1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十六年十二月十二日(水曜日)
午後一時三十二分開議
出席委員
委員長 小金 義照君
理事 中村 幸八君 理事 山手 滿男君
阿左美廣治君 小川 平二君
神田 博君 澁谷雄太郎君
永井 要造君 中村 純一君
南 好雄君 西村 榮一君
高田 富之君 河口 陽一君
委員外の出席者
専 門 員 谷崎 明君
十二月十二日
委員風早八十二君辞任につき、その補欠として
高田富之君が議長の指名で委員に選任された。
—————————————
本日の会議に付した事件
企業合理化促進法案(小金義照君外三十四名提
出、第十二回国会衆法第七号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/0
-
001・小金義照
○小金委員長 ただいまより通商産業委員会を開会いたします。
まず委員の変更についてお知らせいたします。委員風早八十二君が辞任せられて、高田富之君が補欠選任せられました。以上お知らせいたしておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/1
-
002・小金義照
○小金委員長 企業合理化促進法案を議題といたします。本案につきましては質疑は終了いたしておりますが、なおほかに御発言はございませんか。ほかに御発言がないようでございますから、それでは本案に対する質疑は終了いたしました。
次に本案を討論に付します。討論は通告の順に従つてこれを許します。中村幸八君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/2
-
003・中村幸八
○中村(幸)委員 私は提案各党派を代表いたしまして、本法案に賛成の意を表する次第であります。
敗戦のため、領土とともに資源の大半を喪失いたしました結果、現存資源を最高度に活用することが、新しい日本が生きるための絶対的の要件となりました。しかるに戦時中並びに戦後の空白期間のため、技術の面においては欧米先進諸国に比べて数十年も遅れており、設備の面におきましてもまた著しい老朽陳腐化のため、とうてい国際競争に耐え得ないというのが遺憾ながらわが国の現実の姿であります。従いまして講和条約の発効も目睫の間に迫る今日、経済自立を達成し、国際競争場裡に雄飛せんがためには、急速に科学技術の振興と産業設備装置の更新を断行しなければならないことは、けだし万人異論のないことと確信する次第であります。しかるにわが国の企業は、敗戦の結果特に財閥解体等のため、資本の蓄積皆無に近い状態に陥つておりまして、これらの自力更生心のみまつときは、百年河清を待つの結果になることは明白であります。すなわちこれら企業の合理化を促進するため、補助金の交付、税法上の特別措置等、一連の助成策を講ずることが要望せられるゆえんであります。欲を言えば、わが国企業の実態並びにその合理化を促進することの重要かつ緊急性にかんがみ、いま少しく徹底した助成策、たとえば研究あるいは設備更新等のための留保金に対しては、特別償却よりも竿頭さらに一歩を進めて、これを課税対象より除外するというがごとき施策こそ望ましいと思うのでありますが、国の財政上それが許されないとすれば、とりあえずこの程度の助成策を最小限度のものとして急速に実行に移すとともに、他日事情が許せば、さらに積極化せらるべきだと考える次第であります。
以上をもちまして、簡単ながら本法案に対する私の賛成討論を終る次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/3
-
004・小金義照
○小金委員長 次は高田富之君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/4
-
005・高田富之
○高田(富)委員 私は日本共産党を代表いたしまして本案に反対の意を表明するものであります。企業の合理化という問題が特に現在叫ばれ、これが取上げられておりますことについては、その背景となつておる本法を運用する政府の産業政策に対する考え方を明らかにしなければ、本法の運用によつて、いかなる事態が起るかということをつかむことができないのであります。本委員会におきましてしばしば政府の産業政策並びに合理化に対する考え方につきまして質問いたしました結果、これらの諸点についてわれわれが明らかにし得たと信ずる点は、第一にこのような法案が成立しました場合、これによつて政府が助成しようとする産業は、まず現在の日米経済協力という基本的な線に沿いました軍需的な性格を持つた産業、これに対しまして相当の助成をやる。特に今回のように研究施設あるいは固定施設に対する減税というような方法でこれを助成することになことは明らかであります。具体的に業種その他の内容につきましては、まだ明らかにされていない点も多かつたのでありますが、そうした基本的な態度はきわめて明瞭になつたと思うのであります。こういうふうな立場から企業の合理化を行いますことは、わが国の産業構造それ自体をきわめて不安定かつ危険な方へ編成がえすることになることは明らかでありまして、まずわれわれは、この基本的な産業政策の観点からこの合理化問題を取上げた場合に、賛成することができないのであります。またこの法案を見ますると、特に憂えられますのは、中小企業に対する今後の施策であります。これが大体において大企業、なかんずく軍需的な性格を持つ大企業に対する優遇措置であることはきわめて明瞭でありまして、中小企業に対しましては、ただ単に申訳程度とも言い得るような診断の規定があるのみであります。従つて、これによりまして、むしろ今後非常に偏頗な産業の合理化政策が遂行され、中小企業に対しましては一層犠牲が強要されるようになるということも当然心配されるのであります。特にわが国におきましては、輸出産業あるいは平和産業等において中小企業の占める比率は圧倒的なものでありまして、これの高度化あるいはこれの経営の安定ということを第一義的に考えることの方がむしろ先決問題であります。そのような点からいいまして、かえつてこれは全体として見た場合にはわが国の産業の発展ではなくして、むしろ逆行するような結果になるのではないかということも、われわれはこの法案を審議いたしまして強く心配するところであります。なおまた、この企業合理化ということにつきましてはいろいろの面からの合理化方法がありますが、ここで取上げましたのは、主として固定資産の減税措置という点に限られておるわけであります。問題はわが国の場合では特に企業の近代化を考える場合に、どうしても労働行政をはずしましては企業の合理化は云々できません。わが国における労働の条件その他は非常に前世紀的なものを多分に持つておりまして、むしろそれがわが国の産業の今までの特徴をなしており、その結果諸外国からも相当の非難を招いておるというような状態でありまして、独立を前にいたしまして、いよいよわが国の産業の近代化のためには、労働行政の面における近代化を最も重要視しなければならぬと思うのでありますが、それらの問題には全然この法案は触れておらない、のみならず、企業の経営の面からその利潤の蓄積を助けるという形で行いますと、勢い機械設備等の近代化が逆に労働条件を悪化させる、あるいはまた失業者を多くするというような結果になることも想像されます。特にそれらの点については、労働基準法の改悪というようなことも考えられており、また撤廃というようなことさえも言われておるという現在でありますので、いよいよもつてこういう方向への企業の合理化ということになりますれば、労働条件の悪化ということが出て来るのではないか、失業問題等も一層深刻になるのではないかということも心配ざれるのでありまして、本委員会の質疑を通じまして、この点に対する対策がまつたくないということが明らかになつたと思うのであります。
それから補助金を支給する場合等につきましての基準とか、あるいはその減税措置を講ずる場合の選定の基準というようなものも、業界と官吏との間の交渉によつてきめられるような非常に莫としたものでありまして、こういうことで行きますると、現在の官吏の組織その他を見ましても、相当汚職事件等も頻発しておる際でありますので、こういう点に非常に問題があります。簡単にただ条文にある程度のことでこれをまかせるということになりますれば、その結果はむしろ非常に多くの弊害を生むのではないかというようなことが考えられる。また研究施設等に対する補助は、従来もやつておるようでありますけれども、実際はむしろわが国の独自の技術や科学の振興のための研究施設等につきましての、国家的な大規模な助成、もつと本腰を入れた技術者の優遇とか研究施設の新設等につきまして根本的に考えなければならない、そういう点が非常に軽視されておる。ことに終戦後今日までの経過を見ますと、かなり重要な産業関係の研究施設等が閉鎖され、あるいは人員を減らすとか、予算が非常に削られるとかいうことで、かえつて科学技術の振興に逆行するような現象をずつと呈して今日に至つでおるのであります。いたずらに外国の技術を移植するというようなことのために、従来も相当特色を持つた科学技術がかえつて殺されて行くというような傾向もあるのでありまして、われわれはこれらのものを急速に実行するというために、もつと別個の根本的な対策を必要とすると考えるのでありまして、こういうふうに企業応対しまして、はなはだあいまいとも言えるような基準で選定し、若干の恩典を与えるというような方法では、真に技術の進歩を期することはできないであろうと考えるのであります。
最後に減税の問題でありますが、これにしましても、なお政府の説明ではどの程度の税の減収があるかということもはつきりしておらぬ段階であります。これが広汎に適用されるというようなことにでもなりました場合には、相当の減収になることも考えられるわけでありまして、特に地方税等において、固定資産税の減収がまちまちに行われ、相当程度行われるところもあるということになりますると、勢いそのしわ寄せをどこかに持つて行かなければならぬことになることは当然でありまして、結局一部の産業のために他の方面、特に中小法人等の方面には、相当のしわ寄せが税の方面からも起る可能性があるわけであります。そうでなくてさえ相当苦しんでおる中小平和産業方面の税の負担が、ますますアンバランスになつて来るということは、非常に好ましからざる現象であろうと思うのであります。
大体以上申し述べましたような理由に基きまして、本法案には賛成いたしかねる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/5
-
006・小金義照
○小金委員長 次は河口陽一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/6
-
007・河口陽一
○河口委員 私は農民協同党を代表いたしまして、本法案に賛成をいたすものであります。しかし特に本案執行にあたつては、以下述べる点を十分御考慮いただいて、運営の妙をいたしていただきたい、かように存ずるのであります。
その第一点は、共産党の、同僚高田君も申し述べられたごとく、本案は内容において独占企業を育成するような感じを深くいたすのでございます。従つて、中小企業の日本における存在は、重要な位置を占めておるので、あくまでも本案が独占企業育成のための施策であつてはならないということについて十分御考慮をいただきたい、あくまでも中小企業を主体として本案の活用をしていただきたい、かように存ずるのであります。
第二点は、食糧増産という重大問題を控えての本案を考えた場合に、農機具あるいは肥料工場に対する施策が十分なされておらぬ。今日本の農業が細分化されつつある段階において、機械化をせなければならぬということは論をまたないのでありまして、そういう観点から飛躍的食糧増産をなす場合における施策を十分に取入れていただきたい、さらに肥料の増産に対しても十分考慮を払つて運営をしていただきたい、かように存ずるのであります。
最後に、本案は企業合理化という大きな課題でもつてつくられた案でありますが、内容においては技術指導、原材料等に限定をされておるということははなはだ遺憾でありまして、企業全体の合理化をはかるという大きな観点から考えるときに、これは非常に満足すべき法律案でないと感ずるのであります。従つて本案を基本といたしまして、日本の全体の企業が合理化されるよように、今後十分御研究を願い、善処していただきたい、かように存じておる次第です。
以上二点を申し述べまして賛成の討論にかえる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/7
-
008・小金義照
○小金委員長 以上をもつて討論は終局いたしました。
引続いて採決いたします。企業合理化促進法案に賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/8
-
009・小金義照
○小金委員長 起立多数。よりて本案は原案の通り可決いたしました。
なお委員会報告書作成の件については、先例によりまして委員長におまかせを願いたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/9
-
010・小金義照
○小金委員長 御異議なしと認めます。それでは御一任願つたものと決します。
本日はこの程度にて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
午後一時四十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X00219511212/10
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。