1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年二月二日(土曜日)
午前十一時二十六分開議
出席委員
委員長 佐瀬 昌三君
理事 北川 定務君 理事 田万 廣文君
安部 俊吾君 角田 幸吉君
鍛冶 良作君 高橋 英吉君
山口 好一君 吉田 安君
田中 堯平君 加藤 充君
猪俣 浩三君 世耕 弘一君
出席国務大臣
法 務 総 裁 木村篤太郎君
出席政府委員
法務政務次官 龍野喜一郎君
検 事
(法制意見第四
局長) 野木 新一君
検 事
(法務府検務局
長) 岡原 昌男君
委員外の出席者
專 門 員 村 教三君
專 門 員 小木 貞一君
—————————————
本日の会議に付した事件
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する
件の廃止に関する法律案(内閣提出第四号)
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する
件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律
案(内閣提出第一八号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/0
-
001・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 これより会議を開きます。
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案及びポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律案、以上の二案を一括議題として質疑を行います。質疑の通告がありますので、順次これを許します。田中堯平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/1
-
002・田中堯平
○田中(堯)委員 一昨日の法務委員会で、わが党の加藤君から木村法務総裁に対して質問いたしたに対して、戰力の問題と行政協定の問題について答弁がありましたが、実はこのとき私関連質問がしたかつたのですが、総裁は退席をされたので果し得なかつた次第です。それで本席これを許されたいのであります。またこれが今議題となつているポ勅関係に密接な関連がありますのでお尋ねするのでありますが、この二つの問題と、議題になつているポ勅関係について質問いたします。
一昨日の法務委員会では、木村法務総裁は、今日戰力というからには原子兵器やあるいはジェット機というようなものを持つ程度でなければ戰力とは言えないという趣旨の答弁をなされた。そこでまずこれについてでありますが、これは木村総裁のみならず、首相初め閣僚諸公は口をそろえたように、みな今日の警察予備隊なり海上保安隊なりの力あるいは装備というものは、これは戰力ではない、軍備ではないと主張しておるのであります。そこで総裁にお尋ねしたいのは、今いかに政府が言うように今日の警察予備隊等が戰力ではない、再軍備ではないと言うてみたところで、これは自由党吉田政府だけが言うことであつて、国の内外をあげてほとんどこれをそうでござんすかと言つて承認するものはないような様子であります。現に警察予備隊が市中行進をする姿、あるいは敵前上陸までも訓練をしているそうでありますが、私は目撃したわけではない。バズーカ砲を持ち、あるいは装甲車を持ち、高射砲の訓練までする。しかもその数は七万五千ということであるが、実際はそれよりも多いらしい。そういうものを見て国内人だれもが、これは警察である、軍隊ではないなどとは納得しかねるのであります。国際的にも現に米国あたりの新聞論調及び相当な有力政治家あるいは軍人などの口からも、やはり日本の再軍備はもはや開始されているということが言われておるのであります。たとえば、昨年のたしか暮れごろだつたと思うが、ユナイテッド・ステート・アンド・ワールド・リポートなる米誌は大要次のようなことを言つておるのであります。日本軍の再建はすでに開始されている。一九五二年の冬までに二十万ないし三十万の陸軍をつくる目標を立てている。新日本軍の中核はすでに警察予備隊の中に存在している。これは一九五〇年米占領軍が朝鮮動乱に派遣された際のマツカーサー元帥によつて組織された七万五千の軍隊である。しかもこの警察予備隊だんだんとほんとうの軍隊の性格を帯びて来ている。隊員は二年勤務で兵舎に住み、軍隊式の日常生活をしている。彼らは機関銃、バズーカ砲、高射砲の訓練をされ、装甲車を持つている。警察予備隊の将兵もほとんど半数は旧日本軍に属していた者であり、その将兵は米陸軍に似た制服を着ている。その組織は師団、連隊、大隊、中隊というふうになつている。現在の兵力では四箇師団が確立されているが、日本政府は正式な平和状態になり次第、予備隊を十五万に拡張しようとしている。日本軍の再建はすでに開始されている。残る問題は再軍備工作の速度と規模の拡大の程度だけが残つている云々、あとは略しますが、こういうことを言つております。そうしてこの種の報道は枚挙にいとまがないほど米国にもその他の国々にもあるのであります。すなわち国内をあげ、また国際的にもすでに警察予備隊等が再軍備の中核であるといい、また再軍備的性格を持つていると評価をしているし、また昨今の予算委員会その他における首相等の答弁を見ましても、たとえば今年十月の警察予備隊任期満了期を期して今度は警察予備隊ではなしに防衛隊とかあるいは大橋国務大臣の言うには保安隊と言うことの方が適切な名称であろうとも言つておりますが、そういうふうなものに改編をするという意思が発表されている。われわれから見ればこれは明らかに再軍備をいよいよ本格的な段階に押し進めるものと解しているのでありますが、そのように内外、それからまた自由党吉田政府自身の口からも問わず語りにもはや再軍備の過程に入つていることを証明しているかのような言説がなされている。そういうときにあつてもなお木村総裁は、わが国の現状においては、いわゆる警察予備隊あるいは海上保安隊等のものは、あれは再軍備でもなければ戰力でもないというふうな見解を固持されるのであるかどうか、念のために最初にもう一度これをお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/2
-
003・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えします。私の先日の答弁に、誤解があつたようでありますから一言申し上げます。それは私がジェット戰国機あるいはジェット爆撃機を持たなければ戰力と言えないと言つたわけではないのであります。必ずしもジェット戰闘機、ジェット爆撃機を持たなくても戰力と言う場合があると考えます。私の申したのは現在の近代戰においてはすでにジェット爆撃機、ジェット戰闘機が盛んに活躍している。こういう兵器を持つた国があるのだ。それに対して現在の警察予備隊のあの力は、これはきわめて微々たるもので鎧袖一触、ものの役に立たない、かようなものはいわゆる憲法第九條の戰力に該当するのではないということを申し上げたのであります。誤解のないように願います。
そこで今田中君の御質問の本論に入りますが、この憲法第九條の第二項、いゆる地上、空軍その他の戰力と申しますその戰力というのは近代戰に間に合うもの、いわゆる適切可能な兵備と編成を持つた力、これを言うのであります。そこで日本の現在の警察予備隊はこの戰争送行の能力ある編成装備を持つた戰力とは言えないのではないか。きわめて微々たるものであるから従つてこの憲法第九條第二項の戰力には該当しない、こう申し上げるのであります。今でも私はその確信を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/3
-
004・田中堯平
○田中(堯)委員 それでは重ねて今の最後の御答弁についてお尋ねします。この憲法第九條の二項のいわゆる戰力なるものには、今日の国際情勢からするならば、ジェット機や原子兵器がなければ法的解釈上憲法第九條の戰力というものには該当しないという、そういう御見解のようですが、そうすると結局反対から申しますならば、もし警察予備隊であろうが将来の保安隊であろうが、そういうものがジェット機並びに原子兵器を持つまでは憲法改正の要なしという御見解でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/4
-
005・木村篤太郎
○木村国務大臣 そう申すわけではありません。先刻も申し上げたようにジェット爆撃機、ジェット戰闘機を持たなくとも近代戰遂行に適切可能な兵力を持つに至つては、この憲法のいわゆる戰力にも該当する場合があるだろうと私は考える。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/5
-
006・田中堯平
○田中(堯)委員 今法務総裁が原子兵器、ジェット機と二つ並べられたが、これは程度を示すものですか。現在ではこの二つの兵器を持たなければというのでありますか。言葉じりを云々するようでありますが、その辺をひとつはつきり……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/6
-
007・木村篤太郎
○木村国務大臣 持たなくとも戰力に該当すべきものはあると考えております。つまり近代戰に有効適切な編成装備を持つた兵力であればこれは戰力と言えるでありましよう。その場合に必ずしも原子爆彈を持たなくとも、あるいはそういう戰力に該当するものがあると私は考えておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/7
-
008・田中堯平
○田中(堯)委員 そこで兵器の質の問題ですが、今問題になつておりましたが、今の総裁の答弁によると、質は今言つたような原子兵器等を有しなくとも、量においてたとえば何十万という兵備が設けられるということになれば、これは憲法第九條に言うところの戰力に値いするということになるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/8
-
009・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。原子爆彈を持たなくとも、近代戰に有効適切な装備と編成を持つた場合にはこれは戰力と言えるであろうと申し上げたのであります。そして近代職に有効適切な兵力とはいかん、これは国際社会通念においてきまるべきものだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/9
-
010・田中堯平
○田中(堯)委員 兵器の質の方は、例示にしてもあるいは具体的指示にしてもそれは別として、原子兵器、ジェット機ということを示されましたが、しからば戰力というに値いするほどの兵力量というものは大体どのくらいを想定しておられるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/10
-
011・木村篤太郎
○木村国務大臣 私は專門家ではありませんからそれは想定いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/11
-
012・田中堯平
○田中(堯)委員 そういう点についても最初私が申しましたように、早くも日本が再軍備の過程に入つておるというので、日本が保持すべき戰力は再軍備としてどの程度が適当であるか。自衛といつておりますが、どこの国も自衛でないための軍備は設けておるとは申しておりません。外国を侵略するために軍隊をつくつておるというような政府はどこの国にもないと思う。皆自衛のため、防衛のためということを言つておりますが、その名義はどうでも、ともかくも日本というものが国際環境の中に置かれて持つに適当とする軍隊の量はどのくらがよかろうかということについて、日本国内でも、国際的にも盛んに論議をされておるのであります。木村総裁がそれを、ごらんにならぬわけはないし、また政府部内でそういう重要なる問題について何ら検討がされておらないことはないと思います。巷間伝うるところでは、私も專門家でないのでいずれが正しいかどうかしりませんが、大体十一万説あるいは十五万説、これは陸兵でありますが、この程度で自衛ができる。それから海上兵力は大体四、五万というところが多くの專門家かち主張されておるようです。空軍の勢力は、大体四万あるいは五万というような主張がなされておる。私はしろうとではあるけれども、單に自衛のため、国内の治安のためということならば、今日の七万五千の警察予備隊及びその他国警も、市警もありますので、それをもつて事足りる以上のものがあると思いますが、一般に市井に伝えられるところの十一万説をとつてみましても、これは自衛上必要以上のものだと思うが、それにしても十一万説というようなことであります。そうすると、今度は外国新聞が言つておるように、やがては十五万、やがてといつても独立を一応回復した後というのであるから、これは非常に時間が切迫している話であります。また昨今の各委員会での首相その他の発言によつて察してみても、大体この秋あたりじやないかと思われる節がある。そのころに十五万程度にするということが一般に巷間に伝えられておる常識となつておるわけであります。それがまた本年度一ぱい、あるいは来年度一ぱいには三十万になり、三十一万になるということも伝えられておる。そこでお尋ねしたいことは、木村総裁が言われる憲法九條の戰力と言うに足る程度の兵力量、質の場合は別としまして、兵力量というのは、大体どの程度のものを想定しておられるか。これは私全然知らぬと言われても通らない筋合いのものだと思います。おそらく御存じないことはないと思いますから、もう一度念を押したい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/12
-
013・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。われわれの考えておるのは、日本の内地の治安の維持に必要なる力はどのくらいが相当か、それには今の警察予備隊程度であればよかろうかと考えておるのでありまして、政府としては再軍備をする意思は毛頭ないのでありますから、今いかなる兵力が憲法第九條第二項の戰力に該当するやいなやということは答弁の限りではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/13
-
014・田中堯平
○田中(堯)委員 それではこの点はこの辺にして、次に移りたいと思います。
行政協定に関してお尋ねしたいのですが、この前の御答弁では、行政協定は日米安全保障條約の延長であり、その一端をなすものであるから、條約が批准された以上、別に国会に一々諮らなくてもよろしいという趣旨の御答弁であつたと記憶しております。ところで第一にお尋ねしたいのは、あの日米安全保障條約なるものはただ形骸だけが規定されておつて、中身は全然規定されておらないといつて過言でないのであります。日米の安全を保障するために、どういうふうな方法をとろうかといつた具体的なことについては、行政協定に一任されておる、いわば委任立法のようなものであります。これは私、一法律家としての見解でありますが、明らかに違法だと思う。そのような国際條約なるものは今まで私どもは寡聞にして聞いたことがありません。ただ形骸だけを條約の中に盛つておいて、中身は双方の政府がかつてにとりきめができる、こういう例は寡聞にして聞いたことも見たこともありません。私はその意味から、日米安全保障條約なるものが発効いたしましても、これの中身を定める場合には、一々国会の議を経なければならないというふうに考えるのでありまするが、この点重ねてもう一度御質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/14
-
015・木村篤太郎
○木村国務大臣 安全保障條約は大綱をすでに定めているのであります。その実施細目を行政協定でやるということになつているのでありますから、大綱を定めた條約が批准された以上は、実施細目に関する行政協定は批准する必要なしと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/15
-
016・田中堯平
○田中(堯)委員 それでは次に移ります。ところで、この行政協定なるものは読んで字のごとく両国の協定であるので、双方が独立の人格を持つた国家でないと、これは協定たる資格に値しないと思います。また実際上からしても、現状では有力なる占領軍が日本にいるのみならず、事実日本の政治に、対して、あるいは文化政策に対して、万般の行事に対して直接間接の干渉がなされている。これは占領治下であるからあたりまえのことであるが、そういう状態である。予算一つ組むにいたしましても、一々オーケーをとらなければならない。そういう状態でありながら、すなわち独立の人格ではないという状態でありながら、行政協定を今とり行うことは、行政協定たる形式上の資格と申しましようか、形式上の條件が整つておらぬのみならず、実質上も結局は押しつけられる。露骨に言つてみるならば、協定ではなしに、一方的とりきめという結果にならざるを得ないと思うのでありまするが、この点に対する木村総裁の御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/16
-
017・木村篤太郎
○木村国務大臣 田中君もすでに御承知の通り、平和條約その他の條約を日本は堂々とアメリカと調印しているのであります。安全條約の実施細目の行政協定を結ぶについても、日本は堂々とこれを交渉しているのであります。決してアメリカの意思そのままに動いているということではありません。政府も努力して、日本のためにいかなる態度をとればいいか、いかなる処置をとればいいかということにせつかく苦慮しているので、御心配は御無用であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/17
-
018・田中堯平
○田中(堯)委員 御答弁ではありまするが、しかし事実われわれが見るに、厖大なる軍隊が日本に駐屯しており、またこれらに対してはまつたくわれわれは手を触れることもできない。いわば治外法権的なそういうものが今日本に現に残つている。また反対に日本側の方で占領目的を阻害するという名前のもとにどんどんと処罰をされているし、あるいは軍事裁判にもかけている。現にわが党の飯田七三君のごときは、その他六名おりまするが、私どもの考えるところでは何ら嫌疑はないと思うけれども、しかし昨年末に、嫌疑あり、軍事スパイということで軍事裁判関係にまわされ、漏れ聞くところによれば、えらい拷問も受けておるということでありますが、そういうような実力関係をどうすることもできない。また米国からの対日援助というようなものも受けており、従つて経済的な言うに言われない支配、被支配の網の目も伸びて来ておるわけであります。諸般の事情を通じて見ると、これは堂々とやつておると言われるけれども、とても堂々とはやれますまい。一方的なとりきめに終るということは国民ひとしく危惧しておるところでありまするが、これは單に法律上の見解だけではなしに、事実條約が発効して形式的にでも日本が独立してからでも、何も行政協定をやつて悪いことではない。そのときでもおそくはないと思うのですが、今非常に急ぎあわてたというような形で、行政協定を取結びにかかつておるのは、何かそこに意味があるのじやなかろうかと思いまするが、特に何か急がねばならぬ理由があるならばそれを明らかにしていただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/18
-
019・木村篤太郎
○木村国務大臣 申し上げます。ただいまの段階では、交渉中なのであります。せつかく今両国は案を練つておるのであります。行政協定の成立するのはあるいは條約発効後になるかもわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/19
-
020・田中堯平
○田中(堯)委員 さらに先に進みまして、恐縮ですが、本議題に直接の関係がないのでありますが、一言だけお許しを願いたい。それは直接関係はないとは言え、間接的には大いに関係があることでありますが、今台湾の蒋介石政権、正式には中国国民政府というものと外交関係を結ぼうということになつて、世界中の大きな問題をかもしておるのであります。今国会になつてからの吉田首相の発言によれば、あの政権と外交交渉をするのは、中国全体の政権、中国全体の政府としてこれと外交折衝をするのではない。いわば一地方政権としての台湾政権ととりきめをするのであるという趣旨のことを言われております。そこで政府の法律顧問とも言うべき地位におられる法務総裁にお伺いしたいことは、今後どういう條約が結ばれるか、それは知りませんが、條約の條文で、私はもし相手が中国全体の主権ということではなしに、地方政権であるということならば、條約に明文をもつて明らかにしておく必要があると思います。これは單に形式上の問題ではなしに、もしそうでないと将来ゆゆしき問題が続生して来ると思いまするから、ぜひともこれは明文をもつて、たとえば蒋介石政権とか、あるいは台湾政権とかというふうな地方政権を明示する文言でうたうべきであるというふうに思うのでありまするが、総裁の御意見はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/20
-
021・木村篤太郎
○木村国務大臣 一応御意見として承つておきます。私の意見は申し上げません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/21
-
022・田中堯平
○田中(堯)委員 それではこの昭和二十年の緊急勅令五百四十二号を廃止するという法案並びにこの緊急勅令に基く、いわゆるポツダム諾政令を廃止、あるいは存続せしめる措置の法律案を一括して議題に上つておるのでありますが、これについての直接の御質問をいたします。
この前も一応は問題になつておつたのでありますが、われわれ国民の感情としては、実に長い間、七年になんなんとする間、敗戰国として占領治下に置かれて苦しい思いをして来た。占領目的遂行のためのいろいろな政令が出ておつても、これはしかたなしに、不本意ながらもこれに服従をして来たというのが、いつわらざる国民感情であります。日本人は非常に法に対しては従順であるというので、秩序を愛する美徳を持つているとか、服従の美点を持つとかいうふうな言葉で、あるいはマッカーサー元帥や、アイケルバーガー将軍などからもおほめの言葉をいただいているような次第であつて、実に苦しいながらも、この占領目的遂行のための諾政令には忠実に服従して参つたのであります。しかし実際には苦痛であつた。だから占領が解けて、形式的にも日本が独立国になるというならば、このような悪夢を一掃したい。今まで何だか頭の上へのしかかつておつたこれらを一挙にのけてしまつて、どうしてもこの中で拾い上げて規定しなければならぬものがあるとするならば、国民みずからが今度は自主的にきめる。今までも形は国会で委任立法の形で出てはおりますけれども、実際はやはり外国勢力、占領軍勢力のもとで、いわば押しつけられた形の政令であつた。今度こそはどうしても必要なものは国民の民主的な意思によつて国会を通じて法律として制定しようじやないかというのが国民感情であります。しかるにこのたびの、この議題になつている処置は、木村総裁がこの前答弁をなさつたところによると、この緊急勅令五百四十二号なるものは、学説上は條約発効とともに失効する、あるいは生き残るという両学説があるけれども、政府としてはその両学説のいずれにくみするわけでもなく、そういうことはしばらく別として、この措置によつて必要なものだけを生かし、必要でないものは殺してしまうというような御答弁であつたと記憶しております。
そこでお尋ねしたいのは、私どもの意見では、これはやはり国民感情に率直にこたえて、そのような不愉快な思い出を一掃する。だから五百四十一一号はもうなくしてしまう。そうしてそれに基く法規定である各政令、これはあらためてぜひ必要なものは法律案をもつて国会に問う、すなわち国民の意見を問うということが望ましい。それをやつても立法上時間が遅れるとか、困つた問題は生じない。なぜならば佐藤政府委員の答弁によると、一応これは委任立案で法律になつているのであるから、たとえ講和條約が発効をしても、決して純理上はこの委任立法が失効するものではない。やはり法律としての、法令としての力を存続するのであるということを答弁しておるのであります。だから何も今あわててこれが措置を講じなくともただちになくなるというわけのものではないのでありますから、必要に応じてその都度両條約の発効後に適当な措置をとつて行けばよろしいのであつて、今あわててこれに手を加える必要は私はまずないと思うのでありますが、どういうわけで今これをやらなければならぬかという政府の御意向を伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/22
-
023・木村篤太郎
○木村国務大臣 この前にも申し上げました通り、両学説があるのでありまするから、この場合にはつきりした方針をきめて、国民によくわかりやすいようにすることが政府の立場として当然であると思うのであります。それでこれを法律に切りかえたらどうかという御意見、これは一応考えられることでありまするが、この五百四十二号によりまして出ました各政令は国民に非常になじみになつておる。国民になじみになつておる以上は、これをあらためて法律で生かすということが、かえつて国民感情もしくは国民の立場から考えて便利であろう、こう考えますのでかような措置をとつた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/23
-
024・田中堯平
○田中(堯)委員 それはまつたく逆であります。これはもう親しいどころではない。まるでしかたなしに承認をしておつた、悪い夢としての記憶こそ残つておるけれども、決して国民には親しい規定でも何でもない。だからこそ国民の自主的な意思に問うて、ぜひとも必要なものは法律の形をもつて、あるいは單行法でこれを制定すべきであるという主張をするのでありますが、それは見解の相違として先へ進みます。
政府の態度が、この五百四十二号が生きておるか死んでおるかどつちでもよろしいというはつきりしない態度で臨んでおるがゆえに、ポツダム政令の廃止すべき部分と存続せしめるべき部分の選択というものが、まつたく懇意的に行われておると見なければならない。たとえば占領目的を阻害したために処罰を受けておるというような者は、そのまま処罰を継続するというようなことになつておる。また一方財閥はもはや一応解体をしたので、元の財閥商号はこれを使用してもよろしい。すなわちこれは禁止を解除して商号の再採用を許すということになりまするが、そういうふうに自由党政府にとつて都合のいい部分だけは残して、都合の悪い部分はこれをなくしてしまう、そういう態度になつておるのであります。これはやはりどうしても統一的に——私どもの考えからすれば五百四十二号なるものは当然これは失効するという考えでありまするから、どうしても重要なるものについては、法律をもつてあらためて国民に問うということでなければならぬと思うのであります。具体的なことになりますが、財閥商号の使用禁止に対する政令はこれを廃止をして、三井とか三菱その他の財閥の商号を再採用することを許すということでありますが、その立法趣旨には、財閥の解体は一応でき上つたのでと言われておる。ところが、今日の財閥の解体ができ上つておるなどと言うと笑われますよ。実際旧態依然どころではない。以前の財閥の組織には何ぼか封建的な関係が残つておつたのが、非常に近代化されて、一応持株会社としての財閥は解体をされて、そうして持株会社整理委員会が株式の所有を大衆化したということになつておるのでありますけれども、しかも実際上はどうかといえば、やはり事業会社の中で金融機関、銀行等が数年のうちに非常な勢力を盛り返して来て、今では大体民間の十大銀行のもとに各企業、事業はほとんど再分属をされて、ちやんとそこにブロックブロックができ上り、また企業合同というものも急速に行われて、銀行、金融独占資本を中心の新財閥と申しましようか、そういうものが、往年のあの封建的な色彩をまだ残しておつた財閥よりももつと力強い支配力を経済界に及ぼしておるのであります。問題は、なぜ占領目的を遂行するために財閥を解体したかといえば、これは財閥なるものがおつて、これが戰争を起すことに非常な大きな影響力であつたがゆえに、やはり軍閥と並べて財閥をも解体しなければならぬ、地主勢力も解体しなければならぬという措置に出たのでありまするが、また戰争を引起す導引力になりかねまじきそのような新財閥が今日のさばつておる。これはまあ商号だけは使うことはできないということで、たとえば銀行にしても、三井、三菱のごときものはみんな帝国銀行とか千代田銀行とか富士銀行とか、いろいろ名前だけはかえておるけれども、最近またもとの名称を用いさして、いよいよ輪に輪をかけて支配力の増強に政府は力添えをして行こうという結果になりつつあるのでありますが、この点に関してどういう見解をとつておられるのでありますか。一応財閥は解体したというような見解で、立法趣旨の通りに解しておられるのかどうか、総裁の御意見を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/24
-
025・木村篤太郎
○木村国務大臣 お答えいたします。財閥は、私の考えではもうずたずたにされたものと考えております。往年のああいうような大きな財閥というものは、現在は残つていないと考えております。また金融資本の独占という御意見もありましたが、御承知の通り金融はどこも独占しておりません。これも見解の相違でありまするが、私はそうは考えていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/25
-
026・田中堯平
○田中(堯)委員 その点についてはちやんと私ども調べて、たとえば帝銀なり千代田銀行なりがどういう産業会社を直接に支配しておるかということは、これはもう全部調べ上げてわかつておるのであります。これはみんな金融を通じて企業内容にまで干渉して来て、往年の三井、三菱の形態よりももつともつと輪をかけたような支配力を再編成しておるのであります。それにかてて加えて財界人の追放が解除された関係上、いよいよ屋上屋を架するようなことになつて、往年の諸財閥の因縁情実というものを背景に、またちやんとその支配々々の部署には旧人物が復活をしつつあるということで、ますますもつて旧財閥のあの危険なる状態を再現しつつあることは、これはもう総裁がそう言われても問題にならぬ。しかしこれも見解の相違としてそのままにしておきます。
最後にもう一つ、これはポツダム政令によつて処罰を受けたもの、そのうち一番数の多い、また最も嚴罰に処せられておるものが、何といつても政令三百二十五号すなわち占領目的の阻害行為の処罰令でありまするが、これにかかつたものが非常に多い。これこそはもしも占領という事象がなかつたならば全然起る可能性のない行為であります。それがたまさか占領という事象があつたがゆえに処罰をされておるのであつて、すなわち変則のゆえに処罰を受けておるから、その変則が取除かれて本則に復帰するならば、そのようなものの処罰はただちに解消すべきである。にもかかわらずこれが依然として、その処罰は続けるということに本法案ではなるのでありまするが、この点に対してお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/26
-
027・木村篤太郎
○木村国務大臣 これらの法令によつて処罰された者でありますが、元来これらの法令も必ずしも占領軍の利益のためばかりでなしに、日本の国家利益のために定められた法令が幾多あるのであります。それについての処罰でありますから、これはよほど選択して考えなくちやならぬと私は考えております。そこでかりにこの法律が出ることを予想いたしまして、まだ刑罰が残つておればいいのでありますが、残らぬものといたしますると、その間に処していろいろな犯罪行為が行われるおそれがあるのであります。それで一応これでそういうことを阻止する必要があると私は考えております。また今田中君の仰せになりました占領目的違反の行為のうちで、非常に気の毒なものもあれば、——御承知の通り今度は前の恩赦法と違いまして内閣で恩赦をやつておりまするから、よく選択してそれで調節をする。もう一つは、かりに起訴された場合においては、検事局においてそれらの事情をよくくみとつて不起訴の処分もとり得るのでありますから、そういう方面から処置して行けば万遺漏がなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/27
-
028・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 猪俣浩三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/28
-
029・猪俣浩三
○猪俣委員 新法務総裁に本委員会では初めてお目にかかります。いろいろお尋ねしたいことが実は山ほどあるのでありますが、きようは法務総裁におかれても時間の御都合があるようでありますので、いずれ近い日を期してお尋ねすることにいたしまして、きようはポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案及び同法律案と併託されておりまするポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律案、これについてお尋ねし、かつまた要望をいたしたいと思うのであります。
この最初の廃止に関する法律の第一項の廃止することに対しては異論がないし、第二項におきましても大体異論がないのでありますが、ただここで、このいわゆるポツダム政令なるものを廃止するかあるいは存続するかということにつきまして、併託せられましたる法務府関係諸命令の措置に関する法律案のような感覚でおやりになることには、私どもはなはだ遺憾に存じ、これは反対でありますが、そこで法務総裁に要望なりお尋ねなり申し上げたいことは、第一に、この勅令第五百四十二号というものにつきまして、法務総裁は御認識あるとは存じますが、前の大橋法務総裁は、この五百四十二号について憲法違反の議論が相当の学者から出ておるということを私が申しましたところが、さようなことは今初めて承つたというような御答弁がありました。そうなりますると、私どもは前提に非常に危惧の念にたえないようなことが出るのでありまして、昨日も申し上げておきましたが、新法務総裁はその道の権威者であられまするから、大橋前法務総裁の答弁のようなことはないと思いますが、私はこの五百四十二号なるものは日本国憲法の全規定及び精神から見ましても憲法違反であるという確信を持つております。この五百四十二号という全文の四十の文字からなつておる簡單なる緊急勅令から、無限に勅令ないし政令が出たのでありまして、いずれもみな国会を素通りしておるのであります。そうして今までの政府のやり方につきまして、われわれ実に遺憾に存じたことが数々ある。たとえば食糧確保臨時措置令、この食確法と称せられるものが、第五国会に提案されて審議未了になり、なお第六国会に継続審議されまして、これがやはり参議院で審議未了に相なりますると、政府はこのポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件なる法令に便乘いたしまして、食確政令を出された。これはまつたく国会の意思を無視したものであります。なおまた電力再編成に関する法律案が提出されまして、国会を通過することができないと見るや、これも電力再編成令なる政令でもつて出してしまう。なおまた今問題になつておりまする警察予備隊、これなんかも実にひどいのでありまして、これは私は今でもはなはだ気持がよろしくない。第八国会の、しかも七月二十八日に予備隊の性格及び組織、機構、さようなものについて、新聞じやじやんじやん発表されておりまするから、時の法務総裁に質問いたしますると、いやこれはまだ考え中で立案が完成しておらぬという答弁で終始一貫された。そこで、私は、新聞の論調にもありまするし、政府は国会に法律案として出す意思がなく、国会の終了を待つてぽつと政令で出す予定じやないかという質問をしましたが、さようなことは断じてないのだという答弁をされておる。ところが七月国会が終了しますと間もなく、これが警察予備隊令となつて現われて来た。まつたく私どもはばかにされたと思うよりしかたがない、かように国会の審議を軽視しておる。これはまつたく憲法違反になる包括的委任命令である。現憲法におきましては委任命令なる規定はありません。私どもは学者の通説に従いまして、ある程度の委任命令もこれを認めるということでは、別に異論はないのでありまするけれども、いやしくも委任命令それ自体が憲法に違反するかどうかという議論があるこの際に、かかる五百四十二号のごとき、まるで白紙委任的な委任命令というものが憲法違反であることは、これは疑いないことだ。その性格から見ましても、実にこれは極端なる包括的白紙委任命令であります。そういうものを根拠といたしまして、今申しましたような、まことは国会を蔑視いたしましてその審議をことさらに回避いたしまして、そうして多数の政令を出したことは疑う余地がないのである。これも占領せられておる際であつて、超憲法的な権力が働いておるときでありましたから、われわれといたしましても涙をのんでこれはある程度がまんしたのであるが、今や平和條約は効力を発生し、日本国が独立国として再出発せんとする際に、そのためにこの政令を整理しようというのであります。その趣旨ははなはだけつこうでありますが、しからばこの際、占領国家だということでわれわれはある程度忍びましたが、国会を素通りいたしまして政府の専断で出されましたこのおびただしい政令に対し、われわれは再検討する権限があると存ずるのであります。かような意味の違憲立法によりまして、これを根拠といたしまして、多数出されましたこの政令につきまして、われわれは独立の気構えにおきまして、何ものにも煩わされずに愼重審議することが当然の権利である。これをまたぞろまつたく何が何だかわからないように全部これを処置してしまうというその態度に対しましては、およそ民主政治を口にし、国会が最高の国家機関であるという認識を持つておるものの態度とは思えない。かようなポツダム政令なるものは、はなはだ異常な姿において法令として現われたものでありまして、これを正常に返すことが最も重大な点だと考える。先ほどの国民感情の問題から考えましても、もし日本がほんとうに独立するがために政治を行わなければならないとするならば、これを正常のルートに返しまして、再び国会に出して国会で愼重審議することが民主政治の第一の考え方でなければならないと私は確信するものであります。かような意味におきまして、法律で廃止または存続するということを一括してこれをやらずに、存続すべき法令につきましては今度国会に法律案として提出されまして、そこで愼重審議するようにしていただきたい。廃止するものにつきましては、私はそこまで要求しないでよいと思うのでありますが、いやしくもわれわれの権利義務を拘束いたします法令を存置しようとするならば、かようなまつたく形式だけの態度でもつてやるべきものじやない。今までの政令の出現いたしました経過が、先ほど私が申し述べましたような事情のもとになされたとするならば、今やまさにこの法案を存続したいという際には、独立の法律案として提出するように取運んでいただきたい。さようにできない理由が一体どこにあるのか。国会を軽視する思想から来ておるのであるか、事務の都合上そういうことが不可能であるかどうか、不可能であるというような事務当局の御答弁が昨日あつたのでありますが、どこが不可能であるか、この法務府関係諸法令というものを見ましても幾つもございません。そういう原案があり骨子がある以上は、それを法律案として出すことに何でそんなに不都合なことがあるのであるか。そのことによりまして正常のルートでこの立法がなされるのであります。日本の将来のあり方につきましてもこれは簡單な問題じやない。かような便宜主義に基きまして、まつたく一山幾らというようなやり方で、こういう国民の権利義務に関します重要法案がぽつぽつと多数党の威力によつて通過するようなことがありましたならば、国会の権威はどこにありますか。かようなやり方に対して内閣の法律顧問として存在する法務総裁こそが、閣議において反対すべきものではないかと私は考える。かようなやり方そのものにつきまして、この内容のいかんにかかわらず、私どもは国会の権威にかけまして実に不愉快千万に存ずる。この意味におきまして、法務総裁は少くとも存続すべき法律だけでも單独法律案として提出する意思ありやいなや、これを第一にお尋ねいたします。もしそういう意思がないとするならば、いかなる理由においてこんな変則的なやり方をなすのであるか、その理由を説明していただきたい。その前提として今くどく私が申しましたように、この五百四十二号なるものは元来違憲立法である。しかも国会の審議を回避するような政令として多数出ている。それをまた一括して法律的効力を與えようとする、そういう立法手続に対しまする政府の考え方か、実に民主的政治家の考え方でないとぼくは考える。こういうことに対する法務総裁の所感を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/29
-
030・木村篤太郎
○木村国務大臣 猪俣委員の五百四十二号は違憲ではないかという御意見は承つておきましよう。議論もあることであろうと思いますが、すでにこの点につきましては最高裁判所において違憲にあらずという判決が下されてあることを御承知願いたいのであります。そしてこの勅令から発した各政令でありますが、これは賢明なる猪俣委員も御承知のように、ここに存続すべきものと廃止すべきものとあるのであります。いずれも内容はもうすでによく知れ渡つているのであります。法律家の猪俣委員もこの法令の内容については御承知のことであろうと存じます。そこでこの法令を生かすか死なすかというだけのことでありますが、あらためてこれを條文をもつて法案として提出、する必要はなかろうかと存じます。
そこでこの政令の内容についての御質問であれば承りたいと思います。この法令はもうすでに国民に周知のことでありますから、ただ法律として廃止するか、このまま残すかということだけの問題であると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/30
-
031・猪俣浩三
○猪俣委員 賢明なる猪俣委員とほめられまして、まことに穴があつたら入りたいのでありますが、私はあまり賢明ではないのでここに掲げられました法律の内容はよくわかりません。法務総裁は一々これをみな覚えておいでになるかも存じませんが、私どもはここへ並べられましてもわからないのであります。この内容について質問するならば答弁するとのことでありますから、明日からこの内容に対して質問戰を展開したいと存じます。今日は私全然わからないものですから用意ができておりません。ほかの委員の方はどうか知りませんが、私は不敏にしてこの内容を一々覚えておらぬことだけ申し上げまして、明日から内容についてお尋ねしたいと存じます。
なおポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律案について一、二点お伺いいたします。この第一條の二号に「婦女に売淫させた者等の処罰に関する勅令」とあります。これはこのまま存続させるのでありますか。あるいは一定の時期が来ますればまた別に單独法律として出す御意向でありますか、その点承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/31
-
032・岡原昌男
○岡原政府委員 ただいまの御質疑の「婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令」につきましては、いろいろ従来も国会の御審議を仰ごうとしたこともございますし、いきさつがあるように聞いておるのでございますけれども、今国会を前にいたしまして、私どももこれをいかに取上げるべきかについて事前に相当研究いたしました。その結果、いろいろと問題がございましたので、とりあえずただいまのところは、ただ存続させるというだけの方針を明らかにいたしまして、もしもその後情勢がさらにかわりましたならば、さらに研究し直そうという、これだけの意味でここに掲げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/32
-
033・猪俣浩三
○猪俣委員 それから第二條の七号「正規陸海軍将校又は陸海軍特別志願予備将校であつた者の調査に関する件、」これは一体どういう内容のもので、何のためにこれを廃止するのであるか、それを承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/33
-
034・岡原昌男
○岡原政府委員 実はこの点は、きよう政府委員として参るはずでございました特審局長の所管になつておりますので、その点はいずれ私から伝えまして、何かの機会に答弁いたすことにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/34
-
035・猪俣浩三
○猪俣委員 政府委員でもすぐ答弁できないような法案があるなら、法務総裁の、委員はみなこれをよく知つている、国民はよく知つているはずだということはちよつと当らないと存じます。
第三條は、「この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。」となつておりますが、そうすると、この法律が効力を発生した後に、この法律に違反したことが発覚した者も起訴する御意思があるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/35
-
036・岡原昌男
○岡原政府委員 法律の建前から申しますと、さようなことに相なるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/36
-
037・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 本日はこの程度にとどめ、明後四日午後一時より会議を開きます。
本日はこれをもつて散会いたします。
午後零時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X00719520202/37
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。