1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月九日(月曜日)
午後一時四十四分開会
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出席者は左の通り。
委員長 竹中 七郎君
理事
小林 英三君
松本 昇君
結城 安次君
栗山 良夫君
委員
重宗 雄三君
中川 以良君
山本 米治君
加藤 正人君
清澤 俊英君
小松 正雄君
島 清君
境野 清雄君
西田 隆男君
石川 清一君
政府委員
通商産業政務次
官 本間 俊一君
事務局側
常任委員会専門
員 林 誠一君
常任委員会専門
員 山本友太郎君
常任委員会専門
員 小田橋貞寿君
参考人
日本貿易会専務
理事 猪谷 善一君
第一通商株式会
社社長 岡本 忠君
高島屋飯田株式
会社社長 太田 静男君
鋼材倶楽部理事
長 稻山 嘉寛君
日本針布労働組
合連合会会長 武田 勝彌君
日本綿糸布輸出
協会常務理事 小杉 真君
横浜生糸輸出協
会会長 西本勇次郎君
中日貿易促進会
常任理事 鈴木 一雄君
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本日の会議に付した事件
○連合委員会開会の件
○輸出取引法案(内閣提出、衆議院送
付)
○通商及び産業一般に関する調査の件
(貿易政策の基本方針並びに当面の
諸問題に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/0
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001・松本昇
○理事(松本昇君) 只今より委員会を開きます。日程に入る前にお諮り申上げたいのでありますが、本委員会に予備付託になつております特定中小企業の安定に関する臨時措置法案に関し、経済安定委員長から連合審査をして欲しいという申出があります。連合審査をすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/1
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002・松本昇
○理事(松本昇君) それではさよう取計らいます。本案の議事日程については委員長に御一任願います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/2
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003・松本昇
○理事(松本昇君) 本日の日程はかねて御通知申上げました通り通商及び産業一般に関する調査の一環として、我が国貿易に関する基本政策について参考人の皆様から御意見を承わる予定になつております。参考人の皆様には時局柄御多忙のところ誠に有難うございます。実は先日通産省当局からこの問題について委員会としてその方針を聴取したのでありますが、現在は貿易政策として非常に困難な局面に際会しておりますためか、明確な御答弁に接し得たとは申しがたい状態でありますので、実情調査をかねて実際界のかたがたの意見をも伺いたいというので本日の委員会となつた次第でございます。それで御忌憚のない御意見を御開陳願いたいのであります。
御意見を伺う前に議事の進行に関し、委員各位にお諮りいたしまするが、本日はいろいろの都合で参考人のかたの数が多くなりました。大別いたしますと、貿易一般に関連するかたが四人、それと輸出品の大宗とも申すべき綿糸布、機械、これは繊維機械の中で針布でありますが、とにかく機械、それに鋼材と生糸で四部門のかたがお見えになつております。従つて各位の御意見を十分ぐらいに伺うことといたしたいので、甚だ失礼でございますが参考人のかたからは大体十分ぐらいのつもりで御意見を伺つて、そのあとで一括して質問する時間を多く残したいと思うのでございまするが、如何でございましようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/3
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004・松本昇
○理事(松本昇君) それではさよういたします。参考人のかたには誠に恐縮に存じまするが、十分くらいで要点をお話を願いたいのであります。本日の議題は前に申上げましたように貿易政策の基本的な方針を検討するということでありまするが、御案内にも申上げましておきましたように、先日の委員会では只今当委員会に付託されております輸出取引法案それから対アジア貿易、特に対中共貿易、それから三角貿易なども問題になつております。そういう問題について御意見が伺えれば仕合せであります。
それでは最初に貿易界の動向に通じておられるところの猪谷さんから一つ御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/4
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005・猪谷善一
○参考人(猪谷善一君) 只今御紹介頂きました猪谷であります。お許しを得まして貿易政策の基本方針について十分ほど申上げたいと思うのであります。貿易政策をリジツトに考えるということは、これは現在の世界経済の情勢において我々は取らぬところであります。貿易政策はエクスポート・インポート・トウー・エンド政策でありますから、つまり相手方があるのでありますから、柔軟性のある通商政策、貿易政策をお取り願いたいと、かように考えるのでありまして、その意味において現在問題になつておりまする中共貿易につきましても、政府はよろしく柔軟性のある方針をお取り願いたいと思うのであります。又その意味において、我々が関税引上げ等のアメリカをはじめとするところの国々の運動に対しましては、こういう問題と引掛けて外交的の措置を講じ、以て通商によき影響をもたらすということが必要かと思うのであります。
第二の点はこの通商政策におきましては、このタイミングが非常に重要でありまして、我々の知つておりまする限りは、最近の日本の通商政策が官僚のセクシヨナリズムによりまして、非常に政策の決定に時間を空費し、よつて日本の貿易者のみならず、消費者にも甚大なる悪影響を与えているということを私は甚だ遺憾に思うのでありまして、ここに例を挙げるまでもなく、ララ・ユーザンス設定の問題につきまして、大蔵省或いは通産省為替管理委員会等が四つに組んで、そのために三カ月間の重要なる期間を空費しましために、日本の貿易商社が一番高いととろで物を買わされまして、それがこの貿易商社の大きな負担となつたのみならず、日本の消費者にも非常に高き犠牲を払わしたということを私は痛感するのであります。
第三の問題は、貿易政策がかように柔軟性を要し、又タイミングを必要とするために、その裏付けとなりまするところの経済情報と申しまするか、貿易情報が、絶えず迅速的確でなければならんのでありまするが、現在の在外事務所より来まするところの情報並びにこれよりどんどんできましたところの大公使館等におきまするところの果して経済情報が的確迅速であるかどうか、我々は非常に心配に堪えないのであります。勿論戦前の日本でありまするならば、外務省等のお力を借りませんでも、貿易商社なり為替銀行が有為な人材を世界各地に派遣しまして、お役所以上に迅速正確なる情報を得ましてこれを我々が、日本の貿易政策なり、その又実施のためのトレーダーと申しまするか、貿易商社が当り得るのでありますが、それが今日逆にむしろ貿易商社の海外の人員の派遣が減少しつつあるような傾向すら見られるのでありまして、これは全く遺憾千万と言わねばならんのであります。試みに我我としましては、最近の世界の情勢を見まするに、ドイツのごときは最も早き貿易政策上の手を打つております。例えば三月にはアウスフユール・クレジツト・バンクが設立されまして、これは大銀行のコンリチアムでありますが、三億マルクの金を動員して南米等D/P、D/A等の後払い条件を必要とする国々に対する貿易融資の金融機関として設立しておるのであります。更に又この四月一日より輸入請求制度が実施されましてドル地域に対して輸出されるもの或いは進駐軍に対するドルのサービス、或いは物資の提供等に対しまする一切を込めてのドル獲得に対する四〇%のリンク制を実施しております、勿論約五十種の基本的な原材料に限りまして、これらの輸入請求権が成立するのでありまするが、日本では僅かばかりの外貨優先制度を行なつておるにもかかわらず、ドイツは戦時中より四〇%のリンク制を実施しておるということを我々は最近知つたのであります。かようなわけで、これらの点も我々の最近まで知らなかつたところであります。又現在我々が世界市場の対象として輸出取引法の実施を非常に熱望しておるのでありますが、これに対しましてもイギリスがいわゆるエクスポート・グループという非常に非公式的な而も最もプラクテイカルな方法をとつて或いは交易条件の改正にも資し、或いはイギリスが外国為替の獲得に最も有効適切なる手を打つておつたということを忘れてはならんのであります。以上私は先に結論を申しましたが、通商政策はそもそも非常に変化しやすいものであります。又変化するものでありまして試みに昨年一年間の世界の通商政策を眺めまするならば、非常に一年間に有為転変があるのでありまして朝鮮動乱が勿論大きな原因であります。戰時経済体制への突入という問題があつたのでありますが、これらの先ず原因が先になりまして、昨年の一年間に先ず最初の第一期におきましては、原料生産国におきましては、非常に原料価格が下落して外貨手取が減るものですから、外貨の獲得を豊富に持つて、これらの国々は交易条件を改善して参つたのであります。又は工業国、特に西ヨーロツパの工業国がドル地域に対して製品の輸出を行い、ドルを得たのでありますが、原料がだんだん高くなつたもので輸入価格が騰貴したために、交易条件が次第に悪化して参りました。第二次の段階におきましてはいわゆる備荒貯蓄運動というものが世界的に展開しまして、原料生産国が輸入許可制を緩和する。又逆に原料生産国が原料の輸出税を賦課するというような方法をとつたのであります。これに対応して工業国におきましては、マシン・ツールの輸出につきましては輸出管理を次第に強化するということをやつたのであります。第二期に入りまして、特に下半期に入りましてからは御承知のごとく反動が参ります。世界的な備荒貯蓄の精神にもかかわらず期待されたほどマテイリアルの価格が騰らぬという反動が参りまして、原料生産国は輸出価格の暴落、そういうために国際收支が悪化しまして、逆に輸入制限制度を新らしく引出して、各国におきまして輸入制限の措置が殖えて参る。又工業国におきましても、再軍備との睨み合せによりましてインフレが進行しまして、そのために国際收支が思わしくなく、今度は輸入制限を大いにとる或いは関税引上げを盛んにやり出す。僅か一年でありまするが、私甚だ僣越でありますが、一年間の世界政策、昨年の貿易政策を概観したのでありますが、こういう三つの大きな変化があつたのであります。併しこの大きな三つの変化というものは比較的ドイツにしろイタリアにしろ犠牲が非常に少い。高いところで物を買わされて、うんと安いところで物を売るというようなへまを演じなかつたということを断言するのであります。日本の業者は果してドイツ、イタリアに比して不賢明であるかどうかを私は非常に疑うのでありまして、むしろ私は貿易管理自体の政府のセクシヨナリズムが業者をしてタイミングを失わしめた、これが大きな責任でありまして、この故にこそ我々は柔軟性のあり、タイミングを失しない、経済事情に明るい、その背景に立つた通商政策の確立を衷心よりお願い申上げて置きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/5
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006・松本昇
○理事(松本昇君) どうも有難うございました。それでは次に第一通商株式会社社長の岡本忠君にお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/6
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007・岡本忠
○参考人(岡本忠君) 御紹介にあずかりました岡本であります。私は東南アジア方面の貿易につきまして簡單に申上げまして、あとお尋ねがございましたならば御質問に応じたいと思います。最初に中共との貿易でありますが、本日は中日貿易促進会の鈴木さんがお見えになると聞いておりますので、具体的な最近の発展その他の数字的な問題につきましては、同氏から詳しくお話があると思います。一般的なことで一言申上げたいと思います。
第一はこの問題を最近余り政治的に取上げ過ぎる傾きがありますが、これはすこぶる面白くないと思うのであります。若し相手が貿易の手を差延べることによつて政治的な効果を狙つているとでもしましたならば、相手の罠にわざわざ嵌り込んで行く結果になるのであります。だから中共貿易を余り政治的に取上げたり、或いはイデオロギーの論争の具としたりしないほうがよいのではないかと考えます。忌憚なく申しますならば、本問題は選挙スローガン的に取扱わないほうがいいのではないかと考えておるのであります。
次に中共貿易のやりかたでありますが、中共貿易が我が国にとつて重大であるということはもう私からかれこれ申すまでもないのでございますが、そのいろいろ論議の的になつております中共貿易のやりかたでありますが、どうも中共の国内事情はよくわかりませんが、例の五反運動の結果私企業が圧迫されまして、国家貿易的な取扱になつて来たように思われます。そこでこちらのほうでも個々の商社が先方の真意もわからずに大変な危険を冒してやるよりも、なんらかの機関で纏めて交渉に当る、即ち向うも窓口が一本政府機関でやつておるのでありますから、日本側もばらばらにやらないでどこかで纏めて窓口を一本でやるという行きかたがいいのではないかと私は考えております。政治的色彩のないところで政府の方針ともよく連絡してやつて行く、そうして個々にいろいろな線でやつて行きまして、結局において無駄骨を折るというような、又は最悪の場合は先方の政治的宣伝の具に使われる結果となつたり、或いは米国あたりの誤解を徒らに惹き起す結果になるということは頗るまずいことだと考えるのであります。
なお序でながら申添えますが、中共貿易はたとえ一定の制限内にあつても双方欲しいものを与え合うことは当然結構なことでありますが、現状では日本の製鉄その他の基本産業において中共物資を基本計画の前提要件に加えることは危険だと思われます。当分は輸入できただけは余分のものと考えておいたほうが無難だと考えます。中共貿易は簡単にそれくらいで御質問に又応じるといたしまして、
次には東南アジヤ貿易でありますが、或いは東南アジア開発と言われる問題でありますが、日本の市場といたしまして当然近いアジアに重点をおくことが極めて大切であることは申すまでもありませんが、東南アジア貿易については英国と或る程度の利害相反することが宿金的でございます。従つて英国とよく折衝しまして、卑俗な言葉で申しますが、繩張り協定をする必要があると考えます。従いまして場合によつては米国にも立会を頼んで互いにフリクシヨンを惹き起さないようにいたしまして、話合をして行くことに政府は努力さるべきだと考えます。そういたしまして、東南アジア新興独立諸国と取引をやつて行くやりかたでありますが、この場合従来のような単に双方の收支勘定尻を合わせてやりとりする物資名を並べて、何をどれだけと表を作るような平面的な貿易協定でなく、もつと深みのある先方の民族産業とマツチする生産協定にまで突つ込んで行かなければならんと思うのであります。そういう深みのある協定を、各国と互譲の精神と言いますか、日本も謙虚な気持で、あなたの国を立てて行くにはどうしたらよいかというような工合で貿易協定を作つて、或る程度長期の見通しを持つたやり方で行きますならば、世界の資源地帯と言われる東南アジアにおきまして、国民生活水準引上げが可能であろうと信ずるのであります。東南アジア開発という問題が非常に大きく論じられておりまするが、御承知のように戰後東南アジア方面の民族意識というものは非常に盛んになつておりまして、余り自分の国へ来て勝手なことをするというような持ちかけかた、或いはそういう響きが非常にその国々の民族意識を刺激いたしております。これは私昨年十一月シンガポールでECAFEの会議がございましたとき参りまして、そこへ来ておる各地の代表と会いましてその感を非常に深くしたのでありますが、例えばインドネシア、これが頻りとオランダ勢力の追い出しに努めておるのであります。ここへ又変つたアメリカの勢力が来て同じような、オランダの植民政策と同じようなものを繰返すのではないかというような懸念も非常に持つております。日本に対する感じは、或いはその限りではいいと私は見たのでありますが、併しながら日本といえどもお前の国を開発してやるんだというような持ちかけかた、或いはそういう感じを向うに与えるような開発であるならば、必ずや向うで嫌がるのであります。これはどうしても向うの産業を一緒になつてあれして、その国の民度を上げるのに一役買うという持ちかけかたでないと、徒らに東南アジア開発、開発という掛声ではうまく行かないのではないか、その国の開発をお手伝いする、同時にそのお手伝いは日本のためになるという気持、又そういう方針でやらなければいかんのではないかと考えるのであります。この点は特に官民共に非常に大事な点で相手のあることでありまするから、日本が幾ら開発をしようと申しましても、向うが嫌と言えばいたし方がないのでありまして、向うの意に副うような開発計画というものをやつて行かなければならんと考えるのであります。そういうようなことですこぶる何と言いますか、具体的な話に入れませんが、そういうような方向で東南アジア方面の開発並びに開発に伴う東南アジア方面の我が国との貿易というものを進めて行かなければいかんのではないかと考える次第でございます。すこぶる簡単でございますが、又後ほど御質問にお答えいたします。
〔理事松本昇君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/7
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008・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 次に高島屋飯田株式会社社長太田静男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/8
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009・太田静男
○参考人(太田静男君) 太田でございます。私はこの与えられました主題のうちの第二番に当ります輸出取引法案についてというのと、ついでに三番の生糸の三角貿易につきまして申上げたいと思います。輸出取引法案につきまして最初に申上げますが、輸出取引を規制する法律が立法化されまするようにということは、我々公正な取引を祈願いたしておりまする者は前々から非常に望んでおつたところでございまして、今回立法府としてこの問題をお坂上げになつたということは誠に喜ばしい点であるのであります。つきましてはこの法案を拝見いたしまして私の感じておりまするところを二、二申上げたいと思います。
第一に、組合又は輸出業者間の協定の制限であるとか、組合員の遵守すべき基準であるとか、その他この法案によりまするというと、非常に低いとか非常な損害とかというような甚だ物差でありながらその物差がはつきりしていない、そういうような或る基準の要るような要らんようなこれらの措置につきましては、輸出業者の自主的規制を重んじて、或いは認可、許可を必要とする事項も又この趣旨にの精神を以てお取扱いが願いたいことであるということでございます。
それから第二に、この不公正取引というものは事後でなければ発見せられないわけでございますから、将来組合組成の場合には、輸出業者を何らかの方法を似て全部強制加入をするということにしなければ、折角のいろいろな制裁を作りましたところで、それがうまく運用できないということになるだろうと考えます。従つてどうしても強制加入ということが必要であると存じます。
それから第三番に、組合の組成はできるだけ大割に分けて、余り数無限大のものにしないようにお願いしたいと思うのです。これは業者のうちでも、御承知のごとくよろず屋式の商社がたくさんございますので、若し余りに小割りにされますというと輸出組合に入らなければならん数が非常に多くなりまして、却つて混雑を招く、或いは費用もかかる、こういうことになつて、結局かく煩雑になるためにいろいろな錯誤も生ずるというような虞れがあるからでございます。
それから第四に輸出審議会の委員でございますが、これは過去委員会というものがいろいろできましたところをもつて推測してはいけないかも知れませんが、大体看板倒れになり易い、これは貿易というような或いは輸出というような仕事につきましては余ほど慎しまなければならんことじやないか、どうか若しこういう審議会ができますならば、事情に通じて且つ公正である者を委員として構成されたい、こんなふうに考えますのでございます。まだほかにもございますが、時間がございませんから申上げることを略しますが、この輸出組合或いは輸出貿易をどうしたら一番いいかということにつきましての私が持つておりまする構想、これは一朝一夕に実現できないだろうと思いますけれども、こんなことを考えておりますから、御参考までに申上げたいと思うのです。輸出組合を作りまして、そうして最後に輸出組合連合会を設ける。そうしてその業務は何をやらせるかと申しますと、第一番にすべての輸出品の品質を厳重に検査させる。それから第二番に、その結果検査証の発行をさせる、第三番に世界の各主要地に事務所を設けまして本邦産品の市場開拓並びにその調査宣伝を行う。その次に政府の委員を受けてもと商務官のやつておつたような仕事の代行をする。それから日本の商社と海外の輸出先との係争事件の処理の代理をする。それから内地の各市場では海外に関する講演を常にして歩く。それから又輸出業者に対して輸出に関する相談相手をする。これらのことをいたして行く。それからその次に、これには非常に費用がかかりますから、この輸出品検査という検査料を相当高率のものとして徴收するということ。で、この検査証明のない商品の輸出は禁止されたいこと。なお組合員は一定の資格を具備する者でなければ組合員になることができないということの規定をする。又次に組合員には検査料の割引をしてよいということも規定して行きたい。こういうことなどでございます。でこれを実行に移しました場合には、今度の法案によつて企図されておりまする公正な取引或いは又業者間の協定に従つてほかの外国市場のいろいろな障碍を打破して行くということ並びに全部の輸出業者をいやでも応でもこの中に入れ得るというような構想が、全部がこれでカバーできるように私は考えます。大体そんなふうに組合については考えておるのでございます。
それからその次の問題の生糸の三角貿易でございますが、これは今日この席へ参りまして横浜の生糸輸出協会の会長が御出席になるということをこの表で拝見いたしましたのですから、ここで私の意見を申述べていいか悪いかわかりませんが、ともかく極めて簡単ですから、私の存じていることだけを申上げて置きたいと思います。この問題になつております三角貿易問題のよつて起るところは何であるかと申しますと、日英通商協定で我々の縛られておる米英公定クロス・レートを遵守しなければならんという点で、御承知の通り公定と実勢レートの間には約一割五分の差があるのでございますから、中間の或る国人がこの差の大部分を收得しようとして行われることがございますのですか、この日英通商協定が今月ですか、来月ですか、更に改訂を見まして、そうして将来は実勢クロス・レートでやつてよろしいというようなことにならない以上は、この問題はちよつと打つ手がないと心得ております。極めて小さいものではありますが、若しほかに支障が起らなければ香港というようなところを仕向地とする生糸の輸出はこれを輸出許可しないということくらいよりほかに手はございませんが、これは数量も余り大したことでもなし、そんなことで一般を一刺激するにも当らないんじやないかと思うことくらいでございます。でこの英米クロスの公定と実勢との差というものは単に生糸の三角貿易というもののみを醸成しているのでなくて、日本の輸出入ともに相当に大きな支障をもたらしておるのでございますから、甚だ困難な問題ではございますが、次の日英通商協定には是非実勢レートを使つてよろしいというような帰結になり得るようなふうに祈願して止まないのでございます。
簡単ではありますが、これで。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/9
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010・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 次に鋼材倶楽部理事長稻山君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/10
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011・稻山嘉寛
○参考人(稻山嘉寛君) 私鋼材倶楽部の理事長をやつております八幡製鉄の稻山と申します。簡単に問題の要点だけお話させて頂きます。
私どもが希望しております一番痛切な問題は貿易政策の基本方針につきましてはポンドの枠の制限を是非撤廃して頂きたいということでございます。このポンド問題は非常にむずかしい問題でありまして、決して我々業界がただ希望するだけで解決する問題ととは思わないでございますが、併し私どもから考えますというと、日本が終戦から今日まで非常に早いテンポで復興いたしましたのは、結局輸出超過、要するに輸出でされてどんどん外国へ軍拡その他の関係で出て行くからだと考えております。そして今後も又恐らくは日本の生活レベルを上げ、復興をさせて行くのには輸出を盛んにして行く以外に手はないのじやないかとかように考えまして、もつと長い目で見て頂きたい、ただ目先ポンドが余つているからというようなことで輸出を阻害するようなことがあつては我々としては取返しがつかないのじやないかというように考えておるわけであります。若し仮に粋が撤廃できないといたしましても、現在やつておる商品別に枠を決定するということはおかしいのじやないか、例えばポンドがこれくらい以上は困るということであるとしても、商品別になりますと、どうしてもその許された枠以内ということになりますので、そのために結局輸出してもよいものが輸出できなくなる、日本全体としてはなつてしまうというように考えられますので、少くとも商品別の制限は撤廃して頂きたいというように考えております。
それから第二の問題はこれはなかなかむずかしい問題だと思いまするが、輸出品が今非常に安くなつております。日本の鉄は元来米国から石炭、鉱石を買つております関係上・現在はアブノルマルな状態になつておりますので、非常に高い原価についております。而もその高い原価で売れて行くのが今日の実情であります。併し最近におきましてちよつと世界経済が一服した関係上、確かに世界の鉄の値は下つておるわけでありますが、それにしてもなお日本の鉄は下り過ぎて外国へ輸出されておるのであります。例えばベルギーが今随分安くなつておりますが、それでも海外へ出しております値段は棒鋼にしまして百二十五ドルぐらいで売れているはずであると思います。これは勿論ドルじやございませんで、ポンド地域に対して百二十五ドルぐらいに売れているはずであります。ところが私どもの現在盛んに競争している値段はもう今日では百ドルを割つて輸出されておるわけであります。これは何に原因するかと申しますと、結局金融問題にあるわけでありまして目先困つておるかたがもうどうにもしようがないので濫売しておるわけであります。それに引きずられて日本人同志が競争しているためにベルギーとしても日本人を非常に恨んでおるというのが現状でございます。こういう無用な競争が何故起きているかということは一つにはお互いに生産協定をして行くことができない、法律上できないという事情と、それからこの金融難になつておるわけであります。この点につきましてこれに関連する輸出組合ができるということはこれの解決の一助には確かになると思うのでありますが、幾ら組合を作つて価格を維持しようとしましても、金融がつかなければ目先潰れてしまうのを我慢するわけに行きませんから、必ず違反が起きるというようなことになりますので、金融問題を解決しなければこの問題は解決しないのじやないかと我々は考えております。それもそう多額な金ではないのでありまして、一時的に困つておる商社のものを買取ればそれでいいわけなんでありまして、そういうことが許されたらどんなにいいだろうと考えております。それからこの金融問題を解決する一つの方法といたしまして原料を米国から買つておるわけであります。これらのユーザンスを認めて頂きたい、これは幸いにいろいろ御協議を申上げました結果、只今では六カ月のユーザンスを頂いております。併しなかなか六カ月と申しましても直ぐ来てしまうので、丁度この暮あたりに六カ月のユーザンスが切れる形になるので、暮の資金繰りその他を考えますと、非常に困難な問題でありますので、できれば少くとも九カ月又できれば一年と考えておりますが、九カ月ぐらいのドル・ユーザンスを認めて頂ければ金融緩和の一助になるのではないかと、かように考えるわけでございます。それから輸出組合法案につきましてこれは確かに竿頭一歩を進めたものでございまして、無用に競争することを防止しておるわけでございますが、鉄だけの面から申上げますと、この輸出組合法は私は大した意味がないのじやないかというように考えておるわけであります、というのは任意加入ということになつておりますので誰でもが入れるわけでございます。輸出業というものがどういう定義になりますか知りませんが、輸出業者というのはただ勝手に輸出すれば自分がするということで何か資本金を作ればよい、それで輸出業者になりますから数限りなくできるわけでございます。そういう人たちが何を相談するか、二百軒も三百軒も集つて相談したつてまとまりつこないだろうと思うのであります。第一これの取締りでありますが、恐らくこれだけの数の人たちが集つた場合に、それを取締つて行くということは不可能じやないかというように考えておるわけであります。そこで我々といたしましては本当に輸出組合を有効に使うということであるなら、有力なものが、お互いに信頼感のあるものだけが集つて、組合かこしらえられるということであれば非常に幸いだと思うわけでありますが、これは憲法その他の条項に違反するということで、なかなかむずかしい問題だと思いまするが、実際の効果はそうしなければ得られないのじやないかというように考えております。それからなおこの輸出業者という定義の中にメーカーも入るか入らないかという問題がありますが、鉄の事情はちよつとほかの品物と違いまして、鉄は我々自体が外国の商社と話を進めまして、ただ金融、為替その他の事務の代行を問屋さんにさせておるわけであります。従いまして価格をきめますのも何をしますのもみんなメーカーがやつておるわけであります。それなのにかかわらず輸出業者から除外されますというと、その輸出業者というのはメーカーと何ら関連を持つておらないかたがたが勝手に集まるわけでありますから、そういうかたがたがきめたことを我々が実行するといつても恐らく実行しない人たちが多いのじやないかというように考えられるので、メーカーを入れたらどうだろうか、そういう解釈ができないかどうかということを通産省にお願いしておりますが、この点まだあいまいなことになつております。殊に問屋だけで輸出業者だけで仮に組合を作りますというと、はた売ということをやるわけであります。つまり先へ外国へ売つておくわけであります。そして我々業者へ、メーカーへ向つて幾らでなければ買つてやらないということで我々メーカーを競り合わせるようなことも可能なわけであります。私ども鉄に関係しておりますものか厳に戒めておりますことははた売をさせないような制度にすることを今日まで努力して来たわけでございます。そういう点につきましてやはりメーカーをこの中へ入れて頂くということが一番いいのじやないか。併し入れて頂いても任意加入で何百軒の問屋と一緒にやるということは私は不合理だと思う、そうすれば我々は輸出組合を作りませんで、輸出業者の協定ということを利用して行つたら或いは行けるのじやないかと考えているわけであります。
それから中共貿易につきまして最近非常に問題になつておりますのですが、これに対して我々メーカーといたしましていろいろ皆とも協議したのでありますが、第一通商の岡本さんのお話がありましたように、我々はできるだけ、つまり米国の国際感情を害さないようにやつて行くべきだ。これを政治に使うべきじやない。若し誤解を受けたならば日本としては非常に不幸じやないか。併し慾をかけばそれは中共貿易もでき、而も米国の援助も得られるというのならば、これはそれに越したことはないのだ。併しそれはよくやり方を誤解を受けないようにやりたいということを考えております。簡単でございますが以上でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/11
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012・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 次に針布労働組合の武田さんにお願いいたします。針布のみならず労働者側から得られた貿易政策についての御意見も承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/12
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013・武田勝彌
○参考人(武田勝彌君) 日本針布労働組合の会長の武田であります。本日は全国針布労働組合協議会の代表として発言させて頂きます。
中共貿易促進に対する理由の説明を申上げておきます。全国針布労協といたしまして、中共貿易の促進の問題を取上げましたのはイデオロギー的な色彩を含んだものとしてでなくて、日本におけるところの針布の産業が現在倒壊の危機に直面いたしております。これが必然的にそこに働く人たちの、労働者の生活が脅やかされて、現在すでに賃金の切下げ、人員の整理、中には工場閉鎖の一歩手前に来ているのであります。このように日一日と窮迫の度合いが現在加わりつつあるのでありまして、我々は針布産業の維持と、これは結局平和産業の維持ということにもなります。労働者の生活の擁護という立場に立つてこの危機打開策の一端といたしまして中共貿易の促進を取上げているのであります。この件に関しましては勿論経営者側とも連繋をとつて問題の促進にあたりたいと考えております。
日本におきますところの針布の事業につきましては、日本の基幹産業であるところの紡績において、針布は、これは消耗品でありまして機械器具です。消耗の機械器具でありまして、約二十年前の昭和七、八年頃までの紡績は針布の全部を外国品に依存しておりました。当時の需要量といたしましては年間イギリスより約四千二百セツトドイツ、スイスより八百セツト、計五千セツトでありますが輸入されてまておりました。これの針布の国産化け昭和六年に企画いたしましてイギリス並びにドイツより技術員を招聘して、一つの非常に精密な特殊技術を修得して来ております。針布は材質的にも又技術的にも非常に熟練を要しますので、幾多苦心と研究の結果、今日では日本の紡績のみならず先進国であるところのイギリス、スイス、ドイツ、そういつたところの製品と競争しても輸出をでき得る能力を備えるに至つております。戦後紡績の新設と復元に伴いまして、針布の需給は非常に増大して来たのであります。そういつた関係から紡績は勿論関係官庁よりの強い要請もありまして、これを補うために非常に長い間の長時間作業をやつてこれを補なつて来たのでありますが、到底これでも紡績の要望を満たすことができないというようなことで、この針布の植針機、これは針布を植える機械でありますが、これの増設を各社において行なつたのであります。戦前におきましては日本の紡績の千二百万錘に対しまして植針機が千二百台であります。現在これが紡績として大体六百七十万錘と言われておりますが、これに対しまして植針機が千八百台となつております。これに加えまして現在の紡績の操短と国際的影響が非常に大きく左右いたしまして、前にも申しましたように針布の産業を現在脅やかしております。針布は日本の工業部面から見ますればその規模においては小さなものでありますけれども、日本の紡績にとりましては、その影響と存在は大きく評価されていいのではないかと思つております。このような針布の特殊性、こういつたようなものからしてその施設、又その技術も全然他への転換ができないのであります。ですからそこに働く労働者は非常に熟練を要しますので勤続年数も長く、十年から十七、八年のものが大体その工場の中堅として働いております。全国針布労協といたしまして、この窮迫せる現状の打開に中共貿易の促進と、こういつたものを目標として実現を期して、そこに働く人たちの生活を擁護する、こういつたような問題で取り上げて来ております。それと現在中共における針布の需給面におきましては、戦前曾ては中国の紡績は在華紡の三百五十万錘と華人紡の百五十万錘の計五百万錘で、これが殆んど日本の針布によつて賄われておつたのでありますけれども、現在中共においては四百五十万錘の施設を有し、これに百五十万錘の増設を計画されているというようなことを聞いております。これに対する針布の要請は、当面相当量が来ておると聞いておるのでありますが、これはいろいろな事情で実現しておりません。それと、このほかに針布の輸出はパキスタン、インド、こういう方面にも行つておつたのでありますけれども、これはいろいろな政治的の政策、こういつたようなものによつて針布の現在は独占的な形になつて来て、こちらのほうへの輸出はちよつと望みがない現状であります。この点中共への輸出は以前の実績から、又現在の施設の上からも最も手近な市場として、非常に有利な条件を備えているというようなことが申上げられると思うのであります。以上の理由によりまして日本の平和産業の発展と、又我々針布関係労働者の生活を護る、こういつたような観点に立ちつまして適切な処置を切望して止みません。参考に一応数字的なものを申上げますと、針布の年間の生産量並びに需給量の大略の数字は、綿紡の場合は紡績一万錘に対して針布四十セツトを必要といたします。針布は大体消耗品でありますから、五カ年前後の使用ができる、こういうふうに言われておりまして再生産されますけれども、定時間作業によつて針布を生産いたしますれば年間一万セツト、これを時間外を加えますると一万五千セツトの現在能力を有しております。二十六年度における日本の紡績業者の要望量といたしましては一万五千セツト希望しておりますけれども、これは実際の需要量は一万セツト内外ではないかと思われます。針布の現在の生産量は約五割前後の操短をやつております。現在は五千セツト近くであります。現在の針布の施設台数というものは先ほど申上げました通り千八百台であります。割合は綿紡用五に対して紡毛用が二であります。それと中共関係の現在の引合でありますけれども、現在七百セツトから千セツトの引合が来ております。こういつたようなことから現在の針布の需給量、中共における需給量、これは既設を三百五十万錘といたしまして新設の百五十万錘、これに対して針布の需要量といたしましては補充用として大体三千六百セツト、それと新設用として六千セツトが必要とされます。そうしますと計九千六百セツトでありますけれども、そのうちの二分の一の四千八百セツトを日本から補うといたしましても、これは現在の針布におきましては定時間作業においても十分に可能な数字であります。以上簡単でありますが参考として申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/13
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014・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) ありがとうございました。次は日本綿糸布輸出協会常務理事小杉君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/14
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015・小杉真
○参考人(小杉真君) 幾つかの主題がございますが 先ず第一に輸出取引法案についての我々の業界の意見を申上げます。我々の業界は昨年末、秋の終り頃からこの法案の趣旨と全く同一の趣旨によつて輸出業法とでも申しますべきか、さような法律を立法化せられるよう政府当局に対して強く強く要望をして参つておりましたものでございますので、そういう趣旨からいたしまして、この法案に全面的に賛成でございまして、一刻も早くこれが成立いたしまして実施に移されんことを希望しておる次第でございます。ところがこの法律案が出ますにつきまして、主として貿易業界その他を中心としていろいろな批評、論義或いは要望がこの法案をめぐつて行われておるわけでございますが、中で我々としても関係の深い問題は、この取引法によつてできます輸出組合がアウトサイダーに対して拘束力を持たないという点が一つ。それからいわゆる輸出業者の解釈を如何ように解釈するかということの問題、この二つが我々としても関係のある問題であると存じますが、併しこれにつきましての詳細な議論は別といたしまして、私どもといたしましては、この法案は現在日本がとつておる経済の民主化政策と申しますか、それのいわゆるバツク・ボーンとしてとられておる二つの政策がある。第一がいわゆる反トラスト法の採用、第二がいわゆる統制団体の除去政策というこの政策、この二つがある。この二つのバツク・ボーンを崩さないで行く、そのままで行く場合の法文といたしましては、このアウトサイダーに対して拘束力がないということも又止むを得ないのではないか。即ちこの法案の仕組はすべて国際的な協調、日本に対する、輸出上における日本の競争ということを極度に恐れておる国々、不安警戒を持つておる国々に対して日本の輸出業者のとる態度を明らかにし、又それを公法的な段階においても如何にこれを解決するかという態度を明らかにするという限りにおいてでき上つた法律でありますので、従つてこの程度以上は出ることができないのではないかということを考えるわけでございます。議論をなされるかたは主として戰前の貿易組合法によります輸出組合という一つの先入感を持つて、それと同様の趣旨の組合の復活ということを脳裡に画かれて議論をなすつていらつしやる。併しながら今度取引法によつてできます輸出組合というものはそれと全然質を異にするものであつて、目下この参議院においても審議が進行しております事業者団体法の改正と相待つて、初めてこの法律の狙うところができるわけでありますが、要するにこの事業者団体法によつてできた一般の事業者団体との取引法によつてできる輸出組合と一体どこがどう違うかということになりますれば、僅かにいわゆる五条の原則と申しますか、三つの場合に業者が協定することができる。事業者の協定能力の復活、この復活の場合に組合も又統制することができる。即ち組合の統制能力の復活、これも非常に限られた、限定された範囲での独禁法の形式的な例外法であるというその段階に満足しなければならないということ、これをこの国会の論議と申しますか、或いは審議と申しますか、その際に十分に明らかにして頂きたいと存じます。即ちこの法律そのものは日本の輸出競争に対して極度に不安或いは警戒の念を持つておる諸国に対して日本は不公正な輸出取引をしないということ、それからアメリカ初め反トラスト主義をとります国々が強く主張しておりますいわゆる自由競走を制限するという制限的商慣行をもアンフエア・プラクテイスとするという、そういう法理があつて国際的に拡大しつつある。即ち昨年の九月十三日に国連の経済社会理事会においては、アメリカの提唱によつて、いわゆる制限的商慣行を通商政策の面から排除して行くという決議を国際的になされておる。そういう矢先きに当つて日本が占領下に敷かれておるとはいいながら反トラスト法を破壊するのではないということ、むしろその反トラスト法の法理に則つて必要止むを得ざる場合として三つだけの場合に限つて協定を認めて行こう。それもすべて競争国に対する考慮といいますか、フアイン・コーポレーシヨンの精神からこの協定だけは認めざるを得ないのであるという、そういうやり方で進んでおるのであります。法案そのものは今のいろいろの情勢の関係としては止むを得ないのではないか、従つて輸出業者を如何に解釈するかということ、即ち生産者をこの輸出組合に入れるか入れないかということの問題も盛んではございますけれども、これは法文の解釈ではなくて、つまり法文解釈の問題ではないと私は存じております。即ち輸出業者は何であるかということを法律的に如何ように規定しましても、拡張的に解釈すれば生産者のかたがたも入り得るわけでありますし、又現在の日本の主要な輸出品を取扱つている、或いは生産しておられる生産業者のかたがたはそれぞれ相当の実力をお持ちでございますから、如何ような法律上の規定をいたしましても同時に輸出業者としての資格も御取得になることは容易なんでございますから、それを法律的に解決しようとすることは無駄であつて、むしろこの輸出取引法そのものの法案の趣旨から考えてみて、如何にするのが坐りがよいかということ、即ち外国から見て、日本の有力なメーカーと日本の有力な貿易業者とがタイアツプしたところの垂直的なカルテルを日本が作つたそのことによつて、再び日本はその組織の力を以てマーケツトをキヤプチユアするのではないかという不安、警戒の念を起さしめないということが最も必要なんでありまして、その点についての考慮というものがなされるのが適当なのではないかと思います。勿論今日の貿易商社というものは非常に力が弱いのでございますから、如何ようにこの法案上協定能力を認められようとも生産者の利害というものを超越し、或いはその生産者の利害と反対的な協定を結ぼうとしても、それは実行性のないものでありますからできないことです。できないことはいずれの業界といえどもやらないことであろうと思いますし、又法案の五条或いは十一条の組合の統制規定その他を通産省が認可されるに当つても、認可の基準としては三つの事由を除去するのに十分であるかどうかということを検討される権限といいますか、余地を持つておられるわけですから、それらの運用如何によつて輸出業者だけが如何ようにこういう取極めをきめても、これは実行性がないのではないかという意味で認可をなさらないだろうと思いますので、そういう意味からいつてむしろ国際的な反撥と申しますか、報復的な影響を避けるほうがむしろ賢明なのではないかと考えております。それからこの取引法案についてもう一点ございます点は、この法律の目的は不公正な輸出取引を防止するということが、取引秩序の確立という第二の目的と並んで重要な目的になつておりますが、この不公正取引を防止するために、組合は独禁法或いは事業者団体法を超越して防止業務ができるのであるかどうか。それは極く最近までと申しますか、少くとも司令部がおられた頃まではいわゆる遵法活動と申しますか、公序良俗の維持と申しますか、取引上の弊害を除去する場合と申しますか、そういう独占と無関係な組合活動、或いは業者の共同行為というものも又反トラスト法の違反であるとして許されなかつたのが実際でございます。即ち例えばマツカーサー・ラインを越えて出漁するということを禁止された、従つて漁業組合がその出漁を防止するための事前の防止業務を行おうとしてそれが許されなかつたという事例もございます。
それから我々の繊維の関係について申しますれば、いわゆる英国の登録された意匠、これの盗用、冒用を防ぐために組合が防止のための活動をしようとしたけれども、公正取引委員会のほうで若干の疑義があるというので今日まで差控えておるという事実もありますので、これは是非衆議院のほうでもそれの質疑が行われたということを伺つておりますが、参議院の審議におかれても是非とも公正取引委員会が決定的な解釈を明らかにして頂きたいと存じます。
そこでかようにして取引法案によつて輸出組合が認められ、それから又特定の場合に限られて反トラスト法があるに拘わらず事業者の共同能力が認められるということになりましても、根本は日本の現在の貿易政策ということについて若干の再考慮といいますか、再検討がなされなければなかなか昨今の貿易上の苦悩というものが抜け切れないのではないかということを申上げたいと存じます。即ち貿易政策の基本方針に自然移るわけでございますが、昨今は丁度各国との貿易協定の切換の時期に当つております。パキスタン、インドネシヤ、近くは英国に対する支払協定その他についての切換の時に当つておりますが、日本の政府部内の有力な意見としては英国のポンドの価値について非常に疑惑的であるということが一つと、それから貿易については輸出入をバランスしなければならん、バランス主義を厳正におとりになることと、この二つが牢固としてあるように窺われるわけであります。従つてそのためにポンドの価値を非常に危険視する。それから又輸出入を厳正にバランスを合わせなければならないというバランス主義をとられる。この二つのために少くとも今年の三月初めから日本の各貿易業界とも非常な打撃を受けたということ、これはいろいろな事実をすでに皆さんも御存じだと思いますが、この方針を今後ともなお続けられるならば日本の輸出産業といいますか、輸出を主とする産業は非常な苦境に立つて行くのではないかというふうに考えます。申すまでもなく政治上の争いは世界的に二つに分れてはおりますが、経済上の争いは、争いと申しますか、競争は少くとも三つに分れて行われておる。その競争場裡に日本が入つて行くのに際してあらゆる国と反撥するような政策をとつて行くのでは、これはなかなか成り立ちにくいのであつて、やはり有力な競争国と協調的な態度をとらなければならんということは、この取引法に盛られたような趣旨を実際の取引或いは貿易政策の上に表わして行くというのが非常に大切である。やはり英国としましても通貨価値の維持のために非常な努力を払つておるのでございますので、それを真向から軽蔑し、或いは不信任の形の貿易政策をとるということは、日本の貿易を非常に苦境に陥れるのじやないかというふうに考えます。又日本も独立し、若し日本の通貨についての自信が相当あるならば、日本の円そのものを国際的な貿易上の決済通貨として持ち出すということも時期としては必要なことではないか、もう一つはローカル・カレンシー、これらのうちには健全な通貨がございますから、そういうものはローカル・カレンシーであつても決済通貨として用いることになる。殊にタイ国のように日本に必要な米を持つておる国との貿易についてはバアツというものを決済通貨として採り上げて見る、これは非常に必要なことではないかと存じます。何かさような考え方をしなければ今のようにドル一辺倒といいますか、ドル・バランス一辺倒に起つて貿易政策を動かそうとするならば当然これは行詰りが来るものと考えます。
なお国内的の問題ではございますが、先程も御発言がありましたように自由競争を建前とする自由経済の今日でありながら証券を担保にする、或いは商品を担保にする金融というものが依然として無視されておる。これは論理的に非常におかしなことなんであります。特に繊維の中でも綿糸布は長く統制物資であつた関係で日銀の商品担保金融の対象になつていない。人絹類はもうすでに商品担保金融の対象になつておるにかかわらず綿織物が未だになつていないということは非常に不思議なことでありまして、これは或いはこの席で申上げることではないのかも知れませんけれども、何かやはり流通部門に対する特に貿易の流通部門に対する資本の薄弱といいますか、これを補うために国内の財政方針、金融貿易政策に若干の改訂がなされなければならないのじやないかというように考えます。
最後に中共貿易のことでございますが、我々の業界といえども中国の市場を商品の市場として重要なものであるということについて考えることについては、全く経済的には同じであります。併しながら先ほどから皆様がたが申上げておるように、この問題を政治的つに利用されるということが、却つて非常に迷惑である。商売人としては如何にしたらば実際の商売が許されたる適法の範囲内でできるかということを徐々に研究しつつあるのだと思いますが、これを政治的に大きく振り廻わされますと、却つてそういう実務上の研究が妨げられるという結果になります。これは何とかこういう問題は声を大きくして鉦や太鼓で商売するのではなくて、商売というものは必要な人との間に膝詰め談判でやるのが最もふさわしいことでありますから、この点については我々の業界は中国のマーケツトをマーケツトとして欲しいという、その強さが強ければ強いほど政治的に扱われるということを非常に遺憾に存ずるということを一言申添えておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/15
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016・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 恐れ入りました。
次に横浜生糸輸出協会会長西本君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/16
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017・西本勇次郎
○参考人(西本勇次郎君) 私は生糸輸出協会の理事長で、横浜輸出協会の会長であります。
生糸の三角貿易について一言申します。いわゆる生糸が三角貿易の形で現われましたのは、今年の三月からであります。大体二月から五月の末までに五千俵ぐらい出ております。それでそれがアメリカへは直接六千五百俵出ておりますので、総体一万一千五百俵のうち五千俵が三角貿易によつたと推定され、最近は大体半数がこの方式によつております。いわゆる三角貿易と申しますのは、最初日蘭協定によつて仕向け地がオランダになつておりましたが、最近はバンク・オブ・イングランドの輸入承認の付いたポンドのL・Cが発行されまして、仕向け地がリヴアプールになつております。但しパナマ経由という条件が付いておりますので、ニユーヨークでこれが陸揚げされるということはほぼ推定できるのであります。我々生糸輸出業者としましても、非常な関心と国家意識とを持ちまして、こういう積出に検討を加えつつありますし、又関係方面の製糸協会あたりの有力なかたたちとすでに話合いまして協議いたしておるのでございまするが、只今までのところ、この方法による輸出は暫らく抑制しないで放任しておいて頂きたいということを希望したい、そういう結論に達したわけであります。
この理由といたしましては、先ず第一に日本とアメリカの物価の比較の差でありまして、特に繊維関係においてひどいのであります。生糸が高過ぎると言いますか、三百六十円の為替で以つて、生糸がアメリカで四ドル五十セントといつたような高値で取引されておりますために、だんだん消費が減りつつあります。最近は一カ月四千俵以下にすら落ち込んでいるような有様であります。のみならず、アメリカの現在の糸価を日本のそれと比較して見ますると、現物におきまして、最近の一月から五月までの統計を農林省でお作りになつたのを見ましても、大体一俵について五、六千円がた下鞘を叩いております。一般にこの三角貿易によつてデイラーが非常に儲けつているのじやないかというような工合の観測もありますが、これはオランダの業者が—割くらいの報奨金を出して、その半分くらいをアメリカのデイラーに還元しているのじやないかと思われます。但しポンド為替の操作その他で、多少の出費がかかりますので、アメリカのデイラーを益するところは約三%、六千円見当ちよつとではないかと思います。そういたしますと、この六千円は日本とアメリカの糸の現物の差を埋めるだけであります。従つてアメリカのデイテーが必ずしもこの差を儲けているのじやなくてただアメリカにおける生糸の消費量をそれによつて維持していてくれているというふうな工合に観測できるのでありまして、消費を維持し、且つストツクを殖やしてくれているということが、将来の輸出増進の基礎になつております。その基礎工事を折角やつてくれているというわけであります。このアメリカのデイラーが手持を持ちませんことには、機屋は仕事ができないのであります。これは申上げるまでもありませんので、我々は相当のここに理由があると思います。
第二の問題は、このポンドは只今正規のものでありまして、いわゆる闇のポンドでないということであります。先ほど太田さんからですか、あたかも闇のポンドで一部取引されているかのごときの印象を与えられましたが、これは断じてそういうことはないのでありまして、例えばインドネシヤとか、或いは南米方面から、闇ポンドの取引じやないかと疑われるような照会がありましても、我々はこれを一蹴いたしております。そうしていわば現在行われておる取引というものは、日英支払協定乃至日蘭協定の間隙を縫つておる、いわゆる迂回路でありまして、断じてこれは邪道ではないと私は考えておる次第であります。最近オランダ向けが減りましたが、イギリス向けの引合も大分減つて参つておりまして、底を突いたという情報が入つております。このまま放任しておいても大した影響はない、かように考える次第であります。
第三、この問題は単に輸出業者だけの問題、輸出だけの問題ではないのでありまして、事は蚕糸業全体、即ち製糸、養蚕家を対象とした問題であります。日本人の汗と脂の結晶であるところのこの純国産品である生糸が輸出されるということは、日本の戦前からの貿易の第一に重要問題でありましたが、最近でも輸出第一主義というものが堅持されて参つております。従つてあらゆる機会に輸出増進ということが望ましいのでありまして、そのために糸価が維持されて、そうして現在非常に減りましたこの生産を何とかして手当して行くことが、業界挙げての要望であります。生産は、生産量は戰前に比較いたしますと、現在は四分の一乃至五分の一に減つておるのであります。輸出に当りましてはもつと減つております。他の商品で、或いは米ドル地域から原料を輸入してポンド地域乃至は内地へ流されている商品があるのに、生糸だけがたとえポンド地域に一旦流れるにもせよ、抑制されているということは、結果においては蚕糸業の発展を阻止するというようなことになることを我々は恐れるのであります。換言すれば、生糸だけが今度のごとき三角貿易というものの抑制の対象なんで、現在日本で最も恵まれない産業であるところの蚕糸業の、換言すればこれは現在日本で一番恵まれない産業であるこの蚕糸業の犠牲において他の産業が育成されて行くというようなことも過言ではないという工合に考えるほどであります。従いまして今後間断なく何か積極的な輸出増進対策というものが講じられなければならんと考えておる次第でありまして、今度の三角貿易のごときは、一つの消極的な方策、併し消極ではありまするが、それが将来の輸出増進の基礎になつておるということを見逃すことはできないと考えます。
第四に、先ほど来始終出ておりまするが、日本は国際為替市場から離れております。タンジールのような自由為替の市場から離れておつて、そういう自由為替の市場を持つておりませんので、果して生糸を換金する場合に、ポンドにしたほうがよいのか、或いは今日和服の原料として国内で円にしたほうがいいのか、最近悪口を言う人は生糸を和服産業とか、或いは甚だしきに至つては芸者産業なんと呼ぶ人がありますが、そういう工合でいいのか、これは考えて頂きたいと思うのであります。ボンドと円の価値が五年後にどうなるか、これは日本貿易のあり方の問題であり、生糸だけがその目標になつて、蚕糸業が圧迫されるということは、我々どうも不当であるように考えるわけであります。現に優先外貨を一つ例に取りましても、この二月から漸く第三類から第二類に上げて頂き、目下第一類へ上げて頂きたいということを関係方面へ要望陳情いたしましているような有様でありまするが、それよりもいつそ超優先的に、一割乃至二割といつたような輸出報償金制度を御考慮を願えれば、自然こういう三角貿易といつたようななにも解消いたしましよう。又同時に現在の四、五千俵の輸出が十万俵乃至それ以上に殖えるという部面も十分考えられると思うのであります。かように我々三角貿易についてはもうちよつと推移を見て頂きたい。本当に弊害があれば、もともと輸出業界は犠牲的にこれをやるからいいという考えがありまするから、どうか暫らく放つて置いて頂きたいというのが業界挙げての希望であります。
なおこれは海外市場に非常に影響のある問題でありまして、そのために糸価が暴落いたすわけでもありますので、万一何か手を打たれなきやならんような、或いは承認制、その他の方法で手を打たれなきやならないというような状態になりましても、十分の用意と、そうして海外の理解を得るだけの時間を与えて頂きたい、それを希望して止みません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/17
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018・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 有難うございました。
最後に中日貿易促進会常任理事鈴木一雄君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/18
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019・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) 中国との貿易につきましては、今までいろいろ御意見が出たことと思いますが、私は日本と中国の全体の立場から若干申述べて見たいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/19
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020・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 大体十分ぐらいでお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/20
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021・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) 問題点だけ申上げたいと思います。最初に考えますのは、戦前と戦後におきまして、世界の経済のあり方が非常に変つて来たということであります。これに目を塞いでおりますと、我我の貿易政策の根本が立たないわけであります。それは申すまでもなく、我々の自由主義諸国と、それから新らしく大きな勢力になりました社会主義並びに新民主主義諸国、これともう一つ戦争によりまして解放されました南方アジアの諸民族であります。これが三つの大きな枠になつている。我々はここにおきまして、その三つの中に挾まれておるわけでありますので、この関係をいつも考えて貿易政策をいたしませんと、非常な苦しみに陥るのははつきりしているのであります。この見地からこの前四月の三日にモスクワで国際経済会議が持たれましたときに、これは単なるプロパガンだといろいろ論議がございましたけれども、我々の業者の立場からいたしますとこれは非常な大きな問題を含むわけであります。それは何かと申しますと、共産圏と商売をいたしますには今まで個々にはいろいろなことがありましたけれども、大きな一つの方式というものがなかつたわけであります。今度は改めて向う側から一つの貿易方式を打出されたというわけであります。我々が共産圏と商売を、取引をしなければならん以上はこの向うからの提案でありますところの貿易方式にやはり四つに組んで行かなければならんわけであります。それからこれの延長といたしまして六月の一日に一応個人の資格ではありますけれども、日本と中国との間に一つの貿易の取極が行われたわけであります。これは我々はこれを黙殺するわけには行かないのでありまして、中国は個人の資格でありますけれども、人民銀行の総裁でありますところの南漢宸氏がこれに調印しております。恐らくは中国自身中国自身一つの国策としましてこの方式を打出したのではないかと思われるのであります。従つて私どもはこれから取引をいたしましたり貿易をいたしますにつきましてもこの協定と四つに組まねばならんということになるわけであります。それからもう一つ注意いたさにやならんことは中国自身が一つの計画経済に入つている、これはもう先刻御承知だろうと思うのでありますが、極めてまた大ざつぱなものでありますが、次第にこの計画経済の仕組が非常に正確になりまして、大体五十二年度までは今までの戦乱のあとの跡始末をやる、来年度からは丁度ソヴイエトロシアがやりましたようなゴスプランのようなものを来年度から本格的にやると伝えられているのであります。でこの点におきまして我々は今後の貿易を考えますときに、この中国が計画経済であり、従つて貿易が計画貿易であるということにやはり十分な考慮を払わねばならんと思うわけであります。その点が輸出組合なり、或いは今後発展いたしますところの輸出入組合というものにつきまして対社会主義並びに新民主主義諸国との貿易を如何にすべきかと言いますときにやはりこれを受けとめますところの日本側の一つの受入機関がありませんと、向うは計画経済でありますので、十分な計画と、勿論それには数量と価格と品目という広汎なものに亙りますが、それを十分に受けとめ得るようなものがありませんと、結局貿易を逃がしてしまうことになるわけであります。その点につきましては英国はすでに外務省で発表しておりますようにメーカーとトレーダーとの間に一つの機関を作るということがもうスタートしているらしいのであります。在日の英国系の商社におきましてはすでにその準備が大分進んでいると私どもの会員からの情報が伝わつているわけであります。
それから当面の問題といたしまして是非御考慮願いたいと思いますのは決済の問題でございます。中国側の現状から申しますと、今までの国際通貨でありますところの米国のダーラーと英国のスターリングと、こういうような非常に国際関係のむずかしい通貨関係には入りたくないという希望が非常に強いわけであります。これは先ほどの国際経済会議におきましてソ連側の代表であるネスチユロフが発言しましたが、相手国通貨という取引であります。相手国とその相互間の通貨でやろう。これは恐らくヨーロツパにありますところのEPUに対する大きな対策でなかつたかと思うのでありますが、日本もやはり同じような関係にあるのではないかと思うわけであります。それでこれから新らしく中国と日本が取引をする場合におきましては、もういろんな拘束を受けるようなパウンド・スターリングとか、或いはUSダラーというようなものに余り厄介にならないで、要するに日本と中国と相互間でこれを始末して行こうと、そういうような考えがあるわけであります。従つてこの問題は船舶の問題に引つかかるわけであります。それで御承知の通り我々が中国に要望いたしますのは非常なその嵩のあるバルキーな原料が多いわけであります。従つてこれを輸入するに当りましては運賃の占める率が非常に多いわけであります。でありますのでこの運賃に外貨を払うということは只今申上げました外国の通貨に、第三国の通貨に日本と中国の取引を余り束縛されたくないということに反して来るのでありますので、これは当然日本の船を使うということになるわけであります。それですでに我が国におきましてはE型、D型というような小型船舶の繋船問題がもう日程に上つております。この程度の船で中国に十分適しまして、又中国の原料を運んで行きますのには極めて適当しておるわけであります。この日本船の就航を如何にすべきかということが問題であるわけであります。ところが我が国におきまして私どもの交渉した範囲におきましては中国側は日本船就航について日本側の船主の心配をできるだけ除去しまして中国の沿岸に寄港することの安全を何らかの恰好で保障することを研究したいということをすでに申出が来ておるわけであります。ところが私どものほうには日本船の就港に対して政府の許可がなかなか今後下りるのはむずかしかろうという予測があるわけであります。その一つの問題は漁船の拿捕問題であります。この拿捕問題につきましては経済やら或いは外交上の問題がありまして、現在まではなかなかこの問題を中国側は受けとめてなかつたわけでありますが、以西底曳組合の要請に基きまして現在北京に行つております帆足計君にこの問題を電報を以て委嘱しましたところ、とにかく中国側の当局者が好意を持つてこの提案を受けて話合いをしようということが実は今朝電報が入つたわけであります。これは先ほど申しました日本と中国との貿易協定というものがやはり大きな友好関係で何とかして打開をしたいというような中国側の要望と、それから私ども国民の中にさまさまに織込まれておりますところの日本と中国の交易に対する国民的要望を受けとめてくれたと思うわけであります。
それから来年から始まりますところの大きな経済建設を対象にした取引と申しますのも、実はこの間取極がありました貿易協定を如何に具体化するかというところにかかつていると思うわけであります。更に細目に亙りますれば英国に対しては相当きつい条件を出しておるわけであります。御承知の通り交換品目についてABCというクラス分けがあるわけでありまして、英国につきましては非常にむずかしいAクラスのものが実現しないとBCはやらんというようなきつい立場をとつているのでありますが、日本の場合にはこれは当初そういうような態度であつたそうでありますが、その後におきましてそういうようなABCの相関関係を捨てまして、BでもCでもやろうというような態度をとられたということが伝わつて参りました。こういうことから考えますと中国側は積極的に取引するという意図が十分あるわけでありまして、これは今後アジア貿易を考えますときに非常に重要な問題であります。個人問題でありますが、村田省蔵氏に南漢宸氏から手紙が最近参りました。その手紙の中で日本と中国の貿易が極東アジアの貿易の挺子であるということを指摘されているのであります。これは一昨年の十月にシンガポールで行われましたECAFEの会議におきましてインドネシヤ代表がやはりこのことを指摘しているわけであります。これは非常に重要なことでありまして、日本と中国がノーマルな貿易がない限りには東南アジア貿易を日本が拡大するということはこれは空想であるというようにインドネシヤの代表が断言しているわけであります。この南方の解放された植民地の民族感情というものを私どもは十分丁寧に考えませんと、今後の貿易方針を誤つて来るのではないかと思うわけであります。そういうような観点からいたしまして、現在提出されましたこの三千万ポンドに当りますところの貿易を我々やはり国民的な規模によつてこれを受けとめまして、何とかして現在許された範囲におきましてもこれを実現せねばならんと思うわけであります。これを私どもがフエールいたしますれば、ヨーロツパなり、西欧諸国が盛んにやつておるところにおくれをとる場合が出て来るのと、中国自身が計画経済を組んでおるということにおいて、やはり日本の物を計算に入れないというような現象が起り得るわけであります。従いまして私ども業者の商策といたしましても、やはりこの問題と四つに組みまして、何らかの意味におきましてこれを具体化して行きたいと思うわけであります。勿論この中にはいろいろなむずかしい問題もございます。併しながら大体日本側で研究しました品目について、その事情を十分考慮の上で、ヨーロツパと対照しまして品目が羅列されているというように見られるわけであります。従いまして現在許された範囲内におきましても相当量な幅の取引がありますと同時に、西欧並みの努力を続けますならば、この三千万ポンドの取引の実現は不可能ではないわけであります。そういうことがポンド決済の、或いはドル不足の問題というような国際的な貿易の障害につきまして抜本的な解決をするものだと思うわけであります。極めて雑駁ではありますけれども、現在までの貿易政策には、新らしく起りました中国や、或いは新らしく起きました東南アジアの本当のところをまじめにぶつかつて考えてないということ、或いは日本流に解釈いたしまして、そうして我々の貿易をそのように持つて行こうとしたために、結局それの抵抗を受けまして、現在は貿易縮小というような現象が出ているというような、そうした点等を是非改めてお考え願えますれば、我々は貿易立国でありますので、その間におきまして我々の経済はもつと発展するのではないかと思うわけであります。これは我々の三倍以上の貿易量の実績を作りました西独の努力も我々は十分検討して見る必要があると思うわけであります。まあそういう意味におきまして今度の三千万ポンドの取引につきまして、これは単なるプロパガンダでなくて、我々に与えられたアジア貿易における一つの大きなテーマであると是非お考え願いたいと思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/21
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022・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 参考人のかたがたの陳述が終りましたので、委員のかたがたから御説明旨して御質問を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/22
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023・中川以良
○中川以良君 私は最初に承わりたいのは、一番初めに日本貿易会の専務理事からお話がございましたが、官僚貿易は廃すべきである、飽くまで民間産業人の衆智を活用しなければならないという意味のお話であつたのであります。殊に従来の在外事務所、今度は大公使館ができましてそれぞれ経済関係を取扱つておるのであります。これらの調査その他等においていわゆる迅速的確を欠くという御指摘があつたのでありまするが、私もその点は全く同感に思うのであります。殊に最初終戦後におきまして在外事務所の設置の場合に、我々といたしましては是非経験のある産業人をこれに加えて進出をすべきであるということを申しておつたのでありますが、それらの点においてはまだ遺憾の点があつたと思います。更に太田社長の御発言中にも、将来は貿易組合の連合会を作つて、而もこの連合会が海外に事務所を持つて曾つての商務官に代る仕事を委任さるべきであるという非常に立派な御意見で敬聽を申上げたのでありますが、こういう点を勘案いたしまして、先ず私どもは政府の直接のその衝に当る人以外に、今日実際実力のある信用のある商社ができるだけ海外に進出しなければならんと思うのでありますが、すでに各方面に進出をされておりまするが、又有力な商社はどんどん進出を希望しておられますが、なかなかこれが手続、許可等が容易に行われておらないのではないかと思うのであります。これらの点につきまして商社側の一つ最近の政府側の施策につきましてのいろいろ御批判又御希望等があると思いますので、その点について一つ承わりたいのであります。これは太田社長なり、岡本社長から承われば結構であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/23
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024・太田静男
○参考人(太田静男君) 御質問に対してお答えいたします。やはり御承知のごとく昨今の商社は甚だ弱体でございまして、今の為替相場を以ちましてあちらにも支店が出したい、こちらにも支店が出したいという計画を立てましたところで、果してそれを自力で賄い得るかどうかという点について甚だ大なる疑問を持つておるのでございます。ですから、私どもといたしましても、三カ所のところは二カ所にし、而も人数も四、五人出したいところを二人出すとか、或いは三人出すというようなところで、取りあえず自分の懐で養い得るような、或いは又将来これぐらいは多分取上げ得るだろうというような希望の数字を基といたしまして、今人を出しておるところでございます。最近通産省から各商社に対しまして、大体どのくらい希望のところでは金がかかるだろうか、それに対してお前のいうはどういう計画を立てておるのだろうかという御諮問がありましたので、今その案をかけつつあるところでございます。多分通産省の御企図というものは何らかの方法を以て今よりももつとたくさんの、或いは広い意味においての海外の情報その他を取り得るような機構を商社に望まれておる。従つて或る程度までの何か手伝つてやろうというような意思があるのじやないかと、こう思つておるのでございますが、願わくば少し基礎が確立するまでは相当の御援助を与えられんことを我々としては希望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/24
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025・中川以良
○中川以良君 そこで丁度本間政府次官が只今お見えになつたのでありますが、将来の日本の貿易を振興するためにはやはり有力な商社の海外進出ということが大きく取上げられなければならないと思うのでありますが、これらに対して大体どういう御方針であるか。今いろいろと各商社が希望しておると存じますが、これらの許可される範囲、又これに対する援助等、如何なる御方針を持つておられるか、一つお示しを願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/25
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026・本間俊一
○政府委員(本間俊一君) 中川委員から御指摘があつたのでございますが、私どもも実際はその必要を同じように感じておるわけでございます。そこで実は今具体的に一つ、どういう案で行こうかということで、まあ相談をいたしておるわけでございますが、今直ちに補助金を出すわけにも行かんのではないか。そこで税法上の関係で、何かお手伝いができないものであろうかというような考え方もいたしまして、今具体的に研究をいたしておりますが、必要なことは私どもも同じように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/26
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027・中川以良
○中川以良君 これは是非一つ、やはり時期を失すると、それだけ日本の貿易業者の立場というものが不利になりますので、一つ成るたけ速かに、而も積極的の援助、指導をされんことを特に私はお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/27
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028・山本米治
○山本米治君 三角貿易の問題につきまして、主として西本さんにお伺いしたいのですが、私はこの為替の統制をやれば闇ができるということは、もうこれは必然だと思つておるのでありまして、最近三角貿易なるものは、この為替の統制に伴う闇を利用する利益行為じやないかと思うのです。それで、日本の生糸が一旦ポンド地域なり、実際の商品がいきなり行かないにしても、証券だけ行つて、そしてそれをアメリカに輸出する。アメリカから受取るドルは少くともそれを闇で、何らかの方法によつて交換すると、ポンドが多額に受取れると、こういうところに利益があると思うのでございますが、先ほどのお話によりますと、ポンドの闇を利用するのじやないので、この三角貿易はポンドの闇を利用せずして行われておると言われますが、その取引の具体的実例をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/28
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029・西本勇次郎
○参考人(西本勇次郎君) 私ここへLCの写しを持つて参つておりますが、これにはアメリカのバンク・オブ・イングランドの輸入証がついているのです、それがなければ手形の割引ができないものですから……。ところで私たちの聞いておりますところによりますと、オランダがバンク・オブ・イングランドに預金を持つております。オランダの持つておるバウンドがドルになかなか替らないものでありますから、その間話合いの上で日英支払協定の中で振替えて使わしておるということらしいのです。政府が一割ぐらいの報償金を出しておる。無論今御指摘のように、パウンド自体が実際非常に悪いのですから、それから起つたことには違いありませんが、直接はオランダの政府が一割ぐらい報償金を出して、その振替えをやらせておる、こういう工合に聞いております。従いまして、パウンドは正規のパウンドでありまして、日本の勘定へ入るわけです。それからいわゆるそういつた種類の取引が全然ないかと申しますると、最近問題になつておる三角貿易はそうでありまするが、そのほかに或いはフランス、或いはイギリスから、ニユーヨークのほうへ再韓出される糸がありました。去年の暮あたりすでに……これは再輸出でありまするが、果して再輸出と申しますか、現地の業者が日本から買つて、そのまま出すという貿易、重複の輸出と申しますか、或いは現地の商人がパウンドで糸を買いまして、フランスとかイギリスのパウンドで買つてそれをニユーヨークへ持つて行つたのじやないかとも考えられます。畢竟生糸は関税がどこの国にもありませんので、いわば一種の金貨のような作用をしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/29
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030・山本米治
○山本米治君 日本の受取るボンドは正規のポンドであつても、それを向うが転売する間において何らかの方法で闇が使われないかどうか。向うは今度ドルを受取りますね、向うで一旦買つたポンド地域の商人がドルを受取る、そのドルをどういうふうにするか、それをポンドに替える場合に、闇を使うとか何とかいうことがないか。それでなければ利益を生ずる余地がないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/30
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031・西本勇次郎
○参考人(西本勇次郎君) オランダ政府が報償金を出しておりまする限りにおいて、明らかにドルを有利に獲得しておるということは否めないと思います。併し、仲に入つておる商人なり或いは銀行が、更にドルを闇でパウンドにされて流しておるということはちよつと想像しがたいと思います。何となれば、その闇で入つて来るパウンドは、もう一度オランダの預金勘定に入るということが考えられませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/31
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032・山本米治
○山本米治君 先ほどこの三角貿易を封ずる手は、日英支払協定の今回行われる際にポンドの実勢による取引を認めるということ以外に方法はないという太田さんのお話だと思いましたが、私はこの日英支払協定においてその実勢と申しますか、結局は公定を掲げている限りは闇ということになると思いますが、闇を認めるということは、到底認めるはずはないと思いますが、そうするとこの取引を認める方法はないと考えてよろしうございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/32
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033・太田静男
○参考人(太田静男君) 私は日英通商協定でそれが肯かれない以上は手はないと考えます。そこで今おつしやつた闇ということでございますが、成るほど公定相場がある以上、それに反するものは闇であるはずなんですが、事実いわゆる闇と申しますか、或いはスイスにおいて或いはニユーヨークにおいて或いは香港において世界の主要な各地で殆んど一定した率が毎日出ておるのであります。例えば二ドル四十セントを中心にしまして、そうして上下二セントとか、三セントとか違つておりますが、大体毎日そういうのが公表されておるのであります。それから今生糸の輸出協会長からお話がありましたが、オランダ政府の振替勘定でということは、私寡聞にして只今初めて伺いました次第でありますが、要するにこれは若しそうとすれば・オランダ政府がパウンドの闇を売つたということになるわけですね。従つてとにかくこれが或る程度まで、国際貿易社会に、いわゆる実勢相場というものが幅を利かしている以上は、これは簡単な闇相場だけを以て律すべきものではない、或る程度まで重要性を持つてこれを考えなければならんものと、こう考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/33
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034・加藤正人
○加藤正人君 鈴木さんにちつと………、中共貿易のお話がありましたが、決済の方法ですね。或いはスターリングとか、或いはUSドルのような、他から拘束を受けるようなパウンドやドルの決済方式をやめたい。日本と中共が相対で決済するような方式をとる必要があるというようなお話がありましたが、それはバーターという意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/34
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035・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) 根本的にはパーターでございます。それで昨年の三月の十四日に全国バーター貿易暫行弁法という法律を作りまして、自由主義諸国とやる場合は原則としてバーターです。暫定的に香港におきますところのスターリングを使いまして、それでやろうという考えがあるわけです。併し最近香港におきましてローカル・コントロールをやる形勢が大分ありますので中国側といたしてバツク・ツー・バツクというようなパーターの決済方式をとりませんで、バンク・ギヤランテイーで、銀行の、ギヤランテイーにおきまして実際取引をやらせませんで、まあ言つて見ますと、お金を動かしませんで、補給金だけを積んで取引したいという前提を主張しております。で、今後は恐らく今度の協定によりまして我々はこれから主張することになると思うのでありますが、輸入先行ということになりまして、併し運賃部分だけは日本側に外貨を払つてもらう、それで先へ持つて来てといいますと円のエスクロみたいな勘定をして取引をするような方向になつて来るのじやないかと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/35
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036・加藤正人
○加藤正人君 バーターで決済することもできるでしようが、併し三千万ポンドというような大量なものそういうような方法で決済できるでしようか実際問題として……も発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/36
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037・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) 御承知の通り向うは国営貿易機関ができております。英語で申しますとチヤイナ・ナシヨナル・インポート・アンド・エクスポート・コーポレーシヨン、漢字で申しますと中国進出口公司、これが国営貿易機関になつているわけです。で、恐らくはそれが今のような輸入先行にいたしますと、日本の外為勘定がどこかにそのコーポレーシヨンの勘定ができると思います。それで一々は一つのロツトロットのケースはバーターのようでございますけれども、言つてみますと一つのオープン・アカウントみたいなものによつておのずから成り立つのじやないかと思います。そうしますと或る程度の貿易のスケジユールをきめて参りますならば決済はもう少し楽になるのじやないかと思うわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/37
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038・加藤正人
○加藤正人君 それからこの間今度の中共の会議へ出た帆足君などに対してはあなたのほうの会としては代表権は与えた覚えはないというような、多少つれないような声明をなさつておつたのだが、途中から少し態度が変りましたね。あれはどういう何か意味があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/38
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039・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) そのことは聞かれると思いましたのですが……。これは経過を若干申しますと、すでに英国が大分やつて来ておりまして我々から見ますとまあ出がらしみたいなものになつたのですが、それでもやはり計画貿易でありますから、我々としても何か意思表示しなければならんし、今まで一応政府が交渉してもらつた一応のめどがあるわけです。そのめどの範囲内で本年末まで何とか或る程度のスケジユールを作つて行く必要を痛感しまして、まあ英国のようなコースをたとえ我々は海を隔てておりましてもやろうと思つたわけです。そこで五月七日に、これは帆足君の行かない前でございますが、十四日に行つたのですから、七日に常任理事会を開きまして個人の資格というような恰好で今までの交渉を基礎にしましたものを一つにまとめて見たわけでございます。勿論この間にはいろいろ今まで政府と交渉したいろいろな材料が織込まれておつたわけでございます。そういうことでむしろ帆足君にはそれを日本人の立場から援助してもらうつもりであつたわけです。手紙を出しましたのは、只今申しました中国進出口公司の総経理をやつております盧という人に出したわけです。英国ではロリマアという北イギリス機関車会社の社長が個人の資格で盧氏と往復書簡を出し合つておりまして、最後にボイド・オア氏が調印をしたというコースがとられたわけです。従つて私のほうも一応それを交渉した案を持つて帰りまして、その後その盧氏から直接の返事が来ましてそれでもう一回各方面と相談した上で更に交渉を続けるというつもりであつたわけです。それからもう一つ心配しましたのは、私どもは純粋な業者で、純粋な経済的な立場からばかりやつておりますので、これに対して政治の介入というものを非常に警戒しているわけでございます。ところがその月末真際になりますと、国内の状態が大分政府の足をとられる危険性が出て参つたわけでございます。それで調印前に急遽相談いたしまして、やはりこれは純粋の経済の立場を守らなければ困る、と申しますのは今まで一年半ばかり業者としまして占領下の非常な複雑な事情下におきまして中国との貿易に四つに組んでいたわけでございますので、むしろそういう意味からそういうような九仭の功を一簣にかくような政治の介入はできるだけ避けたいというような希望が非常に強かつた。それで私の名前を使いまして、一応声明を出しまして関係はないというようなことになつたわけでございます。ところが調印をされまして、更にその調印された協定についていろいろ検討したわけございます。ところがこの調印は、むしろ業者の立場の問題は、協定の第四条に残されてございまして、品目についてもまだ相当これはネゴシエートする余地がございます。決済或いは輸出入先行という問題についても私どもは全部要求を出したのですが、一応全部黙殺されてございまして、むしろこの四条で今後日本の商社側とコーポレーシヨンとの間に十分討議を尽す余地がある、そう言つて逃げておるわけです。で、むしろ今まで公開されておりませんでした日本と中国の経済関係が初めて中国側から提起されたというようなことは、これは結局大きな意味が協定にあるということがわかつた。そこで協定の意味が非常に重大なためにその限りにおいて帆足君のキヤパシテイは一応アツクナレツジしようということが二日前の土曜日の理事会でもう一遍確認されまして、そこで実は明日総会がございまして、これは総会事項になつておるので、総会で確認されてこの問題を如何にマテイアライズするかということになつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/39
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040・境野清雄
○境野清雄君 大体今日は輸出のエキスパートのかたがお集まりで非常にいい機会であると思う。先ほどからいろいろ我々の知らない話をお聞きしまして非常に感謝しておるわけでございます。大体そこで私どもの委員会といたしましても輸出が非常に不振になつておる現状を非常に憂えまして政府当局に出て来て頂きまして、通産大臣、並びに通商局長から現在とりつつある、又これからとるであろう政府の政策的なことを十分お聞きしたのでありますが、殆んど全部と言つていいくらい考慮中であると、こう言つておる。もうすでにこういう問題が起つてから半年も経ちながらべんべんとし政府の方針はなかつたのだというように私はとりまして非常に残念な問題だと思つておるわけでございますが、これは何とか、本間次官も来ておられますので、もう少しスピーデイにやらなければ日本の貿易というものにとつても間に合わないのではないか。その一つの問題といたしまして今日おいでになつております業者の方に是非御意見をお伺いしたいことは大体今持つております日本の手持ポンドというようなものの活用を政府が非常に考えておらんのではないか。その一つの例としては、もう活用をしないということの原則としてスターリング地域は物価が高いので日本自体としては輸入する時機でないというのでいわゆる原材料、パキスタンの綿花のようなものを入れずにべんべんとしてこちらが手が空くというような情勢を以てしてもまだ手持ポンドはちつとも活用しない。これを場合によつては日本の国内の経済が非常に旺盛になるためにはポンド自体を相当使つてくれて、輸入する物自体は損であつても国内経済は立直るのではないかというふうに考えておるのでありますが、このポンドの活用というような点について皆さんのほうで従来お考えになつておられた何らかの御方針でもあり、或いはお考えでもありましたらこの際承わりまして私どもの委員会としても再検討してそれを政府にお伺いしたい。特に私お聞きしたいのは、猪谷さんから貿易界の立場からの御意見を一つ、それからもう一つに、業者として岡本さんなり太田さんからなり、この問題についてお答えを願いたい、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/40
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041・猪谷善一
○参考人(猪谷善一君) 只今境野議員からの御質問でありまするが、ポンド対策につきましては、我々としましてもすでに幾回か案を練りまして政府等に御陳情申したのでありますが、実はそれがなかなか早くきまらないので、然らば何を一体希望したかと申しますると、第一は、外貨貸付制度、ポンドによる外貨貸付制度の拡充という問題でありまして、先ず第一に適用品目を今のような僅かなものに限らないで、全面的に拡大して頂きたい。そして昔やつておつたような日銀ユーザンスの精神を大いに取入れて、輸入の効果を挙げるということであります。第二は、今御承知のごとく為替買予約が強制されておりますから、一たびスターリングがデイプリシエイトをするときには、商社側の上にリスクが行きますから困るのであります。併し日銀が頑として聞かんというので、折角通産省の御協力も今までうまく行つていないという実情である。第三は、やはりこのポンド地域のものは高いものですから、それを睨み合せましても、貸付の金利を大いに下げるように、できればこの為替銀行等と日本の業者との貸付金利は二分ぐらいになればやや採算的に合う商品がたくさん出て来る。貸付期間も少くとも七カ月乃至一カ年間にしてもらいたいという、かような具体的な方法を考えて陳情を申上げておるのであります。
それからいま一つは、そう言いましてもなかなかこのバランスが、スターリング地域とのバランスがとれません場合に、すでに、今日起りかかつておるのでありますが、日本の持つておりますポンドをアウト・スターリング・エリアに投資しまして、そうして丁度コロンボ・プランでやつておりますような未開発の資源開発にポンドを使わして頂く。例えば現在実際に交渉の始まつておりますのが、インドの鉄山の問題でありますが、その他塩田とかたくさんのそういつた印度ブロツクのエリアの資源開発に、日本の今まで持つておりました技術なり知識を投入しまして、併せてポンドとも組み合せましてやれば、相当世界経済の振興に及ばずながら役に立つのではないかと、こう思つております。これらにつきましても一つ十分に我々も勉強しますが、案ができましたときは一つ親切に御高説も伺えますようにお願いいたします。以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/41
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042・岡本忠
○参考人(岡本忠君) ポンド問題は非常にむずかしい問題でありまして、なかなかいい案がないのでありますが、先ほど境野さんからお話の通り、いい考え方があつても結局まとますのが非常に遅れる、これが一つの例。ここでかようなことを申上げるのはどうかと思いますが、一昨年の暮から昨年にかけましての輸入問題も、あの前にダラー・ユーザンス、延いては外為ユーザンス、日銀ユーザンス、このユーザンスに関する問題が非常に輸入に必要だ。それから又当時の情勢からしまして、朝鮮動乱が始まりました直後、日本の輸出は輸入にかかつている。若し万一間違えば最悪の場合にも行くかも知れませんから、輸入をどうしてもやらなければならんということを我々も口をすつぱくして言つたし、政府のかたがたも御同意であつたので、輸入は非常にやかましく言つたのでありますが、併し何にいたしましても輸入するのには国内の円資金問題がついて参りますので、円資金問題を早く手当をしてもらいたいというので、ユーザンスの問題が大きく取上げられたのでありますが、これがユーザンスをやろうということになりましたのは四、五カ月遅れて決定した。さて輸入をやろうというので、官民共にやりましたときはすでに国際物価が非常に上つておつた際で、そこからスタートしまして、昨年の一月、二月頃まで高値を高値をと追つかけました結果は、昨年の輸入問題になつたのであります。かようなことを申上げてどうかと思いますが、いろいろ貿易界或いは経団連或いは商工会議所といつたような各経済団体で研究をした結果を政府の要路のかたがたにも連絡しておりますので、そのうちのこれはやつたらいいという結論に達したものはいち早く一つ手を着けて頂きたいと思うのでありまして、いいものも三カ月も四カ月も遅れますと手遅れになつて、いいものがよくないというような状態になります。
そこで問題の手持ポンドをどうしたらいいかという問題でありますが、私は如何にもポンドの実勢はよくございません。バトラー蔵相が緊縮政策をやり出しましてから、ちよつとよいかのように見えましたが、又約一カ月ぐらいの間のポンドの実勢というものは極めて悪いのであります。如何ようになりますか、ちよつと見当のつかんような現状であります。ただポンドの溜ますのは頗る残念でありますし、仮にこれが二割もデイプリシエイトという事態に立至りましたときは非常に損であります。それではポンド地域から今物を入れたらいいじやないかという点になりますと、やはりポンドの下落と言いますか、デイプリシエイトを織込んだポンド地域の物価になつておりますので、これは一割五分とか六分物価高になつておりますので、そういうものを輸入いたしますのにはやはりそこにそれだけの犠牲を払わなければ誰が犠牲を払うかという問題になつて来るのであります。いずれにしましても、ちよつと本末顛倒いたすかも知れませんが、ポンドが溜まり過ぎるからポンド圏への輸出をやめようという政策は私は頗る国策としてはまずいのじやないか。日本がやめなくても、向うから輸入制限をやるような事態でもありますので、これは調節は或る程度は必要でありますが、ポンド圏への輸出をやめようという施策は私は日本政府としてやつてほしくないと考えます。と同時に、今の手持ポンドの使用の問題ですが、先ほど猪谷さんからもお話のありまた通り、いろいろな角度からポンドを成るべく使いたい、こういう方向でというようなことも考えておるのでありますが、猪谷さんのお話になりませんでした一つの問題として私は日英支払協定を今度やります場合に、これもイギリスはなかなかうんと言いませんでしようが、ポンドを持たないポンド圏の他の国、仮に印度のルピーであるとか、インドネシヤのギルダー或いは濠洲のスターリングであるとか、こういうようなカレンシイーに振替えておくとか、これは各国々同じ悩みを持つているのでありますから、なかなかむずかしい問題だと思いますけれども、併し交渉のしようによつたらできるのではないか。濠洲からは羊毛、小麦を買うのでありますし、印度からはできますならばまあ鉱石又は石炭、砂糖、これはまあパキスタンが主でありますけれどもそういうものも買うのであります。更に又先ほどのお話のように、その土地心々のカレンシイーにしておきますことによつて、その土地土地への事業の参画、印度の鉄鉱石の開発の問題が出ておりましたが、そういう問題にもパウンドで持つていて、そうして印度の開発に金をあれするからルピーに換えてくれという交渉をしたのでは非常にまずいのであつて、初めから印度へルピーで或る程度持つて行く。これにはやはり将来日本がこういうような輸入計画があるから、ルピーにしてくれというような持ちかけかたをしないと、イギリスがまあ非常にいやな顔をしますけれどもそういうような計画でその土地々々のあれにする。インドネシヤ又然り。あの土地への投資にも使えるし、又向うから買つて来ますゴムだとか、錫だとか、砂糖だとかというものが将来出て来ましよう、そういうものを使うためにその土地のポンドに切替えて行く。こういうことがポンドは非常にデイプリシエイトするかも知れないが、そのカレンシイーによりますと、そのパウンドに向うがしないものもあるでしようし、仮にホローしましても、非常に日本としては有力ではないか。そういうような考えをしております。なかなかこれもむずかしい問題だと思いますが、先ほど猪谷さんから述べられました以外に、その土地々々のカレンシイーにしてもらつて置く。そこで例えば濠洲の羊毛、インドネシヤのゴム、今一割五分割高でありましても、情勢によつては或いは五分高というような事態が、いずれも相場上位になりますから、そういう事態がありますと、そういう割安のときには商品も輸入できる。今は一割五分も割高だからできないが、併し五分くらいの割高になれば輸入できるというような事態もありまして、ローカルカレンシイーにできるだけ切替えて、パウンドを持つということが非常に望ましいのではないか。これは私どもの一つの考えであります。これは或る方面からも提案が出ております。一つの私の考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/42
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043・太田静男
○参考人(太田静男君) パウンドの使い方ということになりますというと、いろいろ案は只今ございましようけれども、実行ということになるとやや縁が遠いものが多いのであります。成るほど土地の開発に使うということもいいでしようけれども、そのほかの条件が備わらなければ使うことはできません。ただここに一つやはり使えるかと思われるのは、猪谷さんからお話のありましたパウンドの貸付ということでございます。長期低利で貸して頂くことができれば、自然パウンド圏外から買うものも或る程度までパウンド圏内から持つて来ることができるということだけであろうと思います。甚だ不満足なお答えでありますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/43
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044・境野清雄
○境野清雄君 大体まあ今お話を承わりましてもなかなか困難が伴うというようなお話ですけれども、だがいつも政府と業界との食い違いというものは、もう過去のいろいろ例があります通り、政府自体の審議と申しますか、政策を実行に移すということがいつものろ過ぎる、この物はすでに朝鮮動乱が起りましたときに、あの絶好の輸入期を全部逸してしまつて、六カ月ばかり経過して、十一月頃になつてから買溜めた、漸く許可したものがいわゆる新三品として今日の業界の大禍根を残したようなことがあつて、これはもとより政府の政策にも或る程度の責任があつたのではないかと、こういうふうに思つているのでありまして、今のパウンドの手持ち過剰というような問題にいたしましても、今太田さんのお話によつても相当隘路があるだろう。これは勿論そうでありまして、先ほど猪谷さんのお話のパウンド未開発資源への投資というようなものは我々がこの占領政策をやられているうちにも、何度か陳情に行つたのですが、こういう問題は当時は受入れられなかつた。併し今日では少くとも独立したのでありまして、若し今太田さんのお話のようなものありといたしまするならば、それは日英支払協定の根本問題に触れるというような問題は、いずれにしましてもこれは持つているポンドの活用方法というものだけは政府の一存で私は行けるんじやないか。相当な隘路がありましても、政府自体がそれに真剣に取組んで見て、そうして日本経済の再建のためにそれがなりという考えならばこれは政府の一存で行くのだ、これは占領政策のときからまるで趣きを異にしているのでありまして、政府は占領政策の当時よりももつと責任が大きくなつていると同時に自分の権限が殖えているのでありますから、そこで政府自体として現在パウンド、東南アジアの未開発資源への投資というような問題、又岡本さんのお話になりましたようなポンドをカレンシイーに置き換えるというような問題、又太田さんのお話の外貨貸付制度の拡充というような問題について政府自体は今どんなふうにお考えになつているか、一つ御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/44
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045・本間俊一
○政府委員(本間俊一君) お答えを申上げたいと思いますが、ポンドの問題は、御承知のように非常に面倒になつておりまして、なかなかうまい方法がないのでございます。私どもの考え方といたしましては、貸付をいたします品目をできるだけ殖やして行きたいという考えの上に立つているのであります。それから投資の問題でございますが、これも私どもの考え方といたしましては賛成でございまして、そういう話が具体的になつて参りますればできるだけ努力をいたしたい。こういう考えを持つております。それからパウンドをローカル・カレンシイーのほうに振替えるという、まあお考えでありますが、これも一つのやはり方法かと考えております。まだそういう交渉をするかどうかはきめておりませんが、これも一つの方法だと考えまするので、協定に入ります前にそれを十分研究さして頂きたいとこういうふうに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/45
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046・境野清雄
○境野清雄君 今の研究を一つ成るべくお急ぎを願いまして間に合うように一つ御配慮を願いたい。大体私は今感じたので、太田さんのお語につきましても、先ほど綿糸布輸出協会の小杉さんのお話にしても、業界自体が大体どうも長い占領政策があつたので、幾分締め気味になつているのじやないか。先ほどの輸出取引法案にいたしましても、これはいろんな異論があるのでありまして、それは小杉さんのお話では、あの辺が現在の状態では政府として出したものの上々のものであるというようなお話ですが、これはもつと遡つてこういうようなものの機会がある都度駁撃して、それに対して事業者団体法なり、私的独占禁止法なんかを一日も早くああいうものを早くなくするような形にする。こういうものの機会がある都度取組まなければ、なかなかいかんというので、私どもは現在の事業者団体法なり、独禁法なりというものを基準にすれば先ほどの小杉さんのようなお話のようにもなるかと思いますが、私はあれをなくすような材料としては、こういうものが出た都度相当取組んで行かなければ、なかなか根本の問題は解決しないじやないかと、こういうふうに思いますので、私どもとしては是非一つ業界のかたにもう少しお強くなつて頂きまして、そうして政府への要望を強くやつて頂きたい。司令部のなくなりました今日においては政府自体も幾分依存していた空気が強くなつておりますから、その点も業界から一つこういうふうにしろという強い要望をして頂きませんと、惰性が抜け切れないのじやないかというふうに思いますので、その点は一つ強く皆さんに私のほうからお願いしたいと思うのであります。それから先ほどの本間政務次官から中川委員の質問に対しまして海外商社の拡充を図る何らかの資金協定的性質の方法なり何かでこれの拡充を図るというようなお話でありましたが、昨日の新聞なんかを見ますと、大体最近の輸出、輸入というようなものが非常に不活発になつて来た関係から、商社自体が自分の経費の節約の上で海外の駐在員の人員を減らさなくちやならん、或いは場所によつては引揚げてしまわなくちやならんというような問題が昨日の新聞に書いてあつたようでありますが、若しこういうようなことが現実問題だとすると重大問題じやないか。一応日本が占領政策の間に相当苦慮しつつ出しました海外の駐在員、或いは商社の出張所というようなものは漸く得た権利なのでありまして、これが講和と一緒に引揚げるというようなことでは私は日本の貿易の前途のために非常に憂うべき問題じやないか。そこで一つ岡本さんなり、太田さんなり海外にお店を持つておられるかたから、こういうような問題は政府がこのような手を打つてくれるのなら一時延ばせるのだ、或いは政府自体がこういうようなことをすればそのまま持ちこたえができるのだ、今の世界的な不況という状況がそういつまでも続くものじやないと私どもは考えておるのでありまして、やがて来るべき春に備えるために折角ここで講和を獲得して日本が経済的に大進出しようというときに、この足場を失うということは私は相当の問題じやないかと思うのでありまして、こういうことに対して商社自体から政府へ要望せられるような点があるのかないのかというような点について何かお話がありましたらお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/46
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047・岡本忠
○参考人(岡本忠君) 今のお話全く御同感でございます。そうして先ほどお話になりました今朝でしたか……昨日の新聞の記事でありますが、成るほど最近の輸出入頗る面白くないものがありますが、併し私が承知しております範囲におきましては、今まで出しております出張員なり海外派出員を引揚げようという動きは私はなくて、むしろ逆だと思う。成るほど今商売が非常に少くて経費の問題も心配だが、併し今のお話のように商売というものはいつまでも沈んでおるものでもありませんし、いつもいつも栄えるものでもありませんからこれは又波の上にも乗るときも来るのですから、それに備えて不況の時代に向うに人をやつておいていろいろ渡りをつけておくということが必要なんで、少くとも私の知つております範囲では新聞に出た記事はどうも信頼していないので、どちらかと言えば、併しまあ不況ですから、さもなければどんどん出して行くのだ、少し出し方が遅いとか少いとかいう面はありますが、出したものを引揚げようというようなものはないと思います。ただ出します場合に、海外の支店に従来日本人が向うにおりませんために非常に日本は損をしておつたわけなんでありますけれども、今更申上げるまでもなく高く売り込める物も外国人の手に利を与えておつた。それから又輸出契約がキヤンセルされる、これも向うに日本人がおりますならば、その間の事情を十分チエツクできるのですけれども、御承知の通りサブジエクト・インポート・ライセンスというものが多いですから、輸入許可が下りなかつたということを言われればもう泣寝入りするほかないので、そういうことのために輸出契約が解約されたということは非常に多い。これは値段が下つてそれで日本が損をした。逆に日本への輸入のものも、本当に一流の商社と商売していなかつたものは、値段が上ればサブジエクト・エクス。ホート・ライセンスだから売れないということで日本への輸入品がキヤンセルされたというような面が非常に多かつたのでありますが、これはまあだんだん日本人、我々のほうの人間が向うに行きますとそういう面が打開されて来ると思うのであります。その一つだけでもやはり出張員、派出員というものをやらなくちやいかんと思うのであります。そこでもう一つ支店、出張所の問題でありますが、成るほど昔三井物産、三菱商事その他の大会社が海外に支店を持ちまして、日本の本店、或いは日本における同商社の大阪或いは神戸の支店との輸出入商売は殆んど全部向うの支店が直接の売買の相手となつていた。そうして向うでは向うの商社と売つたり買つたりしていたのでありまして、そこまで行かなければ本当の支店出張所を設ける意味はないのでありますが、これはどうもやはり金融の問題にからんで来ますので、戦後我々の海外信用というものがまだ確立しておりませんので、新たに外銀から向うでやる商売のフアイナンスを受けるという域に立ち至つておりません。そこでこれはやはり日本の銀行も向うへ支店出張所を設ける、その時期にマツチして支店出張所というものはすべきである。それまでは私は駐在員で十分目的を達する、駐在員自身は商売はしないのですが、向うの有力な商社と我々のところとくつつけまして、その商社の中にいつて我々のやつている商売を指導監督し、又連絡をやつて行くということで結構なのでありまして、支店出張所を今すぐ作れと言われましてもなかなか作れません。又その必要もないと考えます。と同時に一つ願わしいことはまあ支店出張所を作りますのに、日本の銀行が支店出張所を作らないでも、外銀に日本の銀行を通じまして外銀に融資させる方法であります。これはいわゆる外貨の貸付ということになりますが、外貨の貸付ということを、政府でも外貨の貸付は日本の為替銀行でもやつているわけであります。これを海外へ出します我々の支店出張所或いは出張員にもつと活用さして頂くということが大きな問題であります。もう一つは海外へ出しましても、これは出すだけの価値があるのです。必ず何か一人行けば一人行つただけの仕事はやります。価値があるので、商売が不振なときといえどもやつていて決して無駄なことではないのであります。これが先ほどお話のありました点と私は逆に見ているわけでありますが、ただその経費が、何とついいますか、向うの支出ができるような立場に今なつておりません。向うへ参りますときは優先外貨を以ちまして或いは三カ月とか、せい会、長くて六カ月程度の費用をこちらから用意して、その用意するにも随分ひまがかかるのでありますが、用意して持つて行きますので、仮に向うで少し費用がたくさん要つた、いろいろな面で費用が要つた、それを送金するわけに行かない。一つ考えられますことは、向うの商社に我々の受ける手数料の一部を向うへ残してもらつてそれから出してもらうという手があるのでありますが、これも厳格に申しますならば為替の違反になるのでありまして、そういう駐在員、或いは出張所、支店の経費の支出、即ち外国送金の手を緩めて頂く、政府もその御方針であると思いますが、これを成るべく早くして頂きたい。そうしてもう一つは外貨の貸付をもつと楽にして頂きたい。外貨の貸付と申しますのは、海外における外貨の貸付であります。日本の銀行を通していいのでありますから、日本の銀行を通して……外国の銀行を通して日本の商社というような方向へ外貨の貸付を楽にしたい、こういうことが至急にやつて頂きたい点なんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/47
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048・境野清雄
○境野清雄君 非常によくわかりまして有難うございました。新聞の記事が現実から離れておるというようなお話を聞いて非常に安心したのでありますけれども、政府におきましても若しそういうような問題が起るであろうことも一応予想して頂いて、一つ格段のお考え置きを願いたいと思うのであります。
次に中日貿易の促進会の鈴木さんに一、二点お伺いしたいと思うのであります。大体中共貿易は今日おいでになつておる各社の参考人の皆さんからのお話を聞きますと、大体中日貿易自体を余り政治問題化しないようにしてくれないか、政治問題化すると却つて先方の術策に陥るだろうというようなお話がありまして、これは私もよく拝聴したのでありますが、ただ中日貿易を実現化すという場合の方法として、従来と違つて、中国自体が私企業の圧迫と言いますか、私企業よりも政府機関のほうで一本でやろうというような状態になつておるので、どうしても日本自体も窓口を一つにいたして、殊にはこれは折衝したいが、なかなか問題があるのじやないか、こういうふうに思いますが、日本自体の窓口の一本化というものはあなたのほうとしてはお考えになつておるのか、すでにでき上つておるのか、言い換えれば政府自体がこれに対する折衝をすることが是と思われておるのか、業界のあなたのほうの中日貿易促進会というものがそれの仕事までやり得るのだというような態勢になつておるかどうか、その辺をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/48
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049・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) その点はなかなか今後の問題だろうと思います。御承知の通り中国自身は、こういう商業機関を、商業資本を工業資本へ転化する運動を大きな規模でやつております。殊に外国貿易のほうは経済封鎖の影響を受けまして、民営商社が資金の凍結やら、或いはソ連圏の貿易から排除されましたので、商売がなくなつたという点から今度の三反、五反運動というようなああいうような影響もありまして、国営貿易の方針が徹底して来ているようでありまして、その限りにおきまして向うの窓口は先ず一本になつたようで……殆んど一本になつて来ております。若干のまだ商社につきましては、例えば余り重要でない製品につきましては、民間商社でも集荷並びに販売を……相当輸出しております。少くとも対日関係におきまして重要な物資につきましては殆んど国営貿易が一本でやつております。今度の貿易協定におきましても、中国側の要望といたしましては、成るべくならば日本も一つの、連絡場所を一本にしてくれないかという希望があつたそうでございます。これは私どものところは今百社足らずの組織でございまして、これは占領下にありまして、今まで成るべく地味に、その幅を拡げませんで、必要な限りにおいてやつていたわけでございまして、今後はこのような小さな窓口では当分受けとめることはできんと思います。中国自身もやはりそのような要望を持つておりまして、成るべく広い窓口で、それが向うの計画貿易に相当信頼してやれるような、何かそういうような中核体みたいなものが欲しい。それをやりませんと、まあ言つて見ますと、今繊維機械の問題もございますし、或いは硫安の問題もございますし、或いは染料の問題もございます。それは現在までは紡機メーカーが全部集まりまして、一応は製造部面の、紡機の機関として問題は出しておるのでありますが、或いは油脂原料につきましては製造業者が中心になりまして、問題が出してございます。そういうように個々の問題では現在でも一応問題を供しておりますけれども、やはりバーターでございますので、全体のスケジユールが問題になるわけでございます。その限りにおきまして、今後これをどういうふうに受けとめるかということは、ここ暫らくの一番大きな問題ではないかと思つております。ただ、今までの中国の事情がよく日本に徹底しておりませんし、そういう関係で私どもの方は中国進出口公司とも一年半ほどまあ交際しておりますが、その限りにおきまして中国の意向が一応わかるわけであります。併し私どものほうがわかつておりますから、私のほうがそれになるということではございません。やはり何かもつと大きな経理機関が、やはり今後の問題も含みまして、当然生れて来なきやならんと思うわけであります。ただ、今のところは独禁法その他の関係がございますので、その機関が一つの事業をするということはできないかもいたしませんが、或る程度の連絡をいたしましてそれぞれの業界と十分な提携ができて行くことになるのではないかと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/49
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050・境野清雄
○境野清雄君 そうしますと、中共貿易のあなたのほうの協会としては現在の日本のとつておる方針と言いますか、いわゆるバトル法できめられておるものよりも、一層この貿易管理令にきめられているもののほうが制限を強化している、こういうような状態になつておるので、一つの例だが、紡績の機械なり、或いは塗料なり、染料なり、生ゴムなり、写真機械なりというようなものまでバトル法の線にまで拡大をしろ、そういうことを今の第一段階としてお考えになつておるというふうに解釈してよろしいのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/50
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051・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) それはいろいろ段階がございまして、先ず私どもはやはり中国貿易は具体化して実際やらなければなりませんが、現在やり得る範囲で先ずやつて行く。それから今後やはり国際的な標準に従つて成るべく政府に考えて頂きたい。それの資料なり、或いは中国側との折衝ということも、これは頭に置きますと、例えば今亜鉛引鉄板が非常に問題になつております。ところが市場一課の岡田君の話を聞きますと、ベルギーのものが今中国へどんどん入つております。それで我々がその亜鉛引鉄板の許可が下り得るような段階になつた場合に、或いは向うはすでに亜鉛引鉄板は欲しくなくなるかも知れないのであります。そういつた場合に、我々は商策としまして、やはり相当の向うに対する働きかけもせにやならんわけでございます。と同時に、それは余り飛び跳ねたものでございませんで、一歩々々そのような国際的な標準に近付くように、いろいろな調査もし、或いは交渉もして行くような面が出て来ると思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/51
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052・境野清雄
○境野清雄君 例えば今の問題で紡機というものを、蘇州なり、杭州なりへ輸出するという場面を一応想定しませば、勿論これは日本自体で作りました紡機を輸出するのでありますけれども……、するということは、従来の例から見ましても、中共においてはこれを据付けまで日本が完了しなければ、なかなかこれは受渡しの最終段階まで行かないのじやないか、こういうふうに思われる。併しそういう面はよく私は知りませんが、先般松本治一郎氏にしても、大山郁夫氏にしても、渡航の許可がまあ、ああいうような問題になつておる。このときに、この紡機なら紡機を輸出して、最終受渡しまでに、非常に必要なこれに対する技術員というものの渡航というものは、勿論私は許さないのじやないかというふうに思いますが、そういう点に関してはあなたのほうはどんなお考えでおられるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/52
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053・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) それは勿論複雑なプラントを輸出します場合には、今後の問題になると思います。それから又そこまで行きませんと、西欧と対抗いたしまして、我々の機械輸出ということは、もう非常に不利になると思います。併し現段階におきましては、そのような機械が今のところは出せないわけでありまして、まあせいぜい今問題になつておりますのは、紡績機械でございます。併しこの紡績機械につきましては、もう中国自身すでに自家製造、自国製造をしております。それで据付け能力も十分ございますし、又日本の技術者もまだ実は残つているわけでございます。そういうことで差当りのところは我々はFOBで機械だけを売りましてもそれで最終の責任がとれるというような取引の恰好になつております。でありますので、現在まあそこまでの心配は現段階ではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/53
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054・境野清雄
○境野清雄君 大体まあ中日貿易というものはこれは非常に我々としても重大に考えなくちやならん問題だと思うのですが、私の考えとしては大体中日貿易というものに対しても非常に私は危険性があるのじやないか、危険性があるということは言い換えれば政府自体が自発的にと申しますか、政府自体が中日貿易をやらなくちやならんということになれば、中日貿易を政府が振興策を講ずるのだという裏に廻ればこれはそういう場合には商船が拿捕された場合はそれに対する補償を講じろとか、或いは保険の面に関してもこうしてくれ、ああしてくれという条件が相当出せるのではないか、出せないで業界のほうで逆に政府のほうにやれやれというので無理にやらせた結果では私はそういうような条件が具備されないので不測の損害をこうむるような場合が相当私は中日貿易というものには起つて来るのじやないかということを相当危惧しているのですが、そういう点に関して今あなたのほうの中日貿易促進会としてはどんなようなお考えを持つていらつしやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/54
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055・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) 現在までその点が非常に心配であつたわけです、おつしやるように。それでいろいろ取引をいたしますときにはそれとそれの国際的な関係におきましてそれがギヤランテイされているような恰好をとつているのであります。例えば私どもが輸出しますときにはやはりスターリングの銀行保証状をとつて最終まで保証してもらつております。それは輸出品の予定利益金よりも或る程度の危険を超えた価格におきましてその金額をギヤランテイしております。これは勿論今までギヤランテイのソース又バンク・オブ・チヤイナでございますけれども、それを国際的にインターバンクにクレーいたしまして当面のところはインドシナ銀行がこれを保証しております。私どものほうではバンク・オブ・チヤイナとは直接日本の銀行は取引がございませんが、インドシナ銀行経由で今のところは東京銀行までそのギヤランテイをエクステンドせられるようになつております。その点は今のところ心配ないと思つております。それで取引をいたしますれば当然そういうようないろいろな危険というものをこれはカバーして、例えば戦争保険も十分見込んで国際的に十分これを第三国を通した恰好におきましてカバーしてございますので、それで実際の取引にも支障がない。現実にもかような取引を行なつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/55
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056・中川以良
○中川以良君 私は三角貿易についてちよつとお尋ねしたいのでありますが、先ほど西本さんの御説明を伺つたのでありますが、今日この種の貿易が行われておるのは生糸のみでは私は決してないと思うのであります。そこで先ほどのお話によりますると、一応今の貿易の状態はこの推移を当分見守つてもらいたいというような御意見でございましたが、ただ私ども懸念をされますことは例えばアムステルダムとかロツテルダムに拠点を有しまする外国商社がこの操作によつて相当巧妙に利益を得ていると思います。その半面今のお話では闇ドルで来るものの引合はこれを受付けないとおつしやいましたけれども、果してこれは実勢レートで得たボンドであるか、或いは公定レートで得たポンドであるかということはこれはなかなか私は区別がつかないのではないかと思います。そこで例えばオランダあたりに徒らにドルを稼がれる、日本の商社自体は、円貨においては何ら影響がありませんが、日本に半面ポンドが溜まり、ドルが来るべきものが来ないという点がこれが懸念されることと思います。併しこれはそのために私はポンド地域の輸出を制限するようなことはすべきじやないと思うのです。これは八幡製鉄の稻山重役がおつしやつた通りでございますし、又岡本社長の御説でもさようなことが御主張になつておるのでありまするが、そこでこれをどういうふうにやつたらいいかという問題でございまするが、要するに溜まつたポンドの有効なる使途と、それから又ドルを如何にして余計に稼ぐかという二つの問題が考えられると思うのであります。先ほどのお話で輸出に対して報償金制度をとるようなお話があつたのでありまするが、然らばその報償金制度というのは具体的にどういうことを考えるか。いわゆる優先外貨の面を、ドル地域に対する優先外貨の面を主張しておられるか、何かはかに具体的な案をお持ちかどうか、その点を一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/56
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057・西本勇次郎
○参考人(西本勇次郎君) 今の御懸念御尤もなんですが、果してこれが闇ポンドか正規のポンドかということはなお識別困難とお説の通りなんですが、それでは地域的に我々照会先によりまして大体判断がつきますので、例えばインドネシヤから生糸の照会が来たり、或いは南米の機屋のないところから照会が来た場合においては一応眉つばものとして受付けていないというのが現状でございます。ただ今度の場合はとにかくオランダの政府がドル獲得のためにダラー・ドライビングのために相当な報償金を現実に出しておる・イギリスに持つておるポンド預金がドルに換金できないものですからこういう操作をしているわけでございます。併しそれと同じように日本もイギリスに持つておるポンドの操作に困つておる、同じ立場にあるわけでありまして、片方は報償金を出し、日本は報償金を出していない。そこに問題が起きて来るので、従いましてオランダの出すだけの報償金を日本の政府がお出し下されば無論この照会がとまつて直接アメリカへ荷物が行くわけなんですが、併しなかなかおいそれと急に報償金を一割下さいと実は申し上げたいのですが、実現困難なので取りあえず例の優先外貨を一割五分なり二割なり特別に生糸に出してもらいたい。乃至はその使用を別個に考えて拡げて頂きたいというようなことを陳情いたしているようなわけでありまして、それによりましてアメリカへ出せばその代償が得られますからわざわざオランダへ売らなくてもアメリカへ行く、こういう工合に考えるわけです。ところで今おつしやるように、然らばドルが必要だということは今わかつているのですが、今度はそのままそれでは抑えたら果してアメリカへ輸出されるかと申しますると、我々はそうでないということを主張しておるわけであります。抑えますればアメリカ向けの生糸は輸出が非常に阻害されまして、自然アメリカのストツクが減り消費者はますます萎縮して行くことが心配されます。放つて置いたつて買うものは買うというような御議論がありますが、これは実際、例えば今の先ほど申上げたように、生糸は今アメリカで四ドル五十セント、戰前二ドル五十セントか三ドルのものが四ドル五十セントにも八十セントにもなつておるのであります。半面人造繊細が割に上つておりません。レーヨンのごときものは戦前七十セントのものが七十三セントになつておる。人絹と生糸と比較しただけでも生糸のほうが割高でございます。のみならずそのほか化繊、御承知の通りナイロン、最近はデビロンなんていうものが出て参つております。新らしい繊維の攻勢も、生糸として見ますれば敵が現われておりまして、生糸の消費分野を侵蝕しようとしております。その際におきましてこの高い値段の糸を売込もう、何もせんままにただ漫然と見ながら糸を売込もうとするということは非常に困難であります。何としてもこれは糸価を下げなければならん。併し糸価を下げましたのでは増産が思うようにできなくて養蚕家から苦情が出る。先ず増産しよう、増産をして置いてから輸出をしようということが考えられますので当分の間片方で日本の糸価を維持しながら増産をし、片方でドル価格における生糸の値段というものをできるだけ安くして輸出を維持して行きたい。その間隙を縫いましてこういう三角貿易なんていうものが起りましたが、物を売りまして、一つには多々ますます弁ずというような態度に出まして大所高所からやつて頂きたいというのが我々の意見なんでありまして先ほども申上げましたようにこれは一輸出面だけの問題でなくて、うしろに生糸養蚕の蚕糸業そのものが控えており、海外にはデイラーの立場がございますし、何か相場にシヨツクを与えますようなものがありますると自然、糸の消費に影響を来たす問題だと、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/57
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058・中川以良
○中川以良君 そこで通産省に私は承わりたいのでありますが、過日の委員会でこの問題御質問申上げたのですが、どうもはつきりした御答弁がなかつたのでありますが、三角貿易に対する今、通産御当局としてはどういうふうにお考えか、今の御意見等に関連してどういう施策をおとりになるのか、或いは当分傍観をされるというのか、又ドル地域の輸出に対する今の報償金の問題が出ましたが、これに対する報償金制度というものを将来おとりになるお考えがあるか、或いは優先外貨のいわゆる取得利子というものを思い切つて上げようというお考えがあるのか、その点を一つ承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/58
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059・本間俊一
○政府委員(本間俊一君) 実はこの生糸の問題は中川さんも御指摘になつたのですが、貿易の本筋の上から見ますと、御承知のようにアメリカへ行つておりますものが減つておるのでございますから、いろいろ考えておるわけでございますが、さりとて輸出組合の協会のかたのお話のように問題もありますので、いろいろ実は思案をいたしておるところでございます。正直に申上げて、片方を抑えればアメリカのほうが殖えやせんかというような実は気もいたしておるのでございますが、まだどうするというような態度も最終的にはきめておりません。
それから優先外貨の問題ですが、これは実は今年の春でしたか、手直しをいたしまして、多少でしたか歩をよくいたしたのでございますが、或いは又更にというような御希望もあるかも知れませんが、一度実は手直しをいたしておるわけでございますので、今すぐ報償金を出すというふうには考えておりませんけれども、大体正直に申上げまして、そんなような考えで只今思案いたしておるところであります。小発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/59
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060・中川以良
○中川以良君 今思案中というお話があつたのでありますが、どうもとかく貿易政策は思案々々している間にどんどんテンポが進んでとんでもないことになる。すでに戦前の備蓄輸入が最もいい実例でございます。そこで通産省当局はどうぞ産業界の意向というものを十分お酌み取り願つて、一つこの際御善処にならんことを要望いたします。(「自由党でもそう思うか、自由党がそう思うなら」と呼ぶ者あり)小杉さんに伺いたいのですが、先ほどのお話で絹、人絹は商品金融の対象になつておるが、綿糸布はなつていないので困つておるというお話がありましたが、それはどういうことなんでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/60
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061・小杉真
○参考人(小杉真君) それは昨年の末我々繊維関係の十団体が連合いたしまして大阪の日銀へ出向いて商品の担保金融というものを一つこの際促進して欲しいということをお願いした際にも申上げたのでありますが、御承知のように商品担保金融というのは、日本銀行の融資の制度の中に商品担保金融というのがございます。それは日本銀行が指定した営業倉庫に商品を倉入れして、その証券を担保に貸す場合なんでございますが、その制度の中に綿織物が入つていない。これは昨年の五月まで綿糸布が統制物資でございます関係で、担保価値がない、その以前は国有綿でございましたので担保価値がない、担保にならないという意味で商品担保金融の対象物資になつていなかつた。これは今でもそうであります。これでは困りますので、それから現在の日銀の指定倉庫は絹、人絹が主になつておる関係で、福井関係に営業倉庫が多い関係で、これはやはり商品担保の対象にするのであるならば、阪神の営業倉庫を日銀の指定倉庫に追加しないといけないと思いますが、その辺の準備も一向進んでおらないようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/61
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062・中川以良
○中川以良君 通産当局に伺いますが、今のお話ですが、統制を外して大分たつのでございますが、そういう状態でございましようかどうでございましようか、実際……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/62
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063・本間俊一
○政府委員(本間俊一君) これは御指摘のような関係になつておるので、実は話合いをいたしております。まだ最終的にはきまつておりませんが、話合いをすることにいたしまして、することじやない、現在にはたびたび話合いをいたしておるのであります。
それからさつきの生糸の三角貿易でありますが、これは正直私は余り早く決定しないほうがいいのじやないか、もう少し様子を見たほうがいいのじやないかというふうに思つておりますので、その辺も一つ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/63
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064・境野清雄
○境野清雄君 今の小杉さんのお話ですが、人絹も、人絹の布としてはそれは許可になつておらぬはずですが、人絹糸はなつておるはずで、担保物件の対象としてはやはり人絹布は入つておらないと思いますが、どうでしよう。陳情がたくさん来ておりますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/64
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065・小杉真
○参考人(小杉真君) 私のほうで日銀の支店長にお話したときには、人絹の関係はいいのですが、あなたがたのほうはまだなんで、実は私のほうもというお話があつたので、人絹の関係は、糸も布もその辺判然と念を押さずに私了解しておりますが、糸は少くとも入つておることは事実です。織物もそうだと思つておりましたが、或いは間違いかも知れません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/65
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066・中川以良
○中川以良君 今の問題は大蔵当局と御折衝の上一つ敏速にお取極めを願いたい。
それから一つ最後にお願申上げたいのは只今の法案審議上是非伺いたいと思うのですが、第十二条のいわゆる組合員の資格の問題でありまするが、先ほど来輸出業者並びに輸出品のメーカーをも入れろというお説が何人かのお話で出たのでありますが、これに対しては今の岡本さんや太田さんの御意見はどうなのでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/66
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067・岡本忠
○参考人(岡本忠君) これは私はメーカー、有力なメーカーと言いますか、その限界が非常にむずかしいのですけれども、そのメーカーを入れなくちやいけないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/67
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068・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/68
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069・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/69
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070・松本昇
○松本昇君 鈴木さんにお尋ねを申上げたいことは、新聞雑誌にはよく英国が長年あすこへ、支那にあれだけの投資をし、又今日まで大きな機関を持つて貿易をしておつたのに、ああいう英国人までも全部引揚げるような政策をしておるということも、いろいろなことが記事では出ておりますが、本当の真相の意味はどういうところにあるのか、それを一つあなたの立場でお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/70
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071・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) 私どもの一応判断いたしますところによりますと、第一はやはり中国の国を作ります最初から従来のまあ半植民地のような関係をできるだけ除つて行きたいというこの希望は国策として非常に強いわけです。まあそういうわけで、国内におきます例えばホテルだとか、或いは造船所だとか、そういうものにつきましては非常に国内産業に外国の資本が入つて来る、或いは外国勢力が入つて来ることについて非常に神経質なまでに警戒していたわけです。それで大体英国でもその点は或る程度の見通しはあつたのじやないかと思いますけれども、一応非常に大きな権益がございますので、これにステイツクしていたのじやないかと思います。併しながら事貿易に関する限りにおきましては、やはり問題は全然別でございまして、先ほどちよつとお話がございました香港の取引ということにつきましても、中国の最近の政策はまるで違つております。例えば英国とやります場合には、やはり英国本国とやるというように……。従つて日本とやります場合には、やはりその紛れをしませんで、極めて明確な取引をする、即ち日本と直接組んでやるという傾向が非常にはつきりして参りました。従つてまあ私どもから考えますと、例えばジヤデイン・マヂソン商会が天津に行くということは、我我が行けない限りにおいては、我々バンデイキヤツプでございましたけれども、実際はこの一年間の交渉を見てみますと、それほどの仕事はジヤデイン・マヂソン商会も天津でやつていなかつたようでございます。やはり直接対日関係のものは、私どもが今の国営機関にぶつつけた問題は、英国と対等の立場で処置されていたということが今にしてわかつて来ておるのでありますが、英国自身は、やはり直接商売をするのと、いま一つは船舶の関係では相当頑張るのではないかと思いますが、最近のコーポレーシヨンの手紙によりましても、英国船を積極的に使うというような恰好をとつておりますので、その点は英国としても執拗に粘るのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/71
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072・松本昇
○松本昇君 今のお話で、中国自身としても英国の権益というものは排除したいという考えを持つておるのでしようが、今後日本が、中国における以前のように、戦前のように、権益を余り主張しなければ、貿易だけはさつきお話のように、窓口がはつきりしさえすれば、行ける線が非常に強いというお見通しですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/72
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073・鈴木一雄
○参考人(鈴木一雄君) 貿易に関しましては中国側としては、非常に大きな対日関係の要綱を持つております。ところが不幸にして、朝鮮事変というものがございましたので、国際関係が非常に複雑になつております。従つて現実としましては、その限りにおけるぎりぎりのところで提案を出しております。勿論今の窓口のような技術的の問題は別といたしまして、日本の生産業と、向うの原料なり或いは国内市場というものを対象といたしました今後の提携……提携と申しますか、取引の途というものは、相当広汎にあるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/73
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074・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 本日は誠に長時間に亙りまして、殊に各会社、協会、会、こういうところの首脳部のかたがお出まし下さいまして、我々に審議の参考資料を与えて下さいましたことを厚く御礼を申上げます。本日はこの程度で散会いたしたいと思います。誠にどうも有難うございました。
午後四時四十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X04419520609/74
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