1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年四月十六日(水曜日)
午後一時四十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 羽生 三七君
理事
西山 龜七君
加賀 操君
委員
池田宇右衞門君
瀧井治三郎君
宮本 邦彦君
飯島連次郎君
三浦 辰雄君
三橋八次郎君
松永 義雄君
衆議院議員
坂田 英一君
藥師神岩太郎君
政府委員
農林政務次官 野原 正勝君
農林省農政局長 小倉 武一君
事務局側
常任委員会專門
員 安楽城敏男君
常任委員会專門
員 中田 吉雄君
説明員
農林省農地局災
害復旧課長 堀 直治君
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本日の会議に付した事件
○主要農作物種子法案(衆議院送付)
○急傾斜地帶農業振興臨時措置法案
(衆議院提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/0
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001・西山龜七
○理事(西山龜七君) 只今から農林委員会を開きます。
予定に従つて第一に衆議院議員坂田英一君ほか二十三名提出、主要農作物種子法案(予備審査)を議題といたします。先ず提案者から提案理由の説明を聞くことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/1
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002・坂田英一
○衆議院議員(坂田英君) 主要農作物種子法案の提案理由を御説明申上げます。
米麦等主要食糧の増産を図り、国内においてその自給率を高めますことが我が国の自立の基礎條件であることは申上げるまでもないところであります。従いまして施策の重点が米麦の増産に集中されていることは当然でありますが、米麦の増産のためには、優良な種子を確保し、これを普及するということが根本的な方法であると存ずるのであります。然しながら米麦の種子につきましては、需要者が極度に現金支出を嫌う農家であり、而も自家採種ができますので、優良な種子の導入が増産の要諦であることを知りながらも、自発的にはこれを行なつていないというのが実情であります。一方優良な種子を生産するためには特別の技術と管理が必要とされ、その生産費が一般の米麦作に比較しておのずから高くなるにもかかわらず、その收量は一般米麦作に比して低位にありますので、その種子は高価なものとなり、かくては農家の需要の減退するのは自然の理であり、従いまして優良な種子の栽培、普及は到底望み得ないのであります。
ここに国又は地方公共団体がその生産と普及について特別の指導乃至助成を行う必要が生じて来るのであります。歴代の政府においても、このことの重要性に鑑み、つとにこれらの種子の生産及び普及事業のための助成と指導をいたして参つたのでありますが、その施策は必ずしも一貫性を持たず、さしたる効果も挙げ得なかつたのであります。御承知のごとく優良な種子を確保するには、單なる種子の現品検査を以てしては到底実効を期しがたいのでありまして、圃場において栽培中の農作物につき出穂、穂ぞろい、成熟状況等について審査を行い、優良な種子としての適否をあらかじめ判定する制度を確立し、農民が安んじてこれら圃場において生産された種子を導入し得るような体制を整えることが肝要であります。これと同時に、圃場経営者に対しては勧告、助言及び指導を行い、当該圃場産の種子用米穀の供出免除の措置を考慮し、併せて財政的援助を行つて始めて優良な種子の生産確保並びにこれが普及の効果を期し得るのであります。かかる優良な種子の生産、普及に関する国、都道府県の指導助成の基本方針を確立し、これが制度の恒久化を図るために、今回ここに本法律案を提出したのであります。これが本法律案を提出した理由であります。以下法律案の主要な内容について概略御説明申上げたいと存じます。
先ず第一は、生産、普及の対象となつている種子は稻、大麦、はだか麦及び小麦の種子であるということであります。先に申上げました通り、米麦は我が国農業の基本的作物であり、国民食糧の根幹であり、その優良な種子の生産確保並びにこれが普及は極めて大切なものであるにもかかわらず、例えば蔬菜類のごとく他花受精するものを自家採種すれば発芽直後より著しい異型退化の現象を呈するのでありますが、稻麦等につきましては、いわゆる自花受精いたしますため、自家採種が行われ、優良な種子の生産及び普及が最も行われがたいものなのであります。さりとて精麦等も毎年これを自家採種すれば、遺伝因子の分離、一部自然交雑等によつて種子は品質、生産力共に低下して参りますので、過去の試験成績によつてみても最小限度一年おきに專門的に採種した優良な種子と更新する必要があるのであります。従つて本法律案にいわゆる種子とは米麦の種子を言うのであります。第二に、優良な種子の生産を確保いたしますために、都道府県は種子の生産圃場を指定種子生産圃場として指定し、指定を受けた者に圃場審査を受けることを義務づける一方、国はその経営に要する経費の一部を補助し、その生産費を補償することによつて一般農民が等量の米麦で以て優良な種子と交換し得る途を拓き、以て優良な種子の普及を図ろうとするものであります。なお、指定種子生産圃場において生産された米麦については、別途食糧管理法に基く供出の免除を行う方針であります。
第三に、只今申上げましたように指定種子生産圃場については都道府県の圃場審査を受けるべきことをその経営者に義務づけたことであります。優良な種子であるかどうかの判定はもみについてだけ検査を行なつても十分にこれを確認することは困難であり、且つ又、農産物検査法による検査は種子としての合格、不合格を判定することを目的としたものでないのでありまして、どうしても立毛について公的機関が別個に審査して、将来種子として適格であるかどうかを認定すると共に、優良な種子の生産のために必要な指導を加えることが肝要なのであります。これが圃場審査を義務づけたゆえんでありまして、圃場審査に合格いたしました者に対しては、圃場審査証明書を交付いたすことになつておりますので、その圃場において生産された種子は一応優良な種子として農民が安んじてこれを使用し得ることと相成るのであります。而してこれら指定種子生産圃場において使用すべき種子を供給するためにいわわゆる都道府県において原種圃を経営することとし、これらの府県に対して国が所要経費の一部を補助すべきものとし、優良な種子の供給を図ることといたしたのであります。
第四に、優良な種子の生産を確保し、更にこれら種子の使用を農家に普及させるために都道府県に、市町村、種子の生産者等に対して必要な勧告、助言及び指導を行うべき義務を課し、これに要する経費の一部を国が補助し得ることにいたしたのであります。
以上のような措置を恒久的に制度化することによつて、米麦の優良品種の確保を図り、食糧増産という国家的要請に応えんとするのが本法案の骨子でありますので、何とぞ愼重御審議の上速かに御賛同を得られますよう、切望する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/2
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003・西山龜七
○理事(西山龜七君) なお、本法律案の審議は後日に譲ることにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/3
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004・西山龜七
○理事(西山龜七君) 続いて急傾斜地帶農業振興臨時措置法案の審議に移ります。
なお今日日は提案者を代表して衆議院議員藥師神岩太郎君、政府から野原農林政務次官、説明員として農林省農地局河井管理課長、堀災害復旧課長が出席せられております。順次発言を許しますから御了承を願います。それでは直ちに質疑に入ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/4
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005・三浦辰雄
○三浦辰雄君 提案理由を読んで見ますと、大体意図するところはおぼろげながらわかるし、私どもこの法案自身について不要であるというようなことを申上げる気持はないのでありますが、衆議院等におきまする速記録を読んで見てもはつきりしない点が多々ある。で、これはこの際にはつきりして出発をさせることが最も肝要な点だと思うのであります。そこで差当り気付きました点を幾つか御質問申上げたいわけでありますが、先ずこの提案理由の中で、過去現在を通じて、これらの特殊な環境、段々畠のような特殊の環境に包まれる地帶の農業について、国が一定の体系の下に特別の施策を講じたという例は絶無だということはどういうことを意味しているのか。これが農業行政の盲点だとさえ言われておるのでありますがこの意味を一つ承わりたいことと、それからもう一つは、この特殊環境下の農業をしてその生産基盤の整備と苛烈な労働條件の緩和とを図ることとなるならば、この地区の農民は喜んで安心してその天職に精進することができるというふうに言つているのであります。それについて私はこの法案の大体の狙いの裏を返すというと、非常に低位生産である地区に対してもつと厚くこれを国家財政としても援助をすべきである。そういう意味から出ていると思うのでありますが、先にはいわゆる積雪寒冷單作地帶の特別措置の法案が出、今回これが出た。農業が非常に零細化されて困難な採算の下に鋭意その生産に努めておられる農民諸君に対しては全く気の毒で、あらゆる機会を通じて、あらゆる方法を以てその生活を理解し、その向上を図るということがこれは当然であることは言うまでもありませんが、こういつた趣旨から出たので、特殊環境下の農業をしてその生産基盤の整備と苛烈な労働條件を緩和するという点から取上げますと、私はこの地区は勿論でありますけれども、更に積雪寒冷地もそうでありますが、この山付きの半農、半山林と申しましようか、非常な傾斜地におきまして、傾斜角度は二十度といつたようなものでなくとも、相当な傾斜地に僅かな田畑を耕やしているその農民というものについて、又再び盲点として指摘しなければならんことになるのだというふうにも思うものでありますが、これに対して政府は先ずこの法案の提案の理由等について、今申しました二点についてどういうふうにお考えになり、どういう意味であるかを御説明願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/5
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006・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) 三浦委員の御質疑に答えたいと思います。第一のつまりこういう急傾斜地に対して国家が既往において何らの施設を施していないというのは、これは実際において相当農地改良等には莫大な金が年々歳々使われておるのでありますが、これらは多く用水にしろ、排水にしろ、或いは溜池にしろ堰堤の築造にしろ、こういうものが大体において平坦地の施設でありまして、そうしてこういう急傾斜地に対してはこれまでこの特殊地帶に対する施設というものは殆んど国家の費用を以てなされていないのが実情であります。これについてはこの地元住民としましても、これまではこういう環境の惡い所へ住んでいることは自分らの不仕合せだ、こういうような一つの宿命的な考え方から一種の諦めを持つておつたのでありますが、たまたまこの戰争の中期から終戰後にかけて非常に供出などが苛酷になりまして、特別にこの典型的な急傾斜地帶になりますというと、殆んどたんぼというものを持つていないのでありまして、農作物と言えば麦と甘藷の殆んど交互作でありますが、又食糧としてもこれを主食にしておるわけでありまして統制のために漸く一日一人あたり七日とか最大限一合くらいな米の配給を受けて来たのであります。それでこの主食であるところの米や麦までも大部分取上げられて、そうしてこの食糧の自給に事欠くような状態までに追込まれたわけであります。又一面においては、課税が非常に重くなつたのでありますが、平坦地に比較して数倍の労力を要しておるこの地帶において、課税の面においても何らの魁酌というものは加えられていないわけでありましてこういう点から、地元の農民としてもこれではいけないということを自覚して参つたわけであります。なお私たちそういう環境の中に住んでおる者といたしましても、これは放つておけないという考えから、この二十四年の選挙後におきまして、この問題を取上げたのでありますが、当時はまだ急傾斜地帶に対するところの認識というものが一般に非常に薄いわけでありまして、委員会からの派遣、或いは関係官庁の技官の派遣、或いは学界からの派遣、或いはGHQからの実地調査というふうな段階を経まして、今日では一般にこの急傾斜地の状態というものが認識されて来たわけなのであります。そういうわけで、細かい点は時間を要しますから申上げませんが、大体においてこれまでは急傾斜地に対する特別の施策というものは加えられていないということが、ここではつきり申上げることができると思うわけであります。
第二には、積雪寒冷地帶の法律などとの関係もございますが、大体において提案者としての考えを持つておることは、日本のような山岳国としまして急傾斜地の田にしろ畑にしろ、これの全然ない府県というものは殆んどないわけでありまして、全国に分布しておるわけでありますが、問題はその村なり或いは町なり、或いは県なりの全農耕地の場合を指してもよろしいし、又田と畑に分けてもいいわけでありますが、その耕地に対するところの急傾斜地のパーセンテージによつてこの問題は判断すべきが一番妥当ではないか。結局言葉を換えてみれば、百町歩その村に農地がある、そこへ持つて行つて三%や五%の急傾斜地があることは、農業経営の上から言つて、或いは労働を加重視する上から言つて、或いは生産性の上から言つて、大した問題ではないと私たちは思うわけであります。それが全農地、或いは全畑地に対する急傾斜地が何十%、所によりましては八〇%以上も占めておる所もあるのでありますが、そういう所がここに一番に問題になるわけでありまして、我々の狙つているところはこういう点を一番に重視しているわけなのであります。将来仕合せにいたしましてこの法案が御協賛を得て成立することができますれば、こういう点にできるだけ重点的に施策を施さなくては、予算の関係から言つてもやれないのではないか、まあそういうことが本当ではないかと、かように考えているわけなのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/6
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007・三浦辰雄
○三浦辰雄君 そこでこの措置法の二條を見ますというと、急傾斜地帶というものの定義らしいものがここにあるのでありますけれども、結局これは、この基準というものは政令で定めるというふうに謳つてあるのであります。この政令についての案がおありであれば、一つお示しを願いたいのであります。その基準ができて、そうしてなお且つ過重な労働を必要とする農地が集団的に……今の御説明の中に集団的についてのパーセントの一応例示があつたようでありまするけれども、これらを具体的に、この法律の対象とするようなところは何だ、どこだ、どういうところだということがわかるように一つお願いをしたいのであります。提案理由のお終いのところに「平坦地農業に比べ平均三倍以上の過重労働の軽減」といつたような言葉も入つているようでありまするけれども、積雪寒冷單作地帶のあの法律の適用に当つても、随分あれが通つてから後いろいろと問題ができたというような事実に照しても、この際どういう所に適用するのだということを明かにすることはお互いに便利である。審議の上で非常に欠くことのできない点だと思いますが、これについての御説明を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/7
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008・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) 御尤もな御質疑でありますが、この点は只今御答弁申上げた中にも幾らかこの点に触れているわけでありますが、問題としては、つまり急傾斜地帶の振興計画というものを立てまする基本となるものでありますが、これは政令できめることにはなつておりまするけれども、大体提案者としての考え方としては、二十町歩くらいを基本として考える必要がありはしないか、こういうふうに考えておりますが、ただ問題としては、今申上げましたごとく限りある予算でやらなければならんのでありまして、大体まあ農林当局の趣旨によりまするというと、傾斜度が十五度以上のものが五十万町歩に近い数字になつております。それからこれを二十度以上に引上げますると約十六万町歩、約三分の一になるわけであります。それでまあ大体においてはこの法案が表面へ出て参りまするというと、各所でいろいろな御希望とかお説とかを聞くわけでありますが、併し提案者といたしましては、大体傾斜度二十度以上を標準として進みたい、これをいわゆる振興計画の基本といたしたいという考えを持つているのでございます。従つて言葉を換えて見まするというと、約十六万町歩を対象としてこの法律の活用を将来図りたいと、かように考えるわけであります。もう一歩これを具体的にやる場合におきまするというと、前に申上げましたごとく具体的に法案の中には盛れませんけれども、いずれを先にすべきか、いずれに重点を置くべきかという問題は、今言つたように、全耕地に対する或いは全畑地に対する急傾斜の五%や三%はこの山岳国として全国にあるわけでありますから、これを全面的に施設するということはこれは実際においてできないことであります。従つて私は先ほど申上げましたごとく、一方においてはただ抽象的なことを申上げてもいかんわけでありますけれども、二十町歩とか、三十町歩とかいう限界も設ける必要があるとは考えますが、一面においては基幹となるものはその町村或いは郡における総畑地或いは総耕地に対するところの急傾斜面積のパーセンテージによつて、それの多いほどこれは重要視せらるべきもので、そこに重点的に施策が講ぜられることでなくてはならない、かように私たちは考えておるわけであります。ただこれは衆議院のほうの委員会でもありまして、甚だこの「過重な労働」とか何とか、一面においては余りに抽象的な文句ではないかという御意見もあつたわけでありましてこの点は私たちも同感ではございますが、併しこれを実際に運営して行く点においては、これから先ず本格的の調査を全面的にいたしまして、そうしてこの計画を立てて行かなければならんのでありますが、これは実際の運用面におきまして、農林当局のこれからお骨折りを煩わし、なお審議会の審議を経て実行に移されるわけでありますが、私提案者の立場といたしましては、でき得るだけ急領斜地のパーセンテージの高い所から施策さるべきものと、又そこに重点を置かるべきものと、かように信じておるわけであります。なおこの第二條の「過重な労働」という問題がありますが、これも非常に抽象的な文字ではございますけれども、何故に過重な労働になるかということは、一度実際を踏査してもらつたかたはよくわかるのでありますけれども、普通の着なれば、ステツキを持つて、何も荷物を持たないで登り下りしても息切れのするような所であります実際は……。そこへ肥料をかつぎ上げ、耕作物を荷い下ろし、あらゆる農耕資材を運搬することを年中の仕事としているのでありますから、必然的に労働が過重になるということは免がれない現象なのであります。この労働の過重は傾斜度に正比例するわけでありまして、傾斜が緩ければこの労働はそれほど過重にならない。傾斜度の強いほどこれは非常に過重な労働になるわけであります。なお平地に比較しまして労働力が何倍要するという問題も、これも抽象的な表現ではありますが、傾斜度においてこの平地に比較して労力を非常に多く要するわけでありまして、その点はこの文章に書く場合においては、何倍というような限定した具体的なものは書けんわけでありまして、單にそういう抽象的な表現ではありますけれども、その間の事情を御了察願いたいと、かように存ずるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/8
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009・西山龜七
○理事(西山龜七君) お諮り申上げますが、野原政務次官は時間の関係がございますので、政務次官に御質疑を先にしたいと思いますので、どうぞお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/9
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010・三浦辰雄
○三浦辰雄君 政務次官がお急ぎのようですから、予算の関係で、今の第二條との関係もあるわけでありますが申上げたい。これにつてい、今までの二十七年度の既定予算の中で、これはおよそどうも基準もなくて漠然としたものだけれども、先ずその漠然を土台にしてその地区に振り当てられるだろうところの土地改良といつたものに対する既定の予算は約千九百万円くらいあるということを衆議院の説明では言つておられますが、それは何もこの法案が出たつて出なくても別なことなんです。一般のことなんです。そこで政府のほうではこの第六條の第三項、第四項、これらによつて国の財政の安排い得る範囲内において農業振興計画に基いて補助をする、財政投資をする、或いは金融の斡旋をするということをこの法律が出れば約束されるわけなんですけれども、これに対して政府のほうではどういうふうにこれを見ておられますか。私は、勿論農林省におかれましては、当然可愛くてしようがない、或いは別の意味で言えば非常にいたわしく、あれだけ努力しているのにあの生活をさして行かなければならない農民の側に立つ農林省としては、一も二もなく賛成だろうと思うけれども、併し前々からいろいろ問題がありまするように、農林省はそういうような気持で十分折衝しても、大蔵大臣が巾着の紐をぐつと締めて、どうも全体の財政の規模においても、或いはその緩急の点から言つても、なかなかこれは応じられないというようなことがままあり勝ちなんで、現にこの間も衆議院では問題になつたらしいが、成る大臣はどうも議員立法で予算に関連するものをやたらやられたんじや迷惑するという言葉を使つたために、いろいろ緊急質問等があつたようでありますが、そういう点はとにかく事実なんで、それについてこの予算並びに金融に対する農林省御当局の考え方、なおこれを成案いたしますまでの間に大蔵当局とどういうような話合いになつて、どういうような自信の下にこういう法案で約束を国民の前にされるところの案ができたか。この点を一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/10
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011・野原正勝
○政府委員(野原正勝君) 急傾斜地の農業振興については、政府ではかねてから考えておつたことでありましてすでに昭和二十五年以降試験的に段々畠に対する実験的な意味もありまして、予算もお話のごとく約千九百万円余りを計上して実はおつたわけであります。さようなわけでありまして、これはこの仕事、こうした急傾斜の地帶の農業が非常に特殊な事情の下に置かれておつて、これが営農の改善、生産の向上というような点を考えますときに、とにかく放つて置かれない、これをどうしたならばより一層生産を高めることができるか、又農民の地位を向上できるかといつたような問題につきまして、実は一つの実験的な立場から実施をして参つたわけであります。幸い今回のこの法案が議員立法によつて提案をされたということに対しましては、政府の考えておりましたような事柄が強く国会において取上げられたのであるということで、この法案が出ましたことは、農林当局としましてはむしろ非常に喜んでおるわけであります。ただ只今、然らば予算の面はどういうふうになつておるかということでございますが、この法案の通過成立の曉は、農林省としましてはできるだけ多くの予算的措置を急いでとりたいと考えておるわけであります。これはいずれ補正予算等を組むような機会がありますれば、その機会には何とかしてできるだけ多くの予算の計上を要求いたしまして、実現に当りたい。ただこの法案の出る過程におきまして、大蔵省との折衝の経過はどうかということでありますが、これは議員立法でありまして、政府から出したわけじやないのでありまして、まだ十分大蔵省との折衝はやつておりません。むしろ今後の問題として残されております。ただ大蔵省に対しましては、しばしばこういつた急傾斜地に対しましても、この必要があるという点を主張いたしまして、急傾斜地の土壌保全の予算としてまあ少いながらも或る程度の予算が認められて来ておるというような事情で、これが一つの法案という形を以て成立をいたしますれば、農林省として大蔵省当局に対する交渉にも一段と力が入るわけであります。この点は十分努力いたしまして、予算の獲得に努めたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/11
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012・三浦辰雄
○三浦辰雄君 何か質問が一貫しなぐなつちやうのですけれども、これも開通がありますので……。本案について、農林大臣はこの法案が通つた場合には、審議会に対し原案として提出すべき指定地帶、即ら府県乃至は府県の一部に対する指定地帶の腹案がありますかどうか。なぞといつても恐らくこれはお答えがないと思いますからこれは遠慮いたしますが、この第十五條、これは農林大臣が早速これが通ればおやりにならなければならないつまり審議会の構成でございます。これについていわゆる積寒法、積雪寒冷対策のあの法律では、御承知の通り国会議員が入つておるという問題、それに対して今度はないという問題、これは一応衆議院のほうにおかれましても論議されたようでございますが、どうも何かわからない、了解に苦しむ点がある、あれを入れたために困るというような事例はない、併し今度同じようなことだが、それは要らないと言つて、入れないほうがいいと考えるといつたような御答弁をしておられるし、一方では今度関係の市町村長というようなものを、或いは市町村議会議長といつたようなかたを入れる、そのことは非常に対象とするところが一部の特殊な地帶であるために、利害関係が多いから入れないという議論が盛んにされたことは御承知の通りでありますが、それに対して政府のほうとしてはどういうふうにお考えになられますか、その点をお聞きしたい。それから、お急ぎのようだから併せてもう一つ。これはあと第二條或いは第六條との関連においてもう少し提案者からいろいろ聞いたのちに判断すべきことだと存じますが、或いは必要であれば大蔵省のほうから出て来てもらつて聞いた上で判断すべきことだと思いますが、大まかにいつてこの法律に対する予算的な裏付けの措置が至急なされなければならないのであるから、この施行の日というものを予算ができたときにするというふうにして、わざわざこれをやりたい、法律だけでもせめて出したい、という気持はわかるけれども、その予算というものを、実際の裏付けというものを早く手に握る、獲得するために、施行の日というものをそういう関連の日に施行ずるというお考えはあるかどうか、その二点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/12
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013・野原正勝
○政府委員(野原正勝君) 先ず最初に審議会の問題でございますが、御承知の通り積寒法には衆参両院から国会議員が委員として入ることになつておるのであります。これは国会がきめることでありますが、政府の立場から申しますれば、有力な国会議長に入つて頂くことが決して惡いどころではなく、むしろその審議会を権威付けるためには大変望ましいことだとは考えておりますけれども、国会の扱い方を伺いますというと、国会の承認を経なければならない、又国会議員は成るべく原則的にはそうした審議会等のメンバ一には入らないことがこの立法府の立場から望ましいことである、成るべく行政には直接タツチしないようにというようなことが、国会の運営委員会等における論議で非常に熱心に言われておつたということを伺つております。そこでまあ積寒法は、あれはまあ極く特殊の場合ということでありますので、国会議員が委員に入るということになつたという事情を伺つておるのでありまして、今回の急傾斜地の振興法案には、国会議員の点が最初に案としてはあつたように伺つておりますが、あとから除かれたというような事情で、その辺のことが結果においてそういうことになつたと思うのであります。政府としましては、別に国会議員が入つていいとも惡いとも考えておりません。むしろそうした政府の立場からだけ言うならば、有力な人、力の強い委員会であることがむしろ望ましいわけでありまして、そういうような点はむしろ国会の自主的な立場からおきめ頂くということになろうかと存じます。
それから第二の問題でございます、市町村長の問題も、実は衆議院の審議の際に意見がございましたが、これは、見方を変えて言えば、やはり恐らくこうした急傾斜地の地帶の、いわゆる指定されるような地帶の市町村長が代表者になつて委員に入るということになると、それはまるで利害関係者じやないかというような御議論もあつたわけでありますが、やはり地方における行政の一番末端における農政の、そうした地帶の行政の第一線にあるところの市町村長の意見、或いは市町村議会の議長の意見等がやはり一番端的にその地帶の農民の利害或いは要望というようなものを現わすことになるというような見地から言えば、これはやはり市町村長、或いは議会の議長というような者を入れるのがむしろ当然であろうと思うのであります。別にそれらの点はただいろいろ議論があつたというだけで、全体的にいいとか惡いとかいうことじやなかつたと伺つております。
それからこの問題に関しまして、施行の日を予算的措置が十分とれてから施行したらいいではないかという御意見、無理からん御意見であると思うのでありますが、これはやはりこの法律ができました以上は、直ちにいろいろ準備をする、そうして審議会等も設け、或いは又地区に指定するといつたような準備作業がいる、その準備作業が前提となりまして、そこにそれらに対する予算化の問題が具体的に上つて来るのじやないか、そう考えますときに、やはり仕事そのものは予算がなければ十分な仕事ができないわけでありますが、地区をどうするとか、どういうような仕事の内容をするとか、いわゆる農業計画等を進めますには、やはりその予算がなくとも一応法案の成立後適当な時期に施行されるという形をとることになつたほうが行政的にはいいのではなかろうかと思う。ただ少いながらも、この法律ができるできないにかかわらず、実はすでに組まれておる予算があるわけでありまして、この法律ができますれば、一応この法律の内容としての仕事の分に実は振向けられる予算と申しますか、準備が千九百五十数万円ございますので、それで今まで予定しておりました分についてはそれで充当として行く、足りない分については成るべく早い機会に補正の措置を講ずるというようなことになるのではないか、又法案が通過しました場合におきましては、そういつた考え方の下に農林省としてはその責任を果して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/13
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014・三浦辰雄
○三浦辰雄君 今政府、農林省として、特に農林省としてはさつきから言つているような気持から何でもかでも早くこれが通つて、少しでも救われる農民の多いことを望むという気持はわかるので、あえて重ねて申上げようとは思いませんが、今の千九百万円余のすでに通つている予算というものを使つてという言葉がありましたが、それについてちよつと聞きたいのですが、あれはあれの目的があつて使う。今度の法律ができましたとき、例えば農業振興計画を定めるところのものに振替えて使うとか、或いは審議会を作つてその審議会の会合費にそういうものを流用して使うとか、そういうようなことができる種類の金ではないと思うのですが、そうされる気があるのですか、その点をちよつと。これは誤解があろうと思うのですが、もう少し説明をして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/14
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015・野原正勝
○政府委員(野原正勝君) この千九百万円余のほかに実は特殊土壌地帶の調査とか、或いは急傾斜地の調査といつたような、いわゆる調査をするという目的の下にあらかじめ組んだ予算があるわけでございますけれども、それでもつて一応調査等に使う、勿論足りませんので、これは部内においてそれぞれの機関とも十分打合せ連絡の上で、流用のきくものがあれば経費の流用をしまして、とりあえず調査等の仕事をしなければならん一応もと金になりますものはそういつた調査費を一応使つて行くということで、この千九百数十万円というものはこれは恐らく補助金としてすでに組まれている、それらの仕事はすでに大体継続でやつておるものもありましようし、新規でやるものもありましようが、一応調査が済んでおるというものもあるのですから、これはまあ予定の通り補助金として出すようにしてやつて行くということに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/15
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016・三浦辰雄
○三浦辰雄君 そこまで熱を入れられるというその熱意に対しては感謝に堪えないのですけれども、私はなまじつか流用ぐらいで以てちよこちよことやるということのスタートでは、折角いわば殊に提案の理由なんかを見ますと、大上段にこれこそは唯一の盲点を突くものなりというような工合に出している。又我々も実現をそういうふうに手厚くしてもらいたいが、その内容に対して何か小さく丸まつてしまうのではないかとこういうように思うのです。これについては意見の相違になりますから、私はその点について一層御留意を願うことで、一応政務次官にお聞きしたいという問題はこれで打切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/16
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017・宮本邦彦
○宮本邦彦君 政務次官に一つだけお聞きしたいのですが、現在国土総合開発法が改正法案になつて提案されていると思うのですが、国土総合開発法案で以てこれと同じようなことができるのかどうか。私はなぜそういうことを申上げるかというと、こういつた法案というものはこれは新らしい農業政策として、新らしい性格的な農業政策の一つのあり方として一つの進歩じやないかと思つております。ただそれに国土総合開発というようなそういう大きな網をかぶせてしまうというと、それがその中に取上げられるというような工合に持つて行かれると、これが又折角そういつた性格的な農業政策が、一つの新らしい見解がいつのまにか潰されてしまうのじやないかというような懸念が多分にあるのであります。そういつたことがあり得るかどうか、そういうことを次官からお聞きしたいと思います。
〔理事西山龜七君退席、理事加賀操君委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/17
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018・野原正勝
○政府委員(野原正勝君) 非常に根本的な重要な問題なんでありますが、国土総合開発法が真に国土全体を十二分に活かすその質と内容を持つておるならば、それはそれでできないことはないと思うのでありますが、実際問題としまして、まあ極めて日本農業の複雑にして且つ多岐、いろんな地域によつてそれぞれの性格を持つておる農業或いは農地という問題に関しまして、ことごとく十分なる満足を與えるようなことが恐らく不可能であろうと私は思う。そういう点ではやはりこうした積雪寒冷單作地帶に対する問題であるとか、或いは又南九州方面の特殊土壌の根本的な解決の措置、或いは又四国、中国或いは関東地方までも含まれているであろうと思うところのそうした急傾斜地というような問題、まあこれらがそれぞれの地域における農業振興に非常に細かな配慮の下に役立つならば、こうした法案が漸次整備をされることが望ましいと思うのです。ただそこに問題になりますのは、やはり個々ばらばらであつて、それが全体としての調和を欠くということになつてはこれはどうかと思うのでありまして、こういう点ではやはり農政が一つの正しい方向の下に調和された姿で均衡のある農業政策という形に行くためには、或いはそうしたはらばらと申しては失礼でありますが、その必要に応じてできた臨時措置法というものは、或いは又いつの日にか一つの統一のある行き方に又これを引戻すというふうなことも、ときにはあり得るのじやないかと思うのでありますが、ただこれらのものを軍に国土総合開発法といつたような大きな網だけで日本農業の特殊な問題をことごとく解決するということは私は不可能であろう。ましてや総合開発法ができたけれども、今度はその促進法を作るといつた段階を見ておりましても、それを以て農林省は安んじてこの問題をすべてをお任せするというか、それによつて安心をするわけには行かないという段階にあると私は考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/18
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019・松永義雄
○松永義雄君 今ちよつと同僚議員と相談して見たのですが、この法律は人道主義的な立場からこういう法律を提出されておるのか。それとも経済的意義を持つものであるという点から提出されているのか。その一点だけをあなたに聞きたい。別の言葉で言いましよう。気の毒だからこういう救済法案を提出することにしたのか。それとも経済的意味を十分持つておるからこういう法律を出したのか。どちらか……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/19
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020・野原正勝
○政府委員(野原正勝君) これはむしろ提案者のほうからその提案理由として申上げるのが至当と思いますが、ただ私に対する質問でありますから、私の見解を申上げますが、これはやはり農業生産力がこれによつて相当高まるであろう、又農業の労働価値が非常にこれによつて集約化され、合理化されるという点に問題があろうと思うのであります。ただそれが期せずして、誠に今までは一生懸命働いてもその生産性が低いために非常に恵まれなかつた農村地帶が、これによつて救われるという結果になることを我々は非常に期待しておりますけれども、單なる人道的な立場だけから取上げたものではない。勿論その他大きい意味での農業政策は農民に対する人道主義的な立場を常に持つており、そういう問題も含めておりますけれども、問題の取上げ方としましては、やはり農業の生産性の向上といつたような点が主になり、その地帶の気の毒な農民に対する保護政策というものが又加つて、以てこうした法案が提案される、かように私どもは解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/20
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021・松永義雄
○松永義雄君 その次に、この「畜産便り」という本を読まして頂いたんです、これが配付になつております。三月号です。昭和二十七年三月一日発行の三月号の、「日本における酪農の振興」という題目、エミール・フエンガー、翻訳物ですか、「とくに傾斜が急で、岩の多い所は開墾に不適当で、このような所は永久的の牧野として家畜の放牧に利用することがもつとも経済的である。」こういう文句があるのです。この第二條に規定してある農地という意味ですが、これは広義に解釈してよろしいのか、狭義に解釈してよろしいのかということなんですがね、これは広義に解釈して置いたほうがいいんじやないかと考えるから質問したのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/21
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022・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) 今松永さんの御質問の意味の広義に解釈するかどうかという問題は、恐らく広義と言えば牧野を包含するという意味ではないかと私思うのでありますが、この提案者といたしましての考え、及びこの定義として第二條に表現しております趣旨というものは、既耕地を指すのでありまして、田或いは畑を指すのでありまして、この山間部のほうに相当ある焼畑式の耕法による一時的の傾斜地などもこの中には提案者としては含めていないわけであります。これは焼畑式の耕法は全国に至るところに見ることができるのでありますが、これは三年なり五年なり七年なり耕作しますというと、これは荒してしまつて植林をする、植林をして又再び今度樹木の伐採あとを開懇しまして、そうして一面火をつけて焼いて、そうして簡易な耕作方法をとつております。山間地にはこういうのは殆んど傾斜地を形成しておりまするけれども、こういうものもこのうちには提案者としては含めていないのであります。純然たる既耕地を指しておるのでありますから、さように御了承願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/22
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023・松永義雄
○松永義雄君 そうしますと、この今の「畜産便り」から受ける解釈によりますと、第二條に規定してある農地というものは経済的に成立つて行くもののみを指しておるのか。それとも気の毒だから力添えをするんだという人道的な意味を含んだ意味においてこの農地というものを解釈しているのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/23
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024・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) 先ほど三浦委員の御質疑の中にもちよつとお答え申上げておつたのでありますが、無論今野原政務次官が答弁いたしましたように、経済的の立場からこの問題を取上げたのであります。ただそこには人道的な意味も加味されておることは、これは申すまでもないことであります。大体急傾斜地帶は瀬戸内海、言葉を換えて申しますると、中国、四国、それから近畿の一部、静岡、神奈川、それから関東のほうの群馬の方面というふうに大体分布状態がなつておりますが、この急傾斜地帶はとにかくどういう工合で発生したかちよつと起源はわかりませんけれども、我々のほうの起源を推定して見まするというと、大体この瀬戸内海とか豊後水道方面は漁業が主であつて、そうして漁業するために食糧だけは自給しなければならんという必要度から麦、或いは甘藷を作つたもの、むろん今のように沿岸漁業の不振の時代と違うのでありまして、我々の子供時代にもああいう豊後水道から瀬戸内海の漁業は実に盛んであつたのでありますが、むしろ漁業が中心で、そうして食糧の移動交流が極めて不円滑な時代でありますから、食物だけは作れという必要度からああいう急傾斜地を開墾したものだと、かように思つておるのでありますが、今日としては沿岸漁業が非常に不振になつて来たもので護りますから、むしろ農耕のほうに主力を置かなければならん。ところが一方においては耕地は狭いし、そういう環境は惡いし、人口は平坦地に比べて見るというと異常に人口が稠密しておるのであります。これがこの急傾斜地帶の特異性とも申すべきものではないかと思うのでありまして、これは和歌山県にいたしましても、我々の県でも、中国の方面でも、つまり海岸沿いに多いのであります。この急傾斜地の模範的な、典型的なものが多いのでありますが、その地帶は、山の岩盤でない開墾し得る範囲は山のてつぺんまで開墾して、なお一人の農家あたりに三反とか四反とかいうような極めて零細な農家が蝟集しておるわけであります。こういう点から見まして、先ほど申しましたごとく、この平坦地に比較して数倍の労力を要するのでありますから、非常に過重な労働を余儀なくされておる半面に、一労働力当りの生産性というものは極めて低いわけでありまするので、どうしてもこれを、家畜を何しましても、牛馬の耕耘に使用できるような傾斜地はまだ生やさしいのであります。牛馬の通行さえも許さない地帶が多いのであります。どうしても人力のみによらなければならんのでありますから、公の施設によつてこの点を緩和するということが経済的に大きな意義を持つものでありますが、他面やはり人道的に見て、これらの恵まれない環境におる夥しい数の農民の生活というものを改善するということが、單に経済面のみならず重要な意味を持つものとかように私たちは信じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/24
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025・松永義雄
○松永義雄君 この漁業の不振になつたということなんですけれども、一応が人口棚密で農家の二男三男が非常に多いということであると一応仮定して、漁業のほうに補助を與えて、そうして漁業を奬励して行つたら成立つのではないか。それでも成り立たんのだというような事情になつておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/25
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026・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) これは私が何も文献によつて申上げておるのではないのでありまして、瀬戸内海とか或いは豊後水道地帶の我々の地元における全国的な典型的な急傾斜地帶の発生起源と申しますか、山のてつぺんまでも開墾しなくてはならないという必然性というものは、最初は漁業中心で、そうして食物だけは作る、漁業をやらないときに、或いは家族がかかつて食物だけは不自由でも麦なり芋なり作るという考えで始まつたものが、今度は逆になつて来ている。従つて非常に人口の稠密しておるということが特徴であつて、従つててつぺんまで耕やしても一農家当りの耕地面積というものは数反歩に過ぎないというような零細なものになつておる。
〔理事加賀操君退席、委員長着席〕
そこに一つの、一方には労働力が平地に比較して何倍も要するし、過重な労働が必然的に随伴するのでありまして、非常に経営上に今日苦しい立場に漸次漁業の不振と相待つて追い込まれつつあるというのが今日の現状だと、かように見ておるわけであります。併しこれは私何も文献に基いて調べたわけではないのでありまして、一般的にどうしても平川部の少い所はそういうふうに急傾斜地も開墾する必要に追られることは、これは申すまでもないことでありますから、いろいろ発生起源はあると思いますが、ただ我々の考えで見まするというと、そういう気持が濃厚にするわけであります。どうしても今日の状態ではこういう法律を制定して、そうして国家的の、或いは府県の協力によつて施策を講じるよりほかに方法はないのであります。以前には分村計画などを頻りに具体的に戰時中にも考えられたのでありますけれども、実際において分村をしてどこに連れて行くかということになつて来ると、具体的には非常に大きな問題にぶつかつて、なかなか実現ができなかつたのであります。それが大体における実情であると、かように私たちは見ておるわけなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/26
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027・松永義雄
○松永義雄君 お役所のほうで何か只今のお話に補充するようなことがあつたら、もう少し具体的に述べて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/27
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028・堀直治
○説明員(堀直治君) 只今提案者のほうからお話になりましたのは、愛媛県についての事情でございますが、急傾斜の畑をなぜ存続しておかなければならないかということは、いろいろな面から考えて見なければならないと思います。現在農林省といたしましては、お話のように余り傾斜度の強い所には開墾計画は立てないようにしておりまして普通平均十五度以上の所は牧野その他として使うように、或いは薪炭林として使うように残す、特殊な場合で、特に経営規模が小さくて、その地域については経営面積を増大させるために止むを得ず行う場合には、特に二十度程度のものまでを許しておるというのが実情でございます。ところがここで問題になつております傾斜地というのは、相当古い時代から開墾されまして、而も現在その開墾されておる面積が、例えば愛媛県におきましては県平均で四反九畝、宇和島市において三反四畝、八幡浜市において三反六畝というふうに、非常に一戸当りの平均耕作面積が少いわけであります。こういうふうな所では経営の非常に僅かな耕地というものを捨てて、そういうものはほかの業につかせるとか、或いはどこか入植ならば適当な所に付かせるということも一応は考えられますけれども、実際問題といたしましては、なかなか開墾地そのものもそう急にできるわけではございませんし、又一方農家の人口というものもますます殖えて行くというようなことからいたしまして、何とかこういつたような生産度の低い農耕地をもう少し補助してやる必要があるのではないだろうかというようなことから、先ほど政務次官も言われましたように、土壌保全という問題が叫ばれて来たわけでございます。こういつたような急傾斜地におきましては、一年のうちに上の耕作地になるところの土壌が、甚だしい所においては五ミリ以上一センチというくらいのものが毎年雨その他によつて流されてしまい、だんだん流された結果において山のてつぺんにおいてはもう岩ばかりが出て来るというようなことになりまして、従つて平坦地に比べて生産の牧童も非常に少いわけであります。こういつたようなものを防ぐ方法というものがもう少し計画的に、これらの地帶に対して排水路を設けるとか、或いは道路をこれに設置してやるとかいうようなことで、流れた土砂を上に運び上げることを容易ならしめるとか、或いはその前に土砂を流さんように工夫するというようなことが最も必要と思いまして、土壌保全の施設を計画し、現在まで数カ所実施に移しておるわけであります。その結果非常に効果が現われまして、こういつたようなことをして行けば、こういう急傾斜地といえども或る程度経済的な経営ができるという確信を得ておるわけでございます。そういつたような関係から、現在あるこういう急傾斜地を牧野として使うというよりは、やはりこれはその土地々々内で畑ならば畑としてもつと経済効果を高からしめるということのほうが適当であろうと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/28
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029・松永義雄
○松永義雄君 私質問を留保します。先ほど三浦さんが質問中であつたのですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/29
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030・三浦辰雄
○三浦辰雄君 政務次官に対する質問を求められたので、途中で、薬師神さんのほうへの質問が半端になつてしまつたのでありますが、まあ野原政務次官からのこの予算の関係、第六條等の関係から見てもまださつぱり大蔵省のほうとの間についてはないと言う。提案岩のほうから言えばどういうことになつておりますか。その点も一つ伺いたいのでありますが、こういうような状況下であるだけに、私は又最初の質問の続きとして申上げたいのは、第二條の「政令で定める基準」とか、それから「過重な労働を必要とする農地が集団的に存在する地帶」といつたような、この問題をやはり飽くまでも明らかにしておかなければならない。できれば農林大臣が審議会を作つて、それに諮問をすべき、指定を望むところの府県、地区といつたような程度までは提案者におかれてもうすでに準備をしてもらいたい。こういう趣旨なんだからして、行政府としてはやれといつたようなところまで行かなくては、私は議員立法のいわゆる性質からいつて欠けるところが大きい。而も重大な点が欠けているのだと私は指摘しなければならない。従来とかく政令、省令等の政府立法の場合、省令、政令等について審議の際に求める。そうしてその内容をいろいろ審議の対象として全体の法案の構成、その効果と意義、そういつたようなものを判断して審議していたのは言うまでもない。ところがそうやつて審議した結果できる法律というものに対して、国民の側から非常な思いもよらなかつたような政令が出たり、省令が出て来て運用に困る。その運用に困つた点をその審議して採決、可決した議員さんの所へ持つて来て、先生あの法案というものは一体こういうような運用をされているのだというようなことを訴えられて、そうして唖然としている。どうも政府のほうの側は勝手過ぎる。通すときだけはうまいこと言つて通すけれども、その運用に至つては全く独断的な線が出て来る。これは誠に国会の審議の内容を無視したものであつて、誠に許すべからざるものである、官僚の一種のフアツシヨじやないかというようなことは往々聞く言葉なのであります。私は少くとも大蔵大臣からいえば好ましくないような、先般も引例いたしましたが、迷惑だと思われる部類に属するようなこの法案を議員さんが折角お作りになつて、農林省がこれを歓迎して、又それに実際に当るところの農家の人たちは非常な期待を持つて待つている。そういう法案であるだけに、私は出すときだけこの法案は俺が作つたんだなんぞというような、我々が作つたんだなんぞというようなことにとどまらずその成果として確保すべきところの途を講ずべきである、こういうふうに思うのであります。で、くどいようでありますが、是非とも私はこの第二條に示すところの「基準」、或いはこの「地帶」というものを大よそ明らかにしておくべき絶対の私は必要性を認めるものなのであります。
なお併せて申上げますが、先ほど薬師神さんの提案者のほうの御説明に、「土地の傾斜度」というものと、「過重な労働を必要とする農地」というものが並行的であつて、同じ意義の言葉であるかのごとき御説明があつたのでありますが、私はやはりこの法律に書いてあるように、そうではなくて傾斜度及び土壌の浸蝕、土地保全に関するところの観点から見た基準というものと、もう一つやはり別途に「過重な労働を必要とする農地」という言葉があると思う。この「過重な労働を必要とする農地」というのは、結局農業労働の低生産性、そこに投下いたしました農業労働に対するところの対価、收穫というものが非常に少いのだというような問題も今日当然考えられるものじやないかと思う。そういうものをも含めて、私はこの問題について提案者、又審議するほうも当然この第二條についてはどこまでも明らかにして、これでやるべきである、こういうふうに持つて行かなければ途中で妙な、法案は通つたけれども、どうも財政の都合でうまく行かない。ほんの申訳的にこの法案を通した、提案者が出した、又我我も賛成した、その趣旨とはまるで似ない、期待されないところの効果しか挙らないということになることが、こう何だかわかるような気がするのでありますが、この点をしつこく伺うようでありますが、提案者如何でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/30
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031・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) 三浦委員の御質疑、私も大体においては同感なのであります。併し具体的に反対かといえば、そうでもないのでありますけれども、先ず第一番の予算措置の問題でありますが、これは政務次官から申上げたので蛇足を加える必要はないようでありますけれども、まだ三浦委員もはつきり得心をされていないわけでありますが、これはお説のごとく千九百五十幾万円という土壌保全の予算というものは、これは急傾斜地帶法案の提出、或いは成立を見越して組まれたものでは無論ないのであります。ないのでありますが、これはこの法案が成立いたしますれば、ここに十分使える性質を持つた予算なのであります。現に先ほど農林当局から説明がありましたごとく、このエロージヨン防止の問題にモデル地区というものを設けて、この事業費が使われ来たつたのであります。このエロージヨン防止は單に急傾斜地幣のみではありませんが、急傾斜地帶の将来振興計画を図る上において、その問題の必要度の上から申しますれば、このエロージヨン防止の問題も中心課題となる問題である、かように思うわけであります。とにかく提案者の意図といたしましては、どの途一千万や二千万の予算を以てこの問題を運用することはできんのでありまして、別にユートピアの気持を持つているわけではないのでありますが、大蔵当局のほうにも提案者側といたしましては、関係者に十分折衝いたしまして、或る程度の了解と申しますか、共感を得ておるわけであります。殊にこの急傾斜地帶は大蔵大臣の出生地の広島県も非常にこの急傾斜地の本場でありまして、この問題に対する大蔵大臣も非常に認識が深いわけでありまして、これまでの段階にいろいろ折衝いたしましたのに、十分この法案が通過しますれば、来たる補正予算の時期には相当額のものが確保でき得る我々は見通しを持つておるわけでありまして、なおこれが成立いたしますれば、皆さんがたの農政に御関係のかたがたのなお一層の御助力をお願い申上げなければならないと、かように考えておるわけであります。
次に、この第二條の御意見でありますが、これは衆議院の委員会においても一番中心になつた問題でありまして、お説の御意図はよく私わかるのであります。ただ問題は、この傾斜度の問題もここに法案としては謳つておりませんが、この問題も今農林省にも、農林省自体の調査に基く的確な資料というものはないのであります。従つて先ずこの臨時措置法ではありますが、早急に必要な面はこの法案が通過しますれば、全面的にこの調査をしなければならんと、かように思うわけでありまして、果してこの二十度以上が、我々は二十度以上を目標といたしておりますけれども、この運営の上において、行政上の措置といたしましては、或いはもつと傾斜度の低い点からこれを採用しなければならんというような場合も予想できないことはないのであります。これを法案の上に具体的に盛ることについては我々も躊躇をさせられたわけであります。なお又、先ほども触れましたが、特に反別、その町村なり、或いは郡なりの急傾斜地の反別を基準として施策をするかというこの基準を具体的に現わすという問題も先ほど申上げましたごとく、非常にデリケートな問題でありまして、この限りある予算と、この厖大な急傾斜地帶とを睨み合せてみます場合において、單にこの地域、或いは郡における区別のみを基準にはできない場合が多いのではないか、こういう考えを以て、そこに一面から言えば融通性と申しますか、行政上の幅と申しますか、取捨のでき得るような余裕をこの法案には残したわけでありまして、この点は農林当局において立案してそれで審議会にかけて最後に決定することを別に責任転嫁の意味ではございません、我々うるさい億を除けたわけではないのでありますが、これを具体的に数字に現わすということは非常にこれは問題じやないかと、かように提案者は考えたわけなんであります。他意あるのではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/31
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032・三浦辰雄
○三浦辰雄君 私は今御説明なさつておる薬師神さんの誠実な気持というものはわかるんです。わかるんですが、国会という、それから議員提案というその法案の性質から言えば、私はそういう融通性があるということもわかるのですけれども、これを大よそのところを明らかにして、政令案とか、基準、それから地帶というようなものについてやつぱりこれを明らかにして、この際これを審議しないでは、この審議が一体何を審議したかということになるのではなかろうかと、私はえらいどうもしつこいようでありますけれども、どうもその点が解せない。少くともそういうように、今後議員立法の場合はこれに限らず、その狙つているところを明らかにして、そうして政府が四の五の言つてお茶を濁さないように仕組んだものを渡して行くというようなところまで行かなければ、私は意味はないのだとさえ思うのであります。勿論これについて私は今この場で出せとは言いませんけれども、是非この審議の過程においてお出しになるように強くお願いを申上げるわけであります。若しこれに対して政府の側として、この法案の過程において或いは相談を受け、或いはいよいよこれが通るとなれば、実施の担当を受け持つ側としてどういうふうに考えているという問題があるならば、それでも参考になりますから、場合によつては止むを得ないかも知れないが、どうも併し議員立法の態度としては、又望ましきところの姿としては、諦められないで、提案者側においてこれをぴつたりまするという問題が一つ必要だと思う、それでさつき薬師神さんのお話で、大蔵大臣は広島であり、どうもこの事情には通じているから万間違いはあるまいと言うけれども、それはただ大蔵大臣の個人的な問題であつて、若し大蔵当局として何かそれに対して色よい返事を仮にしたというならば、その規模というものをどうしても前提としたものでなければ、私は返事のしようがあるはずかない。だから誠にどうも御説明に対して疑いを差し挾むような工合で、工台が惡いのでありますけれども、私はそうでなければ大蔵大臣としても困る、でありますので、どうかこの点を第二條を一つ明らかにしたいということを強く要望を申上げます。なおさつき関連質問としてしたがつたのでありますが、これは細かいことでありますが、この「過重な労働を必要とする辰地」、いわゆる低生産という観点から言えば、果樹園といつたようなものはこの際対象として入るのかどうか。恐らく入らないだろうと思いますが、その点を参考までにお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/32
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033・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) 今の予算措置の問題でありますが、これは誤解があつても困りますから、なお御質疑にもありますけれども、言触れておきたいと思いますが、これは公式の席上で大蔵大臣が声明したわけではないのでありますから、こういう所で言うのもどうかと思いますけれども、これは個人的と言わなければならんのですけれども、私の言つた意味は、大蔵大臣のつまり故郷がこういう急傾斜地幣であるので、急傾斜地という問題については非常に理解と認識を持つておられるのでありますから、話しても早わかりがするわけであります。それでこの法案が成立しますれば、大体努力するということはこれはまあ大蔵大臣はもとより、大蔵当局の主要な担当者も申しておるのでありまして、これは申上げてもこれはここで別に問題は起らないと、かように思つておるのでありますが、非常なる認識を持つておるわけであります。この点は我々としても何と申しますか、渡りに舟で非常に期待を多く持つておるわけでありますが、これはこれからの努力に待たなければならんわけでありまして、先ほどのように皆さんがたの御協力も特にお願い申しておる次第であります。
それから今の果樹園地帶の問題が含まれるか含まれないかという問題でありますが、この問題は今提案者としては果樹園地帶は含めてはいないのであります。別段法案の中には誰つておりませんが。ただ問題は果樹園という問題については提案者の一人としての私としては一つの考え方を持つておるのでありまして、果樹園が今日べらぼうもない收穫を挙げておる。他の農作物に比べて問題にならない收入を挙げておるというように考えておりまするし、又事実においてもそういう場面もありますが、少くとも果樹園というものが一人前の收穫を挙げるのには十年の日子を要するのでありまして、多年性作物は收穫が挙がるといつても、一般の農家にはなかなかやれないのであります。そうして五十年も七十年も壽命を持つものではないのであります。
これを平均してみまするというと、果樹園地帶も相当批判の余地があるので、これは儲けるから、收入が多いから別にすべきであるという確固たる論拠を持たないのであります。ありますが、これはとかく常識上から言つて問題になりますので、一応この点から提案者としては除いておるわけであります。
それからこの過重な労働というような問題はちよつと三浦さんの意見と私は違うようでありますけれども、これは何と申しますか、議論になりますから、私は別にこの点を固執しようとは思いませんが、私の申上げた過重な労働というのは生産性の非常に低いという問題と不可分性を持つておることは申すまでもないのであります。それでそれは平坦地に比較して何倍かの労力を要するのでありますから、生産性が非常に低率であるという問題と労働の過重に陷るというこの必然性の問題は別個には考えられない不可分性を持つたものには間違いないのでありますけれども、併し問題の原因は、過重の労働という問題は境環の何によつて、傾斜度によつて非常に違つて来るのでありまして、牛馬さえも、家畜さえもこれは農耕に使うために引張つて行つても、登ることもできない、下ることもできないような傾斜度を持つている所が多いのでありまして、そういう所にいわんや人間が荷物を持つて運搬するのでありますから、そこには好むと好まざるとにかかわらずこの過重な労働というものは不可避的な状態になつているのであります。これは傾斜度の強いほど過重な労働に陥ることは免れんことであります。併しお説のごとく労働生産性の低いという問題とは不可分性にあることは私も十分肯定をするわけであります。併しこれは幸いにこの法案が通りまして、各種な施設をやることによつてこれらの問題が緩和されると申しますか、国救されると申しますか、そうしてこの地帶における農民の生活に明るい一つの兆というものを期待することができることは、これは経済面のみではなく、人道の上から言つて相当重観すべき問題と、かように私たちは考えているわけであります。甚だ答弁としては、ともすれば抽象的に負りやすいのでありまして、私ももう一歩もつと具体的に申上げたいような気持もするのでありますけれども、その点は三浦さんにおいても十分おわかりのことと思いまするから、この程度においてまあ御容赦をお願い申上げるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/33
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034・三浦辰雄
○三浦辰雄君 これは私だけがねばつていてもしようがない。皆さんの御判断もあることですからこれ以上ねばりません。併し私はどうもこれを明らかにしておく必要があると思うということは曲げるわけには参りません。
そこで今度は第十條のところに農業振興計画というのがありますね。これは提案理由の最後のほうに謳つてあります。急傾斜地帶農業が具有する土地及び労働の生産性低位の問題、農地の侵蝕保全の問題、平坦地農業に比べ平均三倍以上の過重労働の軽減乃至平均化の問題等、特有の生産阻害條件に対して解決する粗製畦畔の改良、農業用道路の開発、排水路、それから水を受ける清の構築、土砂溜貯水槽というものの設置、それから農業用の索道の架設といつたようなことが例示的にございますけれども、これは何かもう少し具体的にこれらの農業改良計画をする場合においては、振興計画をする場合においては、こういうふうな事項の下にこういう細部計画が寄れなければいけないといつたようなことが原案の提出者のかたのほうにおありでありますか。あつたらそれを承わりたいし、それが今お手元にないのだとすれば、これを受けて立つ政府当局の事務当局のほうではこれをどういうふうに考えておられますか、それを承わりたい。それで質問を一応終りたいつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/34
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035・堀直治
○説明員(堀直治君) 第二條の基準の問題でございますが、実はこれは提案者のほうから御趣旨も伺つてはおりますが、まだ何分にも予算がはつきりいたしませんので、予算と併せて考えて行く必要があると思います。併し一応我々のほうでこの準備をいたしておりまして、この程度以上のものをそういつたふうなもので取扱えると考えておりますものがありますので、一応御説明申上げたいと思います。
第一に土地の傾斜度についてでありますが、これは傾斜度が大体二十度程度のものを標準としたらというお話もございますが、こういつたような所に排水路なり、道路なりを計画いたします際には、或る程度下のほうからやつて行くと申しますか、裾のほうからやつて行かないというと計画は成立ちません。それでこういつた場合に地区の、地域の平均の勾配と申しますものは大体十五度以上ということに規定して行きたい、このように考えております。
それから次の土壌の侵蝕度でございますが、これは御承知のようにシートエロージヨンとガリイエロージヨンと二通りあるわけでございますけれどもこれらのものを一緒に考えまして、土壌の侵蝕度は土壌の流亡率が二五%以上であるか、或いは流亡速度が年平均五ミリ以上のものに限定するというふうに考えて行きたいと思います。ここで流亡率と申しますのは、土壌のいわゆる耕土及び心土の一部でございますが、AB層という層が侵蝕されまして、その侵蝕される比率を現わした数字でございます。それから流亡速度と申しますのは、その侵蝕される速度が年平均五ミリ以上、一年間に五ミリ土壌がなくなるというような所を指すというふうに考えております。これは今まで私たちのほうで、土壌保全のほうで仕事をやつておりました地区が大体こういつたような基準でやつておりますので、それを採用したいというふうに考えているわけであります。
それから、これが労力の問題でございますが、且つ過重な労力を必要とするという問題は、労力のほうが幾らかかるかというような問題はなかなか調査のしにくい問題でございます。従いましてこれを一定の基準で何十パーセント以上のものをとるというような基準はこれは恐らくできない。だから事業を採択いたして行きます上において、そういつたような比較的その労力を余計に要するものから順次仕事を着工して行くようにしたい、こういうふうに考えております。一つの例でありますが、長野県の例におきましては急傾斜地においては、甘藷においては一九四%、大、小豆においては一八〇%、とうもろこしにおいては二〇三%、小麦においては一九六%、こういつたような生産量を得るために平坦地に比してそれだけの労力が要るというような一つの実例がございまして、こういつたようなものが所々にあるわけでございますが、その基準のとり方なり或いは家畜労力をどの程度に見るかというような点に相当問題がございまして、なかなか尺度としてはきめにくいということを申上げておきたいと思います。
それから集団地についてでございますが、ここで申上げます集団地というのは一つの計画を立てる單位という意味でございますが、計画を立てる單位は大体ほかの寒冷地対策におきましても二十町歩を基準といたしておりますので、やはり同様に二十町歩以上の一つの計画上の関連地域をとつて行きたい、こういうふうに考えております。
それから農林大臣が指定する地帶の基準でございますが、これはまだはつきりした原案を実は持つておりません。併しお手許に表を差上げてあると思つておりますが、この表で御覧になりますように、いわゆる急傾斜地と申される所は、畑においては大体三五%以上が、ここに載つている急傾斜地の比率が三五%以上ぐらいの府県がいわゆる急傾斜地帶とすでに言われております。それから田を加えた場合におきましては大体一五%以上、或いは一六%ぐらい以上の程度が先ず急傾斜地帶であるというふうな考え方になろうかと思います。併しこれは府県についてでございまして、府県の一部を指定するということになりまして、郡その他を指定いたします場合には、もう少しこの比率というものは上げて考えて行かなければならんというふうな考え方を持つております。これは直接予算の総額と関連して参りますので、一応まあそういつたようなことを考えているという程度に御了承願いたいと思つております。
それから第十條の計画について、いろいろ提案の説明のときに申述べてございますが、この十條の計画の第一は土壌保全及び土地の改良に関することでございます。それから第二点が農道の整備或いは運搬用索道の架設、それから第三が生産技術その他の改良ということになつております。第四が生産物の加工或いは共同販売、或いは共同施設というような点になつております。それでここに考えております農業振興対策は、その四つを全部同時に網羅するのではなくて、地域々々によりまして事情が違うと思われますので、おのおのその一つ以上のものを含めた計画を内容としたい、こういうふうに考えております。それでそのうちの第一の農地の保全及び改良と申します仕事をやりますのは、大体考えておる仕事は承水清とか排水路、こういつたような問題が主になつてやつております。それからその次の二番目におきましては、これはもう字の通り道路を作るということであり、又ものによつては索道を用いたい、これは実際に愛媛県その他で実施をいたしておりまして、非常な効果を上げておるわけであります。それから第三番目の点、四番目の点につきましては、これはまあいろいろ広範囲に亘るものを内容といたしておるわけでございまして、御説明は省略さして頂きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/35
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036・池田宇右衞門
○池田宇右衞門君 大体三浦さんその他の委員から非常な結構な要点の御質問を開陳して下さいまして今更蛇足を加えることもございませんけれども、この際十分にその内容について今少し深く掘り下げて実地について尋ねて置く必要がある、かように思うのでありまして、御質問いたす次第でございます。
只今予算の関係ですが、この法案はないよりは非常に結構である。又これだけの法案を提案するという急傾斜地帶の農業振興は非常にいい法案であると思いますけれども、その肝腎の予算の裏付けが十分でなかつたならば、折角の案も画に描いたぼた餅というような結果に陷り易いのが今日の日本の農業政策に対する一番の欠陷である、かように私どもは常に思うのであります。そこで大蔵大臣の個人よりも、むしろ私どもは大蔵省局長でも大臣でも、次官でも、政務次官でも出席して、必ずこの法案については通過後においては予算に対して裏付けして、振興に対しては予算に計上してその費用を支出するのにやぶさかでないという確証を先ず私どもは得なければ、折角の本案が室に終るの全く誇りというか、そういう点を憂えるものであります。この点はもつと突つ込んで御研究を煩わしたい。まあ薬師神さんに対して甚だ我々のことを言うのはどうかと思うけれども、やはり本案を提案した以上は、そのくらいの決意を持つて欲しい。
それから次に、農業委員会があるが、普通ならば傾斜地の農業委員会は実際にこれを研究して、その地方に即応する振興対策を樹立するのであるが、若しこれらとダブルようなことになりますならば、村に何の委員会、かんの委員会、甲の委員会、乙の委員会というようにたくさんの委員会で、委員会の濫立で、地方民が苦しむようなことに相成つてはこれ又考えざるを得ない、この点はどうか。
それから更に第三点は、今十條の問題でありまする一、二、三と聞いておりますが、私どもはもつと突き進んで、深く掘り下げるなれば、この傾斜地が振興対策によつて、今までの米麦甘藷というようなものでなくて近代農業化するという、適地適作、或いは三浦さんの言つた通り園芸、或いは長野県あたりであるならば桑園、その他、その農業振興その他の研究によりまして、経営内容においてもつと土地に適する農作物を栽培するというところまで研究しなかつたならば、本当の効果は挙らない。ここまで研究になつておるかどうか。
それから、更に私はこの前も管見的に不思議に思つたのは、十五條で見たところが、衆議院議員、参議院議員と立法府の立場において委員になることは適当でない、こういうことを御答弁になつたと聞いておりますが、これは実に見解の相違である。一体立案したものであつてこそ、計画したものであつてこそそれが監督の責任がある。物をこしらえて、つまり仏を作つて魂を入れずに置いたと同じことで、これはむしろ私は露骨に言うけれども、委員会なり監視なり、運営の事務当局は非常に運営上楽であるかも知れませんけれども、議員の立場であるならば、立法府の議員は必ずしもこの法案を作ることだけが仕事でなくて本当に国民が民主政治の実体を把握するならば、やはり議員の間に非常にこれに経験のあり、又研究の方があるから、やはり参画して、自分の立案したものはどの程度の成績を挙げて行くか、又どういう育成の方向に辿つて行くかということを責任を持つてその衝に当るのが今後のあり方であると思う。然るに、この前の法案と言い、今度の法案と言い、折角書いて置いて削るなんということは、これは誠に何というか、運営的に考えて、真に育成の目的を達成するということの不熱心と申しますか、そこに欠陥がありはしないかと、かように思うのであつて、これはむしろ私の意見になるかも知れませんけれども、衆議院の諸君においても、提案の諸君においても反省して、むしろ進んで自分が種を播いた以上育成してそうして実を稔らすという熱心さがなかつたならば、折角の法案もいわゆる仏作つて魂を入れざるところの室に流れるというような結果に陷ることを恐れるのである。先ずこの四点について率直に簡明に意のあるところを御説明を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/36
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037・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) ちよつとあと先になるかもわかりませんが、その点はお許しを願いたいと思います。この急傾斜地帶にどういう適作を選ぶかというような問題は非常に重要な問題であると思うが、提案者にそういう準備があるかというお尋ねでありますが、これはもうお説の通りだと考えております。單にこの土壌の流亡を防止するとか、或いは農道とか索道をやつて、そうして環境の改善を図ることはもとより必要でありますが、それと同時にその地域に最も適応した作物を選び、又それに対するところの特殊な育成方法をとつて行くということは必要でありますが、これは急傾斜地帶の土壌なども非常にまちまちでありまして、適作と申しましても、皆それぞれその地域に特異な関係を持つておるのであります。先ほど果樹園芸の問題も質疑の中にありましたが、これなどもありますけれども、併し今日の急傾斜地の面積から申しまするというと、これは一小部分に過ぎないのでありまして、例えば温州みかんのごときでも、これは大体黒潮の流れる暖い地帶に適作でありまして、全面的に今の急傾斜地に向くと言うことはできんわけであります。そしてこうい問題は提案者として等閑に付しておるわけではないのでありまして、最も重要な問題とは考えておりますが、これを一々その地域に応じた施策の具体的なものは持ち合せていないわけであります。その点は将来この法律が成立しました暁において運営の面において勘案をさせたい、かように思つておるわけであります。
なお第一点でありましたか、予算の問題でありますが、これはもう殆んどお説の通りに仏作つて魂を入れなくては何の意味もないのでありますが、これはこれまでの大蔵当局にいろいろ予備的の折衝をいたしました経緯、模様を申上げたのでありまして、提案者側といたしましては、それ以上大蔵当局の言質を得ることは、公のものとしてはできんわけでありまして、これは御心配を頂くことは当然でありますから、この委員会の席上に大蔵大臣、或いは大蔵当局をお呼び下さつて、この席上でその点を一層確かめて頂ければ、我々提案者としても非常に満足に思う次第であります。
それから十五條の問題、これも御意見御尤ものことでございます。私も池田委員のお説に十分何と申しまするか、理解し得るのでありまするが、ただこの問題はいろいろ意見の分れるところでありまして、結局これはいろいろ農林大臣が計画をいたしまする場合もありまするし、或いは府県知事が計画をする場合もあるのでありますが、それを審議会においてまとめ上げたものが出て参りましても、これらに対する問題は結局まあ国権の最高機関である議会において検討さるべきが本当で、一方に行政面に携つて実際にやつておるというと甚だ不都合と申しまするか、條理の通らないような面があるという話が濃厚に出て参つて、そうしてこの項を削つたのであります。正直なことを申上げまするというと、甚だ申上げにくいことではありますけれども、提案者の中にも必ずしもこれは皆の意見というものがはつきり一致しておるわけではないのでありまして、将来この運営の面において現在の提案の方法で不都合と申しますか、運営上どうも何だか引締りがないとか、或いは実効を挙げにくいとかいうような場合においては将来において又修正をされるというような時代も来ることも或いは予想できないこともないのでありますが、今日の段階においてはこういう処置をとらざるを得なかつたという事情を御諒察をお願い申上げたいと、かように思うわけであります。
それからもう一つは農業委員会との関係でありますが、これは重複はせんと考えるのでありまして、十分その点は調整が取り得るとかように信じておるわけであります。なお御質疑の中にはございますけれども、関連性を持つものでありますから、一言附加えておきたいことは、雪覆寒冷地帶の法律を実際において活用する場合に、この急傾斜地法案と競合する場合がありはせんか、或いはこれがこんがらがつて計画に非常に困る場合がありはせんかというこの間質問が衆議院で出たのでありますが、これはちよつと違いはしますけれども、今宮本さんの御心配になる農業委員会などの関係とやはり似寄つたような問題でありますので、補足しておきたいと思いますが、そういう場合も必ずないとは申上げられんのでありまして、例えば雪積寒冷地帶の法律は地域がはつきりと限定しておりまするから、その地域外に及びませんが、この急傾斜地法案は雪積寒冷地帶の地域にも該当するものがあれば及ぶわけでありまして、従つて雪積寒冷地帶の法律と競合する場合がありますが、この場合においては農林大臣がこの調整に当ることになつておりますので、不都合は生じないと、かように考えておるわけであります。多少農業委員会との関係は違いますが、補足的に附加えておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/37
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038・池田宇右衞門
○池田宇右衞門君 なお一つこうした点は御研究になつておるかどうか。御承知のごとく急傾斜地においての收穫は平坦地の半額である、或いはものによつては四分の一程度の收穫である。然るに税の賦課ということを税務当局によつて調査したときにおいては、この国税なり地方税なりが平坦地等とそうたくさん違わない課税をされておるということであります。こういう振興に対するところの法案ができた場合においては、税が減税になるということも又織り込んでおかなければならん。そこで国税なり、地方税なりに対しては、労力も過重であり、肥料も効果がない、まあ折角法案によつて振興会ができて、着々收入を挙げても、税のほうが余計取られてしまつたというような惡結果になつても非常に農民は気の寿品であるから、これは十分に研究して税の賦課対策については公平適切なる方法を講じておかなければならん。これは恐らく考えていないだろうと思いますが一つ強く要望しておきます。
それから次に先ほど事務当局から工事ということがありましたが、私は工事に対しては素人でございまして、実際に基礎は知りませんけれども、普通河川工事や、それからこうした治山と申しますか、工事を見ております。ところが下からやつた工事には失敗が多い、なぜならば上から多量なる雨量によつて土砂が流れる、或いは水害の大きな場所には工事を上から埋めてしまつてから順次にやつて来た工事においては再工事、再々工事は割合に少い。どうも政府の工事政策を見るに、河川でもこうした治山でも、こういう工事に対しては下からやつて再三再工事を繰返すような傾向があるから、これは事務当局が十分に研究して、国民負担の血税を使つて工事をやるに際しては、その工事は二度、三度繰返さないように十分に研究されて欲しい。
それから更に耕地の狭い零細な農家の経営にはやはり傾斜地といえども開墾をして行かなければならない個所がたくさんある。この開墾された傾斜地においてはやはりこの法案の適用を受けて、それぞれ振興対策として政府の助成、或いは援助政策に入つて行くかどうか。この点も御研究になつておるかどうか。この三つを更にお尋ねし、これは薬師神さん、事務当局からも一つ十分なる覚悟と誠意ある答弁をお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/38
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039・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) なお事務当局のほうからも補足してもらいたいと思いますが、今の課税の問題、急傾斜地における收穫三平坦部の收穫からの賦課の問題でありますがこの課税の問題は先ず平坦部と何らの差異というものが設けられていないわけであります。これまでは殆んど同額のものが課税されておるのでありまして、我々のほうでは関係の代表者がつまり国税庁の出張所へ押しかけて参りまして、この問題を幾たびか陳情をしたわけであります。それでこの国税庁の出張所のほうでも非常に同情はしてくれるのであります。そうして課長会議の議題にまでしてくれまして、できるだけ考えよう、こういう話をしてもらい、幾らか考えてはくれたこともあるのでありますけれども、どうしてもこれは税制の根本に触れなくては、單に一国税の事務所長なり出張所長が同情してくれた範囲くらいでは解決のつかない問題でありまして、これは将来に残された大きな問題であると、かように考えておるわけであります。なおこの收穫の点でありますが、この委員であられる三橋さんなどは長く愛媛県に三十年もおられた人でよくわかつておるのでありますけれども、果樹園芸の地帶は一小部分でありますが、その他は甘藷とはだか麦との大体混合作でありますが、而もそれは下のほうの表土の深いほうは混合作にはやつて行けますけれども、中腹から室のほうは單作であります。なぜ單作によらなければならないかというと、さつま芋を温床で育てて、そうして早く植えて梅雨明けの早越に堪えるだけの蔓が伸びていないと枯れてしまう。雨以外には灌漑の方法がないのでありますから、止むを得ず麦は播かないで芋だけの單作の地帶が多いのであります。芋は労力と肥料で作り上げるのでありまして、これは土壌の恩恵というものは考えられないのであります。総体量としてはただもう労力と肥料によつて收穫を上げるのです。中にはもうさつま芋でも反当千五百貫ぐらい作る所もあるのであります。平川部に負けないような收穫は挙げております。その代り先ほど農林当局でも御説明のあつたように、愛媛では四反幾ら、三反幾らという狭い面積を寄つてたかつて一生懸命やるのであります。そういう実績は挙げておりますけれども、條件としてはなかなかそういう收穫は普通では挙げられないのが実情であります。
以上甚だ簡單でありますが、御質問に対してお答えをいたしまして、なお足りない点を事務当局のほうから御説明申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/39
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040・堀直治
○説明員(堀直治君) 池田先生から大変工事についてのいい御忠告を受けたわけでございますが、誠にその通りでございまして、特にこのような工事といたしましては、最上流端の河川工事であります。こういう所の工事がしつかりいたして来ますというと、下流の排水路その他が又災害でやられるというようなことが少くなるという意味もございまして、この工事の施行及び、又同じこの工事そのものにつきましても、施行の順序については十分注意をいたしまして、そういつたような失敗のないようにして行きたいと考えております。
開墾地の問題でございますが、今現在やつておる或いはこれから工事をやろうというような開墾地につきましては、先ほども申上げましたように、大体急傾斜地は取扱わない、成るべく緩傾斜地についてだけ開墾をして行くというふうな取扱いではございますけれども、なおそれでも止むを得ずそういつたような所をやる場合には、あらかじめそういうことに起きないように、或いは労力についても或る程度の道路工事その他を考慮いたしまして計画をいたしておりますので、この法律の適用を受けなければならないというものはないようにして行きたいと考えておりますが、戰時中その他やりました開墾につきましてま、そういつたことよりも、早く面積を作り上げて増産に寄與したいということか一杯でございましたので、往々にして、そういうこれらの施設を欠いておるものが相当多いわけでございます。従いまして以前の開墾地については、やはりこの法律によつてそういつた工事を行なつて効果を挙げて参りたい。かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/40
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041・松永義雄
○松永義雄君 議事進行について……先はど事務当局からの御答弁によりますると、私の質問した趣旨と符合しておらない点があります。なぜこういう法案が出るに至つたかという事情についてお尋ねいたしたその理由として提案者の御説明によると、漁業の不振、人口の稠密、その他であると言われたようですが、なぜ漁業が不振に陷つたかという点について、簡單でよろしいですけれども、農林当局のその方面のかたの御出席を願つて御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/41
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042・藥師神岩太郎
○衆議院議員(藥師神岩太郎君) この沿岸漁業の問題に触れたのは、私が申上げたのでありますが、大体私の申上げたのは、この法案を提出する動機とか、或いは原因にこれがなつているというのではないのでありまして、私はこの一番急傾斜地帶の典型的な地帶は瀬戸内海、或いは豊後水道に面した面に一番多いのでありますが、それの発生起源、これは何も文献によつたのではないのでありますけれども、我々が常識から判断して見ると、最初は何故に、これは考え方によるというと物好きなような考え方を持つておる人がある。あんな山のてつぺんまで耕やして、自分らが好んで過重な労力を費やし、麦や芋を食つてやつているということは、これは農業じやない、芸術だと評する者があるのでありまして、この面から言うと、これはあんな地帶を掘らなくても、もう少し平坦地のほうへ移住したらいいじやないかというような簡單な考えを以て見る人もあるのでありますけれども、私はこれは急傾斜地帶全体に適用するわけでもなんでもないのでありますけれども、瀬戸内海とか或いは豊後水道に面した地帶の典型的な急傾斜地帶の起源というものはどうもそういう気がしていけない。つまり最初は漁業中心で、食べるものだけはいわゆる自給しなくちやならん、移動交流はその時分には行われん時代でありますから、そういう関係でやつて行つたものが、今日は沿岸漁業が振わなくなつてしまつて、もう機動力の強い船で遠方まで行かなくては漁業は成り立つて行かないから、必然的に僅か一戸当り三反とか四反とかいう傾斜地を守つて食つて行かなければならないような状態に追い込まれておるように私は見ると、こういうふうに申上げたのでありまして、この法案を出すに至つた動機でも原因でもないのでありますから、その点を御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/42
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043・松永義雄
○松永義雄君 ちよつと速記をとめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/43
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044・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/44
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045・羽生三七
○委員長(羽生三七君) 速記を始めて下さい。
なおまだ御質問があるかと思いますが、大分時間も経過いたしましたので、明日更に質疑を続行願うことにいたしまして、その際大蔵省当局の出席も求めて、そこで先ほど来問題になつておるようなことについて十分御討議を願い、できれば明日にでも採決にまで入りたいと思うわけであります。併し強いて明日ということではないのでありまして、大蔵当局の出席を求めた上、十分予算上の措置についても御討議願うわけであります。
本日はこの程度で散会いたします。
午後四時九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314988X02219520416/45
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