1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年四月二日(水曜日)
午前十一時九分開議
出席委員
委員長 竹尾 弌君
理事 岡延右エ門君 理事 若林 義孝君
理事 甲木 保君 理事 小林 信一君
鹿野 彦吉君 坂田 道太君
圓谷 光衞君 長野 長廣君
平島 良一君 水谷 昇君
井出一太郎君 笹森 順造君
渡部 義通君
出席国務大臣
文 部 大 臣 天野 貞祐君
出席政府委員
文部事務官
(大臣官房総務
課長) 相良 惟一君
文部事務官
(大臣官房渉外
ユネスコ課長) 釘本 久春君
委員外の出席者
外務事務官
(情報文化局第
四課長) 戸田 盛国君
文部事務官 石沢 貞義君
專 門 員 石井 勗君
專 門 員 横田重左衞門君
―――――――――――――
四月一日
委員首藤新八君辞任につき、その補欠として根
本龍太郎君が議長の指名で委員に選任された。
―――――――――――――
三月三十一日
連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法
律案(内閣提出第一四五号)(予)
同月二十八日
高等学校教職員の俸給表制定に関する請願(玉
置實君紹介)(第一七四九号)
同(玉置實君紹介)(第一七七一号)
東北大学教育学部を宮城学芸大学として独立設
置の請願(庄司一郎君外一名紹介)(第一七五
〇号)
地方教育委員会の設置單位等に関する請願(森
幸太郎君外二名紹介)(第一七七二号)
学校給食継続実施等に関する請願(加藤隆太郎
君紹介)(第一八一四号)
の審査を本委員会に付託された。
同月二十九日
義務教育費全額国庫負担に関する陳情書
(第一〇七三号)
同(第一〇七四
号)
高等学校職員の俸給表制定に関する陳情書外一
件
(第一〇七五号)
を本委員会に送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
ユネスコ活動に関する法律案(内閣提出)(第
六二号)
教職員の除去、就職禁止等に関する政令を廃止
する法律案(内閣提出第一一〇号)
連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法
律案(内閣提出第一四五号)(予)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/0
-
001・竹尾弌
○竹尾委員長 これより会議を開きます。
日程の順序を変更いたしまして、連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案を議題とし、提案理由の説明を求めます。天野文部大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/1
-
002・天野貞祐
○天野国務大臣 ただいま政府から提出いたしました連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案について、その提案理由及び内容について御説明申し上げます。
この法律案は、日本国との平和條約第十五條(C)の規定に基くものであり、同條約に規定されている事項と同一事項を規定するものでありますが、このような法律案を提出するに至りました理由は、次の通りであります。すなわち、対日平和條約のこの規定だけでは、一般国民の理解に不十分な点もあり、また実施上の細目について欠けるところもあります。そこで條約上の義務を日本国及び日本国民が誠実に履行するために、また将来において起り得べき問題をできるだけ避けるためには、同條約同規定の解釈を法律で定める必要を認めたわけであります。
次に、この法律案の内容について、おもなる点を申し上げます。
第一は、著作権に関する日本国との條約または協定が廃棄または停止された場合においても、連合国及び連合国民が戦時中に取得した著作権は、これを保護する旨を明確にいたした点であります。第三條はこれに関する規定であります。
第二は、この法律案は、著作権法に規定する著作権の保護樹間に関する特例を定めたことであります。すなわち、(イ)昭和十六年十二月七日に日本国において存在した連合国及び連合国民の著作権は、著作権法に規定する期間に、戦争期間に相当する期間を加算した期間継続することといたしました。また(ロ)戦争期間中に生じた連合国及び連合国民の著作権は、著作権法に規定する期間に、著作権が取得された日から、日本国と当該連合国との間に対日平和條約が効力を生ずる日の前日までの期間に相当する期間を加算した期間、継続することといたしました。第四條はこれらに関する規定であります。(ハ)著作権のうち特に翻訳権に関する保護期間については、前述(イ)(ロ)による加算期間に加え、さらにおのおの六箇月を加算することになりました。具体的に申しますと、著作権法第七條第一項に規定している翻訳権に関する十年という期間は、この十年に前述(イ)(ロ)による戦争期間を加え、さらにおのおのの場合において六箇月を加えた期間となります。第五條はこれに関する規定であります。
第三は、前述の連合国及び連合国民の著作権の保護期間延長の利益は、日本国と当該連合国との間において対日平和條約が効力を生ずる目に、連合国及び連合国民が有する著作権のみが受けることと規定いたしましたことであります。すなわち、その日に非連合国または非連合国民が譲渡を受けて権利者となつている著作権は、本法による期間延長の利益を受け得ないのであります。第六條はこれに関する規定であります。
第四は、連合国及び連合国民の著作権に関する譲渡については、著作権法に定める原則通り、登録をしなければその権利を第三者に対抗できないこととし、またこの登録については、連合国及び連合国民に対しても、登録税を課することといたしましたことであります。第七條はこれに関する規定であります。
以上が、この法律案の提案理由及び内容であります。何とぞよろしく御審議の上、すみやかに御可決くださるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/2
-
003・竹尾弌
○竹尾委員長 本法案に対しまするただいまの説明に対する質疑は、次会に譲ることといたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/3
-
004・竹尾弌
○竹尾委員長 次に、教職員の除去、就職禁止等に関する政令を廃止する法律案を議題といたします。前会の文部当局の説明に対して、質疑がありますれば、これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/4
-
005・渡部義通
○渡部委員 教職員の除去、就職禁止等に関する政令を廃止するという場合に、問題になるのは、説明の中で「同令廃止前の違法行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による」という、この違法行為の内容、これは大体どういうものが違法行為として、教職員の資格取得問題に関連して来たものであるか、従来の例をひとつ聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/5
-
006・相良惟一
○相良政府委員 適格審査の規定に、違法行為に該当いたしますものといたしましては、不適格者を故意にその職につかしめた場合であるとか、あるいは不適格者が教職についた場合であるとか、あるいは調査票に虚偽の記載をした、あるいは事実を隠した記載をした場合、それから最後に、調査票を徴せられましたにかかわらずこれを出さなかつた、この三つの場合でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/6
-
007・渡部義通
○渡部委員 大体この教職員の就職禁止というものは、軍国主義、超国家主義者に対する追放ということに関連しておつたわけでありますが、これはその教職員たちが、実際上日本の犯罪戦争の遂行に協力したという意味で、しかもこれは戦後日本の民衆が実現しようとして来た民主国家の発展のためには、ぜひとも必要なものとして、国民もこれに協力したわけであります。しかしその場合、やがて情勢が変化しまして、アメリカの占領者及び日本政府が進歩的な活動に対する、あるいはアメリカや日本当局の反動的な政策に対して闘つて行く運動全体に対する弾圧が強化されるに従つて、次第に進歩的な教職員に対する迫害が加わつて来たのでありまして、このことが、従来ならばほとんど問題にならなかつた事柄が、公職追放あるいは不適格者の條件となつて来た実例が、しばしばあるわけであります。一つの例をあげますと、平野義太郎君が教育委員の候補者として立とうとして、適格審査の要求をしたときに、これはほとんど問題にもならないし、その意図はまつたく違つておつたある文書がたまたま反動者に利用せられて、不適格者ということにされて、この選挙戦に臨むことができなかつたわけであります。これに対しては、当時の進歩的な学者たち全体が反対したばかりでなくて、中立的な学者たちまでが、これに対して憤慨したわけでありますが、しかしとうとう不適格者にされてしまつた。こういう実例があるわけであつて、このような例は、ほかにもしばしばあるのでありますが、この法案がかりに実現しました際に、そういう人たちに対する取扱いはどうなるのか、この点を明確にされたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/7
-
008・相良惟一
○相良政府委員 現在なお六百七十名の未解除者が残つておりますが、これらの人々につきましても、講和條約発効以前に解除の手続をとるように、至急手続をとつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/8
-
009・渡部義通
○渡部委員 そうしますと、現在不適格者として存在しておる者、言いかえれば、未解除者が六百七十名だけであり、その六百七十名全部の追放解除、あるいは不適格條件の解除ということが、実現されることになつておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/9
-
010・相良惟一
○相良政府委員 大体六百七十名の大半は職業軍人でございますが、職業軍人につきましては、目下関係方面と、なるべく解除がすみやかに実現して行くように折衝中でございます。それ以外の人々につきましては、ただいま申しました通り、できるだけ早く解除したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/10
-
011・渡部義通
○渡部委員 解除したいというのは、文部省の方針として、その方針が確立しているわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/11
-
012・相良惟一
○相良政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/12
-
013・渡部義通
○渡部委員 大体こうしたことに関連しまして、教育者の追放問題が、情勢の反動化とともに全国に起きたわけですが、こうした問題についての考慮は、どういうふうになされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/13
-
014・相良惟一
○相良政府委員 こうした問題と申しますと、どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/14
-
015・渡部義通
○渡部委員 追放者に対する今後の処置です。従来、日本の発展の上に、あるいは日本民族の不幸や犯罪の上に非常に大きな役割をなした教育者を、今追放から解除するというのであつたのでは、当然いわゆる赤色パージといわれた形で追放された民主的な教授たちに対する処置も、同時に考えなければならないし、そう考えることが中正であり、妥当であると思われるわけですが、この場合これと関連して、この処置をどういうふうに考えられておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/15
-
016・相良惟一
○相良政府委員 こういうような制度を全廃いたしまして、今後教職に再びつくことにふさわしいと認められる人は、おのおの任命権者の良識によつて、教職につくことが可能になると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/16
-
017・渡部義通
○渡部委員 そうしますと、赤色パージというような形で、全国的に不当な浪放を受けた教授あるいは教職員たちが、今後は当局者の考えいかんによつて、自由に就職できるということなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/17
-
018・相良惟一
○相良政府委員 民主教育に携わることがふさわしいと考えられる場合は、教職につくことはもちろん自由になり、可能になると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/18
-
019・渡部義通
○渡部委員 そうすると、従来の追放令によつて、つまり今廃止されようとする法律に基いて追放された人たちのうちには――もちろん一部分は、新しい進歩的な情勢に応じて、考え方や実践の上でも違つて来ている人たちもあるわけでありますが、しかし、むしろ今日のような反動的な趨勢の中にふさわしいような人たちが、もちろん多いのでありまして、こういう人たちは、民主的な教育を実現するという上からは、決してふさわしい人たちでは、今日でも断じてないのである。こういう人たちがこの教育界に全部復帰して来るということになりますと、日本の教育の反動化、戦争教育にふさわしい教育が、再び日本の中に高まつて来るという、懸念すべき問題が当然起きて来るわけですが、こういう場合には、解除された人たちが旧職に復するというようなことが、原則的にあるのではなくて、これもまた学校当局の方針いかんによつて就職するということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/19
-
020・相良惟一
○相良政府委員 ただいま申しました通り、任命権者の裁量によつて、就職が可能になると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/20
-
021・渡部義通
○渡部委員 それでは次の点に問題を発展させますが、文部当局としては、戦時中戰争協力のために追放されたような人たちが、今日学界あるいは教育界に復帰するということが、今日の情勢で好ましいことと思われるのか、またレッド・パージという名によつて不当な追放を受けた人たちが、今日その職に返つて民主的な運動を進めることが正しいと考えられるのか、この二つの点を、方針として考えておられるに違いないと思われるので、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/21
-
022・相良惟一
○相良政府委員 要するに、このような制度を廃止いたしますことは、教職追放制度の目的は、もはや完了したと考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/22
-
023・岡延右エ門
○岡(延)委員 ただ一点だけお伺いいたします。
本案は、教職員の就職禁止等に関する政令を、全面的に廃止することを目的とするものと解するのでありますが、政府は、これを廃止した後に、教職員の就職適格に関しまして何か別個の措置を講ずる考えであるか、何もしないで野放しにする考えであるか、その点について、大臣の御答弁をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/23
-
024・天野貞祐
○天野国務大臣 別にかわつた処置をする考えは持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/24
-
025・竹尾弌
○竹尾委員長 ほかに質疑はございませんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/25
-
026・小林信一
○小林(信)委員 今年の予算の中を見ますと、この適格審査の問題はなくなるけれども、しかし、何か特別の予算がとつてありまして、当分の間、これにかわるものを存置するために費用が必要であるというふうに、予算書に説明がついてとつてあると思いますが、これとは関係はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/26
-
027・相良惟一
○相良政府委員 もちろん、かような制度を廃止いたしますと、あとに残務整理の必要もございましようし、それに関する予算は考えておりますが、なお予算編成の際は、こういう制度を全廃するという、そこまでまだ客観情勢が至つておりませんでしたので、多少形をかえて――現在の制度以上のものを強化するというような考えではなく、多少これにかわるものを考えておつたときもあつたのでございますけれども、その後いろいろ情勢の推移によりまして、かような制度を全廃をするということにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/27
-
028・竹尾弌
○竹尾委員長 ほかにございませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/28
-
029・竹尾弌
○竹尾委員長 御質疑がないようでございますから、これにて質疑を終了いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/29
-
030・竹尾弌
○竹尾委員長 御異議なしと認めます。質疑はこれにて終了いたしました。
これより討論に入ります。
ちよつと速記をやめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/30
-
031・竹尾弌
○竹尾委員長 速記を初めて。
討論の通告があります。これを許します。渡部義通君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/31
-
032・渡部義通
○渡部委員 教職員の除去、就職禁止等に関する政令を廃止するということについては、われわれは原則的に賛成であります。
本来、軍国主義あるいは超国家主義的な活動によつて戦争に協力して、日本民族の悲惨と、日本民族の他民族に対する犯罪行為を助長した者は、当然日本のあらゆる領域から締め出さるべき性質のものであります。それは、実は国民の声として要求したのであつて、国民はもつと広汎な人々を、各分野の活動的な地位から、ポストから追放すべきであると、強力にあの当時要求したことは、すべての人が御存じの通りであります。本来、国民の力によつてこういう人々を追放し、ほんとうに民主的な教育界をつくり出さなければならなかつたのであるが、たまたま当時の権力者によつてこういう政令が持ち出されたというところに、日本の教育界のその後における非常な困難が来たのであり、日本の民主的な改革というものの弱さがそこに根を発したわけでありまして、今日われわれは、外国の支配のもとにできた法律の一つを廃止するという意味では、いかなるものでも、大体において廃止すべきであるという意見でありますので、そういう点から賛成するわけであります。
但し、教職員の追放が、あるいは不適格的な決定が、この法律によつてなされたのではなしに、もつと別な政治的な理由によつて、非常にすぐれた進歩的な教授から教員に至る厖大な数が追放されておるという事実をわれわれは省みなければならないと思う。これらの人たちこそ、日本の教育の民主化と、将来の発展にとつて非常に重大な役割を果すべき人々であつたのであります。その人たちが追放された。これは日本の民主化をはばむ勢力がこれを追放したのである。具体的に言うならば、アメリカ占領者と、日本の吉田政府の方針が、民主化の方向に進むのではなしに、日本を再び軍事警察的な国家にし、それに応じた教育を国民の中に推し広めることなしには、アメリカ占領者の対日政策を貫くことができないという根本的な世界政策の一環としてこれが行われたという事実を、われわれは確認しなければならないと思うわけであります。
こういう意味で、この法律は廃止すべきであるけれども、日本の教育をほんとうに民主的に、将来の日本民族の発展に役立つものとしてつくり上げて行くためには、レッド・パージをも含めたすべての追放者が、これと同時に旧識に復して行けるような努力がなされなければならないし、また他方では、この法律が廃止されたからといつて、今後日本の軍事警察的な方向に、あるいは戦争準備の科学や教育に協力するような教員たちは、国民の力によつても、また文部当局の方針によつても排除するという根本的な態度を、われわれは持つて行かなければならないと思うのです。こういうことを原則的に文部当局の方針としても確立した上で、この法律を廃止したところの実効というものを、日本の民主化の前進という点に向けて進めて行く、そういう立場から、私はこの政令の廃止には賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/32
-
033・竹尾弌
○竹尾委員長 討論はこれにて終局いたしました。
これより採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立をお願いいたします。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/33
-
034・竹尾弌
○竹尾委員長 起立総員。よつて本案は原案通り可決いたしました。
本法案の報告及び報告書の提出につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/34
-
035・竹尾弌
○竹尾委員長 御異議なしと認めさよう決定いたしました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/35
-
036・竹尾弌
○竹尾委員長 次に、ユネスコ活動に関する法律案を議題といたします。前会に引続き質疑を許します。渡部君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/36
-
037・渡部義通
○渡部委員 この前私は、このユネスコ活動に関する法律案の技術的な面について二、三質問したのでありますが、その技術的な面においてさえ、大臣の出席なしには、十分に政府当局の方針を伺うことができなかつたわけであります。そこで、きようは若干この問題について、質問したいと思うのであります。第一に、ユネスコ活動を推進する上に、各方面の意見を十分に取入れなければならないという説明がなされております。これはしごくけつこうなことでして、ぜひともそうしてもらわなければならぬわけでありますが、ユネスコ、すなわち国際的な教育、科学、文化活動を行う上には、何よりも、まず日本の教育、科学、文化活動を高めることが必要であります。しかも、その教育、科学、文化活動は、日本民族独自のものの発展こそが、外国との交流の基礎となると私たちは考えております。日本民族の教育、科学、文化というものは、国民の動きの中から、終戰以来特に高まつて来たのでありますけれども、現在では、この国民的な動きというものが押えつけられて、この国民的な教育、科学、文化活動に対して、官僚統制が非常に強化される傾向を持つているのであります。大臣は、この民族の文化の源泉である働く大衆の動きの中から芽ばえ、成長しつつある教育、科学、文化活動について、その意義をどういうふうに考えておられるか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/37
-
038・天野貞祐
○天野国務大臣 私は、そういう文化、個性というものを尊重して行かなければならぬというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/38
-
039・渡部義通
○渡部委員 その育成の場合に、現在発生しつつあるものを、どういうふうに重大なものとして把握しておられるか。これは政府のこの活動を促進する上に、最も重大な問題になつて来るし、日本の文化全体の上で、非常に重要になつて来るので、この点を、もう少し詳しく聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/39
-
040・天野貞祐
○天野国務大臣 民主主義的な傾向を、できるだけ助長して行きたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/40
-
041・渡部義通
○渡部委員 次に、国際ユネスコ活動の性格について見ましても、またこの法案の中でうたつていることにつきましても、第一に重要なのは、諸国民の生活を知り、教育、科学、文化を通じて、諸国民間のこれらの点に関する交流をはかり、理解と協力を進めるということがうたわれておるわけでありますが、この場合、私たちは、確かに日本の現在の教育にせよ、文化にせよ、科学にしましても、いろいろ外国のものを取入れ、日本のものを外国に伝えるというある努力が拂われておるということは認めておるわけです。しかし、それは一部分であると同時に、一面的でありまして、他面では外国人の現実の生活や、その外国の発展の要素や方向や、あるいはその国に興つておる科学、技術、教育、文化というような事柄が、日本に十分に入つて来ない、あるいはそれを視察することが非常に妨げられておるという他の現実をも、認めざるを得ないわけであります。たとえば、外国の出版物でありますが、ソ連とか中国とかから、出版物が十分な形で入つて来ない。少くとも、いろいろな形でこれらの入国が妨げられておるばかりでなくて、中共とかソ連とかの出版物を頒布したという理由だけによつて、中日親善協会の数人が軍事裁判にかけられておるというような事実があるわけであります。このようなことがあつては、中国とかソ連とかいつたような前進的な社会の文化を日本が攝取し、あるいはこれらの国に日本独自の文化を伝えて行くというような交流の機会が、非常に妨げられておるわけであります。しかも、日本としましては、中国のようにあの非常に低い段階であつた社会が、その後あの変革を経て非常に急速に発展した、それはどういうところに原因があるか、あるいは発展した中国がいかなるものを生み出しておるかということは、日本の民族の将来の文化を考える上からいつて、非常に重大なことであるからぜひともこれは日本の国民が知らなければならぬ問題であるし、また国民はこれを知ることに非常に大きな期待を持つておるわけです。しかし、それが妨げられておるということであつては、これは地理的環境からいつても、歴史的、伝統的な関係からいつても、非常に深い関係のあるこれらの前進的な文化と交流するということが、非常に困難になつて来る。この点について、文部当局としては、どういうふうに今後これらの国々との文化交流を築いて行こうとしておられるのか。制限があるとすれば、どういう点に制限があり、また文化交流の上からいつて、どういう制限が取除かれなければならないと考えておられるのか、その点についてお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/41
-
042・天野貞祐
○天野国務大臣 世界中がみんな平知になつて、文化が十分に交流するようになるということを、私どもは希望しておるのでありまして、それが現実においてはまだできないということは、非常に遺憾なことで、そういういろいろな障壁が、だんだんにユネスコ精神の徹底によつて取除かれる、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/42
-
043・渡部義通
○渡部委員 しかし、ユネスコ精神が、このような形で世界の平和が実現されて、交流が全般的に行われることを期待されるとすれば、このユネスコ活動に関する限り、それはむしろ積極的に中国とかソ連とかとの文化的交流の関係を樹立する努力が、拂われなければならないと思うわけでありますが、この点についての見解は、いかがでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/43
-
044・天野貞祐
○天野国務大臣 私どもは、ただ観念的にものを考えるのではなく、現実に即して考えるわけでありますから、現実において可能な道において、できるだけどこの国とも文化の交流をするようにいたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/44
-
045・渡部義通
○渡部委員 現在ソ連であるとか中共からの出版物の自由な輸入状態、あるいは制限された輸入状態は、どういうふうになつておりますか、この点お聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/45
-
046・天野貞祐
○天野国務大臣 現実はいろいろそういう点にまだ不完全な点があると思いますので、今後だんだんユネスコ精神を徹底して、世界中そういうことがどこでも自由にできるようにしたいと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/46
-
047・渡部義通
○渡部委員 中国やソ連が、日本との文化的な交流を積極的に望んでおるばかりでなくて、もちろん日本との政治的な平常な関係の樹立も、積極的に望んでおるのでありますが、実はこれを妨げておるのは、中国に対する政策、つまり中国のかわりに台湾政権を承認するというような吉田内閣の政策、またそれを支持しておるアメリカ占領者の政策、そういうところから来ておるのであつて、従つて現実には、こういう政治関係が存在すからこそ、文化交流という問題さえも、こちらからとざして行くということになつておるわけだと思うのです。このことに関連して、たとえば、文化の上で非常に大きな影響力を持つておる映画の輸入問題でありますが、これは一年間のわくが、アメリカの場合には百五十本にもなつておるのに、ソビエトの場合にはわずかその五十分の一である三本にしかなつておらない。こういうことは、改善しようとするならば、幾らでも改善の努力がなされ得るのであり、これは日本の国内の努力によつて、もつて公平なわくのきめ方もできるのであります。こういうわくは、妥当なものとして、文化的な交流が順調な形で進行しているものと認めることは、だれしもできないわけでありますが、これについての文部当局の考え方はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/47
-
048・天野貞祐
○天野国務大臣 世界のそういう平和的な交流というものを、何が妨げているかということについては、いろいろな見解があつて、渡部さんの見解にすべての人が同意するわけじやないと思いますから、それは見解が違うということであります。ただ、このユネスコの活動によつて、できるだけすべての方面における文化の交流を盛んにしたい、こう考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/48
-
049・渡部義通
○渡部委員 それでは、今申し上げた映画のわくの問題でありますが、これなどは、非常に重大な問題だと思うのです。大臣は、映画をどれだけごらんになつておるか知りませんが、また私も、それほど映画は見ておりませんけれども、アメリカ映画を見ますと、大部分がアメリカ的な映画であり、日本の、それでなくてさえ廃頽を歴史的にも増大しておる現実の状態と、さらに拡大的に廃頽せしめて行くというような性質のものが、非常に多いのであります。(「ソビエト映画はどうだ」と呼ぶ者あり)しかしソビエト映画は、見た人ならばだれでもわかるように、健全なもので廃頽的なものではない。ソビエト映画の大部分は、ソビエトの国民がいかに国内建設の急速な発展のために協力しておるか、平和のために協力しておるかというような面を、その生活の中から描き出したものであるか、また芸術的なものであつても、自由党の諸君であつても、これを見られた人は、みなびつくりするほど芸術的な進歩を持つておるわけでありまして、国民もまた、ソビエト映画と言いますと、非常に多数がこの観覧に出かけて行つております。こういうものがわずかに三本であつて、アメリカの映画が百五十本であるというようなことは、はなはだ不当であるばかりでなく、このことの中に、日本の文化的交流というものの現実の姿が、はつきり示されておるわけであります。だから、こういうことを矯正して行かなければ、国際的な文化交流、あるいは国際的な理解と協力を進めるという本法案の精神とも、相反することになるだろうと思うのです。だから、これをどういうふうにかえて行かれるかという文部当局の方針をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/49
-
050・天野貞祐
○天野国務大臣 そういうことも、このユネスコの協力会でよく検討したらよいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/50
-
051・渡部義通
○渡部委員 大臣は具体的な問題についての解決の方針さえも、まだ見つけておられないようであります。だから、こういう問題については、ぜひとも急速に正しい解決の方針を出されて、積極的に公平な文化交流をはかられるような施設をされんことを希望する以外には、方法がありません。
次に、大法案でも、ユネスコ憲章でも、非常に強調しておりますことは、世界の平和と人類の福祉ということであります。世界の平和を実現する大前提の一つは、大臣も先ほどおつしやられたように、平和の空気をつくり出して行かなければならぬ、確かにそうであります。しかし、われわれが、歴史的に科学的に考えてみて、平和を築き上げて行くところの前提というものは、侵略とかあるいは民族圧迫とかということを必然に生み出さなければならないような社会をかえて行く、民族自決というものの前提に立つたところの民族協力ができて行けるような社会の姿につくりかえて行かなければならぬ。これは社会の変革を要する問題であります。民族の抑圧と侵略という事柄は、歴史的に見て、だれも否定できない。このように、自由党の諸君でさえも、私の意見には反対の諸君でさえも、科学的にはだれしも認めなければならないように、これは資本主義、ことに帝国主義時代の社会の必然的な結果であるわけであります。だから、戦争をほんとうになくするためには、帝国主義的な社会を変革するという、世界の国民的な運動を高めて行かなければならぬ、そうして帝国主義をくずして行かなければならぬ。ここに平和の根拠があるのだという、この科学的な歴史的な点について、大臣はどういうふうにお考えになるか。(「ソ連こそ帝国主義じやないか」と呼ぶ者あり)帝国主義というものは、君たちのそういう理解と違うのだ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/51
-
052・天野貞祐
○天野国務大臣 どこの国が一番民族を圧迫し、一番自由を奪い、どこの国が一番帝国主義的なことをやつているかということについては、いろいろの見解があると思います。だから、私はそういう見解については、今論議しないで、ユネスコ精神の理解を深めてそうして平和な世界を建設しようというユネスコ精神にのつとつたこの法案の御審議を願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/52
-
053・渡部義通
○渡部委員 重要なことは、このユネスコ精神なるものは、單に精神だけによつて貫かれて行くことはできません。大臣は、單に精神の変革は、精神だけかえて行けばいいのだということを、一個の哲学者として考えておられるとは思わない。精神の変革ということは、社会の変革と結びついて初めてあるというくらいのことは、大臣もはつきりとお考えになつておられると思います。だから、ユネスコ精神の問題になりますと、どうしても、これは平和な社会を築いて行くための新しい社会をつくり出して行くという、この動きと結びつかなければならぬ。しかも、この動きを増長することこそが、ユネスコ精神の最も根本的なものになるんじやないかという重大な問題についてお聞きしているわけであります。自由党の諸君に、というよりも、私の意見をやじつておる諸君に申し上げますが、私は科学的に話をしておるので、この科学的歴史的な問題として、もし議論があるなら、十分に議論しましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/53
-
054・天野貞祐
○天野国務大臣 このユネスコ精神というものによつて、お互いに理解を深めて行くということは、同時にまた、それが社会をかえて行くということなんです。しかし、どういうかえ方がほんとうに世界に平和をもたらすかということについては、私は見解が違うというのです。だから、その見解のことは、今ここで論議しない。一方から考えれば自由を束縛し、そうして他国を圧迫し、侵略すると考えるものを、他方の人は、それが平和運動であると、こう思うのですから、そこに見解の違いがあるから、見解の論はもうどうか省いていただいて、ユネスコ活動そのものに関する法律を審議していただきたい、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/54
-
055・渡部義通
○渡部委員 しかし、そういうことの理解こそが、この国会にとつては、ほんとうに私は必要なことであると思う。そういう問題をほんとうに根本的に理解することなしには、このユネスコ活動なんというものを理解することも、審議することも、実際はできません。
次に伺いますが、同時に今申し上げたことは、第一には、帝国主義的な社会を変革することなしには、ユネスコがうたつているような問題を、ほんとうに貫いて行くことはできない。従つて、祖国における民族解放と社会の変革とを強力に推し進めて行くことのみが、平和運動の問題を解決して行く、世界の平和をつくり出して行く根本問題であるということを、第一に申しておかなければなりません。
次に、だれにもこれは否定することができないことは、世界の平和を築くというためには、この民族の圧迫とか侵略とかいうものの手段となるところの軍備というものを廃止し、または縮小するところに行かなければならなかつたわけであります。この場合、今までせつかく日本は終戰後再軍備運動が起きるまでは、国民の要望により、また世界の民主的な勢力の圧迫にもよつて、軍備というものがなかつたわけでありますが、最近明らかにあらゆる再軍備活動が行われておる。そのような再軍備活動が行われたのでは、これはどのように答えても、平和を求めても、再軍備活動でないということはできないわけであります。この点について、大臣は現在の再軍備運動が、ユネスコ的な精神から見て、矛盾しているのではないかという点については、どうお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/55
-
056・天野貞祐
○天野国務大臣 世界のほかの国が強大な軍備を持つて、特に日本にだけ軍備を持たせないということは、私は無理だと思うのです。けれども、私は何も直接に今再軍備が必要であるかどうかということを言うのじやございませんが、そういうことの論をする人は、まず世界の軍備をなくしてから言うて、初めて資格があると思う。日本にだけやれと言つたつて、無理ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/56
-
057・渡部義通
○渡部委員 日本にだけ軍備をなくするのは無理だとおつしやるけれども、もし日本に今日行われておる軍備というものが、日本の国民全体の要求として、日本の民族自決のために設ける軍備であるならば、民族を解放するという意味から持つことはできるでありましよう。しかしながら、今日吉田政府が計画しておるところの軍備というものは――日本の全国力をあげ、日本の民族的な不幸と危險をさらしながら、そしてつくり上げて行く軍備というものは、少しも日本民族の軍備ではありません。これはユネスコ精神には一致していないものであると思う。ユネスコ活動というものを真劍に考えておられるならば、何よりも今日行われておるところの再軍備運動に反対しなければならぬ、強力にこの反対運動を進めなければならぬというふうに考えるわけであります。その点については、大臣は今日の軍備の本質というものを誤解しておられるのではないかというふうに考えますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/57
-
058・天野貞祐
○天野国務大臣 要するに、世界がいろいろな理解に乏しいからして、それでこのユネスコの精神を徹底して理解させよう、そういう法案なのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/58
-
059・渡部義通
○渡部委員 しかも、軍備だけではなくて、今日国民は、現在の軍備というものが、今私が申し上げたような意味で、これは侵略戦争に用いるための軍備であるというふうな考え方が、国民の間に非常に広くある。だから、国民は再軍備運動に反対し、徴兵に反対し、反戦平和運動に強力に立ち上つておるわけであります。大臣も見られるように、われわれ文部委員会も深い関係のある全国の学生諸君のうちに、このように徴兵反対、再軍備反対、反戦平和運動というものが、民族独立運動と結びつけられて闘われているわけであります。これは現在の政府当局は喜ばない。喜ばないだけでなくて、これを彈圧しているということになりますと、一体ユネスコ精神というものはどこにあるのか。徴兵に反対し、再軍備に反対し、平和を求めて動いておるこの日本国民の大多数の者、この動きを彈圧するならば、一体どこに世界の平和運動があるとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/59
-
060・天野貞祐
○天野国務大臣 意見の相違になりますから――私は趣意は述べたと思いますから、もうお答えはいたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/60
-
061・竹尾弌
○竹尾委員長 渡部委員の発言中に不穏当な箇所があつたかと考えられます。たとえばアメリカの━━━━云々というような箇所があつたと思いますが、こういう点はいかがいたしたらよろしゆうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/61
-
062・岡延右エ門
○岡(延)委員 渡部君の発言は、言々句々不穏当な言葉に満ちていると思うので、その処置は委員長に一任いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/62
-
063・竹尾弌
○竹尾委員長 委員長に御一任という声がございますが、さようとりはからつてよろしゆうございますか。
〔「異議なし」「ぼくは一任できない」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/63
-
064・渡部義通
○渡部委員 大臣がこの根本問題については意見を述べられないということで、私はユネスコ活動というものについての当局の考え方の中に決して科学的に、歴史的に、従つてユネスコ運動なるものの歴史的な意義というものをはつきり理解されないで、現在の政府当局の全面的な政策の一環としてだけ、この国際的な文化交流と平和の問題を考えておられるのではないかという懸念を持つておりますが、このことについては、追つてまた私たちがもつとはつきりお聞きしなければならないと思います。しかしこれは一応そうしておきまして、法案の中に「ユネスコ活動の基本方針を策定する」と述べられておるところの国内ユネスコ委員会ですか、こういう委員会が、すべて大臣の任命によるということになりますと、この運動に対する官僚統制を非常に強めることになる。なぜ大臣の任命によらなければならぬのか、なぜ国民の各層から選ばれた機構がつくり出されて、それがこの平和活動を促進して行つてはならないのか、この点をお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/64
-
065・釘本久春
○釘本政府委員 六十四箇国の加盟国中、多くの国々が、やはり文部大臣の任命によつて国内委員会をつくつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/65
-
066・竹尾弌
○竹尾委員長 渡部君に御注意申し上げます。あなたに與えた時間は、ただいまほかの委員から非常に抗議を申し込まれたほど長い時間を與えておりますので、この辺でひとつ中止を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/66
-
067・圓谷光衞
○圓谷委員 先ほど岡君から動議が出まして、渡部委員に対する不穏当な箇所は、委員長にまかせるということで、みな賛成されたようですが、委員長においては、たとえば渡部君の言論のうち、アメリカを侵略国と呼ばわり、日本国民としてアメリカの手先になつて軍備を拡張するということは、これは許しがたきものであるから、その実相を確かめてもらいたいことが一つ。
もう一つは、アメリカ映画の廃頽的といいましたか、この映画を入れることによつて日本を廃頽させるというような言論があつたようですが、これは、アメリカの映画が廃頽的なものであるかどうか、これも委員長においてお調べを願いたい。ただ簡單に委員長にまかせるということでは、どうも私承服はできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/67
-
068・竹尾弌
○竹尾委員長 ただいまの圓谷委員の御発言に対しましては、十分に考慮いたしまして適当に処置いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/68
-
069・圓谷光衞
○圓谷委員 ユネスコ憲章には、平和の根本はその心の世界の開拓にある、民族の理解によつてこれが平和を持ち来すということが書かれておるのであります。しかるに渡部君の申されるところによりますと、ソビエトの平和運動は、口に平和を唱えて、アメリカの軍備を攻撃し、日本の再軍備を攻撃しているのですが、このアメリカの再軍備を攻撃すると同時に、ソビエトにおいて、渡部君も戦争放棄、軍備を撤廃するというような考えがあつて言つておるのかどうか。もう一つ問題となることは、ソビエトの映画の問題ですが、文部大臣は、これを入れて、盛んに日本に普及するというような考えがあるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/69
-
070・釘本久春
○釘本政府委員 お答え申し上げます。映画のお話が出ましたが、映画の輸入をどうするかということは、文部省所管ではございません。なおユネスコでは、各国の文化交流ということにつきまして、お互いに協力して、映画にしましても、何にしましても、十分公平にお互いに交換し合えるようにしようということで、仕事を進めておるようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/70
-
071・竹尾弌
○竹尾委員長 ちよつと速記をとめて……。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/71
-
072・竹尾弌
○竹尾委員長 それでは速記を始めてください。本日の委員会は午後二時よる続行いたします。二時まで休憩いたします。
午後零時二十九分休憩
――――◇―――――
午後二時四十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/72
-
073・竹尾弌
○竹尾委員長 休憩前に引続き会議を再開いたします。
ユネスコ活動に関する法律案について、質疑を続行いたします。質疑の通告がございます。これを許します。小林信一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/73
-
074・小林信一
○小林(信)委員 まずユネスコ活動の目標についてお伺いします。ここに出ておるので、十分わかるとは思いますが、しかし私は、もつと具体的にお聞きしたいのです。「教育、科学及び文化を通じ、わが国民の間に広く国際的理解を深める」こういう言葉で表現されておるのでありますが、具体的に申しますと、どんなことをするのが目標であるか。それは法には書いてある。それからいつかも局長の方から、ユネスコ憲章の内容についてやるんだというお話がありましたが、それはやはり国際的のものであつて、わが国のユネスコ活動というものには、また一つの特別の目標がある、こう考えておるのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/74
-
075・釘本久春
○釘本政府委員 お答え申し上げます。わが国におけるユネスコ活動には、いわば二つの面があるかと考えます。一つは御指摘の通り、わが国民の間に国際的な理解を深めるために、教育上また文化上いろいろな活動をいたします。たとえば展覧会、展示会、講習会、その他印刷物の頒布等のことをいたします。同時に、わが国民の生み出して参りました教育、科学、文化に関します個性的な独想的な努力の成果を、世界各国に伝えて行くという面がございます。たとえば、具体的に申しますと、日本の美術の展覧会を外国で行うとか、そういつたたぐいのことがずいぶんございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/75
-
076・小林信一
○小林(信)委員 きわめて抽象的な御説明なんですが、このユネスコの生れる歴史的なものから考えましても、日本のユネスコ活動につきましては、もつと特別のものがあるのではないかと私は思うのです。今の御説明では日本の教育行政というふうなものについては、何ら考慮しないというようなことになりはしないかと思うのです。やはり国際的に文化あるいは教育というようなものを関係づける場合には、もし日本の教育が遅れておるような場合、あるいはそれが誤つた方向に行くような場合に、このユネスコ活動がこれに対する刺激を與えるというようなことが、大きな問題じやないか。あるいは文化の問題にしましても、戰争によつて破壊されておる教育施設を復興することが、日本とすれば非常に大きな問題なんです、こういうふうなものをこのユネスコ活動がどうこうするということでなくて、こういうものに無関心でおるものを刺激して行くというところに、私は大きなユネスコ活動の日本独特のものがあるのではないかと思いますが、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/76
-
077・釘本久春
○釘本政府委員 前段に御指摘になりました教育面において、ユネスコの精神からしていろいろ刺激すべき点があつたら、そういう活動もするのではないかというお尋ねに対しましては、まことにお説の通りでございます。たとえば、軍国主義的な教育によつてあるいは超国家主義的な教育によつてゆがめられていた国際理解に対して刺激を與え、国家教育についてのいろいろな催しをするという点が、そういう点でございます。
第二段の、戰災地帶の復興というようなことに協力するように刺戟すべきではないかというふうなお尋ねでございますが、その点も、ユネスコが力を入れているところでございまして、現に日本でもそれをやつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/77
-
078・小林信一
○小林(信)委員 そういう場合に、問題になりますのは、国家的な立場と地域的な立場があると思うのです。この趣旨から言いますと、国家的なものは一応この機関によつて目的が達成されると思うのですが、地域的なものにつきましては、もちろん法律の内容からしましても、そういう点もあげてはありますけれども、そういうものを組織的にどういうふうにして行くかという点では、文部省としてはどういうお考えを持つておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/78
-
079・釘本久春
○釘本政府委員 お答え申し上げます。わが国におけるユネスコ活動は、申し上げるまでもなく日本ユネスコ国内委員会が基本的な方針を策定いたしまして、それを文部大臣に建議するわけでございますが、その意見を参酌いたしまして、文部省としては、民間の自発的なそうしたユネスコ活動に対しまして、あるいは協力し、あるいは援助し、あるいは助言するという関係になつております。地方公共団体もまた、そうあるべく規定しておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/79
-
080・小林信一
○小林(信)委員 私の考えておるような点も十分御考慮になつておるというお話ですが、そうすると、この刺戟されるものと刺戟するものとの、何らかそこに区別がなければならないはずですが、文部大臣の諮問機関というふうな形でもつて、文部大臣が意見を聞くというふうな立場にある場合には、はたしてそういう役割が演ぜられるかどうか、こういう点について疑問を持つわけですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/80
-
081・釘本久春
○釘本政府委員 国内委員会自体の活動といたしましていたす部分もあると思いますし、また国内委員会の所掌事務の範囲ないし権限を越えるような問題につきましては、他の国家機関、文部省がそれを行うということになるわけでございます。問題によりまして、決定されるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/81
-
082・小林信一
○小林(信)委員 私も、この法律の内容をずつと見まして、国内委員会のあり方がどうもはつきりしていない。非常に権限があるようでもあるし、文部大臣に押えられておるようなところがあつて、はたしてこのユネスコ活動そのものが持つところの目標が達成せられるかどうか、疑問に思うものでありますが、その個々についてお伺いいたします。第四條の三項を見ますと「国又は地方公共団体の機関が前二項の事項を実施するに当つては、第五條の日本ユネスコ国内委員会と緊密に連絡して行わなければならない。」――この「緊密」という意味ですが、どの程度に緊密に連絡しなければならぬのか、そしてその「行わなければならない」というのは、絶対的なものであるのか、こういう点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/82
-
083・釘本久春
○釘本政府委員 お答え申し上げます。緊密に連絡するその具体的な事項といたしましては、たとえば情報の交換あるいは報告の提供というふうなことが、中心になると存じます。と申しますのは、ユネスコ国内委員会は、ユネスコ憲章に定めておりますところに従つて、各国ともにつくつておるわけでございますが、いわば国内のユネスコ活動と、国際的な機関でありますユネスコとの間の連絡、いわば仲立ちの役をすることを重要な任務といたしております。またユネスコ活動というものは、国内の活動でありますが、第三條に規定しておりますように、他国の国内委員会、他国のユネスコ活動とも緊密に連絡して行う建前になつておりますので、国内の活動といえども、国外の情報を常に接受し連絡して行う必要がございます。そういう意味からいたしますと、ユネスコ国内委員会には、各国及び本部の情報も集めてありますので、そういう点からいつて、緊密に連絡して行う必要があるわけであります。また日本のコユネス国内委員会は、国内における活溌なユネスコ活動の成果並びに状態を、ほかの国に伝える必要もありますので、この意味から緊密に連絡して行う必要があるというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/83
-
084・小林信一
○小林(信)委員 このあとの方の「行わなければならない」という意味は、これは絶対的なものかどうかということについては、またあらためてお伺いいたします。今情報等の問題を根拠としてのお話だつたのですが、この條文の示すところは、前二項でいわゆるユネスコ活動を行うごとについて助言を與え、あるいはその協力をする場合、あるいは特別に援助を與える場合――これはおそらく経済的な意味も含めての援助だと思うのですが、そういう援助を與える場合には、緊密に連絡して行わなければならないというふうに規定しておるわけです。何かここではそのユネスコ活動の方向とかあるいは内容等につきまして、この国内委員会というものが、これを正しいとか正しくないとかいうふうな判定でも下すように考えられるのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/84
-
085・釘本久春
○釘本政府委員 今の條文につきましては「前二項の事項を実施するに当つては」という点に重点があるのでありまして、そうした事業を実施して行きますのに、緊密な連絡をして行く必要があるという意味でございます。と申しますのは、国の機関としても、地方公共団体の機関としても、いろいろな機関がございます。しかも、それぞれの機関がなるべく自発的に自主性を持つてユネスコ活動を展開して行くことが望ましいわけであります。一面ユネスコ活動の能率的な、組織的な展開をはかることが望ましいのでありまして、そういう意味から、やはり連絡を保ちつつ行つて行く方が、自主性を保つと同時に能率的でもある、こういう趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/85
-
086・小林信一
○小林(信)委員 そういうふうに解釈すれば、これは問題ないですが、国または地方公共団体がユネスコ活動をする場合に、経済的な援助とかあるいは助言、協力というものを行わなければならないというような、非常に嚴密な字句でもつて表現してあるところを見ると、もつとその内容に立ち入つて、ある示唆を與えて行く、何か自主性を失わせるような感がするのですが、やはり根本的には、国も地方もこのユネスコ活動というものは自主的であるところに、先ほど御説明のあつた目標が達せられるのではないか。これを規定されると、何か補助金を出すとか援助するとかいうほかに、この国内委員会の認可を受けなければできないというようにも解釈できるのですが、そういうことはないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/86
-
087・釘本久春
○釘本政府委員 民間の自発的なユネスコ活動に対して、この條文が何か自主性を押えるような、コントロールするような意味を持つておりはせぬかという御質問のように承りましたが、申すまでもなく、これはユネスコ憲章に定めるところに従つて行うということが根本でございまして、それにはユネスコ憲章そのものにそういう自発的な活動を伸ばす、決してコントロールするような立場で行わないということが規定されておりますから、その御心配はないと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/87
-
088・小林信一
○小林(信)委員 もちろん、ユネスコ憲章が、何かそういうコントロールするようなものを持つておつたら、それは国際的な意味はなくなるわけですから、ユネスコ憲章そのものには、問題はないわけだ。だからこそ、こういう字句は、かえつて不必要じやないかと私は思うわけであります。従つて、そういう内容であれば、なおさらこの解釈の仕方を行わない場合もあつていいのかということを、あらためてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/88
-
089・釘本久春
○釘本政府委員 これはやはり常時連絡をして行つていただく方が、経済的にも、また仕事の能率的な点からも、便利であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/89
-
090・小林信一
○小林(信)委員 便利であることはもちろん、国際的に関連を持つのが国内委員会で、しかもその衝に当つておるのですから、一番いいと思いますが、しかし、それがこういう條文でもつて規定されますと、何かその自主性を失わせるようなことになりはしないかと私は心配するのであります。
一応そのことは終りまして、それにつきましても、この国内委員会のあり方について、文部大臣の申すところの権限であります。この法律案の内容から考えれば「事務局職員の任免は、文部大臣が行う。但し、事務総長の任免については、あらかじめ会長の意見を聞かなければならない」ということになつておるのでありますが、こういうところに、非常に文部大臣の力が働いておる。そうして文部大臣は、それには直接関係しないようであるけれども、国内委員会が国、地方を通してその事業あるいは援助ということについては関係する、そういううらみはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/90
-
091・釘本久春
○釘本政府委員 ユネスコ国内委員会は、その構成をごらんいただいても、また任免手続をごらんいただいても、きわめて民主的な組織になつておりますので、ユネスコ憲章に、広く政府及び民間の主要な団体を参加させるようにというその趣旨を実現させてあるわけでございます。従つて、国内委員会が非常に官僚的な統制をするというふうな懸念は、国内委員会の性格からして、出て来ないと思うわけでございます。
また文部大臣の権限のお話もございましたが、ここにもございますように、きわめて民主的な手続を経て委員その他も任命されることになつておりますので、その点についても、御懸念はないかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/91
-
092・小林信一
○小林(信)委員 そこで国内委員会の内容ですが、運営にあたつては、年二回招集して、あとは必要に応じて臨時に招集する場合があるというふうに規定されているのです。そうなつて来ますと、結局国内委員会の活動というものは非常に少くて、事務局員あたりの活動が主にはならないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/92
-
093・釘本久春
○釘本政府委員 国内委員会の総会は、年二回でございますが、御承知のように教育、科学、文化に関する活動でございますので、非常に専門的な活動が具体的に多くなるわけでございます。そのために専門小委員会が設けられることになりますが、それが頻繁に会合もし、事業も行つて行くことになりますので、御懸念はないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/93
-
094・小林信一
○小林(信)委員 そこで委員の構成ですが、この六十人の内容として第九條に一、二、三、四、五、六、七と各界から網羅した形でもつて人があげてあるのですが、この人数の割振りについては、どういうわけでこういうような割振りをしたのですか、これをまず第一にお伺いしたい。ことに衆参両院から一人ずつ入れた理由も加えて御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/94
-
095・釘本久春
○釘本政府委員 お答え申し上げます。この委員会の組織の立て方につきましては、根本方針は、ユネスコ憲章の七條に、広く政府及び民間の教育、科学、文化に関する主要な団体を網羅すると同時に、その国の特殊事情に即応するような措置をとることが望ましいと、こうございます。これに沿いましたのが、一つ。
それから第二としては、すでに御承知かと思いますが、民間におきまして、日本に自発的に起りましたユネスコ協力会の運動、その代表者及び教育刷新審議会あるいは学術会議等の民間の方々が、長年研究して来られました案、それらを参酌いたしまして、文部大臣の諮問機関でありました準備会で練りました答申案を参考としてつくつたわけでございます。そういたしまして第一項の第一号から第四号まで、また第七号の政府職員、これらはユネスコ憲章に定められた線に沿うた案の立て方でございます。それから日本の特殊事情に即応するという意味におきまして、国会の代表者を、ぜひこの日本のユネスコ委員会に御参加願うようにいたしたい、こういうふうにいたしたわけであります。国会において、ユネスコに関する決議が行われたことが、わが国のユネスコ活動を非常に強めた理由でありますし、また国会にもユネスコ議員連盟等の組織もありまして、活溌な活動をしておられますので、日本としては、他の国にはあまり例がないのでありますけれども、御参加を願うことにしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/95
-
096・小林信一
○小林(信)委員 この数というのは、非常にむずかしい問題で、詳しくお伺いしたいのですが、日本の特殊性から考えて、五、六として衆参両院から一人ずつ出している。私は、先ほど承一章の目標をお伺いした場合でも、日本の特殊なユネスコ活動というものは、十分に立法する場合に考えて行かなければならぬ。従つて、他国の場合のようなユネスコ活動なら、これはかえつて入れない方がいいんじやないかと思うのですが、日本の場合は、他国の一応完成された状態の社会で行うユネスコ活動とは違いまして、今後その基礎となるものをこれから育てて行かなければならぬ点が、たくさんあると思うのです。そういう意味からして、ここに衆参両院から一人ずつ入れるということはいいのですが、ただ形式的に一人ずつ入れて、従来この議院の中でも、すでにそういう決議もなされたし、あるいはユネスコ活動というものがあるというだけでもつてなされるのは、非常に意味がないと思うのです。やはりここは、日本の教育、科学、文化あらゆるものが一応のレベルに達することが必要であるという段階から考えて、相当これは衆参両院の協力を求めなければならぬ。委員会が文部大臣の諮問機関であるか、あるいはもつと強力な権限を持つたものであるか、はつきり今のところ私にはわからないのです。しかし先ほど申しましたように、相当政府の施策というものも刺激させて行かなければならぬ、そこに大きな使命があると思うのです。そういう意味からして、私は、たくさん入れますと、これは問題が出て来ると思いますが、一人という形式的なものでなく、もう少し国会の内容というものを考えた上で、これをふやす必要があるんじやないか。ことに六十人ですから、六十人の人の中に二人ということは、国会議員を入れておけというふうな名目的なものになつて来ると思うのです。もう少し実態というものを考えて、ふやす必要があると思うのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/96
-
097・釘本久春
○釘本政府委員 国会議員の方々から、ユネスコの国内委員会の委員として御参加願うということは、ぜひ国会からも代表が出ていただきたいというのが主点でありますので、その数の問題よりは、国会の代表者が出ていただくというところに私どもの考えの重点があるわけであります。なお念のために申し添えさせていただきますと、この五号、六号は国会を正式に代表されるその方という意味でありまして、国会議員の身分を持つておられる方は、他の面から委員としてお出になる方があるかもしれないと思うのでありますが、この五号、六号の委員はそういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/97
-
098・小林信一
○小林(信)委員 そこで今の国会から代表者を出すという形式的なものでなくて、やはり日本の特殊事情にふさわしく、もつと活動力を旺盛にするためには、もつと実質的な考え方をして行きたい。代表というようなことは、結局形式的なものに終るわけです。代表でもいいわけですが、国会は各党にわかれておるような実情もあるわけなんです。そういう点を考慮すると、非常に形式的なものになつて、入れても何ら意味がない、私はこういう考えなんです。従いまして、この項については、できたら私たちは修正をして行きたい、こういう考え方でおるのですが、そういうことは考慮できるかどうか、もう一度重ねてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/98
-
099・釘本久春
○釘本政府委員 国会の議員の方々のこれに対しまする御熱意を伺うことは、私どもとしても、たいへん喜ばしく存ずるところであります。この一号から四号に至る各号につきましては、先ほども申し述べましたように、長年研究をいたし、また民間で研究された案を基礎としておりますし、御承知のように、教育界、学界、文化界また地域的なユネスコ活動の行われます領域というものは非常に広く、また微細にわかれておりますので、できる限りそれらを網羅し得るようにという強い希望を持つておるわけでございます。たとえて申しますと、第一号の、教育活動、科学活動、文化活動の各領域を代表する者といたしましても、教育について六人、科学活動を行つております領域の者につきまして六人、文化活動につきまして六人、こうかりに私どもは考えておりますが、その教育活動の六人にいたしましても、六人で教育界の学校教育、社会教育の全分野を代表されておる。科学活動の六人にしても人文、社会、自然科学、各学の専門家を代表させる。文化面におきましても文学、演劇、音楽、美術、建築、批評、評論界等を全部網羅して代表させるということは、なかなかたいへんなことでございまして、これは最小の数字であるというふうに、私どもは考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/99
-
100・小林信一
○小林(信)委員 やはりこれは、文部省として、この国内委員会に対して、あまり強い力と言うと語弊があるのですが、そういうふうなものを入れたくないというようなお考えでもあつて、それを主張されるように私にはうかがわれるのです。一から四の間に、相当そういう国会に籍を置く者も包含される内容があるのだから、こういうふうなことでもつてごまかそうとしておられるのですが、それはやはり出て行く人は、国会議員という立場でなくて教育者の代表とか科学者の代表であつて、決して国会議員の代表ではないのであります。国会議員を入れるからには、やはりそれは今お話のありましたように、日本の特殊性というものを考えて、單に国内委員会というものは、国際的な関係だけをつかさどるものではない。日本の立場から考えれば、これら破壊された、荒廃した教育を、いかにして復興して行くかというようなことを考えて行かなければならぬのが、日本のユネスコ活動の使命なんであります。政府は財政的にもつと強力に文化行政に積極的に努力しなければならぬというようなことを促進するのが、役目だと思うのです。そういう立場にあるときに、入れるというならば、体裁だけでなくて、実質的に力のあるものを持つて行かなければならぬと思うのです。何もそれによつて文部省がどうこうというようなことはないと思う。やはりこういう強力な国会からの御支援があることが、文部省が今後その使命を果す上からも、かえつていいことだと思います。そういう意味から、当然これは体裁だけでなくて、実質内容について人員が強化されるべきだという私の意見を申し上げておきます。
それから、続いてお伺いいたします。この第十一條の三号でありますが「委員長たるに適しない行為があると文部大臣が認めた場合」――これはどういうような具体的なものをさすのか。またこれにあたりまして判定をする場合、文部大臣個人の意見でもつてこれが判定されるのか、この二つをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/100
-
101・釘本久春
○釘本政府委員 前段の点につきましては、実際に非常に健康を悪くしておられまして、とても職務の執行ができないという場合には、あり得ると思います。
それから、その場合でも、文部大臣がかつてにすぐに罷免するようなことができるのかという御質問かと思いますが、特にこの第十一條の二項を設けまして「前項第三号の場合における解任については、文部大臣は、あらかじめ内閣の承認を経なければならないという規定を設けましたように、内閣の同意を得て行う、あまりかつてにすぐさま独断でやれないというふうにして、第十一條におきましては、委員の身分保障を確かにするという建前をとつているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/101
-
102・小林信一
○小林(信)委員 私はこの三号は、委員たるに適しない行為があるときというようなものを、とかく最近設けて、それ以前に述べてある点でも十八分に目的が達せられるのに、そういう余地を残しておくということは、非常に危險な問題だと思うので、相当この運用にあたつては、今後気をつけなければならぬと思うのです。できるならばこういう條項をこういう権威のある法律の中に入れることは、非常に不可能でないかと思つて、私は質問したわけでございます。
それから附則へ参りまして、一項に「この法律施行の期日は、公布の日から三箇月をこえない期間内において、政令で定める。但し附則第二項及び第三項の規定は、公布の日から施行する」と書いてあるのですが、大体目標はいつごろになるのか、文部省の希望するところはいつごろであるか。そしてそれはどういうわけでこういうようなややこしい内容を持つておるのか、お伺いをしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/102
-
103・釘本久春
○釘本政府委員 お答えいたします。前段の御質問に対しましては、ユネスコ国内委員会の委員は、特別職といてしましたものですから、特別職につきましては必ずこういう規定が一般につくられておりますので、出ておるわけであります。
なお後段の御質問に対しましては、国内委員会の成立いたしますのに、委員の選考または事務総長の任命に時間がかかりますし、新設官庁でありますので、特に三箇月以内という余裕を置いたわけであります。しかしながら、私どもといたしましては、できるだけ早く、五月中にでもぜひ成立させたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/103
-
104・小林信一
○小林(信)委員 大体国会も急いで法律を上げようとしておるのですから、これはすぐできるという見通しがつくわけですが、いつごろを希望しておられるか、その点をお伺いしたいのです。できるだけ早いというならば、それでも話は済んでいるわけですが、従つてこれに伴う予算的な措置というものはできておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/104
-
105・釘本久春
○釘本政府委員 予算は認められております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/105
-
106・小林信一
○小林(信)委員 最後にお伺いしたいのですが、大体ユネスコというと、教育、文化ということでもつて目的が終つておるようですが、特に科学という言葉が入つていることについて、文部省としては、どういう考えを持つておられるか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/106
-
107・釘本久春
○釘本政府委員 ユネスコは、御承知のように教育、科学、文化の三つの分野の活動を通じまして、世界に貢献する活動機関でございます。文部省といたしましても、当然に科学方面におけるユネスコ活動というものは、非常に重視しなければならぬと考えております。しかも、日本の立場として、科学的なユネスコ活動といたしまして、たとえば海洋資源の関発のために協力するとか、いろいろな計画が上つております。要するに、科学を人類の生活の福祉に役立てて行くというところに、ユネスコ活動の中心がありますので、日本の場合でも、それに大いに力を入れたいと考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/107
-
108・小林信一
○小林(信)委員 私は、ユネスコという意味からしても、科学というものは、一応最初取除かれておつたというふうに考えておるのですが、特に科学が入れられたというのは、今の局長のおつしやるような、そういう意味の取り方でなく、恐ろしい科学的な進歩が、ユネスコがやつておる世界の平和というものを、かえつてぶちこわすような形になつておる。恒久的な平和を希求するのが目標であるのに、そういう文化の発展から生れて来るところの科学というものは、かえつて世界の平和に大きな支障を及ぼす。だから、科学をどうするということでなくて、その科学を善用する、かえつて人類の破滅に科学が使用されないように持つて行くのだ、こういうふうな考えに重点があるのではないかと思うのですが、この点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/108
-
109・釘本久春
○釘本政府委員 お説とかわらないと思うのでありますが、科学を人類の生活の物心両面における改善に役立つようにする、人間の幸福な生活に役立つように科学を利用して行く、これがユネスコの根本方針のように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/109
-
110・竹尾弌
○竹尾委員長 次に渡部義通君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/110
-
111・渡部義通
○渡部委員 大臣がおられないから、具体的なことについてだけお尋ねしておきます。
第一に、ユネスコの地方協力会というのは、今までどういうふうな活動をしましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/111
-
112・釘本久春
○釘本政府委員 ユネスコの地方団体は、それぞれ自主的な活動をしておられますので、一口に申し上げ切れないと存じますが、社会教育的な活動、また文化的な活動、さらには地域社会の生活改善というような意味合いを持つた活動をしておられるように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/112
-
113・渡部義通
○渡部委員 この地方協力会の中で、主要な労働組合あるいは主要な文化団体といつたものが参加しておるかどうか、これにはどういうものが参加しておるか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/113
-
114・釘本久春
○釘本政府委員 たとえば、仙台におきましても、大阪におきましましても、札幌におきましても、福岡におきましても、それぞれの地域の有識者が参加されて、地域の民衆の幸福のために活溌な活動をしておられます。また青年たちも、日本の社会の幸福のために、いろいろな活動を、このユネスコ運動の名前によつて活動しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/114
-
115・渡部義通
○渡部委員 私の聞いたのは、主要な労働組合とか、主要な文化団体、全国的なこういう勤労者組織といつたようなもの、また民間の活動家から成つておる文化団体といつたようなものが、積極的に参加しておるかどうかということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/115
-
116・釘本久春
○釘本政府委員 文化団体につきましては、有力な主要文化団体がずいぶん参加しております。労働組合その他については、現在のところ、あまり参加しておられませんが、これから体制も整つて参ることでございますし、ユネスコの精神に賛同してくださる限り、入つていただくようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/116
-
117・渡部義通
○渡部委員 先日からわれわれが非常に強調した点は、勤労者の中にこそ、日本のほんとうの文化を高め、科学、教育を高めるという動きが起きているのです。だからこういう組織の参加しないような活動であつては、それは少しも日本全体の教育、科学、文化を高めるゆえんにはならないという点を強調し、大臣もこの点については、これを伸ばさなければならぬということを言われたわけです。従つて、この本法案がつくられるにあたつては、労働団体とか、文化人団体とかという民間の強力な大衆を代表するような団体から積局的に参加して、この法案をつくり出すべきであつたと思いますが、この法案においては、国内委員会設立準備会にあげられた人たちだけが、この法案の作成に参與したのか、その他広汎に他の団体等が参與しておつたのかどうかという点を聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/117
-
118・釘本久春
○釘本政府委員 この法案作成の基礎になりました会議には、国民大衆の利害を最も公平に判断される方々が参加されましたので、十分国民大衆の立場は、この中に盛られることができたと私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/118
-
119・渡部義通
○渡部委員 労働組合も文化団体も参加しないようなものが、国民全体の立場を考えるというような、そういう資格は持つていないと思うのですが、その点はこの法案の官僚的な内容そのものに現われていると思う。しかし、それはともかくとしまして、日本のユネスコ活動は、ユネスコ憲章によりますと「この機関は、加盟国の国内管轄権に本質的に属する事項に干渉することを禁止される。」となつておりますが、国際的な総会の決定による制肘は受けるのかどうかという点は、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/119
-
120・釘本久春
○釘本政府委員 制肘を受けることはございません。勧告の場合に、いろいろこちらで考慮するということだけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/120
-
121・渡部義通
○渡部委員 国際総会の決定がありましても、制肘は受けないという性質のものかどうか、その点が第一点。
それから第二は、やはり日本の科学、文化活動というものは、日本の特殊的な具体的な情勢に応じなければ意義がないものであります。従つて日本には特別の事情がある。たとえば、英国とかフランスのような場合にも、ある程度そうであるが、日本の場合には、今後も外国の直接的な監視のもとに支配されなければならない。こういう中で起きる教育、科学、文化の促進や、国際的な交流という問題は、やはり特別な形で取扱われなければならず、特別な形で発展させられなければならない事情があるわけであります。従つて、国際的な諸決定が、日本にそのまま決定されるようなことがあつてはならないと思うのです。そういう意味で、日本独特のユネスコ的な活動が展開され得るのかどうか、国際的な制肘を受けないでできるかどうか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/121
-
122・釘本久春
○釘本政府委員 ユネスコ活動は、根本におきまして各国の国内管轄権に属することは干渉しない。それから、それぞれの個性的な自発的な活動をますます伸ばして行くというところに重点がありますので、そうした場合には、日本に考えがありましたら、総会に意見を出して、そうして日本の立場をはつきりと他の加盟国にも認めてもらうということが、十分できると存じます。なおその点につきまして外務省からもお答えいたしたいそうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/122
-
123・戸田盛国
○戸田説明員 先ほどの御質問に対しまして、若干補足説明をいたしたいと思います。総会の議決の中で、加盟国を拘束するものと拘束しないものとございますが、このユネスコ憲章の第四條の総会というところのB項の第四号をごらんくださいますと、「総会は、加盟国に提出する提案の採択に当り、勧告と加盟国の承認を得るために提出される国際條約とを区別しなければならない。前者の場合には、過半数の投票で足りるが、後者の場合には、三分の二の多数を必要とする。」「各加盟国は、勧告又は條約が採択された総会の閉会後一年の期間内に、その勧告又は條約を自国の権限のある当局に提出しなければならない。」と規定されております。従いまして、国際條約の形をとりました総会の議決は、加盟国を法律上拘束するものでありますが、勧告の形をとりました議決は、加盟国を法律上拘束するものではございません。
なお、日本が文化活動その他につきまして、外国の監視を受けるというようなことが、今御質問の中にありましたが、これは私どもとしましては、どういう意味ですか、はつきりわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/123
-
124・渡部義通
○渡部委員 日本は行政協定のもとで、特別の状態に置かれておるので、ここでは特別の文化的な動きというものがなければならぬし、国際的に総会において決定されたことが、ここでは適用できないばかりでなくて、かえつて逆な影響を及ぼすようなこともあり得るわけなので、この場合に日本のユネスコ活動としては、独自の活動がなされねばならないという意味のことを言つておるわけなんであります。従つて、この憲章に現われて来た規約的な公的な説明だけでは、なおはつきりとられない問題があるわけであります。私の質問しておるのは、規約の説明だけではなくて、そういう点の解決の道を、どういうふうに講ぜられるかという点なのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/124
-
125・戸田盛国
○戸田説明員 およそ国際條約は、守ることになつております。国際條約でなく單なる勧告は、拘束するというわけではなくて、良心的に従う場合が多いわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/125
-
126・渡部義通
○渡部委員 ユネスコ憲章によりますと、歴史的文化的記念物の保存、保護の確保ということが強調されておりますが、このことに関連して、日本の国宝的な文化記念物を外国に疎開をするということが、新聞紙上にもしばしば見え、また文化財保護委員会の方からは、ユネスコの方でそういう問題には主としてタッチしておつたという話を聞きましたが、この点はどうなつておるか。この問題については、日本の文化記念物について関心を持つすべての人が、国外疎開ということに反対の運動を起したことは御存じでありましようが、こういう場合に、さしあたり問題になるのは、ユネスコ本部においてそういう動きがある、しかし日本国内においては、ほとんど大部分のものがこれに反対するというような状況のもとで、今までやつて来られたユネスコ関係の人は、どういうふうにこれにタツチされたかということを聞きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/126
-
127・戸田盛国
○戸田説明員 ただいま御質問の文化財の保護に関しましては、おそらくユネスコで研究しております條約案に関してであろうと思います。この條約案は、戦時の場合に文化財の毀損損壊があまりにはなはだしかつたために、万一の場合をおもんぱかつて、文化財を保護するという精神に立脚したものでありまして、これまででも、そういう種類の法規が、国際法規の中にはばらばらに存在したのでありますが、それを一層完全ならしめるために、ユネスコ本部で研究しまして、各国にその案を配布して意見を求めておるものでございます。その中には、戰時あるいは武力衝突の場合におきまして、文化財を外国に疎開するということも、一つの方法として掲げられておりますが、これはむろんしなければならないというものではありませんし、また現実にこの前の大戰のときに、ピカソ等がフランスにあります美術品等を、戰火の及ばない地域、スペインのようなところに一時避難させようというような運動を行つたという報道もありましたが、これは言うまでもなく万一をおもんぱかつてのことでございまして、こういうような万全の措置というものは、平時、平和という声が大いに高まつておるときでなければ、できないのでありますから、従いまして、そういう関係から、現在ユネスコがそういうことを考えておるのだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/127
-
128・渡部義通
○渡部委員 だから、日本のユネスコ関係を取扱つておつた人たちが、直接的にどういうことにタツチしていたのかということが、重大な問題だと思います。これは文部省の総務課長の話でも、おそらく文化財保護委員会の方では知つているかもしれないが、ユネスコ関係でこれは処理しているのだという話があつたので、具体的にはどういうふうな処置を考えられておつたのか、あるいはどの段階までこういう話が進行しているか、これは日本の文化財関係のことばかりでなく、これに興味を持つ、またこれに従事している非常に多くの人たちが心配しておる問題でありますので、明確にしておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/128
-
129・戸田盛国
○戸田説明員 現在日本には、ユネスコ国内委員会もございませんし、この種のものは條約案でありますから、結局政府間の條約となるべき筋合いのものでありますから、これは外務省あてにその案を送付して来まして、日本側の見解を求めて参つたのであります。外務省としましては、国内の問題を主として含むものでありますから、文部省側を通しまして、文部省から国内の権威ある方面の研究に付したことと思われますが、それから先につきましては、文部省側から説明していただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/129
-
130・釘本久春
○釘本政府委員 文化財の保護に関する国際條約についてでございますが、ユネスコで研究しておりますこの草案につきまして、文部省では専門機関であります文化財保護委員会で研究していただいているわけであります。大体の趣旨はけつこうですが、日本の文化財の特殊性等にかんがみまして、なお技術的に研究する余地があるというので、ただいま文化財保護委員会の方で熱心に研究しておられる最中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/130
-
131・渡部義通
○渡部委員 そうすると、まだ話は結着がついていないわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/131
-
132・戸田盛国
○戸田説明員 まだ結論に至つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/132
-
133・渡部義通
○渡部委員 それから、ユネスコ憲章を読みますと「いずれの国で作成された印刷物及び刊行物でもすべての国の人民が利用できるようにする国際協力の方法を発案すること」という項がありますが、これを日本に具体化した場合には、何らかの方法ですべての国の出版物、あるいは印刷物を日本に取入れ、あるいは紹介し、交付するというような手段が講ぜられなければならないし、また講ぜらるべきでおると思いますが、その点は先ほど申し上げたように非常に制約されているので、これを打開する具体的な方法を考えておられるかどうか、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/133
-
134・釘本久春
○釘本政府委員 ただいまの図書、雑誌等の流通という点でございますが、これはユネスコでは、最も力を入れているところの一つでございましてたとえば第五回総会で採択されました教育、科学、文化的資材の輸入に関する協定とか、あるいは第三回の総会で採択せられた教育、科学、文化的性質の視聽覚資材の国際的流通を容易にする協定とか、こういう協定をつくり、なるべくその間の流通を容易にしようという処置がとられつつあります。その他ブツク・クーポンの制度がございまして、外国の書物をお互いにその国の金で買えるという仕組みも考えられ、日本のユネスコ関係者でも、今それを研究しておるところでございますが、そういう処置がとられております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/134
-
135・渡部義通
○渡部委員 それからたとえばソビエトとか、中国とかから、どんどん出版物が輸入されることを、学界においても、国民の中でも非常に望んでおる。しかしなかなかとれない。どういう方法をしたならばとれるか、またどういう方法をとつて、ユネスコがこういうものを日本に取入れることに協力することができるかという具体的な点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/135
-
136・釘本久春
○釘本政府委員 ソ連の本がなるベく日本に入るようにするためには、ソ連がユネスコに加入してくれることが何より大事かと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/136
-
137・渡部義通
○渡部委員 現在具体的にとるには、どうしたらいいか。たとえば、現在遮断しておるというふうな状態こそ、打開されなければならないのだから、ユネスコの精神からいえば、当然そういう国にも、日本の国情、日本の状態を伝えて行き、向うからもどんどん科学的なものが輸入されて来るというふうに、状態を打開することこそが、ユネスコ精神であるべきはずだと思う。だからこそ、政治的に解決しなければ解決しないような現在のもとにおいても、文化的には広げて行かなければならないはずなので、その場合に、具体的に処理する方法があるのかどうかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/137
-
138・釘本久春
○釘本政府委員 ユネスコでは、ソ連がユネスコに加入してくれるよう、非常な努力をずつと拂つて参つております。しかし、ソ連はどういう理由かわかりませんが、まだユネスコに加盟しないのであります。ソ連がユネスコに加盟すれが、ユネスコの持つておるいろいろな国際組織から、本もどしどし入つて来るということもあり得ると思いますが、ユネスコに関する限り、ユネスコ側の方から勧誘いたしましても、なかなか入つてくれないので、なかなか打開できません。またユネスコの立場から言いますと、相手方の文化的、教育的または科学的な状態を理解するということも大事なことですが、こちら側の立場もよく理解してもらうことが根本なので、その点につきまして、どうも加入していただけませんと、こちら側の立場も理解してもらうわけに行かぬわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/138
-
139・竹尾弌
○竹尾委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、散会いたします。
次会は明三日午前十時より開会いたします。
午後三時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X01519520402/139
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。