1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年五月三十日(金曜日)
午前十一時三十七分開議
出席委員
委員長 金光 義邦君
理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君
理事 吉田吉太郎君 理事 門司 亮君
大泉 寛三君 門脇勝太郎君
川本 末治君 橘 直治君
田渕 光一君 前尾繁三郎君
鈴木 幹雄君 立花 敏男君
大石ヨシエ君
出席国務大臣
法 務 総 裁 木村篤太郎君
出席政府委員
国家地方警察本
部長官 齋藤 昇君
国家地方警察本
部次長 谷口 寛君
国家地方警察本
部警視長
(総務部長) 柴田 達夫君
国家地方警察本
部警視長
(警備部長) 柏村 信雄君
法務政務次官 龍野喜一郎君
委員外の出席者
国家地方警察本
部警視正
(警邏交通課
長) 野田 章君
専 門 員 有松 昇君
専 門 員 長橋 茂男君
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五月二十三日
主要都道府県建築部必置に関する陳情書外一件
(第二〇〇四号)
同月二十九日
地方議会の権能縮小等反対に関する陳情書
(第二〇二八
号)
同(第二〇二九
号)
地方自治確立に関する陳情書
(第二〇三〇号)
地方財政制度の確立に関する陳情書
(第二〇三一号)
地方税法改正に関する陳情書
(第二〇三二号)
特別市制実施反対に関する陳情書
(第二〇三三号)
特別区制度改革に関する陳情書
(第二〇三四号)
同(第
二〇三五号)
警察法の一部改正反対に関する陳情書
(第二〇三六号)
同(第二〇三七
号)
医業に対する特別所得税撤廃に関する陳情書
(第二〇四五号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
警察法の一部を改正する法律案(内閣提出第二一九号)
集団示威運動等の秩序保持に関する法律案(内閣提出第二三六号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/0
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001・金光義邦
○金光委員長 これより会議を開きます。
警察法の一部を改正する法律案、内閣提出第二一九号を議題として質疑を行います。質疑を許します。門司亮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/1
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002・門司亮
○門司委員 私の一応聞いておきたいと思いますことは、これは木村さんがおいでになつてから聞いた方が私はいいと思うのですが、警察法の改正法案を出された理由は、責任の所在を明確にする、こういうことが大体主たる目的だというように、われわれは解釈しておりますが、治安の責任の所在というものが内閣にあることには間違いないのであります。ただ制度の上だけでそうなつていないから、これを制度上責任の所在が明確になるようにする、こういう理由のように私ども今日まで大体聞いておりますが、そうだといたしますと、一体日本の今行つております警察法自体を考え直さなければならぬ点が、実は出て来るわけであります。そう申し上げますのは、たとえば地方の警察、いわゆる自治警察に対しては、やはり独自の立場からこれをとつておる。しかも警察法をこしらえましたときの大体の意向というものは、できればほとんど全部の警察を自治警察にすることが、正しいのであるということであつた。しかし財政上の問題でこれを全部自治警察にするわけには行かない。従つて人口の密度で大体これをつけたわけであります。そう考えて参りますと、今度の法案で改正される部分は、主として国家に一つのつながりを持つということになつて来る。そういたしますと、これは日本の国家警察、いわゆる警察国家であつたものをなくすることのために、自治警察にしようということででき上つておる。同時にこれの最も大きなねらいは、地方の治安維持の上において考えられる一つの大きな問題は、権力による治安の確保であつてはいけない。少くともやはり住民みずからの責任においての治安の確保というものが、正しいのであるというような考え方で、今日の警察法が制定されておると思う。ところがこうなつて参りますと、責任の所在が明確になるということだけで、警察の権力によつて治安を確保しようというような形が出て来ると思う。この権力による形をつくると同時に、この法案におきます一つの大きな弊害は、内閣総理大臣がこういうふうに自分できめることができるということになつて参りますと、やはり政党政治を行つております以上は、当然これに何らかの圧力が加わり、何らかの考え方が持たれることは私は当然だと思う。あくまでも厳正であり公平であるべき警察制度の現行を、一つの行政府の中に従属するような形で、しかも内閣のかわるたびに国警の本部長がかわる、あるいは警視総監がかわるということになつて参りますと、昔の警察国家であつたときの制度と同じような形ができて来ると思う。ただ単に責任の所在が明確でないから、この責任の所在を明確にするというだけの理由で、そういう逆コースをとるようなことはどうかと考えるのでありますが、当局は、いかに政府がかわつても、そういう心配は全然ないというようなお考えであるかどうか。それから、もしそういうお考えがないとするならば、一体この法律の中のどこにそういうことが規定されているかお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/2
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003・谷口寛
○谷口政府委員 ただいまの門司委員の御質問に対しまして、簡単に私からお答え申し上げます。今回警察法の一部改正を提案いたしましたのは、現行の警察法の建前を根本的にかえるのじやございません。現行の警察法の建前は一応これを尊重いたしまして、現在の制度の上においては、政府の治安の責任がやや明瞭を欠いておりますので、この点を明らかにするということにとどまつておるのであります。従いまして御質問にありますように、今回の改正を機といたしまして国家警察が実現する、あるいは政党政治の弊が警察に浸潤して来るというおそれはないものと、考えておる次第であります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/3
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004・金光義邦
○金光委員長 ただいま門司委員の御質疑中でございますが、木村法務総裁が見えましたので、警察法の一部を改正する法律案に対する質疑は後ほど続けていただくことにいたしまして、去る十三日本委員会に付託されました集団示威運動等の秩序保持に関する法律案、内閣提出第二三六号を議題といたします。まず政府より提案理由の説明を聴取いたします。木村法務総裁。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/4
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005・木村篤太郎
○木村国務大臣 集団示威運動等の秩序保持に関する法律案の提案理由について御説明申し上げます。
終戦後、集会、多衆運動等は、その正当な範囲を逸脱して犯罪を構成するに至つたときに、初めて刑法その他の法令によつて取締りを受けるほかは、何らこれに対する規制の方法がなかつたのでありますが、その後国内各地には多衆による運動が頻発し、その中には刑罰法令に触れ、国民一般の迷惑を来すような無秩序、無統制なものも少くなかつたのであります。その結果、当初は占領軍の命令により必要な規制がなされたのでありますが、集団示威運動、集団行進、集会に関する国内法制定の必要が痛感されるに至り、大阪市を初め各地に、府県または市町村の条例として立法化せられ、今日に至つておるのであります。
しかしながら、これらの条例は、その内容において区々であるばかりでなく、条例の制定のない地方も少からずあるのであります。
かくて基本的人権たる集会、表現の自由が地方によつて異なる取扱いを受けるという不合理な状態に置かれているのでありますので、これをこの際法律化し、全国的に同一内容のものとするとともに、必要最小限度の規制をもつてこれら集団示威運動等が行われることを確保する必要があるのであります。
申すまでもなく、集会、表現の自由は憲法によつて保障された基本的人権でありますから、あくまでこれを尊重せねばなりませんが、公共の福祉のためには必要最小限度の制約に服さなければならぬ場合もあるのであります。従いまして、その性質上当然一般公衆に対して影響を及ぼすべき集団示威運動、公共の場所における集団行進、公共の場所における屋外集会につきましても、公共の秩序、公共の福祉のため、ある程度の制限が課せられることはやむを得ないのであります。
すなわち本法案は、これら集団示威運動等が公衆の生命、身体、自由、財産に危險を及ぼさないよう秩序を保持しつつ行われることを確保することを目的として作成したものでありまして、集団示威運動、公共の場所における集団行進、屋外集会に関して届出制をとり、公衆の生命、身体、自由、財産に対する直接の危険が認められる場合にのみ、公安委員会に対して一定の条件を付しまたは一定の事項の変更を命じ得る権限を認めるとともに、警察官吏に対して警告、制止、解散の権限を認め、もつてこの目的を達成せんとするものであります。
以上の理由から、本法案を提出いたしましたわけであります。何とぞ御審議の上、御可決あらんことを切に希望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/5
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006・金光義邦
○金光委員長 この際申し上げますが、本村法務総裁は参議院の法務労働連合委員会に御出席中でございまして、十分間という御了解のもとに当委員会に御出席を願つたようなわけであります。従つて、木村法務総裁は御退席なさつてもいたし方がないわけでございますが、私から木村法務総裁にお願いをいたしておきます。警察関係の重要な法案をただいま本委員会で審議中でございまして、これには委員の方方より、木村法務総裁に質疑をいたしたいという御希望が特に強いのでありますから、木村法務総裁におかれましても、できるだけその点を御考慮にお加えいただきまして、当委員会に御出席くださいますようお願いをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/6
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007・木村篤太郎
○木村国務大臣 かしこまりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/7
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008・金光義邦
○金光委員長 それでは本案に対しまする質疑は後刻にお願いをいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/8
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009・金光義邦
○金光委員長 警察法の一部を改正する法律案を議題として質疑を続行いたします。質疑を許します。門司亮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/9
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010・門司亮
○門司委員 そういうことにはならないという御答弁でありますが、それならそういうことにならないという制約が、一体この条文の中にしてあるかどうかということであります。たとえばここに書いてありまする国家警察本部長官を任命する場合におきましても「国家公安委員会の意見を聴かなければならない。」ということだけでありまして、その意見を尊重しなければならないということは書いてない。聞きさえすればそれでよいのである。従つて内閣総理大臣の一方的意思で、私はこれは十分にやれると思う。そうなつて参りますなら、一体これのどこにさつきのようなことが制約されておるか。警視総監にいたしましてもそうであります。東京都の公安委員会の意見を聞くだけでありまして、内閣総理大臣はやはりこれは一方的に任命ができると思う。この法律の中で、今の御答弁のようなことがどこで制約されておりまするか。その点をはつきり御答弁を伺いたいと思います。
〔委員長退席、河原委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/10
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011・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 私からお答えをいたしますが、この法律案は御承知の通り国家地方警察本部長官及び東京の警視総監の任免の問題と、いま一つは総理大臣が都道府県の公安委員会及び自治体警察の公安委員会に対して、治安維持上特に必要な場合に指示するというのが骨子でございます。その理由は先ほども谷口次長から御説明いたしましたように、政府が治安責任を帯びるというこの建前を、法の上に明示をするというのがその理由でございます。ところでただいまお尋ねのように、かようにいたすならば、これは全警察があるいは政府のかつてな運営に支配されるおそれはないか、という御疑念だと思いますが、今お尋ねの任免権の点について考えてみまするならば、これは公安委員会の意見を聞いて、総理大臣が任命をするという建前に相なつておりまするので、公安委員会が反対の意見であつても、総理大臣が任命できるじやないかというお尋ねはその通りであります。しかしながらわれわれが考えておりまするのは、国家公安委員会といい、あるいは特別区公安委員会といい、しかも長官あるいは警視総監の任免の問題につきまして、政府と全面的に意見を異にするというような場合に、これを押し切つて、そうして任命を法律上はできまするけれども、さような政治的な運営は、私は実際は行われ得ないであろう、かように考えるのであります。公安委員会の意見を聞くということは、これは尊重をするということと同意語であります。また私は実質面におきまして同意を得るとあるのと、運営面においてはほとんど同じであろう、かように考えるのであります。公安委員会が全面的に賛成ができないという場合に、一般の輿論その他にかんがみまして、政治上これを押し切つて任命ができるものであるかないか。もしかような場合にできる。そうしてその場合に輿論も政府を支持するというようなことであるならば、これは私は政府が治安の最終責任をとつておるのでありまするから、輿論もそれを許すというような状態であるならば、これはやむを得ない。むしろ政府が最終責任を持つているということは、これは当然でありまするから、これは許されてしかるべきであろうと思うのであります。通常の場合におきましては、さようなことは実現ができないのである。小さな事件につきまして委員会なりあるいは何なりの機関の意見を聞くということは、形式的に聞けばよろしいというような場合もあり得ると考えますけれども、今回改正をいたそうと考えておりまするような点は、さように法律通りの運営で意見は聞きぱなし、これは尊重しないでもよろしいのだということでは、私は実際の運営ができないものと考えておるのであります。また総理の指示にいたしましても、指示をいたします場合には、国家公安委員会の意見を聞くわけでありまするし、またこの指示を受ける方は、それぞれ民主的に成立いたしておりまする公安委員会でありまするから、正当な理由の通つた、なるほどという指示であるならば、これは当然従うでありましよう。しかし先ほど御心配になられまするような政治的な干渉に使うという意味で、もし万一指示されるようなことがあるといたしましても、公安委員会はそういう政治的に見て不当だと判断する場合には、その指示に従うようなことは、私はあり得ないと考えるのであります。公安委員会が健全に存在しておりまする限りは、この法案の改正によりまして、今日のいわゆる民主警察の確保というものは、私は微動だもしない、かように考えるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/11
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012・門司亮
○門司委員 今の御答弁でありまするが、どこまでも責任の所在というものは任命権者にあるということが考えられる。そういたしますると、この場合の国家地方警察の本部長官並びに警視総監というものは、その責任は内閣総理大臣が負えばよい、私はこういう結論になると思う。先ほどから申し上げておりまするように、任命権者に対して責任を負うということになつて参りますと、問題は国家公安委員あるいは東京都の公安委員の意見を聞くということになつただけであつて、従つて一方的に責任の所在のあるところに、やはり私は忠実にならなければならないと考える。これは私は常道だと思う。そういたしますると、今のそういうことはないであろうというようなことだけで、この警察官という一つの大きな権限、いわゆる人間の生命、財産あるいは国家の秩序等に関しまするきわめて重要な問題が、時の政府の意向でこれが動かされるようなことが——ことにこれで人を動かすのであります。法はどんなにできておりましても、その法を運用する人に最も重要な要素があるということは、これはだれが考えてもあたりまえであります。その法の運用をいたしまする人を任命いたしまする場合に、私はここにそういう欠陥があつたのでは、これは当然今の御答弁のような趣旨には私はなかなか行かないと思う。そのことについてもう一つつつ込んで聞いておきたいと思いますが、それならここに書いてありまするこの責任の所在の問題について、明らかにしておいていただきたいと思いますることは、「特別区の存する区域における自治体警察に要する経費は、都の負担とする。」と書いてあります。都は経費を負担して、そうして任命権は都の公安委員会にないということになつて参りまするならば、ただわずがにその次に「国庫は、予算の範囲内においてその一部を負担することができる。」というようなあいまいな規定がある。都民は自分の生命、財産を委託いたしておりまする総元締である警視総監あるいは警視庁の費用を負担しておる。そうして負担しておるにもかかわらず、それの責任の地位にありまする警視総監は都民に責任を負わない。内閣総理大臣が責任を負えばよい。私はこういう大きな一つの矛盾が出て来ると思う。この矛盾に対しては、この矛盾が絶対にないというお考えであるか。この点はつきりした御答弁を伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/12
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013・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 警視総監は都の公安委員会に対して責任を負わなければならぬのでありまして、公安委員会が警視総監を指揮監督をするのであります。さようでありまするから、任命権者は内閣総理大臣になりましても、公安委員会の総監に対する指揮監督権というものは、総理大臣の指示のない限りは、全面的に公安委員会がその指揮監督権を持つているのであります。従いまして警視総監は、ただ総理大臣に対して責任を持つというのではないのであります。総理大臣は公安委員会の意見を聞いて任免をずる。そうして必要がある場合には、都の公安委員会に対して指示をいたしまするけれども、この警視総監の指揮監督というものは、一切公安委員会が持つているのであります。従いまして費用は、一般原則といたしましては地方費の負担でありますけれども、区の警察におきましては国家的な事務があまりにも多いわけでありますから、この際経費の一部を負担するのが当然であろう、かように考えるのであります。りくつがましくなりますが、以前の警察法におきましても、警視庁あるいは都道府県の警察の費用は、全部府県の費用であつたわけであります。その一部を国庫が負担をしておつたのでありますが、形式は府県費の負担になつておりまして、これは内務大臣がその知事なりあるいは警察の責任者である警察部長を、府県の自治体とは全然無関係に任免をいたしておつたのであります。それに比ベまするならば、今度の制度は、警察の運営の責任はその公安委員会の責任であるわけでありまするから、ただいま御心配になつたような私は理論上の矛盾はないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/13
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014・門司亮
○門司委員 今の斎藤さんの御答弁でありまするけれども、私は全然それは違うと思います。従来の警察が権力警察としてのいわゆる権力政治を行つておりましたときにおいては、私はそういうことは言えるかもしれない。しかし今日のように民主政治を行つて行こうという行き方のときには、従来の権力国家であり、権力政治を行つておりましたときとは非常に違うのでありまして、いわゆる天皇の名のもとに一人の主権者があつて、この主権者の一切の権限のもとに政治が行われておりますときには、あるいはそういうことは言えるかもしれない。しかしながらその一人の権力者がなくなつて、住民が自分のみずからの権利と責任の上において、政治を行つて行こうといたしておりまする今日の状態において、任命権者というものはきわめて重要であります。憲法で書いてありまする通り、国家公務員並びに地方公務員に対しましては、日本国民はこれを罷免することができるということになつておる。そう考えて参りますると、私は任命権者に対しまして、やはり十分の責任を果すことでなければならない。任命は総理大臣がするが、しかしその責任の所在は公安委員会が負うべきであるというりくつは、私にはわからないのであります。公安委員会は、こうなつて参りますると、単なる運営管理の事務を取扱うだけでありまして、もし公安委員会の意見に沿わない国家警察本部長が出て参りましても、これをとりかえるわけには参りますまい。やはり任命権というものは総理大臣にあるということになる。東京の警視総監が東京都民の気に入らない。いわゆる東京都民の中から出ておりまする東京都の公安委員の気に入らないからといつて、これを罷免することはできますまい。これを罷免し得るものは内閣総理大臣である。任命権者である以上は、やはり内閣総理大臣が罷免権を持つておる。そういたしますると、この公安委員会をつくつた趣旨にも非常に反しまするし、同時に私は民主政治に対して逆行だと思う。こういう趣旨から私聞いておきたいと思いますが、それなら警視総監並びに国家警察本部長官というものは、一体罷免権というものはだれが持つておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/14
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015・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 任免でありますから、罷免も総理大臣が持つているのであります。この場合にやはり公安委員会の意見を聞いて罷免をするのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/15
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016・門司亮
○門司委員 私はその点が——意見を聞いてそうして罷免をするということになつて参りましよう。先ほどの斎藤長官の意見でありまするならば、その公安委員の指揮命令で動かなければならないということになつておる。これも総理大臣が一方的に聞くのでありまして、公安委員会が総理大臣に対して罷免を要求するという権利は、この中に認められません。一体公安委員会は気に入らない者を罷免するために、総理大臣に対してこれを請求する権利がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/16
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017・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 法律の上には請求の権利というものを書いておりませんが、しかし実際に警察の運営の責任を公安委員会が負うているわけでありまするから、従つてその警視総監なりあるいは国家地方警察本部長官なりに対して、こういうようなものであつては自分たち責任を果せない、こう思う。従つて罷免をしてもらいたいという意見は、私は事実上できる問題であり、こういう政治問題になるような事柄につきましては、法律上に書いてありませんでも、事実上そのことを総理に申し上げるということで十分私はその責任が果し得るものだ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/17
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018・門司亮
○門司委員 もう一つついでに関連して聞いておきたいと思いますることは、そうなつて参りますると、一体公安委員会は、この自分の職責というものが実は明確にならないわけであります。といいますのは、罷免権を持たざる公安委員会が、その警視総監なりあるいは国家警察の本部長に対して、自分はこういうものであるから、あるいはこれでは治安の責任を背負うわけには行かないというようなことが、一体言えるかどうかということであります。先ほどのお話でありまするならば、この警視総監にいたしましても、あるいは国家警察の本部長にいたしましても、おのおのの公安委員会対して十分責任を負う、そうして公安委員会の指揮あるいは命令で動くということになつておるから、それでいいというようなお話でありますが、しかし最終段階の任命権を持つておりますものが総理大臣でありまする以上は、この最終段階の任命権を持つ総理大臣の権限といいまするか、責任といいまするか、そこまで一体公安委員会が責任を持つべきであるかどうかということであります。私はおそらくこの公安委員会は、責任をそこまで負わなくてもいいと思う。自分のゆだねられておりまする職務権限といいまするか、あるいは運営管理をいたしておりまする範囲においては、あるいは責任を負うかもしれない。しかしながらその最終の治安の責任というものは、私はこの任命権者である総理大臣がやはり負うべきであるということになつて参りますると、公安委員会は私はやはり自分の責任の範囲でこれを考えるだけであつて、従つて今斎藤長官のお考えのような、どこまでも運営管理について責任を負うというような責任感というものは、私は薄くなりはせぬかと思う。その点については、この法律の中にさつき申しましたように、この公安委員会が気に入らない者に対して、これを内閣総理大臣に申請して、そうしてこれをとりかえることができるような制度がありませんので、従つて私の考え方からいたしまするならば、必ずしも今の斎藤長官の言うようなことには、私は公安委員会の態度はならないと思う。この点についてそういう心配がないということを、もう一応ひとつ御答弁を願つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/18
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019・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 なるほどあるいはそういう事柄が法律に書いてありまする方が、親切であるかもしれないと思います。私はそれは当然のことであり、しかもこの公安委員会は、ただ国家公安委員会と、それから特別区の公安委員会だけでありまするから、数の非常に多い公安委員会であれば、ときにはこういうことも法律にはつきり明記しておかないと、公安委員会が自分の責任というものを軽んずるおそれがありはしないかという心配もあると思います。警視庁の公安委員会と国家公安委員会の二つだけであります。少くとも私はこれらの重要な公安委員会は、そういう事柄が法律に書いてありませんでも、当然のことだと考えられると思うのであります。さようでありませんければ、自分の与えられました運営の責任、指揮監督の責任というものも負えないわけであります。従いましてどういたしましても、この公安委員会と総理大臣というものが意見が十分一致をしていなければ、運営はうまく参らないのであります。万一意見が非常に違う、気に入らない者を任命される、あるいはこの者を罷免しなければわれわれの責任軍装い言つても、それが聞かれないというような場合には、私は公安委員会はおそらくその職にとどまらないということになるだろうと考えます。私は公安委員会のあり方というものに全幅の信頼を置いて行くという観点に立つておりまするから、さようであります限りにおきましては、御心配のようなことはないであろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/19
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020・門司亮
○門司委員 今のお言葉の中に、非常に重要な問題が最後にありました。もし公安委員会の意見と総理大臣の意見が違つた場合には、公安委員会は職をやめるであろう、こういう言葉であります。これは非常に大きな問題だと思う。もしこういうことが行われることになつて参りますと、これは全然権力を持つ警察制度になるのでありまして、公安委員会は御存じのように、住民がこれをリコールすることができる権限を持つております。従つてさらに公安委員会の選出の方法は、やはり当該警視庁におきましては、東京都会の議決を経ておるということである。国家公安委員会におきましても、やはり同じように国会の議決を経ておると思う。この議決を経てできておりまする国家公安委員会、あるいは東京都の公安委員会が、内閣総理大臣と意見が違うから辞職するのだということになつて参りますと、議会の権威はどこにあるかということです。私はこういうおのおのの議会が議決いたしましてきめておるところの公安委員、しかもそれに対しましては、住民はこれを罷免することのできる、リコールを行うことのできる権限を持つておるものが、総理大臣と意見が合わなかつたからといつて、やめなければならないという規定になつて参りますと、私はまつたく民主主義の破壊だと思う。私はこういう点は、責任のある本村さんにお聞きした方がいいと思います。斎藤さんに無理にこういうことを責めるということはどうかと思います。しかしせつかくおいでになつておりますので、聞いておきますが、そういう矛盾は一体お感じにならないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/20
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021・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 誤解がありましてはいけないと思いますから、私さらに申し上げておきたいのでありますが、さような場合に、公安委員会がやめなければならないというのではありません。私は公安委員会がやめるであろう、その場合にどちらが無理かということを——世論なり、国会なり、あるいは都議会なり、いずれその後任を、都の公安委員会ならば都知事が都議会に諮らなければならない。国家公安委員会ならば、内閣総理大臣がさらに国会に後任を諮らなければならない。さような場合に、国会あるいは都議会に対して、公安委員会が全面辞職をした、そのあとにこういう者を任命したいという者を出して、円満に通り得るような状態でなければ、公安委員会と内閣総理大臣が全然対立をしてしまうというようなそういう運営は、事実上できないであろうということを、私は申し上げるのであります。さようでありますから、法律の中には今おつしやいますような事柄は書いてありませんけれども、民主主義の運営というものから考えまして、総理大臣と公安委員の間の関係は、一方には国会、一方には都議会、そして一般の国民というものを控えておるわけでありますから、この間に重大なる意見の疎隔を来して、一方がこれを押し切つて行くというような行き方は、政治上なし得られないではないか。ここに民主的な警察法の運営のうまさというものがあるのではないだろうか。法律上きわめて明確であるというよりは、法律上は今おつしやいますような矛盾が一見あるかのようでありますけれども、これはしかし国会や都議会や一般の輿論というもので、民主的な、そしてきわめて常識的な運営が確保されるものであろう、私はそういう見通しを申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/21
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022・門司亮
○門司委員 答弁はきわめて政治的でありまして、どうもはつきりしないのでありますが、政治的に答弁をして行けば、どんな答弁でもできるはずであります。私が心配いたしますのは、先ほどから申し上げておりまするように、国家公安委員にいたしましても、あるいは都の公安委員にいたしましても、それぞれ議会の議決を経てきまつておりまするし、同時に公安委員自身に対しましても、住民のリコールができるようになつておるということであります。こういうふうに、ほんとうに住民みずからのものとして、公安委員会が運営管理を行つておる。いわゆる警察というものが、住民みずからの手においてその職責を果すようにできておるのである。これが先ほどから何度も申し上げておりますように、一方的にきめられて、しかも公安委員会は自分の意見が通らなければやめるであろう、というような不見識なことになつたのでは、私はまた昔の権力政治にもどるにきまつておると思う。内閣総理大臣の言うことよりも、いわゆる国家公安委員なり、あるいは東京都の公安委員会の意見の方が強いような仕組みにしておかなければ、ほんとうの民主警察にはならぬと思う。内閣は御存じのように、その政党の都合で内閣総理大臣はいつでもかわり得ると思う。厳正であつて、公平でなければならない警察権の行使というものが、時の内閣総理大臣の権限で動かすことができる、しかも民主的にできたこの公安委員会は、それに対してはこの法律の建前では何らの発言権がない、そして衝突した場合には、勢い自分はやめなければならないということになつて参りますと、公安委員会の制度は一体何のためにこしらえたのかわからない。私は、この点は斎藤さんが何と言われても承服しがたいのであります。まつたく警察国家に逆もどりをする一つの大きな問題でありまして、この点については、なお大臣がおいでになりましたら、よく責任のある御答弁を願いたいと思います。
もう一つ、この機会に斎藤さんに聞いておきたいと思いますことは、そうなつて参りますと、警視総監に対しまする住民のリコールの問題であります。警視総監に対しましても、住民はこれをリコールといいますか、解職を請求いたします権限を持つております。住民はいわゆる解職の請求権は持つておるはずであります。そういたしますと、住民の解職を請求する権利というものは、一体どうなるかということであります。これが行われてもなおかつ、総理大臣は今の規定でありますならば——解職の請求が行われまして、そしてそれが成立いたして参りますならば、これは当然政治的にも行政的にも、議会あるいは都知事あるいは公安委員会においても、その意を十分尊重して、これをやめさせることができると思います。しかしこうなつて参りますと、総理大臣が任免権を持つておりますから、やめなくてもいいということになると、一体住民の請求権はどうなるのか、その点をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/22
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023・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 警視総監に対する解職の請求権は私はないと思つております。警察法にもございません。自治法にもございません。憲法の趣旨から、官吏については国民は基本的に任免の請求権、そういうものがあるかのように思いますけれども、これを具体的に法律化したものといたしましては、警視総監に対しては、また一般官吏に対しては、リコールの規定はございません。
それからこれは私から御答弁申し上げる御要求ではないのでありますが、今回の改正法の問題は、一体治安の責任は政府が全然負わなくていいのかどうかという一つの政治問題から、私は出発しておると思うのであります。憲法上行政の責任を政府が負うということになつておるにもかかわらず、警察につきましては、少くとも自治体警察については、何ら触れることができない。全部全権をその自治体に委任をしておる。国家地方警察におきましては、公安委員会の任免という点について政府が責任を持つていますけれども、自治体警察につきましてはそれすらも持たない。かような状態で治安の責任が政府にあるといえるか、またしからば全然なくてよろしいのかという、一つは憲法論、一つは政治問題であろう、かように考えるのであります。そこで治安の最終責任は少くとも政府が負えるような形が、今後の独立後の治安の維持という面からぜひ必要であろうということは、これはお認め願えると考えるのであります。その場合に心配になりますのは、門司委員も指摘されますように、これは警察国家になるおそれがないか、あるいは政府が悪い意味においてこの警察を濫用するおそれがないか、という点であると思うのであります。そういう意味からいたしますならば、この公安委員会制度が存在しておりまする限りは、そういつた警察を濫用するということは、たとい任免権の主体性をどちらが持つにいたしましても、御心配になることはないのではなかろうか。公安委員会が健全でないならば、現在の制度におきましても、警察が非常に腐敗し、また一党一派のために用いられるということになるのであります。公安委員会がほんとうに健全であるならば、この改正によりましても、さような点は全然ない。従いまして今の警察法におきましては、公安委員会が本来りあるべき姿において、その面目を確保し得るやいなやという点にかかつて滞ると思うのであります。今回の改正につきましては、公安委員会の制度、組織につきましては、何ら手を触れておるのではありませんし、また公安委員会の健全なあり方というものに対しまして、私は今日より以上によくなつて行く、また行かなければならないという希望を持つておるのであります。これを信用しないということに相なりますならば、制度は現行のままにおきましても、警察の民主的なまた公正な運営というものは確保できない。これはお前のかつてな考え方だとおつしやるかもしれませんが、私は信念としてさように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/23
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024・門司亮
○門司委員 長官の信念としてのお言葉でありますが、治安の責任がいずれにあるかということはこれはさつきのお話のように、憲法にはつきり書いてある通りでありまして、そう書いてありますものは、治安というもののよつて来ます一つの大きな政治上の責任があるわけであります。治安ということはよく言われますが、非常に大きな治安という言葉を使うのはどうかと思いますが、たとえば騒擾というようなことも一つの大きな治安の問題であります。それからもう一つ小さく考えて参りますならば、ごく小さな殺傷であるとか、あるいは他人に少しの傷害を与えるようなものも、やはり治安の中に入るのであります。従つて治安全体を考えて参りますと、これは個々おのおのの立場からいろいろな問題が考えられる。従つてこれらのよつて来る原因がどこにあるかということが、やはりおのおのの具体的の事実について考えられなければならぬ。騒擾罪というような大きな問題は、必ずしもこれが突発的であり、あるいは偶発的であり、さらに個人の考え方から来る個人欲、あるいは一つの怨恨のような形で、行われるものではないと考える。これらの問題は、やはり国の行政のあり方というものが非常に大きな影響力を持つておると思う。その上に騒擾事件というものが必ず起るのであります。騒擾事件という言葉を使うと、いろいろ問題があると思いますが、しかし国の行政あるいは政治のあり方に対する不満と不平が、ややともいたしますと大きな治安の乱れる原因だと思います。従つて私は当然それらの面を十分考えて、治安の問題を研究して行かなければならないのではないかと考える。今日の警察法によりましても、そういう国の施策に基く大きな騒擾罪その他に対しましては、当該地方の知事あるいはその他の要請がありますならば、非常事態の宣言として、そうして内閣総理大臣はその権限を握ることができておるのであります。その場合は、国家警察本部長がこれを指揮するようにできておるのであります。憲法の趣旨に沿つて、ちやんと警察法の中にそういうふうにできておるのであります。それ以下のことにつきましては、それぞれの自治体において治安の確保をすればいいというのが、私は今日できておりまする警察法の中に、はつきり現われて来ておると思う。同じように治安の確保に対する責任の所在と言いますけれども、今日の警察法においても、憲法から来るそういう国の行政、あるいは政治の面から来るところの、治安の乱れる場合におきましては、総理大臣がこれを指揮監督することができるような政府自体の権限がある。ここに私はやはり治安の責任が総理大臣にあるということが言えると思う。この場合は、もしこういうふうになつて参りまして、国家警察の本部長であるとか、あるいは警視総監であるとか——その次の改正を見ますと、「特に必要があると認めるときは、」こう書いてありますが、「特に必要があると認めるときは、」というようなことになつて参りますと、これはやはり地方の自治警にも、総理大臣は指示をすることができるというようになつております。先ほど私が申し上げましたように、治安と申しましても、大きくわけまするならば二つに分類することができる。従つて国家が当然責任を負わなければならない最終段階の責任制というものは、明確になつておりまして、ことさらにこの法律でそれを明確にしなければならないというところに、私はこの法律改正の意図があると思う。さつき申し上げましたように、「特に必要があると認めるとき」という文字を使つておりますが、この特に必要があると認めるときという場合と、今の警察法にありまする国家非常事態の宣言をいたしまする場合との相違は、一体どこに線が引かれておるか、この点をひとつ御説明願つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/24
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025・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 門司委員の治安に関する御見識は、私どもはまつたく同感でございまして、治安はただ警察関係とかあるいはいわゆる治安関係のものの担当する部面以外に、政治的な部面といいますか、非常に大きな部面がありますることは、もちろんであります。さような点から申し上げまするならば、いわゆる治安関係機関の担当いたしまする部分は、私はごく僅少な部分しかないと、かように考えております。しかしながら、それにいたしましてもその治安担当機関の担当をいたしまする治安維持のやり方の善悪によりまして、国家的な治安問題になる場合が相当あり得るのであります。お話のように、非常事態の場合は、総理が全警察を統轄するということになつておるのでありまするが、しかし非常事態に至らせないように、非常事態になる前において、それでは全然責任がないということでよろしいかどうかというのが、この法案の問題であろうと私は考えておるのであります。大動乱になりまして、そうして非常事態の宣言をしなければならないという事態に立ち至らせないために、やはり治安を確保して行く、国家的治安を保つということは、やはりこれも政府の責任だと考えても、間違いはないのじやないのだろうか。また今おつしやいました革命とかあるいは大きな騒擾とかいうような場合でありませんでも、外国の大公使が何らかの理由で暗殺をされる、国家的に非常に重要な公益が侵害をされるというような事柄を防止いたしますということは、これはやはり一面政府が全然責任がないというわけには参らないであろうと、かように考えるのでありまして、従いまして、ここに言う公安維持上必要な事項を、特に必要がある場合に指示をすると申しまするものは、さような意味におきまして、非常事態に立ち至らせないための必要最小限度な指示であります。あるいは国の重大な公益を特に確保しなければならないための措置、そういうような事柄でありまして、普通の強盗、窃盗あるいは行政警察というような事柄につきまして指示をしようという考えは、この法案には入つておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/25
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026・門司亮
○門司委員 警察の持つておりまする行政上の責任であります。これは非常に私は一面から見ればむずかしいと思いますが、今長官がお話になりましたようないわゆる犯罪と目される、今日の警察法あるいは刑法、それから軽犯罪法であるとか、あるいは警察官職務執行法であるとがいうような、これらの日本の法律に触れまする行為を行う者に対しましての取締りは、当然私は現在の警察でやれると思う。これは当然のあり方で、政府から指示があろうとなかろうと、法律に触れるものを取締るということは警察の職務権限である。当然私は行うべきであると思う。この場合に、特に必要があると認められると書いておりまするものの中には、私は警察が当然行うべきもの——いわゆる外国の大公使に対しまして、あるいは危害を加えたり、あるいは家を焼いたりすれば、国際問題になることはわかりきつております。しかし国際問題になると同時に、それは国内におきまして大きな犯罪であります。従つてこれを検挙しこれを取締るということは、当然の権利であり、さらにこれを未然に防ぐということも、やはり当然今日の警察法の中で、私は十分やり得ると思う。国が何もそういうものを指示しなかつたからといつて、当該警察がこれを傍観しているわけにも私は行かないと思う。少くとも犯罪でありまする以上は、いかなる犯罪にいたしましても、これを十分取締ることは現行法でできるのである。従つて現行法の中には、その範囲を越えたいわゆる大規模の騒擾等については、これは内閣総理大臣が指揮することができるということに定めておる。当然の警察権の行使に対しましては、現行法で十分間に合うと私は思う。十分またやれなければならないと思う。またやるべきだと思う。にもかかわらず、ここに特に必要があると認めるときはと、こう書いてあるのであります。しかもそのあとには国家公安委員会の意見を聞いてと、こういうふうに書いてあります。私はこの国家公安委員会の意見を聞いて、そうして特に必要があると認める場合には、これを都道府県の公安委員会あるいは自治警察を持つております市町村公安委員会に対して、公安維持上必要な事項について指示をすることができるという規定も、これも私は現在の警察法で間に合うのであつて、行き過ぎだと考える。従つてこの特に必要あると認めるときというこの字句に対しての、何か具体的な御説明を願つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/26
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027・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 御意見のように警察は本来のあり方によりまして、その責任を十分果さなければならぬのであり、また果そうと努力をいたしておることは申し上げるまでもないのであります。しかしながら国全体から考えまして、治安の情勢を判断し、こういう事件は起る可能性が非常に多いから、それについてはこういう警備をしてもらいたい、この点を留意して、ここにはこういうようにやつてほしいという国全体からながめた要求というものが、警察の運営上出て参るのであります。今日はこれを事実上の連絡といたしまて、こういうようにわれわれは考えるということを国警の本部から話をいたしましたり、またその他政府の方からも話が事実上あり得るのでありますが、しかしその場合に、治安の、警察の責任は都道府県の公安委員あるいは自治体警察の公安委員が負うておるので、そんなことはよけいなおせつかいだ、そんなことをしなくてもこれでよろしいのだ、こう考えた場合に、国が非常に困るということも起き得ると考えるのであります。またこういう指示というような制度になつておりまするならば、指示をされた事柄でありまするならば、特に何といいますか、その指示が間違つているというような事柄がはつきりしない限りは、その指示に従わなければならぬのが当然でありまするから、この公安委員会といたしましても警察長といたしましても、その指示に従い得るわけでありますけれども、今日の制度では従うか従わないか、そんなことは従つたところで、全責任は公安委員会あるいは警察長が負うわけでありまするから、その場合に必ずしも全国的な観点に立つて、治安情勢がこうこういうわけであるから、この点をこう警備をしてほしいという要望が事実上出されましても、それに従わないでおつてもいい。また自分の判断はそうは判断しないというので、それに従わないというようなこともあり得るのであります。さようなことがありましては、全体の治安の維持からおもしろくありませんし、またむしろ総理大臣の指示という形の方が、警察法を運営する警察長といたしましても、私はやりやすいという点もあると考えているのであります。たとえばメーデーの際の警備の計画をどういうふうにするかという場合にも、特に必要がある場合には、その警備の仕方はこういうようにやつてほしいという指示がなされることは、これは当然のことであろう、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/27
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028・門司亮
○門司委員 今の指示権についてのお話でありまするが、警察相互の間にはちやんと連絡がとれるように警察法がなつております。なるほど地方の自治警察は、国家地方警察の公安委員会その他等の直接指揮命令は受けなくても、警察相互の間においては十分連絡はとり得るような警察法に出ておるし、情報の交換もできるのであります。従つて先ほどからお話のような、一例をメーデーにとられておりまするが、メーデーに対しましてもやはりおのおのの警察というものの中には、全国的にどういう動きがあるかということ、それからどういうふうに——そのメーデーを取締まるにいたしましても、あるいはその他の示威運動を取締まるにいたしましても、十分の連絡もできれば協調もできるはずである。しかもそれが警察法に書かれておりまする、国家の秩序を乱しあるいは住民の身体、生命、財産等に危害を加えようとし、あるいは加えるというような事犯が起ろうという場合には、これを取締ることは当然できるのであつて、そのことのために情報の交換もできまするし、私は何もここに特に必要があるというようなことを認める必要はないと思う。ここにこういうことを認めて参りますると、その次に聞いておきたいと思いますことは、この指示権というものはこの運営管理の上において、一体地方の都道府県並びに市町村の公安委員会を拘束するものであるか、どうかということであります。この点を一応聞いておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/28
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029・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 指示はやはり法律の上では拘束をするものであります。ただこれに従わなかつた場合に、罰則とかあるいは懲戒とか、そういう規定はございませんが、法律の解釈といたしましては、指示があればそれに従うべきであるということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/29
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030・門司亮
○門司委員 そうなつて参りますると、ことさらにさつきから申し上げておりますように、特に必要があるときというようなことが、事例なり何かの規定がなければ、内閣総理大臣の一方的の意思で、地方の公安委員会というものが、これに拘束されるということになつて参りますると、これは私はきわめて重要な問題であろうと思う。警察行政に対しましては、私よりも斎藤さんの方がくろうとでありまするから、よく御存じであろうと思いますが、そのときの情勢あるいは相手の規模等において、その処置は異なるのであります。たとえば全国的に同じような問題が起つておるといたしましても、その地方々々の相手方の規模であるとか、あるいはときの情勢判断であるとかいうことについては、一方においてはこれを禁止し、あるいは一方においてはこれを弾圧することがいいという解釈のできるところもありましようし、むしろそうすることがかえつて目的に浴わざるような結果を生むであろうというようなことも、情勢判断では考えられる。従つて私どもといたしましては、そういうものを判断をして、そしておのおのの自治体において、実態に即した治安の維持が確保されることがきわめて民主的である。また警察行政といたしましても、われわれとしてはそういうことが考えられる。またこの趣旨におきましては、都道府県並びに市町村の公安委員会というものは、その土地の情勢あるいはそのときの状況を十分判断して、そうしてこれに善処して行くことのために、きわめて有効なものだと私は考える。権限が縮小されて、内閣総理大臣が一方的に指示をしたものに従わなければならないということになつて参りますると、無用の摩擦が起つたり、あるいは必要以上の問題を——騒擾が起るかどうかわかりませんが、必要以上の処置をとらなければならないような現象が必ず起つて来て、平穏に済むべきものも、指示があつたからその指示通りにやつたことがかえつていけなかつたのだというような、結果的には悪い結果を生むようなことがありはしないかと考える。おそらく地方の町村の公安委員会あるいは都道府県の公安委員会は、内閣総理大臣から指示された事項について、内閣総理大臣はこういつて来たのだけれども、われわれの方はこうなんだからこういうふうにしようということで、この指示に対して行わないというようなことは、私はなかなかできないと思う。そういたしますと全国一齊に画一的な取締りが行われるということになつて参りますると、先ほどから申し上げておりまするように、実態に沿わざる無理な取締りが行われて来て、無用の摩擦を起すような危険性があると思いますが、その点に対してはくろうととしての斎藤さんはどうお考えになりますか、一応聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/30
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031・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 おつしやいますように、非常にまずい指示をすれば、かえつてまずくなるということは考え得られるのでありますが、しかし全体をながめ、最終責任の判断から指示をするということに相なりまするならば、その指示をしたことについて、やはり責任を負わなければならないわけでありますから、そう軽々な指示はあり得ないと私は考えるのであります。もちろん判断違いということは全然神様でありませんから、あり得ないとは考えられませんけれども、しかしそれにいたしましてもやはり現地の状況を聞き、それから全国の状態を見、その上でなす判断でありますから、独立後の日本といたしましては、やはり必要最小限度に統一指示のできるところがなければ、私は治安の確保が全きを得がたいのではないかと考えておるのであります。当該の地域だけの判断でいたしましては、かえつて事を誤るという場合が、相当今後考え得られると思うのであります。御承知のように独立以前におきましては、治安の維持は連合国が担当いたしていたのでありますから、従つてそういつた全体的見地に立つ指示は、日本の占領政策としてなされておつたのでありますが、今後そういつた全体的な目で見た国の治安を確保するというところが、現在なくなつてしまつたわけでありますから、私は治安の面におきまして、いわゆる警察の担当する範囲におきまして、各自治体がそれぞれ独立国のような形であつては、これはりくつの上からいつてもちよつとおかしい。この点は私は御承認いただけるのではないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/31
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032・大泉寛三
○大泉委員 警察制度の改正も、政府の意のあるところはよくわかりますが、もう少し明確な説明と答弁を私は希望するのであります。国家も地方自治体も、結局制度行政の区分は違つておつても、目的とする治安はやはり一体である。東京都民もあるいは地方住民もやはり一つなんだ。ですから国民の代表であるいわゆる国会が総理大臣を選んで、そうして総理大臣が政治上あるいは行政上、全般の責任を負うということは当然であるのだから、総理大臣が指示あるいは命令するということは、一面においては国民が指示あるいは命令するのと同じであると、私どもは解釈しておる。これは敗戦直後の占領下において警察のいわゆる分断政策がとられた。これに対する情勢の変化からそうなつて来たのだと私は思うのであります。そこで政府において、警察行政はどうしても総理大臣が責任を持つてやらねばならぬという、かたい決心を持つておられるかどうか。いわゆる地方自治体があるから、ある程度は地方自治体が住民の意思でやるのだろうというようなあいまいな考えでは、まつたくわれわれは困るのであります。この点明確に聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/32
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033・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 ただいまの御意見の通り、また私が申しました通り、占領中は日本の治安の責任は連合軍総司令部が持つていたのであります。従つてその期間中における治安の維持の方法は、現在の機構において私はまかない得たと思うのであります。しかしながら日本は独立いたしまして、そうして警察の運営について、全面的に自治体に白紙委任をしておるという状況では、私は国の安全な治安の維持は、建前の上からいつても、これは非常におかしな制度といわざるを得ないと思うのであります。今日の状況から考えましても、ただ警察で扱います仕事が小さなどろぼう、窃盗、詐欺というようなものだけでありますならばまだしもでありますけれども、同じ殺人にいたしましそも、政治的な意図で行われる殺人、暗殺ということが相当考え得られると思うのであります。日本におきましては過去に非常に例が多かつたのであります。また現に現在の情勢から考えましても、全国的な治安の撹乱がないものというようなことで、安易には考えておられない現在の状態だと私は考えるのであります。従いましてさような意味合いから、何も総理大臣とは申しませんけれども、政府が統一的に最高の最終の責任を果せる部局を設け、その措置が講ぜられるということでありませんければ、私はあるいは言い過ぎかもしれませんけれども、誇張的かもしれませんけれども、独立した統一国のあり方としては考えられない。政府もその点を強く考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/33
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034・大泉寛三
○大泉委員 政府が治安に対する万全の措置と責任を負うという建前であつたならば、私どもはもう少し積極的に飛躍して、東京都の何は国警に編入すべきではなかつたかと思うのです。東京都はやはり日本の首都として特別な地位にある。しかも地方の自治体と比べて、住民みずから警察を維持して行くというような、なごやかな気分のものとは違う。あまりにも規模が大き過ぎて、まるで一つの大きな国家のような形態を整えている。こういう自治体と、地方の自治体を一緒に考えるというところにまだ無理がある。むしろこれは国警に編入すべきじやなかつたか、こういうふうに思う。これが不満足であるかどうかということを聞くのはおかしいけれども、私どもはそう考えておる。国家公安委員もあるいは東京都公安委員も、住民なり国民なりがその議会において一定の任期をもつて任命されたのだから、社会情勢なりあるいは治安情勢が変化したからといつて、あるいは国民の意思が政党を通じ選挙を通じて変化して来たからといつて、その人の任期には変化がない。そういうところに矛盾が生じて来るのじやないか。国民の意思が変化したときに、公安委員が議会の同意を得て任命されたものであつたならば、国民の意思が変化して来たのだから、おれも同調しなければならない、新しい政府の責任において任命してもらいたい、というような民主的な考え方になればいいけれども、それがならずに、やはり任期は任期でございますといつた調子のところに、どうも政府の意思と公安委員会の意思と、合致しない点があるのじやないかと私は思う。そこで国民なり住民なりというものは、何といつても、いつも情勢変化に対しては立ち遅れる。ところがそういう姿勢の立場にある住民と、また一方警察のごやつかいになるような、あるいは警察と対立するような人やあるいは団体というものは、いつも行動が積極的である。だから警察としてはなかなかやつかいな存在である。よほど見通しをつけて行かなければならない。こういうところに警察行政の生きた一つの力というものが必要になつて来る。ここにやはり警察がある程度見通し、いわゆる情勢の推移に対しては、一歩これより先んずる一つの力がなければならないと私は思うのであります。これに対するいわゆるしつかりした考え方さえ持つておれば私はできると思う。今度の改正案に対しては、私どもなまぬるいような感じがいたしますが、もう少しやはり警察はかくのごとくありたいという所信を承りたいと思うのであります。これで案が出ているのだから、案以外にはどうも説明もあるいは答弁もできませんといえば、それまでですけれども、斎藤さんの実務に当つての所信を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/34
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035・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 警察組織の問題は、前々からも申しておりますように非常にむずかしい問題でありまして、ただ警察の能率という点だけから考えまするならば、警察はできるだけ一本であることが望ましいことは、申し上げるまでもないのであります。ただ一面民主主義的な運営の確保、警察国家にならないための制度上の防止の方法ということも、また重要な事柄でありますので、治安の維持の面とそれらと両々あわせ考えながら、私はそのときの情勢に即した制度でなければならないのではなかろうかと、かように考えるのでありまして、制度は常に時とともに、やはりある程度の変化は加えられなければならないものだと考えているのであります。
東京警視庁の問題は、これは他の外国の例を見ましても、自治体警察制度をとつておるところにおきましても、首都の警察は国の警察、あるいはその色彩の非常に強い制度がとられておるのであります。今回の改正の際におきましても、そういつた議論も内外に相当あつたのでありますが、政府がこの案に決定をいたしましたのは、警視庁の運営が政府の意図するところと、それから都の公安委員会の意図するところと一致しながら、治安の確保ができるならばそれでけつこうではなかろうか。形の上において国家地方警察にいたしませんでも、この法案にありまするように、警視総監の任免について政府も責任の一端をとる、警察の治安維持上必要な事柄については指示もする、また国が考えてこの方面に費用をかけてほしいという場合に、その費用の一部も負担をするということであるならば、形は自治体警察でありましても、純粋な意味における政府の考え方と一体的な運営が可能であろう、かように考えましたので、この制度を採用することにいたしたのであります。大泉委員のおつしやいますように、警察能率という面から考えますならば、できるだけ警察は一体的に強いのが望ましいのでありますが、今回のこの改正をもちまして、まずまず国の治安の確保がやり得るのではなかろうか、かように考えてこの法案に決定をいたしたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/35
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036・河原伊三郎
○河原委員長代理 午後二時から再開いたすことといたしまして、ひとまず休憩いたします。
午後一時五分休憩
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午後二時五十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/36
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037・金光義邦
○金光委員長 再開いたします。
集団示威運動等の秩序保持に関する法律案、内閣提出第二三六号を議題として質疑に入ります。質疑を許します。鈴木幹雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/37
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038・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 簡単に二、三の点をお伺いしたいと思います。一つは字句の問題でありますが、集団行進、集団示威運動、こう書きわけておりますが、この違い並びに意義を明瞭に示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/38
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039・谷口寛
○谷口政府委員 お答え申し上げます。御質問は集団示威運動、集団行進、かように今回の法律に書きわけてあるが、その意味はいかなるものであるか、かような趣旨の御質問であつたと思うのであります。最初に集団示威運動と申しまするのは、多衆が一定の目的を持つて行う共同の行為でありまして、公衆に対して気勢を張るものを意味するのでございます。これに対しまして集団行進とは、多衆が一定の目的を持つて行う共同の行為である点につきましては、集団示威運動と相違はございません。これは公衆に対して特に気勢を張るというものではございませんので、単に一団となつて行進するという態様を意味しておるのでございます。この点が集団示威運動と集団行進との相違であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/39
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040・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 そうしますと、集団行進というものは、公衆に対して何ら自分の威力を示すとか気勢を張るという行為ではない。一定の目的を持つて単に場所的に移動するにすぎない。こういうことになりますと、これは取締りといいますか、これに対して制限を加える対象にはならないのじやないかということが考えられるのでありますが、特にこれを取上げた理由をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/40
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041・谷口寛
○谷口政府委員 集団行進は、ただいま申し述べましたように、多衆が一定の目的を持つて行う共同の行為で、一団となつて行進する態様のものをいうわけでありますから、ただいま御質問のありましたように、原則的に行進を平穏に行つておりまする場合において、ただちに無条件にこれを法の取締りの対象にするということは、必ずしも適切ではないと考えるのであります。しかしながらその集団行進というものは、場所的な条件という問題と、数的な条件という問題がございまするので、いかなる場合においても、集団行進は単に一団となつて行動するにすぎないから、法の規制の対象には置かないで済むというわけのものでもないことは、現実の集団行進の実情から見まして、御了承いただけることかと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/41
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042・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 たとえば会社の従業員がリクリエーシヨンとして、日曜日に何といいますか郊外にピクニックをする。これは明らかに集団行進になるだろうと思うのであります。そういうのも七十二時間前に許可を受けなければならぬかという問題に、すぐ該当するわけであります。それで今谷口さんの言われましたように、場所の問題と人数の問題で制限を加えなければならないという場合があるというならば、そういう実例をお示し願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/42
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043・谷口寛
○谷口政府委員 今回提案いたしました法律におきましては、御質問の集団行進を規律いたしまする場合は、一応原則といたしまして道路、公園その他の公共の場所における集団行進につきまして、規制を加えるという建前になつておりますが、ただいまお述べになりましたような意味合いにおいて、この法の対象にして規律することを常識上不適当と考えるようなもの、ないしは治安上の目的から見まして、その必要がないと思うようなものにつきましては、これは法の二条におきまして、あらかじめ除外をいたしておるのであります。それは二条の一号から六号までございますが、ただいま御質疑になりましたような、会社等におきましてピクニツクをするというような式のものは、四号によつてもつぱら娯楽のみの目的で行われるというようなところに、入るかと考えておるのであります。その他それに類似するような場合におきまして、この一号から五号までにぴつたり当てはまらない、しかも社会通念から見まして、この法規で取締りをすることが穏当を欠くというようなものにつきましては、最後の六号におきまして「前各号に掲げるものの外、公安委員会が届出を要しないとして指定するもの」という包括的条項を設けまして、各地方々々の公安委員会が、実情に即する指定をあらかじめとり得るように、考慮いたしておるような次第であります。従いまして逆に申せば、これら各号に該当しないもの、あるいは政治的な意図をもつてやる行進、あるいは政治的な意味を持ちませんでも、特に相当多数になりまして、この各号の条件に当てはまらないというような場合におきましては、一応本法の対象といたしまして、公安委員会に届出をしていただくようなことに相なると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/43
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044・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 現在全国的に見ますと、あるいは市の条例なり、もしくは府県の条例なりで、この点の規制をいたしているようでありますが、その府県の条例並びに市町村の条例でどれほど出ているか、お示しを願いたいと思います。今なければ後ほど資料をいただいてもけつこうでありますが、ちよつとお知らせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/44
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045・谷口寛
○谷口政府委員 お答え申し上げます。現在各都道府県の条例ないしは市町村の条例によつて、集団示威運動等の取締法規を設けておりまするものは、全国で百三十であります。うち都道府県の条例によつて設けておりまするものが二十二、市の条例で設けておりまするものが七十六、町の条例で規定をいたしておりまするものが二十六、村の条例で規律をいたしておるものが六、合せまして百三十、かような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/45
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046・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 百三十の都道府県市町村に条例ができておるそうでありますが、現在までに都道府県なり市町村なりで、条例が提案されまして成立しなかつたというような該当のところがあつたら、お知らせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/46
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047・谷口寛
○谷口政府委員 現在まで都道府県なりあるいは市町村の議会に条例案を提出せられて、しかもなお成立しなかつた例があるかどうか、という御質問のように聞いたのでございますが、そういう意味合いでございますれば、現在までのところ、提案をいたしまして成立をしなかつたという事例は聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/47
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048・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 そうしますと、約半数程度の府県なり市町村、町村に至りましては大部分でありますが、現在条例を持つておらない。これは条例なくして治安保持上において何ら支障がないと考えたゆえに、この条例が提案をされなかつたのであるか、また府県の議会なりあるいは市町村の議会なりがこの必要を感じなかつたのか、こういう点についてのお考えを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/48
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049・谷口寛
○谷口政府委員 現在公安条例の制定状況が、おおむね全国の都道府県あるいは市町村の半数程度である、従つて半分くらいはできておるけれども半分くらいはできていない、このできていないところはどういう意味合いでできていないのか、という御趣旨の御質問であると考えるのであります。できなかつた府県市町村に一々照会をいたしまして、制定をされなかつた理由を筋を立てて調査をいたしたことがございませんので、あるいは見当が違つておるかとも存じまが、われわれの方としては、おおむね次のような理由によつて、制定がされていないと考えておるのであります。すなわちそれは、まず市町村について申し上げますれば、その市町村を含む府県が先に例条をつくつた、従つて府県条例をもつてその市町村がおおわれるという意味から、必要がないものとして制定をしなかつた市町村が、相当多かろうと思つております。それから当該の市町村の治安の実情から見まして、そういう公安条例をもつて取締る対象が比較的少いというような事情から、今日まで制定せられなかつたものも若干はあろうかと考えております。しかしながらそれらのものを全部含めまして一番大きな原因は、無理につくらなくても、いよいよの場合には取締り得る根拠があると当時考えておつたことが、制定をされなかつた一番大きな理由と私は理解いたしておるのであります。すなわち、当時は御承知の通り占領下でありまして、占領法規によつて治安上の秩序が保持せられておつたわけでございまして、たとい公安条例はございませんでも、いよいよの場合は御承知のウイロビー覚書であるとか、その他進駐軍の命令等によりまして、おおむね公安条例のある場合と同様な取締りがなし得るというような事態が、全国的にございましたので、その結果特に独自の制定を急ぐ必要のないという地域においても、その最後の法規をうしろだてにいたしまして、安心ができるというような点から、積極的につくられなかつたもの、かように理解をいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/49
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050・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 今の御説明は私はあまり納得ができないのであります。頼むべからざるものを頼み、相手にすべからざるものを相手にして、もし必要ならば当然なさなければならない立法を怠つた、こういうことになるのではないかと私は思います。占領の終りましたこの機会に、こういう国家の法律をもつて制定しようという御趣旨はわかるのでありますけれども、全国的に見まして、今まで二十二の府県、約百有余の市町村、これはおそらく治安上相当重要なりとし、その対象ありとしたところだと思いますが、それぞれ条例を出しておるというような場合において、しかも今日国家の法律をもつてしなければならないということになりますと、これは積極的な理由が多分になければならぬと思います。その前にお伺いいたしたいのは、終戦後におきまして言論、結社、集会の自由が認められますと同時に、集団示威運動を取締るというか、規制をするという必要が一面においてあるということは、これは当然だろうと思いますが、これを自治体の条例にゆだねて、国家として考えなかつたという理由はどこにあつたかということを、まずお聞きをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/50
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051・谷口寛
○谷口政府委員 終戦後の治安事情から見て、集団示威運動、集団行進、あるいは屋外の集会について取締りをすべき必要性はあつたと思うが、これが特に国の法律をもつて制定せられずして、地方の条例で制定せられた理由は、いかなる理由によるかという御質疑であつたと思いますが、終戦直後においては日本のすべての従来の制度が一応かわり、政治の面、経済の面、あらゆる面について新しい制度が打立てられたわけでありまして、社会運動あるいは労働運動というような方面においても、非常な民主的な考え方に基く積極的な勧奨が行われ、そういう方面の動きが非常に活発になつたのであります。その進むところは遂に社会治安の上から見まして、限度を越えるというような実情も出て参りまして、いろいろと取締りをしなければならぬというような考え方が出て参つたわけであります。その場合一応各地方々々の事情に即応してこれを取締つて行くというのが、当時の実情としては適切であるという判断がなされました結果、府県あるいは市町村の条例によつて、規律をいたして行くというようなことに相なつたのであります。当時としても一応全国一本の法律でもつてやつて行くという議論が行われたこともあるようでありますが、各地方々々の実情からまず踏み上げて行くことが妥当であると考えられました結果、さような結論になつたと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/51
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052・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 私はあのときにすでに法律でもつてやるベきだつたと思います。それが地方事情の異なるに従つて、取締りの段階をつけるといいますか、規制の方法、程度を考える、こういう趣旨で条例にまかされたというわけであろうと思います。現在約半数の府県が条例を持つておりますが、一応治安的に見ますると、むしろ問題が起されたところは、条例があるところじやないかと私は思う。それを今回こういう法律案を提出するというのにつきましては、特別の理由があるかということをまずお尋ねをいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/52
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053・谷口寛
○谷口政府委員 大体半分くらいできておるにすぎなかつた過去の実情であり、しかも取締りあるいは事態の起つた事例等も、その半分近くは条例を制定した地域に多かつた。それで大体やつて来た。それを今回残りの半分をもおおう一本の法律でこれを制定するというのには、何か新しい理由があるのじやないかという御趣旨の御質問と考えるのでありますが、この点は先ほども触れましたように、確かに公安条例を制定いたしておりまする府県市町村は半分程度でありますけれども、残りのところがなかつたということは、集団示威運動、行進あるいは屋外集会におきまして、不法越規の行動があり、治安上考慮をしなくてはならぬという事態がありまする場合において、その五十のところは放任してあつた、こういうことではなかつたのであります。その当時といたしまして、先ほども申し述べた通り、進駐軍の命令あるいは覚書によるもの、あるいはメモランダムによるもの等によつて取締りができ得たのでありまして、現に公安条例が制定せられない地域において、ウイロビー覚書等によつて取締りをいたしました過去の実例も、相当多数あるのであります。これが昭和二十七年四月二十八日午後十時半をもちまして、一応独立をいたしました結果は、進駐軍の命令によりまする法規関係は一応その基礎を失つて参ります。さようにいたしますると、名実ともに条例のできていない五十の部分につきましては、取締りができ得ない、かような実情に相なつておりますので、この際その全部をカバーする意味合いにおいて、今回の法規を制定いたすのでございまして、逆に申せば治安上特に講和後特殊なものをねらつてこの法規を制定する、さような意味合いのものは全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/53
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054・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 一応この問題を打切りまして、二、三の技術的な点をお伺いいたします。集会、集団行進、集団示威運動をするときには、公安委員会の許可を受けなければならない、こういうことになつておるわけでありますが、ことえば公安委員会が二以上にまたがる地域にわたつてするというような場合においては、二つの公安委員会ないしは三つ、複数以上の公安委員会のそれぞれの許可を受けなければならないものであるか。この点はどういうようにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/54
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055・谷口寛
○谷口政府委員 この点はお断りするまでもございませんが、今度の法案におきましては集団示威運動、行進、屋外集会等の公安委員会に対する認可を規定した条項はございません。一応届出でよろしい、かようになつております。これは届出という前提で御質問いただいたことと考えましてお答え申し上げますが、二以上の公安委員会の管轄区域にわたるような届出につきましては、それはその部数だけ届出書をつくつていただくことになるのであります。但し、現実にお届を願うところは、当該の集団示威運動等を実施しようとする場所を管轄いたしておりまする警察署に、お届をいただけばよろしい。それが二つにまたがれば、そのどちらへお届いただいてもよろしい。数だけは該当する分をつくつていただきまするが、お届は、そのどちらへお届いただいてもけつこう、かような建前に相なつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/55
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056・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 最後に一つお伺いいたしますが、政治集会との関係であります。これは非常にむずかしい問題であろうと思いますが、政治集会は一切届出をこれからしなければならない、ただ公職選挙法の選挙運動中における政治集会につきましては、例外規定といたしまして該当をしない、こういうことになるんであろうと思います。この点につきましては、演説会、集会、すべての問題がこれに含まつて来るであろうと思いますが、このことにつきましては、今後一律的にこういう問題を届け出るということにつきまして、当局としましては不穏当であるとか、あるいは行き過ぎであるとかいうようなお考えはお持ちにならぬでありましようか。その点をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/56
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057・谷口寛
○谷口政府委員 先ほど来申し上げまするように、今回の法規におきまして、集団示威運動、集団行進あるいは屋外集会につきましては、一応公安委員会に届をしていただくことになつておりまするが、その場合におきまして、この秩序保持の法律の目的、精神にかんがみまして、届出をさせることが穏当を欠くというものにつきましては、あらかじめこれを除外いたしておりまするし、しかもその除外のうちの最後に、「前各号に掲げるものの外、公安委員会が届出を要しないとして指定するもの」というところに、非常に広い包括的な認定を公安委員会にやつております。この場合に、この公安委員会の指定の方針といたしましては、でき得る限り実情に即する広い指定をせしむるような方向で考えておりまするので、これらのものを除外いたしまする限り、今御指摘になりましたような意味の非常識な問題は、万々起り得ないかと考えておるのであります。但し御質問にありましたように、公職選挙法による選挙運動として行われるもの、かように書き上げましても、公職選挙法による選挙運動として行われるものであるかどうか、という認定問題につきましては、いろいろデリケートな問題が生ずると考えますが、さような場合の認定につきましては、あくまで社会通念に基いた良識のある認定をいたしまするように、一同に通達を出していただきまして、十分にその点非常識のないように運用をいたして行きたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/57
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058・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 最後に第二条の第六号によりまして、公安委員会に届出を要しないとして指定するものに該当をいたします事項が、現在予定されておるかどうか。もし予定をされておるならば、この際お示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/58
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059・谷口寛
○谷口政府委員 いろいろとあろうと考えまするが、現在予定をいたしておりまするものを例示的に申し上げまするならば、消防団がその職務として行う行進、集会というようなものは除外してもいいのじやないか。またいろいろな宗教的な団体の関係者、キリスト教徒あるいは日蓮宗の信徒というような連中が街頭で伝道したり、あるいはたいこを鳴らして行く行進というようなものも、公安委員会が除外指定をしてさしつかえないものじやないか。また神社、仏閣の例祭におきます神主あるいは氏子、また僧侶、信者等が集団で行進するというようなことも支障がないのではないか。それから学校当局が主宰して構内で行われる集団示威運動等につきましても、除外しても支障がないのではないか。それから学校当局以外のものが主催をいたします場合においても、それが学校の構内であり、かつ学校当局が承認をいたすものにつきましては、これまた除外しても支障がないと考えております。それから最後に、地方のそれぞれの実情によりまして、一定の人数を切りまして、その人数以下のものについては届出をしなくてもいいというような、人数の切り方によつて適用外にするという場合もあろうかと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/59
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060・門司亮
○門司委員 時間の関係もありますので、きわめて簡単に二、三の点だけ聞いておきたいと思います。
先ほどの御答弁、さらに参考の書類によりまして、現在どのくらいの自治体に公安条例がしかれておるかがわかるのでありますが、問題は、集団示威運動とこの法律に書いておりますが、この法律の示しております集団示威運動というのは、いかなるものをさして言うのかということが、明確になつていないのであります。そしてわずかに二条に、こういうものはこの法律の適用の外であるということだけ書いてあつて、それなら一体適用を受ける範囲はどのくらいであるかということが、明確になつておりません。私はその範囲を一応聞いておきたい。あるいは集団というのはどのくらいの規模であるのかということについて、当局にお考えがあるなら、この際お話を願つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/60
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061・野田章
○野田説明員 集団示威運動の定義について御質問がございましたので、御説明申し上げます。多衆が一定の目的をもつて行う共同の行為で、公衆に対して気勢を張るものを、集団示威運動というふうに解しておるのであります。それから集団行進とは、同様に多衆が一定の目的をもつて行う共同の行為で、徒歩または車馬、舟艇等で一団となつて行進することを言う。屋外集会は、多衆が一定の目的をもつて行う共同の行為で、屋外一定の場所に会して一定の行為をなすことを言う。このように解しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/61
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062・門司亮
○門司委員 今の御説明だけでは私はわからぬのであります。今御説明のありましたようなことが一体この中に書かれておるかどうか。およそ法律の解釈から申し上げまするならば、その法律の目的と、その法律の持つ最も重要な面、いわゆる定義づけた面が、はつきりどこかに書かれていなければならない。従つて今お話がありましたようなことについては、一体この法律の中で、具体的に申しますと、たとえば単なる集団と言つておりますが、集団とは一体何を言うかということであります。二人おつても集団であるのか、三人おつても集団であるのか、この限界は非常にむずかしいのであります。同一の目的を持つものだと言つておりますが、これも解釈は非常にむずかしいのであります。従つて法を運用いたしまする人によつておのおの解釈が違うと思う。同時にまた、その運営をいたしまするものの目的によつてもおのずから違つて来ると思います。たとえば先ほどお話のありましたように、一応だれが見ても集団的なものであつても、その目的自体は何も公衆に危害を及ぼすものでない場合もあるでしようし、あるいは比較的小規模のものであつても、公安を害するような事態に立ち至る一つの目的を持つてやつているものとの限界は、非常にむずかしいと思う。従つて、私が聞いておりますのは、大体どのくらいの範囲をこの中に考えられているかということであります。これは法を運用する人の非常にむずかしい問題でありまして、往々にして間違いが起りますので、このことについてもう少し詳しく御説明願いたい。
ついででありますからさらに聞いておきたいと思いますことは、届出制でありましても何でありましても、届出を要しないと思われるような小さな団体の行動でありましても、それが同一の目的を持つて各所で行われます場合においては、それは相当大きなものになります。そしてそれが一定の場所に集合するということになりますと、より大きな数字が出て参るのであります。そういう場合には、必ずしも法の運営の間で取締りをしなくてもよい。よく言われております三々五々というような形で集まつて来るものについては、なかなか制約がしがたいのであります。そういうものについて定義づけた、ある程度はつきりしたものがなければならないと思うが、この法律の集団の意味はどの程度をさしておられるのか、この点を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/62
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063・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 門司委員のお尋ねは、まことにごもつともでございます。実はこの法案をつくります際に、集団示威運動あるいは集団行進、屋外集会、それぞれ定義をここで書こうかという話もあつたのであります。ところがここに書きませなんだのは、大体集団示威運動、集団行進、これはもう社会通念できまつておるのではないか。しかも初めて法律化するならば必要だけれども、すでに府県あるいは市町村で相当たくさんその条例も設け、また運用もやつている。もうすでに習熟され、わかつておるのに、いかにも学者らしい定義をここへ書いてみたところで、そう大した何はない。むしろ定義を書くことによつて、今現実にこの条例をつくつておりまするところへ、集団示威運動とは何ぞや、集団行進とは何ぞやという問題も起さずに、社会常識でうまく運用されているものを、ここに事新しく定義づけると、その定義にとらわれて、この定義に入るものはすべてそうだというようなことになつて、かえつて運営上おもしろくない結果を来すかもしれない、こういう見地から定義は書かなかつたのであります。しいて定義はどうかと聞かれますると、ただいま課長から申し述べましたような定義に相なるわけであります。そこで集団とかあるいは多衆というのは、一体どのくらいの人数であるかというお尋ねでありますが、これもその当該地方の社会的な通念できめて行くしか、しかたがないのではなかろうか。しいて言えばまあ数十人——数十人といつたつて、これもさつぱりわからない。五十人以内ならば集団にならないのか、五十人を一人越えたらなるのか。そこらはやつぱり社会常識できめて行くのがいいのではなかろうか。しかもそれも運営に相当習熟しておるのではないかというふうな観点から、定義を書かなかつた次第であります。この点をひとつ御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/63
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064・門司亮
○門司委員 定義の問題については、さつきも申し上げましたように、この法律を審議いたしまする上におきまして、非常にこれは欠けた一つの問題でありまして、われわれはこの法律を審議いたしまする場合に、定義がわからぬで、ただ集まつたものを取締るのだというだけでは、なかなか審議がしにくいと思います。
さらに聞いておきたいと思いますことは、警察法の二条に、「公共の秩序の維持」ということがあります。従つてこの公共の秩序の維持ということと、この集団示威運動の取締りということとの、この二つの関連でありますが、警察法に言う公共の秩序の維持というものは、私はやはりこうした社会公衆一般に及ぼす影響をさしておる。この中に私は当然こういうものが含まれているのじやないかというように考えられるのでありまして、従つてこれは法の拡張解釈といえば拡張解釈でありまするが、実際この警察法の二条の一に書いてありますことが当てはまるのであつて、この警察法があれば、あらためて集団示威運動に対するこういう取締りの法律は、いらないのじやないかというように考えておりますが、この辺の解釈はどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/64
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065・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 警察法二条にありまする「公共の秩序の維持」の中に、当然これは入ると考えております。警察の職責の一つとして、公共の秩序の維持をするわけでありまするが、しかしその公共の秩序を維持する仕方を法律その他において明示をしなければ、権利の制限にわたつたり、そういうことができませんので、従つて届出をさせたり、あるいは凶器を持つて集まつて来ることを禁止したり、それに違反するものを処罰したりするのには、やはりこういう法律がなければやれないと私どもは考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/65
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066・門司亮
○門司委員 この法律の中にありまする、たとえば今のお話にありました凶器その他を持つて来るようなものというのは、これもやはり警察法の一条に、はつきり書いてありまして、他人の生命あるいは財産を傷つけるような予備行為をするものについては、当然私は警察法で取締れると思う。さらにそれらの予備行為等につきましては、軽犯罪法でもいいと思いますし、さらにもう少し詳しく言えば、警察官職務執行法の中にそれがちやんと書いてある。従つて集団示威運動のためにのみこれを持つて来るということは、この法律自体が少し行き過ぎではないか。警察法の範囲で私は十分こういうものは取締り得るということ、これが集団であろうとなかろうと、示威運動であろうとなかろうと、人を傷つけるような凶器を持つているものについては、事前にちやんとこれを、現在でも警察の職務執行に対する尋問を行つておりまするし、またそういうものを持つて歩いては悪いということは、ちやんと警察法に書いてあります。私はそれで十分取締れるのじやないかというふうに思いますが、やはりこういう法律がなければそれが取締れないというふうにお考えになつておるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/66
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067・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 警察法の二条の範囲内で、警察官は何でもできるということでありますと、われわれ非常にありがたいのですけれども、御承知のようにそれはとてもできませんので、権利の制限にわたるような事柄は、それぞれ法律に明記がなければできないわけであります。お尋ねの凶器にいたしましても、銃砲でありまするならば、銃砲等所持禁止令によりまして違法になりますけれども、そうでない、目つぶしを持つて歩く、あるいは竹やりを隠して持つて行く、竹やりを公然持つて行くというだけでは、取締りができないのであります。凶器も、凶器を隠し持つて行くものは軽犯罪法に触れますけれども、これを公然と持つて歩いておるというようなことは、取締りができないわけであります。警察官等職務執行法によりまして、そこで何らかの犯罪がまさに行われようとするときには、これは制止はできますけれども、しかし職務執行法では、この法律の目的としておる程度の事柄は、やり得ないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/67
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068・門司亮
○門司委員 私は今の長官の答弁の仕方はおかしいと思う。隠し持つておるものは処罰するけれども、公然と持つておるものはどうしようもないということはおかしい。隠し持つておるものは処罰できるが、公然と持つて来れば処罰できない、抜き身で持つていては取締りができないというりくつには、私はならぬと思う。それは当然取締ることができると思うが、それは一応この程度にしておきまして、その次にもう一つ聞いておきますが、この中の七十二時間という時間を限られたということであります。これはどういう根拠でこれを限られておるか。これだけをひとつ聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/68
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069・柏村信雄
○柏村政府委員 この法律案の規定にもございまするように、届出によつて自由に実施ができるわけでございますが、これに対する遵守事項の命令でありまするとか、あるいは届出が不備な場合に、これに補正を命ずるというような手続も、必要と相なる場合があるわけでございまして、どうしてもそういうことについて万全を期しまするためには、七十二時間程度の余裕が必要だと考えるのであります。現に地方においてつくられております公安条例を見ましても、百三十の条例のうち百二十二が七十二時間、最も長いのは九十六時間というのもあるようなわけでありまして、この辺が適当な時間的制限だろうと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/69
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070・門司亮
○門司委員 今の御答弁でありますが、なるほど九十何時間前、あるいは七十二時間前というのは、かつて進駐軍の司令官がそういう通牒を出したことがあります。それが大体進駐軍の占領いたしておりました間において、各自治体の条例の中に私はそのまま入つておると思うので、これは私は大した根拠は実はないと思う。しかしそういう御答弁であれば、それで一応いいと思いますが、もしそういうことになつて参りますると、具体的の実例といたしまして、たとえばストライキをやるというような場合に、あらかじめ通知し、あらかじめ告示はいたしておりましても、一定の場所に集合したものが、他に移動しなければならないというようなことが起つた場合に、歩くのは七十二時間前に届出をしようとしても、届出のしようがないのであります。そういう場合にも、具体的のものとして、移動するということは禁じられておるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/70
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071・柏村信雄
○柏村政府委員 一定の集団示威運動なり集団行進なりが、それ自体一定の目的を持つて行う共同の行為である場合について、この条例の対象に相なるのでありまして、たとえばある寄宿舎から他の寄宿舎に行進するというようなことが、これに当るというように考えておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/71
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072・門司亮
○門司委員 そういたしますと、問題はこの示威という問題の解釈であります。一体示威とは何を意味するかということであります。大勢のものが歩くということも、さつきのお話のように、一つの目的のために歩くのでなければいいということになつて参りますると、一体示威運動というものの解釈をどうすべきか、どうこれを解釈していいかということであります。実際の問題として、今のお話のようにこの示威運動は目的を持たないものであるということになつておりますが、私は目的を持たないのは一つもないと思います。いずれどこかへ移動するにいたしましても一つの目的を持つております。しかしそれは示威運動ではなかつた、ただ部隊が動いただけだというこの解釈は、私は非常にむずかしいと思う。従つて七十二時間前というようなことになつて参りますと、実質上の移動その他ははなはだ困難ではないか。これは解釈の問題でありますから、弾圧しようと思えば、どうにでも弾圧の糸口が必ず出て来ると思う。不必要な弾圧をすれば、それはやはり問題をより大きくする原因になると思う。従つて私は、この七十二時間前というごときめられたのでは、なかなかそういうふうに動きにくいと思う。従来非常にやかましかつた、たとえば治安維持法時代におきましても、屋内集会に対しましては、大体三時間前に届ければよかつたのであります。屋外におきましても、六時間か八時間前に届ければできたのであります。今のように労働組合という制度があつたり、あるいは法的な根拠を持つものがなくて、まつたく合法的の運動でなくて、いわゆる非合法のすべての運動が行われておりましたときの取締りでも、屋内においては、わずかに三時間前くらいに届出をすればよい。屋外においても六時間か八時間であつた。このくらいで大体やられておつたと思う。ところが、今日のように一つの行動をいたそうといたしますと、当然それは労働組合である場合には法的の根拠を持つ一つの運動である。あるいはその他の政党にいたしましても、今日はやはり規正令というようなものがあつて、政党の行動というものについてはおのずから届出をするようにできておる。非合法時代でもさつき申しましたようなことで、時間的な余裕というものは大体了解のできる範囲で——だしぬけにやつては困りますが、大体了解のできる範囲で集会の方法が考えられる。そうして大体取締りが行われておつた。ところがこの場合は集団をしたり、示威運動をしたりする方のことはちつとも考えないで、ただ取締る方だけ考える法律をこしらえると、かつての治安維持法時代の取締りよりはずつと悪くなつていると思いますが、この点は一体どういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/72
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073・柏村信雄
○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、たとえば届出の内容を補正いたします場合におきましても、この補正が、そうした行為をする人に対して徹底するというだけの時間のゆとりをもちまして、補正の命令をしなければならぬということもありまして、たとえば第五条におきまして、補正を命ずる場合は、二十四時間前までに補正を命ずるというような規定にいたしておるわけでありまして、こういうことをいたすためにも、私どもとしましては、七十二時間という時間は必要であろうというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/73
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074・門司亮
○門司委員 私はもうそれ以上は考え方の相違でありますから質問いたしませんが、七十二時間前ということがどこまでも二十四時間以内に、あるいは以前に補正をしなければならない、こういうことでありますが、私は補正をするということ自体が、実はいかがと考えるのであります。今日の公安委員会にこれを届け出て、そうしてこれが許可になるとかあるいはならないかというようなことについては、これによりますと届出制だということになつておりますが、実際二十四時間前までにこれに補正をする必要があるから、従つて、七十二時間前でなければならぬということと関連して申し上げて参りますと、実際は届出制ではなくして、事実上はちやんと許可制になつておる。といいますのは、たとえば何らの通知がなくても、二十四時間前までは、それが一体よいのか悪いのかということを待たなければならぬ。従つて七十二時間という時間は、一応届出制でありますが、この七十二時間から二十四時間を引いた時間の間は許可制になつておる。補正があるかないかということは、二十四時間前まではわかりませんし、自分たちが届け出たそのことが、そのまま許可になるかどうかということは、二十四時間前にはわからないということになつて参りますと、当然これは一つの許可制であつて届出制ではない。これは一体どこまでも届出制だということにお考えになつておるか、これは届け出たものは許可するというお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/74
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075・柏村信雄
○柏村政府委員 この法案はあくまでも届出制でありまして、ただいま申し上げましたような補正の命令にいたしましても、十分に限定をいたしておるわけであります。遵守事項を命じないという場合においては、もちろん届出の通り実施されるわけでありますし、遵守事項を命ずる場合におきましても、その集団示威運動等を行うということについて、これを許可制にかえるというようなことはないわけでございます。許可制とはまつたく違つた性格のものであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/75
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076・門司亮
○門司委員 もし許可制でなくして届出制であるとするならば、集団あるいは示威運動を行いますものについては、一定の制限があつて、そうして大体この範囲なら集会をしても、あるいは示威運動を行つてもさしつかえがないであろうというようなことは、あらかじめ私は書けると思う。それにあらかじめこの法律をこしらえるときに、指示したものに触れているものについては、これは当然そういうものの取消しを命ずるということが私はできると思う。従つてこういうものは七十二時間もかかつて検討しなければならぬほどの問題ではないと私は思う。むしろ私どもから考えれば、許可制でやるとしますならば、許可の条件というもの、あるいはこういう何らかの補正をしなければならないというような条件を明示してさえおけば、何もそれに反して私は届出をする人はないと思う。これで十分やれる。どうしてもこれはやはり補正という名のもとに、許可をしなければならないようなことになる。これは事実上の許可であります。あなた方の方では補正という言葉を使つておりますが、事実上の許可でありまして、この補正に従わなかつたから許可しなかつたということには、結論的にはならないのであります。許可という文字を使わないで、ただ補正という文字を使つているから、これは許可制でないのだというりくつにはならぬと私は思う。もし補正せられたことについて、これに従わなかつたら、この運動はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/76
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077・柏村信雄
○柏村政府委員 第五条にも明記いたしておりますように「公安委員会は、集団示威運動等の届出が左の各号の一に該当するときは、届書に記載されている集団示威運動等の開始日時の二十四時間前までに、その主催者に対し、時間を定めてその時間内に届出を補正することを命ずることができる。」ということにしまして、その第一に、「第三条第一項に規定する要件の一部を具備しないとき。」第二は、「当該集団示威運動等の主催者のうちに十六歳に満たない者又は禁治産者があるとき。」この二つに限つているわけです。第一の「第三条第一項に規定する要件」と申しますのは第三条をごらん願えば明瞭であります。第一が「当該集団示威運動等の名称、種別及び目的」第二が「主催者の住居、氏名及び年齢」第三が「この法律の規定による公安委員会の送達を受領すベき者の住居、氏名及び年齢並びにこれらの送達を受領すべき場所」第四が「当該集団示威運動等をその実施場所において統轄指揮すべき者の住居、氏名及び年齢」第五が「開始及び終了の日時」第六が「実施場所及びその略図」第七が「参加団体の名称及びその主たる事務所の所在地並びにその団体の代表者の住居、氏名及び年齢」第八が「参加予定人員数及びその参加団体別内訳」ということになつておるわけでありまして、ただいま門司委員のお話のように、こういう一定のものを具備しない場合は、それは取消してもよいではないかということでは、あまりに集団示威運動等を——不用意にこの要件を具備しないという場合に、これが届出されなかつたということであつては、かえつてその自由を伸張するゆえんでないという点からしまして、必要な要件を具備するように補正を命ずるということでありまして、むしろ補正を命ずることは、円滑にこれが実施できるようにするという趣旨なのでありまして、その点は御了承を願いたいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/77
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078・門司亮
○門司委員 非常に巧妙な答弁でありますが、もしそれほどの親切があるならば、ここにちやんと書いてありますから、届主が持つて行つたときわかるのであります。四十時間も六十時間も——これによりますと七十何時間となつておりますが、そんなに公安委員会で考えなくてもここにちやんと書いてあるのであつて、この条項に当てはまつているかいないかということは、受付けたときに私はわかると思います。そうすると何もこんな七十二時間という長い時間はいらないと思う。これは日本の官僚の一番悪いところだと思いますが、それほどの親切さがあるならば、持つて来たときに第三条の一項の要件を具備しているかどうか、その中に十六歳以下の者がいるかいないかということはわかつていると思います。そのときに処置してやれば何も七十二時間以前に持つて行かなくてもいいと思う。それを具備しているかどうか調査するのに、公安委員会は五十何時間もかかりますか。四十八時間、二昼夜もかかりますか。そんなにかからなければ、公安委員会というものは第三条の一項に規定されていることを具備しているかどうかということについて、書類に目が通せないのですか。私は今のようなむしろ親切さがある御答弁ならば、ちやんとこういう事項については受付けたときにわかるはずだと思う。何も法律にきめなくても、ここが不備だからこういうふうに直しなさい、それでいい。何も事新しく二十四時間前に補正を命ずることができるというような、むずかしい文章を使う必要は毛頭ないと思う。この補正ができるという文字を使うこの中には、私は明らかに許可制というものが含まれていると思う。書類を出して四十八時間まではこのままでいいのか、悪いのか、こちらはわからないのです。こういう点は私らが考えますと、さつき申し上げましたようにこの条文はいらないと思うのです。前に制限の規定がちやんとありますので、その規定に当てはまつているかいないかということは、書類を受付げたとき、届出したときすぐわかるのです。従つてこの規定は私は不必要であると思う。それでも四十八時間なければ、それの審査ができないというふうにお考えになつているのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/78
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079・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 実はこの点も非常に重要な点でありまして、立案の際にも七十二時間は——今日の各市町村あるいは府県の条例の大部分は七十二時間以上でありまするが、これをもう少し短かくしたらどうだろう。たとえば四十八時間にしてみてはどうかというので、相当審議をいたしたのであります。結論といたしましては、現在の条例は、屋内集会までほとんど含めておるわけでありますが、今度は屋内集会は全然はずしてしまいまして、街頭行進と屋外集会だけにほとんど限定をいたしました。従つて今まで届出あるいは許可の手続をとらなければならなかつたものも、数からいえば、もう大部分この法案からはずれてしまうということにも相なりまするし、それからまた示威運動、示威行進につきましては、最近非常に大きな計画のものがありまして、これはやはり事前に届け出てもらい、それについてあるいは場合によれば、その集会の場所でありますとか、あるいは行進する順路でありますとか、とれについていろいろ誓いをして、そうして変更をしてもらうというような場合も相当ありまするので、できるだけ事前に主催団体と話をして、ぐあいよいよ行うには、これくらい時間がありませんと、ただ許可かあるいはこれを認めないかというのでありますれば、一時間あつても、これは不許可だといつて、ぽんとはねられますけれども、そうでなしに、できるだけ手を尽して、秩序を保持しながら集団示威運動もやれるようにというのには、お互いにそういう折衝のひまも必要であります。自治体警察の大きなところの実情もいいろ聞き合せましたところ、どうしても七十二時間は置いてもらわないと、実際仕事をやる上において、不便が非常に多いという声が圧倒的でありましたので、この七十二時間という現在他の市町村で大多数とつておりまする制度を、踏襲いたしたのであります。繰返して申しますると、これで屋内集会は全部はずれまするので、実際問題といたしましては、そう大した件数はこのために御不便はかけないのではなかろうかと、考えておるのであります。なおまた屋外の集会、行進でありましても、地方の実情によりまして、さしつかえはないものは、先ほど他の政府委員から御説明いたしましたように、府県の公安委員会の規定で、届出をやらなくてよろしいというように、除外のできるようになつておりますので、これでまず大体合理的な運営ができるのではなかろうか、かように考えて、立案をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/79
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080・門司亮
○門司委員 私の質問はこれでちようど時間が来ますので、これ以上きようはお聞きをいたしませんが、この法律ができて参りますと、今までありまする全体の条例は、全部この法律の実施と同時に大体なくなると私は解釈しておりますが、その通りでよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/80
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081・柏村信雄
○柏村政府委員 ただいまの御質問の点は、附則の三項にございまするように、この法律の施行前に施行されていた集団示威運動等の実施に関する条例は、その効力を失うことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/81
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082・門司亮
○門司委員 そうすると、字句にこだわるわけではありませんが、この法律には集団示威運動の実施、こう書いてありますが、大体各地のものはこういう文字を使つておりません。大体公安条例というような形で出ておりますので、これは法律を改廃いたします場合には、やはり字句はある程度私は合せておいた方がいいのではないかと考えるのでありますが、それと同時に、公安条例が出ております内容の中には、やはり屋内集会までもこの公安条例の中で実際取締つております。届出ということが書いてあります。この法律では、さつき再三お話のように、屋内集会というものは除いております。従つてこの法律の末尾にありまする用語をそのままここで使つておりますが、実際に当てはまる字句を使う、あるいはこれをもう少し詳しく書いて、そうして都道府県並びに市町村で今行つている条例についてこれを改廃し、効力を失うという、もう少し法律の体裁としては、明確化しておいた方がよくはないかというふうに考えておりますが、この点については、これで大体状況はさしつかえないというふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/82
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083・柏村信雄
○柏村政府委員 たとえば東京都の条例におきましても、正式の名前は集団行進及び集団示威運動に関する条例というようなことで、通称公安条例、こういつておるわけであります。この三項に規定いたしておりますのも、実質的に集団示威運動等の実施に関する条例というふうにしまして、名称をここにうたつたというわけではありませんので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/83
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084・立花敏男
○立花委員 きようは非常に歴史的な日でありまして、五月三十日、公安条例の恨みの日なんです。きようは、三年前に公安条例ができます日に、橋本金二君が警察官の虐殺にあつた日なんで、まことにこれは歴史的な日なんですが、そのときにこの公安条例の全国的な統一的な法案をお出しになるということは、まことに皮肉だと思う。しかもきようは、聞くところによりますと、東京都が警察の動員をやつておりまして、交通遮断を随所に行つておる。官庁でも大分早時退庁をやらしたようです。そういうふうに今日はまことに歴史的にも意義のある日だし、本日ただいまの状態を見ましても、公安条例がそういう形で発動されておる。きのうから本日の五・三〇記念の集会は全部禁止されておる。出して参りました法律は、届出制で非常に民主的な規定なんだどいうことを言つておりますが、現実はきようの集会等を、公安条例で全面的にきのうから禁止しておる。暴力があつたかなかつたか、きようの会合を見なければわかりません。それをきのうから禁止しておりますので、それは暴力を禁止することにならないと思うのですが、何の法的根拠できようの集会を禁止されたか。その根拠を明らかにしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/84
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085・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 現在都の公安条例が生きておりますから、その条例によつて不許可にいたしておる、かように私は承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/85
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086・立花敏男
○立花委員 東京都の公安条例のどの項によつてやつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/86
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087・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 公安条例の第三条です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/87
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088・立花敏男
○立花委員 第三条のどの規定に該当するのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/88
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089・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 第三条の「集会、集団行進又は集団示威運動の実施が公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合」というので許可をしなかつたのだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/89
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090・立花敏男
○立花委員 「直接危険を及ぼすと明らかに認められる」という例を、ひとつあげていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/90
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091・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 これは東京都の特別区の公安委員会がさような措置をしたと考えまするので、私は責任を持つては申せませんが、われわれの判断をいたしまするところでは、きようはいわゆる五・三〇デーと称しまして、相当不穏な様相がうかがわれるのであります。しかも今日集会を行うと届け出られたものは、ほとんど全部が五時半あるいは六時から夜の十時という、日暮れから夜間にかけての集会でありまして、停車場の附近とか公衆のたくさん集まります場所であります。こういつた時間における、またこういつた場所、日における集会は、秩序を乱すおそれが多分にある、かように認定をしたものだと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/91
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092・立花敏男
○立花委員 五時から十時までやつたら秩序を害するということはどこからも出て来ませんので、そういうことで禁止されては、公安条例は明らかに憲法違反であるといわざるを得ないと思います。また五月三十日にやる集会だから、これは公安を害するから禁止しなければならないということは、どこからも出て来ない。そういうような時間が悪いから、日が悪いから集会は禁止するというようなばかなことがあつていいのか。また労働者の状態から申しまして、労働者は夕方まで工場で働いておるのは当然なんだ。従つて工場がひけましてから集会を持つのはやむを得ないと思う。これを単に時間が五時半から十時になつているから危険だ、五月三十日にやるから危険なんだということでは納得できませんし、明らかにこれは弾圧なんです。こういうことをここでぬけぬけとおあげになることから見て、私どもはあなた方のやることを弾圧と断ぜざるを得ない。何でそんなことが禁止の条件になるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/92
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093・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 過去のいろいろな歴史、それから過去に行われました事柄等から考えまして、五月三十日の薄暮から、屋外の公衆のたくさん集まるところで集会がやられるということは、秩序保持上きわめて危険である、かように東京都の公安委員会が認定いたしましたことは、私は職責上当然であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/93
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094・立花敏男
○立花委員 ばかなことを言つては困る。現在届け出て三十日になつてやる会合を、過去にこういうことがあつたから禁止するのだ、そういう公安条例の趣旨ですか。それなら何のための届出なんだ。そんなばかなことがあつていいものか。過去にこういうことがあつたから、おそらく今度もあるだろうという推定のもとに、東京都の公安委員会は禁止したのだ。それを君は正しいと思うか。そういう考え方でいいのかどうか。それだつたらこういうこまかい規定をつくつて届出をやる必要はないじやないか。根本的にはそうじやないのでしよう。過去にあつたから禁止するのだと言うが、さいぜんあなたは東京都の公安条例の条文をお引きになつて、直接の危険を及ぼすと認められる明らかな事実を認めたから、禁止したとおつしやつたじやないですか。これは矛盾撞着もはなはだしい。そういうことで憲法で規定された集会の自由が禁止されてはたまらない。どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/94
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095・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 これは繰返すのみであります。過去の事実と、それから三十日にどういうことがなされるか、その底流をなすいろいろな事柄の調査によりますと、明らかに危険を招来するということが認定できるものだろう、また認定をしたのは相当だろう、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/95
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096・立花敏男
○立花委員 過去のどういう事実を考えてきようの集会を禁止したか、言つていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/96
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097・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 近くはメーデーの事柄もありますし、昨年の宮城前の事件もあります。またこの三十日事件後どういうように闘うかということについても、いろいろの計画があるようにわれわれは聞いておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/97
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098・立花敏男
○立花委員 メーデーにああいうことがあつたから、きようの会合を禁止するんだということになるのですか。それじやメーデー以後の会合は全部禁止される。どういう具体的なつながりがあつたからということがおわかりにならなければ、問題にならないと思う。東京都の公安条例には、直接危険を及ぼす明らかな事実が認められる場合に限り、こうある。メーデーにああいうことがあつたから禁止するというのであれば、それは禁止する理由にならない。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/98
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099・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 ただいま申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/99
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100・立花敏男
○立花委員 答弁できないのじやないですか。そんなでたらめなことでは困る。具体的な事実をあとでいいからあげていただきたい。それがやはり今後の集団デモ取締法の問題になるところだと思う。言葉ではいくらごまかしておつても、これはごまかせない。きよう目の前でやつておる。あなたたちが出しておるこの法案がごまかしであるということは、きようの事実で暴露されておる。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/100
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101・金光義邦
○金光委員長 静粛に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/101
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102・立花敏男
○立花委員 それから法案について聞いておきたいが、許可制を届出制にした理由を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/102
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103・柏村信雄
○柏村政府委員 先ほど来申し上げましたような七十二時間前の届出によりまして、必要なる補正、あるいは厳守事項の命令、または集会、集団行進等がかち合う場合等における変更の命令というようなことができまして、そういう事前の周到なる用意ができますれば、届出によりまして十分に秩序正しい集団示威運動等が行われ得るというふうに考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/103
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104・立花敏男
○立花委員 許可制は適当でないとお考えになつておるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/104
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105・柏村信雄
○柏村政府委員 目下のところこの程度の届出制度が適当と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/105
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106・立花敏男
○立花委員 それから現在ある公安条例に対する裁判所の判決ですが、京都の裁判所では明らかに京都の公安条令は憲法違反であり、無効であるということが決定しておる。これを御存じかどうか。これに対してはどうお考えになつておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/106
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107・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 存じております。この問題はまだ最終判決になつておりませんのでわかりませんが、とにかく第一審ではさような内容を持つた判決がありました。最終判決を待たなければわかりませんが、私の方ではこれは憲法違反になる疑いは若干あるが、必ずしも憲法違反と言えるかどうか、疑問に思つております。このたびは許可制ではなくして、できるだけ集団示威運動、行進等はやらせる。しかしながら必要な規制に従つてやつてもらう。日時の変更とか、あるいは場所の変更というような事柄で、秩序を保つてやるということを主眼にいたしておりますので、不許可というよりはその方がよかろうと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/107
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108・立花敏男
○立花委員 憲法違反の判決に対して、どういう点に疑問をお持ちになつておるのか承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/108
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109・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 憲法に保障せられております自由も、公共の福祉のためにはやはり制限は受けられるものと考えておるのであります。問題はその程度の問題だと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/109
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110・立花敏男
○立花委員 その程度の問題で——詳しく判決には理由が述べられておるのですが、その判決の理由のどの点が疑問であり、どの点が御不満なのか承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/110
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111・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 われわれは公安条例が京都市において設けられました際に、これは憲法違反ではなかろう。研究の結果さような結論に達したのでありますが、しかしながら最終判決を待たなければ最後の判定は下せないわけでありますから、ただいま疑いを持つておるという程度で申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/111
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112・立花敏男
○立花委員 そのどの点に疑いを持つておるのか。ここにあなた方がお配りになつた資料の中に、判決の理由がこまかく出ているんだから、この理由のどこが悪いか、わからないということを具体的にひとつ示していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/112
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113・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 どの点と申しますよりも、総合的にこういつた場合に、この程度までの制限は認容さるべきではなかろうかという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/113
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114・立花敏男
○立花委員 そういう一般的なことを聞いておるんではないので、具体的に理由があげられておるんだから、その具体的の理由の中でどの箇所がふに落ちない。どの箇所が納得できない。どの箇所に疑問があるということを言つていただかないと議論にならない。ただ水かけ論にしかならないので、その点をひとつ出していただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/114
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115・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 総合的に申し上げるよりほかしかたがないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/115
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116・立花敏男
○立花委員 総合的にじやない。総合的にだとこれはさつきから言つているように水かけ論になるしか、しかたがない。せつかく理由が出ているのだから、理由の総合的な結論としてこういうものが出ている。だから総合的にだけ話が出てはわからないので、やはり理由を、どの点に疑問があるというふうにあげていただかないとこれは話にならない。他の方でもいいからひとつあげていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/116
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117・柏村信雄
○柏村政府委員 京都の判決におきましては、ただいまお話になりましたように、この条例の違憲を論じ、しかしながらこの条例に基いて行つた警察官の公務執行は正当であるから、これに妨害を加えたものは、公務執行妨害罪が成立するという趣旨の判決であります。そのほかに、たとえば長野県とかその他の判例によりますれば、これの合憲説をとつておるというふうに見られるわけでありまして、私どもこの点についてどの点がどう疑問があるというふうなことを、今申し上げる段階ではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/117
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118・立花敏男
○立花委員 その点はやはり明確にしておく必要があると思うのです。あなたたちが今お出しになつて、全国的に集約しようとしておる公安条例に対して、裁判所は憲法違反の判決を出している。その理由を明確に調べることなくして、ただでたらめにこんなものをつくられてはたまらぬと思う。裁判所は権威のあるものであり、責任をもつて判決を出しておる。それをやはり理由をはつきりして、どの点に疑問があるということを明確にしないで、こういうものを出す権限はないと私は思う。しかも私どもがこの問題を問題にいたしますのは、裁判所がこの違憲であるという根拠をあげております。根本的な考え方が、やはり今度の集団示威運動の秩序保持の法案の中にはつきり出て来ておる。だからこそ私たちは今の問題を問題にしておるのです。単に京都裁判所の結論ではなしに、理由としてこまごまあげておる。それを貫く中に流れております精神が、この今お出しになつておる法律案の根本精神と同じだから、これは明らかに裁判所の言つているように憲法違反じやないか。そういう問題が出て来るから、私はそれを問題にしておるのです。だからあなたたちがこの法案をお出しになれば、それだけの周到な用意が必要だと思うのです。ここで私がお尋ねしても理由もわからない、裁判所の判決も何もお調べになつていないというに至りましては、私はこの法案はまつたく間に合せの法案であると言わざるを得ないと思う。そういう点で、これは共産党が言つているから調べるんじやなしに、裁判所がはつきりそういう判決を出しておるんだから……。しかも聞くところによりますと、東京都の公安条例につきましても今提訴が出ておりまして、東京都の裁判所でも違憲の判決が近く出ようということでありますので、全国的に裁判所が現在の公安条例に対して、そういう違憲の判決を出しあるいは出そうとしておる。そういうことを無視して、こういう法案をお出しになることは、これは無責任きわまると言わざるを得ない。その点をやはり明確にする必要があると思うのですが、次会でもいいですから、その点を明確になさる用意があるのかどうか。この点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/118
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119・柏村信雄
○柏村政府委員 先ほど長官からも御説明しましたように、総合的に判断ぜざるを得ないと思いますけれども、その一部を申し上げますならば、「京都市公安条例の如く一般的制限に近き程度に広範に集会、集団行進、集団示威運動を取締の対象におき公安委員会の許可なくしてこれを行う事が出来ないものとするが如きは明かに取締の便宜に重点をおき憲法の保障する国民の集会等表現の自由を不当に制限しているものといわなければならない。」ということで、裁判所としましては公安委員会の許可なくしてというところに、相当重点を置いているように思うのであります。しかしながらその後におきまして、まつたく無制限に不許可の処分をするものでない点は、大分注意しているというようなことで、ずいぶん言いわけも出ておるわけでありまして、結局結論的に申しますならば、許可制にしたことについて疑問を提起されておるということでありまして、今回そういうものを十分検討して届出制にする限りにおいて、何ら違憲性がないと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/119
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120・立花敏男
○立花委員 だから最初ぼくが尋ねたんだ。なぜ許可制を届出制にしたんだ。だからそういう点を、あなたたちはその局部だけをとつてお考えになつて、言うところでは、許可制だから憲法に違反しておる、これを届出制という言葉にさえすればそれでいいんだ、そういうことでこれをお出しになつた底意は明白なんである。だから私は最初にお尋ねしてある。しかしお読上げになつたところは、実はそうじやないんで、一般的な制限をやる。集団行進あるいは集会、示威運動等に対して、基本的な憲法で保障された労働者、国民の権限に対して、それを一般的に制限する。そしてそれを取締りの対象に置くということ自体が、すでに違憲であるということなんである。形の上で許可制にしようと、あるいは届出制にしようと、それは形式的な問題にすぎないのであつて、一般的にそういう基本的な人権の問題を取締りの対象に置き、制約しようとするそのこと自体が、憲法違反だということを言うておる。だから形にとらわられないで、内容を見なければならないと思う。ところが、あなたたちは国民の目をごまかすために許可制を届出制にして、それで憲法違反ではないという体裁を整えられようとしておる。だからこそさつき門司君が質問いたしましたように、この届出制は許可制であるという結論が出て参る。そういう実質的なごまかしをやろうとしておるところに、私は問題があると思う。それから他の問題に触れたいと思いますが、現在の公安条例がどこから出て来たかは、これはもう明白だと思うのです。占領当時占領軍の命令によつて出て来たことは間違いないと思います。それはそちらも認めておられると思うのです。その証拠には、さいぜんそちらでおあげになつた数字の中にもはつきり現われておる。現在百三十の公安条例のうち七十二時間というのが九〇%以上ある。時間的にさえ統一されておる。進駐軍から出て参りました七十二時間という、時間の上でも全国の公安条例を統一しておる。だから、これは決して地方の自主性に基いて、地方の治安の問題の必然性から出て来たものではなしに、占領当時占領軍から押しつけられた、まつたく憲法違反のものであるということは明白なんである。ところがさいぜん次長ですか、だれですか、説明されたときに、この法案は決して将来の治安対策のためではなしに、占領中に書簡とか命令とかいろいろなものがたくさんでたので、それをカバーするためにつくるんだということを明白に言つておる。ここに私は問題があるんじやないかと思う。占領当時占領軍によつて出された憲法違反の命令、書簡、指示、こういうものを全国的にいまさら統一する必要がどこにあるか。日本の裁判所でも憲法違反とはつきり言つておるような公安条例を、しかも占領中に向うの強制によつてつくられたようなものを、独立したと言つておる現在、なぜいまさらこういうものを君たちは出さなければいけないか、私はそこに問題があると思う。これはまつたく売国的な法律なんである。奴隷的な法律なんである。こういうものをなぜお出しになるか、それをひとつ明白にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/120
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121・柏村信雄
○柏村政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、京都の例だけを仰せられますが、違憲論は京都の例に見られますけれども、東京高等裁判所におきましては合憲説をとつておるわけであります。裁判所の間にもいろいろ意見があるわけであります。われわれとして許可制が違憲である心配があるから、許可制でなしに届出制にしたのではないかというお話でありますが、そういう考えで届出制にしたのではなくて、先ほど申しましたような点が確保されれば、届出制によつて現在秩序を維持した集団示威運動等が行われ得るということを申し上げたわけでありまして、その点誤解のないように願いたいと思います。
それからこの公安条例がつくられた歴史的いきさつに、前の占領軍が介在したことは事実でございますが、実際に各地につくられましたる公安条例は、その必要性に基いてつくられておる。それからつくられないところにおいては、当時占領軍によつて出された命令に基いてやることによつて処置し得た、従つてつくられなかつたというふうにわれわれは考えておるのでありまして、現在においてこうした統一した法律が必要であるということについては、決して占領制度を受継いでこういうものをつくるという趣旨ではないのでありますから、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/121
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122・立花敏男
○立花委員 そんなことは言訳にならぬと思う。全国に百三十しかまだ公安条例ができておりませんし、全国の自治体は一万有余ありますので、たとい県でそういうものをつくつたといたしましても、まだ公安条例のないところの方がはるかに多いわけです。だからほんとうに地方の自治体がこういう条例を必要としておるのであれば、全国的にできなければならぬ問題なのである。強制的にやるといたしましてもまだこれだけしかできていない。画一的にやるにしてもこれだけしかできていない。私ども地方におりまして、この条例の出ましたときの手続あるいは状態等から見まして、これは決して地方自治体が好んでつくつたものではないのであります。当時の市長あたりが、これは上から言つて来たからやむなくつくつたということを明白に言つておる。それを必要があつてつくられたというようなことを言われても、これは事実を歪曲するもはなはだしいと思う。だからこそ、現実の問題には合わないような、進駐軍が一方的に決定いたしました七十二時間というようなものを押しつけられておる。この七十二時間に象徴的に現われておる。これは決して地方から自然発生的にきめられた時間ではなしに、進駐軍の関係で飜訳文をつくらなければいけない、しかもそれを三通も五通もつくらなければならない、それを連絡して、警察からさらに進駐軍にお伺いを立てる時間がいる。飜訳や通訳や連絡の時間がいる、そういうことからこういう時間が決定されて参つておりますから、決してこれは地方の自治体が自由にきめたものではないはずなのである。しかもこういうものを占領後にお出しになつた法案の中で、七十二時間をそのまま踏襲しようとしておる。だからやはり占領が解けたといつても、占領中と同じように翻訳し、連絡をとりあるいは通訳をもつてお伺いを立てるという形を、今後もとられるのであるということは、この時間が証明しておると思う。同じことなのである。だからあなたのように、自治体の要求があつて、自治体の必要からこういうものをつくられたということは、まつたくの子供だましにすぎない。では一体七十二時間というものは、自治体がどういう必要でつくつたかということを御説明願いたいと思うのですが、そういうことは言えないと思う。そういう画一的な天くだり的なものであるということは、一点の疑いをいれないところだし、国民もみな知つておる。ウイロビー書簡にいたしましても、ある警察などは、国民には発表もいたしませんし、取締りに参りましても、何に基いて取締るか、この自治体には公安条例がないのに、何に基いて取締るのだと言いますれば、それは言えませぬと言う。それをなお追究いたしますと、私どもだけを警察署長の部屋に入れまして、実はこういうものが来ておるが、これは発表してはいけないと言われておるということを言うのです。そういうふうに非常に天くだり的に住民を弾圧して来ておる。しかもそういうものが地方自治体の必要から生れたということは、おそらく日本人である以上は頭にも考えられないし、口に出しても言えぬと思います。そういうことをお言いになるところに、あなたたちがこういう反動的な、植民地的な法案をお出しになつて来る根拠があると思う。しかもさいぜん次長は、これは単に過去の公安条例を、全国的にカバーするためのものだということを言われておりましたが、実はそうではなしに、今後起つて参ります植民地政策、低賃金、重税、こういうものに対する国民の反抗をより一層弾圧するために、全国的な規模でこういう憲法違反の条例で統一しよう、全国の公安条例のない自治体に対して、法律でもつて強制的にやつて行こうということにすぎないのである。だからこれは単なる過去の憲法違反、人民弾圧の公安条例をカバーするだけでなしに、それを全国的な規模で拡大しようということにすぎない。私はその政治的な意図を、今までの質疑応答の中で明白に見出すことができると思うのですが、その点について意見があればひとつ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/122
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123・齋藤昇
○齋藤(昇)政府委員 この法案は多衆のこういつた示威運動を弾圧する意図は毛頭ないのでありまして、目的にあります通り、秩序を保ちつつやつてもらうということが目的で、それ以外に何ものもないのであります。いかに民主主義でありましても、あらゆる事柄はやはり秩序をもつて行われるということが必要なのでありまして、多衆に非常に迷惑をかけるような、また危害を及ぼすような方法で行われるということは厳になくさなければ、日本の民主化は成り立たないと考えるのでありまして、この法案の趣旨もまつたくそれ以外にないのであります。全国にあるものを統一したというだけではありませんで、ただいま申しまするような観点に立ちまして、必要最小限度の規制というものが、この範囲において必要であるとわれわれは考えるのであります。現在市町村の条例のないところは、ただいまもおあげになりましたように、今まで進駐軍の命令で取締つて参つたのであります。またこの条例を持つておるところにおきましても、むしろ条例よりも進駐軍の命令で取締つておつた方が多かつたのであります。しかし独立をいたしました以上は、法律によりまして、しかも明確な方法で、そして民主的に秩序を保つてこれらの運動をやつてもらうということが、一番望ましいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/123
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124・立花敏男
○立花委員 大体考え方がわかりましたから、こまかい点は他日に譲りたいと思いますが、今の意見に対しまして一つ二つだけ反駁を加えておきたいと思います。
たとえばこの法案には、集会あるいは示威行進をやつていいということはどこにも書いてありません。しかもその間におきまして、補正命令あるいは遵守命令というような、非常に強力な、しかも複雑な、利用の仕方によつてはいかなる集会、デモでも実力をもつて禁止できるような命令を規定しておる。しかもその命令に従わなかつた場合は、その集会あるいはデモに対して実力で粉砕することを規定しておる。こういうものがはたして許可制にまさる民主的なものであるかどうか。しかもこれが京都の裁判所ではつきりいたしておりますように、この一般的な制限は憲法違反ということにならないだろうか。憲法に違つておると言われないだろうか。これは明白なことだと思う。しかも今日幸いなことに五・三〇の今日の集会あるいはデモを実力をもつて昨日から禁止しておる。この事実が百の言葉よりも明白にあなたたちにこの法案の意図を暴露しておると思う。今日はまことに幸いな日なのでありまして、これが暴露されたことによつて、二年前に殺されました橋本金二君の霊を慰めることになると思うのですが、今日こういう反動的な法案をお出しになつて、それがまつたく反動的なものであることは、今日の集会を禁止したことによつてはつきりしておるし、あなた方の反動性が暴露されたことによつて、大衆の闘いの方向がはつきりいたしますので、私は非常に幸いだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/124
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125・金光義邦
○金光委員長 本日はこの程度で散会いたします。
午後四時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05719520530/125
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