本に出入りする一般の外国人に適用するもりであり、この必要のためにできたと私は思うのであります。ところが日本にいる朝鮮の諸君あるいは台湾の諸君というのは、御承知の通りに、日本の従来の国策に協力をして来、並々ならぬ関係のあつた諸君であるということは、岡崎国務大臣自身本日劈頭おつしやつておるところであります。明治以来何十年となく日本の国に日本人として生活して来た諸君であり、また日本人の血もお互いに流れ合つておる諸君であります。しかもことに最近日本に来ております朝鮮の諸君の日本の国へ入つて来ました年数あるいはどういう方面に入つて来たかということを調べてみますと、大体太平洋戰争中石炭だとか金属、土建、工場――要するに太平洋戰争で日本の若い人たちが戰争の人的資源として提供されたあと、最も困難な労働力を埋めるために入つて来た諸君であります。大体数字を見ますと一九四二年が十一万、一九四三年は十三万、一九四四年、終戰の直前は二十八万、これがほとんど石炭、金属、土建、工場、こういうような最もつらい苛酷な労働條件のところへ当時入つて来て、営々としてこの労働を強制されて来たのであります。ところがそれが終戰後になりますと、ほとんど何らの保護もなくしてもうそのまま裸のまま追い出されてしまつている。今まで積み立てておつた積立金すらもらえないどころか、国へ帰る旅費すらもらえなかつたということは、これはここにいる自由党の委員の中でも、土建の方面に関係されている委員の方もおいでになつて、その点おわかりだと思いますが、非常に苛酷な條件で取扱われて来ている。しかも、それが終戰後どうなつているかというと、終戰後はほとんど銀行の融資も受けられなければ、信用組合の設立も許されなければ、生業資金や住宅資金も受けられない。それからせつかく仲間同士で生活を守ろうとしてつくつた朝鮮人連盟は解散を命ぜられている。それからせめて自分たちだけで学校でもつくつて、子弟の教育をしようとすると、これも禁止されているという状態なのであります。こういう人たちをイギリス人だとかあるいはフランス人だとかこういう日本よりずつと生活程度の高い人たちと同じレベルで取扱つて、これを出入国管理令で取扱う、あるいは外国人登録令で同じ資格で取扱うということは、私はどうしてもこれは歴史的な因縁をまつたく無視した取扱い方だと思うのであります。富山の日朝親善協会から来ている陳情を見ますと、戰争当時日本へ連れて来られた人たちは、いわゆる人間狩りという形でそこらにいる人をやたらにかり立てて、これを朝鮮の役場の事務所にとじ込めて――一定の人員になるまでは、畑であろうとあるいは仕事場であろうと、どこであろうと若い者を連れて来てそこへとじ込めて、それから日本へ強制的に連れて来た。いわゆる人間狩りという言葉でいわれているほどのひどい取扱いを受けたということを言われているのであります岡崎国務大臣はにやにや笑つて横の方を向いているのでありますが、実際そういう観点から朝鮮の諸君や台湾の諸君を取扱うからこそ、ゆゆしい問題が起きて来ると私は思うのです。
そこで私が第一にお伺いしたいことは、こういう歴史的な因縁もありますし、またむしろわれわれは、この際朝鮮や台湾の諸君に、われわれが犯して来たいろいろな過去の罪に対して涜罪をしなければならないという立場にすらあるのではないかと考えられるのでありますが、そういう意味で、やはり外国人登録令あるいは出入国管理令については、従来日本人として取扱われておつた台湾の諸君あるいは朝鮮の諸君には例外的な規定を設けて、適用しないという措置を講ぜられたらどうかと思いますが、これについてまず第一にお聞きしたいと思うのであります。
ということは、外国人だとはいいますけれども、税金は全部納めているのであります。学校もわれわれの学校で教育をしているのであります。税金のごときは特に日本人よりももつと苛酷な條件で課税徴収されているのであります。税金を納めている、日本の学校へは子供を出している、長い間日本人として取扱つて来た。これをフランス人やあるいはイギリス人と同じに取扱つて、しかも貧困者で日本の政府のやつかいになる者はこれを追い出すとか、あるいはちよつと外国人登録令に違反した者は強制送還するとか、それからわずかな罪で一年くらいの罪にななつた者もこれを送り返すとか、あたかも極悪人のごとく――岡崎国務大臣の先ほどの表現を借りて言つているのでありますが、こういう條件でこの人たちを日本から強制送還する。しかも強制送還する先は戰乱のちまたである。できれば早く本国へ帰りたいのだけれども、今二つの政府があつたり戰争中で帰れないのだから、しばらくここに置いてもらいたいという人たちを、こういう苛酷な條件で、日本の国よりはずつとレベルの高い諸外国人に適用するこの法令で同一に取扱うということは、私はどうしても歴史的な因縁を無視したやり方だと信じますが、こういう特別な措置を考えられているかどうかということをまずお聞きしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/20
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021・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 外国人はみな外国人でありまして、それに対して差別待遇をするつもりはごうもありません。もつとも林君の言われるように朝鮮、台湾の人々は特殊の関係にあるのですから、その適用にあたつては、先ほど繰返していうように便法は講じますけれども、差別待遇を法律上設けることは、これは基本的人権からいつてもいけないのであります。差別待遇は設けません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/21
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022・林百郎
○林(百)委員 差別待遇で扱うことは基本的人権を侵害すると言いますが、あなたの方は苛酷な條件だけを同一に扱うので、これは明らかに基本的人権を侵害していると思う。かつて日本人であり、日本で税金を納め、日本の学校で教育をさしているものを外国人として取扱う。同じ條件で扱うなら、たとえば行政協定では、軍の工事だといえば、軍人の家族はもちろんのこと、土建業者にしてもあるいはブローカーにしろ、これは全然日本の出入国管理令やあるいは外国人登録令を適用しないじやないか。大きな顔をして日本の国をまるで自分の国のようにして自由に出入りさしているじやないか。なぜアメリカ人にも――軍人の家族とか日本の国に工事をするとかあるいは物資の調達をするような人たちにまで一歩譲つてまるで軍人と同じ取扱いをするということは、ちつともあなた公平な取扱いじやないと思う。だから岡崎国務大臣は一切の外国人に対して平等な取扱いをすると言うけれども、あなたはアメリカ人に対しては平等どころか、日本人以上の待遇をしている。従来日本の国策のために大きな犠牲を拂つて来た朝鮮や台湾の諸君には、非常に冷酷な取扱いをする。決して私は平等な取扱いじやないと思う。あなたは平気な顔をしておりますが、このことはやがて四億五千万の中国の人たちを敵にまわすことになります。二千万の朝鮮の諸君を敵にまわすことになると私は思います。あなたのことを考えても、あなたのためにも私は一生懸命に言つているんです。先ほどから馬耳東風、にやにやしていますが、やがて私の言つたことがあなたは身につまされて来るときが必ず来ると思いますから、今にやにやされていることはけつこうであります。念のためにあなたにこのことを警告しておきます。その次にお聞きしたいことは、国籍の選択の問題でありますが、今実際問題として朝鮮に二つの政権があり、それから中国には、今の政府の側でいえば、われわれの見解は別でありますけれども、国府政権があり、また北京のり政権もある、こういう状態であまりす。これは明らかに世界人権宣言の第十五條からいいましても、やはりいずれの国籍を選ぼうとも自由にまかすべきであつて一方の国籍を選んだからといつて、それを事由にしてこれを強制送還するというような措置は当然すべきでないと思う。国籍の選択は完全に自由にすべきであつて、日本にいる朝鮮の諸君が韓国の国籍をとらないからといつて、それを理由にして強制送還すべきものでないと私は思いますが、この点について岡崎国務大臣は、世界人権宣言で明確に言つている国籍の選択は自由にすべきだということを尊重されるかどうか、これをお聞きしたいと思う。ということは、先ほどの各委員の質問また昨日の各委員の質問、また朝鮮の諸君の気持を聞きましても、何も朝鮮の人民共和国を支持するとか、あるいは南鮮を支持するとかいうことでなくて朝鮮に統一した政権ができるまでは自分たちがたとえば韓国なら韓国の国籍をとるということは、母国の統一をそのために阻害することになると思うのだから、自分の母国に統一の政権ができるまでは、自分たちに一方の籍を選択さして、その籍を持たないことで間接直接強制送還するというようなことは、やめてもらいたいということを言つているのであります。この点について国籍の選択を自由にし、世界人権宣言で保障されているこの権利を十分尊重するかどうか、この点を第二点として聞いておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/22
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023・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 国籍をどこかの国籍に強制してとらせるようなことは一切いたしません。自由にいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/23
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024・仲内憲治
○仲内委員長 林君簡單にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/24
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025・林百郎
○林(百)委員 あと二点だけです。国籍の選択は自由と言いますが、そうすると韓国の国籍でなくて、朝鮮人民共和国の国籍をとりたいという人たち、あるいは母国に統一の政権ができるまでは、一方の籍を選ぶということはひとつ留保してもらいたいという諸君、あるいは台湾、中国の人たちで、北京の政権を支持したいという人たち、こういう人たちを強制送還するとか、あるいは差別的な待遇とかをしないということはあなたここで保証できますか。そうしてくれるならば、それであなたが差別待遇しない、あるいは国籍選択の自由を侵害しないとこうことについて私は納得できます。その保証をあなたがここで與えられるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/25
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026・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 先ほど申しているように、そういう場合についてはいろいろ便法を講じておる。その便法の内容は先ほど明らかにした通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/26
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027・林百郎
○林(百)委員 便法々々と言いますが、昨日からその便法をついているのでありますが、全然便法の内容がわからないので……。(「だから便法だよ」と呼ぶ者あり)便法と言うと日韓会談と言うし、日韓会談と言うと便法と言いますし、昨日から両方で逃げ合つているわけです。これは政府の苦しいところだと思いましてよく衷情はわかります。そこで第三点で私がお聞きしたいことは、日韓会談の諸決定ですが、これは明らかに朝鮮全土に対して統治権を持つている政府とはどうしても事実上言えないと思うのです。従つて今日韓会談で行われている諸決定については、在日朝鮮人で統一政権ができるまで待ちたいという諸君、あるいは朝鮮人民共和国を支持したいという諸君、要するに在日朝鮮人の人たち全部にはその決定を強制することはできないと思いますが、この点について岡崎国務大臣の答弁を聞いておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/27
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028・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 それは大韓民国政府と国内の朝鮮人との関係であつて政府としては別に干渉しません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/28
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029・林百郎
○林(百)委員 そうすると、政府の外国人登録令あるいは出入国管理令の在日朝鮮人に対する適用は日本の政府の問題になると思いますが、これについては、日韓会談でこう決定したからといつて、これを在日朝鮮人の諸君の全部に適用させ、それに反する者に対しては強制送還するとかいうような措置は、日本政府としてはしないというようにあなたの答弁をとつていいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/29
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030・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 そこが便法であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/30
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031・林百郎
○林(百)委員 大体はそう出ると思つたのです。日韓会談のことを聞けば便法だと言うし、便法のことを言えば大韓民国のきめることだと言う。ここで結局あなたは便法だとかなんとか言つて鋭鋒を逃げているのでありますが、実際は大韓民国の国籍を押しつけてこの諸君を、言うことを聞かない者は韓国に強制送還するということはわれわれは想像できるのであります。ただあなたは、日本にいる朝鮮の諸君やあるいは民主的な諸勢力の鋭鋒を避けるために、一片のわずかな良心があるからそういうような逃げ口上をするのじやないかと思いますが、卑怯だと思うのです。便法と言うならば、具体的につ日本の政府の方針はこうだ、これで日韓会談に臨んでいるということをはつきりここで言われたらどうなのです。そうでなかつたら便法々々と言つたつてそれはわれわれ議員を欺瞞することじやないですか。日韓会談の内容を聞けば便法だ、便法を聞けばそれは大韓民国がきめることだと言う、結局われわれを愚弄して、便法という言葉の魔術でわれわれの国会の審議を欺瞞していることになるのじやないですか。いくら私が言つても、あなたの性分は直らないからしようがないと思いますが、もう少しまじめにやつてもらわなければ困る。あなたは官僚出身だから、言葉の先だけでごまかせば、世の中がごまかされると思つているのだろうが、それは誤りですよ。若い私があなたにこんなことを言うのもどうかと思うが、もう少し考えてもらいたい。いくら聞いても性分は直りませんからどうにもしようがありませんが、最後に私はお聞きしたいことがある。これは先ほどの第一問とも関係しておるのでありますが、第一問は、従来日本人であつた中国や朝鮮の諸君に対しては、この適用は除外したらどうかということを言いましたが、私はここでもう一歩讓りまして、少くとも朝鮮に事実上も法律上も完全な統一の政府ができて、そこと日本国との間に正常な外交関係が成立するまで、せめてそのときまで今の在日朝鮮人の諸君の取扱いについては、外国人登録令あるいは出入国管理令の適用を除外するとかいうような特別な便法を講じられれば、在日朝鮮人の悲願の一部を達したことになると思いますが、その一片の好意すら岡崎国務大臣はお持ちになるのかならないのか。アメリカ人にあれだけ讓歩して、沖縄に原爆の基地まで提供するようなあなただから、せめてわずかなこのくらいのことぐらいは、在日朝鮮人の諸君に聞いてやられる一片の良心がないのかどうか。それだけをお聞きして私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/31
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032・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 沖繩に原爆の基地を提供したという話は私は聞いておりません。(「知らないのはあなただけだよ」と呼ぶ者あり)つまり、統一政府ができるまでの便法というのが先ほど申している便法で、たとえば、国籍証明書を出さなくてもよろしい、従来の登録証明書で、そのおのおのの記載してある国籍で通用するのだというのがつまり便法であります。その点は先ほど黒田君にも、あるいは佐々木君にもお答えした通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/32
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033・仲内憲治
○仲内委員長 成田知巳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/33
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034・成田知巳
○成田委員 簡單に一、二点お尋ねいたします。先ほどの佐々木委員の質問に対するお答えで、いわゆる便法という意味の内容が大分明らかになつたのですが、二年間は永住許可の申請をしなくても、そのまま朝鮮人は在住できるというような御答弁であつたのですが、それに関連しまして、日韓会談が進行中であるから、はつきりしたことは言えないけれどもということも答えておられるようであります。私たちが思いますのに、永住許可を與えるかというかということは、日本の国内問題なんです。日韓会談に左右される性質のものではないと思うのであります。岡崎さん自身も認められるように、長年日本にいる朝鮮人というものは日本のために非常に貢献があつた。こういう人人に永住許可をするという気持があるならば、日本政府自身の意思で、この事実に基いて無條件に永住許可を與えていいのではないか。何も日韓会談の経過を待つ必要はないと思いますがどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/34
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035・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 先ほどの佐々木君の御質問が、日韓会談の内容が推測記事として出ている。それによればというお話であつたから、日韓会談の内容についてははつきり言えないと言つておるのであります。永住許可を與えるかどうかということは、われわれの国内の問題であるが、これは、平穏に法律を守つてくれる人で日本に永住したい人は認める、こういうのが原則であります。しかし具体的に言いますと、万一それが非常に法を犯した場合にどこへ送り返さなければならぬかというようなことから、国籍の問題も出て来ればいろいろの問題が出て参ります。原則はそういうことです。これはどこまでも――アメリカのような移民を制限している特殊なところは別ですが、普通はそうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/35
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036・成田知巳
○成田委員 従来政府の答弁は、日韓会談の経過に待たなければ、第二條六の内容はきまらない、こういう答弁をしておられたのですが、ただいま岡崎国務大臣は永住許可の問題と日韓会談とは無関係だということをお答弁になつた。そうしますと、なぜ二年という数字をおつけになるのか。朝鮮の特殊性から考えますと、そういう制限は全部撤廃しまして、当然無條件に永住許可を與える、こういう趣旨に出るのが正しいのじやないか。しかもそれを法律で明確にするのが当然じやないかと思うのですが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/36
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037・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 私は無條件に何でもどんどん許すというのじやなくて、たとえばその人間がどこの国籍を持つておるかということがはつきりするのが、一つの永住許可の條件であります。それは万一の場合に送り返さなければならぬこともあるかもしれません。いろいろの関係がありますから、そこで日本におる朝鮮人なり、あるいは台湾の人なりは国籍を今後失つてしまう。今までは日本の国籍を持つておつた、それが日本の独立と同時にこれらの地域は日本から離れます。ところが今までは日本の国籍を持つていたけれども、今度は日本から離れて日本の国籍を失うから、何か国籍を持たなければならぬ。そこで今大韓民国政府とも、その支配下にある人々に韓国の国籍を持たせるという話をいたしておる。いつまでも無国籍でほつておくわけには行かない。しかしすぐあしたからどこの国籍を持てというわけには行かぬのであるから、そこで一定の期間を設けて、その間に登録して国籍をとるようにさせる。そうしてその上で永住の許可のことを考える、こういうことになるのがあたりまえのことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/37
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038・成田知巳
○成田委員 どこの国籍を持たすかということは、送還の問題について必要だということを言われたのですが、現在日本におられる永住朝鮮人というものは、朝鮮の人であるということはわかつておる。單に韓国籍であるか、北鮮の国籍であるかということを区別する必要はないので、朝鮮人であるということがわかつておれば、形式的な国籍の問題でなしに、無條件に永住許可を與えてしかるべきじやないかと思いますが、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/38
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039・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 わかつておるからと申して、やはり登録しなければわからないのであります。またこれに対しては強制送還だけの問題じやありません。朝鮮なり台湾なりの官憲が保護をしなければならぬという点も出て来るのであります。いずれにしてもこれはちやんと登録して、あなたの保護を受けるということにならなければいかぬわけであります。そこで無條件というわけには行かないので、どこの国籍のある人だから永住許可を與える――無国籍などということは考えるべきでないのであります。しかしただちに今現実の事態として、大韓民国政府は初めは統一政府として生れたはずであつたのでありますが、一部の地域にはまだ権力の及んでいない、こういう事実は認めなければならぬわけでありますから、今後六箇月のうちに登録する場合には、大韓民国政府の国籍証明がなくても今まで通り登録ができる、こういう便法を講じて、だんだんに不便をかけないようにして、この法律に従うような措置を講じて行こう、こういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/39
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040・成田知巳
○成田委員 今岡崎さんもお認めになりましたように、朝鮮の李承晩政権が完全な統一政権じやない、そのために今便法を考えておるという答弁があつたのですが、そういたしますと、その状態が今後続く限り、やはり現在の便法であるところの国籍証明がなくても永住許可を認めて行く、こういう御方針だと解釈してよいと思うのですが、いかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/40
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041・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 そういうことにはなりません。永住許可というものは一つの国で與える特権であります。これに対して相手の国の国内がまとまらないとか、相手の国の責任においてまとまつたものができない、それならこつちがいつまでも永住許可を與えなければならぬということはとうてい成り立たないことであります。しかし先ほども申しますように、長い間日本にいた人で、平穏無事にいた人をいたずらに苦しめるというのは趣旨じやないのですから、もしかりに何かそういう困難な事態が将来に起るならば、そのときにまた便法を考える、こういうことしか考えられないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/41
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042・成田知巳
○成田委員 将来の便法というのは、現在お考えになつている便法と同じだと考えてよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/42
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043・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 現在考えておりますのは、ただちにそういう人たちに居住許可を與えるという意味じやなくして、一定の時間まず国内に居住することを認めて、その間に事態の治まるのを待つて見よう、こういうことであります。また将来そういうような困難が起れば、またこれを何とかもう少しそれでは先に延ばすとか、何とか考えるよりしかたがないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/43
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044・戸叶里子
○戸叶委員 今のに関連して。岡崎国務大臣のお話を聞いておりますと、法案の内容から受けるよりも、もつと人道主義的な立場に立つていらつしやるように私には思われますけれども、法案を見た人には、そういう岡崎さんの誠意のほどは通じないのじやないかと思うのです。そういう意味におきまして、岡崎さんのお気持のほどを何かこの法案の中に現わしていただきたいと思うのですが、現わしていただく意思はないかどうか。そしてまたそういう気持が現われているとおつしやるならば、一体どこに現われているかを一応聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/44
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045・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 今回の法律はどこの国民にも全部適用する法律でありますから、ここでもつてはつきりした区別をつけるわけには行かないのであります。しかしこの法律の第二條第六項にありますように、「別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間が決定されるまでの間」ということになつておる。つまり別の法律、またさらに詳しく言えば、それに基く外務省令というようなもので、お話のような趣旨のことを明らかにしよう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/45
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046・戸叶里子
○戸叶委員 この別の法律ということは私も了承したのですが、これが非常に日韓條約と寄接な関係があると思うのです。そうしますと、日韓條約はまだ交渉中ではつきりおつしやれないというお話でございますが、新聞などに発表されたところによりますと、今の朝鮮国籍を持つている人たちがいろいろ不安を覚える点がたくさんあるのです。朝鮮という国籍を持つておりましても、必ずしも朝鮮人民共和国を支持する人たちだけでなくて、朝鮮の統一を願つている人たちがいると思うのです。そういう人たちの悲願もある程度くんであげなくてはならないと思うのですが、そういう点から見ますと、どうも別の法律で定めるという岡崎国務大臣のいわゆる便法というものが、何か私どもには適当にこの場をのがれるためのようにしか思われないのですけれども、その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/46
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047・岡崎勝男
○岡崎国務大臣 今まで私が申したようなことが、今度つくる法律なりあるいはそれに基く省令なりに出ておりませんでしたならば、私はまたこの委員会に来てつるし上げにあうのであります。そんなことはできるわけがない。私の申したことはみな速記録に載つておるのであります。そういう趣旨のことをちやんと別の法律に盛るつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/47
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048・仲内憲治
○仲内委員長 ただいまの両案に関する質疑はこれにて終了することといたします。
この際暫時休憩いたします。
午後零時九分休憩
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午後零時三十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/48
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049・仲内憲治
○仲内委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案及び多国人登録法案を一括とて議題といたします。両案につきましては質疑は終了しておりますので、ただちに討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/49
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050・林百郎
○林(百)委員 修正動議があるのですよ。修正動議をやつてから討論に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/50
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051・仲内憲治
○仲内委員長 それでは成田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/51
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052・成田知巳
○成田委員 ただいま議題になつております法案に対しまして、改進党を除く野党各派共同の修正要求の動議を提出いたします。簡單にその内容を申し上げます。
一、一九四五年九月二日以前から引続いて日本に居住し、居住、営業の既得権を持つている在日朝鮮人及び華橋は本法律の適用から全面的に除外する。
一、国籍選択自由に関する世界人権宣言の精神に従う。
一、一九四五年九月二日以前から居住している者に対しては、朝鮮の完全な統一政権と日本国との間に国交が行われるまでその既成事実を認める。
一、日韓会談の諸決定は南朝鮮を日本との会談であるゆえに、右の会談の結果を全朝鮮人に強制するがごとき何らの措置もとらない。これらの條項を織り込んで本法案を修正すべしとの動議を提出する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/52
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053・北澤直吉
○北澤委員 ただいまの成田委員の修正要求の動議は、討論を省略して、ただちに採決されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/53
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054・仲内憲治
○仲内委員長 ただいまの北澤君の動議を採決いたします。北澤君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/54
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055・仲内憲治
○仲内委員長 起立多数。よつて討論を省略することに決しました。
それでは成田君提出の修正要求の動議について採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/55
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056・仲内憲治
○仲内委員長 起立少数。よつてただいまの成田君提出の修正要求の動議は否決せられました。佐々木盛雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/56
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057・佐々木盛雄
○佐々木(盛)委員 私はただいま議題となりました外務省関係ポツダム諸命令の措置に関する法律案並びに外国人登録法案に関し、一括して、自由党を代表いたしまして、賛成の意見を申し述べたいと思います。
両法案は平和條約発効後における外国人の出入国並びにその外国人登録に関することを規制する法案でありまして、いずれの独立国家といえども、当然に規律するところの法律であると考えます。ただこれらの法案において特に問題となりました次の点について所見を述べておきたいと思います。
外務委員会におきまして、両法案の審議の過程におきまして、最も論議の焦点となりましたものは、主として朝鮮人並びに台湾人の国籍に関する問題でございます。この点につきましては、原則的な方針は別として実際の面においては無用の混乱を回避するために、政府においては特別の考慮あるいは特別の便法を考えておるという確約がございました。さらに本日私がこれらの点を一層明確にするために、政府の見解をただしたのに対しましても、まず第一には、平和條約発効後六箇月後に行われる登録の切りかえの際には、必ずしも国籍証明書の提出を必要としないで、現在の登録証明書に記載されておる国籍名のままで書きかえを行うことができるという言明がございました。
さらに第二点は、ただいま継続中の日韓会談に関連して私が質問したことに対して、政府側におきましては、朝鮮人の永住許可の申請は、平和條約発効後二年以内にすればよい、従つて永住許可を受ける者も、しからざる者もおおむね三年間は国籍のいかんを云々されることなく、一応在留することが許されるであろうとの答弁でございました。政府の再三にわたる説明によりますと、日本に長年居住し、遵法精神もゆたかで、善良な朝鮮人並びに台湾人に付しましては、好意ある便法が講ぜられるということははつきりと答弁があつたところであります。従つて本法案をながめまして、この法案の底に人道に反するとか、世界人権宣言の趣旨に反するとかいうような点が少しもないとわれわれは信ずるわけであります。私どもはアジア諸民族との善隣友好関係を心から祈念してやまないのでありますが、しかしまたわれわれは同時に良識ある国民は法秩序と社会秩序というものを絶対に守らなければなりません。この際私は特に申し添えておきたいのでありますが、この両法案の審議にあたりまして、外務委員会あてあるいは委員長あるいは委員に対して無数の電報郵便等によりまして、平和條約発効とともに国籍を離脱することになつております人たちから陳情が寄せられたのであります。私たちはそれらの人たちの心情に思いを寄せますときに、まことに御同情にたえないものを感ずるわけであります。しかしながらそれらの陳情嘆願の中には、不穏の言辞をもつて議員を脅喝するものがあつたわけでありまして、日本国の国会におけるところの議員の自由の論議に対し、脅迫をもつて本法案の審議を妨害しようとする意図が一部にあつたということは、私は東亜民族の善隣友好を所念する立場からも、あるいは国会の尊嚴擁護の立場からも、まことに遺憾と存ずる点を特に強調しておきたいのであります。平和條約の発効によつて国籍を離脱することになつております諸君の大多数のものはかつて日本国民でりました。われわれと苦楽をともにし、ともに信じ、ともに相助けて参つたところの信ずべき同胞であります。従つてこれらの人たちはおそらく遵法精神に徹しました良識ある人たちであると信ずるわけであります。これらの人たちが良識と遵法の精神に立
つ限りにおいては、政府再三の言明にもあります。ごとく、きわめて友好的な、きわめて好意あるあらゆる措置を講ずるということが、この両法案の底を流れておる精神であろうと考えます。
ただ私は最後に、この法案成立の上は、政府におきましては先ほど幾たびか言明しておりましたように、無用の混乱を回避し、善隣友好の関係を保持するのみならず、さらに進んでこの善隣友好の関係を緊密にするというような立場からも、本法の運用に遺憾なきを期し、もつて東亜民族の親善と繁栄の上に寄與されるよう、特段の注意をされることを特に申し添えまして、本法案に賛成の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/57
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058・仲内憲治
○仲内委員長 山本利壽君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/58
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059・山本利壽
○山本(利)委員 私は改進党を代表いたしまして、ただいま議題になつておりますポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案並びに外国人登録法案に対しまして、賛成の意を表するものであります。
近くわが国は講和條約の発効を見まして独立国となるわけでありますが、独立国が自国にとつて好ましからざる者の入国を制限したり、また一旦入国を許可した者に対しても、治安を乱す者等に対しては送還する等のことは国際通念であり、またその取扱いに関してもすでに国際的慣例が樹立されておるのであります。こういう法案は独立国となるからには、いずれの国といえども必ず持つべきものでありまして、わが国も独立に際して必要な法案であるという点が第一点であります。
そしてことにわが国においては、近く連合国最高司令官の入国許可権が停止され、あるいは新たに日本籍を離脱せんとする朝鮮人、台湾人の問題があり、さらに北緯二十九度以南に本籍を有する人々の渡航の制限に関する問題があり、いろいろな関係がありますので、急いでこれらの法案を必要とするということを考えるのであります。但しこの法案の審議にあたりまして、多くの委員は、善良なる朝鮮人、台湾人あるいは中国人その他がしいて追い返されるのではあるまいかという点が非常な懸念であり、論争の中心であつたと考えるのであります。その点に関しましては、岡崎国務大臣以下政府委員からいろいろな答弁があり、ことに本朝来の答弁によつて、今までの疑問の点がある程度明確になつたと思いま旧す。それにもかかわらず、なお政府がこの法律の適用にあたつていかようなるごまかしをするであろうかという懸念を持たれるということにつきましては、今日までの現内閣の諸政策において、すこぶる反動的な処置が多かつたということを世間の人が認めておるからではないかと思うのであります。でありますから、この朝鮮人あるいは台湾人等の処置に関しまして、特に送還等の問題につきましては、非人道的な処置がないように、繰返し、この点を強く要望するものであります。
さらにいま一つは、この二十七年度の予算案を見ましても、一億六千万円という多額の費用が不法入国者の収容並びに送還のために組まれておるのでありますけれども、今日までのこれらの取締り及び取扱いについて考えますのに、同一の人間が繰返し不法入国をしておるという事実が多いのであります。これらのことは相手国において受入れの手段及び設備に非常なる不備があるということ、及び相手国の政府における責任観念の稀薄ということも考えられるのでありますから、わが国内の法律を制定すると同時に、この取扱いに対しては相手国の政府においても嚴重に、わが国の法律の効果を上げるように交渉していただく必要があると考えるのであります。さらに場合によりましては、わが国のそれらに対する費用の分担をも要求し得るのではないかと考えるのであります。
第三には、敗戰の結果わが国の国民が朝鮮、台湾その他から全部引揚げておるのであります。それだのに多数の外国人が内地に平穏に住むということは、領土が狭く人口の多い日本として、いかなるものであろうかということに対して、多くの国民は疑念を持つておるのであります。しかしながら実際の問題として、人道上、経済上あるいは現在の国際関係から申しまして六十数万の外国人を全部送り返すということは不可能な状態にあります。ここにおいて私が強く要望いたしたいところは、将来において日本の国民もまた、今後日本にその国の人々をとどめておく限りにおいては、最小限度それだけの数の者はそれらの国々へも居住を許さるべきであるという方向に向つてあらゆる会談、たとえば日華会談であるとか日韓会談であるとかいう機会をとらえて、わが政府は十分な主張をしていただきたい。将来日本人が真の民主主義的な文化国家の国民として海外に発展し得る第一歩を築いていただきたい。
これらの点を要望いたしまして、改進党は本案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/59
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060・仲内憲治
○仲内委員長 戸叶里子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/60
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061・戸叶里子
○戸叶委員 私はただいま議題となつでおりますポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案並びに外国人登録法案に対し、社会党を代表いたしまして反対するものでございます。
私どもは、この法案の目的とする外国人の本邦への出入国を規制する法律には、独立国としての尊嚴を保つ上におきまして反対するものではございません。ただ今日この法律の対象となる人たちは、在日一般外国人の全部ではありますが、何と申しましても、数の多い朝鮮人と華僑の人たちがおもな対象であることはいなめないと思うのでございます。ところがこれらの人たちは、終戰前から居住しておる華僑の方の四万五千名、朝鮮人六十万余りでありまして中にはすつかり日本の風俗習慣になじみ、また日本婦人をその妻として、その子供は朝鮮あるいは中国へは一度も帰つたこともない、ましてや言葉も日本語のみ話すという人も多いのであります。ことに朝鮮の人たちはかつては日本人として取扱われており、また戰争中は徴用もせられて参りまして、日本に極力して来た人たちもたくさんにございます。ところがこの出入国管理令の内容を見ましたときに、何らこれらの人たちに対する考慮が携われていないのでございます。もちろんこれらの人たちの中には、終戰後のどさくさにおきまして、日本人に対していろいろの迷惑をかけた人もたくさんあつたことは私も認めます。また私個人といたしましては迷惑をかけられたこともございます。しかしそれは個人の問題であり、また何がゆえにこれらの人々がそのような態度、すなわち社会悪を犯すようなことになつたかの原因も、十分同情して考えてやらなければならないと思うのであります。かつ将来のアジアの親善という立場から考えましたときに、今ここに苦しんでおる朝鮮、中国の人たちに対して十分な考慮を拂い、朝鮮が統一され、中国が一つに統一するまで、大きな愛情のある対策が立てられなければならないと思うのでございます。ことにこの法令を見ましたときに、日韓條約の成行きによつて、朝鮮にいわゆる国籍を有する者が路頭に迷うかもしれないという不安が多分にあるのであります。この日韓会談によると、すなわち韓国籍のある者は比較的楽に永住許可権を得られますが、朝鮮国籍にある者は非常に不利であるといわれております。政府はこれに対しましては、日韓会談の内容はまだわからないの一点張りでありますが、ときどきの政府の答弁によりましても、このことはにおわされているのであります。もしこれが事実だといたしますならば、このように他国人に対しての国籍の干渉をすることはあまりに行き過ぎた行動であり、中国あるいは朝鮮の今日の悲劇の中からなお統一を望んでいる人たちの気持を、あまりにも踏みにじるものであると思うのであります。政府の答弁によりますと、戰前からいる善良なそれらの人たちに対しては十分考慮し、かつ不安なきようにすると言われているのでありますが、この法令を読んだ人は、だれもその意味をくみとれないのみか、かえつて不安を覚えるのであります。従つて政府にその好意があるといたしますならば、その意味のことを一條加えることによつて、今や不安におののいている六十万余りのこの法令の対象となる人に安心を與えることになるでしようし、またそれに対する感謝の気持でこれらの人たちは必ず日本の国内法を嚴守し、日本に協力を惜しまないことを私は信ずるものでございます。そういう意味におきまして私は強くこの点をこの法案の中に明記することを要求するものであります。
わが日本は、国土の四割強を失い、狭い国土に民族的苦悩を続けております。隣国の朝鮮及び中国におきましては、二つの政権が抗争を続け、朝鮮、中国民族、ともに民族的苦悩の限りを盡しております。アジアにおける先進国といわれたこれらの国々の民族的統一の悲願は、西欧におけるドイツ民族と同じように、單に政治的ないし思想的にばかり取扱いがたいものがあると思うのであります。日本民族自身が領土を失つて、将来海外への飛躍なしには生きて行けないという現状に追い込められている際に、これらの隣接民族の苦悩に対しては満腔の同情者でなければなりません。その意味におきまして、私は政府にもつと少数民族及び傷つける民族に対する保護並びに人道的立場に立つての処置を講ずることを警告して、この両法案に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/61
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062・仲内憲治
○仲内委員長 林君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/62
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063・林百郎
○林(百)委員 私は日本共産党を代表して、ただいま議題になつておる出入国管理令と外国人登録法について反対をするものであります。
まず第一に考えなければならないことは、一体出入国の管理ということは、これは新たに日本の国に出入りする人たちを取締るのが本来の建前であります。ところがこの法案によりますと、明治以来何十年の間日本人として日本に居住し、日本人を妻とし、風俗や習慣もまた日本人としてかわりない生活をし来つた朝鮮の諸君、台湾の諸君を、にわかに外国人として取扱つて、これを新たに日本の国に出入りする外国人と同じ條件によつて管理し、これに該当しない者は強制的に現在戰乱のちまたになつておる朝鮮または台湾に退去を命じようとしておるのであります。これはまつたく人道上からいつても、実に苛酷きわまる処置であると思うのであります。
しからば政府はどうしてこのような不当な強制送還をしなければならないのかと考えてみますと、今や朝鮮や中国の諸君は、長い間の植民地政策から立ち上り、婦人や子供までが銃をとつてこの植民地政策のきずなを断ち切つて、偉大な中華人民共和国あるいは朝鮮人民共和国の民族独立の政府の樹立を達成し、また達成しつつあるのであります。従つてこの民族独立の意識に燃え盛つておることは、おそらく日本の諸君に劣らないどころか、むしろこれにまさるものがあると思うのであります。ところがこのような民族意識に燃え上つておる中国や朝鮮の諸君が日本に六十万もいるということは、このことは第一に日本の反動的な諸君並びにこれをあやつておるアメリカの支配勢力にとつては、はなはだ目ざわりになるのであります。大体このたびの行政協定によりますと、これは明らかに日本がアメリカの植民地になるのでありまして、朝鮮や中国の諸君に同情片々という言葉を先ほどから聞きますが、むしろ同情されるのは日本が同情されなければならない立場に立ち至つておることは否定できないと思うのであります。ところがこの日本の植民地化政策にとつて、この民族意識に燃え盛つておる諸君が、はなはだじやまになつて来たというのが、アメリカの支配勢力であり、これと結びついたほんの日本の一部の反動勢力だと思うのであります。この在日朝鮮人、台湾人の諸君を日本から追い出して、しかも念が行つたことには、これまたアメリカのまつたく手先である蒋介石だとか李承晩の手元に送り届けて、ここで投獄か――か、このような彈圧によつて何とか料理させようとするのが、この法案の陰險きわまるねらいではないかというように思われるのであります。このことはヒトラーがユダヤ民族をドイツから追放した、このヒトラーのユダヤ民族政策とまつたく同じでありまして、これこそ、治安立法によつて共産党だとかその他の国内の民主的な諸勢力を彈圧しておる吉田内閣の政策と相まつて、まつたく最近の吉田内閣のフアツシヨ的政策の最も露骨な現われといわざるを得ないのであります。問題はそればかりではないのであります。一体出入国管理令によつて新たに外国人として取扱われる中国の諸君、あるいは朝鮮の諸君が、あらためて日本で外国人登録をする、あるいは永住の許可をとるというためには、これは国籍の証明を必要とすることは当然なのであります。便法だとか何だとかいうようなのがれ道は言つておるのでありますけれども、この国籍の問題が必ず将来問題になることは否定できないと思うのであります。ところが今朝鮮の人たちは、圧倒的な支持を得ておる朝鮮の人民共和国、あるいは少くとも朝鮮の諸君は統一した政権を望んでおる。ところがこれに反して、朝鮮にはアメリカのまつたく傀儡政権と化しておる李承晩政権がある。このように対立した二つの政権がある。また中国には、実質的に明らかに中国全土を統治しておる、また中国の全人民から支持されておる中国人民共和国、一方五億ドルの予算のうち四億ドルまでがアメリカの援助を受けておるような台湾の蒋介石国府残存グループがあるのであります。しかるに日本の吉田政府は、これまた御主人たるアメリカの―――によつてでありましようけれども、ことに好んで中国人民共和国、朝鮮の人民共和国をとして、アメリカの――の子供である蒋介石や李承晩と外交交渉を持ち、さらに最近では相互に安全保障とりきめすらしようとしておるのであります。
一体この在日中国あるいは朝鮮の諸君で、実際中国の人民並びに朝鮮の人民が圧倒的に支持をしておるこの両人民共和国を支持しておる諸君に対して、どういう国籍の証明をとらせようとするのか、どういう機関によつて登録の事務をとらせようとするのか、これは明らかに吉田内閣が蒋介石と李承晩との外交交渉において、将来安全保障とりきめをするということを既定方針としている以上、いかなる小細工を弄し、いかなる口先だけで弁解しようと、そのことは不可能であることは否定できないと思うのであります。そうしますと、それによつて李承晩あるいは蒋介石政権を支持しない諸君は、何らかの口実のもとに、あるいは登録令に違反するというようなことを理由として、台湾あるいは南朝鮮に強制送還を受け、これらの政権によつて彈圧されるということは火を見るよりも明らかだと思うのであります。このことは明らかに国籍選択の自由を蹂躪するものであります。また世界人権宣言による国籍選択の自由あるいは政治的被圧道者に対する保護の国際的な義務を蹂躪するものだと思うのであります。吉田内閣は、国内においては今や憲法を蹂躪して再軍備を着々として進めている。先ほどのように遵法精神、遵法精神と言つておりますけれども、憲法を蹂躪して再軍備をしている吉田内閣こそがまず遵法精神を体得しなければならない。これらの朝鮮や台湾の諸君に対して遵法の遵の字も私は言う資格がないと思うのであります。ところがこの吉田内閣がさらに国際法あるいは国際的な義務を蹂躙して、この民族の彈圧をしようとしていると思うのであります。ところがさらに韓国籍あるいは国府籍を、吉田内閣並びに李承晩、蒋介石の共謀によつて、この国籍を登録させて、しからばそれがどうなるか。これは明らかに韓国の国内法によつて軍事的な徴用をする。軍事的な徴用をして日本で軍事的な訓練をして、これを韓国に送り届けるということは、これは否定できないと思うのであります。従つて要するにこの両法案を通すことは、朝鮮の諸君の悲願であるところの朝鮮の統一政府をつくるということに逆行するのみではなくして、朝鮮の内乱にさらに火をつける役割を果すと私は思うのであります。従つて私はこのような点から言つても、本法案については、絶対賛成できないのであります。
その次にもつと重要な問題は、出入国管理令と外国人登録法によりますと、日本に永住許可を受けるためには、第一に「素行が善良であること。」第二には「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。」を必要とするというのであります。また強制退去の條件を見ますと、貧困者で地方公共団体の負担になつている者等は、退去させるとあるのであります。ところがこれはまつたく笑止千万な話でありまして、一体現に日本に在留している朝鮮の諸君、中国の諸君は、どうして日本に在留せざるを得なくなつたかということを、まず吉田内閣自体考えていただきたいと思うのであります。これらの諸君は大部分は、先ほど私の政府に対する質問にもありました通りに、太平洋戰争中まつたく強制的に徴用を受け、人間狩りとまでいわれて、泣く泣く家族やあるいは自分の親戚の者と切り離されて無慈悲に日本に連れて来られたのであります。これがまだ日本に来ている人たちはいいのでありますけれども、何十万という人たちが、南洋やあるいはフイリピンやあるいは満州にほとんど軍人と同じ形で強制的に連れて行かれた。また日本に連れて来られている人たちは、土方だとか沖仲仕だとか炭鉱だとかいうような、最も條件の悪い奴隷的な労働條件のもとで、たこ部屋に収容されて死ぬよりはましだという奴隷的な強制労働でこき使われて来たのであります。これに不平を言つたり反抗する者は、武器を携帶した特攻くずれの労務係によつて検問所で取調べを受けて、ある者は投獄され、ある者は戰場の壁ぎわで射殺までされて来た。あかつきに祈る式の凍死事件のごときこのような待遇は、朝鮮の諸君にとつてはまつたく日常の茶飯事であつた。また中国人の捕虜労務者に至つてはあの花岡事件でも明らかな通り、九百幾名も連れて来た中国の捕虜が四百何人か虐殺されているのであります。しかもわれわれはこのように戰争中にさんさん搾取に搾取を重ね、虐待に虐待を重ねて来たこの諸君、この諸君に対して終戰当時に日本の政府や資本家は一体どういう処置をとつたのだ。工場や炭鉱で資本家の諸君はこの諸君が積み立てた積立金すらほとんどくれない。帰国の旅費すら拂つてくれない。こういう状態で追い拂われた諸君、しかも現在ほとんど経済的な保護を受けていない者が、貧乏人だから追い出されるということになつたら、この貧乏にした責任はだれが負う。明からにわれわれは、この中国の諸君や台湾の諸君が貧乏人だから追い返す、送還するというようなことは削除するのが当然だと思う。こういう意味から、むしろ日本政府自身が責任を負わなければならないことを朝鮮や中国の諸君に責任を負わせて、貧乏だから強制送還する、戰乱のちまたになつている本国に送り返すということは、人間である限りはできないことだ。こういう意味で、われわれはこの点からも絶対にこの法案に反対するのであります。(発言する者あり)しかもその佐々木君や菊池君が属しているこの吉田内閣は、アメリカ人には何をしているか。軍人、軍属、家族、土建屋からやみブローカーまで、全然日本の出入国管理令もあるいは外国人登録令も適用させなくて向うの証明だけでまるで自分の国みたいな大きな顏して歩かせるじやないか。アメリカ人にはこういうことをさせておきながら、日本人の血を受け、われわれの同胞を妻としている諸君には、貧乏人だから送り返すということはよくも言えたものだ。われわれはこのような非人間的な法案には絶対反対するのであります。むしろわれわれは吉田内閣こそが、国際的な義務に違反し、中国四億五千方の人を敵にまわし、朝鮮二千万の民族を敵にまわす吉田内閣こそが国際法に違反し、このような法律をつくる吉田内閣こそが、アメリカに強制送還さるべきだということを私は結論として申しまして、この法案には絶対反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/63
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064・仲内憲治
○仲内委員長 成田知巳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/64
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065・成田知巳
○成田委員 私は日本社会党第二十三控室を代表いたしまして、ただいま提案になつております両法案に対して反対の意を表するものであります。
本法律案は形式的には昨年十一月一日より施行されておりますポ政令に基く出入国管理令を一部改正して法律として存続する法案でありますが、本法律案の内容は、わが国へ、またはわが国よりの外国人の出入りを管理するものであるという名のもとに、実際は吉田内閣が昨年かの一地方政権にも値しないような台湾の蒋介石亡命政権、朝鮮の李承晩亡国政権と――して、日本に居留する朝鮮人、中国人を強制送還し、これらの腐敗堕落の政権の支配下に置かんとする陰謀法案であるということをまず第一に指摘するものであります。
本法案を審議いたしておりまして、私たちが思い出しましたことはかの大正十二年の関東大震災のときに阿鼻叫喚の騒乱の中で、政府並びに軍部は朝鮮人が暴動を起した、あるいは放火したというようなデマを飛ばして、罪のない幾万の朝鮮人を銃劍の先にひつかけたあの悲惨事を思い出すのであります。本案は銃剣で朝鮮人を突き殺すものではありませんが、日本内地に居住する六十万の朝鮮人と四万の中国人を、戰乱のさ中にある朝鮮と治安の極度に乱れております台湾に法律の力で強制送還し、事実上死地におもむかしめんとするものでありまして、関東大震災当時の残虐行為以上の――を法律の名において行わんとしているのであります。まさに朝鮮人等の大量――法案であると称しても間違いないと思います。政府は委員会の質疑応答でこう言つております。日本に長年平穏無事に住んで来た善良な朝鮮人、中国人を強制送還するような意図は持つていない。しかしながら政府の言う善良というのはいかなるものであるかという問題であります。現に吉田内閣は憲法に保障されております労働者の基本的権利である罷業権を行使して、みずからの生活を守らんとしている労働者諸君を不退の徒呼ばわりしているのであります。このような政府の感覚をもつてすると、吉田内閣の相棒であり兄弟分でありますところの蒋介石、李承晩政権に反対する中国人、朝鮮人は、すべて好ましからざる人物、善良ならざる人物として強制送還にせられることは火を見るより明らかであります。現在日本に居住する朝鮮人、中国人は、ごく少数の例外を除きまして、終戰前から引続き日本に居住し、生活も日本人と同様の生活をして、日本人と結婚し、その間に子までなしておる人が多数あるのであります。かくのごとき人々が本法律によれば、反蒋介石、反李承晩であるという事実だけで、南朝鮮あるいは台湾に無理やりに強制送還させられるように仕組まれている。現に管理令第二十四條によりますと、外務大臣が日本国の利益または公安を害する行為を行つたと認定した者は、強制送還し得ることになつておりますが、この條文の適用いかんでは、現在日本は李承晩政権を統一政権と認め、これと親善の交わりをしようとしておるが、この李承晩政権に反対する者は日本の利益を害するものである、こういう解釈のもとに強制送還される場合が予想されるのであります。これはほんの一例です。第二十四條は、一方的な政府の取扱いで、好ましからざる人物として、多数の朝鮮人あるいは中国人が強制送還できるように仕組まれておりますが、さらに問題は、長年日本に居住する朝鮮人、中国人が従来通り日本に永住しようと希望する場合、管理令の定むるところにより入国管理庁長官に国籍証明書を提出して許可をとらなければならない。しかるに現在日本に来ておる中国、朝鮮の代表部というのは、実は中国、朝鮮のすべての民衆によつて認められ、中国、朝鮮の全域にわたつて統治権を行使している正統政府ではなく、一地方政権にすぎない。その蒋介石政権、李承晩政権の代表部なのです。これらの代表部に対して、現在日本に居住する朝鮮人あるいは中国が国籍証明書の下付申請を行うはずはありません。たとい下付申請をしたとしても、これらの代表部が自分たちに反対する人々に国籍証明書を出すはずがない。朝鮮における北鮮、南鮮両政権の存在、中国における中共政権と蒋介石政権の対立という現実を無視して、一方の政権代表部の発行する国籍証明書を要求するということは、人権宣言にうたわれておりますところの国籍選択の自由を奪う暴挙である。
〔発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/65
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066・仲内憲治
○仲内委員長 靜粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/66
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067・成田知巳
○成田委員 もし政府にして、ほんとうに長年日本に居住する中国人、朝鮮人を日本に永住せしむるとの誠意を有しておるならば、現下の朝鮮、中国の実情に照しまして、簡明直截に、国籍証明書の添付なくとも、長年日本に居住していたというこの事実の証明だけで永住許可を與えられるべきである。ところが政府は與えると言つていない。岡崎国務大臣は便宜の措置を考えると言つておるが、問題がこの点に触れて来ますと、言を左右にして私たちのこの要求を入れようとしない。この当然の要求を拒否しようというところに、一つの隠された意図がある。すなわち在日朝鮮人、中国人に国籍証明書をあくまでも要求し、これを提出せざる者は、外国人登録令違反にひつかけて南鮮、台湾に強制送還せんとする意図が隠されておる。これを岡崎国務大臣は便宜の措置として、国籍証明書はまつたく形式的、機械的な手続で駐日代表部に申請すれば簡單にとれるようにしたいと答えている。もし岡崎氏が、そんなことで問題が解決されるとまじめに考えているとしたならば、岡崎氏は、李承晩政権あるいは蒋介石政権の駐日代表部と、在日中国人あるいは朝鮮人との関係がどんなものであるかということについて、まつたく無知であるということをみずから告白しておると思うのであります。在日朝鮮人、中国人の大多数は、駐日代表部はにせ政権の出店であるとしか考えていないのであります。また事実その通りなのであります。そのために現在においても祖国の独立を思い、祖国の統一を欲し、真に祖国を愛する朝鮮人、中国人は、これら代表部から事実上保護を受けていないだけじやなしに、あらゆる形で迫害さえ受けていることは周知の事実なのです。こんな代表部に対して、どんな簡単な機械的な手続にしろ、国籍証明書を求めて容易に入手できるはずがない。現に日本政府自身でさえも、モスクワ会議出席のための旅券の申請に対し――これはまつたく機械的形式的な手続であるが、発行を拒否しているのである。聰明な岡崎氏がこの間の実情を知らないはずはない。知つていてもためにするところがあつてあえて知らないふりをしているのであります。本法案が成立施行のあかつきには、現在政府が、また自由党の諸君がいかに否定しようとも、近い将来在日の善良なる朝鮮人の多数が戰乱の南鮮に強制送還されて、彈丸として朝鮮戰線にかり出されるということは明らかな事実であります。まさに政府は本法案の形で大量の朝鮮人に――の宣告を與えようとしているのであります。今や朝鮮人の憤激は極度に達していると思うのであります。もしこれがために各地に騒擾が起るようなことがありましたならば、その責任はかかつて政府並びに自由党の人たちにあるということを断言しておきます。
今回のサンフランシスコ平和條約の締結、さらに近く締結を予想されております日韓、日台両條約は、いよいよ日本をアジアの孤児にしよううとしている。この悲しむべき事態のもとにおいて、日本人がアジアの人々と友好関係をとりもどし、善隣外交を行つて行くというただ一つの残された道は、現在日本におりまするところの在留中国人あるいは朝鮮人を初めとするアジアの諸国民とお互いに手を取合い、助け合い、お互いに深い信頼関係において結ばれて行き、このようにしてつちかわれた信頼関係を基礎にして、初めて日本人は将来アジアの民衆と広く手を握ることができるのであります。しかるに政府の自主性のない政治、アジアを忘れた外交政策は、この唯一の残された道さえも本法案によつてとざそうとしておるのであります。戰時のときの軍閥政府は、日独伊軍事同盟を締結して、無謀なる戰争をやつて今日の悲境に日本を陷れたが、吉田内閣は、サンフランシスコ平和條約の必然の結果として、日独伊軍事同盟と同じように、李承晩政権、蒋介石政権と條約を結んで、再び日本を戰争に追い込もうとしている。まさに歴史は繰返されんとしているのであります。
以上述べました通り、本法案は、日韓、日台両條約に連なりまして、この両條約を背景にして、朝鮮人、中国人を初めとするアジア人と日本人を敵対関係に陷れて、日本人を永久にアジアの孤児にしようとしている法案でありますがゆえに、私たちは断固反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/67
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068・仲内憲治
○仲内委員長 黒田寿男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/68
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069・黒田寿男
○黒田委員 私は労働者農民党を代表いたしまして両法案に対して反対をいたします。反対の理由といたしまして、戸叶委員、林委員及び成田委員の反対理由とせられましたところをそのまま私は援用いたしたいと思いますが、なお多少私の考えをつけ加えさせていただきたいと思うのであります。
元来出入国管理令はポツダム政令でありまして、占領下の法令たるにおいがはなはだ濃い法律であります。政府の言うところを聞けば、講和條約が成立して日本は一応独立国になるという。そういう状態に達しましたときには、占領時の法律というにおいがいつまでもただようというような法令は、できるだけ排して行かなければならぬ、こういう心構えであるべきだと私どもは考えます。新たに独立した国の国民の気持で、新法律を構想すべきであると私どもは考えておるのであります。しかるにポツダム諸政令に対する政府の態度を見ると、私どものこの考え方とは、どうも逆の方向に向つて進んでおるようであります。ことに、この管理令が昨年の十月に制定発表せられましたのを見ましたときに、私ども実は非常に驚いたのです。実に乱暴な法律であると考えました。これは私ども日本人がそう考えただけでなくて、この法律の適用を受ける中国人あるいは朝鮮の人々に、非常に大きな衝動を與えました。その後国会の有志議員は、各派超党派的に連絡をとりまして、将来これが立法化される場合には、国会の承認を経ないでポツダム政令で出されたこの悪法の内容を、大きく改正したものとして政府が御提出になるように努力しなければならぬ、こういう申合せもし、またそういう気構えで私どもは努力して来たのであります。おそらく外務当局には、この政令について私どもがどういう点にどういう問題があると主張しておるかということは、よくおわかりになつておつたことと考えます。ところが今回提出されたこの法律案を見ますと、ポツダム政令の内容そのままを法律化するというだけのものであります。しかもその上に改正せられた点を見ますと、永住権に関して相当脅威になるような條文がつけ加えられておるのであります。これは占領中の法令をそのまま占領終了後も生かすというやり方でありまして、こういう立法の制定の仕方をなさる政府の気持が私にはわからぬ。どうも吉田内閣なり與党の諸君は占領ぼけをしておると思う。私は外務当局の諸君も占領ぼけをしておると思う。諸君は占領中に外国に押えられていたり、外国にたよつていたりなどしたその気持からまだ抜け切つていない。まことに情ないことである。独立するという気持が少しも回復されておらぬように思われる。そういう気持がこの法律案の中にも現われでおる。ポツダム政令をそのまま法律化しようという気持の中に、あわれむべき奴隷的根性が現われておる、私はそう思う。非常に情なく思う。ことに両法律案は外国人の権利に関係するものでありますから、日本人に関係する法律が、日本国憲法によりまして基本的人権を尊重したものでなければならないと同様に、人権と基本的自由とに関する世界的な憲法ともいうべき世界人権宣言にのつとりまして、外国人の人権と基本的自由を十分に尊重した内容のもので、この両法律案はなければならぬと私は考えておつたのであります。ところがそういう私どもの考えから見ると、全然その趣旨に反しておるように思われます。
第一に、外国人に対する人権と基本的自由の尊重ということにつきまして、世界人権宣言の精神に反しておる。民族的あるいは政府的信條等の差別によりまして、人権及び自由に関し、差別待遇を與うべきではないというその大精神に私は反しておると考える。ことにその最も露骨に現われておりますのは、強制退去に関する部分でありまして、退去の理由としたものを見ますと、言論、集会、結社等の自由に関する抑圧がありありと現われております。ことに今日も問題となつたのでありますが、第二十四條に退去の理由を列挙いたしております。その中で第四号のヨのごときは、「外務大臣が、日本国の利益又は公安を害する行為を行つたと認定する者」は、強制退去の理由あるものとされることになつております。岡崎国務大臣は私のこの意見に対しまして、日本国の利益または公安を害する者を日本から追放するのはあたりまえではないかとおつしやつた。それだけのことなら私も同感であります。問題はそんなところにあるのではない。そういう者と認定するその認定の方法が、一外務大臣がかつてにその認定をやれるというようなこになつておる。それが私は人権の侵害になるというのです。日本の公安と利益を侵害する外国人に日本にいてもらいたくないというのは、私ども日本としての当然の気持である。けれども一行政官たる外務大臣の簡單な認定によつてそれができるというのは間違つておる。(「どこでもそうだ」と呼ぶ者あり)どこでもそうであるならば、どこでも間違つておる。間違つておることは私どもがこれにならう必要はない。かようなわけで、私は退去の理由としたものの中に、非常に基本的人権に対する侵害が現われておると考えます。それからその理由に関する審理の方法及び退去の強制執行の方法の中に、また前述のものに劣らぬ人権蹂躪の内容の條項が盛られておると私は考えるのであります。あるいは容疑者に対する臨検、捜査、押収、牧容等の手続に自由と人権の抑圧がある、人身保護法において認められております違法拘束請求権というようなものに対する蹂躪を、この中ではつきりと認められるような、そのような規定になつておると考えるのであります。政府はこの種の事案は犯罪として取扱うのではなく、退去という行政処分として取扱うにすきない、こういう理由と口実のもとに審理手続を行政官の專断にゆだねてしまつておるのであります。一たび行政官によりまして退去の理由ありと認められたときは、この決定に不服であるとしてこれを裁判に出しましても、強制執行を停止する効力はない。かりに裁判所が特別の理由があるとして、退去の強制執行の停止をしようといたしましても、総理大臣が異議を申し述べる場合には、その総理大臣の異議に従わなければならないということになつておりまして、結局行政官の認定で、私どもが日本の裁判でいろいろと審理を受けるときのような愼重な手続を経ることなくして、国外に追放せられるようになつておると思うのであります。このような点から見まして、私は外国人に対する差別待遇があると断定せぜるを得ません。
第二には、この法律案ははなはだ非人道的であります。これは先ほどもいろいろと野党の委員諸君が述べられましたけれども、たとえば癩予防法の適用を受けておる癩患者を朝鮮に送る、そんなことが現在でるでありましようか、一片の人情を持つておる人間にそういう冷血的なことができるのでありましようか。癩患者というものについては、私はかつて、岡山県に大きな療養所がありますので、有名な光田園長に会いまして、いろいろとこの問題について聞いたことがあるのでありますが、これは今日本にもそう多くはないのであります。だからかりに癩患者であるような場合に、ことにそれが朝鮮というような場所へ送還するというのでありますならば、あの戰乱のちまたで、こういう病気の患者に対する収容施設はほとんどないと思います。そういう国にこういう患者を送り返すようなことをいたしますと、その国においてまたこれが伝染し、蔓延するおそれがある。こういう気の毒な病人が、かりに外国人の中にありとすれば、日本の療養所の中に入れて、親切に療養せしむべきであると私は考えます。万一わが国の国民がよその国に行つて、そのような病気になつたからといつて日本に送り返されたとき、日本人はその国の国民に対して、どんな気持を抱くでありましようか。反対に安らかに一生を送れるようにしてくれておるというあたたかい情報を聞いたときに、私ども日本人はその国の国民に対して、どんなに感謝するでありましようか。この人情がわからないのでありましようか。政府、外務省の役人諸君、與党自由党の諸君には、この気持がわからないのでありましようか、どうも私にはあまりにも人間味がなさ過ぎるような感じがする。こういう非人道的なことを平気で行えるような法律案に諸君は賛成されようとしておる、私にはそういう気持がわからない。それから精神病についても同様でありますけれども、これはもう私は多く申しません。貧困者についても同様であります。これも先ほど林君が述べられましたから、私は重ねて述べませんけれども、たとえば朝鮮人の諸君に対して、日本人は戰争中にどういう態度をとつたか、日本人は相当朝鮮人から積極的に日本に貢献したという実績を受けておるはずです。われわれはそういう朝鮮人に対しまして、このことを忘れてはならないのであります。(「どこが悪いんだかわからない」と呼ぶ者あり)貧困であるという理由で、その貧困の者を追い出すということが悪いと言つておるのです。貧困者が存在するということが悪いという議論をしておるのです。そういうことがわからないような代議士はよほど頭が悪い。一体與党の諸君は、貧困者だから一概にだめだというふうな考えを持つておりますけれども、私どもから見ますと、その国に貧困者が多いということは、政府の責任である、経済組織の責任である。これを考えないで、自分たちは独占資本の利益に奉仕するような政治ばかりやつておつて、そして多くの貧困者をこしらえておいて、貧困者が外国人である場合に、国外に追い出そうとしておる。このことはそれは、はたして人道的でありましようか。まつたく自由党のやることは本末転倒であるし、また人間としての精神を全然没却したようなやり方をしておる。
次に私は送還先の問題につきましては、これは庇護権の問題と関連いたしまして、世界人権宣言第十四條の精神に反しておると思う。これは先ほども他の委員が申されましたので繰返しませんけれども、とにかくこの強制送還の理由及び強制送還の方法について見ますと、それは、世界人権宣言におきまして、私どもが尊重しなければならぬ庇護権に対する重大な侵害になつておると私は考えます。私は庇護権の擁護が世界各国相互の間に、理想的に、行われるということを、現在ただちに期待することは無理であろうと考えます。けれどもこの出入国管理令の中に現われた精神は、單に理想に達しないというだけならまだよろしいのでありますが、そうでなくて、ひどいものです。私から見ると非常に残酷な、冷酷な、人間性の悪い面がはつきりと現われておる。私はこういう冷酷な、そして尊大な考え方を持つて、われわれ日本人は、外国人に断じて対処すべきものではないと考えます。
国籍強制の問題は、実は最初から私どもの間に非常に大きな問題となりました。しかしいろいろと政府の御意見を承つております間に、大分私どもはこの点につきましては、率直に申しますが、安心のできるような状態に近づいて来た、そういう御答弁になつて来たと考えます。これは、ただいま外務次官が御出席になつておりますが、率直に申しますけれども、最初外務次官の――私の質問に対してではございませんけれども、最初外務次官その他がお答えになつておつたのを聞いたときは、ほんとうに私どもははらはらした。どうなるのだろうかと実は心配をさせられたのでありますけれども、私どもの方から根掘り葉掘り、いろいろと私どもの要求を掲げながら、政府の御所信を承つておりました間に、大分この点につきましては、従来抱いておりましたような心配が薄らぐようになつて参りました。最初は、国籍を奪われ、あるいは国籍を変更する権利を否認されるおそれがあつたのでありますけれども、大分そのおそれがないような方向に政府の態度は進んでおります。(「全然ない」と呼ぶ者あり)全然ないとは私どもはまだ言いきれないのであります。この点私は率直に申しますが、しかし、どうか安心のできるようにこの上とも進めていただきたいということを、特に外国人のために要請いたしておきます。次に一言つけ加えておきますが、私はこの法律案が第一に外国人に対する自由と人権の差別待遇をしておる、第二には非人道的であると申しましたけれども、その上に私がぜひつけ加えておかなければならぬと思いますことは、單に外国人に対する差別待遇が現われておるというだけでなくて、一辺倒的精神が現われておる、このことであります。これは私は非常に重大な問題であると考えます。このような法律が、率直に申しますが、現在の吉田内閣の行政官の專断によりまして、自由に行使せられるということになつて参りますと、そこに私は国際的に非常な憂うべき事態が発生しはしないかという心配を心からしておるのであります。現在の政府が公正な態度を持つておる政府でありますならば別でありますが、吉田内閣の態度は外国に対して公正ではありません。私が先ほど申しましたように占領ぼけであります。占領中に占領国にたよるということは、これはやむを得ないことかもわかりませんが、その習慣が性質になつてしまつて、いつまでもある一定の国に一辺倒する。ところがその国が、正直に申しまして、独占資本の体制をあくまで世界的に維持しようという国でありまして、公平に見て世界における民族解放運動、あるいはその他の民主的運動に対する抑圧勢力としての作用を営んでおる国であります。このことは與党の諸君が今気がつかなければ、諸君が死んだ後に後世の歴史家が、諸君がいかに気のつかぬ政治家であつたかということを記録してくれるでありましよう。現在の吉田内閣は非常に一辺倒的であります。そしてことにこのことは、最近最もよく現われております。それは、最近における台湾政府を相手にしての、あるいは李承晩政府を相手にしての講和であります。これは日本人の中でも、――諸君よく考えてみてください、常識のある人がほんとうにこれを歓迎しておるでありましようか。自由党の諸君、よくお考えください。諸君は占領ぼけでこれに賛成しておられるかもわかりませんが、こんなばかなことはありません。世界の常識ある政治家は、たとえばイギリスなどの進歩的な政治家、それが労働党の政治家でなくて、保守派の政治家であつてさえも――世界の進歩的政治家は、日本が現在蒋介石と李承晩を相手に講和條約を結ぼうとしておることが、いかに進歩性のないやり方であるかということは、みんなそう考えておる。それを気がついていないのは亭主ばかりと言つていい。私は諸君がその亭主であるとは考えたくない。冷靜に申しまして、李承晩とか蒋介石というような政治家は、イギリス労働党のコールも言つておりますように――コールだけではないと思いますが、この二人は世界的に札つきの政治家である。だれが公平に見ても、こんな者に……。(「スターリンはどうだ」と呼ぶ者あり)スターリンに対する評価はまた別にいたします。私は今はこの二人のことを言つておる。とにかくこれは札つきの政治家である。こんな者を相手にして講和條約を結んで、日本が独立するとか、東洋の他の国との間に親善関係が結ばれるとかというようなことを考えている人の気持がわからない。おそらく私は日本人の大多数もほんとうに今の政府のやつておることを心から心配しておると思う。私は決して諸君の悪口を言うためにこう言うのではない。こんなばかなことをして、日本の前途を誤り、そしてアジアにおける進歩勢力に対して、絶えずその進歩を阻害するような役割を日本が勤めさせられることになつたら、まことに私は人類の歴史の上に日本人は不名誉な記録を残すのみにすぎないことになることを憂うるのであります。日本人はかつてあの軍国主義でアジアを荒しまわつて不名誉なる歴史をつくつた。それを償うために、アジア諸国と手をとつて民主的方向に進まなければならないのに、その反対に、今度はその罪を償うかわりに、人類の進むべき民主的方向を抑圧する勢力に一辺倒して、それと協力して抑圧勢力の手先になる。これは私は実に残念なことであると思う。そういうやり方を政府はやつておる。(「共産党だ」と呼ぶ者あり)これは私は簡單に共産党の諸君が言うことだというふうにお考えになるならば、それは認識不足であると思います。そうではなくてほんとうに心から日本を憂えておる者は、これに気がつかなければなりません。諸君は、このような言い方に対して、それは共産党の言うことだと言いさえすれば、それは間違つた議論だと大衆は思うとお考えになつて、そういう演説を地方でなさるかもわかりませんが、日本には共産党でなくて、健全な常識を持つておる者はたくさんあります。自由党のような不健全な一辺倒的與党に支持せられております政府が、單に外国人に対する差別待遇だけでなくて、一辺倒的精神を内包し、ほんとうの意味のアジアにおける善隣友好の精神を阻害するような、そういう精神を持つた管理令を今回提出しておるのである、私はこう思わざるを得ないのであります。そうして私とても常識上出入国管理令それ自身が必要である、そういう法律が必要であるということは、これを容認するにやぶさかではありませんけれども、この内容ではどうしても私は賛成することができないのであります。
これをもつて反対の討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/69
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070・仲内憲治
○仲内委員長 これにて討論は終局いたしました。
それではポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案及び外国人登録法案を一括して採決いたします。両案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/70
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071・仲内憲治
○仲内委員長 起立多数。よつて両案は原案の通り可決いたしました。
なおただいまの両案につきましての報告書の作成は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/71
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072・仲内憲治
○仲内委員長 御異議がなければ、さようにとりはからいます。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/72
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073・仲内憲治
○仲内委員長 それでは次に移ります。在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案を日程に追加して議題といたします。政府側より提案理由の説明を求めます。石原外務政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/73
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074・石原幹市郎
○石原(幹)政府委員 在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案の提案理由を御説明いたします。昨年九月八日にサンフランシスコにおいで大多数の連合国とわが国との間に署名調印されました平和條約は、いよいよ近い将来において効力を生ずる見込みでありますが、この平和條約の効力発生に伴いまして、わが国と諸国との間には正常なる外交関係が回復いたし、諸外国に大公使館や領事館が設置されまして、大公使以下多数の外務公務員が在外公館に勤務することになるのであります。御承知のように、これらの外務公務員のうち、大使及び公使は特別職、その他の者は一般職の国家公務員でありますが、これらに支給いたします給與につきましては、いずれも、他の国家公務員と異なり、外国に勤務するために必要な特殊の給與が必要であり、さらに給與の支給方法等につきましても特例を定める必要があります反面、他の国家公務員に対して支給している給與中の必要のないものもある次第であります。
従いまして、現在施行されております特別職の職員の給與に関する法律及び一般職の職員の給與に関する法律の特例を定めますとともに、在外公館に勤務する外務公務員に対して支給いたします特別の給與について規定いたします給與法規の必要を痛感いたし、政府は、ここに在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律を制定し、もつて在外公館に勤務いたします外務公務員に支給する給與を保障いたそうとするものであります。
以上が、この法律案を提案いたします理由であります。
何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/74
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075・仲内憲治
○仲内委員長 本案に関する質疑は、次会に讓ることにいたします。
本日はこれにて散会いたします。次会は明後三十一日午前十時より開会いたします。
午後一時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101303968X01519520329/75
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