1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月六日(金曜日)
午前十一時三十九分開議
出席委員
委員長 竹尾 弌君
理事 岡延右エ門君 理事 若林 義孝君
理事 小林 信一君 理事 松本 七郎君
鹿野 彦吉君 小西 英雄君
圓谷 光衞君 長野 長廣君
水谷 昇君 井出一太郎君
坂本 泰良君 浦口 鉄男君
出席政府委員
文部政務次官 今村 忠助君
文部事務官
(大臣官房総務
課長) 相良 惟一君
文部事務官
(社会教育局
長) 寺中 作雄君
文部事務官
(調査普及局
長) 久保田藤麿君
文部事務官
(管理局長) 近藤 直人君
委員外の出席者
文部事務官
(管理局著作権
課長) 柴田小三郎君
文部事務官 法貴 次郎君
専 門 員 石井 勗君
専 門 員 横田重左衞門君
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六月五日
委員稻葉修君及び小林信一君辞任につき、その
補欠として志賀健次郎君及び船田享二君が議長
の指名で委員に選任された。
同月六日
委員船田享二君辞任につき、その補欠として小
林信一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
小林信一君が理事に補欠当選した。
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本日の会議に付した事件
理事の互選
図書館法の一部を改正する法律案(内閣提出第
七九号)(参議院送付)
連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法
律案(内閣提出第一四五号)(参議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/0
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001・竹尾弌
○竹尾委員長 これより会議を開きます。
まず理事の補欠選挙を行います。理事小林信一君が去る五日委員を辞任され、再び委員に選任されましたので、理事はその選挙の手続を省略し、委員長より小林信一君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/1
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002・竹尾弌
○竹尾委員長 御異議なしと、認め私より小林信一君を理事に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/2
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003・小林信一
○小林(信)委員 議事進行について——たくさん法案がたまつているのでございますが、おそらくきようもお聞きするところでは、委員長は図書館法の一部を改正する法律案を上げるというふうなお話があるのですが、野党少しといえども、やはりそれぞれ党籍を持つておりますので、なるべく理事会等を、委員会が終了しましたらお集め願いまして、次の予定はこんなふうだと、あらかじめお話していただきますと、今のところいろいろな法律がなかなか複雑になつておりますので、各党ともその方が都合がいいのじやないかと思います。今後なるべくそういうふうに御善処願いたいと思います。
それからもう一つの問題は、一昨日提案されました教育委員会法等の一部を改正する法律案ですが、そのときに、特別に委員長のおはからいで、この法案に不備はないかというようなことで、私、疑問の点を当局にお伺いしたのです。しかし、当局の御見解も、どうも私にはつきりしないのでありますが、なお研究いたしましたところで、私はなおここで委員長にも当局にもお願いをしたいことがありますので、質問いたすわけであります。第三條は、特例法の附則第四項から第六項を生きた形で「「昭和二十七年」を「昭和二十八年」に改める。」というふうに書いてあるのでありますが、すでに五月の十日をもつて、特例法の附則第四項、第六項は死んでおるのであります。死んでおるものを、こうやつて私たちに審議をしろといつて上程されるということは、私たち非常に困るわけですが、委員長は、どういうお考えでわれわれ委員会にこれを上程されておるのか。きようあたりの読売新聞等を見ましても、この特例法等の問題を、社説で大きく取上げておるように、一般には非常に問題を投げかけておるわけですが、委員会の面目からしましても、死んだものを生きたもののような考えで上程されてこれを取扱つておるというようなことは、非常に面目ないことであります。この点、委員長としましては、どういうふうにお考えになつておられるか。それから当局におきましても、そういうふうに死んだ形のものを、われわれがいかに議決したところで、意味がないのでありますから、どういうことを考えておられるのか、はつきりお伺いしなければ、今後私たちこれをいただきましても、研究することもできないわけでありますので、この際はつきりしていただいて、そうしてほかの法案の審議に移るのか、私たち委員としての態度と思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/3
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004・竹尾弌
○竹尾委員長 それでは、私から最初に御答弁申し上げまして、足りないところは、当局から答弁していただきます。私の考えでは、法案は全体としては生きておると思つております。この中には、幾多の事項を含んでおりますから、当然その事項に対しては、審議の対象となると私は思います。従いまして、これを上程するのが当然である、こういうぐあいに私は考えます。なるほど、小林委員の言われました通り、第三條は、案文そのものとしては死んでおりましよう。しかし、この事柄をいかに今後処理するかということは、十分議題の内容になると考えておりますから、これは上程するのが当然である、こういうぐあいに私は考えて上程したわけであります。なお足りないところは、文部省から答弁を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/4
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005・久保田藤麿
○久保田政府委員 ただいま御質問の点は、先般も申し上げましたように、五月十日を境目にして、私どもの法案の持ちます法律的効果が多少ずれたということは、私率直に認めなければならぬということを申し上げました。五月十日以前であれば、現在に生きておる団体がそのまま継続するという法律効果の部分が、非常にはつきりいたします。五月十日を過ぎた後であれば、現在の団体においては意味をなさなくなりますが、今後そういう団体をどういう形でつくつて行くか、またつくる方法があるかというような問題に対して、この法律効果が非常にはつきり浮び上つて来る。従つて、五月十日を境目にして、私どものねらつた法律の効果がそういう意味においてずれるという差はございますが、法案そのものの持つ法律的効果という意味においては、あとで申しました方の部分が強くなる、そういう限度においてかわつて来るだけであつて、法案そのものの効果としてはかわつて来ないのだ、こういう見解で申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/5
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006・小林信一
○小林(信)委員 委員長の御答弁は、まことに確信を持つた御答弁です。われわれ委員としては、委員長を中心に今日まで審議をして来たわけなんで、従つて私は、委員長に対して敬意を拂つておるものですが、ただいまの御答弁は、委員をいささか侮辱しているような気がしてならないのであります。というのは、この法案が上程され、衆議院にまわつて参りましたのは、その問題になる五月十日以前であります。五月十日を過ぎたらどういうふうになるかということは、委員長も十分御存じだと思う。その重大な責任を、委員長は果しておらない。われわれ委員に対して、非常に無責任な行為をしておられる。そういうことを自分が御自覚なさつておりながら、あえて、何らさしつかえないと言う。こういう不備なものであつても、他は生きているのである、しかも、この不備なものを審議している間に、何かそこに結論が出て来るだろう、こういうふうなことを今おつしやつたのですが、それで委員長としての責任が、はたしてわれわれ委員に対してとられているかどうか、私は非常に遺憾に思う。また政府当局におきましても、そうです。これを審議している過程において、それが不備であれば、その意図に沿つて何らか考究されるだろうというようなお考えでありますが、要するに、これは絶対多数をうしろに背負つたところの政府の、国民に対する不誠意不忠突きわまる答弁だと思う。今、この法案を中心にして、地方においてはどんな紛糾が起きておるか、文部当局としても、相当実情を御調査なさつておると思う。文部当局も相当狼狽して、各地方に対していろいろな工作をされていることも私は知つている。であつたら、もつと誠意を持つてこの法案に対して当つて来るべきだと思う。ただいまのような政府の御意見、また委員長としての御態度はまことに遺憾である。この委員会は普通の委員会と違いましてわれわれがこの法律を審議することによつてできて来るものはともかくとして、その審議の態度というものが、教育に対して大きな影響を持つて来るのじやないかと思う。それが死文化しているものを、何らかの理由で今日まで遷延しているものを、その期日を達して無効の状態に陥れているようなものを、あえて上程して、これに対して何ら責任を感じていない、そういうようなことで出て来る法律が、はたして日本の教育再建に役立つかどうか。こういう意味において私は委員長の責任を問い、文部当局の責任を問うものであります。私たちがこれからいかなる法律を審議しようとも、そうした不明朗な、奇怪千万な態度でもつて法律を審議することが、はたして教育的な責任を感じられるかどうか、この点委員長に再度御答弁願いたいと思います。さらに文部当局からも、次官がおいでになるのだから、このことに対しまして、どういうふうにお考えになつておられるか、もう少し事態の内容をお聞きしたい。私は、決して職員団体に対して、県單位を要望するというような簡單なものじやない。職員団体は、かえつてこの不誠意きわまるところの処置に対して、激昂して、町村單位でよろしい、連合体をもつて、必ずその報復的な——報復というのは、單なる恨みでなく、教育行政を混乱させ、破壊するところの一つの力に対して、断固反対して行く、こういう決意は当然私はとられると思う。あえて政府が事案を云々というようなことを言いますが、政府みずからして、あるいは政府と一緒になるところの与党みずからが、事案を乱しておると、私はこういいたいのです。教育者としてとかくの批判があるならば、その批判は、その責任におきまして、正当な機関を通してやるべきなんだ。こういう法律を、不快きわまる不明朗な処置によつて混乱させて、あえて彼らの反感を買うというようなことが、今日の文化国家の行き方として、当然の行き方かどうか。この点、次官に対して、明確な答弁を私はお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/6
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007・岡延右エ門
○岡(延)委員 関連して……。実はただいまの委員長の宣言は、図書館法の一部を改正する法律案、これを議題に供した。ところが、この法案について、この法案をいかにして行くかということであるならば、議事進行ということが初めて許されてしかるべきものだと思う。しかるに、議事進行に名をかりて、すべての法案に対して発言をするということは、国会運営のルールに反しておると思う。でありますから、この図書館法の一部を改正する法律案が現在議題になつておるのだから、そのことについてどうするか、運営が悪いじやないかということならば、初めて小林さんの発言が成り立つと思う。ところが、小林さんのは、主として教育委員会の特例法ですか、この問題である。だから、これはその問題が議題になつたときでよろしいと私は思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/7
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008・松本七郎
○松本(七)委員 岡さんに関連して……。今の岡さんの発言は、図書館法をやつておるからと言われますが、これはやつぱり運営の問題で、小林さんは発言されているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/8
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009・岡延右エ門
○岡(延)委員 運営の意味ならいいけれども、質疑をどんどんやるということはどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/9
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010・松本七郎
○松本(七)委員 運営全体についてであるから、今委員長が何を宣言されたかは別として、先に運営についての発言というものは許されてしかるべきだと思う。委員会法だけにとどまつておるわけじやないのです。たまたま運営について委員会法が問題になつたというだけのことで、いずれ委員会法が審議されるときには、この問題はさらに論ぜられますから、運営については、やはり当然委員長が答弁されなければならぬと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/10
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011・岡延右エ門
○岡(延)委員 委員長として、運営のことについて答弁されることは当然だけれども、それにこと寄せて、内容に触れて政府当局に軒並に質疑をするということは、ルールに反する。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/11
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012・松本七郎
○松本(七)委員 その点はわかります。そこで、当然小林さんの賛同に、委員長は答えていただかなければならないのです。それは結局運営の問題です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/12
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013・岡延右エ門
○岡(延)委員 運営の問題——それではよろしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/13
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014・松本七郎
○松本(七)委員 大臣が提案理由の説明をやつて、審議中に期限が切れるというようなことは、あり得るわけですけれども、こういう重要なすれすれの法案が、すでに参議院からこつちへまわつて来ておりながら、期限が切れるまで、提案理由の説明をせずにほうつておいたというところに問題がある。その運営の仕方を、小林さんは委員長に聞いておられる。その点委員長は、はつきり釈明されてしかるべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/14
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015・岡延右エ門
○岡(延)委員 それならばよろしいのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/15
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016・竹尾弌
○竹尾委員長 それではお答え申し上げますが、この法案の上程がたいへん遅れましたことについては、まことに申訳もございませんし、その点については、遺憾と存じております。こう遅れましたことについては、これはいろいろの事情がございまして、私といたしましては、できるだけそれらの事情を解決して、早く上程いたしたいと思つて、私自身としては、実に苦心を続けて参つたのでございます。しかし、今日まで遅れまして、まことに申譯ないと思つていますけれども、御説の通り、非常に重大な法案でございますから、これは松本委員さんからも御注意がございましたし、私自身もそう感じておりますので、できるだけ委員会の回数をふやしまして、慎重審議を続けたい、こういうぐあいに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/16
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017・小林信一
○小林(信)委員 私も委員長の胸中を察しないものでもありません。しかし私はこの点につきまして、委員長に二度も発言停止を食つております。その間文部当局の態度も非常に不愉快なものを感じておるわけです。それは何かというと、やはり委員長としての責任もあり、われわれ委員としての責任もあるからお願いしたのでありますが、しかし今の委員長のお言葉では、私は納得できない。というのは、委員長がそれだけ努力されて、この法案の提出を運んでいただいたとするならば、もうすでにこの内容が意味がないのであるから、なるべくこれを生きるように——たといそれが否決されようが賛成されようが、生きるように御処置なさつて提案の運びに至るのが、委員長としての誠意じやないかと私は思うのです。従つて、自由党の委員もたくさんあるのですから、その方たちにお願いして、その箇所は撤回するなり、あるいは他の議員立法の方法なりでされて行くべきものだと思う。ただ漫然とこういう法案を上程するにおいては、私は委員長になぜそういう処置をとられなかつたか。なお今後委員長としては、これをどういうふうに運んで行くつもりかとお聞きしたいのであります、私の想像するところ、こんなものを出しても、もう意味がないのだから、おそらくこんなものは流してしまうのだ、体裁だけ上程してつくろうのだというふうにしか、私には考えられないが、委員長としてのこれに対する腹を、率直に私はお伺いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/17
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018・竹尾弌
○竹尾委員長 お答え申し上げます。小林委員から、この件で私が二度発言を停止したというようなお話でございましたが、一回はたしか前々会だつたかと思いますが、この内容を私実ははつきり存じませんのと、ちようどあのときは、この委員室でございましたか、一時から会議がありまして、小林委員からの御質問の時間が一時三十何分かと記憶しております。その前に、実はこういうわけであるからということを個人的にちよつとお願いしておいて、小林委員さんに御了解を得ておいたはずでございまして、廊下では運輸委員長を初め委員の人が殺到いたしまして、早くしろ早くしろと申して、どうもしかたがなかつた。そういう事情でございまして、残念ながら次会に讓つていただきたい、こう申し上げたわけであつて、決して故意に発言を中止したというような気持では全然なかつたのでございますから、この際、もしそういう誤解がございましたら、そういうわけでなかつたのだということを、どうぞ御了承願いたいと思います。
なお、今後の処置をどうするかというお尋ねでございますが、私は誠心誠意、この法案に対して審議を続けたいと思つております。そこでこの処理の方法それ自体が議題になるのでございますから、その点につきましては、私の意見ということでなく、皆さんの意見の結集ということをお願いいたしますし、またそれに対する御意見自体が議題の内容になりますから、皆さんにおきましても、十分ひとつ御審議を願いたい、こういうぐあいに私は考えておるのであります。それで会期も切迫しておりますから、毎日でもけつこうであります。一日おきでもけつこうでございますから、委員会の回数をふやしまして、十分皆様方に御討議を願いたい、こういうぐあいに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/18
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019・小林信一
○小林(信)委員 いろいろ御弁解あつたのですが、私一番お聞きしたいのは、委員長が今のような誠意を持つならば、これまででも、この審議の過程において、委員の中から何か意見が出て来て、これがどうにかなるだろうというふうなことで、きようまで一箇月も遷延して、一つの法律を死文化してしまうようなことがあつてはならないのであつて、この委員会は、おそらく心ある国民からは、非常な批判を受けるのが当然だと私は思うのです。そういう各委員の立場を考えてみますときに、委員長は、これまた必然と、審議の過程において何か結論が出て来るだろうというふうなことでは、非常に遺憾なんです。それで、できるなら、委員長としてその責任を感じて、具体的な方法をここでお示しになつて、あるいは先ほど私が申しましたように、議員立法の形なら形で出していただいて、そして皆さんに審議していただくというふうな態度がとられることこそ、私はこの重大責任をとつておられる文部委員長としての責任だと思うのです。今の御答弁では、私はこれからいかなる法律を審議しても、ほんとうにさつぱりした気持で審議して行くことができない。できるなら、委員長にこの際これ以外の法案の審議は一応さしおいて、そしてこの教育委員会法等の一部を改正する法律案というものを、全員納得してこれから審議できる——私は賛成、反対というようなことは別問題として、真剣に審議できるという態勢に置いていただいて、これからの法案審議に当つていただきたいということを、委員長に要望できるのじやないか、委員長はまたその責任を果すべき今までの経緯があるのじやないかと私は思うのですが、委員長いかかですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/19
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020・竹尾弌
○竹尾委員長 お答え申し上げます。小林委員の御意見は、御意見しして十分承りまして、できるだけ御意見に沿うような気持で審議を進めたいと私自身は思つております。なお理事会もございますし、また全体にお諮りすることもできますから、皆様の御意見を十分しんしやくいたしまして、なお小林委員の御意見をもしんしやくして、できるだけ誠意を持つて、この法案の審議に当りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/20
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021・小林信一
○小林(信)委員 委員長は、理事会ということを言われたのですが、今まで理事会を何回お聞きになつたか、御存じですか。実際運営にあたりまして、もし理事会等を委員長の熱意でたびたび開かれるならば、こういう問題はなかつたと私は思う。ところが、委員長におかれては、理事会を開いて、腹蔵ない意見をわれわれから聽取することを、非常に危險に感じておるのじやないかと思う。やはり委員長としては、一党に属しておつても、こういう重大な責任にある以上は、もつと党派にこだわらない態度で進んでいただきたいと思う。そういう御熱意と決断があつてこそ、出て来る法律が、日本再建のための教育立法になるのじやないかと私は思う。いたずらに政党にこだわつて不明朗な法律をつくつたつて、それは意味がないと思う。おそらくこの教育委員会法等の一部改正の問題、あるいは国庫負担法等の問題が出て参りましても、不明朗な審議において出たものは、国民が相当批判して参ると思う。そういう意味から、私は委員長に、理事会等をもつとたびたび開いていただきたい、そしてその運営にあたつて万全を期していただきたい。なお、私が先ほど要望しましたように、教育委員会法等の一部を改正する法律案に対しまして、何らかの腹案を持つていただいて、爾後の法案審議に当る決意はないかどうか、もう一ぺんお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/21
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022・竹尾弌
○竹尾委員長 お答えいたします。腹案を持つておるかというお尋ねでございますが、必要とあれば腹案をつくりますし、またこうしなければならぬということがわかりましたら、そういたしますし、お話の通り、十分決断を持ちましてこの審議に当りたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/22
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023・小林信一
○小林(信)委員 委員長には、もうお伺いいたしません。先ほど私は、次官の御意見を承りたかつたのですが、この教育委員会法等の一部改正の中で、第三條がかかる状態になつておることについて、次官としてはどういう御意見を持つておられるか。(「それは議事進行からはずれている」と呼ぶ者あり)いや、これに対して委員長に要望するなり、委員の方たちに要望するなり、善処しなければならぬ責任があるわけです。そういうことは、次官としてはなさつておられるかどうか、お伺いいたします。
〔「それは誠意の問題だ、形式の問題じやない」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/23
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024・松本七郎
○松本(七)委員 今のに関連して……。結局こういうことになるのです。小林委員の発言は、議事進行をするについて、そういうふうな不備なものが出て来ておるから、一応ほかのものの審議をとどめてでも、この運営をこのままやることがいいかどうかということに対する質問です。それで委員長に小林さんが伺つておられる何らかその腹案があるかということは、聞いておると、具体的に言えば、政府の出して来たものを、中に期日の過ぎたものもあるからといつて、委員長がかつてにかえて出して来るわけにも行かないので、問題はこの原案が撤回されて、そしてかわりのものを何らか出すようにする運びを委員長がするか、こういうことになつて来るだろうと思います。そこで、政府とも関係して来るので、政府はそういう撤回する意思があるかということになるわけではないかと思う。その関係だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/24
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025・竹尾弌
○竹尾委員長 それでは今村政務次官。——答弁ないそうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/25
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026・小林信一
○小林(信)委員 これもやはり議事進行なんですが、今の今村政務次官の態度を、委員長は了承しますか。委員の発言に対して、そんなのは議事進行の部類じやないと、傲然たる態度をとつてそこにすわられることが、政府の態度ですか。それを委員長了承しますか。(「政務次官も国会議員だ」と呼ぶ者あり)国会議員であろうと、そういう態度をとつておつたら、審議はできないじやないですか。やはり政府は政府としての態度をとるべきだ。政務次官がそういう発言をしたことに対して、委員長はどういう態度をとりますか。(発言する者あり)委員長の問題なんだ。委員長、どうです、あの態度でいいと思いますか。そこが、私の委員長は超党派的な立場で嚴然たれと言うところなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/26
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027・岡延右エ門
○岡(延)委員 私は先ほども申したのですが、委員会というものは、もう少し国会法のルールの上に立つて運営していただきたい。要するに、議事進行ということであれば、いかなる法律案について、いかなる内容にわたる質問をしてもよろしいということでは、このルールは根本的にこわされてしまう、私は数年間議院運営にいるので、こういう点は特にほかの人にもやかましく言つているが、こういうことを文部委員会で平気でやるということは、われわれとしては……。(「それは別問題だ」と呼ぶ者あり)私の言うのは、形式や内容の問題じやない。そういうでたらめのことをやつていると、国会にはルールも何もないことになる。断固として、そういうことは破碎しなくてはならぬ。そういうルールをこわすことは絶対いかぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/27
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028・小林信一
○小林(信)委員 ルールといつて…。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/28
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029・岡延右エ門
○岡(延)委員 君はルールを無視するのか。そんなら国会議員をやめてしまえ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/29
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030・小林信一
○小林(信)委員 自由党は、このルールをたてにとつて、多数で押し切ろうとしているじやないか。そういうように審議をでたらめにして、押しつけたようなことは、国民がそれを許すはずはないじやないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/30
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031・岡延右エ門
○岡(延)委員 国会議員というものは、ルールというものに対して忠実でなければならぬ。あなたは、多数で押すとかなんとか言うけれども、多数というものが議会政治の根本なんだ。あなたは、最初それくらいのことは勉強して、国会に出て来たんだろうと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/31
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032・竹尾弌
○竹尾委員長 ただいまいろいろなことがございましたが、議事進行の範囲をちよつと越えておるように思いますから、この法案に対しましては……(発言する者あり)御静粛に願います。——この法案がかかつたときに、御質疑を願いたいと思います。質疑はこの程度でとどめておきたいと思いますがいかかでございますか。
〔発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/32
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033・竹尾弌
○竹尾委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/33
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034・竹尾弌
○竹尾委員長 速記を始めてください。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/34
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035・竹尾弌
○竹尾委員長 次に、図書館法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案は、すでに前会までに質疑もほとんど終了しておると存じますが、なお御質疑がございますれば、この際お許しいたします。
御質疑がないようでありますから、本案に対する質疑を終了するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/35
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036・竹尾弌
○竹尾委員長 御異議なしと認めます。よつて本案に対する質疑はこれにて終了するに決しました。
〔「ルールに従え」と呼び、その他発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/36
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037・竹尾弌
○竹尾委員長 御静粛に願います。
次に本案に対する討論はこれを省略し、ただちに採決に入りたいと存じますが、討論を省略するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/37
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038・竹尾弌
○竹尾委員長 御異議なしと認めます。よつて討論は省略するに決しました。
これより採決いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/38
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039・岡延右エ門
○岡(延)委員 議事進行に関して……。これは私は絶対ルールを逸脱しません。純然たる議事進行です。と申しますのは、今雑音ではありますけれども、ある委員から、ルールという点が持ち出されております。雑音だから無視してよろしいのですが、御承知の通り、あらゆる委員会、あるいはまた本会議等におきましても、慣例がございます。嚴密にいえば定足を欠いておることはございますが、それをやつておるのであります。これは決しておもしろいことではありません。理想ではございませんでしようけれども、しかしこれは一つの慣例法と申しまして、イギリス等におきましては、慣例法の方が明文に優先するという運営さえございます。また事実わが国の国会においても、それが慣行されておるのでありますから、どうかひとつそういう意味において、あるいは嚴密に申しますと、定足を欠いておるかもしれませんけれども、慣例に従いまして運用せられんことを希望いたします。
〔「それはいけませんよ、ルールに従いましよう」「あつさりやろうじやないか」と呼び、その他発言する者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/39
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040・竹尾弌
○竹尾委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/40
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041・竹尾弌
○竹尾委員長 速記を始めてください。
それでは定足数に関して、御異議も正式にないようでございますから、慣例に従いまして、これより採決いたします。
本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/41
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042・竹尾弌
○竹尾委員長 起立総員。よつて本案は、原案の通り可決すべきものと決しました。
なお本案に関する報告書作成につきましては、委員長に御一任を願うことに決するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/42
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043・竹尾弌
○竹尾委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/43
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044・竹尾弌
○竹尾委員長 次に、連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案を議題といたします。質疑の通告がありますのでこれを許します。浦口鉄男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/44
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045・浦口鉄男
○浦口委員 この連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案は、対象とするところが非常に狭いような感じが一応するのでありますが、しかし、この法律案の骨子が、平和條約第十五條(C)項を具体化したという意味において、すなわち平和條約を法律化するという意味においては、戰後重大な意義を持つた法律でありますので、その影響するところも非常に大きいと私は思います。この法律案の内容について、具体的には逐次質問を申し上げたいと思いますが、一括して考えてみますと、この法律案全体の感じが、国際法上の根本解釈による、いわゆる国際間の信義上の問題にも、非常に疑義があるような感じがいたすのであります。また具体的な例をあげてみましても、占領下の文部次官及び局長通達によつて、いわゆる五十年フイクシヨン——このフイクシヨンに基く私契約が現在もまだ生きておるわけでありますが、それによつて、今後やはり紛争が起きる可能性も多分にあるように感じられます。すなわち根本的にいつて、国際法上の根本原則に基く国際信義に対する疑義、なお具体的な私契約に基くトラブルというふうなものが、行く行くは国際司法裁判に訴えなければならない場合も出て来るような疑義が、多分にある法律案であるということを、われわれは遺憾ながら感ぜざるを得ないのであります。そこで、そうした意味合いにおいて、この法律案は、非常に複雑な内容を持つた法律案でありますとともに、そうした対外的の影響の強い法律案でありますので、われわれは十分に検討してみる必要がある、こう思うわけであります。
そこで、具体的に逐條答弁をいただきたいことがたくさんあるのでありますが、まず劈頭、文部当局といたしましてこの法律案を出すに際しましては、できれば平和條約発効の時までにこれを成立させたかつた、こういう御意向のあることも承つておりますし、なおまた、当然と思うのでありますが、参議院は通過しておりますが、まだ本院において審議中であるということも事実であります。そこで伺いたいことは、現在この法律案が成立していないことによつて、どんな不利益があるか、またこの法律案が通過しないことによつて、不利益が現に起りつつあるか、またそうしたことに対して、この法律案を一日も早く通過させてほしいという何か輿論が強く起きつつあるか、この点について、まず当局の答弁を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/45
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046・近藤直人
○近藤(直)政府委員 お答えいたします。この連合国及び連合国民の著作権の特例に関する法律案は、すでに提案理由の際に、大臣から御説明があつたのでありますが、要するに、対日平和條約第十五條(C)の規定を敷衍いたしたものでございますので、もちろん対日平和條約そのものによりましてこの法律の趣旨は盡されておるわけでございますが、この條約そのものでは、一般国民の理解に不十分な点がございまして、また実際実施上の面におきまして十分盡さない点もございます。たとえば、第三者に対する対抗要件というような点につきましては、何らこれは対日平和條約第十五條では触れておりません。かような意味におきまして、この條約の十分盡さない点を補足をして、さらにまた條約の趣旨を十分に国民に理解させるというような意味において、この法律案が必要とされたのでございます。法律案が今日まで確定いたしませんために、どのような不便があつたかという御質問でありますが、ただいま申し上げましたような趣旨でございますので、やはりこの法律案がありませんと、国民が理解に不十分であるという点が、問題になろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/46
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047・浦口鉄男
○浦口委員 ただいま、本法案ができないことによつて、現在非常な困難が事実生じておるということでは、どうもないという御答弁のように感じられます。しかし、今の答弁をもつて、だからこの法律案はいらないじやないか、こういう結論を出すつもりはありませんが、一応その点はその点で承つておきます。時間もありませんし、実は本日この委員会があると思わなかつたものでありますから、問題を整理いたしておりませんので、一応今整理のついた点だけを御質問申し上げて、また次会に保留しておきたいと思います。
そこで、第二段にお伺いしたいことは、この法律案によつて、連合国及び連合国人の著作権は、これは国際間の信義から申しましても、なるべく有利に保護、解釈しよう、こういうことは当然と思うのであります。ところが、その反面、またそういうことによつて生ずる日本人の利益をなるべく多くこれは確保しよう。ことに占領下、戰時中に受けた日本人の不利な條件は、この立法によつて極力これを是正して行こうということは、私当然と思うのでありますが、その両者の調整を、文部省は一体どういう点で具体的にこの法律案に盛られておるか、これをまず承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/47
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048・柴田小三郎
○柴田説明員 お答えいたします。占領中におけるいわゆるGHQの管理政策に対する法的措置は、この法案の中に盛らないで、この法案は十五條の(C)だけに限つて立案し、GHQの政策については、具体的に行政的措置をもつて解決して行きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/48
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049・浦口鉄男
○浦口委員 ちよつと答弁がはつきりしないのでありますが、もう一度確かめておきたいのであります。今申し上げたように、連合国及び連合国人の著作権について、なるべくこれを有利に扱つてあげたいということと、その結果受ける日本人の利益もなるべく多く確保したいという、この両者が当然一致した法律案であることが理想だと私は思います。ですから、そういう点について、具体的にどういうふうに、文部省は立案にあたつて考えられたか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/49
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050・近藤直人
○近藤(直)政府委員 根本の趣旨は、要するにこの法律は、日本国民の義務のみを規定して、同時に、日本人の権利の主張がないじやないかということではないかと考えるのであります。この法律は、御説のように、主として日本人の義務を規定したのでございます。しかしてその日本人の将来におきまする権利の主張と申しますか、日本人が有利に著作権の主張をするという面におきましては、これは平和條約のたしか十四條と思いますが、この十四條の規定に基きまして、将来各相手国と個々の條約によりまして日本の主張を有利に展開するという以外に方法はないと考えます。またこの十四條の規定によりますと、連合国はその各国の国内事情の許す限りにおきまして、日本国に対して有利に取扱いすることに同意するという規定がございますので、その規定をたてにとりまして、将来外交交渉によりまして、有利に著作権の條約を締結するという方向に進むものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/50
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051・浦口鉄男
○浦口委員 その点はわかるのです。連合国及び連合国人の有する著作権と、日本人の有する外国において使われている著作権、その二つの問題は私はわかる。ただ連合国及び連合国人の有する著作権並びにこれに関連する翻訳権を使用する日本人の出版者あるいは翻訳者その他の利益を、どの程度まで確保されるように努力をされたか、その点です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/51
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052・法貴次郎
○法貴説明員 今の浦口先生の御質問の点でございますが、戰時中の契約、これは日本に対する著作権政策を極東委員会が決定しなかつたのです。それで、占領期間中における外国著作権の範囲、それからその保護の内容というふうなものは、極東委員会が政策決定をしなかつたために、メモランダムとか、デイレクテイヴとかいうものを——最高司令官といえども、外国著作権の範囲、内容については、スキヤツピンを出すことができなかつた。それで暫定的に司令部の一つの機関として、民間情報教育局が行政措置でやつたわけです。民間情報教育局と申しますのは、用紙の割当の監督機関としてありましたし、雑誌にしろ書籍にしろ、翻訳関係のものは全部民間情報教育局の手に入つた。それと著作権の問題とを、両方総合的に扱つたわけです。従いまして、占領期間中に、一般的に外国著作権は死後五十年であるとか、飜訳権についても死後五十年であるというようなことは、総司令部の民間情報教育局が管轄したと考えられる、外国の文化を日本へ導入するという、民間情報教育局の権限に属した行政措置と表裏をなした事実上の行政であつて、日本の法規ではなかつた。従つて、文部次官通牒であるとか、局長通牒というのは、何も日本の法規としてこういう規則があるぞということを通達したのではございませんので、ただ司令部が外国著作権についてはこういうような取扱いをしている、日本著作権法上の保護の内容、つまり死後三十年ということは、外国著作権に与えなければならぬ。しかし、それを越える限度ということは日本政府は知らない。それを死後五十年と死後三十年との間、具体的な著作物に応じてどう決定するかは、司令部が決定して、司令部が民間に対する直接管理をしておりますよ、そういう事実がありますよということを通達しただけでありまして、次官通牒並びに局長通牒が、画一的に現在の日本における外国著作権は死後五十年まで延びているということを通達した事実はないのであります。次官通牒、局長通牒の趣旨は、そういうところにあつたのでございます。従いまして、そういう飜訳物、外国著作権に関することは、CIEが許可をしないと、日本人は事実上出版ができないという状況になつていたので、またその外国人との契約書を提示しないと、司令部は許可しないという事実上の状態であつた。しかし、司令部自身が、外国著作権の内容及び範囲はこういう程度として扱うということは、何ら法的に発表していないのでございます。死後五十年といいながら、飜訳権十年たつたものは、これは外国著作権はなしと認めてよろしいということを、民間情報教育局が文書で日本人に通達した現実の例を、私どもは知つております。また外国著作権についても、司令部がある国のミツシヨンに連絡いたしまして、今まで五十年でやつて来たが、あなたの方の意見はどうか。それは日本著作権法通りでよいのだというミッシヨンの回答がありますし、そのあくる日から、日本著作権法通り死後三十年ということでやつてみたり、具体的な外国著作権の内容が、日本政府や日本の法律と無関係に、がらがらかわるというようなことがございまして、日本の一般出版者や民間人も、何のことかわからぬというようなことを私語していたという事実がございます。とにかく、司令部としては、何らか漠然たる一つの民間に対する直接管理をいたしまして、それで日本人は、そうしなければ許可がもらえないのですから、事実上日本の著作権法によれば、切れたような外国著作権について契約を結んで、翻訳、出版したということは事実でございます。しかし、平和條約の発効によりまして、もちろん真珠湾の前に翻訳十年の期間が切れたというふうなものは、当然主権回復後は外国著作権の権利は認めないでよろしいという状態になつております。そういうふうな状態になつて、たとえば、真珠湾の前に翻訳権の十年の期間が一ぺん来て、日本の法律から言うと、切れているというようなものでも、占領期間中は、日本人は事実上契約を結ばせられていたケースが多いのであります。しかしそういうものは、主権回復と同時に、平和條約により、連合国との間では当然だれでもこれは翻訳、出版することが自由である。外国の翻訳権を認める必要なしという法律状態が実現いたします。従つて、そういう性質の外国の著作物について、占領期間中に契約を結んだばかりに、その人は当事者間の契約に基いて著作権の使用料を外国に拂わなければならぬというような関係になりますが、そういう契約を結んだ人は、日本の平和條約の発効によつて、第三者一般は契約を必要としない、印税を拂うことも必要としない、自由になつたのに、占領中の特殊の事情によつてこういう契約を結んだばかりに、主権回復後自分だけが不利な目にあうのは不合理だ。従つて、この契約は将来に向つて無効として扱つてもらいたいとか、そういうような交渉を当事者間において起す、そうしてその了解をとりつけて、第三者一般と同じく、印税の支拂い義務というようなことを将来に向つてなくしてもらうというのが、日本人側のとるべき態度だと思うのであります。そういう日本人側の活動に対して、日本政府はあらゆる過去の事情を説明してお力添えをいたしたい、こういうふうに考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/52
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053・浦口鉄男
○浦口委員 ただいま承つたことによつて、私新しい発見をしたのですが、この三十年、五十年の問題は、結局当時の司令部の直接行政によつてやつたものであつて、当時も、現在においても、文部当局はタツチしていない、または責任がない、こういうことに解釈していいと思うのです。ところが、直接行政によつても、これは日本国民の権利義務に非常に大きな実際の影響を与えているという事実から見ますと、これをポ政令あるいは、特例法で当時合法化してやらなかつたことは、憲法違反にならないか。そういう点に対して、文部省はどういうふうに考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/53
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054・柴田小三郎
○柴田説明員 次官通牒、局長通牒が問題になつておりますが、これについて少し長くなりますが、説明申し上げます。外国の出版物を飜訳し、あるいは音楽を演奏する場合には、著作者の死後五十年を経なければならないという、こういうふうなGHQの意思が出て来たのは、昭和二十一年の暮れでございます。文書の形でそういう方針が私たちの手に入つたのは、昭和二十四年の春ごろだと考えております。これは飜訳につきましては、出版協会とCIEとの話合いによつてできたものと聞いております。その政策が具体的に現われたのはいつであるかは明白になりませんが、少くともアメリカ出版物の翻訳について入札を行われました二十三年の六月には、その方針が具体的になつていたものと解釈します。そしてそのGHQの方針が、民間において一つの既成事実となつて現われて来たのでありますが、しかし、それは国民一般に普及徹底いたしませんで、ある出版社、ある翻訳業者の間には、なお日本の法律によつて出版し、翻訳しておるものもあるわけであります。それについて、GHQとしましては、その間に、政策に反するものと考えたのでございましよう、昭和二十三年の八月一日に、政府あての覚書が来て、それには一通のリストがついてございました。それには日本の出版社の名前をあげ、そこから出ている翻訳書の名前を百点近く載せておりまして、これがGHQの許可を得るという方針に反しているから、日本政府は一〇%以上のロイアルテイ——罰金をとることというふうな覚書でございました。しかし、日本政府としましては、GHQの許可を得なければならない、こういうふうなことを日本の政府の責任において国民に周知させておりませんので、どこまでも、これらリストに上つておる分については、著作権法の建前においてやる、こういうようなことでもつてGHQと交渉し、その百点近い書籍は、ほとんど日本の著作権法からいえば権利侵害になつていない、こういうふうな建前を通して、その覚書のGHQの方針を、日本の法律の立場から阻止したのであります。その後八月三十一日に、引続きましてそういうふうな覚書が来まして、それについて、また多くの書物の名前が上つて来ましたので、政府としては従来の方針をとつて、これは日本の法律でやる、政府は、死後五十年以前のものはGHQの許可を得なければならないということを、国民には教えていない、政府がこれを取扱うことはできないという立場を堅持いたしまして、それは著作権侵害じやない、こういうふうに持つて行つたわけであります。ところが、たまたま昭和二十五年に入りまして、学校の教材につきまして、やはりGHQの許可を得ないで出たものがあつたようでございます。それについて、GHQの方としては、何らか文部省がGHQの許可を得るような方針をとつてみたらどうか、こういうふうな指示があつたわけでございます。しかし政府としては、そのGHQの許諾を得なければならないという政策は、すでに民間との間に既成事実となつていることであつて、いまさら政府としては屋上屋を重ねる必要はない、こういうふうに持つて行つたわけでございます。再三交渉の末、GHQのその行政を知らせてほしい、こういうふうなことでございまして、教育委員長及び地方長官に対して、次官通牒の形で、GHQの許可を得なければなりませんよ、こういうふうなものを出したわけでございます。その後二十五年に引続き覚書が出まして、GHQの許可を得なければならない、こういうふうな処置をとれというようなものが来ましたので、その際も、政府としましては、すでにGHQの許可を得なければならないということは既成事実となつているので、いまさら業者に対して屋上屋を重ねるような方法をとる必要はない、日本政府は、どこまでも日本の法律によつて、また條約によつて処理したいのだ、こういうふうにがんばつたわけなんです。何らかの形で、一般業者にも教えようということで、GHQへ、こういうふうな形のものをやつておりますということを、やはり局長通牒で出したのでございます。その後もやはりその許可を得ないで出して来たものもございます。しかし、それについてやはり政府も調査は命ぜられましたけれども、この局長通牒は、GHQの行政を教えたものにすぎないのであつて、日本政府は日本政府の法律あるいは諸條約の立場から、国民の著作権使用状態を見るのであつて、それについては、やはり不法行為とは思わないということを、繰返しGHQに言つているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/54
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055・浦口鉄男
○浦口委員 これは四月二十四日の参議院の文部委員会における柴田課長の答弁にも関連するわけですが、占領下において、日本の著作権使用者に一部違反行為があつたということは、これはわれわれも認めていいと思うのであります。しかし、それによつて考えられることは、こちらにもそうした過誤があつたのだから、どうも司令部の意向を業者にというか、使用者に押しつけたというふうな感が非常に強い。もし、司令部の方の意向が不確定だということであれば、これは向うに責任があると私は思う。しかし、司令部がほんとうに確信を持つて指令を出すならば、その当時においてポ政令で出すとか、あるいは日本著作権法の特例法を設けるとか、こういう正当な措置があつてよかつたと思う。もしそうしたポ政令が出されるということになつて、それが不当なものであるならば、これは当時としては国会の権限以外でありますが、それは不当であるという輿論が当然起きたと思う。ですから、これはわれわれ非常に疑惑に考えると、そうした輿論の反撃をおそれて、何か司令部関係の一部業者の非常に有利なように事を運ぶために、文部省が正式の手続をとらず、通達というふうな形でGHQの指令の実施を暗に支持し援護した、こういうふうな感じがあります。われわれもそうした疑いを事実の上に聞いているのであります。もちろん、これは聞いていることでありますから、今それがはたして事実かどうかということは、断言はできませんが、連合国側のいわゆる著作権の代理業者の一部については、私はあまり好ましくないことを聞いているのですが、そうしたことに対して、今文部省は、業者に一部過誤があつてそれを追究されたのだから、マ司令部の意向はそうした正式のポ政令その他によらないで、こちらにも過誤があつたのだからというふうな弱みを感じて、こうした合理的ならざる方法をやつたことが、今非常に不明朗なものを残しておるのだ、こういうふうに考えるわけですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/55
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056・柴田小三郎
○柴田説明員 ただいま説明申し上げましたように、これを通牒の形で出しましたのは、どこまでも日本の業者を守るためでございます。これをポ政令あるいは法律にするということは、いわゆるGHQの行政を日本政府が責任を持つてやることになります。また諸條約において日本が留保している有利な條件をどういうふうにするかという点も、かかつて非常に重要な問題でございます。これをポ政令あるいは法律にするということは、独立後に悪い既成事実を残すことになります。たとえば、今われわれは外国人に対しまして、戰争中の不当な契約の破棄ということを申し出しておりますが、これがもし法律や政令になつておりましたならば、政府はそういうふうなでたらめなことを、いまさらとれないわけでありまして、これが通牒という形で出してあるから、私たちが当時予期したような状態が出ておりましても、現在そういう契約の破棄、拂つた金の返還というふうなものに対して、政府としても処置のしやすい段階になつている、こういうふうに私たちは解釈しているのでございます。なお、そういうふうに業者の利益を考えるという点、それからこれを法律にすることは、條約関係あるいは独立後の日本に対して、非常に悪い状況を残す、こういうことを考えまして、通牒の形にしておいたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/56
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057・浦口鉄男
○浦口委員 その見解は、ちよつと違うのです。法制局にもいろいろ聞いてみたのですが、戰争中の著作権に関しては、ポ政令の二百七十二号の翻訳権の問題、これは講和発効とともに廃棄処分になつている。ですから、ポ政令が出ていても廃棄になつている。もちろん、私契約は残ります。しかし、ポ政令でやつておいたから講和後も非常に不利益の事態を招来する、だから通達という形でやつておいたという理論は成り立たないと思う。どういう根拠においてやつたことでも、私契約そのものは残ります。どうもその点、私は文部省の考え方はおかしいと思う。しかも占領下において、いわゆるデイレクテイブというものになれば、これは相当強硬なものになるが、メモランダムあるいはサゼスチヨンというものに対しては、国会その他の機関も、それが不当なものであれば、相当抗議をして是正させた例もたくさんある。これは文部省も御存じです。ですから、真に日本の著作権使用者の利益を守るために、そうしたことに対して、これが不利益であるならば、もつと司令部に強い態度で交渉すべきであつた。しかも、先ほどのお話によれば、司令部の意向がしよつちゆう浮動であつたということをお聞きして、その点たいへん遺憾に思うのであります。しかも、三十年を五十年にしなければならぬということを使用者に印象づけたことも、文部省の通達が非常に強くきいているのであります。これがなければ——もちろん司令部からのそういう意向はあるにしても、国内法によれば、いわゆるベルヌ規定によつて、著作権の使用者は三十年を固執してよかつたわけです。その後変更されたブラツセル規定は、一九四八年にできたわけですから、これに拘束される理由はないのです。それをこういうメモランダムを重視して、通達という形によつて暗に日本の使用者を拘束したという事実は、はつきりしている。そういう態度は、一部の連合国側の著作権者を擁護したという疑いを受けても、しかたがないのじやないか。もしそういう疑いを残さない、残すことが将来困るということであれば、もつと強く抗議をしてよかつた。しかもまた、正式なポ政令その他で出してもらうことを要求すべきだ。そういうことであれば、私は私契約そのものはここで論議をしません。それは法制局に聞きましても、いかなる形においても私契約そのものは残るということを、確認しておりますから、それを今ここであらためて論議はしませんが、少くとも文部省の処置に対しましては、利益、不利益を別にして、講和発効とともに踏み切りがついた、解決がついていたのではないか、そういうふうに考えるのですが、その点もう一度伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/57
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058・柴田小三郎
○柴田説明員 GHQの政策に対して、文部省が日本の法律を守るために、最後まで努力したのでございます。先ほど御説明申し上げましたように、日本の代表的な出版物に対して、その権益を保護するということもありましたけれども、やはり当時の状態からいつて、通牒の形でGHQの行政を支持せざるを得なかつた状態になつたのであります。なお先ほど、一部連合国人の業者のためになつているのではないかということでございますけれども、私たちは、具体的にそういうふうなことを聞いておりませんし、もし具体的に浦口委員のところに例がございましたならば、私たちも研究したいと思いますが、いまだかつて政府が一業者のために働いたということはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/58
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059・浦口鉄男
○浦口委員 文部省としては、たいへん辛い立場であり、その当時は、相当マ司令部に抗議を申し込んだという事実は、率直に認めていいと思うのですか、文部省としては、どうしてもいま一段考慮すべき点が足りなかつたことは認めざるを得ない、そう思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/59
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060・竹尾弌
○竹尾委員長 本日はこれにて散会いたします。
午後一時三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305115X02819520606/60
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