1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年一月三十一日(木曜日)
午後一時四十八分開議
出席委員
委員長 佐瀬 昌三君
理事 北川 定務君 理事 田嶋 好文君
理事 田万 廣文君
角田 幸吉君 鍛冶 良作君
高橋 英吉君 花村 四郎君
牧野 寛索君 眞鍋 勝君
田中 堯平君 加藤 充君
世耕 弘一君
出席国務大臣
法 務 総 裁 木村篤太郎君
出席政府委員
法制意見長官 佐藤 達夫君
委員外の出席者
検 事
(検務局刑事課
長) 神谷 尚男君
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小林 貞一君
―――――――――――――
一月三十日
旧軍人会館を遺族に貸與の請願(永田節君紹
介)(第二八一号)
川島裁判所改築の請願(眞鍋勝君紹介)(第二九
九号)
阿波郡及び板野郡に簡易裁判所設置の請願(眞
鍋勝君紹介)(第三〇〇号)
仙台地方裁判所登米支部庁舎改築の請願(内海
安吉君外一名紹介)(第三〇一号)
の審査を本委員会に付託された。
一月二十九日
総社町に簡易裁判所及び検察庁の設置促進に関
する陳情書
(第一一八号)
戰犯者の助命減刑と外地服役者の内地送還に関
する陳情書(第一
九号)
戰犯者の助命減刑等に関する陳情書
(第一二〇号)
戰犯者の釈放並びに特赦減刑等に関する陳情書
(第一
二一号)
を本委員会に送付された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
小委員会設置に関する件
参考人招致に関する件
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する
件の廃止に関する法律案(内閣提出第四号)
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する
件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律
案(内閣提出第一八号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/0
-
001・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 これより会議を開きます。
まず小委員会設置の件についてお諮りいたします。この際恩赦に関する小委員会、及び戰争犯罪者の刑の執行に関する小委員会を設けその調査に当りたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/1
-
002・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 異議なければさように決定いたします。なお小委員の数及び選任につきましては、委員長に御一任願いとう存じます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/2
-
003・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 次に松阪市大火事件について、田嶋委員より発言を求めておりますので、この際これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/3
-
004・田嶋好文
○田嶋(好)委員 先般、当委員会におきまして、罹災都市借地借家臨時処理法の適用を受けようといたしまして、法案の審議をお願いいたしました松阪大火事件に関連いたしまして、私は当委員会がこの大火事件の真相究明に当られんことを提案するものであります。これは先般の法案の審議にあたりまして、説明がいたされておりますので、詳しく申し上げることは避けるのでございますが、概略申し上げますと、昨年の十二月十七日に松阪市の第二小学校から発火いたしまして、松阪の中心市街を七、八百戸焼き盡し、その大火が鎮火いたしました直後、再び東中学校から火災が起つて燃えた。なおその後一週間の後に、再び小学校に火災が起りまして、これは未遂に終つておる、こういうような状況であります。
当時の状況といたしましては、第二小学校から火災が発生いたしますその一日前、昭和二十六年の十二月の十六日に、松阪に大火が起つてそうして松阪市が焼け野が原になるのだというようなデマが盛んに流布され、そのデマと符合するように、翌日大火が起つたというよう事実を、われわれ調査の結果聞き得たのであります。
なお当日の大火に関連いたしまして、掠奪、窃取が公然と行われておつた結果を、東町署へ提出いたしたのでありますが、掠奪、窃取いたしました被疑者が一人もあがらない、こういうふうな不祥な結果を来しておりまして、まことにわれわれ治安上憂慮すべきものがあると認められるのであります。
なおその大火の後、まことに共産党の方には申訳ないのでありますが、三重県共産党各地区委員会の支部長会議と申しますか、こうしたものが招集せられたというような——もちろんこれはどういう目的か知りませんが、招集せられたという事実もあがつております。その後今に至るまでひんぴんといたしまして、大火がまた再び起るというようなデマが流布され、人心は極度に動揺をいたしております。検察当局、警察当局が熱心なる捜査を続けました結果、東中学校の火災に対しましては当時不良学生で退学を命ぜられた者が放火したものであるということで、被疑者があがりまして起訴されまして、被告として現在取調べを受けておりますが、新聞の報道によりますと、本人が否認している。母親に対しまして、お母さん、私は火をつけた者ではこぎいません。神明に誓つて申します。今ごろは真犯人はどこかでうそぶいておりましようというような手紙を母親に送つております。
第一の第二小学校の事件は、一箇月たちました後、当時ルンペンであり、聞くところによりますと、ほとんど八文という、要するに満足な知能を有しない人間である被疑者を検挙いたしました。これが犯人であるということで調べました結果、放火というようなことで事件を処理しようとしておりますが、これすら放火に持つて行くのには根拠がないということで、警察、検察庁とも悩んでいるような状態であります。少くとも私たちはこの結果を総合いたしますときに、その第二小学校の火災にいたしましても、そうしたルンペンが当時挙動不審で調べられた事実が事後にございますし、何も一箇月後にこの人を真犯人としてあげて、放火呼ばわりはしなくてもよいと思うのであります。また退学者をひつぱつて来て、それを被告にしておりますが、否認しているところを見ますと、いずれも検挙による結果を出すことを警察、検察庁が非常にあせつているのでありまして、むしろこれは人権蹂躪というような点も含まれますし、治安に対する大きな問題も含まれておりますので、そうした点は国会としては見逃すことができないような考えを持つのであります。なおその後の第三回目の放火事件に対する犯人はまだあがつていないというようなことでございまして、捜査当局の捜査の方法、熱意、治安に対する考え方等も、国会といたしましては一応私は究明の対象にしなければならぬのじやないかと思つております。なお非常に私の遺憾に感じますことは、今回国会からこの事件に対する法務府その他検察当局に対する状況の報告を求めましたところ、まつたく不誠意きわまると思われるような報告が、法務府、検察当局から出ている。これは国会といたしましてはまことに遺憾とせざるを得ないのでありまして、これらの点に対しては、もう少し真相を究明してかからなければならぬ。こんな事件を簡單に報告して何でもないようにせせら笑いをして通すということは、われわれとしては忍びないところであります。国警方面からはある程度詳細なる報告が出ております。この点は法務府の誠意、検察当局の誠意に対しましては、われわれは誠意を認めるにやぶさかでないのでありますが、この報告でもいまだ満足することはできません。また自治警方面からも報告を求めようと思つておりますが、いまだ到達してない、こういうような実情であります。私はこの事件に対しましては、以上の経過を考えてみますときに、遺憾な点が多々あるのでございます。このままこの事件を国会として放任しておくということは、国民感情が許さないのであります。国民に対するわれわれの義務を果したことにならない。特に治安の問題に関して、重大な責務を持たなければならない本国会において、この問題を徹底的に究明するということは、その当を得たものであると考えます。皆さんに事情を説明いたしましてお諮りする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/4
-
005・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 ただいまの田嶋委員より述べられた通り松阪市の大火事件に関する調査のため参考人より意見を聴取することにいたしたいと思いますが、別に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/5
-
006・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 これは先ほど理事会で決定したところによりまして、調査を進行いたすことにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/6
-
007・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 次にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案及びポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諾命令の措置に関する法律案を一括議題といたします。
まず政府より発言を求められておりますので、この際これを許します。佐藤法制意見長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/7
-
008・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 ただいま議題になつております二件のうち、法務府関係の諸命令の処置に関する法律案、これにつきまして先般一応提案理由の御説明で申し上げたのでございますけれども、なおこの中に存続すべきもの、あるいは廃止すべきものが数件上つておりますので、そのおのおののポツダム勅令あるいはポツダム政令の中身を簡單にここで御説明申し上げておいた方が御審議に御便宜ではないかということで、私から一通りどういうものだということを御説明申し上げたいと存じます。
第一に申し上げますのは、この一條にございますように、なお條約効力発生後も法律としての効力を存続させるというもの、これが四件上つております。それについてまず申し上げますが、第一は政治犯人等の資格回復に関する件でございます。これは終戰直後の指令に基きまして、たとえば治安、維持法の罪であるとか、治安警察法の罪とか、戰時刑事特別法、陸海軍刑法、言論出版関係の法律あるいは不敬罪というようなもののために、人の資格に関する法令の適用上欠格者として扱うというものについて、将来に向つてその刑の言渡しを受けざりし者と見なすというのがこの勅令の内容でございます。この内容は今後といえども存続すべきものと存じますので第一として掲げたわけでございます。
それから第二は婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令でございます。これは「暴行又は脅迫によらないで婦女を困惑させて売淫をさせた者」「婦女に売淫をさせることを内容とする契約をした者」というものについての処罰を規定しておるのでございますが、これも占領の中止によつて効力を失わせるということはいかがかと存ぜられますので、存続の処置を講じたいと思つておるわけでございます。
それから第三は、沖縄関係事務整理に伴う戸籍、恩給等の特別措置に関する政令であります。これは御承知の通り、北緯二十九度以南の南西諸島についての行政権の関係が結局変則な形になつておりますので、小笠原諸島も含めて、それらの地域に本籍を有しておる者の戸籍、それから寄留の仕事は、本来ならば本籍地の市町村長の管掌すべき事務でございますけれども、ただいま申し上げたような変則の状態になつておりますために、これは法務府令で定める法務局に勤務する法務府事務官が本来市町村長の管掌すべき戸籍事務等をつかさどるということでございます。この関係は平和條約の内容にも触れております通りに、條約発効後におきましても同じ事態が続きますので、これも存続を必要とするというふうに考えております。
それから第四番目は、会社等臨時措置法等を廃止する政令の中で、その附則の五條と七條と九條、この三つの附則條文だけを存続さしたいというのでございます。これは御承知の通り、会社等臨時措置法というのはたしか昭和十九年の制定になつておりまして、会社その他についての戰時における非常に簡便な処置をきめて、公告の方法だとか、あるいは総会の招集については通知にかえて公告でいいとか、あるいは商法の三百四十三條の特別決議の緩和をいたしまして、過半数でいいとか、あるいは社債の登記についての特例というようなものをきめておつたのでございますが、それをこのポツダム政令で廃止をいたしまして、その際の経過規定としてただいま申しました五條と七條と九條が残る。その内容は、結局従前これに基いてなされた社債の登記については、社債の総額の償還があつたことの登記が完了するときまではなお前の法律が効力を持つというのが附則の五條の規定であります。それから附則の七條は、従来の法律に違反した行為についての罰則の適用についてはなお効力を持つという規定でありま す。それから第九條は、これに関連して、社債等登録法の改正がなされておりましたので、その社債等登録法の改正前になされた登録社債についてはなお従前通りその効力を持つというのが附則の第九條の規定であります。一括して簡單に申しますれば、この経過規定だけを生かしておきたい、また生かす必要があるということでございます。存続すべきものは以上でございますが、廃止するものとしては、この提案になつております法律案の第二條に八つ掲げてございます。
第一は民時裁判権の特例に関する勅令でございます。これは民事に関する裁判権につきまして、連合国占領軍に付属し、あるいは随伴しておるところの連合国人あるいは連合国の団体というものについては、日本の民事に関する裁判権は行わないということを規定しておるのでございますが、これはもとより占領が終りますれば意味のない、必要のないことでございますから、当然廃止すべきものと考えておるわけであります。
第二の連合国占領軍財産等収受所持禁止令、これも御承知の通り、米国あるいはイギリスあたりの軍票、それから占領軍または占領軍の要員が持つておりますところのいろいろな財産はみだりに收受したり、所持してはならないというようなことをきめておるものでございます。これも連合国占領軍というものがなくなりますれば、当然不必要になるのであります。それから第三は財閥商号の使用の禁止等に関する政令、これと同じような財閥の商標についても、これは法務府所管ではございませんが、通産省所管の問題として同じような政令がございます。要するに、三井とか、三菱とか、住友とかいうような財閥の文字、それから財閥の商号、すなわち三菱本社とか、あるいは三井物産会社というような商号を大蔵大臣が指定いたしまして、それは使つてはならないということで、結局それらについては、現に登記しておるものについて昭和二十七年六月三十日までの間にその変更の登記または登記の抹消をしなければならないというのが第一点であります。それから第二点としては、この財閥文字を含む名称とかあるいは財閥の商号と同じもの、あるいは似たような名称は商号として登記することを許さないというのが第二点。それから第三点としては、そういう財閥文字を含む名称または財閥商号と、同一、類似の名称を商品などにつけて使用してはいけない、あるいはそういうものを売つてはならないというようなことを原則とし場て禁止しているわけであります。これらのものは財閥解体といいますか、それがすでに完了したとわれわれは思つておりますから、こういう制限を存続する必要はないというわけで、この際廃止いたしたいというのであります。
それから外国人の商号に関する臨時措置令でございます。その中身は、法務総裁の指定する国あるいはその国の国籍を持つておりますいわばその一定の外国人または外国法人がこの政令の施行の際に、その政令の施行地、すなわち内地等において広く認識されている場合には、その商号すなわちその外国人の商号と同一または類似の商号についてこの政令の施行前から同種の営業のためにそれを登録し、登記をしておつたものがございます場合には、相手方のもの、その外国人たる者が裁判所に対してその商号の使用をとめてくれということを請求することを認めているのであります。そしてその請求は昭和二十六年九月三十日までにその請求をしなければならない。それでその請求の結果とめられたものにつきましては、商法のある條文の適用については、当該外国人に関する関係において
は登記がないものとみなすという扱いをしております。これも原則的にも廃止いたしますが、これは実は平和條約の第十五條の関係がありまして、廃止しつぽなしというわけには行かないことになつております。従いまして、ただいま御審議を願つております第三條の第二項にその関係の規定を置きまして、なお従前の例によるということを言うているわけであります。でありますから、結局新しいさしとめということはありませんけれども、すでにさしとめられているものの効力は存続するという形にいたしております。
それから第五番目の連合国人に対する刑事事件等特別措置令、これもよく御承知の政令でございますが、要するに第一点は、連合国の占領軍要員の犯した罪につきましては公訴は行わない。それから第二点は、逮捕権限を持つておりますものは一定の場合に限つて逮捕することができるという逮捕の場合の限定、それから第三点は、管轄権が一応日本の裁判所にかかつておつた事件について、その管轄権が先方の軍事裁判所に移されたときにおいては、公訴を取消すというようなこと。それから向うの軍事裁判所の判決の結果、刑罰を受けたものの身柄をこつちで預かつて、拘禁をするというようなことがございます。実は申訳ございませんが、お配りしました資料は急ぎましたために抄録の形になつております。その点申訳ないと思います。なお、ただいま申し上げておりますのは、全部廃止するものでございます。
第六の占領目的阻害行為処罰令も、もとより廃止でございますが、政令三百二十五号でございます。これは御承知と思いますけれども、最高司令官の日本政府に対する指令の趣旨に反する行為、またその指令を施行するために、各連合軍の司令官の発する命令の趣旨に反する行為、あるいはまた、その指令を履行するために、日本国政府の発する法令に違反する行為というものについて、処罰を規定したものでございます。それと同時に、公訴を必ずしなければならぬという、公訴の強制を認めております。これも先ほどの占領軍の財産の問題と同じように、占領軍というものがなくなりますれば、当然存続の必要はないものでございますから、ここで廃止の処置をとるのであります。
それから第七は、正規陸海軍将校又は陸海軍特別志願予備将校であつた者の調査に関する件、これは内務省令でありまして、要するにこれらの陸海軍将校等であつた者に対して、住所地の市町村長に一定の様式の申告書を出させるという内容でございます。これも必要がございませんから廃止いたします。
それから第八は、出生、死亡及び死産の報告に関する件、これも内容は大したことはございません。結局戸籍法に定める出生、死亡の届出等を正確に漏れなくやろうというだけのねらいから、こういう省令が出ておりまして、出生に立ち合つた医師なり、あるいは助産婦というものは、出生の日から三日以内に出産地の市町村長に一定事項を報告し、また死産である場合についても、同様に報告をしろということを規定した、これは司法、厚生省令でございます。
以上のほかに、実は団体等規正令とか、あるいはその他団体関係の政令が七件ございます。これらにつきましては、別途單行の法律案を準備いたしまして、それによつてなお整理しようということを考えておる次第でございます。なお先ほど外国人の商号に関する臨時措置令の経過措置については触れましたが、そのほか罰則の規定のあるものにつきましては、その命令が廃止いたされましても、違反行為に対する罰則の適用については、従前通りという経過規定を設けておるのでございます。簡單でありますが、一応御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/8
-
009・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。鍛冶良作君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/9
-
010・鍛冶良作
○鍛冶委員 木村法務総裁が就任されましてから、この法律についての御意見を伺つておりませんので、前の総裁には相当いろいろ御意見を伺つておりますが、新総裁から御意見を承りたいと思います。
第一に、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案についてでありますが、これは提案理由の説明でも十分わかつてはおりますが、私の考えでは、このポツダム宣言の受諾に伴い発する命令というものは、占領軍が占領目的のために、占領政策通行のためにつくられたものであるから、そこで占領政策というものがなくなつた以上は、本則としてかようなものの効力を失う、こう解釈するのが至当だ、こういうことで出たものでないかと考えるのであります。さらにそのほかに、この命令はすべて国会の審議を経ておらない命令であります。憲法によりますと、国会は唯一の立法機関であつて、国会を通さざる立法というものはないわけでございます。しかるにこのポツダム宣言の受諾に伴つて発する命令は国会を通つておらぬから、われわれが、本則として法律でないものを、占領中であるがゆえに、法律と同様の適用を受けるものである、私はかように解釈しておるのでありますが、法務総裁の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/10
-
011・木村篤太郎
○木村国務大臣 今の鍛冶君の御説一応ごもつともと思います。これについては二つの議論があります。いわゆるポツダム政令は終戰と同時に効力を失うものである、これが一つの有力な議論であります。それと同時に、これはすでに国内法として成立したものであるから、終戰とともに効力を失墜するものではない、やはり効力を持続するものである、この二つの議論があります。鍛冶君の御議論も相当有力なものと私は信ずるのであります。そこで政府といたしましては、その御議論のよしあしを解決することをせずに、まずその疑問を解いて、そしてこれを処置するのが至当だと考えまして、新しく法律案を提出する、こういういきさつになつておるのであります。さよう御承知願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/11
-
012・鍛冶良作
○鍛冶委員 そこで私承りたいのは、そのおつもりで法律案をお出しになりますならば、このたびこそ国会においてわれわれが新しく法律をきめるという頭で審議にあたらせるように、御処置をとられるのが当然だろうと思うのでありますが、さようなお考えでお出しになるものだろうと思いますが、その点を念のために……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/12
-
013・木村篤太郎
○木村国務大臣 もちろんその通りであります。国会を十分尊重して、国会の慎重な審議を仰ぎたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/13
-
014・鍛冶良作
○鍛冶委員 そこで私はお願いというか、御意見を承りたいというか、私の希望を申し上げるのですが、そういうおつもりでありますならば、今日はまだわれわれは占領治下にあります。従いましてこの法律の審議にあたつて、われわれの自由なる意思の発表ができない実情にあることは、御承知の通りであろうと思います。して見ますならば、これは何としてでも自由に改正なり廃止なりの意見が述べられるときからお出しになるのが至当ではないかと思う。ことに、これはまだ通らぬのですが、百八十日の期間がある。この百八十日というものは相当長いのでありますから、この間に十分審議して、法律にしようという気持であろうと思います。百八十日もありますれば、相当審議ができる期間と思いますから、でき得るものならば、平和條約の効力発生したる後から審議にかかられるのが至当ではなかろうか、こう考えます。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/14
-
015・木村篤太郎
○木村国務大臣 占領治下にありましても、この御審議を十分おやり願つてさしつかえないものと考えております。ポ政令廃止後のこの手当をしておかなければならないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/15
-
016・鍛冶良作
○鍛冶委員 審議はかまわぬとおつしやつても、たとえば廃止をしようとか、改正しようとするのには——これは速記をとめていただきたいが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/16
-
017・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/17
-
018・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/18
-
019・鍛冶良作
○鍛冶委員 あなた方の御趣旨はよくわかつております。しかしお出しになつて大事をとられるようだが、私の言うのは理論的に考えますと、自由なる審議をするというのなら、やはり平和條約の効力が発生して後やる。だから、大事をとられるのもよろしいが、願わくばそういう気持で国会に自由に審議してもらうようなことに、これから運用と申しまするか、審議方法と申しまするか、やられることを私は希望しておくものであります。
その次に承りたいのは、この廃止に関する法律の第三項ですが、「この法律は、勅令第五百四十二号に基く命令により法律若しくは命令を廃止し、又はこれらの一部を改正した効果に影響を及ぼすものではない。」こうなつております。要するにいわゆるポツダム命令によつて既存の法律を廃止し、または改正したものは、そのまま廃止、または改正のままで置く、こういう御意味であろうと思われる。そうなりますと、これも私の先ほどの議論からいうと、唯一の立法機関である国会の審議を経ないで、改正もしくは廃止されたるものでありますから、ここでやはり国会に対してこの通り廃止しておいたがいいか、改正したままでいいかということをお問いになるのが理論上当然ではないかと思うのですが、この点の御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/19
-
020・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 非常に冷淡なことを申し上げて申訳ないと存じますけれども、理詰めで申し上げますと、このポツダム命令というものは、御承知の通り五百四十二号という緊急勅令の委任命令でございまして、その緊急勅令なるものは、当時の帝国議会の完全なる承諾を得まして、まつたく法律と同じものなのでございます。その点は最高裁判所の判例も出ておりますし、疑いないと思いますが、その国内法としての議会の承諾を得ました法律の委任に基く命令なのでございますから、理論上は普通のただいま現に御制定なされつつある法律の中に入つておる委任命令と性質は同じでございます。ただ委任の幅が、広いじやないかということはございますが、それは五百四十二号制定のときの問題であつて、そういう委任が正当に成立いたしました以上は、これに基く命令はりつぱな委任命令として、国内法として、すでに成立しておるというのが私どもの根本の頭でございますから、この委任の限度で事を処置いたします限りにおいては、法律の廃止あるいは改正も当然できることと考えております。ただ国会は立法機関として、とにかく唯一の立法機関でありますから、かりにその委任命令がお気に召さないというときには、先ほど申しましたような一種の制限といいますかはございますけれども、国会が自由に立法にそれをおかえになつてさしつかえない。たとえば飲食営業緊急措置令というものがポツダム政令で出ております。しかしこれは国会で今度は法律の形にお直しになりました。そういう例も二、三ございますくらいで、理論上は結局私の申しますようなことになります。従いまして、このポツダム政令といえども、国会の立法権の前には常にさらされておるということが言い得ると思うのであります。
そこで今度は廃止の問題でありますが、これはよけいなことになりますけれども、一旦有効に廃止された法律というものは、私どもは一般の法律のりくつとして、決して復活はしないという頭であります。では何のためにこの三項でよけいなことを書いたかとおつしやいましようが、これは提案理由の説明に御説明申し上げましたように、いずれも少しも疑いを残したくないという気持から、当然のことであろうが、ここにうたつたという趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/20
-
021・鍛冶良作
○鍛冶委員 御趣旨はわかりますが、理論をやればそうですが、むしろ私らの希望から言うならば、この法律の三項にしないで、今あとから出ましたこの中で、改正はこのままにする、廃止したものはこのままにする。こう出された方が審議の順序からいつて、理論も通るように思うのであります。もちろん前にできた法律によつて命令を出されるんだ、こう言われるならば、それきりです。そうじやなく、やはり新しく国会の意思を聞かれる方がよいという頭であるならば、私の今言うようにした方がいい。これ以上は議論になりますからやめますが、意見だけ申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/21
-
022・加藤充
○加藤(充)委員 ポ政令の改廃に関連して御質問をするのですが、やはり根本問題は憲法をどう意義づけて行くかという問題であろうと思うのであります。今の鍛冶委員との質疑応答の中にも、憲法論が中心であつたと私は思うのであります。
それでお尋ねいたしますが、サンフランシスコ会議の二條約、これはいずれも私は国と国との契約でありますから、大きな意味では條約だと思うのであります。ところがそこに行政協定というのは、法律上どういう性格のものだろうかという問題が残りますが、前半に申し上げましたように、国と国との話合いであるという限りにおきましては、これは一般的、本質的に條約という限界に入るものだと思うのであります。しかしこの行政協定なるものの取扱い解釈、国内法体系上の地位というものについては、アメリカにおいては幾多の論議を経た結果、これはいわゆる條約として上院の批准を要するものではないという解釈ないしは事実的な取扱いに終つているようであります。これはアメリカの問題でありまするが、日本におきましては、いわゆるサンフランシスコ会議の二條約のほかに、ただいま進行中の行政協定の交渉がございます。日本の国内法規によれば、行政協定といえどもやはり條約だ。條約ということになれば、日本の憲法の明記する通り、あらためて国会の承認を経なければならないということに当然相なると私どもは思うのであります。この点について新任の木村法務総裁の御見解を明らかに承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/22
-
023・木村篤太郎
○木村国務大臣 このポツダム政令廃止に関する問題とは全然関係はありませんが、私は行政協定は條約とは見ておりません。これは保障條約の一條項に関する問題でありまして、單独の條約とは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/23
-
024・加藤充
○加藤(充)委員 そのことについては、このこと自体ずいぶん論争の余地があると思うのでありますし、私どもの見解を明らかにし、あわせてもう少しはつきりとした理詰めの憲法論議の上で、木村さんの見解を明確にしておかねばならないものを持つておりますが、これはあとの質疑の中でも明らかにされると思うのであります。
その次に移りますが、外務委員会においては、あなたはジエット機ないしは原子兵器を持たないものは、いわゆる憲法九條に禁止されている日本の軍事力あるいは武装というものとは相ならぬという見解を明らかにされたようであります。ここに速記録も持つておりまするが、あなたの見解はそれでよろしい。しかし憲法第九條の明確な規定も忘れてはならないと私は思うのであります。それでお尋ねしますが、あなたのような御見解で、各国の軍事力、軍隊というものを持つているところはどことどこだというふうにお考えになつているのか、原子力兵器あるいはジェット戰闘機を持たないものは軍隊を持たないということになるのだということになれば、世界のどこで軍隊を持たない国々があるか、こういうことを承つておきたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/24
-
025・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 加藤君御注意しますが、今の議題から離れておるようですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/25
-
026・加藤充
○加藤(充)委員 いや、私はよけいなことだが、なぜこの質問をするかということをあらかじめ冒頭にお断りしておいたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/26
-
027・木村篤太郎
○木村国務大臣 それじやお答えいたしましよう。私はジエット戰闘機やジエット爆撃機を持つものが現在のいわゆる有効なる軍事力、こういう解釈をしておるのであります。一体憲法第九條の「陸海空軍その他の戰力」というのは、いわゆる有効なる戰闘遂行の能力を有する兵器力とこう考えておるのであります。もつともこの憲法第九條の規定の趣旨と申しますのは、従来のような侵略戰争を再び繰返すようなことがあつてはならぬというごの根本精神から出ておるのであります。そこで現在の予備隊の武装がどうかということが、この間の外務委員会で問題になつた。それに対する私の答えといたしまして、警察予備隊の能力が一体戰争遂行の能力があるのかどうか、こういう軽微な装備をしたものは近代戰に間に合うのであるかどうか、これはジェット戰闘機やジエット爆撃機あるいは原子兵器を有するような兵力に対しては鎧袖一触です。こんなものは問題にならない。そこでこの九條の戰力というのは、近代戰に軍事力として有効に戰争を途行し得る能力をさすのであつて、予備隊のごとき近代職に鎧袖一触であるような軽微な装備を有するようなものは断じて戰力じやない、こういうことを私は申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/27
-
028・加藤充
○加藤(充)委員 あなたはそういうことを言われたが、憲法九條の解釈であなたのような解釈をとつている人は大体どなたがあるのです。大橋法務総裁はその責任にあつた当時において、これは情勢の変化というかもしれませんけれども、少くとも憲法論議からいうならば、これは日本の資本家が武器、弾薬、飛行機というようなものをあからさまにつくるというようなことになれば、それは憲法九條の点から見ても問題だということの趣旨の発言をされているのですが、大橋さんはそういう趣旨だと思うのです。大橋さんでもそうなんですが、あなたがいわゆるジェットと原爆兵器を持たなければ軍事力にならないということで、原子兵器とジエット戰闘機を持たない程度のものであるならば、どんなことをしても憲法九條違反にはならないのだという趣旨の解釈をしている人がどこにあります。それを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/28
-
029・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は加藤君のような議論をするのじやないのであります。戰力の標準がどこにあるかということであります。ジエット戰闘機、ジエット爆撃機を持たなければ戰力ではないとは申しません。近代戰争においてはかように発達しておるというのです。そこで日本の現在の警察予備隊はどうだ、近代戰に間に合うかどうか、そんな間に合わぬものを持つて戰力ということはいえないんだ。あなたはいかなる標準において戰力といわれるか、そこなんです。戰力という標準をどこに置くか、その標準を置くのは近代戰に間に合うような兵力をいうのだ、私はこう言うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/29
-
030・加藤充
○加藤(充)委員 戰力並びに第九條の趣旨を私は言えと言われたから言いましよう。B二九に竹やりを持つて戰つた、しかも侵略戰争をやつた日本の歴史というものは明確なんです。ですからああいうものであつても戰争をやる気であつたら武器になるのであり、そういうようなものは全面的に禁止されている、こういうことなんです。それで問題の所在点は明確になつたと思うのでありますが、それではあなたの外務委員会における論議は、憲法第九條そのものの解釈ではなくて、いわゆる戰力とは何だという論議だつたというふうに御釈明に相なつたと私は思いますが、そういうふうなものにもせよ、戰力定義はいずれにいたしましても、原子兵器とジエット戰闘機を持たない、一人前の戰争能力を持たない程度であるならば、あなたの論からいうと憲法九條違反には相ならない、あるいは憲法九條の根本になつている憲法前文あるいは憲法の全精神、こういうふうなものにもとらない、こういう御見解でございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/30
-
031・木村篤太郎
○木村国務大臣 さようなことは申し上げません。はつきり申し上げます。
私が外務委員会においての質疑応答において申し上げた趣旨は、憲法第九條の戰力とは何であるか、その戰力の標準は何をいうかということを申し上げたのであります。近代戰争においては、もうすでに原子爆弾を持ち、ジエット戰闘機、ジェット爆撃機を持つておるのである。この軍力を有する国がたくさんあるのである。それでジエット戰闘機やジエット爆撃機を持つていなくても戰力を持つている国はありましよう。いわゆる軍の編成を持つたものであります。一体問題となつたのは予備隊の問題であります。予備隊は軍の編成を持つていないのです。軍隊というものはあるいは砲兵があり、あるいは工兵があり、あるいは輜重隊があり、みな軍の編成を持つているのです。これが兵力なんです。こんな兵力を一体予備隊が持つておるかどうか、そういうことを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/31
-
032・加藤充
○加藤(充)委員 あなたと予備隊議論をしても始まりませんが、予備隊がいわゆる警察であるというような考え方や解釈をごてごて持ちまわつているのは、日本の政府当局にしかすぎなく、あるいは学者の一部にすぎない。それも私は今名前をここではつきり思い出せないほど微々たるものだと思うのでありまして、世界各国では、アメリカの当のポ政令で予備隊をつくつて行つたマ元帥初め、その幕僚であつた人たち、その他の政治家や新聞記者までが、これは明らかに軍隊である、警察ではあり得ないという趣旨のことを言つているのでありますから、私はここで予備隊が軍隊であるかどうかというような、あなたの解釈を繰返して承る必要はないと思うのです。
そこで前にもどるのですが、一事が万事で、そういうふうな耳をおおうて鈴を盗む類と申しますか、こういうことで何でも憲法違反の問題を、そうして新憲法が新しくこの日本に要請し、また日本人がかくあらんことをこいねがつております当面の気持あるいは国の実情というものを無視して、一方的な、一面的な、部分的な解釈でこれはこうだということで押し通されるのは、先ほどから問題になつておりますように、憲法に対する日本人としての心構えとして非常に問題が多い。むしろ極端な言葉で言えば、政府みずからが、木村さんみずからが憲法をごてりくつで押しまくる憲法の破壊者であるというそしりを受けてもしかたがない実情にありはしないか、こういうことをお尋ねするのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/32
-
033・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は憲法を破壊する意思なんというものは毛頭持つておりません。ただ憲法第九條のいわゆる戰力というものの解釈問題であります。私は確信しておるのであります。この戰力という標準をどこに置くか、それを今申し上げたのであります。たまたまあなたと解釈は異にしておりますが——あなたも自分の解釈が正しいものだという独善でもつておやりになつておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/33
-
034・加藤充
○加藤(充)委員 それで私は思うのですが、先ほどお尋ねした行政協定はいわゆる安保條約の包括的な條約にもう当然に含まつてしまつた部分的な——政府が国会の承認、批准を経ることなしにやれる性格のものだというような事柄についても、これは日本の憲法の解釈から言いますと非常に問題が多いばかりでなしに、現にアメリカなどにおいても、こういうような特別な行政協定は、政府が大統領の権限で国会の批准なしにやれるということになりますまでの間に、アメリカ一国内においても憲法論議があつたのでありまして、日本の憲法ではあなたのように、これは包括的な安全保障條約の中の問題だというふうに言うわけには参らないし、そういう解釈をやつてもらつては困ると思うのです。憲法九條の解釈に関連しましたけれども、実はそういう態度がいわゆる行政協定について国会の承認なしにかつてにやれるのだ、こういうふうなあなたの解釈とその出所を一緒にしていると私は思うのですが、あらためてその点について承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/34
-
035・木村篤太郎
○木村国務大臣 その点につきましては前国会において論議された点であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/35
-
036・加藤充
○加藤(充)委員 これは鍛冶委員からも指摘されたところでありますから、私は簡單に触れたいと思うのですが、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案の第二項に百八十日に限つて法律としての効力を有するものとする、この考え方、これをお尋ねするのです。鍛冶委員から、第三項の規定のうたい方は技術的にまずいのじやないかと立法技術の点から御質問があつたと思うのですが、二項と三項と関連して、実は立法技術的の問題じやなしに、憲法論の本質に触れて私はそれを明らかにする必要があると思う。第二項の百八十日に限り法律としての効力を有するという、このうたい方を裏から見ますと、これは本来ならば効力を有しないものである、当然廃止に相なるべきものである。だから廃止の手続がなければ百八十日は生きるということで、百八十日生きるということ自体が例外である。ですからポ政令というものと憲法との関連、国会の立法との関連から申し上げますならば、講和発効後においては、当然全面的に効力を失うものだということについて二つの説がある。しかも鍛冶委員の述べた一方の説は、相当有力な説であると木村法相も認められました。そういう説のいずれの立場を明らかにしなくても、少くとも発効後においては効力を失わしめるだけの廃止の法を全面的につくるべきである、政府自体もそう考えておられるが、立法技術の上でこういう体裁になつて現われておるのではないか、こう思うのです。大体から申し上げても、鍛冶委員が言つたように、国会が唯一の立法機関であるということになれば、さらにまた現在、この政令を審議する日本の国会が、残念にも占領下にあるという実際からいつても、ポ宣言に基く政令というようなものを立法する必要を政府が考えているとするならば、全面的に新しい立法をして、国会に上程するような手続をとるべきではないか、こう思うのですが、この点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/36
-
037・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 ポツダム命令の運命がどうなるかという理論上の問題につきましては、前の国会において実に詳しく鍛冶委員から御質問がありまして、私の方からも少し詳し過ぎるくらいに御説明を申上げましたからここで繰返すことはいたしません。先ほど当然死ぬじやないかという議論は有力な説であるというお言葉が総裁からもありました。私も有力な説だとは思つておりますが、私の考えておる、すなわち前の国会においてここでるる申し述べました純理としては、当然死なないという考え方は、それよりもさらに一層有力な説であると私は確信いたしております。しかしながら、有力さの程度に差異はあるにいたしましても、世の中にはとにかく疑問を持つ人があります。そのためにまた裁判所のごやつかいになるというようなこともあり得るわけであります。立法の衝に当るわれわれ立案当局者といたしましては、いやしくもそういう点については疑いのないようにしなければならぬというのが当然の責務だと思いますから、ここに第二項をうたつたわけであります。あるいはまた、今御提案申し上げておる他の法務府関係のものについてもそういうことをうたつております。そこで今のお話は、この字句の問題について、効力を有するものとするという書き方と、逆の百八十日たつたら死ぬぞという書き方と二通りある。その考えを持つているならば有するものとするではなく、百八十日たつたら死ぬというようになぜ書かないかという精密なる御質問だと思います。それはごもつともだと思いますけれども、あの人は男であるというのと、あの人は女でないというのとは結論は同じだと思います。中性があれば別でありますけれども、中性はないものと考えまして、どちらから表現しましても、結論は同じだというふうにはつきりしておればよいと存じます。ことに私の申し上げます趣旨は、これは疑いを持つ人に明らかならしめることが必要であるというところに重点を置いておりますから、第二項ではぴつたり適例になりませんけれども、本件の法務府関係については、第一條の書き方をごらんになれば当然おわかりになると思つてそういう表現をとつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/37
-
038・加藤充
○加藤(充)委員 それでは最後に一点だけお伺いいたします。あなたはあなたの立場以外の有力な説があると言われる。しかし純理としては五百四十二号は生きておるのであるから当然死な
ない、こう承つたのであります。それでお伺いしますがあなたは日本の敗戰に基く占領、そして占領によつていわゆる超憲的な手続と超憲的な力で、国会の原則的な手続を経ることなしにいわゆるポ政令として出されて来た一切のものは、日本人として一日も早くきれいに、あなたの言葉で言えば、純理としては死なないかもしれぬが、死なしてしまうような手続をとるべきであるという考え方は持つておらぬのですか。そういう気持を強く持つておらぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/38
-
039・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私は、職掌柄感情とかそういう芸術的な観点でなしに、裸にした純理を申し上げているのであります。と同時に、立法政策の問題として、あるいは実際上の問題として、たとえば純理上当然生きているということにいたしましても、先ほどるる説明しましたように、たとえば占領軍財産等収受所持禁止令のように、占領軍そのものの存在があつて初めて働くものがあります。そういうものは占領軍がなくなる以上働き得ないことは事実であります。そういうことを頭の中に入れておいて説明を聞いていただきたいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/39
-
040・加藤充
○加藤(充)委員 あなたは学説として有力なものがある、こういうことを認められたのであります。あなたは政府機関の一員であつて芸術家でも何でもないと言われた。そんな答弁を私は聞きたくはないが、ただ純理から言うと、手続上廃止の方法をとらなければ残り得るのだという解釈も相当有力にあり、最高裁の判例などもある、こう言われたから私はさつき質問をしたので、純理としてはそれは当然死滅すべきもの、失効すべきものだという有力な説があるのであります。しかもこれは、幸いなことには日本人のおおらかな一般の気持とも一致しているのであります。ただ残念なのは、最高裁の判例などもあり、また学説の一部にもあつて、殺す手続をしなければ当然それは失効しないということが残つているだけなんであります。皮一重が残つているだけなんでありまして、有力な学説と日本国民の要望は、これはひとしく純理としても感情としても、占領終了となれば、いわゆる宣伝されたように独立回復ということになれば当然これは死ぬべきものである、効力をなくすべきものだということになつているのであります。政府といつたつて役人が集まつてつくつたのが日本の政府ではない。国民のおおらかな委託に基いて、この国民の利益をはかつて、憲法の原則に従つて行くのが政府なんです。純理として有力なものがあり、国民の気持としても早いこと拂拭したいということがとうとうとしているときに、あなたが何をごたごた言つて、これは全部死ぬのだということになつて——死なないものとしては、立法をあらためて国民の批判に問うて、続けるという責任のある態度をどうしておとりになれないか。だから私は失礼かもしれないが、あなたは一体占領政策が持続されるのがいいと思つているのか、悪いと思つているのかあなたに聞きたい、こういう失言的な質問をせざるを得なくなつたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/40
-
041・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 わかりました。私が有力ということを引用しましたために、だんだん何ども出て参りましたが、有力というのは、私の立場から言えば、エチケットとして申し上げた言葉であります。それはそれにしておいていただいて、今のお話ですが、私は今純理論を言えとおつしやり、また純理論についての御質問がありましたから、純理論を申し上げましたけれども、最初来申し上げておりますように、そういう一役人の、お言葉のように一属僚の純理論をもつて、そういう大事な事柄を左右することはこれは僣越しごくであるということから、先ほど来のこの條件をこちらに御提案申し上げて、すべて国会において立法的に解決していただくという態度で出ておるのでありますから、むしろおほめにあずかりこそすれ、おしかりを受けるはずは毛頭ないと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/41
-
042・加藤充
○加藤(充)委員 どうも、ときたまは虎のごとく、ときたまはねこのごとく、属吏が云々というようなことを言つて、非常に巧みな戰法をおとりになるからですが、ここでお尋ねするのですが、括的にこれこれは廃止する——これは廃止するのはいいのですよ。しかも存続するという方を代議士が拝見させていただきますと、そうすると、何のことやら——何々に関する勅令だとか、何とかの政令だとかいうことになつてしまつて、われわれも能力がありませんが、国民はもちろんのこと、これは何を言つているのかわからぬ。どんなことをきめたのかわからぬのですよ。国民は大体処罰されるときには、それはGHQの命令があつたんだからというので、豆鉄砲を食つたはとのように、処罰をされて文句を言いたくても問答無用だつた。こういう状態のときに、国民は処罰されるということは知つておつても、処罰されたという体験は持つておつても、その政令全体がどういう趣旨でどういうことになつているのか、一つも知らされていなかつた。こういう状態であつたのでありますから、こんな一行に片づけないで、これは全文新しく出して、おおらかに、属吏が出してもいいし、官僚が出してもいいが、国会にピンからキリまで出して来て、條文をきめて、そうして国民の意思を聞くのが、あなた属僚としては当然のはからいではないか、どうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/42
-
043・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 属僚に違いございませんが、今のお言葉はたいへん御謙遜な言葉だと思うのであります。御承知の通りに、法律も政令も全部官報に公布されております。ポツダム政令といえども、官報の政令欄に出ておるはずであります。国民がたれも知らぬとおつしやるのは、ちよつとどうも——。要するに、さようなことで公布の手続をとつて、純粋な国内法として周知せしめられておるわけであります。この一つ一つのものについての実態はさようになつておるわけでございますから、唯一の立法機関としては、常にそれを御監視なさつて、お気に入らないところがありましたら、先ほど私が申し上げましたように、立法手段によつて是正されるとか、あるいは飲食物の政令のような、国会でお直しになつておるというような例もあるということを申し上げたのであります。一号一号で番号打つて出すのははなはだ何ではないかということは、今申し上げたところから当然おわかりだと思いますが、われわれは御説明は十分誠意を盡してやつております。それによつて十分御審議を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/43
-
044・加藤充
○加藤(充)委員 これは議題になつておるものと違うが、関連している法務府関係諾命令の措置に関する法律の中の第一條の二、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令(昭和二十二年勅令第九号)ですが、これは鍛冶君あたりは知つておるかもしれんけれども、議員の中でもこういうふうなものは問題になつて、鍛冶君も問題だと言いましたが、問題になつた点がどこかということは、これは一行で番号をつけただけではわからぬのです。だからこれはわかるわからぬよりも、国会が唯一の立法機関なんだから——占領という特殊な状況のもとに生れて来て、国会の手続を経ずに出されたいわゆるポ政令だということになれば、これをあらためて出し直したところが、そう手間もかからないし、出し直すべきだと思う。みんながわかつているわからぬというような実体論ではなくして、手続上もそうすべきだというのが、憲法の要請だと思うのであります。その点が一つと、それから今までの質問に関連したことなんですが、第二番目に読み上げた法務府関係諸命令の措置に関する法律の第三條ですが、これは「罰則の適用については、なお従前の例による。」こうあるのであります。これは、いつでも問題になりますのは、裁判所というようなところを通じて具体的には罰則の適用があるのでありますからして、そういうところで問題になることが多い。そうしてそこで問題になつているのは、いわゆる統制令の問題が多いのでありますが、私は統制令もさることながら、ポツダム命令というもの、占領というものは、一般的な、原則的な意味におきましては、これは限時的なものである。だから統制法規に関連なしに、限定されずに、全般としてポ政令に反則したという処罰は、限時法的な取扱いを受けるへき本質を持つておるのであつて、また国民の感情から、いえば、やむを得ずやられたような取扱いなのであるから、こういう悪夢と残滓は一日も早く沸拭したいという希望を強く持つておるのでありますから、従つてこの第三條の罰則の問題などにつきましては、全部これはきれいさつぱり、川の中でしりを洗つたようにきれいにしてしまうのが当然ではないか。これはりくつの上からも、国民感情の上からもしかりだと考えるのでありますが、この点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/44
-
045・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 いろいろお言葉がありましたが、最後の限時法のお話は、これは敬意を表し得ると思うのであります。理論的に申し上げましても、今まさにおつしやいますように、これは限時法だろう、こんなものを書かぬでも当然同じように罰せられるんじやないかというような議論もあるいはあるかもしれません。ことに連合国占領軍財産等収受所持禁止令とか占領目的阻害行為処罰令のごときは、はつきり限時法である。書くことなしに、はつきり処罰し得るのは、これはおせじではなしに、有力にあり得ると思いますが、われわれ立法の事務に当る者としましては、この二條に列挙されているものは、限時法の理論も当然にはかぶり得ないようなものもあろかもしれないというようなことから、それと合せて、ここではつきりうたつているので、これは罪刑法定主義の原則から行きましても、憲法の精神に沿うゆえんであるというような意味でやつたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/45
-
046・加藤充
○加藤(充)委員 ちよつと押し返しがきつくて、混線して、脱線をしてしまつたようですが、私が限時法の問題を言つたのは、要するに最高裁の判例もさることながら、大体これは処罰しないのがあたりまえだということなんですそれを私が限時法とたまたま言つたので、最高裁のああいうところから持つて来て、それは罪刑法定主義で処罰しないのがあたりまえなんで、うたう必要はないのだが念のためにうたうのだというようにまぜくり返してしまつたのですが、その点どうなんです。占領されなければ処罰されないものが占領されたから処罰されるのだ、なさけないことだが、占領下だから仕方がない。今度幸いに独立したんだから、この際にやれるのだからひとつきれいにしてしまつたらいいじやないかというのが、国民は属僚であろうが、高級官僚であろうが、あるいは内閣総理大臣であろうが、だれであろうが同じじやないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/46
-
047・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 私はただいま申しましたような趣旨から、ここに第三條において、はつきりそれをうたうことが、罪刑法定主義の上から言つても忠実である、憲法の精神にも即すると信じております。あとは国会においての御審議におまかせするほかはありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/47
-
048・加藤充
○加藤(充)委員 もうおしまいにしますが、あなたは最初に私がなぜ憲法論議を脱線したと言われながら続けたかといいますと、あなたは口を開けば憲法の精神に合するとか何だとか言つていますが、こういうふうな考え方で大
体ポツダム宣言なんというものを継続させて行くことに努力したり、有力な学説や何かがあるのに、ごたごたもたもたして金魚のくそのようにぶらさげて行くというのは、これは憲法精神にも日本人の根性にも合わないのです。そういうことを言うために憲法精神を持つて来たりするのはもつてのほかだと思う。だから私は最初に憲法九條の小僧論みたいなことをわざわざ持ち出しましたので、あなた方こそが口には憲法精神だとか言つているけれども、一日も早く解放されたい日本人の根性を代弁しながら、その根性をおおらかに盛り上げて行つた日本国憲法というものを一つも実行していないじやないか、履行しようと努力していないじやないか。戰争放棄の解釈だつて原爆やジエット戰闘機さえなければ憲法に何も触れないというように、憲法九十九條にある公務員が憲法を遵守する第一の義務を持つという重大なことをへとも思つていないじやないか。それは属吏といえどもその責任は回避することができないと思う。私の質問はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/48
-
049・田中堯平
○田中(堯)委員 関連して一つ質問しますが、鍛冶委員の質疑に対して木村総裁の答弁では、ポ勅の五百四十二号、これは生きておるか、條約発効と同時に死ぬかという見解については、いずれともはつきり態度をきめないで、今度の立法措置に出たという趣旨の答弁であつたと思います。ところが佐藤政府委員の答弁並びに解説によると、純理的には五百四十二号は生きておる、これはすでに国会にかけたのであるから生きておるということを言われた。そこで私がお伺いしたいのは、
一体政府はどつちの態度をとつておるのですか。すなわち五百四十二号はもう死んだというのか、生きたというのか、これを聞くのは單に形式的な問題ではない。そういうふうに政府の態度が一貫しておらぬために、この法案を見ましても、実に政府に御都合のいい分だけは生かして、都合の悪いのは殺してしまうというような首尾一貫しない態度が現われておる。たとえば今加藤君が盛んに突いておつた占領治下における占領目的阻害行為というようなものはその処罰を今後も——その処罰そのものは続いて行くということになつておる。ところがたとえば財閥商号の使用禁止のごときはただちに廃止して、三井、三菱でござい、いろいろな財閥の再生出発もできるようになるということになるわけであつて、これは三菱、三井のごとき財閥が日本におつたればこそ、あの忌まわしい戰争にも至つたので、こういうものはひとつ整理しなければならぬというので、占領目的の大きな一つとして、このような財閥商号などの使用禁止というのがポ勅になつて現われておるわけです。だから今の占領目的阻害罪というものと何らこれは趣旨の違つたものじやないと思う。やはり占領目的を遂行するための同じ性質の命令だ、それが片一方は廃止、片一方は続けるというふうに政府の態度が一貫しないことがこういうところにちやんと現われておると思う。だから政府はよろしく五百四十二号は死んでおるのか生きておるのか、その辺の見解をはつきりさせる——天下には両論に相わかれて闘つておる事実がありますので、政府は政府で独自の見解を持つて、どつちにするかということをきめることが大切だと思うのですが、今までの答弁を聞いたところでは、いずれが一体政府の態度であるかがはつきりしないので、もう一ぺんそれをはつきりしてもらいたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/49
-
050・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 この五百四十二号が死ぬかどうかというような表現では実は正確ではございませんので、私どもが前から申し上げているのは、むしろ五百四十二号ではなしに、その子供であるところの多くのポツダム命令というものが現実の問題であると思う。それをひつくるめて議論をしないと議論になりません。その点は先ほども触れましたように、前の国会でここでさんざん鍛冶先生にいろいろと御質問を受けまして十分お答えをしたのであります。これは速記録に大分長く出ておりますので、あるいはこの次に私が持つて来てそれを読み上げてもよろしゆうございますけれども、今お話の点はそんなことよりもそういう態度はいかにも押しつけがましいというようなお気持があると思います。それが先ほど来申しましたように押しつけがましいことは決してあるまいという翻然たるさとりから、今の法案はもう理論を離れてこの法案そのまま御審議願いたい、それによつて結論ははつきりわかりますという態度に出て、われわれはここにこういう措置をとつておるのであります。この純理論は、この法案が出ました以上は、すでに御議論になる必要はないというつもりで、この法案が出ておるのでありますから、ちようど今お話のように、むしろ実体論として財閥商号の使用の禁止の罰則の関係はおかしいじやないか、そういう御議論は傾聽いたします。それについてはさつき触れました三條の罰則適用云々ということは、これは何も占領目的阻害行為そのものではございません。この第二條に列挙されておる廃止法令の中にも全部罰則がございます。それとその罰則を平等に三條でうたつております。それについてどうこういう差別の問題は全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/50
-
051・田中堯平
○田中(堯)委員 それはいくら論じてもしかたがないからそれはそれにして、おきます。
今度は政府の方針を聞きたいのですが、これを存続する分については、ただ今までの命令の形で存続するというだけですか。一定の時期が来たならば、別個にまた立法をやるわけですか。
それからもう一つは、廃止した分については、何か單行法などを出したりして、必要と思われる分は、これからずつと法案を上程されるつもりであるかどうか。この二つです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/51
-
052・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは今の名前で列挙してありますものは、このままで一応法律の資格をはつきり得たものとして、確認されて、そのままの形で続いて参るというのがこの案でございます。なおそれについてこの後になつて、あるいは法を改正しよう、あるいは全部書きおろして行こうというときには、この唯一の立法機関たる国会の御意思で法律を御制定になることはあり得ると思います。また政府として提案申し上げるということもあり得ると思います。とりあえずの形としては、このポ政令の形のままで乗り切るというのがこの案でございます。
なお廃止するものについてというお話がありましたが、先ほども説明申し上げましたように、ここに列挙されておらない団体の規正関係、そういう関係のポ政令は、これは別の單行の法律の形で別個に処置をいたします。それを別に御提案いたしますということを、さつき説明したわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/52
-
053・田中堯平
○田中(堯)委員 そうすると、団規法関係だけは單行法立法を計画しておる。その他については、たとえば出入国管理の問題、これなどはどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/53
-
054・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 法務委員会でありますから法務府所管のことについて実は御説明申し上げたわけで、その他各省関係のものは、まだほかに若干ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/54
-
055・田中堯平
○田中(堯)委員 今の問題、出入国管理関係はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/55
-
056・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 出入国管理関係につきましてもなるべく書きおろしにしたいと思いましたけれども、今のところでは、外務省関係のポツダム命令整理の法律の中にうたいまして、一応そのまま存続という形をとつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/56
-
057・鍛冶良作
○鍛冶委員 ついでですから、このあこの法律について二、三……。これはほんとうはもう少し條文と合せて研究してから質問したいと思いますが、ついでですから先ほど加藤さんが言われた三條ですが、これは私らの考えと全然違つた議論であつたのです。私の考え方からすれば、廃止になりまする法律は、いわゆる先ほども申した通り、占領政策遂行のためにできておつた法律である。従つて占領政策遂行を妨げるものとして処罰されたものと思う。従いまして占領政策がなくなればもう処罰する必要がなくなるではないか、こう思うのです。しかるになお相かわらず従前通りこれを処罰せなければならぬというその理由を承りたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/57
-
058・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 これは精密に言いますと、結局先ほど申し上げた限時法の問題になるわけでありますが、私どもの理解するところでは、当然限時法の理論としては一応適法なる法規の違反行為がすでに過去においてあつたということについては、それは大まかに言えば、限時法の理論が確定するというふうに考えます。ことに刑の廃止というものを見越していろいろな違反が行われるというようなことも、限時法の理論の中には一つ入つておるように思います。そういう点からあわせ考えまして、ここにあがつておるようなものについては、第三條第一項のごとき條文を設けるのが適当であろうというような趣旨から設けておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/58
-
059・鍛冶良作
○鍛冶委員 私の言うのはそうではない。占領目的遂行のために処罰する必要があつた。占領目的がなくなれば、処罰する必要はなくなつておるではないか。こういう議論なのですが、これはいずれまた法務総裁にも聞いてみたいと思う。
それから承りたいのは、先ほどちよつと申し上げましたが、第一條の第二号は今まで非常な問題であつたと思います。われわれも研究しおりますから、これについて一つだけ質問したいと思います。現在、これは東京だけでなかろう、日本中だろうと思いますが、特殊飲食店街というものが認められております。これとこの法律の関係をどう見ておいでになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/59
-
060・神谷尚男
○神谷説明員 婦女に売淫をさせた者の処罰等に関する現行の勅令でございますが、これは結局その明文にもございますように、一つは暴行、脅迫によらないでも、婦女を困惑させて売淫をさせる、一種の婦女の意思を暴行、脅迫以外の手段によつて抑圧、拘束して売淫させるようなことを処罰すること。第二條におきまして、婦女に売淫させることを内容とする契約を結ぶ、この二つだけを当面取上げまして、マッカーサー最高司令官から日本政府にあてられました公娼廃止の覚書の最小限度の実施をしておるものでございます。従いましてただいま各地で行われております特殊飲食店の形態そのものに、直接そこまで当てはまるかどうかということについては、まだその内容を検討しなければただちに一括して申し上げるわけにも行きませんが、ただちにちよつと適用してそれらの者を処罰するということは、むずかしいのではないか。かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/60
-
061・鍛冶良作
○鍛冶委員 これはおかしな議論になりますが、だれが見ましてもあの町は売淫取引所であることは疑わぬところである。さようなところを認めておりながら、かような法律が出るということになりますと、この法律ではそういうことはいかぬというが、もつともそれは行政的処置でありましようが、そういうことの取引街を認めておるということになりはせぬか、これを私は聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/61
-
062・神谷尚男
○神谷説明員 現在の勅令は、婦女が自由意思をもつて売淫をするということにつきましては全然触れておりません。その点につきましては各地で條例がございますが、條例に当るかどうかということは別としまして、この勅令自体では問題にしておらないのです。また現在行われております特殊飲食店の類では、一応外形的には婦女が自由意思をもつて売淫をやつておるという形をとつておりまして、強制されてやつておるとかいう形ではございませんので、その意味でこの勅令ではちよつとただちに論議することはむずかしかろうということを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/62
-
063・鍛冶良作
○鍛冶委員 それでは承りますが、先ほど御説明があつた暴行または脅迫によらないで婦女を困惑させて売淫させる、これは要するに金で縛るということはいかぬ、こういうことにも入るだろうと思いますが、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/63
-
064・神谷尚男
○神谷説明員 この困惑させると申しますのは、暴行脅迫で売淫を強制した場合には、刑法の強制罪に該当すると思いますが、それ以外におきまして、婦女の意思を何らかの方法で拘束して売淫させる行為を処罰することが適当であるということから、そういう條文を設けられたわけです。たとえて申しますならば、上野の駅で家出の婦女をつかまえて、それを好意的な態度をもつて宿屋にとめる、その女が帰ろうとした場合に、お前には宿賃がかかつておる、これを拂わなければ帰さぬぞ、こういつて女を困らせて売淫をさせる、こういつたようなことが一例として申し上げられるのじやないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/64
-
065・鍛冶良作
○鍛冶委員 先日われわれはこの法律が問題になるというので調べに行つたんですが、吉原などの料理屋の主人公の説明によりますと、決して金は前借はさせませんと言つておる。ところがあんなところに行く者はそんなに着物を持つておるわけでもないし、病気になつたらそれを手当する金もあるべきはずはない。これはみなうそだ。相当の金を借りて来なければ、あの町に事実上において入らぬものです。そうしてその金を貸して、いわゆるあの売淫取引街に入れておる。これはどうですか、困惑の中に入りますか入りませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/65
-
066・神谷尚男
○神谷説明員 その場合でも、実際困惑させたということがありますならば、この勅令に該当する、こういうことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/66
-
067・鍛冶良作
○鍛冶委員 そういう実情であるにもかかわらず、この法律が実はどうしようもない。要するに、私の憂うることは行われない法律というものは法律として最も威厳を失うものだ、こう思うから申し上げるわけです。これ以上はあとでまた……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/67
-
068・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 田万廣文君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/68
-
069・田万廣文
○田万委員 佐藤さんにひとつお尋ねします。先ほど鍛冶君から第三條の規定について質問をなさつた場合に、廃止になつた後の経過規定としての罰則を存続さすという意味は、廃止を見越して違反というか、法律違背をする人間が出て来る可能性があるからというお話があつたのですが、そうすると私これを裏から言うならば、すべてのものを廃止あるいは存続という、この法案に盛られておる点については、講和條約が発効になつてから御審議になられてもけつこうではないか、一応こういう考えを持つのです。この点について簡單でけつこうですから、御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/69
-
070・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 お尋ねの趣旨を取違えておるかもしれませんが、法の廃止を見越して云々ということは、私実は限時法の理論にそれほど通暁しておるものではありませんが、それは限時法の理論の中に、それが一つの要件として入つておると私ども思つおりましたものですから、その意味で申し上げたので、しかしそれが今お話のように、この廃止命令に関しても、やはり同じ問題で、それは通用することと思います。それはそれといたしまして、この際廃止するという法律を出しました以上は、その廃止するという法律の中に当然つけて出すのが、これは御承知の通りに今までの例でもございますし、当然のことでありまして、ただいまあとの方で申されましたことがよくわかりませんでしたけれども、私としては廃止するという法律を出せば、その法律ではつきりそういうことが書いてあるというのが普通のやり方であり、当然であろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/70
-
071・田万廣文
○田万委員 私の質問もまずかつたと思いますが、とにかく鍛冶君にしても、共産党の加藤君の御説にしても、占領状態が終息すれば、占領状態下において発効しておつた法律はすべて効力がなくなるという御議論、私どもそれに賛成をするものでありますが、従つてただいまの言葉じりをとつたようにお考えになるかもしれませんが、廃止をする、それだけによつて法律上廃止をせられるということを予見して、そうして罰則の適用はもうなくなるのだというので、いろいろ犯罪を犯す人間が——まだ占領治下ですから、よい意味においては犯罪人の発生を防止するというふうにも考えられるのです。また反対から言えば、さような人間が起きて来た場合に、罰することが目的で、法律はできているというよりも、実際は一人の犯罪人もなからしめるということが法律の目的でなければならぬ、完全なる平和條約が発効していわゆる占領状態が廃止された後において一応廃止する。要するに今まで有効だつたものを廃止するということになさつた方が理路整然とするのではないか、廃止を見越して悪いことをするやつがおるかもしれないという御懸念は、一応政府としては考えられるけれども、それはむしろ反対であつて、完全に平和條約が発効した時分に廃止するものは廃止する、存続するものは存続するというような方針をとられた方が一番明確な線が出て来るのではないか、私の言い方、悪いかわかりませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/71
-
072・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 ちよつとはつきりいたしませんですが、この法律案は御承知の通り平和條的最初の効力発生の日から施行するのですが、その関係がちよつと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/72
-
073・田万廣文
○田万委員 そうすると最初の言葉に引継ぐのですが、廃止を見越して違反者が出る危険性が多分にあるというお話があつたから、これはもうそういう形勢を予見せられるのであれば、廃止するを廃し、完全にして、一人の違反者も出ないような時期に、いわゆる平和條約が発効した時分に、存続するものは存続する、廃止するものは廃止するようにやつた方がけじめがつくのではないかという意味です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/73
-
074・佐藤達夫
○佐藤(達)政府委員 わかりました。そうすると、この廃止するということ自身をまず條約発効後に送り込んで、それからやつたら——わかりました。しかしこれはまた一般的な問題としますと、先ほど加藤さんの話もありましたけれども、一日も早く廃止したいものもあるのでございますね。そういう点から申しますと、やはり一応の原理としては、講和條約発効の日にけじめをはつきりつけてしまうという要請の方が、実は私強いのではないかと思うのでありますので、限時法のりくつは、また説明員がおりますから、私の説明よりも説明員の説明の方がいいと思いますけれども、私今の点については、そういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/74
-
075・鍛冶良作
○鍛冶委員 これはひとつ、説明員もおいでになるが、先ほどの私の質問をもう一応よく実地で研究願つて、そうしてこの次にもう一ぺん質問いたしたいと思います。私の言うのは、特殊飲食店街というものは、法律違反の行為を公然やつておるところだと、こう思うのです。そういうものを公認しておるにかかわらず、こういう法律を出すということは、これは権威のない法律であつて、立法上最も私は愼むべきことだと思うのであります。そこで問題は、特殊飲食街はそういうものに当らぬという御見解であるか。当つておるならば、どうする見解であるか。これをひとつ御研究の上また御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/75
-
076・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 本日はこの程度にいたし、明日は午後二時開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00519520131/76
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。