1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年四月四日(金曜日)
午前十時三十六分開会
—————————————
出席者は左の通り。
委員長 小野 義夫君
理事
宮城タマヨ君
伊藤 修君
委員
左藤 義詮君
長谷山行毅君
岡部 常君
吉田 法晴君
齋 武雄君
羽仁 五郎君
衆議院議員 鍛冶 良作君
政府委員
法務政務次官 龍野喜一郎君
法務府法制意見
第四局長 野木 新一君
法務府検務局長 岡原 昌男君
民事法務長官総
務室主幹 平賀 健太君
中央更生保護委
員会事務局長 齋藤 三郎君
中央更生保護委
員会事務局少年
部長 池田 浩三君
事務局側
常任委員会専門
員 長谷川 宏君
常任委員会専門
員 西村 高兄君
—————————————
本日の会議に付した事件
○平和條約の実施に伴う民事判決の再
審査等に関する法律案(内閣送付)
○平和條約の実施に伴う刑事判決の再
審査等に関する法律案(内閣送付)
○日本国とアメリカ合衆国との間の安
全保障條約第三條に基く行政協定に
伴う民事特別法案(内閣送付)
○日本国とアメリカ合衆国との間の安
全保障條約第三條に基く行政協定に
伴う刑事特別法案(内閣送付)
○下級裁判所の設立及び管轄区域に関
する法律の一部を改正する法律案
(内閣提出)
○最高裁判所における民事上告事件の
審判の特例に関する法律の一部を改
正する法律案(内閣送付)
○裁判所職員定員法等の一部を改正す
る法律案(内閣送付)
○犯罪者予防更生法の一部を改正する
法律案(内閣送付)
○住民登録法施行法案(衆議院提出)
○議員派遣要求の件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/0
-
001・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 只今より委員会を開きます。
本日は平和條約の実施に伴う民事判決の再審査等に関する法律案、平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案、以上四案を便宜上一括議題に供します。なお念のため申上げますが、四案はいずれも予備審査のものでありますが、これより四案につきまして政府の御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/1
-
002・龍野喜一郎
○政府委員(龍野喜一郎君) 只今議題となりました平和條約の実施に伴う民事判決の再審査等に関する法律案の提案理由を御説明申上げます。
この法律案は、平和條約第十七條(b)預の裁判の再審査に関する規定のうわ民事判決に関する部分及び議定書C2項の規定の実施に必要な措置を講ずることを目的とするものであります。
先ず、民事判決の再審査でありますが、御承知の通り、平和條約第十七條(b)によりますと、日本国政府は、連合国人を原告又は被告として日本国の裁判所が行なつた裁判について、当該連合国人が訴訟手続において十分な陳述をすることができなかつた場合には、その裁判を再審査するための措置をとり、当該連合国人が右の裁判の結果損害を受けた場合には、その者を裁判前の地位に回復するか、又はそれぞれの事情の下において公正且つ衡平な救済が與えられるようにしなければならないことになつているのであります。この法律案におきましては、この再審査を我が民事訴訟法の再審の方法によつて行うこととすると共に、再審の結果による地位の回復又は救済についての原則的規定を設けることといたしました。即ち連合国人が日本国と当該連合国との間に平和條約が効力を生ずる日までに終局判決の言渡を受け、その判決が昭和十六年十二月八日以後に確定した場合であつて、当該連合国人が、同日以後日本と当該連合国との間に平和條約が効力を生ずる日までの訴訟手続において、原告又は被告として申立、主張、立証等、事件について十分な陳述ができなかつたときは、その連合国人は日本と当該連合国との間に平和條約の効力が生じた日から一年内に限り、その判決に対し民事訴訟法に定める再審の訴を以て不服を申立てることができることといたし、又この再審の訴において再審の事由が認められ、且つ連合国人が原判決の結果損害を受けているときは国はその者を原判決前の地位に回復するか、又はその者に対しそれぞれの事情を考慮して公正衡平な救済を與える責に任ずることを明らかにいたしたのであります。なお地位の回復又は救済の手続につきましては、連合国人を当事者とする訴訟事件の実情等をも考慮して、別に法律で定めることにいたしております。
次に、議定書のC2項によりますと、手形、小切手等の流通証券の引受又は支拂のための呈示期間、拒絶証書作成期間等の期間が戰争中に経過し、且つ当事者が戰争中に呈示等をしなかつた場合には、平和回復後呈示等の行為ができるようにするため、平和條約の効力発生の日から三カ月以上の期間が與えられなければならないことになつておりますので、この法律案はヴェルサイユ條約実施の際における我が国の先例等をも参酌の上、この期間を六月と定めました。以上この法律案の内容につきまして概略御説明いたしました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。次に、只今議題となりました平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案の提案理由を御説明申上げます。
この法律案は民事判決の再審査等に関する法律案と同様平和條約第十七條(b)に基くものでありまして、刑事判決の再審査等について必要な措置を講ずることを目的とするものであります。即ち連合国人が日本国の裁判所で有罪の言渡を受け、その判決が昭和十六年十二月八日から日本国とその連合国との間に平和條約が効力を生ずる日までの間に確定した場合において、その連合国人がその間の訴訟手続において被告人として事件について十分な陳述ができなかつたときは、日本国とその連合国との間に平和條約が効力を生じた日から一年内にその判決に対して、連合国人の利益のために再審の請求をすることができることといたすのであります。
この法律に基いて救済を與えるための手続としては、刑事訴訟法に定められております再審の手続を利用するのでありますが、正式な再審の審判に入ります前に十分な陳述をしなかつたことが原判決に及ぼす影響の有無について審査する段階を設けて、原判決に影響を及ぼすと認めるべき相当な理由のある場合に限つて再審の開始決定をして審判することとしております。次に、この法律による審判につきましては、一般の場合とは異る特則を設けております。この法律に規定してあります事件について審理して判決を言い渡しますのは、以前の裁判におきまして十分な陳述のできなかつたことが判決にどの程度の影響を及ぼしたかを明らかにすることが目的でありますが、若し現在の事実と法令に基いて審判しますと、刑の廃止、大赦又は時効完成によりまして免訴の判決を言い渡さなければならない場合が大部分となる虞れがあります。それではこの裁判をする目的を達することができませんので、原判決当時の事実及び刑罰法令に基いて審判することといたしております。
このようにして審判しました結果、連合国人が原判決によつて損害を受けたことが明らかになつたときは、国はその者を原判決前の地位に回復するか、又はその者に対してそれぞれの事情の下において公正且つ衡平な救済を與えるのでありまして、その地位の回復又は救済の手続について別に法律で定めることといたしております。
以上この法律案の内容につきまして概略御説明いたしました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
次に只今議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協家に伴う民事特別法案の提案の理由を御説明いたします。
この法律案は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定において規定されている事項のうち、民事に関するものについて特別の定をしようとするものであります。即ち同協定第十八條三項においては、安全保障條約に基き日本国内に駐留するアメリカ合衆国軍隊の活動に起因する不法行為上の損害については、日本国の被用者の行動から生ずる請求に関する日本国の法令に従つて、日本国がその賠償をすべきことが定められ、又同協定第十八條第六項(B)においては、合衆国駐留軍の使用する施設又は区域内にある私有の動産に対して強制執行をする場合には、合衆国の当局が日本国の裁判所の要請に基き、それらの動産を差押えて日本国の当局に引き渡すべきことが定められているのであります。以上の二点はいずれも国民の権利義務に直接関係のある事項でありまして、行政協定の右の規定を実施いたしますためには、法律で特別の定をする必要があるのであります。よつてこの法律案におきましては、第一條から第四條までにおいて合衆国駐留軍の活動に起因する不法行為上の損害については、国が不法行為に関する法令の規定の例に従つてその賠償の責任を負うこと、その他損害の賠償に関する事項を規定し、第五條において、合衆国駐留軍の使用する施設又は区域内にある動産に対する強制執行について民事訴訟法の特例を規定したのであります。
以上簡単でありますが、この法律案の提案の理由を証明いたしました。何とぞ慎重御審議の上、速かに可決せられんことを希望いたします。
次に只今議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案につき、提案の理由を御説明申上げます。
日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約の発効に伴い、同條約第三條に基き、日本国内及びその附近に配備されるアメリカ合衆国の軍隊に関しましては、行政協定の趣旨に則り、刑事上の実体法及び手続法について若干の特別規定を設ける必要が生じますので、この法律案を提出することといたしたものであります。申すまでもなく、アメリカ合衆国軍隊並びにその要員に対しましても、我が国既存の法令は原則としてその適用を見るのでありますが、右條第三條に基く行政協定の第十七條及び第二十三條等の條項により、刑事関係の法令について若干の特別措置を必要といたしまするので、その必要最小限度の規定をこの法律案に取入れた次第であります。従いまして、言換えまするならば、この法律案に特別に規定していない事項につきましては、原則として既存の各法令が適用されることと相成るわけであります。
この法律案は第一章総則、第二章罪及び第三章刑事手続の三章二十カ條と附則から成つておるのでありまして、ここにこの法律案の主要点を申上げます。
先ず第一章総則の章は一カ條でありまして、この法律において使用する語の定義を定めたのであります。この定義は主として右に述べました安全保障條約及び行政協定第一條に定めているところに従つたものであります。
次に、第二章罪の章は行政協定第十七條及び第二十三條に基くものでありまして、すべて八カ條より成り、合衆国軍隊が使用する施設又は区域で入ることを禁じた場所に入る等の罪、アメリカ合衆国軍事裁判所が裁判権を行使する他人の刑事被告事件に関する証拠を隠滅する等の罪、合衆国軍事裁判所における僞証の罪、合衆国軍隊の軍用物を損壊する等の罪、合衆国軍隊の機密を侵す罪及び合衆国軍隊の構成員の制服を不当に着用する罪について規定したものでありまして、いずれも既存の法令によつてはその法益を保護することができないものばかりであります。又これらの規定について定められている法定刑につきましては、おおむね我が国現行法令又は過去の立法例を参酌し、且つ新らしい事態に即応いたしまするよう、努めこ妥当を期したものであります。
次に、第三章刑事手続の章は行政協定第十七條に基くものでありまして、すべて十一カ條より成り、日本国の法令による罪を犯したアメリカ合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族の逮捕並びに合衆国軍隊への引渡し、合衆国軍隊の使用する施設又は区域内における逮捕その他人身を拘束する処分及び差押、捜索等の処分の執行、合衆国軍隊の使用する施設又は区域内等において逮捕された者についての日本側の受領、アメリカ合衆国軍事裁判所又は当局の刑事手続に対する我が国側の協力及び合衆国の軍事裁判所又は合衆国軍隊による抑留又は拘禁についての刑事補償法の適用など、いずれも刑事手続に関する現行の法令を以てしては処置し得ない問題を取上げて特別の規定を置いたものであります。これを要するに実体規定、手続規定を通じ、いずれも必要最小限度の特則を置くという方針を堅持すると共に、一般国民の人権の保護についてもできる限りの配慮をいたしておるものであります。
以上この法律案につきまして概略御説明申上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議のほどをお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/2
-
003・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 御質疑はもう今日はやめて……、これは小委員会に付託すべきものですね。ちよつと速記をやめて……。
(速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/3
-
004・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 速記を始めて……。次に、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案、裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案、犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案、以上四案につきまして政府の御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/4
-
005・龍野喜一郎
○政府委員(龍野喜一郎君) 只今議題となりました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。
改正の要点は、次の三点であります。第一点は、土地の状況及び交通の便否等に鑑みまして、簡易裁判所の管轄区域を変更することであります。即ち市川簡易裁判所管内の千葉県東葛飾郡鎌ケ谷村を松戸簡易裁判所の管轄に、市川簡易裁判所管内の千葉県千葉郡津田沼町、大和田町、豊富村、陸村、及び二宮町を千葉簡易裁判所の管轄に、大月簡易裁判所管内の山梨県北都留郡大目村を上野原簡易裁判所の管轄に、屋代簡易裁判所管内の長野県埴科郡松代町、西條村、豊栄村及び寺尾村を長野簡易裁判所の管轄に、小千谷簡易裁判所管内の新潟県三島郡片貝町、来迎寺村、岸塚村及び塚山地を長岡簡易裁判所の管轄に、神戸簡易裁判所管内の神戸市兵庫区道場町、八多町及び大沢町を三田簡易裁判所の管轄に、石川飯田簡易裁判所管内の石川県鳳至郡町野町を輪島簡易裁判所の管轄に、呼子簡易裁判所管内の佐賀県東松浦郡湊村を唐津簡易裁判所の管轄に、六角簡易裁判所管内の佐賀県杵島郡大町町を武雄簡易裁判所の管轄に、志津川簡易裁判所管内の宮城県本吉郡十三浜村を石巻簡易裁判所の管轄に、二戸簡易裁判所管内の岩手県二戸郡田山村及び荒沢村を盛岡簡易裁判所の管轄にそれぞれ変更しようとするものであります。
第二点は、簡易裁判所の所在地又はその名称の変更による庁名の改称であります。即ち高松地方裁判所管内の土庄簡易裁判所を庁舎の都合により、同郡の淵崎村に移転し、これを淵崎簡易裁判所と改称し、又簡易裁判所の所在地の名称の変更により、吉田簡易裁判所を富士吉田簡易裁判所に、岐阜中津簡易裁判所を中津川簡易裁判所に、柳河簡易裁判所を柳川簡易裁判所に、富島簡易裁判所を日向簡易裁判所に改称しようとするものであります。
以上第一点及び第二点につきましては、いずれも地元町村、関係官公署、地元弁護士会等の意向を十分斟酌して、最高裁判所とも協議して決定したものであります。
第三点は、市、町、村その他の行政区画に変更のあつたことに伴うこの法律の別表の改正であります。即ち従前の市、町、村が合併又は分離して、新たに市、町、村ができ、又市町村の一部が他の市町村に編入される等裁判所の管轄区域の基準となつた行政区画に変更のあつたもの等につきまして、この法律の別表を改正しようとするものであります。
以上簡單ではありますが、この法律案の要点について御説明申上げました。何とぞよろしくお願いいたします。
次に、只今議題となりました最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案の提案の理由を御説明申上げます。
新憲法下における最高裁判所の職責の重大性に鑑み、民事事件に関する最高裁判所の裁判権を調整することが必要であるというところから、第七回国会において、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律が制定されたのであります。この法律は、御承知の通り、有効期間を施行の日から二年間と限られており、来る六月一日からその効力を失うこととなつております。政府におきましては、この法律が臨時特例法として制定されまた趣旨に鑑み、民事上訴制度の全般につき更に検討をする必要があるものと認め、最高裁判所事務総局の協力を得て研究を重ねて来たのでありますが、上訴制度を改革するについては、下級審における手続その他民事訴訟手続の全般に亘り根本的に再検討をする必要があるとの結論に達したのであります。そこで昨年五月法制審議会にこの点につき諮問し、目下同審議会において鋭意検討審議中であります。併し何分問題が重大でありまして、遺憾ながら未だ成案を得るにいたつていないのであります。
然るに最高裁判所に対する民事及び刑事の上告事件、その後も年々増加の一途を辿つており、民事事件に関する最高裁判所の裁判権を調整する必要は、右法律施行当時と少しも変つておりません。
以上の事情に鑑み、この際最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の有効期間を、更に二年間延長し、その間に、民事訴訟法の改正につき成案を得るよう努力したいと存ずる次第であります。
これが、この法律案を提出した理由であります。何とぞよろしくお願いいたします。
次に、只今議題となりました裁判所職員法等の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申上げます。
先ず、裁判所職員定員法に関する改正について申上げます。今回の改正は、裁判官以外の裁判所職員の定員を八十四人増員しようとするものでありまして、その内訳は裁判所事務官及び雇合計七十人、裁判所技官及び看護婦合計十四人となつておりますが、このうち裁判所事務官及び雇の増員は、最近の実情に鑑みまして、事件の審理の際における法廷内外の静穏を保持するための方法として、裁判所事務官及び雇をして、特に必要を認めた場合、裁判所の長の監督の下に、裁判所構内における警備に当らせ、或いは裁判長の指揮を受けて法廷における秩序維持に必要な命令の実施等を担当させるためのものであり、又技官及び看護婦の増員は、家事審判事件、少年事件その他の家庭裁判所の事件の処理におきましては、医師としての技官及び看護婦の医学的見地からの調査が極めて重要でありまして、この種の職員の充実は、この際特に必要な事と考えられますので、未だその配置のない家庭裁判所にこれを新たに配置するためのものであります。
次に、前回の国会におきまして成立を見ました裁判所職員定員法等の一部を改正する法律に関する改正でありますが、この法律の附則第三項におきましては、同法律により裁判所職員の定員が縮減されたことにより不利益な取扱を受ける裁判所職員につきましては、国家公務員法に定める審査請求に関する規定を準用しないこととなつておるのであります。この点は、御承知の通り行政機関職員定員法の一部を改正する法律におきましても、当初の法案では、同様の内容の規定がありましたところ、国会における御審議の後、その部分が削除されたのでありまして、その結果といたしまして、裁判所の職員と一般公務員との間に取扱の不均衡を生ずることとなりますので、この際右の附則第三項を削除いたすことにいたしたのであります。
最後に、検察審査会法に関する改正について申上げます。検察審査会事務官は、裁判所事務官の中から命ぜられることになつておるのでありますが、只今申上げました通り、前国会におきまして、裁判所職員定員法の一部が改正され、裁判官以外の裁判所職員の定員が縮減されましたので、これに伴いまして今回検察審査会法の関係規定について、これが調整をいたすこととした次第であります。
以上、この法律案の内容につきまして概略御説明いたしました。何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
次に、只今上程になりました犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由を申上げます。
犯罪者予防更生法は、犯罪をした者の改善及び更生を図るために、その第三章において更生の措置に関する規定を設けているのでありますが、更生の措置を真に適切、周到且つ効率的に行いまするためには、同章の規定中二、三の点について改正又は補充を加える必要のあることが明らかになつて参つたのであります。改正を要しまする部分は、第二十九條及び第三十條の仮釈放の審理に関する規定と、第四十五條に規定されておりますところの仮出獄の停止、引致状による引致及び留置に関する規定でありまして、補充を必要としまするのは決定の告知に関する規定であります。犯罪者予防更生法の目的を達成するためには、この五点について本法に改正を加える必要がありますので、この法律案を提出いたした次第であります。
次に、この法徒案による改正の要旨を條文の順序に従つて申し上げます。第一は、仮釈放の審理に関する第二十九條及び第三十條の規定の改正であります。仮出獄又は仮退院の審理におきましては、本人との面接が重要な意義を有するものでありますので、現行法では、本人の重病、重傷又は危篤の場合を除くほかは、すべて面接を要するものと規定されておるのでありますが、現に実施中の行政整理の進行に伴いまして、場合によつては面接についても相当に彈力性のある取扱いをしなければならん実情となつて参りました。それでこの法律案におきましては、仮出獄又は仮退院を許すことを相当と認める事案については、重病又は重傷の場合のほか、中央委員会の規則で定める場合には、委員の裁量により面接を省略することができるように規定を改めますると共に、審理を行う委員と矯正施設の職員との連絡共助の関係についても合理化を図つた次第であります。
第二は、引致に関する規定の改正でありまして、引致状による引致は現行法では仮出獄中の者だけに対とて行うことができるのでありますが、実務の経験によりますと、仮出獄中の者だけでなく、仮退院中の者、家庭裁判所で保護観察の処分を受けた者等に対しましても、所在が判明しないため呼出をすることができない場合或いは呼出をしても本人が応じない場合等は、調査質問のため引致する必要があります。それでこの法律案におきましては、このような場合には、裁判官のあらかじめ発する引致状により、保護観察に付されている者を引致させることができるようにいたし、他方引致された者の人権を保証する趣旨で、引致後は特定の場合を除いては二十四時間以内に釈放しなければならない旨を規定いたしました。
第三は、この法律案の第二十四條の二、即ち保護観察の停止に関する規定でありますが、これは現行第四十五條中の仮出獄の停止に関する規定を改めたものであります。仮出獄の停止に関する現行法の規定は簡略に過ぎ、停止の効力について誤解を生ずる虞れもありますので、今回は、仮出獄の停止という表現を廃して、保護観察の停止に改めますると共に、停止の効果を明らかにし、更に一方では停止の範囲を必要な最小限度にとどめ、他方ではこの院処分により本人が不当に不利益を受けることがないようにするため、停止中の遵守事項違反を仮出獄取消の理由とすることができない旨の規定と、停止の遡及取消に関する規定とを設けたのであります。
第四は、引致された者の留置に関する規定の改正でありまして、留置の対象は現行法では仮出獄中の者だけに限られておりますが、実際上更生の措置に遺漏なきを期するためには、仮退院中の者に対しましても、審理のため留置を必要とする場合がありますので、その必要に応じ得るように改正を加えたのであります。
第五は、決定の告知に関する規定を新たに設けたことであります。中央委員会、地方少年委員会及び地方成人委員会のなす決定については、本人に対する告知を要することは事理上当然でありますが、所在不明の場合等の決定については特別な告知の方法を定めておく必要がありますので、新たに第五十五條の二として、その規定を設けたものであります。
以上を以ちまして提案の理由と内容の概略を申上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/5
-
006・小野義夫
○委員長(小野義夫君) なお只今御説明がありました法律案の中で、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案は、民事訴訟法改正に関する小委員会をして審査せしめたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/6
-
007・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 御異議ないと認めまして、さように決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/7
-
008・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 次に、住民登録法施行法案につきまして、提案者より御説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/8
-
009・鍛冶良作
○衆議院議員(鍛冶良作君) 只今御提案になりました住民登録法施行法案について提案の理由を説明いたします。
昭和二十六年六月八日法律第二百十八号を以て公布されました住民登録法は、本年七月一日までの間において政令で定める日から施行されることとなつておりますが、同法におきましては、その施行の際、市町村の住民について最初になされる登録に関しましては、規定が設けられていないのであります。これは同法施行の際の最初の登録につきましては、別に施行法を制定して、これにおいて最初の登録に関する規定を設ける趣旨であつたからであります。只今議題となつております住民登録法施行法案は、この施行法に相当するものでありまして、住民登録法施行の際、現に市町村の区域内に住所を有する者についてすべき最初の登録に関して住民登録法の特例を定め、その完全な実施を図ろうとするものであります。
申すまでもなく、住民登録法は市町村においてその住民全部を登録することによつて、住民の居住関係を公証し、その日常生活の利便を図ると共に、常時人口の状況を明らかにし、各種行政事務の適正で簡易な処理に資することを目的とするものであります。従がいまして、国民の利便並びに地方自治及び国政全般に及ぼす影響の重大性に鑑がみまするときは、同法施行の当初における最初の登録を的確に実施し、市町村の住民全部を漏れなく正確に登録することが必要であります。けだし最初の登録は住民登録制度の基礎となるものでありまして、その成果の如何は、その後における制度の運用を左右すると申しても過言ではないからであります。
この法律案は、昨年九月二十一日衆議院法務委員会の決議いたしました住民登録法実施基本方針に基き、住民の一斉調査をなし、最初の登録の正確を期することを眼目としているのでありますが、その内容中主な点を申し上げますと、第一に、市町村は住民登録法施行の際、その区域内に住所を有する者については住民票を、本籍を有する者については戸籍の附票を作製すべきものとしていることであります。第二に、住民登録法施行の際、市町村の区域内に住所を有する者について、世帶主その他の者に住民票の記載事項につき届出義務を課すると共に、市町村は届出の励行及び住民票の記載の正確を図るため、住民票の記載事項を各世帶について調査すべきものとしていることであります。第三に、住所地と本籍地とを異にする者につきましては、戸籍の附票の作製を可能にすると共に住民票の記載の正確を図るため、住所地と本籍地の市町村は住民票の記載事項に関し相互に通知をすることとしていることであります。第四に、最初の住民票の作製に関し市町村の事務を補助させるため、市町村においては調査員を置くべきものとしていることであります。第五に、住民登録法の施行に伴い寄留法を廃止するほか、その他の関係法律に所要の改正を加えることとしていることであります。
以上簡単でありますが、この法律案の提案の趣旨及びその内容の概略を説明いたしました。何とぞ慎重御審議の上速かに御可決あらんことをお願いいたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/9
-
010・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 次に、議員派遣についてお諮りいたします。四月中に集団暴力行為の実情を調査するために議員派遣を行いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/10
-
011・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 御異議ないと認めます。なお派遣議員の人選、派遣地、派遣日数等は便宜委員長及び理事に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/11
-
012・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 御異議ないと認めまして、さよう取計らいます。これにて本日は散会いたします。
午前十一時十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02119520404/12
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。