1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月十七日(火曜日)
午前十一時三十七分開議
出席委員
委員長 佐藤 重遠君
理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君
理事 佐久間 徹君 理事 内藤 友明君
理事 松尾トシ子君
淺香 忠雄君 大上 司君
島村 一郎君 清水 逸平君
高間 松吉君 苫米地英俊君
夏堀源三郎君 三宅 則義君
宮幡 靖君 宮原幸三郎君
高田 富之君 深澤 義守君
久保田鶴松君 中野 四郎君
出席政府委員
大蔵事務官
(理財局長) 石田 正君
大蔵事務官
(理財局次長) 酒井 俊彦君
委員外の出席者
議 員 青木 正君
大蔵事務官
(理財局管理課
長) 横山 正臣君
参 考 人 池山 秀君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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本日の会議に付した事件
接收貴金属等の数量等の報告に関する法律案(
内閣提出第二三一号)
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001・佐藤重遠
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
前会に引続き接收貴金属等の数量等の報告に関する法律案を議題として、参考人より参考意見を聴取いたします。本日の参考人は元交易営団の嘱託をしておられました池山秀君であります。池山参考人に対して中野委員から質疑の通告がありますので、この際これを許します。
なおこの際ちよつとお諮りしておきたいことがございます。昨日の委員会における参考人の発言中に、埼玉県選出の本院議員の青木正君に関する部分がありましたので、この点に対し議員青木正君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、この点御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/1
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002・佐藤重遠
○佐藤委員長 御異議ないようですから、議員青木正君の出席を求め、意見を聴取することにいたします。中野四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/2
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003・中野四郎
○中野(四)委員 たいへん池山さん御苦労さまでございます。新聞等で大体御承知かとは思いまするけれども、今度の国会に大蔵省の方から、かねて終戦直後連合軍の方が接收をしました金、銀、白金、ダイヤモンド、こういうものをば今度解除してくれたわけなんです。ところがこの接收貴金属等に対するところの数量をば報告せしめるという法律案が、国会に出されたわけであります。と申しまするのは、先日来この委員会で提案理由の説明を聞いてみますと、どうもほんとうに政府で当時供出した人、あるいは無償で連合軍に持つて行かれた人に返すのか返さないのか、よくわからないのです。まあ返そうという意思はこの法律の中に現われております。
それからもう一つは、どうも現在の日本銀行の地下室にありまする金の入手経路等はわかつておるようでありますけれども、かんじんのダイヤモンドがだれの物なのかはつきりわからないのです。それで先日この委員会に報告をされました数量を見ますると、金は百二トン七百七十六キロあるわけです。それから合金が二十六トン四百三キロあります。銀がたくさんありまして、二千三百六十五トン九百四十キロですか、それから白金が一トン三キロあるわけです。問題になりますのは、ダイヤモンドが十六万一千カラツトあるということです。これがどこから入つたものか、どうもはつきりしないのです。私は実は九十議会の当時から議会に席を占めまして、隠退蔵物資の委員会をつくつた当時からの委員の一人であります。当時われわれは、国家混乱のときといえども、国民の財宝をかすめとつたりあるいは不正な手段で入手したものに対しては、すみやかに摘発をして、それを国家の財政に繰入れて、貧困なる日本の経済の建直しをしたいという念願に燃えて努力して参りました一人なのです。ところが先日大蔵省側の説明によりますと、このダイヤモンドや金、銀、白金等は、そういう隠退蔵物資の摘発のものではなく、正規のルートを経て得たものをば、連合軍が接收したのだという説明をしておられるわけであります。そこでこのことが問題になつて、昨日来大蔵委員会で質問を継続しておるわけであります。要は金、白金は別といたしましても、銀の場合は戦争中に強制買上げを隣組を通じていたしましたけれども、これは統制物資ではないのであります。従つてわれわれの持つております証拠によりましても、当時摘発をいたしました板橋の銀線事件とか、大仁の銀塊事件とか、水戸における常陸山の住宅の倉の上にありました金塊というようなものは、大阪造幣廠あるいはそれぞれの造幣廠にまわされまして、これをインゴツトとなして日本銀行の地下室に納めた証拠はあるのであります。今日池山さんを煩わしまして、おいでを願いました主たる問題は、ダイヤモンドの問題なのです。これは一口に十六万カラツトと申しましても、莫大な金額に上るものであります。しかも大蔵省に私の方から資料を要求いたしまして、どういう種類のダイヤモンドであつて、どういう品種のものであつて、どれだけの値打ちのあるものであるということをば書けと言つて、大蔵省に再々請求するのですけれども、なかなか出さない。出せないと言うのです。それで昨日出て参りました資料を見ますと、無色のものとか、わずかに薄色のものとか、あるいは色が少しついておるものとかいうような漠然たるものでありまして、これが工業用のダイヤであるやら、装飾用のダイヤであるやら、言いかえますれば、一カラツト四十万円するダイヤなのか、一カラツト二万円か三万円かの安いダイヤであるかの判別もつかない状態であります。その数十六万カラツトと申しましても、これはなかなか大ざつぱに見のがせない国家国民の財宝なのであります そこでこれをどうしても明らかにいたしまして、貧困な日本経済再建の資に供したいという熱意に燃えて、実は池山さんにおいでを願つたわけでありまして、あなたのお人柄もかねて伺つておりますので、どうかわれわれが国を思うこの気持にこたえられて、御存じの点を正直に遠慮なく御発言を願いたいと思うのであります。
順序でありますから伺いたいと思いますが、池山さんは現在どこにお住まいで何をしておいでになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/3
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004・池山秀
○池山参考人 私は現在港区麻布霞町一番地に居住いたしております。職業という職業ではありませんが、明照教というものを明治三十七年に開きまして、今日では宗教法人令によつて宗教法人となつております。その——文部省ではかつてに主管者と申しますが、私の方では管長と申します。そういう名がついているだけで、職業ではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/4
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005・中野四郎
○中野(四)委員 御老体ですから、あまり一ぺんに長く聞かずに、区切つて伺つて参ります。池山さんは石田禮助という方を御存じでしようか。それから有馬長太郎という方、または三浦義秋という方を知つておいでになりますかどうか、この点を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/5
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006・池山秀
○池山参考人 存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/6
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007・中野四郎
○中野(四)委員 池山さんは交易営団に御関係になつていらしやつたようでありますが、どなたの紹介で、いつごろからどのような地位についておられましたか。ついた日にちと、やめられた日時を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/7
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008・池山秀
○池山参考人 昭和十八年に交易営団ができまして、私は十九年の四月から嘱託になりました。私の所管事務は、交易営団の出資証券に関する一切でございます。交易営団は大蔵大臣が二億五千万円、庶民から五千万円、通計三億円の資本で仕事をしておりまして……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/8
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009・中野四郎
○中野(四)委員 いつおやめになりましたかを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/9
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010・池山秀
○池山参考人 昭和十九年の四月から昭和二十一年の十一月に至るまで手当をもらつておりました。昭和二十一年の十一月から、もう手当をもらわないことにしておりましたが、まだ嘱託を解任してくれませんで、二十二年の七月かにようやく解いてくれました。しかし二十一年の十一月から以後は、一週間に一ぺんくらいしか出ませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/10
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011・中野四郎
○中野(四)委員 どういう御関係で、どなたの御紹介でお入りになつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/11
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012・池山秀
○池山参考人 紹介という紹介をもつて入つたのではございません。しいて紹介といえば、交易営団にいた人たちから交易営団に紹介したのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/12
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013・中野四郎
○中野(四)委員 池山さんは、現在代議士をしておられて、当時戦時物資活用協会の業務部長をしておられました青木正という方を御存じでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/13
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014・池山秀
○池山参考人 存じませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/14
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015・中野四郎
○中野(四)委員 それではもう一人、現に銀座西六丁目に貴金属商を営んでおりますところの金山重盛という人があるのです。終戦当時は青木さんのもとで働いておられた方であろうと思うのですが、終戦直後から急に銀座で相当な成功を收められた貴金属商を御存じでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/15
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016・池山秀
○池山参考人 存じませんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/16
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017・中野四郎
○中野(四)委員 ここの委員会は参考人としておいでを願いましたものでありまして、国会法にきめられておりますような、証人としておいでを願つたのではないのでありますから、御記憶違いの場合がありましても、これは決して法律上の責任は問われないのでありますから、御存じでございましたらどうぞ御遠慮なく、決して無理に申し上げるのではありませんが……。そこでさらに伺いたいのでありますが、日本銀行から交易営団に対して、金庫を貸してくれておつたようであります。言いかえますれば、当時松屋の四階にありました営団のあなたが責任を持つておられました金庫、そこに当時戦争遂行のために国民の愛国心に訴えて、ある意味においては訴え、一方においては強制買上げをいたしまして、デパートで取扱いました金、銀、ダイヤモンドのうち、特にダイヤモンドをばあなたの金庫に收容されておつたと聞いておりまするが、その当時の状況を御存じのことだけを伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/17
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018・池山秀
○池山参考人 たしか雑貨部の要求であつたと思いますけれども、直接私に雑貨部からの交渉があつたのではありません。伊藤という経理部の部長から命ぜられて、課長や次席の人からあの金庫を全部貸せというのじやない、一部を開放してくれろという話で、私の預かつていた金庫へ雑貨部の人がかつてに出し入れをすることを承諾をいたしました。常はドアはしめてございますけれども、あけますからという断りの言葉をもつてあけて中へ入れたり、あけて持ち出したりということは、雑貨部の人がかつてにしておりまして、私は一々立ち会いませんでした。また預かつていた品物は何が入つているかわからないのです。この中にダイヤモンドが入つているとすれば、あまりに粗雑な取扱い方だと思つたくらいに、中にはきれの袋もあつたようでしたが、多くは紙でした。しかもその包の中に何カラツト入りとか、あるいは何個入りとかいうようなことが書いてあるのでなく、たいがいはこのくらいの包みです。もつと大きいのもありました。小さいのもありました。が大体このくらいの包みで、新聞紙に包んであつたようなものもありました。ひもでからめてあつたものもありましたが、そうでないものもあつたようでした。内容に私は触れるのがいやでしたから、私の預かつている金庫がかつてに預かるんだということを、笑つて話をしておりました。その当時に、戦災で焼かれて家ができないために、出入りの洗濯屋の浜野金次郎という夫婦を宅に置いてやりましたが、一年ばかりおつたと思います。始終一緒にいるものですから、実に乱暴だという話はたびたびいたしました。ただ浜野に話をしたのは、取扱いが乱暴だ、自分の所管事務でないから、だれにも何も言わないけれども、もう宝石という観念がないのかもしれない、これは白金です、これはダイヤモンドですということは言われるけれども、中を見ないんだから知らない、こういう話はその当時いたしました。それはおそらく二度も三度も不平まじりに話したことがあると思つております。その後終戦後でございました。世耕弘一という方の——あるいは世耕さんも入つておられたか、顔を見たことがないから知りませんが、三人か四人で宅へ参られて、ダイヤモンドの行方について話をしろということを言われました。言下に私はこれを謝絶いたしました。それはいやしくも人の家に来て名も告げない人たちに、そういうことについて応答するのはいやだから断るから帰つてくれろと、こう言つて帰しました。大分不平らしかつたけれども、まつたく来た人たちの名を言わないのですから、私も応答するのがいやだつたから……。その後遂に今お話申し上げた浜野金次郎の手をどう世耕代議士が扱われたか知りませんが、たびたび出入りをしておつたようでした。そののちにGHQからいろいろな人が宅へ見えました。そうしてしまいには五、六回自動車で見えて、私を自動車で東京を歩かせて、そうしてその間に話をするというふうであつたのが、遂に日本橋のたもとにGHQの分派事務所がありまして、何とかいうしようゆ屋をつくりかえたものでした。そこにも私を呼びました。車をよこしていろいろな話を聞くという程度でしたが、終りには憲兵隊に案内をしてうそ発見器に私をかけました。そのときに、池山さん、あなたはりつぱな紳士だけれども、うそを言いなさる、こう言いますから、私はうそは言わないんだ。五十年近くも宗教で通して来ている身がうそは言いません。もし私の言つたことをうそだということが、このうそ発見器によつて現われるならば、私はあなた方の使つているうそ発見器を信用しない。そうしたら、憲兵の中尉か大尉でしたが、それが、いやこの通りに出ていますというから、それはあなた方が扱つているのだから、私にはわからぬけれども、あなた方の方のうそ発見器というものが不完全なものだろう。私の言うことがほんとうだ。というのは雑貨部の部長だつたか課長であつた人の名を言いまして、その人と何々という料理店、何々という待合、そういうところへ何回行つたかというような問いをして、第一名もろくに覚えていない人のことだから、行かないということがほんとうなので、私をそういう方面に連れ出す人もない。数回答えた通り、確かに私が預かつている金庫に出し入ればされている、けれどもいつの間にかなくなつている、こういうことを話して、それでまあそれは終りました。その後になつてから、日本銀行から来てくれろということで、何のことかと思つて行つたら、GHQでこの地下室を爆破するという、それでこのひきだしをあけろというが、あなたの持つているかぎと日本銀行のかぎとでなければあかないのだから、そのことを言うたけれども、聞き入れないで爆破するというから、あけてくれろ。ここにダイヤを持つて来たことはないじやないか。いやどうしてもこのひきだしに入つているはずだと、GHQでは言う。それはどうにらんだ末か知らぬが、そこに入らない理由は、私はこの係でないのだから、自分の仕事をする間に、一々日銀の地下室の金庫に入れさせるというと、私が来なければあかない。一々私が来なければならぬ。その煩にたえないから貸さなかつたのだ。だからここには入つていないのだ。ごらんなさい。あなた方も何が入つているか知らないのだから、あけてみせましようといつて、あけてみて、なるほど書類だけしか入つておらぬ。私の預かつているのは交易営団の命に関する重要な書類だから、これがなくなりでもすると困るからこういうところを借りた。むろんその交易営団の総裁の名で借りてあるけれども、私がかぎは預かつて、私の自由にすることになつております。しかし私物は一つも入つておりません。そんなわけでございますが、漏れたことがあるかもしれませんが、お尋ねをいただいて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/18
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019・中野四郎
○中野(四)委員 こちらの伺おうと思つた点が、スムーズにお話がだんだんと解けて行きまして、たいへんいいと思うのですが、当時この営団の——日銀の地下室のひきだしのことは後ほど伺いますが、営団の金庫が相当優秀なものであつたので、松屋の四階にあつたあなたの責任のある金庫が優秀なものであつたので、買い上げたダイヤモンドをそのひきだしに出し入れしておつたという先ほどのお話であります。あなたは自分は貸さないが、金庫が預かつたのだろうとおつしやるのですが、しかしながら、だれか当時買いつけたダイヤをひきだしに入れて来い、あのダイヤを持つて来いという命令者というものがあるわけです。すなわち責任者というものがなくちやならない。それはどなたでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/19
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020・池山秀
○池山参考人 それは当然仰せの通りになるはずでございますが、私の耳にはそういうことを通じられたことはないのです。ただ事務員がかつてに来て、かつてに持つて行つた姿であつたので、そのとき一々命令を受けてやつたのがほんとうでありましようが、命令者は課長以上の部長か何かでなければならぬと思います。このことについてただいま申し上げたように、再三いろいろな目にあつていますけれども、雑貨部の人をお調べにならなければ、ほんとうのことはわかるまいと思います。いずれお調べになるのでございましようし、お調べになつたかもしれませんが、私どもはただ内容に触れなかつたのですから、概要だけのお話でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/20
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021・中野四郎
○中野(四)委員 これは前提と申して申し上げましたように、日本国民にとつてはたいへんな問題なのでございます。しかもたくさんの非常に莫大な金額に上るものでありまして、詳しい点はいずれ行政監察という委員会がありまして、その方で取扱うでありましようが、大蔵委員会の取扱いは、前申し上げましたように、この法律案が出たものだから、この法律案を審議する上において、必要な部分だけを伺うというのが焦点であります。今お話を聞いておりますると、非常に大ざつぱな話で、天下の財宝とでも言うか、ダイヤモンド一粒で貫一お宮が生きたり死んだりしたという時代に、何千粒、何万粒というダイヤモンドが、給仕や事務員の手でほうり込まれたり、持つて行かれたり、だれがやつたかわからぬということでは困るのですから、池山さんの関せざるところかもしれませんが、しからば雑貨部のだれを呼んで聞いたら、当時の状況がつまびらかになるでありましようか。御参考までに聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/21
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022・池山秀
○池山参考人 雑貨部の人は、一部には知つている人もありましたけれども、ダイヤモンドについては私の方の関係した仕事でありませんから、私の方の部長をしておつた伊藤さん、これは実にりつぱなかたい人でした。もと日銀の文書課長をしておつた人です。けれどもその伊藤部長も、それには何らの興味を持つていなかつたくらいに、雑貨扱いをしていることは知つてはいたろうと思うのですが、まつたくひどい扱い方でございました。それですから雑貨部から私のところまで持つて来て入れるまでの道の中では、何をしていたかわからない。また私のところから持つて行つて雑貨部へ持つて行くか、どこへ持つて行くかわかりませんが、それの間も、どこで何をしたかはわからぬのです。実にひどい扱い方でございました。きのうまでは人の指、人の胸に飾られた品物が、今日こうも路傍に捨てられた石のごとくになつて行くかと思うような実態でございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/22
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023・中野四郎
○中野(四)委員 そうすると、だれが一体出し入れの責任者であるのか。やみくもでよくわからぬという池山さんのお話のようですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/23
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024・池山秀
○池山参考人 私にはわかりませんが、雑貨部の人はわかつていると思います。雑貨部の部長をお尋ねになれば、あるいはわかるかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/24
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025・中野四郎
○中野(四)委員 伊藤何というのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/25
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026・池山秀
○池山参考人 いや伊藤は経理部です。私どもは経理部におりました。雑貨部という部はどうも乱雑をきわめたようでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/26
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027・中野四郎
○中野(四)委員 これはどうも御都合の悪い点があるかもしれないので、それでは別な観点からひとつ伺つて行きたいと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/27
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028・池山秀
○池山参考人 何も私は無遠慮に申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/28
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029・中野四郎
○中野(四)委員 日本銀行から交易営団に対して、言葉は悪いかもしれませんが、たとえば池山さんの名前で、日本銀行の地下室の金庫を借りられておつたと思うのですが、どういう手続であなたの名義でお借りになることになつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/29
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030・池山秀
○池山参考人 先刻申し上げたように、総裁の名で借りたのです。それで年に幾らでしたか覚えがありませんが、借り賃を日本銀行に納めるのです。その間の手続は私は直接にいたしませんから、どうしてそういうふうになつたかは存じませんが、これは日銀と深い関係のある交易営団が、人から人へで何でもなく行われたものと思います。ひきだしはこのくらいの大きさでありまして、厚さはこのくらい、横はこのくらいのひきだしを三つ並べて私は使つておりました。あそこの地下室の貴重品を入れるひきだしというものは、いろいろの人が借りていたでしようが、精巧なかぎが日本銀行にありまして、すぐにあかないようになつていて、借り手がまたかぎを使わなければあかないようになつておりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/30
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031・中野四郎
○中野(四)委員 その日本銀行の地下室は、御承知のように二階建と思いますが、その何階で、またホとかチとかイとかいう番号が地下室にはあるはずですが、その番号とひきだしの番号は何番でしたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/31
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032・池山秀
○池山参考人 覚えがありません。それは書類には書いてありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/32
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033・中野四郎
○中野(四)委員 それからあなたがかぎを預かるときに、金庫の中に何をお入れになつたのですか。また何が入つておるか御存じだつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/33
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034・池山秀
○池山参考人 何でございますか。日本銀行の地下室のひきだしに入れてある書類でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/34
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035・中野四郎
○中野(四)委員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/35
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036・池山秀
○池山参考人 それは私のしている仕事の書類が入るのですから、始終かわります。名簿もありましたが、ちよつとつまらない書類のようで、大切なものが入れられてありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/36
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037・中野四郎
○中野(四)委員 そうすると結論的に、あなたの松屋の四階の金庫の中には、当時買い上げたダイヤモンドは入つておつたけれども、交易営団の総裁名において借りておりました日本銀行の地下室のひきだしの中には、ダイヤモンドを入れた覚えは全然ないということですか、どうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/37
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038・池山秀
○池山参考人 それは確かにおつしやる通りに相違ありません。入れないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/38
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039・中野四郎
○中野(四)委員 そうすると、日本銀行の地下室へ行くには通行証がいるわけなのです。これはだれでも行けるわけじやありません。従つてこの通行証というものは、交易営団の中でも相当責任のある人でなければ渡すわけはありません。先ほどから伺つておれば池山さんは、交易営団の一嘱託と申し上げては失礼だが、その地位においては責任の地位とは言えないのであります。にもかかわらず、交易営団の金庫、そういう重要なる財宝を出し入れするところの金庫の番をさせられるのみならず、この日本銀行の地下室へ自由に出入りでき、そうしてあなたがその日本銀行から借りておるかぎを預かつておるというのですから、あなたは相当当時交易営団においては高い地位、責任のある地位にあるといつても過言でないと思うのです。それは嘱託という名義であつたかは存じませんけれども、いやしくも日本銀行の——当時の日本銀行はからつぽであつたかしれませんが、地下室の通行証を持ち、かぎを持ち、しかも買い上げたるところの金銀財宝等は、十二分に預かつておられるところの責任ある地位におられた方が、先ほどからの御証言を聞いておれば、だれが出して行くのだか、だれが持つて行くのだかわからない。営団の雑貨部の者も、あまりたくさんダイヤを見ていると、石ころのようでどうも感じが出ないというような、なまくらひようたんの御答弁では、ちよつと納得ができないのです。たとえばここでお話を申し上げ、お聞きをすることも、あなたがお話をなさることも、全国の国民とは申しませんが、過半数以上の国民が非常に関心を払つておる問題であります。私はもう少し真相に近いお話が伺えるものと期待しておるのですけれども、まああなたが言わぬとおつしやれば、それ以上申し上げるべきではないけれども、日本銀行の地下室へ行く通行証というものは、あなただけがお持ちだつたのでしようか、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/39
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040・池山秀
○池山参考人 日本銀行に出入するのには、通行証というようなものを与えられておりません。かつてに日本銀行には入ります。しかし地下室に行くときは、地下室に入るという命令を出してもらつて、多く女の人でございましたが、案内をしてくれました。ですから地下室には無断では入れません。むろん地下室のドアをあけるかぎであけて入るのですから、これは日本銀行にあるかぎでやるのです。ただ日本銀行の地下室に入るということは、通行証でなくて顔だつたかもしれませんね。私の顔を見ればあけてくれるのですから。(「いい顔ですね」と呼ぶ者あり)それで私がやめたいと言つて、そうして一年余り、りつぱな大学を卒業した若い人たちを十人も試験して、とうとうしまいに日本銀行を停年でやめた人を後任者に選んだ。銀行では私の顔を知つている者が多かつたのです。私は一嘱託であつて重要な地位ではなかつたのですが、営団では割合に妙な尊敬を持つてくれたのです。私の地位は低い地位でございました。ただなぜそんなに人を選んだかというのには、たつた三億円の出資証券というものについて厖大な書類があるのです。これは日本銀行の地下室には預けることのできないほど大きいものです。それで戦災当時は正金の倉に預けた。書類はこの机二かけとちよつとぐらいあります。それは出資証券だけでもたいへんなものです。申し上げたのは、いかにも杜漏なことでお聞きにくいでしようが、実際を申し上げるとあれよりないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/40
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041・中野四郎
○中野(四)委員 まことにおうらやましい顔で、日本の財政の総元締めといわれる日本銀行の地下室へ、顔を持つて行けば出入りができるなどということは、うらやましい限りであります。と申しますのは、われわれが隠退蔵物資委員会におきましても、不当財産委員会におきましても、後ほどここで発言をされるでありましようが、青木正という代議士の問題にもかかわつて来ますが、かなり長い間日銀のダイヤモンドが姿を消したことがあるのです。後ほど項を追つてお伺いいたしますけれども、十八日間、約二十日間というものは、どういうかげんでありましたか、かつてにこのダイヤモンドが持ち出されて、金の延棒が持ち出されて、そしてどこかへ移動したことがある。その移動をして帰つて来るまでの間に、日本銀行の最初の買い上げた数量、地下室に入れたと首肯されるところの数から見れば、半分ないしは三分の一というような、ばかげた数に減つてしまつたのであります。ここに問題がかもされて、当時われわれは大蔵大臣に要求をしまして、あるいは日銀の総裁に要求して、日銀の地下室の金、銀あるいはダイヤモンド等をば見させていただきたい、視察をしたいと言つたのですけれども、それすらかなわなかつたのです。こんなときに池山さんでも存じ上げていれば、あなたの顔で地下室へ行つてすぐわかつたのですけれども、まことに残念だつたと思います。
とにもかくにも今までお話を聞いた点では、どうも要領を得ませんが、そこであなたが先ほどちよつとお話になりましたが、ダイヤモンドのことで、だれにも話をしてくれるなと、どつかほかの人から注意を受けたことがありましようか。たとえば警視庁にあなたが呼ばれて、あるいは警視庁の人があなたのところへ来て、この問題について注意をしたことがあるか。あるいはCPCに呼ばれて、そして先ほどうそ発見器をかけられたというお話でありますが、そういうときにダイヤのことはだれにも話をするなという注意をされたことはないでしようか。なぜ私がこう申すかというと、御承知の通り今までにマレーという大佐が、日本のダイヤモンドをば相当数ごまかしたというので、本国から送還されて、重労働十年という刑を受けておるということは、外電の報じておるところであります。特に横浜にそのダイヤモンドの鑑定のために、日本の專門家が四人行つて、これを鑑定しておる事実もあるのであります。そこで当時第八軍とGHQとの間に、相当政治的なトラブルがありまして、ややもすると日本の役人の中にも、当時の政府の大官の中にも、第八軍付とか司令部付とかいうような傾向が強かつたのであります。しかもこのダイヤあるいは貴金属を押えた者は、おもに第八軍関係の者であつたのであります。従つて第八軍関係は、このことの他に漏れることをおそれて、あらゆる方面へ手をまわして、このことについては一切話すな、語るでないというようなことを注意された例があるのです。池山さんはそういうような、だれかから注意を受けた例があるかないか。CPCに呼ばれたときに、どういうようなことを言われたか、伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/41
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042・池山秀
○池山参考人 お尋ねのことは私も聞きました。重労働十年に処せられたという話も聞きました。それからその当時GHQと八軍との間に、確執があるというようなうわさも聞きました。GHQは信用ができないから、GHQに預けるのはいやだという話のあつたことも聞きました。八軍はほんとうの軍人ばかりだから、八軍に頼んで、八軍の借りている日本銀行の別の地下室に入れたという話は聞きました。その当時の数量等については、むろん私の関知することでないから存じませんが、もう減つていたかもしれません。ああいうルーズなやり方では減るのが当然で、怪しむに足りないことであろうと思います。それで八軍に預けたのが誤りで、遂にあの処刑者を出したということになれば、つまらなかつたと思うのです。ですが、当時は八軍からは私のところに何人も聞きには参りません。それから警視庁には私は呼ばれません。警視庁の何とかいう部長だと言いましたが、その人が来て、あなたはこれに無関係だということは、詳細の取調べの結果わかつたから、あなたを怪しむ者はないけれども、何も言うなという注意は警視庁として言つておく。それでなければ煩わしい種が出るばかりだから、結局煩わしいという煩雑なところに引寄せられる種をまかないように、しやべらない方がよいという注意は受けました。そのことについて申し上げることはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/42
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043・中野四郎
○中野(四)委員 CPCのW・デユークというのに呼び出されて、日銀の地下室にあるダイヤのこと、あるいは交易営団で当時買い上げて持つておつたダイヤの数が、あまりにも接收してみたが少い、まだたしかどこかにあるはずなんだ、これを君が知らないはずはないと言つて、相当回数にわたつて調べられたと私は思うのですが、そういう事実はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/43
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044・池山秀
○池山参考人 私を八軍の方で調べたことは一回もありません。私と八軍との間に一ぺんも交渉はなかつたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/44
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045・中野四郎
○中野(四)委員 あなたは昭和二十一年の十一月まで在職しておられたと聞いておりますが、交易営団はいつ閉鎖されたのでしようか。閉鎖後においてあなたはどういう地位におられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/45
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046・池山秀
○池山参考人 二十一年の十一月にやめて、それで十一月以後には手当を出さないけれども、嘱託ではいてくれろというので、そういう辞令を渡されました。それで二十二年の夏でございました。閉鎖機関から、事務完了につき解任という辞令が来ました。それは二十二年の七月だつたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/46
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047・中野四郎
○中野(四)委員 そうすると、あなたのお話を総合しますと、日本銀行の地下室の交易営団で借りておつたひきだしの中にはダイヤモンドがなかつた。こういう結論になりますと、あなたが預かつたのじやないが、その交易営団の松屋四階の金庫の中にあつたダイヤモンドは、一体どこへ引継がれたのでしようか。まさかそれもわからない、いつの間にかふらふらとなくなつたとも言えないでしようから、少くとも責任者であるあなたなんだから、ダイヤモンドがどういう径路を経てどこへ引継がれたかということは、御存じだろうと思いますが、どうでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/47
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048・池山秀
○池山参考人 存じません。ただいま数回申し上げた通り、ダイヤの出し入れば雑貨部の人がかつてにしたのです。一々私は立ち会わなかつたのですが、いつの間にか消えてなくなつたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/48
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049・中野四郎
○中野(四)委員 どうもさすがは神がかりで……。そこでもう二点伺いたいのですが、これは昭和二十二年の四月一日に、ハリク・タンセイという代将が、あらゆる人々の立会いのもとで、日本銀行の地下室を探したことがあるのです。ところがそのときにダイヤモンドがなかつたわけなんです。それで大問題が起つたのです。私らは見せろと要求したのですが、見せてくれなかつたわけです。このときあなたが今言う自分のひきだしにあるという、大方は想像で言つたのでしようが、ないというのはあたりまえだと思いましたか。どういうふうに考えたのでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/49
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050・池山秀
○池山参考人 ないのだからないと言うのです。そのひきだしを使つている私が入れないのです。その入れない理由は、先刻申し上げた通り、私は自分の仕事をほうり出して、雑貨部のために日銀まで通うということはできません。一日に数回出し入れをしておつたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/50
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051・中野四郎
○中野(四)委員 それでは最後に一点伺いますが、現在日本銀行の地下室に、接收解除になつて引継がれたところのダイヤモンドは、工業用でなく装飾用だということで、工業用も幾らかまじつておるということを大蔵当局は言うておるのです。おもに装飾用でありますが、これは一体営団で買い上げた当時のダイヤモンドとおぼしめすか、あるいは全然違うと考えられますか、いかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/51
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052・池山秀
○池山参考人 私もあなたのお疑いと同じような疑いを持ちました。営団で直接買い上げたものや、デパートで買い上げたものが営団には来るのです。それから全国に営団の支部がありまして、そこで買い上げたものも営団に参ります。ただその中に工業用のものを買い上げたということは聞きませんでした。話にも出ませんですから、装飾用のものと思つておりました。しかし申し上げるように、実に粗雑な扱い方をするから、これではまるで工業用のダイヤモンドじやないか、本物かねと私は笑つたことが数回ございます。それだからこれはすりかえができるなという疑いを持ちました。しかしただそれは私の疑いであつて、いいことではありませんから、口に出してまでは言いませんけれども、そんな考えが出ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/52
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053・中野四郎
○中野(四)委員 この際大蔵省にちよつと伺いたいのです。昨日もお伺いしたように、あなたの方の提案理由の説明を聞きますると、接收当時は全然大蔵省は関係していないという証言を再再しておられる。きようここへ出て来ておられます青木正君からも、たしかその発言が後ほどあると思いますが、きようの毎日新聞を見ますると、これはおそらく責任のある記者が青木君に会つてのお話であろうと思うが、米軍が進駐をする二、三日前に、大蔵省の久保外資局長から呼出しがあつて、保管を頼まれたのだ。そこでその日の夕方に馬車二台にダイヤと金塊を積んで、埼玉県の自宅へ持つて行つて、書庫の倉か何かへ埋めたというのです。してみると、これは久保外資局長は当時接收前に、今日の金塊なりあるいはダイヤモンドなり白金なりの存在を知つておつたわけで、知らぬということは言い切れぬと思いますが、この点についての大蔵省の見解はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/53
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054・横山正臣
○横山説明員 その毎日新聞の記事につきまして、私の方で当時の係の者と聞いております人に、こういう事実があつたかどうか問い合せましたが、そういう事実は記憶にないと申しております。ただ私も間接的に聞いたわけですから、詳しいことは存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/54
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055・中野四郎
○中野(四)委員 きのうも再々申し上げておるように、このくらい重大な問題はないのですよ。あなた方はダイヤモンドが箱の中に入つておるから、軽く考えられるかもしれませんが、これが現金化されれば日本のインフレも相当助かるのです。もつと熱意を持つてやるべきです。今も聞いておれば答えられないという、そんなべらぼうな話はない。要はこの法律案を提案したあなた方の責任なんだ。問題は、もしこのことがうそだというのなら、青木君がうそをついておる。それは対決すれば一番いい。本人みずからが真相をここで暴露すると言つておるのだから、これは対決されればよろしい。どうせあなたは上海に行つておられて、日本の国内の事情がわからなかつたかもしれないけれども、役人がかわるたびに大蔵省の方針がかわるわけではないのですから、その証拠書類があるはずです。特にこういうことを言つておるではありませんか。一旦しまつておいたが「二週間ほどして大蔵省から呼出しがあり、米軍ハーゲマン中尉とジープに同乘、自宅に案内して引渡した。それからのダイヤの行方は淀橋保善高女にあつた協会倉庫へ、さらに日銀金庫へ納まつたはずだ。」と言われておるじやありませんか。あなたの方に預かり証を出して、そうしてこれを受けて行き、後に米軍の指揮によつてこの預かり証を返して接收されておる事実がある。してみれば、接收に全然関係ないというような、大蔵省の言うことは私は詭弁だと思うが、この点についての見解はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/55
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056・横山正臣
○横山説明員 この記事の内容につきましては、先ほど申し上げましたように、全然聞いておりませんのでそう言つただけで、あとそういう事実があるとすれば、当時の久保外資局長なりその他の方にお聞きになればわかると思います。私の方でけささつそく調べたところ、当時の係員は記憶しない、預かり証を預かれば係である以上知つておるはずだが、全然そんなものを預かつた覚えはない、こういうことを聞いただけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/56
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057・中野四郎
○中野(四)委員 これは重大な問題です。この法律案を提案するにあたつて、あなたの方の提案理由の説明の中には、政府は何分にも接收に関しましてはまつたく関与いたさなかつたために、現状においては接收を受けた者の住所とか氏名、及び接收をされた貴金属等の種類も数量もわからぬ、こう言うておる。ところが青木君がはつきりここで言うておられることは、当時大蔵省の久保外資局長から依頼を受けたという。あなたの方でも少くとも久保君なりあるいはそれぞれの担当官を調べて、こういうことの誤りなからしめることが当然の役目じやありませんか。呼んでお調べになつたらよろしいとは何ですか。国民を代表して国会で国家の問題を審議するのは当然の過程なんです。呼んでお調べになつたらよろしいなんというべらぼうな話が通るわけはない。自分の方で出した法律案に対して、こういうあやまちを来しておきながら、そういう暴言はあり得ないと思う。しかし青木君も幸い来ておられますから、当時の真相を青木代議士から承つて、しかる後に大蔵省に対する質問を継続したいと思います。はなはだ恐縮ですが委員長、青木さんの発言を許されて、当時の真相、すなわち大蔵省と直接に関係があつたかどうか。もしきようのこの新聞の記事がうそだというなら、それぞれのことを考えなければならぬ。だからひとつ御発言をお許し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/57
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058・宮幡靖
○宮幡委員 議事進行について。中野委員が国家社会のために本件の追究に熱意を傾けられておりますことは、私も敬意を表するものであります。しかしながら一面考えてみますと、ただいま審議中の法律案なるものは、数量の報告をさせるという単純なる趣旨であります。もとより報告を徴する者は、それぞれの用意がありまして徴することが至当でありまして、そういう準備がないということでありますと、また考え方がかわるかもしれません。しかしながら法律案の表は、あくまでもすみやかに報告をとりまして、返還その他の措置が講ぜられるようにするんだ。またあらためて立法措置を講じまして、われわれの審議に供することを、政府委員も大蔵当局も答弁せられておる。従つて法律案の審議そのものについては、私どもはある程度の単純性を考えるわけであります。けれども、中野委員の追究せられておる諸点はまた重要でありまして、容易に結論に達すべくもないのであります。これは昨日来参考人の御意見を聞きましても、これが結論に達することはなかなか困難であろうと推察いたします。さような審議の状況を勘案いたしてみますると、従来の国会法の成文に基くのみならず、委員会の審議の前例等に照しまして、われわれ大蔵委員会においてこれを審議することは不適当であろうと私は思料いたします。従いまして、ただいませつかく参考人に対する質問の中途でありまするが、委員長におかれましてはすみやかに理事会を開きまして、今後の措置につき御協議の上、適当なる御措置を講ぜられんことを要望いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/58
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059・佐藤重遠
○佐藤委員長 了承いたしました。速記を中止してください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/59
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060・佐藤重遠
○佐藤委員長 速記を始めて。午後は二時から開会することといたしまして、休憩に入ります。
午後零時五十一分休憩
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午後二時二十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/60
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061・佐久間徹
○佐久間委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。
午前中に引続き、接收貴金属等の数量等の報告に関する法律案を議題として、質疑を続行いたしたいと存じますが、午前中の委員会におきまして議員青木正君の出席を求め、意見を聴取することに御決定願つておりましたので、これより議員青木正君及び池山参考人の両君に対する質疑を行います。中野四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/61
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062・中野四郎
○中野(四)委員 青木参考人についていささか伺いたいと思うのですが、まず本日お伺いするその趣旨は、本委員会に付託されました接收貴金属等の数量等の報告に関する法律案に関してであります。これは御承知の通り、「連合国占領軍に接收され、その後連合国占領軍から政府に引き渡された貴金属等に関して、接收の事実、数量等を確認し、返還その他の措置を講ずることに資するため、報告を徴する必要がある」というのが、本案の目的であります。ところがこの報告を求める法律案の提案理由の説明の中に、政府は接收当時においてはまつたく関与をいたさなかつたので、従つて現在日本銀行の地下室に接收解除を受けておるところの金、銀、白金特にダイヤモンド等についての入手径路が明確でない。言いかえますれば、不明だと言うておるのであります。そこで本日青木さんの御出席を求めて伺いたいと思うのですが、青木さんはたしか終戦直前、直後においては、戦時物資活用協会の業務部長とし、中央物資活用協会の常務理事、あるいは生活物資活用協会に御関係を持たれて、当時国民の愛国的供出に基くところのダイヤモンド等の取扱いについて、深い御関係を持つておられることと承知しておるりのであります。先日来大蔵省におきましては、このダイヤモンドに関しては、まつたく接收当時には当局は関係しておらぬという意見のために、ここに多くの参考人を求めまして、いろいろと参考意見を徴したのであります。たまたま昨日の委員会において、この問題が取上げられまして、今朝の毎日新聞の取扱うところによりますれば、青木さんの言として、米軍の進駐の二、三日前のころ、大蔵省の久保外資局長から呼出しがあつて、ダイヤモンド並びに金、ゴールデン・バーの保管を頼まれた。そこでその翌夕刻二台の馬力に、疎開荷物と見せかけて、そうして北埼玉郡の共和村のあなたのお宅に運んだ。日銀で受取つた数量は、ダイヤが木箱十六箱、ほかに金のインゴツト二十五本、これを自宅の文庫倉の地下に埋めて、大蔵省へは預かり証を出したと言つておられる。あなたにいろいろな疑いがもし誤つてかかつたとするならば、これは仰せの通り、まつたくそういう点はないかもしれませんけれども、私の本日参考意見を徴したいのは、大蔵省に預かり証をば出して、そうしてこれだけの品物をお受取りになつて自宅へ埋蔵なさつたという事実、それから後に二週間ほどして大蔵省から呼出しがあつて、そうして米軍のハーゲマンという中尉とジープに乘つて、そうしてあなたの家に行つてこのダイヤモンドや金の棒を渡したというのが、本日伺いたい焦点であります。ここに重大な誤りの発見されますることは、大蔵省においては接收当時に全然関与をしないから、このダイヤモンドはいずこから入手したものか、その径路がわからぬと言うておるのであります。ところがこの新聞記事によりますれば、少くとも大蔵省の外資局長から依頼を受けて、いかなる理由と根拠に基くかは知りませんが、国家の財宝であり、しかも莫大なる金額に相当するものを、あなたの宅にお運びになつたという事実については、われわれが本案を審議する上において、どうしても聞かなければならぬところであります。すなわちダイヤの数が減つたとか、これが非常に不足しておるということは、本院に設置されておりまする行政監察特別委員会でこれを追究するのが妥当でありまして、大蔵委員会といたしましては、この提案理由の説明に、接收当時にはまつたく政府は関係していなかつたという理由と、あなたの発表された文言とは相当な開きがありまするので、御迷惑ではありましようが、御存じの点について、十二分の御意見を御発表願いたいと思うのであります。
まず第一に伺いたいのは、米軍の進駐二、三日前に大蔵省の久保外資局長が、なぜあなたにこういう品物を頼んだかという経緯について、お話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/62
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063・青木正
○青木正君 ただいま中野委員からの御質問でありますが、問題の御質問の要点にお答えいたしますために、全般的に一応いきさつを申し述べることをお許しを願いたいと思います。御指摘のように私は戦争の前から物資活用協会、それから中野さんが今おつしやられましたのでは、別の団体のようになつておりますが、戦時物資活用協会は途中から生活物資活用協会になり、それから中央物資になつたのであります。財団法人で、あとは社団法人であります。そこでダイヤモンド関係について申し上げますると、戦時物資活用協会は戦争の前から、戦時に必要なるいろいろな物資の献納運動あるいは供出運動の民間団体としてやつておつたのであります。終戦のちよつと前に、ダイヤモンドが国策として回收されるということで、交易営団がダイヤモンドの回收に当つたのであります。私も戦時物資活用協会、当時生活物資活用協会といつておつたと存じますが、交易営団の下請機関としてお手伝いを申し上げまして、交易営団にかわつて地方等におきまして買い集めて、これを交易営団に届ける、こういうような仕事をやつておつたのであります。たまたま終戦になりまして、日は忘れましたが、終戦になりましてアメリカ軍が進駐して来る二、三日前のことであります。大蔵省の方から出て来いという話がありまして、そのときに行つたのは、私の記憶では、たしか会長の小原さんも行つたと思います。理事長の現在行政管理庁の監察委員をやつております松原久人さん、それに私に、また実際に回收の仕事をやつておりました中田玉一君、多分この四人であつたと私記憶いたしておりますが、参りますと、大蔵省のお話では、そのときに外資局長も私確かにおつたと存じております。もつぱらこまかい点について話をいたしましたのは、当時金の方の係をやつておりました事務官の桜井郡二さんであります。現在はたしか群馬方面の税務署か何かにおるのではないかと存じておりますが、この桜井さんが中心となつていろいろ話をしたのであります。そのときのお話はこうなんであります。ざつくばらんに私申し上げますが、いよいよ日本が負けてアメリカ軍が進駐して来る。進駐して来たアメリカ軍が、日本にある貴金属等に対して一体どういう態度をとるかということについて、政府側としてもはつきり見通しがつかない。極端な場合を考えれば、場合によつたらば略奪ということも、これは想像されないこともない。アメリカ軍がそういうことがないにいたしましても、アメリカ軍の進駐によつて社会の混乱が起つて、そのために日銀等が襲われて、国家の大事なものが略奪されるというようなことがあつては、これは一大事だ。そこで政府といたしましては、どうなるかわからぬから、ともかく取急いで政府の大事な貴金属類を疎開いたしたいのだ。ところで東京に疎開するということも考えられるけれども、東京にはまたどういう混乱が起るかわからぬし、遠くの方といつては急には間に合わぬし、ひとつ御迷惑かもしれぬけれども、この貴金属の疎開を引受けてくれ、こういう話があつたのであります。私そのときに聞いたのでありますが、それを引受けて疎開して、万一の場合は一体どうなるのか。それはどういうふうなことになるかわからぬ。しかしどういうことになるかわからぬけれども、やがてある時期になつて、日本の再建のために必要なる財産、これが万一のことがあつては困るから、これはだれかしら責任を持つて、命を賭して守らなければならぬのだ。国家のためにだれかしら守らなければいかぬのだから、守つてもらいたい、こういう話があつたのであります。そこで私決心いたしまして、そこで承諾をいたし、話がこまかくなりますが、うちに帰りまして家内、母親等を集めまして、私はこういうことで政府から頼まれた。だれかしら責任を持つて国家のために守らなければいかぬのだから、場合によつたら私は殺されるかもしれぬ。しかし私は国家のために守る決心をしたのだから、お前らもそういう覚悟でいてもらいたいということで、家族も納得させまして、そうして翌日大蔵省の桜井事務官ともいろいろ打合せたのでありますが、途中に危険があつては困りますので、馬力を雇いまして、そうして私ども現在住んでおりますが、洗足の宅からふとんを疎開するような形にいたしまして、よごれたふとんを若干積みまして、これを積んで指定の時間、たしか夕方の三、四時ごろと思います。日本銀行へ参りまして、大蔵省のここへ行つてくれという話のところへ参りまして、その係官は私失念しておりますが、ともかくそこへ参りますと、日本銀行で待つておりまして、そうして地階から——地下おそらくどこらか私どもは下まで入つたわけではありませんが、地下室の方から持つて参りまして、木の箱がたしか十六と私記憶しております。中にダイヤ、白金等が入つておるというようなお話で、箱の上に繩で梱包してありまして、封印がしてあつたのであります。それから金塊の方は、渋紙と申しますか、厚い紙に包まれて封印してあつたものが、たしかこれも二十五個と記憶しております。これを預かりまして、そうしてその日に即刻夜通し私の私宅に帰つたのであります。着きましたのが翌未明であります。翌朝着きまして、そうして私はそのときに品物と日銀からいただきました案内書によつて個数と目方とを確かめまして、間違いないことを確認して、さらに私はこれらを長く保管することも考えましたので、自分でその上にさらにもう一度二重に繩がけをいたしまして、また自分で封印をいたしまして、これを昼間ですといろいろ人が来る、人が来るとまた変な疑惑を受けても困ると思いましたので、夕方から私の文庫の床をあけまして、土を掘つて中へ入れたのであります。そういたしまして、私はその預かりました数量と個数と、それから万一のことを考えまして、東京から私の私宅まで来る道順と、私の家の中の見取図とを書きまして、所在場所を明記したこういうものを二通つくりまして、一通は翌日大蔵省に届けたのであります。手渡したのは、私は多分桜井事務官だつたと思つておりますが、一通は本日から見ればそういうことは変かもしれません。私のそのときの気持ですと、アメリカ軍が来てどうなるかわからぬ。何年私が守らなければいかぬかわかりませんので、そこでその間に万一私が死んだときは一体どうなるのか。国家の大事なものを預かつて行方不明になつては相済まぬ。大蔵省に渡しても、それだけで私は気が済みませんので、私の長男を——これは当時学校から学徒動員で出ておりましたが、まだ残務整理が残つておつて名古屋方面におつた。これを呼びまして、長男にいきさつを話しまして、こういうわけで私は国家の大事なものを預かつている。そこで万一のことがあつてぼくが死んだ場合に、あとが所在不明になつては困るから、この預かり書をお前保管しておいてくれということで、一通は子供に渡したのであります。それから私はそういうような大事なものを預かつておりますので、外出もできるだけ避けますし、それから夜分も、母親が——そういうことを申し上げますとはなはだ恐縮でありますが、ほんとうに夜もおちおち眠れないというくらい、国家の財産を自分に託された責任、政府が私に頼んだのは、おそらく私を信用して託してくれた、この信用にこたえるためにも身をもつて守らなければいかぬ、こういう覚悟をもちまして守つておつたのであります。そういたしますと、二週間でありますか、二十日間くらいでありますか、記憶ははつきりいたしておりませんが、ともかくそう長い期間でなしに、二週間か二十日以内に、大蔵省の方から連絡がありまして、出て参つたのであります。そういたしますると、そのときのお話で、いよいよ進駐軍が日本に来て、政府ではあの混乱に乘じて、あるいはアメリカ軍がこれを没收するのではないか、あるいはまた略奪するのではないかというような懸念もその当時は持つておつた。それからまた社会の混乱によつて、どういうことになるかもしらぬという懸念も持つておつたところが、アメリカ軍が来ていろいろ交渉してみたところが、金、銀、白金といつたようなものについては、アメリカは没收しないということがはつきりした。それでそのとき私が聞いたのは、将来賠償に充てるか、貿易資金に充当するか、いずれにしても没收されるということはなくなつた。そこで心配がなくなつたから、進駐軍の方に疎開先を届けた。届けたから、お前ひとつ案内せい、こういうことであつたのであります。そこで承知いたしまして、アメリカの兵隊さん——これはスペルは忘れましたが、名前が妙なので、名前だけは今でも覚えております。ハーゲマンという人でありました。中尉でありましたか大尉でありましたかはつきりいたしませんが、多分中尉クラスの人であつたと思います。そのハーゲマン氏と私と同じジープに同乘いたしまして、それからトラックを一台従えまして、これにはアメリカの兵隊が七、八名、十名近くおつたと思いますが、これを従えまして東京から私の自宅に参つたのであります。参りまして、私が保管しておりました土蔵に案内いたしまして、アメリカの兵隊さんがそれを再び運び出しました。大蔵省に預けた預かり証を現物と対照いたしまして、品物を先方で確認をいたしました。私はそこでほつといたしまして、これで自分の責任も解除された、ともかく無事でよかつたという気持で、その品物をアメリカ側に渡したのであります。渡しまして、道がわからぬというので、私は途中まで同乘いたしましたが、自分の村はずれでわかれまして、私だけは自宅に帰つたのであります。翌日協会の方に参りますと——当時協会は淀橋でありますか、新大久保の駅の近くでありますか、ちようど前にございました田町の財務局が焼けまして、保善工業に移転しておりましたので、保善工業の事務所に行つてみますと、保善工業の地階のところに私のところから持ち帰りました品物を置きまして、アメリカの兵隊がやはり十名内外でこれを警戒しておつたのであります。それも幾日くらいか、私はつきり記憶いたしておりませんが、多分二、三日程度だろうと存じます。それから先どこに行つたかということにつきましては、そのときに私承つたのでは、そこから日本銀行に持つて行つて、日本銀行で預かつておるというふうに承つておるのであります。これが事件と申しますか、私が関与いたしました一切であります。私が申し上げるまでもなく、いろいろ旬刊読売等にも出ましたけれども、これは一笑に付していいのでありますが、真実は必ずわかることだ、私はそれに対してとやかくと言明がましいことをいたそうという考えは持つておりません。これは天地神明に誓つて私自身がよく知つております。ただ私ここで中野委員に申し上げておきたいことは、率直に申し上げまして、私はほんとうに命を賭して守つたのであります。ほんとうに自分は殺されるかもしれないという覚悟をもつて、国家の再建のために大事だからということで守つた品物が、われわれがここまで真剣になつてやつたものが、万一そのあとになつて行方不明になつたということになりますと、私自身としても、こんなに人が苦労して命を的にかけて守つたものが、あいまいになつたということにつきまして、私どもまことに遺憾に思うのであります。
それはそれといたしまして、御質疑があればさらに詳細に申し上げてけつこうでありますが、私の関係いたしましたことはそれだけでありまして、それ以外にまつたくありません。日本銀行に入つてから後のことにつきましては、私は毛頭何も存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/63
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064・中野四郎
○中野(四)委員 たいへん率直に御証言をくだすつて、不明瞭な点がだんだん判明して参りました。してみると、あなたの考えから行つて、今回接收解除になりました日本銀行の地下室にありまするダイヤモンドは、当時あなたが埼玉県の自宅に疎開をしたダイヤモンドとお思いなされますかどうか。いくら当時の状況とは言いましても、工業用でない装飾用の高価なダイヤモンドが、そう他にもあるわけはないのでありますから、一応念のため、当時あなたが疎開をされましたときの十六個の箱に入つておつたというその箱とは、どういう形のものであつて、およそどのくらいの目方あるいは価格があつたかということは、これだけ大事なものをお預かりになるに関して、大蔵省あるいは日銀で漏らさぬわけはないと思いまするが、お聞き及びの点があるなれば伺いたい。すなわち、現在日銀の地下室にあるダイヤモンドは、当時あなたのお宅に疎開したものとおぼしめすかどうか。第二点は、その当時の箱の姿はどういうようなものであつて、中身はどのくらい、価格はどのくらいと当事者から聞いておられたかどうかを、お聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/64
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065・青木正
○青木正君 政府の内部のことはよく存じませんし、その当時どういう相談でそうなつたかも存じませんし、また交易営団の方で集めましたものが全部私の方に疎開を依頼されたかどうか、これも存じません。私はただ大蔵省から日本銀行に行つて、こういう人から預かつてくれということだけを承つたので、それがどこから来たもので、また全部であるかどうかということも存じないのであります。それからまた箱につきましては、これは大小必ずしも一定の箱でなかつたようであります。そして目方はそう重くないのであります。割合に大きな箱でありますが、もちろん先ほど申し上げましたように厳重に封印されておるのでありまして、中をあけるわけにも行かない。もちろんまた見られるものでもない。見られませんが、ただダイヤモンド、それから白金等の買い上げたものが入つておるということで、私は預かつたのであります。もちろん私はとにかくダイヤモンド、白金という大事なものが入つておる箱だということで、封印されたまま預かつたのでありまして、目方だけはそのときにはつきりわかつております。しかしそれがどういうものがどういうように入つておつて、金額が幾らになるか、そういうことは全然私は聞きもしませんし、またわからないのであります。とにかく大事なものが入つておるものだから疎開してくれということで、目方と個数で、封印して預かつた、これだけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/65
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066・中野四郎
○中野(四)委員 現在日銀の地下室にありまする箱の大きさは、この間この大蔵委員会において実地視察に参りまして、約一尺五寸角くらいの箱で、長さ二尺五、六寸のものだと思うのであります。あるいは少し長いかもしれませんが、その中に紙に包んでいろいろあるわけなんです。ただ容器がかわつたかどうかということ、これはここで議論するところでないと思いますから、率直に申し上げて、当時金のインゴツトをば二十五本やはり同じ車に積んで行かれたと言いますが、インゴツト一本の目方はどれだけであるかということを、お聞き及びでありましたでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/66
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067・青木正
○青木正君 箱の方から申し上げますと、私が預かりました箱もそれくらいの筋であつたことを記憶しております。木の箱で、まわりが何か二重にわくがかけてあつたように記憶しております。それからインゴツトは、はつきりした記憶はありませんが、箱を見ますと、私と母親、ことし七十幾つになりますが、この母親がよく言うのでありますが、金というものはずいぶん重いものだ。形はこれくらいでありましたが、持つのに老人ですとそう楽々というわけには行きません。とにかく老母が持つて持てたのですから、何貫目というものではありませんが、一貫目前後あつたのではないか、かように存じております。そのときにはもちろん正確に目方をはかつたのでありますが、それは向うに渡したのでありますが、また控えというものは持つておりませんし、存じておりませんが、その程度のことと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/67
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068・中野四郎
○中野(四)委員 箱もやや似ておりまするから、折を見て日銀の地下室を青木さんに見てもらえば、記憶が新たになると思います。
そこでかんじんな問題を伺いたいのでありまするが、先ほども申し上げましたように、大蔵省においては接收当時に関係をしなかつたから、入手径路が不明だと言い、あなたの御証言によりますれば、大蔵省の久保外資局長なり、あるいは桜井事務官なりが、直接にあなたに依頼をしたというのですから、従つてかかる莫大な金額のものを預かる限りにおきましては、あなたが大蔵省あるいは日本銀行にあてて、預かり証を発行されたことと思いますが、その預かり証は出されたことがあるか。もしあるとするなれば、何人がこれを預かつたか、これを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/68
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069・青木正
○青木正君 預かり証につきましては、先ほど申し上げましたように、私受取りまして、目方と個数を確かめて、それを書きまして、同時に東京からうちまでの道順と、それから見取図まで添えまして、ここにあるということをしたためたものを、大蔵省に預かり証といたしまして提出いたしたのであります。渡しました相手は、たしか桜井事務官に渡したつもりであります。
なおこれは御承知かと思いますが、念のために申し上げますと、ダイヤモンドの方は、たしか軍需省の所管でなかつたかと思います。白金もたしか軍需省でしたが、金の方は大蔵省が所管しておつたようであります。私ども大蔵省とは金の関係で、前々から桜井事務官といろいろ折衝しておつた関係がありますが、白金につきましては、大体軍需省が中心になつて交易営団とやつておつたように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/69
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070・中野四郎
○中野(四)委員 その埼玉県へ疎開を頼まれたときに、軍需省あるいは大蔵省と区別をつけたものでなく、大蔵省の久保外資局長から一括依頼を受けたというふうに私は拝承しておる。従つて馬力にこれを積む際には、大蔵省の担当官なり、日銀の責任者がたしか立ち会わなければならぬわけだ。立ち会つて、しかる後にどれだけの目方、どれだけの個数という預かり証を引きかえに渡すべきものであると思いますが、当時日銀の地下室からこれをあなたの馬力に積むときに立ち会つた責任者はだれでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/70
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071・青木正
○青木正君 先ほど申し上げましたように、大蔵省から何時ごろ日銀へ行けということで参りまして、日本銀行の係から受取つたのであります。名前は、そんな大事な人を忘れてけしからぬとおしかりを受ければ、まことにごもつともですが、現在記憶しておりませんが、その方が一緒に立ち会いまして馬力に積み込んだのであります。私ももちろん立ち会いまして積み込んだのであります。
それからなおただいまお話でありますが、私、ダイヤモンドは軍需省というお話を申し上げましたが、これは役所の内部のことで、私の想像であります。そして私が実際に預かりましたのは、軍需省とかどうとかいう区分なしに、大蔵省へ参りまして、大蔵省からその箱を、白金やダイヤモンドが入つている大事な箱だからということで、お預かりしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/71
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072・中野四郎
○中野(四)委員 さらに重ねて伺いますが、それから約二週間ほどしてから大蔵省からあなたのところに呼出しがあつて、米軍のハーゲマン中尉か、あるいは少尉か知りませんが、あなたと一緒に同乘してあなたの自宅へとりに行つたというのですが、この大蔵省からの呼出しというのは、だれが呼び出したものか、それから米軍のハーゲマン中尉と一緒に行つて、その現物を渡してくれと言つたのはだれでありましようか、これを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/72
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073・青木正
○青木正君 私は戦争が始まりまして間もなくから、東京の居宅には学生がおりますので、学生を残しまして、私自身はいなかから東京の協会の方へ通うというような生活をやつておつたのであります。金の疎開を受けましてからは、あまり協会の方へも出ないでおつたのでありますが、協会の方から連絡がありまして参りましたところが、大蔵省からこういう話だということで、直接私に来たんじやなくて、協会の方から連絡がありましたので、大蔵省のどなたが言つて来たか、それは私は存じておりません。それからハーゲマン氏が参りましたときには、大蔵省に私が預けました品物預かり証を持参して参りました。そうして通訳をやる方が同行して参つたのであります。この通訳の人が立ち会いまして数量と個数を確かめてお渡しした、こういうことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/73
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074・中野四郎
○中野(四)委員 それから後に新聞に発表されたことでありますが、四月の初めころ、米軍の代将が日銀の地下室を捜査したところが、当時ダイヤモンドや金、銀、白金がないということを発表されたことがありますが、このときには、あなたのうちの地下に埋没されておつたのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/74
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075・青木正
○青木正君 私はその代将がどうという問題はよく存じませんが、私が引受けまして疎開して預かつておりました期間は、先ほど申しましたように、預かりましてから二週間そこそこであります。それは進駐軍の参ります前に預かりまして、それから引渡したまでが二週間程度でありまして、その代将の話というのは私は存じませんが、あるいは私の方から引上げた後の、日本銀行へ入つてからの問題じやないかというふうに私は想像するのであります。と申しますのは、これは非常に無責任のような話になりますが、それから大分たちまして、うわさに聞いたことは、アメリカ側で、日本の金かダイヤでありますか、持つて帰つた兵隊があつて、向うで問題になつたということをその後聞いたことがある。そのことを聞きましで私ども考えますことは、私どものところの疎開先から持つて来まして日本銀行へ納めたあとは、われわれの承知するところでは、日本側でなしに、もつぱらアメリカ側が一切を管理しておつたというふうに——これは私ども責任をもつて申し上げかねるわけですが、そういうふうに聞いておつたのであります。従つてその当時も、どういうことがあつたかということにつきましては私どもわかりませんが、あるいはそのころ何かそういつたようなことでもあつたんじやないかということを、想像すれば想像できるんじやないか、かように思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/75
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076・中野四郎
○中野(四)委員 青木さんの御証言で、当時世耕弘一君の発表いたしました世耕情報というものがだんだん裏づけられて来たわけです。私らも第一回国会の当時から、世耕君の発言に対してはいささか神がかり的な感じを受けまして、これを徹底的に究明する必要があると考えて、隠退蔵物資委員会をつくつて調査を進めて来たのです。ところが当時の世耕君の出しておりました百四十何本の情報の中には、明らかに日本銀行の地下室に預けられた金塊、ダイヤモンドが埼玉県方面に持ち去られた事実があるということが議会の問題になりまして、二十二年の七月から八月にかけての速記録には、明確にこれが載つておるわけであります。そこでいま一点伺いたいことは、あなたは預かり証を出してこの金、ダイヤモンドをお持ちになつたのでありますから、この預かり証は、ハーゲマンという中尉に品物を渡せば同時にあなたの手元にかえるわけでありますが、かえりましたかどうか。かえつたとすれば、だれからかえしてもらつたか。続いて伺つておきたいことは、当時ダイヤモンドの種類は、工業用と聞きましたか、装飾用と聞いたか、この二点について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/76
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077・青木正
○青木正君 ダイヤモンドが工業用か装飾用かということは、買い上げましたときは、たしかどつちも買つたのではないかと存じます。ただ戦時物資活用協会が扱いましたのは一般家庭のものでありまして、装飾用が大部分だと存じます。また私が保管を依頼されまして疎開いたしましたものが、工業用であるか何であるかということは、もちろん私にはわかる筋ではありませんので、存じておりません。それから預かり証の問題でありますが、あるいは協会でその当時扱つたかもしれませんが——非常にずさんな話になつて、何だか怪しげな、変なふうにお思いになると思いますが、その預かり証を出したことは記憶しておりますが、それを返してもらつて、どこへやつたかというような記憶は、現在のところないのであります。あるいは協会の残務整理をやつておる方等に聞きますればわかるかもしれませんが、私自身としては、今のところ、返してもらつてどこへしまつたというような記憶を持つておりません。私は大事なものを預かつて、とにかく保管をして返した、これで自分の責任は済んだということで、それ以上に、もちろん政府からほめられようとも考えませんし、保管料をもらおうとも考えておりません。ただ国家的にやつた、そういうような気持で、やかましく取引的に預かり証というようなものは大して気にとめなかつた。それで済んだということで、それ以上どうということはいたさなかつたように記憶しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/77
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078・中野四郎
○中野(四)委員 御証言を聞いておりますと、戦争に負けるのもまことに無理はないと思える。先刻来池山参考人の証言を聞きましても、国民の一人一人が、自分の歯にあるところの金歯を抜き、自分の目にかけておるめがねをぶちこわして、泣きの涙で供出した金銀、あるいはダイヤモンドが、さながら一塊の石ころのごとく扱われて、その行く末、その取扱いすら関心を持たれなかつたというような当時のやり方から見れば、この戦争によつてさんたんたる思いを重ねられるのは当然のことであろうと思うのであります。ただ私がここで不審に感じますことは、これほどの金額のものをば、大蔵省の外資局長ともあるものが、当時の青木さんにすべてを委ね、一個人の家庭に疎開をせしめるという、一片の預かり証によつてこのことを実行に移すということは、当時の混乱状態ならいざ知らず、今日の常識からもつて考うれば、まことに不審にたえないと思うのでありまするが、久保さんあるいは桜井さんというような人と、あなたの方のつながりというものは、どういうところから始まつて、どういう形で行われたか。これをまず伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/78
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079・青木正
○青木正君 私は久保局長なりあるいは桜井事務官なり、戦時物資活用協会の関係において仕事の上で折衝しただけであります。桜井さんとは、金の回收が始まつて一、二年往復いたしております。それはもちろん個人的ではなしに、仕事の上においてであります。外資局長とお目にかかつたのはそう多くではありません。四、五回程度だろうと思います。そうしてまた私が引受けさせられたときに、たしか小原会長もおつたと思います。それから松原氏もおりまして、いろいろ相談して、結局結論として、青木君、お前のところが、場所も東京からそう遠くないし、それからいなかのたんぼの中だから、お前が引受けろということで、結局私が引受けさせられることになつたと思うのであります。それ以外に別にどうという関係はないのでありまして、その問題が済んだあと、私は久保さんが今どこにいるかも存じませんし、今日まで会つておりません。それから桜井さんともその後全然会つておりません。単に仕事のつながりで先方も私を知つておつたのでありますし、また大蔵省は、おそらく今まで関係のあつた団体ということで私どもに頼んだのではないか、かように推測するのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/79
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080・中野四郎
○中野(四)委員 この際大蔵省の石田理財局長に伺いたいと思う。去る五月の二十八日、本委員会における私の質問に対してのお答えの中に、隠退蔵物資によつて摘発を受けたものは日銀の地下室にはないと思うという御発言でありました。昨日委員会において、管理課長は御出席でしたが、あなたはおいでにならなかつたから、おわかりにならぬかもしれぬが、当時金及びダイヤモンドは統制物資の中に入り、強制買上げをいたしましたが、銀は戦時中統制物資の中に入らず、隣組を通じて強制買上げはいたしましたが、罰則の裏づけはなかつたはずであります。しかも大阪の造幣局あるいは名古屋、東京等におきまして、あらゆる摘発を受けたるところの銀塊、銀線等が精錬されてインゴツトとなり、日本銀行の地下室に納められておるという事実は多多あるのであります。たとえて申し上げますならば、ここにも持ち出して来ておりますが、国会の中に証拠物件として置いてあります。この銀線が約三十一トン板橋の東洋鋼機という会社の庭に埋めてあつたのであります。これは会社側においては、合金で九六%と主張しておりますが、分析の結果、九八%六という、純銀にひとしいものであります。当時朝霞の騎兵連隊がこれを持つて行きまして、朝霞の騎兵連隊長の証明によれば、大阪の造幣局においてこれをインゴツトとなし、大阪造幣局は日本銀行の地下に納めたと証言をしております。それは日本の法廷において明らかなる証言をしておるのであります。必要とあるならば、いつでも私の方からあなたの方に提供をいたしますから、ごらんになればよろしいと思いますが、まず地下室にあるところの物品が隠退蔵物資のものでないということは、これによつてくつがえつております。
その次に申し上げなければならぬことは、今度のこの接收貴金属等の数量等の報告に関する法律案を御提案になるに従いまして、提案理由の説明の中の焦点は、すなわち当時政府はまつたくこの接收には関与をいたさなかつたために、現状においてはどこからこの品物が来たものかはわからぬ。金においてはわかるけれども、特にダイヤモンドにおいてはわからぬということを、再々この委員会において説明をされております。しかしながら、ただいままでの参考人の証言にはりましても明確なるがごとく、特に青木代議士の証言によりましても、当時大蔵省の外資局長がこれに関係をし、大蔵省が接收前、接收後においても関係をしておつたことは明らかなのであります。あなたの方の事務上の手続で手落ちであつて、このことが認められるならいざ知らず、全然関与しなかつたから、このダイヤモンドの入手の径路はまつたく不明であるというような今までの言であるなれば、私はこの法案を審議することはなかなか容易な問題でないと思いますが、理財局長はただいまの証言を聞かれて何と考えられるか、この点について伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/80
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081・石田正
○石田政府委員 お答え申し上げます。接收をいたしました事実につきまして、政府が関与しない、これは日本政府がその接收をみずからやつたのではない。これは前にも説明をいたしましたが、進駐軍が国内法的な法律的効果をもたらすような法的措置を講じた上でやつたのではなく、事実行為として接收ということが行われました。この接收については、大蔵省がこの接收をしろということによつてやつたのではございません。接收ということは、全体といたしますれば、進駐軍が接收をしたのであつて、事実行為として接收したのである。従いまして、その関係において大蔵省はその接收をこうしたらいいとか、あるいはお前、これをやれとかいわれてやつたのではありませんということを、全般的な問題として申し上げたのであります。なおその間におきまして、それではそういう接收の事実があつたということをまるつきり知らなかつたか、こういうことになりますれば、接收があつたということは、われわれ前から知つておるのであります。しかしながら、どこで、どういうものを接收したか、そうしてそれが全体としてこういうふうな数字になつておる、それから日本銀行の中にあるものはかくのごときものである、ということを知つておつたわけではございません。こういうふうなぐあいに私は申し上げたのでございます。それから今青木先生の御答弁で、いろいろ話を知つたのでございますが、これは私個人といたしましては、知らぬことが多いのであります。知らないのであります。従いまして、こういうふうなことが今の御証言であるいはあつたかというぐあいに、感ずるのでございますけれども、しかしこの問題はあつたといたしましても、先ほど青木先生からお話がありましたようなぐあいに、中身とか数量とかいうふうなものにつきましては、的確に何ほどということははつきりいたさないのでございます。それはあるいは私の想像といたしましては、大体交易営団なり、ダイヤモンドにつきましては中央物資活用協会なりが集めたところのものであろうと、想像するのでございます。そうしてそれがまた、日本銀行の地下室と申しましても、これは進駐軍が管理いたしておりますところの地下室ではなくして、ほかの保護函というようなものにあるいはあつたのか、そこらのところ私は存じませんが、それが一ぺん出て、また最近まで管理されておりましたところのものに入つたのであろうかということは想像できますけれども、それにいたしましても、数量はこれほどである、現在ありますところのものは、どこどこから集めたものが、総量がこういうふうに相なつておる、その中からかくのごとく出ておつた、それで残つたところのものは、こういうふうなものであるということを的確に示すところの材料というものは、大蔵省としては持つておらないわけでございます。こういうふうにお話を申し上げたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/81
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082・中野四郎
○中野(四)委員 まつたく奇怪しごくな御答弁です。あなたが関与しておらないから知らないとおつしやるならわかりますが、今の御答弁では納得できません。ますます疑惑が深まるのであります。なぜかならば、あなたの方の提案理由には、関与せずとあつて、一切関しあずかつておらないというのでしよう。従つて最初の言葉とは根本的に趣をかえて来る。さらにここに重要なことは、青木代議士にお渡しになる場合に、中身が何だかわからぬ、そのままに渡したのだから大蔵省でもわからぬ、日銀でもわからぬというりくつは成り立たないです。だから、そのときにダイヤモンドはどのくらい、買い上げたものはどれだけ、金がどれだけ、銀がどれだけ、はつきりしておることはきまつておるじやありませんか。何だと思つておるのですか。国民の財産ですよ。一大蔵省の役人の左右すべきものではないのであります。従つて当時あなたが御関係なさつていらつしやらなかつたなら、それだけの説明は納得いたしまするが、大蔵省当局において関与しないということは、断じて言えないではありませんか。当然当時関与しておつて、その数量なりその価額なりはわかつておらぬことはないはずです。その書類を大蔵省において系統的に探して、本委員会に提示するところのあなた方に熱意がないということが言えるじやありませんか。私はこの点についてはどうしても納得ができませんが、当時の久保外資局長というのは、現在何をやつておるのですか、どこにおりましようか、これをひとつ石田さんから伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/82
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083・石田正
○石田政府委員 当時の久保外資局長は、日新印刷という印刷会社を経営されておりまして、お住居は目黒にお住いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/83
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084・中野四郎
○中野(四)委員 日新印刷の久保君なら、大蔵省におつたことは知らなかつたが、私のじき近所の会社ですからわかるでしよう。後日あまり一人で質問を続けることは、他の委員に御迷惑と思いまするから、率直に申し上げまするが、青木さんの証言によつて、大蔵省の関与しておつたことだけは認めますかどうか、この点を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/84
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085・石田正
○石田政府委員 青木先生のお話の通りであるとするならば、接收前において、また接收するまでの過程において、大蔵省の者が関与しておつたということに相なると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/85
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086・中野四郎
○中野(四)委員 従つて、関与しておつたとあるならば、書類あるいはそれぞれのものを調査すれば、当然今日日本銀行の地下室にあるダイヤモンドの入手先というものは、明確になるわけでありまするから、まずこの点を明確にしていただきたいことが一点。それからもう一つは、先日石田理財局長に私の方から資料を要求いたしましたダイヤモンドの種類であります。そして品位であります。そして時価およそどのくらいあるかということを明確にしていただきたい。なるほどあなたの再再の御意見を聞きまして、今ただちにやることは難儀だというお話はわかります。あるいはこれを外部に出せば非常になくなつたり、あるいはとりかえられるおそれがあるというようなことも納得できます。しかしながら、あれを一年も二年もかかつてぼつぼつやつておることは許されないはずであります。すなわち現在地下室にあるダイヤモンド十六万一千カラツトというものは、工業用であるのか装飾用であるのか、同じ装飾用のダイヤモンドにいたしましても、一カラツトこれが四万円するものか、一万円するものか明確になつていない。これは当然接收解除後日なお浅しといえども、これに対して着手しておらぬということは、これが解除を受けた大蔵当局の怠慢と言わざるを得ないのであります。たといいかに金がかかつても、あの中身については徹頭徹尾糾明をして、明らかなる記録の上に立つて、それぞれ国民に向つて報告の義務を課することはけつこうであります。現在のこの法案の提出のやり方からすれば、国民にのみその責任を課しておつて、政府はややもすれば熱意を欠いておるという傾向が強いのであります。だから私は、いかに金がかかつても、すみやかに專門家を派して、そして日銀の地下室の中で鑑定させたらいいじやないですか。もどりにすつ裸にして検査したつていいじやないですか。現に久米という係の人もおいでになつておるようでありまするが、これと同格の人は、日本に多数おります。こういう人を派して、日銀の地下室に現在あるダイヤモンドの品位あるいは品質あるいはこれの時価、こういうものに対して明確な資料を要求しておきたいと思うのであります。私の質問は大体この程度にいたしまして、他の方に譲りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/86
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087・佐久間徹
○佐久間委員長代理 以上をもちまして参考人に対しての御意見の聴取を終ります。参考人には長時間にわたり、忌憚のない御意見を開陳せられ、本案審査の上に多大の参考となりましたことを、厚く御礼を申し上げます。
次会は明十八日午前十時より開会することといたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。
午後三時二十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X09219520617/87
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