1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年三月二十五日(火曜日)
午前十時五十一分開議
出席委員
委員長 前田 正男君
理事 多田 勇君 理事 有田 喜一君
理事 中崎 敏君
青木 孝義君 岩川 與助君
小野瀬忠兵衞君 圖司 安正君
奈良 治二君 福田 喜東君
村上 清治君 笹山茂太郎君
土井 直作君 横田甚太郎君
出席政府委員
経済安定政務次
官 福田 篤泰君
経済安定事務官
(産業局長) 近藤 止文君
委員外の出席者
経済安定事務官
(産業局次長) 岩武 照彦君
専 門 員 円地與四松君
専 門 員 菅田清治郎君
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三月二十五日
委員細田榮藏君辞任につき、その補欠として
青木孝義君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時
措置に関する法律案(内閣提出第八一号)
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001・前田正男
○前田委員長 これより会議を開きます。
国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。中崎敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/1
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002・中崎敏
○中崎委員 まずこの法律が公布になつた場合における実施運用等について、一応お尋ねしておきたいと思うのであります。
吉田内閣になつて以来、漸次統制が緩和されて参つたのであります。従いまして、この統制に対する取締りの観念も薄らいで参りまして、現在残存しておりますところの統制が依然として行われているはずであるにかかわらず、この取締りにつきましては、きわめて緩和でありまして、ほとんど法律が存在しているかどうかさえ疑われるというふうな実情にあるのであります。一面におきまして、民主主義の制度確立の上においても、一つの法律ができておつて、これを励行するということは当然政府の責任であるのにかかわらず、実際の取締りというものがおろそかにされて、ほとんど運用されていないということは、遵法観念を著しく害するものでありまして、非常に遺憾な状態であります。今度あらためて、ここにこうした法律案が提案されているのでありますが、これが議会を通過し、実施のあかつきにおいて、依然としてこうした事態に変化がないとするならば、こういう法律をつくるのは、かえつて百害あつて一利ないとさえ考えるものであります。一面において法を尊ぶところの善良な業者だけがこの法に縛られ、そうして国家の法を乗り越えてこれを無視し、自分の利益のために行動するような者のみが恩典に浴するような結果になるならば、むしろこうした法律はつくらない方がいいとさえ考えているのであります。そこで政府の方においては、今度この法律が通過した場合において、いかなる心構えと用意とをもつて取締りに当るのであるかということをお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/2
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003・福田喜東
○福田政府委員 今御審議中の法案が通過いたしまして、法律として出ました場合には、御指摘のように、もとより遵法精神から申しまして、十分業者の方にもこの法律を守つていただくことは当然のことであると存じます。それにつきまして、御承知の通り安本にも物資需給調整審議会もございますし、これによつて十分この法律の施行につきまして遺憾ないように気をつけて参りたいと存じます。従来と違いまして、今度は物資も相当範囲が狭くなつております。それから使用の方面も局限と申しますか、狹められておりますので、今後の取締りにつきましては、はつきりしてやつて行きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/3
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004・中崎敏
○中崎委員 現在提案されております法律には、五つの統制品目が列挙されているのでありますが、この五つの品目については、大体どういう範囲の統制を行われようとしているのであるか、その内容の構想を御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/4
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005・近藤止文
○近藤(止)政府委員 法律の別表に掲げられておりますニツケル以下の五品目につきましては、いずれもこれらのものを使用いたします業者に対する割当及び配給をいたしますのと合せまして、ニツケル、コバルト、タングステン、モリブデンにつきましては、使用の制限をいたすことに相なつているのでございまして、いずれもこれらのものを原料といたしまして製品をつくるものを対象にいたしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/5
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006・中崎敏
○中崎委員 順次これからそうした物資が不足して参りまして、割当、配給、使用制限ということが強化されるに従つて、やみの価格というようなものがつり上るのは明らかだと思うのです。そうなりますと、今までのような経済の取締りの方法ではきわめて不十分であります。たとえば一面において警察界も相当に腐敗しているといいますか、悪い風潮が生じて来ているのでありまして、これらと悪徳業者との関連性において、目に余るものが一層出て来るということも考えられるのであります。さらに一面経済査察庁というものもあるのでありますが、従前この運用必ずしも適正でないというふうに考えているのでありまして、こうした取締りの衝に当つている人たちの心構え、態勢というものを一体どういうふうにして行かれるものか。さらにこれを補強、強化するのか、あるいは他に適当な機構機関等を通じてこれを強化、監視して行くというふうな用意があるかどうか、具体的に説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/6
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007・福田喜東
○福田政府委員 現在のところ、この取締りを徹底さすために、特別の機構ないし組織は考えておりません。従来の警察ないし経済査察庁その他の機構を通じまして、嚴重にやつて行きたいと思つております。ただ一言御了解を願いたいことは、日本の独立も間近に迫つておりますが、そのあかつきには、御承知の通り、事業者団体法でありますとか、独禁法でありますとか、そういうものにつきましても、改正はまず時間の問題であろうと予想されます。そういう場合には、なるべく事業者自体の民主的な合理的な団体にも、自主的にその方面を担当してもらうというような気持でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/7
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008・中崎敏
○中崎委員 今のような政府の説明では、必ずしもこうした重要な国家的使命を十分に果し得るとは認められないのであります。かつて財産税法が実施された際に行われたと思うが、たとえば密告といいますか、そういう制度によつて、こうした統制違反の事実が目に余るとして認めたものに対しては、報奨制度というふうな方法も実施された例もあるのであります。この場合においても、そうした方法によつて、少くとも著しく目に余るという者、国の法を蹂躪するというふうな悪徳者に対する是正の道を考えるのが適当ではないかと思うのでありますが、この点についてのお考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/8
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009・福田喜東
○福田政府委員 ただいま御指摘の報奨制度は、現在なくなつておりますが、先ほど申し上げましたように、われわれといたしましては、なるべくならば事業者自体の一つの自主的な監視あるいは運行によつて、良心的にしつかりやつてもらうということを期待しております。政府側として特に何か特別の制度を設けて監視しようという考えは、今のところございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/9
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010・中崎敏
○中崎委員 政府の答弁では、はたしてこうした統制が徹底するかどうかということについては、政府自身も十分の自信を持つておられないと思います。これは一応私たちの主張は残すといたしまして、さらに進んでお尋ねいたします。
最初の物調法が何回か変更されて今日に至つておりますが、その際は民主的に組織された団体の参加を求めて、そしてこの統制運用の円滑を期するということが、法律の上において明記されておつたのであります。ところがその後の運用においては、内外の情勢によつてこれが実施されないで終つておるのであります。そのため非常に実情に沿わない運用がされ、一面統制の長所も現われておつたのでありますが、一面官僚統制の大きな弊害も現われたのは、争うことのできない事実だと思うのであります。そこで今度統制の考え方が相当にかわつて来たのでありますから、この際においてむしろ民主的に組織された団体の参加を求めて、そうして実情に即した運用をすることが、日本経済再建の上においても大きな力になると思うのであります。そこでこの法律案の内容を見ますと、民間団体の参加を求めるということがどこにも明らかにされておりません。ただここに物調審議会というものが置かれるというのでありますが、これは一種の諮問機関にすぎないのであります。政府が一方的に必要だと思えばやるし、大部分の場合はただこういう機構だけをつくつてうやむやにしてしまう。また実際にそういう審議会を開いてみたところで、ただ諮問機関にすぎないということになりますと、決してこれは有終の美をなすものではないと私は信じておるのであります。そういう意味合いにおいて、今度の新しい統制の行き方としては、少くとも民間の意見を強く取入れて、これが統制の上において、さらに国家経済運行の上において、大きなる役割を果すという法律の体制が、ここにすでにでき上つておらなければならないと思うのでありますが、そういう意味においてこの法律案の中において、こうしたものをはつきり参加せしめて、その協力によつて統制の妙味を発揮するようにする用意があるかどうか、それをお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/10
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011・福田喜東
○福田政府委員 御指摘の点は実は全然同感でございます。ただこの法案自体には御承知の通り現在事業者団体法の制約がございますので、法文として取入れることはむずかしいわけであります。物調法自体ができ上りました経緯を考えましても、日本側としましては今御指摘の線に沿つて司令部と交渉したわけでありますが、残念ながら許可を得られませんで、日本政府側の責任において一方的にやれということに相なつたことは御承知の通りであります。今後の問題としましては、まず根本的な制約をなしております事業者団体法、さらにこれに関連する独禁法、こういうものにつきまして、独立後なるべく早く日本経済の実態に合うような改正をいたしまして、これと並行して、今御指摘のような民主的団体自体にも責任を持つてもらい、積極的に参加してもらつて、両々相まつて目的を達する方向に少しでも早く参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/11
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012・中崎敏
○中崎委員 趣旨においては賛同を得たようであります。実際におきまして事業者団体法、独禁法というものが、ある程度自由な活動を阻害しておることは言うまでもないのであります。かりに民間の民主的に組織された団体を、こうした統制行政に参與せしめるとしても、独禁法あるいは事業者団体法とは触れないで行けると思うのでありますが、この点の見解はいかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/12
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013・近藤止文
○近藤(止)政府委員 民主的に組織されました団体におきましても、やはり事業者団体法の適用があるわけでありまして、これらの事業者団体法に触れるものについては、事業者団体法において禁止されております権限を、そこに與えて参るわけには行かないのであります。ただ單独の法律によりまして、その例外の規定を設けることは可能ではございますけれども、ただいままでのところでは、その基礎法規であります事業者団体法の改正によつて、初めて今回の新しい法律でも、そういつた団体を活用し得るということにならざるを得ないのであります。ここに例外を認めますことは、結局事業者団体法それ自体の改正を要することになるわけであります。その点でただいままでのところでは、そういつた点の改正の了解を得るまでに参つておらないわけであります。これは貿易組合等の組織の場合においても同じことでありまして、これが進んでおりませんのは、事業者団体法という基礎的な法律がございまして、これの例外的な規定をまだ置き得ない現状にあるわけでございます。同じかつこうになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/13
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014・中崎敏
○中崎委員 私の質問の趣旨が徹底しなかつたかと思うのでありますが、たとえばタングステンとかモリブデンとか、こうしたものの統制を政府の方でやるのであります。その際において、たとえばこれらに関連するところの業者、組合を組織しておるもの、あるいはその他の団体に加入しておるような者もあるのでありますが、そういう者から委員なら委員というものを出して、それが一面組合の意向を反映し、一面は個人的立場だと思いますが、学識経験者の中に入れてもいいと思いますけれども、もう少し突き進んでそうした統制を受けるような団体と関連性のあるような人を出し、これが直接間接な影響力を持つというふうな機構にして行くということができるかできぬかということを聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/14
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015・福田喜東
○福田政府委員 御質問の具体的な例としまして、先ほど申し上げました物資調整審議会の委員に、直接関係のある業者の人に入つていただくということで今実は選考中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/15
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016・中崎敏
○中崎委員 今の人の面において各業界とつながるということ、それから一つには運用の上において業界とつながりを持たせる、その際においてたとえば業者からいろいろ個々に意見を聞くということは、この法律の実施によつて当然行われるのでありますが、たとえば一つのこれが統制を受ける団体について、公式に意見を求めるとかあるいは非公式に意見を求めるという方法もあるのであります。非公式に意見を求めることは今まで実際の運営において実行されておつたのであります。それが今度の団体法との関係で、十分に運用ができるのかどうか、この点をもう一つお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/16
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017・近藤止文
○近藤(止)政府委員 ただいまの物資調整審議会の委員に業界を代表するような方を任命するということの裏に、実は別表にございますような五品目については、割当配給制度を実施いたしますが、この割当については、割当基準審議会というものがございまして、これに物資調整審議会の委員よりはもつと具体的に、業界のいろいろな面を代表する方々をこの審議会の委員に任命いたしまして、割当基準そのものについて、そういつた業界の御意見を十分徴しまして、決定しておる次第でございます。割当配給いたします場合には、そういつた意味で業界の意見は十分参酌してやつて参る予定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/17
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018・中崎敏
○中崎委員 そうしますと、今度は審議会の権限の問題でありますが、この法案によりますと、これは單なる諮問機関にすぎないことになつております。ところで諮問機関というのは、先ほど申し上げましたようにきわめてその力が弱いもので、ただ單に意見を聞くという程度のものであります。場合によつては、意見を聞かぬということも出て来るのであります。実際においての運用もまたそうなつております。有名無実になつているのは、大部分こうした委員会の通例であります。これをさらに一歩進めて決議機関とする、しかも安本長官がこの会長になつておりますから、絶えずその会長としての立場において委員会そのものを指導し、さらに影響力を持つということができるのであります。しかもこれは、純然たるこうした国家的な統制事務を民間にまかすというものではなくて、少くとも政府が重要な立場と責任をもつて、一つの強力な決議機関にして行くというふうな考え方はどういうものであるか、お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/18
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019・福田喜東
○福田政府委員 御承知の通りに、審議会自体が決議機関の形をとることは今のところ遺憾ながら禁止をされておりますので、これの性格を今ただちに決議機関にすることは無理だろうと思いますが、御趣旨の線に沿いまして十分民間人の意見も反映すると同時に、運営について遺憾ないようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/19
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020・中崎敏
○中崎委員 この審議会の構成は、予想されているものによりますと、会長一人と委員十五名以内となつております。その委員は学識経験のある者の中から任命されることになつております。ところがこの点につきまして、直接利害関係のある業者は、えてその目がくらむといいますか、利益の前にはすべてが犠牲にされるというふうな行動が従前しばしばあつた。それを大所高所から監督し、協力する場合においては、むしろ国会議員というようなものもその中に加えて、運用の妙を発揮するという考え方があつてよいのではないかと思いますが、この点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/20
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021・福田喜東
○福田政府委員 御意見をとくと拜聴いたしまして、国会の承認を得る場合には委員になり得ますから、その場合にはまた御相談いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/21
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022・中崎敏
○中崎委員 次にお尋ねします。すべて物の統制をするという考え方には、たとえば自由党の政策みたいに全然統制をしないのだ、経済を自由な立場に置いて進めて行くのだという考え方と、社会党のように、統合的計画経済の上に立つて必要な範囲においては統制をするのだというような、考え方の面において違いはあるのでありますが、過日も周東長官が答弁されましたように、計画経済というものは国家的見地の上に立つて、高いところからやつて行く必要があるということであります。私たちはそれにただ総合ということを入れておりますが、その計画経済を広くとられれば総合計画経済になると思います。そうした見地の上に立つて、たとえば国の産業をどういうふうに持つて行くのか、あるいはまた国民の最低生活を一体どこで保障するのかというような場合において、この法律で考えておるのは、もうきわめて限局して、たとえば非常事態の発生したような場合に、国内物資の面においては統制するのだというような局限された考え方のようであります。もう少しその考え方を広げて、そうしたものが同時に公共の福祉の上において必要であるというふうな場合においては、当然それを考えの範疇に入れてやつて行つていいのではないかというふうに考えるのでありますが、この点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/22
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023・福田喜東
○福田政府委員 現在のところ、政府といたしましては、むしろ計画経済の対象ないしは統制しなければならない物資の対象は、制限的に考えたいという方向で考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/23
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024・中崎敏
○中崎委員 その制限的に考えるという考え方には、私別に異議を申し述べてやるのではありません。ただものの考え方をもう少し広げて、たとえばこの法案の範囲においても、さらに国際的に割当を制限され、あるいは国際的な要請によつて物資を追加せなければならぬというふうなものは、これは当然今後も生じて来ると思うのであります。そうした国際的視野の上に立つたような考え方は別として、国内的な視野の上に立つた場合において、たとえば災害とかいうような非常事態の発生した場合にこの物を統制するのだ。その場合においても、もちろん統制品目は法律によらなければならぬことになつておりますから、それはいいのです。しかし考え方としては、ただ非常事態の発生ということだけでなしに、もう少し範囲を広げて、国民経済の最低線の確保あるいは総合的計画経済確保の上に立つて、日本の経済の水準をここまで持つて行くのだ、そういうことにするにはこういう範囲の統制が必要だというような、考え方をもう少し広げて行つたらどうかというのであります。具体的に品目をあげる場合にはもちろん法律で行くのでありますが、そうでなしに、たとえば自由主義であるか社会主義であるかというような、そうした物事の考え方が一つのわくになるのであります。その考え方の中に立つて、必要な場合に応じて一つ一つ数をふやして行くというその考え方を聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/24
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025・福田喜東
○福田政府委員 現在の内閣といたしましては、御承知の通り根本の経済観念の基調といたしましては、あくまで自由という考えであります。ただ野放しの自由経済でなく、一定の計画性を持たせた自由経済であります。従つて今御質問の趣旨の、すべてを総合経済的なわくに入れるという考えは、私ども今持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/25
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026・中崎敏
○中崎委員 すべてを総合計画経済のわくに入れるというのではなしに、ものの考え方というのが計画経済でなければならぬということは周東長官も賛成しておる。言いかえれば、ただ野放しの自由主義だと言つても、お前たちかつてにやれというのでやるのでは政府の政治を何もないので、高いところから一体日本はどうやつて行くのかということについて一つの目標をきめて、その線に沿つて施策をするということは長官も言つておつた。その考え方においては、大きな考え方の違いがないということをこの間長官も言つておられた。それを具体的に裏づけするために統制をやらなければならぬ範囲というものを、もうこのわく内で絶対に広げないのか、あるいは考え方が多少広がつて行つてもいいのか、こういう具体的な問題についての考え方の基本を、尺度を一体どこに置くかということです。そういう意味において、何でもかんでも統制をせよということを社会党は言つておりません。それから国民生活の最低線を確保するためには、さらにこういうものは統制しなければならぬではないか。たとえば政府の方で、今可塑剤というものを輸入されております。塩化ビニールというのが、最近新しい工業としてアメリカあたりで非常に発達しております。一年に三十数万トン——これは四九年のことですから、もう四十万トン近くも生産されておるに違いないと思う。これだけ大きな新興工業になつておるのですが、日本では遺憾ながら最近においてようやくこれが芽を吹き出して、これからやろうということで少量だけ生産されておる。これは日本のような資源の少いとこで、ほんの技術をもつてやつて行くというような国においては、必然的に最も重視されなければならぬ新興工業の尖端を行くものだと思います。塩化ビニールというものは、まず樹脂とそれから可塑剤というのが半々に使われてできるのでありますが、その塩化ビニールに必要な可塑剤というものが無計画に外国から輸入されておる。そうすると国内においてようやく計画を立てて事業を動かして行うこというようなものが、外国からどんどん安い物が入つて来るとばたばたみな参つてしまう。これでは日本には新しい工業が起つて来ない。こういうふうな場合において総合的な計画経済の上に立つて、この工業はどうするのか、そうしてこれが将来一体国内においてどの程度消費されるのか、外国にどの程度輸出されるのか、工業の地位において一体どの程度の地位を認めるのかというような総合的な考え方が立たなければ、この工業は成り立たない。たとえば油の場合にしてもそうです。この間も周東長官に言つておりますが、たとえばひまし油のごときは足りないと言うが、もうないのです。一部の業者が、今にひまし油がなくなるからというので、しこたま買いだめして、売り惜しみしておる、今度はそれでさえも外国へ輸出して、国内に少くなつたら、ぱつともうけて行こう。こういうようなことではとてもこれを使つて行くところの洗油剤とか、あるいは化粧品とか、ブレーキ油とか、薬品とかいう方面は参つてしまう、そういうような生産業は脅威を受けるような結果になる。一部の搾油業者が一方的に利益を策するために、政府の方の人たちと話合いを進められている。現在は、この間の話でこれはやらぬということで、またやらぬことになつたと思いますが、業者がばたばた大騒ぎをしてやらなければ、これは政府の方で一方的に突き進んでいかぬといういうなことでは、とても公正な政治というものは行われない。こういうような考え方に立つて、たとえば物の輸入をする場合においても、輸入の計画を一体どうするかということは安本で管理しておられると思いますが、その中においてこうした問題は第一に困難な場面に直面しておる。でありますから、これをどの程度統制するかということは別問題です。こうした問題については安定本部というものがあるのだから、これであまりに日本の事業の実態に即し得ないような運営をされては困るのです。こういうようなことは当然政府の一つの面でありますが、同時に必要な場合においては統制をやらなくちやならぬ、あるいは輸入管理をある程度為替の面においてやられるというけれども、そういうように一方的にやられておるから、輸入業者はそれでしこたまもうけて行こう、あるいはこれを使つて行くところの一部の加工業者が、外国の者は安いから、これでもうけて行こうとか、こういうような一方的な考え方では、物事というものは運ばないのです。だからそういうような面において、もう少し高い角度からものを考え、必要な範囲においてはある程度の統制もやらなければならぬ場合もあるのじやないかということを聞いておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/26
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027・福田喜東
○福田政府委員 御質問の御趣旨はよくわれわれも承つおります。御承知の通り、従来占領下にありましたし、遺憾ながら盲貿易に近いような、きわめて不十分な自主性でありましたが、幸い近く独立を迎えまするから、いろいろな意味合いで貿易政策全般については、日本といたしまして相当自主的な判断で考えます。また現在の産業資金面その他で、日本の経済全般に影響するようなものについては、一つの計画性を持たせて行くということは、御承知の通りであります。いろいろな意味合いでこの法案だけで一つの計画性を嚴格にやつて行くということは、少し無理ではなかろうかとわれわれは考えます。全般的なものとにらみ合せて、今後なるべく近い時期に、先ほども一番初めに申し上げましたように、あらゆる基本的な法律的な制約というものについて再検討を加えまして、いろいろな意味合いで再出発をして行く時期が来ておるわけであります。十分御意見は拜聴いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/27
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028・中崎敏
○中崎委員 最後にもう一つお聞きしたいのでありますが、最近における中小企業の行き詰まりというものは、ことにはなはだしいものがあるのであります。中小企業の対策については周東長官からもいろいろ答弁を受けたのでありますが、実際において政府の方でほんとうに腹をきめて、中小企業の現状を維持し、さらにその健全な発展をやるということは、重大な政府の施策でなければならぬと思うのであります。たとえばきようの新聞で発表されておる通りに、きのうの参議院の予算委員会においては、大蔵大臣は、二十六年度の自然増收は千五、六百億ある、さらに三百億程度の自然増收が織り込まれておるということを言われておる。約二千億近い自然増收と称するものは、いわゆる苛斂誅求の結果でありまして、しかもその大部分は中小企業にしわ寄せられておる。ことに先般国会を通過しました企業合理化促進法のごときものが、大きな事業には三箇年間免税をして、あらゆる国家的な有利な施策をこれに施して行くが、中小企業は何らこれの恩典に浴せない。一面において苛斂誅求による税金が自然増收の名前においてやられておるのでありますが、末端におけるところの徴税の実態を見ても、実に目に余るものがある。今年は五割増だから、去年の申告より五割増して申告しろ。もしその通りやらなければ、一方的にきめて、そうして拂わなければ、どんどん強制徴收をやらなければならぬと、これを押えつけて、税金をとつている。こういうふうな実態において、自然増收だとはたして言えるかどうか、私たちは重大な懸念を持つておる。そういうように弱い企業者がどんどんぶつつぶされる。また金融においても同じことが言える。半期、四半期三十億程度の中小企業、中小企業といつても、その多くの金は中小企業の中でも大きい、いわゆる大企業に類するようなものに大部分が使われておる。ほとんど困つておる大多数の中小企業というものは、何ら金融の恩典に浴していない。これらの点から見ましても、政府の施策というものは、中小企業をより育成するための親切な手が何ら打たれていない。そこでせめて中小企業を維持するために、計画経済の上に立つて、必要な施策をやる。場合によれば、統制もこの面にやつて、中小企業を育成する手を打つべきである。こういうふうに考えるのでありますが、こういう意味合いにおいても、私は、さきに言つたように、総合的計画経済の上に立つて、必要な統制も、場合によれば、やむを得ないのだというふうな考え方が必要なのではないかということを言うのであります。ただ資金の面において、また融資の面において、あるいはたとえば工業研究助成等の面においても、中小企業はほとんど顧みられていない。こういうものに対しても、一体どういう施策をとるかということは総合的に立てられなければならぬ。同時に必要な範囲における中小企業擁護のための統制もやらなければならぬということも考えられなければならぬ。たとえば必要でないという場合においては、相当企業の整理も考えられてもいいと思う。しかしまた大部分のものをどうして育成して行くかということでありますから、そういう範囲における統制ということも、場合によれば、行わなければならぬという考え方が必要ではないかということを私は言うておるのであります。すべて総合的計画経済の上に立つて、最低限度これだけは必要だという考え方を、政治の上に現わしてもらうことが私の希望なんであります。これは繰返して言つても同じでありますから、大体私の希望を申し述べながら、質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/28
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029・前田正男
○前田委員長 これにて質疑は終了しました。
これより討論に入ります。小野瀬忠兵衞君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/29
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030・小野瀬忠兵衞
○小野瀬委員 ただいま議題となりました法案に対しまして、自由党を代表して賛成の意見を申し上げます。
この法案は、昭和二十一年終戰後の物資需給がきわめて逼迫いたしておりました当時に制定されました臨時物資需給調整法を、この三月末限り廃止して、新たに国際的に非常に不足しておる物資等の需給調整に関し臨時措置をしようというところにねらいを持つておるものであります。わが党におきましてはかねて物調法の廃止を主張して参りましたが、重要物資の需給も、産業の回復と、貿易規模の拡大につれまして緩和され、割当配給の統制もわずかにその一部を残して撤廃されましたこの機会に、戰争当時の遺物であり、総動員法的な性格を持つ物調法の廃止を実現し得たということは、きわめて当然な処置であると考えるのであります。この点わが党が、かねがね強調して参りました公約の実現を喜びとするものであります。ただ物調法廃止後の処置といたしましては、朝鮮動乱の新たに展開して参りました国際情勢の緊迫化、海外諸国における軍備強化に基いて、国内資源に乏しいわが国が、海外に仰いでいる重要原材料に対する諸影響に対し、細心の注意を加えておくことは当然なことであると思うのであります。従つて国際原料会議で、各国政府に対し、生産の増加や、消費の節減や配分等に対して勧告される物資、あるいは各国が国内統制を行い輸出統制をしているような基礎物資については、わが国としても自国の必要と国際協力の見地から、何らかの対策を講ずることもまた当然のことと思うのであります。ただかかる措置はきわめて特定の物資に限定すべきでありまして、命令で簡單に品目の追加や削減ができるようなことでは、物調法の再現に終ることも懸念されるところがあるのであります。ところがこの法案では、対象となる物資の範囲を明確に規定して、限定的に列挙することになつております。また調整の方法ついても、きわめて制限せられたものとなつており、新たな必要措置をとる場合には、あらためて国会の承認を要することとなつているのであります。かかる観点からいたしますと、この法案は現下の世界情勢を考慮に入れながら、国際協力の精神と国内的な必要に対応してつくられたものであり、しかも本法の明文規定以外の措置をとる場合には、国会の承認を要することとなつておりますので、法の精神を逸脱する危險のないように立法化されたものとして、非常に機宜を得たものと存ずるのであります。この意味におきまして、わが党は本法案に賛成の意を表する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/30
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031・前田正男
○前田委員長 次に笹山茂太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/31
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032・笹山茂太郎
○笹山委員 改進党を代表しまして、ただいま提案されております国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律案に対しまして、若干の要望をしまして賛成をするものであります。
この法律案はもともと従来の臨時物資需給調整法を、時代の推移に即応させて改正する建前のもとに立案されたことは政府の説明の通りでございますが、法案の各條文を通じて流れている考え方につきましては、国内における供給不足物資を調整して、日本の経済の自主的発展をはかる方針よりも、むしろ国際的流通経済の——換言すれば現在においては軍備拡張計画に役立つような稀少物資の調達を主眼としているように見受けられるのは、もの足りないような感じがいたすものであります。もとより国内経済も国際経済の一環としてある以上、国際経済の流通に関しまして、日本も寄與しなければならぬことは当然であると思いますけれども、その場合においても、日本の経済自体の特殊性なり、あるいはその健全なる運営を忘れてはならないと思います。しかるに国内供給不足物資の調整については、第二條第一項第三号に掲げてあります通り、公共の利害を害するおそれある場合という、きわめて極限された範囲内においてしか運営されないことになつているのでございますが、われわれの希望といたしましては、いやしくも日本経済の自立発展のために、必要な場合におきましては何時でも統制措置を講ずることにせられたいと思います。この法案の経過を聞きましても、去る一月二十八日の関係方面から軍備拡張に役立つような稀少物資の統制を検討してはどうであるかというような示唆を受けて、初めてやつとみこしを上げてかような立法を考えたようになつたというふうにも聞いているのでありますが、こういうような国内経済の発展のため、最も大事な物資需給の問題について、政府はもつと自主的に積極的に考えて、日本経済独特の問題として取扱う必要があるのではないかというふうに思います。政府は統制撤廃という單なる名目のみにとらわれて、統制の効果と、また反面統制の撤廃に伴う効果の具体的な問題についての比較検討を十分いたされないで、ただ競争一本やりで行くということは、日本の経済のように資源の少い、また外貨の獲得の容易でない日本の現状におきましては、その建直しにはもつとプランとコントロールに、相当ウエートを置くようにする必要があるのではないかと思います。どうかこの法律の運用につきましても日本経済の特殊性を第一に、そして優先的に考えられて、物資の需給調整に当られんことを希望するものであります。
なお最後に、物資需給調整審議会というものが新しく設けられたのでございますが、この運用についても広く輿論が反映するように、民主的な運営がなされるように、一片の政府の御用機関化しないように、ひとつ十分運用について愼重に取扱われんことを要望して賛成討論といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/32
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033・前田正男
○前田委員長 次に中崎敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/33
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034・中崎敏
○中崎委員 自由主義を看板にして今日まで政治をやつて来た政府並びに自由党の、政策の、ある意味における行き詰まりとでも申しますか、統制撤廃を看板にいたしまして、国民に公約しつつ来た自由党としては、この際あらためて統制をしなければならぬというふうな段階に立ち至つたということは、一面において国際経済の情勢の影響を受けたことはもちろんでありますが、さらにまた国民経済の上におけるこうした手放しの自由主義経済というものが、現下の段階においては、必ずしも妥当でないということを明らかにいたしまして、これが相当、百八十度とまでは申しませんが、大幅の政策転換ということに追い込まれた事実をわれわれは認めなければならぬのであります。右派社会党といたしましては、いわゆる総合的社会主義計画経済の上に立ちまして、この必要な範囲におけるところの統制はやむを得ないのだ、こういう考え方の上に立つておるのでありまして、勢いこうした事態が生れましても何ら驚いてはいないのであります。むしろ当然時がわれわれの主張の正しいということを裏づけしたものと私たちは信じておるのであります。
そこで私は日本社会党右派を代表いたしまして次の附帶條件をつけまして賛成をするものであります。
まず第一にこの運用にあたりましては、民主的に組織された団体の参加を得て、そして実情に即した運用をするということが必要だと主張するのであります。
第二に物資需給調整審議会の構成について申し上げますと、会長一名及び委員十五名をもつて組織されるのでありますが、この会長については異議ないといたしましても、委員十五名の中に、少くとも民意を強く反映いたしまして、大所高所から物事を判断できる立場にあるところの、国会議員を相当数これに加えて、運用の妙を得るということが必要と思うのであります。そのほかの委員につきましては、ただ單に学識経験があるというだけでは十分でないのでありまして、それに加えて、さらに統制を受ける業界の代表的立場を持つた人を考慮の中に入れるということ、しかもそれはただどの党に好意を持つておるとか、あるいはどの党の党員であるとかいうような、党利党略の上に立つたところの人の選び方でなしに、公正な立場に立つて、それが日本経済の上にどの程度の役割を果す人間であるかというふうなことも十分に考慮した上で、その人選をすべきことを主張するのであります。
次に二の審議会の権限でありますが、これはこの法案によりますと、諮問機関となつておるのでありますが、むしろ一歩進めて決議機関といたしまして、従前の官僚統制の弊を、これによつて一挙に打開するというところの方面に進むべきものであると思うのでありますが、政府の言明によりまして、今ただちにそういう段階に至ることは困難だというのでありますから、将来の改正を目途として現在そういう希望を述べておくのであります。
次にこの諮問委員会の運用でありますが、できるだけこの諮問委員会の意見を尊重するということは申すまでもないのでありまして、先ほど質問のときにも申し上げたのでありますが、ややもすれば、こうした弱い機関というものは、政府の側から無視されて、自分たちの都合のいいときだけは利用いたしますけれども、都合の悪いような場合にはこれを無視して委員会を開かない。あるいは意見もうやむやの形において終らせてしまうというふうな運用がされておる例が非常に多いのであります。それでは新しい考え方の上に立つた統制というものは、決して妙味を発揮し得ないのでありますから、この運用の上におきましては、この委員会をできるだけ尊重して、ある以上はできるだけこの委員会に諮つて、そうして運用して行くということが必要であると思うのであります。ところでややもしますと、こうした委員会というものは、利権とか、情実とかというふうなものにとられまして、運用を誤ることが過去の統制の上において幾多あるのでありますから、この運用の場合においても、人を得ると同時に、その運用の心構えというものが、どこまでも公正な立場に立つてやつて行くところの心構えを必要とすると思うのであります。
第三日に取締りの点でありますが、これは先ほども質問を申し上げましたように、いわゆる自由主義経済というものは統制をやらない、統制撤廃を公約しておる政府並びに與党といたしましては、国民の上に統制の法規が出て、現在残つておつてももう統制はやらぬのだというふうな形から、いわゆる死文化して来ておるのでありまして、この取締りの面においても、また官憲の方でも手をつかねておるというようなことで、非常な弊害を現在残しておるのであります。そこで自由党並びに吉田内閣としては、今さらこの新しい法律ができたからというので、なかなか取締りもやらない。国民の観念の中に、自由党はもう統制はやらないのだということを植えつけてありますから、なかなか容易でない。従つて取締り官憲もそういうような考えで、今まで通り手をつかねておるというようなことがありはしないか。たまにやるならば、あるいは自分たちの方はうまい汁はすえないというようなことで、いわば腹いせといいますか、そういうようなことで強要されるような結果になるのではないかとさえ心配されておるのでありますが、この取締りの問題については、まずこの新しい法規のできた趣旨並びにその運用についてこれを徹底せしめて、そうして取締り官憲、機関の方で十分にこれを指導して行く、そうして再教育をして行く、こういう手が打たれなければ十分ではないのでありまして、この点について特に強い條件をつけて置きたいと思うのであります。
それから四番目に総合的計画経済の上に立つて、そうして国民生活の向上と、日本経済の向上発展のためには、さらに項目を追加しても必要な範囲においては統制をやつて行くというというところの用意を持つて行かれることを希望するものであります。ことに中小企業に対しましては、先ほど申し上げましたように非常に窮境に追い込まれておりまして、日本経済の将来というものについ非常な危惧をわれわれは持つておるのであります。そうした中小企業の維持発展のためには、必要な統制を行うと同時に、さらにこの金融あるいは税金等の総合的施策の面においても、十分な考慮を沸われることを條件といたしまして、本案に賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/34
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035・前田正男
○前田委員長 次に横田甚太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/35
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036・横田甚太郎
○横田委員 本日は自由党の議員がたくさんこられました。議員が議会の中におられたことは、まず何よりおめでとうございます。大体この法案の審議は比較的うまく行つた。第一自由党の質問がなかつた。これにもし自由党の賛成討論がなかつたら、もつとうまく行つたのだろうと思うのでありますが、第一稀少物資の不足を前提にしての経済措置には反対なんです。これは大体うそなんです。なぜと申しまして、これはアメリカの野望が、丸い地球を二つにわけて見ている。そうして自分の意のままにならないものを勘定外にいたしまして、日本をアメリカ経済圏に無理につながらせようと、日本に強要した結果がこの措置になつたのだと思います。自由党の方に特に御考慮願いたいことは、アメリカは自由党に言わせますと、金がある国であつて、物をふんだんに持つている国だそうです。ここから外資を借りようというのが吉田さんのねらいなんです。ここからうまく物をちよろまかして行こうというねらいなんです。ところがアメリカに稀少物資の少いことがはつきりした。そのないものをおとなしく日本に対して中国と取引せよ。ソ連と貿易せよ。そこにアメリカが不足する物があるではないかというのなら話がわかるのですが、そうせずに、自分のところにないものを、都合のつけられないものを、日本の天下の政権を握つている自由党に対しまして、アメリカと同じように不足の中に苦しんでくれということを強要して来たのがこの法のねらいなんですから、共産党はこれに反対するのです。自由党の方はここでもうひとふんばりしていただきまして、あると思つておつたアメリカが案外ないんだし、兵隊はごらんの通り弱いのですから、ここでアメリカをあきらめて、あるところからもらつたり取引きしたら、どうかと思います。あるないの論議のために例にとりますと、タングステンをとつてみます。一九四八年、今から四年前でありますけれども、約二万八千トンの世界生産量の中で、中国の一万二千トン、これは世界の総生産額の四四%を占めております。それが第一でありまして、産地は中国の江西省から湖南省、広東を主としております。米国はわずかに三千九百トン、ポルトガルは二千九百トン、これはわずかに世界総生産額の一〇%であります。ボリヴイアは二千五百トン、これが九%で、これに続いております。世界の消費国を見ますと、アメリカがたくさん使いまして、八千トンを使つております。米国は国産だけでは足りないので、三千四百トンを中国、韓国等から輸入しております。中国からは一千七百トン行つており、韓国からは四百トン行つております。これに次いでいるのが英国でありまして、ビルマ、ポルトガル、インド等から輸入している。米国は世界第一の消費国でありますが、産出量は少いのであります。わが国は年産九トン、輸入も六トンに過ぎないのでありますが、わが国の機械輸出が旺盛になれば、相当量の輸入を必要とするのが当然であります。この事実が示すように、タングステンを必要とする日本の産業は、お隣りの中国にタングステンがあるという事実を忘れてはならないと思います。モリブデンを例にとつてみますと、これも一九四八年の記録ですが、世界の総生産額は一万四千トン、そのうち米国の一万二千トン、これが世界の総生産額の九〇%を占めておつたのです。続いてチリーであつたのでありますけれども、その当時ソビエトはその産額は五百トンにすぎなかつたのでありますが、一九五〇年には三千四百トンというふうな、厖大な、脅威的な生産増をやりまして、米国に次ぐ大生産国となつたのであります。これは実に注目に値するものだということは、世界資源年鑑一九五二年版が報じている事実であります。ニツケルを例にとつてみますと、ソ連の産額は戰前は微々たるものでありましたが、戰後二万五千トンを産して、これも世界第二の生産国になつてしまつたのであります。白金を例にとつてみますと、白金も皆さん御存じのように、この産地は従前はウラル山脈地帶であります。これはソ連領でありまして、しかも重要な産地であつた。一九四八年にはやはりソ連が依然として第一位であつて、世界総生産額は約十六トンで、そのうちソ連は三・九トンを生産しているのであります。この統計が示しているように、日本のほしい、そしてアメリカがないと言つておるところのこの稀少物資は、ずいぶんとソ連圏にあるのです。あるのですけれども、あるところにアメリカはねたみまして、ドルの垣を設け、細菌兵器と原子爆彈でじやまをする。兵隊を立てて垣をつくろうとするから、アメリカ側に足りないような結果になつて来るのではないかと思うのであります。このような意味においてこの稀少物資の不足ということは世界的な現象ではない。ただアメリカ圏につながるためにこうなるのだということをはつきりしなくちやならないと思うのであります。しかもこのようなものは今後ますます必要になつて来るのでありまして、この重要なる稀少物資を台金の材料にして使いました結果が、朝鮮における戰果となつて現われ、アメリカがいかにあせろうとも思うようにならないと云う世界の政治、経済の形相を呈しているのであります。それにつながる日本がアメリカから武裝を要求されました、その條約的な面が日米安全保障と行政協定であります。それからさらに、それを国内に現わしましたのが、本年七万五千の警察予備隊であつたのですが、昨日の参議院予算委員会において、大橋さんは、これを十一万以上にふやしたいという考えを持つていることを述べたのであります。この兵隊をふやしましても、ここに問題にされておるような重要な稀少物資がなかつたならば、兵器は悪く従つてこの兵隊さんはもう盲と一緒でありまして、結局死にに行くのが落ちだろうと私たちは思うのであります。こういう條件のもとにおいて、今後の政治経済において当然必要なものを、必要なものであるがために、アメリカが独占しようとしておる。日本にはわずかしか渡そうとしない。わずか渡すのを條件に、日本の吉田さんに、足らぬのをわけてやつたのだからありがたく思えといつて、恩着せがましい経済政策を押しつけているということを、われわれはよく考えなければならないのがこの法案であります。こういう前提を基礎にいたしまして日本が軍拡をやりましたならば、それこそとんでもないますい軍拡になつて来て、ちようど昔の天皇時代の戰争を竹やり戰争と言つて笑つておるのであるが、今度は機械のない、兵隊をどろの中で荒れさせるためにたたき込むような結果になつてしまうと思うのであります。この事実から私たちがさらに自由党の考慮を煩わしたいことは、戰前においては、中国のタングステンが日本の工場に入りまして、日本の工場で加工され、明るい電燈となり、あるいはものを聞かせるりつぱな真空管となつておつたのであります。ところが戰後米軍指導下の日本の政治は、自由党の多数によつてますますアメリカ的なものになりました結果、日本に対してタングステンさえも保障しない。ほしがる日本工業からタングステンを奪うようなまずい、非常にむごい政治、むごい貿易をやつておる。こんなひどいことがあるだろうかと思います。私は端的に言います。中国からタングステン鉱を入れて、それを加工して、日本で真空管をこしらえて、それを中国にどんどん売れば、一億本やそこらは売れるのでありますから、これを売るようにするのが今後の政治の目標であるにかかわらず、それに逆行するものであるがために、この法案を單に軽い経済政策として見ずに、実に恐るべき、日本経済をアメリカ経済の隷属下に置こうとする野望に燃えた法案であると私たちは思うのであります。それからこの統制はこれだけで終るものではないのでありまして、この統制はさらに広がるものだと思うのであります。物調法は日本経済を金縛りにするものだという点で非常な悪法であると、日本の財界は非難しておつた。物調法とこれとは違うのだ、あるいはそうだという論争をしますと、安本長官も次官も逃げて、これはそうではないとおつしやいますけれども、これは政府手持ちの資源の統計から見まして、政府の資料に非常に考え直さねばならない非常に不備な点があり、明らかに政府自体の間違いでありまして、物調法の二の舞だということがいわれております。物調法ができましたときには、それは單に一つの法律でありましたが、それを実際に運用する場合におきましては、悪い汚職官吏、越権官吏の活躍となり、ついに物調法には六十からの統制條例あるいは規則という悪い手足がついたということをわれわれは知つておる。だからここに始まりました稀少物資の統制は、やがてわれわれの民需を圧迫し、国民生活を暗黒なものにしてしまうところの悪い統制を、だんだん多くして行くような條件を備えておるとわれわれは思うのであります。物調法を一部かえたからといつて、日本が物調法時代の悪い統制あるいはやり方の中に染まないというようなことを、自由党の人が言うのでありますけれども、自由党政権下統制をまかせられる日本の官界は汚職に満ちております。汚職に満ちておることは、池田大蔵大臣さえが、いろいろな点においてこれをはつきり告白しておるところの事実であります。だからこういうような点から見まして、統制する実体のない役人、統制する実体のない国家の中に、しいて統制を再現して、こういうような世界資源に非常にあいまいなものをさらに使用制限させ、あるいは配給統制する、こういうようなことをやつて行つたならば、日本の汚職はますます広がつて行くだろうと私たちは思います。だからわれわれはこういうものに対しましては反対であります。もし自由党が選挙当時の公約に忠実になろうとするならば、こういうような法案に対しましてまつ先に反対しなければならないのですが、アメリカの要請のために自由党はその反対の勇気までも失つてしまつたのだろうかと私たちは疑うのであります。もし自由党がしいてこの法案を通そうとするのであれば、自由党という名前をかえて、統制党という名前にしなければならないのだが、名前もかえずにこの法案をおくめんもなくわれわれの前にさらけ出す。そうしてわれわれの前でこれを強行する。これほど横着な党はない。こんなにアメリカの強要を日本人の前に押しつけるために良心を失つた自由党の存在は実に哀れなものである。これを端的に言いまして、行政協定、安全保障條約という結んではならないところの米国と日本との関係を結び、ポツダム宣言で約束された世界の人民、世界の民主主義に対する裏切りをやつた経済的なしつぺがえしを持つて来られたのが、非常に長たらしい国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律案であります。だからこの点を自由党に十二分に警告いたしまして、共産党を代表いたしまして反対の意を述べておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/36
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037・前田正男
○前田委員長 これにて討論は終局いたしました。
これより採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/37
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038・前田正男
○前田委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
なお本案の報告書の作成については委員長に一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/38
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039・前田正男
○前田委員長 御異議なしと認めましてさよう決定いたします。
次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。
午前十一時五十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X01319520325/39
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