1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年四月十日(木曜日)
議事日程 第二十九号
午後一時開議
第一 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く連合国財産及びドイツ財産関係諸命令の措置に関する法律案(内閣提出、参議院回付)
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●本日の会議に付た事件
日程第一 ポツダムを宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く連合国財産及びドイツ財産関係諸命令の措置に関する法律案(内閣提出、参議院回付)
破壊活動防止法案反対りためのゼネストに関する緊急質問(森山欽司君、提出)
いわゆる破壞活動防止法案に対する抗議ストに関する緊急質問(土井直作君提出)
午後二時五十一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/0
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001・林讓治
○議長(林讓治君) これより会議を開きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/1
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002・林讓治
○議長(林讓治君) 採決いたします。上本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/2
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003・林讓治
○議長(林讓治君) 起立総員。よつて参議院の修正に同意するに決しました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/3
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004・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、森山欽司君提出、破壞活動防止法案反対のためのゼネストに関する緊急質問、及び土井直作君提出、いわゆる破壊活動防止法案に対する抗議ストに関する緊急質問を逐次許可せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/4
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005・林讓治
○議長(林讓治君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/5
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006・林讓治
○議長(林讓治君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
破壊活動防止法案反対のためのゼネストに関する緊急質問を許可いたします。森山欽司君。
〔森山欽司君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/6
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007・森山欽司
○森山欽司君 私は、ここに破壊活動防止法案反対のためのゼネストに関する緊急質問を試み、政府の所見を求めるものであります。
去る三月三十一日、労働法規改悪反対闘争委員会及び日本労働組合総評議会は、破壊活動防止法案等いわゆる労働運動彈圧法案阻止のため、一齊にストライキ権の発動を決議したのであります。これは明らかに、社会通念から言つてゼネラル・ストライキであります。
破壊活動防止法案については、一見して、かつて治安維持法の経験を有する日本国民は、かかる立法が講和後における政治情勢上やむを得ざる一面を認めつつも、他面政治的自由を不当に束縛する濫用に陷ることを危惧していることは、否定することができないのであります。今後国会に曲いて十分批判し、論議を盡すことが民主政治のルールであることは申すまでもないのであります。労働組合は、初めからこの種法案に注視し、また終始反対の態度を示して来たものでありますが、かかる反対は、われわれの立場からも、必ずしも理解できないことはないのであります。しかし、今日総評の主導権を握る人たちの考え方が、一応共産党とは一線を画すると呼号しながら、特にいわゆる平和闘争に関する言動が、表面上暴力主義を排し、議会制度を認める以外は、あまりにも共産党のそれと軌を一にする点が多く、その性格からして、この執拗にしてかつ神経質な反対は、むしろ無理からぬものがあるとは推察するのであります。(拍手)
総評が、最近では事実上全労連系組合と共同歩調をとり、また産別系組合といえども、單位組合として参加を容認し、広汎な地域スト集団を結集して春季攻勢の集約化をはかろうとしており、たとえば、その一翼として、三月二十日、京都における総評主催彈圧法粉碎総決起大会が行われたのでありますが、その結果は、かの騒擾事件を惹起したのであります。これは、左派社会党がイニシアチーヴをとり、労働戦線の統一をしようとした、せつかくの目的が、日共の糸を引く民統系労組のために完全に乘つ取られたわけで、これは、ただに、京都総評の弱体、無統制ぶりを暴露するのみならず、また今日の総評本部が、その理論的な立場と戰略論において共産党に近似する当然の結果ともいえるのであります。すなわち、現在総評の行き方は、日共の割込み戦術に好個の機会と口実を與えるばかりでなく、日共の大衆路線の具体的な支持をなす危險があるといわれるゆえんであります。
このような、最近の総評の政治的偏向と危險性について、労働大臣は、これを健全なる組合運動の発展と考えられるかどうか、また法務総裁は、このような危險性を、治安維持の観点からいかに考えられるかを伺いたいのであります。
この破壞活動防止法案反対を中心として、いわゆる彈圧法規反対のために労働組合がゼネストをやる、ストライキをもつて抗議する、このやり方については、いわゆる彈圧法規の内容そのものとは、おのずから別個に考えなければならないと思われます。基幹産業をストツプするということは、国民大衆に対して大きな迷惑を與え、国家の産業活動を阻害するのであります。現在の情勢において、労働組合がこういう方法をとることが、はたして妥当なやり方かどうか。しかも、ゼネストによつて世論を労働組合の味方につけようというようなことを、かりにも現在の総評幹部の諸君が考えておるとしたならば、これほど独善的な考えはないのであります。
また、特に左派の社会党の諸君が、こぞつてこれを支持し、激励されておるならば、これは完全に労働組合に対して仰合していると言つても過言ではないのであります。労働者の政党と称する社会党の諸君は、参労働組合に対して何ゆえこの法案について国会内で十分論議を盡してからにせよと忠告しないのか。今日の状況では、組合が先に立つて、社会党の諸君がうしろからくつついて行く。これでは、総評左派幹部諸君の思い上つた政治的偏向が是正されるはずはないのであります。従つて、社会党の諸君は、労働組合を今日ここに追いやつたのは單に政府の責任というようなことを言われますが、組合をしてこういう効果のないゼネスト騒ぎに追いやつたのは、特に熱海盗泉につかつた社会党左派の諸君の、組合迎合主義の現われではないかと思われるのであります。(拍手)
一方、現実に政治を担当している吉田内閣と自由党はどうか。労働組合が、国会という国権の最高機関において論議を盡す前に、ただちにゼネストに入る、こういうやり方が、たとい幹部によつて上から指令されたものであつても、下部の一般組合員がとにかくついている。これは、そのことの当否は別といたしまして、一応今回のゼネストにかなりの大衆的基盤があるというごとの証拠であります。これは、自由党が絶対多数を占める国会に対する不信であります。多数党の上にあぐらをかく吉田内閣が、国民の意思を十分に聞かない。そこに、国会なんかだめだ、抗議ストでもやれということが、すなおに組合員に受入れられるだけの素地ができております。これば非常に重大な問題であります。
大衆が議会政治に失望したとき、そこにフアシズムか共産化かの道が開かれて来る。こういう方向ができてから、いくら破壞活動防止法案をつくつてもむだであります。現在まで、自由党は、国会こそ国家最高の機関として、国民意思の現われであるとしながら、組閣以来、多くの反民主主義政治を行つております。近くは今回の行政協定、本年度予算の防衛関係費、台湾国民政府に関する吉田書簡等々、何ら国会を通じ国民の意思を聞くことなく決定しております。財政経済政策についても、世界各国は厳格な計画経済を施行しているにかかわらず、吉田内閣は無方針な自由放任の経済政策をとり、大蔵大臣の、貧乏人は麦を食えという言葉や、安本長官の、パンにみそをつけろというような驚くべき放言となり、最近の産業界の沈滞、不景気は、勤労する者の生活不安を、さらに深刻ならしめておるのであります。従つて今回のゼネストに至らしめた大半の責任は、まさに與党自由党、政府吉田内閣が、その不明を天下に謝すべき事態盲あるといわなければならないのであります。(拍手)
かかる吉田内閣にして、その事態の収拾に幾ばくの能力ありやは、いささか疑問を抱かざるを得なかつたのでありますが、おそまきながら労働組合幹部と懇談するという方針が四月一日の閣議できめられ、四月五日それが行われたそうでありますが、一体その内容はどうであつたか。また昨九日、労闘代表が官房長官とさらに会見したと新聞に伝えられておりますが、事態は一体どう進展したか。労働大臣の報告を要求いたします。
そもそも事態の収拾のための政府と組合側との意思交換は、国民大衆のために必ずしも否定すべきことではないかもしれないのでありますが、しかし、もつと以前に労働組合幹部との懇談を書すべき機会があつたはずである。一体、かつて、かかる事態に至らしめないように、政府が国民に対し盡すべき手段を盡したことがあるのかどうか。もし、しなかつたとすれば、かかる事態に立ち至つて後、あわてて労働組合幹部に説明する。国会にもまだ十分説明していないものを組合に説明し、組合から撤回せよと要求されて、目を白黒させておる。その場その場を切り抜けさえずればいいというような、いいかげんな労働政策が明らかにうかがわれるのであります。
一体、今回の会見の意図がどこにあつたか。労働大臣並びに法務総裁にお伺いしたいと思うのであります。すなわち、組合との懇談の結果によつては政府原案を修正または撤回する用意があつたのかどうか。もしなかつたとすれば、政府は單にゼスチユアを示すにとどまつたので品はないが。しかも、この情勢下において、四月八日の読売新聞紙上には、内閣総理大臣に争議行為のさしとめ命令権を與えるという一種のゼネスト禁止を含む労働法規の改正案が、第一面のトップ記事として伝えられているのであります。この事実は労働大臣も認めておられるそうでありますが、現在真に今回のゼネスを防ごうという誠意があるならば、組合の反対運動に油を注ぐようなこのやり方は、あまりにも不謹愼であり、労働大臣の政治的感覚を疑わざるを得ないのであります。これに対し、労働大臣は責任を痛感しないか、その所見は一体どうであるかを、お伺いしたいと思います。
いずれにしても、二回にわたる話合いもかいなく、はたせるかな、今日においても、ゼネストは総評の既定方針通り行われようとしており、今や新聞紙上伝えられた四月一日の閣議のとりきめはまさしくエープリル・フールとなつたのであります。この点において、吉田自由党内閣も、なかなかユーモアを解される風流人が多いと見えるのであります。
さて、今回のゼネストについては第一波は明後四月十二日、第二波は四月十八日、さらに第三波以降が予定されており、有力労働組合がそれに名を連ね、新聞報道もゼネストの規模を大きく取扱つておるけれども、各組合の特殊事情や、今回のゼネストの合法性ないしは掛声だけに終つた昨秋の総評の非常事態宣言の実例にかんがみ、過小評価はもとより禁物であるけれども、過大評価の必要もないと思うのであります。労働大臣は、このゼネストの実質的規模をいかなる程度に見ておられるか、今日までの各組合別の状況判断をお伺いしたいと思います。
その規模の大小は別として、とにかく総評は、破壞活動防止法案が撤回されぬ限り今回のゼネメトを決行すると言つているのでありますが、この際あらためて、現在において政府は政府原案の国会上程を差控える意思があるのかどうかをお伺いしたい。労働組合の一部には、組合活動の抑制をしないという保障が具体的に盛られた修正が行われるならば、必ずしもこれを否定しないという意向の片鱗が見られるのでありますが、政府に、かかる要望に対する具体的な形の修正の用意はないか。あるいは、その用意はなくとも、政府と一体をなす與党及びこれに対する野党との話合いいかんによつては原案をそのまま固執しないかどうか。いずれにしても、この法案を提出するとすれば、いつ提出するか。これらの点を、所管大臣たる法務総裁のみならず、労働大臣からも明確にしていただきたいと思います。
なお、ゼネストが不幸にして予定通り現実に行われた場合、これを合法的なものと見るかどうかの問題があるのであります。いまだ講和発効以前で、形式的にはポツダム政令第三百二十五号が適用されることもあると思われるのでありますが、今回のゼネストに、これがはたして適用されるのかどうか、労働大臣または法務総裁の見解を承りたい。
講和発効後に、この種ゼネストが行割れた場合、かつて政令諮問委員会ですらも、ゼネストその他国民経済を破壞するおそれのある争議行為については、ポツダム政令第三百二十五号にかわるものとして、別に治安上の立場から、これを制限または禁止し得る法律を新たに制定する必要があるという見解を発表しておるのであつて、何らの立法措置がない場合にも、労働者の団体行動権を保障する日本国憲法第二十八條に対して、いわゆる公共の福祉の立場から制限を加えることは、はたしてできるのかどうか。この点を労働大臣及び法務総裁から明らかにしていただきたい。さらに、伝えられる労働関係法規に関する改正措置要綱をもつてゼネスト禁止法にかえ、いわゆるゼネスト禁止法は断念したものであるかどうか。かかる労働法の改正は、一体いつ国会に提出遣れるのか。労働大臣及び法務総裁の所見を承りたいと思います。
従つて、今回のゼネストについて問題にすべき点は、次に政治ストであるかいなかということになるのであります。ところで、今回のストをもつて、新産別のように政治ストだとはつきり認めるものもあるが、総評自体は、これを権利鬪争として、極力政治ストの印象を避けるように努めているのであります。今回のストは、破壞活動防止法案等、いわゆる労働運動彈圧法案阻止のためとうたつておるのでありますが、去る一月二十三日の総評幹事会で審議決定を見た春季鬪争の展望と行動計画によれば、春季鬪争のねらいどころは、再軍備反対闘争に集約することを前提として、彈圧法規反対をかざして鬪うことにあるとあり、鬪争の目的は再軍備反対に集約され、いわゆる彈圧法規の反対はその手段として取上げられているにすぎないのであります。しからば、今回のゼネストの政治的意図はあまりにも明白であります。
労働大臣は、新聞報道によれば、今回のストが違法であると言明されたそうでありますが、もし違法であるとすれば、政治ストであるから違法であるというのか、また今回のストを政治ストとするならば、いわゆる弾圧法規反対のみをもつてその根拠とするのか、総評の春季鬪争方針をも含めて考慮しているのか、労働大臣の所見を承りたいと存じます。さらに、この際個々の單組において、労働協約に平和條項などがある場合は、そこに生ずる労働協約違反の問題ないしは会社から業務命令が出た場合の就業規則違反の問題については一体いかに考えるか、念のためにお伺いしたいと思います。
すでに昨年の講和反対スト問題の際に、八月二十九日、労働省は当局談として、かかる行為は、労働組合法上の正当な行為として法の保護を受けることができないと警告し、また昨年十一月、日経連では、はつきわした見解を発表している。さらに新聞報道によれば、現に石炭鉱業連盟は、すでに傘下の各会社を通じて、このストが行われた場合には組合幹部を解雇すると通告したとのことで、この際労働大臣に、かかる労働法士の保護の剥奪を認めるかどうか、あらためて、はつきりした御返答をお伺いしたい。もしごれを認め、解顧等の事態が生じた場合、ごれに対して強力な彈圧反対鬪争を行うと言つておりますが、政府はこれにいかに対処する考えであるか、労働大臣及び法務総裁の所見を承りたい。また、今回のゼネストにおいて、デモ行進あるいは職場大会その他の行動が行われるであろうが、現在政府は、これに対し京都事件の二の舞を繰返すことのないような万全の治安対策がはたしてとられているのかどうか、法務総裁り具体的な説明を求めたいと思います。
最後に、今回の場合の実際のストライキの内容は、組合側の宣伝あるいは新聞の論調等から見れば、かなり大規模のようでありますが、そこには、かつての二・一ストのときのような條件は存在せず、そのような深刻さは見られない。鉱山あたりでは、一日会社を休む。十二日ごろだと、もうそろそろ山でも桜が咲き始めますから、お花見に行つてしまう。そこで、お花見ストだということもできるのであります。このことは、社会党や共産党の議員諸君の今日の議場の出席ぶりをみてもよくわかる。
労働大臣の新聞への談話などにも、形式的にはゼネスト、しかも内容は政治ストでありながら、ストライキの実体は国民生活に大して大きな影響を與える程度のものでないから放任しておく、つまり黙認するという、そこまでははつきり言わなくても、そういうふうな含みが見られます。これについては、私も必ずしも反対ではないのであります。にわとりを裂くに牛刀をもつてする必要はない。ただ問題は、今後どうするかである。こういうことはいくらでもやれるということになれば、この次は、少くともお花見ストではない。
一体、国民生活に影響するかどうかというのは彈圧の口実だといわれる。従つて、今回のストは、かりに黙殺し得るにしても、ゼネスト、政治ストに対する政府の責任ある態度を今ここにおいて明らかにしておかなければ、必ず失敗します。かんじんの労働対策を留守にして、その場のがれの治安対策にばかり血道をあげて、しかも政府が大胆にその態度を表明しなかつたならば、禍根は必ず将来に残るものであるということを、私はあえて警告しておきたいのであります。
いずれにしても、ゼネスト決議の第一波たる十二日を月前に据えたこの貴重な機会は、政府の本院に対する最初の公式的態度表明の機会であわ、私はその誠意ある回答を切に望むものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/7
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008・林讓治
○議長(林讓治君) 引続いて、いわゆる破壞活動防止法案に対する抗議ストに関する緊急質問を許可いたします。土井直作君
〔土井直作君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/8
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009・土井直作
○土井直作君 破壞活動防止法案に関連する抗議ストに対して、私は数点をあげて政府当局に質問を申し上げたいと思うのであります。
近く提出されるであろうといわれておりまするところの破壞活動防止法案に対しましては、全国の労働組合はあげてこれに反対しておるのであります。しかも、この法案の撤回を政府に要求するために、明後十二日、さらに十人目、抗議ストを決行せんとしておるのであります。
私がまず第一にお聞きしたいと思いますることは、一体政府は、この破壞活動防止法案をつくわまする過程におきまして、最初に団体等規正法案を立案計画しのででありまするが、輿論の猛烈なる反対を受けまして、これを撤回せざるを得なかつたのであります。引続いで、これにかわるべき特別保安法案を立案計画したのでありまするが、これまた社会輿論の反対にあいまして、これを豹変して、新たに破壞活動防止法案という名称によりまして、これを国会に提出せんとしておるのであります。従来も、これらの法案の提出の期日に対して明確さを欠いておるのでありまするが、一体政府は、いつこれを国会に提出しようとしておるのか、この点についてお伺いしたいのであります。
さらに、この法案を国会に提出する以前におきまして、労働組合に対してその内容を示し、その了解を求めつつあるように承知しておるのであります。これは、われわれから言わしめまするならば、最高の立法機関である国会の権威まつたく無視したものであり、本末転倒もはなはだしいといわねばならないのであります。すなわち、これらの事柄にりきましては、その法案を政府みずからが立案する立場において、これをすみやかに国会に提出し、その審議にかけるべきであるにかかわらず、その法案の一つ一つに対しましてそれぞれ了解を求めておるがごときことは、はなはだ奇怪千万であると思わざるを得ないのであります。
また破壞活動防止法案は、政府がこれをまつたく一方的に立案いたしまして、各界の意見を聞くことに対して、かたくとびらをとざしておるのであります。われわれから言わしめますならば、労働組合が、この法案反対のために、日本経済を非常に困難ならしめるがごとき結果を招致しなければならぬような抗議ストを行うであろうということは、あらかじめ政府として予見されなければならないはずである。少なとも自由党内において、労働行政に対しては練達堪能の士といわれておる吉武氏が労働大臣にたつておるのでありますから、かかる法案が国会に提出される場合において、労働組合はいかなる態度をとるかということぐらいは十分に承知されておるべきである。従つて、われわれから言わしめまするならば、かかる法案を提出する事前において、少くとも関係方面、広く各界の人々を招きまして、愼重に審議すべきであると思うのであるが、それをなし得ないで、あるいは労働組合が労相、法務総裁等に面会を申し込みまするならば、五分とか十分とかいう、きわめて短かい時間を限つて、きわめて官僚的な会見を従来しておるのである。ところが、この法案を提出するということと関連して抗議ストが行われるということで、周章狼狽しましたところの政府当局は、辞を低うし、ひざを屈して、労働団体にその内容を釈明し、了解を得るために汲々としているということは、その醜態を明らかに社会の前に現わしておると申し上げても過言ではないのである。
政府は、今回のストをもつて政治ストと断じておるのでありまするが、われわれから言わしむるならば、必ずしも労働団体としては、いわゆる政権奪取のためにするところのストではないのであります。政権奪取のために行いまするストに対しましては、すでにマ書簡によつてこれが禁止されておりまするし、わが日本社会党といたしましても、そういう政権奪取のためにするゼネストに対しましては断固として反対しておることはいうまでもないのであります。
少くともこの法案は、政府の無能と失政の上から現われて参りまするところの、いわゆる憲法で規定されておる基本的人権あるいは労働権を抑圧しようとする内容を持つておりまするがゆえに、これに対しまして労働組合は、みずからの権利を守るために、政府の暴政に対して抗議ストをせんとしておるのである。少くとも、かくのごとき抗議ストが行われるような結果を招来するがごとき、いわゆる時代感覚のずれが明らかに政府部内にあるということが言い得られるのであります。私は、政府が産業の基本を掌握しておりまする労働組合行政の上におきましては、十分なる対策が講ぜられて行かなければならないと思うのであります。單にこの法案が提出されたからといつてそれによつて労働組合の反撃がやむものでもなければ、またこれによつて破壞行為が停止されるわけではないのであります。言いかえまするならば、われわれは、健全なる労働組合の育成のために、政府みずからが十分なる対策を講じなければならないはずであると思う。
ところが、政府は、さきに労働三法の改正を提唱したり、あるいはまた団観法、保安法等によつて、いたずらに健全なる労働組合を刺激し、あるいは圧迫し、あるいは彈圧するがごとき形を示しておるということは、明らかに労働組合が反撃せざるを得ないという立場を招いたものでありまして、言いかえれば、それ自身が政府みずからの無能を証明しておるにすぎないのであります。
私は、今回のストの規模がいかに大きいかということ、かつての二・一ストライキよりも大きい影響力を與えるであろうということを考えるを得ないのであります。従つて、少くとも政府は十分に時局を認識し、また組合の大勢を明確に把握いたしまして、この法案を撤回する意思があるかないかということについて質問申し上げたいのであります。
私は、言いかえますならば、この法案自身に対しまして政府の意図するところが那辺にあるかということについては必ずしもわからないわけではありませんが、の法案の中に盛り込まれておりまするところのものが、これの運営の任に当りまする行政府の考え方によりまして、国民全体に対してことに労働関係者に対して広汎なる人権蹂躪の内容を含んでおるということを申し上げざるを得ない。その法案自身の持つ内容は、ちようど狂人に刃物を持たせるような結果を招来いたしまして、そして善良なる組合、善良なる国民をして、いたずらにその基本的な人権を破壞するがごとき行為ありとしまするならば、かつての治安維持法と何らかわりがないと思うのであります。政府は、これに対しまして十分なる関心を持ち、以上申し上げました諸点に対しまして、明確なる御答弁をお願い申し上げる次第であります。(拍手)
〔国務大臣吉武惠市君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/9
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010・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 森山さんと土井さんの質問に対してお答えをいたします。
今回の総評の政治的な偏向は健全なる労働組合運動と考えるかという御質問でございますが、私は、総評は健全なる労働組合として成長しつつあるものと考えております。しかしながら、今回の暴力主義的破壞活動防止法案に対し、ストをもつてこれに抗議するとむう態度につきましては、これは健全なる組合のとるべき態度ではないと存じております。(拍手)
次に、去る四月五日、私どもが労鬪と会見をいたしましたてんまつについての御質問でございますが、今回の暴力主義的破壊活動防止法案は、御承知のことく暴力を防止しようという法律でございまして、しかもその暴力は、單なる暴行ではなくして、内乱、騒擾、そして殺人と放火、汽車その他の転覆及び爆発物の取扱い、これを暴力として未然に防ごうとする趣旨であります。従いまして今回総評がこれを誤解をして、ストによつてこれを防止しようというのでございまするから、それは誤解である。われわれは健全なる労働組合をこの法律によつて抑圧する意思はごうもないのであります。(拍手)従いまして、私は法務総裁にお願いして、今回の法律の趣旨をよく組合に徹底させ、その誤解を除こうと努力いたしたのであります。説明によつて組合側も相当理解された点があつたようでございますがいまだ納得をされる域に至りませんことは、はなはだ遺憾に存じておる次第であります。
なお、去る四月八日の読売新聞に労働法に関する改正案が発表されたというお尋ねでございますが、私は決して発表した覚えはございません。目下労働法の改正につきましては構想を練りておる途中でございましたが、不幸にしてその一端が拔かれましたことは、はなはだ遺憾に存ずる次第であります。
なお、今回のゼネストの実質的の規模についてのお尋ねでございますが、新聞にはいろいろ過大に出おるようでございますけれども、そう大規模なものとは存じておりません。現在伝えられるところは、十二日のストは、炭労、あるいは金鉱、あるいは全自動車の一部がストに入るかもしれないというところでございます。
今回のこのストに対して、政令第三百二十五号がいかになるかというお尋ねでございますが、目下まだ占領下でございます。占領下でございまするから、政令三百二十五号はもちろん生きております。しかし、これが今回のストに適用があるかどうかということは、目下のところ考えておりません。
なお、ゼネスト禁止法はどうするのかというお尋ねでございますが、私は、ゼネストであるからごれを禁止するという法律を出すことは、できるだけ差控えたいと思つております。しかし、国家国民の生活を危殆に陷れるような場合において、ごれを放置することは許されません。従いまして、これらにつきましては、合理的な機関によつて合理的に解決するの道を講じたいと考えておる次第であります。
なお、今回のゼネストは違法かどうかというお話でございますが、御承知のことく、争議権は、労働者の労働條件の維持改善のために憲法が保障しているのであります。これを政治目的達成のために行うことは許されるはずはございません。
なお、今回のストに関連して、治安上の対策ありやということでございますが、去る日京都において総評の行いました決起大会において、一部左翼分子が便乘して乱暴をしたこともございまするから、これにつきましては、治安関係とも十分連絡をいたしまして、万遺憾なきを期しておる次第でございます。
なお、土井さんの質問にお答えをいたします。この法案を事前に組合に提示して了解を求めたことはいかぬではないかということでございますが、実はこの法案につきましては、総評等において誤解がございまして、ストを行うかもしらぬということでございましたから、それは誤解に基くものである。われわれは誠意を披瀝し、本法の趣旨を徹底せしめて、できるだけかくのごとき行動に出ないようにというところから、去る町月五日に懇談をした次第でございます。私どもは労働者の正当なる人権を抑圧するつもりは毛頭ございません。
以上お答えをいたします。(拍手)
〔国務大臣木村篤太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/10
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011・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) 森山、土井両君の御質疑に対してお答えいたします。
政府が今回提出せんとする破壞活動防止法案なるものは、いわゆる団体活動による社会活動において最も危險なる行為を防止せんとするものでありまして、決して正常なる組合活動を抑制するという意思を持つておるものでありません。この法案の内容を御審議くださいますれば、十分にその意のあるところは了解が得られるものと確信して疑わないのであります。しかるに、その前においてこの法案の撤回を求められるということは、私はまことに遺憾しごくであると考えております。十分に国会の審議を得て、これを論議さるべきものであると思うのであります。従いまして、近く提案せられまする以上におきましては、私はこの点について十分な御説明を申し上げて、労働者諸君並びに一般国民の了解を得たいど考えておるのであります。しかして、この法案の解釈問題について、組合側において多少疑義の点があるというので会見を求められましたので、私はその誤解を解くために、労働大臣とともに十分な説明をしたのであります。労働組合側においても、われわれの意のあるところを十分に御了解になつて、おそらくそういうようなストに入らないものと確信するのであります。
最後に、万一、もし、かりにストがありまして、そのストを利用して危險分子が破壞活動に入るようなことがありますれば、われわれは法規の照すところによつて、断固としてこれを取締る決意を持つておる、またこれに対処すべき対案を持つておることを、ここに言明いたします。
その他の点については、すでに労働大臣の言われたところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/11
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012・林讓治
○議長(林讓治君) 本日はこれにて散会いたします。
午後三時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X03019520410/12
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