1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年三月二十八日(金曜日)
午前十一時十五分開会
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委員の異動
三月二十五日委員小泉秀吉君及び三浦
辰雄君辞任につき、その補欠として曾
禰益君及び館哲二君を議長において指
名した。
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出席者は左の通り。
委員長 西郷吉之助君
委員
岩沢 忠恭君
高橋進太郎君
岡本 愛祐君
館 哲二君
原 虎一君
林屋亀次郎君
石川 清一君
国務大臣
国 務 大 臣 岡野 清豪君
政府委員
地方財政委員会
事務局長 萩田 保君
地方自治政務次
官 藤野 繁雄君
事務局側
常任委員会専門
員 福永與一郎君
常任委員会専門
員 武井 群嗣君
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本日の会議に付した事件
○町村職員恩給組合法案(内閣提出)
○地方公営企業法案(内閣送付)
○地方財政法の一部を改正する法律案
(内閣送付)
○地方財政平衡交付金法の一部を改正
する法律案(内閣送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314720X02019520328/0
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001・西郷吉之助
○委員長(西郷吉之助君) 只今より委員会を開会いたします。
本日は町村職員恩給組合法案、並びに地方公営企業法案、地方財政法の一部を改正する法律案、地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案につきまして提案の理由を岡野国務大臣より聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314720X02019520328/1
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002・岡野清豪
○国務大臣(岡野清豪君) 町村職員恩給組合法案につきまして、提案の理由及び内容の概略を御説明申上げます。
一昨年十二月、第九国会において成立し、昨年二月から施行されました地方公務員法におきましては、地方公務員の福祉及び利益の保護を、適切且つ公正に図ることを根本基準の一として掲げておるのでありますが、地方公務員の退職年金及び退職一時金の制度につきましては、同法第四十四條において、職員が相当年限忠実に勤務して退職し、又は死亡した場合における退職年金及び退職一時金に関する制度が実施されなければならないと規定いたしておるのであります。思うに、同條の趣旨とするところは、地方公共団体の行政の民主的且つ能率的な運営を確保するためには、地方公務員の、退職後の、或いは死亡した場合における、人又はその遺族の生活を保障するための退職年金及び退職一時金の制度を確立することにより、地方公務員の職に有為の人材を誘致すると共に、その職にある者をして、安んじて職務に専念させることが必要であり、その故に、公正且つ適切な退職年金及び退職一時金の制度が、実施されなければならないというところにあると考えられます。
政府といたしましては、地方公務員法に規定された新らしい理念に基く地方公務員の退職年金及び退職一時金制度を如何にすべきかにつきましては、国家公務員の制度との関連、更には一般社会保障制度との関連等をも考慮し、折角研究中であるのであります。
町村の公務員に対する退職年金及び退職一時金の制度については、昭和十八年、政府の指導により各都道府県ごとに、町村の一部事務組合として町村吏員恩給組合が設けられて、今日に至つておるのでありますが、町村吏員恩給組合の給付の種類、額等の現行の基準は、おおむね、国家公務員或いは他の地方公務員の制度に準ずるものとなつておるのでありまして、今直ちに、この基準を改めることは、国家公務員或いは他の地方公務員の制度との均衡の問題もあり、全般的な退職年金及び退職一時金の制度の改革の問題と睨み合せて、今後も研究を続けて参りたいと存じますが、ただ、町村吏員恩給組合はその法的基礎が薄弱であり、その財政的基礎も必ずしも確固たるものでなかつたために、その運営上遺憾の点が認められ、町村からも早急にそれらの点を整備することが要望されておつたのであります。この際、現行恩給組合制度の建前を維持しつつ、これを法制化することによつてその機構を整備し、併せてその運営の改善を図ることとし、本法案を提出いたしたのであります。
次に、本法案の内容につき、その概略を御説明申上げます。本法案におきましては、第一に現在の町村吏員恩給組合は、一応町村の任意加入となつておりますので、これを強制加入に改め、真に、町村の公務員全体の福利の向上を確保いたすことといたしております。第二に、町村職員恩給組合の給付を受ける者の範囲、資格、並びに給付の種類及び額については、組合の規約で定めなければならないことといたしております。第三に、町村職員恩給組合の経費を、町村が負担すべきことを法律上明記し、組合の財政運営の基礎を明確ならしめる措置を講じております。第四には、町村職員恩給組合の財源の計算及び資産の管理は、健全な保険数理に基かなければならないという原則を、法律上の要件といたしております。第五に各町村職員恩給組合の実際の運営が、右の原則に従つて行われることを共同して確保する方途として、各町村職員恩給組合が連合会を組織し、これによつて自主的にその目的を達成させることといたしております。
以上本法案を提出した理由及び内容の概略を申述べたのでありますが、何とぞよろしく御審議のほどを御願いいたします。
次に只今本委員会に付託されました地方公営企業法案について、その提案の理由と内容の概略を御説明申上げます。
近代国家の下におきましては、地方公共団体の処理いたします事務は、権力行政及び非権カ行政の両分野に亘り、いよいよ複雑多岐を加えてきているのでありますが、住民に対しより良いサービスを提供し、それによつて住民の福祉を増進いたしますことが、地方公共団体の固有の存立目的の一であることは、あえて申すまでもないところであります。水道事業、自動車運送事業等の各種公益事業を公営することにより、低廉、適切なサービスを住民に提供いたしますことが、地方公共団体の重要な事務と考えられて来たゆえんもここにあると存ずるのであります。
現在、地方公共団体が経営しております水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業及びガス事業を概観いたしますと、これらを経営する地方公共団体は、数にして約五百以上の多きに及ぶのでありますが、これらの事業は、一方において水道條例、軌道法、道路運送法、地方鉄道法、公共事業会等の適用があり、他方において、地方公共団体自体の組織及び運営に関するものとして、地方自治法、地方財政法等の規制の下にあるわけであります。水道條例、軌道法等の各種事業法は、原則として私企業、公営企業の別なくおしなべて適用されているもので、これらの法令は、地方公共団体の経営する企業を、いわば外から規制しているのに対し、地方自治法、地方財政法等は、地方公共団体の経営する企業を内部から規制しているものであります。
地方公共団体の経営いたします企業は、公共の福祉の増進を図ることを第一義とすることは申すまでもないところでありますが、一方、それが企業ととして持つ性格に鑑み、常に企業としての経済性を発揮するように運営されなければならないことは勿論であり、この点に関する限り、私企業に類似する原則に立脚すべきものであると考えられるのであります。然るに、前述いたしましたように、地方公共団体の経営いたします企業については、内部的には、原則として地方公共団体の処理しております他の一般行政事務と同様に、地方自治法、地方財政法等が一律に適用になり、遺憾ながら企業経営の特殊性に対応する措置は、何ら講ぜられていない現状であります。一般の官公庁の行政事務を規制するのと同様な法規の下にある限り、企業の能率的経営を促進し、その経済性を発揮させるためには遺憾の点少しとしないのでありまして、本公営企業法案を提案いたします理由もここに存するのであります。即ち、企業経営組織に関しては、地方公共団体内部において特別の経営組織を設け、企業の管理者に対し企業の業務執行について相当広汎な権限を与え、企業の経理に関しては、従来の官庁会計を排して発生主義の原則に基く企業会計を採用し、企業に従事する職員の身分取扱についても、国鉄、専売等国の公共企業体の職員に準ずる身分取扱を認め、企業の能率的経営を図り、その経済性を高め、以て公共の福祉を増進し、地方自治の発達に資せんとするものであります。すでに昭和初年以来官民の間に地方公営企業法制定の気運が醸成せられ、政府としても鋭意調査研究を続けて参りましたが、一昨年御審議を願つた地方公務員法の附則においても公営企業に従事する職員の身分取扱については、別に公営企業の組織、会計経理及び職員の身分取扱に関して規定する法律が制定実施されるまでの間は、なお、従前の例によるとされているのであります。以上の見地から、政府においては、調査研究の結果を各方面とも協議折衝をいたし、今日漸くここに成案を得、今期国会の御審議を煩わすことに相成つた次第であります。
次に本案の内容につき、その概要を御説明申上げます。先ず、本法律案は、地方公共団体の経営する企業の組織、財務及びこれに従事する職員の身分取扱その他企業の経営の根本基準を定め、地方自治の発達に資することを目的とするものであり、地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮すると共に、その本来の目的である公共の福祉を増進するように経営されるべきことを企業経営の基準原則として打ち立てております。第二に、この法律の適用をうける企業の範囲についてでありますが、本法案が、企業の管理者を置くことを原則とし、相当な熟練と知識を要する企業会計を採用し、企業に従事する職員の身分取扱についても特例を認めている点に鑑み、一定の職員数を有し、従つて一定の規模を持つ水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業及びガス事業に適用されるものとしておりますが、他方、本法案の直接規制対象外の公営企業についても、地方公共団体が自主的にこの法律の規定の全部又は一部を適用し得る途を開いているのであります。第三に、本法案と地方自治法、地方財政法及び地方公務員法との関係でありますが、本法案は、これらの法律の特例を定めるものとし、地方公営企業の経営に関し本法案に特別の定めがないものは、すべてこれらの法律によるものとしているのであります。
次に地方公営企業の経営組織について御説明申上げます。第一に、地方公営企業の業務を執行させるため、地方公共団体の長の指揮監督の下に、企業の管理者を置くことを原則とし、管理者は、予算の調製権、各種議案の提案権等地方公共団体の長に固有のものを除き、企業職員の任免、事務分掌のための分課の設定、企業管理規程の制定等を通じ、企業の日常の業務を執行する権限と責任とを有するものといたしているのであります。第二に、以上のような企業の管理者の地位と責任の特殊性に鑑み、管理者について就職及び在職に関する禁止條項を設けると共に、他方その地位の保障についても考慮を払うことといたしております。第三に、日常の企業の業務の執行は、管理者の専行するところでありますが、企業の経営の基本計画に関すること等当該地方公共団体の事務処理或いは当該地方公共団体の住民の福祉等に至大な影響があります事項につきましては、地方公共団体の長が指揮監督権を発動し得ることとしているのであります。
次に地方公営企業の財務関係について御説明いたします。企業の経理については、特別会計を設け、独立採算制を堅持し、企業の能率的な運営を図るために、一般会計の経理方法に対する特例を相当広汎に亘つて認めることとしているのであります。第一に、計理の方法は、一般会計における現金主義に対し、企業会計と同様の発生主義を採用して経営成績及び財政状態を明らかにするこことし、従つて従来の官庁会計と異り、出納整理期間を設けず、複式簿記の計理を行うこととなるのであります。第二に、予算につきましても、一般会計の予算様式を排除して文言形式を採用することといたし、日本国有鉄道の予算等と同じくいわゆる弾力條項を挿入いたすごととしております。第三に、企業の建設、改良等に要する資金に充てるための地方債については、償還期限を定めないことができるものとし、利用者である住民の出資に基く地方公営企業の発展を期待することとしております。第四に、企業の出納については、出納長、収入役の権限から外して管理者の権限とすると共に、企業会計方式の採用に伴い、予算より決算に重点を置いて経営成績を検討する必要がありますので、決算は、損益計算書、貸借対照表を以てすることといたしております。以上の外、資産の再評価をし、減価償却の計算をする等のことを規定しているのであります。
次に地方公営企業に従事する職員の身分取扱についてであります。第一に、企業の管理者及び企業職員のうち管理又は監督の地位にある者、機密の事務を取扱う者、即ち、労働組合法にいう労働組合を結成し加入し得ない者に相当する者の身分取扱については、原則として、地方公務員法の定めるところによるものといたしております。第二に、右以外の一般の企業職員の身分取扱については、この法律に特別の定めのあるものを除き、別途提案予定の企業職員の労働関係に関する法律案の定めるところによるものといたしております。即ち、職階制及び給与についてこれらの基準規定を本法案に設けると共に、地方公務員法の規定中、任用に関する部分を除く人事機関に関する規定、勤務條件に関する措置の要求及び不利益処分に関する審査の請求の規定、職員団体に関する規定等の適用は、これを排除いたすごととし、従つて、これらの職員のいわゆる狭義の労働関係については、別途今国会に提案の予定にいたしております。地方公営企業労働関係法ともいうべき法律案の定めるところに譲ることといたしているのであります。最後に、この法律の施行期日は、この法律公布の日から六月をこえない範囲内で政令で定めることといたしておりますが、これは、企業資産の再評価等この法律施行のためには相当な準備期間が必要であろうと考えられたからであります。
以上地方公営企業法案について、その概要を御説明いたしたのでありますが、何とぞよろしく御審議のほどを御願いいたします、これを以て提案理由の説明といたします。
次に只今提出いたしました地方財政法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。
本法案は、現行の地方財政法につきまして、地方行政の責任の帰属を明確にすると共に、その自主的な運営を確保するため、地方公共団体又はその機関が行う事務に要する経費について、国と地方公共団体の負担区分に関する基準を改めろ等の必要があり改正を加えようとするものであります。
以下本法案の内容の概要について御説明申上げます。改正の第一点は、国費、地方費の負担区分に関するものであります。従来、住民多数に関係する事務については、それに要する経費を国と地方公共団体のいずれが負担するかということは、その事務が国と地方公共団体のいずれの利害に関係するかということから定められていたのであります。即ち、主として地方公共団体の利害に関係するものに要する経費については、その全額を地方公共団体が負担し、主として国の利害に関係するものに要する経費については、地方公共団体はその経費を負担する義務を負わないものとし、国と地方公共団体相互の利害に関係するものに要する経費については、法律又は政令の定めるところによつて、国と地方公共団体が共同して負担するということにしていたのであります。併しながら地方公共団体の行います事務に要する経費につきまして、国が負担金を支出いたします場合には、国庫負担金支出の計画が必ずしも地方の実態に即さなかつたり、徒らに事務の処理、当該事務に従事する職員の任免等を煩雑ならしめたりして経費の濫費を伴い勝ちでありますこと等の弊害があります半面、地方財政平衡交付金法の成立によりまして地方公共団体に委ねられました行政に要します経費につきましては、どの地方公共団体に対しても所要経費の全額は、地方税と地方財政平衡交付金とを以て保障せられることになりましたので、少くとも財政的には殊更国が特定の経費に対する紐付きの負担金、補助金の類を支出する必要はなくなつたのであります。むしろ、地方公共団体に委ねられました事務については、地方の住民が進んでその運営を工夫し、民主的な執行及び管理を行うことができる態勢を整える必要があるのでありまして、この点からすれば、国からの紐付き補助金、負担金の類は、原則としてこれを廃止することが望ましいこととなつたのであります。殊に国からの補助金、負担金も地方税と等しく国民の負担になるものでありますので、地方公共団体に委ねられました事務に要する経費は可及的に地方権を以て充足せしめ、半面これらの経費は、国税としての負担を軽減する方法を講じ、以て地方の住民がみずから負担した地方税の行方を通じて地方財政のあり方を監視し批判する習慣を培いながら、民主政治の基盤たるべき地方自治を確立して参りたいと考えるものであります。もとより、この方法を極端に推し進めて参りますと、負託された事務を処理するに要する経費の財源としては、地方税が豊富に過ぎる地方団体を生じて参りますのと、その半面、地方住民の担税力からして如何に地方税を高めましても、そこに負担せられた事務の運営に要する経費の全額を地方税のみを以てしては充足することは到底できない地方団体もありますので、税源の少い地方団体に対しましては、その不足額を全国民の負担において公平に補填する措置を講ずる必要があるのであります。而して、又、この趣旨の下に地方財政平衡交付金制度が存するのでありますが、この地方財政平衡交付金は国から地方公共団体に交付されるものでありながら、他の紐付き補助金、負担金の類とは異なり、その交付に当つては何らの條件をつけたり使途を制限したりしてはならないとする等地方に対する干渉に亘らないよう、多くの工夫が試みられているのであります。従つて地方財政平衡交付金制度の成立いたしました昭和二十五年度におきまして、すでに国費、地方費の負担区分に関する規定は、根本的に改正する必要があつたのでありますが、個々の事務につきましては、なお、検討すべき多くの問題がありましたため、昭和二十五年度及び昭和二十六年度の二カ年度間は、その適用を停止することといたしておつたのであります。
今回、国の予算におきましても、過去二年間に設けられておりました地方財政平衡交付金と国から地方公共団体に交付される補助金、負担金の類との間に適宜移用を行い得る旨の規定が廃止されましたのと軌を一にして、おおむね、現行制度に基いて国費、地方費の負担区分に関する規定を整備することといたしたのであります。即ち、先に申述べました趣旨に則り、地方公共団体又はその機関に委ねられました事務に要する経費は、その事務の及ぼす利害の如何にかかわらず、原則として全額地方公共団体の負担といたしたのでありますが、ただ次の四点については、その例外を認めるごとといたしております。例外の第一として、法令に基いて実施しなければならない国と地方公共団体相互の利害に関係がある事務のうち、まだ実施されて日が浅いため十分地方公共団体の事務として同化されるに至つていない等のため、その円滑な運営を図るためには、その経費の全額を地方公共団体の負担に委ねないで、国が、なお、進んで経費を負担する必要がある結核予防その他に要する経費については、法律又は政令の定めるところによつて、国がその経費の全部又は一部を負担することにいたしております。即ち、これに該当するものといたしましては、その外生活保護に要する経費、保健所に要する経費、農業改良普及事業に要する経費等を制限列挙いたしております。例外の第二として、国民経済に適合するように総合的に樹立された計画に従つて案施しなければならない法律又は政令で定める土木その他の建設事業に要する経費については、国がその経済の全部又は一部を負担するものとしております。これに該当するものといたしましては、現行のいわゆる公共事業費、失業対策事業費等を制限列挙いたしております。例外の第三として、法律又は政令で定める災害に係る事務で地方税法又は地方財政平衡交付金法の適用によつては、その財政需要に適合した財源を得ることが困難なものを行うために要する災害に救助事業その他の経費については、国が、その経費の一部を負担するものとしております。これに該当するものといたしましては、その外土木災害復旧に要する経費、農林災害復旧に要する経費等を制限列挙いたしております。例外の第四として、専ら国の利害に関係のある事務を行うために要する経費につきましては、地方公共団体はその経費を負担する義務を負わないことといたしております。これに該当するものといたしましては、国会議員の選挙に要する経費、外国人登録に要する経費等を概括例示することといたしております。以上のもののうち第一から、第三までに該当する経費の種目、算定基準、国と地方公共団体とが負担すべき割合は、法律又は政令で定めるとともに、地方公共団体の負担すべき分は、地方財政平衡交付金法の定めるところによつて、地方公共団体に交付すべき地方財政平衡交付金の額の算定に用いる財政需要額に算入することといたしております。
次に改正の第二点は、割当的寄附金の禁止に関するものであります。現に地方公共団体は、住民に対し寄附金を割当てて強制的に徴収するようなことをしてはならない旨を規定しているのでありますが、国の出先機関から地方公共団体若しくは住民に対し、又は国若しくは地方公共団体の外郭団体を通じて地方公共団体若しくは住民に対し寄附金等を強制的に割当てて、強要する事例が少くないように見受けられますので、これらの途も禁止する趣旨において規定の整備を図つたのであります。
最後に右の改正に伴い、所要の規定の整備を図ると共に、地方財政平衡交付金法に所要の改正を加えることといたしております。
以上本法律案の提案の理由及びその内容の概要につき説明いたしました。何とぞ慎重御審議の上、速かに可決せられんことをお願いいたします。
次に只今提出いたしました地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。
地方財政平衡交付金制度は、地方団体の自主性を損なわずに、地方財源の均衡を図ると共に、すべての地方団体に対し、それぞれが合理的且つ妥当な水準において地方行政を行う場合に要する財源を完全に保障することによつて、地方における行政の地方住民による民主的な運営を確立することを目的として、昭和二十五年の地方税財政制度の根本改革に際し創設せられたものであります。これが制度の運営に当りましては、この制度のとります均衡化の方式が斬新且つ画期的なものでありますだけに、種々の技術的な困難を克服しながら、絶えず各般に亘る研究調査を続け漸次完全なものに発展せしめて行かなければならないものと存じて居るものであります。本法律案は、この制度の運営の実績に徴し、交付金の交付額の算定上、是正を加うべき事項につき、必要な修正を行いますと共に、現在の段階において得られました研究調査の成績を法定いたしました。この制度をしてますます合理的且つ客観的な基礎の上に置くことを企図せんとするものであります。
以下改正案の内容の概要について御説明申上げます。改正の第一点は、交付金を普通交付金と特別交付金の二種に分ち、特別交付金を恒久の制度といたしますと共に、その総額を、交付金総額の八%の額とすることであります。特別交付金は、特別の事情が存することによりまして、普通交付金の算定に用いる基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法によつては、捕捉されなかつた特別の財政需要や過大に見積られた財政収入があり、或いは、交付金の算定期日後に生じた災害のため、特別の財政需要の増加や財政収入の減少があること等のため、普通交付金の額が財政の実態に比して過少であると認められる地方団体に対して、当該事情を考慮して交付する交付金であります。従来交付金総額の一〇%に相当する額をその総額とし、昭和二十五年度及び二十六年度の暫定制度として存しておつたのであります。然し、交付金制度と地方自治との調和を図り、地方財政の健全性を保持するためには、交付金の算定に用います財政需要額又は財政収入額の測定は能う限り、客観的且つ間接的な資料に基き、画一的に行う必要が生ずるのであります。従つて又この結果は、千差万態の各地方団体の実情に即して、その財政需要額や財政収入額を的確に測定いたしますことにはおのずから技術的な限界があるわけでありますので、この缺陥を補うため、恒久の制度として、特別交付金を存置する必要があると認めたのであります。ただこの特別交付金制度は、ともすれば地方団体として徒らに中央政府に対する依頼心を増大せしめる虞れがありますのみならず、ニヵ年間の経験により地方団体の財政需要額や財政収入額の客観的測定の技術の進展により漸次その測定を実態に適合せしめて行くことが可能となつて参りましたので、その総額を、現行の、交付金総額の一〇%の率から八%に引下げることといたしたのであります。
改正の第二点は、普通交付金の算定に用いる基準財政需要額算定のための測定単位につきまして、厚生労働費について認められておりました昭和二十六年度までの特例が廃止されることと相待ちまして、既往の実績に徴し、一層その測定の合理化並びに簡素化を図りますため、道府県においては社会福祉費外四費目、市町村においては警察費外五費目につき、必要な改正を加えますと共に、社会福祉費中生活保護費及び児童福祉費、衛生費中保健所費につきましては、これが測定単位になお検討の余地が存しますので取りあえず暫定的な特例を存置するこことしたのであります。
改正の第三点は、基準財政需要額の算定に用いる各測定単位ごとの単位費用を法律に定めることといたしたことがあります。単位費用は、標準的な條件を備えた地方団体が合理的且つ妥当な水準において地方行政を行う場合又は標準的な施設を維持する場合に要する一般財源所要額の各測定単位当りの額でありまして、基準財政需要額算定上最も重要な要素であるばかりでなく、その内容は、地方行政の個々につき一定の水準を示すと共に、この内容に盛られた基準を通じて地方財政の効率的運営の指標ともなるべきものであります。本来法律を以て定めるものを暫定的に地方財政委員会規則の定めるところに委ねれられておつたのでありまして、単位費用に関する調査研究の進捗に伴い、逐次これを決定して行くという方法をとる必要があります関係上、あらかじめこれを公表するというわけに参りませんでしたため、地方団体は交付金の交付額の決定前に交付せられるべき交付金の額の予測が困難となり、財政の計画的運営を阻害されるばかりでなく、延いては交付金制度全般の運営に安定感を失わしめる因をなしておつたのであります。併し、幸いにして、漸く単位費用を法定することができるようになつて参りましたのでこの欠陥は除かれるごととなるものと考えているのであります。
今般法定しようとする単位費用の算定方法の概要を申上げますと、先ず各行政項目ごとに、一定の標準的規模を備えた団体又は標準的な施設を想定いたしまして、当該標準団体又は施設について、それぞれの行政項目に定められた測定単位によつて測定されまする行政事務の明細を調査し、これら行政事務の細目ごとに、合理的且つ妥当と認められる水準における行政の量と質とを定めました上、当該行政に要する経費の額を算定いたします。この場合において、合理的且つ妥当な水準における行政とするものは現在我が国の置かれております経済社会文化の程度並びに一般住民の公共需要の動向によつて定めるべきものと存じますので、従来法令又は行政指導によつて示されております行政の規模内容等を能う限り参酌いたしますと共に、地方財政の状況等を併せ考慮の上、おおむね現況を基礎として定めることといたしたのであります。
次に細目ごとの経費から、この経費支出に伴つて収入せられる使用料手数料、国庫補助金等のいわゆる特定財源の通常の収入額を控除した残額の合算額を、標準団体又は標準団体の標準施設における測定単位の数値で除して算定いたしております。かようにして算定いたしました単位費用を基礎といたしまして、昭和二十七年度の基準財政需要額を概算いたしますと、その総額は約三千六十億円中道府県千六百八十億円、市町村千三百七十億円でありまして各行政項目ごとの内訳は、道府県にあつては、土木費七%、教育費六一%、厚生労働費一一%、産業経済費八%、戦災復興及び徴税費四%、その他九%、市町村にあつては警察消防費二〇%、土木費七%、教育費二四%、厚生労働費一一%、産業経済費四%、戦災復興、徴税及び戸籍事務費八%、その他二六%となる見込であり、又これによつて算定いたしました各地方団体の基準需要額が基準財政収入額を超えると認められる額の合算額は既定交付金予算額を以て、おおむね充足し得る見込であります。次に単位費用の法定に関連いたしまして、現在委員会規則を以て定めることとなつて居ります測定単位の数値、補正係数及び基準財政収入額の算定方法は、これをも併せて法律で定めて明確にいたしますことが、単位費用法定の実効を収めます上におきましても将来制度全般の運営を円滑ならしめる趣旨におきましても、ともに必要であると認めまして、改めて、これを法律で定めるごととし、十分な研究が遂げられますまでの過渡的な措置として、昭和二十七年度及び昭和二十八年度に限り委員会規則で定めることといたしたのであります。かくのごとくにいたしまして、交付金の算定に用いる基本的な事項は、逐次法律に定められることとなり、交付金制度はますます客観的な基礎の上に立ち、その円滑な運営は期して待つべきものがあると信ずるものであります。
改正の第四点は、新たに交付金制度の運用に当り、地方団体はその地方行政について合理的且つ妥当な水準を維持することに努め、少くとも法律又は法律に基く政令により義務付けられた規模と内容とを備えるようにしなければならないこととし、地方団体が法律又は法律に基く政令により義務付けられた規模と内容とを備えることを怠つていると認める場合には、関係行政機関は、これを備えるべき旨の勧告をすることができ、地方団体がこの勧告に従わなかつた場合には、一定の手続により当該地方団体に対し交付すべき交付金の額の全部若しくは一部を減額し、又はすでに交付した交付金の全部若しくは一部を返還させる方途を講じ得ることとした点であります。申すまでもなく、地方団体は、国とそれぞれ行政の分野を分ち、ひとしく、国民の公共需要の充足を職分とするものでありまして、地方住民の福祉の増進を旨とする地方団体がその担当する行政について、合理的且つ妥当な水準を維持することに努むべきは、当然の責務であり、殊に国が全般の立場から、地方団体に委ねる行政のうち、義務教育の確保、国民生活の安定等のために、法律又は政令に基いて、一定の規模と内容とを備えることを要請するものにつきましては、地方団体として、これが負託に適実に応えて行くことが肝要であることは言うを待たないところであります。従来、国は、各種の行政につき国庫負担金を支出し、この負担金を通じて地方団体の行政を実質的に支配し、その行政の推進確保を図つておつたのでありますが、このことはややもすれば地方行政に対して不当の干渉を加える結果となり、地方団体の自主的発展を阻害する虞なしとしなかつたのであります。この欠陥に鑑み、政府は昭和二十五年の地方税財政制度の改革に際し、国庫負担金の大幅な整理を行い、別に地方税制の改革と地方財政平衡交付金制度の創設とにより地方団体に自主的な財源の増強を図ると共に、交付金制度の持つ財政均衡化の機能を通じて、すべての地方団体に対し、それぞれ合理的且つ、妥当な水準において地方行政を行うための財源を保障することとしたのであります。かくて大いに地方団体の財政の均衡化と独立性の強化が期せられることとなつたのでありますが、これと共に、国民全体の立場からその的確な遂行の要請される事務については、これと地方団体の自主性との間に適切な調和を図りながら、その遂行を確保するための適当な方途を考慮する必要があるのであります。即ち、国は全国民の立場から緊要と認める行政については、法律又は法律に基く政令により、その行政に備えるべき規模と内容とを示すごととし、このようにして示された行政に限り、地方団体が特別の理由なくして、これが義務を怠つた場合には、国は交付金の減額又は返還の措置を講じ得ることとし、以て、地方団体の自主性と、主要な委任国政事務の遂行確保との間に調整を図ることといたしたのであります。
これら主要な改正のほか、交付金の交付時期の改正、都道府県知事が市町村の基準財政収入額を算定する場合における国税に関する書類の閲覧等に関する規定の整備その他、この制度運営の経験に徴し、必要と認められる若干の改正を行うことといたしたのであります。
以上が、本法律案の提案理由及び改正の内容の概要であります。何とど慎重御審議の上速かに可決せられんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314720X02019520328/2
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003・西郷吉之助
○委員長(西郷吉之助君) なお以上四件について提案理由の説明は終りましたが、この四法案に対する事務当局の説明は次会に譲りまして、本日はこの程度で散会いたしたいと思います。
なお次回は来週の火曜日午前十時から開会いたします。
午前十一時五十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314720X02019520328/3
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