1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月二日(月曜日)
午前十一時三十六分開議
出席委員
委員長 金光 義邦君
理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君
理事 吉田吉太郎君 理事 床次 徳二君
理事 門司 亮君
大泉 寛三君 川本 末治君
門脇勝太郎君 小玉 治行君
前尾繁三郎君 龍野喜一郎君
鈴木 幹雄君 藤田 義光君
森山 欽司君 加藤 充君
八百板 正君 大石ヨシエ君
出席国務大臣
法 務 総 裁 木村篤太郎君
出席政府委員
法制意見長官 佐藤 達夫君
法務府事務官
(法制意見第一
局長) 高辻 正巳君
法務府事務官
(法制意見第二
局長) 林 修三君
国家地方警察本
部次長 谷口 寛君
国家地方警察本
部警視長
(総務部長) 柴田 達夫君
国家地方警察本
部警視長
(警備部長) 柏村 信雄君
委員外の出席者
専 門 員 有松 昇君
専 門 員 長橋 茂男君
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六月二日
委員金塚孝君及び今村長太郎君辞任につき、そ
の補欠として森山欽司君及び龍野喜一郎君が議
長の指名で委員に選任された。
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五月三十一日
教育研究に対する電気ガス税免除に関する請願
(竹尾弌君紹介)(第三二六六号)
同外一件(若林義孝君紹介)(第三二六七号)
地方自治法の一部を改正する法律案の一部修正
に関する請願(安部俊吾君紹介)(第三二六八
号)
大須賀町に特殊飲食店街設置反対に関する請願
(前田榮之助君外五名紹介)(第三三三四号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
警察法の一部を改正する法律案(内閣提出第二
一九号)
集団示威運動等の秩序保持に関する法律案(内
閣提出第二三六号)
市の警察維持の特例に関する法律案(河原伊三
郎君外五名提出、衆法第三八号)
警察官等に協力援助した者の災害給付に関する
法律案(川本末治君外八名提出、衆法第六〇
号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/0
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001・金光義邦
○金光委員長 これまり開会いたします。
市の警察維持の特例に関する法律案、河原伊三郎君外五名提出、衆法第三八号を議題といたします。
本案につきましては、すでに質疑は終了いたしておりますので、これより討論採決を行いたいと思います。これより討論に入ります。討論を許します。大泉寛三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/1
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002・大泉寛三
○大泉委員 私は自由党を代表して、提案者の案に対して賛成の意を表するものであります。
この法案は先般立ち遅れたところの町村の警察を国警に移管しようとするあの案と大体似よつたような性質のものであつて、自治体警察を維持しないという住民の意思をそのまま受入れて——ただ市制施行をしたがゆえに自治体警察を存置しなければならないということはきわめて不合理であります。要は財政に苦しんで町村が行動し——市制を施行するということは、みずからの自治に完全を期そうとする目的のためであつて、警察の維持は第二義的なものであります。警察の維持は、財政上あるいは住民の意思によつてまたこれを維持し得ることも可能でありますので、とりあえずこの問題はやはり住民の意思をそのまま受入れて、市制を施行したからといつて、これを義務づける必要はないと私は思うのであります。この点から見ますと、当然これは市制施行に伴うところの自治警察の維持は将来にこれを延ばして、そうして現在の立場においては、一日自治警察の廃止ということに住民の意思が決せられた以上、それをそのまま受入れてしかるべきだ、こういうふうに私は思うのであります。たとえば一旦汽車に乘つてしまつた者は、その料金を払う力がない、それを払えと言つてもこれは無理である。そうかといつて、途中で落すわけにも行かない。やはり目的地までこれを乘せて行つてやらなければならぬ。将来において払えるようになり、あるいは自治警察を維持できるような財政状況になる、あるいは住民の意思によつたならば再びこれができるのでありますから、それだけの能力のないものは一応法律で認めてやらなければならぬ、こういうふうに思うのでありまして、現在の立場においては、非常に地方自治体の財政が苦しんでいるやさきに、一面においてこれを緩和するという道にもなりますので、本案に対しては賛成の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/2
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003・金光義邦
○金光委員長 鈴木幹雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/3
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004・鈴木幹雄
○鈴木(幹)委員 私は改進党を代表いたしまして、本案に対して反対をいたすものであります。
今日市が自治警察を持つということは、地方自治法並びに警察法の明らかに示すところであります。この原則を、この特例をもちまして新たに市になつた区域につきましては、警察維持の責任を国警に転嫁しようという案でありますが、このことは、市が持たなければならない義務であり、同時に権利でありますところの法の根幹に触るる根本的な問題であります。従つて今日警察制度がしかれまして、すでに四年の年月が流れておりますが、この四年の年月の期間を経過してみますならば、国家地方警察のあり方並びに自治警察のあり方につきましては、種々な検討を要する部面があると思うのであります。一例を申しますならば、国家地方警察が今日の姿におきましては、いろいろな面におきましての国家的な犯罪なり、あるいは大きな事件に対処する機能に欠くるところがありはしないかという問題があるのであります。現に警察法の一部改正の法案が提出されたのも、そこに理由があると思います。同時に自治体警察にいたしましても、いろいろ財政的な理由であるとか、あるいは警察機能の問題であるとか、あるいは警察の能率の問題であるとか、種々な観点からいたしましてこの再検討が迫られておることは、世間周知の事実であります。現にそれがために、町村におきまして自治体警察を維持しておりますものが、住民の意思決定によりましてこれを廃止することができる、あるいは廃止をいたしましても将来持つことができるというような改正がなされたのは、そこにゆえんがあると思うのであります。しかしながら私はこういう根本的な問題を検討するがために、この特例のごとき法律案をもつていたしまして、知らぬ間に市が権利であり義務であるところの自治体警察維持の原則を打破ろうとする方法につきましては、賛成することができないのであります。すみやかに警察法の根本問題を検討いたしまして、自治体警察のあり方につきまして、そうして自治体警察の全面的なあるいは根本的な立場から、この問題を改正すべきものとしてやられるならば、われわれは新たに検討をいたしたいと思いますが、特例のごとき法律案をもつてすることにつきまして反対をいたしまして、私の趣旨を明らかにいたしたいと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/4
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005・金光義邦
○金光委員長 門司亮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/5
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006・門司亮
○門司委員 私は今提案されております市の警察維持に関する特例の法案に対しましては、社会党を代表いたしまして反対の意思表示をするものであります。
先ほど改進党の方からも申されましたが、この問題は一応特例という形を示しておりますけれども、この包蔵いたしております内容は、明らかに現在の警察法に定めてありまする基本的の問題をきわめて大幅にかえようとする考え方であり、さらに地方自治法に定められておりまする市の條件、いわゆる町村が市に昇格をいたします場合の一つの基本條件になつております人口三万というこの既定の事実に対しましても、やはり非常に大きな問題を投げかけておるのでありまして、従つてもしこの法案がこのまま通過するといたしますならば、当然市になれば自治警察を持たなければならないものが、持たなくてもいいという規定が一方にできて来る。従つて町村の警察を廃したものがこれから市になりました場合は、この法案の恩恵に浴することができるのでありますが、既存の自治警察を持つております市は、この恩恵に浴することもできなければ、また現行法によりますならば、提案者は財政云々と言われておりますが、財政がどんなに苦しくても、現在の自治警を持つている市に対しましてはこれを廃止する道はないのであります。従つて一方においてはこの法案のために非常に恩恵を受ける都市もできますし、また一方においてはその恩恵に浴することができないような矛盾が出て来るのでありまして、従つて私どもはこの法案自体が、警察法並びに自治法の基本に触れるきわめて大きな問題を蔵しておりますので、これについては断じて承服はできません。同時に具体的に申し上げますならば、行政上にそういう不公平が必ずできて来るであろうということであります。もともとこういう法案は、もしこれが提案され、あるいは検討されるとするならば、自治法並びに警察法も根本の問題をやはり検討すべきであつて、財政上の問題から市になつても運営ができないというならば、やはり財政上の問題を考慮して自治警察のあり方というものを検討し、さらに自治法におきましても現在の三万の人口を規定いたしておりますものが、自治警察を維持することが困難であるといたしますならば、やはり市に自治警察を置くということに警察法できめておりますから、当然これと相関連して自治法の修正も行わなければ、これは理論の通らない話でありまして、従つてこういう特例によつて基本の法案に対して影響を及ぼすようなことは、立法の趣旨から申し上げましても、私どもには賛成がしがたいのであります、
以上二つの理由をもちましてきわめて簡單ではございますが、この法案に対する反対の意思表示をするものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/6
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007・金光義邦
○金光委員長 加藤充君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/7
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008・加藤充
○加藤(充)委員 日本共産党はこの法案に反対です。簡單にその理由を述べます。
大体財政面からこの法案の必要があるのだ、こういうようなことを言つておりますが、これはごまかしです。地区方自治行政の現状、いわゆる行政事務面においても、財政面においてもまさに崩壊状態になつております。この原因は中央政府、吉田内閣の売国奴政策のための行政面、財政面の地方自治体に対する下請か、あるいはしわ寄せという面から起きて来ているものであります。そしてまたこのことが、地方住民の生活の一切の貧困と破壊の原因になつておるのであります。この根本原因を突きとめないでおいて、そうしてまた突きとめてそれを除去することなしに、地方の負担がどうだとか、地方住民の意思がどうだとかいうようなことで、この本質的に重大な法律を通そうというのは、私はまことに瞞着者であると思うのです。本法案は警察法の改正などと相まちまして、警察国家の再現強化をねらうところの政策の一部であります。何かおためごかしの地方財政の行き詰まり、負担の重いところをかわつでやつてやるというような親切ごかしでやつておりますけれども、その意図は不逞もきわまるものであります。地方自治体を崩壊させ、本来の自治制度を実行して行けないようにしておきながら、持たねばならない自治警察にかわつて、強力な国家警察にこれを置きかえようとしているものであります。それから同時にこの法案は巧妙な中央からの自治制への干渉、支配をもくろむものであります。住民の意思に基いてというような民主的な口実をつけておりますけれども、やむを得ずしてそういうことになり至つた地方住民の意思というもの、考え方というものは、これは巧妙な中央政治のやり方で引きずり出され、引込まれた結論でありまして、そういうところに追い込んでおいて、そうして親切ごかしに国家警察に置きかえて行くというようなことは、これは卑怯下劣だ。この法案は先ほど来申し上げましたように、自治制度と警察制度の現行制度的な本質に変革を加え、警察国家の再現強化の橋頭堡を構築する法律であります。自治警の一角をくずし、遂にかかる手口によりまして国家警察を中核とする警察国家実現への道を強行するという、まことしやかな口実のもとに不逞もはなはだしい法案であり、その本質を私どもは突きとめなければならないと思うのであります。
以上簡單ですが、わが党の反対の意見を申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/8
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009・金光義邦
○金光委員長 八百板正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/9
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010・八百板正
○八百板委員 私は市の警察維持の特例に関する法律案に対して、日本社会党第二十三控室を代表して反対の意思表示をするものであります。
警察の維持に関する責任が、国警に移転せられました理由を考えますと、その国警に転移せられました理由の中には、当然に町村の財政が貧しくして、これをまかない得ないという條件が前提となつて、住民の意思が表示せられておつたということは隠すことのできない事実であります。従つてそのような財政上の困難を條件として表示せられました住民の意思をもつて明らかに法律の上に定めておられますところの市の当然置かなければならない自治警の設置を——前に拘束された自由な意思の表明のできない状態のもとにおいて表わされました住民の意思をもつて、これを尊重するという名のもとに、原則である自治警の市の設置を省略するということは明らかに自治警を廃止して、やがて国警一本に持つて行こうとするところの経過規定ともいうべきものであつて、とうてい賛成することはできないのであります。以上私の反対の理由を明らかにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/10
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011・金光義邦
○金光委員長 ほかに討論の通告がありませんので、これにて討論は終局いたしました。
これより採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/11
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012・金光義邦
○金光委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決されました。
この際お諮りいたしますが、ただいまの法案に関する報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/12
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013・金光義邦
○金光委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/13
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014・金光義邦
○金光委員長 次に本委員会に付託されました警察官等に協力援助した者の災害給付に関する法律案、川本末治君外八名提出、衆法第六〇号を議題といたします。
まず本案について、提出者よりその趣旨について説明を聽取いたします。川本末治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/14
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015・川本末治
○川本委員 警察官等に協力援助した者の災害給付に関する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
今般提案いたしました警察官等に協力援助した者の災害給付に関する法律案の提案の理由並びにその内容につきまして御説明申し上げますと、この法律案を提案いたしました理由は、職務によらないで国家地方警察の警察官または市町村警察の警察吏員に協力援助し、災害を受けた者に対して、国または地方公共団体が療養その他の給付を行う制度を確立するためであります。
御承知のごとく、すでに明治十五年太政官達第六十七号(一般人民巡査同様ノ働ヲナシ死傷セシ者弔祭扶助療治料支給方)によりまして、警察に協力援助して災害を受けた者に対する給付がなされて来たのでありましたが、この太政官達は、日本国憲法の施行に伴つてその効力を失うこととなつたのでありまして、現在それにかわるべきものがなく、警察官または警察吏員に協力援助してそのために災害を受けても、それについての法的な救済方法が確立していないため、統一を欠いてとかく紛議をかもしやすく、その実効性を欠いているのであります。そこでこれら警察官等に協力援助してそのため災害を受けた者について、その本人及び遺族に対して必要と認められる給付を行い、これら警察に協力援助したことに対する公的な救済手段をとる必要があると存ずるのであります。
次にこの法律案の内容について御説明申し上げます。
この法案は、本文十三條及び附則一項からなつております。
まず第一條においては、この法律の目的について定めてあります。第二條におきましては、職務執行中の国家地方警察の警察官または市町村警察の警察吏員が援助を求めた場合、その他これに協力援助することが相当と認められる場合に、職務によらないで当該警察官等の職務の遂行に協力援助した者が、そのため災害を受けました場合に、国または地方公共団体がその療養その他の給付をする責めに任ずることとしたのであります。
次に第三條におきましては、給付を行う者について定めてあります。すなわち協力援助者が(一)国家地方警察の警察官に協力援助した場合、(二)都道府県公安委員会の要求により援助におもむいた自治体警察の警察吏員に協力援助した場合、(三)国家非常事態の布告のあつた際において、派遣を命せられて職務を執行する自治体警察の警察吏員に協力援助した場合には国が給付を行うこととし、(二)、(三)以外の場合における自治体警察の警察吏員に協力援助した場合には、当該地方公共団体が給付を行うことといたし、あわせて、自治体警察相互間の援助の際には、援助を要求した地方公共団体において給付を行うことといたしました。
次に第四條は、この法律に基き給付を実施する機関として、国が行うべき給付の実施機関は、国家地方警察本部とし、地方公共団体が行うべき給付の実施機関は、当該地方公共団体が條例で定めることをしたのであります。
次に第五條は、給付の種類についてであります。給付の種類は(一)療養給付(三)障害給付(三)遺族給付(四)葬祭給付及び(五)打切給付の五種類といたしました。特に必要がある場合には、休業給付をすることができることといたしました。
次に第六條でありますが、本法により国の行います給付の範囲、金額及び支給の方法その他給付に関し必要な事項は国家公務員災害補償法の規定を参酌して政令で定めることとしたのであります。地方公共団体が行います給付の範囲等につきましては、当該地方公共団体がこの政令の規定に準じて條例で定めることとしたのであります。
次に第六條において国または地方公共団体がこの法律に基く給付を行つたときの損害賠償の免責について規定し、第七條において給付を受けるべき者が他の法令による給付または補償を受けたときはその限度においてこの法律に基く給付の責めを免れるものとし、かつ、第三者より損害賠償を受けたときはその価額の限度においてこの給付の責めを免れるものとし、あわせて第三者に対する損害賠償の請求権の取得について規定しました。
次に第九條ないし第十三條において時効、給付を受ける権利の保護、非課税及び戸籍の無料証明について、他の災害補償の法律の規定に準じて本法にも規定することとしたのであります。
最後に附則において、この法律の施行の日を公布の日から三月を経過した日からとしたのであります。
以上がこの法律案の提出理由及びその内容の大要であります。何とぞ御審議のほどをお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/15
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016・金光義邦
○金光委員長 これより質疑に入ります。質疑を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/16
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017・門司亮
○門司委員 この法律は、表面もつともらしいりくつがくつついているようでありますが、この中へ書いてあります警察官の協力を求めるという範囲が実は明確になつていないのでとあります。従つてこの協力を求めるという範囲をもう一度御説明を願つておきたい。これはこの法案の施行にあたつて非常に重要な問題でありまして、たとえば現行犯なら現行犯に限るというような制限が加えられておればまだいいのでありますが、この法案をこのまま読んでみますと、そういう制限が加えられておらない。従つて警察官の依頼によつては、何でもそれに援助をしなければならないようなことができて来ますと、これは将来スパイ行為みたいなものが、この法案があることのために警察官が個人に依頼することができるということになると非常に困りますので、一体その規定をどうしてこの中に設けなかつたかという理由を、ひとつ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/17
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018・川本末治
○川本委員 御質問の点は、範囲をなせはつきり規定しなかつたかという御質問のように承りますが、これは従来もしばしば行われて参つておりまする点でありまして、ただこれをはつきり規定いたさなかつたことは、御承知のように警察官以外の一般人がこれに協力援助する場合は、求められて援助をする場合に限るようにしておりますが、刑事訴訟法におきましては、御承知のように現行犯の場合でも、本人以外の者はこれの援助を求められなければやらなくてもいいというようなことになつております点から申しましても、広くこの範囲をはつきりしておかなくても、従来の通りの慣例でさほど大きな問題にはならないだろう。これをもし一々範囲をきめますと、非常に複雑になつて参りますので、この場合すでに明治十五年以来行われて来ております問題でありますのと、最近ここ数年間の例に徴してみましても、さほど大きな問題はないようでありましたので、特にそういうことを限定することを避けたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/18
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019・門司亮
○門司委員 そういうことを避けたということになつておりますが、それが避けられておることに私は疑問があるのでありまして、太政官令の公布にいたしまして、これは国がすべての警察権を握つております場合においては、あるいはこういうことが一応書かれたかもしれない。しかしこの場合においては、地方の自治体警察がやはり持つております。従つて太政官令がそのまま私は現行法の中に移されるということについては、財政上の問題から申し上げましても、やはり検討しなければならない問題が出て来る。同時にそういう必要がないという御答弁でありますが、実際上の問題といたしましては、ここにも第二條に「警察吏員がその職務執行上の必要により援助を求めた場合」こう書いてあります。従つて職務執行の範囲というものは非常に広いようであります。本人が当然捜査を要する場合等も警察官の職務執行の範囲であります。そういたしますと、捜査に必要な捜査を依頼するというようなこと、これがもしこの法律が適用されるということになつて参ります。と、先ほどから申し上げておりますように、一警察官の依頼により司法権の発動が出て来るようなことにならざるを得ないのであります。こうなつて参りますと、非常に大きな問題になると私は思う。いわゆる現行犯として目の前の窃盗罪であるとか、あるいは傷害罪であるとかいうものに対してのみこれが限定されたものであればこれは別でありますが、職務の執行上ということになつて参りますと、当然私はそういうものが俘かんで来ると思う。そういたしますと、さつき申し上げましたようにその依頼をする警察官の認定によつてこれがきめられて行かなければならない。こうなつて参りますと、この法の運用は非常にむずかしくなつて来る。たとえば普通の人が警察官に頼まれたからといつて捜査をするというようなことがありますならば、捜査権は明らかに司法警察官としての一つの仕事であるが、そういうものが普通の人にもできて来るということになると、私はこの法の運用が非常にむずかしいと思う。従つてもし今のような太政官令があるからこれを生かそうというような御趣旨であるならば、やはり太政官令の趣旨であるように、これは明確にここに書いて、そうしてこれこれこういう事態にはこういうことができるのだということにしておきませんと、これは法の運用上には非常に弊害のできることになりはしないかと考える。その点について、立案者はどういうふうにお考えになつておりますか。この職務執行上という文字はどの範囲をさされておるのであるか。この点を一応御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/19
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020・川本末治
○川本委員 御質問の要旨は、執行の範囲にあるようでありますから、現在警察の職務に当つております当該官吏の、事実上この法律制定後におきまする取扱い等の点につきましては、その方面から詳細な説明をいたさせる方が御趣旨にかなうように考えますので、政府委員の方からひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/20
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021・柴田達夫
○柴田政府委員 職務執行上の必要からという場合は、どういう場合であるかというお尋ねであつたと思うのであります。これは警察官が現実に職務を執行しておる際に、事実上援助を求めるという場合でございまして、実例といたしましては多くの場合、たとえば犯人を追跡中でありますとか、あるいは警察官が犯人によりまして危害を受けるというような場合に、居合せた民間の方から危急の場合助けてもらう、こういうような場合に当てはまるものであろうと存ずるものであります。従いましてその場合の民間協力者の行う援助というものは、まつたく事実上の援助である。司法警察権の執行といようなことではないものであると解釈をいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/21
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022・門司亮
○門司委員 私も大体そういうことだと思いますが、もしそうだとすれば、間違いのないように、やはり警察官の職務執行上これこれのものだけであるということが明記され、さらに一般人に対しましても、その規定を受けて、大体これだけの範囲において援助することができるというような規定がこの中に設けられておりませんと、さつき申し上げましたような、一警察官のものの考え方の誤りから来る社会的に及ぼす影響は、かなり大きなものが将来出て来ると私は思うのであります。それならその依頼を受けた範囲というものは一体どのくらいに限定されるかということ、たとえば今追跡をする場合というお話でありますが、もし現行犯を追跡してこれがつかまらなかつた場合には、その依頼を受けた人はその場限りでその責任はのがれるのか、あるいは追跡をした犯人をどこまでも逮捕することを依頼されていると解釈していいのか、そういう点についても、私は将来誤解を生むと思いますが、どういうふうにお考えになつておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/22
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023・柴田達夫
○柴田政府委員 お答えいたします。そのような場合においては援助を求められた民間の協力者は、これを援助しなければならないという何らの義務を伴うものではないと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/23
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024・門司亮
○門司委員 もとより義務はないと思いますが、義務がないだけに結局縛つてもないということであります。本人の意思次第だと思います。警察官の方も範囲が限定されておりませんから、自分の職務執行であるということになれば、いわゆる犯人追跡だとか現行犯だけではありません。警察官の任務はそのほかにたくさんあります。警察官のあらゆる職務執行のためにこれが行われることになる。ここにはちつとも締めくくりがついておりません。さつきから申し上げますように、警察官が自分の認定で職務執行上頼んで、頼まれた方も一体どこまで自分が頼まれたかわかりませんので、自分の解釈でいろいろなことをやるかもしれません。その場で犯人を逃がしておきましても、後日、具体的には二日目か三日目に犯人に会うかもしれません。それでこの間警察官に頼まれておつたから、ひとつやりましようというようなことにもなりかねない。こういう規定を設けるならば、逸脱した行為のないように、やはり法でありまする以上は締めくくりをしておく、逸脱する危險のあるものを野放にしておくということは、私は非常に将来に危険が出て来るのではないかというように考えられます。その依頼を受けた人の責任制というものをこの中に何にも書いてない。義務づけたものではないと言つておりますが、しかし義務づけたものであるのか、あるいはその効力というものは一体どこまで続いておるのか、一向私はわからぬと思う。この依頼を受けた人の方は義務づけられておらない、あるいはそういう規定がないということについての御見解を一応承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/24
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025・川本末治
○川本委員 お答えいたします。御質問の点につきましては、あくまでも警察官から依頼を受けた場合のみに限定する考えで制定したものでありますから、従つてきのうその話があつたから、あす引続いてもう一ぺんやるというような権限は、一般人には全然義務づけられておるものでもなければ、ま、だそういうことを依頼することを許しておる法律ではありません。その点御了承を願います。あくまで依頼した場合のみ、その場限りのものだと御解釈を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/25
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026・門司亮
○門司委員 それからこれは消防法の、例の消防に援助した者に対してこれを救助して行くという趣旨とは非常に違つております。消防では現場の火災の場合と限定しております。火災の現場においては、一般住民も協力しなければならないということが義務づけられて限定されておる。しかしこの場合は限定されておりません。現行犯とも何とも書いてない。ただ職務執行とだけで、法に沿わざるところの、具体的にいうと、よけいなことといいますか、行き過ぎた依頼をした場合における警察官に対する取締りの規定は何も書いてない。従つて警察官は何でも依頼ができる。一体そういう心配はないとお考えになつておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/26
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027・川本末治
○川本委員 お説のような逸脱した職務執行をする警察官は、警察官としてはあり得ないはずでありますけれども、多数の中にはそうした考え方を持つ人間がないとも言えませんので、法の執行にあたりましては、十分警察官にこの法の精神を徹底せしめて、さようなことのないように十分注意をさせるという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/27
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028・門司亮
○門司委員 もう一つ聞いておきたいと思います。この法の内容をずつと見てみますと、ただ救済の方法を書いただけでありまして、法全体の建前からいえば、私はこれは市町村條例にまかせておいてもいいくらいではないかと考える。あるいは国が持ちまする場合においては、国の一つの政令みたいなもので間に合うことであつて、何もこれを法律として強要しなければならないという性質のものではないと思う。もしこれを国で強要するような法律にして、義務づけて参るということになつて参りますと、先ほどから申し上げておりますように、どうしてもこの依頼を受ける範囲というものが明確になつておりませんと、濫用される危険性が多分にあるのであります。濫用される危険性の多分にあるものを、一つの法律として地方の自治体に押しつけて行くということについては、私どもは納得できない。もしどうしてもこういう法律が必要であるというならば、これは單に警察に協力した者は国または地方公共団体がめんどうを見ることができるというような、きわめて簡單なものでも一応いいと考える。この中にはこまかい規定まで書いてあるが、こういう規定は当然自治体の自主性にまかすべきではないかと思う。これはさつきから申し上げますように、消防法の関係とは少し違います。消防法の方は明らかに法律で限定し義務づけておりますから、義務づけたものに対して法律でめんどうを見るということは当然であります。この場合は、住民の自由意思によつて、頼まれたからといつてこれに従わなくてもいいということになつております。義務づけられておりません。従つて自由意思のものであるならば、やはり地方公共団体の自由意思で決定するような方法がとらるべきではなかつたかと考えておりますが、この点に対してはどうお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/28
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029・川本末治
○川本委員 前段はどこまでも法の執行面にあたつての御質疑でありますが、これは先ほどお答え申し上げたように、当該関係者をして十分に法の精神を逸脱しないように行わしめるということであります。
さらに給付の面については、消防は御承知のように限定されておる仕事であります。警察官の場合は非常に範囲が広いと同時に、突発的な災害に対する給付規定でありますので、消防の場合とはいささか考え方をかえていたしました。いろいろ給付の額などにつきましてこまかく規定をいたしましたことについては、地方公共団体、国などにまかしておいたらどうだというような御意見のようでありましたが、これをきめましたことは、何かそこに基準を設けておきませんと、かえつてその場合にいろいろな相剋摩擦のできて来ることをおそれましたので、大体の基準だけを設けて、お手元に配付してあります法案のように多少幅をつけておいたような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/29
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030・龍野喜一郎
○龍野委員 私はこの法案は賛成でありますが、少し文句の解釈について、将来疑義を残さないためにお伺いいたしたいと思います。それは第二條中「国家地方警察の警察官又は市町村警察の警察吏員がその職務執行上の必要により援助を求めた場合その他これに協力援助することが相当と認められる場合」この場合のことについてお伺いいたしたいと思います。この場合この法律案文によれば、援助を求めるのは、單なる一人々々の警察官のようでありますが、そのように解釈してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/30
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031・川本末治
○川本委員 御質問の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/31
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032・龍野喜一郎
○龍野委員 そういたしますと、たとえば地方の駐在巡査がいろいろな危険のために、自分の考えによつて援助を求める、そうした場合にその援助の範囲が非常に行き過ぎるということになつて、たとえば一つの例を申し上げますならば、一駐在巡査が消防団を動かして大規模な逮捕に向うというような場合に、その消防団の中にはたとえばがけから落ちてけがするとか、あるいはまた何かはかの障害物によつて相当の危険に遭遇したという場合が多かろうと思います。どうもこの一人々々の警察官の判断でそういうような大規模な動員をする、その結果非常な救助をしなければならぬような該当者が出て、国家の負担あるいは地方団体の負担というものが相当増しはせぬかと思う。この援助を求める場合には、通常の場合においては、何か自治体警察の長あるいは国家警察の署長というものと連絡した上で、大規模な援助を求めるというのが適当ではないかと思われるが、どうもこの一人心々の巡査の判断において援助を求めるということをあまり簡單にやりますれば、先ほど門司委員も心配したごとく、濫用されはせぬかというような気持が起る、また濫用の結果は非常に弊害が出て来るわけであります。その辺のお見通しはどうでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/32
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033・川本末治
○川本委員 今の御質問の点でありますが、一人々々の警察官がもちろん援助を求めることも許されるのでありますか、大規模な問題などの場合には第三條の「給付の原因である災害が、警察法第五十五條の規定により、都道府県会安委員会からの要求に基き援助におもむいた」云々、こう規定しておりますように、大きな場合におきましては、もちろん上司の適当な指示によつてということでありまして、応急処置としては個人々々で行わせることができるように相なつておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/33
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034・龍野喜一郎
○龍野委員 それからその場合援助を求めたか求めないかというような、あとの証拠の問題でございますが、地方の駐在の巡査でもいたしておりますれば、あまり実質的には援助してもらわなかつたかもわからぬが、しかし頼まればしかたがないから援助という証明を出そうというようなことが起りまして、駐在巡査自身としても非常に困るような場合が起りはせぬかということも考えられます。それからもう一つお伺いいたしたいのは、「その他これに協力援助することが相当と認められる場合」というのはどういう場合のことでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/34
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035・川本末治
○川本委員 この点につきましては従来これを取扱つております警察関係当局の方から、説明をしてもらうことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/35
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036・柴田達夫
○柴田政府委員 協力援助をいたしました場合の証拠をどうするかという点でございますが、これはこのような場合の協力援助を求める性質上、文書によるとかいうような様式、行為にいたすわけには行かないと思います。あくまで事実上の関係で、明示の協力援助の要求依頼というものがあつたかどうかという事実関係の認定で参るよりほかにいたし方がないのであります。ただ時と場合によりましては、明示の意思によりまして協力援助を求めることが困難な場合があるかと思います。たとえば犯人に首を絞められておつて声が出ないというような場合におきまして、居合せた民間の人がこれを助ける場合でありますとか、あるいは川の中へ人を助けるために巡査が飛び込んだが、巡査自体がまたおぼれかかつたということを見るに見かねて飛び込んだという協力者がありましたような場合、これらの場合にはおそらくその警察官が声が出たならば当然援助を求めたであろうということが予想されるというようなことが、第二点にお尋ねになりました「これに協力援助することが相当と認められる場合」、つまり黙示の意思表示があつた場合、かように解釈をするのではなかろうかと存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/36
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037・龍野喜一郎
○龍野委員 そうするとたとえば被害者が犯人を逮捕した場合はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/37
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038・柴田達夫
○柴田政府委員 ちよつとお尋ねの点がわかりませんが、被害者が逮捕いたしまして災害を受けたというような場合には該当者になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/38
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039・龍野喜一郎
○龍野委員 私の言うことがわからぬかもしれませんが、たとえば強盗が入つて巡査が来る前に追つかけて行つた、巡査が来て巡査と一緒に追つかける、犯人逮捕に協力した場合に、被害者が抵抗するのはあたりまえのことで、これは別に積極的に協力するという意思もなかろうかと思いますが、自分が害を受けたのでありますから、これを報復するためにどろぼうをつかまえようというのはあたりまえのことで、協力しようという意思があつてここに協力援助したとは認めがたい場合が多かろうと思いますが、そういう場合のことを言つておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/39
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040・柴田達夫
○柴田政府委員 被害者であるから必ずこの法の適用を受けて、協力援助することが相当と認められる場合に該当するとは限らないと存じます。被害者が抵抗いたしまして逮捕して傷を受けたから、必ず協力援助者になるとは限らないと思うのであります。被害者といえどもその場合にその現実の状況に応じまして依頼を受け、または当然見るに見かねて助けたというような場合におきましては、この法案の対象になるものが出て来るというふうに、その状況いかんによるものであろうと存ずるのであります。かつその解釈は相当嚴密にすべきものであると存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/40
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041・龍野喜一郎
○龍野委員 私の言うのは少しわかつてもらえないかもしれませんが、ここに書いてある協力援助という場合、これは警察官と意思を通じたか通じないかということ、先ほど私がお伺いしたのはその意味でありますが、警察官に意思を通じなくて、積極的に自分に害を與えた犯人を逮捕して、そのためにけがを受けたという場合も、この法律に該当するかどうかということを聞いておるのでありまして、むろん巡査がつかまえようとするのに協力する場合は、これははつきりこの法案に該当しましようが、意思の通報がなくて報復の意味において一家総動員して犯人を逮捕する。これは人間の本能で、勇敢な人は必ずそういうことになるだろうと思うのでありますが、その場合に不幸にして重傷を負つたという場合も、こういう、医療給付なんかを受けるものに該当するかどうか。今まではあまりそういう話を聞かないのでありますが、今度は法律によつて、警察官に意思を通報せずして、自分の加害者を逮捕しようとして大けがをしたという場合にも、この給付を受けるかどうかどいう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/41
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042・柴田達夫
○柴田政府委員 ただいまの御指摘のような場合におきましては、当然にはこの法案の対象にはならないものと存ずるのであります。御指摘のような場合に、あるいはその行為が非常にほめるべきりつぱな行為であつたという場合もあるかもしれませんけれども、本法案の目的とするところは、そのケースが非常にほめるべきりつぱな行為であつたかどうかというようなこととはおのずから別問題でありまして、協力依頼を受けたために傷痍を受けたということに限定をして、解釈をいたすべきものであると存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/42
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043・八百板正
○八百板委員 どなたでもけつこうでございますが、お答えいただきたいと思うのであります。警察官等に協力援助した者の災害給付に関する法律案でありますが、この警察官等とは警察官以外に何を含んでおるかということを明らかにしていたたきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/43
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044・柴田達夫
○柴田政府委員 便宜私からお答えいたします。これは警察関係のときに警察官等という用語を最近使つておるのでありまして、これは厳密に申しますと、国家地方警察の警察官は警察官でございますが、自治体警察におきましては警察吏員というのが正確でございますので、一々警察官または警察吏員と申しますのを省略いたしまして、警察官等という用語を使いますのが慣例になつているような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/44
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045・八百板正
○八百板委員 そうしますと、警察官等というのは警察官あるいは警察吏員に限定せられるとはつきり考えてよろしゆうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/45
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046・柴田達夫
○柴田政府委員 第二條にもございますように、さように存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/46
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047・八百板正
○八百板委員 検察官は含まないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/47
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048・柴田達夫
○柴田政府委員 この法案は検察官は対象になつておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/48
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049・八百板正
○八百板委員 現行犯の逮捕について検察官に協力した場合は、この條文の拡張をしてそういうような取扱いができるというように考えられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/49
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050・柴田達夫
○柴田政府委員 お尋ねの点でありますが、協力を依頼する者が警察官または警察吏員の場合に限る法案であると存ずるのであります。それによりまして、依頼を受ける者が何人であつても、その援助を求められて行いましたる援助が、職務上当然の仕事としてやつたものではなくしてやります場合には、どのようなものでもこれに該当するものであると存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/50
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051・八百板正
○八百板委員 そういたしますと、これは依頼された場合、それから現行犯の場合だけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/51
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052・柴田達夫
○柴田政府委員 依頼の場合であると、第二條の趣旨から見まして当然であると存ずるのであります。現行犯に限るということは、この條文の中からは当然には出て来ないのではないかと思います。現行犯のような場合が多がろうということを想像されるのでありますが、必ずしも現行犯に限るものではなかろうと存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/52
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053・八百板正
○八百板委員 そうしますと、自発的つの場合もあり得るし、間接の犯罪検挙の場合もあり得るということになりますと、だれにでも必要に応じて協力を依頼することができる。そしてその結果起つた災害については、災害給付の責任が生じて来るということに一応なるわけであります。そういたしますと、先ほどから話が出ておりますように、一体相当と認められるというような場合、だれがこれを相当と認めるかというような判定の問題が、むしろ非常に重要になつて来るのではないかと思うのです。たとえば災害の点は明らかです。それから責任の点も責めを負う公共団体の責任は一応明らかになつておるようでありますが、その原因になつておる方面の認定が非常に不確定、あいまいでございまして、取扱い上いろいろな困難が起つて来るのではないかと思う。たとえば極端な場合、何かけんかがあつた。あぶないと見てだれがが仲裁に入つて、それをどうにかしてやつたという場合、それがために片手を切られたというような場合も想像されるわけであります。それは直接的に依頼されたのでもなくて、自発的に協力するという意味でやつた場合にそういう結果が起きたというものも、やはりその災害の責任がこの條項によつて給付を受けるかどうかというような問題が起つて来ると思うのですが、その点をもう少し明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/53
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054・川本末治
○川本委員 御質問は相当と認めるのはどこで認定するかという点でありますが、これは警察官の職務執行の上におきまして、当然ああした事態に対しては協力を求めなければやり得なかつたという社会通念上の点も加味いたしますが、同時にしからばどこで最後の—認定をするかという点につきましては、自治体の場合におきましては公安委員会、また国家地方警察の場合におきましてはそれぞれその上司において、適当と認めるような最後の認定をさせる、かように考えております。それから今の依頼を受けないで自発的にやりました場合には、あくまでもこの法律には該当しないというふうに、この法の精神としては考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/54
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055・八百板正
○八百板委員 その点もう少し明らかにしていただきたいと思うのです。自発的にやつた場合、頼まれた場合でない場合には、この法の適用を受けないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/55
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056・川本末治
○川本委員 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/56
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057・八百板正
○八百板委員 そうすると、その事態が発生した場合に、警察官が必ずいる場合にだけ適用されるわけですね。警察官が現場にいない場合に自発的にかつてにやつた場合には、状況がどんな状況であつても頼まれたと認めることはできないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/57
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058・川本末治
○川本委員 今の場合は必ず警察官がそこにおる場合かということですが、原則として当然それでなくちやならぬと考えますが、場合によりましてこうしたことが考えられると思いますのは、消防団などが実際に職務執行中において重大犯人をとらえんとして災害を受けた場合などは、今の御質問の点に至つては、必ずしも警察官が現場にいなくちやならないということにならない場合も出て来るのじやないかと思います。これを認定してやる場合には、やむを得なかつたのじやないかというような形にとつてもらうよりしかたがない、こう思います。あくまでも法の精神は、警察官が依頼して、職務に何ら関係のない一般人が警察官に協力して災害をこうむつた場合に、国または地方公共団体で何らの補償をしてあげなければいけないのじやないかという考えからこの法案を立案したのでございますから、多少今お答え申し上げたような結果になる点もあると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/58
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059・八百板正
○八百板委員 私がお聞きしておりますのは、頼まれた場合と、あるいは頼まれなくてもこうすべきだと判断して協力した場合はわかるのでありますが、一旦頼まれて、たとえば現場から離れたという場合に——現に警察官がいる場合は、直接の警察官の依頼という考え方である程度の判断ができるでしようが、頼まれてそれから飛び出して行つた、場所がわかつた場合、警察官的な独立した行動が許されて、その協力の結果ある場合には行き過ぎもありましようし、そういう場合に起つて来る損害、たとえば頼まれたからといつてどんどん深追いして、警察官と全然離れて、協力者が独自の警察官のような行動をやる場合、その者が行き過ぎて相手になぐられてもいいような行動をやつた、そういうことのためにあちらから切りつけられて腕を切られた、そういう場合も想像されるのでありまして、そういうような点の限界といいますか、そういうものが全部認定ということになると、心配の点があると私は思うのであります。それから今度は、認定に伴つて当然給付の義務が国なり、地方公共団体なりに出て来るわけでございますが、認定と給付者が違うわけです。ですから、こういうふうな点がもう少し明らかにされないと、何か問題が起つて来るのじやないかと思いますので、この点もう少しはつきりお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/59
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060・柴田達夫
○柴田政府委員 私からかわつてお答えいたします。警察官が現場に居合す場合が多いであろうと思いますが、たとえば現行犯人の逮捕にあたりまして、警察官が横にいる人に応援を求めた。こういうような場合に、その警察官がその現場でひつくりかえつてけがでもしておつて、民間協力者がこの現行犯人をさらに追跡して行つて、警察官が居合せないような場合に災害を受けたというような例もあろうかと存ずるのであります。依頼に基いて民間協力者が犯人によつて災害を受けたかどうかという認定につきましては、なかなかわかりにくいような場合も時にはあろうかと思います。これは一般の認定と同じように、そのときの目撃者でありますとか証人といつたようなものによりまして、その事実を確かめるより方法がないと思います。この認定を最後にいたしますのは、この法案の第四條であります実施機関の責任であろうと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/60
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061・大泉寛三
○大泉委員 さつき龍野さんへの答弁にちよつとあいまいなところがあつたので、それをはつきりさしておきたいと思います。犯人を逮捕する場合に、警察官に協力するということと、警察官の警察行為に至る前に犯人をつかまえたというようなこの線をやはりはつきりさしておく必要があると思うので、この点をお聞きしたいと思います。警察官独自の警察行為が起つた以後のものは協力と認めてよいように思いますが、警察官の警察行為が起る前は適用すべきではないではないか。たとえば警察官が犯人を追跡していた、ところが横から出て来てつかまえてくれたが、つかまえると同時にけがをしたという場合は、これは頼まれなくても当然適用を受ける。けれども、龍野さんの質問にあつたように、強盗が入つてとにかく警察行為に先だつてやつたというのは、まだ警察官の警察行為が発動されていないのですから、協力とは認められないと思うので、この点をはつきりさしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/61
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062・川本末治
○川本委員 お答え申し上げます。今の御質問の点は、強盗の例によりますと、警察官が来る前にすでに強盗逮捕に着手して、そこで早くもけがをしておつて、そこへ警察官が来た場合の問題の線がはつきりしないというように承りましたが、これは事実時間の問題でありまして、実際問題としては、事実の認定によりまして、当然適用すべきものであるという場合には、これを適用するように実際にあたつて認定してもらうよりほか線の引きようがない、かよう考えたものですから、先ほど龍野委員の御質問に対しましても、さようお答えしておいたような次第でありまして、実情によつて認定していただくよりほか方法がない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/62
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063・大泉寛三
○大泉委員 まだはつきりしません。警察官なり、警察吏員なりが、自分の職務を行動に移したそのときから出発しなければならないと思うのです。その前に起つた問題は、協力とはならないと思うのです。その点どこから時間的に区分するかということをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/63
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064・川本末治
○川本委員 それは今御質問の通りに、あくまでも警察官の依頼によつてこの法の適用は受けられるのでありまして、その点ははつきりいたしておりますが、ただ御質問の、引続き継続している場合をお答え申し上げているのであります。警察官が来ないうちに本人がやられた場合は、情におきましては御同情申し上げる点もあるから、これは他の方法によりまして、表彰などの規定があるようでありますので、そういう方面の適用を受けるようにいたしまして、この法律制定の精神としましては、あくまでも警察官に協力を求められた場合だけということを前提にしているのでありますから、さように御解釈願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/64
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065・大泉寛三
○大泉委員 私は、依頼された場合というのをもう少し広義に解釈して、たとえば逃げている犯人を警察官が追跡しているのを現に見ておつて、それをとつつかまえるのが目的である以上、協力者が横合いから出て来てつかまえた場合は、依頼されなくても適用されていいと思う。警察官が自分の職務遂行にとりかかつた、これが一つの境ではないか、こう思うのです。だから強盗が入つて、その前につかまえたというのは適用範囲外だと思うのです。これは時間的区分をはつきりしておかないと問題が起ると思うのです。龍野さんは法務政務次官の立場においてやられたので重要な点だから特に私はお聞きするのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/65
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066・川本末治
○川本委員 重ねてお答えを申し上げます。その点はあくまでも警察官が協力援助を求めたときに法律の効力が発生するものでありまして、それ以外の場合におきましては、先ほど申し上げましたように、他の事実の状況を酌量しまして、そういう問題がこの法律を適用されるようなことになるかどうかということについては、むしろはつきりしておく必要がありますので、協力を求められた場合、その後に発生するものというふうに立案者としては解釈いたしております。他は先ほど申し上げたように、他の表彰方法によりまして、そうした場合には表彰もしくは慰安を申し上げるというようにこの法はして行きませんと、あらゆる場合にあらゆる問題が出て来ると、収拾できなくなるのじやないかという考え方をいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/66
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067・小玉治行
○小玉委員 その区分の点が不明瞭のようでもありますが、太政官あたりも元来これは現行犯か準現行犯の場合を予想したのであつて、その以外に広げるということはちよつとおかしいのじやないかとぼくは思う。現行犯もしくは準現行犯ならば、一般人が逮捕の権利——義務はないけれども逮捕の権利がある。義務はないけれども逮捕の権利があるといつた状態のもとに協力援助したという場合にこれを局限いたさないと、人権の蹂躙という問題も起つて来る。警察官は逮捕の権限を持つている。あるいは家宅捜索、押収等の権限を持つている。しかし、現行犯以外の押収捜索、あるいは犯罪捜査等に一般人民を使うということは嚴に禁止しなければならない。本法案の適用の範囲は、一般人民が犯人を逮捕する権限があるが義務はないという場合に局限すべきものではないかと思つておるのでありますが、その点に対するところの御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/67
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068・柴田達夫
○柴田政府委員 現行犯という意味が、いわゆる刑事訴訟法上の現行犯逮捕という場合の現行犯でありますと、これは当然警察官が権限の上において職務を執行する場合でございますので、現行犯逮捕に限らず、あるいは令状を執行しに行つた、あるいは相手が人間でなく、災害発生の時期でありますとか、あるいは狂犬狩りの場合とかいろいろの例があると思いますから、現行犯に限らないということを申し上げた次第であります。御質問の趣旨は、おそらく、常に現場のそういう場合に限るかということかと思いますが、そういう意味におきましてはその場合に限られることになろうかと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/68
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069・金光義邦
○金光委員長 せつかくの小玉委員の御質疑中でございますが、理事会を開きたいと思いますので暫時休憩いたします。
午後零時五十三分休憩
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午後二時三十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/69
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070・金光義邦
○金光委員長 休憩前に引続き再開いたします。
警察法の一部を改正する法律案及び集団示威運動等の秩序保持に関する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。質疑を許します。門司亮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/70
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071・門司亮
○門司委員 私は今議題になつております警察法の一部を改正する法律案について、法務総裁に御意見を承つておきたいと思いますが、この法案の内容については、齋藤国警長官に前の委員会でお聞きをいたしましたので、こまかい内容についででは触れないで、ただ提案されました理由の中には、警察権に対してこれらの責任の所在を明確にするために、内閣がその任免権を持つことがいい、いわゆる国家警察の本部長官、それからさらに警視総監等の任免権は内閣が持つことがいい、こういうことであります。さらにその次には、必要のあつたときには、内閣総理大臣は各国家地方警察並びに市町村警察に対しても指示をすることができる、こういうことであります。この指示ができるということは、指示を受ければそれが拘束をするということであります。これは字句が「指示」という言葉を使つてありますが、実際は命令にひとしいものである、あるいは命令であると解釈してもいいと私は思います。そういうことになるのでありますが、もとより治安の責任が内閣にある、いわゆる行政の責任は内閣にあるということは憲法で示した通りでありまして、これに間違いはないのであります。そこで問題になつて参りますのは、現行の警察法でただ責任の所在を明確にすることがいいということだけで、一体治安の確保ができるようにお考えになつておるかどうか。現行の警察法では治安の確保ができないというようにお考えになつております理由を、もう少しはつきりこの際総裁に表明しておいていただきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/71
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072・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。申すまでもなく、現行警察法のもとにおきましては、国家公安委員会の行政管理のもとに国警長官が任命されるのであります。運営管理は、都道府県会安委員会がこれをやる、また特別区の方では、行政管理も運営管理もひとしく特別区公安委員会でやります。政府はこれに対して何ら関係していないのであります。改正におきましては国家の最も元締めである——但し運営管理はやりませんが、行政管理をやります国警長官を総理大臣が信頼すべきものをもつてこれを任命いたしますと、その関係において警察の方面がスムーズに行く、また特別区の警察、ことに特別区は御承知でありましようが、政治の中心であり、文化の中心であり、経済の中心であるこの東京都に関すること、今後外交使節がどんどん東京都に集まるような関係にあるのでありますが、これに対して最も重要な地位を占めております警視総監いわゆる警察長でありますが、これに対しても内閣の首班である総理大臣が最も信頼すべきものを任命いたしまして各種の連絡をとる、これがこの改正法の趣旨であります。また全国の公安委員に対して特別の必要あつた場合に、すなわち国家治安維持上重要な場合においては直接に指示を與える、こういたしますと警察の運営が総理大臣のもとに十分円満に行われるということになりますので、この一部改正法によつてさような趣旨を取上げて立案したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/72
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073・門司亮
○門司委員 今の大臣の答弁でありますが、私は今の大臣の答弁をそのまま受取つておりますと、治安の責任は内閣にある、さらに行政の責任並びに運営管理の面は非常に重要であるから、従つて内閣総理大臣の信頼のできる人を任命する、これは警視総監においても首都である関係から同じだ、こういう御答弁のように受取れるのでありますが、そうなつて参りますと、現行警察法の中に定めておりますいわゆる警察の運営管理に当つております国家公安委員につきましては、大体内閣総理大臣がこれを推薦いたしましてそうして国会の承認を得ることになつておる。そういたしますと、もとよりこの公安委員を推薦いたします内閣総理大臣は、当然自分の信頼する公安委員を推薦しておる。しかもそれに対しましては民主的である国会がこれに承認を與えておる。この自分が推薦をし、国会が承認を與えてできております国家公安委員の推薦した者が信頼ができないということは私は非常に大きな問題だと思います。民主的にそういう形でできております者を、どうしても内閣総理大臣が信頼できない、従つて別にこれを定めることがいいということになつて参りますと、現行の法律のもとに行われております国警長官に対しましては、信頼ができないというように解釈してもさしつかえがないように聞えるのでありますが、一体法務総裁は、この提案されました理由の一つの大きなものとして、ただいまお述べになりましたことから、これを具体的に申し上げますと、現在の国警長官というものが信頼するに足りないというように私とも聞えるのでありますが、そういうふうに解釈してよろしゆうございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/73
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074・木村篤太郎
○木村国務大臣 国家公安委員を信頼しないわけではありません。もとより国家公安委員は、国会の承認を得て内閣総理大臣が任命する、その関係においては、むろん全幅の信頼をするわけであります。従いまして、本法案におきましても、国家公安委員の意見を徴して、そうして内閣総理大臣が任命するというふうになつておるのであります。十分に国家公安委員と話合いの上で、総理大臣が最も信頼し得べき者を任命するということになるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/74
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075・門司亮
○門司委員 私がもう一つ後段にお聞きいたしました、これの具体的の事実として国警長官が信頼することができないというような具体的の事実があつたかどうか。この法案を提案されます以上は、何らかの具体的のものがなければ、こういうものは出せないのでございまして、現行制度では都合が悪いと言われておりますので、單なる理論的のものではありませんで、実際的に今の、露骨に言いますならば、国警長官が、どうも自分の信頼する人でないから、治安が乱れて来るのだというようなお考えをお持ちになつて、こういうものをお出しになつたかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/75
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076・木村篤太郎
○木村国務大臣 ただいまの御質問によりますと、現在の国警長官が信頼できぬから、かような法案を提出したのじやないかというように受取れますが、決してさような事実はありません。きわめて現在の国警長官と公安委員の関係も、また総理大臣の関係も密接に行つておるのであります。附則におきましても、現在の国警長官が当該職にあるものとして、職務をやはり引続いてやつていただくことになつておるのであります。ただ全般的に考えましてかような体制をとるということが、国家全体から見て、きわめて妥当な考え方である、将来におきましてもかような法規の制定をしておくことが、国警長官と総理大臣とが密接に関係を持つて、円満に事を運ぶという点から、きわめて妥当であろう、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/76
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077・門司亮
○門司委員 そういたしますと、この法案を出された原因の一つであるとわれわれが考えておりました、またそうでなければならないと考えておりました現行警察法に対しても、現在の状態において何らの変更を加える必要はないのであります。ただ将来に向つてこういうことがいいであろうというようなことで、この法案をお出しになつたかどうかということをもう一応念を押しておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/77
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078・木村篤太郎
○木村国務大臣 現在のさしあたりの問題ではありません。制度の問題としてかように確立させることが、全般的に考えて妥当なことだと信ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/78
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079・門司亮
○門司委員 制度の問題としてこういうことにすることがいいというお話でありますが、そうなつて参りますと、この警察法を制定いたしました当時の趣旨に対して、私どもは御質問をしなければならないようになつて参るのであります。警察法を制定いたしました当時の状況あるいは当時の事態というものは、一々ここで御説明を申し上げる必要はないかと思いますが、この警察法には大臣も御承知のように、第一章の総則の前に前文がついております。一応念のために朗読をいたしておきますが、「国民のために人間の自由の理想を保障する日本国憲法の精神に従い、又、地方自治の真義を推進する観点から国会は、秩序を維持し、法令の執行を強化し、個人と社会の責任の自覚を通じて人間の尊厳を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する。」こう前文に書かれておるのであります。これが当時の警察法のできたゆえんでありまして、従つて第一章総則第一條以下は、この精神に基いてこしらえられておる。すなわち第一條には、警察の活動は、嚴格に前項の責務の範囲に限られるべきである。しかもその前項の責務の範囲というのは、ここに「警察は、国民の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当ることを以てその責務とする。」こう書いてあります。この第一條の規定と前文とさらに警察法全体を総合いたして参りますと、今日の警察法は明らかに民主的権威の組織を確立する目的だということになつておりますが、この民主的組織の権威を確立するというこのことは、今警察法に定められておりますように、民主的の国家として権威のある国会が承認して、国家公安委員の任命が行われる。その国家公安委員が任命いたしました国警長官が、たとい将来の問題といたしましても、内閣総理大臣の任命するところでなければならないということになつて参りますと、行政府であります内閣総理大臣がこれを任命するということである。この民主的権威の組織を確立するというこの民主的の組織の上に立てられた、しかも権威ある国会の承認を得て任命するという径路をたどつておりますときに、この制度に対してこの制度では安心ができないということになつて参りますと、この警察法の前文の、さつきから朗読をいたしております意味を冒涜することに私はなると思う。従つて警察法の精神自体を非常に大きく私はくつがえすものである、こう考えておりますが、この点に対して大臣はどういうようにお考えになつておるが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/79
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080・木村篤太郎
○木村国務大臣 もとよりこの警察法の前文の趣旨は、警察制度として確立されておるのであります。従いまして、今度の法案におきましても、決してこの民主的権威の組織をくずそうとするものではないのであります。国家公安委員が国家警察の行政管理の任に当る、いわゆる監督権を持つておるのでありますが、それらの点についてのいわゆる根本的の組織を動かすような建前は、少しもとつておりません。従来と同一であります。しこうして国家公安委員の意見を徴して、総理大臣が国警長官を任命する、これはただただ国勢長官と内閣総理大臣との関係を円満密接ならしめるためにほかならないのでありまして、根本的にこの警察法の前文の精神を乱すものではないと確信しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/80
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081・門司亮
○門司委員 「民主的権威」という言葉を使つておりますが、この民主的権威という言葉を使つておりますものは、民主主義の原則をやはりここに表わしたものだと一応解釈ができるのであります。民主主義の原則はどこまでも責任政治であり、責任の上においてすべての行政が行われなければならない。そうして運営管理をなすものは公安委員会である、任命権者が総理大臣であるということになつて参りますと、その長官の責任は一体だれに負うべきかであります。総理大臣に負うべきか、あるいは国会が承認を與えたこの公安委員に対して責任を負うべきかという問題が出て来るのでありますが、この場合は長官並びに警視総監はだれに責任を負えばいいかということであります。どちらに責任を負うべきであるか、その点をひとつ明確にしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/81
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082・木村篤太郎
○木村国務大臣 もちろん国警長官は国家公安委員に対して責任を負い、警視総監は特別管区の公安委員会に対して責任を負つておるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/82
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083・門司亮
○門司委員 長官は国家公安委員会に対して責任を負い、さらに警視総監が東京都の公安委員会に対して責任を負うことになつて参りますと、任命権者である総理大臣の指揮命令に従わなくともいいという結論が出はしないかと考えるのです。従つて責任の所在というものを私は明確にすべきであると思う。運営管理を行う者と命令権者とが違つでおります場合は、私はどこに責任を負うべきかということでわからない問題が出て来る。この法案を出されました理由書の中にあるように、国が最後の責任を負うべきであるから、こういうふうにしなければならないということになつて参りますと、長官の責任は当然内閣総理大臣に負うべきだと私は解釈するのでありますが、大臣の意見がこれと食い違つておるということについては承服できないのであります。再度御質問申し上げますが、大臣はそれでいいとお考えになつておるかどうか、この提案の趣旨と私は違うと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/83
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084・木村篤太郎
○木村国務大臣 任命についての責任は、内閣総理大臣が負うべきであろうと考えております。これは当然のことであろうと思います。しかし国家警察の行政管理についての責任は、国警長官が公安委員に対して負うべきものであろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/84
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085・門司亮
○門司委員 そういたしますと問題が出て来るのでありますか、内閣総理大臣の意思に運営管理の方法があるいは反するかもしれない。そういう場合がかりにあるといたしました場合には、長官はもとより総理大臣に責任を負わなくともいいということになるといたしますと、総理大臣の意思に従わないで、国家公安委員会の意見だけに従うということになつて参ります。そうするとこの法案を提案されました理由がまつたくなくなると私は思う。この法案を提案されました理由書は、私が言うよりも、大臣の方がよく御存じになつていると思いますが、警察行政に関する内閣の責任を明らかにし、治安の確保に資するためと書いてあります。内閣の責任を明らかにするということになつて参りますと、当然国警長官はやはり総理大臣に対して責任を負うべきである。負わなければ、内閣総理大臣はその責任を明らかにされるわけには参りません。自分の意見と食い違つたことをされて、その責任を背負うということではおかしな話で、私はどこまでも今の大臣の答弁は、提案理由の趣旨と食い違つた答弁だと考えておりますが、なおそれでも大臣はそういうふうにお考えになつておるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/85
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086・木村篤太郎
○木村国務大臣 任命についての責任は、どこまでも内閣総理大臣が負うのであります。そしてもしも指示に従わないようなことがありますれば、もちろん指示といつても直接の指示ではありませんが、それは国家公安委員とよく協議の上において、円満解決をはかつて行くのであります。行政管理についての責任は、どこまでも国警長官は国家公安委員に対して責任を負う、それはひいて国会に対する責任であり、また国民に対する責任であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/86
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087・門司亮
○門司委員 私はその点がわからぬのであります。どうもはなはだこの委員会はくどくなつて参りますが、総理大臣は任命権というよりいわゆる任免権を持つております。罷免の権利があると私は思う。任免権を持つております総理大臣に対して責任を負わないということになつて参りますと、もし責任を負わなければ、それは免職するからいい、こういうことになると思いますが、そういたしますと、これは国家公安委員の考え方と、あるいは長官の考え方と、さらに総理大臣の考え方とがもし違つておるというような場合におきましては、総理大臣は一方的にこれを罷免することができるというように解釈してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/87
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088・木村篤太郎
○木村国務大臣 一方的に内閣総理大臣が国警長官を免職する、そういうことは事実上あり得ないことだと思います。この法案の建前から申しましても、国家公安委員の意見を徴する、そこに含みがあるのでありまして、国家公安委員と十分なる連絡を保ちまして、相談ずくの上でそれを罷免するということになるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/88
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089・門司亮
○門司委員 私は今の大臣の答弁に対しましては、どう考えても私どもの考え方と一致しないようであります。いわゆる罷免権と責任の所在というものは、おのずから明確になるのが、私は民主主義の建前であると思う。しかもその民主主義の建前の上において、国家公安委員は議会の承認を得、東京都の公安委員は東京都会の承認を得ておる。そのおのおのの承認を得た建前の上に立てられて、そうして任命をされておりますので、言いかえれば、地方警察の本部長官は一面国家公安委員会に対して責任を負うと同時に、当然民主的にも国民に対してやはり責任を負うべきであるという議論が私は出て来ると思う。しかるにそれらの問題を、ただ意見を聞くというだけであつて、総理大臣が一方的に任免権を持つておるということになりますならば、明らかに私は民主主義の原則に反し、さらにこの制定いたしました警察法の前文の趣旨に反すると考えておるのであります。しかしこの問題については、私は他の委員の質問もあるかと思いますので、これ以上申し上げません。
その次に聞いておきたいと思いますことは、この警察法の第六十一條の二の一項を挿入いたしまして、「内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の意見を聽いて、都道府県公安委員会又は市町村公安委員会に対し、公安維持上必要な事項について、指示をすることができる。」こう書いてあります。この指示という事項は、先ほど申し上げましたように、齋藤長官の答弁によりますと、拘束力を持つということでありますので、これは命令であると考えても私はさしつつかえないと思うそこで聞いておきたいと思いますことは、その次にあります警察法の七章の国家非常事態の特別処置いわゆる法第六十二條の規定に、「国家非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認めるときは、」こう書いてありますが、この第六十二條の国家非常事態というものと、「特に必要があると認めるとき」というこの関連性であります。しかも国家非常事態という文字を使つてあります場合には、全国的のことも考えられますし、また一部的に都道府県知事の要請によつて、非常事態の宣言が行われるということも考えられる。ところが今度の改正案によりますと、特に必要があるというだけであつて、そうして非常に広くこれが認められる、従つて私はこの第六十二條にいう国家非常事態と、今度の改正の第六十一條の二の「内閣総理大臣は、特に必要があると認めるとき」、この関係は一体どちらが重要であるか、国家非常事態の宣言のあつたようなときにこういう命令を出されるのか、その間の関連性をこの際御説明願つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/89
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090・木村篤太郎
○木村国務大臣 第六十二條の第一項の場合の「国家非常事態」と申しますのは、読んで字のごとく、非常に急迫した状態をさすのであります。そういう場合においては、総理大臣は国家公安委員会の勧告に基いて非常事態の布告を発することができるようになつておるのであります。この一部改正法案におきまする「特に必要があると認めるときは、」というのは、まだ非常事態に至らぬ程度においていろいろな重大な事案が生じた場合に、その必要に応じて国家公安委員会の意見を聞いて指示ができるということになつておるのであります。その間においてはいわゆる事態の急迫性あるいは重大性ということに観点を置きまして、おのずから差があるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/90
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091・門司亮
○門司委員 急迫性その他についておのずから違いがあるというような御答弁でございますが、法の第六十二條にも同じような言葉を使つております。ただ「治安の維持のため特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、国家公安委員会の勧告に基き、全国又は一部の区域」こう書いてありますが、この文字からいいますと、まつたく同じでありまして、「特に必要があると認めるときは、」とあつて、一方は「国家公安委員会の勧告に基き、」と書いてあり、今度の改正法案では内閣総理大臣がかつてに公安委員会の意見を聞いてこれを指示することができると書いてあります。いわゆる勧告に基いてやるか、内閣総理大臣自体が自発的に意見を聞いてこれを行うかということは、文字は同じような文字を使つておりますが、内閣総理大臣の自発的の意思と、国家公安委員会の勧告ということは非常に違うのであります。従つてこれはどちらが一体優先するのか。こうなつて参りますと、国家公安委員会でそういう処置を講じなくてもいいと考えておるときに、内閣総理大臣は自分はこう考えておるからその意見だけを聞いて指示、命令を発することができるのかどうか、一体どちらが先になるのか、この点を聞いておきたい。
〔委員長退席、河原委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/91
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092・木村篤太郎
○木村国務大臣 第六十二條には一番初めに「国家非常事態に際して」とあるように、いわゆる国家が緊迫した非常な事態が起つた場合に、国家公安委員会の勧告がなされるのであります。そうして総理大臣は非常事態宣言をするのであります。一部改正法案におきましては、それまでの程度に至らぬときにおいて、特に必要があり、国家治安の維持上みずから指示をすることが適当なりと考えたときに、初めてこの指示権を執行するわけであります。おのずからその間において相違があるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/92
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093・門司亮
○門司委員 私はおのずから相違があるという抽象的なことだけではわかりません。私の解釈を率直に申し上げますと、第六十二條の規定は、国家非常事態が起つておるという場合に対する一つの措置であつて、今度の改正法案は、非常事態が現在起つてはついないが、しかし起るかもしれないから、一つの予防策として総理大臣がこういうことを命ずることができるというように解釈してさしつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/93
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094・木村篤太郎
○木村国務大臣 この第六十二條の非常事態宣言の場合には、全国の警察が一本になつてやるわけであります。全部総理大臣の管轄下に置かれるわけであります。改正法案のもとにおいては、全面的に全国の警察を一本にするという考え方ではないのであります。法的にその必要な指示をするということになろうと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/94
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095・門司亮
○門司委員 私はその大臣の解釈は違いはしないかと思います。この非常事態に際しましては、第六十二條の規定では、「全国又は一部の区域について国家非常事態の布告を発することができる。」と書いてありまして、ただこの場合の警察権の所在は、国家地方警察がこれを掌握するということである。これは一部でありましようと全国でありましようと、その問題を処理することのために、国家地方警察がこれを握るという規定であります。私が聞いておりますのはそういうことではありませんで、この非常事態宣言というのは、そういう非常事態が起つたときに発すべきであるといたしますならば、その場合は当然この第六十二條の規定が生きて、国家公安委員会の勧告に基いてこれが行われる。しかしそれ以前にあるいは国内にいろいろな問題が起るかもしれない。その場合に一つの予防的の措置として、総理大臣は第六十一條の今度の規定で、各市町村警察並びに国家警察に対して命令をすることができる、予防的措置のためにこの法案が改正されたというように解釈してもさしつかえないかどうかということを聞いておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/95
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096・木村篤太郎
○木村国務大臣 もとよりこの改正案におきましては、「特に必要があると認めるとき」という規定が設けてあるわけでありまして、現実にそういう事態が起ろうと起るまいと、起つたときはもちろんでありますが、予防的にも公安維持の必要ありと認めたときは指示がなされるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/96
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097・門司亮
○門司委員 私は大体予防的措置だ、こういうふうに解釈をしてもよろしいのでありますが、そう解釈して参りますと、またここに問題が出て参る。現行の自治警察に対しては内閣総理大臣は指揮命令ができないような民主的な形にでき上つておるのに、予防的でありましても、これに命令することができるということになつて、はなはだ非民主的なものにならざるを得ないと思いますが、この辺はこのくらいにしておきます。
次に聞いそおきたいと思いますことは、警察法の改正と関係のあります問題は、保安庁法案の第四章の「行動及び権限」の問題であります。第一節、行動のところに「命令出動」と書いてあります。保安庁法案の第六十一條に「内閣総理大臣は、非常事態に際して治安の維持のため特に必要があると認める場合には、保安隊又は警備隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」とこう書いてあります。この保安庁法案の第六十一條には「国家非常事態」という文字を使つておりません。單に「非常事態」と書いてありますが、警察法の第六十二條に書いてあります「国家非常事態」との関連性は一体どうなつておるか、この点をお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/97
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098・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 ただいま御指摘の保安庁法の方においては、「非常事態に際して、」と書いてあります。警察法の方では「国家非常事態」というように使いわけをいたしております。その点から関連いたしまして、この警察法の第六十二條の方が、よほど場合が限定されているというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/98
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099・門司亮
○門司委員 この警察法の第六十二條の国家非常事態の宣言というのは、国家公安委員会の勧告に基いて総理大臣が宣言することになつている。ところが保安庁法案の方ではそういうことは全然書いてありません。内閣総理大臣の一方的意思によつて国家非常事態——国家という文字は使つておりませんが、非常事態を認定して出動させることができるとなつている。そういたしますと警察法と保安庁法案との間に、国家非常事態の宣言と、非常事態と認めて総理大臣が保安隊を出動させることができるということの大きな食い違いがあります。一方においては国家公安委員会が勧告をして、それに基いて総理大臣が宣言をされるということ。一方は総理大臣が非常事態と認めれば保安隊を出動させることができるということ。しかも今度の保安隊は警察予備隊とまつたく性格を異にしている。警察予備隊ではございませんで、この警察法から見る国家非常事態でないと認められる場合においても、総理大臣はこれを非常事態と認めて、保安庁法案から考えて参りますならば、出動を命ずることができるようになつている。これは非常に大きな問題でありまして、地方においては国家公安委員会は非常事態を宣言しなくてもいいと考えておりますのに、総理大臣はかつてに保安隊を出動させることができるということになつて参りますと、この警察法の第六十二條というものは非常にあいまいな規定になつて来る。従つてその間の関連性というか、いきさつというか、これは一体どういう事態に対してそういう言葉が使われるか。これは保安庁法案の審議ではございませんから、保安庁法案の審議だけを強く言うわけではありませんが、保安庁法案と密接な関係を持つている法案でその性格が全然違つているのでお聞きしておるのでありますが、その場合の非常事態で保安隊が出動するような、私どもの通念からいたしまする非常事態に対しては、当然この国家非常事態宣言が出されてなければならない。この非常事態宣言が先でなければならない。それが保安庁法案の中には規定されておりません。これはどつちが優先順位であるか、この点を明らかにしておいていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/99
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100・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 お話の通り現実の問題を考えますと、この警察法における非常事態の場合と、保安庁法における保安隊の出動の場合とは、おそらく普通の場合は同じ場合であろうと思う。ただ観念上の問題はこまかく申し上げますれば先ほど述べたような差異があるであろうという意味であります。この国家公安委員会の勧告云々の問題は、これは申すまでもございませんが、保安隊の関係とは別系統の組織でございます。その勧告云々と保安隊の出動とのつながりは、理論上は別のものとお考え願つてよろしいものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/100
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101・門司亮
○門司委員 今の答弁を聞いておりますと、国家非常事態の宣言と、保安庁法案によるいわゆる第六十一條の規定による、総理大臣が非常事態と見て、そうして出動させるということは別の問題として考えられる、こういう御答弁であるように私聞き取りましたが、そうなつて参りますと、この国家公安委員会というものの責任は、ますます何かおかしなものになつて来るのでありまして、一応治安上の問題としては、さつきの大臣の答弁によりますれば、任免は総理大臣がするが、しかし行政上の運営管理の責任は、この国家公安委員会にあるということになつて参りますと、国家公安委員会の運営管理というものは、当然非常事態に対しましてもやはりこれが重要な役割を演ずる、しかも法律は従つてこれを勧告してそれから出るようになつている。ところが今の御答弁で全然これは別だということになつて参りますと、国民の立場から考えて参りますと、一体非常事態というものがどういうものであるかということのけじめがつかなくなつて来る。内閣総理大臣はかつてに非常事態であると認めて——この場合は警察予備隊ではございません、保安隊といういわゆる昔で言えば、昔で言わなくても軍隊だと思うが、警察と性格のかわつたこういうものを持つのが軍隊でなくて何だということであります。軍隊の出動ができるということになつている。これは私は非常に大きな問題だと思います。従来かつての日本の法律によりましても、今日国家公安委員会が、非常事態を内閣総理大臣に勧告すると同じように、都道府県知事が師団司令部に対して軍隊の出動を要請することができておつた。それに基いて従来の軍隊ですらやはり出動をしておつたのであります。ところが今度の場合は、国家公安委員会も知らない間に、治安の確保のために内閣総理大臣が保安隊を出動させることができるということになつて参りますと、一体日本の治安の取締りはどこに責任があるかということが私はまつたくわからなくなると思う。従つてこの点はもう少し私は明確にしておいていただきたいと思います。あくまでもさつき私が申し上げましたように、警察にあらざる軍隊でもないとお言いになつているから、私は軍隊でない保安隊という言葉を使つておきましようが、保安隊の出動は国家公安委員会に対しては何らの責任がなく、どこまでも内閣総理大臣の権限と責任の上において、これは行われるのであるというように解釈してちつともさしつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/101
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102・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 保安庁法の場合におきましても、あるいは警察法の国家非常事態の場合におきましても、最終的には総理大臣は申すまでもなく国会に対して責任を負いながらやつているわけであります。ことに今回の保安庁法におきましては、先ほどのお言葉に非常事態の認定が軽々しく行われはしないかという御指摘がありましたが、今回の法律案におきましては、国会の御承認を求めるという形にしておりまして、その点のつながりをはつきりさせているわけでありまして、責任関係のつながりははつきりさせております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/102
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103・門司亮
○門司委員 今国会とのつながりをはつきりしておるというお言葉がありましたが、これもこの警察法とまつたく同じであります。警察法におきましても今保安庁法案に書いてある通り、非常事態の宣告をいたしました場合には、二十日以内に国会の承認を得なければならないということが警察法に書いてある。保安庁法案もその通り書いてあり、その責任の所在を、国会の承認を求めなければならないという字句は、警察法も保安庁法案もまつたく同じであります。ただ出動のときが違うのであります。出動させるときに警察法によりますならば、非常事態の宣言というものは、国家公安委員会の勧告に基かなければ行うことができないようになつている。保安庁法案によりますと、国家公安委員会の勧告を求めないで、総理大臣がその出動をさせることができるようになつている。この場合にそれを国家非常事態と見るか見ないかという解釈でございましようが、社会通念から考えて参りますと、警察がまず先に出動して、警察の手に負えないような大きなものが出て来る場合に、過去においても当該都道府県知事の要請に基いて軍隊が出動しておつたのであります。従つて今日の保安隊というものは、われわれが考えて参りますならば、その装備といい、訓練といい、とうてい私は警察の比ではないと思う。従つて警察よりもはるかに力の強いものだと考えている。この警察よりはるかに力の強いものが、国家公安委員会が非常事態でないという認定を下して、非常事態の勧告を内閣総理大臣にしない場合でも、これが出動できるというようになつて参りますと、一体非常事態というものの解釈をどこに置くかということである。この二つの問題は重要な問題でありまして、警察力よりも強い保安隊が、民主的にできております国家公安委員会の認定をまたないで、内閣総理大臣によつてかつてに動かされるということは、私はどう考えてもこの警察法との関連において受取れないのであります。そうして先ほどの御答弁により、その責任を国会に聞くようになつているといわれますが、この非常事態の場合にも国会に聞かなければならないように警察法に書いてある。まつたく処置は同じであります。ただ繰返して申し上げますが、出動の場合に非常に大きく違つている、まるつきり逆であるというようなことが書かれておりますが、この点は一体どうしてそういう逆なものでいいというようにお考えになつておるか、この点をもう一つお伺いをしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/103
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104・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 先ほど国家公安委員会というものは警察法系統の機関であつたという、形式的なお答えを申し上げましたけれども、今のお尋ねに伴いましてさらに申し上げたいのは、最初にお話に出ましたように、国家非常事態の際における一つの要素となるのは、本来自治体警察、国家地方警察は独立に、ばらばらであつたものが、今度は警察法の根本的の組織を一応変形して、全面的に統制のもとに入るという面がございますから、警察関係の一つの重大なる機関であるところの公安委員会がそこに入つて来るという、建前としては私はそういうことから来ておろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/104
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105・門司亮
○門司委員 私は警察法の説明を聞いておるのではございません。私はこの警察法についております非常事態という事態の起つた場合、これの認定は国家公安委員会がこれを認定して、そうしてそれの認定に基いて内閣総理大臣に勧告をする、内閣総理大臣はその勧告に基いて国家非常事態を布告する、こういうことになつております。そうしてその場合の処置は警察法に定められております通り、すべての当該地区あるいは全国的でありますか、布告された区域の警察権というものは、国家地方警察本部長官の手に握られて来る、こういうことに警察法はなつております。従つてこの国家非常事態の認定というものが、民主的に選ばれております国家公安委員会の認定に基いてこれが行われる。ところが保安庁法案の方は、御存じのように、内閣総理大臣がそういう手続を経ないで、内閣総理大臣の一方的意思で非常事態として保安隊の出動を命ずることができる、こうなつております。そこでこの問題はただ両方を突き合せればそれだけでありますが、社会通念から考えて参りますと、まず国家非常事態の布告がなされて、そうして国警と自治警とあるいは自治警相互の間においてこれの鎮圧ができない場合において、保安隊が出て来るということが私は当然だと考える、またそうでなければならないと考える。ところがその間の処置をとつてないのであります。保安庁法案の中にもそういうことが書いてなければ、今度の警察法の改正案の中にもそういうことが書いてない。従つて今の御答弁のように解釈をいたして参りますと、国家非常事態と内閣総理大臣のいう非常事態というものは別だ。内閣総理大臣はかつてに非常事態と考えればこれを出動させることができるのだというように解釈していいかどうかということであります。その点はそう解釈してよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/105
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106・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 かつてにとおつしやいますと気がかりになるのでありますが、先ほど触れましたように、国会に対する責任のもとにおいて総理大臣が非常事態を認定するという趣旨でございまして、その関係ではこの警察法の第六十二條と保安庁法との関係は、観念上は別であるということを申し上げたわけであります。但し実際上はおそらく同じ場合に発動されるのであろうということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/106
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107・門司亮
○門司委員 実際上は同じような場合であろう、こういうことでありますが、これはひとつ大臣にはつきり御答弁を願つておきたいと思います。それなら現在の保安隊というものは、前の警察予備隊令の第一條に書いてありますように、警察予備隊は国家地方警察並びに市町村警察の足らないところを補助する機関であるということが明確になつておつたが、この予備隊令が廃止されて、そうして保安庁法案第四條の目的、いわゆる国家の秩序を保持することのために必要だということだけに限られております。この警察法の中にもやはり国家の秩序を保持するということが書いてある。予備隊令の中にもやはり同じような文字が使つてある。ただ問題になりますのは、先ほどから申し上げましたように、予備隊令の中には警察の足らないところを補助することをもつて目的とするということを書いてある。この字句がまつたくなくなるのでありまして、従つて性格上から申しますならば、この保安隊というものはまつたく別な機構である。警察の機構では全然ございません。従つて今の御答弁から申しますと、ちよつとこの問題は離れるようではありますが、保安隊というものは全然警察の補助機関ではないというように断定してさしつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/107
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108・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 その点につきましては、おそらく保安庁法の御審議の際に政府から十分御説明したことと思います。従つて繰返すことはいたしませんが、そこの文字の書き方からさような本質上の変化というものがなされておるとは私どもは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/108
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109・門司亮
○門司委員 保安庁法案の審議のときになされておるから答弁をしないというお話でありますが、私どもは保安庁法案の審議に参画いたしておりません。従つて委員会が別になつておりますので聞いておりません。この警察法を審議するにあたりまして、関連をいたして参りますものはやはり第六十一條の二であります。「特に必要があると認めるときは、」とこう書いてあります。この「特に必要があると認めるときは、」という言葉はいずれも同じ言葉であります。警察法の国家非常事態の特別措置の場合に「治安の維持のため特に必要があると認めるときは、」と書いてある。また今問題になつております保安庁法案におきましては「内閣総理大臣は、非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認める場合には、」こういうようにみな同じような文字が使つてある、そうして同じように特に必要ありと認めるときは保安隊の出動ができるということになつておる。先ほどから何度も申し上げておりますように、警察法の国家非常事態の問題と保安隊の出動とは全然別なものである。保安隊はかつてに出動ができるのであるということであつて、要約して申し上げますならば、国家非常事態の布告がされなくても内閣総理大臣は保安隊を出動させることができるというように解釈してさしつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/109
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110・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 こちらも要約してお答え申し上げますと、結局先ほど触れたことに関してでありますが、たとえばある区域に一種の非常事態が起つた場合に、保安隊が一部出て行けばもうそれで治まつてしまう、必ずしも警察法の第六十二條によります国家非常事態の布告という大きなことをやらぬでも、それで治まることがあり得るのであります。観念上必ずしも一致しないということを申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/110
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111・門司亮
○門司委員 これは私は警察法との関係で非常に重要な問題だと思いますが、かりに治安の責任が問題になります場合においては、地方の市町村警察におきましては、市町村の公安委員会が大体その運営管理の責任を持つ七おる、従つて地方の公安委員会が持つております運営管理のもとに行われる警察力だけでは、一つの問題が起つたときにこれを治めることができない、さらに都道府県に置いてあります国家地方警察の所管においてもこれを取りしずめることができないというような非常事態が起つたという場合には、当然都道府県知事は非常事態の布告をすることを国家公安委員会に必ず持つて来なければならない。その場合に国家公安委員会は、こういう情報に基いて内閣総理大臣に対して非常事態の布告を勧告するのであります。ちやんと治安の責任というものは警察がどこまでも負うということが順序立ててこしらえられておる。しかもその警察に何らの相談がなくて保安隊を内閣総理大臣が出動させるということになつて参りますと、一体治安の責任はどつちにあるかということになる。保安隊が責任を負うべきであるか、あるいは警察側が責任を負うべきであるか、その点の使いわけをどういうふうに大臣はお考えになつておるのか。字句の、あるいは法文上の解釈だけでなくして、社会通念的にこの点の御答弁を願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/111
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112・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 非常事態の際におきましては、ただいまの保安庁法関係、あるいは警察法関係、いずれにおきましても総理大臣の治安維持の責任というように、そこは一元化しておるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/112
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113・門司亮
○門司委員 私はそういうことを聞いているわけではない。非常事態の場合はあなたから教わらなくても、その通りちやんと書いてある。非常事態に至るまでの責任というものは、おのおのの当該公安委員会がこの責任を持たなければならぬということはわかつておる。その場合に非常事態であれば公安委員会自体が都道府県知事を通じて勧告ができる。その手続をとらないうちに総理大臣が非常事態と認めて保安隊を出動させるとすれば、一体その場合の行政上の責任はどつちですかということです。当該公安委員会は責任を持つて治安の大任に当つておる。その責任を持つて治安の大任に当つておるものが要請しないで、かつてに総理大臣から出て来てこれを処置するということは、指揮の上から申し上げましても、規律の上から申し上げましても、警察法に対しては非常に大きな災いになると思う。そこでこの場合の処置が一体どうなつておるかということを私は聞いておる。そういうことができても、警察というものはそれにそのまま服従しなければならないのかどうか。また言いかえるならば、そういう場合に一体当該地区の警察権はどうなるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/113
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114・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 申し上げるまでもないのでありますけれども、この保安庁関係の保安隊はい内閣総理大臣の指揮のもとに立つ別系統の組織になつておるわけであります。かつ一面警察法系統におきましては、自治体警察あるいは国家地方警察の地方々々の公安委員会というものがあつて、それらは警察法系統のものがおのおの自分の地域内における治安の責任を一応持つておられる。ただ総理大臣の立場としては、国家全体の立場からそこにまた治安上の重大なる関心あるいは責任を持つておるという関係があるわけであります。その関係の調整をいかにするかという問題に御指摘の点はあるであろうと思うのであります。従いましてかような点から、今の保安庁系統、それから警察系統、この二本建をもつてそこの調整をやつて行こうというのが、この考え方であろうと存ずるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/114
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115・門司亮
○門司委員 調整をやつて行こうということを言つておりますが、調整をやつて行こうということだけではわからないのであります。調整をするなら調整をするように、やはり法文が必要であろうと思うのであります。警察法を改正するにしましても、保安隊の出動の場合には、そのときの警察権というものは保安隊なら保安隊に移るのか、これがその事件に関しては一切の責任を背負うのか。それがこの警察法の中には明確になつておらないのであります。また保安庁法案の中にも明確になつておらないのであります。一体責任の所在はどうなつておるのか。従つて搜入されました第六十一條の二の「特に必要があると認めるときは」という場合は、あるいは保安庁法案の第六十一條と何らかの関連があるのではないかと私は考えるが、一体これは関連があるのかないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/115
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116・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 関連は必ずしもございません。この第六十一條の二というものは、先ほどもお触れになりましたように、非常事態のもう一つ前段階において、予防的に発動するということもございましようし、そういう関係のない場合において、国家的にどうしても放擲しておけないという特別の必要があります場合には、やはり第六十一條の二が発動するのでございますが、必ずしもその間の関連はないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/116
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117・門司亮
○門司委員 関連がないとすればますますおかしいことになつて参りまして、私はこれを好意に解釈して、保安庁法案の第六十一條の保安隊の出動を命ずるような事件ができたことを、ここで「特に必要があると認めるときは」としたというように解釈して、その場合には、警察はそれの指揮に入るとか、あるいは処置が講ぜられるのではないかというように関連性があるのではないかと考えておつたのですが、関連がないということになると、これは非常に大きな問題になります。一方においては、さつきから申し上げておりますように、警察がおのおのみずからの責任において治安の維持に当つておる。その治安の維持に当つておる責任者の意見も何も聞かないで、だしぬけに保安隊がそこへ出動して来る。そして治安の大任を横取りするというと語弊がありますが、とにかく横から出てかつてに処置する。そうすると治安の維持、管理というものの責任はだれが負えばいいか。非常事態の起つた場合はいずれかつてに総理大臣が保安隊を出動させるであろうというようなことでは済まされないと私は思う。やはりこれにはちやんと順序があつて、非常事態宣言の後において、警察だけではどうしても治まらぬという場合に、これが出動するということが明確になつておればまだいいのでありますが、それが明確になつておらないと、今の御答弁のように、非常事態の宣言があろうとなかろうと、総理大臣が必要があると認めれば保安隊を出動させることができるとなつて来ると、治安維持の責任というものはまつたくなくなると思う。治安維持の責任がなくなるということは、治安上に対しても非常な危険を生ずるものである。いわゆる責任のなすり合いというものが生ずることになる。そういう面に対して、第六十一條の二の規定と保安庁法案との間は、どこまでも今の当局の御答弁のように、全然関係はないのだというように解釈してさしつかえないかどうか。この点大臣からはつきり答弁してもらいたい。字句ばかりについて議論しても始まらない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/117
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118・木村篤太郎
○木村国務大臣 今佐藤政府委員から申し上げました通り、警察法の関係と保安庁法の関係とは、建前上別個のものであるとわれわれは考えております。もちろんほんとうに急迫した非常事態に遭遇いたしますと、警察も出動いたしますし、保安隊も出動いたします。一方において警察と何ら関係がないということは申されませんが、たとえば直接侵略がある一部においてあつたという場合、緊急やむを得ざる場合には、一地方の問題ではなしに、国家全体から見て保安隊を出動させるが最も時宜に適したというような場合には、総理大臣が自己の認定においてその直接侵略に対して保安隊を出動させる場合があるのであります。さような場合から考えますと、決して矛盾撞着はしないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/118
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119・門司亮
○門司委員 大臣の答弁は非常に重要であります。直接侵略というお言葉をお使いになつたように私は聞いておりますが、一体日本に現在直接侵略があり得るという構想のもとに保安庁法案ができておるのかどうか、その点を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/119
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120・木村篤太郎
○木村国務大臣 決してさようなことを想像してやつておる場合ではありませんが、かりにと私は申しております。かりにそういう場合があつたと考えたときにおいてはこういうこともあろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/120
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121・門司亮
○門司委員 かりに考えて、かりにてきた法律が、非常に多額な予算を食つておるということについては、国民の立場から見ると、どうも納得が行かないのであります。従つてかりにできた法案であれば、かりにできたというようなことで処置してもいいと思いますが、しかしそうは済まされない。警察法との関連性を十分考えなければならないから、それならばもう一度大臣に聞いておきますが、国家非常事態の宣言に対する国家公安委員会の勧告は、いわゆる保安庁法案にいう内閣総理大臣の「特に必要があると認める場合」ということは、全然別に考えてもいいのかどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/121
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122・木村篤太郎
○木村国務大臣 この第六十二條の本文の場合は、先刻申し上げました通り、国家非常事態に際してであります。いわゆる国家が治安の急迫な状態に押し迫られたという場合において、国家公安委員会が勧告して、総理大臣が布告を発するということになると思います。警察法の一部改正におきましては、さような程度に至らない場合におきましても、必要と認めた場合において公安上必要な事項を指示ができるということでありまして、その間おのずから差異があろうとわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/122
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123・門司亮
○門司委員 その間おのずから違うと言われたところで、一向私にはその違う部面がわからぬのであります。この警察法はむろん国内法でありまして、別にこの警察法は今の大臣のお話のような直接侵略に対して云々というようなことを仮想してこしらえた法律ではございませんで、国内の治安を維持することのために必要な現実的なものとしてこの警察法はできている。ところが大臣の今のお話によりますと、たとえば外国の直接侵略があるというような仮定に基いてできた保安隊が、警察法による非常事態の宣言はされなくてもこれの出動ができるということになつて参りますと、先ほどから申し上げておりますように、治安の責任というものが一体どこにあるのかということである。先ほど大臣は国家公安委員会は運営管理に当る責任を持つているというお言葉でありましたが、運営管理に当る責任を持つております国家公安委員会が認定しないうちに、総理大臣がこれを出動させることができるということになつて参りますと、警察の運営管理というものの責任はやはり総理大臣に直接つながるものだ、そうして国家公安委員会というものはあつてもなくてもいい、と言うと語弊があるかもしれませんが、今度はただ制度上の存在であつて、実際上の権限はなくなるということが私は考えられるのでありますが、そういうふうに解釈してもさしつかえございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/123
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124・木村篤太郎
○木村国務大臣 国家公安委員会は御承知の通り行政管理についての責任はあるのでありますが、運営管理の責任は都道府県の公安委員会であります。従いまして運営管理の責任についてはすべて都道府県の公安委員会が直接の責任を負うというのが警察法の建前であります。そこでこの一部改正法案におきましてはその建前はやはりくずしていないのであります。くずしていませんが、特に必要な場合においてはこの指示ができる。すべてこれは国家公安委員会において都道府県の公安委員会に、あるいは自治体の公安委員会に対して、その必要な指示ができることになつているのでありまして、その根本の理由は、およそ国家治安の責任は行政府の最終責任者たる総理大臣が結局持つことになるのでありますから、国家において非常事態に至らぬ前においても、相当な急迫な状態を生じた場合においては、総理大臣において適当な指示を與える指示権を持たせるということがきわめて妥当なことと考えているのであります。しかし繰返して申しますが、この場合におきましても国家公安委員会の意見を徴する、これに十分な含みがあるのです。総理大臣がかつて気ままに自分でやるという建前をとつておりません。すべて国家公安委員会の意見を徴して、そうして都道府県並びに自治体公安委員会に対して、適当な指示を與えるということになつておりまして、この民主的国家警察の運営については、その本質においてくずさないという建前をとつているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/124
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125・門司亮
○門司委員 大臣は本質においてくずさぬという御答弁でありますが、私は本質においてこれをくずしていると思います。本質においてくずしていると思いますことは、先ほどから申し上げますように、大臣はかりに直接侵略というようなことを仰せられましたが、かりにという言葉を抜いて、直接侵略という言葉をなくして、そうして現実に国内における治安を確保することのために必要な場合に、かりに保安隊が出動をするということになつて参りますと、これは私は現実の問題として申し上げますが、そういう場合に、一方においては、たとえば指示をするにしても国家公安委員会の意見を徴さなければならない。非常事態の場合はことに国家公安委員会の勧告を受けなければならないとなつている。にもかかわらず一方においては保安隊の出動を命ずることができる。そうして非常事態に至らぬ前に保安隊が出るということになつて参りますと、これはまつたくめちやくちやであります。従つてそういう場合に、それなら一体治安の責任はだれが負えばいいか。保安隊が責任を負うべきか。保安隊が出て行つてその問題が片づけばさつと引揚げてしまつてそれでいいのか。たとえばその執行しております機関の間におきましても、やはり責任の所在というものは明確になつていなければならない。指揮命令の系統は明確でなければならない。もし保安隊と警察との間に食い違いがあつて別々に動くということになつて参りますと、これはまつたく治安の確保どころか、治安を確保する方がばらばらの仕事をするということになつて来る。指揮命令系統というものはちつとも両方の間がはつきりしておらない。私はこのことを聞いているのであります。そうした場合に、それなら保安隊の出動した場合における治安の責任は、一体たとえば一区域に限られるのか。あるいはそれが国家地方警察の区域であるかもしれない。あるいは市町村警察の区域であるかもしれない。その場合はその公安委員会が全部の責任を負うべきか。あるいは保安隊が責任を負つて、保安隊の指揮命令の中にその警察権というものが掌握されるのか。その点どうなりますか。はつきり聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/125
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126・木村篤太郎
○木村国務大臣 もちろん実際問題として保安隊が出動するときは、第六十二條の国家非常事態宣言が発せられた後とわれわれは考えおりますが、しかし理論としてはさような場合に至らぬでも、保安隊の出動によつてただちにその地方の静謐が保たれるというような場合においては、総理大臣が建前としてやれることになつているのであります。その出動についての責任者はむろん内閣総理大臣であるのであります。この場合において自治体警察なり府県国家警察なりがそれぞれ出動する場合において、互いに連絡をとつて行くということは別の法規によつて明らかになつているのであります。まちまちな行動は実際問題として起るわけじやなかろうと考えております。むろん互いに連絡をとつて行くのでありますから、従いまして責任といたしましては、自治体警察なりあるいは国家警察なりについては、都道府県の公安委員会あるいはその自治体の公安委員会がむろん警察についての責任をとることになるのであります。保安隊の出動については総理大臣の責任になるわけであります。交互に連絡をとつて行くことにおいていささかのこの間に矛盾はないと、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/126
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127・門司亮
○門司委員 同僚の質問もありますので、私はそう長く質問はいたしません。これだけ聞いておきたい思いますが、そういたしますと警察法の建前から申し上げましても、非常事態の宣言をいたしました場合は、第六十五條の規定によつて、二十日以内に国会の承認を得なければならぬということになつている。保安庁法案におきましてもほとんど字句も違わない同じようなことが書いてある。その責任の軽重というものは、国家非常事態の場合も、保安隊の出動の場合も、同じように実はできているのであります。いわゆる国会に対する責任は同じであります。ところが、今までの答弁を聞いておりますと、非常事態に至らぬ場合でもやれるということになつて参りますと、非常事態の宣言の軽重の問題が出て参ります。かつてに出した場合も非常事態の宣言と同じように国会の承認を得なければならぬ。さつきの御答弁のように、非常事態を宣言しなくてもいい場合においても、便宜的に保安隊が出た方が片づくと思えば保安隊が出た方がいいということになつて参りますと、一方の解釈から言うならば、国会の承認を得るほどの非常事態ではない、国会の承認まで得て非常事態の宣言をするまでに至らないという解釈を国家公安委員会は持つている。内閣総理大臣はそういう解釈を持たないで、これはどうしても国会の承認を得るようないわゆる保安隊の発動権というものを発動ずるということになつて参りますと、事態の見通しにつきましても、国家公安委員会の見通しと、内閣総理大臣の見通しが食い違つて来るこどが当然できて来ると思う。これらの調整は一体どうするか。それと、保安庁法案の問題にいたしましても、第六十一條の中には、御存じのように区域が定められておりません。警察法の中にはちやんと区域が「全国又は一部の区域」というように書かれておる。従つて、おのおのの立場といいますか、さつきから申し上げておりますように、責任の所在がはつきりしておらなければならない。従つて、非常事態が起つておる場合には、当然警察法に基いて国家地方警察が自治警察を吸収して仕事をして行く。ところが保安隊が出動した場合には一体だれがその権限を持つのであるかということであります。区域によつてばらばらになつておる。国家地方警察の区域もありましようし、あるいは自治警察の区域に及んでおるところもあるかもしれない。あるいは二つの自治警察の区域に及んでいるかもしれない。そういう場合統制のある一つの指揮命令系統は、警察法によれば国家警察がこれを握りますから間違いがございませんが、国家非常事態の宣言の前にもし保安隊が出て来た場合には、ただ連絡だけでは済まされぬのでありまして、その場合、指揮命令の系統というものはどつちが握るか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/127
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128・木村篤太郎
○木村国務大臣 第六十二條の国家非常事態の宣言については、国会の承認を求める、これは国会に対する責任があるわけであります。保安隊の場合においては、保安隊の出動自体について国会の承認を求めて、国会に対して責任を負うわけでありまして、おのおの両者がはつきりわかれておるのであります。今の御質問は、非常事態宣言の場合において国警一本になり、片方には保安隊がある。その間の指揮をどちらがとるかということでございますが、これはおのおのその分野を異にしておりますので、必ずしも一つの指揮系統のもとに服すということは考えられないのであります。また服していい場合もありましよう。その場合においては、双方が互いに連絡をしてやるということになつておるのでありますから、実り際問題として、その間におのずから解決の道が開かれる、こう考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/128
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129・河原伊三郎
○河原委員長代理 森山欽司君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/129
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130・森山欽司
○森山委員 今度の警察法の一部を改正する法律案の提案理由によりますと、いろいろ警察法を改正しなければならない理由が書かれているが、理由は別にしてなせ警察法の一部を改正するようになつたか、動機をひとつ法務総裁に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/130
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131・木村篤太郎
○木村国務大臣 この一部改正法案において最もねらつたところは、いわゆる国家の治安の最終責任者である総理大臣は、国警長官の任免権を持ち、また特別管区の警察長の、いわゆる警視総監の任免権を持つということが、最もよくその間の連絡調整がはかり得るものとして制度上必要妥当である、これが一つであります。もう一つは、国家の治安維持上において特に必要と認めた場合においては、総理大臣が国家公安委員会の意見を徴して日各都道府県の公安委員会並びに自治体の公安委員会に対し、公安維持上必要な指示をすることが警察の運営の上においてきわめて必要である。また最終責任者の総理大臣の責任を明らかにするということにおいて必要妥当なり、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/131
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132・森山欽司
○森山委員 法務総裁の今の御答弁は、提案理由を御説明になつたのであります。労働法の改正とか、あるいはいわゆるデモ禁の法律案、あるいは伝えられるゼネスト禁止法、あるいは目下参議院で審議中の破壊活動防止法、これらの法律と一連の系譜を持つておるのであります。この系譜の中にあるのでありますが、しかしこの警察法の改正案を提案されるに至つた動機は、また理由とはおのずから異なるものがあると思うので、それを伺つているのであります。理由の方は提案理由の御説明の中に一応書いてあります。動機は一体どういうことでこの改正案をお出しになられたか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/132
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133・木村篤太郎
○木村国務大臣 別に動機といつて提案理由にかわつたわけはないのであります。要するに最終責任者である総理大臣において責任を明らかにさせるということが動機であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/133
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134・森山欽司
○森山委員 そういう御返事はあまり誠意のある御返事とは思いません。去る五月一日のメーデー騒擾事件の際、私が本会議において質問いたしましたとき総裁は、次のような答弁をしております。「むろん、私は治安責任者といたしまして、十分遺憾の意を表したいのでありまするが、自分からこれを指揮することはできないのであります。今申し上げました通り、警視総監がみずからの手によつてこれを処置し得るので、われわれは何らの命令をすることができない情勢になつておるのであります。これは一に警察法の改正の問題にかかつて来ると思います。この点につきまして」いわゆる警察法の改正について「一種の案は持つておるのでありますが、この成案を得ました以上は、国会の十分な御審議を願いたいと考えておる次第であります。」とこう言つている。これが動機ではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/134
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135・木村篤太郎
○木村国務大臣 メーデーは動機じやありません。警察法の改正については前々から考えておつたのであります。要するに、今そこに御引用になりました——私が申し上げますように、責任を明らかにすることが必要であろう、これは前々から考えておつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/135
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136・森山欽司
○森山委員 このことは、メーデーが動機でないとおつしやる。前々から警察法改正の御構想をお持ちであつた。おそらく昭和二十四年七月ごろ、例の下山事件のあつた前後に、齋藤国警長官罷免問題が起きました。その際、成らなかつたことを、いささかほとぼりがさめた、ほとぼりがさめて、そうして時あたかもメーデー暴動事件が起きた、この機逸すべからざるものとしておやりになるものだ、と私は一応了承しておきます。しかし往年の齋藤問題につきましては、後ほど触れることにいたしますが、まず私は、警察法第四條に「内閣総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会及び警察官の定員三万人を超えない国家地方警察除を置く。」とありますが、「内閣総理大臣の所轄」という、「所轄」はどういう意味だかあらためてお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/136
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137・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは申し上げるまでもございません。所管のもとにというような意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/137
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138・森山欽司
○森山委員 所管のもとにということはどういうことだか、もう少しはつきり伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/138
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139・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 機構の図を引きました場合に、総理大臣の系統のものとして入つて来る。従いましてたとえば予算等の関係も、総理大臣が主任大臣としてそれを処理するというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/139
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140・森山欽司
○森山委員 総理大臣と公安委員会との関係はどうなつているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/140
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141・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 指揮関係はないものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/141
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142・森山欽司
○森山委員 そうすると、今回の改正案第六十一條の二に、「内閣総理大臣は、特に必要があると認めるときは、国家公安委員会の意見を聽いて、都道府県公安委員会又は市町村公安委員会に対し、公安維持上必要な事項について、指示をすることができる。」とありますが、指示という関係は、国家公安委員会にはないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/142
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143・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/143
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144・森山欽司
○森山委員 そうすると、今度の改正案は非常におかしいのであります。人事権の問題は別にいたしますと、内閣総理大臣は都道府県とか市町村の公安委員会に対しては指示権がある。ところが大本ともいうべき国家公安委員会には何も指示権がないということになるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/144
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145・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 都道府県公安委員会、それから市町村公安委員会の関係では、現実の警察の運営をつかさどつておるわけでございますから、その関係で指示をする実益があるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/145
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146・森山欽司
○森山委員 そうすると国家公安委員会については、指示をする実益がないということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/146
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147・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 そこまでの必要は感じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/147
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148・森山欽司
○森山委員 指示の内容はどういうことでございますか。指揮命令というような言葉がこの種のいろいろな法案に見えておりますが、指揮命令と指示とはどういうふうに違うのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/148
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149・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 普通指揮と申します場合は、上級下級のつながりを持つて同じ系統にある場合に、上の者が下の者に指揮をするというのが普通の場合でありますが、系統の違います場合には指示という言葉を使つておるのが多くの例でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/149
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150・森山欽司
○森山委員 国家公安委員会は行政管理だから指示の必要がないとおつしやるのだが、それではそういう国家公安委員会に対して、何がゆえに内閣総理大臣が人事権まで入る必要があるのです。指示する必要もないものなら、何も人事などに介入する必要はないと思うのですが、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/150
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151・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 その点は、現実の執行事務を主管するのが国警長官となつております関係上、これは現実問題から出発して、おそらくそういうことになつたのだと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/151
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152・森山欽司
○森山委員 法務総裁に伺いたいと思いますが、現実問題から必要だというわけですね。それではどういう現実問題か、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/152
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153・木村篤太郎
○木村国務大臣 国家公安委員は御承知の通り行政管理、いわゆる行政運営について権限を持つておるのであります。特にこの運営管理については都道府県の公安委員がやることになつておるわけであります。実際において警察が発動したりする場合には、その運営管理のもとに服するのであります。行政管理は御承知の通り行政事務の方の関係だけであります。それらの点は国家公安委員の任命する国警長官にすべてまかせることが必要であり、またその限度においてさしつかえない、こう考えておるのでありますが、一部改正案においては、一種の行政管理にまで及ぶのでありますから、その場合においては国家公安委員の意見をとにかく聞いて、そうして都道府県なり市町村の公安委員に対して指示をすることが妥当であろう、こう考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/153
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154・森山欽司
○森山委員 法務総裁の御返事はよくわかりませんが、先ほどの佐藤法制意見長官の御答弁によると、指示をするのは都道府県とか市町村の公安委員会でいいのだ、国家公安委員会まではその必要がないのだ、こういうわけなのです。そういう必要がないところへもつて来て、国警長官の人事権まで一体なせ握る必要があるのかということです。ちよつとおかしくはないかと思うのです。国家公安委員に対しても人事権を持たなければいかぬ、あるいは国警長官までも指示権を持たなければならぬというような御構想までお持ちなら、国警長官の人事権にまで触れるということはまだわかる。ところがそういう必要がないといつておきながら、なせ人事権まで持つ必要があるかということです。それはいささかおかしくないでしようか。そこのところをもう少しわかるように法務総裁から御返事をいただきたい、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/154
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155・木村篤太郎
○木村国務大臣 御承知の通り国家公安委員においてつかさどる事務というものは、いろいろな面にわたつておるのであります。これは運営管理じやありません。行政管理でありますが、しかしこのうちにも相当必要な事項があります。たとえば第四條の第六を見ますと「国家非常事態に対処するための警察の統合計画の立案及び実施に関する事項「その他国家地方警察の行政管理に関する事項」これらの点から見まして、国家公安委員会の任命されまする国警長官というものは相当重要な職責を持つているのであります。従いましてこの国家公安委員会の持つておる任免権を総理大臣が持ちますことによつて、警察方面における行政運営がきわめてスムーズに行く。その観点からいたしますと、国警長官は総理大臣に任免権を與えるということが、すべての面において警察の運営がうまく行く。しこうして一面において総理大臣が警察に対しての最終の責任者であるという面においても妥当である、こう考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/155
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156・森山欽司
○森山委員 法務総裁の御答弁を承つておりますと、国家公安委員会に対してもまさしく指示の必要があるということをあなたはおつしやつていると同然なのであります。それは佐藤政府委員といささか御意見が違いませんか。ひとつ佐藤さんと法務総裁と両方から御返事をいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/156
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157・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は別に意見の食い違いはないと考えております。総理大臣が国家公安委員の意見を徴して、そうして国警長官を任命するということは妥当である、こう言つておるのであります。佐藤君と意見の違いはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/157
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158・森山欽司
○森山委員 あなたは先ほど来の私の話を聞いているのか聞いていないのかわかりませんが、私が先ほど申し上げましたことは第六十一條の二という規定の中で、内閣総理大臣が指示をやるのは都道府県の公安委員会または市町村の公安委員会で、国家公安委員会が含まれていないのはどうしたのだと佐藤政府委員に聞いたのであります。佐藤政府委員は、国家公安委員会はその指示の必要がないのだとおつしやつた。ところがあなたの御答弁によると、警察法の第四條第二項の六号あたりで、こういうことについてひとつ政府の方ともよく意思疏通をしなければならないという御答弁であつた。そのことはまさしく指示の必要があることではないか。その間に意見が食い違つていないかと言つたら、食い違つていない。黒でも白、白でも黒という、そういう御答弁は昔の国会ならいいかもしれませんが、最近の国会でやつてもらつては困る。違うなら違うで、佐藤君の意見は間違いでございます、あるいは私の意見は違つております、相済みませんと、ここではつきり御訂正を願いたい。佐藤さん、一体あなたはどう考えますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/158
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159・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 弁明いたします。先ほど現実の問題というようなことで表現した言葉使いが悪かつたと思つて反省しているのでありますが、私の申しましたのは法理上の問題でなくて制度上の行き方としての適否の問題という面から、現実の問題としてということを申し上げたのですが、それに関連して今の第六十一條の二の問題になつて参りますと、その意味での現実の問題としては、これは警察の直接の執行に当られる機関でございますから、これを指示されるということはそこに必要性が考えられるであろう。ところが国家公安委員会の方につきましては、これは法理上の問題としては国家公安委員会に対して指示すると書くことはもちろん成り立ち得ることでありますけれども、そこまでの必要はないという意味で申し上げたのでありまして、私の言葉はその程に御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/159
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160・森山欽司
○森山委員 あなたは、法理上の問題で指示する必要がないとおつしやるのでしよう。法理上で指示する必要がないならば何も人事権までとらなくてもいいじやないかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/160
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161・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 それはちよつと逆でございまして、私の申しますのは、法理上は国家公安委員会に対しても指示をすると書くことは成り立ちます。しかしそこまで必要はないという意味で申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/161
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162・森山欽司
○森山委員 だから、国家公安委員会に対して指示をするということは成り立つ。成り立つのにこれには書いてないということは、おそらくその必要がないからじやないかというふうに私は考えた。あなたもさつきそういう答弁を一応したのです。それなら国警長官の人事権まで政府が握るということは一体何事か。そこのところに思想の矛盾があるじやないかということです。人事権まで握るということは一番統制力としては大きいですからね。そこのところです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/162
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163・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは先ほど触れましたが、国家公安委員会は法務総裁の申しました通り、行政管理を扱つている役所でありましてその執行機関の長であるところの国警長官に対する任免権に調整を加えれば、それをもつて足るであろうという趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/163
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164・森山欽司
○森山委員 政府の意思というものは、その人の任免権を握つて動かすというよりも、法律上の建前として、政府の国家公安委員会に対する指示権というようなやり方でやつて行つた方が、よりいいのじやないかという議論は立ちますね、それはいかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/164
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165・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 それは理論上の問題としてはいろいろ考えられることだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/165
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166・森山欽司
○森山委員 しからば、内閣総理大臣が国警長官の人事権を一応掌握したといたします、けれども指示権がないのですね。人事権は握られているけれども言うことを聞かないという場合もあり得るのですが、いかがでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/166
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167・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 りくつばかりで恐縮でございますが、適宜適格者を選ぶ、内閣総理大臣がその責任において国家公安委員会と協調して選ぶというだけのことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/167
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168・森山欽司
○森山委員 佐藤さんは法律学者なので、法律的な建前からいえば、まず、政府の意向が国家公安委員会にとにかく通ずるというような法律の道を開くということが私は必要じやないかと思う。その道は考えておかないでもつて、国警長官の首つたまさえ握つていれば動かざるを得ないというような考え方は、これは法律的なものの考え方としては、邪道じやないかと私は思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/168
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169・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私は法律一点張りで申し上げますが、法律的の考え方としては、御承知の通りに、たとえば——今はなかつたと思いますけれども、最近まで府県の国家公務員の任免権はもちろん政府が持つというような事例もございまして、これは邪道ではない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/169
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170・森山欽司
○森山委員 私が申し上げておることは、都道府県と市町村の公安委員会に対しては指示権を持つている、ところがその大本ともいうべき国家公安委員会については法律上の指示権は今ないのですね。そうでございましよう。だから、もし政府が考えるようなことが最も必要であるならば、すなわち行政上の責任を明らかにするというきわめて男らしい態度をとられて、この間のメーデー騒擾事件で木村さんがいさぎよくおやめになるというような道ができているならば、これはやはり国警長官の首つたまを、人事権をつかまえるということでなくて、一応指示権というものを法律上つけて行くというやり方の方が筋が通つていやしませんか。国警長官の首つたまだけ握れば事実上うまく行くかもしれませんが、しかし法律問題としては何らの関係がないのじやないかと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/170
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171・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 理論上は、先ほども申しましたようにいろいろな形が考えられるので、今御指摘になつたような形も成り立ち得る考え方であろうと思います。ただ、この立法に際しましては、必要なる限度において必要なる調整を加えればいいことでございますから、これで足るというならばこれでよさそうだということの結論が出るような気がするのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/171
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172・森山欽司
○森山委員 法務総裁に伺いますが、行政上の責任、治安上の責任を明らかにするという目的を果すためならば、何も国警長官の人事権に触れないでも、内閣総理大臣が国家公安委員会に対する指示権というものを持つ程度でもつて足りるのじやないでしようか、いかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/172
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173・木村篤太郎
○木村国務大臣 行政管理の責任者でありまする国警の長官に対する任免権を持つということが、われわれは一番の妥当な方法だと考えております。もちろん国家公安委員会に対する指示権を持たせるという方法もありましようが、私は、実際の行政管理の任に当つております国警長官の任免権を持つ方が、警察の運営においてきわめてスムーズに行くのじやないかという考えから、さような立案をしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/173
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174・森山欽司
○森山委員 あなたのようなお考えをもつて、国家公安委員会に対する指示権というような形をとらず、指示権はなくても人間の首つたまさえつかんでおれば何とかなるという考え方は実によくない。警察法は、警察の政府からの独立性を保障しておつて、国家公安委員会はその権限の行使について内閣の指揮命令を受けるものではない。長官の任命のごときも、自己の権限において内閣から独立してこれをなすべきものとしておつて、しかも、公安委員の身分を保障しておるのは、このような諸権限の行使にあたつて、その独立公正な立場を貫かしめるためである。これを従来の警察法は目的としておるのであります。警察法が警察の独立性を保障しているのは、警察が時の政党内閣の政治勢力の支配に属して、その政治目的に使用されることを防止するためであります。政府としても警察のこの立場を尊重すべきである。警察人事に干渉するようなことはおのずから嚴に避くべきことである。これをあえてすることは、従来の警察法の精神からいつて逸脱である。警察を時の内閣の政治目的に仕様するという端緒を開いて、将来に重大なる禍根を残すことになるおそれがあるのであります。従つて、目的を達成するためには、国家公安委員会に対する指示権をもつてすれば足りるのであつて、もし人事権を握るということになると、警察が時の政府の私用に供されるという危險を含むことは火を見るよりも明らかであります。この弊害は戰前の日本において十分経験いたしました。今政府がこのような改正をすることになりますと、戰前の警察にもどる危険性があるということだけは、十分に指摘しなければならないが、そういう危険性に対してあなたはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/174
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175・木村篤太郎
○木村国務大臣 全面的の任免権をきめようというわけではありません。国家公安委員会の十分なる意見を徴してというところに含みがあるのであります。公安委員との話合いの上で円満に事を運ぼうということが根本の趣旨であるのであります。これはうまく運営されれば、今仰せになるような危険というものはないと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/175
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176・森山欽司
○森山委員 すでに昭和二十四年の七月に齋藤国警長官の罷免問題が起きたが、あの当時の情勢についてはあなたも御存じであろうと思います。あのときの政府の官房長官は、今の自由党の増田幹事長であります。それから警察担当の大臣は樋貝国務相でありましたが、そういう際に、何とか齋藤さんを首にしようとやつきになつた。ところが、警察法の建前上政府は手を出すことができない。国家公安委員会が握つている。それをしも強引に出そうとして、政府は、その当時次のような声明すら出しておるのであります。これは昭和二十四年七月八日の政府声明でありまして、これを担当されたのは、自由党の現幹事長、当時の増田官房長官でありますが、ここにそれを読み上げてみますと、「国家公安委員会は警察法に基き内閣総理大臣の所轄に属する。よつて現下の治安状況にかんがみ、内閣総理大臣は、治安確保のため、政府と公安委員会との緊密なる連絡を要望して来たが、公安委員会は、治安はまつたく同委員会のみの担当するところであるがごとく誤解し、政府との協調の面において欠くるところがきわめて多い。この国家公安委員会の態度は、内閣総理大臣が警察の責任者として不適格と認むる国家警察の長官の更迭を拒否する挙に出るに至り、治安最高責任者たる政府のまことに遺憾とするところである。このような状況では、最近続発する警察事故、社会不安に対処し、政府はその治安責任を果すことができない。政府は、治安の確保は国家存立の基本であり、今や諸般の行政中重要事務の一たることを思い、警察法上の法制及びその運用、並びに警察人事を現下の国情に適切なるものとするため、急速に必要な措置を講じなければならないことを痛感するものである。」こういうような堂々たる声明を当時の吉田内閣は出しておる。ところが国家公安委員会は、そういう政府の言い方を聞くことはできないといつて、その翌日にはまた声明を出している。政府の言うことは全部違つているということを一々反駁しております。そうしてその最後に、「なおいろいろ誤解があるようであるが、国家公安委員会は單に内閣総理大臣の所轄のもとにあるのであるから、公安委員会は内閣総理大臣の直接の指揮を受けるものではない。しかし政府からまつたく独立したものではないのであるから、政府とは緊密な連絡をとり、政府の施策に反映する必要があると認められる事項についてはこれを刻々連絡しているのである」というような反対声明を出しておるのです。ですから、国家公安委員会と政府の意向がまつ正面に対立することは、過去において実例があつたのであります。これは将来においても私は起り得ることであろうと思います。ところが、なるほど国家公安委員会の意見を聞くというところに含みがあるとおつしやるが、何にも含みがない。今までそういうことがないのだから大体うまく行くだろうということを言われるならわかる。昭和二十四年七月にすでにこういう一回の事例を持つておりながら、含みがあるからうまく行くというようなことは、一体あなたどういうセンスです。あなたの政治感覚というものは——国家公安委員会の意見を聞くとかなんとかいうことは、あなたはへのかつぱ程度にしか考えておらない、これは含みでも何でもない。国家公安委員会の意見を聞くというところに含みがあるからこれはうまく行くとおつしやるが、こんなことは問題にならない。要は、どんな條件をつけようと、人事権を握つたというところに問題の根源がある。それは国家公安委員会に対する指示権を持つことで足りると思う。何も人事権まで握る必要はない。人事権を握つて、戰前にあつたような、政党の警察支配という恐るべき事態が起きたら、日本の民主政治というものは一体どうなるが。大体あなた警察法を読んでいらつしやると思うが、警察法の第六條二項に何と書いてありますか。国家公安委員は、「政党その他の政治的団体の役員となることができない。」となつておつて公安委員の人選についてすら政党との連絡というものを切つてあるのです。内閣総理大臣は、なるほど内閣総理大臣に違いないが、同時に一党の総裁です。最も政党的なる人物です。従つて内閣総理大臣が国警長官の首つたまを握る、警視総監の首つたまを握るということは、とりもなおさずこれは政略的に運営させる余地を必ず與える、こういう弊害の多いやり方よりも、われわれが考えるのには、国家公安委員会に対する指示権を持つ程度でいいのではないか、こう言うのです。それについてあなたどうお考えになりますか。大体かつての政党政治のような弊害が起きないということをあなた断言できるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/176
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177・木村篤太郎
○木村国務大臣 申し上げます。森山君の一番御心配になつておるのはいわゆる行政警察であります。行政警察の面において、一たび横道に入りますと、相当いろいろな弊害が起ります。この法案の第六十一條の二は、これはまつたく運営管理に関することであります。運営管理についての、いわゆる本来の治安警察と申しますか、それに対しての必要なる場合においての指示権を與えておるのであります。いわゆる行政警察に対する指示権ではないのであります。この面において総理大臣が指示権を持つておつても、私はかつてのいわゆる警察国家というようなことは心配がない、こう考えております。しこうして、国警長官と公安委員、内閣との関係でありますが、二十四年のときのことは、私は当局者でありませんから申し上げません。しかしながら現在の公安委員と政府との関係においては、きわめて密接な連絡があり、また円満に事を運んでおります。これは私は理想的なものであろう、こう考えております。国会において承認を得て、内閣で総理大臣が任命した国家公安委員と国警長官、これは三位一体になるということが一番望ましいことであります。現在においては、この関係が実に望ましい程度に行つておるのであります。ただ制度といたしまして、総理大臣が国警長官の任免権を持つということは、最終的治安の責任者であります総理大臣の責任を明らかにするということにおいてきわめて妥当であろう、こう考えております。ただこれを民主的に運営いたすために国家公安委員の意見を徴して、その意見を尊重した上で、その任免をするという建前をとつております以上、決してあなたの御心配になつておるような警察国家の再現というようなことはないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/177
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178・森山欽司
○森山委員 あなたは非常に断定されるのですが、法律というものは使い方でどうにでもなるのです。危険性を残すような法律をつくるよりも、あなたが今要望されておるのは、要するに政府の治安に対する責任を明らかにするということに私はあるのであろうと思うのです。だから政府の治安に対する責任を明らかにするという、そういう男らしいお立場は私は必ずしも悪いとは思いません。どうも、今までデモの暴動事件があろうと、あるいはその他の事件があろうと、政府は、いやとにかく責任は少しは感ずるのだけれども、どうも警察に対する指揮権がないからというような逃げ口上を張つておつた。今度逃げ口上を張れないようにするには、確かに警察法を改正した方がいいだろう。しかしそれは従来の警察法の精神というものを逸脱しないようにしなければならない。また改正するとしても、新たな弊害を起さないようにしなければならない。そういう点からいえば、せいぜい国家公安委員会に対する指示権を持つことによつて十分目的を達し得るのではないか。何も国警長官の人事権までとらなくてもいいのではないか、警視総監の人事権までとらなくてもいいのではないか。そういう人事権に触れることによつて、かつての政党政治の弊を再現させる可能性がある。今あなたは、現在の公安委員会と政府の間は非常に円満に行つておる、こう言つておるのですが、かつてまつ正面に対立したことが確かにあつたのです。将来もあるかもしれない。そういうことを考えますと、制度としてそういう欠陥のあるものを残すよりは、今言つたような、国家公安委員会に対して指示権を持つ程度で、十分あなたの責任は痛感できるのではないか。おれの言うことを聞かないと首にするぞといつて、おどかさないと言うことを聞かない——吉田内閣の政治力をそこまでは軽く見たくはないが、私はそれで十分目的を達し得ると思うがいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/178
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179・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は国警長官なり警視総監なりの任免権を内閣総理大臣が持つたからといつて、ただちに昔のような警察国家の再現があるものとは考えておりません。むしろこれを持つこつとにおいてその運営が円満に行くのではないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/179
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180・森山欽司
○森山委員 ただちに昔のような政党政治の弊は起さないにしても、やり方いかんによつては政党政治の弊が起り得る可能性があるとお認めにならないかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/180
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181・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は可能性といつて、総理大臣がむやみに長官なり警視総監なりに、圧迫的に、自分の言うことを聞かせようというようなことは想像できないのです。今日民主国家においてさようなことかありますれば、必ずや国民の反発を買います。これはもうわかり切つたことであります。さようなことにおいて総理大臣がかつてに警察を握ろうというようなことは私は考えていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/181
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182・森山欽司
○森山委員 あなたはそういうことはないと言うけれども、かつて齋藤国警長官の罷免問題で、昭和三十四年の七月に、まつ正面から政府と公安委員会とが衝突して、これは法規の建前から政府はとうとう退却したという事例があるじやないですか。この事例をあなたはどう考えているのですか。前例がある。あの当時何も政府は、おれの言うことが悪かつたからといつてひつ込めたのではない。法律が許さないから、涙をのんで今日に至つた。時やよし、今や警察法を改正して、齋藤国警長官を堂々と首切れる時期が来たのですが、われわれはそういうことをやつてはいかぬということをあなたに教えている。対立したことはないとあなたは言うのですが、その点は、国務大臣としていささか良心的でないところがあるのではないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/182
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183・木村篤太郎
○木村国務大臣 そういうことがあつたことは私はあまり記憶がないのです。その時分は私は、当局者ではありません。しかし今森山君が仰せになつたようにあつたと仮定いたしましても、その一例をもつてただちに総理大臣がかつてなことをするとは私は考えておりません。いわんや、具体的に齋藤国警長官を、この法案が成立することによつてただちに首にするとかなんとかいうことは、とんでもないことです。これは明らかに附則に書いてある。齋藤国警長官はその任にとどまるということになつておる。あなたは齋藤国警長官をすぐに引合いに出してやるということは、いささか言い過ぎじやないか。われわれはそんなけちな考えは毛頭持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/183
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184・森山欽司
○森山委員 昭和二十四年七月にあれだけ大騒動を起した。あなたは新聞を読まなかつたかもしれない、あるいは追放中であつたかどうか、そのことは私存じませんけれども、ともかく一応警察問題に関心を持つている人ならば、昭和二十四年七月のできごとを知らない人はこの中に一人もない。あなただけが一番感覚が薄い。その点どうついうわけで薄いか存じませんけれども、事実そういう問題があつた。従つて今後もそういうことはあり得るであろう。だから法律が、そういうあなたが言う運用の妙じやなくて、運用の妙じやない面が発揮されることになつて、しかも政党政治の弊害が起きるような問題で今度の警察法の改正をやらなくても、総理大臣の国家公安委員会二対する指示権を持つだけで十分目的は津しませんかというのであります。なせ公安委員会に対する指示権を持つだけでは、内閣が責任をお持ちになれないのか。私は法律上その方が筋だと思う。いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/184
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185・木村篤太郎
○木村国務大臣 繰返して申します。私は内閣総理大臣が国家公安委員の意見を徴して国警長官を任命する、あるいは当面のこの政治の中心であり、経済の中心であり、文化の中心である特別区、すなわち東京都の警視総監の任命権を持たせることがきわめて妥当であると考えております。これによつて警察の運営はかえつて円満に行くのではないかと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/185
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186・森山欽司
○森山委員 もうその問題はあなたと私の水かけ論になりますから、あとは輿論の公正な批判を待つのみであります。
私は今度のこの改正案を出すときと。この前齋藤国警長官でこの任免権でもめた当時と考えてみると、事態はかなり類似したものがあると思う。時は昭和二十四年七月五日朝、日本橋三越本店から下山国鉄総裁が消息を絶つた。六日早暁零時二十五分足立区五反野南町常盤線鉄路上に轢死隊となつて発見。この当時のことを考えてみると、国鉄の行政整理を目前にして労働情勢は急迫しつつある。すでに国鉄、全逓の官業二大労組は実力行使による整理反対を決定し、これに電産、東芝等の産別系労組が共同鬪争の態勢を示し、事態は急速に悪化の一途をたどつている。共産党の指導による基幹産業のストによる社会的混乱や社会不安の憂慮すべき状態にあつた。七月四日米国独立記念日にマツカーサー元帥は、共産主義運動に対し法律の効力是認及び保護を與えるべきやいなやの問題を提起するというような、共産主義運動を否定するような強い声明すら発表しておる時期であります。この当時に警察法の改正の問題が起きた。今回は五月一日のメーデー暴動事件あるいはそれに前後する労鬪ストとか、そのほか最近のいろいろな共産党の軍事方針に基くできごとがある。こういう事態を背景にして警察法を改正されようとするのである。社会的背景はかなり類似しておると思うのであります。そして同じように国警長官の首に対して、今度は立法の作業による、前は行政運営の妙味によつてやろうとした、同じようなことをやろうとしておるのであります。こういうようなやり方は、よほど考えないと、より弊害が多い。現に国家公安委員長の青木さんが新聞紙上に意見を述べて、政府のこういうやり方はよくないということを言つておられます。まことに傾聽すべき意見を出しておられる。木村法務総裁と青木国家公安委員長の意見は明らかに食い違つておるのであります。あなたは国家公安委員会と自分たちとは意見が同じだとおつしやいますが、国家公安委員会の今日の警察法改正問題に対する意見とあなたの意見は食い違つておると私は思うのであります。いかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/186
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187・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は青木君とは年来の友人であります。また現在の国家公安委員会委員の方々ともきわめて親密な関係にありまして、いろいろ議論も承つております。青木君と私は多少の意見の相違はあります。しかしながらこの改正によりまして、国家公安委員並びに国警長官その他の連絡において、私はきわめて密接に取運び得るという確信を持つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/187
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188・森山欽司
○森山委員 多少の意見の相違と申しましても、五月二十六日の毎日新聞の夕刊に、警察法改正についてこういうふうにはつきり意見が書いてある。五月六日の国家公安委員会の会議で左記の意見を政府に申し送つてその反省まで促している。その反省もきかないでこんな法律案をあなたが出しておるのです。意見が食い違わないといつても、新聞を見れば明らかに違つていることがわかる。それをあなたは食い違いがないと言う。法務総裁がそういうような答弁をなさるということは、国会の権威を軽からしめるものがあると思うのであります。あなたは意見が食い違わないとおつしやるけれども、食い違つておる。私はそういう意味で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/188
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189・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は食い違わないと言いません。多少食い違いがあると言つたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/189
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190・森山欽司
○森山委員 多少の食い違いがあるとおつしやいますが、国警長官に対する人事権などは多少の違いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/190
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191・木村篤太郎
○木村国務大臣 言葉のあやであります。多少と言えば多少はあるじやありませんか。多少と言えばその間に食い違いがあるということは認めておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/191
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192・森山欽司
○森山委員 法務総裁に申し上げますが、今回の警察法の改正の重点は、国警長官、警視総監に対する人事権を握るということに最重点がある。この問題で意見が違つておるのなら、多少どころではない大部分が違つておるにひとしい。多少というのは言葉のあやだ——まことにけしからぬことをおつしやる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/192
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193・木村篤太郎
○木村国務大臣 全部ではありません。三項については青木君も賛成しておるのであります。そこで私は多少と言つたのです。全面的に意見が一致しないというわけではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/193
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194・森山欽司
○森山委員 それではお伺いしますが、国家公安委員長の青木さんとあなたで、人事権の問題でどこが意見がお会いになつておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/194
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195・木村篤太郎
○木村国務大臣 人事権の問題ではありません。あとの指示の問題のことについてであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/195
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196・森山欽司
○森山委員 人事権の問題が、今度の改正の最も重要な勘どころであります。従つてその問題で意見が食い違つたらば、われわれとしては一番追究しなければならない。先ほど来私が言つておるのは、この人事権の問題です。ところがあなたは多少食い違つておるなどと言つて、いたけだかになつておる。それは裁判所でもつて検事が被告にものを言つたり、弁護士が当事者に対していたけだかになるのはいいかもしれない。けれども国会ではそうは行かない。それならば多少食い違つておるかうんと食い違つておるか、この辺のことはもう一ぺん五月二十六日の毎日新聞の夕刊を読み直していただきたい。多少食い違つておるというのは言葉のあやだなどと言つていたけだかになつておるが、これが国会における正当な論議でしようか。先ほど来私が申し上げておるように、政府が真に治安に対する責任をとりたいとおつしやるならば、国家公安委員会に対する指示権でも十分でないですかというと、あなたはそういうよりも人事権を握らなければだめだとおつしやる。その人事権を握る問題について、国家公安委員会と意見が違うのではないですかというと多少の差があるという。多少の差ではない、全然差があるのです。そういう点、国会の議員の質問に対しては、あなたもう少し真剣にお考えになつていただけないものかどうか。これは普通ならば、あなたみたようにいたけだかになつておつしやれば大混乱が起きますよ。もう少しあなたは誠意をもつてお答え願えないかということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/196
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197・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は誠意をもつてお答えしておるつもりであります。あなたもずいぶんさつきから私に対していろいろ声を高くしておやりになつておるじやないか。この法案については必ずしも人事権ばかりではありません。三項についても重点を置いておるのであります。青木君とも私は会いました。会つていろいろ話合いまたのでありますが、青木君と多少の食い違いがあるというのは人事権の問題であります。三項については青木君もこれならよかろうと考えておるという意見を聞いたのであります。ただ人事権の問題について遺憾ながら青木君と私とは見解を異にしておる。そこで私は多少の食い違いがある、こう申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/197
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198・森山欽司
○森山委員 ではあと二問ほどで終ります。人事権の問題が一番勘どころなんで、決して多少の意見の相違じやない、これは今後の日本の警察が政党の支配を受ける端緒をつくるかつくらないかということの重大問題です。国家公安委員も政党に属してはならないという規定まで置いてある。その趣旨も今や没却されようといたしおるのであります。そういう意味で最も重要な点においてあなたと国家公安委員長との間には意見の違いがあるわけです。警察法の改正についてはあなたは多少の相違があるという、きようは見解の相違として私はとどめておきたいと思いますが、警察法の改正については前々からやるとおつしやるのだが、一向出て来ない、出て来るのはぽかつと断片的なものが出て来る、警察法についてはもつとかえなければならぬ問題がたくさんある。たとえば自治警察と国家警察、こういう問題についても処置すべき点があると思います。公安委員会の実情に徴してこれを改めなければならないところも私は多々あるのではないかと思います。現にきようこの委員会においても市の警察維持の特例に関する法律というような法律がこの委員会を通つたのであります。これは一応議員提出である、しかし政府與党として大きく見てみると、警察法改正というものに対して、統一的なアイデアというものがない。非常に断片的です。要するに場当り的な、小さな紙でもつて穴があいだがら、そこだけを張つて行くというようなやり方、独立していよいよ法律的な体制を立て直すというなら、もう少し全般的な警察法の改正の構想を政府は示されるだろうと思つたところ、今回遺憾ながらこういう警察法の改悪をやつておる。あえてこれは労働組合のまねをするわけではないが、改悪と申します。この際あなたに承つておきたいことは、警察法の改正というものに対してどういうようなお考えを持つておられるか、その基本構想をこの際承つておきたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/198
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199・木村篤太郎
○木村国務大臣 警察法の全面的の検討というものはただいまやつておるのであります。しかしながらその構想は一致しておりません。いずれ来るべき時期においてその構想を発表いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/199
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200・森山欽司
○森山委員 最後に一つお伺いしておきたいと思いますが、第六十二條で先ほど門司委員から傾聽すべき質疑がございました非常事態の問題であります。この非常事態について、警察法の今度の改正では第六十一條の二の問題もあります。また第六十二條の国家非常事態の宣言があるのであります。それからさらに保安隊の出動ということがあります。さらに大きくは行政協定に基く米軍の出動というような問題がある。一言にして申し述べますならば、非常事態におけるところのこれらの警察あるいは保安隊、あるいは米軍、こういう関係の関連について門司委員の質問を聞いていると、どうも政府の御答弁はしつくりしておらない。その間の調和がとれておりませんが、指揮系統その他についてもはつきりしていない。こういう非常事態という宣言は、昔の概念からいえば、一種の戒厳状態でないかと思うのでありますが、昔は戒厳令というようなものがあつたのであります。そういうようなものにいわば該当する非常事態法というようなものの制定を考えておられるかどうかを承りたいと思います。
なおこの際ひとつはつきりさせておいていただきたいことは、第六十二條の解釈についてでありますが、これについて増田官房長官は次のような説明をしております。すなわち昭和二十四年七月八日、例の齋藤国警長官の罷免問題のときには国家非常事態の宣言をする用意をしたのであります。その際次のような談話を発表しております。非常事態宣言は警察法第六十二條によつて、国家公安委員会の勧告に基いて総理大臣が布告することになつており、委員会の勧告が法律的には必要であるが、非常事態の宣言が必要かいなかの認定は、総理の裁定で決するものである、従つて必ずしも国家公安委員会の勧告がなければ布告ができないということはない。という解釈をその当時しているのであります。これは二十四年七月八日付の読売新聞に出ておりまして政府は増田官房長官のこの解釈についてどういう御見解を持つておられるか。この二点について承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/200
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201・木村篤太郎
○木村国務大臣 ただいま政府におきましては、非常法というようなものを提案するという用意はしておりません。はつきり申し上げます。
増田官房長官の見解のことにつきましてお尋ねでありましたが、その当時の状態と今の状態とは多少異なつていると私は考えているのであります。現在におきましては、この警察法において国警長官は国家公安委員会の任免に基くところでありまして、その指示のもとに動くということが当然のことであろうと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/201
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202・森山欽司
○森山委員 そうすると国家公安委員会の勧告というのは必ずなければならないというお考えでございましようか。増田官房長官の二十四年七月付の読売新聞紙上に、七月七日の記者団会見でそういうような談話を発表したそうでありますが、そういうような見解について、現在政府はそういう御見解をとつておらないということを、はつきりしていただけるかどうかひとつ承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/202
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203・木村篤太郎
○木村国務大臣 私の見解は今申し上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/203
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204・森山欽司
○森山委員 大臣の御見解はわかりましたが、佐藤長官はその当時の見解についてどうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/204
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205・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 増田さんの言われたことは存じませんが、私はこの勧告に基くとありますから、勧告のないのにこの宣言が布告されるということはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/205
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206・河原伊三郎
○河原委員長代理 本日の会議はこれにて閉じます。
午後四時四十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X05919520602/206
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