1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年三月二十四日(月曜日)
午前十時五十一分開会
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出席者は左の通り。
委員長 平沼彌太郎君
理事
大矢半次郎君
伊藤 保平君
菊川 孝夫君
委員
岡崎 真一君
黒田 英雄君
西川甚五郎君
溝淵 春次君
小宮山常吉君
小林 政夫君
田村 文吉君
森 八三一君
大野 幸一君
下條 恭兵君
菊田 七平君
木村禧八郎君
国務大臣
大 蔵 大 臣 池田 勇人君
政府委員
大蔵大臣官房長 森永貞一郎君
大蔵省主税局長 平田敬一郎君
大蔵省主税局税
制課長 泉 美之松君
大蔵省銀行局長 河野 通一君
事務局側
常任委員会專門
員 木村常次郎君
常任委員会專門
員 小田 正義君
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本日の会議に付した事件
○所得税法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○法人税法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○相続税法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○租税特別措置法等の一部を改正する
法律案(内閣送付)
○資産再評価法の一部を改正する法律
案(内閣送付)
○通行税法の一部を改正する法律案
(内閣送付)
○災害被害者に対する租税の減免、徴
収猶予等に関する法律の一部を改正
する法律案(内閣送付)
○日本輸出銀行法の一部を改正する法
律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) それでは第二十七回の大蔵委員会を開会いたします。所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、右三案について質疑を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/1
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002・菊川孝夫
○菊川孝夫君 今年まあ講和條約の発効の年でもあるし、税法について相当根本的な改正をされて提案されるものと我々は考えておつたのでありますが、今度の所得税法の一部を改正する法律案を見ますると、この前の臨時措置によつて減税をしている、まあ大体そのままを税法の改正に持つて来られただけでありますが、これは国税と地方税、特にこの国税と地方税の問題につきましては納税者の側からいたしますると、とられるところは三本建にとられる、調査も三本建に調査をされる、ところが納める側になると一本だというので非常にこの点だけでも相当改正の声が高いのでありますが、従つて平衡交付金の制度につきましても再検討しなければならない段階に来ているのじやないかと思うのでありますが、そういう面の根本的な税制改正というようなことについて、日本の実情に合うような、而もこの講和條約発効に伴いまして独立国となつた曉における税制改正というものを今大蔵省のほうで考えておられるのかどうか。それとも今のまま大体当分の間こういう措置で推移するつもりであるかどうか、この点を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/2
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003・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お話のような点がございますので、実は非公式な税制懇談会というものを内閣の諮問機関といたしまして調査研究いたしました。大体国税につきましては余り意見はなかつたのでありまするが、地方税の問題につきまして平衡交付金の問題、或いは国と地方との事務の問題、財源の問題、又地方自治体といたしましても配付税の問題等論議せられて、お話のように一人の納税者が三調査機関から調査をされ、非常に煩瑣ばかりでなしに、その間に調査に徹底不徹底があり見方の相違等があり非常に困惑している、こういうことを是正すべく検討が加えられたのであります。大体の結論のつくところまで行きがけたのでありますが、何分にも時間的に間に合わない点があります。又関係方面につきましても或る程度の異論がございましたので、もう一年待つて一つはつきりした具体的な案を作り上げようというので足踏みになりましたが、お話のような点がありますので、私は今後早急に地方行政機構、地方財政、地方税制、こういう問題を取上げて十分検討して行かなければならん、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/3
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004・菊川孝夫
○菊川孝夫君 次に昭和二十七年度から我々のほうでは再軍備と思つているのですが、自衛力増強、それから賠償の問題で、これはどうしても財政規模が拡大せざるを得ないと思うのでありますが、そこで只今参議院において審議されておりまする総予算にいたしましても、年度の途中において或いは又補正をしなければならん必要が起つて来るのではないかと思います。まあそれはともかくといたしましても、どうしても財政規模は拡大する。そういたしますると、これはどこかで財源を見付けなければならんと思うのでありますが、従いまして、先ず狙われるのは増税のほうへ狙われるのじやないか。ところが大臣がもうかねがね増税はしない、而も赤字公債は発行しない、こういうことを言明しておられる回のだが、どうしても財政規模の拡大ということは大臣も認められると思うのでありますが、その財源を一体どうするか、それともこれ以上拡大しないのか。その点について特に増税との関係がありますので、この税法改正に当りまして一つここ一、二年の二十七年度下期並びに三十八年度くらいの見通し、それから大臣がどういうふうにやつて行くつもりかお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/4
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005・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 財政規模の拡大ということを、歳入歳出八千五百二十七億円が二十八年度におきまして拡大するかという問題でございますると、私はこれらは好むと好まざるとにかかわらず或る程度拡大するのじやないかと思います。又拡大して行くような日本の経済力を盛り立てて行かなければならん。併し拡大が経済力の発展によつて拡大することは認めますが、この増税によつて歳入歳出の規模を拡大する気持は毛頭ございません。私はここ一年、二年の間はできれば減税に向うべきであつて国税の増税ということは考えておらないし、議論があつたら絶対反対します、こういうふうに言つているのであります。然らば今の税制のままで二十八年度或る程度拡大を予想して賄つて行けるかという問題であります。私は賄つて行けると思います。最近の国税収入の増大は私は三百億近く今年度におきましても自然増収が期待できるのではないか、こう見ておるのであります。中にはちよいちよいこの頃法人の収益率が非常に下つたということが出ておりますが、勿論収益率は下りましたが、所得は利益金額に大した異動はこの三月の決算にもないという考えを持つております。今後あらゆる資金の蓄積、産業の合理化、増産という方面に向いて行くならば、二十七年度はこの収入も確保できる。二十八年度はこれ以上の収入が現行税制の下でもあると確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/5
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006・菊川孝夫
○菊川孝夫君 その点についてですが、とにかく今年度の二十七年度の予算には賠償のほうはまだ頭を出して来てないのですが、この役務賠償ということになりますと、どうしても役務費だけはこちらで財政支出をしなければならんと思うのでありますが、そうすると、作つた品物或いは働いた役務というのは向うへ提供されるので、国内に残るのは結局札束だけが残る。こういう結果にならざるを得ないと思うのでありますが、二十七年度の下期から二十八年度へかけては賠償問題をどうしても出して行かなくちやならんと思うのでありますが、余り顔を出しておらんのだがこれを顔を出すことになりますと、どうしてもどこかでこれだけの財源を見つけなければならんと思うわけでありますが、それはすべて大臣の言う経済の発展だけで賄える、こういうお見込でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/6
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007・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 経済の発展で賄われなければなりません、国民生活を引下げるような増税なんかで賠償をやるということは真つ平でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/7
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008・菊川孝夫
○菊川孝夫君 その次に、それでは二十六年度の国民所得四兆五千億ですが、これと二十七年度の五兆三百億、八%大体ふえているわけでありますが、そのうちで勤労所得はまあ一〇%くらいふえるような、安本の資料を見ますとそういうふうになつているのでありますが、個人の業種所得は割合に殖えは少い。それから法人のほうの所得も一・五%くらいの増になつているが、勤労所得だけは一〇%くらいの増になつている。而もこれは徴税の対象になるわけですが、特に私が申上げたいのは、法人所得がこのように一・五%くらいより殖えない、而もこれは一つにはやつぱり、税法の改正の際に、従来所得として計上したものを損金に廻すことを認めたことと、それから特別償却の許可等によりまして相当増加の伸びが落ちている。従いまして税法上では表面は法人税を殖やしたことになつているけれども、実際は大して殖えておらんのであつて、大体殖える分が勤労所得者からの税の徴収ということになつているのではないか。こういうふうに思うわけですが、私はいつも申上げます通りに、源泉徴収を受ける連中、特に勤労所得のものはどうしても一〇〇%近い捕捉率を挙げられるにもかかわらず、その他のものは必ずしもそうでない。而も今年度の国民所得の分配を安本の推定から見ましても、やつぱり勤労所得のほうはうんとやられる。こういうふうに思うわけですが、従いましてこの所得税の改正に当りましてもつと勤労所得のほうの税金を減らすというふうな処置がもう少し講じられなかつたか。私は特に給与所得の税金が何といつてもまだ重過ぎると思うのでありますが、これの減税処置につきましては、今後更に補正予算その他においても検討するつもりがあるか、それとも当分これは据置になる見込であるか、この点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/8
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009・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 租税収入のうちに占めまする所得税、なおその所得税のうちにおきましても、法人税或いは源泉課税の給与所得税、それから申告納税の所得税、この割合はそのときの状況によつてよほど違うのでございます。十年或いは十四、五年前におきましては、今の申告納税の所得税に相当するものが圧倒的に多かつたのです。敗戰後各所得とも非常に落ちております。一番落ちたのが法人税でございます。そのときにおきまして一番落ちないのが給与所得税であつて、これは定額収入ということになつているので事業的なものではないのです。それから最近の状況では事業収入のものが非常に法人に変つて参りまして、申告納税の所得税が源泉課税の所得税或いは法人税ということになつて来つつあるのであります。御承知の通り銀座辺の店なんかも昔は殆んど個人でございましたが、今は殆んど全部法人でございます。こういう関係で源泉徴収の所得税と申告納税の所得税の比がどんどん変つて来るのであります。今年度におきましてもまだこれは確定申告が出て徴収が完了したわけではございませんが、四月まで昭和二十六年度の収入におきましても源泉所得税のほうは補正予算で相当出しまして、これはもう見積り過多じやないかというような話でございましたが、実績は源泉徴収のほうは補正予算よりも百五十億から百七、八十億殖えます。法人のほうにいたしましても法人の収益は非常にふえた。例えば当初予算七、八百億のところを千五百億にもなつた、こういつておりますが、これは法人税におきましても私は千五百億をずつと上廻つて二百五十億くらい自然増収になるというふうに思いますが、これは税制問題ではなしに事業の実態が変つて来ることに原因があると思うのでございます。申告納税のほうは我々は手をゆるめているわけじやございません。極力実額調査によつて収入を確保しようとしております。而も補正予算の場合におきましては法人税とか或いは源泉徴収の所得税とは違つて殆んど殖やしていない。こういうふうに見ているのでございます。これは税法の問題ということでなく事業の実態がそういうふうに移り変つている、こう見るべきだと私は考えているのでございます。勿論給与所得、源泉徴収のほうは包み隠しのないそのままで坂つております。片一方はいろんな技術を用いて調査をして出るのでございまして、そこには過不足はあるかもわかりませんが併し絶対に過重になるとか割当とかいうことはせずにありのままでやつて行く、こういうことでやつておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/9
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010・菊川孝夫
○菊川孝夫君 その点ですが、これは私らから見ますると、どうも取りよい所から取るという傾向になりがちだと思うのでありますが、特に二月末現在のあの所得税の徴収実績を見ましても、申告は目標の一千二十二億に対して実績が四百三十一億でこれは大体四〇%そこそこにしかなつておらん。一方源泉のほうは千三百二十二億に対して千三百五十一億くらいに上つておつてこれはもう一〇〇%を超えている。従つてとりよい所からとつてそうしてとりにくい所はどうしてもおろそかになるといいますか、従つて負担するのはとりよい所、源泉徴収をされるものが多く負担するという傾向にこれはなるように我々はどうしても思えて仕方がないのでありますが、この点についてはこの申告のほうには何かまだ無理があるのじやないか。いわゆる税法上に無理があるからしてこのように実績が上がらんのじやないか。こういうふうに思うわけでありますが、その点もうこれで無理でない、止むを得ぬ、今の平均からいつてこのくらいは止むを得ぬ。それよりももう少し下げてやつて、そうして取りよいようにするというほうを今回の税制改正に織込まれることを我々は期待しておつたにもかかわらず、それが余り織込まれてないのでありますが、将来もこの程度で、この申告納税につきましても、この程度の徴収を続けて行かれる見込でございますか。その点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/10
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011・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 今のお話の分はこれは納期の関係がございまして、源泉徴収の分は毎月毎月取つて参ります。それから賦課課税、申告納税のほうは納期がございまして一年に三回でございまするが、二月末に納めて三月になつてから国の数字に上るのでございます。だから年に三回でございまするからそうなつて来ております。で御質問の点は取りよい所から取つて取りにくい所は放つておくということでございますが、こういうのじやございません。源泉徴収のほうはずつと徴収期間がありましてそうしてそれが毎月入つて来るようになつております。賃金支払の際取つております。片一方は申告納税、賦課課税でございまして申告は前年のもの、こういうようなことがございますので、徴収は工合が悪いので、今の数字だけによるわけには行きませんが、結論といたしましてはこの三月の納期に三月の収入がございますれば、大体七〜八〇%程度は行くのではないかと思います。ただ今の金詰りの状況から見まして、私は申告納税のほうも或る程度徴収猶予を認めるのが適当かと思いまして徴収猶予は特例として認めております。予算通りに入らないから税法に無理があるのじやないかということはこれは言えないのでありまして、これは予算の見積りがどうかという……、だから初めから法人並になるというような見込を立てておればこういうふうには異動がないと思いますから、政府のほうでこれだけ法人並があるということを相当見込みましても、実態がそれ以上に企業形態が変つて来るのでございますから、予算に対して相当の赤字が出る、こういうことになると思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/11
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012・菊川孝夫
○菊川孝夫君 もう一つ次に相続税につきまして、なるほど財産を相続した人からたくさん税金を納めてもらうという根本方針はいいのでありますが、特に実情に合わないのは、田舎へ参りまして農家等で相当相続いたしましても家屋或いは宅地、田地、山林、等を相続いたしましても、これの相続税は非常に納めにくいのでありまして納めいい面もあるが、今回の相続税の改正で或る程度緩和されていると思うのでありますが、まだまだこの田舎のほうに参りますと、アメリカのような国と日本とでは多少相続税についても考え方を変えなければならんのじやないか。先祖伝来の土地家屋等につきましてはこれをそう物納してしまつたのではそこの一家はつぶれてしまうというような状態も、まだまだ無理がこの相続税について特に日本における農家等の場合に多く見られると思うのでありますが、今回多少減税をされることにまりましたけれども、まだまだこの相続税については実情に合つた改正が必要だと思うわけでありますが、この点について一つ今のところは今回の税制の改正に当りまして、この点田舎のほうでは特に要望が強いと思うのでありますが、大蔵大臣この点についてのお考えをて一つ承わつておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/12
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013・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お説誠に御尤もでございまして改正前の相続税法は非常な行過ぎでございました。先ず何をおいてもこれを改めなければならんというので今回のような減税措置を講じたのであります。大体これで一町歩程度の田畑をお持ちのかたは農家にかからない。併し私は今の現状から申しましてこの相続税は所得税と同じように直接税の中では非常に高い、機会があつたらもつと下げたいという工合に考えているのであります。昔は七年なり十年なりの年限がありまして利子を払わずにとにかく七年なり十年なりずつと待つてもらうということがありましたが、これを一度に払つてしまえ、而も利子は四銭だということでは大変でありまして今回利子を二銭に軽減することになつておりますが、日本の実情というものをもつと相続税なんかには織り込むべきじやないかと思います。ただ今の状態といたしましては、財政収入の点等がございまして、この程度の減税措置にとどまつたのでありますが、どうしても今後におきましてはこの相続税におきまして農地とか山林なんかにつきましては融通性その他からいつて、同じ不動産なんかでも宅地なんかとは評価その他変えて行かなければならんのじやないか。税法は複雑になるかもわかりませんが、資産の実情によつて評価に観点があるのじやないか、こういう気がします。殊に農地、山林等につきましては評価の基準を作るということをしなければ実情にそつた相続税が施行されないのじやないか。こういう気持を持つて検討を続けております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/13
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014・菊川孝夫
○菊川孝夫君 次に二月でございましたか実施されました無記名定期預金でございますが、これは実は無記名定期が魅力があるということは、やはり無記名定期預金でなしにたんす預金をしておくと税金はかからんが無記名定期にすると利子が入る。そこで利子に対する税金が問題になるが、それよりも実は無記名定期を何百万、或いは何千万できるようならその儲けに対して税務署から狙われぬというので、私は無記名定期ということが設けられたのだと思います。そうしてこのようなことは税金が法律によらなければならんことは申すまでもないのでありますが、大蔵大臣が命令や政令によつてたびたびこの無記名定期を廃止したり、又設けたりすることが、果して税法上正しいかどうかということにつきまして、或いは無記名定期は何も税金の問題はないということになると、この間主税局長からはお話がございましたが、税金の関係がなければそれだけ無記名定期をする必要はないのでありますからして何も無記名定期で金を集める必要はないと思うが、そこで問題にいたしたいのは大蔵大臣が必要と認めた場合に、これを廃止したり、それから又再び実施することが法律によらないで政令、命令によつてやることが憲法上からいつても、これは違反ではないというふうにも考えるのですが、この点はどういう根拠でそれをおやりになるか、それを一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/14
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015・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) これは無記名定期とかいろいろな名前を持つておりまするが、事の起りは御承知の通り源泉選択の税率を税法上設けたことにも起因しているのであります。で、源泉選択というのは総合課税をしないで、名前は何でもいい、名前は何でもいいとは申しませんが、いわゆる総合課税をしないで、従つて預金者は預金名簿に載つている預金者が実際の預金者か、これは確認する必要はない、こういうことで無記名定期を認める前提が介在しておるのでありますが、無記名定期をずつと昔やつておつた、やめるのもこれは政令ではないので、そういうことはやつてはいかないという、こういう大蔵大臣の通牒なんであります。法律に基いたわけではございませんが、ただやめるときには、源泉撰択というものをやめた、法律上終戰後、源泉選択の戦争中にありました制度をやめた、そこでどうしても記名にならざるを得ないということになつたが、今度一昨年でしたか、源泉選択の税法を設けましたのでそのときから介在してただ大蔵大臣の通牒で、無記名のままではいけないという通牒があつたのを取つただけであります。別に法律を要しないことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/15
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016・菊川孝夫
○菊川孝夫君 そういうふうでしたら、資本の蓄積ということを言つているとき、税法を改正したときに直ちに無記名はいかんという趣旨をとればよかつたのに、今年の二月までとらない理由は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/16
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017・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) この無記名定期ということは、課税の状況から申しますると、課税洩れの場合の追求の手段がそれだけ減るわけでございます。例えば実際は菊川が預金しておるが池田の名義で預金している。それで調査したならば菊川の預金で、池田の預金でない、こういうことになりますので、追求の手が万全でないということがあつたのであります。併し課税をどこまでも追つて強行して行くということと、片一方ではたんす預金を銀行預金にさせて資金の効率を上げると、この二つのジレンマから申しましてどちらをとるかということは、そのときの経済情勢その他全般のことから考えなければならないと思います。そこで私は無記名定期を認めまして課税の充実つに或る程度支障があるかもわかりませんが、それよりもたんす預金を金融市場へ持出してそうしてその金を十分有効に使つたほうが国の経済再建のほうに役立つ、こういう考えの下で、情勢の変化からそういうふうにいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/17
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018・菊川孝夫
○菊川孝夫君 最後に。特に最近の新聞や経済雑誌を見ましてもアメリカの軍拡が中だるみをする、それから日本の貿易もそれに伴つて伸びない。従つて大分商社の倒産、それが響いて繊維会社の操短、それなんかは響いて参りますると、相当これは下半期は大蔵大臣の言われる経済の発展が少し中だるみをしなければならんじやないか。ところが、この法人税にいたしましても、改正したときには丁度頂点にあるときで、一応朝鮮動乱の影響が日本の経済に一番響いて来たときに改正いたしたわけであります。そうして見積りも大体そういう見積りで予算も組まれていることだと私は思うのでありますが、ちよつとこれは中だるみして余り先にいい明るい見通しといいますか、発展への見通しというものはどうもないように常識的に考えられるわけであります。従いましてそうしまするとどうしても法人の収益も落ちて来るでありましよう。又個人の事業主の所得も落ちて来まして五兆三百四十億というものは、期待通りには国民所得として得られないことになる。そうしますと、どうしても税金のほうに響いて来るが、これに反して自衛力の増強や賠償というものがこれは好むと好まざるとにかかわらず今の行き方で行きますると、負担がそれだけふえて来る、それだけ財源を見込まなければならないというジレンマは一体明るく考えていいかどうか。大蔵大臣はすぐアメリカの特需がなくなれば東南アジアの開発に寄与するんだということを言われますが、果して今のところそういう見通しも我々の見るところによりますと必ずしも明るいものではないように考えるわけでありますが、そうすると勢いこれは税金のほうにも響いて来まして、それでなくても苛斂誅求だというのにどうも細かいところまでほじつてきびしい徴収がなされる形になるんじやないか。こういうふうに考えられるわけでありますが、特に三税法は基本的な税法だといつても過言でないと思うのでありますが、この運用に当りましてどうしてもそういうほうに影響することを我々は最も恐れるわけでありますが、この点の見通しについて、一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/18
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019・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 今の法人税なんかは頂点のときにこしらえた税法だとおつしやいますが、実はこの法人税法を御審議願いましたときには、九月決算はかなり三月に比べて落ちるだろう、今度景気の何と申しますか落ちかけのときでそうして議論になつた問題だと思います。私は先ほど申上げましたように収益率が幾分資本の増加その他によりまして落ちても、収益金額はこの三月期も余り前期と異動はないと考えております。それは所得においそ三十億円とか五十億円くらいの違いはあるかも知れません。私は見通しといたしましては、本年度ああいうように危まれた法人税につきましても、三百五、六十億円の自然増収を見てい戸のであります。今後におきましても収入の確保は私はできると思います。
それから苛斂誅求という問題がございましたが、私は過去三年前の状態と今の状態とを比べて税務行政は改善されたと思います。税金が高過ぎるから困るというふうないろいろな運動もこの項は非常に少くなつて来たと自分では安心しておるわけであります。ただ税務署に対する根みはこれはなかなかひどいのでございまして。新聞で御承知の通りここ一、二カ月の間に二十数件の放火その他がありまして、今国税庁のほうでは総動員で夜警をいたしておるのであります。そういう恨みはありますが苛斂誅求の問題は二、三年前に比べるとよほど少くなつていると思います。私は前から申しますように無理に税金をとつてはもう角を矯めて牛を殺すのだから、決して無理な税金をとつてはいかんということを言つて、税務の執行が行政の中で最もむずかしい仕事でございまするが、おかげによりましてだんだん改善せられつつあるのであります。従いましてこの状態で日本の経済が進んで行くならば六千三百数十億の租税収入は絶対確保できると思います。苛斂誅求でない、とり足らんと言つて叱られるぐらいの所があるのであります。私は殊に楽観ではありませんが自信を持つております。殊に租税収入なんかというのはこれは予定通りとれぬということになりますると得てして税務官吏は無理をする傾向がある。税金はもう十分とれたから適当に無理のないようにやれというふうに大蔵大臣は指導しなければいかん。そういう意味におきまして予算も実は私はできるだけ確実に歳入予算を見積るという方針であることは、私が大臣になりまして七回予算を作りましたが六回とも自然増収を出しておる。自然増収が昭和二十五年度におきましては、ちよつと増収の金額が四年あたりに比べて少うございましたが、これはやはりドツジ・ラインの影響で昭和二十五年の下期がよかつたのですが上期は余りよくないというので、余り自然増収が出ておりませんが、これはずつと過去の経験から申しましてこの程度の分は十分確保できる。苛斂誅求なんかの声をなくするように努力しておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/19
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020・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 大臣に対する御質問は、大臣は予算委員会に行かなければなりませんので、午前はこの程度にして午後又続いてお願いいたします。ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/20
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021・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 速記を始めて下さい。租税特別措置法等の一部を改正する法律案、資産再評価法の一部を改正する法律案、通行税法の一部を改正する法律案、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案、四案に対する質疑応答を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/21
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022・菊川孝夫
○菊川孝夫君 租税特別措置法等の一部を改正する法律案のうち、私が特に希望したいのは、これで質問かどうか知りませんが、寒冷地帯においてこれはどうしてもまあ国民の税負担がうんと軽減されました場合には、寒冷地帯も或いはその他の地帯も大して特別措置を講ずる必要はないと思いますが、今のように大体明年度の納税者千二百万人ぐらいで、総所得金額二兆三千百六十二億円と推計されております場合に、一人当りの所得金額は年額にして大体十九万円から二十万円くらい、一人の税額は二万円くらいになるわけでありますが、そうしますと、私の一番にお尋ねしたいのは、寒冷地帶には、特に北海道あたりには石炭代というのは、これはもう公務員にいたしましても一般会社でも出されるわけでありますが、ところが石炭代や寒冷地の特別手当というものについてはもう少しの間は特別措置を以て税率を安くするという措置が講じられないものであるかどうか、この点について一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/22
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023・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) お尋ねの問題は、大分前からたびたび本国会におきましてもお尋ねを受けた点でありますが、所得税におきまして基礎控除や扶養控除は一種の生活費的な控除でありますが、これに或る程度の差を付けるか付けないかという問題に関連して来ると思うのでございますが、そういう見地から行きますと、例えば大都市と地方とでは大分生活費は或る程度違うのでありますが、例えば勤務地手当等の関係も又これはそれを一種証明しておると思いますが、地方によりまして大分生活費に差があるということもこれを認めるのでございますが、国税たる所得税におきましてそういう差を仮に考慮に入れたほうがいいかどうか、これは私は余ほど問題であろうと思う。やはりこういうものにつきましては、所得税は全国一律で実行するという点が、これはやつぱり国税といたしましては抜きがたいのでありまして地方税でございますれば或る程度の差を付けるということは、それぞれの地方の実情に応じまして差のある場合もあろうかと思いますが、国税の場合におきましてはどうもそういうような結論は出て来ないのではないか。従いまして今御指摘になりましたような特別の手当のようなものにつきましても、どうもこれを特別扱いにするのは少し如何なものであろうか。但し貸家所得等でございますと、これは必要経費といたしましてそういう地方には除雪費とかその他の特別の費用が要る。或いは営業所得者の場合におきましても特別な費用が要る。こういう所得を得るための必要な経費に属する面におきましても、これは当然寒ければ寒いに応じまして所得の計算上当然見るべきであつて、そういう点について今まで見ていたのが不十分でありますれば、実態をよく調べましてそういう方面におきましては十分政府としては配慮して行くべきではないか。又御注意もありましたので、最近はそういう点につきましても注意をいたしておりまするが、そういう面ならばこれは私は理窟上もさように当然考えるべきでありますが、生活費的な所得の補いに対しまして、何か特別な考慮を考えるというのはどうも所得税の建前から行きまして筋に乗つていない、こういうように私のほうは大体現在のところ考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/23
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024・菊川孝夫
○菊川孝夫君 その点についてでありますが、特に北海道では実際もう石炭というものはどうしても冬中の石炭が生活するのに必要だ、又そこに働いて賃金を得るためにはどうしても石炭だけは余分に要る。これは必要経費と思うのでありますが、丁度法人の場合の必要経費は損金に見積られると同じようなものだと、こう思うわけでありますが、これに対して経費を出されたとき必要経費として認める。何トンですか三トン分に相当する必要経費を実費支給の形で支給されたものに対しまして税金をかけるということは、丁度旅費に対して税金をかけたりするのと同じような性格ではないかと思うわけでございますが、これを何とか考慮する方法はございませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/24
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025・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 旅費でありますと、これは当然職務を行う上において必要な費用、こういう意味におきまして本人の所得と見ない、こういうふうにいたしているのでありますが、家庭で焚く石炭代がどうも仕事をする上におきまして、或いは勤務する上における必要な費用と、こういうわけには見るわけには行くまい、そういうものが月給を取るための費用だと言うわけには私は行くまいと思います。やはり生活費の一部であつて北海道等におきましてはその項目の生活費につきましては余計な費用が要る。こういうことではないかというわけでありまして、生活費的な面になりますると、私が先ほど申上げましたようにどうも差別をするのは少しどうであろうかと、実はかように考えておるわけでございます。これは大分衆議院等におきましても強い要望もありまして、大分私どもよく考えてみたのでありますが、どうも所得税の筋から行きますとそのような結論しか出て来ない、こういうふうに現在のところも考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/25
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026・田村文吉
○田村文吉君 あの超過供出をした者に対する手加減というものは、実際の運用方法としてはどういうふうになさるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/26
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027・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) これは先般国税庁から地方に取りあえず通達を出して言つてありますが、二十六年分の産米の超過供出分の課税はこれは二十六年度の所得にはならないで二十七年分の所得になると申しますのは、基本の分は米ができた年の所得と見ます。従いまして米価の七千三十円ですかこの分は昨年の所得になりますが、これを超過してもらう分は現実に超過供出をしてみないと金が入つて来ない関係にありますので、これは大体本年になつてからでございますから二十七年分の所得と見る。これが第一段でございます。従いましてそれに関連しまして超過供出をしたら、それでは実収がそれだけ余計あつたと見るか、見ないか、この問題でございますが、これは概して最近の状況から行きますると、実収は実収で税務署がよく調べまして査定を加えておりまするので、これを特別超過供出であるというので動さない。超過供出は飯米の自家保有米を出す場合もありましようし或いはいろいろな場合があると思うのでありますが、特別に超過供出をしたという理由で実収高をそれだけふやすということはない。これが更に一点。それからその次には二十七年分の代金の課税の問題であります。この点につきましてはいろいろいきさつがあつたのでございますが、結局におきまして匿名による超過供出の分につきましては行政措置か、或いは行政措置で不十分な場合におきましては立法的な措置を講じまして二十七年分の課税の際において差額の代金に対しては課税しないことにする予定だと、こういうことを言つてやつてあります。その場合行政措置といたしましては、これは一種の手数料といつたような要素を多分に含んでおりまして経費の補充という点が理窟としては一つ考えられる。その理窟で割切れるということでありますれば、これはもう別に立法的措置を要しないで行政措置だけで当然やるべきことであると思いますが、そのほかにプラス・アルファということになりますと、これはちよつと税法の理窟から行きますと問題になるのでありますが、その辺のところにおきましては零細な所得に対しましては余り調査を徹底しないということを運用上やつておる例もございます。従いましてこれはまとめてそう大きな金額になる場合も少いだろうし、匿名の分を強いて一々調査して申告をさしたり或いは更正決定したりすることを差控えるということで、大体行政措置で行けるのではないかと考えておりまするが、その辺のところになりますと、先般も木村委員からもいろいろ御意がありました通り、法律の解釈の問題として厳密に行きましてそれで問題が残つておる。従いましてなおそういう点につきまして行政措置で割切れん場合には適当なほうで例外措置を講じまして課税をしないと、いずれにしましても結論としましては、何らかの方法としまして二十七年分として課税する際に匿名供出の差額は課税しないことにしようと、こういうことでやつておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/27
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028・田村文吉
○田村文吉君 そうすると二十六年度分で清算するなり、二十七年度分で清算するなり、どつちにしても行政措置によるのか或いは立法措置によるのかという問題は考えている、併し大体は行政措置で片付くだろう、こういう見通しだ、こういうふうに承知してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/28
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029・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 大体そのように措置し得るのではないかと見ておりますが、いずれにしましても課税しないという方針はきめております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/29
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030・森八三一
○森八三一君 今の問題に関連しまして匿名供出と超過供出の区別をつけていらつしやる問題でございますが、これは十分愼重に御研究になつておると思いますが、日本の食糧事情の現況、特に根本さんが使節米を買いに行かれるというような現況から、たとえ少量でも自家保有米を割いて出してくれというのが国の要請だろうと思うのでありますが、その要請に応えて匿名供出があり超過供出がある、その匿名供出のほうはおり話のように然るべき措置を以つて課税の対象に差額をしない。超過供出はそういう御通牒が出ておらんということはどうしても私には納得ができないのでございますが、自家保有米を割いて匿名という名称を用いた場合には特典があり、超過の場合には特典がないというのは何だか割切れんのでございますが、その点はどうお考えでございますか、御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/30
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031・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) これは実際的な理窟と申しますか、とにかく米の供出が成績が面白くないというのと、それからまあ災害等で割当を減らしました結果、需給全体に重大な影響があるというので少しでも多く一つ匿名でもやつて超過供出してもらおうじやないかというようなことに農業政策、食糧供出の関係上なりで始めましたのが事の起りになつておりまして従いましてそのとき以後に超過供出になつた分は大体匿名供出になつておるのじやないかと見ておりますが、そういう政府が特別に掛声をかけまして無理でも農民のかたがたにお願いする、こういうことになつた分につきましては、先ずやはり考えなくちやならんのじやないか。こういう趣旨でその分をきめている。前の分をどうするかということはそういう措置の中にはそういう沿革的な理由からいたしまして入つていない。まあ理窟から申しましていろいろ言いますといろいろ意見があるかと思いますが、とにかく政府が非常に供出を重大問題にしまして匿名供出の形でできるだけ多く供出してもらおう、そういうふうにいたしました後のものを主として考える、こういう趣旨でまあそのようになつているということを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/31
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032・森八三一
○森八三一君 いきさつは私もよく了承いたしておりますが、実質的には政府が掛声をかけまする前に、すでに国の食糧事情を憂えて自家保有を割いて出したという人はその恩典にあずかれんというのはむしろ逆なんで、積極的に国に協力している人にはむしろもつと余計恩典を与えてやつてもいいのではないかというようにも考えられますので、然るべき行政措置が講ぜられる、或いは立法化する場合には是非全部を織込んで、どうせ金額的には大したものじやありませんから、今後も食糧供出に農民が誠意を持つて応えて行くというような美風を養つて行く点から考えてもこれは不公平な結果が生れませんように格段の一つ御処置、御高配をお願いしたいと思います。
それからもう一つお伺いしたいことは、災害補償法に基きまして共済制度が設けられて、そこで災害のあつた場合にはその共済保險の制度の規定等に準拠いたしまして、それぞれ査定せられた災害の程度に応じて保險金の交付があるということでありまするが、実際問題としては、その災害の程度を査定するときに実際の災害の実情というものと、査定された実情というものとの間には理論的には差がないということであるかも知れませんが、実際には相当査定は内輪に見積られるというのが実態だろうと思うのであります。そこで内輪に見積られた実態に対してその何割かが共済金として交付せられましても、その災害の全部が補償されていないという結果が生れているわけでございますので、そういう場合において交付せらるべき災害共済金に対する課税はせめて免除をしてやるという措置が妥当ではないか。まるまる補償されているといたしますれば、災害のなかつたと同じ結果になるわけでありますので、これは普通の課税を受けましても何ら不公平という結果にはなりません。でございますが、実際問題は百の災害に対して査定はまあ六十とか七十に見込まれるというのが実情でございますので、その六十、七十に見込まれたものに対して何%かの補償をもらいましてももともと穴が開いている。その補償金に税金がかけられると更に苦痛が増すということになりますので、災害補償法に基く共済金交付額に対する何らかの特典を設けるということが実際問題としては必要ではないかとこう思うのでありますが、まあいろいろ御研究になつておるとは存じますが、そういう措置を講じて頂くようなことはどうでございますか。或いはこれも匿名供出と同じことで然るべき行政措置でやつて頂けば非常に結構だと思うのでありまするが、そこまで御考慮頂くということについてどう考えますか。一つお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/32
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033・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) その問題は先般衆議院でもいろいろ問題になつているのでございますが、私ども商品とか生産物に対する保險の収入でございますね、これにつきましては特別に考えるのはどうも却つて負担の不公平になる虞れがあるし、それで営業者が商品等を保險にかけておりますので、保險に入つた限度によりましては収入と見ろ、そのほうがむしろやはり税の理窟から言つて当然じやないか。ただ時価に比べまして保險が低かつた場合におきましては、その限度におきましては損になりますが、そうじやない、つまり保險に入つた限度におきましては特別に扱うということはどうも十分理由がないことではないか。で、農業保險の場合も同様でございまして、やはり災害等におきまして、得べかりし生産物ができなかつたというので一定の軽減を受けた場合におきましては、その部分はやはり所得金額の中に計算する際に収入金として見るというのがどうも本筋ではなかろうか。お話のように保險の機能が十分発揮できないために気の毒だから何か税で考えてやつたらどうかという議論は確かに実情論としてはあるかと思いますけれども、どうもそこまで行きますのは余りに又税金の建前から申しまして如何なものであろうか。むしろ保險自体を本来の保險の趣旨に従つて動くようにする方法のほうが行くべき道ではないか。まあかように考えておりましてまだ生産物の保險料収入を除外するというようなところまでは私どもは結論を出しておりませんので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/33
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034・森八三一
○森八三一君 今のお話の商品保險の場合には保險をつける人がその物の価値をきめて、それに即応する保險料を払つて災害があつた場合に給付を受けるというのでありますが、これは本人も納得をされてやつておることでありまして、実際百万円の価値のある物を八十万円だけつけておいて二十万円を損している。これはもう当然だと思うのでありますが、農業災害保險の場合には査定が保險をつけている人の意思によつて決定されるのじやなしに、御承知のように別の機関で決定をされるわけでございまして、保險の掛金が少いからそれは自業自得だということとはちよつと意味が違うと思うのでございます。そこに特別な考慮を払う必要がある。商品保險とすれば局長のお話の通りで私異存ございませんが、農業災害保險の場合にはちよつと趣きが違うのじやないか、そこに特別の考慮を払う必要があるのじやないかということを申上げている。それは実際の災害が百でありましてもおおむね現在の農業保險組合の運営の実情からいつてどうもこれが六十、七十という低いところで災害が押付けられてしまうということが事実でございますので、その七十、六十に押付けられてその何%かを補償してもらつたその補償金に税金がかかるというのは、如何にもちよつと無理がありはせんかという感じがいたしますので、一般の商品保險の場合とは違うのじやないかということを一つ御考慮頂きたいとこう思うのでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/34
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035・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 御指摘の点でございますが、例えば商品の場合でありますと、時価百万円の商品に対しまして本人が百万円保險をかけておりまして収入が入つて来ますとその百万円まるつきり収入になる、百万円を消費したものと同じ関係になります。或いは期末に棚上げをされて百万円が残つているのと同じになれば一つも損が出て来ない、半分入つておりますと、五十万円だけ損が出て所得がそれだけ少くなる、こういう関係になります。農業保險の場合各におきましても評価が適正に行きましてプルに収入をもらいますと、これはまるまる所得が減らないので得べかりし収入を得ることになる。その際は保險金を除きますととんでもない軽減になつてしまう。それからいろいろな事情で、例えば半分しか評価されなかつた、こういう場合におきましては評価されました半分だけが課税になるわけでありましてやはり損は補填されなかつた分につきましては特別に課税するわけではないのでございまして、その税法のほうで課税の見地から行きますと、本人の意思によつてやつておるかやつておらないかということはどうも第二次的な要素でないか。やはり農業の生産物に対しまして災害等によつて得べかりし利益がなくなつたということで収入がある、そういうあるべき収入の補填でございまするが、これはどうもやはりそれを全然非課税にしてしまうというのは少し私ども税の理窟から行きまして本筋ではないのではないかと、まあかように実は考えておるのでございます。まあこの問題は二、三年来衆議院でも大分出まして、私ども大分愼重に検討してみたのでございますが、どうもやはり普通の損害賠償の損失と少し違うのではないかというふうに考えている次第でございますので重ねて申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/35
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036・森八三一
○森八三一君 くどくなりますのでこれ以上申上げませんが、最後に一つ希望を申上げておくのは今お話のように百の災害があつて五十に対して補償がもらえるのだから、その残りの五十までは収入がなかつたものと計算されたらいいんじやないか。こういうお話でございますが、そういうことであれば私は一応筋が通ると思いますが、百の収穫が予定されておるところへ実際は七十の災害があつた、それを五十の災害とおおむね現在の農業保險の場合には査定されてしまつているという出発に大きな間違いが下されているというのが実情だから特に考えてやつたらどうかという点。局長さんのお話のように百災害があつた、五十補償してもらつた、残りの五十が収入がなかつたものと計算されているとおつしやるけれども、そうじやなしに査定が出遅つている。そこで実際の問題になりますると、災害と査定との間に一つのしわが寄つた部分がある、これが実際の実情だということを申上げたのでございますからその辺一つ十分御考慮を頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/36
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037・田村文吉
○田村文吉君 今の問題に関連しましてちよつと伺いたい。例の匿名供出の場合と超過供出の場合との区別ですね。この問題は非常に人心に及ぼす影響が実は大きいと思うのですが、今森さんからお話のあつた希望しますでなくて、もつと強く一つ局長さんからはつきりとしてやらないと、例えば今の供出の場合にはそうすると三十六年度の所得に計算なさるのですか、三十七年には繰越さないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/37
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038・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) 二十七年度の所得にすることはもう皆二十七年度の所得とします。と申しますのは超過供出は匿名じやないほうも大部分が本年になつておりますので、たまたま昨年にした人がありましてもそれはそろえる意味におきまして本年の所得にしよう。これは田畑の収入は一応生産物ができた年の所得に見ることにいたしておりまするが、超過供出なんかの場合におきまする差額は供出してみないと権利が確定しない、そういう意味でその差額の分は翌年の所得にしよう。こういうことになつておりまして、それはいずれもその点は同様でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/38
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039・田村文吉
○田村文吉君 そういうことでありましたらなお以て三十七年度において見る超過供出であれば、ヴオランタリリイに先にやつた人も今度匿名供出でやつた人もいろいろそこに区別があるということは、正直者がばかを見るということが必ず人心に及ぼす影響が非常に悪いのですから、どうでしようか。これは局長さん全部同等に扱つてやるということは言明できないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/39
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040・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) その問題は私先ほど説明しましたところで今としては一つ御了承願いたいと思うのでございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/40
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041・田村文吉
○田村文吉君 要するに立法措置になるなら別問題でしようが、これは行政措置でなさる方法である限りにおいては、それだけ一つ要望じや私どうもものたりないのですが、はつきりとそういうことは、小さい問題であるけれども政治上には非常に大きな影響を及ぼす問題でありますから、今すぐ御即答願うというわけでなくともよろしうございますが、はつきりと一つして頂く必要がある、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/41
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042・森八三一
○森八三一君 僕の希望を申上げると言つたのは、局長は十分御了承なのでそうやつて頂けるということを十分理解して、非常にやわらかい言葉を使つたので、これは立法措置がとられれば、当然国会では若し原案が間違つておれば修正されるという運命にあるべきものと御了承願つて、一つ希望ということが実現して頂けるという結果に期待をいたしておくということを申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/42
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043・平田敬一郎
○政府委員(平田敬一郎君) ちよつと附加えて申上げますが、先ほど申しました通り、この問題はどうも食糧供出の重大性に顧みまして特別に考えた特別措置でございますので、まあそういう意味からしまして余り細かい理窟を考えてやつた点ではない。そういう大きなラインを片付けるのにどうしたほうがいいかというようなところで一つ私どもも考えてみたいと思いますが、なお併し御議論のような点は、確かに私どもは今までいろいろ伺つておりまして一つの理窟だと考えますのでなお研究してみたいと思いますが、併し今申上げましたような特別な事情でこの問題が出て来たという事情も一つ御了承願いたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/43
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044・田村文吉
○田村文吉君 特別の事情で出たということになりますと、私どもこのこと自体がいいか悪いかというのはこれは別問題です。別問題だがすでにそういうことにするということになつた限りにおいてはヴオランタリリイにあらかじめやつた人に対しても同じに均霑さしてやるということは一言わんでもきまつたことじやないか。こういうふうに申上げたいのでありますので、これは小さなことのようですけれども国民に与える影響というものは正面にやつた人間がばかを見ているということはこれはどうして下さるということを言われた場合に、恐らく国会の各諸君が郷里へお帰りになつてその質問を受けられたときに困るだろう。はつきりとそういう点はそれは当然やる、当り前だ。いやいやながら匿名供出の名前になつたときに、税金を免除するということになつて出した人だけが均霑を受けるので、あらかじめ出した人には均霑しませんということは恐らく政府としては言い得ないだろう。こういうふうに考えるのでありますので、どうかまあそういう意味において実際のお計らいを必ずできるように、御協議の上で一つお願いいたしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/44
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045・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 午前はこれを以て休憩いたします。午後一時から再開いたします。
午後零時零分休憩
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午後二時五十九分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/45
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046・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) それでは午前に引続きまして大蔵委員会を開会いたします。日本輸出銀行法の一部を改正する法律案について質疑を願います。
別に御発言もないようでありますが、質疑は終了したものと認めて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/46
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047・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 異議なしと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正の意見のあるかたは討論中にお述べ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/47
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048・小林政夫
○小林政夫君 第四條に三項を加えることになつておりますが、これは第一項において、輸出銀行の資本金は百七十億というふうに金額を明示することになつておりますにもかかわらず、第三項によつて「大蔵大臣の認可を受けて、の資本金を増加することができる。」というふうにやりますことは第一項の改正をせずして、大蔵大臣の認可を受けて随時予算の承認を得れば資本金が増し得るということは、どうも立法上おかしいと思いますので、他の法案の例から行きましても、資本金を増額する必要がある場合においては、これは全額政府出資が建前となつておりますから、予算の承認を求めると同時に、当委員会において並行的にこの増額を審議することとして、法律改正によつて第一項の條文を変えて行くというふうな建前に持つて行きたい。そこで今回の政府の意図している輸出入銀行の資本増額については四十億を増額したいということでありますので、第四條を全然この政府提案の改正案を改正をいたしまして改正前の第四條とくるめて、次のように修正をしたいと思うのであります。
(資本金)
第四條 日本輸出入銀行の資本金は、二百十億円とし、政府が一般会計及び米国対日援助見返資金特別会計からその全額を出資する。
それからそれと関連をいたしまして、この四十六條の改正規定の中で、『第二号中「承認」を「認可又は承認」に改め、同條』というのを削りたいと思うのです。もう一回最後の点を申しますと、四十六條の改正規定が提案されております。この四十六條の改正規定の中に『第二号中「承認」を「認可又は承認」に改め、同條』こうなつている、そこまでを削るわけであります。従つて改正後の、第四十六條に対する改正は『第五号中「第三十九條」の下に「第三項」を加え、』云々、こうなるわけであります。そういうふうに修正することを提案いたします。
なお、今の提案とからんで、この政府出資による金融機関として、日本開発銀行、国民金融公庫、或いは住宅金融公庫、これらがあるわけでありますが、これについても国民金融公庫のほうは、今度私が今提案をしました改正のようなふうに大体なつておりますが、多少書き方が違つておりますが、同じ政府出資で大体金融業務を行う機関について、こういつた資本金に関する法律の條文が二、三になつているということは余り感心したことでないので、この法律形式を速かに統一されるように要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/48
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049・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 他に御発言もないようでありますから、討論は終局したものと認めて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/49
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050・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。先ず討論中にありました小林委員の修正案を議題といたします。小林委員の修正案に賛成のかたの御挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/50
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051・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 全会一致であります。よつて小林委員の修正案は可決せられました。
次に只今の修正部分を除いた原案について採決いたします。修正案を除いた原案に御賛成のかたの御挙手をお願いいたします。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/51
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052・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 全会一致であります。よつて本案は修正議決すベきものと決定いたしました。
なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則百四條によつて本委員会における質疑、討論、表決の要旨を報告することにしてあらかじめ御承認を願うことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/52
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053・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。それでは本院規則第七十二條による、委員長が議院に提出する報告書に多数意見者の署名をお願いいたします。
多数意見者署名
森 八三一 黒田 英雄
菊田 七平 西川甚五郎
小林 政夫 田村 文吉
小宮山常吉 菊川 孝夫
溝淵 春次 伊藤 保平
岡崎 真一 大矢半次郎発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/53
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054・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/54
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055・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 速記を始めて下さい。三時半まで暫時休憩いたします。
午後三時九分休憩
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午後三時四十九分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/55
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056・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 大蔵委員会を再開いたします。
所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、右三案について質疑を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/56
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057・田村文吉
○田村文吉君 大蔵大臣にお伺いいたしたいのですが、富裕税の問題はいろいろシヤウプ勧告等の関係でできておつたのですが、大臣自体も余りいい税とはお考えになつてはいらつしやらないようにかねがね承わつておりましたので、この間も主税局長さんにお伺いいたしたのでありましたが、これも近いうちに御廃止になる御意思がありますかどうか。なおその富裕税が非常に、特に株式にいたしましても評価が割合高く見積られている、というのは、有価証券など特別に上場されている株であればいいのですが、そうでないようなものは割合に高く評価されているというようなことで、富裕税がか成り不公平に、そのために地方のへたちが困るというような声を大分聞くのでありますが、近いうちに御廃止になる御予定のようには承わつておつたのでありまするが、どうお考えになつておられましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/57
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058・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お話のような点がございますので、成るべく早く廃止したいというので検討いたしましたが、今国会には間に合いませんが、次の国会には一つ間に合うようにいたしたいと、そういう気持で検討いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/58
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059・田村文吉
○田村文吉君 それからどうお考えになつておりますか、いろいろ講和條約の成立に伴いまして各種の條件が変つて参るので、或いはこの秋頃に税の問題等についても根本的に改正せにやならんというようなお考えがございますか。或いは通常国会まではこのままで大体行くというお考えでいらつしやいますのですか、それをお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/59
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060・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 私は国税のほうにつきましては根本的に改正するという気持はございません。ただ一時所得、変動所得の問題等ちよいよい今改正を見越して検討はいたしておりまするが、結論は得ておりません。私はただ問題はそれよりも国税と地方税との関係だと思います。前回も問題に触れましたが、地方税につきましては平衡交付金の問題、義務教育費或いは生活保護費の問題、或いはそういう税制の問題以外に地方の実情によりまして非常にでこぼこがございますので、こういうことは或る程度検討しなければならんのではないか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/60
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061・田村文吉
○田村文吉君 次に昨日大蔵大臣から御発表になりました、百五十億の政府資金を民間に出すようなふうに伝えておるのでありますが、この点は現在の非常に金融難の時代においては止むを得ざる御措置と私ども考えております。考えておりますが、ただこれは一つ大蔵大臣に御方針を承わつておきたいのでありますが、そういうような措置は必ずしも大蔵大臣としてお喜びになつてなさる御措置ではない、言い換えれば戰争の始ります前における市中銀行の役目と、市中銀行の力というようなものをかなり私ども評価してこれに頼つていた点が多かつた。政府はよほど非常の場合ででもないというと、こういうものに対する強いお力をお与えになるというようなことは余りなかつたのですが、言い換えると金融に対する統制が今日止むを得ずだろうと思うのですが、強く行わざるを得ないような御情勢にあるのではないかと思うのでありまするが、今後の日本の行き方として講和成立後において市中銀行等の育成及びこれの資金繰り等の問題は成るべく市中銀行を極力利用してやらせなさるおつもりであるか。或いは今日のような或る程度までこれは政府が金融の統制は当分続けて行かなければならんというお考えでおいでになるのでありましようか、この根本的の大蔵大臣の御方針を承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/61
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062・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 私は金融の直接統制を政府でやろうという考えは持つておりません。やはり各金融業者の自主性を尊重いたしましてやつて行きたい。で、今回の指定預金も実は私の日頃の考えとは違うのであります。私は政府資金を一般の市中銀行に政府が預けて、そうしてその引出しその他の問題が日本銀行の貸出政策と両建になるということは私は好まない。だから昨日年の秋頃からオーバー・ローンの問題と関連いたしまして政府の指定預金をしたらどうかという議論がありましたときに、常に私はこれを否定しておつた、そういうことはすべきじやないと。然るに今回やりましたのは、御承知の通り今回の予算では、昭和二十六年度におきまして金融債の三百億円を初め計画し、見送りとの関係で百八十五億円の金融債を出したのですが、絶対均衡予算の建前上金融債を今度は見込んでおりません。そこへ持つて来て最近租税収入その他の収入が非常に順調で自然増収が出て参り引揚超過になつて参りました。そこで前回も説明しておりましたごとく、昭和二十七年度におきましては、貯蓄の増強ができた場合においては金融債のほうを考えよう、こう言つておつたのが早くその事情が出て参りまして、政府の金が相当あります関係上、金融債は御承知の通り発行いたしますときは市中銀行と抱き合せになつております。市中証券と抱き合せになつております。併し金融債を発行する準備といたしまして指定預金をしよう、こういうのでございます。それは大体百億を見込んでおりまするが、それから中小企業等に対しまして、やはり只今の金融状況から申しまして、中小企業方面への五十億を新たに見込みまして、そうして今の金融の逼迫を或る程度緩和しよう、こういうのでございます。これは政府が金融の統制をやるという意味ではないのでありまして、今の金詰りの深刻さを緩和したい、而もそれは予想以上に税収入が多くなつておりますので、予想以上に運用部の金も殖えて参つております。運用部で百億円ばかり二十六年度は予定よりは多くなつておる。その原因は各特別会計からの預金もあります。又郵便貯金、簡易保險の増加等もあります。百億円ぐらい多い。こういう関係から、金融の時期的の情勢を見ましてこういう措置をとろう、こういうのでございまして、統制の問題とは直接関係はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/62
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063・田村文吉
○田村文吉君 先も申上げましたように、統制をお考えになつての問題ではないが、現在差当つての金融政策としては、この際百五十億の金を出して頂くということは民間は喜んでおると思うのでありまして、又そういうことが必ずしも、ここに日銀との二本建に政府がやろうという御意思があろうがあるまいが、実際上財界が非常に混乱している場合においては止むを得ない措置であろうと考えるのでありますが、ただそうなりますと、根本の問題は、なかなか民間につまり預金が集らないとか民間に力がないということが非常に大きな影響を及ぼしておるわけなのでありますので、これに対しては無記名定期預金の制度も今度は復活なされましたりいたしてはおりますが、若しもう少し民間の銀行に自主的に金融の統制をやらせ、統制というよりは金融の実行をやらせるということでありまするならば、もう少しくこれは何か方法を大蔵大臣としてお考えになつておることがないかどうか。私は何かしらこの現在の金融機関の状況から見ますと、そのままにしておきますると、皆すべてが政府に御厄介になり、又政府に御厄介になるためには、又そのよく隙を見て政府の金融状況、又金の都合等を隙を見て取り込む人が便利な金融を受けるが、そうでない人はなかなかそういう恩典に浴しないというような弊害が起りはぜんかということを心配しておるのであります。民間の銀行の育成について、又資本の蓄積でありますが、何かそれについて将来大蔵大臣としてのお考えなりお見通し等を持つておりますか。ございましたら伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/63
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064・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) これはこの前ここで触れたと思うのでありますが、終戰後の金融政策の問題につきましては、確たる指導精神がなかつたままに四、五年間を過して来たのでありますが、やはり長期金融的のことを考えたらいいというので、輸出銀行或いは開発銀行等を設けてやつておるのであります。併しこういうことだけでは今の金融機関の実情から申しまして十分ではないというので、先般来臨時金融制度懇談会というものを設けまして金融家並びに産業人或いは参議院、衆議院のかたがた、学識経験者を入れて金融制度全般につきまして審議をいたしておるのであります。只今結論が出ましたのは長期投資銀行とか、或いは貯蓄債券というようなものについて出ております。併しこの普通銀行法の改正、日銀の改正或いは金利調整問題、こういうまだ大切な問題が残つておりますので、私は臨時金融制度懇談会を続けて行きまして十分検討して行く。案は持たんわけではございませんが、何分にも敗戰後の状況でありますし、又今の日本の経済状況というものをもう少し見極める必要もありますので、十分金融制度のあり方につきまして官民共に練つて成案を得たいと、こういう考えを持つておるのであります。お話のようにオーバーローンの問題、今の銀行の貸出の量的の問題、時期的な問題、いろいろな点がございますので、私は十分検討して結論を得たいというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/64
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065・田村文吉
○田村文吉君 その問題と関連して参りまするのは、要するに資本の蓄積が必要であるということの上から言つて、減税の問題が取上げられて来るのでありまして、大蔵大臣が常に増税はしない、今後どういう事情が起つて来ても、先ず一般的に考えた場合に増税はしない方針で行きたいということは私どもは極めて尤もな考え方と賛意を表する次第でありまするが、ただ今後の物価の見通しについて、一体大蔵大臣はどう考えておられるか。それから国民所得が従つて一体どうなるのか、増大するのかどうか。というのは、数字的には増大しても、実質的のいわゆる昔の貨幣価値に直した場合における国民所得というものは、今後、この秋から来年等にかけては一体上るお見込なのか下るお見込でいらつしやるか。そうでないというと貨幣のノミナルでだけで国民所得が殖えて参りましても、実際物価が上つて参るということになりますると実は減税を毎期毎期やつて頂かないというと釣合がとれて行かない、こういう生活状態になるんじやないかと心配いたします。ノミナルでもよろしうございます、ノミナルな物価の今後の見通しはどうお考えになりますか。従つて国民所得もノミナルでは上るのか下るのか。実質的にはその場合にはどうなるのかというような点についてどういうふうにお考えになつていらつしやるか。これは私は今後の税の制度をお立てになる上において非常に重大な問題であり、又この辺でそろそろ税にする根本的な考え方をきめていらつしやるという先ほどの御方針の点にも合致するゆえんでありますので、あえてお伺いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/65
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066・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 国民所得は名目的にも実質的にも殖えて行くと期待しております。又そう殖やして行かなければいかんという方向であらゆる施策を講じて行こうとしておるのであります。それでは物価の問題はどうなるかと申しますると、物価は大体私は横ばいで少しぐらい上り気味じやないか、まあ予算の問題では米価のパリテイを二五五にいたしておりますが、二五〇を二五五、この程度のものは上つて来る、併しいわゆる非常な物価騰貴というようなことはあり得ない、又そうさしてはいかん、どちらかと言えば私は物価をできるだけ下げたいという気持でおるのであります。これはまだ閣議で発言したわけではございませんが、余り操短をやるということは感心しないので、できれば増産によつてコストを下げたいということが私の根本的の考えであるのであります。資本主義経済から申しますと操短も一つの方法かと思いますが、国民経済全体から申しますと、私はちよつと値が下つたからすぐ操短に行くという今日本の状態ではない、これは私見でございます。考えとしてはできるだけ物価を下げたい、こういう気持でおりまするが、何と申しましても日本の物価は世界の物価に相当影響されますので、脆弱な日本の経済として国際市場の状況を無視してどうこうという見通しもつきませんが、或る程度は止むを得ないにしても、物価は上げない、こういう方針で行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/66
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067・田村文吉
○田村文吉君 物価は上らないし、国民所得が殖えるということになるということが一番熱望するところでありますし、政府もそういう御方針でお進めになることは至極御尤もなことであると思いますが、なかなか実際問題としてはそういうふうにうまくは行かないだろうということを非常に心配いたしますので、現在のような実況から申しまするというと、物価は最近において非常に下り恰好になつて来ておる。そこで生産はどうであるかというと、さつきお話があつたが、操短を一部分でやり始めたりしておるものだから、これはどうも余り賛成したことじやない、こういう仰せでありまするが、値段も下り又操短等によつて生産も下りということになりますると、当然国民所得も減少するということになるんじやないか、こういうことを心配いたしておるのでありますので、若しそうでなくてまあ物価も上ろう、又生産も成るべく落さんということでおいでになるならいいが、物価がそのために著しく上りますというと、国民の実質の収入というものは実はちつとも上らないのみならず、却つて減るということになるから、毎年一つ減税を続けてやつて行つて頂かなければならん、こういうようになるように思うのであります。今操短の問題は大蔵大臣の私見としてのお考えとしてお述べになつておりましたが、これは私どもはそういう問題を今ここで論ずることはどうかと考えておりまするけれども、非常に生産が超過いたしまして、それがためにむしろ恐慌状態に陷るというような虞れのある場合には、これ又止むを得ない状況であろうと考えておりますので、さような点は必ずしも大臣言われるようなふうの所見にも賛成いたしかねまするが、要するに物価が上らないで、それで国民所得が殖えるという今の理想になればこれに越したことはないのでありまするが、むしろその逆に行きやせんかということを私は心配いたしておるのでありまするが、大臣はそういうふうに楽観的にお考えになつていらつしやれば、或いは税金というものも減らないでどんどんむしろ植えるというふうに考えてもいいだろうと思うのでありますが、繰返して伺いますが、物価は横ばいで国民所得は今後とも殖えるということは、増産が行われて行くという、こういうお見通しをお持ちになつていらつしやるわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/67
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068・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/68
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069・田村文吉
○田村文吉君 私の質問はこれで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/69
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070・木村禧八郎
○木村禧八郎君 歳出のほうの問題は予算委員会でやりましたので、歳入面の質問をまだやつておりませんのでお伺いいたします。第一は源泉所得税のほうなんですが、この間もちよつと質問をいたしましたが、例の勤労控除の問題ですが、あれは財源さえあれば考慮してもいい、財源に因るからやらない。例えばその勤労控除の率を上げる、或いは金額を上げる、そういうことは主として財源の関係からおやりにならなかつたのかどうか、その点お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/70
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071・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 財源その他各般の事情からであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/71
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072・木村禧八郎
○木村禧八郎君 最も主たる理由は財源ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/72
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073・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 財源も主たる理由の一つでございます。……勤労控除のどの点ですか、一割五分の分ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/73
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074・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/74
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075・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 一割五分の財源と他の所得との権衡からでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/75
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076・木村禧八郎
○木村禧八郎君 これはしばしば、殆んど論じ盡されたのですが、この勤労者、給与者に対する税金が他の税金と比べて著しく不均衡であるという点は十分認められているわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/76
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077・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 不均衡であるとは思つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/77
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078・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それはおかしいですな。前に、これは昨日も問題になつたのですが、それは今度の大蔵委員会で全財の労組の齋藤君でしたが、公述に来られまして、最近の申告納税の成績が悪い、それは結局税金が著しく高いところから来ていると思う。ところが源泉のほうはこれは申告と違つて、これは申告をやるというわけに行かないで源泉において取られてしまう。若し今源泉で納めている人を申告制度にしたならば、どういうことになるかと言えば、源泉で取られている人も今の申告納税者と同じような状態になるのではないか、こういうことを言つておりましたが、今の申告納税者の状態が、これが実際の納税者の税負担の重さというものを感じているところじやないかと思うのです。ですから申告納税の場合はこれはそこに何といいますか、手心といつては語弊がありますが、源泉できちんと取られませんから、所得の捕捉についても源泉の場合と違つて弾力性があるわけです。従つて今の現実から見ても、そういう所得の捕捉という点から見ても、これは給与所得者に対して税金が不当に重くかかつている、申告納税と比べて……。この事実は大蔵大臣として否定できないと思うのですが、この点如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/78
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079・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 公聴会で税務職員がどういうことを言つたか私は聞いておりませんが、私は税法の命ずるところによつて税務職員は行政をいたしていると考えております。で、若し源泉徴収を申告納税にしたら非常に減るというふうなことも、私はそう考えていないのであります。もとがはつきりいたしているのでありますから、徴収を誰がするかというだけの問題であつて、ただ源泉から申告になりまして、年三回とか四回ということになりますと、滞納ということはそれは或る程度源泉で取るよりも賦課課税のほうが多くなりますが、そのほかの点においては出遅いはないと考えております。それから租税制度全体で不公平か公平かという問題につきましては、これはずつと先にも述べたと思いますが、公平、不公平の問題はそのとき、その状況によつて変つて来る。例えば勤労所得を二割五分控除したほうが公平であるということもありますし、又シヤウプなんか一割で結構じやないかという議論もあつたことは御承知の通りであります。私は今の制度は大体公平であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/79
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080・木村禧八郎
○木村禧八郎君 私は大蔵大臣が前には大体勤労所得者に対する税金が申告納税者に比して不当に重いということを、私は認めていたのだと思うのです。それが今度はそうでないように言われるので、私は又根本から考えなければならんことになつてしまつたのですが、前にはその事実を認めて、大蔵大臣はそれだからいわゆる社会保險料の控除を認めようということを考えておつたのだ、そういうことを前に言われたはずなんです。そういう誠意をやはり一応示された、誠意の一片を示されたことを私は記憶しておるのです。その根拠はやはり勤労所得者のほうが、申告納税者より源泉所得者のほうが不当に重くなつておるという事実を認めたので、それを何故ここで引つくり返すようなことを言われたか。これは政府としても、勤労者の税が他と比べて重いから健康保險料の控除も考えて誠意を以て考えているのだという、この前の御答弁は大蔵大臣はお忘れになつていないと思うのですが、この点は如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/80
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081・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 私は制度として不公平だから勤労所得者の保險料を上げようと、こういうことを言つた覚えはありません。速記をお調べ下さればよろしうございます。で、これはこういうことを言つた覚えはございます。それは源泉ではすつとありのままを取つてしまう。併し賦課課税、申告納税のほうは調査して見なければならない。で中には、木村さんでも申告納税のほうは苛斂誅求で取り過ぎておると、こういうことも言つておつたことも昔あつたのであります。これは記憶におありになるかどうか。併し申告納税だからと言つて一概に非常な彈力性を以て安くしておるのではない。これは非常に把握力を強力にしてそうして取残りのないようなことをしなければならないということを言つておるが、制度として不公平だという前提の下に健康保險の料金を考えると言つた覚えはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/81
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082・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大蔵大臣はやはり本当のことを言われないと思うのです。これまで確かに昭和二十五年ですか、あたりは非常に税金が重かつた、数字にもはつきり出ております。非常な税金の問題を、中小業者、或いは農民に与えて随分反税鬪争とか、苛烈なあれが起つたのです。そこで実際的に税収面、予算面に出て来たところでは、手心を加えると言つては変ですが、これは実情に適するように政府が所得を捕捉するようになつたと思うが、申告納税に対する自然減収というものは非常に出て来た。この自然減収ということは見方によつては一種の減税と見られます。見方によつては今まで非常にきつく捕捉したのが、今度は捕捉を緩めるというように私は解釈できると思う。勤労者のほうはそれができないのです、給与所得者については。ですから前に比べると、そういう申告納税のいわゆる自然減収が現れたところを見れば、そつちのほうには相当緩和されて来たことはこれは事実だと思うのです。ですから最近比較的に税に関するいろいろなトラブルが前よりは少くなつたことは、それを物語つておると思う。ところが勤労所得についてはそれが行われていない。更に前に泉税制課長の答弁では中央、地方の税金を総合して見て、そうして勤労所得者に対する税金と、それからその他の申告納税の税金とを比較した場合に、この不均衡を仮に直そうとすれば、少くとも勤労控除は三〇%ぐらいに引上げなければ、この不均衡は直せないくらいであるということをはつきり言われたのであります。これは速記にもはつきり残つています。ところがそんなには、三〇%上げれば、今度主税局から出された資料を見ましても、約五百億円くらいの減収になるというそういう結果になるのです。これを裏から見れば、五百億程度を申告納税者よりも不当に勤労者から取つておるということなんです。こんな不均衡なことはないと思うのです。この不均衡の事実を、これは私は何と言つても否定できないと思うのです。従つて全部これを直すということは困難かも知れませんが、せめて最小限度、この前言われたように、考慮されると言われたように、私は今度の税制改革で、社会保險料の控除ぐらいは出て来るのかと思つたのですが、全然出て来ておらない。ちつとも誠意は認められないと思うのです。それで税の負担は公平化とか均衡化とか言わなきやいいんです。合理化とか言わなきやいいんです。表面でそういうことを言いながら、事実においてこん左不均衡なことはないと思うのです。五百億も不当に勤労者から取つておるということは、数字に出て来ていると思うのです。これを直さない、これを是正しないということは、こんな不公平な税制はない。従つて私は少くとも勤労控除を、財源との睨み合せにおいてこれを一五%を二〇%に引上げるなり、或いは前のシヤウプ勧告前の二五%ぐらいに引上げるのが当然じやないかと思うのです。その点どういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/82
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083・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 前お答えした通りであります。泉税制課長がそういうようなことを言つたのなら、これは冗談半分ですか、私は只今のところ五百億円の不公平があるとか、三〇%の控除というふうなことは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/83
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084・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大蔵大臣は主観的に考えているとか、考えていないとかの問題でなく、具体的に、客観的に見てこういう事実が出て来ているのですから、それをもとにして私は言つているのです。大蔵大臣は予算委員会でも、本年度自然増収は更に三百億くらい見込まれると言われていましたが、これはやはりその程度の増収があると確信しておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/84
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085・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 今年度三百億円程度出て来るのではないかという見通しは持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/85
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086・木村禧八郎
○木村禧八郎君 その自然増収は主として法人税であるのか、或いはその他の勤労所得税なんであるか、どの方面からのものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/86
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087・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 一番多いのは法人税でございます。その次が源泉徴収、それからその次がお酒ぐらいだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/87
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088・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大体でいいのですが、その内容……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/88
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089・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 賦課課税のほうは三百億余りの減収になります。大体申しますと、法人税が二百五、六十億、源泉徴収が百七、八十億、酒が五、六十億、それから申告納税のほうの減収が二百四、五十億の予定であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/89
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090・木村禧八郎
○木村禧八郎君 ここにもそういう不均衡が出ていると思う。やはり申告納税のほうが自然減収ですか、いわゆる自然減収が二百億も見込まれている。ところが勤労所得税のほうは百七十億も自然増収を見込んでいる。私はこういうところにやはり不均衡が出ていると思う。申告納税のほうはやはり源泉徴収しているのではないのですから、大体実情に副うようなとり方にならざるを得なくなつて来ると思うのです。源泉のほうはきちんともとで取るのですから、無理にかかつて来る。今度の自然増収の内容をお聞きしても、それが出て来ていると思う。それだけ自然増収があるのなら、どうしてこれを勤労控除、これを引上げて負担の均衡を図られないのか。財源は、私は今伺えばあると思うのですが、その点如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/90
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091・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 自然増収はすぐ勤労所得税の減税に当てるわけには行きません。いろいろな点から考えなければなりません。来年度におきまして、遺家族の問題とか、いろいろな問題が起つて来ると思いますが、自然増収がたまたまあつたから、これをすぐ恒久的の税制改正のほうへ持つて来るということは危險でございます。それから源泉徴収のほうが殖えて、申告納税のほうが減るから、源泉にきつくて、申告に甘い、こういうお考えでございますが、日本の企業形態が変つて参るのと、もう一つは私は従来やつておりますように調査をせずに、見込でどんどん課税することはよせ、こういうように言つているのであります。殊に昭和二十六年度においては強くそれを指示いたしておりますから、あとから実額調査をするということになりまするので、翌年度に延びる場合も考えなければなりません。従いまして従来のようにぱつと見込んで課税しますと、予算通り行く場合もありまするが、見込課税というものを現に禁止しております関係上、二十七年度に延びることがある、こういう事情でありまして、私は今直ちに勤労所得税の一割五分控除を二割とか、三割にするという気持は持つておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/91
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092・木村禧八郎
○木村禧八郎君 今直ちに考えられないと言われますが、そうしたら、来年度あたりは考えないのですか、或いは補正のときとか、来年とか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/92
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093・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 私はできるだけ減税したいとはたびたび申している通りであります。税法の命ずるところによつて適正な税務行政を施行し、そうして収入が殖えた場合におきましては他の一般経費に当てると同時に、できれば減税にも当てたい、こういう気持であるのであります。ただ他の経費というのは、一年限りの経費が割に多いのでありますが、税制の減税ということになりますと、恒久化するものでありますから、相当の財源の見通しがつかないと、はつきり申上げられない。私はいろいろな事情を勘案いたしまして増税はしない、できれば減税して行きたい、こういうのであります。これはあなたと同様に、早く減税したいということを私も念願いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/93
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094・木村禧八郎
○木村禧八郎君 大蔵大臣は前からそういう主張は変えられないことは、我我了解しますし、それは果してこれまで実質的な減税になつたかどうかについては、いろいろ議論がありますが、数字によつて見ますと、実質的に減税になつたような数字も出て来ておりますが、とにかくその方針は是非貫いて頂きたいと思うのですが、ところが現在の税金が重いか軽いかについては非常に議論のあるところですが、国際的にも、これは主税局長から伺いましたが、そう重くもないというようなお話です。一番我々が今税の問題で重大視しなければならんことは大体主観的には大蔵大臣はもつと減税したいと言いますが、客観的に見て、日本の今後の講和後の経済状態、それから講和関係費等を見て、この減税は大体この程度で終りじやないか、こういうように思われるのですが、そうしますと、現在の税というものは、これは国際的に見て余り重くないというようなこと、これが大体適当なところじやないかというようなふうな答弁があつたのです、主税局長から……。大蔵大臣はまだこれは相当重い。各国と比べて重い。こういうように特に勤労所得税、給与所得税については重いというようにお考えになつておられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/94
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095・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 私は税金が重いから減税しようといたしておるのであります。いろいろな防衛関係の経費、或いは対外債務もさることでありますが、やはり国民の負担を軽減することが政治の根本だと自分は考えておるのであります。重いか、低いか、軽いかということは、これは程度問題でございますが、これはイギリスなんかの独身者が、多分今度のバトラーが上げる前が百十ポンドで、夫婦者が二百ポンドじやなかつたかと思いますが、こういうことから考え、日本の一人当りの国民所得と向うの国民所得と比較するとかいろいろな点がありますが、私はイギリス、アメリカもさることながら、日本自体としても税金が低いに越したことはないのでありますから、何としても経費を節約して税金を下げたいという考えであります。各国に比べまして決して安くはありません。高い。又均衡の取れた国がありましてもそれはそれでありまして、日本自体としては減税いたしたいという気持でおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/95
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096・木村禧八郎
○木村禧八郎君 特に外国と比べる場合、それから給与所得、勤労所得者の税金を比べる場合、税金だけを比べたのではこれは重いか軽いか比較にならないのは大蔵大臣も御承知の通りですが、特に我々主張したいのは、イギリスなど、又アメリカなどでは社会保障費が非常に多いのであります。イギリスあたりは予算の大体二割、二〇%くらいだと思うのです。日本の場合は大体七%くらいです、この広義の社会保障費を入れまして、ですから著しく日本の場合は少いのですから、税金を納めてもそれが給与所得者に返してもらう分ですね、あとで国家的のサービスですか、その点を考慮に入れるとやはり私は非常に勤労所得者は高い。ですから特に最近の、まだ実際から言つて不均衡になつたんですから、事情は大蔵大臣よく御存じのはずなんです。一番大蔵大臣よく知つておられることなんです。この自然減収、いわゆる申告納税が自然減収になつておるにかかわらず、勤労所得のほうはいわゆる自然増収になつておる。この状態は一番大蔵大臣よく知つておるはずなんです。ですから非常に不均衡になつてですね、中小業者とか農民に対しての租税措置によつて、そつちのほうは緩和されてその場合いいと思うのです。併し勤労者のほうはそれはできない、源泉ですから。これの調整を図るにはどうしても勤労控除を上げなければならない。勤労控除を上げるよりほかはないと思うのです。これをやらないということは私は如何にも不合理を政府があえてしていると。こういうようなことは何とかこれは誠意を以て考える必要がある。如何なる方面からでもですよ、これを衝いて行つたつて私はこの点は明らかだと思う。大蔵大臣は一番よく知つているくせにその点ごまかしているように思うのですが、この点本当に調整する必要があるのじやないですか。大蔵大臣一つ率直にもう一番よく知つていて逃げていますからね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/96
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097・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 自然減収その他から行つておりますが、昭和二十四年度の予算では、御承知の通り申告納税のほうは千九百二十億だつたかと思います。それを補正予算で千七百億円くらいに減らしたかと思います。実際の徴収が千四百億円くらいだつたかと思います。それから二十五年度は当初予算が千五百億円補正で千二百億円くらいに直した。そうして実際が一千億ちよつと切れたんじやないか。昭和二十六年度は当初が千二、三百億それから補正で減税をいたしました関係上、ほかは減税しましても殖えましたが、これは殖えなかつた。これは御承知の通り源泉徴収が殖えたからといつて先ほど言うように企業形態が変つて来ておる。それから今後御審議願うのでも事業者では今度源泉徴収で相当取るというふうに制度も変えて来ております。企業形態が変り、制度が変り、それから俸給や法人所得が殖えるほど事業所得のほうが殖えない、こういう問題。それからこの事業所得のほうでは例えば農家経営では専従者の控除とか、こういうものはぐつと落ちて来るものでございますから、木村さんの言うように一概に勤労所得が高いから、又事業所得のほうが低く過ぎるから、こういうふうな結論はなかなか出ないのじやないかと思います。各般の事情を考えまして、それは御承知の通り昔は六千円以下は二割、それから六千円を超えて一万二千円までは一割幾らの控除をしておつた。大正の末期、昭和の初め頃でありましたけれども、これはそのときそのときの事情で考えなければならんことでございまして大蔵大臣はよく知つておるとこうおつしやいますが、よく知つておりますからこういう結論になるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/97
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098・木村禧八郎
○木村禧八郎君 この問題はまあ水掛論になりますから余り大蔵大臣をおこらせると考えてくれないと困るから……、(笑声)その程度で一つ。併しこれは常に税務行政をやつておる人から見ても、常識から見てもその勤労者の税金が高い安いという前に不均衡になつておるということは事実だと思うのです。それでその申告納税者のほうは自然減収に現つれておるようにこれは手心を加えているわけじやないと思いますけれども、実情に即したように取つて行こうとするからああいう自然減収が出て来る。今度は勤労所得も実情に即したように取つて行こうとすればああいう自然減収になるはずなんですよ。はずなんですけれども、源泉で取られてどうしてもそつちのほうにのみ自然増収が皺がよつて行く。これは、本当に大蔵大臣は真劍にこの問題は考えて頂きたいと思う。一番私は税制でこの問題が重要じやないかと思うのです、実際問題としてですね。それから次にお伺いいたしたいことは、主税局長さんに前に伺つたのですが、政治的な相当問題をはらんでいると思いますので大蔵大臣から御答弁願いたいと思いますが、それは医師の健康保險料の値上げが困難になつた。まあその埋合せと言いますか、その埋合せとしても解釈できるのですが、この課税標準率を所得の五五%乃至六〇%であつたのを主税局長に伺いましたらば三〇%或いはそれ以上に下げることになつておる、こういうまあお話なんです。私はもつとこれは三七・五%と聞いたのですが、主税局長はもつと三〇%かそれ以上に下げるという御説明ですが、これは私は税法の違反ではないかと、こういうふうに思うのですが、その健康保險料を引上げるということができなかつたために、それをこういう形でこれを埋合せるということはどういうものでございましようか、税法上から言いまして。この点大蔵大臣に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/98
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099・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) これは木村さんがどういうところから資料をお取りになりましたか、又どういうかたからお聞きになつたかわかりませんが、健康保險の一点單価の問題が上げられんから税金のほうの取立を緩和するとこういう意味じや絶対にございません。御承知の通りお医者さんによりまして自由診療と健康保險の診療とによつて割合が違います。お医者さんでも早い話が都会の病院組織と田舎の医院制度の、医院的なものとはおのずから率が違つている。同じお医者さんでも眼科と内科とでは違つて参る。眼科の収入金に対する所得割合が一番高い。眼科、耳鼻科、婦人科、それから外科、内科とこういう順序になつておるのでございまして、今おつしやつた五〇とか、五五というのは、これは普通診療の場合の標準率であるのでございます。而して普通診療の場合の標準率と、健康保險の標準率とは実際問題として違つて来るのであります。そこで収入金の何割が自由診療であつて、保險料収入のほうは何割かという問題によつて率は変つて参りまするが、この保險料の収入に対しましての従来の税務署のやり方はかなり行き過ぎておつたのであります。四〇%ちよつと超えておつたかと思うのです。そこで全国に指令いたしまして、健康保險の所得収入と自由診療の所得収入との再調査を命じました。然る場合におきまして、勿論家事関連のものは引きませんが、医療機械の償却、或いは病院施設の償却、それから看護婦の給料その他、或いは薬の使い方等をやつて見ますと四〇%以上、相当高い。而も又昭和二十五年の時とは違いまして、医薬品至り、そうしていろいろな事情の変化がありますので、十分精査した結果、而も又自由診療と保險診療との割合等から見まして、大体三〇%程度が適当ではないか、こういう結論が出たのであります。そこでお医者さんのほうで見れば、單価の引上げを相当、一点十七円五十銭とか、十八円とか言われておられましたが、一点十円五十銭、十一円五十銭と、こういうふうになつて、そうして税金のほうの分は精査した上で、今年度は標準率はこのくらいにいたすということでございまして、標準率を下げるから一点單価の引上げをやめたというのではございません。一点單価の割合も上りますし、又点数につきましても病院は二十点でしたか、それを二十四点ぐらいにしたと思いますが、こういうような是正を図つて一点単価の問題は今後十分検討すると同時に、標準率というものも毎年毎年再検討しているのであります。事情はこういう事情でやつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/99
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100・木村禧八郎
○木村禧八郎君 今のお話を伺つて丁度その一点單価の問題が起つて来た時に、こういうことが行われた。その前にはこういうことが問題になつておらなかつた。ですから一点單価の影響と関係あるということは大蔵大臣はお認めになつているのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/100
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101・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) これは日本医師会のほうでお聞き下さるとわかりますが、この所得標準率の問題は、一昨年の夏頃から非常な陳情がございましてそうして所得税課長に私が特に言い付けまして、これはもう一年半越し、二年越しの問題でございましてずつとやつておつてなかなか結論が出なかつたのでありますが、一点地価の問題よりずつと以前に、私の秘書官の所にいろいろの資料を集めまして、そうして国税庁と私とで検討しておつた問題でございます。一点單価の問題が出てからではございません。これは係官をお呼び頂きますとわかりますが、健康保險医の所得標準率というのは、所得標準率の中一番大きな問題で、早くから検討されておつた問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/101
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102・木村禧八郎
○木村禧八郎君 それは医師会という大きな所から出たからこういうような大きな問題になつたと思うのですが、何もそういう問題は医師会ばかりでなく、各納税者についても言える問題かと思う。この結果を見ますと、結局我我にはこういう印象を与える。非常に勢力の大きい所からこういう要請があるとそれが行われ、力の弱いものがやつたのでは下げてもらえない、実際にはこういうことになると思う。大体、元来ならば一点單価について解決すべき問題を税のほうで調整をとるということは、非常に不公平であると思う。一部の者の負担によつて一点單価の問題を調整するというように我々は解釈されると思うのです。ですから、実情に即して税を減らすということについては我々は決して反対するものではないのです。併しこの建前が、一点單価の問題にどうしても関連して来る、これとの関連においてやつたということは、これはどうも税法上違法であると、非常に面白くないと、こう思うのです。大蔵大臣は、まあそうじやないと言われるのですから、これ以上議論しても水掛論ですが、私はそう思います。こういうようなことが前例になると、これは非常に納税上私は悪い影響を与えて来ると思う。その点で私はこの問題は非常に局部的な、全体の問題でなくて、局部的な問題ですが、私は重要視しまして質問をしたわけです。そこで次にお伺いいたしたいのは、最近の申告納税、やはりよくないと思う、よくないのです、この資料を見ますと。それは、やはりその原因は、大蔵大臣はどういうふうにお考えか。この年度末になつて又これを非常にここで徴税強行をやられるわけです。それがうまく行くのかどうか。この年度末になつて又一時に徴税が来るわけですが、その見通しを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/102
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103・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 一点單価の問題と無関係に所得標準率の調査を以前からしておるのでございまして、私が申上げたことには決して誤りないと思うのでありますが、この点はやはりはつきりしておかないといかんと思います。
それから申告納税の成績が悪いというのは、予算に対しましては実は悪いのであります。何月何日の資料を出しておるかわかりませんが、三月十日現在の分では、昨年度に比べますと申告納税は六〇%取つておりましたが、今年度は五八%でございます。而してこれは二月末の納期で三月一ぱいに徴収になりますから三月十日現在でははつきりした数字は出ませんが、三月一ぱいでは七四五%ぐらいまでは行くのではないかと思います。即ち四月末の徴収がそこで二百数十億円の減収ということを申上げておるのであります。私は税金がこれだけ不足だから、おい、早く取れというようなことは絶対にいたしません。税金が予定より取り過ぎたから手心をしろということは、これも又絶対に申しません。そこで三月、年度末近くになつて、即ちここ一週間くらいの間に指令を出して取れというようなことはいたさないつもりでおります。ただ、それどころではない。今の状況から申しまして、決定はいたしても、若し納税その他お困りのかたがあるのならば、決定をして半分以内ならば暫く待つことも止むを得ん、こういうことは指示いたしたのでございます。予算通り取れるか取れないかによつて政策を左右することはよくないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/103
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104・木村禧八郎
○木村禧八郎君 その申告の場合ですね、実際には税務署のほうから申告の事前に大体指示額が来て、そうして税務署のほうから話があるから来いと言つて税務署に行つて、それで大体その程度にまあ申告せよということに実際としてはなつているようですが、こういうことはそれで話がまとまればいいですけれども、まとまらないことが多い、そういうようなことが申告の成績の悪い一つの原因になつているんじやないかと言われているのですが、その点はどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/104
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105・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 先ほどの御質問で申したことは申告納税でどうしてこんなに減収が出て来るかということです。この問題は先ほどから申上げておりますように、かなり法人のあれが多いのです。そこで法人になりますとその分は法人税のほうになります。それから私人の所得は源泉徴収である、こういうので法人になりますと法人税と源泉徴収が非常に殖えて、もつと個人のあれは減るのである。で、人員にしたら余り大したことはございませんが、個人の大きい納税者が殆んど全部と言つてもいいくらいに法人になる。我々が第一線におりますときは、銀座通りなんかは殆んど個人でございましたが、今殆んど銀座通りは法人でございます。料理屋なんか大きいもので千万円以上の課税を受ける者は殆んど個人は残つていない。これはここ一、二年の状況であるのであります。一旦法人になりますと事業税は入つて来ない。それから源泉徴収のものはすぐ入つて参つりますが、法人税は又一年遅れると、こういうような関係になりますので、そのほうの見通しがなかなかつきにくいのでございます。それはやはり何と言いますか、予算の作成のときにおきましても、人員とか、所得を主にしてやりますと大きい個人がぽつとなくなるので、人員としては殆んど問題ございませんが、税額にしたら非常に響くと、こういう関係がありまして、而してこれを一、二年来常にこういうことをやつておるのでありまするが、特別なそういう事情がありますので、どうも予算通り取れない。片方のほうは予算以上取れると、こういうことであるのであります。昭和二十七年度におきましても特にこういう点を考慮するようにとは言つておるのでありますが、総体的に事業所得は何ぼ殖える、個人所得はどうなるということになりますと、所得がこれだけ殖えればこれだけ殖えるのだということになつて来る。大体所得が殖えるものでも、二十万円、三十万円くらいのものは、所得が一割殖えるものは税金は一割ですけれども、四、五十万円から百万円のものは税金は三、四割殖える。減る場合はその逆になる。そういう工合でなかなか収入の見込みがむずかしいのでございます。それから御質問のこの申告をする場合におきまして、お話のような点はやはり今でもあるそうです。我々が税務署長をしておるときは徹夜で折衝しておつたのですが、こういうことはやめさせまして、今は全体の業者の営業状況を試問するという規定はございますが、個々に折衝したり、或いは組合を通して折衝するということはそこにいろいろな点が入つて来ますので、私は余りほめた制度じやないと思います。併し実際何分にも納税者の数に対しまして税務官吏の人員或いは素質等の問題がありまして、昔ほどではございませんが、これをきつぱりやめるというわけにはまだ行つていないそうです。そこで税務署の見込と納税者の見込とで話合いのつくものは申告してもらいます。併し話合いのつかんものにつきましては、私はその納税者は承知して行かんと思います。承知しない場合において、これが決定を税務署の見込でやるということは嚴に慎しめということを通牒を出しております。従いましてそういうものにつきましては三月、四月、六月になつて税務の暇なときを見て再調査に出掛けましてそうして決定する、こういうのが先ほど申上げました時間的のズレがありまして、昭和二十六年度におきましては或る程度の収入不足があるから、追つかけて行こう、こういう建前でおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/105
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106・木村禧八郎
○木村禧八郎君 余り長くなつたのですが、もう二つばかり伺いたいのです。次に今度の予算の規模とこの税収、税のほうの規模というのですか、それを比べて見ますと、予算規模においてはこれは一般会計だけですが、これは大体二十四年に比べて実質予算としての比較では九七になつておりますが、税収のほうを見ますと、これが二十四年を一〇〇にすると一〇四になつておる、その点予算の規模の上では三十四年に比べて実質的に下つているのです。ところが税のほうから見ると実質的にこれが殖えているのですね、税のほうから見ますと……。こういう傾向は、ですから税以外の収入たる専売益金とかそういうものは除いての税としての比較になるのですが、予算規模に比較して税の比率が多つくなつておる、こういうまあ特徴を持つていると思うのですが、これは大蔵大臣はどういうふうに御覧になるか。これは結局それだけ税が予算規模に比較して総体的に多くなつている、税のウエストが、こういうように思うのですが、その点如何でしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/106
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107・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 数字を十分御検討なさつておる木村さんでございますから誤りないと思います。私も担当いたしておりまして、一般会計の収入についての税の部分は相当多くなつて来る、こういう見通し、気持ちを持つております。昭和二十七年度におきましても、二十六年度においては今の貿易管理特別会計とか、或いは公団の収入とかいろいろなものが相当ございますから今年度も相当あります。そういう関係で税の部分が多くなつて来ると思います。それから国有財産の収入も或る程度は殖えておりまするが、これもそう殖えるということはない。ただ日本銀行の納付金額も相当額に上つておる、これは相当殖えて来ております。それからその他の雑収入の中では歳出が殖えて歳入の殖えるというのも相当ございます。まあ全般的に申しまして木村さんのおつしやるように、一般会計の収入の中の税の部分は相当多くなつて来つつございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/107
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108・木村禧八郎
○木村禧八郎君 今後はどういうお見通しですか、今後の見通しですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/108
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109・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 私は今後もこの傾向が大きくなつて来るのじやないか、で、貿易会計の収入等はもうなくなつて参りました。今後はもう税一本で行く、雑収入のほうにつきましてもそうございません。それから日本銀行においては全体から言つても七、八十億の問題で、やはり税収入が相当の部分を占めて来ると、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/109
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110・木村禧八郎
○木村禧八郎君 そうしますと、減税ということもまあ今後考えられて行つても、こういう点から見ると税以外の収入というのだんだん減つて、税のウエイトが大きくなつて来るのですから、実際問題として減税と言つても困難になると思うのです、実際問題として……。これは又議論になりますから、最後に、これはまあほかのかたも一応質問したのですが、私も念のためにちよつと伺つておきたいのですが、今後の景気の見通しと税収の問題ですが、特に法人税が税収の中では二十七年度相当大きなウエイトを持つて来ております。そこで景気の動向は何も法人ばかりじやございませんが、特に法人、いろいろな企業、こういう方面に大きな影響を与えると思うのですね。そこで最近まあ大蔵大臣は景気が沈滞したので百五十億ぐらいいろいろな融資をして活気付けるというような方針を示されたのですが、どうも最近の景気の見方ですね、これが変つて来たと思うのです。私もこの点については最近観測を変えなければならんと思います。私は上期はデフレ的になるじやないか。下期はやはりアメリカの景気も上昇して少しは、時期はずれるかも知らんけれども、よくなるじやないかというような気もしておつたのですけれども、いろいろな最近の海外からの、外国経済の情報なんかを見ましても、どうも下期もそんなに楽観できないような情勢じやないか。それで若しか、休戰ということが、これで朝鮮休戦が成立すると、前のドツジ・ラインが行われたときのような情勢が出て来るのじやないかという気もするのです。そうしますと、税収に相当私は影響が出て来る。特に個人が法人のほうにどんどん変る。法人組織に変る。法人税というものは今度又増税になつて来る。そういう点から、景気は一番法人が影響を受けるのでありますから、この点どうも見込が違つて来るのじやないかと思うのですが、もつと税を取ろうと思えば取れる。又大蔵大臣が言つた通り、今まで税は取り過ぎて来ているわけなんですけれども、どうも最近の、特に最近の景気の見通しは非常にまずくなつて来ておるわけで、この点やはり相当影響あるのじやないかと思うのですが、この見通しは非常に困難だと思うのですけれども、一応特に最近変つているようですから伺つておきたいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/110
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111・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 議会での論議の中心は、見通しの問題が実はいつも多いようであります。過去はどうだつたかということから、見通しの問題でなしに、過去のことを言わずに将来の見通しをああだこうだと言つているのですが、私はこの前の法人税の収入見込のときに、補正予算のとき、やはりこういう議論が出た。電力がいかん、電力飢饉だとか、或いは昨年の三、四月の見越し輸入の尻が出て来る、こういうようなことから議論がありましたが、千五百億の法人税の収入について、これはもうとてもというあれでございましたが、先ほどの話のように、二百五、六十億増収が出て参りました。最近の新聞なんかに収益率が落ちた、法人の、これはその通りです。収益率は、この三月におきましては、三月決算を主として四月の分はまだでございますが、収益率は落ちましたが、私の見込で二百六十億円の自然増収があるということは、収益率は落ちた、併し今の税収というものは、収益率というものによりまして、ぎゆうつと動くものではございません。超過所得税というものがないのですから……。利益金はどうかということになりますと、利益金は余り減らない。私はこれを自然増収を見込みます場合におきましては、各大会社の決算見込を一応質しましてそうしてやつております。収益率は落ちます、全体としては……。併し利益金額は、増資その他についても金額において大した減少はないと見込んでおるのであります。それから、昭和二十七年度の問題になつて参りまするが、これは朝鮮の問題が休戰になつたら、非常に特需なんかも減る、こういうような議論もあります。又アメリカの軍需生産というものは、ちよつと中だるみしたのでありますが、又盛り返して来るという説もあります。併し、又余り盛り返えらんだろうという説もありますが、併しアメリカ経済と日本経済と比べますと、よほど違うのでございまして、私が朝鮮の休戰のあるなしにかかわらず、アメリカと日本との経済協力というものは、今後ますます緊密になつて来る。この一月頃でございましたか、私は昭和三十七年度のドルの獲得は七億くらいと言つた記憶がございますが、今の情勢から申しまして、私はドルのいわゆる特需、或いは国内消費、いわゆる貿易外の関係で、七億ドルくらいは確保できろじやないか。そうして又輸出が衰えるだろうと言われますが、私はこういう機会に、輸出物資を国内の再生産に向けて、或る程度輸出は落ちてもいい、この機会に国内の再生産力を強化しよう、そういう意味におきまして、国内金融を考えると同時に、手持の外貨を有効に使つて行こうという今計画を立てつつあるのでありますが、私は何としてでも、何としてでも、とにかく昭和二十七年度の生産目標を突破するように、又将来の日本の発展の基礎をこの機会に作つておこう、こういう考え方で進んでおります。見通しの問題としては、これは議論になりますが、私は楽観じやなしに、とにかく国民と共に生産力を拡充して行つて、一日も早く強い基盤にしよう、こういう心がまえで行つておる。楽観じやございません。あらゆる事態に処してもやつて行こう、こういう努力目標を立てて進みたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/111
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112・木村禧八郎
○木村禧八郎君 これは予算委員会でも大蔵大臣言われたのですが、輸出が減る。輸出が多少減つてもかまわない、又事実ポンド地域に対する輸出は抑えなければならんような状態になつておりますが、そのときに、日本にストックができるということは、日本のストックが少ついということが日本経済の底の浅さであつたのだから、ストックが殖えるということはむしろ歓迎すべきである、こういうようなことを大蔵大臣は言われましたが、これは私は違うじやないか。底が浅いからむやみにストックができちやいけないと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/112
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113・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) これは議論のあるところであります。程度問題でございます。私は国民経済全体から申しますと、やはりストックが相当あつて、物価が上らないように、できれば下るように、下つてもなお且つ立ち付くように合理化する、こういうことが理想である。例えば綿糸なんかの問題にいたしましても、日本は世界の綿糸の供給国である。それで割合にストックが少つい、それで世界的に要求がありますと、よそよりも一番早く上つて来る。これは国民経済に非常に影響する、そこで或る程度の私はストックを持つことは必要なんじやないか、こういう気持で言つておるのであります。例えば油脂原料なんかにいたしましても、これは前言つたかもわりませんが、百六、七十ドルで大豆を入れておる。その後下つて、今では百三十ドルか百三十五ドルぐらいで買えるのでありますが、自分としては、この百三十五ドルぐらいになつたときに、もつと大豆を入れて、油脂原料を確保して置いて、そうして一罐二千八百円くらいならばいいですが、三千円以上に高くならないような方法をとるべきじやないか、これは私見ですが、そういう私見を持つておるのですが、なかなかそこまで手が伸びない。国民生活全体から申しますと、相当ストックを持つことが望ましい。よそがなくなつたからといつてすつと上つて来るというようなことはとるべきじやない。資本主義的の考え方も相当広い国全体からの見方で進むべきじやないかという気持を持つて言つておるのでありまして、ストックが多ければ多いほどいいという意味ではございません。国民生活を考えながら、相当のストックがあるということが国民経済の強靱性を招来するゆえんであります。今も田村さんからこの問題で御意見がありまして、少し注意を受けたようでございますが、私は初めから私見として言つておるのであります。今後日本経済の持つて行き方としましては、とにかく経済力を強靱にする、それには設備の近代化、増産、価格の引下げ、そうして又安定性としてストック、こういう気持で行きたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/113
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114・木村禧八郎
○木村禧八郎君 これは今後の政府の経済政策とも関連し、非常に重要な問題と思われますので、もう少し伺いたいのですが、前には物資を輸入し過ぎて、一時に非常に輸入し過ぎていわゆるストックというのですか、が多くなつて、非常に景気を圧泊したのです。そのときの議論になつたことは、例えば貧乏人が今すぐに必要でないのに、洋服を二着も三着も一時に買うとかいうようなことになる、それで収入の大部分をはたいて、今必要でない靴を一定も三足も買うということはこれはストックですね、そういう持ち方をしたのではうまく行かないわけです。あのときの議論も丁度そうであつた。日本の貧乏世帶で身分不相応に買つたと私は思う。ですから買い方があるのであつて、全体の再生産がうまく行くように買うためには、身分相応にやはりストックも持たなければならない。大蔵大臣はただストックがむやみに多くなればいいという議論でない、こういうことを言われましたが、それは了承しましたが、前に予算委員会で言われたときに、日本の経済力を強靱にするためにはストックが多いのがいい、そうすると今後もそういうストックを多くするような方策をとられて行くということは、即ち景気が下降してもそれを放任しておくというのですか、そういうような考え方でおられるように受取つたのですが、ストックの問題については私はやはりそこが問題で、さつき程度問題と言われたのですけれども、むやみにストックが多いばかりがいいのじやなくて、今の貧乏世帯で蓄積が多いといつたつて、身分不相応な蓄積であつたら生活水準がうんと下つて参るのであります。そういう意味でのストックだと私は思うのですが、大蔵大臣の言われているのもそういう意味なんですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/114
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115・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) これは消費物資と生産物資とに分けてお考え願いたい。この前のは、ストックが多過ぎるからではない。それは値段が下つて金融の途が付いてなかつた。それが問題であつた。それは勿論昨年の後期に入りました皮革、コム等は二、三月頃まで持ちました。それから大豆等につきましても一年分を二、三カ月で入れた。これは或る程度多いかも知れませんが、それが多いということでなしに値段が下つた、而して又その裏付けの金融が考えてなかつた、こういうことが問題であるのでありまして、昨年の例をすぐお取りになつては私の気持と合わないのでございます。それから消費物資の点では、アメリカの物価が余り上らんということは、これは片一方では軍需生産が中だるみしているということと、もつと大きい原因は、昨年の物価が上るときに皆が消費物資を買込んだ、そこで需要が減退した、こういうことがあるのであります。それから買込んだことがいいか悪いかはそれは別問題として、私は結果から言えば、軍需生産の中だるみと、一般消費者の消費物資の買込みと、これによつてアメリカのインフレがインフレにならずに正常なあれを行つている。併しイギリスのほうはどうかと申しますと、日本の物価は昨年の十月頃が物価卸売指数が一番高かつた、アメリカのほうは八月頃が一番高かつた。それからアメリカも八月頃からだんだん下つた、日本も十月から横ばいになつておる。併しイギリスのほうはどんどん上つて世界の傾向とは違つて、イギリスは特殊の事情があるのでございまして、アメリカは買込みをやつたが、イギリスは買込みをしなかつた。日本はいろいろな影響を受けまして今横ばいでございますが、私は、正常なストックというものは必要である、心配しておりますことは、これは木村さんにもお答えしたかと思いますが、ほかの人もおりますから申しますが、輸出輸出と言つて米櫃が空になつたり、箪笥が空つぼになつたのでは、輸出はなかなか考えものである。やはり正常なことをやらなければならん。私はどちらかと言えば今の貿易もさることながら、日本は物質的に少し貧弱になつておるので、この機会に先ほど言いました外貨を十分活用して設備の近代化とか、ストックの蓄積とか、或いは又将来のことを考え、東南アジアヘの投資、こういうことをこの機会にやつて行くべきではないかという気持を持つて検討いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/115
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116・菊川孝夫
○菊川孝夫君 午前中にもちよつと伺つたのですが、午前中は私、税の取り方についてお願いしましたが、今度は税の行き方について少しお尋ねしたいと思います。その第一は、物納財産税或いは相続税の対象として物納された財産が或いはブローカー等にこれが運営を委託したために不正事件、或いはどうなつたかわからんというような事例がたくさんあるということが、決算委員会のほうに出て参りました資料の中に載つておるわけでありますが、これは会計検査院の摘発によつてなされたのでありますが、大蔵大臣そういう事実を御存じであるかどうか。而も大蔵大臣の所には当然報告が来ているだろうと思いますから、御存じだろうと思いますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/116
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117・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 会計検査院の関係で大蔵省の所管事項の中に非常に不正、不当の事件が多いということを聞きまして再調査をいたしましたところ、お話のように多いのでございます。三百四十件ぐらいございましたが、そのうち二百数十件は税のほうでございます。これはもう税金のことは数の多い中で五、六千億円取るので、そうして納税者も何百万という、こういう状態でございますので、これは私はこういうことが起らないように注意いたしておりますが、なかなか、件数から申しましてもそういうふうに上つておることは遺憾でございますが、できるだけ是正させたいと思います。今お話の財産税のほうの分は国有財産関係であると思います。このほうの件数は割合少なかつたと思いまするが、今記憶ございませんが、二、三十件でなかつたかと思います。これの売払い、その他は公正を期しておりますが、なかなか数多い中で十分に行かん点は遺憾でございますが、今後とも注意いたしたいと思います。それからお話の財産税の財産をブローカーに委託してやつたということは私はないと思いますが、ただ二、三年前でございましたか、都内で財産税の物納になつた土地がたくさんあつて、これは大きい坪数ではなく、二十坪、五十坪、こういうものも大蔵省の財務局でやるのが至当でございますが、売主だか買主だかわからない、こういう場合に不動産業務をやつております信託会社或いはそういう不動産売買の業者を集めましてそういう連中に一つ買手を見付けろということも一つの方法じやないかというので、二、三年前にそういう方法でやつて見たらどうかということは言つたことがございますが、それによつて財産がどこに行つたかわからんということは聞いておりません。事務当局で調べさせて見たいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/117
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118・菊川孝夫
○菊川孝夫君 この間、決算委員会で問題になりました中で、例えば借家であるとか、今大蔵大臣が覆われました土地というようなものは、これは大蔵省でなかなか管理するわけに行かないというので、今大蔵大臣の言われたような信託会社、ところがそこに介在したのがしつかりした会社であつたらいいのですが、そうじやなくブローカー的の者がおつて、その当時は羽振りをきかせておつた者でも、だんだんと戦後の新興成金的のものが沒落するに従つて、その財産を勝手に処分してしまつて行方不明になつておる。而も血の出るような思いをしてこれを取られてしまつた借家がこのようになつておるということは、これは大きな今後の税金の行き方ということから問題になつておるわけであります。従いまして私はこの際、特にほかの税の還元とも関連すると思うのでありますが、二十七年度の総予算案と、それから二十六年、五年の実績と考えまして、取られた税金が二十七年から二十八年へかけましては、社会保障制度の拡充であるとか、遺家族或いは失業対策、それから義務教育の国庫負担だとか、こういつた方面へ還る額よりも、今度は再軍備或いは防衛、自衛力増強のほうへ相当振向けられて行く。その結果どうしてもそれだけは納めた……いわゆる先ほどから木村氏も私も、午前中お尋ねいたしましたが、源泉徴収、特に給与所得の源泉徴収を受けたその税金が一〇〇%以上の実績を示しておる、この税金が還つて来る場合にはむしろ今度は大きな所へ還つて来る。現にこの予算案が通つてそうして実施になつた場合には、曾つての軍需会社のほうへ大きく注文が来るであろうというので、どこの軍需会社の株も先を見通してどんどん買われ、上つて来ておるのでありますが、従つてそういう方面へ還元する分が殖えて参りまして、一般国民生活のほうへ還元するのがだんだん減つて来る、こういう傾向を迫ると思うのでありますが、この率は一体二十六年、二十五年の実績と、三十七年度、二十八年度今後二、三年の実績とは一体どういう比率になつておるか、この点大蔵大臣の勘で結構ですが、詳しい数字よりも勘で一つ御説明願いたいと思うのでありますが、今後の見通しを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/118
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119・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) まあいろいろな考え方はございましようが、予算を御覧になるとわかりますように、防衛費の中でもこの警察予備隊のほうで使う分が軍需会社といえば、その中の大部分が電信電話関係並びに自動車関係のほうの分が、これは前年より或る程度多くなるでしよう。或る程度通信関係或いは自動車の関係は多くなります。それから安全保障諸費で港湾を直したり、営舎を建てたりするので鉄やセメントも或る程度要ると思いますが、セメントも軍需会社の中へ入らないこともございません。その程度でございまして軍艦を造つたり鉄砲を造つたり、こういうことは一切しないのでありましてそう軍需予算のほうに昭和二十七年度殖えるということも、私は或る程度警察予備隊も人が殖えたのですから、それに伴う通信施設費、或いは自動車も殖えましようが、そういう軍需会社を潤おすというほどのこともございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/119
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120・菊川孝夫
○菊川孝夫君 もう一つだけ最後に、それでは徴税機構である国税庁の存廃問題について、今度の行政機構とからみ合つて今盛んに国税庁の廃止されるかどうかということは問題になつておるようでありますが、これは大蔵大臣当分国税庁はそのまま存置される見込であるか、それとも廃止するために準備を進められておるか、その点簡單にお答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/120
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121・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) これは問題でございまして、私は率直に申上げますと国税庁を設けるときには一応反対いたしました。併し殆んどスキヤツピンに相当するようなもので是非ともというので置いて見ましたところ、査察事務とか調査事務とか非常に殖えて参りました。而も査察等になりますというと全国的に網を張らなければならん、こういう恰好になりましてこの行政整理をいたしました後におきましても五万数千人の人がおります。五万数千人の職員がおる。徴税は六千三百億、こういう機構は日本にはございません。とにかく歳出予算を比べまして百三十四億円に、租税の払戻し四十億円、そうすると国税庁で取扱う歳出予算というものが百八十億円、こういう機構は日本中にはないのであります。例えばほかのことを言つては何でございますが、林野庁なんか営林署は相当使つております、二万人程度、それから水産庁なんか職員は六百四、五十人、こういう厖大な機構はなつてしまつて見ますと、そうして将来の徴税も重要なことになりますると、一概に外局を廃止するからといつてすぐこれを内部の主税局へ持つて来ますと、主税局は今御承知の通り税関を持つておる。今後税関をもつと強化しなければなりませんが、税関職員というものは特派官吏を除いて六千人近く、特派官吏を入れますと相当な数になるのであります。そうして税制を立てるということと、それから税制に基いて税を徴収するといういわゆる現業的なもの、いわゆる検務局と検察庁、こういうような関係の点もあるのでありまして、当初は私は大蔵次官のときには反対いたしましたが、こういう機構になつて見ると一概にいけないということはできない。今租税の徴収決定は国税庁長官の下でやりまして、大蔵大臣は関与いたしておりません。併し内局へ入れるということになりますと、これは大蔵大臣ということになつて参ります。そうして受入態勢の主税局は、今の税関のほうで特派官吏を入れると八、九千人の人がいる。そうすると国税庁のほうが入つて参りますと、一つの局で百八、九十億円或いは二百億円を使うようなものが内局でいいか悪いかということは相当問題でございます。実務的には、併し行政の整理ということから考えますると、何かこれをうまく解決できやしないかというので、只今私は検討いたしておるのであります。実情は、そういうふうな国税庁の実情になつているということを御記憶願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/121
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122・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 他に御発言もないようでありますが、質疑は終了したものと認めて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/122
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123・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。所得税法の一部を改正する法律案、法人税法の一部を改正する法律案、相続税法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題に供します。御意見のあるかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。……ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/123
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124・平沼彌太郎
○委員長(平沼彌太郎君) 速記を始めて。それでは明日午後一時から三法律案に対する討論採決を行うことにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午後五時三十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314629X02819520324/124
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