1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年三月二十八日(金曜日)
午前十時五十五分開会
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 小野 義夫君
理事
宮城タマヨ君
伊藤 修君
委員
加藤 武徳君
左藤 義詮君
長谷山行毅君
岡部 常君
吉田 法晴君
一松 定吉君
羽仁 五郎君
政府委員
法務政務次官 龍野喜一郎君
法制意見長官 佐藤 達夫君
法務府法制意見
第二局長 林 修三君
法務府矯正保護
局長 古橋浦四郎君
中央再生保護委
員会事務局長 齋藤 三郎君
事務局側
常任委員会専門
員 長谷川 宏君
常任委員会専門
員 西村 高兄君
—————————————
本日の会議に付した事件
○平和條約第十一條による刑の執行及
び赦免等に関する法律案(内閣送
付)
○ポツダム宣言の受諾に伴い発する
命令に関する件の廃止に関する法律
案(内閣提出、衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/0
-
001・小野義夫
○委員長(小野義夫君) それでは只今より委員会を開きます。
先ず、平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を議題に供します。本案につきまして政府の御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/1
-
002・龍野喜一郎
○政府委員(龍野喜一郎君) 只今上程になりました平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を提案することになりました理由及びその内容の概要につきまして、簡單に御説明いたします。
平和條約第十一條は、我が国が同條約の発効後において、いわゆる戰犯者に対する刑を執行すべき旨を定め、且つ、これらの者に対する赦免、刑の軽減及び仮出所については、これに関する日本国の勧告と関係連合国側の決定とを待つて行うべき旨を規定いたしておりますので、この規定の趣旨に則り、戰犯者に対する刑の執行並びに赦免、刑の軽減及び仮出所を適正に行うための法律を制定し、平和條約の発効と同時にこれを施行しなければならんわけであります。これがこの法律案提案の根本的な理由であります。次に、その内容のあらましにつきまして、順を逐つて説明申上げることといたします。
第一に、この法律案に規定された事項を実施する行政機関といたしまして、行政組織法上の権限の分配を考慮し、刑の執行に関する事項につきましては法務総裁とし、赦免、刑の軽減、仮出所及び一時出所に関する事項につきましては、法務府の外局である中央更生保護委員会が管理するものといたしているのであります。
第二に、刑の執行につきましては、巣鴨刑務所においてこれを行うものとし、その準拠法令として、この法律案に規定するもののほか、監獄法中の受刑者に関する規定を準用することとし、併せて国際刑法及び刑務委員会による被拘禁者の処遇に関する最低基準その他の国際慣行を遵守するものといたしているのであります。この国際慣行を尊重するという趣旨から、従来行われておりました未決日数の算入、在所者の病院移送、有期の刑の在所者及び仮出所中の者について、善行を保持していると認められる場合の善行特典制度の適用等に関する規定を設けているのであります。尤もそのうち、未決日数の算入及び善行特典制度は、刑の執行の段階に関するものではありますが、一面恩典的な色彩を持つものであることに鑑みまして、関係国の同意を得て適用することといたしているのであります。又将来万一在所者が逃亡したときは、国内犯ではありませんので、逃走罪は成立しないことといたし、収監状に相当する収容状が刑務所の長から発せられ、連れ戻すことになつております。
第三に、仮出所につきましては、刑期の三分の一、又は刑期四十五年以上及び終身刑の者については十五年を経過し、且つ刑務所の規則を遵守している在所者は、その適格性を有するものとし、本人の申請又は親属、知人、その他の関係者の願出により、委員会が先ず仮出所の適格性の有無を判別しました後審理し、審理の結果勧告を相当とするときは、政令の定むるところにより平和條約第十一條による勧告の手続をとり、これに対する関係国の決定を待つてその処分を実施するのであります。仮出所中のものは、犯罪者予防更生法中の関係規定の準用による保護監督に附し、そのものの逃亡又は遵守事項の違反があつたときは、委員会の決定をもつて仮出所を取り消し、又は取り消すことができるものとし、その決定をするために仮出所を仮に取り消して仮収容状を発することができるものとしているのであります。
第四に、一時出所と申しますのは従来の国際慣行において行われていたところでありまして、委員会が在所者、又はその親族、知友、その他の関係者の願出により、在所者の父母、配偶者、又は子の死亡、危篤等の特別の事由があるとき、期間を定め、且つ同伴者をつけて一時帰すことが許されることにしているのであります。
第五に、赦免及び刑の軽減につきましては、在所者及び仮出所中の者の申請、その親族、知人、その他の関係者の願出、刑務所の長の申出、又は委員会の職権により、おおむね仮出所と同様の手続で委員会が審理を行い、勧告を相当とするときは勧告の手続をとり、これに対する関係国の決定を待つて処分を実施するのであります。
第六に、この法律の施行に必要な事項は、政令、法務府令、又は委員会の規則で定めるものといたしておるのであります。これはこの法律には基本的な事項を規定し、それに伴う手続その他の細目は、これを政令以下に讓ることといたしたわけであります。
なお冒頭にも申述べましたように、この法律は、平和條約の発効と同時に施行する必要がありますので、附則においてその旨を明らかにすると共に、施行に関連して必要とされる法務府設置法の一部改正等についての所要の規定を設けているのであります。
以上が提案の理由及び内容の概略であります。何とぞ愼重御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/2
-
003・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 本問題に関して質問がありますれば、順次御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/3
-
004・伊藤修
○伊藤修君 本委員会は幸いにいたしまして、この平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する小委員会が、いわゆる戰争犯罪人に対する処置に関する小委員会として設けられておるのでありまするから、まさに本法案は同小委員会に付託いたしまして、審議せられるようにお取計い願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/4
-
005・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 只今伊藤委員からの御提案に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/5
-
006・小野義夫
○委員長(小野義夫君) じや異議ないものと認めまして、これは戰犯に関する小委員会に付託して審議を願いたいと思います。なお、それでは小委員会で質問をして審議をしてもらうことにいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/6
-
007・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 次に、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案を議題にいたしますが、その前に各委員会における本法律案に関連する法律の審議の経過について、委員長より御報告を申上げます。
各委員会に亘りまして調査の結果、地方行政、建設、外務、水産、労働の各委員会におきましては、三月十四日以来二十七日の間におきまして、それぞれ本会議を通過いたしておるのであります。又文部、厚生、通産、大蔵、農林等におきましては、本日あたり通過の予定をいたしておるような次第であります。又運輸、経済安定等におきしましては、この母法の通過と審議と相待つて審査を進めるということにしておるようであります。その他内閣委員会におきましては、また説明を聞いた程度でありまして、審議をいたしておらんようであります。これを要するに本日あたりを以て過半数の委員会は関連法を通過させるような予定に相成つておるような次第であります。以上御報告を申上げます。
なお伊藤委員から請求のありましたポツダム宣言に伴う諸命令の措置に関する法律の案件の存続するもの、及び廃止すべきもの全体についての資料について御説明をお願い申上げます。概要で結構ですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/7
-
008・林修三
○政府委員(林修三君) それでは私からここでお配り申上げましたポツダム命令の大体の措置のことに関した資料につきまして御説明申上げます。
先にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案を提案いたしました際に、提案理由で御説明申上げました通りに、このポツダム命令の措置につきましては、大体各省各府別に取りまとめまして、おのおの別個の法案で措置をきめるようにいたしているわけであります。現在のところポツダム命令が只今効力を持つておりますものが百四十四件ございます。そのほかに既存の法令を廃止いたしましたような場合に、ポツダム命令で附則としてついておりました経過規程がなお効力を有するものが若干件数あるわけでございます。これにつきましての措置をどういうふうにきめるかにつきましては、只今国会のほうに御提案申上げております各府各省別の約二十件の各措置法によりまして、その措置を一応予定してきめてあるのであります。これが第一の表にその大体の措置を掲げたわけでございます。これで御覧になりますように、総理府関係は特殊の関係がございますので、本府及び地方自治庁、選挙管理委員会、警察関係、公益事業委員会、賠償庁、特別調達庁、この六件に分けて、総理府関係は六件の法律案を提案いたしております。そのほか法務府を外務省等は各省関係を全部取りまとめて出したわけであります。大蔵省につきましては非常に件数が多い関係と、それから連合国ドイツ財産の関係は非常に内容が複雑でございますし、それから多少所管の権限が総理府の賠償庁とも関連してる面がございますので、大蔵省の中からは連合国ドイツ財産関係だけの五件を取除きまして、別個の法案として御提案申上げております。文部省、厚生省は各省分を全部取りまとめてここに挙げてございます。農林、水産関係につきましては、農林省関係は御承知のように常任委員会が農林、水産の二委員会に分れております関係で二つに分れております。あと通産、運輸、労働、建設、安本は各省別に取りまとめております。郵政と電気通信は合せて一件しかございませんので、両省に関係いたしましたポツダム命令でございますので、併せて一件のものとして出しております。かような約二十件の法案で措置いたしましたポツダム命令が百四十四件の現行法の中で百十二件になつております。この百十二件の内訳はここにございますように、そのままの形で存続させますものが十九件、改正して存続させますものが二十一件、廃止いたそうというのが七十二件、かような内訳に相成つております。この各百十二件の法令の名前は資料の後のほうに別紙として全部掲載いたしてございます。それから百四十四件のうち百十二件は、かように一応この国会の初めにポツダム命令の措置法に盛りまして御提案申上げたのでございますが、その残りの三十二件につきましては、その当時におきましてなお多少いろいろの関係で措置がまだきまつておりませんでした関係で、別個の全部取扱にいたしているわけであります。その三十二件の取扱につきましては、他の法律で廃止の予定のもの、その他検討中のものというところの欄に掲げてございます。この三十二件の中にもこの措置によりまして大体廃止をいたす、或いは改正の上存続いたす、そういうふうな措置がきまりまして、もうすでに法案が国会に出ておりますものも若干ございます。まだ多少問題がございまして、そのままになつておりますものもこの中には若干ございますが、ちよつとこれを御説明申上げますと、総理府関係では、初めの総理府関係のポツダム命令の措置法案に盛りませんでした法案が、十件あるわけでございますが、この十件のうちに廃止されるものとして挙げました総理府関係の五件は、御承知のように只今公職に関する就職禁止、退職等に関する勅令等この五つを今国会に御提案申上げまして、これを廃止いたす予定になつております。それからその次の二に掲げましたものの第一の恩給法の特例に関する件の措置に関する件、いわゆる臨時恩給のポツダム命令でございますが、これは恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案、こういう名前で御提案申上げております。これは大体一年間存続させる、一部改正の上一年間存続させる予定で御提案申上げております。その次の警察予備隊令につきましては、つい数日前、警察予備隊令の一部を改正する法律案、この名前で予備隊令の一部を改正した上存続させるようにいたしまして、この法律案を御提案申上げております。その他の三件がまだあるわけでございますが、これにつきましては目下その措置につきまして検討中でございます。まだ措置がきまつておりません。ただこの三のうちの2でございますが、いわゆる政令二〇一号、これにつきましては地方公共事業体の労働関係の法律案が目下検討されておりますので、その法律案の関連におきまして措置があり得るものと見込まれているわけでございます。法務府関係につきましては七件、この法務府関係のポツダム命令に則りません法律案があつたわけでございますが、そのうちの初めの三件は廃止されるものとして挙げてございます。団体等規正令ほか二件は、破壊活動防止法という仮称でございますが、こういう法案の附則で廃止をいたす予定になつております。その他四件ございますが、これにつきましては只今のところ大体においてもう使命が終つたような内容もございますので、大体そのままにいたしまして自然消滅をさせたいというような意向で今検討いたしております。その他四件があります。それから外務省関係では外国人登録令がございますが、これは只今外国人登録法案という別個の法律案を国会に御提案申上げまして国会の御審議を願つております。それで廃止いたすことになつております。文部省関係につきましては、いわゆる教職員パージの政令でございますが、これは公職パージと同じような意味合いにおきまして、これを廃止いたします法案を只今国会に御提案申上げております。農林省につきましては、農地調整法及び自作農創設特別措置法の適用を受けるべき土地の讓渡に関する政令、これは只今御提案申上げております農地法案で廃止をいたす予定ですでに農地施行法で廃止をいたしております。それから通産関係で六件ございますが、初めのほうの1と2とそれから4と5はいわゆる賠償施設関係のポツダム命令でございますが、これはいろいろの関係がございまして、講和の発効までに措置をいたすことができないような今事情になつておりますので、それを待つて措置をいたす予定で検討中でございます。それから3と6につきましては目下別個の措置を、3は大体その場限りの措置でございますが、6につきましては目下通産省におきましていろいろ検討中のようでございます。それから運輸省でございますが、運輸省関係につきましては四件ございますが、そのうちの1と2につきましては、目下まだ御提案申上げておりませんけれども、平和條約の発効に関連いたしまして、制定を必要といたします航空法案で廃止される予定になつております。それから3は目下その措置を検討中のようでございます。4は通産省で申しましたと同じように、これは賠償施設関係のポツダム命令でございまして、これはやはり平和條約が発効いたしませんと措置ができないような事情になつております。それから電気通信省関係のは、電話加入権の取扱及び電話の讓渡禁止等に関する政令でございますが、これは目下電信法を全面的に改正いたしまして、公衆電気通信営業法案というものを制定いたす予定で、電気通信省で法案の準備をいたしておりますが、その法案によつてこれを廃止いたすような予定になつているようでございます。建設省関係の住宅緊急措置令は、これは住宅緊急措置令の廃止に関する法律案を国会に御提案申上げまして、これはすでに国会をたしか通過成立いたしました。このような関係に相成つております。三十二件のこのポツダム命令の措置の法案に盛られておりませんポツダム命令につきましては、目下大体そういうような措置の予定に相成つております。あとの別紙は先ほど申上げましたような百十二件、約二十件の各ポツダム命令の措置の法案に盛り込んでございます。ポツダム命令の名称でございます。それの名称を全部あとに掲げてあるのでございます。
その他又必要がございますれば、このポツダム命令の内容も御説明いたしますが、一応資料の説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/8
-
009・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 本案に関する質疑をそれではどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/9
-
010・伊藤修
○伊藤修君 只今伺つただけでは非常にわかりかねるような御説明でありますが、これほどたくさんな法律につきまして、一体衆議院あたりは盲判を押してそのまま寄こす、これだけの内容を盛るところの法律を活すか殺すか、恐らくこれだけの法律を作るのには一通常国会の期間を要するほどの多数の法律です。それをこの勅令一本で以て盲判を押して寄こした。実に私は国会の審議というものの軽卒さにはあきれざるを得ないのです。少くとも参議院においてはこれに対して相当の愼重な態度を以て内容の検討をすべきがまさに私は参議院の使命ではないかと思うのです。(「同感」と呼ぶ者あり)従つて私は今お伺いしただけではちよつとわかりかねますから、なおこれに対しまして検討いたしてみたいと思います。それで……もう時間になりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/10
-
011・小野義夫
○委員長(小野義夫君) もうそれでは速記を本会議に取上げられるので、ここでこの会議を閉じて、明日は正確に午前十時から法務総裁も出席せられるので……、今日はもう止むを得ませんから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/11
-
012・伊藤修
○伊藤修君 私が申上げておきたいことは、百四十四件に対するところの内容について相当お尋ね申したいと思いますし、なおこの基本法律の性格論、法理論について十分一つ検討いたしたいと思いますので、その点に対する質問は保留しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/12
-
013・小野義夫
○委員長(小野義夫君) それじや本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時より正確に始めます。
午前十一時二十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X01519520328/13
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。