1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年二月二十一日(木曜日)
議事日程 第十二号
午後一時開議
第一 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く農林関係諸命令の措置に関する法律案(内閣提出)
第二 開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
第三 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く特別調達庁関係諸命令の廃止に関する法律案(内閣提出)
第四 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く建設省関係命令の措置に関する法律案(内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
恩赦に関する決議案(大野伴睦君外四十二名提出)
日程第一 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く農林関係諸命令の措置に関する法律案(内閣提出)
日程第二 開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出)
日程第三 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く特別調達庁関係諸命令の廃止に関する法律案(内閣提出)
日程第四 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く建設省関係命令の措置に関する法律案(内閣提出)
財政法、会計法等の財政関係法律の一部を改正する等の法律案(第十二回国会内閣提出、参議院送付)
午後二時六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/0
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001・林讓治
○議長(林讓治君) これより会議を開きます。
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002・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、大野伴睦君外四十二名提出、恩赦に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/2
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003・林讓治
○議長(林讓治君) 福水君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/3
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004・林讓治
○議長(林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
恩赦に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。大野伴睦君。
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〔大野伴睦君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/4
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005・大野伴睦
○大野伴睦君 諸君、ただいま議題となりました恩赦に関する決議案について、提案者として趣旨弁明を行いたいと思います。
最初に決議案の案文を朗読いたします。
恩赦に関する決議案
政府は平和條純一の発効に当り、全国の被疑者、被告人及び刑の言渡を受けた者に如し広範囲の恩赦を行うべし。
右決議する。
右の決議案について、きわめて簡単にその趣旨を説明いたしたいと存じます。
終戦後、平和條約の調印に至るまで六年有余の年月が経過いたしましたが、この間わが国は占領下に置かれ、また内外の諾情勢の変転は目まぐるしいものがありました。国際情勢は別としましても、国内における政治上、経済上あるいは社会上の変転は、説明するまてもなく、諸君の身をもつて体験された通りてあります。この変転のはげしい六年間において多くの法令の改廃か繰返され、中にはすでに処罰法令が廃止されているのに、その法令によつて処罰され、いまなお囹圄に坤吟し、また現に取調べを受け、あるいは訴追せられて被疑者、被告人として苦しんでいる者が多数にあるという不合理な状態が生しておるのであります。そもそも恩赦法の根本の精神は、社会情勢が変化して、以前は犯罪として処罰された者が、法律の改廃によつて犯罪でなくなつたとき、または法律の改廃がなくくても、その意義に重大な変化かあつたとき、恩赦の措置によつて既往の裁判の不合理を救済せんとする趣旨てあると信ずるものてあります。(拍手)昭和二十年十月及び二十一年十一月に実施された大赦は、この趣旨によつて、旧軍事関係法律、国家総動員法等の違反者、あるいは刑法の改正によつてなくなつた罰則の違反者を赦免したのであります。
平和條約の発効によつて、わが国は完全に独立を回復し、占領軍の支配を離れ、日本独自の民主的統治を行うことになるのであります。これに伴つて必然的に占領下時代の諸法令に多くの改廃が必要となり、すでにその措置の終つたものもある次第であります。また平和條約の無効ということは、わが国史上かつてない重大な意義を有する盛事であり、この歴史的な機会に、全国の被疑者、被告人及び受刑者に対し、きわめて広範囲な恩赦を行い、彼らをして正しい国民としての自覚を奮起せしめ、もつて新日本の発足に参加させることか、恩赦法の精神にも合致し、また祖国の再建発展にも寄與するゆえんと深く信ずるものであります。
この意味において、恩赦の範囲については、占領時代の法律の改廃に伴うものに限らず、各種選挙法違反、各種経済統制法違反、その他の刑法犯の違反者をも、でき得る限り広範囲に赦免するとともに、なおこの恩典に浴し得ない者に対しては減刑の措置を講じ、また公民権停止の君については全面的に復権を行うことが適当であると信ずるものであります。
これ本案を提出いたしたゆえんであります。こいねがわくは満堂の諸君の御賛成を仰ぎたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/5
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006・林讓治
○議長(林讓治君) 討論の通告があります。これを許します。中村又一君。
〔中村又一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/6
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007・中村又一
○中村又一君 私は、ただいま提案説明のありましたる恩赦に関する決議に対しまして、各派を代表いたしまして、賛成の趣旨を申し述べる次第であります。(拍手)
恩赦は、申し上ぐるまでもなく行政の一つであります。司法行政権の一つであります。すなわち、国家が犯罪者の利益のために刑事訴訟権または有罪判決権あるいは刑罰執行権を放棄する行政作用でありまして、古今東西を通じて古い歴史を持つ制度であります。
明治維新に際しましては、明治元年三月、朝敵を除くのほか、すべての罪に大赦が行われておるのであります。大正元年九月には、勅令をもつて、大赦は判決言い渡しの前後によらず、特赦、減刑、復権は判決言い渡しの後に限り行うものとする恩赦令によつて、それぞれ施行せられておるのであります。新憲法は、恩赦は内閣が大赦、特赦、減刑、刑の執行免除及び復権を決定することと定め、恩赦法によつて行うものであります。
顧みまするに、昭和二十六年十二月末現在で、全国の刑務所、拘置所または少年刑務所におる在監者は九万二千五百三十七名であり、このうち死刑確定者は八十一名おるのであります。このほか仮釈放中の者及び個別上申の特別理由該当者などを加えますると推定三十万人と申しておりますが、これらの人々がこの恩典にことごとく浴せなければならぬと存ずるのであります。(拍手)
近来、社会公益を極度に刺激する残虐な犯罪や、悪質なる通貨偽造犯のごときは減刑されないのが慣例でありましたが、前の法務総裁は、国会におきまして、講和恩赦はできるだけ広範囲に行いたいと言明されております。現法務総裁の木村大臣の人柄にも考えまして、あるいは今回は強殺人犯にも恩典は及ぶのではなかろうかと私は考えております。前述したことく、恩赦も一つの政治である以上、この機会におきまして広く恩赦を断行せられ、かくしてこの人たちがあたたかい社会への復帰を見まして、それが自発的の奮起と相なり、新生祖国への愛情とも相なりまして、言行見るべきものがあるであろうことを信じて疑わないのであります。
恩赦の理由を簡單に三つ申し上げておきまするが、一つは法令の画一性と具体的事件の処理との矛盾を調整するということであります。
それから第二は、刑罰に処した後の事情の変化であります。たとえば経済統制違反の罪のごとき、自由経済と相なりまして、行為はすでに違法ではなくなつた現在におきましても、物価統制法有効期間中に行われましたる行為に対しましては、いつまでも刑務所に拘禁し続けられたり、裁判は係属せられておるというような状況は、不合理も最もはなはだしいと申し上げなければならないのてございます。かくのごとくして、決定犯のごときにおきましては、ことにこの恩赦の場合に考慮考膚研究を拂われることが当然だということを私は申し上げておきたいのであります。(拍手)
第三に、恩赦は国家的な行事の際に意義を持つ記念として行われるのが常であるのであります。すなわち、今回わが日本が独立国と相なりまして、新しい再出発をしようとするときにあたりまして、いつまでも戰時中あるいは敗戰後の悪夢を思い出すという必要はないのてございまして、国民の一人々々が心を一つにしまして、わが国の将来に希望を託して祖国再建の事業に当ろうとするとき、われわれは、いつまでも同胞の過去のあやまちをとがめ立てする必要はなかろうと思うのであります。(拍手)これはまさに国民の一致した感情であり、この心情をくみとつた政治こそ、われわれの求める民主政治の理想でなければならぬと確信するのてございます。(拍手)
私は、以上の見地に立ちまして、恩赦の実現をいかなる範囲に及ぼすかを考えまするときに、独立日本の発足こそは過去の罪を国民のすべてのあやまちに通ずるものとの観念のもとにおきまして、広く実害なき範囲に押し広げ、画期的な効果をあげることに努むべきことを求めてやまないものであります。よつて私は、本決議案に対し、現政府の善政を期待いたしながら、満腔の賛意を表する次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/7
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008・林讓治
○議長(林讓治君) これにて訂論は終局いたしました。
採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/8
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009・林讓治
○議長(林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて本条は可決いたしました。(拍手)
この際木村法務総裁から発言を求められております。これを許します。法務総裁木村篤太郎君。
〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/9
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010・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 講和條約の発効と同時に、日本国は真に独立国家として国際社会に参加することができることに相なる次第であります。まことに国家の大慶事と申さなければなりません。この大慶事に際しまして、われわれ日本国民は、この喜びをわかちたいと考えております。従いまして、ただいまの決議案の御趣旨をよく体得いたしまして、被疑者、被告人、すでに刑の言い渡しを受けた者に如しましても、この喜びをわかつべく、恩赦法の精神に基きまして、できる限りの広範囲におきましてこの恩赦をやる考えでございます。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/10
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011・林讓治
○議長(林讓治君) 日程第一、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く農林関係諸命令の措置に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員会理事遠藤三郎君。
〔遠藤三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/11
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012・遠藤三郎
○遠藤三郎君 ただいま議題となりました、内閣提出、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く農林関係諸命令の措置に関する法律案につきまして、農林委員会における審議の経過並びに結果の報告をいたします。
御承知のごとく、昨昭和二十六年九月、わが国と連合国との間に平和條約が締結されたのでありますか、平和條約の効力の発生にあたりましては、昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件を廃止する必要がございますので、政府は、この勅令に基く命令につき、これが改廃等の措置を講ずることといたしたのであります。農林省におきましては、この方針に基きまして検討を加えました結果、肥料配給公団令中、清算並びに同公団令失効の日までになした行為に対する罰則に関する規定を存続させ、また食糧確保のための臨時措置に関する政令を廃止する必要があると認め、ここに本法律案が提出されたのであります。
本法律案は、一月二十二日、本委員会に付託され、二月十三日政府より提案理由の説明を聞きました後、質疑を行いましたところ、共産党竹村委員より、肥料配給公団の清算に関し簡單な質問がございました。本法律案は二條からなる簡單なもので、趣旨は明瞭であります。また、これが具体的内容となつております肥料配給公団は、すでに昭和二十五年七月三十一日廃止され、現在なお清算過程にありますので、清算並びに同公田令失効後の罰則の適用については、今後も存続させることはもとより当然の措置と考えられるのであります。また食糧確保のための臨時措置に関する政令の廃止に関しましては、政令第三百十五号政府に売り渡すべき昭和二十六年産米穀に関する政令中に必要な手続規定があり、また現在の食糧事情より見て、このポツダム政令の実体規定を、もはや必要としません。従いまして、本法律案には各委員とも異議がございませんでした。
次いで、翌十四日、討論を省略し、採決いたしましたるところ、全会一致をもつて政府原案の通り可決すべきものと議決いたしました。
以上御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/12
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013・林讓治
○議長(林讓治君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/13
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014・林讓治
○議長(林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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015・林讓治
○議長(林讓治君) 日程第二、開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長佐藤重遠君。
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〔佐藤重遠君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/15
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016・佐藤重遠
○佐藤重遠君 ただいま議題となりました、開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法律案は、開拓者資金融通特別会計における農地の開拓者に対する貸付資金として、昭和二十七年度において一般会計より十五億三千百二十一万円を同会計に繰入れようとするものでありまして、これにより新規入植七千戸、二十六年度入植六千五百戸、二十五年度入植一万戸に対し営農資金を貸し付けるほか、有畜農業促進のための特別貸付を行うことを予定いたしております。
当委員会におきましては、去る二月五日、政府当局より提案理由の説明を聴取し、開拓政策、開拓地の接収に刻する補償の問題等をめぐり、数日にわたつて慎重審議を重ねましたか、その詳細につきましては速記録に譲りたいと存じます。
次いで、十九日質疑を打切り、討論に入りましたところ、早稲田柳右エ門君は改進党を代表して、食糧政策及び農村対策の見地から、さらに積極的な予算措置を議して開拓事業の推進をはかられたいとの強い希望を付して本案に賛成され、松尾トシ子君は社会党を代表して、警察予備隊の演習地、駐留軍の軍用地等に充てるための開拓地の農牧は原則としてこれを行わないこととし、万やむを得ざる場合においても、開拓者の窮状にかんがみ十分なる補償を與えることを條件として本案に賛成され、また三宅則養君は自由党を代表して本案に賛成の旨討論されました。
続いて採決の結果、起立総員をもつて本案は原案の捕り可決いたしました。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/16
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017・林讓治
○議長(林讓治君) 採決いたします。本案は委員長報告の遜り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/17
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018・林讓治
○議長(林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/18
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019・林讓治
○議員(林讓治君) 日程第三、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く特別調達庁関係諸命令の廃止に関する法律案、日程第四、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く建設省関係命令の措置に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員長松本一郎君。
〔松本一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/19
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020・松本一郎
○松本一郎君 ただいま議題となりました、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く特別調達庁関係諸命令の廃止に関する法律案について、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法案は、去る一月二十二日、本委員会に付託され、一月二十人目より四回にわたりまして委員会を開催し、愼重に審議いたしました。
政府側の説明によりますれば、特別調達庁関係のポツダム勅令である要求物資使用収用令及び土地工作物使用令は、連合軍最高司令官の要求に基いて日本政府か物資並びに土地及び工作物を提供する義務を果すために制定されたものである関係上、平和條約の発効後はこれを廃止することが妥当である。
〔議長退席、副議長着席〕
但し、占領軍は篠竹の効力発生後なお九十日間は日本に滞留し得ることになつている関係上、本命令によつて使用しまたは収用した物資並びに土地及び工作物についてはなお九十日間引続き効力を有することにしたとのことでありました。
次に、本案に関し政府当局との間に行われた質疑応答の主要なるものについて申し上げます。
第一に、平和條約発効後もわが国に駐留する外国軍隊の同様な要求に応ずるためにはいかにするかという点でありますが、これに一対しては、行政協定締結の結果明らかにされることではあるか、できる限り独立国家として対等な立場において契約したい旨の答弁がありました。
次に、平和條約の発効後九十日間も政令の効力を存置せず、さらに早い機会に平常的な契約に切りかえられないかという点でありますが、これに対しては、従来といえとも実際に法令を発動した事例はなく、今後も大体同様の見込みであるか、形式上占領軍の滞留期間効力を存置したのみであるとの答弁がございました。
最後に、本件に関連して、占領軍あるいは駐留軍の物資調達は相当施厖大な数量に達すると考えられるか、これがわが国の経済に及ぼす影響を調整するために政府は特別の措置を講しているかという点であります。この点に関しましては、行政協定等により遺憾なきを期したいという答弁でございました。
次いで討論に入り、共産党を代表して池田委員より本案の賛成の旨の意見の開陳があり、採決の結果、全会一致をもつて本案を可決いたしえ次第でございます。
続いて、ただいま議題となりましたポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く建設省関係命令の措置に関する法律案につきまして、建設委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
最初に、本法案の提案理由及び法案の要旨について申し上げます。
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基き昭和二十五年に制定せられた室中写真の利用等に関する政令は、連合国最高司令官から日本政府に貸興された室中写真を建設省地理調査所において保管し、これを戦災復興または経済再建の事業のために必要がある場合においては国もしくは地方公共団体の機関が広く利用てきるように、その保管、利用の手続等について必要な規定を設けているのであります。従いまして、今後におきましても引続きその寒中写真を利用できるように、この政令を法律に切りかえんとするものであります。
本法案は、二月四日、本委員会に付託せられ、十四日より質疑を行つたのてありますか、その詳細は速記録に譲ることといたし、次にその要点のみを申し上げることといたします。すなわち、本法案を通覧するに、その目的がわが国の経済再建のために空中写真を広く利用せしむるためのものとしては、利用の手続、制限あるいは保管の責任等の規定等はあまりにも主体性のないものであるのみならず、ことに第十七條の罰則の規定等は過酷に過ぎるものではないかとの質問に対しましては、これらの室中写真は連合国最高司令官から日本国政府に貸興された貴重なる資料であり、現在建設省地理調査所において責任をもつて保管しているのであつて、これを一般に利用させるために必要な使用、保管等の手続を明記したにすぎないものであつて、この手続と條件に合致するものに対してはいつても利用せしめ得るものである、また第十七條の規定は、その保管の責任を明確にするための最小の罰則であると思う、しかしながら、本法案全般については、出万全独立後においてはでき得る限り近い機会においてこれを改正し、自主性を持たせたいとの答弁かありました。
かくして、十九日討論に入りましたところ、改進党を代表して村瀬宣親君、日本社会党を代表して前田榮之助君より、それぞれ、これらの空中写真はきわめて貴重なるものであり、現段階においては相当複雑な手続はあつてもこれを利用せねばならぬが、第十七條のごとき規定が存続することは独立国民としてまことに遺憾であるから、完全独立後においては自主的に保管できるように改正すべしとの條件を付して賛成の旨を、次いで共産党を代表して池田峯雄君より、日本社会党第二十三控室を代表して田中織之進君より、それぞれ、本法案のごとく占領中の政令をそのまま独立後においても国内法として存続せしめることは遺憾であるとして反対の旨の討論でありました。
次いで採決に入り、多数をもつて原案通り可決いたした次第であります。
以上、きわめて簡単に御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/20
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021・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。池田峯雄君。
〔池田峯雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/21
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022・池田峯雄
○池田峯雄君 私は、日本共産党を代表いたしまして、ただいま提案された二つの法律案につき、第一の法律案については賛成、第二の法律案については反対の討論をしようとする者であります。
第一の法律である、ポ宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く特別調達庁関係諸命令の廃止に関する法律案、この諸命令というのは、占領軍の必要とする物資、建物、土地、これを自由に日本国民から没収徴発することができるという命令であります。この命令のために、今日まで日本国民は莫大な土地、建物を占領軍から侵攻あるいは徴発され、非常な苦悩をなめさせられていたのであります。政府の答弁によりますと、直接このポツダム勅令が発動されたことはいま、一件もないのだというような答弁をしております。そうして、あくまでも自由契約に基いていたのた、こういう答弁でございまするが、しかしながら、その自由契約というのはあくまでも形式でありまして、もし一たびその調達に応じない場合にはこのポツダム勅令を発動するのだという脅迫的な役割を完全に果して来たのであります。つまり、間接的には強力かつ有効にこの勅令が発動していたのでありまして、これをなくするということは、これは共産党として反対する理由は何もございませんが、しかしながら、政府はこれを決して完全になくそうとしておるのではございません。新たに法案の準備をしておるのであります。これは新聞の報ずるところによすましても、土地収用法を改悪いたしまして、この土地収用法の中に、米軍の基地のために使用する農地やその他を強権をもつて収用することができるというような條項を入れようとしておるのであります。
私は、ただいま提案されたこの法案には賛成ではありますけれども、再びこの法案と同じような、そういう勅令と同じような、強力な権限をもつて日本国民に耐えがたき負担を負わすような、そういう立法措置に対しましては絶対反対するものであるということを、この際申し上げておきたいと思うのてあります。
次に、第二の法案である、ポ宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く建設省関係命令の措置に関する法律案でありますが、この建設省関係命令というのは、占領軍が日本の国土を上空から撮影いたしました写真の原板を地理調査所に貸し與えまして、地理調査所はこれを複製いたしまして、この複製いたしました写真はこれを日本の建設関係に利用させるというような措置でありますが、この空中写真というのは占領軍から貸與されたということになつております。ところが、実際には原板を貸與されたのでありまして、これを複製する場合には、日本の金で、日本の印画紙で、日本の薬液で複製したものであります。ところが、この複製した写真が依然として貸與されたということになつておるのであります。そうして、複製した写真につき巌重なるひもつきが行われておるのであります。原板は借りたものでありますけれども、複製したものも借りたものであるというりくつは、どこをついても出て参りません。まつたくこれは無形のものを貸與されたということになつておるのであります。つまり、その複製された写真には日本の国土が載つておる。この日本の国土か載つておるというまつたく無形の写真か、これが貸與されたということになつておるのでありまして、その論理を突き詰めて行きますと、日本の国土をアメリカから借りておるのだというような結論に達するのであります。
しかも、この写真は何人も複製することがてきないということになつておる。もしこの規定を犯すならば、一年以下の懲役、三万円以下の罰金だというのであります。何でこんなばかなことをするのだということを地理調査所長に質問いたしましたところが、彼がいわく、これは金がかかるからである、あるいはまた自由に復製させると狂いを生ずるのだ、これだけなのであります。金がかかるからといつて、それは複製する者の自由であります。しかるに、金をかけて複製して一年以下の懲役に処せられる、こういうことは、これは答弁でも何でもございません。まつたく国会議員を満着しているといわなければなりません。あるいはまた狂いを生ずるなどといつておりますけれども、空中写真の複製をやりまして、狂いを生じないで撮影できるという技術は日本にもございます。決して地理調査所の独占ではございません。
そういうように答弁しておりますが、実際にはこれは明らかに軍事的な意味を持つているからてあります。日本上空から撮影した写真、その写真にアメリカの軍事基地や電波監視所や、あるいは飛行基地や、軍港や、こういうものがあるから、だから絶対に秘密にしなければならないのだという、いわゆる軍機保護法の意味を持つているからてあります。でありますから、ただいま軍法会議に処せられておりまする日本共産党員の飯田七三氏その他の人たちの事件を見ましても、あの人たちが日本の地図を持つておつた、日本の地図をまん中に置いて相談していたというだけの事件をもつて、警官数百名を動員してこれを逮捕しているのではないか。この地図はどこから出たのたといつて、地理調査所を何百人の警官が家宅捜索しているじやないか。
こういうふうに、われわれは今や空中写真ばかりてはない、一枚の日本の国土の地図をすら自由に見ることができないというような不自由な状態になつているのだ。(拍手)われわれは、かような日本国民を外国の奴隷にして、日本の国土も自由に見ることがてきないような、こういつたようなポ勅令を存続するという法案に対しまして徹底的に反対するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/22
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023・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
まず日程第三につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/23
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024・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
次に日程第四につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/24
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025・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/25
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026・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、第十二回国会内閣提出、参議院送付、財政法、会計法等の財政関係法律の一部を改正する等の法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/26
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027・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/27
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028・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
財政法、会計法等の財政関係法律の一部を改正する等の法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長佐藤重遠君。
〔佐藤重遠君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/28
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029・佐藤重遠
○佐藤重遠君 ただいま議題となりました財政法、会計法等の財政関係法律の一部を改正する等の法律案を大蔵委員会において審議いたしました、その審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本法律案は、去る第十二国会において本院を通過し、爾来参議院において継続審議中であつたものでありますが、今回同院において修正議決の上本院に送付され、去る十八日、本委員会に付託されたものでありまして、修正されたおもなる点は、大要次の三点であります。すなわち第一点は、原案ては継続費の年限を定めていなかつたのを、修正案では、その会計毎度以降五箇年以内とし、但し予算をもつて国会の議決を経てさらにその年限を延長できることとしたこと、第二点は、国会が継続費成立後の会計年度の予算審議に当つてその継続費を審議できることとしたこと。第三点は、右の改正は昭和二十七年度からこれを適用することといたしたことであります。
本委員会におきましては、昨二十日、提案理由の説明を省略の上、右の修正部分について便宜政府当局より詳細なる説明を聴取いたしました後質疑を行つたのでありますが、その詳細につきましては速記録に護ることといたします。
かくて、同日質疑を打切り、本日討論に入りましたところ、川島金次君は日本社会党を代表して、継続費については憲法上若干の疑義であり、また継続費の内容か広範囲で、金額上の制限もなく、万全のものとは思われないが、現段階における諸般の事情にかんがみ原則的に賛成の旨を述べられ、久保田鶴松君は日本社会党二十三控室を代表して、継続費が再軍備に利用せられることのないことを條件として賛意を表せられ、また三宅則義君及び宮腰喜助君は、それぞれ自由党及び改進党を代表して、適切な改正であることを理由として本案に賛成の旨討論せられました。
続いて採決の結果、起立多数をもつて本案は原案の通り可決いたした次第であります。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/29
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030・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。高田富之君。
〔高田富之君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/30
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031・高田富之
○高田富之君 私は、日本共産党を代表いたしまして、ただいま議題になりました財政法、会計法等の財政関係法律の一部を改正する等の法律案につきまして反対の意を表明するものであります。
申し上げるまでもなく、財政法は予算編成の基準たるべき法律であります。現在、わが国の予算の性格が、まつたく特定外国の意図に沿う、自主性のない予算でありますことは、しばしば本議場におきまして明らかにされた通りであります。この自主性を失いましたわが国の予算を運営し、そして現在何がもくろまれているかということにつきましては、現に進められております予算委員会において、これまたきわめて明白にされつつある。すなわち、再軍備のため、新たなる戦争の準備のためということが、今回はきわめて明白にされているのであります。こういうときに、ここに提案されました財政法の改正が何を意図するものであるかということは、これまた論ずるまてもなく明らかなことであります。
この改正の一番重要な点をなしておりますのは、継続費を認めるということになつておる点でありまして、参議院の修正案におきましても、この点は修正されておりません。継続費は依然として認められておりまして、たた数年度にわたつてというところが、五年以内というふうに修正になつているわけでありまして、本質的には何らの修正になつておらないのであります。
元来、わが国の新憲法におきまして継続費が認められておらないということは、かつてわが国かあの大戦争をやりましたときの旧憲法の継続費の規定に基き軍事予算、戦争準備の予算というものが公然と組まれまして、これによつて実際上がかる侵略政策が財政的に可能となり、準備されえことは明らかであつて、これを許さないという趣旨によつて、新憲法におきましては継続費というものが認められておらないものであるということは、非常に明瞭なところであります。それを今回改めて継続費を認めるということになりましたのは、この意図というものはまつたく明白でありまして、今審議中の予算が再軍備の予算ではないというふうなことを言つているのは、日本国民八千万のうちて、またアメリカその他全世界を通じまして、きわめて少数の、自由党の何百人かの議員だけなのでありますから、これほど明瞭な性格の予算が出されておりますときに、この継続費が平和的なものである、戦争に関係のない、軍備に関係のないものであるなとということは、まつたくもつて詭弁もはなはだしいことてあつて、国民を納得せしむることは、とうていできないのであります。
大体憲法違反ということにつきましては、委員会等におきましても相当各委員から発言がありまして、明らかにされたのでありますけれども、憲法違反の問題は、単なるこの法律に限らず、根本におきまして軍事予算を編成するということ自体がすでに憲法違反てあり、またその他各般の民主主義の原則、平和の原則というものに違反した諸法令、諸施策が公然と行われている現在におきましては、憲法違反を論議すること自体が、またかというくらいに、もうほとんど普通になつてしまつておる。
しかしながら、これは非常に重大なことであつて、こういうふうに公然と憲法違反がやられ、そうしてあたかもそれが違反しないかのごとき詭弁か通用するというような事態は許せないことでありあすが、もともと現政府のやつていることは、これ一つの憲法違反論をやりましても意味がない。と申しますのは、大体現在ポツダム宣言、この国際的な大宣言であり、国際協約である基本的な国際規範を公然と無視し、公然とこれを蹂躙しつつ強引な外交を推し進めつつある軍国主義的な国際勢力、この国際勢力の最も忠実なる下僕としての政治をやつているのが、それを使命とするのが現在の日本の政府でありますから、この政府は、憲法に違反することなくしては自己の使命を果すことができないのであります。こういうふうに公然せる、まつたく恥知らずの、戦争の準備のための財政法の改正、これが通過すれば、今度は公然たる戦時予算というものも現われるということは明らかに予想しなければならぬ。
私は、かかる意味におきまして、本法案に絶対にわが党は賛成するものでないことを、この機会に明らかにしておく次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/31
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032・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/32
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033・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午後三時散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X01319520221/33
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