1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月十九日(木曜日)
午前十一時二十三分開議
出席委員
委員長 前田 正男君
理事 多田 勇君 理事 永井 英修君
岩川 與助君 小野瀬忠兵衞君
圖司 安正君 奈良 治二君
福田 喜東君 渕 通義君
細田 榮藏君 滿尾 君亮君
村上 清治君 笹山茂太郎君
出席政府委員
公正取引委員会
委員長 横田 正俊君
運輸事務官
(自動車局整備
部長) 中村 俊夫君
経済安定事務官
(産業局長) 近藤 止文君
委員外の出席者
専 門 員 圓地與四松君
専 門 員 菅田清治郎君
六月十一日
委員河野金昇君辞任につき、その補欠として佐
伯宗義君が議長の指名で委員に選任された。
同月十二日
委員有田二郎君辞任につき、その補欠として武
藤嘉一君が議長の指名で委員に選任された。
同月十七日
委員多田勇君辞任につき、その補欠として、村
上勇君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員村上勇君辞任につき、その補欠として多田
勇君が議長の指名で委員に選任された。
同月十九日
委員武藤嘉一君、森曉君及び佐伯宗義君辞任に
つき、その補欠として有田二郎君、滿尾君亮君
及び河野金昇君が議長の指名で委員に選任され
た。
同日
委員滿尾君亮君辞任につき、その補欠として森
曉君が議長の指名で委員に選任された。
同日
多田勇君が理事に補欠当選した。
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本日の会議に付した事件
理事の互選
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法
律の一部を改正する法律案(内閣提出第一八五
号)
国際的供給不足物資等の需給調整に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/0
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001・前田正男
○前田委員長 これより会議を開きます。
議事に入る前に、理事の補欠選任を行います。理事多田勇君が去る十七日委員を辞任されましたので、理事一名が欠員となつております。これより理事の補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/1
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002・前田正男
○前田委員長 御異議なしと認めます。それでは多田勇君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/2
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003・前田正男
○前田委員長 それでは前会に引続き私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。なお、本案に対する質疑は、前回の委員会で質疑通告者の質疑を全部終了いたしておりますので、本案に対する質疑は終局いたしました。
引続き本案に対する討論に入ります。討論は通告順にこれを許します。福田喜東君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/3
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004・福田喜東
○福田(喜)委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案に関し、賛成の意見を申し述べます。
本改正案は行政機構の簡素化と合理化の線に沿つて公正取引委員会の組織権限に関する規定を改正しようとするものであります。
改正の主要点は、現在七人の定員を有している委員会を五人とし、事務局に事務局長を置き、その下に官房と二部刷をしいて、統一的に事務機構を確立しようとするところにありまするが、これは機構を簡素化にし、その活動の効率をあげるための適切な措置と思うのでございます。このほかに委員長と委員の任命にあたりまして、両議院の同意を要することとし、国会の閉会中または解散中の任命につきましては、両議院の事後承諾で足りることになつておりますが、これは他の諸委員会の例にならつた措置であります。また審判官の法律的地位の明確化と各部の所管事務の法定化も、組織法上当然のことと思うのでございます。
これを要しまするに、本改正案は行政機構の簡素化と合理化の見地からとられた措置といたしまして、これに賛成するものでございます。ただここに特に強調しておきたいことは、独禁法の改正の問題は、さきに本委員会で修正議決いたしました事業者団体法の改正の問題とともに、わが国経済にとつては法の施行以来懸案となつている事項であるのでございます。ことに独立後の日本経済の現状並びに今後の日本経済のあり方の問題と関連いたしまして、独禁法にからまる問題の措置はまことに重大であるわけでございます。すでに今国会におきましても、輸出取引法や特定中小企業の安定に関する臨時措置法が提案されまして、独禁法の改正に対して具体的な問題を投げて来ておりまするが、独禁法の基本的な改正に手を触れることは遺憾ながらできなかつたのであります。次の国会におきましては、日本経済の将来の発展の問題と関連いたしまして、当然独禁法の改正問題が取上げられなければならない段階に来ておると思いますので、政府においても本委員会においてかねがね論議せられた諸点についても、十分検討と考慮を加えられました上、改正案の提出に対して積極的に準備されるよう要望いたしたいのでございます。
特に私はこの点につきまして、公取御当局に対しまして、いかにこの点が重要視されているかということにつきまして、交通、運輸業における独占禁止法の運用という点を、特に指摘したいと思うのでございます。この交通業、運輸業につきましては、本委員会におきまして委員の方々から特に強い御主張がありました通りで、業界の弊害ということも各委員の方々は、実例をあげてこれを指摘されたのでございますが、私はこの点につきまして、これは短い例でございますが、本日の朝日新聞の投書欄「声」の欄の「バカ気た行政」という一項目を読みまして、委員会の御注意を喚起いたしたいと思います。「貨物自動車による運送営業は、戦前は警察行政として一輛でも二輛でも簡単に許可し、利用者も業者もともに便利で何ら反社会的弊害はなかつた。ところが戦後道路運送法によつて運輸大臣の免許事業となつてから、免許手続はやつかいで企業の免許基準を大型三十輛、小型十輛以上に定めて個人企業を不可能にしている。
これは既存業者の擁護以外の何ものでもない。既存業者とは戦時中燃料不足や軍事輸送のため強制合同させられたもので、東京では約五千の業者を一区一社の割合でわずか三十数社にした全く地域的独占である。このため一、二輛しか持つていないものは寄り集まつて擬装法人を作るか、自家用による無免許営業に走るほかなく、現在東京では小型正規免許営業車(大半は偽装法人)約四千輛に対し無免許営業車は推定三千輛といわれている。
幸いに昨年の第十国会で小型の免許権が地方陸運局長に移譲され、その取扱いも簡素化されることになつたので、同業七十五人が最低三輛基準により、昨年十月東京陸運局長に免許申請を出した。だが申訳的にわずか三件を処置したのみで、他は八箇月経過後の今日に至るも未だそのままである。しかも一方では輸送秩序の確立などといつて、街頭で無免許車をつかまえていじめている。こんなバカ気た行政なんてあるものだろうか。」市井の経済人の中からこういう声が起きておるような現状でありますが、こういう点等にも深く思いをいたされまして、十分にこの弊をためるように、改正案を提出されることをお願い申し上げる次第であります。
以上の要望を添えまして、私の賛成意見を終ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/4
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005・前田正男
○前田委員長 次に笹山茂太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/5
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006・笹山茂太郎
○笹山委員 ただいま議題となりました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、改進党を代表しまして、意見を表明するものであります。
この法律は、占頭下における日本経済の動向を決定した重要な法律の一つでありまして、その制定に至る経過を顧みますると、いわゆる与えられた法律であつて、日本経済の実情に即応しない点が相当あると思うのでございます。本法施行後の実際の状況を見ましても、経済民主化という方針、すなわち消費者及び労働者大衆のための経済を育てるという大きな方針から考えると、あまり実績が上つておらないようなふうにも思われるのであります。この点については公正取引委員会の取扱い件数の実際の状況を見てもわかるのでございます。政府は従つてさきに占領下におきまして、GHQの命令または勧告に基いて制定されましたところの諸法令の再検討を行うべく、委員会を設けられまして審議されたそうでございます。この独禁法も多分大きな課題として取上げられたことは当然だと思うのであります。しかしながらその結果としてただいま上提されたような委員会の構成とか、あるいは委員会の事務機構の能力化とか、ただこういつた事務的な改正案にとどまつたことは、非常に私どもの期待はずれとするところでございます。別にこの点については悪いという点がありませんから、この改正案については賛成するものでございますが、しかし独禁法の再検討は最も大きな課題として、先般来の委員会におきましても、もつと根本的に行われなければならぬという御意見が圧倒的でございます。そういうような点から考えましても、本法の第四章の、すなわち株式の保有、役員の兼任、合併及び営業の譲受に関するような制度については、委員会におきまして政府委員からも御意見の表明がありましたように、現行法は相当行き過ぎの点があるというふうにも言われておるのでございますし、また問題となりましたところの政府または公企業体によるところの許可、認可に伴うところの独占形態の再現という点についても、独禁法の精神に、必ずしも方針を同じくしておることでもない実情がはつきりいたしたのでございますからして、これらをひとつあわせ考えますと、あくまでも経済の民主化の確立、すなわち消費者並びに勤労者大衆のための経済の確立という点について、法の再整備を望むものでございます。
さらにわが国の貧弱なる現在の経済のもとにおきましては、将来の国際的な競争に打ち勝つという点から考えましても、この独禁法の現行法の扱い方については、相当改正すべき問題が多かろうと思うのであります。現に輸出取引法というものが制定されますと、この独禁法の精神とやや異なる方向に進むようにも聞いておるのでございますからして、さような根本的な問題についても、この次の機会におきましては、政府の方におきましては十分御研究をされまして、ひとつりつぱな原案を提出せられんことを希望して、私の意見を表明する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/6
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007・前田正男
○前田委員長 これにて討論は終局いたしました。
引続いて私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/7
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008・前田正男
○前田委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
なお本案に対する委員会報告書の作成は、先例によりまして委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/8
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009・前田正男
○前田委員長 御異議なしと認め、そのように決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/9
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010・前田正男
○前田委員長 この際お諮りいたします。国際的供給不足物資等の需給調整に関する件についてその調査を進めることに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/10
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011・前田正男
○前田委員長 御異議なしと認めます。それでは国際的供給不足物資等の需給調整に関する件についてその調査を進めます。
まず最初に私から政府委員に聞きたいと思うのであります。当委員会といたしましては、前に国際的供給不足物資等の需給調整に関する臨時措置に関する法律案を可決いたしまして、衆議院、参議院も通過いたして、この法律は成立しておるわけでありますが、この法律の審議の過程におきまして、この法律の別表に掲げてあるその以外は、割当だとかあるいは認許可に関するようなことはしないということになつておりまして、そのときに外国自動車譲受規則というのがありまして、これは七月一日から無効になつて、外国自動車は、円であろうとドルであろうと自由販売になるという建前になる、そういう話でこの法案は成立しておるとわれわれは了承しておるのでありますが、最近問題になつておりますところによりますと、通産省におきましては、外国為替管理令等を公示いたしまして、許可制にするとか、あるいはまた通産振興局長の通牒によりまして、輸入する自動車に対する販売の制限をするとか、こういうような、われわれの法律成立及び審議の過程と違うようなことが行われておるというふうに聞くのであります。これに対してひとつ政府委員から現在そういうような事実があるかどうか、御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/11
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012・近藤止文
○近藤(止)政府委員 ただいま委員長からお尋ねのございました外国自動車の件でございますが、これは先般臨時物資需給調整法が失効いたしまして、新たに国際的供給不足物資等の需給調整に関する法律が制定いたされましたときに、譲受け自動車に関しましては、暫定的に臨時物資需給調整法を六月末日まで延長いたしまして、その限りにおいては従来発効しておりました割当切符の有効な点を認めるということになつておるのでありまして、その以後におきましては、物資需給調整法の関係におきましては、まつたく根拠法規がなくなりまして、自由な取引ができるということになるのであります。ただいま委員長からお尋ねのございました件は、現実に物資需給調整法の関係によつて行われておるものではございませんし、またその実際されております具体的な行政上の運用の点につきましては、通商産業大臣が責任をもつてやつておられまして、経済安定本部でそれらの具体的な方針まで詳細に承知をいたしておりませんので、そういつた面につきましての御答弁は、通商産業省からいずれ政府委員の方が御出席になると思いますので、そちらから御答弁を願うことにいたしまして、私からは、ただいまのところ輸入自動車の取扱いが、経済安定本部及び通商産業省その他日本政府機関における法令上の取扱いとして、どういうことになつておるかという事実の御説明を申し上げることにとどめたいと存ずるわけでございます。運用方針その他につきましては、通商産業省の政府委員の方から御答弁を願いたいと存じております。
ただいま申し上げましたように、輸入自動車につきましては、物調法の失効に伴いまして、その関係におきましては、まつたく法制上の制約がなくなるわけでございますが、外国貿易及び外国為替管理法の関係におきまして、先般日米合同委員会をもとにいたしまして、いろいろの協定を結ばれつつある現状でございまして、その一つの特例といたしまして、本年の四月二十八日に、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令というものが公布されておるのでございます。この政令は本来から申しますと、外国貿易並びに外国為替管理法によりまして、日米間の行政協定によるものでありましても、すべてこれに基く許可あるいは認可、そういつたことが必要となるのでございますが、特例的な意味におきまして、行政協定によりまして例外を認めておるのでございます。大部分のものはこの外国貿易及び外国為替管理法の例外になつておりますが、そのうちで、この政令の第十一條第一項但書というのがございまして、その但書の一つの事項といたしまして、「合衆国軍隊等が輸入し、又は本邦内で調達した貨物又は貴金属の処分」ということにつきましては、「支払、支払の受領及び役務に関する契約」これらの場合に「この限りでない。」ということで、外国為替管理令の適用があることをここに明らかにしておるのであります。この適用に関しましては、第十二條におきまして、これらの貨物につきましては、通商産業大臣が主管大臣ということに指定されておりまして、従つてその主管大臣が、本来の外国貿易及び外国為替管理法に基きまして許可をいたします場合には、十二條の第二項に政府及び合衆国軍隊が相互に合意する條件に適合した場合におきましては、その許可をしなければならないという事項がついておるわけであります。これは合同委員会あるいは合同委員会に基きましてのいろいろな分科委員会におきまして、双方協議決定の上に、その具体的な内容をきめて参るということになると思うのであります。この政令に基きまして、実は先般、五月二十日付でございますが、通商産業省の告示第百十四号が公布されておりまして、これによりまして、大部分の合衆国軍隊等が国内におきまして売りますものについては、大体特別に許可を要しないようになつておりまして、ただ外国製自動車について、特定の輸入業者なりその他の者が譲り受ける場合を除きましては、一応通産省告示によりまして許可を要するという形になつておるのであります。その許可を具体的にどういうふうにするかという問題につきましては、先ほど通商産業省に照会をいたしましたところ、まだ具体的にはきまつておらぬそうでございまして、現在駐留軍及びその家族がこちらへ持つて来ております自動車の台数、それがある程度中古車となりまして処分しなければならぬ車輛数、そういつたものをいろいろ検討いたしました上で決定をするということになるだろうという連絡があつたような次第でございます。この関係は、いずれここ一、二週間のうちには運用方針がはつきりきまるものと考えております。
なおそのほかに、実は現在外国自動車を輸入いたします場合に、外貨払いを要します場合におきましては、大体四半期、最近におきましては半年ごとの外貨資金の割当をいたしておりまして、その割当金額の範囲内において外国自動車を輸入するかつこうになるのでございます。現在四月—九月の期間におきましてはポンド地域から輸入いたしますものが二百万ドル、オープンアカウント地域から入れますものが百万ドル、ドル地域から入れますものが三百万ドルというわくがございまして、このわく内で外貨支払いを要します外国車につきましては輸入をいたすことに相なるのでございまして、その輸入のやり方につきましては、外国自動車の販売権を持つております輸入業者が、大体従来の実績を基礎にいたしまして、外貨資金の割当をこの範囲内でもらつておるようでございまして、これによりまして一定の数量が国内に入つて参るということになるわけでございます。しかしそれらのものが入つて参りました以上におきましては、従来ございますように、切符制度の適用はございませんから、ドル資金を持つておる者は、場合によりましてはドルで払う場合もございましようが、原則といたしましては、国内支払手段でございます円によりまして、この自動車を購入し得ることになつております。大体現状はそういう形になつておりますが、なおこれによりましての具体的な行政上の運営の問題あるいは行政協定上の交渉の内容、そういつたものにつきましては、直接経済安定本部としてはタッチをいたしておりませんので、通産省の政府委員の方からお聞き取りを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/12
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013・滿尾君亮
○滿尾委員 ただいま御説明がございまして考えますことは、この通産省告示第百四十四号というものが出たゆえんのものは、お話の通り外国為替管理令第二十六條の規定に根拠してこれが出たのではないかと私は思うのでございます。つまり実質的な根拠としては、かような軍人軍属の国内に持つております自動車をわが国人が譲り受けますことが、二十六條のいわゆる国際收支上重要であり、または資本逃避のおそれありという断定のもとに、通産大臣はこの告示を出されたものだろうと思うのです。それ以外に私はこの告示の出る法規上の根拠がないと思う。問題はその二つの実質的な理由のうちのいずれに該当するものであるかということですが、私は中古自動車を日本人が買つたからといつて、それをもつて国際的に資本が逃避する手段とはどうも考えることはできない。良識ある人間が考えれば、それはまず不可能な解釈であろうと思う。そうすると、その買い受けます金額が総合されまして、それがわが国の国際收支上重要なる一項目を形成するのだ、こういう以外に本告示を解釈するのに苦しむのでございますが、はたしてこの軍人、軍属の車を買いますことが国際收支上重要だというような、大げさな金額に一体なるものかどうか。私どもの調査したところによりますと、軍人、軍属の持つております乘用車は一万五千台くらいしかないのであります。それを二年か三年使つて一台売る、従つて年に三分の一くらいずつアメリカさんが新車ととりかえるとします。そんなに毎年かえるとは決して思わない。常識で考えまして、まあ年に三分の一くらい新陳代謝するだろうかと思うのでございます。そうすると年に五千台くらいの車で、現在やつております実績では、物にもよりますが一台千ドルから千五百ドルくらいとして、それが五千台くらい日本に流れるからといつて、それがわが国の国際收支上重要案件であるというような大げさな解釈をしているところに、私は通産省告示第百十四号の実質的な何か割切れない理由がある。またこれを形式的に見ましたときに、せつかく臨時物調法をこの三月まででやめた。外国製自動車とガソリンだけは六月まで延ばした。この二つの例外を六月まで延ばしますにつきましては、私ども国会におきましても非常に論議されたところである。自由党の政調会におきましても白熱的な論議をいたしましてこの決定を見た。知らぬうちに、なるほど若干の形式上の手続はふんでおりますけれども、一片の告示をもつて百十四号のごときものが出るということになりますと、わが国の政治というものはずいぶんおかしいと思う。私は実質的な理由につきましては、他の委員会等におきましてすでに通産当局の意見をただした。どうしても納得する説明がない。大体こういうものが出ますのにつきまして、なるほどよつて来るところは外国為替管理関係からでありまするが、物調法を廃したその根本精神と正面衝突するような法令が出るのでありますが、そのとき安本当局の方には相談をしないのでありますか。片方の物調法の廃止の精神を貫くとすれば、これは当然出すべからざる告示である。向う側に多少の根拠があるといたしましても、その点について安本の了解を求めるというような段階はふまなかつたのでございまするが、御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/13
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014・近藤止文
○近藤(止)政府委員 物調法をはずしました当時の外国自動車に対するいきさつから申しますると、この省令を通産省が九月二十日に出されまする場合に、権限として当然安本には何もないわけでありますから、特に外国為替管理令の関係になりますと、通商産業大臣が専管されておるかつこうでございまして、その権限はございませんが、事前にこういう問題については一応のお話くらいはあつてもよかろうと思いますが、実はその連絡がございませんでしたので、私どももこれに対する意見を事前に通産省に申入れまする機会を逸たような次第であります。またいきさつについて一言くらいあいさつがあつてもよかつたのではないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/14
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015・滿尾君亮
○滿尾委員 先ほど御説明がありましたわが国の外貨を使つて自動車を購入する、その外貨資金の割当の御説明をいただいた、その外貨資金の割当につきましては、安本は十分片棒をかついでおると私は拝見いたすのでございますが、間違いありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/15
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016・近藤止文
○近藤(止)政府委員 案は私は産業局におりまして直接の所管は貿易局でございますので、あるいは申し上げることが最近の事情と多少違うかもしれませんが、外貨資金の割当につきましては安本におきましてその全体のバランスのとれました割当計画というものを作成いたしまして品種別あるいは地域別の外貨の割当をきめたことに基きまして、通省産業省が具体的に申請に対する許可等を行つておる、こういう状況でございます。従つて外貨資金の割当計画は安本において作成いたしておりまして、その計画に基きまして具体的に実施をいたしますのは通省産業省、こういう形になつておるはずであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/16
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017・滿尾君亮
○滿尾委員 ドルの外貨を使つて自動車を買う、その割当表を拝見いたしておるのでございまするが、この見地からいたしましても、やはりこの告示第百十四号に関連して参ると思います。さらにつつ込んでよく内容を見てみますと、通省産業省通商振興局長は、二十七年の四月七日付をもちまして、国内の指定されたデイーラーに一つの通牒を出しております。いわゆる「指定輸入自動車等販売規則廃止に伴うドル地域からの輸入車のコンパーテツト円販売について」という通牒を出しております。これによりますとポンド地域やオープンアカウント地域のものはよろしいが、ドル地域から輸入される外国の自動車に関しましては、これを優先的に国内の外国人に販売すべし、日本人には売つてはならぬという通牒を出しておる。通牒の文句には日本人に売るべからずとは書いてない。しかし「外国用自動車を確保するためドル地域から輸入された自動車については旧指定輸入自動車等販売規則第八條第一項第二号に掲げるものは同一方法(所謂コンパーテツト円と引換に販売する方法)で販売される実績を主として今後の外貨資金(ドル)割当の基準とするから了承されたい。」つまりドルと引きかえにするFCCCというもののついておるものでなければこの次のドル資金の輸入資金の割当をしないぞ、その実績を認めないぞ、だから日本人にもアメリカ製新車を売つたならばこの次はお前のドルの割当がつかぬので減すぞということを明確に通牒をしております。この実質的効果から申しますと輸入業者はドル資金が減つてはたいへんでございますから、日本人には売らない、どうしても外国人に売らなければならない。FCCCのついておる人にしか売らない。その結果日本人はアメリカ製新車に乘るべからずという鉄則ができ上つた。先ほど政府委員の御答弁によりますと、七月一日以降はこんなものはございませんでまつたく自由でございますとおつしやいましたけれども、その実体におきましてはそれはまつたく表面的皮相な御観察でありまして、この通牒の存します限り、絶対に日本人にはアメリカ製の新車には乘つけないということがはつきり出ている。これは私非常に重大な問題であると思う。実は通産省の政府委員に他の委員会で聞いたが、君はこの通牒をいかなる法規上の根拠に基いて出したか、私はとにかく自動車は表面上は自由になつているにもかかわらず、この通牒がさような制圧を加えるということになれば、これは憲法に保障された日本人民の基本的権利を侵害しているじやないか、どういうわけでこういうべらぼうな通牒を出したかというのでありますが、どうしても言を左右にして私に納得するような説明をしない。これは私非常に不都合だと思う。これは形式上の論旨におきまして私そう痛感をいたしましたのみならず、実体的なことを考えております。政治家は決して法理論だけで考えているわけではない。実体的に考えてみたときに、一体日本のこういう乘用自動車、特に自家用自動車を購入する人の立場というものを考えてみますると、大体実際の話が自分の金で自動車を持つている人はおらぬ。全部銀行か会社が、その人なりに公の負担において自動車を購入してそれを使つている。従つて通産省当局はかような場合に、日本はガソリンがないから油の経済から小型車に乘つてもらおうと思つたところで、それはお役人が机の上で考えることであつて、実際の日本人民はそういうことを考えておらぬ。少くとも自家用自動車を購入するグループの人は考えておらぬ。まつたく相背馳しておる。ですからどうしたつてこれらの人は、新車の輸入がございますれば、どんな方法をもつてしてもアメリカ製新車に乘りたい。そうしますとこの通牒の結果はどうなるかというと、FCCCを持つている台湾人か韓国人か知りませんが、第三国人に一応買つてもらいます、そうしてその人から中古車として即日買つてもいいわけである。結局日本人がアメリカ製新車について数十万円あるいは百万円にも上るであろう権利金を、第三国人に払うということになる。まことにこの通牒の精神はそういうつもりじやなかつたでありましようが、働きとして、実効としてそういう現状は出来するのであります。まつたくこれはむだなことだ、私は法規上の根拠においてこれに非常に疑念を持つ、また実際政策上の問題において疑念を持つ。お役人が観念的な、演繹的思想をもつて社会の実体に即せざる施策をする結果が、これほどはつきり出ている実例はまずないだろろうと思う。こんなばかなことは、われわれ多少なりとも自動車の方の事情に通じているものは、これを黙つていようと思つても黙つておれない。またわが国の乘用車の営業関係の立場を考えてみますると、まあハイヤー、タクシー業者でありますが、これらの人たちの立場から申しましても、欧州製の中型車、小型車では商売としてはあまりおもしろくない。車の構造等も調べてみますると、やはり修理等はアメリカ製は便利にできている、分解するにも便利だ、部品にしても豊富だ。ヨーロツパのいろいろな型を見ても、部品の確保について骨が折れる、分解修理等についてもなかなか骨の折れる事情がございまして、営業用の乘用車といたしましては、アメリカ製の自動車でなければ困るという実情がはつきり存在している。これらの日本のハイヤー、タクシー業者は今日までの状態におきましても、いわゆる外人専用車等のタクシーの働きを見ましても、十分必要なるドル貨をかせいでおるのであります。またOASデイーラーの人たちの働きを調べてみますと、アメリカさんに売りました車につきましても、相当のコミツシヨンをちようだいしておる。大体二五%のコミッシヨンをちようだいしておる。ことにここからアメリカに帰ります軍人、軍属さんにつきましては、ホームサイド・デイリヴアリーというやつで、相当手数料をかせいでおる。これらのかせぎましたところのドル貨というものは、あなた方が割当てられる二百万ドルや三百万ドルの問題ではない。彼此相殺して考えてみましても実は十分おつりの来るだけの外貨を働いておるのでありますが、それに何かと制肘を加えて、働けないように、第三国人にやみの料金をもうけさせるようにという御政策を通産省はとつておる。通産省はその直接の責任者だが、私はどうしても安本もその連帶責任を免れないと思う。なぜかなれば、ドル貨の割当ということは、最終的にはあなた方でおきめになる。してみると、こういうばかなことを国会として黙つておるわけに行かない。ことにドルの割当の内容を見てみると、せつかくの三百万ドルを、ドル地域に百万ドル保留しており、ポンド地域につきましても百万ドルばかり保留している。なぜ一体保留といようような政策をとられるのであるか。もつとすつきりして、淡々として虚心坦懐に施策を行つていただきたい。どうもわれわれは、人様の腹の中を揣摩臆測するような所説は、実はあまりいたしたくないのでありますが、具体的に実施せられておる通産省の一連の施策を達観してみますと、どこか割切れないものがある。必要以上に国産乘用車を御懸念になつておるのではないか。私も実は、国産の自動車メーカーは、日本の産業構成の一翼としてぜひなくてはならぬということを確信しておる一人でございますけれども、それは方面によりけりで、乘用車のごときにおいてこれをあくまで保護することは、非常に重点が間違つておるのではないか。乘用車はアメリカなどでは大量生産で、一年間に八百万台つくつておる。しかるに通産省の御説明を聞きますと、四千台か六千台つくる、それで太刀打ちができるとおつしやる。アメリカでは年々歳々型をかえて参ります。乘用者は一種の嗜好品的な性格もございますから、型が古くなれば人に見捨てられる。それが四千台や一万台くらいの生産、それも数社合計しての一万以下くらいの生産をやつて、相撲をとつて行けるのだとおつしやることは、これは竜車に向う蟷螂のごとき騒ぎではないと思う。さような無理なことをせられて、結局は消費大衆の犠牲においてその無理な施策を強行せられるということは、ぜひ御反省を願わなければならぬ。安本当局は国の全体のバランスのとれた発達を御懸念になつておることと思いますから、この通産当局の行き過ぎた乘用自動車政策はぜひひとつ御是正を願いたい。御所見を伺いたいと思いますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/17
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018・近藤止文
○近藤(止)政府委員 この自動車工業の問題につきましても、また外国車の輸入の問題につきましても、実は物調法の廃止の当時からいろいろ議論しておつたのでありますが、やはり安本といたしましても通産省の御見解の通りではございません。やはり今お話のような点も十分加味いたしまして、今後妥当なる施策をやつて参りたいという考えを持つておるわけでございますから、ただいまお話の点も十分承りまして、将来通産省といろいろ交渉いたしまして、あまり間違つた方向に進まないように努力いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/18
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019・前田正男
○前田委員長 この際政府委員出席の要求の件についてお諮りいたします。
通商産業省政務次官本間俊一君、通商振興局長井上尚一君、通商機械局長佐枝新一君、なお政務次官本間俊一君の都合の悪いときには事務次官の玉置敬三君に代理してもらうこと。右三名に明二十日午後一時に本委員会に出席を求めることについて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/19
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020・前田正男
○前田委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決しました。なお国会法第七十一條による手続等は委員長に御一任願います。
本日はこの程度で散会いたします。
午後零時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304073X03219520619/20
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