1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年五月十三日(火曜日)
午後二時十四分開会
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委員の異動
五月九日委員森崎隆君辞任につき、そ
の補欠として岡田宗司君を議長におい
て指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 有馬 英二君
理事
徳川 頼貞君
曾祢 益君
委員
杉原 荒太君
平林 太一君
伊達源一郎君
大隈 信幸君
大山 郁夫君
国務大臣
外 務 大 臣 岡崎 勝男君
政府委員
外務政務次官 石原幹市郎君
外務参事官
(外務大臣官房
審議室勤務) 三宅喜二郎君
外務省経済局長 湯川 盛夫君
事務局側
常任委員会專門
員 坂西 志保君
常任委員会專門
員 久保田貫一郎君
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本日の会議に付した事件
○国際通貨基金協定への加入について
承認を求めるの件(内閣送付)
○国際復興開発銀行協定への加入につ
いて承認を求めるの件(内閣送付)
○国際情勢に関する調査の件
(大公使の選任問題等に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/0
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001・有馬英二
○委員長(有馬英二君) それでは只今から外務委員会を開会いたします。
先ず国際通貨基金協定への加入について承認を求めるの件、国際復興開発銀行協定への加入について承認を求めるの件、この二つを議題といたします。政府の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/1
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002・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) 只今議題となりました国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定につきまして提案理由を御説明いたします。
我が国は、国際通貨基金への加盟によつて、我が国の必要とする特定の外貨を一定限度内で基金から買い入れることによつて対外收支の一時前不均衡を調節し、我が国の対外信用を高め、他の国際機関特に国際復興開発銀行への加盟を容易にすることを期待することができるのであります。
なお、我が国は、国際復興開発銀行への加盟によつて復興開発のため必要な外貨資金を直接同銀行から借り入れ、又、同銀行の保証を受けて民間の外貨の導入を容易にすることを期待することができるのであります。
政府は、このような利益に鑑み、昨年八月九日、それぞれ国際通貨基金協定及び国際復興開発銀行協定への加入申請をいたしましたところ、最近その加入の見通しがつきました。
よつてここにこれら両協定への加入について御承認を求める次第であります。
愼重御審議の上本件につき速かに御承認あらんことを希望いたす次第であります。
それから局長から説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/2
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003・湯川盛夫
○政府委員(湯川盛夫君) 只今の提案理由を若干補足いたしましてこの二つの機関と我が国との関係、並びに両協定の概略を簡單に御説明申上げます。
国際通貨基金及び復興開発銀行は世界経済の安定と復興を図るために国際協力を基盤とする国際通貨金融機構を設定したものでありまして、基金のほうは各加盟国が金と自国通貨を醵出して協同の為替基金を作り、必要ある場合、為替資金の融通を行おうとする、いわば国際為替銀行又は為替安定基金の設立を目的としたものでありまして、銀行のほうはもう一つの一翼としまして、加盟国の復興開発のため国際投資を助長し、或いはみずから直接貸付を行わんとするものであります。政府は昨年八月九日に基金及び銀行に加盟するため、それぞれ申請書を提出いたしましたが、基金及び銀行の規約によれば、新たに加盟せんとする国は先ずその旨を申請した上、基金及び銀行がそれぞれ定める時期と條件に従つて所要の措置をとつた上で加盟することになるのでありまして、前記の申請の結果最近ようやく先方の加盟條件が非公式に内示された次第であります。即ち基金は我が国の加盟條件をきめるために委員会を設けまして我が国の過去の貿易額、国民所得、金ドルの保有額等を参考としまして加盟條件として割当額一億五千万ドル、拂込額六千二百五十万ドルと定めたのであります。金の割当額とは例えば組合の持分のようなものでありまして、加盟国の出資の基礎、資金の利用限度、表決権数の基準となるものであります。加盟国は割当額の二割五分又は金及び米ドルの保有額の一割、その二つのいずれか少額の額を金で拂込むことになつております。我が国の場合は割当額の二割五分のほうが少額でありますので六千二百五十万ドルを拂込む必要があるわけであります。なお銀行に対する株式応募額は基金の割当額とひとしい額でありましてその二%を金で拂込むことになつております。銀行の場合には銀行の融資額は株式応募額とは関係がなく、銀行融資の総現在高に一定の制限があるほかに各国別の制限はありません。右の金による拂込以外の拂込は円でするわけでありますが、これは公債でも差支えないのでこれについては別途立法措置をお願いする必要があります。基金及び銀行に加盟することによる利益につきましては、先ほど提案理由の間に御説明がありましたから省略いたします。
次にこの両協定の全貌を概略御説明申上げますが、御手許に国際通貨基金協定の説明書というのと国際復興開発銀行協定の説明書というのをお配りしてございますのでそちらを御覧願いたいと思います。先ず通貨基金協定のほうから御説明申上げます。大体お読み頂けばわかのでありますが、極くまあ主要な個所を若干敷衍して御説明したほうがいいかと思います。
第一竜は国際通貨基金の沿革が述べてございます。これはすでに御承知のように一九四四年ブレトン・ウツズに四十四万国の代表が参加する連合国通貨金融会議が開かれましてそこでこの国際通貨基金とそれから国際復興開発銀行という二つの国際機関を設立することが決定されたのであります。国際通貨基金協定と申しますのは二ページから説明がありまするように前文、本文序及び二十カ條、末文、附表そういつたものからなつております。基金の目的に関しましては「一目的」というところに書いてありますように「基金の目的とするところは、通貨に関する国際協力の促進、国際貿易の発展による全加盟国の高水準の雇用及び実質所得の促進及び維持と生産資源の開発、為替の安定、多角的支拂制度の樹立と外国為替制限の除去、基金の資金を利用させ国際收支の失調を是正する機会を供することにより加盟国に安心感を與えること並びに加盟国の国際收支の不均衡の調整にある。」第一條に書いてあります。「加盟国の地位及び脱退」というところでは加盟国には原加盟国とその他の加盟国というのがありまして原加盟国は先ほど申上げた連合国通貨金融会議に代表された国で、一九四五年十二月三十一日の前に加盟国の地位を受諾した国をいうのであります。その他の加盟国はその後基金が定める時期と條件に従つて基金に加盟をした国であります。基金の加盟国は一九五二年一月三日現在で五十一カ国であります。ソ連圏ではチエツコがこれに加盟しております。その次に「割当額及び出資」というところがございます。四ページに主な加盟国の割当額を載せておきました。五ページに加入のための出資について書いてございますが、「その拂込の時期、場所及び形式」「各加盟国は、押込額中金による拂込を要する額について最小限として、次のもののうち少ない方を選ぶことができる。」一つは「自国の割当額の二十五パーセント」もう一つは「自国の金及び合衆国ドルの公的純保有額の十パーセント、」で「各加盟国は、自国の割当額の残額を自国通貨で拂い込むものとする。この加盟国の自国通貨による押込額のうち、基金の業務に必要でないと基金が認める部分については、一定の証書によつて代用することができる。」というふうになつております。四は「組織」であります。「総務会、理事会、専務理事一人及び職員」などがあります。次に六ページに参りまして「六基金の資金の利用」というところを御覧願います。基金の資金の利用、「各加盟国は、原加盟国については自国通貨の平価が確定したときに、及び新加盟国については別に定められるときに、それぞれ基金の資金を利用する資格を取得し自国通貨と引換に他の加盟国の通貨を基金から買い入れることができる。」これが一資金の利用方法であります。そのもう少しあとに「基金の資金の利用については、概略次の通りである。」といたしまして「(1)基金の資金の利用は、次の通り、原則として経営取引のための国際支拂に限られる。」「(a)基金は、救済若しくは復興のための便宜を與え、又は戦争から生じた国際の債務を取り扱わない。」「(b)加盟国は、巨額な又は一持続的な資本の流出に応ずるために、統計して基金の資金を利用することとなつてはならない。」「(c)通貨の買入れを希望する加盟国が、この協定の規定に合致する支拂をその通貨で行うために、その通貨が現に必要であることが示されておらなければならない。また、加盟国は、基金の許可がなければ、先物為替取引のための用意に充てるため基金の資金を利用することはできない。」(2)として買入れによつて、基金の買入国通貨保有額の増加が、買入れの日に終る十二箇月の間に買入国の割当額の二十五パーセントをこえてはならない、それから又基金の買入国通貨保有額が買入国の割当額の二〇〇%を超えてはならない、買入れの限度をここで規定しております。次に九ページの「七通貨の平価」「平価の表示」ということが出ております。「各加盟国の通貨の平価は、金又は千九百四十四年七月一日現在の量目及び純分を有する合衆国ドルにより表示する」「平価の変更」につきまして以下書いてありますが、十ページの初めの所に平価変更の制限というものを書いてあります。「(a)加盟国は、基礎的不均衡を是正しようとする場合を除く外、自国通貨の平価の変更を提議してはならない。平価の変更は、当該加盟国の提議があつたときに限り、且つ基金と協議した後に限り行うことができる。」「(b)基金は、加盟国から平価の変更の提議があつた場合には、その提議された変更が従前のすべての変更を算入して、当初の平価の十パーセントをこえないときは、異議を唱えてはならず、当初の平価の十パーセントをこえるときは、同意することも異議を唱えることもできる。但し、基金は、提議された変更が基礎的不均衡の是正に必要であると認めるときは、その変更に同意しなければならない。」「(C)加盟国は、自国通貨の平価の変更が基金加盟国の国際取引に影響を與えない場合には、基金の同意なしにその変更を行うことができる。」「(d)基金の提議があつたにもかかわらず加盟国が自国通貨の平価を変更したときは、その加盟国は、基金が別段の決定をしない限り、基金の資金を利用する資格を失うのみならず、更に、場合によつては、脱退を要求されることがある。」といつたような平価変更の制限が書いてあります。次に十一頁の八に「加盟国の義務」、加盟国となつた場合の義務が書いてあります。「為替の安定」これは特に御説明することはありません。
その次の十二頁、「為替制限の回避」「加盟国は、次の場合を除く外、経営的国際取引のための支拂及び資金移動に制限を課してはならない。」以下(a)(b)(c)とありますのは為替制限を認める場合であります。「(a)基金の承認があつた場合」「(b)不足通貨の場合」これは「不足通貨に関する分式の宣言があつたときは、いずれの加盟国も、基金との協議の後、一時的にこの不足通貨の為替取引に制限を課することができる。」というふうに相成つています。それから「(c)過渡期の規定の適用がある場合」これは「加盟国は、戦後の過渡期には、経営的国際取引のための支拂及び資金移動に対する制限を存続し、及び変化する状況に適応させることができる。」という規定がございます。「協定第八條第二項に定める経常的支拂に対する制限の回避に関する規定」それから「同條第三項に定める差別的通貨措置の回避に関する規定」それから「同條第四項に定める外国保有残高の交換可能性に関する規定に合致しない制限をなお存続している加盟国は、基金が業務を開始した日」それは一九四七年三月一日ということになつておりますが「の五年後及びその後毎年、その制限の将来の存続について基金と協議しなければならない。」こういう規定があります。それから「加盟国の業務」の(3)としまして、「差別的通貨措置の回避」といつたのが十三頁の所にあります。「加盟国は、差別的通貨取極若しくは複数通貨措置を行つてはならず、又は自国の財務機関がこれを行うことを許してはならない。但し、基金の承認を得た場合又はこの協定に基いて権限な與えられた場合は、この限りでない。」そのほか「情報の提供」でおるとかいろいろな義務があります。十四頁の第三章には国際通貨基金の加盟国及び割当額をば一九五二年一月三日現在のものをば御参考までに挙げてあります。「日本と国際通貨基金との関係」これは先ほど初めに御説明申上げましたから省略いたします。
もう一つの「国際復興開発銀行協定の説明書」これも大体お読み願えれば結構と存じますが、簡單に申上げますと第二章、この二頁から三頁にかけまして第二章以下協定のことを書いてございますが、前文、本文十カ條からなつております。「目的」は銀行の場合は「加盟国の復興及び開発を援助すること。」それから「民間投資を保証し、又はこれに参加して民間の対外投資を促進すること、及び直接貸付を行うことによつて民間投資を補足すること。」それから三番目に「加盟国の生産資源の開発のための国際投資を助長し、もつて、その領域内における生産性、生活水準及び労働條件の向上を援助するごとにより国際貿易の発展及び国際収支の均衡の維持を促進すること。」第四としまして「銀行が行い、又は保証する貸付について、有用度及び緊要度の高い事業計画が優先処理を受けるように措置すること。」第五としまして「国際投資の加盟国経済に及ぼす影響を適当に考慮して銀行の事務を行うこと及び戦時経済から平時経済への円滑な移行を援助すること。」こういうことを掲げております。「加盟国の地位」につきましては、「銀行への加盟は、基金への加盟を條件とする。」ということになつております。加盟国たる地位の取得及びその手続は基金の場合と同株でありますから説明を省略いたします。次に四頁のおしまいのほうに書いてありますが、「銀行の資本」「(a)銀行の授権資本は、百億合衆国ドルとし、額面十万合衆国ドルの十万株に分たれ、加盟国一のみが応募することができる。なお、資本は、総投票権数の四分の三の多数決により増額することができる。」ということが書いてあります。それからその先の(d)というのをちよつと御覧願います。拂込のことがここに書いてございます。「加盟国は、応募額の二十パーセ
ントを銀行の業務上必要な資金として、うち二パーセントは金又は合衆国ドルで、残余の十八パーセントは自国通貨を以て所定の時期迄に銀行に拂込まなければならない。」ということになつております。次に「銀行の業務及び運営」といつたようなものが六頁以下に書いてございます。その(3)の「信用供與の方法というところがございます。銀行の貸付といつたようなものを書いているのであります。「信用供與の方法」「銀行の貸付及び便宜供與は、次の方法で行われる」「(i)自己資金(き損されていない拂込済資本、剰余金及び準備金)から直接貸付をし、又はこれに参加ずること。」「(ii)銀行が借り入れた資金から直接の貸付をし、又はこれに参加すること。」「(iii)民間投資者が通常の投資径路によつてずる貸付の全部又は一部を保証すること。」これが信用の供與の方法であります。次の八頁の「(4)保証又は貸付をすることができる條件」といつたようなものが列記してあります。「(a)加盟国自身が借入人でないときは、加盟国又はその中央銀行その他銀行が認めるこれに準ずる機関が、元本の償還、利子及び他の手数料の支拂を完全に保証すること。」「(b)借入人が他の方法により妥当な條件で貸付を受けることができないと銀行が認めること。」「(c)銀行の貸付委員会が当該事業計画を勧告する報告書を提出したこと。」「(d)銀行が利率及び手数料の合理的であること並びに利率、手数料及び元本償還計画が当該事業計画に対して適していると認めること。」「(e)借入人及び、借入人が加盟国自身でないときは、保証人の債務履行の見込に対して適当な考慮を拂うべきこと並び、当該加盟国及び全加盟国の双方の利益のために愼重に行動すべきこと。」「(f)貸付の保証に当つては、その危険に対して適当な補償を受けること。」「(g)貸付又は保証は、特別の場合を除く外、復興又は開発の特定の事業計画のためのものであること。」ということが書いてあります。以下いろいろ書いてございますが、特に敷衍することはないと思います。十五頁第三章といたしまして「国際復興開発銀行の加盟国及び応募額」これは基金の場合と同じく本年の一月三日現在で加盟国名、応募株式数、応募金額等を全部掲げてあります。
簡單でございますが、これで御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/3
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004・有馬英二
○委員長(有馬英二君) それでは岡崎外務大臣が御出席になりましたから日程審議は一応中止いたしまして同大臣に対しまして一般的な質問をいたしたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/4
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005・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 前回に申上げましたように、独立国家になりましてから而も直ちに岡崎大臣が今回は専任の外務大臣になられたわけでありますから、委員会といたしましても特に同大臣に敬意を表すると共に同大臣の新外交政策といつたようなことにつきましていろいろ伺いたいと存ずるのであります。先般は私も質問をいたしなお質問の通告といたしまして曾祢委員から御要求があつたのであります。いろいろ考えました末に委員長はあとからにいたしまして、取りあえず曾祢委員から質問をお願いいたすことにいたします。曾祢委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/5
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006・曾禰益
○曾祢益君 どうも委員長のあとから一つ御質問申上げるつもりでしたが、若干の点について岡崎外務大臣に伺いたいのですが、先ず日本の外交もいよいよスタートをこれで切るわけですが、大公使の選任について一体どういう基準で大公使の選任に当つておられるか。例えば国によつてはいわゆる経済外交が主だから或いは経済人を選ぶ、そういつたような考慮もされておるのかどうか。我々は非常に重要な問題であるので、事外交の運用に関する問題でありまするから、飽くまで第一義的にはこれは政府の責任、即ち新大臣の腕の見せどころと思うのでありますが、大体そういつたような原則的な方針等について先ず伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/6
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007・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) これは戰前もそうであつたと思いますが、程度から言えば今のほうが多いでありましよう。いずこの国におきましても経済問題というものは戦後にはかなり大きな部分を占めておるわけであります。従つて経済或いは金融、貿易等に知識の深い人があればそれに越したことはないのでありますが、同時に日本の在外使臣としてはかなりの点で語学に制約をされておる場合もあります。アメリカ、イギリス、或いはフランスの人だとその国語を以て言える、よその国に行つても通用できるのが日本ではなかなかそういうわけに行かないという点もあります。又長年外務省で訓練された、いわばこれは国費を以て訓練された人がたくさんおりまして、これらの人も経済問題、貿易その他の関係については長い間外務省で訓練をされ又実地にやつて来たのでありまして、これは彼此勘考いたしますると、外務省の畑の人を選ぶとか、或いはそれはやめて経済方面の人を選ぶとかいう原則は立てられないという結論に達したのであります。
そこで私の考えは広くその代り外務省と限ちないすべ(国内の人材を探してその中で無論語学の制約等はありますけれどもそういう條件に適う人であれば誰でもよろしい。必ずしも外務の人を排斥せず、必ずしも外務省の者のみを以て当てるということもしないと思つております。そこでその基準はそれはいろいろ外務省的な訓練も必要でありまするが、大使となりますれば主として極めて常識の発達した人、そうして人間的に相手の国の外務大臣なりその他の人々と話合つてもひけをとらないというのはりおかしいですが、人間的にも決して劣つていないという人であれば、この際は十分国家のためにお役に立ち得ると考えましてそういう意味で広く人材を探しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/7
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008・曾禰益
○曾祢益君 只今言われましたように、別に外務省系統とかそういうものにこだわらない、必ずしもそれは従来の経験というものを低く見るわけではないが、併しそれのみにこだわらないという点は非常に結構だと思うのですが、それから一般的の基準として今言われたと思うのですが、現実には或る国には主として経済人を選ぶというようなお考えであるかどうか。これはまあすでに発表されたことですが、例えばアメリカについてはこれは確かに経済人を選んでおられるわけですが、それは特別にアメリカについては経済人のほうがいいという選考だつたのか、それとも只今の原則の中からただたまたまそうなつたのであるか、それらの点はどういうふうになつておるか。
それからまだ確定されておりませんが、他の国特に東南アジア諸国等については、特にインドあたりは経済人を選んでおられるというような、これは新聞のあれかも知れませんが果してそういうような考えがあるかどうか、その点も併せて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/8
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009・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) これは正直に申せば或る国については経済の知識が余計あつたほうがいい国もあり、又そうでない、必ずしも経済人でなければならんということもない国もありましようと思いますが、少くとも私の立場から言えば、或る国を目してこれは外交官の素養がなくてもいいのだとか、或いはこれは経済人でなければいかんのだとかいうふうに折紙をつげるべきものでないと思います。実際上も例えばアメリカの大使を選ぶに当りましても外務省出身の候補者もありました、それ以外の候補者もあつたのでありまして結果において現在きまつたような人のところへ落ちついたというだけであります。或いはインド、パキスタン、その他東南アジアにつきましても只今いろいろ考えておりますが、候補者は両方にあるのです。どちらになるかまだ無論わかりませんが、東南アジア等においてはまあ成るべく経済の知識といいますか少くとも書面による知識でなくして先方に話したときに日本の国内の紡績の状況はこういうふうであるとか、金融の状況はこういうふうであるということが直ちに自分の頭から説明のできるような人であれば、非常に何といいますか相手をコンヴインスするような説明ができるので、そういう人で適当な人があれば結構とは思つておりますが、必ずしもそれでなきやならんという結論には達しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/9
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010・曾禰益
○曾祢益君 まだ正式にきまつていない方面についてこれは外務大臣と或いは意見が必ずしも合わないかも知れませんが、これは一つの希望としてあえて申上げたいと思うのですが、私の非常に貧しい体験ですけれども、例えばインドみたいな国で、確かに大使たる以上は今あなたのおつしやつたような経済問題が本当に肌身についておることは非常に大きな資産だろうというふうに考えるのです。併し今のインドあたりの気持、国際環境それから日本との関係というのを考えてみると、非常により大切なことがあるんじやないか。で、経済上のことなんかは勿論それは非常に大切なことであるけれども、例えば大使を補佐する別のエキスパートを用いるということでもやつて行けるだろうし、又事と次第によつては特別なミツシヨンを出されるという方法も勿論考えられるわけです。それでこれはまあ私の主観的な考えですがインドあたりと日本との関係なんかを考えてみると、経済的に目印関係ということを如何にも重視したという打出し方よりも、やはり愼しやかに最もインド国民の気持をとらえるという意味からいつたら、やはり日本の文化を代表するというような建前でそういう点に重心をおいて行くことは非常に適当ではないか。これは一つの考え方ですけれども何も私だけの考えでもないだろうし、外務省当局におかれても或いはそういう意見もあるのかも知れませんが、私たちが心配することは余りダイレクトな経済提携的な持つて行き方が現在の情勢には必ずしも適していない国がある。これはまあ判断の問題ですけれども、例えばインドなんかについては率直に言つて、例えばアメリカはチエスターボールスを送つている、これはやはりそれで非常に意味があると思うのですね。併し今インドの気持なんかからいえば、やはりどちらかといえば中共というようなものに対する非常な大きな関心を拂つており遠慮もしておる。逆にソ連なり中共なりのインドに対する働きかけということを見ると非常にやはり文化的な行き方ということが、少くともアプローチとしては文化的な行き方ということが大前提みたいになつている。日本というものが如何にもこちらでだけ日米経済提携というやり方は必ずしもちよつと平仄が合わないような感じがする、そういう点からいつても、勿論この経済的知識のある大使ということは非常に大きな資格の標準だとは思うけれども、ただ単なる経済人というようなふうにならないように、いずれかといえば文化人というふうで文化使節というような丸味を持つた大使を選任されても国によつて一例を言えばいいのではないか、かように考えます。これは御答弁は要りませんがそういうふうに私は考えているのでこの際申上げておきたい。
それから只今のお話によると、アメリカとの関係においてもいろいろな人が候補者に上つたということでそれはもう勿論そうだろうと思うのですが、どうも我々の印象から言えば一体岡崎大臣がやつておられるのか、池田大蔵大臣が人選をしておるのかわからないじやないか、こういう印象があるけれども、これは甚だ新大臣に対して失礼な観測かも知れませんが、そういう半玄人的な評判が立つているんですが、過去のことは別として飽くまでそういつたようなことがないように岡崎大臣の一つ新人事として是非これを打出して頂きたい、かように考えるわけです。
ついでにアメリカの問題でもう一つ申上げたいのは、というか伺いたいのは、白洲君の問題が新聞等の伝えるところによればあれは問題になつてそうして途中でつぶれたということがあるのですが、それは果して事実であるかどうか。勿論それはアグレマンを要求してそうしてアグレマンをくれなかつたというならこれはもう政府の大責任である。そういうようなことはなかつた、常識的にそういうことではないと思いますがアグレマンを求めるのではなくてそういつたような御内意を伺うというような事実があつたのか。それからその御内意を伺つたところがそれがいけないというのでやめたという、そういう二つの事実があつたかどうか、これを一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/10
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011・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) いろいろ御意見は大いに参考といたします。そこで今或る特定の人を挙げられましてこれがどうだというお話ですが、それは曾祢君なんかもよく御経験のことと思いますが、元来これは特定の場合でなく原則的に申してアグレマンというものは元来相手国の内意を伺うものであります。任命する前にこの人はどうであろうかという内意を伺うものであります。そこでそのときは例えば日本がどこかの国に内意を聞く場合に、その国が日本の国民や日本の一般の感情等を悪くしないで——いやなものは断る、それだけの自由を相手国に與えておるわけであつて、従つてアグレマンを求めたか求めないかとか、アグレマンを拒否したとかしないとかいうことは、両国間の関係からいつてできるだけ外部には出さない。従つてその内意をごく内密に聞くという意味で、こういうことは委員会のような正式のときにお取上げになるべを問題ではないと私は考えております。そこでいわんや新聞等に言われるように、或る人に対して非公式に内意を聞いたか聞かないかというようなことはその人に対してもいろいろ失礼なことになります。又仮に或る場合にそれは差支ない、いいのだ、その人は歓迎されたんだということを言える場合には言いよいかも知れませんけれども、又将来そうでない場合には今度非常に言いにくくなる。委員会等で質問されまして工合のよいときには言えるけれども工合の悪いときには黙つているというわけにも参りませんので、こういう具体的な問題は一つ私のほうから答弁といいますか、は差控えさして頂きたいと思うのです。但し若し附加えて言いますれば、今曾祢君の言われたような白洲という人については私はかねがね非常に尊敬している人の一人でありまして、能力においても識見においても非常にすぐれた人である、将来もいろいろ政府のために盡力してもらいたいという希望を非常に強く持つております。が、そういう特定の人に対してどうこうということは、これは一つ……質問されたんですから質問をしないでくれというわけに行きませんが、少くもそういうことの答弁はお許しを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/11
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012・曾禰益
○曾祢益君 まあその問題については大臣の立場もおありでしようから公開の席上で御答弁は要求いたしません。ただ私は個人を問題にしているのではありませんが、やはり大使としては只今外務大臣が言われたような常識の発達した人、人間として信頼できるというか曲げない人、こういうような出講小が非常に重要である。日本国民から真に信頼される人、その特殊技能が経済方面であろうが或いは国際政治であろうが或いは文化方面であろうが、それは当局の大臣の全体としての人の使い方の問題で一々申上げるまでもありませんが、そういう点からいつてやはりいま一つは外交のコンテイニユイテーといいますか、そういう意味からいつていわゆる側近人事といわれるような人事はやつてほしくない、こういう気持で実はおるわけです。これは非常に一方的ですが只今人物と力量を買うというお話がありましたから申上げるので、如何に力量のある人でも大使としては適当でない人物もあるという意味を申上げておきたいと思います。
それからもう一つ質問したいのですが、先般外務大臣がおられなくて、講和條約効力発生の前に一つ外務大臣に伺いたいと思つていた点なんですがこの国連軍といいますか、いやもつとはつきり言えば英濠軍のステータスの問題ですが、これについてこの前も一体講和條約効力発生と共にどうなるのであるかということを伺つたわけです。勿論我々は二つの原則といいますか、よりどころを知つております。一つは講和條約が効力発生しても九十日間はいわゆる占領軍といいますか、これがまだ日本に残つていることができるということ、もう一つのよりどころはいわゆる吉田・ダレス交換公文に現われているように、日本が引続き国際連合軍の行動に、文句は忘れましたけれども要するに便宜を供與する、これはいずれも條約できまつていることでもあるし又私たちとしては趣旨において異存はない。ただ問題は占領軍たる性格は当然排除されるべき建前であることも又同様であつて、これがいつまでも占領軍的な気持でおられることは甚だ條約の建前からいつておかしなことである。そこで当然にこれは国際連合との間の何らかのモーダス・ヴアイヴエンデイみたいなものができると思う。政府もそれをやつておられると思いますがそういうようなことは速かにはつきりしないと非常にへんてこりんな事態が残つていて面白くない。
それから国連軍の行動に援助を與えるということはこれは当然でありまするが、そのことは直ちに以て日本に国連軍の部隊が一種の駐留的な恰好でいることを必ずしも必要としない。殊に英濠軍が前に自分らにいわゆるアサインされた、與えられたような地域に旧態依然として残つているということは、これは国連軍に対する必要なる援助とは全然違うと思う。私の意見ばかり先に申上げて恐縮ですが、そういう点について政府はどういうふうに考えておられるか。現にどういう程度までこの新事態に応ずる切り換えをやつておられるのか、これを一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/12
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013・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 今のお話ですが曾祢君は吉田・ダレスと言われましたが吉田・アチソン交換公文だと思います。これは今曾祢君の言われたのと多少趣きを異にするのです。ちよつと吉田・アチソン交換公文の一節を読んでみますると、これはこちらのほうの国会にも出して承認を得たのですが、その一節には「国際連合加盟国の軍隊が極東における国際連合の行動に従事する場合には、当該一又は二以上の加盟国がこのような国際連合の行動に従事する軍隊を日本国内及びその附近において支持することを日本国が許し且つ容易にしること、」云々ということになつておりまして国際連合の行動に従事する軍隊を日本に置くことを認めておる。従つてただ援助するという意味でなくして軍隊を置く、それについて施設等を提供する、但し費用の点は別だ。こういうことになつていますから軍隊としてここにおることを認めておるわけであります。そこで今お話のように私の考えはこれはアメリカ側も認めておる点でありますが、平和條約の効力発生と同時に占領軍としての看板はおりてしまう、従つて占領軍としての存在はなくなる、こういう原則であります。併し今お話のように九十日の間は船待ち期間とか或いはいろいろの整理期間とか或いは物資の集積をほかに待つて行くとか、いろいろなことで占領軍の実体がそこに残ることを認めておるわけです。従つて内政に干渉する等の占領軍の看板はなくなりますけれども、その残つておる軍隊に関しては占領軍の従前の権限は附與されるわけであります。従つて裁判管轄権等も従来のままに残つている部分についてはいいわけであります。
そこで今度は国連軍の問題ですが、大体日本におる軍隊或いは軍人についての観念は三つに分れると私は考えております。第一は安全保障條約に基く米国の駐留軍、第二は吉田・アチソン交換公文に基く国連軍の一部、これは早くいえば英濠軍です。それから第三は、軍隊ではないけれども国連軍の行動に従事している国の軍隊の所属員、つまり軍人が休暇とか療養とか、或る場合には公務もありましようか、そういう意味でやつて来る、軍隊としてではなくて軍人として朝鮮から日本に入国して来る、こういう三つのカテゴリーに分れると思います。それはおのおのが軽重がある。それは国連軍の行動というものは実際は極東における平和の維持であるからして、日本の安全の保障にもなつておることはこれは事実でありますけれども、直接日本の保護に当る駐屯軍と、国連軍として朝鮮に行動しておる軍隊が日本におるというのでは、多少そこに軽重の差というか多少の差異がある。いわんやただ軍人が休養だとか休暇に来るものについては大いに差があると思いますので、行政協定で認められたような特権がそのまま他の国連軍や国連軍の兵隊に認められるとは考えておりません。そこに区別がある。それで早くそういう区別をつけた協定を作り国会の承認を得て実施したいと考えておりますが、これは平和條約効力発生のもう一カ月以上も前から先方に話をして催促しております。先方でもアメリカで協議をし、ロンドンでも英濠軍その他の関係の方面では協議をしたと聞いております。なかなか併し結論か出て来ない。というのは、やはり成るべくならば英濠軍といえども国連のために働いておるのであり国連は日本の安全にも寄與しておるのだから、そういう意味でアメリカの駐屯軍と同様の特権を軍隊としては認めてもらいたいという意見がかなり強いようであります。我々ほそれも尤もだと思いまするけれどもまあ多少はそこに差異があるのは当り前じやないか。こうも考えておりますので今非公式にはすでに話を進めております。で、その間今曾祢君の言われたように、そういうものがないと講和條約発効から今までそれができるまでの間何かブランクで変じやないかということも考えておるのでございますが、考えておりますがまあ強いて言うならば九十日以内は占領軍の遺物が残つておるという恰好で処理できないことはないのですけれども、まあ成るべく早く協定を作つたほうがいいということで先方も九十日を待たずしてできるだけ早く協定を作るという原則には異存はないようですからできるだけ早く話を進めたい。現に非公式にはやつておる、こういう状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/13
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014・曾禰益
○曾祢益君 ちよつと只今吉田・アチソン交換公文を引用されて御説明があつたのですが、何か軍隊を維持するですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/14
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015・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 支持する……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/15
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016・曾禰益
○曾祢益君 支持ということは英語でどう書いてあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/16
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017・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) サポートだと思います。「ジヤパン・ウイル・パーミツト・アンド・フアツシリテイト・ザ・サポート・イン・アンド・アバウト・ジヤパン、バイ・ザ・メンバー・オア・メンバーズ・オブ・ザ・フオーセス・エンゲージド・イン・サツチ・ユナイテツド・ネーシヨンズ・アクシヨン」、サポートと言つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/17
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018・曾禰益
○曾祢益君 それでまあ大して私の受けている感じとあなたの言われたのとは違わないと思うのですが、もとより国連が軍隊としてやはり軍事行動をやつているのですから、それで事実上日本が基地になつているわけですから、軍隊というものは日本に来たり或いは一時的におつたりすることはこれは当然と私たちは考えるわけです。ただ問題は日本に駐留するというものじやない、これは飽くまで。そこにまあ本質的違いがあるのじやないか。勿論軍隊として一つの特殊な取扱を要求するような代物であるということはわかつているので、ただ單に個々の外国人が来たというものでないし、軍事的なフアツシリテイを與えるということは当然だと思いまするが、従つて溜り場になる。溜り場になれば場合によつては一時的なその溜り場の施設も要るだろうということはわかるにしても、これは安保條約によつて日本に駐留するというような軍隊とは、いわゆる配備という問題も起らないし、駐留ということも起らない。そういう点で非常に切替つて来なければいけないので、今読まれたことから言つても必ずしも一時的にも滞留することを許可するという意味でもない。要するに軍隊行動に便宜を與える、大ざつばに言えばこの範囲で具体的にはよほどこれを従来の占領軍或いは安保條約に基く駐留軍というものと変えたものにして行くことが正しいのではないか。これは吉田・アチソン交換公文の字句の問題より以上の基本的な問題だと私は思うわけです。その点は別に岡崎大臣の言われたことはそれに反しているとは思いませんが、そういう気持でフアツシリテイを與えることは当然であるが、ややもすればこの旧態依然たるようなものが残るというようなことのないようにはつきりして頂きたい。即ち独立国日本として国連を支持する、又日本の安全保障を窮極において国連に頼つて行こうという基本方針からみても、その切替をはつきりやつて行くことが内外に非常に私は重要な点だと思うのでこの点をしつかりやつて頂きたいと思うわけです。だからその点から言いましても、今岡崎大臣が言われた安保條約に基く米軍、それから国連軍軍隊に対する態度、これは同じじやない。先方はややもすれば前のステータスを恋しがつて何でも同じにしてくれというようなことを言つて来るのは当然ですが、これはやはり以前と区別して頂きたい。飽くまで日米安保條約、並びに行政協定に基く、米軍に與えた特権の、内容のよしあしは議論しませんが、相当問題がある米軍に対する特権というものと、殆ど同様なものをいわゆる国連軍隊にやるということになると、これは誠に以て日本の将来の安全保障條約に基く日本と国連との関係に却つて累を及ぼすだけで、いろいろなことを言つて来てもそれは毅然として法律的にはつきりこの点をつけて頂きたい。勿論第三のグループである個々の軍人のことは、これはもう非常に程度が軽いですから余りやかましく申上げませんが、国連軍部隊と駐留軍との間に峻厳なる区別を是非して頂きたいと最後に希望いたしまして私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/18
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019・平林太一
○平林太一君 日本外交が今日我々としましては非常に感慨をこめてスタートしたわけであります。この際新任外務大臣たる岡崎君に真意を質してそこに私の質疑をいたしたいと思います。
第一に伺いたいと思いますことは平和條約に対しまする今後の取扱方これであります。取扱ということは果して妥当であるかどうかは別といたしまして、これは私の真意を申上げるに当つてそう大した違いはない。と申しますことは、この平和條約が起案されました時期というものは昨年一九五一年の一月にダレス氏が我が国に来られてそれから更にフイリピンに行かれてそれから帰国されて英仏等にこの問題を折衝した、そうしてその原案ができたものが今日、四月二十八日に発効いたしましてこれが実施に移されたということであります。併し遡つてみますると遥かに一九五〇年の六月にブラツトレー、ダレス等が参りまして、朝鮮事変の直前であります。そうしてマツカーサーと打合せたのでありますが、それが朝鮮事変のために、停頓して、同年十月にこれが米国におきまして再発議になつたというようなことを回顧するのでありますが、当時の事情と今日とは更に世界の情勢というものが全く変つて参りまして、従つて国際間に取りきめられましたところの條約の内容というものも我がほうで今日実施されるに当りましていろいろとちぐはぐな関係ができた、それよりも遥かに先方でありまする米国が非常に御心配になりました。私はその米国の御意思及び平和條約の調印をいたした国々の諸国においても、今日におきましては起案当時とは非常に事情が異なつて来たことによりまして非常に思つているごとと実際に行わんとすることが違つて来たのではないかということを、私は我が国の外交の方針、或いはこれに処理する態度、或いは将来の見通しという上に非常に考えなければならないことと思います。予算におきましても、予算を編成いたしまするその当時の単価によるその予算編成、それがいよいよ実施面に移りまして半年なり一年後になりますると実施上におきましてそれが不可能になる、ために補正ということをいたさざるを得ない事態になるのであります。それでありますから、平和條約の実施に当りましてやはり私はこういう観点を持つものでありますが、現在のそういうことに対しましてどういうふうな大臣はお考えを持つてこれに当られるかということを第一点にお尋ねをいたしたいと思います。
そういうことの例として取上げられますことは賠償問題であります。これらのことは昨年の一月頃の事情とは全く異なつて参りました。むしろ今日におきましては、我が国と平和條約を締結したそれぞれの国々の実情というものが、当時におきましてもすでに国連憲章に違反いたした行為であります、領土を我がほうから奪う、賠償をとるということは国連憲章のその條項の中に示していることと、言うことと行うこととが全く違つた行為であります。併し当時の事情といたしましてはそういうことが行われたのであります。併し今日においてはまさに反省せざるを得ない事態に私はあると思います。そうしなければ国連の大精神というものが世界に敷衍、実行して行くことができないのでありますから、そういうことは今日我がほうより先方がさだめし心の中で気恥かしく思つておられるのではないか、併し向うから言い出すわけに行かないので、我がほうからこの賠償の問題に対しましては、これが私は新たに課せられた岡崎外交の国民の深く期待してやまざるところであるということを申すのであります。
領土の問題に対しましては、私は今後の日本の外交というものはやはり米国というものを基調として、そして米国と日本との間に途中におきまして行き違いがあり間違いがありましてああいう事態になつたのでありますが、日米の伝統、日米の外交上の因縁というものをつらつら回顧いたしますれば、これは何らの意見を混えずして、私は小さい問題にこだわることなくして日米の外交というものは唇歯輔車の関係を以て我が国の外交の方針としては進めなければならないことと思つております。こういう意味におきましてひたすらこの点に対しまして日米外交の基調というものを米国におくということは、私は実質上におきましては種々これは議論される点もありますが、やはりものことは小異を捨てて大同につく、少しぐらい支障があつても小さなことはときには我慢して大きなものに向つて、大きな国の行くべき方向に関して即ち小を捨てて大につくということでありますから私はそういうことを深く信じて疑わざるものであります。でありますからそういう方向を切に岡崎外交の方針としてこの際お尋ねしたい。そういう方向でおやりになるのかどうか。
それから相即応して考えられることは日英の外交であります。日米との関係に伴うところ必ず私は日英の関係というのは、そこにいわゆる日英親善の深いつながりというものを決してこれは等閑に付してはならない。日米のこの基調外交が行くところに必ず日英というものの併行した行き方があるのでありますから、そういうことに対しまして私は深い関心を日英外交、いわゆる日英親善の上に深い理解というものを外務大臣はお持ちを願いたい。併しこれに対しましてどういうお考えを持つておられるかということは大変長くなりますから一応この程度にいたしまして、今申上げましたいわゆる平和條約に対しまする非常に私はこれは大切なことだと思います。まあ今申上げた通り、私は領土の問題を申上げたのでありましたが、南西諸島のごとき問題も私は米国自体が今日はさだめて何か過ぎたる心配をしてあのような処置をいたしたのじやないかということを臆測するものであります。臆測でありますからときに違つていることがあると思いますが、当然ああいういわゆる信託統治領として一日も早く米国は我が国に返したい、併しまだ日浅いのでありますからそういうこともできないということに対しましては、やはり我がほうからそういうことは申入れる、そうして先方の立場を作つてやる、取りなしをしてやる、こういうような方向に行くことが深くこの経験、蘊蓄を持つておられる岡崎外相に深く期待するところでありますから、これらの諸点につきまして一応御説明をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/19
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020・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今いろいろお話がありましたが、平和條約の草案等が作られ始めましたのは僅か一年半にもならない前のことでありました。その当時現在の状況が予見されないとは私は考えておりません。又我々としてはその当時予見された国内、国際情勢は現在変つておらないと思つております。平和條約の効力が発生したから急に事態が変つたとはどうも考えられないのでありますが、それは別としましても例えば平和條約内にある賠償の規定等は、或いはこれあるがために関係の国々があの平和條約に原則的には賛同をいたし調印をいたしたものと了解いたします。従つてそれらの国々が調印をし、まだ批准してない国もありまするけれども講和條約が効力を発生した今日、只今賠償等の規定について修正を申入れるというようなことは、国際的な信義の上からいつてもこれは考えるべきことであると思つております。私自身としてはそういう気持は持つておりません。又賠償自体の規定にしましても日本の経済に大きな支障を起さないように配慮をいたしておりまするが、又その範囲内で日本の能力に応じて適当のところで相手国の戦災による被害の復興を援助する意味で、金銭は出さないで役務でできるだけの援助をしようということでありまして、決してこれが日本の経済等に非常な悪影響を及ぼすとも考えておりません。いずれにしましてもこういう意味で只今のところ條約の改訂等を考えるべきものでないと私は思つております。
領土の問題についてもお話がありましたがこれも同様でありまして、まあ信託統治にいつなるか、これは別問題でありますが、沖繩等の問題にしましても、或いはその他の領土にしましても、もう大きな原則な戦争中のカイロの宣言等できまつておつたこと、それをいろいろ研究した結果平和條約に挿入したものでありまして、まあ沖縄等はこれはちよつと別かも知れませんが、いずれにしましても平和條約草案を作りましたときと今と領土の関係において非常な違つた事態が出て来ておるということはできないと私は考えております。でお話のような趣旨は実際上の運用においてはできるだけ留意をいたしまして国民の要望にも副うようにしたいと思いまするけれども、先ずその辺のところで御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/20
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021・平林太一
○平林太一君 今私の前段に対する質疑に対しまして外務大臣から御答弁がありました。後段に対しまする日米外交の今後のいわゆる岡崎君御自身の懐抱されるところのこのいわゆる経倫、抱負というものを、これは非常に重大なところをお落しになりましたので改めてお伺いします。
それから第二には、日英に対する同様のこの経倫、抱負というものを二つ伺いたいと思います。
それから今御答弁がありましたが、いわゆる当局といたしましては今のような御答弁が、極めてこれはそういうことでありましよう、そういうことはよく諒と私はいたすものであります。併し私はいやしくもやはり全国民の、この国家国民大衆の運命を深く憂慮し、又それを双肩に荷うということでありますから、正を踏んで恐れざるの態度を以てこれは申上げたので、又今後ともこれは持続するわけであります。正は正、邪は邪であります。そういう点を御了承願いたい。
そこでこの際申上げておきたいと思いますことは、平和條約は政治的におきましてはいわゆる極めて妥当であつた、又私どもも政治的におきましてこれを諸般の事情等におきまして了承をいたしたのであります。併しながら実質上におきましては、私は平和條約の内容というものは決して当局誇るべきものに非ず、ためにこれに伴うところの負担過重というものが、如何に今後このことがこのままに無反省に行われますならば、私は余りにも戰勝国というものが戰敗国に対しましてその弱みにつけ込みまして、発言権のないことにつけ込みまして非常な無理をいたしたということを私は国連憲章のこの大精神を示して結ばれた條約といたしまして、そういうようなことをこの際強く申上げておく次第であります。そういうことに対しましては定めし只今の御答弁に対しましては私は一応これは諒といたします。併し外交のこと他人の言うがごとくそれを同じことを言い、他人のすることをいいと言つておることはこれは一番無難なことで、往年これを追随外交と申しておりました。或いは又屈辱外交と……。そういうようなことがよく国会においては叫ばれたのでありますから、私ども言つて差支えないと思います。そういうことになるのであります。併しそういうことをしておると、国際間に非常に何か我が国が忠実な国だ、誠に誠実な国であると褒められておればよろしいのでありますが、肚の中では笑われておる。そうして非常な何かこれの将来に対する信頼を失うということも一面私はお考えを願わなければならないと思います。外交のことも、いわゆるこれは楽な道を、この当り障りのない道を以て能事終れりとするならば、それはあえてその国に外交が発生しても外交が発生せざると少しも変りがない。でありますから国民のいわゆる生存、国家の興亡というものをこの国際間に賭した外交であるということをも深く私はその点に御審意を頂きまして、折角私は新外務大臣たる岡崎君に対しまして十分の御自重、御自愛を祈つてやまないのであります。我が国民のためにそういうことをこの際前の御答弁に対しまして申上げる次第であります。この際お尋ね申上げました二つの問題につきましてその御抱負のありますところを承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/21
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022・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) いろいろ御教示を頂きまして有難うございました。お話いちいち御尤もでありますから、できるだけお示しのような趣旨で行動したいと思つております。そこで今の御質問ですが、この平和條約締結等によりまして殊に共産主義国家群がこれに参加することを拒みましたために実質的には日本は自由国家群の中に立つことになつておるのであります。そこで自由国家群の中でアメリカの占める地位が非常に大きいことは申すまでもないし、又イギリスの占める地位も非常に大きいこと、これ又当然であります。でありまするから我々のいろいろの将来の方針の基調も勿論アメリカのことを十分考え、これとできるだけ提携して、協調して行くことは当然でありまするし、又イギリスも同様の立場にあるのでありますが、同時に世界にたくさんありまする自由国家各国との間も同様でありまして、我々といたしましては先ずこの自由国家群とでき得る限り提携し、相共に助け合つて国の繁栄を図り、又各種の平和維持を努めるというのであります。その中で自由国家群のうちでおのずから国の大小、生産力の大小いろいろの点で非常に重要な国もあれば、比較的主要でないというと失礼かも知れませんがそういう国もあるわけでありまして、それについては今お話のようにアメリカとは十分提携し、イギリスともできるだけの努力をしてこれと協調して行くというお話の通りの筋で行くことになるのでありまして、私もそう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/22
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023・平林太一
○平林太一君 御答弁に対しまして、私の考えております、又心配をいたしておりまする事柄に対しましては又同様の趣旨であるということを伺つて大変にわが意を得た次第であります。そこでそういう言を伺いまして考えますことは、国際連合に対する加入、このことはすでに本委員会に対しましてこれから審議の対象に相成つて参りますが、国際連合の加盟について承認をいたしまして、そうすると当然その手続は外務大臣がおとりになるのでありますが、そういたしますというとこの実質上の加盟が成立するのに対しましてはどのような見通しを持つて今日おられますか、ただ漠然として国会に承認を求めておるのか、併しそれとも承認がされればそれによつて手続をしてどれくらいの期間、いつ頃にこれが、この加盟のことが相成るかということの見通しということはおありのことと思う。又私はなければならんと思いますが、その点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/23
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024・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) これは過去の例を見ますると、非常に早い場合は、私ははつきり記憶いたしておりませんが、五日ぐらいで加入した例があると思つております。そうかと思いますと、イタリアその他のようにもう何年か、その都度拒否権を発動されて加入できないでおる国もあるわけであります。それでいつ問題が考慮されるかということは、安全保障理事会の会合のいつの議題になるかということでありますが、これは具体的には加盟の申込みをして見ないと、議題にいつなるかということはわかりませんが、併しそういつまでも延ばしておくわけではないから数カ月中には遅くとも議題になると思います。その場合に或る国が拒否権を発動して加盟に賛成しないという場合も無論あり得るわけであります。過去の例から言つても当然想像されるところであります。でありますから、今度は加入がいつできるかということは、要するにその関係国が全部拒否権を発動せずして賛成してくれれば、これは瞬く間にできるのでありますが、その拒否権を発動するかしないかということは、これは具体的にやつてみなければわからない。従つて甚だのんきなことを申すようでありますが、いつどういうふうになるということは、具体的に申入れてみないとわからないということしか言えないのであります。なお、一体拒否権を発動されるような虞れもあるのになぜ申入れるのだ、加入を求めるのだと言われれば、私どもの立場から言えば、加盟を申込むのが当然であつて、拒否権を発動して加盟させないというのが間違つた行為であると私は思つております。従つてその拒否権というようなことを考慮して加盟を躊躇するという筋のものでなくして、我々としては、立派に独立した国であり、又国連に協力しており、又国連の趣旨に何ら違つていない国の政策を持つておるのでありまするから、拒否権等のことを懸念することなく加盟を申入れて、若しそれでも拒否権を発動する国があればその国が惡いのであつて我々が惡いのじやない、こう言わざるを得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/24
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025・平林太一
○平林太一君 只今の御答弁の拒否権の問題に対しまして、私同感であります。でありますから拒否権というようなことは、当然そのことが発生いたしましたときに、特定の国が自由の行為をとるのでありますから、それは自由であることは我がほうといたしましては関知する限りでない。又そういうふうに了解をいたしておれば大きな目的も達するのでありますから、今のような考えでお進めになるのが妥当と思います。従いましてこの今の方向を、いわゆる着実、誠実に機を逸することなく速かにそれが実現の促進を図るように、それぞれの御苦心をいたされることを要望してやみません。
その次にお尋ねをいたしたいと思いますことは、米国に対しましては、ワシントンに対しまする大使はすでにおきまりになつたのでありまするが、残されておりまするいわゆるニユーヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、ロスアンゼルス、こういうような所の総領事舘、領事舘といたしましては、ホノルルが更にあるのでありますが、又領事舘といたしましてのシアトル、ポートランド、こういう所に対しまする総領事及び領事、すでに場所は先般設置いたしたのでありまするが、これに対しまする人事は今どのような御処置をとつておられますか、又今後どういうような方向でこれを進捗なさるのか、これを伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/25
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026・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) これは着々と今準備をいたしております。ただ、御承知のように領事舘を開設するということになりますると、家も借りなければならない、それから食器類とか書棚とかいろいろのものを揃えなければならない、人も又揃えなければならない。外務省としては元来人が多くありませんので、海外に出すときにおきましてもできるだけ適任者を少数出さないと、今度は外務本省の仕事に差支えるような状況になりますので、今人選を進めております。又一部はきまつたのもあります。もう遅からざる機会に任命して着任するような運びに至ると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/26
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027・平林太一
○平林太一君 何か非常に殺到して、そしてそのために停頓、支障を来たしておるというようなお話でありましたが、私は殊に米国等に対しましては、そういうようなお考えでなく、急速にこれが処置、実現せなければならないものと信じて疑いません。どうか十分なる進捗のほどをお願いしたいと思います。
それから最後にお尋ねをいたします。大使に対しましての人選及びこれが決定に対しましては、当然政府におきまして、外務大臣においてなされることを以て何ら疑義を差挾みません。併しこれに対しまして、国会の承認を求めるということのお考え、態度というものは、今日まではこの法律の上におきましてそれがないので、今回もそのようになさつたことは、これは少しも我々意に介するものではありません。併し今後におきまして、いわゆるこういうことに対してはどういうふうに新大臣としては御方針をお持ちになつておられるか。現に米国等におきましては、むしろ政府のこの海外大使の選任に対しまして、任命に対しまする意思よりも遥かに上院における外交委員会の意思というものが広く、高く示されておる。そうして上院外交委員会の意思が、その人選に当りまする前提行為になるということを我々は承知するものでありまするが、米国のごとき国においても然りであります。我が国が新たなる外交の発足に当りましては、私は深くこの点に謙虚なる気持を以ちましてお考えになられることが極めて妥当と考えるのでありますが、この点を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/27
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028・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) アメリカにおきましては、單に大使公使のみならず、軍人でも将官以上は上院のこれは軍事委員会の承認を求めるというように、すべての人事についてそういう上院の権限を認めておりまするが、これは世界の各国の例から言うと極めて珍らしい例であります。で、我が国におきましては、純然たる行政府の役人につきましては、例えば大臣でありましようとも、次官でありましようとも、その他の人々でありましようとも、これは政府限りで任命する。そうして法律等で規定してある特殊の人たちに対しては、これも主として委員会の委員であるとかいうようなものでありますが、そういうものについて国会の承認を求めてきめるという原則ができておりまして、この大公使等も行政官の一人でありますので、国会の承認を求むべき筋のものでないと考えておりまして、従来からそういう御説明をして来ておりますので、さよう御承知願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/28
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029・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 平林委員に申上げますが……、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/29
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030・平林太一
○平林太一君 これだけで終ります。
今岡崎君から、私はどうも不思議な御答弁を伺つたのであります。如何にもこれは官僚独善なのであります。常に時に当り機に応じてその国家の大局を考えた御処置をとらないという印象を強く受けるものであります。国内におきましての行政上に対しまする今のお考えに関してお尋ねいたしているのではない。いわゆる外国に派遣すべきところの在外使臣の問題であります。極めてこれは国内の行政上の問題と同一に取扱うべきものではない。いわゆる国会がこれを承認を與えたということになれば、これから使臣が外国に参りましても、その存在価値というものが、政府自体でこれを処置するよりも遥かに先方の信頼も受けるし、いわゆる重きをなすものでありまして、これは理論上極めてはつきりした事柄であります。でありますから、従来の制度に対しましてはそれはそれでよろしい。併し今後に対しましては、そういう御処置をとることは極めて妥当である。特にいわゆる海外に対しまする、まあこの間の設置法におきましてその設置に対しまする法律ができましたときにも、当然これは法に触れるべき問題でありますが、あれを我々がいたしたにつきましても、特に特別職それから一般職というふうに分けており、特別職としての大使というようなことにこれは処理いたしていることでも、如何にそこに大切な事柄が存在しているかということがはつきりいたすわけであります。でありますから、今後に対しまして、私はどうしてもそういう態度をとらなければいかんということをこの際申上げるのであります。只今の御答弁を伺つておりますというと、誠にこれは何といいますか、外務大臣と
いうのは単なる官僚ではないと思うのです。いわゆる国際的な国家の興亡を賭している。そうして行くべき方針に対して是と信じたことに対しましては勇敢でなければならない、そうして英断でなければならない、果敢でなければならないということを私は強く願いたいと思うのであります。いわゆるただ国内の従来の慣例だからその通りにやるというのでありますれば、これは少しも私は外交の妙味というものはないのでありますから、いわゆる今後におきまして、速かにそういう態度を政府はとられることが、今後の日本外交又は日本政治の全体におきまして、これはもはや何ら躊躇しているべき筋合のものではないと思います。でありますから、その点私は強くこの際要請いたすのでありますから、新大臣もその点は、只今の御答弁のようなことでなくて、一つ穏かに常識的にお考えになりまして、ちよつともむずかしいことではないのでありますから、そういう方向に一つお進みを願うということをこの際強く御要請いたしておく次第であります。これに対しまして、只今の御答弁で大体は私伺つておりますから、イエスかノーか、この際ここでお尋ねいたすことは、まあいわゆる深い儀礼を以てこの際申上げません。が、どうかそういうことを更に一つ御検討願いたい。又ここに政務次官の石原君御出席になつておりますが、政務次官というものはそういうことに対してしつかりとやれるのが一つの職務である。政務次官にでもなれば、何か官僚にでもなつてしまつたような、偉い者にでもなつてしまつたというような考えになつたのでは、政務次官というものは何ら意味をなさないことになるのでありますから、一つ岡崎外務大臣に対しまして賢明なる、議会から出た政務次官石原君が大いにその点に一つ、そういうことのできるような十分なる御処置を願いたい。これに対しましての石原君の御答弁を伺つておきたい。(笑声)これで私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/30
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031・石原幹市郎
○政府委員(石原幹市郎君) これは外務公務員法がここで論議されましたときにも、たしか二、三のかたから御意見が出まして、そのときにも一応申上げてあるのでありますが、先ほど岡崎外務大臣が申されましたような大体趣旨で、直ちにということは困難だろうと思います。又いろいろ外交上の間柄であるとか、いろいろそういう問題もあろうかと思うので、御意見として承わつておくことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/31
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032・杉原荒太
○杉原荒太君 私は今日は改まつて質問しないつもりであつたのでありまするが、先ほどの平林委員と外務大臣との質疑応答に関連しまして、一言だけ岡崎大臣のお考え方を伺つておきたいと思うのであります。それは、今後の日本の外交方針を考えて行きます場合に、先ほども申されましたように、アメリカ、イギリスなどを中心にしたいわゆる自由主義国家群との間の提携協力ということが今後の日本外交の大本でなければならんというお考え方、これに対してはいろいろ日本の今置かれております国際的の地位等からいたしましても、私もまさにそうなくてはならんと考えておりますが、それと共に、今後いわゆる共産主義国家群との関係をどう調整して行くかということ、この点を誤りますならば、日本の今後の国運を危くする。従つて普通の世間のジヤーナリズム等のいろいろの論議は別にしまして、一つの日本の国内には、そういう点について深く憂えているところがなくてはならんことは当然なのです。それがまさしく外交の局に当る外務大臣岡崎君の重大なる私は責務であると思います。そこで、今日私はソ連等に対する外交政策の大本についてお伺いするつもりはないのでありまするが、ただここで一つ私がお伺いしたいと思います点は、国際問題についての日本の国内における啓発の点、殊に外務省が指導者になつてやる場合の外務省の態度、対外政策としての国際共産勢力に対する政策の問題と今後の日本の国内政策としての共産勢力、共産党の活動等に対する政策の問題とは、これはよほど私区別して考えなければならんことだと私は思うのであります。そうして又国内政策としてはこういう点について決して甘い考えをされないで、よほど肚を作つたしつかりした態度でやつて行かなければならんと私も思つているのでありまするが、国際政策、対外政策として見て行きます場合には、よほどその点のところを愼重に、又幅広く考えてやつて行かなければならんと思うのです。そういう点はこれは言うまでもないことであつて、これは日本に限らず各国とも非常に愼重にかまえてやつて行つておることであると思う。そこで岡崎大臣にお伺いしたい点は、今のこの国際問題についての国内啓発、外務省が指導者になつてやる場合においての基本態度、そういうものについてどういうふうな方針の下にやつて行くお考えであるか、その点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/32
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033・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 今のお話は全く実際に即した御意見であつて、私どもも同感であります。そこで国内につきましては只今杉原君の言われたような外務省が指導者となつて国内の啓発をやるというような気持は、私は今のところ持つておりません。ただ国際情勢といいますか、海外のいろいろの問題について国民の理解を深めることは、これは是非やらなければならんと考えております。そして只今外務省で考え又実行しております。これはうまく行つているかいないかは別として、やつておりますことは、できるだけ広く材料を集めまして、そしてその中で国民の特に関心のあると思われること及び我々が国民に知つてもらわなければならんと考えておることについて、成るべくわかりやすくこの材料を提供する。そして判断は国民に任せるようにいたしたい、こう行くかどうか、又杉原君が御覧になつてそう行つていないとお考えになるかも知れませんが、我々の少くとも気持はそのようでありまして、国民の考えを或る方向に持つて行こうとすることは、やつてもなかなかうまくいかない。むしろ悪い影響が起りはせんかと思つております。そこで方向付けることはいたしませんで、材料を提供する、而もこれをわかりやすくして、でき得るならばその材料の提供の間に、この問題について国民が判断するんだぞということが自覚されるようなふうにいろいろの材料を持つて行つて、判断はそつちでやつてもらうというつもりでやつておるのであります。併し人間でありますから、公平にやつたと思つても、自分の根本的の考えが、例えば自由国家群と協調すべしという考えでありますと、そつちのほうに多くの材料が出てしまうということはあり得ると思つておりますが、それもできるだけ我々は矯正しまして、何と言いますか、成るべく公平に見た材料を提供したい、こう考えております。只今その趣旨でやつておりますが、悪いことがありましたら、指摘して頂けば、できるだけ直してそうしたい。なお国内に対するそういう材料の提供、これは言葉が悪いのですが、啓発といいますか、そういうような言葉も使われますが、そういう方面にはかなり頭を使つて、又時間も割き、人も割いて努力をしておりますが、今後更に私は大いに力を盡そうと思つておりますような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/33
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034・杉原荒太
○杉原荒太君 只今の外務大臣のお考えを聞きまして、よく私も了承しました。私も全然そういうふうにやつて頂きたいと考えておりまして、今のような御趣旨が具体的に徹底するようにして頂きたいということを希望しまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/34
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035・有馬英二
○委員長(有馬英二君) 前に申上げましたように、私も岡崎外務大臣に是非質問をしたいことがあるのでありますが、お約束の時間がもう来たようでありまして、これ以上時間を延ばすことは、外務大臣に対して大変御迷惑と存じますから、本日はこれを以て質問を打切りまして、他日に保留いたしたいと存じます。
なお、本日の議題につきまして審議をすべきでありますけれども、余り時間も経過いたしましたから、本日はこれを以て散会することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/35
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036・平林太一
○平林太一君 只今委員長のお話の中に、外務大臣に対して御迷惑である、それだからというようなお話がありましたが、これは一つ穏やかに適当な字句に直して頂きたいということを、私は心からそう思わざるを得ません。どうかその点委員長は、謙虚なる委員長として適当に然るべく……。又腕白な私の目から見ますれば、食い違いがあるかも知れませんが、今後のことに属するわけでありますから、御迷惑というようなことは、又別の言葉で適当に一つ御処理願えるように、会議録のことでありますから、私はお願いいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/36
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037・有馬英二
○委員長(有馬英二君) それでは訂正いたしまして、皆さんに御迷惑と……。(笑声)
それでは本日はこれを以て散会いたします。
午後四時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101313968X02819520513/37
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