1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月五日(木曜日)
午前十一時五分開議
出席委員
委員長 金光 義邦君
理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君
理事 吉田吉太郎君 理事 床次 徳二君
理事 門司 亮君
池見 茂隆君 大泉 寛三君
門脇勝太郎君 川本 末治君
佐藤 親弘君 橘 直治君
前尾繁三郎君 鈴木 幹雄君
藤田 義光君 大矢 省三君
立花 敏男君 八百板 正君
大石ヨシエ君
出席政府委員
国家地方警察本
部警視長
(警備部長) 柏村 信雄君
委員外の出席者
参 考 人
(神戸市警察
長) 古山 丈夫君
参 考 人
(日本労働組合
総評議会法規対
策部長) 長谷部儀助君
参 考 人
(東京都労働組
合連合会執行委
員) 鶴岡 秀三君
参 考 人
(全日本産業別
労働組合会議議
長) 吉田 資治君
專 門 員 有松 昇君
專 門 員 長橋 茂男君
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六月五日
委員森山欽司君辞任につき、その補欠として金
塚孝君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
警察法の一部を改正する法律案(内閣提出第二
一九号)
集団示威運動等の秩序保持に関する法律案(内
閣提出第二三六号)
参考人より意見聴取の件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/0
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001・金光義邦
○金光委員長 これより会議を開きます。
警察法の一部を改正する法律案及び集団示威運動等の秩序保持に関する法律案の両案を一括して議題といたします。昨日に引続きまして、参考人の方方より御意見を承ることといたします。
この際参考人の方々に申し上げますが、本日は御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただき、御意見をお述べくださることに対し、委員会を代表し厚くお礼申し上げますとともに、各位の御忌憚なき御意見の陳述を希望する次第であります。
それではこれより御意見を承ることといたしますが、議事の進行上、参考人の方々の御発言時間は、大体お一人二十分くらいといたし、一応参考人の方々の御意見の陳述が全部済んでから、委員の質疑をお願いすることといたします。
なおこの際申し上げますが、昨日委員長より申し上げました通り、一橋大学教授植松正君よりは文書をもつて意見を申し述べられて参りましたから、ただいま印刷して御手元に配付いたしましたので、ごらんを願いたいと存じます。なおこの御意見は全部会議録に掲載することといたします。
それでは神戸市警察長古山丈夫君に御意見を伺うことにいたします。古山丈夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/1
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002・古山丈夫
○古山参考人 それでは申し上げます。かような席には初めてでありまして、実は何か項目を示してのお尋ねにお答えをいたすようなことになるのではないかというふうに予想して参りましたので、とりまとめて系統立ててということもいたしかねるかと思いますが、ごく要点だけをわかりよく申し上げたいと思います。お尋ねの点は、二つの法案に対する所見ということのようでございますが、先に警察法の一部を改正する法律案について申し上げます。
結論から申し上げますると、私は現在提案になつておりまする改正につきましては、賛成いたしかねる、反対である、こういうふうに申し上げざるを得ないのであります。と申しますのは、一点は、国家地方警察本部長官ないしは東京等の特別区の警察長の任免権を総理大臣の手に移そうという案のようでありますが、これにつきましては、私どもとしては公安委員会の制度、自治体警察の制度、これは考え方によつては非常に進歩的なものであり、民主的なものである、その間におきましてはいろいろ考えなければならぬような問題もありますし、当初実施されたときにおきましては、当時の国民感情ないしは従前の警察に対する観念と、相当かけ離れておつたということのために、しよつちゆうこれが行き過ぎではないか、何らかの機会にあともどりさせる必要があるのじやないかという考え方がつきまとつておつたように、私どもには見えるのであります。また私ども当初そういうふうに考えたこともあるわけでありますが、その後次第にこの制度が落ちついて参つておりまして、現在におきましては順調に育つて行きつつあるというふうに考える次第であります。従つてこれらの制度が、どうしても逆もどりをしなければならない具体的の必要が治安面からありまするならばこれはまた別でありまするが、現在国家地方警察本部長官ないしは東京都の警視総監の任免権が公安委員会にあるために、治安上非常に困つた問題が出ておるということは私ども何ら感知できないのであります。といたしますればこういう必要はない。必要がなければ何を好んで進歩的な方向に向いつつあるものを引きもどさなければならぬ必要があろうか、かように考えるわけであります。
それからそれにつけ加えて警察の立場から指示権について申し上げますが、国家秩序の維持に関する大きな問題につきまして、政府において十分これに関心を払い、何らかの責任を持たなければならないというお考え方に対しましては、私どもは何ら反対する理由はないのであります。ただしかしながらその政府が関心を持ち、ないしは努力しなければならない点は、どこにあるかということをわれわれの立場から申しますると、警察というものは一面において法規をはつきりしていただきたい。現在いろいろ治安立法というものが考えられておるようでございますが、むしろどの線までは治安の維持上必要があるのか、この程度のことは国民もやつてもよろしいが、これから先はいかぬ、それより先に事が起つた場合は、警察が取締りをすべきだという、そういうふうな警察の職責をはつきりしていただくように法律によつてやつていただく。政府がわれわれにやつていただくことが、指示として一番力強いものであり、それを明確に適切な線できめていただくということが一つ。
それからもう一つは自治体の警察が困つていますのは経費の点であります。この点におきましては平衡交付金その他によつて、一応の措置は考えられておりますが、実際は警察で使うだけのものがまわらない。そのために自治体としては非常に財政上苦労いたしておるにもかかわらず、警備関係の事象はさらに頻発しておる、こういう状況にあるのでありまして、少くとも国家の秩序維持に要する費用、この点について国が御関心を持たれまするならば、それに要する費用を支出していただく。法規を明確にしていただく。費用をバツクしていただく。この二つのことが警察自身を充実し、強化し治安に支障なからしめる上の必要な点であります。その点が等閑視されまして、その他の点に、たとえば、組織、機構の問題でありますとか、任免権の問題でありますとか、こういうようなことに走るということは、警備の実際の充実強化ということからいいますと、いわば方角が違うのではないか、私どもはかような考えを持つております。
〔委員長退席、吉田委員長代理着席〕
従いまして指示権につきましても、現在のような広汎な治安上必要があれば指示ができるというふうなことでありますと、それがどういう範囲に行くものか、われわれちよつと想像がつかぬわけでありますが、むしろ法例をつくり、その法例の解釈を一定する、こういう線で政府としては御努力を願いにい。それを末端の個々の事象についてそこはどうせい、これはさしとめよというふうな個々の指示が参つて来るというようなことでありますれば、これはかえつて警備の実施を混乱させることになりまするから、これは自治体の警察長の仲間では、ちよつと極端のようでありますが、かりにどこそこの自治体の警察長はどうもやり方が気に入らぬ、治安上おもしろくないということになりますると、治安上必要だからあの警察長はやめさせたらどうかというふうな総理大臣の指示さえもできるんじやないか、今の條文のままを広く拡張解釈されまするならば、こういうことを仲間の間には言うものすらあるのであります。これとても非常に極端のことを言うようでありますが、現在の警察法の改正案自体が今の法規の強化、経費の点を二の次にいたしまして、まず国警長官、警視総監の任免権に触れておりますが、これは悪意があつてのこととはむろん考えないのでありますが、まずそういうふうに行くということは個々の自治体に事が起りました場合にはほかのことはやりにくい。まず治安上の必要から公安委員会に警察長の罷免を指示しようということに行かぬとも限らぬ。そうしますと公安委員会制度ないしは自治体警察制度の根本をくつがえすということにもなりかねぬのでありますが、そういう今のように広い漠然とした範囲で、総理大臣が指示権をお持ちになるというようなことは、まことに困ることである。むしろ先ほど申し上げましたような、法令の強化ないしはそれの解釈あるいはそれに伴つて運営の一般の大方針をきめる、こういうことについて政府は関心を持つて行くべきである、かように考えるわけであります。従つて、東京都にのみ経費の一部を国庫が支出することができるという道を開かれておるのでありますが、これとても経費の問題としては、全般的に治安維持上必要な国家的な仕事についての警察の費用は持つてやる、その点において警察を強化して行く、こういうふうにお考え願うべきでありまして、東京都の警察のみが経費を支出されるということは、何か任免権ととりかえのような妙な筋の通らぬかつこうのものと、私ども考えるわけであります。以上とりとめない形になりましたけれども、一応の意見を申し上げたいと思います。
それから集団示威運動等の秩序保持に関する法律案でございますが、この法案はこれまで各自治体ごとに條例をつくつて、いわゆる公安條例をつくつているところが相当あるわけでありまして、私ども神戸市におきましても、神戸市條例によつて取締りをいたして参つております。ただ同じならこういつた事柄については、各自治体がばらばらにそれぞれの條例をつくり、またそいの條例間に多少のでこぼこがあるとうことよりも、一本の国会の意思により、法律としてつくつていただくことが至当であるというのが、われわれのかねてからの主張であつたわけでありますが、それが実現せられる形に相なりまするので、私どもとしてはこの法案につきましては、きわめてけつこうというふうに考えるわけであります。ただしいて申しますならば、現在は神戸市の條例におきましても許可制をとつております。その他の点におきましては現在の法案が、むしろ現在各地に実施せられておりまするものよりも、取締りの実施の立場から申しますると、多少後退をいたしておるというような点も見受けられるわけでありますが、それらのこまかい点は別といたしまして、大筋といたしましては私はかかる形において、こういつた問題は処理せらるべきものであるというふうに信じますので賛成であります。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/2
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003・吉田吉太郎
○吉田委員長代理 次に、参考人長谷部儀助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/3
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004・長谷部儀助
○長谷部参考人 私は日本労働組合総評議会法規対策部長をしております長谷部でございます。私どものやつている運動の立場から、特に労働組合運動という立場から、最初に集団示威運動の秩序保持に関する法律案に対して、意見を申し述べたいと考えます。
今回政府が提出いたしておりますところのこの法案は、現在各府県市町村ごとに行われておりますところのいわゆる公安條例を国の法律として中央一本に強化をはかろうとするところに目的があるようであります。元々この公安條例なるものも、昭和二十五年六月当時の総司令部当局より集会デモ等の制限に関しての指令をされて以来、各地方において逐次制定されて来ているものでございます。当時これらの地方公安條例の制定の際にあたりましても、各方面から現行憲法の第二十一條の言論、集会、表現の自由並びに同じく憲法の二十八條にあります団体交渉権を不当に制限するものではないかということで、憲法違反という論議がはげしく闘わされておつたわけでございます。現に昭和二十四年におきましても、佐賀市のこの條例に対する福岡高裁の違憲判決や、あるいは最近におきましては、昨年十月の京都の円山事件におきまするところの京都市公安條例の違憲判決等が、事実問題として示しておるところでございます。このように問題の多く含まれておるものを、いまだ條例として制定していない多くの地方も含めまして一本化して、国の法律とするというようなことにつきましては、何といたしましても私どもの納得の行かぬところでございます。公安條例の制定の状況一覧表を見ますると、現在では、全国でむしろこれらの條例をつくつていない所の万が多いようでございます。これらは、当然、その地方におきましては治安上においても必要のないことを証明しているものではないかというふうに考えられます。それであるにもかかわらず、どうしてもこのようなものまで、一律に規制しようといたしますならば、少くともこのような法律が、その目的とする公衆の生命、あるいは身体、または財産に対して、どのような直接の危険を及ぼすかという事実認定のできるような客観的な証拠を議会に提出して、国民にひとしく知らしめる必要があるのではないかというふうに考えられます。そのようなこともなされずいたしまして、急速に法律をつくり上げてしまうというようなことにつきましては、あまりに国民に対しまして親切さを欠いておるものではないかというふうに考えられるわけでございます。現在集団示威運動等は、労働団体が最も多く行つておりますし、むしろ労働組合だけがやつておるのではないかというふうに申しましても、過言ではないように考えられます。このように労働者大衆は権力も持たず、また財力もなく、みずからの生活を守ろうとする意思の表現は、集会やデモによるのほかはそのすべがないわけでございます。それだけに、よりこの法案の成否に対しましては重大な関心を持つておるわけでございます。以上のような観点からいたしまして、この法案に対する具体的な問題点について、少しく意見を申し上げたいと考えます。
第一点といたしましては、法案の第五條の第五項あるいは第六條の第三項等におきまして、公安委員会は集団示威運動等の届出に対しまして、時間を定めて補正することの権限を定めております。この点につきましては、最も私どもの危惧をいたすところでございます。これは過去の條例にもあつたところでございますが、デモコースや集会の実施場所に対する補正勧告でございます。元来、デモといつたようなものは、一般国民に対する示威であり、強力な意思の伝達表現方法でございます。従つて、より多くの市民に見てもらい、あるいは聞いてもらうことが、より成果を来すゆえんでございます。そのような観点から、やはり実施する場所といたしましても、適当な條件に合う場所を選ぶのでございまするが、これが繁華街であるとか、あるいは交通上云々であるとかの理由に基いて再三変更を命ぜられ、その成果も半減しておるというのが実情でございます。なお本法案では、この権限を公安委員会は警察関係者に委任することができるようになつておりまするが、これで行きまするならば、さらに現在より激しい弊害が生れるだろうと憂慮されるところでございます。
さらに第二点といたしましては、第八條におきまして警察官の取締り権限を規定いたしておりまするが、このような認定権限を警察官にただちに與えておくということは、非常に乱用される危険が出て参るのではないかというふうに考えられます。具体的には、大きな規模におけるところのスト破りに備えるピケライン等は、ある場合においては、この法律による届出云々を生ずる等の問題が起るのではないかというふうに考えられます。過去におきましてもこのような例はあつたのでございまして、組合の争議行為自体にさえも、制限が加えられるような重大な内容を含んでおると思われます。このように、一、二の点を拾いましてもなかなか問題のある法案でありまするし、現在必要な地方にはすでに條例として制定されておるのでありまするから、あえて何ら必要性のないところの地方まで包含をいたしまして、平地に波瀾を起すような本法案の制定は、ぜひとも慎重な御考慮を願いたいと考えます。
その次に、警察法の一部を改正する法律案について若干意見を申し述べたいと考えます。平和條約が発効いたしまして、占領という状態が終りますとともに、警察による治安確保の任務が特に重大になつて来たことは、一般に考えられるところでございます。たび重なる学生と警察の衝突、あるいはメーデーの騒擾、五・三〇事件などを見ましても、だれしもただごとではないというような不安を感ずるところであるとは考えられます。しかしながらこれは、せつかく独立した日本の現在にも将来にも、何か国民を押えつけるような重苦しい不安が感ぜられまするし、従つて、この種一連のごたごたも、そういう社会不安が小出しに正面に現われつつあるという本質的な問題を考えねばならないと思います。これがやはり今後の治安対策の焦点とならなければならないというふうに考えるものであります。そこで、今後の治安対策の上で最も大切なものは、国家権力的な力であるよりも、常に国民の味方の側に立ち、国民から信頼される力になるということではないかと思われます。今次改正案は、今申し上げましたような観点からいたしますと、まつたく逆を行くような、国家あるいは地方公安委員会の自主性をほとんど骨抜きにいたしまして、すべての警察権を実質的には政府が左右できるような結果になるのではないかと恐れられるわけでございます。現行警察法におきましても、国家非常の場合には内閣総理大臣によつて全警察の統制ができるようになつておるのでありまするから、将来非常の事態があるだろうというような一方的な想像に基いての、かつての警察国家を再現させるような改正は、深く研究する必要があるのではないかと考えられます。特に最近では、国民を暴力から守るべき警察官が、かえつてみずから暴力を振つているような実情が間々あることを考えますると、あまりに政府と直結するような制度はいたずらに末端警察官をして、国家権力を笠にして振りまわさせるような危険が多くなるのではないかと思われます。特に、破壊活動防止法の第二十八條におけるところの、公安調査庁と警察との相互における情報資料交換の規定、あるいは、前に述べましたところの集団示威運動規制に関する警察官の権限、さらには労働法におけるスト制限等一連の政策を考えますと、本法案の改正点におきますところの、内閣総理大臣における全警察の支配権限こそが、これら一連の諸立法のかなめになるものではないかというふうに考えられます。
以上のような諸点から、いたずらに国民の中に仮想したものをつくり上げまして、神経質的な治安対策の強化をはかることではなく、民主警察の将来のあり方については、慎重な御検討を要望申し上げまして、私の公述を終らしていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/4
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005・金光義邦
○金光委員長 次に河野平次君の代理で鶴岡さんがお見えになつておりますので、鶴岡秀三君にお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/5
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006・鶴岡秀三
○鶴岡参考人 東京都労働組合連合会の執行委員をいたしておりまする鶴岡でございます。
今般提出されておりまする集団示威運動等の秩序保持に関する法律案並びに警察法の一部改正法律案につきまして、まず結論から申しまするならば、われわれは労働組合の立場から、また民主主義を守るという立場から、絶対反対をするものでございます。最近におきまして、特にサンフランシスコ講和会議以後におきまして、政府は破防法あるいはその他の治安立法制定を策し、また警察法あるいは地方自治法を改悪いたしまして、中央集権的な方向へ進み、さらに労働法の一部改正案に盛られておりますところの労働法改悪の立場にいたしましても、あるいはまた予備隊、保安隊の強化という立場にいたしましても、これらはすべて一連の反民主主義的な、あるいは反国民的な立法政策であると考えざるを得ないものでございます。その理由といたしますところは、すなわち政府におきまして、独立に伴う国内態勢の再編あるいは整備と、こういう名前を用いているようでございますが、その方向といたしましては、国家権力の集中であり、また国家権力の反動的な再編成であると考えざるを得ないわけであります。このことは、本委員会におきまして、昨日も非常に討論されたと聞いておりますが、地方自治法の問題にいたしましても、いわゆる地方分権の制度に反しまして、中央集権的な方法を明らかにたどろうとしている、と同時に、われわれ労働組合に対しましては、いわゆる破防法さらに今般提出されております集団示威運動取締法というような形における弾圧政策、このことは明らかに労働組合の、いわゆる労働者の基本的人権を無視するところの方向にあるものと、われわれは考えざるを得ないのであります。このことはただ單に国内政策の——このような問題につきましては、国内的な問題ばかりではなくして、すなわちサンフランシスコ会議におけるところの政府がとりました態度に基きまして、日本をして再び戦争への道を歩ましめているのではないかと危惧いたすものであります。われわれの民主国家の基本として考えられるものは、まず第一には、言論、集会、結社の自由、すなわち憲法二十一條に保障せられましたところり言論、集会、結社の自由こそが、その根本になるのではないか。さらにまた第十一條におきまして、これらのことが基本的人権として、最高不可侵の人権である、このように規定されてあるのでございます。しかも先般提出されました破壊活動防止法案については、労働組合のみならず文芸家協会あるいは学術会議、新聞協会、弁護士連合会等各種の団体におきましても、こぞつて反対いたしておるのでございまして、このことはいわゆる基本的な言論あるいは集会、結社の自由に対するところの一大脅威を感じているからにほかならないのでございます。さらにまたこれらの問題につきまして、公安調査庁あるいは公安審査委員会によるところの介入、しかもそれらがいわゆる警察官憲と結びましての労働組合その他の団体に対するところの介入という形において現われて来る。このことは組織労働者に対するところの大きな抑圧であると考えざるを得ないのでございます。
次にこの集団示威運動等の秩序保持に関する法律案の各條につきまして、述べてみたいと思います。この法律案につきましては昭和二十四年より各地におきまして公安條例の形において制定されましたものを一本化すると、このように書いてあるわけでございます。この立法の根拠に対しましては、これが当初制定されます際に、非常に問題になつたことは御承知かと存じております。すなわち東京都におきましても、二十四年の十月に制定せられ、さらに二十五年の七月に改正されたわけでございますが、この基本的人権に対する根本的な考え方が、政府におきましては、あるいは一部考えが違つているのではないかと、われわれは感ぜざるを得ないのでございます。その理由といたしましては、第一番に、この提案理由を読みまして奇異に感じましたことは、「終戦後、集会、多衆運動等は、その正当な範囲を逸脱して犯罪を構成するに至つたときに、初めて刑法その他の法令によつて取締りを受けるほかは、何らこれに対する規制の方法がなかつた」——これが当然なのでありまして、当然取締るべきものと考えている考え方そのものに、非常に問題があるのではないかと思うわけでございます。われわれは必ずしも無秩序な、あるいは無統制な暴力的な集会あるいは示威運動を目ざすものではございません。われわれみずからがその示威運動あるいは集会につきましては、自律的な自主的な統制を保つて行きたいと考えているものでございます。このことが憲法に保障せられましたところの集会の自由であり、言論の自由であり、結社の自由に通ずるものでありまして、これをみだりに取締ることはできないわけでございます。この点につきまして、政府は公共の福祉という立場から、当然制限がせられると申しておりますが、この公共の福祉の考え方につきましても、昨年京都地裁におきます公安條例の違憲判決の判決文におきまして、明白に現われているわけでございます。すなわち「新憲法下における基本的人権が侵すことのできない永久の権利として規定せられ、立法によつても漫りに制限されないものであることは今更多言を要しない。」「公共の福祉の見地から基本的人権を制限するは真に止むを得ない場合においてこれに必要な最少限度に止るべきであつて公共の福祉を常に優先的なものと考え右限度を越えて広範な基本的人権を制限するがごときは許されない」と判決いたしているわけでございます。しかもこれらの集会につきましては、一切の集会及び集団行進等におきまして、場所のいかんを問わず一切の集団示威運動を取締りの対象に置き、無許可でこれを行うことを禁止し、なお違法行為に対しては刑罰をもつて臨む、このようなことは明らかに行き過ぎであると判決しておるのであります。このような立場から申しましても、この基本的人権に対するところの公共の福祉による制限ということにつきましては、慎重を期さなければならぬと考えるわけでございます。
第二には、政府もその立場を一部認めているのでございますが、この法案におきまして、必要最小限度の制約と書いてあるわけでございます。しかしはたして本法案が必要最小限度の法案であるかどうか、われわれは現実に過去数年間、集団示威あるいはまた集会の現場におきまして、またそれを主催する立場におきまして、大きな制約を受けているわけでございます。
第二條におきまして、この法律は届出制を採用しているかに見えるわけでございます。この点は現行の東京都公安條例は許可制でございますので、一応形の上では届出制という進歩した形のように考えられますが、しかしこの「道路、公園その他の公共の場所」という解釈のしかたによつては、あらゆる場所がこれに含まれるわけでございまして、しかも現実にこの「公共の場所」その他の理由によりまして、相当な制限を受けているわけであります。しかも冒頭におきまして届出制を採用しているがごとき形をとつてはおりますが、現に都の公安條例以上の苛酷な刑を科しているわけでございます。第三條におきましてその届出の様式におきましては、いわゆる取締りの便宜にのみ重点が置かれてある、ささいな、さして重要でないようなことまでも記載すべきようになつている。具体的に申しますならば、第四号の「集団示威運動等をその実施の場所において統轄指揮すべき者」デモの指揮者でございますが、その届出を要するとか、あるいは参加団体別の予定人員とか内訳を届け出なければならない、このようなことは当初におきましては大よその予想はできるのでございますが、その当日におきまして相当な相違が出て来るのが普通でございまして、しかもこれらの要件に違反した場合においては罰則がある、しかも苛酷な罰則がついている。このようなことから考えましても、これは断じて届出制ではないと考えられるわけでございます。
次に第五條の補正命令でございますが、この点につきましては二十四時間以内に補正命令を出すことができる。一定の時間内に補正されなかつた場合には届出がなかつたものとみなす、そうしてそのあとに第九條には、届出のなかつたものについては苛酷な罰則がある、このような立場から考えましても、この補正命令というものが、どういう形でどういう方向に打出されて来るか、現実の問題といたしましては、これらの治安立法はつねに拡張解釈されるのが現実でございます。従いまして補正命令につきましても、もし悪意をもつて行われるならば、あるいはまた極度の拡張をされるならば、今後の集団示威運動等には非常にさしつかえを生ずるわけでございます。
次に第六條の遵守命令でございますが、この遵守命令におきましては、具体的に遵守すべき事項を命ずることができる、従いましてこのことから申しましても、はつきりこれは許可主義である。形は届出主義をとつているが、現実は許可主義である。しかも具体的に遵守すべき事項を命ずることができる、そうして最もその危険とされますところは第三項の「当該集団示威運動等の開始若しくは終了の日時若しくは実施場所の変更を命じ、又は参加人員数の制限を命ずることができる。」これを濫用されますならば、あらゆる集会、あらゆる集団示威運動におきまして適当に変更がされる、しかも場所も人員も制限される、このような結果になることと思うわけでございます。
その次に第八條におきまして、このことは届出につきましても公安委員会に届け出るということになつておりますが、公安委員会からさらに警察長あるいは警察官あるいは警察吏員に指示を與え、あるいは権限を委任することができる。従つてその第八條の一項の末尾にありますところの「警告を発し、又はその行為を制止することができる。」とか、その次におきまして第二項の末尾に、「当該集団示威運動等を解散させることができる。」このような條文を見ました場合には、われわれは過去の治安警察法的なにおいを多分に感ずるわけでございます。しかも多数が集まりましての集団示威運動等におきましては、そこにいたずらに警察官が介入することは、不必要な摩擦を生じ、しかもそこにいたずらな困難を誘発する危険が、多分にあるわけでございまして、その当該集会におきましても、団体の自主性にまかすべきものである、そのように私どもは考えるわけでございます。ここにおきまして、かの破防法におきましての組織に関する絶えざるところの調査、あるいは証人の喚問ができるということと相まつて、あらゆる集会には警察官が公然と介入ができるという規定がここにあることと存じます。すなわちまさにその違反に対する命令が行われようとする場合とか、こういうような場合におきましては、当然警察官がその場にいなければ発見することができないわけでありまして、この規定から当然あらゆる会合には警察官が介入するのだ、このように考えざるを得ないわけでございます。しかも先ほど申しましたように、無用な摩擦を極力避けようとするわれわれの立場からいたしますならば、そのようなことは望ましくないと考えざるを得ないわけでございます。
最後に第九條の罰則でございますが、このような法律におきまして、あえて罰則を規定する必要はないのではないか。しかも苛酷ないわゆる刑事罰でございます。第二項におきましては、先ほどの補正命令あるいは遵守命令に違反した場合には六箇月以下の懲役もしくは禁錮、これはどの公安條例におきましても、このような規定はございません。非常に苛酷なものと、われわれは考えざるを得ないわけでございます。しかも第三項におきましては、情を知つて参加した者はすべて二千五百円以下の罰金に処する、従いましてこの法案の目的とするところは、必要最小限度ということではなくして、取締りの便宜に重点を置き、しかもこれに反する者は、苛酷な罰則をもつて臨むという考え方にあると思うわけでございます。もとよりわれわれは無制限なあるいは暴力的な集会その他を了承するわけではございません。このような立場からわれわれといたしましては、団体の自主性にまかすべきものという考え方から、この法案には反対いたすわけでございます。
次に警察法の一部改正法案でございますが、この改正法案につきましては、三項目あると思うわけでございます。第一には国家地方警察本部長官、第二には東京都特別区の警察長、すなわち警察総監をいずれも首相が任命するということ。第三には自治警につきまして首相がさしずをすることができるということ。こういう問題がございますが、この警察法が制定されました当初の考え方につきまして、われわれは十分反省してみる必要があるのではなかろうか。すなわち警察法が制定されましたのは、一九四七年におきますところのマッカーサー書簡に基くものでございます。そのマッカーサー書簡に基くところの基本的な考え方につきましては、まず第一に中央集権的な警察機構をして地方分権的ならしめる。すなわち国家地方警察と自治体警察を置く、この国家地方警察と自治体警察につきましては、相互に対等であつて平等である。指揮監督すべきものではない、しかしながら事務上の連絡はできるという、こういう考え方に基いているわけでございます。このことにつきましては、マ書簡は非常に明文をもつて答えていると思います。ちよつと読み上げてみたいと思います。「一般大衆の統制外に立つ行政長官を長とする高度に中央集権化された警察官僚制を設置し、これを維持することは、日本の封建的過去においてそうであつたごとく、近代全体主義的独裁制の顯著なる特徴である。戦前十箇年間における日本の軍閥の最も強大なる武器は、中央政府が都道府県をも含めて行使した思想警察及び憲兵隊に対する絶対的な権力である。これらの手段を通じて軍は政治的スパイ網を張り、言論集会の自由、さらに思想の自由まで弾圧し、しこうして非道の圧制によつて個人の尊厳を堕落せしめるにいたつたのである。日本はかくてまつたく警察国家であつた。」「極右たると極左たると問わず反民主的分子が人民の自由を警察テロの網の中に陥落せしめるような事態を再び可能ならしめてはならぬ。」従つてこれらの警察法の基本的な問題につきましては「地方自治の原則にのつとつて警察制度を完全に地方分散すること」にあるというわけでございます。こういう考え方に立つた警察法につきまして、この際内閣総理大臣が自治体警察の長でありますところの警視総監あるいは国家警察の本部長官を任命制にするということは、すなわち平時におきまして首相が絶対的な警察権を掌握せんと考えているのではないであろうか。このことが日本をして再び警察国家の再現という形に陥らしめなければ幸いであると、われわれは考えざるを得ないのでございます。しかもこの改正法案につきましては、全国自治体警察公安委員会連合会におきましても、全面的に反対いたしているわけでございます。東京都におきましても、自由党が絶対多数を占めるところの都議会におきまして、全会一致で自治体警察の長であるところの警視総監の任命制には、絶対反対をするという決議がいたされているわけでございます。
第二には、公安上必要な場合に、首相の自治体警察に対するさしず権でございますが、実は「公安維持上必要な事項について、」という、きわめて漠然とした広汎な言葉になつているわけでございます。従いまして、もしこれが濫用されますならば、あらゆる問題につきまして、いわゆる自治体警察、国家地方警察という根本的なわかれ方に対する非常な制限になるのではないか。先ほど神戸の警察長の方が申されましたように、もしこれが濫用されますならば、人事の問題あるいは選挙等におきましても濫用されないとは限らない、このような立場から、このさしずにつきましては限定すべきものであるという御意見がなされましたが、われわれといたしましては、これは自治体警察にまかしておくべきものでありまして、ごく特殊な例外、大規模な内乱とか騒擾とか、そういう大規模な問題につきまして、ぜひとも国家的な権力によらなければならないという場合においては、あるいは考えられるわけでございますが、その他のことについては、このさしずについては絶対必要がないと考えられるわけでございます。
最後にもう一つつけ加えておきたいことは、この任命権については首相が掌握する。しかも現在におきまして、東京都の警察費の財政的な裏づけについては、何ら国家は保障しておらない。本年度の当初予算におきまして東京都の一般会計五百六十億に対しまして、警察費は七十四億を数えているわけでございます。パーセンテージにいたしまして大体一四%と考えているわけでございますが、これだけ厖大な金額が都民の税によつて支払われている、その自治体警察の長である警視総監について、首相が任命するという。もちろんこの法案には、一部予算は政府において負担するとございます。ところが過去におきまして、たとえば東京都は国会その他の重要施設の警備にも、相当な費用を投じているわけでございます。にもかかわらず、これが都民の税によるところの都の予算においてまかなわれている。これらについて政府から補助されている金額は、ゼロに等しいという現実にあるわけでございます。こういう厖大な警察費、しかも定員も年々厖大化しつつあり、本年度におきましても約百億を数えるであろうと言われておる厖大な警察費につきまして、われわれは勤労者の立場から反対いたすわけでございますが、さらに都民の立場といたしましても、これは都の予算によつてまかなわるべきものではない、このように考えているわけでございます。しかも一面において政府は任免権を掌握し、予算は大して補助しないという考え方は、非常に均衡を失するのではないか。本委員会は地方行政委員会でございますので、このことについて最後に一言しておきますが、特に東京都のような場合におきましては、年々五十万からの人口が増加いたしているわけでございます。しかもこの五十万からの人口増加による交通、住宅あるいは水道その他の問題にいたしましても現在の都民によつて払われているところの都税によつてそれがまかなわれており、そして起債のわくというものはきわめて限定されている。現在の都民の税によつて将来の都民のための施設がまかなわれているということは、きわめて不合理なものであると考えざるを得ないわけでございます。従いまして東京都におきましては、これらの事情を勘案したところの相当な起債のわくを認めるべきではなかろうか、このように考えているわけでございます。
以上集団示威運動等の秩序保持に関する法律案並びに警察法の一部を改正する法律案につきまして、見解の一端を申し述べておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/6
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007・吉田吉太郎
○吉田委員長代理 この際委員各位に申し上げます。参考人の長谷部儀助君は、所用のためにお帰りを願わなければなりませんので、さよう御了承いただきます。
次に参考人吉田資治君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/7
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008・吉田資治
○吉田参考人 産別議長の吉田資治でございます。
まず最初に警察法の一部改正の問題について意見を申し述べます。この問題はさきの破防法、それから労働組合法の改悪並びに今問題になつておりますゼネスト禁止法等と一連の、労働組合並べに民主運動を弾圧する法令の一端として、こういうものが出ているという意味で、私どもは絶対に反対なのであります。大体ここに出ております要点は、権力を内閣総理大臣に集中するというのがその要点であります。先ほどからいろいろ御意見が述べられておりますように、たとえば警察の長官を天くだりに任命しておいて、自治体の運営というものはあり得ないのであります。形はなるほど一警視総監の任免であるかもしれませんが、事実はもう自治体としての運営をまつたくここで奪つてしまう。これは最近問題になつております区長の任命制にも関連があるわけでありまして、こういう一連の形が出ておりまして、態よく自治体活動というものを抹殺して、内閣総理大臣に権力を集中して、今の反動政策を実行しようというのであります。これがどんなに大きな害悪を流すかということは、すでにあの無謀な侵略戦争を実施いたしました軍閥、反動勢力のやりました政策、政治がその成果を具体的に示しておるのでありまして、今さらこれを繰返す必要もないと思います。最近におきまして非常に参考になるのは、南朝鮮の李承晩政権のクーデターでございます。これは議会がどういうことをきめましても、もう議会の決議などは全然無視いたしまして、議員をどんどん逮捕する、こういう形が現在出ておるのであります。なぜこういうことができるか。それは新聞にも出ておりますように、大統領が警察を動員いたしまして、議会を包囲し、実力をもつて議会の権能を蹂躙するのであります。議員の皆様は、やはりこういうことが近所に起きている実例をよくごらんになつておく必要があると思うのでありまして、單に形だけの警察長官の任免というふうなことだけで済まない。こういうことは、とりもなおさずお隣りの李承晩政権のやつている條件をちやんと備えるのだということ、このことをやはりわれわれは指摘しなければならぬと思います。従つて今問題になつておりますこういう警察法の改正という、ほんのわずかの法案の改正というものが、どんなに大きな意味を持つか。現在日本が立つておる興亡の岐路に際しまして、再び過去に犯しましたあの大きなあやまち、戦争への道に転落する一つの大きな岐路になるという点を、私はここで指摘したいのであります。なお先ほどからも言われておりますように、日本の警察がいわゆる民主警察として運営されましたのが、最近逆行をして来ておるということの指摘がありましたが、單に形だけの逆行ではなくて、現に警察そのものが、すでに特審を中心にいたしました特高警察、政治警察がどんどん復活いたしまして、そしてこれが法律を無視いたしまして、そういう活動が行われておる。いわゆる官憲の非合法活動が着々行われているのであります。こういう官憲の非合法活動をこういう形で合法化して行くということにもなるわけでありまして、私はそういう意味で、この法案がこういうふうに改正されるのに反対すると同時に、現在行われている警察のそういう法律を無視した行為に対する制約というものを、ここに逆に問題にしなければならないのではないか。民主警察の本来のあり方に対して、私はむしろ現在の行き過ぎを是正することこそが必要ではなかろうかと考えます。そういう意味で、この警察法の改正については絶対に反対をするものでございます。
それからなお集団示威運動等の秩序保持に関する法律案につきましては、同様な意味で反対であります。この提案の趣旨にも書かれておりますが、法務総裁の提案趣旨の中にも「申すまでもなく集会、表現の自由は、憲法によりて保障された基本的人権でありますから」云々というふうにして、ちやんと基本的人権であることを法務総裁は認めておいて出発をしているのであります。公共の秩序を維持するため、こういう理由でこの問題が提起されておるわけであります。この点は非常に巧妙に提案がされております。しかしながら、先ほども鶴岡さんから御指摘がありましたように、裁判所におきましても、こういう名目で労働者の基本的な権利を奪うのは憲法違反であるという判決が、すでに出ておるくらいであります。そういう意味で、こういう憲法違反であるということが、はつきり示されたものをなおかつ法律にして出しておる。この法律自体は、やはりそういう意味では憲法違反であるということになるわけであります。ただここで弁解として言われるのは、これまでの公安條例なるものは許可制であつた。しかし今度は許可制でなくて届出制なのだから、憲法違反ではない、こういう議論もあるようでありますけれども、これも先ほど御指摘になりましたように、その條文の内容を見ますと、補正命令や遵守命令というものがありまして、これはこういう條件がなければ、許可しないということが裏づけになつておりますから、これは届出制という名前だけであつて、許可制と何らかわるところがない。しかもこれに対する警察の処置についてはつきり認めてあります。警察の見解によりまして集会を解散することができるというふうに明確にされます。こういうことがはつきりしませんでも、現在の警察はどんどんそういう行為をいたします。労働者の当然の権利としてストライキをやり、集会を持つ場合に、これを公安條例云々をたてにしまして、ストライキをやるための集会を蹂躙するという事例が、幾らもあるのであります。まして、こういう法律で警察の権限を認めるといたしますならば、これはとんでもないことでありまして、実際警察の一存によつて、集会もデモ行進も蹂躙されるということは想像にかたくない。しかもいわゆる実力で解散するという形になります。最近における五月一日のメーデー事件や、五月三十日における示威運動に対する警察の態度を見ますと、いわゆる実力でこれを解散し、粉砕するという態度であります。実力とは何かと申しますと、武装いたしておりますから、かしのこん棒でぶんなぐる、ピストルで撃ち殺す、催涙弾を投げる、こういうことが結局実力になるのであります。こういう事例は幾らでもあります。五月三十日の板橋における岩之坂上交番の襲撃事件といわれておりますのも、これをわれわれしさいに見ます場合に、新聞の報道は、あらかじめ暴徒が武装いたしまして交番の襲撃をたくらんだ、こういうふうにいわれておるのであります。ところが、事実調べますと、このときには、あの付近の日産化学の青婦人寮の前の広場で整然と集会を持ち、決議をいたしまして、そうしてデモ行進を開始しておるのであります。ところが新聞によりますと、日暮里山という山の中で密談をしたということになつている。日暮里山というのは、青婦人寮のお庭の山の名前であります。それを何か裏山に入つて密議をした、こういうふうにでつち上げ、そうしてあたかもそこで襲撃の密議をこらして出て行つた、こういうふうにいわれているのであります。ところが、この三百人のデモがずつと交番の前に行きまして、交番から八メートルのところでストップいたしまして、そうして解散しろという問題で出て、若干トラブルがありますと、突然ピストルを撃つて、三人がたちまち死に、あと重傷者がたくさん出た。こういう事態ができた。ところが、この八メートル先で撃ち殺された労働者を交番の前までずるずる引きずつて行つて、そうして交番の前で寫眞をとつているのであります。これは意識的にそういうことをしたか、しないかはわかりませんけれども、ともかく交番に襲いかかつて撃ち殺されたという印象を與えるような写真を掲げている。こういうことをいたしまして、今の裏山で密議をして襲撃したということを、全体として構成するようにできている。こういうふうに、今のような法案がなくても、こういうことをでつち上げて、労働者の当然の行為をこういうふうに弾圧するのでありますから、もしもこういう法律ができまして、そして警察の一存でこれを判断し、これに解散を命じ、これを弾圧するということが許されますならば、これはもうこれまでやつて来たことを大手を振つてやるということになるわけであります。こういう意味で、私はこの集団示威動運等の秩序保持に関する法律案というものは、まつたくこれまでの警察が法律を無規してやつた、そういう行為をむしろ隠蔽し、擁護して、そしてそれが合法的だ、これが正しいのだということを、この法律によつて裏づけようとすることになると私は考えます。そういう意味で、最初に述べましたように、当然の労働者の権利は、いかなる場合におきましても守られなければなりません。従つてこういう法律をつくることは、私は絶対反対であります。こういう法律によつて労働者の憤激を押え、もしくは鎮圧することでは、本来の目的は達せられないことは明らかであります。けさの新聞によりますると、緑風会の宮城タマヨ氏のことが若干出ておりましたが、これによりますると、かつての裁判官宮城長五郎氏は、治安維持法によつて多くの青年をどのようにいじめたが、そしてその後のいわゆる保護運動に携つた場合に、悪法国を滅ぼすかといつて嘆いたということが出ておるのであります。これはこの問題とは別でありますけれども、治安維持法によつて、いわゆる国内の治安を維持し、そうして日本の天皇を中心にした国策なるものを遂行することが、至上の使命であると称したこの行為、しかもその衝に当つた宮城長五郎裁判官をして、その自分のやつて来た行為に対して、悪法国を滅ぼすかといつて嘆かしめた。この事実を私どもは思い起す必要があるのであります。こういう意味で、他の破壊活動防止法案その他をも含めて、こういう一連の弾圧法は、絶対にこの議会において通すべきではなかろうということを、一言私の意見として申し上げる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/8
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009・吉田吉太郎
○吉田委員長代理 なお本日おいでいただくことになつておりました石坂洋次郎君よりは、出席いたしかねるとの書面が参つておりますし、眞杉静枝君はお見えになつておりませんので、以上をもちまして参考人の方の陳述は全部終りました。
これより各参考人の各位に質疑があればこれを許します。なお各委員の質疑の時間は、議事の進行上、なるべく五分間くらいで、お願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/9
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010・床次徳二
○床次委員 集団示威運動等の秩序保持に関する法律案に関しまして、吉田さんと鶴岡さんにお伺いいたしまするが、先ほどのお話によりますると、届出制を建前といたしながら、第六條によりまして多分にこれが許可制度の傾向をとるというように、お話になつておると思います。しかしながら第六條の中を見て参りますると、危険物携帯禁止、あるいは道路における蛇行進禁止、その他の問題でありまして、この問題は、ある意味から申しますると、当然守つてもらわねばならぬことだと思いますが、皆さん方の立場からと申しますか、あるいは運動をなされる立場かちいいまして、第六條のごとき事柄を運動参加者に守らせることが、主催者として非常に困られるかどうかということについて伺つてみたいのであります。むしろ第六條のごとき規定は禁止事項になつておつて、参加者があらかじめ心得ている方が、主催者としてやりやすいかとも考えられるのであります。あるいは主催者自体が参加者に対して、これだけの注意を遵守すべきことを命ずるという手続は、実際上にとり得ないということになるかもしれません。主催者としては、かかる第六條に規定されているような責任は負えないというお考えもあるかもしれませんが、この点いかようにお考えになつておりまするか、ちよつと実際運動に関係しておられる立場から、第六條のさような取扱いについての御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/10
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011・吉田資治
○吉田参考人 お答えいたします。この問題は、私どもが大衆行動をする場合には、自主的にこういう問題については規制をする習慣になつております。従つてこういう法律で取締られる立場において、こういうものを法律によつて規定されることは、労働団体、その他の民主団体の自主的行動というものを制約する、その活動の自主性を蹂躙するという立場で、私どもは反対なのであります。こういうことは法律で云々されなくても、われわれの大衆団体というものは、自主的にこういうことについては規制をいたしますから、そういう意味でこういうことについて必要ない、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/11
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012・鶴岡秀三
○鶴岡参考人 ただいまの御質問でございますが、原則としては、われわれはいわゆる一般の通行人の妨げになるような、あるいはまた非常に自由を妨げるような行動は、われわれとしても極力愼んでおるわけでございます。しかしながら実際問題におきましても、多少はそのようなことはとられる。しかしそのこと自体が必ずしも、いわゆる刑法によるところの暴力行為取締令とか、あるいはその他の器物を破損した場合の法律とか、そういうものに触れない限りにおいては、そのようなことは社会通念として認められてよろしいのではないか。そのような、いわゆる他の公益に大きな損害を與えるというような場合におきまして、初めてこれらのことは重要な問題になるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/12
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013・床次徳二
○床次委員 大体参加者並びに主催者が、この第六條の趣旨については重々御承知のようでありますが、実際問題として、かかる危険物の携帯、あるいは道路における交通妨害等の事柄が起りやすいという場合におきましては、主催者としてこれをとどめる力があるかどうか。現在の集団運動におきまして、とうていかかることは主催者の責任には負い切れないということになりますか、あるいは主催者として十分これは負い得るのだというお考えをお持ちでありますか、この点についてもう一回お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/13
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014・吉田資治
○吉田参考人 これは條件によると思います。終戦直後において行われた大衆集会等におきましては、警察はほとんど出ておりません。このような場合には、そういうトラブルが起つておらぬのであります。その後警察がずつと出て参りまして、そうして鉄かぶとをかぶつてやつて来るという場合になつて、初めてこういう問題が起きているのであります。従つて大衆集会をなす場合は、これは單に大衆集会をするものだけを問題にするのは穏当ではないのであります。問題は、それに対して取締るという立場で、しかも武装してこれに対抗し、ある場合には挑発をかけるというふうな事態が間々起るのであります。その場合が絶えず生じますので、あるいは石を投げたり、あるいはプラカードで対抗するような事態が起るのであります。まして、危険物の携帯云々という問題については、これはもちろんこういうことがあつてはならないのでありますから、集会者がそれについて注意を発するのは当然であります。私はそういう意味で集会そのものそのものについての現在の状態、警察官の取締りあるいはその対抗処置いかんというものが、こういう事態を引起して来るもとになる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/14
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015・鶴岡秀三
○鶴岡参考人 大体ただいま吉田さんからお答えがあつたのは、私も賛成でございまして、その証拠には、メーデーが終戦後いわゆる皇居前広場におきましてたびたび持たれておつた、その間におきまして大きな事故というものはほとんどなかつたわけでございます。ところが昨年以来その傾向が非常に露骨に現われて来たということを申しますならば、たとえばメーデー当日におけるところの会場の禁止問題とか、その他一連の反動的なあるいは弾圧的な政策が、非常に労働者を刺激している面もあるのではないか、そのようなこと自体が——これは新聞でちよつと読んだのでございますが、東独の首相が、たしか西ドイツの再武装の問題を連鎖反応という言葉を使つておられたようでございますが、いわゆる連鎖反心に近い形のものだろうと私は思うわけでございます。やはり一方的な責任ではなくして、それらのことが相互に起つて来る、この連鎖反応の鎖をどこかで断ち切らなければならない。われわれは暴力を否定するという立場から、これを断ち切らなければならない。従つて主催者の側としましては、これらのことをできるだけ避けようとする。しかしそこに結集されて来ました人々の多数が集まつた場合におきましては、いわゆる群衆心理もある。そこに刺激するような形におけるところの鉄かぶとをかぶつた警官が多数並んでおりますれば、やはり何らかの対抗意識が出て来る、またそれに対してある程度現在の警察が、必ずしも民主的な形においてのみ行われていない、このようなことが刺激をする、このようなことが事態をよけい紛争せしめるもとになつておるのではないか、もちろんそれがすべてとは思いませんが、このような事態もその一面あるのだということを、この際申し上げておきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/15
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016・吉田吉太郎
○吉田委員長代理 河原委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/16
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017・河原伊三郎
○河原委員 吉田資治さんにお尋ねしたいのでありますが、ただいま床次委員の質問に対する御答弁におきましては、これは労働団体の自主性にまかしておいてもらえば、それでよいんだという御答弁であつたと思うのであります。今までの実情、実績におきまして、労働団体の示威運動におきましては、すべて規律整然として何ら非議すべきものがなかつたが、これに対していろいろなことが起つたのは、あげて警察の責任であるような御答弁であつたのでありますが、はたして警察が先に挑発したことによつて、応戰的に示威運動が脱線的になつた、かようにお考えであるか、あるいはまた労働団体の方にも百パーセントよいとは言えないが、これを刺激するような、警察の行き過ぎというふうなこともあつて、両々相まつて激化した、こういうふうにお考えであるか、その点お伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/17
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018・吉田資治
○吉田参考人 私は大体において警察の反動的態度、刺激が中心になつたと考えております。それはたとえば昨年暮れに三越の店員諸君がストライキを起した。このときに、三越の諸君が東京都のほとんどすべての労働組合の支援を受けまして、銀座と室町と新宿の三店でストライキをした。そしてピケット・ラインを引きました。ところがこのときに警察はどういう態度に出たか、鉄かぶとをかぶつた武装警官を動員しまして、こういうピケツト・ラインを張ることは営業妨害である。だからこのピケツト・ラインを解け、そして入口をあけろ、そしてお客を入れ、ストライキ破りを入れようとした。もし入れないならば実力でぶんなぐるぞ、こういう申入れをしておる。そしてここでは残念ながらあそこの入口をあけたのであります。ところが問題は、ストライキとは何であるか、ストライキとは営業をさせないことであり、物をつくらせないことがストライキである。これは労働組合法によつて労働者の権利として法律で認められておる。その行為を営業妨害である、こういう口実で武装警官を動員して罷業権を蹂躙しておる、こういう事態です。これに対して労働者が当然の権利としてストライキ権を守ると、どういう結果になるか。このときはたまたま屈辱しまして、ストライキ権を蹂躙されておる。そうしてあの入口をあけたから、あそこは混乱が起きませんでした。室町の一部で若干混乱が起きたのでありますが、もしも当然の権利としてあそこを守つたといたしますならば、当然警官は襲いかかつたでしよう。(「まともに答えにやいかぬ、今までの実績はどうか」と呼ぶ者あり)だからそういう事例をお話しすれば、はつきりわかるのであります。こういう事例でありますから、そこではつきりわかることは、そういう警察の不当な事態に対して、労働者が正当な権利を守る場合に紛争が起る。こういう事例がもうほとんど多数であつた、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/18
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019・河原伊三郎
○河原委員 議会におきましても、公然と現在の日本は占領の継続である、そういう観点よりいたしまして、現在の政府はアメリカ政府の傀儡政府である、これをぶつ倒すには実力行使以外にないというふうなことを呼号されておりまするし、またこれと表裏一体をなす行動が院外においても行われておる、こういうふうなことを御存じであるか御存じでないか、この点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/19
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020・吉田資治
○吉田参考人 実力行使というのは、きわめて広汎な意味を持つております。そういうことが言われていることを私も承知しております。ただ実力行使というのは、私の理解するところではいろいろな形があると思います。これはストライキもあれば示威行進もあれば、あるいはその他いろいろなものがあると思います。だからそういう広い意味での実力行使というふうに、私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/20
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021・河原伊三郎
○河原委員 政府転覆に通ずるところの実力行使を御存じであるかどうか、この点に関する御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/21
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022・吉田資治
○吉田参考人 政府転覆の実力行使というのは、私の今申しましたようにきわめて広い範囲の実力行使というふうに私どもは解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/22
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023・河原伊三郎
○河原委員 広い範囲の実力行使とは、どういうふうなものであるか、具体的にお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/23
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024・吉田資治
○吉田参考人 それは、たとえば政府のそのような反動政策、いろいろな法案の制定、あるいは法を無視したそういう労働者に対する圧迫、そういうものに対するあらゆる反対行為、あるいは大衆集会もありましようし、あるいは法律により裁判所で争う行為もありましようし、あるいはストライキもありましようし、いろいろな行為を含んでいると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/24
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025・河原伊三郎
○河原委員 合法的な言論あるいは文書によるところの争いは、実力行使の部類には入らぬと思いますが、これも実力行使とお考えであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/25
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026・吉田資治
○吉田参考人 実力行使というのはどういう意味でありましようか。私どもの解する意味は、そういうふうにきわめて範囲の広いものと解しております。あなたの御質問になる実力行使というのは、どういう意味でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/26
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027・河原伊三郎
○河原委員 実力行使というのは、すなわち合法的なものでないものをさすと考えます。それでなければ特に実力ということを用うる要がない。さらにそれらのことがデモなどと並行して行われておる。この議会における言論と社会の治安状況とが表裏一体をなす関係にある。こういう点についての御見解を問うておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/27
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028・吉田資治
○吉田参考人 よく意味がわかりません。合法以外のものを実力行使というのは、私ども理解に苦しむのです。私どもの理解するところでは、ストライキも実力行使であり、大衆集会も実力行使だというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/28
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029・藤田義光
○藤田委員 吉田さんにお伺いします。吉田さんは現在産別会議議長でございますが、党の所属は共産党と了解しておりますが、そうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/29
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030・吉田資治
○吉田参考人 これはこの前にも例がありますので、そういう詮索については、お答えしないことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/30
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031・藤田義光
○藤田委員 実は、参考人としてお呼びしていろいろ証言を拝聴します際におきまして、党の所属が非常に有力な証言の資料になります。われわれは、冷静にその証言から判断いたしまして、法律に対する態度をきめるわけですが、私の記憶違いだといけませんから、あなたのためにも、もし党所属がはつきりしておれば伺いたい。たしか日本共産党に所属されておつたと記憶しますが、所属しておられたかどうか。これは言えることじやないかと思まいすから言つていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/31
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032・吉田資治
○吉田参考人 私は公然として外で活動いたしております。その点については皆さん周知のはずでありますから、この席上においてあらためてそういう質問をされるのは、私は解しかねるのであります。そういう特審の身分調べのようなことについては、ひとつ御容赦を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/32
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033・藤田義光
○藤田委員 実は、われわれは全国民の代表という立場から——これは特審というようなそういうけちな根性でなくて、過去においてはたしか所属されておつたと思う。しかし現在はどうなつておるかわからぬ。そこで、現在を聞いておいた方が質問を継続する上において、非常に好都合じやないかということでお伺いしておるわけです。御答弁があれば拝聴しておきます。御答弁がなければやむを得ません。
それから集団運動に関しましては、従来組合側は自主的に統制をとつておるというようなことを言われましたが、この自主的にというのはどういう意味でございますか。組合の幹部が責任をもつて統制をとつておるという意味でございますか。これをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/33
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034・吉田資治
○吉田参考人 組合が主催して行う場合におきましては、組合の幹部がその責任を負います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/34
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035・藤田義光
○藤田委員 法律に触れずして——具体的に言えば、警察あるいは検察庁の取締りの対象にはならぬが、一般大衆の公共の福祉に相当迷惑を及ぼすというようなことがあつた場合、主催者たる組合の責任者は、どういう責任をとられておりますか。過去の実例をこの際お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/35
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036・吉田資治
○吉田参考人 そういう事例につきましては、今私は記憶にありません。ただ、私どもは、一般の人たちに迷惑を及ぼすようなことについては、できるだけ避けるように努力はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/36
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037・藤田義光
○藤田委員 去る一日のメーデーに際しまして、私も自分の乗用車に暴行を働かれた一人でありますが、あのメーデーに際しましては、長谷部さんの所属される総評からは声明が出まして、非常に遺憾の意を表せられたようでありますが、産別としては、あの善後措置に関しまして、何か声明でも出されたことがございますかどうか、ちよつとお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/37
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038・吉田資治
○吉田参考人 声明を出しております。それは、あそこの人民広場の使用ということは、労働者の当然の権利である。これは外国軍隊の練習場でもなければ、遊歩場でもない。日本国民の当然使用すべきものである。しかも、日本の国を背負つて立つ労働者の年一度の祝典に際しては、当然使用する権利がある。裁判所においてもこれを認めている。従つて、あそこの人民広場を使用すべしという要望は、一部少数の者ではなくて全労働者の要望である。あの外苑前における大会の決議にも、その点はちやんとうたわれておる。従つて、あそこへ行くというのは、労働者としての当然の権利である。しかも、このことについて、翌二日の法務委員会において警視総監が、こういう証言をしているのであります。それは、外でとめるとはたに迷惑をかけるから、あらかじめあの中に誘導をして、しかる後に実力で解散をさせる方針であつたというふうに言われておるのであります。そうして、私どもがいろいろ報告を聞きましたところにおいては、あそこに集合して、解散をするという状態のときに、警察の方で襲いかかつて来たのであります。従つて警視庁としては、あらかじめそういうふうに計画をしてあそこへ引入れて、実力で解散をさせるという状況になつておつた。そういうことで、あらかじめたくらんでおつたことである。従つて、そういう行為に対して、労働者がこれを防ぎ反抗するのは、決して暴行とか騒擾とか称すべきことではなくて、当然のことではないか。昔から振りかかつた火の粉は払いのけねばならぬという言葉があるが、そういうふうに私どもは考えて、そういうふうに計画をして引入れて、労働者の当然の権利を実力で粉砕するというようなそういう行為をこそ、追究しなければならぬのじやないか。従つて、この騒擾事件の責任は政府、警視庁にある。私どもは今そういう声明をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/38
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039・藤田義光
○藤田委員 メーデーの宮城前の事件についての警視総監の証言に関しましは、実は組合のごく一部の者が……これは組合としてではなく、ある手段として前もつて計画があつた。ところが警視庁においてはそういう計画は知らなかつた。そこで、事態収拾のための戦術といいますか、方法として、まず中に入れて鎮圧しようという戦術を警視総監はとつた、しかもその当日あの大騒ぎが起きてからとつたというふうに、私は了解しております。事態牧拾の方法としてやつたのであつて、前からそういう作戦で、もし暴動が起きた場合にはそういう措置をとろうという計画ではなかつた。ところが一方、組合のごく一部の過激な分子たちが前もつてそういう計画をしておつたので、虚をつかれてあわててああいう手段をとつたというふうに聞いております。この点は吉田さんの証言と、多少食い違つた証言を拝聴しております。むしろそれが正しいのではないかということを、いまだに承知いたしておりますが、その点に関しましては、過去のことでございますから、いろいろ申し上げる必要もないと思います。
それから、各地で保安條例的なものができておりまして、これを集大成したのが、今回の集団示威運動法案でございますが、私たちが冷静な国民の一人として考えます際におきまして、こういう條例あるいは法律が不当不法であるというような場合におきましては、あくまでも議会を通じて、あるいは選挙を通じてその撤回を迫る。自分たち国民の意思を反映するような人を国会に送り、あるいは都議会に邊つて戦えばよろしい。それを、組合が議会の論議を制約、するような方法において——たとえば東京においては尊い犠牲者まで出して、保安條例の阻止をやられたようでございますが、こういう方法は非常に非民主的で、しかも議会政治を否認するというような誤解を起しやすい。吉田さんは組合の最高幹部でございますが、経済闘争を使命とする組合を、従来の方式で今後あくまで法案闘争にも動員される予定でございますか。この点をお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/39
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040・吉田資治
○吉田参考人 従来の方式というのは非常にあいまいでありますから、私ははつきり申し上げておきます。労働組合の使命というものは、言うまでもなく、労働者の団結の力で、労働者の生活の維持改善をするというのが、本来の使命であります。しかしその使命を達成するために、たとえばこれを弾圧する法案が出るという場合には、これは対抗せざるを得ないのではないか。従つてそれが政治問題であるからといつて、これを労働組合の活動の範囲外だという解釈は当らない。これは世界一般の共通観念であります。従つてたとえば破壊活動防止法案というふうなものが、名目は強盗、列車転覆、放火、殺人というものだけを取締るというふうに書いておりますが、事実はそうではなくて、労働組合が取締りの対象になつておることは、もう明らかな通りであります。こういうことに対してわれわれがあらゆる手段をもつて対抗し、この法案の通過を阻止する挙に出ることは、労働組合本来の任務、生活の維持改善をするという建前そのものを、われわれが守つて行くためにはぜひとも必要であります。そういう意味で、そういう活動をもあわせて今後活発に行いたい、こういうふうに考えております発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/40
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041・藤田義光
○藤田委員 あなた方がいわゆる実力をもつて闘われました、東京都の公安條例を通過させました都議会議員というのは、昨年の四月、改選になつております。これは吉田さんあたりの力によつて、昨年の四月の都議会議員の選挙等においては、組合の政治意識が向上いたしまして、おそらく都議会の議員は圧倒的に皆さん方の代弁者たるべき人々が多数当選するだろうというふうに、私たちも想像いたしておりましたが、結果としては、あなた方が一番反対される人が圧倒的に当選されておる。こういう事実が、組合の従来の行き方に対して、一般都民の認識が全然齟齬しておるのではないか、いわゆる組合内の問題だけでありまして、一般の大衆にはほとんど理解されていないというふうに考えております。ところがただいまの御証言によれば、ああいうふうなものはいわゆる組合吉の本質的な活動でもあるから、今後もどんどんやつて行くというような御証言がございまして、これは見解の相違でもありますから、私は申し上げたくありません。
それからこの集団法に関連してお伺いしたいのは、憲法で保障されました基本的人権に対する制限という点は、まつたく同感でありますが、しかし公共の福祉のために、それを制限することはやむを得ないのは、これは世界の通念である。が、ここで吉田さんにお伺いしたいのは、この法案に全面的に反対でございますか。あるいは届出の形式でありながら、実際上は許可制をとつておるという、技術的に法案の内容に関して反対の点がありますかどうですか。全面的に反対であるかどうか。念のためお伺いいたしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/41
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042・吉田資治
○吉田参考人 これは最初にも申し上げましたように、全面的に反対であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/42
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043・藤田義光
○藤田委員 吉田さん、非常に勉強していらつしやるようですから、吉田さんばかりに質問を集中して恐縮でございますが、全面的に反対とすれば、質問の箇所も全然ございませんが、全面的に反対の理由に関しましても、また私たちと大分違うようでございますから、この法案を全面的に修正いたしまして、真にあか抜けした届出制をとつた場合は、どういう御意見でございますか。あなたたちの意図するような届出制、つまり届出をすれば、その時間が来れば自由にやれるというような方式をとつた場合はどうですか。そういう意見も大分われわれの仲間にありますので、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/43
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044・吉田資治
○吉田参考人 私はこういうものに根本的に反対なのでありまして、集会、示威というものが憲法に認められ、そうして労働組合法に定められておりますこの権利を、何ら制約を受けるごとなく、労働者が行使することが正しいことである、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/44
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045・大矢省三
○大矢委員 吉田さんと鶴岡さんにお尋ねします。この集団示威運動に対する法律案は、主として労働者を目標にできたことは御存じの通りであります。私のこれで一番心配するところは、労働者の三権、団結権、罷業権、団体交渉権、このうちの罷業権は、最近非常に大規模な組織を持つておりますから、罷業をするときには、勢い相当数の人がこれに参加するので、それに対していろいろな指示事項あるいは経過報告あるいはまたそれぞれ各団体の注意、激励等があつた場合に、こういう多人数での屋内集会というものは事実上不可能であります。これによりますと、示威運動並びに屋外集会というものを全部七十二時間前に、届出しなければならぬことになつているが、これではぼくらの想像では実際には罷業がやれないだろうと思う。それで、これは単に行き過ぎた示威運動を取締り、それがないようにするというような説明をしておりますが、実際の取締りにあたつては、この罷業権を非常に制約し、事実上できなくなるような危険があると私は思う。これは実際に日常経験されている公述人は、そういうことの支障がないと考えるか。これは実際上の争議にはやれない。単に激励というのでなしに、交渉の報告であるとか、あるいは争議団に対する注意事項というものを幹部が伝達するにいたしましても、こういう集会は、屋外でやる場合には三日前に届出なければならぬ——それは労働組合法その他ができない以前の小規模な、自然発生的にできたような争議なら別です。このごろのように何万、何十万という、指令一本でただちにできるようないわゆる罷業権の行使にあたつては、これによつてほとんどできなくなるというふうに私どもは考えるが、それについてお尋ねします。
それからいま一つは、こういう示威運動その他の集会は、これは自主的にまかすべきである、これも今申しましたように、数に限られた示威運動あるいは集会でありまするならば、それは幹部によつて十分責任を持つて自主的にやれると私ども、自分の経験からも、それは信用できる。最近のように幾多の団体とその他の統制がきかないような、また自分の責任が持てないような群衆が入つて来ることも、これはやむを得ぬ。そういうものをみずからが拒否し、みずから責任を持つて統制するだけの実力とその組合の訓練とがあるかどうか。そこでとうてい責任が、持てないからというので、団体にも相当軋轢が生じて、せつかくのメーデー祭典を二つにも三つにもわかれてやるようなことが地方にあることは御存じの通り。そこで組合の統制のきかない、あるいは組合以外の、あるいは学生の団体とかその他思想の団体というようなものが加わつた場合に、ほんとうに自主的に責任が持てるかどうか。私が今申しましたように少数の、従来五十人、百人を一部隊として、その総指揮官として責任を持つような、そういう少数の場合ならできるが、もう十万、二十万あるいは三十万となりますと、その全体を見ることはとうていできない。その場合、これによりますと、責任者が全部この刑罰を受けなければならない。これは私はたいへんなことだと思う。事実それができるという自信があれば、いや、これにはこういう方法があるというのが、具体的にあつたら伺いたい。私は前後七回ばかりやつて、約一万以上の争議、示威運動の総指揮官をして来たことがありますが、ずいぶん苦労した。それでも今申し上げま
したような責任は持てた。私は、自主的にやるということのほんとうの自信と組織と、そういう訓練ができておれば、大いに信頼していいと思う。ところが最近の情勢は、人数が多いということと、日なお浅くして、あるいはまた、相手方の反動的ないろいろな政策が来るから、やはり感情的な反撥もあります。そういうことは私どもまたよく理解できるのですが、ほんとうに自主的に責任を持つて行える確信があるかどうかということ。またそれができなければ、こういう方法があるから安心しろ。私もこの法案は必要がないと思つておりますが、この二点、つまり自主的にやる自信があるかということと、労働争議について、屋外集会あるいは示威運動については三日以前に届出なければならぬということは、実質上、最近の争議形態からいつて、できないことです。従つてその結果としては、争議権を本質的に否認する結果になるということが考えられるので、その二点だけ御意見をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/45
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046・鶴岡秀三
○鶴岡参考人 最初の、この法案は実質的なストライキの禁止であるという点には、まつたく同感であります。たとえば現実に公安條例は、私が先ほど申し上げましたように、治安立法そのものが、この法案におきましても、最初に制定された目的からさらに拡張解釈されて行くのが現状でございます。最初それは、屋外集会並びに集団示威運動等に限るものであつた。それがさらに許可制に改正せられ、さらにまた屋内集会までもすべてこれを適用されて行く。しかもその公共の場所という言葉につきましても、非常に広汎でございます。たとえば、工場の敷地内とか、あるいは官庁の構内にあるところの敷地、大規模の争議をやつております際に、争議が終了して、その報告会を持つ場合にも、これは屋外集会であるから七十二時間以前に届出ろということになりますと、それは現実の問題としては、かえつてその失うところの法益が大きいのではなかろうかという問題もあるわけでありまして、実際問題としては、大きな禁止的な項目であるということを考えざるを得ないのであります。
次にいわゆる屋外集会とか、集団示威について責任が持てるかどうか、そのことについてでありますが、このことはやつぱりさきほど私が申しましたように、単に労働者の集まつている姿そのものだけを見るのではなくして、やはりその当時置かれている客観的な社会的ないろいろな條件、あるいは政府の施策その他のものが、これに総合して現われて来ると思うのでございます。前にも申し上げましたように、終戦後において、皇居前広場におけるメーデーは、第二十一回メーデーのごときは約五十万集まつたといわれている。その場合においては、ほとんど事故が起きなかつたはずであります。秩序整然として行われた。それが今年のメーデーにおきまして、メーデー終了後にあのような事態が起きたということは、客観情勢が相当かわつて来ているということは認めざるを得ません。しかもその客観的な情勢のかわつて来ているということにつきましては、単に労働者のみの責任ではない。明らかに政府の反動的な施策そのものが、労働者に対して大きな不安を與えている。そのことがこのような事態をかもし出して来ておるということを認めざるを得ないのであります。そういうふうな意味におきまして、われわれと、いたしましては、しかしそのような場合におきましても、無用な暴力を振うような態度に出ない。従いまして、メーデーの当日におきましては、組織としてはあくまでも既定方針の通り、実行委員会の決定に従つて解散をする、極力その努力をいたしたわけでございます。しかもそれ以外の団体、あるいはまた一部の者がその後に行つた行動につきましては、われわれははつきり遺憾の意を表せざるを得ないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/46
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047・吉田資治
○吉田参考人 大体今鶴岡さんからお話になりましたが、大衆行動の責任ということついては、われわれも従来から若干の経験があるわけであります。今度のメーデーでも、あれがすなおに人民広場で行われておれば、ああいう行動は出なかつたはずであります。そういう問題がやはり前に存在していたということが、ああいう紛争を起す基になつております。従つてもしも、そういう取締法というふうなものが全然なく、警察が全然干渉しないというふうな場合におきましては、何を好んで集会の責任者が、そういう擾乱を起すような方向をとるでありましよう。これはもう労働者の自主的な行為として、それぞれ責任を持つて、そして既定の行動をするということは、私は明言してよろしいと思うのです。この点については、現在の段階、今のような非常に激しい対立、武装警官の包囲のもとに行われるような状態においてこそ、そういうような問題が問題になるのですから、そういうことのない場合における大衆行動の責任は、これはもう幹部に選ばれた者の当然の責任であるし、それができないようなら、幹部になる資格がないのであります。そういう点では、たとい十万集まろうとも、二十万集まろうとも、自主的に自分の行動を律し得るということを私は断言できると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/47
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048・大矢省三
○大矢委員 それから古山さんにちよつとお尋ねいたします。警察制度で自治体、国警を通じて、例の公安委員会がありますが、その公安委員会がどうも最初われわれの期待しておつたような機能を十分発揮されていない。きのうも公述で問題がありましたが、それは努めて公安委員は警察に対する関係のない人、いわゆるしろうと、無経験者をもつて充て、またそれぞれの同一の団体、政党に加入しておる者では二人以上はいけないというような制限がありまして、公安委員は主として治安あるいはまた犯罪検挙、防犯に対しての警察の行き過ぎを監督するような立場にあるもの、いわゆる民主警察なり、自治体警察なり、住民の意思を代表して、警察の運営をうまくやつて行こうということのために生れたのですが、それがどうも完全に機能を発揮していないというところが、いろいろ一般から言われ、また今度の改正の動機にもなつたのではないか、こういうふうに考える。警察の長あるいはまた責任者からいいますと、公安委員というものは至つて無力の方がいいわけです。これははなはだ言い過ぎかもしれませんが。しかしながら、ほんとうの自治体警察、民主警察というものは、住民の代表である公安委員が中心となつて、そこで指揮監督あるいはまた運営をやつて行くのが、私は正しいあり方だと思う。そこで占領中いろいろ向うさんの指示監督がありまして、十分公安委員が機能を発揮できなかつた。そのことがこの立案にあたつて十分考慮が払われていない。私どもの経験から行きますと、公安委員がいろいろなことをなそうとしても、それぞれの地方のいわゆる連合軍からのいろいろな意見があつて、十分活動ができなかつた実例を私はよく知つておる。そこで占領下にあつた公安委員というものと、新しい、自主的な、独立した日本の公安委員のあり方というものは、おのずから違つて来る。そこでまだ十分民衆も、警察官も、公安委員も、警察のあり方というものに対して、頭のきりかえができなかつた際に、さらにこれをまた元のように返そうとする傾向を、われわれははなはだ遺憾としております。そこで公安委員のあり方、それから公安委員と警察長あるいはいわゆる警察の責任者との間に、もつとどういうふうにすればいわゆる民主警察、自治体警察の機能を発揮できるかどうかという経験を通して、具体的に、これは反対するだけでなしに、それは心配ない、こういうことをすれば、公安委員の機能を十分発揮できる、あるいは自治体警察と完全なことができる、あるいは自治体警察と国警の連絡、援助、応援については規定があるのだから、それを実質的に行えば横の連絡が十分とれる、それがどうして欠けておつたか、立案する人の動機も、そういうことから来ておると私は考えるので、その点について何か専門家の立場として御意見があれば、この機会にお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/48
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049・古山丈夫
○古山参考人 全般のことについては抽象的にしか申し上げられないわけでありますが、実は神戸市につきましては、手前みそではありませんけれども、比較的よく行つておるということが、よその方面からも言われておるような状況であります。その点は一つは、公安委員が非常に世間的に有力な、しかも公正な人であるという印象の人がすわられまして、これが警察にも外部の話を持込んで来られる、あるいは警察の立場を話をするというような際にも、従来の警察官自体が言うのとは別な印象を與える。そういう何といいますか、警察と部外との間の円滑な一つの橋渡しをする、こういう点は有力に努めていただいておるものと、私はかように見ております。それと実際の仕事の執行面におきましては、これは建前からもそうなつておるのでありますが、非常勤の公安委員さんでありますので、一々のことはむしろやつていただかない方がいいわけでありまして、これは何もまつり上げるという意味でなしに、むしろ公安委員会の考え方と警察長の考え方とが、基本的にしよつちゆうの話合いで一致して、それによつて警察が動いて行く、こういう線に行くのが理想的じやないかというふうに考えております。それと公安委員会の働きが十分でないということも、これは一つは期待の限度の問題でありますが、私は公安委員会の一番の必要なところは、一つは先ほど申しましたように、警察の仕事の執行のうちに部外から、たとえば市で申しますれば、市長さんの推薦と市会の承認を得た方々が入つて来て、これが大筋の管理をして行くという、いわゆる民主化の形を整え、しかも精神を整えて行くということと、それから実際の自治体の運営ということは、これは当然のことでありますが、政党中心に動いて行くというふうな場合に、市長さんがかわることによつて、直接に警察の執行の長がすぐにどうこうなるというふうな態勢よりも、公安委員という三人の者をはさんで行くことの方が、ほんとうに公正に、手間どつたような形でありながら、その方が一層、ほんとうに警察が不偏不党、公正に行くということを期待しておるのではないか。そのために、三人の公安委員も、一つの党派から二人出てはいかぬというような考慮が払われておりますので、いわば民主化の看板であると同時に、また根本的には民主化を保障する役目を、基本的に果しておるのであります。この点だけを期待するならば、これは私はある程度実効をあげて行つてもおるし、行き得るのではないかということを考えるわけであります。それ以上のことを期待するということは、制度の上から無理でありますし、またいろいろの弊害面も考慮しますれば、いろいろのことが生じく来る。それともう一つ、ついでにと申しては、はなはだ申訳ありませんが、結局すべての、こういう治安関係の法律にしましても、警察法の改正にしましても、現在の治安関係上起つて来る事象、これはどうもこのままじやいかぬじやないか、事ははじから起るし、警察は何かその場その場で、あたふたするだけで、手ぎわのいい締めくくりをしてくれぬじやないかというような考え方が一般にあるのではないか。私どもも、それはもつともだと思います。但しその際にすぐ、昔はそういうことはなかつたが、現在は
こういう状況になるということが、警察の組織機構が昔に返れば、昔通りになるのだ、こういうふうに早のみ込みされることは、これは一足飛びじやないか。たとえて申すならば、法規関係におきましても、昔は非常に警察に都合のよい法規がととのつておつたわけであります、それからあるいは運営につきましても、むしろ警察がある程度のいわば拡張的な運営をやりましても、世間も怪しまず、警察も特にこれは濫用して悪いことをしようと思つてかかつておるわけでもない、こういう状況、また逆に申しますと、破壊活動的な運動が非常に制約されておつたというふうなときは、これは警察の立場でいえば、非常にやりいい態勢に置かれておつた。現在ではそれが御承知のような状況で、法規的にも、形式的にも、いろんな面で警察の仕事がやりにくい状況になつております。このこと自体がいい悪いという当否は、別に議論しなければなりませんがそういつたことから、現在何か警備の上で、物足らぬじやないかということが起るのでありまして、それは制度を改正し、人事を握りさえすれば解決がつくという問題じやない。その点は最初に申しましたように、むしろ警察はこの線までは、公共の福祉のために、国家治安のためにやりなさい、この線からはやつちやいかぬぞというふうなことを、法規的にはつきり言つていただく、そうしてその法規に命じた以外のことは、警察に期待なさるのは、これはむりであります。法規以上のことをやれということは、同時に経費の面においても、それを十分やり得るだけのものをバツクして行くということが一番必要でありまして、ただどうも昔の警察が強力だつたときを考えまして、今のごたすたはどうもおかしいというようなことから、何か機構を改正し、人事を元にもどせばいいだろうというような、一足飛びのお考え方があるのではないか。そういう意味で警察法の改正について意見を申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/49
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050・八百板正
○八百板委員 古山さんにちよつとお尋ねいたしたいと思います。御意見によりますると、警察法の改正は、単に総理大臣に任免権を持つて行くというようなことでは解決されないという御意見でございますが、また自治警察の一番困る点は、財政の面であり、費用の面であるという御意見でありまするが、そこでこの費用を自治体だけでまかなえないというような場合において、どのような仕方が望ましいとお考えになられますか、この点をひとつお聞かせをいただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/50
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051・古山丈夫
○古山参考人 これは私も深く研究をいたしておりませんので、思いつきに毛の生えたようなことになるわけでありますが、結局現在の地方自治団体に、どういう形かで財源を與えていただく、これが根本の解決方法だと思います。従いまして、たとえば税源をやつていただくとか、地方財政平衡交付金に対しましても、実際にその自治体が警察のために必要な程度のものを算定して、それたけのものが交付されるということでありますれば、それでもよろしゆうございますし、または事柄を限りまして、たとえば密輸、密入国というふうなことでありますとか、あるいは今論じておられますような国家の秩序を維持するということに直接関係する、ことに国家的な色彩の非常に濃いもの、そういう仕事についての自治体の経費を、別わくで持とうというような根本的解決方法もあろうと思います。そういう点につきましては、いずれが一番実現しやすいか、また都合のいいものであるかということは、そこまで研究いたしておりませんが、そういういろいろな方法によつて御解決を願えればと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/51
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052・八百板正
○八百板委員 今警察法の改正に関して問題になりまする点は、自治体警察と国家地方警察との関係でございまするが、その点について、国警に自治体を持つて行きたいというお考え、そういう方向で物を考えておられる方は、とにかく自治体と国警との間に横の連繋がないために、管轄の区域その他いろいろ運営上問題があるということを指摘せられておるのであります。さらにまた自治体の警察は往々にして地方ボスの支配のために、公正な運営がゆがめられるということも指摘せられておるのであります。従いまして、横の連繋が微弱である、この関係が不備であるということが、指摘せられておりますが、そういうふうな点について、それを肯定するような事例がありましたならば、ひとつあなたの方からお答えをいただきたいと思うのであります。
さらにまた、そういう問題に対して、どういうふうな対策が望ましいとお考えになつておられるか、こういう点もひとつあわせて聞かせていただきたいと思うのであります。
それからまた、さらに地方ボスの影響を警察の運営の中に持ち込みやすいという点でございますが、この点についてはあながち自治警の場合のみではなかろうと思うのでありますが、自治警の場合と国警の場合とを比較して、自治警の方が一層地方ボスの支配を受けやすいと言われておりまする根拠、そういうものについての御批判などを、あわせてお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/52
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053・古山丈夫
○古山参考人 国警自治警あるいは自治警相互間の連絡の問題でございますが、これは故意あつてどうこうという話は別問題でありますが、その点は私ども特別に感得いたしません。ただしかしながらとにかく世帯が離れておりますれば、一つのことを連絡するにも、一本の根から出るよりは、これは最大限度の力を盡しても、多少はさばきがおそくなることは、事実あると思います。ただ私どもの考えますところは、要するにそのわずかな連絡のおくれというものが、自治警制度を店じまいせねばならぬほどの重大な支障があるのか、またそれほどの治安上の実際の必要が起つておるのか、こういうことを考え合せて根本の結論を求めたいと考えておるわけです。私も自治警の長でございますけれども、これは実際は進歩的な理想をあくまで追うべきでありまして、ほんとうに現実の治安の上から必要だということになりますれば、これはある場合においては、自治警について首相が現に非常事態宣言の際は采配をとられますように、自治体警察そのものについても検討せねはならぬということがあり得るということは、予想としては考え得られるわけであります。それもしかしあくまで現実のやむにやまれざる必要によつて、進歩的な行き方をチェックして行くということに根拠を置かなければならぬしそういうことを考えなければならぬので、国警、自警間の連絡が悪いために、警備上どうこうという問題はございません。むしろ先ほど申しましたように、法規的にはつきりせぬので動きがつかぬという点が、自治警の実際の活動をにぶからしめておるのでありまして、それがあたかも制度がかわつたから連絡がとれぬというふうなことで、世間的に罪を負わされておるというのが、実情ではないかというふうに、私としては考えております。
それから、ボス化の問題でございますが、これは自治体によりましては、あるいは多少そういうところもあるのじやなかろうかということも、私としても話は聞くわけでありますが、具体的につつ込みまして、これこれという事例をあげるほどのものを私は持つておりません。結局これは、妙な言い方になるわけでございますが、大きな自治体になりますと、警察の力も大きいのでありまして、その警察の世帯自体が何かボスに振りまわされるということは、私はそういうことはほとんどあり得ぬのじやないかと思います。小さい自治体になれば、あるいはそういうこともあり得るということは考えられます。しかしその場合におきましては、自治体の町にしましても、村にしましても、その村政、町政自体がボスに牛耳られるというような形であるわけでありまして、むしろそういつた町政、村政全体の批判を——かりに警察がボス化されれば、村民、町民にもよく目につくわけでありまして、そういうところから、むしろかえつて町政、村政が刷新されるというふうなこともあつてもいいのじやないか。これは自治体であります以上は、自治体の運営自体にある程度責任がかかるわけでありまして、その点はやむを得ぬのじやないか。またその点が弊害はなはだしきに至りますならば、りくつは抜きにして、どうにか処置せねばならぬ。これは先ほど申しましたような意味ではあり得る、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/53
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054・八百板正
○八百板委員 今の点、そういう弊害が、国警に一本化された場合には少いかどうかということについての御意見を、ちよつと加えていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/54
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055・古山丈夫
○古山参考人 先ほど申し上げたつもりでありますが、一本になる方が動きは早いと思います。しかしその動きを早くせねばならぬほどの支障は、現在私どもとしてはないと考えております。むしろ警察制度の民主化、自治警察の創設、こういつた方角に向いつつあるものを、働きやすからしむることを考えることによつて、問題は現在では解決がつく、さように考えておるわけでありまして、これを捨てる方向へ物事を考えるのは通じやないかというふうに考える次第であります。結局この問題は、たとえば民主主義の政治自体が——かりに独裁政治というものを考えますれば、独裁主義の方が手取り早いわけであります。しかし民主主義政治自体は手取り早くなく、もう一つうつとうしいようでありましても、そのこと自体がむしろ非常に意味のあることでありまして、結局どうしてもこれでいかぬということがわかるまでは、むしろそれを守らなければいかぬものだ、私はかように考えております。そういう意味から申しまして、やはり現在は一本化せねばならぬほどの治安上の必要は私どもとしてはない、もし民主主警察の方向に、それかできるだけ動きやすい方に行くのがほんとうである、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/55
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056・立花敏男
○立花委員 古山さんに一つお尋ねいたします。古山さんのお考え方は、非常に進歩的なお考えだと思います。民主警察の方向を強化しなければならぬというお考えであり、従つて警察法の改正には反対の立場をとつておられるのであります。それで古山さんの御意見の中に、警察が任務が遂行できないのは、明確な警察のやるべき仕事のこの線までという規定がないからだと言つておられると思いますが、古山さんのような考え方で行くと、民主警察を拡張し、発展さすという考え方でお考えになつておる、この線までというのは、一体どういうものかということを、ひとつ承らしていただきたいと思います。
それから古山さんはそういうこと法律にでもきめろとおつしやつておられますが、そういうふうなことが現在の国会の状態等をながめまして、はたして古山さんのような進歩的な警察制度の意見をお持ちの方の望むようなものが、生れ出る可能性を考えておられるのかどうか、この点をひとつ明白にしていただきたいと思います。現在ここに出ておりますのは、あなたが反対なさつておられる警察法の改悪である。こういうものを出しておる現在の政治情勢において、あなたのような民主警察の拡張というふうなことに役立つような法案ができるとお考えになつておるのかどうか、この点をあわせて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/56
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057・古山丈夫
○古山参考人 実は集団示威運動等の秩序保持に関する法律案の方は、賛成意見を申し上げたのでありまして、その点あれでありますが、結局私ども警察としましては、警察の任務、職責として、法に命ぜられたところのものを忠実に執行する、その範囲でさらにわれわれが常識をもつて適当な運営をするということが、必要でありますが、その線そのものは結局つまるところは、国会が法律でつくつていただくことが必要である。その線というものは、これはやはり情勢によつてかわるものだと私は考えます。個人の自由の尊重ということは、どこまでも必要なことでありまして、これは民主政治の基本だと思うのであります。同時にそれを主張する者は、他の個人の自由の方にぶつつかるというときが来ますれば、これは何らかの調整をしなければならぬ。一人の自由と他の多数人の自由がぶつかり合うとき、これが自由と公共の福祉——公共の福祉の方はもつと広い意味がありましようが、自由に関する限りはぶつかり合う、そこでこれをどうするかという問題が起るのではないかと考えるのでありまして、これはぶつかり合う情勢次第で、どこへ線を引くかということが必要になつて来るわけでありまして、その点をこうやつて国会で愼重審議して御審議を願つておるのだと私はかように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/57
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058・立花敏男
○立花委員 警察法の改正には反対であり、集団示威運動の法案には賛成であるということの中に、大きな矛盾があるのではないかと思うのです。警察法の改正に反対だと言われるのは、ほんとうは進歩的な考え方ではなしに、一つのセクシヨナリズムから、出発しておるのではないか。本質は集団示威運動の法律案に賛成というところに暴露されておるのではないか。と申しますのは、神戸にも血を流してつくられました公安條例があるはずです。あれはまつたく京都のやつの敷写しなんです。ところがその京都の公安條例に対しましては、京都の裁判所で憲法違反の判決が出ておる、違法かつ無効であるという判決が出ておる。こういうものに対しまして、これをさらに拡大して参ろうというような法律案に賛成だということは、これは進歩的な民主警察を推し進めて行こうと言われる態度からは出て来ないのではないか。この点の矛盾をどうお考えになつておるか。ただこれは国会でつくつたからそれに従えばいいので、ただ警察というものは黙つて従つておればいい。その限界さえ明確になればいいのであつて、その限界がよかろうと悪かろうとそんなことはおれたちは知らないのだ、ただ番犬としての役割さえ果せばそれでいいのだ、線さえできればそれでいいのだというようなお考え方なのか、あるいは立場上これに対する、反対の意見が述べられないのか。これはほんとうに必要なもので正しいものというふうにお考えになつておられるのか。これは最初申し上げておりますように、共産党だけが反対と言つておるのではなしに、日本の裁判所がはつきり憲法違反と言つておる法案なんです。しかもこれを全国的に拡大するような反動的な法案なんです。こういうものになぜ賛成と言われるのか。あなたの理論の中に首尾一貫しないものがあると思いますので、この点をひとつ明白にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/58
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059・古山丈夫
○古山参考人 私自身としては一貫しておるつもりでありますが、結局は進歩的な方角はどこまでも追わなければならない。しかしながら現実の必要によつてやむを得ざるところは、お互いの自由のぶつかる調節のために線を引かなければならぬ、そういうことの一貫した考え方の場合には、この警察法の改正に関しましては、それだけ進歩的な行き方はあともどりするだけの現実の必要を認めない。逆に集団示威運動等の秩序保持に関する法律案の方におきましては、正直な話、何でもない別に問題のないようなことをやられる人までが申請書を出し、あるいは許可届出書を出さなければならぬということは非常なめんどうなことでもあり、なくて済めばない方がいいことなんであります。しかしながらこれまでの集団運動の現われ方に対しましては、そういつた人にごめんどうをかけてでも、この程度のことはする必要がある、しなくちやならぬ。逆に私どもがかように考えますので、これに賛成をしておるわけであります。
憲法違反云々の問題がございましたが、これは私個人的な見解といたしましては、これは神戸市の公安條例が出る際にも、もちろんそういうことは問題になりまして、憲法違反にあらずという確信を私としては持つておりますけれども、それは争いがある問題であります。ただそういうことが地方の條例と地方の裁判所でもつてやつさもつさ言つておるということ自体が、私から言えばおかしいのでありまして、これはもつとこういうものこそ総理大臣の指示というふうなことで、むしろ日本の政府として、国としてはつきりきめてほしい、そういうためにはむしろこの法律が審議されまして通ることが、その意味におきましてもいいことではないか、私はかように実は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/59
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060・立花敏男
○立花委員 私メーデーのときに神戸におりまして、あなたの警備ぶりを拝見させていただいたのですが、あのときには東京の場合と違いまして、事故はほとんどなかつた。しかもその原因は警官が武装警官を第一線に出さないで、デモの大衆から目の届かないところに待機させておつた、だから警察がデモ隊を挑発しなかつたということで、神戸では問題がなしにメーデーが終つたわけなんですが、そういうふうにメーデーに対しましても、取締りのいかんによりまして問題が起らないで済む場合がある。ここにも問題になつております集団デモ等に対しましても、必ずしもこれが問題を起こすということは決して言えませんので、むしろこの場合の問題は警察側の挑発から起つておるという場合が多いわけです。私はそれを神戸のメーデーのあなたの警備で痛感したわけなんですが、そういうことが起る可能性がある場合に、なぜこういう占領下に向うの命令によりましてつくられました公安條例を、占領終了後の独立いたしました日本で、なおさらに拡大強化してつくらなければいけないかというところに、大きな問題があるのではないか、なぜこういうものをあなたは賛成されるのか、ああいうりつぱな警備をおやりになつたあなたが、問題の起らないように集団デモを指導し得る能力のあるあなたが、なぜこういうふうな公安條例の拡大強化に賛成されなければいけないか、これは非常に問題だと思うのですが、その点をひとつ明白にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/60
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061・古山丈夫
○古山参考人 神戸のメーデーは幸いに事が起らないで済みました。しかし神戸においてもずいぶん事が起つております。その後においても五月三十日に起つております。そういう場合に事なからしめる上から申しましても、私どもの方は警備につきましては一貫した方針でやつておりますが、場合によつては事が起る、場合によつては事が、起らない。これは対象次第でありまして、私どもの方が特にひつ込めたから事が起らなかつたとか、あるいは出し過ぎたから事が起つたとかいう問題ではないと考えまするし、結局お互いがそういつたことについて理解を持つて、やりやすいということは神戸市に公安條例があるから、私は、事なからしめる上から言うとお互いの都合がいいのだろう、こういうふうに考えております。メーデーの際も総評の主催者の意思に反しまして、自由労組が順番を狂わせて中に割込んで来たというふうなこともあつたようでありまして、私どもは警察が出る事態がなければなしに、そうあることを願つておるわけでありますけれども、警察が出なければならぬような情勢になりますれば、これはほつておくわけには参らぬ。こういう線で常にやつておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/61
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062・立花敏男
○立花委員 神戸の場合は公安條例があるから問題が起らないと言われますが、これは取締られる方で泣寝入りしているのです。実は私も泣寝入りしている一人で、神戸には公安條例によりまして、七十二時間前に届けないと集会ができない。従つて私は地元へ帰りましても、国会報告演説会すら持てないわけです。国会の都合で四、五日前から電報を打つて準備するわけには参りませんので、帰りましてすぐ演説会をやろうと思いましてもできないのです。これはまつたく演説会すら禁止的な状態にありまして、そのために泣寝入りしているから事故が起りませんので、必要やむを得ざる場合の集会をやろうと思いますれば、公安條例があるから問題が起るということは、当然私は出て参ると思うのです。そういうことをひとつ考えておいていただきたいということを、最後につけ加えておきたいと思います。
次に鶴岡さんにお尋ねいたしたいと思うのですが、鶴岡さんの方の都労連では公安條例に対してどういうお考え、態度をお持ちになつておられるのか承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/62
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063・鶴岡秀三
○鶴岡参考人 提出されております法律案に対して、先ほど私が述べましたように、同じ立場からやはりわれわれはこの公安條例につきましても、最初制定される当初から反対いたしたわけであります。そしてわれわれの代表でありますところの都議会の議員各位には、それぞれその趣旨を陳情し、さらにまた請願を出す、そういつた形でわれわれの意向を十分反映させたつもりでありましたが、しかし遺憾ながら通過してしまつた。その後さらに改悪されて来ている。このようなことにつきまして、昨年公安條例反対期成同盟でございましたかの直接請求があるわけでございます。これにつきましては、われわれは同じ趣旨に立つものではありますが、やはりその当時におきまして、都議会に対し撤廃の請願書を出しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/63
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064・立花敏男
○立花委員 今回のメーデーにおきまして虐殺されました高橋君は、都労連の組合員だと思いますし、しかもその虐殺の直接の原因になりましたのは、やはり公安條例による弾圧が原因だつたと思うわけです。その場合に、公安條例に反対しておられます都労連が、公安條例の犠牲になつて倒れました高橋君に対して、どういう態度をおとりになつておるのか、承りたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/64
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065・鶴岡秀三
○鶴岡参考人 確かに一日のメーデーにおきまして、都労連参加の組合員であります高橋正夫君が死亡いたしております。これは検死の結果、立会人の証言等もありまして、明らかに背後からピストルで撃たれておる。これにつきましては、都労連といたしまして、また直接の組合でありますところの都職におきまして、真相調査をいたしました結果、本人はメーデーの当日われわれの都労連が日比谷公園で解散した、その後において一旦職場に帰つているのでございます。従つてその後に個人的に参加したのであるから、われわれは組織的な行動としては認めるわけにはいかない。しかもわれわれは当日、もちろん基本的には皇居前広場は、当然メーデーの会場として貸すべきである、これは使用するのが正しいのである、こういう見解に立つておりますが、しかしながらその当日の状況からいたしまして、相当な事故が起るのではないか。その不測の混乱を、われわれが組合の責任者として、組合員多数をその中に動員するということはとてもできない、組合員に対して責任は持てない。そのような事態から考えまして、これには参加していなかつたわけでございます。従つてそういう立場からいたしまして、われわれは高橋正夫君については、まことに哀悼の意を表しましたが、しかしながら組織行動によるものではない、このように考えておるわけでございます。なお公安條例との関係でございますが、その問題につきましては、直接それが発動されたのは公安條例だ。従つてそれが悪法である。悪法である点においてはかわりはございません。しかしながら当時の状況からして、はたしてどちらが正当であるかいなかどいうことにつきましては、われわれに目下のところ判断がつかないのです。確かにある一面においては、明瞭に会場の禁止ということが大きな事故の発生する原因になつたでありましようし、また同時に、政府の運の反動的な政策が、労働者をしてそこまでに至らしめておるということも否定できない。しかしながら直接にそのような暴力的な行動に出ることが、妥当であるかいなかについては、われわれとしては見解を異にしているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/65
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066・吉田吉太郎
○吉田委員長代理 ちよつと立花君に申し上げます。大体質疑は五分間程度にお願いしております。さよう御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/66
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067・立花敏男
○立花委員 私もかつてあなたたちと同じ組合におりましたものといたしまして、高橋君の虐殺に対しましては限りない不満を覚えるものでありますが、組合の方で組織的に参つたのではないから、組織的に彼に対する哀悼の意が表せないのだというようなことに対しましては、私ども何か物足りない感じがするわけなんです。あなたの言葉の中にもありましたように、広場の使用の要求が完全に正しい。しかもその広場の使用の要求は、形の上での決議等はともかくとして、東京都の労働者全大衆の要望であつたことは間違いないわけです。しかも正しい要求、全大衆的な要求、これに従いまして高橋君が個人的にしろ出かけて参り、しかもあなた方が反対されている公安條例の直接的な名によつて虐殺されておるという場合には、これは少くとも民主団体としては、もつと明瞭な意思表示をやるべきではないか。これこそ組合の基本的な方針を正しく宣明せられて、公安條例あるいは集団デモ取締法等に対する政治的な評価を強く裏づけるものではないか。こう思うわけなんですが、これは法案を離れましての意見になりますので、お聞きおき願うだけでもけつこうだと思うのですが、御答弁があれば伺つておきたいと思います。
それから時間の関係で吉田さんに一つ最後に承つておきたいのですが、公共の福祉ということを理由といたしまして、基本的な人権を侵害しようとしているのですが、公共の福祉とは一体何だ。私ども考えておるところによりますと、憲法に従つて、憲法に許された集団デモを正々堂々とやるごとこそ公共の福祉であり、公共の福祉を確保するものだと思うのですが、この法案によりますと、それを制限することが公共の福祉を守ることになると言つておりますが、その点の基本的な考え方を最後に明白にしておいていただきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/67
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068・鶴岡秀三
○鶴岡参考人 ただいま組合としての態度を明瞭にということでございますので、先ほど申し上げたつもりでございますが、なお重ねて申し上げておきます。
当日高橋君があそこに参りましたことにつきまして、さつき申し上げた通りでございます。これにつきまして組合の統制上、また組合が一つの組織力としてその行動をともにする場合におきましては、やはり組合の決定に従い、また組合の決議により、その意思によつて行動するのが組合の行動でございます。従いまして当日われわれはあの会場に参りますならば、相当の混乱が予想されるのではないかと考えられましたので、これに参加しなかつた、むしろわれわれはそれに対しては阻止をした、こういう立場にあるわけでございます。従いまして組合につきましては全員あの会場の日比谷公園におきまして解散をし、しかも職場に帰るようにということを伝えておるわけでございます。そういう立場からいたしますと、その後の個人組な行動につきましては、組合としては責任を負うものでないということでございます。しかしながら御本人はすでに死亡をいたしております。しかもあのような死に方をいたしておりますので、都労連といたしましても、葬儀その他につきましてはこれに参加し、哀悼の意を表しておるわけでございまして、その点は組合の組織行動とのけじめは、はつきりいたしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/68
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069・吉田資治
○吉田参考人 公共の福祉というのは、公共でありますから多数を意味するというふうに私どもは考えております。憲法におきましても国民が主権者であるということがはつきりされておりますので、この場合の公共の福祉は、一部の資本家のためや特権階級のためにこれは云々さるべきものではない。公共という場合におきましては国民の多数、特に日本の経済を背負つて立つ労働者の行為というものを尊重さるべきである、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/69
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070・吉田吉太郎
○吉田委員長代理 大石ヨシエ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/70
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071・大石ヨシエ
○大石(ヨ)委員 古山さんに私はしごく簡単にお尋ねしたいと思います。
第一点は国警と自警との連絡が非常にうまく行かぬとおつしやいましたが、どの点が国警と自警がうまく連絡がつかないのか、それが一点でございます。
第二点は、そういうふうに国警と自警が連絡がうまく行かないのであれば、各府県単位にして、京都府なら京都府、兵庫県なら兵庫県、それを一つの自治警にしたらどうであるか、その点ちよつとお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/71
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072・古山丈夫
○古山参考人 連絡の点につきまして、何か連絡が非常に悪いように私が申したようにお聞きとりでしたら、その点は特別に連絡の悪い点はない、同じ精一ぱいやつても、たとえば一箇所に連絡するよりは、五箇所に連絡しなければならないということになりますと、五番目のところが遅れる、卑近に言えば、そういう例のように、相手がたくさんありますと、つい全体の連絡が一つのときよりも遅れがちになる、こういう意味で申し上げたのでありまして、特別に連絡が悪いというふうに私は考えておりません。それからもう一つの点でございますが、これは根本の大きな行き方としましては、たとえば今の小さい自治警がそのままある方がいいのか、あるいはそういうところは、府県単位の自治警というものになる方がいいのかというようなことは、これは大きな検討を要する問題だと私も考えております。ただしかし今ここでどつちがいいという結論に、達したというふうには申し上げかねますが、これは大いなる検討を要する問題である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/72
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073・大石ヨシエ
○大石(ヨ)委員 それで各府県ごとに一括して、一つの自治警にした方が、あなたはよいと思われますか。あなた個人の意見を私は聞きたいと思います。あなたが公の立場でなくして、あなた個人はやはり小さくした自治警がたくさん集まつておるのがいいのか、それとも兵庫なら兵庫、大阪なら大阪、京都なら京都、これを一括した一つの府県単位の自治体警察にした方がいいか。それは公の立場でなくして、あなた個人の立場を私は聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/73
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074・古山丈夫
○古山参考人 この点は、私は自治体警察は、現在の国情においては残すべきものである。相当規模の都市警察は、これは今のままでけつこうである。それ以外の小さな自治警については、現在でも多少問題はありましようから、これを府県単位のものにとりまとめるということは、あり得べき構想だと考えております。しかしその場合におきまして、地域警察は自治体警察になつてしまう。それで特殊部門の仕事を国家警察が握つて行く、その部門については自治体警察を指図するのだ、こういう形になりまして、ほかの点まで関連して解決がつかなければ、単に府県警察だけがいいとは、簡単に申し上げるわけに行きません。たとえば経費の問題にしましても、自治体警察はつくつたものの、金を出す方は、自治体警察をつくつただけのねらいのように、うまく行つておらぬというわけでありまして、たとえば府県警察を
つくつてみたところで、そういう諸般の情勢がそれに伴うように総合的にできなければ、つくつてみてもかえつて妙なものになるというふうなこともあり得るわけでありまして、そういう点は、私は結論的にどつちがいいということは、私見としてもまだ持つておりません。ただ一つの大きな検討問題にはなり得るというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/74
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075・吉田吉太郎
○吉田委員長代理 それではこの際委員長として、一言参考人の方々にお礼を申し上げます。
参考人の方々には、非常に熱心に参考意見を開陳せられ、委員会といたしましても、非常に参考に資する御意見を賜ることができましたことを、委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。当委員会といたしましても、今後の審査に、参考人各位の貴重なる意見を反映し、国民の期待にそむかざるよう、なお一層の努力を傾けるつもりでおります。御多忙中貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。
それでは暫時休憩いたします。午後は二時半から再開いたします。
午後一時四十四分休憩
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〔休憩後は開会に至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304720X06219520605/75
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