1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年五月九日(金曜日)
午後一時四十六分開議
出席委員
委員長代理 理事 中村 幸八君
理事 多武良哲三君 理事 山手 滿男君
理事 今澄 勇君
阿左美廣治君 江田斗米吉君
神田 博君 小金 義照君
淵上房太郎君 高橋清治郎君
加藤 鐐造君 田代 文久君
青野 武一君
出席政府委員
通商産業事務官
(資源庁炭政局
長) 中島 征帆君
委員外の出席者
専 門 員 谷崎 明君
専 門 員 越田 清七君
—————————————
五月九日
委員永井要造君辞任につき、その補欠として龍
野喜一郎君が議長の指名で委員に選任された。
—————————————
本日の会議に付した事件
臨時石炭鉱害復旧法案(内閣提案第一五九号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/0
-
001・中村幸八
○中村委員長代理 これより会議を開きます。
ただいまより臨時石炭鉱害復旧法案を議題といたし、質疑を行います。質疑の通告がありますから、これを許します。多武良哲三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/1
-
002・多武良哲三
○多武良委員 御質問申し上げたい点はたくさんございますが、非常に重要な法案でございまして、同僚委員からの質疑の通告がたくさんあるようであります。時間的の関係もございますので、私は総括的に本法案の立法の趣旨、特に本委員会におきましての前後二回にわたる鉱害に関する決議との関係について、政府当局にちよつと長くなりますがお尋ねを申し上げたいと思います。鉱害と直接関係のある方面は、申すまでにもなく被害者と被害地域の地方公共団体、それから加害者たる鉱業権者と、鉱業権を設定し、鉱業施業案を認可した政府当局との四者であります。以上四者のうち、まず被害者の側から考えてみましよう。たまたま地下に石炭があつたがために、美田を荒廃せしめられて、祖先伝来の職を奪われ、家屋を破損せられて、日夜生命の安全さえも脅かされるというに至つては、まことに同情にたえないものがあるのであります。これに対しましては、まさに適正な賠償が保障されるべきでありまして、農耕地のごときももちろん原状回復せられてしかるべきであります。ところで原状回復はおろか、現在その効用の回復さえも保障せられない部面がたまたまあるとするならば、これはまさに憲法によつて保障されました財産権の侵害であると断じなくてはならないかと思うのであります。
次に鉱業地方の公共団体の立場に立つて考えてみますと、先般の公聴会におきまして、福岡県知事等の公述にもありました通り、鉱害復旧費の分担額が、石炭鉱業が納める当該府県の唯一の財源である鉱区税の総額をオーバーして、収支相償わない。すなわち単に炭鉱地帯であるがゆえに、特別の負担をこうむり、結局当該府県民の血税によつて、そのしりぬぐいをしなければならないようなことはまことに不合理ではないかと思うのであります。地元の住民や当該地方の公共団体に不当な迷惑をかけるようなことでは、石炭鉱業の経営上、絶対に必要である地元関係者の協力はとうてい期待すべくもないと思考するのであります。それならば鉱業権者の立場からこれを考えるときはどうかと申しますと、世間の一部では最近石炭鉱業界はすこぶる好景気に恵まれ、全国長者番付を見ましても、炭鉱業者が多数その上位を占めておる実情でありますから、鉱害復旧のごときも全部炭鉱業者の負担においてやらせるべきだとの論をなす者もあります。元来企業特に炭鉱企業のごときは、景気、不景気の変動がすこぶるはげしいものでありまして、近来炭鉱業一般が好景気に恵まれ、特に中小炭鉱業者の中にはわが世の春を謳歌している者のあることも事実であります。しかし鉱害の賠償に関しましては、従来法律によつて明白に規定されておりまして、新鉱業法においても原状回復主義ではなく、金銭賠償を原則といたしておること周知の通りであります。従いまして、たまたま好景気に恵まれているという、それだけで法定限度以上の復旧費を負担せしめる、反対に不景気なるがゆえに法定賠償額の負担を軽減せしめるというがごとき暴論は、少くとも法治国日本においてはもとより成り立たないのであります。
次は政府の立場についてであります。申すまでもなく、鉱業権の設定はもちろんのこと、施業案の認可その他鉱業に関する行政監督はすべて政府当局の責任においてこれを行うのであります。石炭を採掘するために美田を荒廃せしめて食糧を輸入するか、農耕地を保存して石炭の輸入をはかるべきかを国策的に判断しまして、鉱業権を設定したのも政府であり、採掘方法や充填方法に関する施業案を認可しまして、これが実施を監督することもまた政府の責任であります。従つて石炭採掘のため被害者等が不当に苦しめられることのないよう、適当なる善後措置を講ずることもまた当然政府の責任でなければならないと考えるものであります。
以上のような観点から本委員会におきましては、さきに特別鉱害復旧臨時措置法案を通過せしめたとき並びに新鉱業法を成立せしめたときの両度にわたりまして、鉱害に関する特別決議を満場一致可決したのであります。ここにあらためて決議文を朗読するの煩はこれを避けますが、第二回の決議文の中でも、特に諸般の事情を勘案して金銭賠償を原則とするこの法案に賛成するが、しかし原状回復に対する被害者の要望にもまた当然こたえるべきである。結局国庫の負担において両者のギヤツプを国費をもつて埋めることによつてすみやかに鉱害の復旧、少くともその効用の回復をはかるように万全の措置を講ぜられたいという趣旨を強調したのであります。
そこで政府当局にお尋ねしたいことは、本法案が実施せられるあかつき、鉱害地の原状、少くともその効用を回復する上におきまして遺憾なきを期し得るかどうか、また地方公共団体に負担を加重せしめるようなことがあるかないか、それから鉱業権者に対しまして多少なりとも金銭賠償を原則とする法定限度以上の負担をしていることになりはせぬか、この点についてまずお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/2
-
003・中島征帆
○中島政府委員 この法律は現在の鉱業法に基きます金銭賠償の原則を臨時的に修正いたしまして、一定の条件のもとにある鉱害につきましては、原状を回復し、その効用を元にもどすということをねらいといたしておるのであります。従いましてこの法律が施行になりますと、この法律の対象となる鉱害地は原則的に復旧されるということになるわけであります。ただ復旧費の金額と、それから復旧後のその土地の価格、あるいは物件の効用価値というものを考量いたしまして、投ぜられた復旧費に対する価値の回復率というものがあまり小さい場合には、これは復旧に適しないということで復旧されないというものもございます。また一般の家屋あるいは墓地等私有財産につきましては、これは特別鉱害の例から考えましても、統一的な復旧計画を立てることは困難であるという見地から積極的に復旧するというような考え方になつておりません。そういう点での制約はございますけれども、この法律のねらいは鉱害の復旧にあるのでございます。従いまして一定条件のもとにできるだけ従来の効用を回復するために鉱害復旧をするということになるわけであります。次に地方負担の問題でありますが、この法律の施行によりまして特に地方の公共団体が従来以上に鉱害の復旧のためによけいな負担をしなければならぬということは、原則的にはもちろん避けるべきでありまして、そういうことは考えないわけでありますが、ただこの法律によりまして取上げられます各種の鉱害施設というものが、公共的な関係からも放置できないという性質のものでありますので、従つて地方公共団体といたしましてもその鉱害の復旧につきましては、相当利益を受けるという部分があるわけであります。従つて鉱害復旧の費用ないしはそれを実際上行います復旧事業団の費用についても、地方公共団体も国と同じ立場においてできるだけの負担をしていただくというふうな構想になつておりまして、その限度等は今後無理のない範囲内におきまして政令で定めることになつておりますが、このために特別に地方負担金が増加するということのないようにいたしたいと思つております。それから鉱業権者に対する負担でございますが、これは現在鉱業法に基きます鉱業権者の賠償義務というものが一定の基準によつて理論上ははつきりするわけでございます。従つてこの法律に基きましては、その鉱業法から出て来ます鉱業権者の賠償の限度以上には負担をかけないという建前から出発いたしておりまして、鉱業法上の賠償金の限度一ぱいまでは出させますけれども、それ以上の負担はかけないということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/3
-
004・多武良哲三
○多武良委員 それで大体わかりました。次に国庫の負担において急速に鉱害を復旧するように措置せられたいという本委員会の決議でありますが、これがはたして尊重せられているかどうか。たとえば道路や河川、橋梁などの公共物件に対しましては国庫の補助を増大するのではなく、むしろ逆に従来と異なつて国庫の負担を漸減するようにも見られるのでありますが、これはどうか。つまり数学的に申しまして一般鉱害の復旧に要する事業費の総額はどのくらいであるか、またこれをまかなうための鉱業権者の納付金の総額は幾らであるか、国庫並びに地方公共団体の負担額はそれぞれどのくらいになるかをひとつ具体的に承りたいと思います。さらに本年度政府支出に対しましてはどう措置せられているかについても、大蔵当局がおられましたらあわせて御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/4
-
005・中島征帆
○中島政府委員 現在いわゆる一般鉱害として考えられております鉱害復旧費の総額は、先般の調査によりまして約二百三十億と推定されております。但しこれにつきましては、全然実地調査ないしは査定を加えておりませんので、数字的にはなお検討の余地がありますが、一応二百三十億ということになつております。そのうち先ほど申し上げましたように、復旧に適しないもの、これは費用の関係からもありますし、なお最近にまた再陥落するというような地区もございますので、そういうような復旧に適しない土地を除きました場合には、二百三十億の全部が復旧されるわけではありません。百二十億程度のものが大体復旧に適するのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。そこでその中で特に問題になります農地でありますが、農地関係の復旧費が、ただいまの見積りによりますと、いろいろのものを含めまして、およそ四十七億というふうに見積つております。その他の公共施設——道路とか橋梁とか、公共施設に関する復旧費が大体五十億近い数字になつております。公共施設に対する国の補助は、およそ五〇%くらいを予定しております。しかしこれは法律の建前から申しますと、本来はすべてが鉱業権者が負担すべき金額であるので、一応補助金は出しますけれども、将来において償還してもらうというふうな仕組みになつております。それから農地の四十七億に対しましては、鉱業権者から上ります納付金というものが約十八億と推定されております。これはいろいろな計算をいたしたわけでありますが、その基本的な考え方としましては、現在収穫が皆無であるとか、あるいは減収になつておりますために、その部分に対して年々補償を出しておるわけでありますが、この補償金額あるいはもう少し理論的に考えまして、むしろ減収量というものを基本的に換算いたしました金額が鉱業権者の賠償の限度である、こういうふうに考えまして、それを集計いたしますと、およそ十八億ということになるわけであります。四十七億から今の金額を差引いた残り約三十億というものが、国庫及び地方公共団体が負担しなければならぬ金額になるわけであります。要するにこの際の考え方といたしましては、復旧に適する農地の復旧費の中で、鉱業権者からは鉱業法上の原則に基く賠償限度の最高額までとりまして、残りのものを国と地方公共団体が埋める、こういうような考え方をとるわけであります。その結果が一応三十億程度になつておりますが、これを国と地方公共団体でいかなる負担区分で負担するかということは、現在折衝中でありまして、まだ率が確定しておりません。これは確定次第政令中にその率を明記することになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/5
-
006・多武良哲三
○多武良委員 大蔵当局がお見えにならないようでありますから、またあらためて納得しかねる点の質問を留保いたしまして、最後にもう一つお伺いしたいことは、今後における鉱害対策のことであります。本委員会は、前に述べましたように特別鉱害復旧臨時措置法案の通過の際の附帯決議におきまして、既往の鉱害の復旧を促進すると同時に、将来に対する抜本塞源的対策についても、すなわち鉱区の設定、施業案の認可等についても万遺憾なきを期するように政府に警告しておいたのでありますが、この点に関する今後の見通しはどうであるか。たとえば鉱業権者は法定限度まで賠償するが、それではなお原状を回復するには及ばない、しかも大蔵省はその差額を負担することを承知しない。かくして将来もまた依然として鉱害地が復旧せられないままで放置せられるがごときことがありはせぬか、この点に関する見通しについて承りたいのであります。
以上要するに本法案の実施が、被害者、地方公共団体並びに鉱業権者に及ぼす影響が将来どうであるかということが第一点、国庫の負担においてすみやかに鉱害の復旧をはかるという本委員会の決議が潰憾なく採用せられたかどうかということが第二点、今後もまた鉱害が復旧せられないまま放置せられるようなことはないか、その見通しはどうかということを第三点としてお伺いいたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/6
-
007・中島征帆
○中島政府委員 鉱害復旧の今後の見通しの問題につきましては、本日も大蔵省と打合せをして参つたわけでありますが、納付金に対するわれわれの方の考え方につきましては、関係各省とも大体意見が一致いたしております。それからこれは特に農地の関係でありますが、その復旧費の総額につきましても、現在出ております資料をもとにする限りは、意見が大体まとまつております。従つて実際の工事費の査定あるいは実費ということによつて実際の数字がかわつて来ることはあるわけでありますけれども、現在の数字上出ております約三十億の不足額というものを国及び地方公共団体で出すということにつきましては、大蔵省、地方財政委員会ともに了解をしております。先ほど申しましたようにその負担区分というものはまだ確定いたしておりませんけれども、総額につきましては、その程度のものは穴を埋めなければなるまいということについては異論がないようであります。従つてこのような計算に基きます鉱害復旧工事というものが、この法律が成立しました限りにおまましては十分期待していいということになるわけでありますが、ただこの補助金がこの法律の施行期間十年間にどのように改善されるかということによりまして、復旧工事の遅速ということに結果して来るわけでありまして、その間の見通しとして、まだ不確定の点はございますけれども、考え方といたしましては、これだけの復旧工事がこの法律によつて国並びに地方公共団体の補助金を合せて十分に実行し得るということは、期待していいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/7
-
008・中村幸八
○中村委員長代理 次は山手滿男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/8
-
009・山手滿男
○山手委員 総括的に私は二、三点お伺いをしておきたいと思います。この臨時石炭鉱害復旧法案というのは、この法の精神は石炭を採掘することによつて生じた地表に現れたいろいろな故障を、鉱業権者とそれから土地の上に住んでいる、あるいはいろいろな権利者との話合いによつて除去することが建前なのでありますけれども、その話合いによつてそうしたいろいろな問題をセーヴし、除去して行くことが適当でない、そこに国家というものがさらに介入して強力に原状回復をするという考え方でありまするので、そういう考え方自身は私は何も反対する必要もなければ、大いにやつてもらわなければならないことだと思つております。しかしこの問題を軽卒に私はうのみにするわけには行かないような気がするのであります。と申しまするのは、一つの営利会社——石炭ばかりではございません、鉱業にいたしましても地下資源の開発においても、金属鉱山もそうでありましようし、石油でもそうでありまするが、事業をやつて行きますると、その周辺には必ずいろいろな問題、事態が起つて来る。深刻さは、どの程度に差があるかということは別でありましようが、起きて来る。そうして各地で農民と会社、あるいは地主と会社、そういうふうなものが大きな争いをやつておるのであります。現に釜石あたりでもそういう非常に重大な事態が起きておることは御承知の通りであります。新潟におきましても帝国石油が例のガス油田を開発しておりまして、そのガスが滔々と川に流れて付近一帯もうほとんどだめになつて、農民と会社の対立状態をずつと続けておる。そういう事態が各所に起まておるのに、単に石炭鉱業及び亜炭鉱業による鉱害、それだけを特に取上げるということには私はまだまだはつきりさせて行かなければならない問題があると思うのでありますが、その点について具体的な御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/9
-
010・中島征帆
○中島政府委員 ただいまのお話の通りに、本来こういうふうな問題は既存の法律でもつて解決すべき性質のものであります。従つて鉱害問題もすでに鉱業法の中に相当詳細な規定がございますので、その規定を運用いたしまし出て、解決に導くのが原則であります。ただ特にこの問題に関しまして、このような特別立法をいたしました趣旨は、先ほども申しましたように、現在特別鉱害を除きまして、二百三十億にも上りまする鉱害がそこに累積しておる。これを片づけることは本来的には鉱業権者の責務でありますけれども、実際の経営の状況から行きまして、早急にこれを片づけるということは非常に困難でありますので、これを特別に各方面の協力によつて処理するというのがこの法律のねらいであります。この臨時立法によりまして、この累積したものをすみやかに解決いたしましたならば、その後はこういうふうな鉱害問題が経常的に出て参りまする形においてどういうふうに処理されるかということは、そのときにおいてまた再考する余地があろうかと思いますけれども、今日においては鉱業法の継続においてお互いの話合いにまつ、こういうふうな考え方をとり得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/10
-
011・山手滿男
○山手委員 問題はそこなのであります。二百三十億というふうな厖大な鉱害がすでに発生をしておる。これに対処して行かなければならない、これは一応のりくつであります。また事実その通りでございましよう。しかしながら私はこういう法律を簡単に通して行きますと、炭鉱業者などは採掘を進めて行くのに、技術的にもいろいろ手を尽してうんと十全な措置をとつて金のかかるようなことをしなくても、いいかげん経費がいりましようが、それほど手を尽さないで採掘をして行くということが、私は言わず語らずのうちに誘発をして行きはしないか、これはほかの一般の工業でもそうでありますが、硫酸を処理しておる工場なんかでも同じことであります。これはやはり問題が起きた場合には国家が何か手を尽してくれる、救いの手が伸べられる、現にそういう法律もあるということになりますと、資金的にどうだとか、やれ立地条件がどうだとかいうことになつて来て、なかなかやるべきことをやらなくなるおそれが私はあると思う。今お話のあつた、すでに累積をした鉱害をこの法律によつて解決をするのだということがはつきり言えるのかどうか。もう一つ形をかえて言えばもう一般鉱害はこれ以上起きないのかどうか。私は鉱害は起きつつあるのではないか、あるいはさらに続々と出て来ると思うのでありますが、その点についてどういうふうにお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/11
-
012・中島征帆
○中島政府委員 一般鉱害はわれわれの方の調査によりますと、大体年々約四億程度のものが新しく出ておるというふうになつております。従つて毎年それだけのものが現在あります二百三十億に附加されて行くことになるわけでありますが、この新しいものと現在ありますものとの区分が地域等によつてはつきりできる場合には、新しいものはこの法律の対象とならぬわけでありますけれども、同じ場所に起きる場合には、新しいものから起きた鉱害であるか、従来の累積の分であるかということが区別しがたい点が出て来ると思います。そういう分につきましては、この法律の施行期間中はやはり同様取上げるという結果になるわけであります。しかしそれも施行期間の十年以内でありまして、十年間に所期の目的を達して、少くとも現在累積しておる程度のものが片づくということになりましたら、その後は年々生じて来ます四億の鉱害の復旧は鉱業法上の原則にもどつて片づけて行くというふうに取運ぶべきであると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/12
-
013・山手滿男
○山手委員 そういう十年の期限を切り、既存のものを対象とするというふうないろいろのお考え、これはこの法案にも書いてありますので、表面上は一応異議のないことでありますが、しかし実際の事業の運営の面から行きますと、私はその判別はなかなか困難であろう、こういうことをどんどんやつて行けば行くほど、実際にこの仕事をやつて行く上においては私はおそらく横着が出て来るのではないかという気がするのでありまして、この点は私は少し専門的な技術的な解明をしてみなければならないと思つております。先般公述人の中で技術関係の方から、今四億という話がありましたけれども、一般鉱害はやり方によつては幾らでも防げるのだ、あるいは少くなるのだ、こういう非常に考えさせられる公述があつたのであります。そういう点について局長はどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/13
-
014・中島征帆
○中島政府委員 私もその点につきまして、鉱害の防止の方法は技術的に相当あり得ると思つております。ただ遺憾ながらそういう防止の方法は、国ももちろんある程度の協力をしなければなりませんけれども、大部分はやはり鉱業権者が努力しなければならぬ性質のものでありまして、それをやらせるために現在あります鉱害を早く片づけませんと、従来のものの処理に心を引かれまして、予防等の措置につきましては十分手をまわすことができない、こういう状況にあります。それが非常に遺憾だと思つております。今後現在の累積したものが片づきますと、鉱害防止の点につきましてはもう少し根本的に、技術的にもあるいは実際上の測量とかそういつた点につきましてもできるだけの制度を確立いたしまして、予防的なことにもう少し力を注ぐというふうに持つて行かなければならぬと思つておりますけれども、現在のところはそういう余裕がないというふうな点が非常に欠陥となつております。私が現在見ましたところで、今鉱業権者が鉱害のために年々払つております金額は相当な額に上つておりますが、これは決して現在の鉱害の状況からいつて適当な金額だとは考えられないのであります。むしろこの鉱害の実情を考えますと、もう少し多額の金額を支出すべきものでありますけれども、ただあまりにもこの絶対額がふえまして、鉱業権者の負担にたえないためにその程度の支出しかできない。従つて鉱害の累積を放置しておけばどんどんふえて行く、こういう状況にありますので、できるだけ早く累積を片づけまして、今度は鉱業権者が負担のできる範囲内で、技術的な改善を加えて鉱害の防止をするようにいたしたい、こういうふうに思つております。但しこれはいかに技術的に手を加えましても、地下を掘りましたために上に起りました陥落の事故というものは、これは絶対的に防ぐことは不可能でありまして、いかにこれを機械的に最も完全であります充填方法を用いましても、掘つた厚さの約半分というものは必ず落ちるというふうに諸外国の実例でもなつております。従いまして絶対にこれを防止することはできませんけれども、この鉱害の現われ方ないしはその程度というものを、やりようによつては相当緩和できるということだけは少くとも日本の鉱害に対しては言えるのじやないか、私はそう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/14
-
015・山手滿男
○山手委員 私は今のことが非常に大切だと思うのでありますが、すでに起きておる鉱害を片づけてしまわなければこの予防措置はできない、国家が干渉することはできないというふうな御説明のようでありますが、むしろそうじやなくて、予防措置を先行させて予防措置を講じて、しかる後にこういう法案が出て来ることが私は正しい行き方じやないかと思います。予防措置を講じないでおいて先に起つておるものを直すのだということだが、これは直すことはけつこうですが、しかしむしろ考え方としては予防措置の方を先行させて行かなければいけないと思う。これからはもうそういう一般鉱害のようなきわめておもしろくないものは炭鉱関係で起きないのだ——絶対に起きないことはないようでありますが、少いのだという大きな方針を炭鉱業者の方々に国家が示して、あるいは場合によつては法律で規定することも必要だろうと思うのでありますが、それをやつて初めてこういう法案が出て来るのが私は正しいと思う。それをやらないでこういうものを通せば、いつまでたつてもこの予防措置というものは、言うはやすいが実際行われない、こういうふうな気がするのでありますが、その点についてどういうお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/15
-
016・中島征帆
○中島政府委員 予防措置は現在の鉱害を片づけなければできないということを私が申しましたのは、根本的にこの鉱害対策を立てるためには、現在の累積した負担を除かないと非常に困難であるという意味で申し上げたのであります。現在の法律によりましても、たとえば鉱山保安法によりまして鉱害防止につきましてはある程度の制限が加えられております。そういうような規定の運用によつて一応の保安上の防止措置が強制されることになつておりますが、それはたとえば重要な工作物の下を掘る場合に、一定の掘り方についての制限を設ける、あるいはその下は全然掘らせない、場合によつては一定の場所につきましては必ず充填をさせる、そういうような方法を掘採計画の中に織り込ませまして、認可をするということが現在保安法でできることになつております。こういう点は従来の保安法の実施面においても必ずしも十分に行われておりませんでしたが、今後はそういう点につきましても一層積極的にやるということに大体方針がきまつておるわけでありまして、そういう保安法の範囲内におきます予防措置というものはこれから着々実施されるはずであります。ただそういうような方法をとりましても、当然ある程度の陥落が起るわけでありますが、さらに一層これを科学的に防止するためには、根本的に一番大事なのは、下の掘採とそれが上に及ぼしまする影響との相互関係を十分に数字的に把握することが前提要件となつておるわけでありまして、それの鉱山測量制度というものがはつきり確立して初めてそういうようなデータがつかめるわけであります。こういうことを申しますのは、現状のようにまだとにかく目先の鉱害処理に追われておりますときに、そういう根本的の施策を実行するということはいささか段階的に言つて不可能でありますので、そういうような根本的な施策からだんだん上に及んで、最も科学的な予防の措置を考えるというところに参りますには、いま少し現在問題となつておりますものを片づけた後でなければ実施できないのじやないか、こういうような意味で申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/16
-
017・山手滿男
○山手委員 私はその点に非常な疑問を持つております。と申しますのは北九州のごときあるいは小野田方面のごとき人口の密集地帯で地下を掘つて作業をする場合は非常に便利です。炭鉱業者は掘ればすぐ右から左に貨車にも積める、トラツクにも積めるというようなことで非常な便宜を得ておる。ところが金属鉱山のように密集地帯ではほとんど採掘ができない、山の中へ入つて行つて、そしてその鉱山を開発するのには道路もつけなければならない、鉄道もつけなければならぬ、そうやつて入つて行つて初めてこの仕事ができる。たいへんな手数をかけてようやく開発に着手しておる、たいへんな資本投下をやつておる。ところが北九州のごとく右から左へ運搬できるような汽車も入つて来ているところで、人口の密集しておる非常に開けたところで仕事をおやりになつておる方が、掘つたら掘りつぱなしというような考え方で仕事をやつてもらうことはどうかと思う。ほかの鉱業とつり合いがとれておりません。だからやはり予防措置としては掘つたらあと穴を埋めて置くくらいのことをしたつてあたりまえのことで、山の中へ何十里も入つて行くところまで鉄道をつけて開発をすることを思えば何でもないことなのだ。それを今の局長のお考えのように、きわめて手ぬるい監督といいますが、手ぬるいお考えではこれから鉱害はますます累積をして行くと私は考えます。さらに大きな問題を起すと思う。その予防措置が先行しなければいけないと私は思うのであります。金属鉱山などと、炭鉱業者が北九州のような密集地帯で予防に払つている努力との比較をどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/17
-
018・中島征帆
○中島政府委員 先ほど申し上げました通り、たとえば最も機械的な充填をいたしましても、採掘に基く陥落は避け得られない性質のものでありまして、従つて完全な予防ということは現在の技術では不可能なのであります。それを最小限度にとどめるためにどういうことをすればいいかということは、その場合々々に応じまして、たとえば炭層の深さでありますとか、あるいは上の地層の状態でありますとか、あるいはまた地表にありますいろいろな物件性質というものを考えまして、その場合に充填がいいか、あるいはそのほかの方法がよろしいかということを決定すべき性質のものであつて、結局におきましてはその判断をどういうふうにするかということの基準をはつきりさせるということがまず先決問題であります。すべて充愼をしたならば一般鉱害というものは防げるというふうには参らないのでありまして、場合によつては全部一律に沈下させることで鉱害そのものの発生を最小限に食いとめるということもあり得るわけでありまして、そういうふうになる場合にどういう方法をとつたらいいかということをいま少し技術的に十分研究する余地が日本では相当残されている。外国にはいろいろなデータもございますけれども、こういうふうな性質のものにつきましては、やはり日本は日本でその数字をつかまえなければ実地に応用できないものでありますので、そういう点につきまして一層研究を積まなければ、理想的なあるいは合理的な対策は立てられない、こういうふうな性質のものであります。但し現在あります保安法規によりまして、少しでも緩和できる程度のものは、この法規を運用いたしまして予防措置を講じさせることが必要であります。しかし今後十分保安監督関係から監督させまして、できるだけ予防措置は実施させるつもりでおりますが、ただその場合に起きました鉱害に対しまして、鉱業権者としてはこれを放置するということは当然に鉱業法から申しましても許されないわけであります。従つて予想し得なかつた鉱害につきましては、これは当然に賠償するというのがはつきりした原則として鉱業法にうたわれておりますから、鉱業権着が鉱害に対して全然放任的な態度をとることは許されないわけであります。たまたま金属鉱山のごとき山の中で稼行される場合には、出て来ます鉱害そのものが比較的小さく、また放任しても大した影響がないというものが多いわけでありますけれども、石炭の場合のごとく、田畑で承りますとかあるいは都会地の下といつたような所を掘る場合が多いときにおきましては、出て来る鉱害が非常に多いので、結果として、予防は相当いたしましても、ある程度の鉱害は避けられない。出て来た鉱害につきましては、鉱業法上の規則によつて賠償させるということは当然であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/18
-
019・山手滿男
○山手委員 炭政局長は、いわゆる炭鉱業者を保護するような立場にお立ちになつて、炭鉱業を育成するというお考えで、いろいろお苦しい点はあろうと思います。しかしこういう法案を出された場合には、今の御答弁では、この法律をただうのみにすることはできないような気がするのであります。この予防措置については、今のような細答弁では私どもはとうてい満足するわけには行きません。
次に鉱業権者が年々この鉱害の関係で実際に負担をしておる金額はどのくらいであるか。あるいはその数字が出ておれば、資料を今いただきたいと思います。説明してください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/19
-
020・中島征帆
○中島政府委員 昭和二十五年度の調べでありますが、二十五年度に支払いました賠償費の総額は九億四千七百万円、これをトン当りに直しますと、平均で四十三円七十二銭、従つてこれが生産費に対しまして約一・五%ということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/20
-
021・山手滿男
○山手委員 相当な額を負担しておることになりますが、この鉱害の問題は、業者としても起きてからこんな金を払うのは死金を使うことです。技術的に少くすることもできるようですし、また少くしなければならないのでありますけれども、実際には、現在どういうふうな努力が業者の方から払われておるのか。そうしてまたこの年々四億くらいの鉱害がふえて行くというようなお話でありましたけれども、これと今の数字との開きはどういうふうな関係になりますか。それを御説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/21
-
022・中島征帆
○中島政府委員 ただいまの九億というのは、相当これは過去において累積いたしておりますので、過去の鉱害に対する賠償費もここで重なつております関係で九億ということになるのであります。もしも毎年年間平均四億ずつの鉱害ができて、それを毎年きちんとそれだけの賠償をすれば大体四億でずつと行く、こういう結果になろうかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/22
-
023・山手滿男
○山手委員 きようはこれで終りまりす。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/23
-
024・中村幸八
○中村委員長代理 次は今澄勇君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/24
-
025・今澄勇
○今澄委員 私は、政府がこの鉱害に関する法律案を提出したその努力に対しては、大きく多とするものであります。きようはこれに関する総括質問ということでありますので、私は要点だけをお聞きをいたします。
まず第一番に、この臨時鉱害復旧に関する法律を出さなければならなかつたということは、現行鉱業法との賠償規定との関係で出さなければならなかつたのか。現在の鉱業法を改正しなければならないのであるけれども、それは急には困難であるから、この法律を出したのか。鉱業法における金銭賠償の考え方をある程度規定しなければならぬのかどうか。この法律と鉱業法との問題について、簡単明確にお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/25
-
026・中島征帆
○中島政府委員 現行の鉱業法の原則は、この法律によつてかえておりません。復旧することになつておりますけれども、復旧費の出し方は、金銭賠償の原則に基く基準によつてその最高のものを出し、それに国家の補助金を合せて復旧するという考え方をとつております。従つて鉱業法の金銭賠償原則をこの法律でもつてきめるということは考えておらないのであります。ただその点につきまして、将来あくまでも金銭賠償の原則を固執するかどうかということにつきましては、今後この法律の施行期限の到来前後におきましてさらに再検討すべき性質のものだとは考えておりますけれども、現在のところ鉱業法は鉱業法としての原則をそのまま置きまして、その上にこの法律をつくつた、こういうふうに御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/26
-
027・今澄勇
○今澄委員 石炭産業が国家の重点産業であるという意味においては、鉱業法の一般原則から、また特別な考え方の上に立つということも私は重要であろうと思うのであります。
第二点としては、戦時中の強行採炭に基く特別鉱害を除く一般鉱害の現状は、先ほどの御説明によると、大体二百三十億と言われておりますが、かように大きな鉱害が今日まで累積しているというとの原因についてどう思われるかという点であります。先ほどの山手君の質問に対するお答えを聞いてみますと、現行鉱業法だけでこれらの鉱害に関する法律がなくなつたあとの鉱害の復旧は不可能であると私は思う。今日これだけ厖大な、特に石炭産業において被害が出ているということの原因について何であるかということがあなたの方でおわかりになれば、明確にひとつお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/27
-
028・中島征帆
○中島政府委員 この累積している鉱害の原因は、事前に鉱害の実情調査をいたしておりませんので明確なことはわからないのでありますが、私どもはこのように推定しております。戦時中及び戦争後におきまして石炭の統制が非常に強くとられておりました。その結果値段もかなり低く押えられておりまして、石炭業者の採算は、最近の一、二年を除きましては、過去相当長い期間にわたつてかなり苦しい状況に押えられておつた。それからまたそういう意味におきまして年々生じて来る鉱害を十分処理できなかつたという点も一つあります。それからいま一つは、特に戦時中におきましては、増産に追われて特別鉱害と同様にあとの処理というものが十分顧慮されずして出炭に励まなければならなかつたという点が鉱害をふやした一つの原因であります。そういう関係から累積いたしておりますが、現在の鉱業法上から申しますと、この累積いたしております二百三十億という数字は、必ずしもすべて何らか特別な理由によるものだというふうにはすぐに考えられない点がございます。それはどういう点かと申しますと、鉱業法上は鉱害が出て来ましても原状回復する義務はないわけであります。従つてそれに対する費用を賠償するということによつて、一応鉱業権者としての責務は済むわけであります。それが農地の場合でありましたら、年々減収額を賠償することになりますし、また家屋、公共施設というものに対しましては、その価格あるいは復旧費というものに相当する金額を賠償費として支払うことによつて、鉱業権者としてはすべて責任を果しているわけであります。ところがその賠償金を受けた方といたしましては、それを用いまして復旧したかどうかということはまた別問題でありまして、従つて現在あります二百三十億のもの全部が鉱業権者が復旧しなければならぬものをそのまま放置しておるために累積したものだというふうに考える必要はないのでありまして、被害者の方といたしましても一応補償金をもらい、あるいは年々賠償金をもらつておるというふうに、一応法律的には片づけられておりながら、しかも形の上ではなお鉱害として残つておるというふうな性質のものを全部ひつくるめまして原状回復をした場合の経費はどうなるかという計算をしたのが二百三十億であります。しかもこの二百二十億の中には鉱業権者がこれは自分らの責任に基く鉱害であるというふうにはつきり認めたものが百五十億近くございまして、それ以外の残りの部分につきましては、鉱業権者は鉱害でないというふうに言つておりますが、市町村の被害者の立場から鉱害であるというふうな主張をいたしまして、出て来た問題に対してそれがいずれに属するかということは実際の調査をしなければわかりませんけれども、やはり相当部分は鉱害でないものもその中に入つておるはずであります。従つて二百三十億全部が鉱業権者の責任に基く鉱害であるというふうに簡単には断ずることができないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/28
-
029・今澄勇
○今澄委員 今のお話によりますと、鉱業法に基く賠償規定では、現在ある鉱害並びに今後の鉱害についてもこれを復旧することは不可能であるということになつたと思いますが、私はこの点について、石炭に関する鉱害と鉱業法というものについては大きく考えなければならぬ問題があると思いますが、これは讓るとしましよう。
そこでその金銭賠償の基準でありますが、金銭賠償はどのようにきめておるのか、実例をあげて簡単に御説明願いたい。なお九州、山口地区以外の鉱害の現状というものは、そのスケールが小さい、あるいはその深刻さにおいて、今回本法案の対象になる地区とは全然問題にならぬという御見解なのか。その比較についても簡単に御説明を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/29
-
030・中島征帆
○中島政府委員 金銭賠償の基準というものは通産局長がきめることになつておりますが、実際の慣行としては農地につきましては減収額を基準とし、その農地から従来上つておつた収益というものを勘案してきめるということになつております。その他の家屋等につきましては大体その家屋の価値の減少額を賠償します場合、あるいはそれの修理費を賠償します場合、場合によつていろいろございますが、大体そういうふうなつかみ方をしております。それから道路とか橋梁とか公共施設については、公共施設の復旧費の中で、鉱業権者の責任に属すべきもの、つまり道路がある程度こわれた場合、そのこわれた部分の何割が鉱業権者の地下採掘に基くものであるかどうかを判定して、その部分を工事原因者負担として鉱業権者が負担しております。
それからもう一つ、九州と宇部との鉱害が、現在考えられておる鉱害のほとんど大部分でありまして、しかも九州の鉱害というものが全体の九割五分くらいを占めております。九州、宇部以外の地区におきましては、これは詳細な調査をいたしておりませんのでよくわかりませんけれども、岐阜県の亜炭地区にかなりの鉱害があるということは申出がございます。一応の資料もございますが、その数字が明確でありませんのは、特に亜炭の現在ある鉱害が、戦時中ないしはその直後の鉱害に基くものでありまして、現在におきましてはその鉱害を惹起した鉱業権者がもうすでに消滅してしまつてわからないというものが大部分であります。従つて町村から出しております鉱害額と、現在あります亜炭の鉱業権者から出しておる鉱害額との開きが非常に大きくて、問題にならぬほど違つておりますが、全体の市町村から出しております金額は約二億であります。それに対しまして鉱業権者の方で出しておりますのが五百万円程度でありまして、それだけの開きがございます。従つてこれを実際に調査いたしましたならば五千万円になるか一億になるかということでありますが、いずれにいたしましてもその程度のものであれば、二百三十億に対しては微々たるもので、ほとんどとるに足らぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/30
-
031・今澄勇
○今澄委員 その点の比較はよくわかりました。そこで私は九州及び山口地区の鉱害の実情は、先般の公聴会における関係者の公述においても、なお私もしばしば現場を視察しておるけれども、これが悲惨をきわめておるということは皆さんの御承知の通りであります。ただいま政府側の答弁によつても、この悲惨な鉱害を生み出した原因はいろいろありましようけれども、その最も重要な原因の一つは、あの地域だけに特別な要素があるのではないか、すなわちあの付近の地質が鉱害の起りやすい原因を内包しておるのではないか。もしそうでないとするならば、九州、山口方面にだけあのような悲惨な鉱害が出ておるということは、監督官庁の怠慢か、鉱業権者の不誠意か何らかによるものでなければならぬと思うが、これらの点について御見解を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/31
-
032・中島征帆
○中島政府委員 特に鉱害が九州、山口地区に多いということは、結局掘られておる地域が人家ないしは田畑の下である場合が多いということに基くのでありまして、それ以外のたとえば常磐とか北海道は、主として山林あるいは原野の下を掘つておる部分が多いわけであります。そのために現在は若干は出ておりますけれども、ほとんどとるに足らぬ程度でありまして、現在鉱害の調査をするところまで行つておりません。しかしこの点につきましても、将来日本の人口が増加しました産業がだんだん発達しまして、北海道の山奥まで人家が建ち、また田畑が開拓されるようになりますと、当然この地区にも鉱害が起きる。特に地質の関係で九州について鉱害が多く、その他の地区に少いということはないのでありまして、むしろどちらかといえば家の関係と水田の関係が一番鉱害を受けやすい性質のものでありまして、その点から九州、宇部が非常に大きな鉱害を受けておるということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/32
-
033・今澄勇
○今澄委員 これは仮定の上に立つ質問でありますが、現在の鉱業法の賠償規定を改正して現状回復主義に直したといたしますと、現行鉱業法の負担と比較して鉱業権者の負担はどのようにかわつて来るかということを私はこの法案に対する一つの大きな審議の材料にしたい。そこで出炭一トン当りについて、ベースとしてはどうなるか。あるいはもし原状回復主義にかわつたとすれば、総額としてどの程度の負担が鉱業権者の方にかかつて来るのかということを概略数字で御説明願えれば仕合せであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/33
-
034・中島征帆
○中島政府委員 原状回復主義をとつた場合に特にかわつて来ます点は、現在の法律を考えてみます際に、われわれの検討した結果によりますと、主としてこれは農地関係であります。それ以外のものにつきましては、公共施設については復旧費が金銭賠償の限度であるということになつておりまして、原状回復主義をとりましても、また金銭賠償主義をとりましても全然違わないことになります。それ以外の私有物件、家屋、墓地等につきましては、若干の原状回復主義をとる場合と、そうでない場合との違いは出て来ると思いますが、しかしこの場合にはその物件の鉱害による価値の減少というものと、それの復旧費というものとどちらが大きいかという程度の差でありまして、被害者としては原状回復をするということと価値減少部分を賠償してもらうということと、これは理論的には両方一致するということにならなければならぬ性質のものでありますので、全体にこの数字を概数的にとりますと大して違いはないのではないかという気がいたします。しかしその点は、なお検討しなければ確実なことは申し上げられません。ことに農地に関しましては、明瞭にその点の違いが出て参るのでありまして、先ほど申しましたように、農地の復旧費が四十七億程度、それに対する鉱業権者の金銭賠償主義に基く納付金の限度が、大体十八億というものになつて、差額が約三十億、これだけのものにつきましては、原状回復主義をとる場合については、鉱業権者の負担が増す、こういうことになります。それからさらにこれ以上、ここに取上げられております復旧費は、復旧に適するものだけをあげておりまして、従つて復旧しないものはこの中には考えられておりません。つまり農地関係で、復旧費総額百三億という数字が一応なまで出ておりますけれども、それらを全部復旧いたしますと、それに対する鉱業権者の納付金——納付金と申しますか、金銭賠償限度がどの程度になるか、これは推算いたしておりませんが、大体三十億ないし四十億になるかと思つております。従つて五十億内外というものの全部を復旧いたしました場合において、鉱業権者の負担がふえる。これは現在あるものの全体でありますから、かりに十年間にやるとすれば十分の一ということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/34
-
035・今澄勇
○今澄委員 概略わかりました。
次に提案理由について読んでみると、こういう部分があります。「国及び地方公共団体が補助金を支出いたしますのは、累積した鉱害の復旧が、国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定をはかる見地から必要であり、かつ、賠償義務者がすでに限度一ぱいの負担をしているという認識のもとに、不足分を補いつつ」云々、こういう文句があります。この提案理由から受取れることは、鉱害は年々累積しつつあるということ。それからこの法案では国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定をはかるということを目的としておること。賠償義務者の負担がすでに限度一ぱいであるということを認識しておること。それから復旧の不足分を国及び地方公共団体が補助金を支出して補うということをはつきりきめておる。こういう以上の提案理由の説明の分析の上に立つて私がお伺いしたいのは、賠償義務者の負担が限度一ぱいであることを認識しておるということは、現在の鉱業権者の能力をもつてしては、もはや現在の鉱業法で行つておる賠償の負担限度として、最大限度のものである。これ以上負担は無理であるというのか。それとも、その経理状態が無理であつて、実際には全然負担の能力がないというのか。さらにもう一つは、国及び地方公共団体の支出しようとする補助金は、国及び地方公共団体の負担において支出されるかどうか。これらの点について、この提案理由にうたつてある、えらいきれいな文句と比べて、これは矛盾があると私は思うのでありますが、明細な御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/35
-
036・中島征帆
○中島政府委員 提案理由にあります「限度一ぱいの負担をしているという認識」というのは、要するに、この法律では、鉱業権者が限度一ぱいの負担をするという前提に基いてすべてのことを考えておるという趣旨でありまして、従つて現実に個々の炭鉱の鉱害につきまして、限度一ぱいの負担がされておるかどうかということは、別問題であります。それから国及び地方公共団体の負担が、はたして国及び地方公共団体の固有の負担であるかどうかということにつきましては、ちよつと御質問の趣旨が私にはわかりませんが、いずれにいたしましても、国としては公共事業費として支弁される。それから地方団体からはやはりこれに対応する費用として地方団体の負担として出されるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/36
-
037・今澄勇
○今澄委員 どうも御答弁がはつきりしないように思いますが、私はこの法案による復旧計画の構想について、これは詳細な資料を出してもらつて、さらに検討をしなければならぬと思いますが、とりあえず復旧に要する費用の総額、復旧費の調弁方法、国より幾ら、鉱業権者より幾らというような、詳しい材料を私どもは見せてもらわなければならぬ。復旧費の使用、目的別の明細及び事業別に国及び地方公共団体の補助金等の割合、特に復旧のための直接費と復旧に伴う事業団の経費については、そこに資料の持合せがあれば御証明願うし、もしなければ明細な資料を出して、私どもが納得するようにお願いしたい、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/37
-
038・中島征帆
○中島政府委員 詳細は後ほど資料によつて配付いたしますが、復旧費用の総額は、農地関係で四十七億、公共施設に関するものが大体五十億近くになります。従つて全体合せて一応百億くらいのものが予定されております。そのうちで国並びに地方公共団体の補助金として期待しておりますのが、およそ五十三億、この中の地方と国との負担区分は、まだ折衝中でありまして、決定いたしておりません。それから復旧事業費と、復旧事業団の経費の関係でありますが、事業費と、事業団の事務経費とは画然と区別いたしまして経理させる方針でございますが、現在予算をつくりましたところによりますと、大体九州の全体の鉱害復旧につきまして一つの事業団を考えまして、それの一年の事務経費を三千九百万円くらいと見積つております。宇部地区につきましては、鉱害が非常に少い関係で、全体で五百六十万円、これが事務経費であります。これもこの法律上、事務経費があまり膨脹しないように、その限度を押えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/38
-
039・今澄勇
○今澄委員 国及び地方公共団体の負担による分など、今いろいろ数字を聞きましたが、そういうのを聞いて見ると、法案の九十二条に、国は支出した補助金の返還を要求することができる。その理由として、賠償義務者が負担することになつておるが、これでは国が一時立てかえて、ただ早く復旧をやつて、その後でまた、その鉱業権者からこれを支払わせることができるということになれば、結局において国が負担した部分というものは、ごくわずかな部分になると思うがどうか。もう一つ、提案理由にうたわれておる鉱業権者の負担能力が、すでに限度一ぱいに来ておるという認識のもとに、不足分を補いつつというのは、一体何を提案者は認識しておるのか。この不足分を補いつつということは、ごまかしの表現ではないか、鉱業権者の負担が能力一ぱいに来ておるという認識のもとに不足分を補いつつということと、九十二条の国が支出した補助金の返還を要求することができるという二つの問題について、もつとはつきり納得するような御説明を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/39
-
040・中島征帆
○中島政府委員 賠償義務者が限度一ぱいの負担をするということは、鉱業法上の金銭賠償の原則に基いて、その賠償責任の限度まで賠償させるということを言つておるのでありまして、この場合には農地に関しましては、先ほど申しました通りに、実際の減収額を資本に還元したものが、金銭賠償主義に基いて賠償する限度だと、こういうふうに考えております。鉱業権者の賠償能力の限度ということは全然無関係でありまして、理論上賠償すべき限度ということになるのであります。それ以外の公共施設につきましては、たとえば道路をとつてみましても、その道路から上る収益、その道路の価額というものが、全然推定される根拠がありませんので、従つてその道路にどの程度の損害を与えたかということは、その道路を元に直すためにどれだけの費用がいるかということになると思うのであります。従つて道路等の公共施設につきます賠償限度というものは、それの復旧費全体であるというふうに考えざるを得ないのでありまして、従つて公共施設につきましては、その復旧費全額が鉱業権者の負担の責任に属するものであるというふうなりくつになるのであります。ただ、そうでありますけれども、それを全部鉱業権者の負担にゆだねますと、一時に大きな負担をしいることになりますので、一応国は一般の公共事業費補助の原則に基いて補助金を出しまして、いわば金融的な役割をするわけでありますが、これは将来償還をいたさせるというような措置をとつているのであります。従つて前の返還というものは、本来は負担能力の限度一ぱいでなくて、それ以下で済んでおつたために、その残りのものを返すわけであります。ただその場合に、それでは現在各公共事業に対して国が補助をしている場合と、今度のこの法律に基く公共施設の復旧という場合とを比べて、今度の場合が加害者に対して酷ではないかというような感じが持たれるわけでありますけれども、これも鉱業権者が実際に地下採掘をいたしましたために起した損害を復旧するための費用以上には負担する必要はない。従つてかりに道路の復旧費が百万円かかるといたしまして、その百万円の復旧費の中で、地下の採掘をしなかつた場合でありましても、当然道路を使用しておりますうちにある程度の補修はしなければなりませんから、かりに掘らなかつたとして三十万程度の復旧で済んだと考えられる場合には、鉱業権者としては当然に七十万円の負担をすればよろしい。また逆にその工事が全部鉱業権者の行為によつて必要とされた、従つて道路のこわれたものがすべてこの鉱業権者の責任であるというケースを想定いたしました場合に、その道路を直しまして、その結果が鉱害を受ける以前より一層よくなつたということもあるわけであります。そういう場合には当然よくなつた部分については、いわゆる受益者負担的にその道路の管理者が負担するということになりまして、鉱業権者はその分まで負担する義務はないわけであります。従つて実際の場合には実際に出されました公共施設の復旧費の全額が鉱業権者の負担になるというケースは割合に少くて、その一部——一部と申しましても半分以上のことが多いと思いますが、そういうような一部を負担することが大部分であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/40
-
041・今澄勇
○今澄委員 そういう点についてはまだ疑問が多少残つておりますが、時間がありませんので次に進みまして、先般の公聴会において福岡県知事を初め関係者が声を大にして強調し、特に直方市長の涙ぐましい公述があつたのでありますが、本法律案を貫く目的は、民生の安定という大精神でなければなりません。しかるに本法案の直接の対象から、墓地、家屋の復旧を除外しているということはどういう理由に基くものか、対象にはしたかつたが適当な理由を発見できなかつたのか、それとも現行鉱業法を完全に施行すればその必要を認めないというのか、それらの問題についてはつきりした政府の見解を承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/41
-
042・中島征帆
○中島政府委員 実際の民生に与える影響から考えますと、家屋、墓地等の被害をそのまま放置するということはわれわれといたしましてもはなはだ忍びないわけでありますが、現在復旧工事を行つております特別鉱害におきましても、家屋、墓地に対しては全然国庫補助が出されておりません。しかも工事そのものはある程度国が責任を持つべき性質のものであるにもかかわらず、他の農地等については相当多額の補助をしておりながら、家屋、墓地については全然補助が出されておりません。家屋、墓地というものは完全に個人的な関係のものであつて、いわゆる公共という意味においては国ないしは地方公共団体がこれを負担しなければならぬほどの公共性がないというだけの理由から、このようないわば打捨てられた形になつているわけであります。従つて一般鉱害につきましても、特別鉱害以上に家屋、墓地を一層優遇するということは、もちろん一般鉱害の性質上不可能でありましようし、従つてこれに対しまして国の補助ということが、かりに将来返すにしても考えられないということであれば、この法案の直接の対象として復旧事業団が契約の中に入れるということは第一に意味がなくなるわけであります。第二に、そのような家屋、墓地等につきましては、他の公共施設あるいは農地等と違つて、いずれも個々別々にその復旧なりあるいは賠償なりについて片づけるべき性質のものでありまして、非常に個別性が強いわけであります。従つてこれを全体的に復旧契約の中に入れて総合性を持たせるというような点の必要性が弱いために、補助金も出ないものをわざわざ事業団に入れて契約の中に溶け込む必要がないというふうな理由から、一応事業団の事業の対象としなかつたわけであります。ただ問題はむしろこういう点に非常にございますので、これを放任することは被害者に非常に気の毒でありますから、それを若干なりとも救済するために、本来であれば鉱業法上は裁判所に持ち込むよりしかたがなかつた性質のものをもう少し簡易に、費用がかからぬで行けるように、通産局長にこれを申し込みましてその裁定を願い出るという道を開きました。この場合一番大きな効果とては、たとえば従来鉱業権者に家屋の復旧あるいは賠償を申し入れましても、これは自分の方の鉱害ではない、おれの方の炭鉱の事業とは全然無関係だということでつつぱつておりましたものが、第三者として、しかも一番炭鉱の経営に十分な資料を持つております通産局が介入しますと、その鉱害ははたしてどの炭鉱の責任であるかということは明確になるわけでありますから、そこで少くともその鉱害の責任者がはつきりする、そうすればあとはそこに出されました債務を履行するかしないか、こういう関係になりまして、それを民法上の問題にゆだねましても、従来と比べると非常に被害者としての立場が強くなるというように、非常に弱いような規定でありましても、実際面としては期待できるのではないか、こういうことでこのような制度を設けられて来たわけでありまして、私どもとしても私情としては家屋につきましてもある程度の補助を出し、しかも全体的な復旧契約に入れるということが非常に望ましいと思いますが、家屋あるいは墓地という私有物件の性質上、また特別鉱害の先例にかんがみましても、そういうことが非常にむずかしいというところから、やむを得ずこういう措置にいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/42
-
043・今澄勇
○今澄委員 あなたの御答弁はどうも苦しいようであります。現存は鉱業法に従わなければならぬけれども、現行法は不備があつて将来はどうしてもいかぬのだということをやはり明瞭に言うべきである。それから鉱業法を関係者が忠実に守つていなければ、これを守るべきであるという大きな監督の手段を講じて政府はびしびしやつつければよろしい。それで私どもは、この家屋、墓地の問題について、鉱害が金額にしてどの程度であるのか、あとで御説明願いたいのであるが、政府は家屋、墓地の問題は被害者の立場に立つてもう少し親身になつて考えてもらわなければならない。なぜかならば、一昨年五月われわれが提案した決議案で、国庫の負担において鉱害地の原状回復を断行せよということを政府に要求している。本法案では国は一時的に復旧費を補助して後日これを取返すようにしておるけれども、これは大きく言えば国会の決議を無視したものであり、われわれの意思に沿わざるものであるといわなければなりません。提案理由には、賠償義務者には負担能力はないと明言しておきながら、一方においてこのような法律を提案しておるということは矛盾もはなはだしい。政府は国会の決議を尊重せず、この一般墓地、家屋の問題等については国の負担を軽くするとともに、鉱業権者等を利用しておるというふうに考えられてもしかたがないようなこの立法の仕方である。本法案の立法にあたつては、国の権限のみを強化して義務を十分果してないということは、前に述べた国会の決議かちから見ても私は十分政府に反省してもらわなければなりません。
なお家屋、墓地等のいわゆる非公共施設に対して国が補助しないということは、被害者の立場に立つて見るならば、家屋等の悲惨なる被害は憲法第二十九条の財産権の不当なる侵害であるというように考えることは私は妥当であると思う。あなたはこのような財産権の侵害についての被害者の立場、並びに国が負うべき責任の立場、あるいはこの鉱害復旧法案の骨子として十分見てやらなければならぬ民生安定の立場というものからいつて、今の家屋、墓地に対する政府の考えはただいま御説明になつた程度で十分であるのかどうか。もう一ぺん御説明を願うとともに、何らかこの法案の範囲内において修正して直し得るような余地があるのかないのか、予算面にもわたつてもう一ぺん御答弁を煩わしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/43
-
044・中島征帆
○中島政府委員 最初の鉱業法の原則であります金銭賠償を原状回復主義に改めるかどうかという点につきましては、これは将来の問題でありますが、私の個人的な見解といたしましては、現在の累積しております一般鉱害が処理されたあかつきにおきましては、いま一度原状回復主義あるいは金銭賠償原則というものを再検討する必要があると思つております。しかしこれは現在の累積したものが処理されたあとでなければ問題にならぬと思います。少くとも将来におきましては、そういう点につきまして現在の鉱業法上の原則を再検討する必要があると私は信じております。
それから賠償ないしは鉱害の予防等につきまして、鉱業権者がいろいろなことを怠つている場合に、それを一層強制するということは現在の鉱業法上から申しましても、また保安上から申しましても当然のことでありまして、現在当然に義務がありながら賠償金を支払わないというようなものは、鉱業法ないしは民法からいつてそれだけの責務があることは明らかでありますから、訴追をすれば当然この点が明らかになるわけであります。ただこれが個個の被害としてそこまで行き得ないというところに現在の法制上の悩みがあるのでありまして、これはやはり鉱害に限らず、一般の民法上の債権債務の関係につきましても、債権者というものが必ずしもあらゆる場合に自己を主張できないという点が裁判制度上の問題になるのでありますが、そういう欠陥は確かにあると思います。そういう点を若干でも是正いたしますために、今度は通産局長の裁定制度というものを設けたわけでありまして、この点はかなり明るくなるのではないかということを私は確信しているわけであります。
それからかりに鉱業権者が今おつしやいましたような財産権の侵害をいたしまして、しかもこれを放置しているというときには、当然民法上今度の法律による裁定制度がありますが、そういうふうな状態でいつまでも放置する、たとえばこれが裁判上のさたになりまして、負けてもなおかつ賠償金を支払わないという場合も起り得ると思います。またこの法律に基きまして通産局長が原状回復の裁定をいたしましても、そのまま放置して原状回復をしないということも考えられます。かりにそういうふうな悪質な鉱業権者がそういうような行為を続けている場合におきましては、これは現在の鉱業法から申しましても、その鉱業権者の経営の継続ということが一般の公共生活を脅かすという意味におきまして、その鉱業権を取消すことができるという道があるのでありまして、そういうような悪質なものにつきましては、今後はそういうふうな規定を十分運用いたしまして相当厳重に取締りをしなければならぬと思つております。
なお家屋関係の、いわゆる私有地の復旧費の金額でございますが、これも現在調査いたしましたところでは、全体で約五十億、復旧費といたしましては約五十億見積られております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/44
-
045・今澄勇
○今澄委員 この問題については今後法案修正その他の資料として詳細に承つておきたいと思います。時間がないから一応この程度にして次に移りますが、あと同僚の質問がありますから二点だけ伺つておきたいと思います。
一点は復旧事業団であります。鉱害復旧事業団というものは一体それほど必要なのかどうか。この事業団の行う業務は、復旧事業団ではなくて国がやつても当然できるように思うが、なぜこういう復旧事業団というものをつくらなければならないのかという理由をお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/45
-
046・中島征帆
○中島政府委員 この法律によりまして考えられておりますことは、一般鉱害のうちで復旧に適するものをきめまして、それを総合的な見地から復旧する、これがねらいであります。従つてどういう復旧計画を立てるかということは、総合的に国家的に公共的な見地からきめなければならぬ性質のものでありまして、従つてこの計画をつくること自体は、かなり国家的な立場に立つものでなければならぬということが言えると思います。その場合にこれは国自体が取上げてもよろしいということになるわけであります。現にまた特別鉱害に関しましてはそういうふうなやり方をしておるわけであります。ただこの場合、一般鉱害そのものの性質上、これが本来であれば加害者と被害者との間の問題であつて、国がこれに対して直接の責任はない。特別鉱害とはその点が違うというわけでありますので、そういう点から申しまして、事業団という一種の公益的な法人をつくつて、そこでいろいろな計画を立てるというふうに考えたわけであります。その事業団のやります仕事は、ただいま申しましたような復旧計画に対する基本的なものをつくるということ、それからそれに応ずる各鉱業権者の負担すべき、いわゆる納付金、つまり賠償金に相当する納付金がどれだけであるかということを決定するわけであります。それをきめまして、その後はその復旧計画の実行をそれぞれ実施担当機関にゆだねるわけでありまして、その際に復旧計画に載せられました納付金を徴収いたしまして、そこで復旧工事をするまでに相当な金額を計画に基いて支払つてやる、徴収と支払いの義務があるわけであります。これをこの事業団の大きな仕事として考えておるわけでありますが、もし国が全部を引受ける場合は、計画はもちろんでありますが、こういつた費用の徴収支払いというものもやらなければならない。そういう場合には当然に特別会計を設けなければならぬわけでありまして、特別鉱害に対しましてつくられておりますような特別会計を、さらに
一般鉱害につきまして設ける、こういうことにならざるを得ないわけであります。ところがこういうような特別会計をつくるということが、現在の財政の見地からいたしましても望ましくないというほかに、こういう国の機関でもつてすべてのことを処理するということは、能率という点から考えまして、また国の行政事務をできるだけ簡素化するという趣旨からいたしまして、はたして適当であるかどうかということを考慮いたしまして、むしろ復旧事業団の性格そのものは、かなり国家的なものではあるけれども、その出発点においては本来鉱業権者と被害者との関係のものを規正するわけでありますから、むしろ国とは別の法人にこれをゆだねたらよかろう、こういうことで新しいこういう機構をつくつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/46
-
047・今澄勇
○今澄委員 大体以上で私の総括質問の重要な箇所は終りました。なお残つておる問題は、今後新しく起つて来るであろう鉱害に対する恒久的な政府の法制的処置、鉱業法に対する将来の見通し、並びにこれらの被害者に対する民生安定のための政府の一大国家責任を考えた方策等々いろいろ問題がありますが、私はこの辺で打切ります。ただ政府の見解を聞いて思うことは、鉱業法並びにこの炭鉱の鉱害復旧の法律の説明はあまりにも形式的で、何かやらなければならないからやむなくやつたというような印象を受けたことは遺憾であります。この鉱業権の設定の許可は国が行い、石炭採掘のための施業案を国の許可によつてなされるのが現状であり、かたがた鉱業権者で鉱業法に基く賠償を誠実にやつておるとするならば、現在悲惨な被害をこうむつておる被害民は一体だれによつて救つてもらえるのかという、根本の一番重大なところがこの法案の中にはとらえられておらない。たまたま石炭があるために、このような被害をこうむる被害者の立場というものは、実に気の毒である。被害者に不当な被害を負わして、被害者を泣かしても、どうしても石炭は掘らなければならぬということであれば、その泣いておる被害者に対しては、国がその責任においてこれを救つてやるということはあたりまえの立場である。法律上のむずかしいりくつよりも、国の当然の責任の上にこの法律は打立てられなければならぬ。その意味においては、百尺竿頭一歩を進めてはおるけれども、魂がこの法律には入つておらない。そこで、以上いろいろな理由から、被害者が財産権の不当侵害として憲法第二十九条の違反を訴えたときに、あるいは百数十万の人間が暴徒となつて蜂起するというような治安上の大きな問題を起したときには、私は、これは一炭政局の問題ではなくして、国家全体の独立のスタートにあたつての大きな問題であると思う。思想問題、治安問題、その他非常に重大なときに、これらの重大な情勢を勘案して、この法律に魂を入れるべきであると考える。政府はこういうような重大な、憲法第二十九条の違反を被害者が裁判所に提訴し、その結果によつて起る重大な事態を想像せられておるか、炭政局長からそれらの問題に対する最後の御答弁を承ることにして、私は本日の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/47
-
048・中島征帆
○中島政府委員 たいへんむずかしい御質問でありますが、現在の状況で、被害者が非常な不安の中に何か新しい制度を待つておられるということは、私ども十分わかります。いずれは政府において相当な手を打つてもらえるだろうという期待のもとに、今日までしんぼうしておるということを想像いたしておるわけであります。なるほどおつしやるように、この法律がそういう意味におきまして、完全に被害者の御期待に沿うというようには私ども考えておりません。当然そこにはいろいろな関係で不十分な点もございますけれども、しかし少くともこの法律が施行されることによりまして、相当部分の鉱害が復旧されるという見通しはつきますし、またたとえば、ただいまの家屋等につきまして、直接この法律に取上げられない部分につきましても、従来と違つた新しい解決方法がここで開かれることになりますから、従つて従来と比べますと、今後は累積した鉱害の処理ということにつきまして、相当急速に進展するのではないか、こういうふうに思いまして、この法律の効果に相当期待しておるわけであります。従つてただいまのお話のように、この法律が不十分であるために非常な事態が生ずるということは、ちよつと想像できないのであります。今後もしもこういうふうな鉱害がどんどん累積するようなことになれば、そういうことも非常に心配でありますけれども、現在のものをできるだけ早く片づけるという方向に進んでおりますから、従つてそういうような意味におきます不安は非常に軽減するのではないか、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/48
-
049・中村幸八
○中村委員長代理 田代文久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/49
-
050・田代文久
○田代委員 同僚委員によりましてこの法案のポイントは質問されまして、了解したのですが、こぼれを二、三質問したいと思います。現在の政府答弁では、鉱害の増加進展度現象というようなものに対して非常に楽観されておるようであります。ところがわれわれとしましては、また被害者の現地における実情としましては、決して楽観できるものではないというふうに考えるわけなんで、なお言いますと、累積しておる鉱害をこういう法律によつて片づけると、その後は大体鉱害もこんなに累積することもないし、また実際における鉱害の増加もほとんどなくなつてしまうという印象を受けるのですが、事実それについて政府は確信を持つておられるか、こういう法案が通過した後において、鉱害の起る度合い、増加というものに対して、楽観できるものかどうかという点をまず御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/50
-
051・中島征帆
○中島政府委員 この法律の施行によりまして復旧される鉱害は、先ほど申しましたように、二百三十億という一応の全体の数字のうちで、百億か百二十億見当であります。従つてその残りのものは依然として、この法律が予期通りの効果を収めて、期限に解消いたしましても、なお残るということになつております。残るものは復旧にどうしても適しないもの、それは復旧費があまりにかかり過ぎるものと、なお今後もどんどん沈下して行く、再陥落するおそれがあるもの、そういう場合はいたしませんから、そういうものが残るわけであります。この法律の施行期限である十年間経過した後に安定するような鉱害は、そのときには復旧に適するということになりまして、従つて復旧に適するものが、この法律が効果を収めたあとに残るということも理論的には考えられるわけでありますけれども、その場合には、その時期におきましてなお法律を再検討いたしまして、必要があれば、その残りのものをまたできるだけ拾い上げて行く、こういうことも考えられるわけであります。そういう現在累積しているものの中で除かれるものを別といたしまして、それでは新しく出て来る鉱害が減るか減らないかということでございますが、新しく出て来るものは、これは将来の問題でありますけれども、現在の累積しているものが片づけば、それだけ国としてもまた鉱業権者としても経理的にかなり負担が軽減されますので、先ほどの予防措置につきましても十分の措置が講じられる。こういう点でかなり緩和される部分が出て来ます。それから毎年予防措置はいたしましても、どうしても鉱害はある程度出て来るわけでありますが、それを処理することが比較的円滑に行く。従つて年々累積するということはなくして、ある程度のものは——これは二年分かあるいは五年分か知りませんが、その程度のものならば累積しますが、それが将来はフラツトに行く。こういうように行くのが理想でありまして、現在累積しておりますものが片づけられましたあかつきにおきましては、必ずそういうふうに行くべきものだと私は確信いたしております。これは国の施策と炭鉱地帯の産業その他の状況等によつて非常に違いますけれども、少くとも石炭の生産費に対しまして一・五%程度の鉱害賠償費を負担するということは、ドイツを除きましては世界で最高の負担率でありまして、従つてもし現在のような場合——最近におきましては、石炭の経営が非常に改善されておりますから別でありますけれども、少くとも一年前までは相当に困難な経営をしながら、なおかつこの程度の鉱害賠償費を負担しておつた。こういうことから、将来やはり一五%程度は炭鉱としては負担できるというふうに考えますならば、一応この累積している鉱害が片づきます限りは、そのあと出て来ます鉱害の金額は、外国の例に徹しましても、それほどやたらに大きなものではない。一・五%程度の賠償費によつて当然除去さるべき性質のものではないか、こういうふうに想像するわけであります。従つて現在累積している鉱害の負担というものがなくなると、今ぐらいの負担を鉱業権者が確保している限りは、将来出て来る鉱害は次々と順調に片づけられる、こういうふうに類推できるわけでありまして、従つて現在累積しておりますものを対象にしているこの法律が十分な効果を上げました後におきましては、必ず鉱害の賠償ということは順調に行き、そこに鉱害がますますふえることは決してないということを言い切れるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/51
-
052・田代文久
○田代委員 政府当局は非常に楽観されているし、ものの考え方が具体的でない。たとえば今度の鉱害がこんなにふえたのは、一般鉱害もそうでございますが、現在一般鉱害と言われている中にも戦時中の濫掘、つまり特別鉱害に入りました部分が非常に加重されて来ていることは明らかである。それとの関連において鉱害自身も倍加しているという結果になつているので、今のようなお話になると、戦争という非常事態というものは全然考慮されておらない。また実際その可能性はある。現在の日米経済協力という線から見ましても、現在政府がとりつつある石炭政策というものは相当苛酷に出炭させるというような形がとにかく出ている。鉱害の問題におきましても、ただいまそれが累積するようには考えられないと確信を持つておつしやいますけれども、これは私先日の公聴会におきまして大学教授に、専門家として公平に見て現在の採掘方法なり、それに対する充填というものが大体安定するような形でやられているか、これに対して住民は安心できるかどうかという点を聞きたいと思つたのですが、早く帰つてしまつたので聞けなかつたのです。それで政府当局に専門家として聞きたいのですが、実際においては、たとえば筑豊炭田においては大手筋では御承知のようにカツペ採炭というものがどんどん今入りつつあります。カツペ採炭方式は今までよりは充填をやらずにどんどん掘つておる。実際坑内問題としましては、非常に陥落する危険がふえつつある。むしろ今後そういう鉱害は今までの程度より以上にふえるだろうと懸念するので、従つて私は政府とは逆な見通しを持つわけなんですが、その点に対する考え方はどうですか。また実際にはカツペ採炭というような採炭方式は鉱害を起す率は低いか高いかということについて、政府当局の見解を伺いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/52
-
053・中島征帆
○中島政府委員 戦時中の濫掘によりまして鉱害がふえたということは事実であります。将来ももし戦時状態になりまして、さらに石炭の生産増強が要請された場合には、これはやはり前と同じ状況になることは一応考えなければならぬことと思います。しかしそういう非常事態的なことは、実は私どもは考えておりませんので、その場合にはまた全体の比重もかわつて来ましようし、また前途にそういうことを予測する必要もございませんから、大体現状のものを基礎として考えた場合には鉱害が減少するというように考えております。
それからなお先ほどちよつとお話がございましたが、現在もなお石炭の増産ということについて相当強制的、あるいは無理な要求をしているというお考えのようでございますけれども、その点につきましては、特に二十七年度については石炭の需給見通しをとりましても、また需給関係の現実の姿を見ましても、決して石炭を無理やりに増産するという必要は目下のところないのでありまして、その点は無理のないような生産をさせております。従つて現在のところ少くとも強行採炭をするために鉱害がふえるというような実情は、全然ないということは、これは言つてさしつかえないと思います。
なお鉱害防止のための措置でありますが、これは先刻来申しましたように、いかに防止策をとりましても、必ず鉱害はある程度出ることは否定できないのでありまして、少くとも掘つた厚さの半分だけは落ちる。これはもういかなる方法をとりましても避けられない。充填ということはあまりに重要視すると、これは間違いでありまして、特にこの充愼方法がとられておりますのは外国でも最近のことであります。それはなぜかと申しますと、充填方法そのものの技術が最近どんどん進歩して、現在の段階にまで来たのは、ごく近年のことであります。従つて充愼をするということは、鉱害防止という見地から充填をするよりも、むしろ採掘方法の一つとして充填をした方が、あとの採掘を進める上において作業をやりやすい、あるいは経費が安くて済む、こういうふうな見地から充愼をするということが多く行われておりまして、特に鉱害防止のために充填をする場合には、充填をするための費用と、それから充愼をしなかつたために上に起きると予想せられる鉱害の費用というものを比較考量いたしまして、相当費用をかけても、やはり充填をした方が後に賠償するよりも安く済む場合には充填をする。逆の場合は充填をしないで、地表の損害に対しまして賠償するなり、原状回復をする、こういうふうな判断をいたしております。従つて外国におきましてもすべて充愼が第一主義で行われておるのではなくて、特にこの点について充填が割合に普及しておるドイツにおいても今のような考慮がなされておるのでありまして、イギリスにおいては充填はきわめて例外的にしか行われていないのであります。日本においても従来のように手積みである程度充填をするということは部分的に行われておりますが、これもただ採掘の技術の上から行つておるのでありまして、鉱害ということとは無関係にやつております。それによつてはたして鉱害が防げるかどうかといえば、必ずしも全部防げるわけではありませんので、その点からも来ておるわけであります。特に機械充填、空気充愼というようなものは戦後日本に入つた技術でありまして、その効果はどの程度のものであるか、採炭技術上それがどれだけの効果を上げるか、また鉱害の防止上これがどの程度重要であるかということにつきましては、まだ十分な検討の結果が出ておらないように私は承知しております。従つてこの充填のやり方につきまして、特に鉱害防止の見地からやらせるにいたしましても、その方法あるいは適用の場所等十分検討いたしまして、効果のある場合にこれをやらせることが必要でありまして、その点についてはまだ研究の段階にあると言わざるを得ないのであります。
それからカツペ採炭等によります採掘方法の変化に基いて鉱害がどうなるかという点でありますが、これはいろいろの場合によつて違いますけれども、かりにある一定の面積の石炭を一挙に全部採炭してしまうということを考えました場合に、その炭層が水平であれば、上の地表は一律にその炭層の厚さだけ沈下はいたしますけれども、でこぼこあるいは傾斜、緊縮、伸長といつたような影響は全然なしに、ただ一齊に低くなるということだけで、水平線の問題はありますけれども、その点を別にすれば、鉱害は全然ないということに極端な例としてはなるわけであります。それを程度的に考えますれば、かりにその掘進の速度が非常に早くなると鉱害の程度が割合に少くて済むということは、すでに一般に認められております。そういう意味におきまして機械化あるいはカツペというような採炭方法の改善によりまして、掘進の速度が早くなればなるほど沈下はいたしましても、上の物件のこうむる鉱害の程度というものは比較的に少くて済むということになると思います。これはまた場合によつては早いために非常に大きな鉱害が起きることもありますけれども、一般的にはそういうことが言えると思います。従つてカツペ採炭法を採用したために鉱害がふえるということは、そういう見地からはむしろ逆であると思います。カツペの場合にはどんどん進みますから、その払い跡のやり方を十分慎重にしない場合には、そうでない場合に比べて大きな鉱害が起きるということもあり得るわけでありますが、カツペ自体について考えまして、そのカツペを採用したために鉱害がふえるということは考える必要がないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/53
-
054・田代文久
○田代委員 私はただいまの政府当局の説明を聞いて実に言語道断の気持がしたのであります。と申しますのは、つまり石炭を掘れば土地が陥落するのは必然だというような端的な表現のように聞きましたが、それでは実際その上に多くの土地を持つておる農民の諸君とか、あるいは住宅を持つておる市民の諸君とか、こうした人たちは自分らには何らの利益を得ない。にもかかわらず下からごそごそやられて全部その被害を受ける。ところが石炭を掘ればとにかく被害が起るといつたような形で、何だかただいまの御説明によりますと、鉱害野放しというような印象を受けるのでありますが、それに対してそういう被害を受ける住民の問題から考えてみると、どうしてこれを防止しなければならないかという点がはつきりつかまれずして、これに対する被害補償また民生安定ということが考えられるかどうか、私はこの法案自身、また今まで出ました鉱業法にしましても、特別鉱害臨時措置法にしましても非常に不十分である。なぜ不十分であるかという根本は、私は政府自身の考え方だと思う。そういうところから来ておるのではないかと思うのです。大体政府自身としても、鉱害に対しては野放し野放しで、これはしようがない、掘れば落ちるさ、こういう考えを持つておられるのか。落ちたらその場合に、文句を言つて来たら、それに対してちよつぴり何とかしてやるのだという考えを持つておられるのか、それとも鉱害が起らないようにこういう具体的な努力をするのだ、またそれによつてこれくらいの基準をつくるのだ、また業者がむちやな掘り方をすれば、断固として、それを中止させるのだ、そういう考えを持つておられるのかどうか。その点をはつきりさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/54
-
055・中島征帆
○中島政府委員 地下を採掘いたしますと、必ず陥落するということを申し上げましたのは、これは物理的なそういう因果関係を申し上げたわけでありまして、いかに手を加えましても、絶対に陥落を防止することは不可能であるということを申し上げたわけであります。但しそういうふうな性質のものでありますから、それでは鉱害を防止するためにどうすればよろしいか。最小限度にこれを食いとめるために採掘方法をできるだけ改善することは一つの方法でありますけれども、これはもちろん全部ではない。その次に考えられますのは、起きた鉱害に対して、これをどういうふうに賠償し、あるいは原状回復するか、それが今日われわれのねらつておる一般鉱害に対する法律案の内容であります。
それからさらにもう一歩進めて考えました場合には、かりに上にあります物件、あるいは予想被害者というものの性質が非常に重要なものでありまして、下を掘る石炭の価値というものと、それからそれによつて生ずる地上の物件の被害というものを比べて、あまりにも上の被害の大きい場合には、むしろその石炭をそのまま放置すべきだということが当然言えるわけであります。現在ではむしろ一般的にいつて石炭の方が大事だからということで掘りまして、その結果起きた上の損害に対して賠償するという方法をとつておりますけれども、現在の保安法規からいいましても、特定の場所については採掘禁止区域を設けることもできるようになつておりますから、場合によつてはその上の、地方の必要な物件を十分検討いたしまして、また下の炭層の状況を十分研究の上で、下の石炭を残しても上の物件を保護する必要がある場合には、採掘を禁止するということは当然できるわけであります。これは現在までそれほどよけい行われておりませんけれども、将来この採掘方法とそれから鉱害との関係の技術的な研究が十分進みましたならば、いかなる方法を用いましても、これの与える最小限度の被害すら地上の者が耐えられないという場合には、当然その地区の採掘を放棄させるというふうに進む必要がある。そういう点を考えましても、やはりもう少し科学的に採掘技術と、それによつて生ずる鉱害の関係を明らかにする必要がある。そういう意味において、国としても、また鉱業権者としても一層そういう点について科学的な努力を傾倒しなければならぬと思つておりますが、それについても、ともかくも現在目の前にあります累積石炭鉱害というものが非常に障害をなしておるので、それをとにかく片づけて、その上で——できればもちろん並行してやりたいわけでございますが、今のような点から根本的に鉱害に対する対策を立てたいというふうに考えておるわけでありまして、これを放置するということをもちろん考えておるわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/55
-
056・田代文久
○田代委員 依然として不安は解消しないわけなのですが、そうしますとこの鉱害をできるだけ食いとめる策として、一般的な、抽象的な文句で申し上げますと、できるだけ鉱害が起らないような採掘方法でやる、こういうような御説明でありますが、そうすると具体的に、できるだけ最小限度に陥落が起るような形で掘られつつあるという採炭方式はどういう方式でありますか。私は筑豊その他の事情から申しまして、そういうふうなことが現実には考慮されてやられておるようには考えられないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/56
-
057・中島征帆
○中島政府委員 現在までのところ、そういうような措置を考えて採掘がされているとは必ずしも申されません。陥落を最小限度に食いとめるような採掘の方法をとつておるという例は、非常に少いかと思つております。ただ将来は採掘とそれから地表の影響というものの因果関係が科学的にはつきりいたしましたならば、こういう掘り方をすれば必ずこういうふうな影響が上に起るから、それをこういうふうな方法で防止しろというようなことが当然監督官庁としても示唆できるわけであります。そういうふうなことが十分に研究されたあかつきにおいては、政府としても鉱業権者にそういうふうに計画を変更するなり何なり持つて行くことができると思いますけれども、現在のところは、一応鉱業権者が考えまして最も適当であるという採掘方法をとつております。従つてその場合には地上に起る損害というものは、とにかく起つたときに賠償をするという前提のもとに、それを最小限度ならしめるためにどうすればよろしいかという考慮を現在払つておるということは、これはおそらく全体的に行つてないのが事実ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/57
-
058・田代文久
○田代委員 ただいまの説明によりましても、結論として端的に申しますと現実にはそうやつていないし、結局被害者は全面的にこれを背負つて行くのだ、鉱害というものは当然起るのだということになつております。そうしますと、もしそれがそこまではつきりしておるならば、出て来る法案というものはその被害者をいかにして救うか、いかにその迷惑に対して賠償するかという点がこの法律の根本眼目であり、またそれが九九%まで私は中心にならなければならないと思う。従つておそらく政府もそう考えておられましよう。そこでこの法律の目的としましても、応この法律には「国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定を図り」とあつて、民生の安定ということをまず第一番に強調してある。「あわせて石炭鉱業及び亜炭鉱業の健全な発達に資する」といつて、業者の利益というものは第二段に出ているようでありますけれども、実際においては、むしろこれは逆になつておる。民生安定というものが非常に軽視されておる。これは今澄君の質問によりましても、あるいはまたその他同僚議員の質問によりましても非常に軽視されておる。従つてこの法案の立案の精神というものがひつくり返つている。言葉ではいかに民生安定とか、これは社会問題であるからというようなことを抽象的には言いながら、実際上において非常に軽視されているということを政府、立案者は認められるかどうか、これを私ははつきりしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/58
-
059・中島征帆
○中島政府委員 現状のまま放置すれば鉱害はもう絶対に片づかない、つまり現在の鉱業法の制度では鉱害というものが片づかないということであれば、むしろ鉱業法の鉱害賠償の規定そのものをこの際検討して改正するということが必要になつて来るわけでありますが、一応鉱業法の中で鉱害賠償に関する詳細な規定があり、またそれが完全に実行されている限りは、その範囲内において、鉱害問題が解決されておるということが言えるわけであります。たまたまそのままで放置し得ないという理由には、先ほど来申しますように過去のいろいろな関係からして、目前に相当巨額な鉱害が累積している、それが鉱業法の鉱害賠償の原則を円滑に運用できない一つの障害になつておるのであります。その障害を取除くということをこの法律は目標としておるわけであります。ここで「民生の安定」云々ということを書いておりますのは、そういうふうな累積した鉱害が大体民生の安定を害しておるから、それを取除く。その後におきましても、一応現在の制度としては鉱業法に基く賠償原則によつて片づけて行く。また鉱業法を審議されたときには、あの鉱業法の中に盛られております鉱害賠償の原則によつて大体鉱害問題は片づけられる、こういう見通しのもとにこの法律が制定されていると思います。従つてこの法律の直接のねらいは、現在の目前のできたものを片づけるということでありまして、それが片づけばあとはやはり鉱業法でもつて円滑に行き得るという見通しを立てております。従つて民生の安定と申しましても、現在累積しておりますものが民生の安定に害をなしているから、これをできるだけ取除くということを考えているわけではないのでありまして、これが除かれたあとにおきましては、現在の鉱業法の円滑な施行によつて民生の安定は確保される。一応こういう制度上の建前になつておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/59
-
060・田代文久
○田代委員 この問題は政府の基本的な見解の把握がはなはだ微弱でありますし、それをはつきりしたので被害者諸君は全部了承されたと思つたら、結局踏んだりけつたり、それに対して治療費をちよつぴり出してやろうかというのがこの法律の精神であるという点がはつきりわかつたわけです。非常に腹が減つて三ばい飯を食わなければ腹はもたないのに、とにかく半ばいばかりおかゆを食わせたら、食わせぬよりはよいじやないか、これが民生の安定だということに今説明されたと思うのであります。食わせぬよりはかゆを半ばいでも食わせた方がよい。そういうことも言えます。しかし少くとも私は政府当局に対して私心なく申し上げたいのですが、被害者の実情と、日本産業の基幹というものをよく考えられましたならば、こういうことでは、社会的な観点からいつて問題は片づかない。だからこの法案に対しても十分修正を加え、あるいはまた今後こういう鉱業法にしましても、こういう点を根本的に片づけなければ責任は果せないという点を、人間的な良心をもつて政府自身がつかんでいただかないと、問題は重大になります。先ほど今澄さんが、社会問題として非常に大事が起るかもしれないぞということを言われましたが、これは決して今澄君が誇大に言われたのではないと思います。実際百数十万の被害者がおつて、家が傾き、井戸水が出ない。しかもそれに対して野放しになつておるという状態ではもたない。この点は私はある片寄つた考えではなく、公平な立場から問題にして処理してもらうことをはつきり要望したいと思います。
なおこれに関連するわけですが、地方公共団体に負担をかけるという点が、やはりいろいろ御説明されましたけれどものみ込めない。事実地方公共団体というものは石炭鉱業による被害者なんです。被害者に対して一部持たせるということは理論的にも通らないし、また現在の地方団体の財政の実情から申しましても、皆さん御承知のように財源は全部中央に吸い上げられ、平衡交付金というものは非常に足りないというふうなときに、ここにまた福岡なら福岡、長崎県なら長崎県に、何億という大きな金を持つて来て片棒かつげと言われましても、私はそういう法案でこれが目的を達するかどうか。これは福岡の杉本県知事も先日公述されておりましたように、その面からいつても不可能になるような点があるのではないかということを危惧するのです。どうしても地方公共団体に持たせなければいかぬとなぜ考えられるか。それから先ほどの説明によりますと、たとえば農地面の四十七億これに対して業者から大体十八億幾らを徴収されて、残りの三十億見当を国並びに地方が受持つのだ。ところが国と地方との比率というものはまだきまつていない。それはとにかく政令で定まりましようという説明で終りになつておるのですが、そうなりますと、こういうことはいつも弱いものにのしかかつて来るのが世上の通弊です。政令であとからきめるということになつて参りますと、結局弱い地方は国から押えられて、非常に割が悪いことになると思うのです。従つてこういう法律を通す場合においては、はつきり国が幾ら持つて、地方は幾ら持つという具体的な案を明示してもらわぬごとには、われわれは法案の審議に対して責任が持てないということになります。大体業者に十八億で国家並びに地方公共団体が三十億持つという率そのものにも非常に不合理があると私は思う。私はもう少し業者がよけい持つということでなければならないと思う。これが問題の一つであります。それからもう一つこれははつきりさせなければならぬと思いますが、地方と国との間の比率について腹案もないのか、現在それをどういうふうにしてやろうと思つておるか、その意図を大体説明していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/60
-
061・中島征帆
○中島政府委員 地方団体が復旧費その他を負担する理由は、石炭の採掘ということが国家的な要請であり、その利益は国民全体が受ける。従つてそれに対して補償する場合には国全体で背負うべきだ。こういうふうなりくつも一つは通りますけれども、しかし反面におきまして復旧される工事の対象としては、農地にしても、あるいは公共施設にいたしましても、やはりそれによつて直接の利益を最も受けるものは、その地方の住民でありますから、そういうふうな公共的な性格を持つておるという意味と、それからその地方の利害関係、こういう二つの関係から、やはり国が出す場合には地方もある程度の負担は当然すべきではないかという意味で、地方負担を考えておるわけであります。
それから国と地方団体の負担の比率は先ほども申しましたように、まだ折衝中でありまして、大体地方公共団体の方の立場を地方財政委員会の方で代表しておりますし、国はもちろん大蔵省であります。その両方の見解が今のところ大分違つております。私どもは、いろいろな案も考えおりますけれども、今のところできるだけ円滑にこの話合いをつけたいというふうに考えておりますので、その比率がどうなるかということは、ただいまのところちよつと御勘弁を願いたいと思います。それから業者負担が少な過ぎるのではないかというふうな御意見でありますが、これも先ほど申しましたように、農地に関しましては、いわゆる賠償額の限度を払わせるという建前をとつておりまして、この十八億と三十億と比べた場合にはただいまのような御意見になりますけれども、これは国から相当出させるという意味でこれをひつ込めたわけではなくて、大体四十七億の復旧費の中でどの程度業者負担でやれるかということで、結果的にこれが出て来たわけであります。われわれとしてはむしろ国ないし地方公共団体に負担をかけないで、できるだけ多く鉱業権者の方から出せることになるのを望むわけでありますけれども、理論的に鉱業権者が負担すべき限度というものは、要するに簡単に言えばその土地の価格が一つの限度であります。また別の見方をすれば、その土地の益収性というものが賠償限度の一つの基準であります。そういう点から計算をいたしまして出すと、やはり総額で十八億ぐらいにしかならなかつたということでありまして、特に負担を軽減させるため、あるいは国の方からかなり出そうだからということでこれを圧縮したのではなく、理論的に賠償限度というものはどうかということをはじき出した結果の比率になつておるわけであります。この点はそういう計算で出て来た数字であることを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/61
-
062・田代文久
○田代委員 はなはだ矛盾に満ちた答弁であります。つまり業者から出させる場合においては、そういう何かしらぬが、もつともらしい基準を出す。ところが実際にはつきりした問題として、地方公共団体は被害者である。被害者に対してとにかく出させる場合において、国も出すから、それにおんぶして、地方も幾らか持つてもらわなければならぬというようなことである。しかも地方の実際の財政状態がゆたかである、能力が非常にあるというならまだしも、ほんとうはもう御承知の通りほとんど全国の地方公共団体は大赤字を出しております。そういつた状態において、なおかつ多少にかかわらず地方公共団体に負担させられるということ、理論的にもまた実際上においてもできないにもかかわらず、こういうことを法案に盛られておるということに対して、矛盾を感じられないかどうか。これはもう政府の意図が大体そういう点においてはでたらめであることを表現しておりますので、討論のしようもありませんが、私はもう少し良心的にやつていただきたいと思うのであります。実際上の問題として、この法案を通過させる場合には、どうしてもこの点を修正されるか、あるいは撤回するという線を出してもらうことを、もちろんそれはわれわれがやるのですが、あらかじめ私は申しておきたいと思うのです。
それから最後にといつてははなはだ被害者に申訳ないので、これはしよつぱなからやらなければならないのですが、土地、家屋に対する補償の問題であります。先ほど今澄君の質問に対しましても、それは私的物件であるとか、あるいは特別鉱害復旧臨時措置法においてもこれはそのようになつておりましたから、大体これは事情はわかりますけれどもというような御説明のようでありましたけれども、私はそういうことでは説明にならないと思います。もし特別法が不備であるならばそれは修正もできます。政府はどんどん修正案を出せばよろしい。また鉱業法なんかにきましてもどんどん改正案を出せばよろしい。他の方面においては政府はわれわれの反対にもかかわらず都合のよい法案ばかり次々に出して修正いたしております。しかるにこういうものに対しては出そうとしない。なぜもつと良心的にやつて行けないのか。私はむしろ民生を安定させるための社会問題の立場から考えますならば、これは政府自身もお考えでしようが、実際において家が傾いておるとか、寒空に戸障子も合わずに冬を越して行かなければならないとか、井戸水が出ないとか、また学校に行くのに舟に乘つて渡つて行かなければならないとか、墓地が陥落しておるとか、こういうことこそがほんとうの意味の社会問題であり、また民生を不安定にしておる具体的の現実的のはつきりした問題ですから、民生の安定という問題、あるいは社会問題を解決するという点から言いますと、いの一番にこの家屋あるいは墓地というような問題をいかにして救済し、あるいは補償しまた今後災害が起つた場合においては、皆さん方においては御心配はいりません、政府が責任を持ちます、また業者も責任を持ちますという線が出なければ石炭鉱業も発展しないし、また事実私はあまりにも被害者がかわいそうだと思うのです。そういう意味から申しまして、この墓地とか家屋とかこういう問題をこういう弱い線で——先ほどの御説明によりますと協議という点裁定という点があるから、これくらいでよいというようなことを言われますが、これは結局机上の論議でありまして、実際百万あるいは二百万に達する被害者としては満足できない。ですからこれをどうしても修正してもらうことを政府に極力要望するわけでありますが、もう一応私有物件であるとかあるいは特別鉱害でやつたからどうだとかこうだとかいうようなことで、これを逃げられるその意図は間違つておるということを確認していただきたいと思います。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/62
-
063・中島征帆
○中島政府委員 家屋、墓地等に対しまして補助金が出ないということは、これは補助金が出ないということとそれが放任されるということとは別問題でありまして、補助金は出ないけれども鉱業権者に責任があることは明瞭であります。その場合にどうして国が補助金を出すか、出す必要があるかということから考えなければならないのであります。農地の場合には鉱業権者としては端的に言えば土地の価額に相当するような金額を全部出して、それが一つの賠償の限度に達しておつて、なおかつ復旧しなければならない。それから公共施設の場合におきましては、先ほども申しましたように全額の復旧費を鉱業権者が負担すべき性質のものではあるけれども、一般に公共事業につきましては国が補助しておるので、その例にならつて一応は金融的に出す、しかし本来の性質はそういうものであるからあとで引上げる、要するに鉱業権者の責任であるものはあくまでもその責任で遂行させる、こういう趣旨がこの法案の出発点であります。そういう意味におきまして家屋につきましてはすべてに原状復旧をしようとあるいは金銭賠償をしようと全額が鉱業権者の負担であり、その一部といえども国あるいは地方公共団体が負担しなければならないというりくつはどうにもつけようがないのであります。そういうわけで家屋につきましては補助金が出ないわけでありまして、家屋について補助金をもし出すということになりますと、要するに鉱業権者としては、本来自分に責任があるものについて、利益を保障するために、あるいは損失を少からしめるために国の補助金をもらうという結果になりまして、国に責任の一部を転嫁する、こういうことはいかに石炭であろうとも許されませんので、今のような理論的な関係をここに貫いたわけでおります。その結果といたしまして家屋所有者がはなはだ弱い保護を受ける形になつておりますけれども、それと現在家屋等が放任されることが正当であるかどうかということとは別の問題でありまして、一応形においては鉱業法あるいは民法の保護がありますけれども、その保護が実際上容易に実現し得るように法案の第四章で道を開いたわけでありますから、そういう意味におきましては本来鉱業権者の責任があるということをここで確認させて、それで実際の義務を履行させるということに一歩進めたことになると思つております。なお地方公共団体が何も被害者として費用を負担する意味は全然ないのではないかという御意見でございますが、被害者としての地方公共団体が復旧費を負担することは全然ございません。たとえば被害者として、と申します場合は道路あるいは橋梁等が地方公共団体、市町村等の管理に属する場合にはその市町村が被害者であります。しかしその地区内の農地が被害を受けているというような場合には、その市町村が被害者というふうには一応考えないのであります。そういう意味におきまして被害者としては負担しないということを私は申し上げておるわけです。農地の場合についてのみ特に地方の負担が問題になつております。道路、橋梁とか公共施設に関しましては補助が国から出まして、さらにあとに償還させるということになりますから、結局地方負担の問題は農地関係だけだという結果になるわけであります。農地に対しましてはその管内の農地の復旧ということかその市町村としては相当な利益を受ける、しかもそれに対して国が補助をするということは本来からいえば全然責任がない種類のものであるけれども、しかし農地の造成とか食糧増産とかいう見地から鉱業権者に金銭賠償以上に金を投じて収穫の増産をはかることは必要だと認めて出すわけでありますから、それに対しては地方としても当然相当部分のつき合いをすべきものだというのが大蔵省の考え方で、またそれは納得できるわけでありまして、その際にできるだけ地方の負担を軽くしたいことは私どもとしては考えますけれども、地方がこれに全然負担をしないということは、そういう見地から必ずしも適当でないのではないかと考えられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/63
-
064・田代文久
○田代委員 今日は総括的質問ですからもう切上げますが、たとえば墓地、家屋というようなそれこそ社会問題で、ちようどわれわれのめしの問題のような切実な差迫つている問題に対して、そういう弁解みたいなことで法案がそつと横にやられることに対してはどう考えても納得できない。実際において被害者の苦痛を自分の肌をもつて感じておられるならば、国が負担するようにしなくてもよろしい、鉱業権者が被害者に対してとにかく補償をしてやるという親切な法案をなぜ提出せられないかということであります。いろいろ方法はあると思います。とにかくそういうように持つて来られるから、弱い者は被害者であり結局泣寝入りをすることになる。これによつて協議とか裁定とか言われておりますけれども、あなた方も実情をお調べになつたのでしようが、何回各地の炭鉱に行きましても、また一日つぶしたその人に対して日当が出るわけでもない。そして何年、何十年間被害者は泣寝入りになつている。少くとも被害補償の面を公平にやるならば、そういう精神的被害あるいは労力的な被害全部を見なければ責任を果したことにならないと思う。そういう点が少しも考慮されていない。従つてこの法案の基本的な考え方は非常に片寄つて、依然として被害者に対する迷惑はそつちのけで、ただ刺身のつまみたいにしか出ていないということを考えざるを得ないのであります。なおこれは法案の逐条審議のときに申し上げたいと思いますが、政府当局としては血の出るような被害者の立場を身をもつて感ぜられて、党が反対しようがかまわない、敢然とそういうような法案を提出すべきであると思います。それを私はやつていただきたいことを要望して、一応この質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/64
-
065・中村幸八
○中村委員長代理 次は青野武一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/65
-
066・青野武一
○青野委員 きようは、理事会の申合せで、各党代表の総括的質問ということでありまして、逐条的な質問は、明日の十時半から行われますので、そのときに讓ることにいたします。各党代表の質問に対していろいろ御答弁がございましたので、できるだけ重複を避けたいと思います。
大体政府側の出されておりますこの臨時石炭鉱害復旧法案の底を流れておる精神は、露骨に申しますると第一条の目的でございますが、はたして国土の保全と民生の安定、そうして石炭鉱業、亜炭鉱業の重要性を認識してこれが発展のために真剣にこの法律案が出されたのであるかどうか。私は、各同僚議員の質問に対する炭政局長の御答弁を聞いておると、信用することができない。私は昭和二十五年五月の、当時の権力軍部の強行採炭による御承知の特別鉱害のときにも、微力を尽して同志諸君と働かしてもらつたものでございますが、それから正味二年間たつて出されて来る法律案というものの精神が、こういうぼやけた、被害者の意思を無視したようなものが出て来るとは思うておりませんでした。私は重要点だけを質問したいと思いますが、何と申しましても、総括質問の中心になるものは第一条の目的であります。いろいろな制約もありましようし、国家予算の財政的な考慮もあろうと思いまするが、この程度では、おそらく通産委員会では無修正で承認することはないと思います。私どもはたくさん修正意見を持つておる。逐条審議になりましたときに、そういう点は順次質問をする予定でございますが、特に大切だと思いまする点を四、五点お尋ねを申し上げたいと思います。
第一条に、「この法律は、国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定を図り、あわせて石炭鉱業及び亜炭鉱業の健全な発達に資するため、鉱害を計画的に復旧することを目的とする。」とあります。こういうりつぱな目的の第一条文ができたけれども、今田代委員が質問をいたしましたように、家屋にしろ、墓地にしろ、生活上必要な井戸にしろ、業者だけに全部まかして、そのままこの法案の中にこういうものが、盛り込まれていない。これは実際に精神が抜けたようなものにないているのじやないか。第一条の全文によつて、この臨時石炭鉱害復旧法案として完璧上が期せられるかどうか。これが一番大切なことでございますから、まず第一番として伺います。これで大丈夫問題は解決つけるという確信のもとにお出しになつたかどうかということを私は一番先にお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/66
-
067・中島征帆
○中島政府委員 一般鉱害問題の解決には、この法律が最も完全であり、完璧であるとは私は考えておりません。その意味におきましては不十分な点はございますけれども、現在の客観情勢のもとにおきましては、これがやはり最善の法律として期待し得る最善の内容を持つておるものだと確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/67
-
068・青野武一
○青野委員 その次にお尋ねしたいと思いますのは、大体この予算は百億ないし百二十億ということが御答弁の一節にありました。しかも復旧は十年計画です。そうすると一箇年に十億で十年間に百億です。ところが同僚委員の質問に答えられたところでは、大体年年鉱害は四億円程度出て参ります。そうすると、十年で一応百億の鉱害の解決がついたと仮定いたしましても、四億円ずつ十年間で四十億で、現在の鉱害総額二百三十億で百億引きますと百三十億、十年間に出て来る鉱害四十億で、十年間に百七十億の鉱害総額が残つていることになる。これではなるほど問題は解決しない。これはもつと抜本的な行き方ができないことはないと私は思います。外国の勢力に押されて、防衛分担金を六百五十億もふんだくられる。日米協定によつて安全保障費を五百六十億もとられる。そうして軍隊のような警察予備隊は、一人当り八十万円から九十万円の国民の負担で、一年間五百四十億です。そういうべらぼうな戦争予算から百億や二百億さいて来ても、この問題は解決つけられる。政府側にほんとうに誠意があつて、十年以上あるいは二十年と苦しい被害者が精神的に受けた打撃家は傾き、井戸の水が枯れて五町も六町も先までくみに行かなければならぬというような気の毒な人の立場に立つたら、鉱害総額は二百三十億で、年々四億円出て参つて十年間には四十億、それで予算は百億というようなことにはなりはしない。こういうことは予算がないじやありません。二十八日の午後十時三十分総司令部と手が切れた。各党が協力して、石炭産業により被害を受けたこの気の毒な人たちを根本的に救済するという精神があるならば、私はもつと予算も出て来るはずだと思う。また一面においては、炭鉱業者はもうけるだけもうけて、しりぬぐいは国家予算にまかせる。私のおります福岡県の田川郡では、公開の席上でございますから名前は省きますが、五百人か八百人の炭鉱労働者を使つて、長者番付の第一位になるほど金をもうけている業者がある。これは特定の人でしよう。自分の娘が、自分の息子が、親戚が、奥さんがというのが長者番付十人の中に五人も六人も入つている。例外かもしれませんが、これほどもうけている炭鉱業者だ。十八億の負担をかけて、そうして国と被害者である地方公共団体がそれを分担し、税の形をもつて吸い上げられたもので事業団その他の経費をみついで行く、もらつた百円の中からまた半分とられて行くというようなこういう間違つた法律はありません。外国にどういう例があるか知りませんが、外国の例をとる必要はありません。戦争によつて国民を窮地に押し込み、ようやく歯を食いしばつて六年八箇月、名前だけでも独立国家になつたというときに出て来る炭鉱鉱害の法律案がこういうものでは、被害者も、また被害者でない国民も納得しません。今申しましたように、十年で、かりに一応この法律案の精神が通つたといたしましても、残つた百七十億——これは私の推定でありますが、百三十億残つておるのに年々四億ずつ十年間四十億、合計百七十億、これは十年先一体どうするか。それに伴うて中途半端なことをやれば被害者は泣いて行く。私はこういう質問をしても、日本の石炭産業を軽視したり、炭鉱経営者を攻撃しておるのではありません。日本の重要産業にとつて必要な石炭産業の発展は、だれにも劣らないほど私はその発展をこいねがつている。しかしもうける反面には、やはり被害者に対しては、それ相当の日本人的立場に立つてあたたかい血と涙とをもつてそれを償うて行くのが当然だと思う。それを法律によつて償わせるのが、この戦後における国民生活の安定、被害者に対する補償ということだと思う。法律というものは、力の強い者の利益になるようにつくつたのでは弱い者はたまつたものではない。どこの国でも、強い者と弱い者との闘争なんだ。支配者と支配される者との闘争なんだ。権力を持つておる者が力をもつて炭鉱業者の味方になつて、こういうように内容に幾多不備な点を盛り込んでおいて、今のところでは、これが一番りつぱなものでございますといつたのでは、被害者はたまつたものではありません。地方公共団体もその通りであります。そこで十年先に百七十億残ります鉱害は、一体どういう解決策をお考えになつておるか。十年先まで炭政局長をしておられるわけでもございませんし、自由党も十年先まで政局を担当するわけではございませんが、案を出した以上は一応の見通しを示す義務があると思うので、私はお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/68
-
069・中島征帆
○中島政府委員 その点につきましては、先ほど今澄委員の御質問に答えて若干触れておりますが、十年後にただいまの数字を採用いたしましても、百七十億残るということはちよつと計算が違うわけでありまして、先ほど申し上げましたように、二十五年度の鉱害賠償金額というものが九億四千万円になつております。その際四億と九億との違いはどうかという御質問がありましたので、その差額の五億幾らというものは、従来累積されたものの処理に使われておる。こう考えても一応いいわけです。そういう意味におきましてこれは二十五年度でありますから、おそらく二十六年度は十億以上支出されるだろうと思いますが、今後また石炭の増産によつてさらにふえる、その中から年々出て来る新しい鉱害に相当する部分について支払われる。さらに過去の累積の分について支払われるということになりますと、十億前後のものがやはり今後負担される以上は、累積したものも少しずつは減つて行く傾向にあるということが言えると思います。従つてこれから出て来ます四億というものは、今年のものが今年という意味ではありませんけれども、大体年々それに相当するものは片づけられて行くというふうに考えていいのではなかろうか。そうすればこれから十年間は四十億に相当するものがたまつて行くということは心配ないのであります。しかしそういたしましても二百三十億から百億引いて百三十億というものは残るわけでありますから、その中で実際に査定される、あるいは鉱害と認定されるものがどのくらいありますか、これは特に市町村から出されたものは相当検討を要しますので、その点からかなり減ると思いますが、それを差引いて、なお十年後におきましてもそこに鉱害として形が残つておるけれども、これに相当多額の金を費して原状復旧をするということが経済的に成り立たぬというものは、やはりこれは放置せざるを得ない。これは鉱業権者が従来の原則によつて金銭で賠償するというような形で鉱業権者の責任として残るわけでありまして、外形上鉱害として残つておりますけれども、法律的には一応鉱業権者の責任で片づけらるべき性質のものであります。そこで十年間の最後近くになつて安定するというのは、二百三十億のうちの百億が十年間にかりに片づけられたとして、さらにその前後になつてそれ以上のもの、土地が原状回復に適するような状態になつた、こういう場合には、その時期において検討の上で、たとえばこの法律が最も適当であれば延長するなり、あるいはまた別の措置を考えるというふうに、十年後においてはこの鉱害賠償制度そのものを全般的に再検討する時期である、こう思つております。従つて放置されるのは、かりに計算上若干残るとしても、それはそのときにおいて一層さかのぼつて、鉱業法自体の問題あるいは鉱害に対する根本問題として検討する時期がそのときまでに来るのではないか。こういう意味におきまして一応の数字的な残額というものはそのままここで残しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/69
-
070・青野武一
○青野委員 重ねてお尋ね申します。大体わかつたところもございますが、鉱業法によつて鉱業権者が家屋あるいは墓地、井戸等に損害をかけ、被害を与えたときには、その業者の全額負担である。私は炭鉱地帯に育つて三十年ほど経験を持ちます。私の居住地は北九州で筑豊炭田には非常に縁故がある。一年に一ぺん行くのじやありません。議会の開かれておらぬときには一箇月のうち五日も六日もそこに行つておる。坑内にも入りますしいろいろな関係を持つているので、あらゆる被害を自分で見ております。われわれの兄弟、われわれの友達がその中で苦しんでおる。それで申し上げるのです。炭鉱業者はなかなか力が強いから、個々の被害を受けた者なんかにはそう簡単に弁償なんかしてくれません。いくら組織力をもつて交渉してもらちが明かないのを、これを法律から除外して、それは業者の全額負担だから個々に交渉しろということは酷である。ですからこういう被害に対する賠償を、適正な価格あるいは原形に即刻回復するように、そして被害者に対して早く要求を達成してやるような努力がこの中に含まれてもさしつかえないと思う。鉱業法にきまつておるが、力と力です。小学校の子供と双葉山と相撲をとるようなものです。そこで私はそういう点をいろいろ修正案として考えておるのでございますから実はお尋ねいたしました。それから鉱業権者でその加害者が不明による被害総額、種別等について、法律の対象になつておるのを、今御答弁ができなければ、あとでその資料を全通産委員に配付してもらいたい。次にお尋ね申上げたいと思いますのは、これは総括質問に非常に密接な関係を持つておるからお尋ねしておきたいと思います。第二条の六項の公共施設についてでありますが、一から十一まで公共施設の種別が書いてございますが、十一の学校、なるほど公共団体として学校は公共物に違いない。そうするとこの案を責任を持つて説明しておられる政府当局の人たちは、たとえば地方公共団体の公会堂、警察署、村役場、市役所というものは公共建造物とみなしておらぬのですか。社会常識からいつても公共施設の中に明瞭に入つておるものが十一項目の中から抜けております。ただ学校と書いてあるのですが、こういうものは補償の対象にしないのか。これを見るとそう思われますが、その点についてどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/70
-
071・中島征帆
○中島政府委員 ごもつともな御意見でありますが、ここで公共施設としてあげてありますのは、この法律の運用上一応補助の対象となる施設を掲げてあるわけでありますが、建物につきまして現在公共事業費でまかなつておりますのは学校だけであります。それ以外の公会堂、市役所、警察、こういつたようなものは公共事業の対象になつておりませんので、かりにここで拾い上げましても、その場合に国の補助をもらうということは全然期待できませんから、大体補助の対象になつているものだけをあげたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/71
-
072・青野武一
○青野委員 この問題については少し私は意見がございますが、明日からの通産委員会で逐条審議のときにこの項目に入りますので、そのときにあらためて質問したいと思います。
それに関連してもう一つお尋ねをしておきたいと思う。この九の上水道、下水道、これは筑豊炭田では問題が多いのです。上水道、下水道には貯水池か入つておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/72
-
073・中島征帆
○中島政府委員 水道用の貯水池と、それから農業灌漑用の貯水池、これはこの定義の中に入つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/73
-
074・青野武一
○青野委員 それでその点はわかりましたが、これは公共用の建物の関係でございまして、やはり被害者の方の家屋、墓地等に関係があるのです。というのは、公共団体が持つておる上水道の貯水池などは、今の金では、炭鉱業者だけではやはり負担ができないと思います。私は福岡県の遠賀郡の高松炭鉱、これは一万人の従業員です。この人たちが働いておりまする高松炭鉱では、——私の住んでおる八幡市にある日本化成株式会社、これは染料とか、化学製品、骸炭、そういつたものからいろいろのものをつくつておる。海軍と陸軍が戦時中にうしろになつて、かまわないから石炭を掘れ、何とか解決つけるから工場用として貯水池をつくれといつてつくつた。ある川から貯水地に水を上げるのですが、その貯水池の下を高松炭鉱が掘つてくれては、一年のうち三箇月とにかく操業ができないのです。戦時中は御承知の通り、非常に高価な薬を陸軍がそこから買い上げて南方へ持つて行つたのですが、それが今大きな問題になつておる。二十八年の末までは停戦をして、それまでに話合いをつけようということになつておりますが、こういう問題は、民間会社と民間の炭鉱業者にまかせておいては片づかない。これは非常に重大な問題になつておる。日本の産業の上に非常に大きな影響がありますが、それと関連して、銅御殿であまりに有名な伊藤伝右衛門さんのむすこの伊藤八郎という人が経営しておる大正鉱業、この大正鉱業も発掘権を持つておるが、たまたま八幡、若松、戸畑の三つの都市と製鉄産業、いわゆる鉄鋼一貫作業の八幡製鉄所、従業員だけで三万五千人、自由労働者を入れて四万人、三つの市と八幡製鉄所が使つておる貯水池の下の鉱区を大正鉱業が持つておる。これを掘り込まれたら、三市の市民はもとより、日本の製鉄産業もとまるのです。発掘権を持つておる民間会社の場合は何とか解決がつきましようが、いわゆる若松、八幡、戸畑、八幡の製鉄という、四つのいわゆる工業用水、市民の生活に必要欠くべからざる上水道、これは遠賀川のどろ水を上げて濾過するのです。その貯水池の下を掘り込まれますと、だれに聞いても、大学の専門家に聞いても、実地調査を見ても、これは亀裂を生じてだめになります。こういう所に鉱業権を持つておる人が、おれの自由だ、法律上権利があるんだといつて、掘られますと、その損害が大きく出て来る。その損害をはたして業者が負担し得るか。先ほど申しました日本化成株式会社と、日炭高松炭鉱との対立で、その貯水池の下を調べてみると、三千万トンの石炭、六千五百カロリー、七千カロリー程度、しかもその貯水瀞の下を二千五百尺掘つてもそれがだめになる。六十度の傾斜で残せば、三千万トンの石炭が、そのままそこに残つて、石炭産業の上に非常にやはり損失を受ける。これをどうするかということが今問題になつておるので、それと関連して北九州の三市と八幡の製鉄所に必要な貯水池の下に、民間炭鉱業者が発掘権を持つておる。こういう問題は現実の問題として出て来るのでありますが、そういう点に対してこの法案では何らかの示唆々したり、あつせんをする、努力する、あるいは何らかの解決をするような方針がこの中では取上げられておるかどうか。これは非常に私は現実の問題として大切でございますから、お尋ねをしておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/74
-
075・中島征帆
○中島政府委員 ただいまの問題は、現在提案になつております法案とは全然関係ございません。しかしながら、これは現行の保安法によりまして救済できる問題でありまして、お話の日本化成の問題も、結局においては日本炭鉱の採掘計画そのものを許可するかどうかという鉱業法と保安法の両方の問題として問題になつたわけでありますけれども、その解決につきましては、九州の通産局長が中心になつて各方面の専門家の意見を聞いた上で、お話のように解決して一応そういう措置がとられておるわけであります。それは形式的には施業案の許可ということで押えるわけでありまして、従つて今後の大正鉱業の地区内の問題につきましても、将来そういうふうな場合には、やはり同じように専門家の意見を十分に聞きまして、その上で危険がなければ掘らせる。但し、万一それによつて損害が生じた場合には、当然掘つた方の責任になるわけでありますから、それを十分勘定に入れてやらなければならぬ。しかし、もし掘ることが非常に危険であるという場合には、施業案を押えまして、許可しないということもできるわけでありまして、予防措置は十分できるわけであります。ただ問題は、話が若干それますけれども、その場合に、はたして上にどういう影響があるかということが、遺憾ながら、今までの日本の技術とデータとでは完全でないので、そういう制度をはつきりつくらねばならぬということが、最も必要なことだと思つております。これをやらせるためにも、目前の鉱害を片づけるということが、一つの促進にもなりますから、そういう意味において根本施策を推進するためにこの法律の意義を期待しておるわけであります。
いま一つは、かりにその場合に、下を掘ることが上に非常に害を与える。それを押えるということをいたしました場合に、それでは上の地上物件に権利を持つておる者が、下を掘らなかつたために放棄した石炭に対してどういうふうな賠償をすべきか、この点が、日本の鉱業法によりましても、あるいはこの法律によりましても、全然解決されておりません。まだそういうふうな研究もされておりません。しかしながら事実上はその場合に放棄した石炭についての賠償請求を持たせるかどうかという点につきましても、やはり問題があるわけであります。そういうふうな根本問題を相当含んでおるという意味で、非常に重要な例だと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/75
-
076・青野武一
○青野委員 今の御答弁でちよつとわからなかつたから、もう一ぺん重ねてお尋ねしておきますが、この法律案には、それは関係ない。民間の灰鉱業者と民間会社との間を一つの例で申し上げたけれども、この法律案の対象になつておるものは、九州に九割五分関係がある。こういうお話を聞いております。それほど九州で重要であり、福岡県は特に問題が非常に多い。被害の対象が多く、復旧しなければならない箇所はほとんど福岡県であるといわれておるのでありますが、その最も中心になつておる所、今はそうじやないが、この上水道下水道というものが貯水池も含まれておるかどうかという質問をしたのはこういう三市と製鉄が共同でやつておる——二十年前に三百万円かけて、筑豊を流れる泥水を濾過するために、どうしても必要な貯水池がある。それを掘られると、この北九州の三市と製鉄はどうにもならぬ。それは上水道の貯水池であり、工業用水である。こういうことは必ず起つて来る。今はそうでないが、起つて来る可能性が十分にあるのでございますから、そういう際には、やはりこの法案が十年計画でやられれば、適用される場合が出て来ると思つておる。その点これには全然関係がないとあなたはおつしやつておるが、私は関係があると思う。議論するわけじやありませんけれども、そこをもう一つはつきりしておいてもらいたい。これは八幡市で二十三万、戸畑市で十万、若松市で五、六万、製鉄産業の上から言つてみても非常に大きな不安が残つている。そこで政府を代表してはつきりしたところをここで示してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/76
-
077・中島征帆
○中島政府委員 私は初めのお尋ねが主として予防的な措置に関する問題だと思いまして、この法律はそういう点に全然触れておりませんから関係ないと申し上げましたが、復旧の問題に関しましては無関係ではないのであります。ただこの法律のねらいは、第一条には削られておりますけれども、現在累積している鉱害というものを第一のねらいとしておるのであります。それを片づけるために、この十年間の経過において現存の鉱害と競合してさらにそこに重なつて来た新しいものも取上げざるを得ない、こういう意味で新しいものも入ると先ほども申し上げましたが、そういう意味におきましてただいまのような鉱害がかりに出て来ました場合に、もしもそれと現在ありますものとが重なれば、当然本法の直接の対象になるわけであります。またそうでなくて、新しく掘つた地区であり、新しい鉱害として貯水池の問題が出て来たという場合におきましても、形式的にはこの法律の適用を受けられないというふうな点は一つもないわけでありまして、法律の立案の第一の目的からいえばそこまで考えておりませんけれども、形の上においてはそういうものも包括し得るというふうに考えていいのじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/77
-
078・青野武一
○青野委員 もう一つ、これは逐条審議のときでもよろしいのでございますが、今質問いたしましたことと非常に関連性を持つておりますから、重ねてお尋ねしておきます。家屋とか墓地の復旧は、農地及び農業施設と同様に復旧基本計画に編入すべきが当然だ、私どもはこういうような修正的な意見を持つております。ところが先ほどのだれかの質問に対する御答弁では、通商産業局長が許可をする、それから協議をしあるいは裁定によつて復旧工事を施工するようなことになると言つておりますが、こういう家屋とかいろいろな復旧に対して、何を好んで通産局長の認可がいるのですか。建物にしても、井戸にしても、墓地にしても、被害を与えたということは現実の問題た、だから認可をするということになれば、みなこれは被害物件でございますから全部しなければなりません。しないのはどういうものをしないのか。通産局長がこれを許可する、そしてその許可を受けたときに初めて復旧工事にかかれる、ここがくせものなんです。通産局長にこれだけの権限を持たせて、その人の許可を受けないものは建物にしろ何にしろ復旧工事ができないといつたようなことでは、被害者の不安はいつまでも消えません。受けた打撃、受けた損害に対しては、あたたかい気持でそれを補償すべきが当然であります。それを通産局長の許可を受けなければ家屋等の復旧ができないといつたような条文は、大体私は二十年くらい時代遅れだと思う。そういう考え方は削除して、こういうものを基本計画の中に編入して行くくらいの努力を政府側は被害者に対してすべきだと思いますが、どうお考えになり面すか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/78
-
079・中島征帆
○中島政府委員 許可制をとりました理由はほかにもございますが、一番のねらいは、むしろこれによつて、許可を受けて協議をすることになるわけでありますが、許可をするということは要するにこれは相手方の鉱業権者の責任に基く鉱害であるということを確認するような意味の許可をいたすわけでありまして、そうでなければ、従来はたとえばあなたの方の事業によつてこれだけの被害を受けているのだから賠償してくれというような話をいたしましても、それは自分に関係ないというようなことでけられる場合が非常に多いのでありますが、その際にこれは確かにこの鉱業権者とこの被害者との関係の問題であるということが通産局長において確認されれば、鉱業権者としてもこれを受けて立たざるを得ない、そういうような意味でこの許可ということは非常に被害者側、申し立てる方の側に有利な作用をするのじやないかと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/79
-
080・青野武一
○青野委員 その点について重ねてお尋ねをしたいと思いますが、逐条審議のときにひとつそれもやらしてもらうことにします。
最後に委員長に希望したいと思うが、きのうの理事会の話合いで大体まとまつておりますが、遺憾なことは二十五人の通産委員が委員長を入れて九名、十六名が欠席、きようは田代君に聞いてみるとよく出た方だそうです。それほど仕事が忙しくて十六人も欠席するのならば、その中の四、五人でも四、五日の日程で現地に行つて被害現場を見、被害者の血の出るような叫びを聞いて、修正意見として織り込まなければこの問題は解決がつかない。いつの委員会でも十数名の諸君は出て来ない。委員をかけ持ちして出て来ない場合もあるけれども、被害者の代表者もここに来ている、県の代表者も来ている、関係市町村の代表者もせわしい中を費用を使つて来て、この問題に集中して一生懸命になつている。このときに国民の代表である通産委員は、責任の地位に立つておれば精励して出席して熱意を持つてこの問題と取組んでもらいたい。こういうことは委員長の責任で督励してもらいたい。それからもの一つは、本会議にかけます間に現地視察をできるだけ早く、できれば炭鉱関係者も含めて各党一人、それができなかつたら通産委員会から三名くらい現地にやつてもらつて、つぶさに現状を見て来てもらいたい。私は忙しいなどと言われてはだれも行き手はありません。真剣に苦しい人の立場に立つてものを運んで行く、この法律案をまじめに審議を続けて行く気があれば、委員長は率先して自由党の幹部諸君とも話合つて、そういう手続をきめてもらいたい。私はこれを委員長に希望いたします。
その他いろいろ私が修正したいと思うところを質問したいと思いましたけれども、これは明日からの各条文についての逐条質問のときに同僚議員と一緒に申し上げることにいたしまして、一応総括的な質問をこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/80
-
081・中村幸八
○中村委員長代理 ただいまの青野武一君の委員長に対する御希望に対してお答えいたします。
本日自由党議員の出席が悪いという点は、実は同じ時刻に中小企業安定法案の打合せをいたしておるので、そんな関係でこの委員会に出席が悪かつたのでありますが、決してなまけておるわけではありませんので、さよう御了承願いたいと思います。
なお現地視察の問題につきましては、できるだけ早い機会に、なるべく多数現地を視察しまして、現地の実情をよく頭に入れた上で本法案の審議に遺憾なからんことを期しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/81
-
082・淵上房太郎
○淵上委員 先ほど来からの同僚議員の質問によつて問題は出尽しましたが、だれかも申されたように、一昨年の五月の衆議院の決議、これは院議でありまして、政府は当然尊重する義務があると思うのでありますが、その熱意を持つておられるかどうか、誠意を持つておられるかどうか。これをまずお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/82
-
083・中島征帆
○中島政府委員 もちろん委員会の決議、院議というものにつきましてはわれわれは十分に尊重し、またこれの実現をはかりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/83
-
084・淵上房太郎
○淵上委員 それで安心いたしました。少くともその効用を回復せしめなければならないから政府は国庫の負担において鉱害地の原状回復を断行すべくすみやかに善処しろ、この決議並びに同年十二月の通産委員会の決議によりまして政府は審議会を設けられまして——ことに炭政局長初め関係の方々が欧米を視察されてこのたびこの法案を提案になつたのであります。この努力に対しましては私どもは衷心敬意を表するものでありますが、ただいま御答弁になりましたこの衆議院の決定された意思というものは、十分御尊重を願うべき筋合いであるということをまず冒頭にかんぬきを入れておきたいのであります。明日から逐条審議を始め、重要なる箇所につきまして論議を進めたいと思いますが、もう一つこの機会に簡単にお伺いしてみたいのですが、先ほど今澄委員の発言中に、憲法二十七条の財産権の侵害の問題がありましたが、私は憲法十一条、十三条の基本的人権の問題、自由の問題並びに二十二条の居住の自由の問題、この法案が成立した場合には憲法違反の疑いが発生いたしまして、あるいは何らかの措置が講ぜられなければ無効になるおそれがあるかないか。政府は憲法違反の法律じやないという確信をお持ちであるかどうか。これをまず今日総括質問の終る機会にお伺いしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/84
-
085・中島征帆
○中島政府委員 この法律案の所々にそういう問題になりそうな箇所があることは私ども気がつきまして、一応憲法問題も研究いたしました。この法案の趣旨は決して憲法違反にならないという確信を持つて提案いたした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/85
-
086・淵上房太郎
○淵上委員 よろしゆうございます。明日からやります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/86
-
087・中村幸八
○中村委員長代理 本日はこの程度にて散会いたし、次会は明十日午前十時半より開会いたします。
午後四時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304793X03219520509/87
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。