1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年三月十二日(水曜日)
午後一時四十二分開会
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委員の異動
三月七日委員鈴木強平君及び三浦辰雄
君辞任につき、その補欠として、木内
キヤウ君及び館哲二君を議長において
指名した。
本日委員清澤俊英君辞任につき、その
補欠として小林孝平君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 羽生 三七君
理事
片柳 眞吉君
岡村文四郎君
委員
宮本 邦彦君
森田 豊壽君
赤澤 與仁君
加賀 操君
小林 孝平君
三橋八次郎君
小林 亦治君
松永 義雄君
政府委員
農林政務次官 野原 正勝君
農林大臣官房長 渡部 伍良君
農林省農政局長 小倉 武一君
農林省農業改良
局長 清井 正君
事務局側
常任委員会專門
員 安樂城敏男君
常任委員会專門
員 中田 吉雄君
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本日の会議に付した事件
○農林漁業資金融通法の一部を改正す
る法律案(内閣送付)
○農業改良助長法の一部を改正する法
律案(内閣送付)
○ポツダム宣言の受諾に伴い発する命
令に関する件に基く農林関係諸命令
の措置に関する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○農林政策に関する調査の件
(農林業振興基本政策確立に関する
件)
(食糧増産五ケ年計画の件)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/0
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001・羽生三七
○委員長(羽生三七君) それではこれより委員会を開きます。本日の議事日程は、最初に農林漁業資金融通法の一部を改正する法律案が予備付託になりましたので、政府から、提案理由の説明を求めることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/1
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002・野原正勝
○政府委員(野原正勝君) 只今上程になりました農林漁業資金融通法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を御説明申上げます。
御承知の通り、農業倉庫は供出制度下においては、主要食糧保管の重要使命を果すとともに、自由経済下においては、米麦の農業協同組合系統による円滑な集荷配給上欠くべからざる重要施設でありますが、近年における資金、資材の不足のため、新設は勿論、災害の復旧、老朽化した倉庫の補修さえ容易でなく、そのため收容力の不足を来している状況であります。政府はこの状態を速かに改善すべく、本年度においても農林漁業資金融通法による低利資金の融通を行なつているのでありますが、特に昭和二十七年度においては大いに農業倉庫の新設を行い、この問題の解決を図るため、融資額を大幅に増加する所存であります。
然るに、農業倉庫は一般の営業倉庫と異なり、営利を目的とするものでないため、過去においても農業倉庫の建設については、多額の国の補助の下に行われたのでありまして、これが大幅な新設を図るためには、融資額の増加のみでは十分でなく、新設された農業倉庫の経営が、借入金利の負担に圧迫され、困難を来すことのないよう貸付金利を特に低利とする措置が必要なのであります。この点に関して、現行法においては、農業倉庫に対する資金の貸付は、年七分を最低としておりますが、右の観点から農業倉庫の新設に対する貸付としては、なお高過ぎると考えられますので、農業倉庫の新設を大幅に行い、この問題の解決を図ろうとする昭和二十七年度においては、特に年四分を以て貸付けることが必要と考えられるのであります。
以上がこの法案を提出した趣旨であります。何とぞ愼重に御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いする次第であります。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/2
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003・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 引続いてやはり予備付託になりました、農業改良助長法の一部を改正する法律案について政府の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/3
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004・野原正勝
○政府委員(野原正勝君) 只今提案になりました農業改良助長法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申上げます。
農業生産の増大及び農民生活の改善を図るために農業に関する試験研究の促進とその成果の的確な普及とを目的といたしまして、農業改良助長法が施行されましてから、すでに三年以上経過いたしました。その間の事情の概要を申上げますと、試験研究の分野におきましては、農事、畜産等試験場の整備統合が実施され、逐次農家の実態に即した試験研究の成果を挙げつつあり、又普及事業の分野におきましては、この制度が幸いに農家の希望に合致いたしましたので、普及職員の充実と相待つて、次第に農家の信頼も加わつて参つておるのであります。食糧自給力の向上を図りますことがいよいよ急務と考えられます現在におきましては、この目的を達しますため、農家が生産と生活について科学技術をできる限り取入れますことが根本かと存ぜられます。従つて政府といたしましても、試験研究と普及とにつきましては、今後とも一段と努力をいたす考えでございますが、これに関しまして、この法律をこれまで運用いたして参りました経験から、この際若干の改正をいたしたいと存ずるものであります。
今回改正いたそうとする主要な規定は四つございます。第一は、第二条の試験研究機関に対する助成基準についてでありまして、現在第三項において資金の交付を受ける試験研究機関の数がいずれの年度においても七十五を越えてはならないことになつておりますが、最近急増いたしました新制大学等における有用な試験研究にいたしましても、進んで適切な助成をいたしたいと考えますので、第三項及びそれに関連する第四項を削除いたしまして、資金の交付を受ける試験研究機関の数及び助成額の割合に関する制限をはずすものであります。
第二は、農林省の試験研究機関が積極的に都道府県農業試験場を指導援助する旨の規定を第三条の二として新たに置くものであります。もともと農林省の試験研究機関、例えば西ケ原の農業技術研究所にいたしましても、東北、関東東山等の地域農業試験場にいたしましても、都道府県農業試験場と密接な関係を持ちまして、事実上これを指導援助いたしておりますが、従来明文を欠いて法律上両者の関係か不明確でありましたので、これを新たに明文といたしまして両者の関係を一層緊密にいたそうとするものであります。
第三は、農業改良普及事業の範囲を拡大する第十四条の規定であります。従来農業改良普及事業といたしましては、專門技術員及び普及員が巡回指導、出版物の配付及び展示等の手段によりまして、農家を指導いたすこととされておりましたが、この事業を有効に実施いたしますために、普及員養成及び研修や農業及び生活の改善に関する農村青少年団体の幹部の養成等を実質的には普及事業の一部といたしまして実施して参つたのでありまして、又二十七年度からは営農試験地の制度も実施いたすわけであります。かようなわけで、農業改良普及事業の内容について、実質と形式とが合致するよう従来の規定の範囲を拡張いたすことが今後の施策を行う上に必要であると考える次第であります
第四は、農業改良普及事業の要めというべき專門技術員及び改良普及員の身分及び任務を明文といたしまして、その活動の促進を一層図ろうといたすものであります。
改正の要点は以上のような次第でございまして、何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたす次第であります発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/4
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005・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 只今説明を聴取しました両法案につきましては、質疑を後日に譲りまして、次の議題に移りたいと思います
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/5
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006・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 次はポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く農林関係諸命令の措置に関する法律案、これは予備審査になつておつたのが、衆議院を通過いたしましたので、本付託になつたわけであります。従つて本日はこの問題の審議に入りたいと思います。前に一応説明は政府から聞いておるわけでありますが、大分日も経過しておりますので、極く簡單にもう一度要点だけを聞きまして、極めて簡單な法律でありますので、でき得れば成るべく速かに採決したいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/6
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007・渡部伍良
○政府委員(渡部伍良君) ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く農林関係諸命令の措置に関する法律、これは第一点は肥料配給公団令即ち昭和二十二年勅令第百七十一号が昭和二十六年四月一日に失効したのでありますが、それまでになした行為は、同令に基いてなした行為に対する罰則の適用、及び肥料配給公団の清算に関しましては、日本国との平和条約の発効の、効力の発生の日以後もなお法律として効力を有するというのであります。御承知のように、肥料配給公団はすでに廢止になりましてから一年以上を経過しておるのであります。清算事務を継続いたしまして、殆んど全部を完了したのでありますけれども、なお多少の事務が残りまして、その事務は管財局のほうに引継がれて、肥料配給公団というものはなくなつたのであります。肥料配給公団の存した時代に、肥料配給公団令に基いて行われた行為に対する罰則或いは一部残つている清算事務に関しては、引続いてポ勅がなくなつてのちも、改めて法律として効力を有せしめよう、こういうのであります。
第二点は、食糧確保臨時措置に関する政令、これは昭和二十四年政令第三百八十四号であります。これは食糧確保臨時措置法と一緒になくなつていいのであります。これもポ勅がなくなりましたので、この際はつきりと法令の帳ずらから消して行こう、こういうのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/7
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008・片柳眞吉
○片柳眞吉君 この法律案は実体的には異議はないのですが、法律の恰好として第一条では肥料配給公団令は「平和条約の最初の効力発生の日以後も、法律としての効力を有するものとする。」こういうその肥料公団令を法律として真つ正面から直すということをしないで法律として効力を有するという恰好で差支えがないかどうか。恰好としてその点がはつきりした根拠がありまするかどうか。要するに公団令は失効して、併しそれが法律として効力を有するという恰好で果していいのかどうかですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/8
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009・渡部伍良
○政府委員(渡部伍良君) その点は法制局とよく相談しまして、公団令の条文をこの法律によつて新らしい法律として引移す、こういうふうに解釈しまして、まあ簡單に本来なればこの条とこの条は新らしい法律ということとするのが形式上すつきりするのかも知れませんけれども、一々拾うのよりも、まあほかのポ勅に基いてこういうのがたくさんありますので、統一的にこういうふうにやつたのであります発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/9
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010・片柳眞吉
○片柳眞吉君 それからこれはちよつと簡單な質問でありますが、肥料配給公団令は昭和二十二年の勅令百七十一号、それから食糧確保の臨時措置令が昭和二十四年の政令第三百八十四号、こうなつておりまするが、二十二年のときはこれはポ政令で、勅令で出ておつたわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/10
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011・渡部伍良
○政府委員(渡部伍良君) そうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/11
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012・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 他に御質疑はございませんか。……格別御質疑もなければ、先ほど申上げたように簡單な法律でありますので、採決をしたいと思いますが、それは明日に譲りまして、次の日程に移りたいと思います。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/12
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013・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 次の日程は、先に本院で議決いたしました農林業振興基本政策確立に関する件でありますが、この件について文書を以て先般政府から回答がありましたけれども、この詳細を本日は承わりたいと思うのであります。なお、政府において食糧増産五カ年計画というものが発表されたようでありますが、伝え聞きますというと、これは外へ洩れた程度のもので、まだ内部でコンクリートになつたものではないようでありますが、只今申上げました農林業振興基本政策と相当深い関連があると考えますので、この問題も併せて政府から見解を承わりたいと思うわけであります。最初に官房長から説明を承わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/13
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014・渡部伍良
○政府委員(渡部伍良君) 只今お話の農林業振興基本政策確立に関する決議に対しましては、別紙の通り回答を差上げておるのであります。その内容は一部はもうすでに昭和二十年度の予算案に取り込まれておるのであります。それを将来も更に一層拡充して行く、それと同時に新らしい部面も取上げて行きたい、こういうふうな内容になつておるのであります
この対策の根本趣旨といたしましては、先ず第一に食糧の総合的自給度を向上し得るような生産体制を整備し、治山治水につき格段の努力を払うほか、農林水産資源の維持培養を図ることが第一点、第二点としましては農業経営の安定のために主要農産物の価格の安定、災害対策並びに有畜営農の奨励等、必要な施設に資本を投入する等の方策を講ずる、更に、第三点としましてこれらの施策が十分に効果を挙げるために、農山漁村民の自主的な活動を大いに促進するような方策を講じて行きたい、こういうのが骨子になつておるのであります。この基本方針に基きまして以下のようないろいろな対策を講じて行きたいと思うのであります。
先ず第一に食糧自給度の向上のために農地の改良拡張及び耕地の改善に今後とも一層の努力をいたしたい、これはあとで先ほどお話がありました五カ年計画にからんで多少数字的に御説明申上げたいと思いますが、まあその点が第一点であります。
更に有畜営農の奨励と飼料の確保について今までの足りない点を更に一層進めて行きたいというのであります。これは本年度は家畜導入資金に対する利子補給等の施策を予算に計上しておりますが、有畜営農の問題はどういう家畜を入れるか、更にそれに対する飼料の問題、なお生産物の販売の問題という点につきまして非常にたくさん問題が残つておるように考えられるのでありまして、こういう点は今後の対策として大いに取上げて行きたい、こういうふうに考えます
それから次は單作地帯の振興であります。御承知のように單作地帶につきましては積雪寒冷單作地帯振興臨時措置法というのに基きまして、昨年度單作地帯の指定を行い、これにつきまして指定県では振興計画を立てまして着々やつておりますが、本月に入りまして更に地域の追加指定を行いましてこれを更に一層進めて行きたい、こういうふうに考えるのであります。
次には災害対策でありまして、災害対策につきましては毎年非常に金のかかることでありますけれども、災害の復旧を有効ならしめるために、非常に災害の激甚な地方に対しましては従来よりも国の補助率を増加するというような策も考えておるのであります。この点は本国会に法律案が出される予定になつております。
それから次は農林漁業融通特別会計の充実であります。農林漁業金融は、殊に設備投資に対しましては一般金融では非常にむずかしいところがあります。それから又助成金も十分でない、或いは助成金よりも金融のほうがいいという部面もありますので、そういう点を助成金、一般金融、短期金融と合せまして、設備金融に対しましては更に現在の制度を拡充して資金の充実も図ると同時に、融資の制度につきましてもいろいろと改善して行きたい、こういうのでありますその次は食糧統制につきましては強制供出というような制度にはいろいろの改善を加えて行きますけれども、価格並びに需給の調整を図りまして、生産者の立場と国民生活の安定とを確保するような制度を順次確立して行きたいというふうに考えております。農業経営の安定につきましては、第一に農業災害補償制度の整備をし、制度の強化を図つて行きたい、この点が第一点であります。この点につきましては制度を根本的に改める、即ち現在の一筆ごとの災害補償制度を農家單位ごとに改めるようなことも研究して行きますし、或いは又共済組合運合会の非常災害による不足金については基金制度を設けて長期的な均衡を図つて行つて、共済組合制度の円滑な運営を期して行きたい、こういうふうに考えております。それから又保険料率の改訂につきましても、今後更にいろいろな角度、即ち災害の状況、或いは今の農家單位にやる場合と一筆單位にやる場合との相違というような点を考えまして、順次改善を加えて行きたい、こういうふうに考えております。それから男第二は農地改革の成果維持であります。折角自作農になつた農地を手放すというような現象もちらほら出て来ておるので、そういうことのないようなことを制度的に考えて行きたいというので、これは本国会に農地関係諸法令を整備しまして農地法として提出する予定にしております。それから農業協同組合の育成強化、これにつきましては、現在の組合の再建整備法に基きまして再建整備を進めておりますが、更に協同組合自体の内部の充実ということを図らなければ、農村経済の向上ということも期しにくいと思いますので、定例検査制度を更に充実するとか或いはそのほかの組合の強化の策を今後講じて行きたい、こういうふうに考えております。それから繭糸価格の安定につきましては、繭糸価格安定法の運用によりまして今後繭の増産と生糸の輸出の増進を図りたい、こういうふうに考えております。
次に資源培養対策でありますが、治山事業の整備強化造林の拡充及び奧地林道の開発を今後更に進めて行きたいと思います。一方におきまして森林資源、即ち主として木材等に対する需要が非常に強大であります。併し一方国土は濫伐によつて荒れておりますので、その間の調整を図る必要がございますので、一方においては荒れた山林を造林によつて早急に改めて行くと同時に、木材の需要を満たすためには、奧地林の残された森林資源を充てるというふうな方策のために、奧地林道を整備して行きたいというふうに考えております
更に食糧の総合的な需給と、延いては日本の国民の食生活の向上的な改革をも考慮に入れまして、例えば蛋白資源であるとか脂肪資源というようなものの方面につきましても、水産増殖事業の拡充強化、その他漁法のいろんな底曳網漁業とかいうものの整備の促進とか、遠洋漁業における外国との調整漁業協同組合の育成強化、漁船保險、制度の改善等の措置を講じて行きたい、こういうふうに考えております。
更にこれらの効果を十全に発揮するためには、農山漁村民の団体組織を進展する、経済事情に合うような組織にし、農民の自発的な意欲を振起する必要がありますので、農業改良普及態勢を中心としまして、農業委員会を活用する、或いはこれに必要な改善を加えるというようなことをやつて行きたい、こういうふうに考えております。
こういう方針に基きまして、差当り我々のところで米麦を中心とする増産計画の分だけが或る程度未定稿ででき上つておるのであります。その点を続いて御説明申上げたいと思います。これは一部新聞に出ておりますので御承知のかたもあると思いますが、米麦、畜産、水産というふうに順次コンクリートに固めて行きたい、こういうふうに考えておるのであります。先ず米麦を中心とする計画につきまして御説明申上げたいと思います
いわゆる主要食糧の需給の将来の推測を申上げますと、人口の増加による食糧の増加必要量はどういうふうであるかと言いますと、人口の増加は厚生省の人口問題研究所の推定によつて見ますと、大体百二十五万から漸次年を経るにつれて増加率は減りますけれども、百十万程度までここ十年間ぐらいの間には年々殖えて行くようであります。そうしますと人口増に伴う食糧の所要量は一年間に百四十万から百二十万石ぐらいの増加が必要になつて来ます。更に毎年の耕地の潰廃、施設の老朽等によりまして、大体年々百万石程度の生産減が起つているように考えられるので、これを併せますと二十六年度におきましては我々のところで一応千九百五十万石の主要食糧、米麦を中心とする主要食糧が不足という数字になつておりますので、今の人口増と耕地の潰廃、施設の老朽等による生産減を考えますと、二十七年度には二百四十万石増加しなければいけない。従いまして千九百五十万石に今の二百四十万石を加えますと二千百九十万石程度の食糧が不足して来ると、そういうふうな計算によりますと、二十八年度は二千四百二十八万、二十九年度は二千六百六十四万、三十年は二千八百九十七万、三十一年度は三千百二十七万というふうな数字になります。十年後の三十七年度には四千四百七十二万というふうな不足が出るという勘定になります。これは増産計画をやらないで、現在のままの状態で、人口増と耕地の潰廃、潰減による不足がどうなるかというその累計をとつたのであります。これに対しまして現在まで農林省の手許で調べがついております増産の可能性を考えてみますと、例えば農地改良拡張による食糧増産の可能性は、只今お配りしました表の二枚目のところを見て頂きたいと思います。これは金の面、それから年数というようなものを度外視してどれだけの可能性があるかというのを集計したのであります。例えば水田の改良につきましては、四百六十七万町歩に対していろいろな事業をすることによつて、千二百六十五万石の増産が期待できる、そのためには総事業費が五千二十億要る、そのうち国家の補助を期待するのが二千百七十七億ある。で用水の改良でありますとか、排水の改良、区劃整理、冷水田用の用水改良、或いは秋落田の客土というふうなものに対して、それぞれの反当の増産試験成績に基く増産量を掛けまして、大体水田の改良につきましては千二百六十五万石の増産が期待できる。畑地の灌漑につきましては四百八十万石開墾事業につきましては九百三万石干拓事業によりましては二百三十八万石、合計二千八百八十六万石が農地の改良、拡張によつて増産ができる可能性があると、こういうふうに考えられるのであります。
でこれを然らばどういうふうに実施することができるかというので一応試算をしてみたのがその次の表でありまして、これを短期間にやることは到底できないのでありまして一応五カ年間にどれだけくらいの事業ができるかというのを推定してみたのであります。そうしますと農地の改良、拡張によりまして三十一年度までに千百五十二万石の増産ができる。それから耕地の改善によりまして三百六十三万石の増産ができるだろうと、合計五年後の三十一年までには累計しまして千五百十五万石の増産ができるだろう。そうしますと、第一表で見ましたように、人口増による消費の増と、耕地潰廃等による減をどれだけカバーしてどれだけの余裕があるかというふうに考えますと、需要の増として充たさなければならないものが千百七十七万石でありまして差引三百三十七万石の純増が期待できるこういうふうに考えられるのであります。但しこれは三十一年で切つたのでありますが、三十一年度に施行した工事によつて三十二年度以降にその効果が出て來ますので、これを考えますと、三十二年度は更にその上に三百六十一万石程度のものが殖えますので、かれこれ七百万石程度のものが人口増加その他減收をカバーしてプラスになると、こういうふうに考えられるのであります。従いましてこれを現在の仮に七百万石の増産が期待できるとしますれば輸入食糧の約三分の一を五カ年後にはカバーすることができると、こういうふうに考えられるのであります。
で、この増産計画を達成いたしますためにはどういう施策を必要とするかというのでありますが、それはその次の頁を見て頂きたいのであります。先ず土地の改良でありますこれは第四表で御覧を願いたいと思います。それから保温折衷苗代による水稻の増收それから裏作麦とか、飼料作物の導入、通し苗代の解消、そういうこともやる。保温折衷苗代による水稻の増収というものは水稻それ自体が殖えるのみならず水稻の栽培期間、或いは時期を短縮し或いは変更することによりまして裏作導入の可能性が非常に大きく出て来ておるようであります従いまして保温折衷苗代による増産というものを今後相当期待できるのじやないか。それから又地方の維推増進としましては、推厩肥の増産であるとか、緑肥の増産であるとか、酸性土壌の矯正、秋落水田の矯正を更にやつて行きたい。病虫害防除、品種改良、優良品種の普及そういうことも大いにやつて行きたい。そのほか右の施策を十分にやるためには低位生産地の調査を更に一層進めて行かなければならないし、土壌の改善、施肥の改善その他耕種の改善の施策を更に強化する必要があります。それから又肥料の施用につきましては、硫酸根の肥料の増進によつて硫酸根肥料の施用を相当節約する余地がある。それから灌漑用水を利用する客土であるとか、山林、牧野、農地を通ずる土地利用の高度化ということ、治水事業の実施については利水との調整を十分に図るように留意する。農業改良普及員の質の向上と農業団体との連携を強化する。試験研究につきましては、地域農業試験場における試験研究を拡充すると共に営農試験地を設置する等に留意します。更に新技術、例えば西南地方における水稻に対する二期作を考えますとか、或いはもつとつき詰めれば、螟蟲の防除によりまして颱風時を避けた稻の作付けというようなことなどもやつて行かなければならないというふうに考えております。
これを煎じ詰めますと、結局どれだけの金が要るかということでありますが、土地改良によりまして所要資金は五カ年間に補助金としまして二千百七十二億円、融資としまして千六十四億円、耕種改善におきまして百十億円、合計五カ年間に二千二百八十億円余りのものを必要とするのであります。融資をこれに加算しますれば、融資と補助金では三千三百四十億円余りの財政資金又は財政的な資金を必要とするというふうに考えておるのであります。勿論今後の財政状況或いは更に精密な調査によりまして計画を順次改善して行く必要がありますが、現在我々の手許で採用しておりまする五カ年計画というものは以上の通りであります。
なおこの表につきましては初めに申上げましたようにまだほんの未定稿でありまして、皆さんがたのいろいろな御示唆によりまして更に立派なものにして行きたいと、こういうふうに考えております。従いましてこの表は農林省の確定的なものとしてお取扱いのないように願いたいと思います発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/14
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015・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/15
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016・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/16
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017・小林亦治
○小林亦治君 本会議でも説明されておつたように、なおまだ百五十万町歩の開墾可能地があるんだこれをやれば約千二、三百万石の増産が期待できるんだからうという極めて適切な御答弁があつたのです。それが当時の農林当局の御意見だとするというと、今の説明にはそれが更に盛られてない、こういうことが先ず一つ指摘せられることと、それから只今のところで政府が非常に自慢をせられて、食糧関係費を四十五億増加せられたとこうおつしやるのですけれども、これは例えば開拓費なんかに労賃の見積り額が非常に少かつたのを最近の適正労賃に直したところの穴埋めの数字が殖えたというだけですから、量的な増加には何にもなつておらない。多くの内政費を削つておりながら、食糧関係費ではかように殖やしたとおつしやつておるんですが、併し現在の食糧増産を要する問題とからんでこれを考えて見ますると、総予算の僅か二・六%、これでは食糧増産政策というものが出て来ないので、まあ二・六%が二六コンマくらいにならなければ政府がおつしやるような宣伝にはならないと思う。ですから自由党政府が選挙が追つたからかようなことをにわかに言い出したんじやないかと思うのですが、今おつしやる抽象的な御予定をどうか一つ大きくここに具体化せらるるような成案をお持ち願つて我々の期待に応えてもらいたい、まあそれだけ御注文申上げて置きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/17
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018・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 今小林さんからも御意見があつたように、率直に言つてこの回答文はかなり問題の羅列に終つて、実質上の効果がどこまで期待できるかということに若干の疑義があるわけです。特に私ども感じることは、戰争中或いは戰前のいわゆる軍事国家的の形での食糧自給というものには我々は必ずしも同意できないのですが、併しまあ広い意味の自給体制というものが、最近の防衛問題なんか協議されておる客観的な事情、国際情勢と睨み合して、いわゆる新らしい角度から再検討を要するという時期だと思うのです。そういう場合に農林省部内でこういう基本政策を検討されることは、各部内あたりの意思がどこまで共通したものとして確立されておるか、或いは農林大臣はもとより、大蔵大臣あたりが積極的にこれを達成するためにどの程度の協力をするかというようなことが実質上の問題になつて来ないというと、一片のペーパー・プランに終る危険があるので、来週早々に食糧自給関係で食糧庁長官の意見を聞いて、その直後合せて一つ、これは官房長みずからは困難と思いますので、大臣なり次官に出てもらつて一つ根本的にこの問題を検討したいと思うのでありますが、一応お伝え置き願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/18
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019・渡部伍良
○政府委員(渡部伍良君) 承知いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/19
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020・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 本日はこの程度で散会をいたします。
午後二時三十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X01219520312/20
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