1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年四月十六日(水曜日)
午後二時十二分開会
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 有馬 英二君
理事 徳川 頼貞君
委員
杉原 荒太君
團 伊能君
平林 太一君
伊達源一郎君
金子 洋文君
大隈 信幸君
兼岩 傳一君
国務大臣
国 務 大 臣 岡崎 勝男君
政府委員
法務府法制意見
第二局長 林 修三君
外務政務次官 石原幹市郎君
外務大臣官房長 大江 晃君
外務事務官
(外務大臣官房
審議室勤務) 三宅喜二郎君
外務大臣官房会
計課長 高野 藤吉君
事務局側
常任委員会專門
員 坂西 志保君
常任委員会專門
員 久保田貫一郎君
法制局側
法 制 局 長 奧野 健一君
—————————————
本日の会議に付した事件
○在外公館に勤務する外務公務員の給
與に関する法律案(内閣提出、衆議
院送付)
○千九百四十六年十二月十一日にレー
ク・サクセスで署名された議定書に
よつて改正された麻薬の製造制限及
び分配取締に関する千九百三十一年
七月十三日の條約の範囲外の薬品を
国際統制の下におく議定書への加入
について承認を求めるの件(内閣提
出、衆議院送付)
○対日平和條約の効力発生の問題及び
行政協定に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/0
-
001・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 只今から外務委員会を開会いたします。
前回に引続きまして、在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/1
-
002・兼岩傳一
○兼岩傳一君 委員長、質問してもいいのですか、ほかにおありになるなら、あとでも結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/2
-
003・平林太一
○平林太一君 私は本日議題と相成つております事柄に先立ちまして、たまたま本日米国大統領トルーマン氏によりまして、対日平和條約の調印が日本時間である本日の午前一時十五分にホワイト・ハウスにおいてこの調印がとり行われた、そういうことでありまして、極めてこのことは本日の会議におきまして重大に考えられるのでありまして、従いまして、これに関連をいたしまして、政府に対しまして質疑をいたしたいと存じておりますが、岡崎国務大臣のこの際出席を要求いたすのでありまするが、この点委員長において至急お手配を頂きたいと思います。私は国務大臣の出席を待ちまして、質疑をいたすようにいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/3
-
004・有馬英二
○委員長(有馬英二君) それでは私からお答えいたします。只今の平林委員の御質疑の点は了承いたしましたが、取りあえず、この懸案になつておりまする只今申上げました外務公務員の給與に関する法律案について、前回に引続きまして、第九條の懸案を解決いたしまして、それからにお願いいたしたいと思つておりますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/4
-
005・平林太一
○平林太一君 結構でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/5
-
006・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 岡崎国務大臣は待機の姿勢をとつておるそうでありますから、あなたの質問は国務大臣が参りましてから、一つお願いいたしたいと思います。
それでは第九條につきまして御質疑をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/6
-
007・杉原荒太
○杉原荒太君 第九條について懸案になつておつたわけでありますが、そうしてその問題について政府側でなお考えて頂くということになつておつたと思うのであります。その結果を一つ御報告をして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/7
-
008・奧野健一
○法制局長(奧野健一君) 先日この委員会におきまして、この法案の第九條に関する問題、即ち第九條に規定する政令の効力に関する解釈について、参議院の法制局並びに内閣の法制意見局ともよく話合いの上、解釈を確定するようにというお話がありましたので、両者相寄りまして解釈を一応きめて参つたのでありまして、只今刷物にしてお配りしておりますが、一応大体この趣旨を御説明いたしたいと思います。この法案の第九條に規定しております政令は、国会閉会中に生じました緊急事態に対処するための臨時的な措置として制定されるものであります。従いまして第九條において「最近の国会」云々と規定しております趣旨は、当該政令施行後、最も近い機会に開かれる国会において法律的措置がなさるべきものである旨を要求しておるものと解釈すべきであると考えます。そこでここに規定しております「最近の国会においてこの法律が改正されるまでの間、」とありまするのは、最近の国会において当該政令に代る改正法律が制定せられ、その法律によつて規律し得るようになるまでの間暫定的にということでありまして、改正法律案が衆議院又は参議院におきまして否決されて法律とならなかつたような場合にまでも、なおその政令が効力を有するというような趣旨ではないと考えます。それで右のごとく改正法律案が衆議院又は参議院におきまして否決され、法律とならなかつたときは、これによつて国会の意思が改正を認めないということに決したのでありますから、その改正法律案と同趣旨のこの政令も又そのまま存続することは許されないのでありまして、将来に向つてその効力を失うものと解すべきであろうと思います。又前述のように、この政令は、この法律が最近の国会において改正せられるまでの間の臨時的の措置を規定しておるにとどまりますから、この法律がその国会において改正せられる機会を失つた場合、即ちその国会に改正法律案が提出されなかつた場合及び改正法律案が提出された場合において、当該改正法律案に対し国会が何らの意思決定をしないで会期を終了した場合、即ち審議未了になつた場合には、改正法律案が否決された場合と同じく政令は当然に将来に向つてその効力を失うものと解すべきであろうと思います。ただ審議未了の場合における国会において一院が当該法律、改正法律案について閉会中もなお審査する旨を議決いたしましたときは、即ち継続審査に付しました場合、これは国会法第四十七條第二項によつて継続審査といたしました場合には、当該改正法律案は後会に継続して、即ちこれは国会法第六十八條但書によりまして、会期不継続の原則の例外として後会に継続いたしますので、その場合は当該改正法律案に関する限り、最近の国会における審議が継続中であるというふうに考えられますから、後会において、あとの会におきまして改正法律案が制定され、又は改正法律案が否決若しくは審議未了となるまでは、政会はなお効力を有するものであるというふうに解するのが至当であろうかと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/8
-
009・杉原荒太
○杉原荒太君 最初に私この問題を疑問として提起したのでありまするが、只今の御説明によつてよく了承いたします。ただ私この問題はそれとしてよく了承するのでありますが、将来におけるこの種のことの立法に当りましては、法文の起草方法等につきまして、只今のこの書き方、これを先例としないで、よく御研究の上で疑義を生ずる余地が全くないように善処せられるよう要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/9
-
010・林修三
○政府委員(林修三君) 只今の杉原委員の御要望に対しては、政府のほうの法制意見として、この法律の立案事務をやつておりますほうでも十分に考慮いたしまして、今後の法案の起草につきまして、或いは立案審議につきまして、善処いたしたいと考えておるわけでございます。なお申添えますが、先ほど参議院法制局長が説明せられました点は、政府の法務府のほうとも十分打合済のものでございまして、政府のほうも全く同意見でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/10
-
011・有馬英二
○委員長(有馬英二君) ほかに御発言はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/11
-
012・兼岩傳一
○兼岩傳一君 ちよつとお尋ねしますが、修正をするというのですか、しないというのですか。今ちよつとほかの調べものをしていて、その一点だけを聞き落したのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/12
-
013・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 只今の奥野法制局長の御説明によりますと、第九條は原案通りで差支えないというような、修正の要を認めんというように私は承わつたわけでありますが、如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/13
-
014・杉原荒太
○杉原荒太君 私は先ほど申しましたように、この趣旨が、はつきりこういうふうに言明された、明らかになつた以上、そうして又これがはつきり議事録にとどまることは勿論と思いますが、そういうことでありましたならば、原案のままでこの法案は差支えないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/14
-
015・有馬英二
○委員長(有馬英二君) それでは原案のままで差支えないと解釈するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/15
-
016・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/16
-
017・兼岩傳一
○兼岩傳一君 多数でそういうふうにされることに決定すれば、それでいいんですが、昨日までの話では、法制局長はあるような意見ではありませんでしたか。そんなことないのですか。今日又急に変つたということじやないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/17
-
018・奧野健一
○法制局長(奧野健一君) 元来がこの原案の九條の規定がやや明確を欠くのではないかということでありまして、それでまあ私のほうと政府の法制意見局とがちよつと多少食い違つたような状態でありましたので、よく話合の結果が、只今申上げました通りに解釈が一定いたしましたので、もうその疑問の余地はないかと思います。殊にそういうことが議事録で明らかになつておれば、政府といたしましても、そういう線で行政的に取扱われるものと思いますから、取扱上疑義がないことになりますので、まあ原案でいいのではないかという……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/18
-
019・兼岩傳一
○兼岩傳一君 それは法制意見局と参議院の法制局と意見が一致したという事実をこの委員会において述べられ、且つ委員の多数がそれを承認したということで……、数日来論議いたしておる法律と政令に関する権限、つまり立法権と、それから行政権の関係についての疑義は、そういう手続で解決したと見ていいのでしようか、法制局長にもう一度お尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/19
-
020・奧野健一
○法制局長(奧野健一君) 一般的に法律と政令との関係というのではございませんで、ただここに現われている九條に規定する政令と九條にあります法律の改正というふうなものとの関係だけが明白になつたというだけであります。その一般的な問題は、又更に他の機会か何かに研究すべき問題があろうかと思いますが、この問題だけに関して明らかになつた、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/20
-
021・有馬英二
○委員長(有馬英二君) ほかに御発言はございませんか。別に御発言もないようでございますから、質疑は盡きたものと認めて御異議ございませんか。
「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/21
-
022・兼岩傳一
○兼岩傳一君 それはあります。この九條についてですよ、このことについて僕は持つております、二つ。昨日から申上げているように、この九條については私はさように過半数を以て決定されることには別に異議ございませんが、九條の問題はそれでお片付けになつて私は異議ありません。併し大臣が折角見えられるのですから、一、二質問をしたい。そう大して時間はとりませんから、一、二、はつきり申上げると、二つばかり質問をちよつとしたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/22
-
023・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 兼岩君にお伺いしますが、この法律案についての御質疑を伺つているのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/23
-
024・兼岩傳一
○兼岩傳一君 ええ、私もそうなんです。この法律案についての質問が二つしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/24
-
025・有馬英二
○委員長(有馬英二君) それは大臣の出席の上で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/25
-
026・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そのほうがいいのじやないか。折角大臣が待機しておられますから、次官もおられますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/26
-
027・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) 條文のことなら官房長がおられますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/27
-
028・兼岩傳一
○兼岩傳一君 大臣を呼んで下さい。次官が来ておられから、この一つの問題を次官に聞いていて……。だけど、あなた、大臣をそんなときに呼ばなければ、何のための大臣ですか。もう大体あなたとの関係の質疑は随分継続されて来たのだから、折角だから来られたほうがいいのじやないですか。来られるまで質疑をしましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/28
-
029・有馬英二
○委員長(有馬英二君) それでは御質疑を始めて頂きましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/29
-
030・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうですね、始めましよう。私は二つあるのですが、先ず一つお尋ねしたいのは、こういうことなんです。この法律の備考の二に、在台北日本政府在外事務所の職員に支給する在勤俸の支給額は、在ニユーヨーク日本国総領事館において定めるところによるとなつておるのですが、これはあれですか、次官にお尋ねしたいのですが、この附則の3に関係しているのか、ちよつとこの両者の関係を御説明願いたいのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/30
-
031・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) これは大体今お尋ねになりましたように、在ニユーヨークの日本国総領事館について定めておるところのものと同じものをいう、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/31
-
032・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そのことがこの備考の二の、台北の在外事務所の職員に俸給を與えるというこの備考の規定と、それから附則の第三にあります在外職員とみなす云々という、この三行ありますね、このこととの関係を御説明願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/32
-
033・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) 台北はまだ在外事務所のままで一応行くことになりまするので、名称が変りませんので、従つて附則の第三項と関係があることになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/33
-
034・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうすると、我々が先に審議いたしました在外公館の名称及び位置を定める法律ですね、それには台北はなかつたでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/34
-
035・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) その通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/35
-
036・兼岩傳一
○兼岩傳一君 なぜそれはないのですか。そうしてここでこういう小さな活字で給料を払う恰好にしておいて、そうして附則でみなすと、つまり台北にいる職員は在外職員とみなすのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/36
-
037・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) この前在外公館の名称及び位置を定める法律案のときにもお尋ねがあつたのでありまするが、台湾関係につきましては只今御案内のごとく日華交渉その他が行われておるのでありまして、この法律を作るときまでにはまだこの問題の処置が決定いたしかねましたので、この在外公館の名称及び位置を定める法律の中には台湾関係は載つていないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/37
-
038・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうすると、在外公館ではないわけですね。在外公館ではないからみなすのですね。在外公館ではないと、併しながら在外公館に勤務する在外職員とみなすのですか。一つこの附則の3をもうちよつと説明して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/38
-
039・高野藤吉
○政府委員(高野藤吉君) 附則第三項は、在外公館設置に関する法律に大使館、公使館と一応名前を書いてありますけれども、その国との外交関係が開けない場合におきましては、元通りの在外事務所という名前を使う場合がございます。その場合に第二項におきまして、在外事務所に給與を與える法律を削除いたしておりますから、三項によりまして、公使館、大使館乃至は総領事館と言わずに、事務所という場合でも、この法律によつてその在外事務所の在外職員には在勤俸を出すというのでございます。で、台北の場合には、公館設置のほうには載つておりませんが、在外事務所設置法はまだ生きておりまして、そつちのほうで在外事務所となつておりますから、これに対しても職員に対して支給する額は、ニユーヨークと……、物価が大体アメリカと台北と同じでございますから、その額を台北の事務所の職員に渡すというのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/39
-
040・兼岩傳一
○兼岩傳一君 なぜこういう新らしい三つの法律がですね、外務公務員、それから位置を定める法律及び給與というものが出れば、若し合法的に行けるものなら、こういうあいまいな妙なことをしないで、どうして台北に限つてはこれに入れなかつたのですか、領事館にも、公使館にも、大使館にも……、理由はどういうところにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/40
-
041・高野藤吉
○政府委員(高野藤吉君) それは在外公館設置に関する法律の際に御説明があつたかとも思いますが、起草の当時におきましては、具体的に大使館なり、総領事館なり入れるところまでまだ運びに至らなかつたので、確定次第又法律の改正なり、又国会閉会中におきましては、法的措置をとるというように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/41
-
042・兼岩傳一
○兼岩傳一君 次官にお尋ねしますが、今こういう法律が出るときに、なぜそんな在外事務所という中途半端か形で残るのですか、台北だけが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/42
-
043・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) これは私先ほどお答え申上げましたように、この在外公館の名称及び位置を定める法律を立案し御審議願うまでには、日華交渉その他まだ継続中でございまして、この法律に大公使館或いは領事館として掲げるまでの段階に至り得なかつたのでございまして、これは先ほどお答え申上げた通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/43
-
044・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうすると、日華交渉が、そういう在外事務所しか置けない、大使も公使も総領事も領事も置けないような関係の国と條約を結ぶ、そうすると、條約を結ぶと何が置けるようになるのですか、條約が締結されると……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/44
-
045・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) これはまあ條約ができまして、その後両政府の話合ということになると思うのでありまするが、まあ我々は大体大使館が置かれるのではないかと、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/45
-
046・兼岩傳一
○兼岩傳一君 その條約ができるまでは在外事務所しか置けないのですね。その説明を一つ願いたいですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/46
-
047・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) 台湾との間には、御案内のごとく、すでにいろいろの交渉関係があるのでございまして、すでに在外事務所が設置されておるわけであります。そこで当然これは大使館なり、公使館なり、何らかの在外公館にならねばならんわけでありまするが、日華との間に、御案内のごとく、いろいろの折衝関係にありますので、その妥結を待ちましてから、正式に在外公館の形をきめて行こう、従来から設置しておりまする在外事務所は、この在外事務所に関する法律はあるのでありまするから、そのままの形で置くと、こういうことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/47
-
048・兼岩傳一
○兼岩傳一君 ところが、そういうふうにあなたがおつしやると、大韓民国のほうは條約がまだできていなくて大使や公使を置くような形になつて、台湾は在外事務所というわけは、どういうわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/48
-
049・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) これは御案内のごとく、平和発効と共に朝鮮という国が一つの独立国となりまして、独立の形をとるわけでございます。それで朝鮮関係には在外事務所等がなく、それから新らしい一つの独立国がここにでき上るのでございまして、日韓交渉その他すでに折衝がいろいろ行われておるのでありまするが、この国に対しまする関係におきましては、大体両国で大使の交換をしようと、こういう話合ができております。それで位置を定める法律の中には、大韓民国は掲げてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/49
-
050・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうすると、どこが違いますか、南朝鮮と台湾とはどういう差がありますか、外交上……。こういう法律との関連においてお答え願いたいですね。そういうふうな違つた取扱いをされますのは、その根拠はどこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/50
-
051・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) これはこの在外公館の名称及び位置を定める法律案を御審議願うときに一応御説明申上げたのでありまするが、大体相手国との間にそれぞれ話合を進めまして、大使を交換するとか、公使を交換するとか、そういう話合の下にこの法律を立案したのでありまして、この立案をするときにおきまして、大韓民国との間には大体そこまでの話合が進行しておつたと、日台の間におきましては、大使を交換するか、公使を交換するか、どういう形になるかという、そこまでの話合にまだ到達していなかつたわけでありまして、それだけの相違でございます。交渉の妥結と共に、これは近く何らかの措置がとられることになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/51
-
052・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうすると、外交的な見解としては、北鮮に対する南鮮の関係と、中国本土と台湾の関係においては同一の関係で、ただ一方南鮮のほうとは話が付いたから大使、公使その他が置けるようになつておるけれども、台湾のほうはまだその話が付いていないと、ただそれだけの差だというふうに理解してよいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/52
-
053・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) そう御理解願つてよいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/53
-
054・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そういう理解は、大臣が丁度来られたので、大臣にお答え願つておくほうがよいと思いますが、南北朝鮮が統一しないのに、これに大公使を派遣する、そうしてそれに給料を払うという政府の態度は、明らかに国連憲章違反であるという、この前百七條について大臣に質疑をいたしまして、これは大臣が急がれたためにまだ未解決のままになつておりますが、これは必ずしもこの法律だけで問題を明らかにしなくても、いずれあとに出入国管理令その他ありますから、なおそれで展開させて行くことにして、この議事の進行に私は協力するといたしますが、台湾の問題は大臣とよく論じておらないので、一つ御教示願いたいと思うのですが、今次官の話を聞けば、台湾も條約ができればいずれ大使、全便を置くことになろうが、取りあえず在外事務所を置いて便法を講じて給料を払うのだと、こういうような石原次官のお答えですが、大臣はその答弁を大体承認されますか、若し違つておる点があれば補足して頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/54
-
055・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 政務次官の答弁でよろしいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/55
-
056・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうすると、もう一つ私質問があるので、成るべく短い時間で終りたいと思いますが、私はまさに大臣にお聞きしなければならん問題の焦点に来ておると思うのでありますが、私はさような外交政策を以て行かれる場合には、政治的な角度からと、経済的な角度と、それから外交的な角度から見て非常な大きな……、大臣の持つておる、さような今次官の答弁を承認されるような態度であるところの新らしい外交政策というものは、私は重大な危機を包蔵しておると思うので、この点を明らかにしておかなければならんと思いますが、先ず第一に、この国際法規の上から言つて、台湾をさような取扱いをするということは、私はこれは重要な国連憲章の違反であり、ポツダム宣言の違反であり、カイロ宣言の違反であると考えざるを得ないと思いますが、如何なる根拠があつて台湾と現在交渉をしておられるか、それに在外事務所を置き、話が付けばこれに大公使を派遣するというような方策が、国際協定その他から言つて……、專門的な御回答が願いたいのでありますが、如何なる国際協定を基礎にして、さような日本の行動が是認されるでしようか、一つ御教示願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/56
-
057・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 国際協定等においては、日本がそういう行為をとることを禁止している規定は何もありません。従つて全く自由にできる、こういう意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/57
-
058・兼岩傳一
○兼岩傳一君 もう少し細かく申しましよう。カイロ宣言に、満洲、台湾及び澎湖島のごとき、日本が中国人より盗み取つたもの一切の地域は中華民国に返すということを、一九四三年のカイロ宣言がさようなことを宣言しており、ポツダム宣言がこれを、カイロ宣言の條項は履行せられると、四三年のカイロ宣言を再確認しておるのでありますが、このカイロ宣言並びにポツダム宣言の立場から言つて、日本が台湾とさような交渉をし、さような在外事務所を継続し、これに大公使を派遣するというようなことは、これはカイロ宣言違反、ポツダム宣言違反であると私は考えざるを得ないと思うのですが、如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/58
-
059・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 私はそうは考えません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/59
-
060・兼岩傳一
○兼岩傳一君 どういう根拠ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/60
-
061・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 我々は実際上の実情を基礎にして考えております。で、台湾には、国民政府がこれを統治しているという事実は明確にあるのであります。そこで、でき得る限り多くの国と友好関係を結びたいという政府の方針から言えば、台湾の政府と友好的な條約を結び得れば、これを置くのに何ら躊躇することはないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/61
-
062・兼岩傳一
○兼岩傳一君 併しですね、カイロ宣言及びポツダム宣言と言い、これは中華民国へ返さなければいけないと考えておるので、あなたの答弁を是認するためには二つの仮定が成立ちましよう。一つは台湾国という、あなたが隣邦として仲良くしようと希望しておられる台湾国という主権を持つた国家があると見るのか、それとも中華民国は台湾であると、こういうお考えなんでしようか、それともポツダム宣言、カイロ宣言は日本は実行しなくてもよろしい、蹂躙してもよろしいと、こういうお考えか、その辺はどういう解釈なんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/62
-
063・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 中華民国は中華民国でありまして、不幸にして中華民国の中に二つの政府が存在しているというのが、これが現実の事態であります。そこで将来一つの政府になれば、台湾も中華民国の一つの政府の下に立つのが当然でありますが、今は二つの政府が成立しておる、こういう事実があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/63
-
064・兼岩傳一
○兼岩傳一君 それからカイロ宣言とポツダム宣言の関連においてもう少し展開して頂きたいですね、あなたの御見解を……。ところが台湾、澎湖島というものは、カイロ宣言によれば中華民国に返さなければならんものでしよう。たまたまそこに勢力によつて主権を構成したもの、その国々の国民からは全く嫌われており、民心が離反していようとも、とにかく武力を以て統治しておる、こういう関係で一応台湾国というようなものをあなたが、勝手に日本が考えて交渉しておられるのか、若しそうだとすれば、それは明らかにカイロ宣言とポツダム宣言に違反すると考えざるを得ないのですが、その点如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/64
-
065・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 台湾国なんということを言つたことは一度もありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/65
-
066・兼岩傳一
○兼岩傳一君 どこですか、それではあなたの交渉しておられる主権一は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/66
-
067・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) でありますから、中華民国というのは、一つの領土と国民から成立つておる上に普通ならば一つの政府がある、ところが今は兼岩君の言われたように武力を以て政府を樹立しているものが二つある、まだ統一いたしておらない、そこで我々としてはどちらにも、できるならば友好関係を結び、将来は統一した政府と友好関係を結びたい考えでありますが、差当りは台湾としか友好関係を結ぶ状況になつておりませんから、台湾と友好関係を結んで行こう、これがつまり善隣友好という方針に則つたものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/67
-
068・兼岩傳一
○兼岩傳一君 あなたの善隣友好とは非常に御都合がよろしいようですが、あなたには併しそれは明らかにカイロ宣言に違反するのじやありませんか。私はその点を明快にして、專門家として一つ明快にして下さいというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/68
-
069・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 私は違反しておる点は一つもないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/69
-
070・兼岩傳一
○兼岩傳一君 どういうわけですか、僕が違反していると言つたことを今もう一遍繰返してもいいのですが、満洲、台湾及び澎湖島のごとき、日本国が中国から盗み取つたところの一切の地域を中華民国が回復することにありとカイロ宣言がそれを規定しておる以上、さような台湾の地方的な政権、亡命的な政権と、五億の中国本土の政権を抜きにしてそんな政権と取引ができるわけはないじやありませんですか。どういう根拠でできるという、国際協定に対する態度でそれをできるという結論に到達したのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/70
-
071・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 中華民国というものと中華民国の中に政府が二つあるという事実とは違うのであつて、台湾、澎湖島が中華民国の領域になるということは、その中華民国の中に二つの政府があるということを妨げるわけに行きません、事実あるのですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/71
-
072・兼岩傳一
○兼岩傳一君 あるという事実をあなたと議論しているのじやないのです。あるという事実に対して、一方台湾とあなたが交渉し、且つ在外事務所を置き、且つこれに給料を払い、且つこれと交渉して近く大公使を派遣するというような、全く国際協定から言つたならば許しがたいところの行動だと私は考えるのだけれども、あなたはそう考えていないとすれば、それはカイロ宣言やポツダム宣言は蹂躙してもよろしいとあなたは考えておられるか、そうでなければ僕らと違つた解釈をカイロ宣言及びポ宣言に持つておられるか、どちらか二つに一つだと考えるのですが、その点はどうなんでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/72
-
073・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) あなたと全く違う意見を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/73
-
074・兼岩傳一
○兼岩傳一君 どういう点ですか、それを説明して頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/74
-
075・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 私たちは澎湖島は中華民国に入るのであつて、中華民国というのは名前は昔から支那と呼んだときもありましようし、中華民国と呼んだときもありましようし、清国と呼んだときもありましようし、いろいろあります。ありますが、要するに中国というもの、まあ中国というのも一つの名前ですが、その中国の国民とその領土を構成しておる中国というものに入るのであつて、その中国の中に領域を異にして二つの政府がある場合に、そのどの政府と友好関係を結んでも我々は一向差支えない、こういう意見であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/75
-
076・兼岩傳一
○兼岩傳一君 それはこのカイロ宣言、ポ宣言……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/76
-
077・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 兼岩君に申上げますが、兼岩君、委員長の許可なしに発言を許しません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/77
-
078・兼岩傳一
○兼岩傳一君 さような行動はポ宣言、カイロ宣言に違反しないという根拠を一つ聞かして頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/78
-
079・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) ですから、ちつとも違反しないという根拠を示しているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/79
-
080・兼岩傳一
○兼岩傳一君 どういう点ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/80
-
081・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 日本は平和條約で台湾、澎湖島、朝鮮その他に対する主権とか、その他の権原を放棄することをいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/81
-
082・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうそう、それはそうですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/82
-
083・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) そこでその放棄した領土の上に如何なる政府が成立するかは、これはカイロ宣言、ポツダム宣言で否定はいたしておりません。そこで現実にできている政府と友好関係を結ぶことは何ら差支えないという見解であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/83
-
084・兼岩傳一
○兼岩傳一君 これは驚くべき解釈なんですが、そうするとですね、五億の中国人のうち八百万人が台湾にいるようでありますが、そういうものを対等と考えて、こちらとの條件がよければ今言つた大公使を派遣し、又次の條件がよければ、又こちらともするという意味ですか、つまり大きいほうの大陸のほうの中国とは、将来もう仲良くしないので、台湾のほうを中華民国と認めるというのですか、その辺はどちらなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/84
-
085・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) そういうことは国の領土の大きさとか、或いは人民の大きさとか、そういう問題できまるのじやないのであります。例えば第二次世界大戰中にも、オーストリアもドイツに占領された。ベルギーもドイツに占領された。オランダもドイツに占領された。併しながら政府は、少なくとも亡命政府のようなものはロンドンにあつて、政府だけで人民も領土もなかつたかも知れんけれども、連合国はこれを承認して、これを政府として取扱つて来たのであります、その時代時代によりまして……。必ずしもそれが今の台湾や中国本土の例になるわけじやありませんけれども、国が大きいとか、領土が大きいとか、人が多いとか、そういうことで問題を決するのじやない。我々のほうから言えば、友好関係を結び得る政府との間には、できるだけ多くの政府と友好関係を結んで行きたい。できるならば世界中の国と友好関係を結んで行きたい。これは政府として当然考えることだ。そのために朝鮮とも台湾とも交渉をいたしているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/85
-
086・兼岩傳一
○兼岩傳一君 大体もうこれ以上になると討論になりますから……。私は岡崎大臣の答弁はカイロ及びポ宣言の蹂躙であり、国連憲章に対する全くの違反であるというふうにいよいよ感ぜざるを得ないのでありますが、もう一つだけ聞いて、もうこの問題は打切りましよう。あとは討論に譲りましよう。それでは最後にお尋ねいたしますが、韓国のほうにはすでに大公使を……、大韓民国ですね、あの南朝鮮には大公使の派遣をもうすでにこの前の法律で承認を求めておられるが、台湾は又こういうふうな扱いをされるのは、どういう点に根拠があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/86
-
087・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ほど政務次官もお答えしたと思いますが、若し台湾との話合が確実に付くことになりますれば、この中に追加いたすこともいいのでありますが、それでなくてもこの第九條には「在外公館の増置に伴つて在勤俸の額を新たに設定する必要を生じた場合には、」というので、新たにこれは台湾のみばかりじやありません。ほかの地域に対しても新たに在外公館を増置する場合の規定もありますので、必ずしもここに全部載せてあるというわけでないのであります。予想されてはおりますが、まだ具体的になつておらないので、その他の国もあるのでありますから、台湾に対してはそういう取扱を只今のところいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/87
-
088・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうするとですね。事柄は台湾に対しても、南朝鮮に対しても、事柄は全く同じで、ただ交渉の段階が違つているというだけに了解してよろしいのですか、政府の方針は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/88
-
089・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) そうお考えになつて結構であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/89
-
090・兼岩傳一
○兼岩傳一君 それではこの問題はその程度にしておいて、今一つの問題をお尋ねいたします。それは外国人の問題で、すでに私は外務公務員法のときにこの問題を或る程度取上げましたが、その点をもう少し明確にして頂きたいのでありますが、前半は外務次官にお答え願つて結構なのでありますが、在外公館に雇入れる外国人というのが公務員法に規定してありましたのですが、この在外公館に雇入れられる外国人に対する俸給の問題はどこの條文に規定されておるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/90
-
091・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) これは雇入れます際に、いわゆる雇用契約と言いますか、契約によりまして、それできめられて行くわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/91
-
092・兼岩傳一
○兼岩傳一君 だからこの法律の中にはないというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/92
-
093・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) その通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/93
-
094・兼岩傳一
○兼岩傳一君 次官にもう一つついでにお尋ねいたしておきますが、外務公務員法その他日本の法律の適用からは、俸給のことは規定されておりませんが、外国人は外務公務員法その他日本の法律の適用からは免れるのですか、免れないのですか。給料の規定がないということは、どういうことを意味するでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/94
-
095・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) これは外務公務員法のときにもお話申上げたと思うのでありますが、大体外国人は雇用契約と言いますか、雇用関係で何しておりまするので、従つていわゆる内国人を律する国家公務員法であるとか、そういうもので律する関係にはなつておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/95
-
096・兼岩傳一
○兼岩傳一君 これから先は大臣にお尋ねしたいのですが、やはりその問題なんですが、私たちこの外国人の雇入れということについて非常に心配いたしますのは、直接この外国人の雇入れというものが、通訳であるとか、タイピストであるとかいうふうな性格のものでなくて、日本の外交政策の中心的なものに外国人が当られるのじやないかという心配が私あるので、この点を給與との関連においてもう一度ここで大臣にお尋ねしておくのですが、先ず第一に、外国人を雇用されるのは、現在どこの在外公館に何人くらい雇うというような計画をお持ちでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/96
-
097・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 今のところ正確なそういう計画は持つておりませんが、これは今兼岩君の言われたような臨時雇のタイピストであるとか、クラークであるとか、或いは掃除人夫であるとか、こういうものはいずれあるわけであります。これは別に問題にならないと思います。で、従来この戰争前において外国人を雇いました例は、常勤的なものは非常に少いのでありまして、主として、例えばアメリカにもおりましたし、イギリスにもおつたのでありますが、それは例えば大使が演説をする演説の原稿を見るのに、ただ英文だけで見るならば日本の外交官でもできるのでありますが、併しその国情に合うように、又一般のその国の人人の感じはどうであるかというような点を見てもらうには、やはりそこの国の相当の人で、日本の関係に理解の多い人、深い人に見てもらう必要がある場合が多いのであります。そういう場合に、何と申しますか、相談相手に常勤ではなくして雇う場合があり得るだろうと思います。又そういうことについては、その国の国情についてもわかりにくいこともありましようし、そういう点も質問して見たいこともありましよう。それから経済問題の特に重要な所では経済関係についての意見を求めたり、関税の問題について意見を求めたりする場合もあるかも知れませんが、併し今考えておりますのは、比較的高級な人については常雇、常雇と言いますか、毎日出勤するような種類の任務の人でない者があり得るものと考えておりますが、これはやつて見た上のことであるし、又そういう適当な人がおるか、おらないかにもよりまするから、今のところ具体的にどことどこにどういう人を雇うかということは考えておりませんが、そういう場合もあり得るということだけは申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/97
-
098・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうすると、まあいわば顧問というふうでしようか、顧問というような恰好……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/98
-
099・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 顧問というのも少し重過ぎるかと思います。というのは、外交政策とか、そういうむずかしい問題は本省なり東京できめまして、これを訓令するのでありまして、その訓令を如何に実行するかという点についてその国の人の意見を聞く必要がある場合のことでありますから、まあ相談相手という程度のことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/99
-
100・兼岩傳一
○兼岩傳一君 そうすると、その相談相手の程度に応じて待遇をいたされ、給與その他の待遇をいたされると思いますが、基準がなくて、いわばそれは大公使に一定の予算の範囲内において白紙で一任されるのですか。或る程度の方針を以てこれに臨まれるのですか、その辺は如何なものでしよう。給與の実際の基準、やり方……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/100
-
101・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) これはつまり勤務の状況によるのでありまして、大体呼び出して必要なときに聞くので、一週間に一遍聞くこともあるし、二週間に一遍聞くこともある。その程度にもよります。又どういう人であるかということについては、先ほどちよつと申したように、これは日本の事情にも理解のある人であると考えておりまするし、又相当の社会的の地位にある人でもありましようからして、東京でもわかるわけであります。無論東京に請訓をいたしまして、これこれの人をこの程度に雇いたいと思うがどうであろうかということで、東京でそれでよろしいということになれば雇われるわけであります。併しそういうふうに常勤でありませんので、その仕事の繁閑によつておのずから給料も違つて来る。そう大きな給料でないことは、常動でないために自然そうなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/101
-
102・兼岩傳一
○兼岩傳一君 まあ私はまだお尋ねしたいことがたくさんありますが、給與に関する法律案についての意見につきましては、討論のときにいたすことにして、質疑としては、私はこの法律に関しては質疑としてはこれでやめようと思います。ただここで一言申上げておきたいことは、大臣もおられるところで私は一言苦言を呈しておきたいことは、私は当然この三つの外務公務員法及び地位を定める法律案と、この給與の法律案、こういうような一連の平和回復に伴う、平和條約発効に伴うこういうような重要な法律案を出されるときには、当然私は大臣、本来から言えば吉田外務大臣或いは吉田総理大臣と岡崎国務大臣という形で出て来られてその外交政策についての抽象的でない具体的な外交政策を先ず展開され、それらの外交政策を具体化するために、こういうふうな在外公館及びこれに対してこういう給與方針で臨むのだというふうに説明のあるのが、民主国家の国会に対する私は政府の大臣及び総理の当然の任務だと考えますが、それは一歩讓歩いたしまして、今日でなくてもいいのでありますが、近い将来に私はその点は岡崎大臣が責を果され、少くも目下上程されておる出入国管理法、これは私は討論のとき、ちよつと触れたいと思いますが、こういう問題もあるので、質問があれば出て来て答えてやろうという態度を一擲されて、一度具体的な私は外交の今後の方針について、私は大臣の説明あつて然るべきものと考えますが、大臣のお考え如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/102
-
103・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 御説明をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/103
-
104・兼岩傳一
○兼岩傳一君 それでは委員長、私は質疑はこれで打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/104
-
105・有馬英二
○委員長(有馬英二君) ほかに御発言はございませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/105
-
106・有馬英二
○委員長(有馬英二君) それでは質疑は盡きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/106
-
107・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/107
-
108・團伊能
○團伊能君 只今上程されております在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案に関しまして、私は賛成の意を表明いたします。
この法案につきまして細かい部分につきましては、先日来いろいろ委員会におきまして審議が加えられたところもあります。その点におきまして、なお多少私どもも了解しがたいところもございますけれども、講和発効に当りまして、ここに新らしく外交を再開するときに、できるだけこの外交の成果を挙げて頂くためのこの外務公務員の給與は重大なことでございますので、一日も早くこの法案の通過を願つていたのでございます。実はその中で一、二私も希望として申しますならば、この給與の割り振りの表にございますが、それを見ましても、実に今日海外に行かれる外交官の給與というものは非常に不十分なことは先日来のいろいろの質問でわかつております。米国大使のごとき、日本の金に直して見れば九百四十万近い非常な、千万円近いような多額の費用でございますけれども、これをアメリカの通貨に直しますと、十分とは申されず、現に他国と比較いたしましても、ブラジルその他の大使よりも遙かに少い給與でございます。その上に今日在外におきまして活動をいたしております日本の商社その他の種々な点におきまして、援助を受けることもできず、又従来戰争中以来の日本に対するいろいろな感情もまだ消えないところもございまして、これらを調整して行く上に外交官の使命は従来よりも非常に重きものがございますので、不十分かと思いますが、併し今日の日本の経済状態を考えまして、これだけできるようになりましたことは、私ども甚だ御同慶の至りと考えることであります。ただこの別表によりまして、順位付られております給與の順序等につきましては、なお一応現地の物価等を照し合せて修正をして頂きたいと考えたところもあります。例えば本来自国におきまして生産のない国、例えば南阿、シンガポール、香港、セイロン、エジプトというようなところは、ヨーロツパ諸国の生産のあるところよりも物価が非常に高いのでありまして、諸種の物資を外国から輸入してこういうところは使つております。ために却つてヨーロツパの諸国の、或いは南米或いはアメリカの諸国よりも多額の費用を要するところもありはしないかという点もあります。殊にヨーロツパの中でも、今日ベルジユームのごときは非常に高物価でありますが、ただ国の順位、何と申しますか、国の位の順位というところから、この給與が割り振りされておると考えられますところは、もう一応の研究をして頂きたいと存じます。なおその次に外国人雇入れの問題に関しまして、先ほど岡崎外務大臣からお話もありましたが、戰後の日本に外交を再開するに当りまして、相当従来ただ外交官が平和のうちに駐在せられたのと違い、いろいろな困難な点があると思いまして、その中にいわゆる今日のパブリツク・リレーシヨンズというような仕事、つまり土地の人に対して相当日本の立場を理解させる仕事というものが、特にここ暫らくの間に重要であるかと思います。そのために外国人の現地において協力を得ることが相当必要であり、單に経済問題に関してのみならず、一般政治として、又一般日本人の人気の回復としても必要であり、そのために新聞その他を動員しなければならないと思いますが、併し、一、二の例をとりますと、名前は挙げませんが、米国において日本人が主として世話になつておりまして、外務省或いは満鉄その他が相当支持していた米国人で、美は日本のために非常に盡してくれたと思いましたところ、その人が亡くなりましたところが、日本政府或いは満鉄よりもらつていた支給以上に支那政府からもらつていたというようなことか遺産の上に暴露して来たりするような、甚だいわば杜撰な人事もございましたので、この点非常に注意して、よき外国人と協力して、日本の立場を再び是正して行くという仕事の点も併せて、相当の予算を以て考えて頂きたいと思います。これは公務員の外交官の給與問題以外かも知れませんが、たまたまここに外国人雇入れの問題がありますので、その点に加えて意見を申上げる次第であります。なおもう一つ私がお考えを願いたいと思うことは、外国人の中でも、アメリカに主として滞在する日系市民、つまり二世でございますが、この二世は今日アメリカにおきまして、従来と違つて非常に信用を得ていい立場をとつておりますし、教育も殆んど大学を出ておるものが多いというような人があり、語学、翻訳その他の点におきまして、今日日本において教育を受けた人よりも、或る点におきまして、頭脳的にも又いろいろな生活條件から言いましても、語学においても優れている人が決してないのではありませんが、これらは多く国籍上は外国人になつておりますが、その愛国心その他においても日本に対して非常に忠誠な人もありますので、その点をお考え頂いて、これらも併せ、敗戰後の非常に困難な外交の復活に協力さして頂くことを一つの外務省の国策としてお願いいたしたい次第であります。なおこういう点を勘案して新らしき外交に当つて頂くことを望みながら、この法律案に賛成をいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/108
-
109・有馬英二
○委員長(有馬英二君) ほかに御意見はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/109
-
110・兼岩傳一
○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表して、遺憾ながらこの法律案に反対せざるを得ないのであります。反対の要点は三つであります。
第一に、この法律案の前の二つの法律案と全部関連的にこれを見て、国民と共に苦しむという私は日本的な信念を持つた外交政策に基くものでないと考えざるを得ない、私たちは例えば国会議員として公務員の最高の俸給に相当する額を受取つておるけれども、それでも決して我々の生活は戰前に比べるようなものではない。いわんや他の公務員諸君、労働者、農民の困難な生活及び実業界におきましても、極く一部の人を除いては非常に困難な状態におる。然るにこの外務省の関係の官吏出身諸君が、あたかも日本が平和條約によつて独立を得、そうしてこれからは輝かしい外交生活が始まるのだというふうな甘い考えで、外務官僚主義の復活、そういう考えで出ておられる、従つてこの給料を見ましても、いろいろ理窟を付けておられますけれども、この貧しい日本からそれぞれ自分の国において最高の公務員の俸給、賞與を受けたほか、在勤手当、加俸等々を入れれば少くも年額七百万円、八百万円、九百万円、アメリカの大使に至つては九百七十四円、一千万円に近い厖大な、日本人としての目で見て厖大な額を以てこれから外交事務に当つて行かれる。然るにこれらはことごとく日本の国民の血税でありまして、私はどういう理窟を付けようとも、国民と共に苦しみ、敗戰日本という意識を持つて日本を建直すべき私はこの気魄なり、決意が欠けて、古い日本の復活というふうの私は点しか見当らないことが非常に遺憾であります。なお日本人としての独立性、外国人の問題もありますが、これは公務員法のときに十分反対討論をいたしましたから、これに関連してこの問題は省略いたします。
それから第二に反対しなきやならん点は、大韓民国へ大公使を派遣する、西ドイツに大公使を派遣し、台湾に在外事務所を置いて、これを近い将来に大公使にすると、朝鮮は南北が不幸な戰争をやつておる、ドイツは東ドイツと西ドイツが不幸な対立の中に苦しんでおる、台湾又然り、こういうような状態のときに、私は統一を待たずしてこれと外交交渉を始め、大公使を派遣するということは、明らかに私はカイロ宣言、ポ宣言、それから国連憲章等等に違反することは、私は岡崎君が何と口の先で言われても、私はこれは明確な国連憲章その他の国際憲章に対する違反である。ただ今はアメリカの大きな実力を擁護して、背景にして横車を押しておられますが、ほんの五年か十年の昔を我々が顧みてみましても、例えば国際連盟から日本が軍閥の力、ヒツトラー・ドイツと結んでこれから脱退し、アメリカと激しい敵対の下に中国を武力占領して、そのときにアメリカが九カ国條約に違反する日本の行動は絶対に認められんと言つた、そうしてこれに対して外交当局は焦土外交などと自惚れたことを言つておつたが、実際に文字通り焦土外交であつたということは、その後の第二次世界大戰の敗戰がはつきりと歴史的な裁断を下しておると思う。そして今日私と岡崎国務大臣と討論いたしましたが、どちらの主張が質疑を通して正論であるか、今多数を以てこの法律案を可決されようとも、この法律案そのものが明らかにカイロ宣言、ポ宣言、国連憲章に違反するものでありますから、こういうものは大した生命を持ち得ない、これは惨敗に終るべき運命は、今私が申しました国際連盟の脱退、九ケ国條約無視等々における日本軍閥の、あの日本帝国主義の時代と全く私は同じである。違うところは、前のときは独立国であつたし、今日はこれがアメリカの植民地という形において、この国際協定その他の蹂躙が行われて来ただけである、そして両者共に失敗に終るということは明らかであるということを、遺憾ながらここで私は不幸な将来を予言せざるを得ない。
それから第三の問題、これが最も重要で、実はこれにつきましては、先ほど岡崎大臣は僕に約束して、今後外交政策を発表するとおつしやいましたが、この外交政策の具現化されたこれらの法律案、特にこの法律案に見ましても、私が先ほど非常にくどく台湾の問題を論じまして、又数日前には朝鮮の問題を激しく総理に対して質疑をいたしましたが、これを私は議論を弄ぶのでなくて、こういう五億の民を持つ中国を袖にして、台湾のようなああいう非合法な亡命政権と款を通ずるということは、成るほどアメリカが圧力でそういう方向に進んで行かれたとしても、これは私は日本の労働者、農民は勿論、資本家、全国民の大部分の人にとつて非常に不幸なことだと思います。というのは、例えば私たちが中国ソヴイエトと貿易をしなければならんと言うと、政府は、何東南アジアでいいのだと、これに対して私はばかの一つ覚えであるという非難を浴せておりますが、このばかの一つ覚えも、まさにこの出入国管理法によつて華僑に対して不合理な日本が圧迫を加えるにおいては、東南アジア一千万の華僑が、私はどういう態度で出て来るかということを考えただけでも、私はこういう台湾、南朝鮮、西ドイツ一辺倒な、こういう私は外交方針に伴う日本の経済的な将来を考えると、私は全く晴澹たるものであると思います。で、而もこのアメリカの政策は決して一億四千万のアメリカ国民の、アメリカのあの歴史的に大きな民族であるところのアメリカ民族の政策でなくて、現在アメリカの政権の中心を握つておる一部の独占資本、ウオール街の人たちのアジア侵略の政策に基いたところの政策に日本はそのまま唯々として従つておるのでありまして、例えばモスクワ経済会議に対してもパスポートは出さないという乱暴をあえてされましたが、今や新聞の伝えるところによつて総額二億米ドル以上のものが中国、ソヴイエト、イギリス、ベルギー、デンマーク、印度、アルゼンチン、ブラジル、東ドイツ、ルーマニア、イタリア、イラン、フランス等との国々において、二億米ドル以上の取引が結ばれ、そうして岡崎大臣は西ドイツの人たちや、アメリカからは参加しないであろうと言われましたが、アメリカからは十二人の代表が参加し、西ドイツからも九人の代表が参加しておるのみならず、国連は五十二カ国でありますけれども、モスクワの経済会議は実に四十八カ国、五百名の代表が集まつて、今日なお非常に東西の貿易について取引を進めておる、ところが今我々が見るところの法律案は、およそそういう傾向と相反し、暴力的に勝手に旅券法を拡大してパスポートを拒絶された、この憲法をも蹂躙するような政策がそのままやはりこの在外公館についても出ておるのであります。台湾とそんなことをされたつて、南朝鮮の李承晩とそんなことをされたつて、キリノ政権と一時仲良くされましても、私は西ドイツのアデナウアーとだけ結ばれましても、全世界の国は社会主義、資本主義を問わず、戰争を排撃して平和のために手を結んで行くという基本的な平和政策の立場に立たれない限り、こういう私は対外政策は政治的にも経済的にも、文化的にも失敗するものである。而もその失敗は遠い将来でないと考える。この第三の理由。以上の三つの理由から私はこの法律案に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/110
-
111・有馬英二
○委員長(有馬英二君) ほかに御意見はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/111
-
112・平林太一
○平林太一君 私は本案に進んで賛意を表するものであります。只今共産党の兼岩君から三つの例を引かれまして、反対の御意見を述べられたのであります。これを承わりました。併し私を以てこれを、同君の御意思を評しますれば、いわゆる事を針小棒大に構え、牽強附会の説を羅列して、我が国家と、かの国家とをややもすると混淆いたしておるがごとき感、誠に深い次第であります。我々は今日戰に敗れて六年有半に相成り、今漸くにいたしまして、国家独立の黎明を迎えんといたしておる今日におきまして、過去を回顧いたしまして、いやしくも貧すれば貧するがごとき結果に相成つてはなりません。我々民族の持つておりまする気節は永遠に高いものを持つておるのでありまして、その気宇は常に広大であります。かくして世界の、国際国家の一員といたしまして、むしろ今後押しも押されもしないところの確固不動の態勢を以て今や邁進をいたさんといたしておるのであります。このときに当りまして、この在外に公館を設置する、その公館に勤務する公務員、それぞれの人々に対しまして、これが給與の措置を講じますることは当然でありまして、このことによりまして、むしろ我が国家は国際間の真の独立を表裏共に全うし得る体制を整えた次第でありまして、全国民も恐らく私はこの事実を知るときにおきまして、漸く過去六年有半の苦難の報いられたることを喜ぶこと以外に何ものもないと思う次第であります。本案に対しまして満腔の賛意を表すると同時に、これらの給與、これらの措置が、以て我が国家の将来の発展、興隆に寄與せんことを深く期待いたしまして、この法案に賛成をいたすものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/112
-
113・有馬英二
○委員長(有馬英二君) ほかに御意見はございませんか……。ほかに御意見もないようでありますから、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/113
-
114・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。それではこれより採決に入ります。在外公館に勤務する外務公務員の給與に関する法律案を原案通り可決することに賛成のかたの挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/114
-
115・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 過半数と認めます。それでは本法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつて、あらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとし、御承認願うことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/115
-
116・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。
それから本院規則第七十二條によつて、本委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
杉原 荒太 平林 太一
團 伊能 徳川 頼貞
大隈 信幸 伊達源一郎発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/116
-
117・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 署名洩れはございませんか……。署名洩れはないものと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/117
-
118・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 次に、千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の條約の範囲外の薬品を国際統制の下におく議定書への加入について承認を求めるの件を議題といたします。本件につきましては、先に予備審査をいたしまして、すでに質疑もなかつた案件でございますが、改めて御質疑のおありのかたは御質疑をお願いいたします。……別に御発言もないようでございますから、質疑は盡きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/118
-
119・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。……別に御意見もないようでありますから、討論は終結をしたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/119
-
120・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。それではこれより採決に入ります。千九百四十六年十二月十一日にレーク・サクセスで署名された議定書によつて改正された麻薬の製造制限及び分配取締に関する千九百三十一年七月十三日の條約の範囲外の薬品を国際統制の下におく議定書への加入について承認を求めるの件を原案通り御承認になることに御賛成のかたの挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/120
-
121・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 全員一致でございます。よつて本承認の件は可決すべきものと決定いたしました。
なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/121
-
122・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 御異議ないものと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、本委員長が議院に提出する報告書には多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
杉原 荒太 平林 太一
團 伊能 徳川 頼貞
大隈 信幸 伊達源一郎
兼岩 傳一発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/122
-
123・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 御署名漏れはございませんか……。御署名漏れないと認めます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/123
-
124・平林太一
○平林太一君 この際私は岡崎国務大臣に緊急と認めまする当面の問題に対しまして、二、三お尋ねをいたしたいと存じます。
米国大統領トルーマン氏は、本曉一時十五分、日本時間を以ちまして、日米平和條約批准書に署名を完了せりと伝えて参つております。同時に米軍の日本駐留に関する日米安全保障條約にも同様調印を完了せりと伝えて参つております。誠に私自身感慨一入深い次第であります。これによりまして、日米両国の平和が太平洋に平和の礎石を置きまして、更にこれが敷衍拡大いたしまして、国際連合の大精神たる世界の平和に大いなる基盤をここに作り得たものと相感じまして、誠に感慨の深きを覚える次第であります。それにつきましても、特にこの際大臣にお尋ねをいたしたいと存じますことは、講和の発効に対しましては、すでに政府は米国政府より正式なる事実に対しての通報に今日只今相接しておられるや否や。若しそれ接しておらざれば、その期日の見通しに対しては、本月の何日頃にこれが該当し得るものであるかということを、先ず第一にお尋ねをいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/124
-
125・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 大統領が署名をされたことについては、本朝ワシントンの事務所から電報に接しました。その電報によりますると、二十八日に批准が完了する模様であるということになつておりますが、それは正確な正式な通報によるものであるか、それともそういうニユースを得たので急いで電報して来たのか、電報では非常に明確になつておりません。が、恐らく大体の今の模様から見まして、二十八日には少くとも講和條約が効力発生するであろうという報道は間違いないと考えております。正式な通報はワシントンにおいては我が在外事務所長に行われましようが、場合によつてはワシントンの訓令に基いて、東京におきましても、外交局から日本政府に通報があるかも知れないと思います。これはまあ確認の意味と思いますが、只今入手しましたものは、非常に早急に電報して参つたものだけでありますから、まだ正式な通報であるかどうか、その点はちよつとはつきりいたさない状況であります。もう本日中か、明日中くらいにははつきりするだろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/125
-
126・平林太一
○平林太一君 只今の岡崎国務大臣の御答弁を了承いたします。第二は、同時にこれに関連をいたしまして、この際早急にお尋ねをいたしておきたいと思いますることは、いわゆる講和発効の瞬間において、特にこのことを質しておきたいと思うのでありまするが、アメリカ合衆国と日本国との間の安全保障條約の署名に際しまして、吉田内閣総理大臣と、アチソン国務長官との間に交換されました交換公文の内容に、かくのごときことを記載いたしておるのであります。「平和條約の効力発生の後に一又は二以上の国際連合加盟国の軍隊が極東における国際連合の行動に従事する場合には、当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合の行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にすること、」、こういうことは、これは抜萃でありますが、あるのでありますが、講和発効のその瞬間におきまして、只今申上げました事柄に該当いたしまするか、この現在我が国内におきましてこのことがどれに該当するか、又このことにどのような見解をお持ちになつておりまするか、これを伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/126
-
127・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今朝鮮と国際連合の行動を支持しておりまする軍隊で日本に駐屯しておりまするのは、アメリカ軍隊と英濠の軍隊であります。併しながらその他の軍隊も朝鮮にはおりまして、そのうちの一部が軍隊としてではありませんが、軍人が病気なり、負傷なり、その他休養なりで、この日本に参つておる事例もあります。そこで我々としては、只今御指摘の交換公文の趣旨によりまして、国際連合の行動に従事しておる軍隊が日本の国内にその一部を、「支持」という字が使つてありますが、置くことを希望するならば、これに対して同意を與え、便宜を供與しようと考えております。そこでアメリカ側なり、英濠側なりにどういう希望があるか、又どういう軍隊をどの程度日本に置きたいと考えておるのかという質問もいたしておりますが、先方ではいろいろ関係もあるんでありましよう、又朝鮮の休戰問題もだんだん話合が進んでおる関係もあるかも知れませんが、まだ希望等を申出て来ておりません。そこで我々はこの希望等がわかりました上で、国内の情勢に適するように、そしてアチソン、吉田交換公文の趣旨に叶うような程度に、これに対して便宜を供與する等の方法を講じよう、こう考えて只今待つておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/127
-
128・平林太一
○平林太一君 只今御答弁中に英濠軍のお話がありましたが、現に広島、呉地区は英濠軍が終戰以来占領軍として駐屯して今日に至つております。講和発効に当りまして、この英濠軍はどういうふうな処置に出られるのであるか、これに対しまして御答弁を煩わしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/128
-
129・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 英濠軍が日本の占領軍の一部としての性格は、講和発効いたしまするとなくなるわけであります。但し講和條約に規定がありますように、九十日以内は、主としてこれは船待であるとか、その他精算であるとか、各種の整理等が必要でありまするから、九十日の間は依然として必要な場合に必要な範囲内でその期間を保持することができるわけでありまするが、原則的には講和條約発効と共に占領軍という形体はなくなるわけであります。ところが英濠軍は只今その大部分は恐らく朝鮮において国連の軍隊の一部として行動しておるものと考えております。従つて朝鮮の問題が解決しない間は、日本においてその軍隊の一部を置きたいという希望があるであろうと常識的には考えられますので、今度は国連軍の一部としての性格を持つた英濠軍が日本に暫定的におることを認めるべきであるかどうかという問題になつて来るわけであります。これは国連軍の行動を支持する意味の軍隊でありますならば、先ほど御指摘の吉田、アチソン交換公文の趣旨に従つて、日本政府としてはこれを容認し、これに対して施設等の便宜を供與することになつておりますから、先方から希望がありますれば、国内の実情に応じて適当な話合をいたそうと考えておるわけでありますが、今申したようにまだ申出はないのであります。そこで只今それを待つておるという状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/129
-
130・平林太一
○平林太一君 大体私はそれで了承いたしたのでありますが、連合国が終戰以来駐屯地におきまして占領軍の使命を果すと同時に、又一面該地方に対しまして、この秩序安寧のために、求めずして我がほうといたしましては、これが大きな効果をもたらしたということは、今日この條約の発効に当りまして、特に英濠軍の特殊性に鑑みまして、私は一面さようなことをも考えるものであるということをここに申上げておきたいのであります。常識上といたしましては、当然講和が発効いたしますれば、只今お話のような次第でありますから、今日まですでに何らの話合がないということは、当然撤退をせられることと想像いたしておる。只今私はさように考えるのであります。又さような性格のものであると存じております。政府はこの点に十分に留意いたしまして、これらのいわゆるきまりを付ける、講和発効におきまして、この決むべきものをきめる、そうしてはつきりしたところのそこに秩序を整備するということに対しましては、十分に一つ考慮せられて、誤まりのない処置をとられることを要望いたしておく次第であります。第三にお尋ねをいたしておきたいと思いますことは、主として安保條約の行政協定に基いて、この講和発効に即応いたしまして、我がほうに米軍の駐留を迎えるわけでありますが、この場合私の最も心配をいたしておりますことは、このことによりまする経済的方面で我がほうが受ける事情、殊にその駐留地域におけるこの経済的問題に関連をいたすことでありますが、御承知の通り我々は旧軍国時代におきまして、広大なる土地や施設が軍用地として使用され、又鉄道や電気、ガスなどの公益事業が優先的に軍部の使用に供せられた体験の所有者でありますことは申すまでもないことであります。併しそれは本来日本それ自体の貧弱な経済にとつては、これが非常に過大な国民的な負担であり、又非常な苦痛であつたことを回想せざるを得ないのであります。今後はこれらの経験を再び我々が繰返すことは、これを深く避けなければならないのであります。又避けることによりまして、いわゆる日本経済の独立発展が当然ここに差向けられるのであります。これが私は今日の日本国民の願望であるところと信ずる次第であります。実はかようなことを申上げる理由は、アメリカの軍隊は日本とは桁違いの豊富な経済に慣熟いたしております。慣れておりまして、そうして非常に贅沢な軍隊であることが想像されるのであります。従いましてアメリカ人としては当然なことが、日本にとつては意外に民需を圧迫する結果になるのじやないかということを非常に憂うる次第であります。過日私は本委員会から派遣されまして、佐世保、呉等を詳細視察して参りました。又團委員は舞鶴を視察して参りましたが、このことは現地に参りまして、更にその感を深ういたした次第であります。これらにつきまして、現在予備作業班の分科会におきまして、それぞれ検討を加えられていることと想像いたすのでありますが、日米合同委員会におきましては、これらの点に対しまして、十分な処置を協議せられまして、これらのことを我々が再び繰返すことのないようにいたすということは、非常に重大な事柄と存じますので、この点国務大臣の真実なる御見解を承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/130
-
131・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) お話の趣旨は誠に御尤もでありまして、実は私も約三年前でありますが、三年にもなりますまいが、衆議院の外務委員長をいたしておりましたときに、やはり呉、佐世保、舞鶴、横須賀等を外務委員と共に視察したこともありまして、当時からこの問題は頭にあつたわけであります。そこで日米安全保障條約の趣旨から申しまして、アメリカ軍が日本に駐屯します以上、日本の安全保障を確保してもらわなければならんわけであります。そのためには必要な施設とか、区域を提供し、又海面をも提供して、十分なる働きもできるようにいたしておかなければなりません。従つて是非必要なものを提供しないということは、これは條約の趣旨から言つても正当でないのであります。併しながら行政協定を締結いたしまする当時におきましても、又その後におきましても、アメリカ側としては日本の経済にでき得る限り少い圧迫を加えるように考慮するということが根本精神として流れているのであります。又アメリカ側の認識といたしまして、そういうふうにして日本の国民の生活を少しでもゆとりのある、楽なようにするにあらずんば、日米の真に国民間の友好的な協力は期待できない、従つてそういうことができなければ、安全保障條約も本当の意味では動かない、こういう認識の下に立ちまして、日本の経済をできるだけ発展させる。そのために施設区域の選定に当りましても、できるだけ日本の経済に支障のないような形においてこれを求める、こういう原則の下に立つております。従いまして、これはいずれ施設、区域等は提供いたしますから、その範囲内においては、その土地の人々が困難を感ずることがあるかも知れませんけれども、そういう困難はでき得るだけ少くするという趣旨においては、全く双方の意見が一致しておりますから、今後具体的にきめるに当りましても、できるだけ今お話のような趣旨に従いまして善処いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/131
-
132・平林太一
○平林太一君 次にお尋ねいたしたいことは、日米合同委員会の発足は講和発足に即応いたして、如何なる時期においてこれが発足せられるのか。それから委員会の日米両国の人事の振り合いはどのような体系によつて充たされるのか、これを伺つておきたいと思う。それから最後でありますから、申上げたいと思いますが、その次に御答弁を頂きたいと思いますことは、この講和の発効に当りまして、国民的な講和に対しまする何らかのこれを記念すべき、いわゆる新たなる我が日本の独立の発足の門出に当りまして、これを十分に象徴し得るような一つの行事或いは催しというようなことが考えられるのでありますが、政府においてはこの点に対して、これをどのように今お考えになつておられますか。例えば講和発効に当りまして、先ず第一に全国民の脳裡を去来するものは、いわゆるあの戰争に殉じられた百五十数万の、それらの人々の霊位霊魂であります。それを第一に考えなければならない。若しそれ、それらに疎かな措置をいたしておりましたならば、折角講和が成立ちましても、我が国家の前途、進運というものは、その軌道にぴつたり乘ることに非常な阻害を来たすものであると思う。先ず第一にこれら戰病死霊魂霊位に対しまして、懇ろな敬弔の催しをいたすということは、常識上第一に考えられることであります。従いまして、全国民といたして新たに発足するに当り、門出に当つてこれを心の励みとなすべきそれぞれの催しが又あつて然るべきでありますが、これらに対して政府は只今如何なる構想をお持ちになつておられますか。この点だけを伺つて私の質問を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/132
-
133・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 合同委員会は行政協定が効力を発生すると成立するわけであります。行政協定は安全保障條約の批准書が交換されたときに、つまり安全保障條約の効力が発生したときに行政協定は効力を発生する、こういうことになつております。そこで今の予想では二十八日に安全保障條約の批准交換が行われ、同時に行政協定が効力を発生する。従つて合同委員会も成立する、こういう考えでおります。そこで双方の代表者がどうなりますかは、今まで予備作業班でいろいろやつております。大体の構想はわかつたと思います。先方の考え方もわかつておりますので、当方におきましても、適当な者を代表者に、つまり合同委員会の委員に任命しようと考えておりまして、只今人選中であります。
なお第二の御質問でございますが、これは実は相当期間計画しないと、こういう講和発効の祝典と申しますか、そういうものはできませんので、多少発効の日が前後してもよろしいように、大体目標を五月の三日といたしまして、この日に宮城前の広場で以て発効の祝典を挙げたい、こう考えております。それからこれが一番国としての国民的行事になるわけでございますが、それと同時に各自治団体にも連絡いたしまして、各府県等におきましても、それぞれ適当に、その日を記念する何らかの催しを考えてもらうようにいたしております。それから只今お話の慰霊祭という趣旨のものでありますが、これは今考えておりますのは、五月三日の前の日にでも、東京において慰霊祭を催すことはどうであろうかということで、今計画をいたしておるような次第であります。これは宗教的の、いろいろの宗教から言えば関係がありますので、これを全部包含するということもなかなか困難でありまするから、宗教的の色彩のない慰霊祭にいたして、終つてからおのおの靖国神社にお参りするとか、その他適当な所にお参りするとかの、余裕を與えて置こう、又すでに予算で議決されておりまする項目によりまして、各全国の市町村にも費用を配分いたしまして、それぞれの土地で慰霊祭を催してもらうというつもりでおります。大体今考えておりますのは、さようなことでありますが、その他に講和発効の日、つまり二十八日なら二十八日にも、何らか政府としてはこれを喜び且つ国民に伝えるための談話なり、声明なりを考えるべきではないかという趣旨で今研究いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/133
-
134・平林太一
○平林太一君 只今合同委員会の性格に対しまして、いささか腑に落ちない点があるのでありますが、行政協定におきまして、合同委員会の人的構成、いわゆる数というものは、すでに取極をいたされておることと了承するのでありますが、その辺はどのように相成つておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/134
-
135・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 行政協定は主として只今の仕事は施設及び区域をきめることでありまするが、その他に、この行政協定に関連して相互の間に連絡をとつておいたほうがいいと思われる事項は、何事によらず合同委員会で相談いたそう、こういうことになつております。従つて只今のところ差当りは日本側の委員が一名、アメリカ側の委員が一名、そしてそれに附属いたしまして、その係々によりまして、例えば港の專門的な人、或いは鉄道の專門的な人、或いは農地の関係の人、その他各種の関係のものを各省から集めまして、これで委員の手助けをいたします、補助をいたすものができるわけであります。その数はアメリカ側のほうが多いと考えております。というのは、アメリカ側のほうは軍を置くための施設及び区域を必要とする、その申出をいたすわけであります。こちらはそれを受けまして、これは農地に関係があると思えば、農林省の專門家を呼んで来て検討させる。港湾に関係があれば運輸省にということで、その数には限りがありませんから、できるだけそれを專門家によつてこれを検討させたい、こう思つております。なお合同委員会のほかの仕事としては、例えば何か事故を起したとする。それを見舞金で示談に済ますというような場合には、見舞金の額がどのくらいであろうか。或いはその損害の額がどのくらいであるかというようなことも調査する必要がある。そういう場合には又そのほうの関係の人間を呼んで来て補助としまして調査もいたします。又労働法規の関係で、何か日本の法律違反になるようなことが、仮に疑いが起つたとする場合には、その法律の專門家を呼んで来て、その方面の検討もしてもらわなければならんわけでありますから、この数は限りがありませんし、必要であれば幾らでもできる。又場合によつてはその下に分科会のようなものを作りまして、常時検討するようなことも考え得るのでありますが、これは一々やつて見て、必要に応じてそういうふうな措置もする場合があるということであります。今のところ人数に限りがない。幾らでも出すということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/135
-
136・平林太一
○平林太一君 予備作業班はいわゆるその名前の通り、これは予備的な作業をするということを私承知いたすのでありますが、決定機関は合同委員会であるのでありますから、只今お話の通り、予備作業班はそれだけ作業の行為或いは範囲がそれぞれの性格を持つて、なすべきことが多ければ多いだけ人を要するということは常識上判断されるわけであります。従し私お尋ねいたしておりますととは、決定機関であります。いわゆる議決機関となりますところのこの合同委員会に対しまして、多大の注目を今日国民がこれに対してしているのでありますが、これを十分一つお考えを願わなければならないと思います。現在では日米両国一人、一人であるというお話しでありますが、講和発効後におきましては、然らばどのくらいの数になさる御用意なり、或いはその両国の協定によつてどの程度までこの数をいたすことができるように相成つているか、この点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/136
-
137・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) この行政協定の二十六條に合同委員会の規定がありまして、「合同委員会は、日本国の代表一人及び合衆国の代表一人で組織し、各代表者は、一人又は二人以上の代理及び職員団を有するものとする。」、従つてこの代表者は合同委員会においては一名であります。最終的な決定はこの一名がいたすものでありますが、それには多数の代理及び職員団というものを持つことになつております。これで決定して行くわけでありまして、講和発効後の合同委員会も代表者一人、一人ということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/137
-
138・平林太一
○平林太一君 一人、一人ということでありまして、代理者を二名なり、三名おきめになるということでありますから、やや私も安心いたすのでありますが、要するに一人対一人というものは私は会議の性格というものから見ますれば甚だ薄弱である。いわゆる会議するのでありますから、合ということは一対一では該当しない。少くとも両方とも五、五、最小限度三、三というような形でなければ会議するいうことに相成らないと思います。併し條約によりまして、一人、一人ということに相成つたというのでありますから、これについては私はこれ以上追及することは避けたいと思います。然らばこの選ぶべき一人というものが如何に重大な使命を双肩に担わなければならない事柄かということに、我が方といたしましてはなるのでありますから、この点は十分一つこの悔を千載に残すがごときことのないような、合同委員会の成果をもたらすために、それに耐えられるところの人材に誤まりなきことを深く私はこの際大臣に要望いたしておく次第であります。そういう人物に対して、人選にいやしくも誤まりがないということをこの機会に誓われたい、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/138
-
139・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 十分お話の趣旨のようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/139
-
140・有馬英二
○委員長(有馬英二君) それでは本日はこれを以て散会いたします。
午後四時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02219520416/140
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。