1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年五月二十七日(火曜日)
午前十一時三分開議
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出席委員
委員長 松浦 東介君
理事 遠藤 三郎君 理事 河野 謙三君
理事 平野 三郎君 理事 小林 運美君
理事 井上 良二君
宇野秀次郎君 小笠原八十美君
小淵 光平君 川西 清君
坂田 英一君 坂本 實君
千賀 康治君 田中 彰治君
中野 武雄君 奈良 治二君
幡谷仙次郎君 原田 雪松君
大森 玉木君 吉川 久衛君
坂口 主税君 高倉 定助君
竹村奈良一君
出席政府委員
農林政務次官 野原 正勝君
農林事務官
(農政局長) 小島 武一君
委員外の出席者
専 門 員 難波 理平君
専 門 員 岩隈 博君
専 門 員 藤井 信君
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五月二十三日
委員松岡駒吉君辞任につき、その補欠として井
上良二君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十四日
委員井上知治君、木村公平君及び山口六郎次君
辞任につき、その補欠として平野三郎君、河野
謙三君及び坂田英一君が議長の指名で委員に選
任された。
同月二十七日
委員越智茂君及び中馬辰猪君辞任につき、その
補欠として中野武雄君及び奈良治二君が議長の
指名で委員に選任された。
同日
河野謙三君、平野三郎君及び井上良二君が理事
に補欠当選した。
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五月二十三日
鹿児島県林業試験場を国立移管の請願(中馬辰
猪君紹介)(第三〇五九号)
部落農業団体の活動促進並びに国庫補助に関す
る請願外十件(吉川久衛君紹介)(第三一一二
号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
農民並びに農業技術者の国際的協力活動等に関
する陳情書
(第一九四八号)
公営競馬の民営移管反対に関する陳情書
(第一九四九号)
松くい虫等その他の森林病害虫の駆除予防に関
する法律改正の陳情書
(第一九五〇号)
農林省門司動植物検疫所鹿児島出張所の家畜検
疫施設整備に関する陳情書
(第一九五二号)
枕崎紅茶試験地の農業技術研究費増額に関する
陳情書(第一九
五三号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
理事互選
小委員及び小委員長補欠選任
農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一〇八号)
農業災害補償法臨時特例法案(内閣提出第一三七
号)
農業共済基金法案(内閣提出第一五五号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/0
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001・松浦東介
○松浦委員長 これより農林委員会を開会いたします。まず理事の補欠選任についてお諮りいたします。先般の委員の異動に伴いまして、理事に欠員を生じておりますが、その補欠を委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/1
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002・松浦東介
○松浦委員長 御異議なしと認めます。それでは河野謙三君、平野三郎君、井上良二君を理事に指名いたします。
次に小委員及び小委員長の補欠選任についてお諮りいたします。先般来の委員の異動に伴いまして、各小委員会に欠員が生じております。この際その補欠を委員長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/2
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003・松浦東介
○松浦委員長 御異議なしと認めます。肥料に関する小委員に河野謙三君、井上良二君、畜産に関する小委員に河野謙三君、井上良二君、農林公共事業に関する小委員に坂田英一君、請願審査小委員に坂田英一君、竹村奈良一君、農業共済制度に関する小委員に河野謙三君、平野三郎君、井上良二君をそれぞれ指名いたします。
なお、肥料に関する小委員長に河野謙三君、請願審査小委員長に坂田英一君を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/3
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004・松浦東介
○松浦委員長 農業災害補償法の一部を改正する法律案、農業災害補償法臨時特例法案及び農業共済基金法案の三案を一括議題といたし、審査を進めます。この際吉川久衛君より議事の進行に関して発言を求められております。これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/4
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005・吉川久衛
○吉川委員 ただいまの三案につきましては、全員懇談会に移しまして、審議をいたしたいと思います。従つて本委員会は休憩いたしまして、午後再開されんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/5
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006・松浦東介
○松浦委員長 ただいま吉川君より一応休憩いたしまして、この三案について懇談会を開きたいとの動議がございますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/6
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007・松浦東介
○松浦委員長 御異議なければこれより懇談会に移ります。
午後は一時より再開いたします。休憩いたします。
午前十一時六分散会
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午後二時十八分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/7
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008・松浦東介
○松浦委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
農業災害補償法の一部を改正する法律案、農業災害補償法臨時特例法案及び農業共済基金法案の三案を一括議題といたし、審査を進めます。ただいま農業災害補償法の一部を改正する法律案に対しまして千賀康治君外十五名より自由党の修正案が出ました。また井上良二君外七名より改進党、社会党、両派の三派共同の修正案が提出いたされました。その内容はただいま各位りお手元に配付いたした通りであります。
これより修正案の趣旨について提出者の弁明を求めます。千賀康治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/8
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009・千賀康治
○千賀委員 千賀康治外十五名提出の農業災害補償法の一部を改正する法律案に対する修正案は、ただいまお手元に配付になつておる通りのものでありますが、本修正案について、その趣旨を弁明いたしたいと存じます。
修正の第一点は、農業共済組合に対する行政庁の検査についてであります。
現行法におきましては「行政庁は、農業共済団体の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反する疑があると認めるときは、何時でも、当該団体の業務又は会計の状況を検査すことができる。」とあり、行政庁は行政庁の処分または定款に違反する疑いがあるときに初めて検査することと相なつておりまするのを、改正案におきましては「行政庁の処分又は定款に従つて適正になされているか否かを知るために必要があるとき」に検査するように改めておるのであります。しかしながら農業共済組合の健全なる発展を期する上からいいまするならば、行政庁は常時組合の検査を行いまして指導育成いたしますことが、国家的な重要施設として国が多額の財政的負担をいたしております現状から申しても必要であると思われますので、改正案による随時検査の規定につけ加えまして、新たに常例検査の規定を追加いたしたのであります。
次に賦課金に関する規定でありますが、現行法におきまして農業共済組合、同連合会は、定款の定めるところによりまして、国の負担する事務費以外の事務費を組合員に賦課できることと相なつておりまするが、賦課金の額が全国について見た場合、はなはだ不統一であり、また農家にとつて相当の負担となつておる現状にかんがみまして、命令によつて一定の標準を示すことにより、不統一無秩序に陥らないようにいたしたいと存ずるのであります。
以上二点が修正の内容であります。何とぞ御賛成を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/9
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010・松浦東介
○松浦委員長 次に井上良二君にお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/10
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011・井上良二
○井上(良)委員 農業災害補償法の一部を改正する法律案に対する日本社会党並びに改進党、日本社会党第二十三控室等の各派を代表いたしまして修正案の理由を説明をいたしたいと思います。
ただいま千賀康治君より第七十九條の一部修正が提案をされました。その分は同様でございますから、省きまして、それに関係のない部分だけについて説明を申し上げたいと思います。その修正案は「農業災害補償法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。第十二條の改正規定第一項第一号中「から全都道府県の通常共済掛金標準率のうち最低のものを差し引いて得た率」を削る。」こう第十二條を修正したいと思います。
その修正の理由は、原案によりますと、通常共済掛金が全額農家負担となつておるわけでありますが、農家負担の軽減をはかる目的をもちまして、被害率と掛金との関係をできるだけ調整合理化いたしまして、農家の負担の軽減をはかる目的をもつて通常共済掛金についても、異常共済掛金と同様その二分の一の国庫負担としたのであります。これによつて従来掛金が共済金受取りに比較して高過ぎた地方では、掛金負担が大幅に引下げられることになりますので、いわゆる被害の少い地帯の農家に対する相当の負担を軽減し、本法の信頼を高める建前から修正をいたしたのであります。
次に修正をいたしたいのは、第百三十二條の二第一項中の修正であります。その修正の分は「第百三十二條の二第一項中「同種の損害」の下に「(建物の損害を除く。)」を加える。」そこでその次に附則を一項加えまして、附則は「6この法律施行の際、現に農業共済組合連合会が農業協同組合又は農業協同組合連合会の建物につき負担している共済責任については、第百三十二條の二の改正規定にかかわらず、当該期限の到来まで、なお、従前の例による。」こういうふうに改めたいと思います。その理由は農業協同組合及び同連合会の所有する建物についての共済を農業共済組合の行つた共済の対象から除外し、農業協同組合が従来自家保険の措置をとろうということにいたしたので、この理由は農業協同組合の所有する建物中、特に農業倉庫等につきまして、御存じの通り在庫物資について協同組合からいろいろの保全を意味する上において保険がかけられます。そうしますと、中身を他の保険に、まん建物は別の保険にというように、保険がばらばらになる関係がありますのじ、できるだけ農業協同組合の所有する建物につきましては同一保険によつて扱うことが便宜でありますし、いろいろの立場からぜひそういうふうに改正をいたしたいと思つておるのであります。
なおただいま提案されておりますうちで農業共済基金法案の問題でございますが、この問題について修正をいたそうといたしましたけれども、法案自体の構成がいろいろかわつて参りますので、われわれ野党側におきましては、別個の法案を準備いたしまして提出することにいたしましたから、この際つけ加えて御報告を申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/11
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012・松浦東介
○松浦委員長 これにて両修正案の趣旨弁明は終りました。
ただいまの両修正案に対して質疑があれば発言を許します。——質疑がなければ、これより農業災害補償法の一部を改正する法律案、同じく修正案、農業災害補償法臨時特例法案、及び農業共済基金法案を一括して討論に付します。討論の通告がありますから、これを許します。千賀康治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/12
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013・千賀康治
○千賀委員 ただいま議題となりました農業災害補償法の一部を改正する法律案、農業災害補償法臨時特例法案並びに農業共済基金法案に関し、修正案、並びに修正部分を除く政府原案に対し、自由党を代表して賛成の意思を表示するものでございます。現行農業災害補償制度は、農村の民主化並びに農業の近代化促進の一環として、昭和二十二年十二月十五日実施されたのでありますが、爾来今日まで四箇年有半の歳月を経過いたしました。この間しばしば本邦を襲つた天変地災、あるいは冷害早書の自然災害、または病害、虫害等による農家の損失を補填して農業経営の再生産を確保し、農業生産力の発展並びにその維持培養に多大の貢献をいたして参つたのであります。いまさら申し上げるまでもないほど周知の事実でありますが、わが国は地勢上並びに気象上、常に自然の猛威をたくましゆうすることが多く、年々歳々多大の損失をこうむり、農作物病虫害もまたこのあとを受けて暴威を振うことがきわめて多いのであります。
しかるに農民はと申しますれば、零細な経営規模の中で、非常に集約的な農業を営んでいるのでありますから、これらの災害に対しましては、個人の力をもつてしましては、とうてい対処し得るものではありません。現行の農業災害補償制度は、これら微力な農民をして農民相互扶助の理念に基いて力を結集させ、さらに国がこれに援助を与えて、農業経営の安定と生産力の高揚を促進し、もつて食糧自給度を高め、独立後のわが国民経済の拡充に資せんとするものでありまして、本制度の必要性とその長所については、万人のひとしく認めるところであります。
本制度は実施後なお日も浅く、改善を要する点のあることは、私もともに認めておるのでありますが、今般提案されました三法案は、いずれも現下速急に改善を要する諸点の改正をはからんとするもので、いずれもみな適切妥当の措置と信じます。すなわち農業災害補償法の一部改正案につきましては、共済掛金に対する一部国庫負担を、従来年々立法上の措置を講じて国が負担しておりましたものを、今後はこれを制度化して恒久的なものにすることとし、また農業共済団体の役員及び総代の任期を延長するとともに、それらの役員の選挙を簡単にする等、農村の実情に即して、円滑に運営し得るようにいたしたのであります。
また農業災害補償法臨時特例法案におきましては、現在の一筆ごとの引受方式は、農家全体として見る場合は、相当の被害があつても各一筆ごとの被害が三割以下の場合は共済金が支払われず、また共済金額も町村ごとに一律であつて、耕地ごとの生産力の差異が考慮されていない等の欠陥がありますので、この一筆単位の引受方式を農家単位の引受方式に改めれば、この欠陥は是正されると考えられますので、試験的にこの際実施してみようとするものであります。この試験の結果に基いて、是正すべき点は大いに是正して、本制度の完璧を期するようにすることはもとより当然のことと思います。
最後に農業共済基金法案につきましては、国と農業共済組合連合会とが、半額ずつ、計三十億の金額を出資して基金を設定いたし、罹災農民に対する連合会の共済金の支払いを迅速円滑にしようとするものでありまして、連合会に資金供給の制度が欠除している今日、これまた真に適切な措置と信じます。
以上の理由によりまして、私は自由党を代表いたし、修正部分を除く政府原案に対し賛意を表するものであります。
なお自由党より提出されました修正案に関しましては、制度の現状より見まして、これまた当然の措置でありますので、同様に賛意を表するのであります。なおこの際申し添えておきますが、本制度の根本問題につきましては種々問題もあり、また運営上にも問題がありますので、政府におきましても、これが解決に努力すべきことはもちろんでありますが、本委員会におきましても御承知のごとく、農業災害補償制度に関する小委員会を設置いたしてありますので、今後ともこの小委員会におきまして、十分掘り下げた検討をいたすべきものと思います。
なおまた別に国庫から防災奨励金を、低被害農家並びに町村共済組合に交付すべきこと、蚕繭共済につき蚕期別再保険を実施すべきこと、並びに農業共済基金に対する政府出資額を増加する措置を講ずべきことを内容とする附帯決議もいたしたい所存でありますので、この際申し添えておく次第でございます。以上をもつて私の討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/13
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014・松浦東介
○松浦委員長 吉川久衛君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/14
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015・吉川久衛
○吉川委員 私はただいま問題になつております議案三案につきまして、共産党を除く野党各派を代表して意見を申し述べたいと思います。
農業災害補償法の一部を改正する法律案に対しましては、政府原案の第十二條を除き、かつただいま自由党の千賀康治君外十五名提出になるところの修正案並びにその他の部分について賛成をするものでございます。私が第十二條に反対するゆえんのものは、ただいま農業共済事業におきまして一番問題になつているころは、農家の負担が非常に大きいということ、それから共済金の支払いが非常に遅れているというような問題あるいはこの共済事業の運営について改善すべき問題が多々あるのでございまして、こういうような批判の対象となるところの問題がどこから起つて来たかということをつぶさに検討いたしますならば、この第十二條はこの際日本の実情から、組合員である農民の納得のできるような確率が設定されないまでは、できるだけ農民の負担の軽減の方途を考えなければならない、軽減の措置を講じなければならない、そういうような趣旨から、私どもは政府のこの改正原案に対して賛意を表することはできないのであります。私どもは縦割り二分の一の修正案を出しているのでございますが、これとてもまだまだ十分とはいえませんけれども、ある程度災害の少い地域の負担が軽くなるという点において、私どもは一歩前進であると思います。もつと徹底したところの、農民の負担が三分の一で国の負担が三分の二というようなことも考えたのでございますけれども、すでに二十七年度の予算も決定を見ているのでございますから、ここにあまり大きな修正を要求いたしましても、政府与党の諸君がこれに同調していただけるやいなやの問題について、われわれは多少疑義を持ちましたので、同調いただける限度ということで、この際百歩を譲つてこの程度の修正案を出したのでございますけれども、それさえも認められないということであつては、われわれはただいまの日本の農村の現状から考えまして、どうしてもこの第十二條の原案に賛意を表することはできないのであります。千賀康治君ほか自由党の諸君の提案されました牧点に関しましては、私どもの修正案にもうたつているところでありまして、この点については問題はございません。われわれはこれには心から賛意を表します。その他の部分につきましても、ただいまの段階においては、これは適宜な措置であると申してもさしつかえないと思いますから、この点には賛意を表しておきます。
その次に農業災害補償法臨時特例法でございますが、この問題については全面的に賛意を表しておきます。日本のようなこういう農業経営の多角的な複雑なところで、ほんとうに理想的な一つの方向をつくるということは容易ならざる問題でありますので、誕生日浅いところの日本の農業共済事業のためには、このような措置もまた考えられるべきであるということを、われわれは納得をする次第でございまして、この措置に対しては若干の問題もあろうと思いますけれども、この試験的な措置の結果も見まして、われわれは今後改善の要があるならば、そのときにわれわれの態案をはつきりしたい。従いまして本案については全面的に賛意を表しておく次第であります。
次の農業共済基金法案の問題でございますが、当初に申し上げましたように、先日の公聴会においても、地方から出て来られた公述人の方々の御意見にも十分ありました通り、農業共済事業の趣旨がまだ農村に徹底をしていないということは事実でございます。この問題に対して農民の関心が寄せられないような原因につきましては、政府の指導監督が十分でない、あるいは普及宣伝が徹底をしていない、いろいろの問題があろうと思いますけれども、とにかく農業共済の掛金に対して支払われるところの金額が僅少であり、しかもそれが時期が遅れるということが一大原因になつているとするならば、連合会に基金を設けてすみやかに共済することは当然の措置と考えますので、この基金制度制定の趣旨にはまつたく賛成をするのでございますけれども、この法案に盛られてありますところの特殊法人をつくり、政府と農民とが半分ずつ出し合つて基金制度をつくるという考え方は、都道府県の共済連合会においてすでに不足金二十八億余りも出しているという現状を見ますときに、これ以上農家の人々に出資をさせるというようなことは私は苛酷であると考えます。そうでなくとも農村は最近非常な金詰りで、生産資材の確保等についても、あるいは税金等の問題についても非常な困難をいたしているところの実情から考えまして、しかもこれは共済制度と言わんよりは、この法の名称のごとく農業共済補償制度でございます。日本の農村の現状、終戦後の日本の農業の立地條件等を考えますと、まさに共済制度というよりは補償制度であると考えてさしつかえないと思います。そういう意味であるがゆえに強制共済をしなければならないというような結論が出て来るのでありまして、これらの趣旨にかんがみますならば、私どもはその資金の金額は国が出資すべきである。しかもその出資は赤字を補填するような性格のものではありません。必ずこれは返つて来、そして次の場合にまたこれを運用する、こういう性格のものでありますから、そのために国の負担が増すというような問題にはならないのでございます。そうしてこの基金制度の確立によりまして共済金の支払いが円滑に行われますならば、農民は初めてこの共済制度というものに関心を寄せ、そうしてこれに信頼をし、この制度の発展のために非常に私はプラスになる面が大きいであろうと考えるのでございます。そういう意味において、政府原案は乏しい日本の農村の実情から十五億も出させるというような考え方を改めて、そうして全額国が出資すべきである、こういう考え方から私どもはただいまの政府原案に全面的に反対をするものでございます。しかも法案に盛られているところによりますと、特殊法人をつくるとか申されております。かくして中央においてはいろいろの機関護けて、そこに人件費、事務費その他の経費が加算して、農村へ支払われるところの共済金額がだんだんと挾められて行くというようなこういう組織は、農民のための組織であるとは考えられないのでございます。
こういう意味において、私どもはこれに対して全然別の代案を考えているわけでございます。その代案とは農業共済事業資金融通法案というのでございます。その要綱はきわめて簡単なものでございますから朗読をいたします。
(目的)
一 この法律は、農業災害補償法による農業共済組合連合会の保険収支の長期均衡性にかんがみ、農作物共済、蚕繭共済及び家畜共済について、その保険金の支払に必要な資金を融通し、もつて農業災害補償事業の健全な運営を図ることを目的とすること。
(資金の貸付)
二 政府は、前掲の目的を達成するため、農業共済組合連合会に対し、三十億円を限度として、左に掲げる資金を貸付けることができるものとすること。
一 農作物共済に係る保険金の支払に要する資金
二 蚕繭共済 〃 〃
三 家畜共済 〃 〃
(貸付の條件)
三 貸し付ける資金の利率、償還期限、貸付の方法及び元利金の回収の方法につき、規定すること。
(貸付金の使途の規正)
四 貸付金を貸付の目的以外に使用を禁ずること。
2 前項の違反について、弁済期前の償還、違約金の納付等の処置を講ずること。
(業務の委託)
五 農林中央金庫その他主務大臣の指定する金融機関に業務を委託することができるものとすること。
(報告及び検査)
六 貸付を受けた者若しくは受託者から報告を徴し、又は業務の状況若しくは帳簿、書類等につき検査できるものとすること。
(主務大臣)
七 主務大臣は、農林大臣及び大蔵大臣とすること。
(特別会計法の設置)
八 特別会計を設置すること。
(罰則)
九 所要の罰則を規定すること。
要綱は以上でございます。この要綱に一つ落ちておりますのは、運用の審議会の事項が落ちておりますが、それを加えましてできましたところの法案が皆様方のお手元に配付してありますから、それをごらんいただきたいと思います。このようにいたしまして、私どもはただいま日本の農業共済災害補償制度というものについて今後きわめて円滑なる発達を期待するために、このような修正もしくは代案をもつて臨んだ次第でございます。各位の御賛成を得まするならば幸いに存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/15
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016・松浦東介
○松浦委員長 竹村奈良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/16
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017・竹村奈良一
○竹村委員 私は日本共産党を代表いたしまして災害補償法の一部を改正する法律案並びにただいま提案されました千賀康治君ほか十五名提出の修正案、この修正部分を除く原案等に対して反対を表明したいと思います。
近年日本の農業災害は毎年激増しているのでございますが、この問題について、まずこの原因というものは一体何であるか。もちろん異常災害等におきましては、政府は常に天災のみを目的にいたしているのでありますが、しかしながらわれわれは今日この天災をも最小限度にとどめるところの施策がまず第一になされなければならぬと思うのであります。ところが政府はいわゆる異常災害というものを単に天災の責任に帰して、そうしてこの天災によるところの災害を最小限度に食いとめるためのいろいろな施策、いわゆる造林、河川におけるところの決壊をも最小限度に食いとめるいろいろな施策、そういうものが第一欠けているところに大きな災害増大の一つの原因があると私はまず第一に見るのであります。なお虫害その他の災害に対しましても、根本的な防除対策が欠如している、こういうところにもまた一つの原因があると思います。ところが問題は、こういう災害を防ぐために、政府はいわゆる虫害の防除対策にいたしましても、農家がこれをやるべきだとして、若干の指導あるいは若干の施策はしておりますけれども、おおむねその責任を農家に負担さしておるのでございます。
しかしながら今日の農業経営は、いわゆる現在政府が唱えております資本主義経済機構のもとにおいて、根本的に成り立たない仕組を要請されておる。このことは、今日の政府の農業政策が、現在政府がとりつつある資本主義機構のもとにおける資本主義経済組織にマッチしておらないところに大きな原因があるとわれわれは考えるのであります。つまり農民みずからが行えないところの原因はそこにある。これはいろいろ議会に申し上げておりますように、たとえば農産物価格と工業生産品との価格差等を考えましたときに、このことが判然とするわけであります。そこでこの災害補償法というものを、政府はそういう農業政策のもとにおいて共済制度にすりかえ、そうして保険の掛金を農家と政府との負担、いわゆる農民相互の共済制度ということを考えておるのでありますけれども、今日の農業経営から考えまして、農民みずからが助け合うというこの共済制度が、はたして成り立つものであるかどうか。共済掛金の負担の過重ということは全国農民のひとしく唱えておるところであります。それではなぜ農民がこの掛金の負担の過重を唱えるか。それは農民自身が、実際から申しまして人を助けるどころではない。助けてもらわなければならないのが農家全体だということを表明しているのであります。農家は人を助ける前にまず自分の農業経営が成りたたない。ここにこの共済掛金の過重を訴えているのである。人を助け得るところの農業経営が成り立つておるとしまするならば、おそらく農家はよろこんでこの掛金をかけるでありましよう。しかしながら農家は、他の農家の災害を、自分も一役買つて助け得るという経済的基礎が与えられていない。そこで農民が常に掛金の過重を唱えているのであります。従つてわが党といたしましての考え方は、少くとも今日現われている法案の名前から考えまして——これは小またすくいになるから申しませんけれども、少くとも災害を補償するという法律の建前から考えましても、掛金は農家にかけさすのではなしに、全額国庫で負担すべきが当然である、こう
いう建前に立つておるのであります。従つて農民にかけさすところの掛金は全廃して、全額国庫で負担しなければならない、こういう建前から私はこの修正案並びに原案に反対するわけであります。
ところでもう一つの、いわゆる井上君外七名の提案されました修正案につきましては、そういう原則から考えますならば、第十二條の改正要綱は農民の負担を軽減するという意味から一歩前進であるとは考えますけれども、しかしわが党の唱える根本的な態度から申しますならば、遺憾ながら賛成することはでき得ないのであります。
続きまして農業災害補償法臨時特例法案でございますが、この案についてもわが党は賛成することができ得ないのであります。なぜなら、まずこの出されました三法案を流れる精神を考えますならば、一方においてはいわゆる基金制度を設け、一方においては最初の改正案において、従来食管特別会計やその他から出しておりましたところの負担金を、あたかも国家が負担するということに、一応法律的に制度化はしておりますが、この特例法案のねらいとするところは、もちろんこれは試験的に行うとはいつておりますが、しかしこれは従来の農家に支払うところの保険金が、少くともごの案で行きますならば三分の一以下になることは、火を見るよりも明らかであります。従つてこの案のねらいとするところは、まず試験的に実施して、そうして保険金を農家に支払う場合に三分の一になるということが明らかになつたならば、これを特例法案ではなしに恒久化しようとするものであることは、今日の政府の従来とり来つた考え方から申しましても明らかであると思うのであります。譬喩的にこれを申しますならば、今まで一反の災害に対して保険金を支払つておつたが、今度は農家一戸に対するところの災害でなければこれを支払わない。もちろん二割以上ということで、一割の災害の引上げを認めておりますけれども、しかしながら最も根本的に申しますならば、けがをしたときに支払うといつて傷害保険をかけさしておきながら、けがしたときに払わない、一反災害を受けても払わない。農家一戸の災害でなければ払わない。つまり生命保険であつて、初めは傷害保険だといつて、けがをしたならばやるぞといつておきながら、結果的には生命を失わなければやらないという、こういう法案にすりかえようとしておるのであります。こういうふうに農家の災害を一戸単位にすること自体は理論的にも問題があると思うのであります。従つて私はこれに対しても反対するものであります。
なお基金法案につきましては、これは最も農家に対して二重負担になるきらいがあるところの法案であります。たとえば今日各連合会におきましては、政府も認めておりますように二十八億円の赤字を持つておる。その上に三十億を積み立てる中で十五億を農家に負担さして、一応出資さすというのでありますが、農民は共済金をかけておる。従つて災害があつたならば当然これに対して政府は支払わなければならない。その災害保険をかけて当然もらえるものを、この支払いが遅れるとかなんとかというので、まずお前がもらう分の半分を出資しておけ、それだつたならばすぐ払つてやるというようなことで、これは二重負担になると思う。少くともこういうのではなしに、先ほど改進党の吉川君から説明されましたような、いわゆる別な形における。しかも政府の全額負担によりまして即時支払えるような方法を講ずべきである。こういうような現在出されておるところの法案に対しましては、農家の負担をいたずらに増大し、しかも結果的には、連合会は二十八億の負債を持つておる、しかもその上に農家から集めようといたしましても、実質的にはこれは集まらない。そうすると保険金の支払いの中から差引くというような形が出て来るのではないか。あるいはそのために農家が当然もらえるものが削られるきらいが非常に濃厚であるという考え方から、私は本法案に対しましても反対せざるを得ないのであります。
なお私この際申し上げておきたいのは、最近農民団体から、いわゆる共済のかけ方をめぐつて、いろいろな陳情がなされておりますけれども、私は日本の農民の立場から考えますならば、はなはだ迷惑しごくである、少くとも農民は、いかなる立場からいいましても、農民自身はどの連合会がやり、どの連合体がやるといたしましても、農民にとつては、出るところは一つであゆ受けるところは一つである。少くともこういう全国的な農業団体が、いろいろな形においてなわ張り争いをすること自体が、いわゆる全国的な農民団体そのものが、真に農民の味方から脱落せんとする一つの前提である。つまりこういう争いが起りますれば、少くとも政府につけ込まれる。いたずらに農民団体の分裂を来して、それに乗じて政府が農民の負担を加重せんとすることは、火を見るよりも明らかであります。こういうような愚劣な争いを即時やめさせる施策を政府みずからがとらないところに、問題がある。少くとも、政府は、この農民団体の分裂を助長しているといわざるを得ないと私は思うのであります。こういう点につきましても、本法案に対しましては反対いたすものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/17
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018・松浦東介
○松浦委員長 これにて討論は終局いたしました。これより逐次採決に入ります。まず農業災害補償法の一部を改正する法律案について採決するわけでありますが、念のため採決の順序を申し上げます。千賀康治君提出の自由党修正案は、井上良二君提出の改進、社云会両派共同の修正案中にもまつたく共通の部分を含んでおりますので、まず最初に千賀康治君提出の修正案及び井上良二君提出の修正案中、右と共通の部分、すなわち共済団体についての定例検査の点、及び賦課金の賦課に関する点について採決し、次に井上良二君拠出の修正案中、共通ならざる部分について採決し、最後に原案について採決いたすことになりますから、御承知おきを願います。
まず、千賀康治君提出の修正案及び井上良二君提出の修正案中右と共通の部分について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/18
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019・松浦東介
○松浦委員長 起立多数。よつて千賀康治君提出の修正案及び井上良二君提出の修正案中、共通の部分は可決せられました。
次に井上良二君提出の修正案中、共通ならざる部分について、賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/19
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020・松浦東介
○松浦委員長 起立少数。よつて共通ならざる部分は否決せられました。
次に先ほど可決せられました修正部分を除く以外の、農業災害補償法の一部を改正する法律案の原案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/20
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021・松浦東介
○松浦委員長 起立多数。よつて本案は自由党修正案及び改進、社会両派の修正案中の共通部分のごとく修正すべきものと決しました。
次に農業災害補償法臨時特例法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/21
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022・松浦東介
○松浦委員長 起立多数。よつて本案は、原案の通り可決すべきものと決しました。
次に農業共済基金法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/22
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023・松浦東介
○松浦委員長 起立多数。よつて本案は、原案の通り可決すべきものと決しました。
なお、千賀康治君より農業災害補償法の一部を改正する法律案、及び農業共済基金法案の両案に対して、それぞれ附帯決議を付したいとの動議が提出いたされております。趣旨の弁明を求めます。千賀康治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/23
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024・千賀康治
○千賀委員 農業災害補償法案は、百数億というような非常に多額の国家資金が投ぜられておるのにかかわらず、いまだ出先の農村におきましては、この制度に対しましてさまざまな流説が飛んでおります。それには一部分、この制度の真意がよくわからないという点もございましようが、その他この制度の運用がいまだ幼稚の域を脱しないという点もあつたり、いろいろいたしまして、この問題につきましては、当農林委員会におきましてもすでに取上げられており、何とかこれが適切な措置を設けまして、国民全体、少くも農民全体がこの制度を謳歌するように、理解をさせなければならない。また運用の点を進めなければならない。こういうわけで、特別小委員会も設けられておるわけであります。そこで今日修正案が可決せられたわけでございますが、この修正案が可決に至ります道程におきましても、この小委員会におきまして数回論議を重ねまして、適当な措置を見つけるように努力が払われたのでございますが、いまだその努力が終局に達しておりません。目的が達せられるに至つておりません。そこでただいま附帯決議の案文を朗読いたしますが、皆様の御賛成を得まして、本決議案を可決いたしまして、政府にも適当な措置をとらせ、政府並びに国会協力いたしまして、目的達成の彼岸に早く達したいと思うのであります。
農業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
一、低被害地域にあつては農家並びに町村共済組合が防災について非常な努力と犠牲を払つているのであるから、これらの努力と犠牲に報い防災を奨励する見地から国庫において相当額の防災奨励金を準備し、低被害農家並びに町村共済組合にこれを交付するよう早急に措置すること。
二、今春の霜害にかんがみて、蚕繭共済については早急に蚕期別再保険を実施するに必要な措置を講ずること。
農業共済基金法案に対する附帯決議
一、農家経済の窮迫している現情に照らし、農業共済基金に対する政府出資額を将来増額するよう努力すること。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/24
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025・松浦東介
○松浦委員長 ただいまの千賀君の動議に対して、御意見なり御質疑があれば、発言を許します。
これより採決いたします。ただいまの附帯決議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/25
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026・松浦東介
○松浦委員長 起立多数。よつて附帯決議をすることに決しました。
なおお諮りいたします。ただいまの三案についての衆議院規則第八十六條の規定による報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/26
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027・松浦東介
○松浦委員長 それでは、さようとりはからいます。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304988X03919520527/27
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