1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月十四日(土曜日)
議事日程 第五十三号
午後一時開議
第一 伊東国際観光温泉文化都市建設法の一部を改正する法律案(遠藤三郎君外九名提出)
第二 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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●本日の会議に付した事件
北海道開発審議会委員の選挙
日程第一 伊東国際観光温泉文化都市建設法の一部を改正する法律案(遠藤三郎君外九名提出)
日程第二 外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)
インドとの平和條約の締結について承認を求めるの件
千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際條約の受諾について承認を求めるの件
地方公営企業法案(内閣提出)
午後三時開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/0
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001・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これより会議を開きます。
この際一言申し上げますが、ただいま駐日インド大使チェトゥール氏が傍聽に来ておられますから、右御報告いたします。(拍手)
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002・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 北海道開発審議会委員の任期満了につき、この際同審議会委員の選挙を行います。
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003・福永健司
○福永健司君 北海道開発審議会委員の選挙については、その手続を省略して議長において指名せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/3
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004・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/4
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005・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。議長は北海道開発審議会委員に苫米地英俊君、玉置信一君、篠田弘作君、椎熊三郎君及び三宅正一君を指名いたします。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/5
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006・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第一、伊東国際観光温泉文化都市建設法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員西村英一君。
〔西村英一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/6
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007・西村英一
○西村英一君 ただいま議題となりました、遠藤三郎君外九名提出、伊東国際観光温泉文化都市建設法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
最初に、本法律案の趣旨について簡單に申し上げます。御承知のように、伊東国際観光温泉文化都市建設法は、第七国会において通過いたし、伊東市の住民の投票によつて確定いたしました、憲法第九十五條による特別法であります。この法律に基いて、伊東市におきましては、国際観光温泉文化都市としてその整備が推進されつつありますが、昨今、伊東市内において鉱物の採掘の出願がひんぴんとして起り、温泉の湧出、その他観光温泉資源の保護の上に重大な悪影響が考慮せられ、本法律の円滑なる施行が憂慮せられるに至つたので、その一部を改正して、市の区域内においては、條例の定めるところにより、鉱物の採掘、土石の採取等、観光温泉資源の保護に著しい影響を及ぼすおそれのある行為を禁止または制限し、違反者に対しては原形復旧等の措置を命ずることができるように、法制的根拠を與えんとするものであります。
本法律案は、去る五月二十六日付託され、建設委員会におきましては、提案者及び政府側として資源庁鉱山局長並びに土地調整委員に対し熱心なる質疑を行い、さらに愼重を期するため、参考人として伊東市長及び地質学者渡辺貫氏を招致し、その意見を聽取いたしました。質疑の内容は、主として鉱業法並びに温泉法と併立して、新たに観光温泉資源保護の見地より本法を制定する必要があるかいなかという点についてでありましたが、その詳細に関しましては、これを速記録に譲ることといたします。
かくて、五月三十日質疑を打切り、討論を省略して採決を行いましたところ、全会一致をもつて原案の通り可決すべきものと決した次第でございます。
右御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/7
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008・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 本案に対しては、多武良哲三君から成規により修正案が提出されております。この際修正案の趣旨弁明を許します。多武良哲三君。
〔多武良哲三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/8
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009・多武良哲三
○多武良哲三君 ただいま議題となりました、提案者多武良哲三、賛成者中村純一君外二十二名にかかわる伊東国際観光温泉文化都市建設法の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案の理由並びにその内容を御説明申し上げます。
まず修正案を朗読いたします。
伊東国際観光温泉文化都市建設法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
第三條第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を第三項とし、第二項として次の一項を加える。
2 伊東国際観光温泉文化都市建設事業の執行者は、前項に掲げる行為のうち鉱業又は採石業に関するものについて、同項の禁止又は制限をしようとするときは、あらかじめ、東京通商産業局長の同意を得なければならない。以上であります。
すなわち、伊東国際観光温泉文化都市建設法の一部を改正する法律案第三條によつて、観光温泉資源保護のため鉱物の掘採や土石の採取を禁止または制限しようとする際は、あらかじめ所轄通産局長の同意を得なければならないというのが、本修正案の内容であります。伊東市が国際観光温泉文化都市としていかに重要性を持つておるか、従いまして、その温泉資源を確保することがいかに大切であるかということは、私どももまた十分に承知をいたしておるのであります。しかしながら、鉱物の採掘や土石の採取等につきましては、鉱業法、採石法、鉱山保安法あるいは土地調整委員会設置法などの基本法がありまして一般公益並びに他産業との調整につきましてもそれぞれ規定せられておるのであります。従いましてこれらの基本法との調和を保つために最小限度の修正を加えようというのが、本案を提出する理由であります。
以上の趣旨を御了承の上、何とぞ御賛成あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/9
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010・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これより採決に入ります。
まず本案に対する多武良哲三君提出の修正案につき採決いたします。多武良哲三君提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/10
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011・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて修正案は可決されました。
次に、ただいま修正議決した部分を除いたその他の原案につき採決いたします。修正部分を除いたその他の原案に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/11
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012・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて修正部分を除いたその他の原案は可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/12
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013・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第二、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事奧村又十郎君。
〔奧村又十郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/13
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014・奧村又十郎
○奧村又十郎君 ただいま議題となりました外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案について、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法律案は、最近における外国為替等の保有高の増加にかんがみまして、同資金を有利確実な外貨証券にも運用し得ることとするとともに、貴金属管理法の一部を改正する法律によりまして銀の統制額がなくなりましたので、外国為替資金に属する銀地金については、大蔵大臣の指定する価額によつて評価することといたそうとするものであります。
本案につきましては、審議の結果、昨十三日質疑を打切り、討論を省略の上、ただちに採決いたしましたところ、起立総員をもつて原案の通り可決いたしました。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/14
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015・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/15
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016・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/16
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017・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、インドとの平和條約の締結について承認を求めるの件、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際條約の受諾について承認を求めるの件、右両件を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/17
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018・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/18
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019・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
インドとの平和條約の締結について承認を求めるの件、千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際條約の受諾について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長仲内憲治君。
〔仲内憲治君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/19
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020・仲内憲治
○仲内憲治君 ただいま議題となりましたインドとの平和條約の締結について承認を求めるの件につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本件は、六月十日、内閣から国会に提出され、本委員会に付託されましたので、十一日より十四日まで連日四回にわたり委員会を開き、愼重審議を重ねました。
政府当局の説明によりますれば、インドは種々の理由によりサンフランシスコ平和條約に参加しなかつたのでありますが、本年四月二十八日、すなわちサンフランシスコ條約の最初の効力発生の日に、インド政府は日印間戰争状態終結の告示を発出し、また同日付の両国間の交換公文により、爾後両国間に外交、領事関係が開かれることとなつた次第であります。しかしながら、戰争に伴う諸問題を解決し、かつ将来久しぎにわたる両国の平和と友好の関係の基礎を確立するための條約を締結することが必要と考えられたのであります。かかる平和條約の締結については、すでに昨年十二月以来東京において交渉が進められていたのでありますが、ようやぐ最近に至り議がまとまり、六月九日條約調印の運びに至つたのであります。
本條約は、本文十一箇條及び一つの交換公文からなつており、国際連合憲章の原則に基いて、両国共通の福祉の増進及び国際の安全と平和の維持のため友好的に協力するという希望を明らかにした上、両国間の恒久的平和、友好関係を定めるとともに、今次戰争の跡始末に関することを規定したものであります。
本條約審議の詳細については委員会議録に讓ることとし、條約の内容の注目すべき諸点をあげれば、一、本條約においては、普通平和條約におけるがごとく戰争状態終結に関する規定を設くることなく、軍に両国間の恒久的平和、友好関係の存在を規定したこと、二、本條約には領土、安全保障等の政治條項を含んでおらないこと、三、相互に通商航海等に関する條約または協定の締結を約し、これが締結せられるまで、本年四月二十八日、すなわち日印間の戰争状態の終了の日から四年間、貿易その他通商について相互に最惠国待遇を與える事項を定めたこと、但し、右はインドが英連邦諸国またはインドの接壌諸国に與えている特惠には適用されないこととしたこと、四、インドは戰争開始のときインドにあつた日本の資産の返還を約したこと、五、インドは日本に対する賠償請求権を放棄することとしたこと、六、本條約の解釈または適用上の紛争の解決はまず両国間の交渉により、また六箇月以内に解決のつかない場合は、両国間で定める方法による仲裁によることとしたこと等であります。
続いて、委員と政府当局との間に質疑応答が行われました。委員から、前に述べました特惠に関し、最惠国待遇の除外例を認めたことは、わが国に対し不当に不利益を與えることなきやとの質疑があり、これに対し、政府当局としては、インドの英連邦諸国及びパキスタン、ネパール、ビルマ等の接壌国に対する特惠関係は長い歴史的経韓があり、また特殊の事情があり、諸外国がこれを容認しており、ことに世界多数国間に結ばれたガツト、すなわち関税及び貿易に関する一般協定にも特にこれを容認しておることであるから、わが国もこれを認めることとした次第であるとの応答があつたのであります。また委員からの、日印貿易の現況及び見通しについての質問に対しては、政府当局としては、昨年度において、日本の対印輸出は化学製品、繊維品、鋼材、機械類等約千八百万ポンド、輸入は綿花、粘結炭、鉄鉱、塩等約千六百万ポンドであり、将来の見通しについては、インドは最近国際収支が順調を欠き、将来輸入方針を厳格にすることなきやの疑惧があるが、日本の対印輸出品はインド国民の生活必需品が多いから、さほど影響をこうむることとは思われず、少くとも昨年の実績程度は維持せられるものと考えられるとの説明がありました。
質疑応答を終了した後、討論に入り、自由党北澤委員、改進党並木委員、日本社会党戸叶委員、社会党第二十三控室勝間田委員かち賛成の意見、日本共産党林委員から反対の意見が表明され採決の結果、本件は、本委員会は多数をもつてこれを承認すべきものと議決した次第であります。
次に議題となりました千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際條約の件に関し御報告申し上げます。
本件は、五月二十七日に本委員会に付託せられましたので、本委員会は数回にわたり審議を重ねました。その審議の内容についてはこれを委員会議録に譲り、その概要を申し上げることといたします。
海上における人命の安全のための国際條約は、三回にわたつて作成せられておるのであります。本條約は、航海学の進歩及び第二次世界大戰中の著しい技術の発達の結果かもし出された機運に応じ、政府間の合意により、画一的な原則及び規則を設定することによつて海上における人命の安全を増進することを目的とし、一九二九年の條約を改正し、これにかわる條約として作成されたものでありまして、わが国は一九二九年の條約には一九三五年九月当事国となつたのでありましたが、また昨年九月サンフランシスコにおける日本国との平和條約調印の際の宣言によつて本條約への加盟を約しておるのであります。
海上における人命を危険にする原因は、大別して、船舶に内在する原因と、船舶自体では解決できない、たとえば気象、浮流物、航路標識等の外的な原因にわけられ、本條約はこれらの諸原因を問題として取上げているのであります。船舶の沈沒及び人員の損傷をもたらすがごとき原因は、單独で起ることはほとんどなく、幾つかの原因が重なつて災害を起すものでありますから、本條約は原則を定めて人命を保護しようと試みているのであります。しかして、本條約は、人命の安全確保のために船舶それ自身に安全措置を講ぜしめるとともに、海士における相互扶助の精神を発揮せしめることを義務づけておるのでありますから、締約国は均等の義務を負担すると同時に、均等の利益をも享受して、不当の競争を避けることが條約の間接の目的となつているのであります。
現在、本條約を受諾している国は十七箇国でありまして、本條約発効の日は、第十一條(b)により、本年十一月十九日とのことであります。
政府当局に対する質疑終了の後、討論採決の結果、本委員会は賛成者多数をもつて本件を承認することに決定した次第であります。
以上報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/20
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021・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これより討論に入ります。林百郎君。
〔林百郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/21
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022・林百郎
○林百郎君 私は、日本共産党を代表して、ただいま上程されておるインドとの平和條約に反対するものであります。
もとより、日本の国民は、インドの人民との間に真実の平和、友好関係が実現されることを心から望んでおります。しかし、今回吉田政府とインドのネール政権との間に締結された本條約は、日本国民のこの希望を何ら実現しておらないのみか、戰争と亡国のサンフランシスコ條約の再版にすぎないのであります。これは日本とインド両国人民の心からなる期待を裏切るものである。全面講和を望む日本国民のために、断じて支持することができないのであります。(拍手)
一体、ネールの政権とは何でありましようか。諸君御承知の通り、ネールは、一九四七年八月十五日、インドがイギリス帝国の自治領となつた、また自由を獲得したと宣言しました。しかしながら、事実はどうでありましよう。イギリスは相かわらずインドの経済を支配しております。インドの海空軍はイギリス人の指揮下に置かれております。インド陸軍はイギリス人顧問に支配され、その武器はイギリスの物を使用せしめられております。これはまさにアメリカ駐留軍のもとで独立したと称する日本の吉田政府とまつたく同一の性格を持つておるのであります。
しかも、諸君、インド人民は—————————のもとに、いかなる状態にありますか。物価は戰前よりも五倍から六倍に上つておる。食糧、衣料は不足しておる。昨年、ピハール州の飢饉では、四千万の州民のうち半分以上が餓死せんとしたのであります。ところが、ネール政権は、この非人間的な生活條件と闘おうとするところのインド人民に対して、こん棒、発砲、催涙ガスで弾圧して、数百人の共産党員を銃殺し、二万五千名以上の共産党員を投獄しておるのであります。諸君、これもまたメーデーや五・三〇事件に日本の労働階級を——しておるところの日本の吉田政府とそつくりではありませんか。(拍手)
インド人民、ことにインドの労働階級は、帝国主義者とネール政権のこの——に断固として反対し、民主主義と独立をかちとつた中国人民の道を歩もうとしておるのであります。インド人民は、ことにアメリカの朝鮮人民に対する—————————————————に対しては、はげしい怒りに燃えて、朝鮮人民の英雄的な抗議を、こぞつて支持しておるのであります。だからこそ、インド人民は—————————————によつたサンフランシスコ條約には反対して、米軍の即時撤退のスローガンのもとに人民広場で闘つた日本の労働階級の英雄的な行動は、当然のことだとして、これを心から支持しておるのであります。インド人民の、この帝国主義に対するはげとい憎しみがあればこそ、さすがのネール政権も、サンフランシスコ條約に対しては、日本に完全な主権をもたらすものでない、アジアに新たな戰争の禍根か生むものであるとして反対し、参加しなかつたのであります。これは確かに米英帝国主義者にとつては手痛い打撃でありました。
そこで、米英両国は、このネールの態度に対しまして、ただちに反撃に出たのであります。一方では恫喝の手をもち、他方では買収のえさをもつて反撃に出たのであります。すなわち、昨年の九月、インドの人民が飢饉で地獄の苦しみをなめておるときに、アメリカは四十万トンの小麦をインドに送るはずであつたのに、インドがサンフランシスコ会議に参画しなかつたことに対する制裁として、わずかに四万トンの小麦しか送らず、しかもアメリカの国会は、この援助の審議にあたつて、ネールの中立政策の放棄を要求したのであります。
アメリカはまた、インドを買収の手でつろうとした。最近、日本とインドの條約の締結を前に、ボールス・アメリカ大使は、インドに対して十億ドルの借款計画を本国に要請すると発表したのであります。ネール政権は、本来かかる支配階級の煙幕的な政権であるがゆえに——————————————————、今回の條約に調印したのであります。これは、インドの人民のみならず、全アジアの人民に対する重大な裏切りであるのであります。
一体、インドの人民の本来の対日講和に対する態度は何であつたでありましようか。それは、第一に、米軍の日本よりの即時撤退と、日本の主権の完全な回復であります。第二は、沖繩、小笠原の信託統治は日本の主権を侵すものとして、これに絶対反対しておつたのであります。第三は、台湾、澎湖島及び樺太、千島の中華人民共和国並びにソ同盟への帰属を明確とし、アジアの平和の確立を期すること、この三つの條件があつたからこそ、ネール政権はサンフランシスコ会議に参画しなかつたのであります。これは、カイロ宣言、ヤルタ協定、ポツダム宣言に基く最も公正な條件であつたのであります。
一体、全世界の平和愛好の人民がひとしく認めておるこの三つのインドの人民の要求は、このたびの條約のどこに見出すことができるでありましようか。ネール政権は、御承知の通りに、極東委員会の一員であります。極東委員会を不法に解消し、ソ同盟に公然と挑戰しておるアメリカ並びに吉田政府に対しては、一体どういう態度をとるというのでありましようか。このことも、本條約には何ら表明されておらないのであります。本條約は、アジアの平和と日本の独立のために最も重要なかかる事項については、まつたくごまかされておるのであります。これは明らかに、いわゆる多数講和、なしくずし講和である。米英帝国主義の非合法な條約に対する完全な屈服なのであります。これは明らかに、サンフランシスコ條約が、今やアジアにおいてあまりに不評判であるために、これを美化しようとする、英米帝国主義者の最も悪質な、欺瞞的な手段であるのであります。これは明らかに、中国、ソ同盟に対し—————し、アジアの孤児となつた吉田政府が、日本国民の信用をとりもどし、選挙に備えるための、まうたく狡猾な、ごまかしの手であるのであります。(拍手)
しかも、諸君、日本国民は一体この條約から何が得られるというのでありますか。この條約が日本にもたらすものは、ただ一つ、東南アジアからの日本貿易の締出しのみではありませんか。本條約の第二條及び交換公文を見たまえ、英連邦及び隣接国間における特惠待遇または利益は日本に與えない旨が、はつきりきめられておるのであります。これでは、日本の東南アジアに対する貿易はどうなるりでありましようか。アメリカ大使のマーフイは、中共貿易のかわりに東南アジアを日本にやると言つた。しかし、この條約は、頼みとする東南アジアからも日本の貿易を締め出すことになるのでありましてまさに経済的には、スターリング・ブロツクの日本貿易に対する宣戰布告にもひとしいとりきめではありませんか。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/22
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023・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 林君に申し上げます。申合せの時間が過ぎましたから簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/23
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024・林百郎
○林百郎君(続) しかも、諸君、日本とインドの間のこのような條約が認められるならば、やがてこれがフランス・ブロツク、オランダ・ブロツク、インドネシア、フイリピンにも適用されるようになり、日本は、中国、ソ同盟との貿易も禁止され、東南アジアからも、このスターリング・ブロツクによつてボイコツトされて、日本の経済はますますアメリカ経済に従属し、アメリカの戰争政策に奉仕せざるを得なくなると同時に、日本の経済はますます侵略的な性格を持つよりほか生きる道がなくなるのであります。この條約によつて、ネール政権と吉田政府は、日本とインドの人民の利益を完全に米英の戰争屋に売り渡したのであります。(拍手)
吉田政府と自由党は、この條約を、まれに見る成功した條約だとほめたたえられております。しかし、事実はどうでありましようか。諸君は、高良女史たちによる国民外交によつて、中ソが日本を侵略するというデマの化けの皮がはがれて、さんざん外交にみそをつけたので、こんな手で国民をごまかそうとしておるのであります。しかし、諸君、笛吹けども躍らず、国民は絶対にこんなことではだまかされないのであります。
私がここで最後に一言したいのは社会党の態度であります。自由党ならいざ知らず、社会党の、しかも左派を名乗る諸君が、このような吉田政権とインドにおける反動的なネール政権とのとりきめのどこに一体何を感謝しようとするのでありましようか。諸君がこのとりきめに感謝することは、全面講和、民族独立の旗を引下げて吉田内閣に対する屈服であり、單独講和、なしくずし講和に対する屈服なのであります。(拍手)
今やアメリカ帝国主義は、朝鮮では……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/24
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025・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/25
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026・林百郎
○林百郎君(続) 捕虜を虐殺し、全世界の非難の軸となつておる。このために、李承晩に罪をなすりつけたり、日本とインドのとりきめを結ばせたり、戰争政策に新しいごまかしと煙幕を張ろうとしておるのであります。諸君、しかし、ごまかされてはならない。戰争と平和の間には中立はあり得ないのであります。全面講和か單独講和かの間には中立はあり得ないのであります。全面講和を主張する社会党の左派の諸君が、このなしくすし講和に賛成することは、まつたく矛盾の態度ではありませんか。
われわれ日本国民の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/26
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027・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 林君、簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/27
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028・林百郎
○林百郎君(続) 日本国民の進むべき道はただ一つであります。アジアの侵略者、米英帝国主義者の全アジアからの即時撤退、これらの手先吉田政府はもちろん、ぞの他の一切の傀儡政権の即時打倒と人民政府の樹立、これ以外にアジアの平和の道はあり得ないのであります。中立の道は戰争の道であり……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/28
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029・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 林君……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/29
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030・林百郎
○林百郎君(続) 吉田政府の煙幕となるのであります。インドの人民は、かかる道は決して承認しないのであります。
インドにおいては、ソ同盟、中国との友好を目ざし、共産党と手を握つた民族解放統一戰線が、あらゆる地方選挙に圧倒的な勝利を確保しているのであります。(拍手)日本国民は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/30
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031・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 林君、やめてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/31
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032・林百郎
○林百郎君(続) 吉岡とネールのとりきめを拒否し……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/32
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033・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 発言を禁止……。
〔林百郎君発言を継続〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/33
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034・岩本信行
○副議長(岩本信行君) ……。(発言する者多く、議場騒然、聽取不能)
ただいまの林君の発言中、不穏当の言辞があれば、速記録を取調べの上、適当な処置をとることといたします。
北澤直吉君。
〔北澤直吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/34
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035・北澤直吉
○北澤直吉君 私は、自由党を代表し、ただいま議題となりましたインドとの平和條約に対し、次の理由により満腔の賛成の意を表さんとするものであります。(相手)この條約に反対するのは、單に反対せんがための反対以外の何ものでもありません。
第一に、今回のインドとの平和條約においては、サンフランシスコにおいて調印せられました日本国との平和條約に比し、さらに一段と友好と和解の精神が現われておるのであります。インドはサンフランシスコの対日平和会議には参加しなかつたのでありますが、そのおもなる理由は、サンフランシスコ平和條約が領土及び外国軍隊の駐留等の点において日本の完全な主権を回復するのに不十分なりと認めたことにあるのでありまして、長年の間、独立のため血みどろの騒争を続けて参り、遂に宿望の独立をかち得たインド国民の、占領より独立への第一歩を踏み出ざんとする新生日本に対する好意ある態度に由来するものであると思われます。(拍手)
またインドは、サンフランシスコ平和條約には調印しなかつたのでありますが、すでに本年四月二十八日、対日平和條約の効力発生と同時に、日本との戰争状態の終結を宣言して、わが国との間に平和関係を回復し、さらに今回きわめて友好的な雰囲気のうちに平和條約が締結せられ、しかもこの平和條約におきましては、サンフランシスコ平和條約と異なり、特に領土や外国軍隊の駐留に関する規定を設けないこととしたばかりでなく、貿易、海運、航空等につきまして、両国はほとんど完全な相互主義の原則のもとに最惠国待遇及び内国民待遇を認め、またインドは日本に対するすべての賠償請求権を放棄するとともに、インドにあるすべての日本国または日本国民の財産、権利、利益を返還し、また日本国の捕虜であつたインド軍人に対する損害補償請求権までも放棄しておるのであります。これ以上の友好と和解の平和條約は、とうてい望むことができないのであります。ただいまの林議員の友邦インドに対する非難のごときは、まことに言語道断でありまして、一顧の価値もないのであります。(拍手)
第二に、インドは、高い文化と、ネール首相のようなすぐれた指導者を持ち、東南アジア、ひいてはアジア・アラブ・ブロツクの精神的指導者の立場にあると申しましても過言ではありません。このインドと日本とに間にきわめて友好的な平和條約が成立しましたことは、ビルマ、インドネシア、その他いまだわが国と平和関係を回復しない東南アジア諸国との正常関係の回復、さらに進んではアジア・アラブ諸国との善隣友好関係の推進に貢献するところ大なるものがあると信ずるのであります。(拍手)
いわゆる全面講和を主張する人々は、サンフランシスコ平和條約は日本をアジアの孤児にするものであるとして、これを非難したのでありますが、サンフラシスコ條約におきましても、すでにパキスタン、セイロン、インドネシア、フイリピン、仏印三国、イラン、エジプト、その他アジア諸国もすでに参加しておるのみならず、今回のインドとの平和條約の成立によりまして、かかる非難はますますその誤りであることが明らかになつたのであります。
日本はアジアに国をなし、アジアなくして日本なく、アジアの興隆なくして日本の興隆はあり得ないのであります。また同時に、アジアの安定も興隆も日本なくしては考えられないのでありまして、日本はまさにアジアの安定勢力の一つであります。日本とアジア諸国ば、真の意味で共存共栄、唇歯輔車の関係にあるのであります。
もとより、日本は、終戰前の大東亜共栄圏的思想のような、日本本位の立場からではなく、真にアジアの民族主義を基調とし、アジア全体の安定興隆をはかるという謙虚な立場からアジア問題に対処しなければなりません。今回のインドとの平和條約を契機として、すみやかにわが国とアジア、なかんずく東南アジア諸国との間に善隣友好関係が樹立せられ、相携えて、アジア民族の独立と、経済の発展と、民生の向上をはかり、さらに進んで東洋文化の真髄を発揮せんことを念願しでやまないのであります。かくして、日本がかけ橋となり、くさびとなつて、強いアジアと強い西洋とがかたく提携して、世界の民主主義陣営のカと結束を強化し、共産主義勢力の世界侵略の野望を挫折せしめ、もつて世界の平和と安全と繁栄を確保せんことを願うものであります。(拍手)
第三に、今回のインドとの平和條約において問題となるのは、インドが英連邦諸国及び隣接国に対し現在與えておるかまたは将来與えることあるべき特別の利益には日本は均霑しないことを規定しておる点だけでありますが、この特別の利益は、日本以外の各国も均霑を認められないのでありまして、やむを得ないところであります。また政府の説明によれば、インドが英連邦諸国及び隣接国に対して與える特惠を認めるのは特別の場合でありまして、インド以外の国がかかる特惠制度を採用することは認めない方針であるとのことでありますが、さなきだに日本貿易の前途には幾多の難問題が控えておるので、通商上の特惠制度りごときはなるべく少くし、通商自由の大原則が全世界にわたつて全面的に行われるよう、政府当局の善処を要望するものであります。
以上をもちまして、私の賛成討論を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/35
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036・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 並木芳雄君。
〔並木芳雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/36
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037・並木芳雄
○並木芳雄君 私は、ただいま上程されました日本国とインドとの平和條約の締結に対して承認を與えることに賛成の意を表明いたします。(拍手)
インドは、サンフランシスコ会議に列席をいたしませんでした。また、日華條約を締結する際にも、快からず伝えられた節もございます。そこで、私どもは、杞憂ではありましようけれども、もしやインドが日本自体に対して感情を害することのないようにということを念願しておつたのでありますけれども、そのことは、今度の日印條約締結によつてまつたく杞憂であつた、日印間の友情というものは、他にまさるものはないということを確認することができたのでございます。(拍手)
インドが、高い理想を掲げて、とにもかくにも世界の第三勢力をつくり上げて行こうとする、この熱意というものは、やはり私どもは高く評価しなければいけないと思うのです。と申します根底は、アジアというものは、常に西洋諸国の圧力のもとにあつて、対等の地位にまで燃え上ることができなかつた。その勢力を挽回して、ほんとうの平等のもとに世界の平和を確立しようとする理念から出ておるところに価値があるからでございます。(拍手)従つて、当然インドは、日本が日米安全保障條約を結んだことに対しても反対でございます。これは平等でない、一方的であるという見解でごさいましよう。また日華條約でも、この日華條約が、アメリカの圧力によつて、日本が無理に締結させられたのではないかということを案じての反対の表明であつたようでございます。
しかしながら、それだけに、私どもが心配したにもかかわらず、インドは、ただいま申し上げましたような、根底的に申しまして、アジア民族というものの地位を高めるという底から出て来る意欲でありますので、必ずしも日本のやつたこと、その行為に対して感情を害しておるものではないのであります。でありますから、平和会議には列席しませんでしたけれども、今度の二国間の條約の調印には、私どもが予想したよりも以上の早さをもつて熱意を示してくだすつたわけでございます。
のみならず、インドは、四月二十八日、條約発効の日には、早くも戰争状態終結の告示を出して、われわれに、ほんとうの永遠の平和、永遠の友好というものを披瀝してくれたのであります。そのことは、今度の日印條約第一條にはつきりと盛られてあるのでございます。私どもは、この一貫したインドの高い理想、深い友情、こういうものを考えますときに、同じアジアにありながら、やや立場を異にしたとはいいながらも、インドとの間の調印ができましたことは、これひとえに全面講和への一里塚であるということが言い得ると思うのであります。(拍手)
先ほどの日本共産党の討論を聞いておりますと、かつて全面講和を主張した共産党、腹の中では全面講和ができない方がいいんでしよう。しかしながら、その腹の中で考えている全面講和、実はその反対の気持というものにだんだん逆効果となつて、われわれが一里塚々々々をもつて全面講和に近づいて行く。ことにアジアの孤児であると言つておつた、そのこともひつくり返つた。それとともに、アジアの諸国は団結せよと共産党は叫んでおつた。それにもかかわらず、先ほどこの印度との條約に反対する討論を聞いておりますと、まさしく窮地に追い込められて、窮鼠猫をかむような討論に終始したことは、われわれの遺憾とするところでございます。私は、もし共産党が民主主義を遵奉するならば、討論に立、つた同じ人が、二度までも時間を守らずに衛視から引きずりおろされるようなことのないように、私は共産党にまず民主主義を習つてもらいたい。民主主義を体得してからでなければ、この日印條約に反対討論をする資格はないと私は感じたのであります。(拍手)
この條約自体には別に問題はございません。戰争の跡始末をしたものであるし、どちらかといえば事務的に終始しております。貿易、海運、航空、その他の通商の糸口をつけたものであります。まさしくこれが玄関でございますから、今後われわれの手によつて貿易、海運、航空などの通商の道をますます開いて行く、深めて行くというのでございます。まあ、その点においては問題がないどころか、むしろ賠償請求権の放棄、あるいはインドにおける日本資産の返還、紛争の解決方法などにおいては、われわれが期待した以上の寛和な講和でございまして、この点、私どもは国民とともに深い感謝の意を表明するものでございます。(拍手)
政府のごときは、この喜びのあまりに、実は日印條約の日本文に調印しておりません。あまりに條件がよかつたために、一刻も早く国会にかけてその承認を求めようということで、実は皆さんの間には御存じのない方があるかもしれませんけれども、この日印條約の日本文も調印はしておりませんし、インド文にも調印していないのでございます。ただ英文だけが基本となつてとりあえず英文だけに調印しよう、これにサインをして、あとから日本文とインド文は一箇月以内に交換をするという、非常に略式な方法をとつたのであります。政府は、要するに、ことほどさように喜んでおつたという、その一端を示すものであります。もちろん、かくのごとき略式は、今後は絶対に政府によつてとられてはならないということを、私どもは警告をしておきました。それは、こういういい條件の條約の場合にはよろしうございましようが、日本に不利な條件の條約を押しつけられたような場合に、苦しまぎれに英語だけの案文によつてそれに調印をさせられて、それで條約が成立するというようなことのないことを、私どもは警告をしたのでございます。(拍手)
以上、まことにわれわれとしては、これ以上求めても得られないほどの條約でございますが、最後に、今後のこの條約に基く実施過程において、政府に対して私どもは要望しておきたいと思います。それは、貿易に例をとつてみましても、日本とインドとの昨年の貿易の数字を見ますと、日本からインドへ昨年千八百万ポンド、それに反して、インドから日本へは千六百万ボンドの輸入でございます。日本からは輸出超過になつております。しかるに、英国からインドへは一億二千万ポンドの輸出にすぎませんけれども、インドから英国には一億五千万ポンドの輸出になつております。こういう点を考えますと、日本からは輸出超過、英国からはインドへ輸出の方が少い、この一事をとつてみましても、最近バトラー蔵相が英国経済の危機を唱え、ポンドのピンチを伝えております。従つて日本のインド貿易というものも、必ずしも手放しの楽観はできないと思います。そういう点については、政府として十分留意をして、国交の円滑をはかりつつ、日印貿易が円満な進展を途げるように努力をしていただきたいのでございます。(拍手)
もう一つだけ申し上げておきますが、政治上の條項に触れられなかつたことは、いささか私どもには物足らなかつたのであります。その一例といたしましては、ポツダム宣言による引揚げの促進の問題がございます。平和條約では、第六條に、ポツダム宣言の引揚げに関する條項は生きておる。連合国は確認をしておるのであります。ポツダム宣言はすでにその効力を失つておりますけれども、その中で、たつた一つ生きておる條項は、この引揚げの促進である。その條項は、今度の目印條約の中にも、私どもは入れてほしかつた。そうして、インドも引揚げの促進に関しては大いに努力をするという意思表示を、せめて、してもらいたかつた。そういう点では、今後領土の問題もありましようし、両国間のほんとうの平和、ほんとうの安全の保障という問題もございましよう。その点、われわれは、今の政府が、ややもすれば英米だけの陣営に走り、世界の対立する二大陣営の一方にのみ偏しようとする態度を十分改めて、反対に二大陣営対立の激化を緩和するように、そのためにアジアの大国インドとの條約を意義あらしめてもらいたいと思うのであります。
われわれは、本條約の締結によつて経済関係が深く結ばれるとともに、ただいま申し上げましたように、今後このインドの崇高な理念と友情とにこたえつつ、かつはインドの協力を求めて、アジアその他の諸国との国交調整、国交回復に貢献するよう政府に特段の要望をいたしまして、賛成の討論を終りたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/37
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038・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 戸叶里子君。
〔戸叶里子君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/38
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039・戸叶里子
○戸叶里子君 私は、ただいま上程されました日本とインドとの間の平和條約に対し、日本社会党を代表して、簡單に賛成の意を表するものであります。(拍手)
サンフランシスコにおける平和條約が世界各国との間に締結されることを熱望した私どもは、これに参加しない国々のあつたことはまことに遺憾であり、その内容がいずれの国をも納得せしめるものへと改正されることを、今なお望んでやまない次第であります。このサンフランシスコ條約へ参加しなかつた国々を考えたときに、まず第一に私の脳裡に浮ぶものは、アジアの諸国、なかんずくインドであります。それは、日本とインドとの間は昔から種々なる関係があり、またインドが長い間英国の殖民地として苦しんだにで、その苦い歴史的体験を通じ、今日インドの大衆は、さきに聖雄ガンジーにより、今またその後継者ネール氏によつて、アジアの平和と繁栄のため、あらゆる困難に打ちかちつつ今日を築いている、すぐれた民族であるからであります。(拍手)
インドのサンフランシスコ條約に対する不満は、この條約によつて、真の意味においての日本の主権回復に疑問を持ち、さらに極東の平和を危うくすることを懸念したからでありまして、この点はわれわれの抱く感情とまつたく同一であります。ところが、そのような不満がありながらも、四月二十八日、対日平和條約が発効すると、ただちにインド政府は日印間の戰争状態の終結の告示を発し、また同日、チェトウール在日インド代表と吉田首相との間の交換公文によつて、日印間の外交関係が開かれるに至つたのであります。この條約全体を見ましたときに、インドが日本に対し友好的に協力して行こうとの努力の拂われた跡がうかがえるのでありまして、インドが戰争被害国であるのにかかわらず、友愛に満ちた、かかる態度をもつてこの條約に対処したことに、われわれは深く感謝するものであります。(拍手)なかんずく、インドが賠償請求権を放棄し、在印日本財産を返還することになつている点などは、国際條約の締結に際し、道義を根幹として、理想主義的な理念によつて貫いたものであります。われわれは、この嵩高な精神に対し深く敬意を表する次第であります。
ただ一点、インドが英連邦諸国並びにパキスタン、ネパール、ビルマ等の接壌国にのみ特惠を與えることを日本側が認めたことは、何と弁解しても政府の讓歩であり、画龍点睛を欠き、国民の期待を裏切るものであります。しかし、交換公文において、インドがもし他の第三国にこの特惠を與えたときには日本にも認めることをしるすことにとつて国民よりの非難をのがれんとしているところに政府の苦慮の跡が見られ、われわれもまた、さきに述べたような若干の不満を残しながらも、條約全体とのバランスを考えたときに、承認せざるを得ないのであります。(拍手)
全体として、インドが日本に友好的態度を示した根本の理由は、インドが、あくまでも日本との恒久平和をもたらし、友好関係を結ぶことによつてアジア全体の福祉の増進を考えたものであり、さらにこれが国際の平和と安定を悲願としたものであることは、何人も認めるところであります。(拍手)われわれは、絶えず見識を持つて中正的な立場を堅持したインドとの平和條約が、まだ日本との間に平和回復せざる国々に対しての推進力となつて、近き将来において、それらの国々に大いなる影響を與える好結果を導くであろうことを信ずるものであります。(拍手)われわれの今後の外交の基礎たるべき、アジアの平和と繁栄の建前からいつても、今回の、アジアの重要なる地位を占めるインドとの平和條約が、今日の日本にとつて、民族の前途に光を與える歴史的意義を有するものであると信ずるものであります。(拍手)
さきに、共産党の林議員は、この條約に反対せられましたが、アジアの団結を常日ごろ唱えている共産党が反対する理由は那辺にあるかと、私どもは疑問を抱くものであります。(拍手)私どもは、インドが日本に示された好意に対しては、苦難に打ちかちつつ日本再建を念願とする日本国民を代表して感謝の意を表しつつ、この條約に賛意を表するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/39
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040・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 勝間田清一君。
〔勝間田清一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/40
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041・勝間田清一
○勝間田清一君 ただいま上程されました日本国とインドとの間の平和條約の締結について承認を求めるの件に対しまして、日本社会党二十三控室を代表いたしまして賛成の意を表するものであります。(拍手)
私は、このたびにおける日本との平和條約の締結に際して、インドが終始示された日本に対する厚き友情に対して、同時に感謝いたすものであります。(拍手)すなわち、サンフランシスコ会議に対して、インドはこれに参加せず、しかも具体的な主張といたしましては、講和條約の第六條の但書に駐屯規定を設けることは日本の独立主権を妨げるものであるといつて、これに対して反対をいたし、さらに駐屯規定に対して、新たに奄美大島、小笠原、沖縄等の領土権を主張することは日本に対する二重の圧迫であり、日本の独立主権を侵すものであると、これに反対をし、さらに軍事的、政治的條項を含んでおるサンフランシスコ條約は、アジアの危機を平和的に解決することに対して重大なる障害になるとの理由で、このサンフランシスコ会議に反対せられたインドが、このたび、領土あるいは政治的、軍事的條項、賠償條項一切を拒否して、ここに真の友愛と和解との講和を締結せられたことは、われわれの最も感銘の深いところであると確信をいたすものであります。(拍手)
私は、しかしながら、このことの事実をもつて、サンフランシスコ條約が合理的であつたかのごとき錯覺をここに引起さんとする現在の吉田内閣の政策に対しては、もちろん、これはわれわれは欺瞞であるといわなければならぬのであります。しかるがゆえにこそ、今日までこれらの條約に反対し、あらためて日本との講和を締結するに至つた真の理由をわれわれは理解しなければならないと存じます。その中にあるものは、言うまでもなく、アジアにおける共通の精神であります。数世紀にわたつて西欧の帝国主義下に呻吟して来たアジアの民衆は、自由と独立と繁栄とを主張して、今日まで闘つて参りました。しかるに、アジアにおける日本が、サンフランシスコ会議によつて独立と自由と自立の基礎を奪われることに対するアジア民衆の同情と、アジア民衆のこれら西欧諸国に対する反撃とがこの中に含まれておることを、われわれは理解しなければならないと存ずるものであります。
さらに、この問題について共産党の一部より、いわゆる中立外交は成立せずとの主張がなされたことに対して、私は同時に遺憾の意を表するものであります。何ゆえに、今日、あるいはビルマ、インド、パキスタン、インドネシアあるいはアジア・アラブ十二箇国が世界に対して自由と独立と平和とを要求しておるかということを、われわれは理解して行かなければならないと存じます。これらの民衆に対する理解なくして、今日の世界の平和はあり得ないと確信いたすものであります。(拍手)もし、今日中立が成立せざるものであると主張せれるならば、ソ連が西ドイツ、東ドイツの講和條約の條件として、これを中立にすべきであると主張したのは完全に誤りであるといわざるを得ないことになるではないかと存ずるのであります。(拍手)従つてわれわれは、このたびの、このインドと日本との間における真の和解と信頼の講和がここに達成せられたのを契機といたしまして、われわれのアジアの平和を確立する上にさらに偉大なる貢献をなすものとわれわれは確信し、ここに賛意を表する次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/41
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042・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
両件を一括して採決いたします。両件はいずれも委員長報告の通り承認するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/42
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043・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて両件はいずれも委員長報告の通り承認するに決しました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/43
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044・福永健司
○福永健司君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、地方公営企業法案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/44
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045・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 福永君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/45
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046・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
地方公営企業法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。地方行政委員会理事野村專太郎君。
〔野村專太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/46
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047・野村專太郎
○野村專太郎君 ただいま議題となりました地方公営企業法案につき、地方行政委員会における審議の経過並びに結果の概要を御報告申し上げます。
地方公共団体の行う水道事業を初め各種公益事業は、いずれも公共の福祉を第一義とすることはもちろんでありますが、他面、独立採算制を建前として運営されます以上、企業としての性格を持つのでありまして、この点からは、民間の企業とほぼ同様、常に経済性を発揮するように運営されなければならないのであります。
〔副議長退席、議長着席〕
しかるに、従来これらの企業は、外部的には、私企業と同様に水道條例、軌道法、道路運送法、地方鉄道法、公共事業令等の規制を受けながら、内部的には、地方公共団体自体の組織及び運営に関するものとして、一般行政事務とひとしく、地方自治法、地方財政法等の法規をそのまま適用されて来たのでありまして、企業経営の面から見た事業の特殊性については何らの措置も講ぜられておらず、そのために、企業の能率的運営を促進し、その経済性を高める上に遺憾の点が少くなかつたのであります。これらの諸点に対処するために、本法案が提出せられたのであります。
法案の内容につきまして、その概要を御説明いたしますと、まず総則におきまして、本法の目的、地方公営企業の経営の基本原則、本法の適用範囲等を規定いたしておるのでありますが、本法の目的は、地方公共団体の経営する企業の組織、財務及びこれに従事する職員の身分取扱い、その他企業の経営にふさわしい合理的、能率的な根本基準を定めて、結局地方自治の発達に寄與せしめるにあるとし、経営の基本原則としては、一面、一般企業と同様、企業としての経済性を発揮すべきであるとともに、他面、公営企業本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されるべきであると規定しているのであります。
本法の適用される企業の範囲に関しましては、常時雇用される職員の数を基準として、一定規模以上の大きさを持つ水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業及びガス事業の六種類に限定するとともに、これ以外の企業につきましても、條例によつて本法の一部または全部の適用ができることとしてあるのであります。
第六條において、本法の地方自治法、地方財政法及び地方公務員法に対する関係を規定して、本法が、地方公営企業の経営に関して、これらの法律の特例を定めるものであることを明らかにしておるのであります。
次に地方公営企業の経営の組織に関する規定でありますが、地方公営企業の業務の執行は、原則として専門的識見を有する管理者をしてこれに当らしめることとし、管理者には、その地位と責任に応じて、就職及び在職に関して一定の禁止條項を設けるとともに、他方、その地位の保障をも考慮して企業の能率的経営をはかることとしておるのであります。管理者の専行し得る業務は、企業職員の任免、事業計画の決定、管理規定の制定等、相当広汎にわたるものでありますが、企業経営の基本計画その他重要な事項に関しては長の指揮監督に服することとされているのであります。
財務に関とまして、地方公営企業の経理は、特別会計を設けて独立採算制をとるべきものとし、経理の方法につきましては、一般会計における現金主義を排して、一般企業会計同様、発生主義をとらしめ、複式簿記の計理を行わせることとし、予算についても、一般会計の様式を排除して文言形式を採用することとし、国鉄の予算と同じく、いわゆる弾力條項を挿入することとしているのであります。企業の資金に充てる地方債や企業の出納等についても特別な措置を講じているのであります。
最後に地方公営企業に従事する職員の身分取扱いについてでありますが、企業の管理者及び職員中、管理または監督の地位にある者及び機密の事務に携わる者は原則として地方公務員法に定めるところによることとし、それ以外の一般企業職員の身分取扱いについては、この法律に特別の定めあるものを除き、別に制定を予定される地方公営企業労働関係法の定めるところによるととしてあるのであります。
なお、この法律の施行期日は、この法律公布の日から六箇月を超えない範囲内で政令で定めることとなつているのであります。
以上が、本法案の内容の大要であります。
本法案は、三月二十六日、本委員会に付託となりましたので、翌二十七日岡野国務大臣から提案理由の説明を、五月十五日政府当局から逐條説明を、同二十二日には本法案と密接な関連のある地方公営企業労働関係法案についての説明をそれぞれ聽取したのであります。同日及び六月に入りまして十日、十一日及び十四日の三日にわたつて質疑を行つたのでありますが、質疑の内容は会議録によつてごらんを願いたいと思います。
十四日質疑を終了いたしましたところ、自由党、改進党、日本社会党、日本社会党第二十三控室及び社会民主党の五党共同提案にかかわる修正案が提出され、門司委員から提案理由の説明があつたのであります。
修正案の要点は、地方公営企業の管理者の担任事務中に「その権限の範囲内において労働協約を結ぶこと」を書き加えて、企業職員が管理者と労働協約を結び得ることを明らかにしたこと。同様の趣旨から、企業職員については一般の行政職員とは異なる身分取扱いを受けるものであることを明らかにするため所要の改正を加え、特に人事委員会の職階制の実施に関する助言や、職員の研修及び勤務成績の評定に関する勧告等の関與を排除するように改正したこと、従つて公務災害補償の実施に関する異議の審査請求をも人事委員会の所管からはずし、労働基準法によるように改めたこと、その他同様趣旨による二、三の語句の修正を行つたのであります。
修正案の趣旨弁明の後、ただちに原案を一括して討論を行い、日本共産党を代表して立花委員から、修正案、原案ともに反対の意見が述べられ、次いで採決を行いましたところ、修正案並びに修正部分を除く原案ともに多数をもつて可決され、よつて本案は修正議決すべきものと決したのであります。右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/47
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048・林讓治
○議長(林讓治君) 討論の通告があります。これを許します。立花敏男君。
〔立花敏男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/48
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049・立花敏男
○立花敏男君 私は、日本共産党を代表いたしまして、ただいま議題となりました地方公営企業法案原案並びに修正案に対して反対の意見を述べるものであります。
現在、いわゆる労働法の改悪といたしまして、全労働者の集中的攻撃を浴びつつ参議院で審議中の労働三法のうちの一つであるところの地方公営企業労働関係法案は、ただいまここに上程されておりますところの地方公営企業法案とはまつたく密接不可分でありまして、当然一括して審議されなければならない法案であるにかかわらず、政府は故意にこれを分離して審議せしめ、他の二つの法案、すなわち労働基準法、労働関係調整法の露骨なる改悪に労働者及び輿論の批判の目を向けしめ、地方公営企業労働関係法案の持つところの反労働者的、売国的性格を隠蔽いたしまして、強硬に国会通過をはからんとしておるのであります。
そもそも地方公営企業法案によれば、地方公営企業はまつたく従来の公営企業の性格を奪われ、一個の営利的私企業と何ら異なるところがなくなるものであります。しかも、それに従事する職員、労働者のみはなお依然として地方公務員として取扱われ、彼らの労働者としての行動及び労働組合活動は、公務員としてのわくによつて制限、禁止されるというのであります。企業が営利的、私企業的経営に切りかえられるならば、それに従事する労働者に対しても、一般企業に従事するところの労働者同様、当然労働者に與えらるべき権利が與えられるのが至当だと思うのであります。しかるに、地方公営企業労働関係法案は、スト権を否定して、団体交渉権を骨抜きにし、さらに業務の正常なる運営を阻害する一切の行為を共謀し、そそのかし、またあおることを禁止し、もしこれに違反したものは、労働関係法の規定する一切の救済手段を受けることができないことを規定しておるのであります。もし裁判所に労働者が最後に提訴した場合にも、政府は行政訴訟特例法を利用いたしまして、総理大臣は職権をもつて異議申立てを行い、労働者の生きる権利、働く権利を根本的に剥奪し得るのであります。これはまつたく徳川時代の切捨てごめんの奴隷法案でありまして、われわれは、かかる奴隷法案を分離通過せしめんとするところの政府の謀略的法案審議を断固糾弾せねばなりません。
そもそも地方公営企業法案の内容は、一言にして言うならば、料金で一切の公営企業の経営費をまかなうという点であります。このことは、明らかに次の三点を政府がねらつておるところを明瞭に示しております。
すなわち、ねらいの第一点は、一般会計と企業会計とを切り離し、一般会計は公営企業の赤字等に対しては全然責任を負わない。一般会計を、必要に応じて、もつぱら軍事的支出あるいは植民地的支出に自由に使い得るようにしようとすることであります。このことは、最近の地方自治体においては、警察費等の弾圧費の膨脹、あるいは住民登録及び警察予備隊募集等の新徴兵事務の増加、軍事道路、防空施設等の拡張整備、あるいは激増する失業者、生活困窮者等への宣撫工作の必要の増大並びに徴税、供出等の収奪事務の強化等々の、明白に再軍備的、植民地的事務事業が増大し、しかも地方に対する平衡交付金等の国家支出は極度に制限しているがゆえに、これらの軍事的費用を一般会計によつてまかなわねばならぬことは明白であります。従つて、一般会計は住民のための公営企業の経費等には煩わされることなく、十分軍事的に確保される必要があるのであります。この点を最も端的に暴露している点は、一般会計より公営企業会計に繰入れました金は他日必ず繰りもどさなければならないことを規定し、逆に公営企業の利益金等を一般会計へ繰入れました場合は、この繰りもどしについては何らの規定がないのであります。このことは、公営企業に赤字が出た場合は、料金の引上げによつて、労働者の賃下げで穴埋めし、事業に利益金の出た場合は、軍事予算であるところの一般会計に必要なだけ取上げることを意味しているのであります。まことに反国民的な、反労働者的な法案といわざるを得ないのであります。
さらに、ねらいの第二点は、企業に従事する労働者の賃金も、営利を追求いたします企業内部において、営利的独立採算制のわく内で決定されるということであります。一方、公務員に対する生活保障の義務を市の理事者が免れる。他方、賃上げ要求は、料金の引上げなしには不可能であるという仕組みにすることによつて、公営企業労働者と、それを利用いたします市民との対立を激化し、これによつて労働者の賃上げ要求を徹底的に弾圧せんとしている、まことに陰険なる対立支配の陰謀だといわざるを得ないのであります。
次に、ねらいの第三点は、企業の一切の事業費を、企業収入、すなわち主として市民の料金によつてまかなわしめようとしている点であります。そもそも自治体の公営企業などの新施設あるいは新路線の計画等の費用はすべて一般会計より支出すべきが当然であり、市民の負担する料金等は社会的に検討して決定されるべきであつて、せいぜい運営費あるいは維持費等をまかなうべきものに限らるべきであります。しからざる場合は、何もわざわざ自治体が多数の手数と、あるいは多数の金品をかけて公営企業を運営する必要はないのであります。従つて、料金によつて公営企業の固定施設費、新設路線等々をまかなわんとすることは、自治体の経営いたします公営企業そのものの否定であります。しかるに、最近すでに東京都においては、都バスの新路線の新設財源を捻出いたしますために、あらかじめバス料金の値上げを計画しておるのであります。総司令部が市市ヶ谷に移りまして、水道、バス等の新しい需要が増大している事実は見のがすことはできないのであります。
ここでわれわれが注意せねばなりませんことは、行政協定第七條によりまして、アメリカ占領軍は日本の一切の公共事業並びに公共の役務を最も優先的に利用し得る権利を有するという規定であります。今や日本の大部分の大都市の周辺には、軍事基地あるいは軍事施設、あるいは警察予備隊キヤンプ等々が多数に存在いたして、これらを結ぶバス、市電、あるいはこれらに供給いたしますところの水道、電気、ガス等に対する占領軍の需要がますます増大しつつあるのであります。しかも、彼らはオールマイティすなわち権利、権力、権能をもつてこれらを要求し、日本人たる市民よりも優先的にこれを利用することができる仕組みになつておるのであります。かくて、住民が乏しい生活費の中からようやく支拂つた高い料金は、市民のために使われるのではなくして、日本国民を奴隷化するアメリカ占領軍のために最も優先的につぎ込まれようとしておるのであります。ここに、この法案の持つ軍事植民地的性格を国民は明白に看取することができるのであります。
今や、地方自治体の公共事業すらが、市民のためにではなくて、アメリカ占領軍のために経営されようとしておることは明白だといわねばなりません。アメリカ占領軍の手によつて土地や漁場が奪われ、日本の青年が奪われ、富士山が奪われ、今また国民の日常生活と密接不可分でありますところのバスや水道や電気、ガスが奪われようとしておるのであります。
日本共産党は、国民とともに、断じてかかる軍事植民地的法案に賛成することはできないのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/49
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050・林讓治
○議長(林讓治君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/50
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051・林讓治
○議長(林讓治君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305254X05419520614/51
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