1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年四月十四日(月曜日)
午前十時四十七分開会
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委員の異動
四月四日委員江田三郎君及び白波瀬米
吉君辞任につき、その補欠として、内
村清次君及び鈴木安孝君を議長におい
て指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 小野 義夫君
理事
伊藤 修君
委員
左藤 義詮君
長谷山行毅君
岡部 常君
内村 清次君
齋 武雄君
羽仁 五郎君
政府委員
法務府法制意見
第四局長 野木 新一君
民事法務長官総
務室主幹 平賀 健太君
法務府民事局長 村上 朝一君
事務局側
常任委員会專門
員 長谷川 宏君
常任委員会專門
員 西村 高兄君
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本日の会議に付した事件
○平和條約の実施に伴う民事判決の再
審査等に関する法律案(内閣送付)
○平和條約の実施に伴う刑事判決の再
審査等に関する法律案(内閣送付)
○日本国とアメリカ合衆国との間の安
全保障條約第三條に基く行政協定に
伴う民事特別法案(内閣送付)
○検察及び裁判の運営等に関する調査
の件
(調査報告書に関する件)
○刑事訴訟法の一部を改正する法律案
(内閣送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/0
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001・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 只今より会議を開きます。
本日は先ず平和條約の実施に伴う民事判決の再審査等に関する法律案を議題に供します。本案につきましては先に提案理由の説明を聴取いたしておりますので、更に政府より詳細なる説明を聽取いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/1
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002・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 御異議がないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/2
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003・野木新一
○政府委員(野木新一君) それでは只今議題になりました平和條約の実施に伴う民事判決の再審査等に関する法律案について逐條的に御説明申上げます。
第一條、先ず第一條は日本国との平和條約、以下平和條約と申しますが、第十七條(b)項の規定に基く民事判決の再審査等及びこれに伴う当事者たる連合国人に対する地位の回復、又は救済、並びに議定書C2項に規定する手形、小切手等の流通証券の呈示、特別証書作製等のための期間について定めるという、この法律の目的を明らかにしたものであります。
第二條、第三條はこの法律中の連合国及び連合国人という用語を定義したものでありまして、連合国とは平和條約第二十五條に規定する連合国、即ち日本と戰争をしていた国又は以前に同條約第二十三條に列記する国の領域の一部としていたものであつて、同條約に署名し且つこれを批准した国を言い、連合国人とは右の意味の連合国の国籍を有する者、その他本條第二項各号に掲げる者を言うのであります。同項第二号の法人その他の団体のほかに、同項第三号及び第四号の法人その他の団体を連合国人中に含ましめることといたしましたのは、これら法人その他の団体はその実質から見まして第二号の法人その他の団体と同様に取扱うのが妥当と考えられるからであります。なおこの連合国及び連合国人の定義は、先に第十二回国会において成立をみました連合国財産補償法、及び今国会に提案されましたポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く連合国財産及びドイツ財産関係諸命令の措置に関する法律案第一條及び第五條によつて一部改正を加えられ、第九條によつて平和條約効力発生の日以後も法律としての効力を有するものとされておりまする、連合国財産の返還等に関する政令、昭和二十六年政令第六号、及び連合国財産である株式の回復に関する政令、昭和二十四年政令第三百一号、並びに今国会に提案され、すでに過般成立をみました平和條約第十七條(a)項の規定に基く捕獲審検所のした検定の再審査等に関する法律等の平和條約の実施に伴う諸法令、及び法律案におけると同様であります。
次に第三條、この法律案におきましては、平和條約第十七條(b)項の要求する裁判の審査を民事訴訟法に定める再審の手続によつて行うこととしております。この再審の訴に関する規定が本條でございます。この再審の対象となる裁判は、連合国人を当事者として、日本とその連合国との間に平和條約が効力を生ずる日までに言渡された終局判決のうち、戰争開始の日である昭和十六年十二月八日以後に確定したものであります。又訴提起権者は、右の昭和十六年十二月八日から日本とその連合国との間に平和條約が効力を生ずる日までの間の訴訟手続において、原告又は被告として十分な陳述、例えば上訴その他の申立、主張、立証等ができなかつた連合国人であります。再審の対象となる裁判を判決に限定しましたのは、條約第十七條(b)項に言う裁判は、結局対審の構造を前提とする裁判即ち判決を意味するものと解されるからでありまして、又只今申上げました時期に言渡され確定した判決といたしましたのは、昭和十六年十二月八日前に言渡はあつたが、たまたま戰争開始のため上訴ができなかつたような場合や、議定書B1項の規定によつて戰争の継続中、上訴期間の進行が停止し、平和條約の効力発生の日から再び進行し始める結果、判決の確定が平和條約の効力発生の日の後になり、而も訴訟手続において十分な陳述ができなかつた場合をも考慮したものであります。なおこの再審の訴の提起には、條約の規定に基きまして平和條約の効力の発生の日から一年内という制限が附せられているわけであります。
次に第四條でありますが、本條は平和條約第十七條(b)項後段に基き原判決、即ちこれに対して前條の再審が行われた判決によつて連合国人が受けた損害の回復についての国の責任を規定したものであります。先ず第一項におきまして、前條第一項の再審事由即ち訴訟手続において十分な陳述ができなかつたということが認められて再審の終局判決があり、且つ連合国人が原判決によつて損害を受けている場合には、国はその連合国人を原判決前の地位に回復するか、その者に対しそれぞれの事情の下において公正且つ衡平な救済を與えるか、いずれかの処置をとらなければならないものといたしました。本條第四項は、この地位の回復又は救済の手続については、訴訟事件の多様性に鑑みまして、連合国人を当事者とする訴訟事件の実情をも考慮して、別に法律で定めることとしておりますが、地位の回復につきましては、再審の判決によつて原判決が取消されれば、それだけで地位の回復となる場合も考えられますし、又何が公正衡平な救済であるかは、結局訴訟事件の個々の具体的事情に応じて、終局的には裁判所の判断によつて定まることとなるものと思います。なお連合国人の国に対して有する請求権は、本條第三項において、再審の終局判決確定の日から一年以内に行使しなければならないこととなつております。以上は連合国人の受けた損害の回復を確実にするため條約の定めに従つて国が連合国人に対して負う責任でありまして、原判決の取消の結果再審被告その他の者が連合国人に対して負うことのある責任とは別であります。そこで国が自己の責任を果した場合には、国は事件についての本来の責任者たるこれらの者に対し求償できることにしたのが本條第二項であります。
次に第五條でありますが、議定書C2項は、第一次世界大戦の際のいわゆるヴェルサイユ條約第三百一條第二項と全く同趣旨の規定でありますが、大正九年法律第一号、平和條約の実施に伴う流通証券及び工業所有権に関する法律第一條は、この流通証券の呈示等のための猶予期間を六月と定めています。本條はこれらの先例等をも斟酌してこの期間を定めました。
以上で逐條説明の概略を終ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/3
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004・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 次に平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案について説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/4
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005・野木新一
○政府委員(野木新一君) 平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案について逐條御説明申上げます。
まず第一條でありますが、本條はこの法律の目的を明らかにしたものであります。平和條約第十七條(b)項は、日本国政府は、連合国人を被告として日本国の裁判所が行つた裁判について、その連合国人が訴訟手続において十分な陳述をすることができなかつた場合には、その裁判を再審査するための措置をとり、その連合国人がその裁判の結果損害を受けた場合は救済を與える等の措置を講じなければならないことを規定しておりますが、この法律はこの規定に基いて刑事判決の再審査等について定めることを目的とするものであります。
第二條、本條は定義の規定でありますが、この法律に使用されている用語の定義を明らかにした規定であります。この法律における連合国とは、平和條約第二十五條に規定する連合国を言うのでありまして、この点は民事判決の再審査等に関する法律における連合国と同じであります。この法律を受ける連合国人の意義も民事の場合とほぼ同じでありますが、ただ刑事におきましては法人格を有しない団体が処罰されることがないので、そういう団体は除外せられております。
次に第三條でありますが、本條はこの法律の規定が再審請求の要件について規定したものであります。先ず再審請求の対象となるものといたしましては、本條は「連合国人が有罪の言渡を受け、その判決が昭和十六年十二月八日から日本国と当該連合国との間に平和條約が効力を生ずる日までの間において確定した場合」ということを條件といたしました。次にその「連合国人が訴訟手続において被告人として事件について充分な陳述ができなかつた」ことを要件といたします。十分な陳述の中には事件に関する意見の陳述のほか証拠調べの請求、上訴の申立等を包含するものでありまして、戦争状態が継続中であるためこれらの行為を十分にできなかつた連合国人を救済する趣旨を明らかにしたものであります。以上の要件の存する場合、その連合国人が日本国とその連合国との間に平和條約が効力を生じた日から一年内に限つて、その判決に対して、その連合国人の利益のために再審の請求をすることができるわけであります。請求権者につきましては特に規定していませんので、後記第六條によりまして刑事訴訟法の適用があり、有罪の言渡を受けた者のほか法定代理人等も請求ができることとなります。
第四條、本條は再審の請求を受けた裁判所における請求についての審査に関する規定であります。先ず第一項は、裁判所は十分な陳述ができなかつたことが原判決に影響を及ぼすか否かについて審査しまして、原判決に影響を及ぼすと認めるべき相当な理由がある場合に限つて再審開始の決定をし、その他の場合には請求を棄却する決定をしなければならないものといたしました。刑事訴訟法に規定されている通常の再審におきましても、裁判所は再審の請求を棄却するか、再審を開始するかを決定する前の段階におきまして必要があると認める場合には事実の取調べをすることができ、会議体の構成員に事実の取調べをさせることなどが認められております。併しこの取調べの範囲は再審の請求の理由の有無に限定され、それ以上に及ばないのでありますが、この法律による再審の請求につきましては、この特則を設けまして十分な陳述ができなかつたことが原判決に及ぼす影響の有無について審査することといたしたのであります。この点につきましては一般の再審請求の理由との権衡も考慮したのでありまして、他の請求の理由は、原判決の証拠となつた証拠書類等が確定判決によつて僞造又は変造であつたことが証明されたとき等、原判決に当然影響を及ぼすと認められる事由が掲げられており、十分な陳述ができなかつたことによつて、直ちに再審の審判を開始することが適当でないと認めたためにこのような規定をしたのであります。即ち実質的には十分な陳述ができなかつたことが原判決に影響を及ぼすと認める相当の理由がある場合を再審請求の理由としたのと同じになるわけでありますが、平和條約の関係で十分な陳述ができなかつた連合国人に対して審査の機会を與えるためこのような構造としたものであります。このような審査をするため、愼重な手続によることといたしまして、再審開始の決定又は請求棄却の決定をするためには検察官及び再審の請求をした者の陳述を聞かなければならないことといたしますと共に、検察官及び再審の請求をした者に対して裁判所に押收、捜索、検証、証人尋問又は鑑定の処分を請求することができる権利を認め、実質的には公判定における審理と大差のない審理ができるようにいたしました。その他会議体の構成員に事実の取調べをさせることができることとする等の規定、再審開始又は請求棄却の決定に対して即時抗告をすることができる旨の規定も設けておりますが、これは現在の再審についても同様のものがあるのでありまして、ただ審査の内容が通常の再審とは異なつたので、この規定の適用があるか否かについての疑を避けるために忠実に規定したものであります。
次に第五條でありますが、本條は審判の特則に関する規定であります。通常の再審の手続におきましては、再審開始の決定が確定したときは、特別の場合を除いては、その審級に従つて更に審判をしなければならないこととなつております。ところでこの法律による審判につきましても、この原則のほか本條の特則も適用することにいたしました。即ちこの法律に規定してある事件について審理して判決を言渡す場合には、その審級に従つて更に審判をするという原則は働きますが、そのほか以前の裁判において十分に陳述ができなかつたことが判決にどの程度に影響を及ぼしたかを明らかにすることが目的でありますので、若し現在の法令に基いて、現在の立場から原判決後の事実も考慮に入れて審判しますと、何分にも犯罪当時から長い日時を経過している事件が大部分であるため、刑の廃止、大赦又は時効完成によつて、免訴の判決を言渡さなければならないことが大部分となる虞れがあるのであります。それではこの裁判をする目的を達することができませんので、本條に特則を設けまして、原判決後の刑の廃止、大赦又は時効完成等を考慮に入れないで、原判決当時の事実及び刑罰法令に基いて審判することにいたしたのであります。この條文の適用によりまして、すでに刑が廃止せられている国防保安法、軍機保護法等の違反についても一応刑の言渡しをすることが可能になり、十分な陳述ができなかつたことによつて原判決がどの程度重くなつているかを明らかにするわけであります。
次に本條の第二項は、大赦を受けた罪と大赦を受けなかつた罪とが併合罪の関係にあるときについて規定いたしました。この事件について十分な陳述ができなかつた結果全体の刑が軽くなつた場合、大赦を受けた罪と受けなかつた罪とのどちらに影響があつて軽くなつたかが明らかでないと、損害の算定に困難を来しますので、全体的の刑を言渡すと同時に、別にその両者に分けて刑を定めて言渡さなければならないことといたしたのであります。併合罪について処断された者が、ある罪について大赦を受けた場合には、特に大赦を受けない罪について刑を定めることが刑法第五十二條によつて定められているので、この定められた刑と比較するために別々の規定を定める必要があるわけであります。大赦を受けた結果全部又は一部の刑の執行を受けなかつた部分について、原判決より刑が軽くなつた場合と大赦を受けないため全部について刑の執行を受けた部分について刑の軽くなつた場合とでは、その受けた損害に相違のあるここは当然であるからであります。
次に第三項は大赦を受けた罪について言渡された刑の効力について規定したものであるのであります。再審の判決で刑が確定したときは、原判決の刑の執行は当然に新判決の刑の執行としての効力が認められますので問題を生じませんが、全部又は一部の執行を受けていない大赦を受けた罪について疑を生ずるので、第三項はその点について大赦を受けた罪について言渡された刑は、この法律に定める地位の回復又は救済の関係においてのみ効力を生ずることといたしまして将来に向つてその執行力を生ずるものでないことを明らかにいたしたものであります。
次に第六條、本案はこの法律に定める再審につきましては、この法律の規定によるほか刑事訴訟法の定めるところによる趣旨を明らかにした規定であります。現行法の規定によつて行われた事件につきましては、現行刑事訴訟法即ち新刑事訴訟法が適用されることは当然でありますが、刑事訴訟法施行法第二條は、現行法施行以前に公訴の提起があつた事件につきましては、現行法施行後もなお従前の刑事訴訟法及び日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律による旨の規定を設けておりますが、この種の事件について本法に基いて再審の請求があつた場合には、従前の刑事訴訟法等の定めるところによることを明らかにしたものであります。
第七條、本條はこの法律に定める再審の事件に関する国の責任についての規定であります。以上の規定に従つて審判した結果、連合国人が原判決によつて損害を受けたことが明らかになつたときは、国がその者を原判決前の地位に回復するか、又はその者に対してそれぞれの事情の下において公正且つ衡平な救済を與える責に任ずることにいたし、そうしてこの国の救済等は、再審の請求をした者がこの請求をした場合に與えるのでありまして、この請求は再審の判決が確定した日から一年内にしなければならないことといたし、この地位の回復又は救済の手続につきましては、事件の実情等を考慮して別に法律に定めることにいたしたわけであります。以上をもちまして逐條説明を終ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/5
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006・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 更に日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案、及び日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案の両案について政府の詳細なる説明を聽取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/6
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007・村上朝一
○政府委員(村上朝一君) 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案につきまして先ず御説明申上げます。
行政協定の十八條第三項の契約による請求を除くほか、公務執行中の合衆国軍隊の構成員、若くは被用者の作為、若しくは不作為、又は合衆国軍隊が法律上責任を有するその他の作為、不作為、若しくは事故で、非戰鬪行為に伴つて生じ、且つ日本国において第三者に負傷、死亡又は財産上の損害を與えたものから生ずる請求については、日本国がその被用者の行動から生ずる請求に関する日本国の法令に従つて審査解決し、又は裁判するものとし、被害者との合意により又は裁判によつて確定されました賠償額は、日本国が円で支拂つてこれに要する費用は日米両国政府の別に合意する割合によつて両国が分担すべきものとしておるのであります。即ち合衆国駐留軍の公の活動に基因する不法行為上の損害につきましては、アメリカ合衆国と日本国とがその賠償責任を分担するわけでありますが、被害者に対する関係におきましては、あたかも日本国の機関による不法行為の場合と同様に国の損害賠償に関する国内法即ち国家賠償法、民法等の規定に従いまして日本国が損害賠償責任を負うべきことを定めたものであります。
そこでこの法律案の第一條におきましては、国家賠償法第一條の規定の体裁にならいまして合衆国駐留軍用員の職務上の作為、不作為に基く損害、即ち人的原因による損害につきましての国の賠償責任を規定いたしました。又第二條におきましては、同じく国家賠償法第二條の規定の体裁をとりまして合衆国駐留軍の占有し又は管理する土地の工作物、その他の物件の設置又は管理に瑕疵があつたことによる損害、即ち要するに物的原因の損害についての国の賠償責任を規定したのであります。第一條は合衆国駐留軍の構成員又は被用者の職務上の作為又は不作為に基く損害につきましては、国の公務員又は被用者の作為又は不作為によつて他人に損害を加えた場合と同様に取扱うのでありまして、この場合に適用のある国内法の規定に従つて国が損害賠償の責任を負う趣旨であります。本條にあります合衆国軍隊の構成員又は被用者と申しますのは、行政協定第千八條第三項に言うそれと範囲を同じくするわけでありまして言い換えますと、合衆国駐留軍所属の軍人、駐留軍の役務に服する軍属その他駐留軍に雇用されて指揮監督の下にその役務に服しておる者を指すわけであります。これらの者が駐留軍のためにその職務を行うについて他人に損害を加えた場合には、その従事していた職務の性質が公の権力の行使に相当するものであるときには、国家賠償法の第一條の規定の例により、そうでないときには民法第七百十五條の規定の例によつて国が損害賠償責任を負うことになるわけであります。
次に第二條は合衆国駐留軍の占有し、所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があつたために、他人に損害を生じた場合には、これらの物件が国の占有し、所有し又は管理に属する場合と同じように取扱いまして、この場合に適用のある国内法の規定の例によりまして、国が損害賠償の責任を負う趣旨であります。即ち当該物件が国家賠償法第三條に規定する公の営造物に相当するような場合には、国家賠償法の第二條の規定の例によりまして、そうでない場合には民法第七百十七條等の規定の例によりまして、国が賠償責任を負うということになるわけでございます。
次に第三條でありますが、行政協定第十八條第三項によりまして日本国が賠償責任を負うべき損害は、駐留軍の活動に基因して第三者に加えられた損害と解すべきものでありまして、行政協定に言う駐留軍の軍人、軍属又はこれらの者に準ずべきその家族は、いわば駐留軍そのものでありまして、これらの者が被害者である場合には、全く駐留軍内部の問題に属しますので、行政協定第十八條第三項に言う第三者には該当しないと解せられますので、この趣旨を明らかにした規定でございます。
第四條でありますが、これは行政協定第十八條第三項にあります規定の裏付けをいたしたものでありまして合衆国駐留軍の活動に基因している損害賠償の請求は、請求権が発生した日から一年以内に提起すべきものとしておりますので、本條もこれに応じまして一條又は二條に基く損害賠償請求権について一年の除斥期間を設けたのであります。
次に第五條はこれ又同様行政協定十八條第六項の(b)に基くものでありまして、ここに言う合衆国軍隊の権限ある機関と申しますのは、当該施設又は区域の直接の管理責任者でありますところの指揮官を指すことになるわけであります。
以上をもちましてこの法案の概略の説明を終ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/7
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008・小野義夫
○委員長(小野義夫君) ちよつと中間に御相談申上げますが、調査報告書についてお諮りいたします。先般行いました東大事件の調査につきましては、三月十七日の委員打合会におきまして結論について協議いたしましたのち、その後の取扱いにつきましては委員長及び理事に一任されておりました。その後委員長及び理事打合会において只今お手許に配付いたしました結論を決定いたし、すでに所要の手続はとつたのでありますが、本件については検察及び裁判の運営等に関する調査の中間報告として議長に報告書を提出いたすことに決定いたしました。つきましては報告書には多数意見者の署名を付することになつておりますから、この際各位の御署名を願いたいと思います。
多数意見者署名
伊藤 修 内村 清次
齋 武雄 羽仁 五郎
岡部 常 長谷山行毅
加藤 武徳 一松 定吉
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/8
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009・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 次にお諮りいたしますが、去る四月三日刑事訴訟法の一部を改正する法律案が本委員会に予備付託されましたが、本案は新刑事訴訟法の運用に関する小委員会において審査いたすこととして御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/9
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010・小野義夫
○委員長(小野義夫君) 御異議ないものと認めましてさよう決定いたします。
それでは本日はこれで散会いたします。
午前十一時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315206X02219520414/10
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