1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年四月十七日(木曜日)
午前十時五十五分開会
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出席者は左の通り。
委員長 岡部 常君
委員
長谷山行毅君
吉田 法晴君
伊藤 修君
一松 定吉君
政府委員
法務府矯正保護
局長 古橋浦四郎君
中央更生保護委
員会事務局長 斎藤 三郎君
事務局側
常任委員会專門
員 長谷川 宏君
常任委員会專門
員 西村 高兄君
説明員
厚生事務官
(引揚援護庁復
員局法務調査部
勤務) 井上 忠男君
参考人
元海軍教授、国
際法学者 榎本 重治君
元西部軍管区司
令部法務少尉 大西 保君
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本日の会議に付した事件
○平和條約第十一條による刑の執行及
び赦免等に関する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
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001・岡部常
○委員長(岡部常君) 只今より小委員会を開きます。
平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を議題に供します。前回、散会後ちよつと御相談を申上げました通り、本日は只今からお手許に配付いたしました表の通り、三人のかたがたより本法案に対する御意見を拝聽いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/1
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002・岡部常
○委員長(岡部常君) 御異議ないと認めます。それではこれより参考人各位の御意見を拝聽いたします。
ちよつと御挨拶申上げます。本日はお忙しいところおいで願いまして、我々委員会としては甚だ有難く存じております。只今上程されました法律案につきまして、我々は講和発効後新たに巣鴨プリズンにおいていわゆる戰犯の人々を取扱うことになりましたので、これは従前にない例でございます。又これは国際的にどういうふうになつておりますか、又今後それがどういうふうに運ばれて行きますかは、これは内外ともに注目の的になつておるところと存じますので、この法案の扱い方については愼重なる注意を要するものと存じて、本委員会においても相当研究して参つておるのでありますが、なお学識経験のある皆様がたから御意見を伺いまして、本法案審議に資するところがあれば大変結構だと思いまして御足労を願つたわけであります。どうぞその意味におきまして十分に御意見を承わりまして、又各委員よりお尋ねの筋もございますと思いますから、そのときには参考人各位の御意見を御開陳願いたいと思います。それでは先ず榎本君より御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/2
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003・榎本重治
○参考人(榎本重治君) 只今委員長から御懇篤な御紹介がございまして誠に有難うございます。誠に不束な者で、十分御期待に副うようなことを申上げることができるかどうか甚だ不安なのでございますけれども、事極めて重要な又むずかしい問題で、先例なども余りありませんので、この法案などを審議される上において非常に御困難なことと存じますが、その御参考に幾分でもなれば甚だ仕合せだと存じます。
私は、実は先週巣鴨の拘置所に戰犯者を見舞に行きまして現実にその状況なども拝見して、皆さんのお話なども承わつて来まして、一層この問題が容易ならない問題であるということを感じて来たわけでございます。何から申上げてよいかとちよつと見当がつきませんですが、取りあえず先ず戰犯を今回のようにやつた例があるかどうか、今までに……。それから又今までの例は一体どういうふうなのが建前であつたかをちよつと申上げて見たいと存じます。
御承知の通り講和條約というものは、今までの戰争の原因をすつかり忘れてしまつて、そうしてお互いに将来は仲よく世界の間に立つて行こうというのが、普通の場合それが根柢になつておるのであります。中にはそうではなくて、ただ押付けて、殆んど征服に近いようなふうにして戰争の終結を見る場合もありますけれども、それは特殊の場合で、普通の講和という以上は、お互いに只今申上げましたように、本当の仲直り、ひらたく言えば仲直りをして、もう昔のことは水に流して、きれい、さつぱりにしようじやないかというのででき上るのでありますから、従つてあと腐れのあるような、それから又悪い思い出の残るようなものはすつかりなくなしてしまおうというのが従来の建前であつたようであります。今までの第一次欧州大戰前の例などを見ますと、只今申上げましたような趣旨で以て大抵の講和條約はでき上つておりまして、従つて一番その講和條約のうちで問題になりやすいような、今まで戰争法規を破つていろいろなまあ道に背いたことをしたというようなことがあつても、お互いにそれはもう将来は條約ができた以上は、効力が発生した以上はそのことは問うまいというので、講和條約のうちでは特にいわゆる大赦の規定を、アムネステイを入れるのが多いようでありますが、併しそういう規定のない場合もありますが、講和條約というものは、只今申しましたように、すべての過去の悪いことをお互いに忘れ合おうという建前であるからして、変な思い出になるような戰争犯罪人、戰争法規違反者とかいうような者の処罰というようなことは、もうすつかり忘れてしまうという建前であるから、たとえ講和條約に大赦の規定を入れなくても、講和條約の発効と同時に当然大赦の効果を生ずるものと、そういうふうに考えておつたようであります。勿論中に多少の例外がないことはありません。学者のうちには、これは政治的な犯罪、つまり本当の純粋の戰争犯罪、戦争法規に違反したものはすべて大赦されるが、併し普通の犯罪、普通法による犯罪はそれは残るのだというようなことを言う者もありますし、更に進んで普通法の犯罪のみならず、すべての戰犯者も、裁判の、審理の途中にあるものは、そのまま講和條約が発効しても続けてもよろしいし、又すでに刑の宣告のあつたものは、その刑の執行を続けても差支えないのだという意見もあります。それは何に基くかというと、若し講和條約が発効すれば、お互いにもう今まで捕まえておつた戰争犯罪人も釈放しなければならないというふうなことが先に見えていると、随分あとで以て自分の国に仇討をしかねない、しかねまじき人間でも放さなくちやならないということになると、これは困るからいつそのこと、それならば重罪にして、それを適当に処分してしまおうというようなふうな悪いほうに走る虞れがあるから、やはり講和條約発効後といえども、まだ適当にそれを処刑、刑の執行をしても差支えないのだと言つておいたほうが却つて安全ではないかというような、いわば非常にけちな考えで以て、そういうふうなことを述べる者もあるのでありますけれども、これはまあ併し、今申しましたように、非常な汚ない言葉ですが、けちな考えなんで、放つておけば自分の国に帰つて、又あとで仇討をするかも知れないから、この際やつつけてとまおう、こういうことをすれば又相手の国も同じことをし出して、実際犯した罪の軽重如何にかかわらず、みな最高の一番重い罪に処する、刑に処するというようなことになつて来まして、まるでそれはこの法の組織というものは崩れてしまいますから、こういう一体議論の立て方というものはできないものだと思うのであります。従いまして戰争犯罪を、講和條約発効後といえども、なお刑の執行を続けても差支えないのだという議論の根拠には、甚だ不純といいますか、けちくさいところがあつたのであります。併しながら最近になりますと、それが少し形が変つて来まして、この第一次大戦後、対独平和條約時分になると、世界の平和を維持するためには、法を以て世界の秩序を守らなくちやならない、法を尊重し、それを遵守することが世界の平和を維持する上において一番重要なことである、従つて戰争法規のような規定であつても、それに違反することは如何ような事情があろうとも、それは世界の秩序を維持する上においてよろしくないことなのである、であるからそれは嚴重に処分して、世界の秩序を維持しようというようなふうな言い廻しで、戰争犯罪、戰争法規違反者を嚴重に処分しようというふうな思想が現われて来たのであります。同時に戦争犯罪者のうちに、單に戰争の規則に違反したもののみならず、戰争を惹起した、いわゆる平和に対する罪を犯したものも、併せて戰争犯罪者のうちに入れて、嚴重に処罰しで、そうして世界の平和を維持しよう、或いは一種のみせしめというのもあるでしよう。そういうふうなまあ考え方が起つて来たわけなんであります。そこで戰争犯罪者に対する考えが少し変つて来たのです。併しこの変り方が果していいのかどうか、これは頗る疑問なのであります。講和條約をやる以上は、その旧怨を忘れて、お互いに手を繋いで世界の平和に貢献して行こうというところまで行かなければ、本当の講和というものはできるはずはないのでありますから、それにもかかわらず、一方においてはそういう心持を持つて、戦犯者はやはり嚴重に処分して、講和條約発効後といえどもそいつを忘れずにいて刑の執行を続けようというようなことは、果してそれが世界平和のためによろしいかどうか、これは甚だ疑問なのであります。特にこの講和條約が和解の條約であるとかいつて、特にその親密と現わすような、親密の意味を現わすようなことが高唱せられて、お互いに又そのつもりで、本当にこれは、従来のことはすつかり忘れて、お互いに手を繋いで行こうというところまで融け合つて来た場合において、なおそういうふうな旧怨を忘れかねるというようなところをちよつと残して置くということは、それは他国に対する見せしめのためには或いは幾らかなるかも知れませんが、それよりは、一方において旧怨を残すようなことをして置く、その失うほうの損のほうが多いのではないかと思うのであります。でありますから、戰争犯罪人を処罰して、世界の法の秩序を維持することは、近代のこの戰争放棄、或いは国際政治上の一つの新らしい考え方であるという議論もあるかも知れませんけれども、これは場合にもよりますので、本当の将来の平和を打立てるためには、そういうふうなあと腐れの残るようなことはせず、きれいさつぱりにして、本当の昔の考え方に戻つたほうが適当ではないかと思うのであります。勿論これにはいろいろ反対の意見もあるかも知れませんけれども、私はそう考えるのであります。第一次大戰前に講和條約の中に大赦の規定を入れた例なども相当な数ありますけれども、これはすでに調べたものをこちらに差上げてございますから、ここではその必要はないと思いますから省きます。この前の第一次大戦の終りの対独平和條約では、ドイツ皇帝及びその他の主要な政治家、軍人を処罰するという規定があつたのであります。それは対独平和條約の二百二十八條乃至二百三十條にあつたのでありますけれども、これは、御承知の通り、ドイツ皇帝はオランダに逃げてしまい、オランダはそれを連合国の要求にもかかわらず引渡しませんでした。それから、それ以下の要人に対する処分は、結局連合国の希望があつたにもかかわらず、ドイツからの申出によつて、ドイツみずからがその犯罪人を処罰するということで、実際は條約に嚴重な規定があるほど実行をされずに済んだのであります。このヴエルサイユ條約の規定を設けますとき、特にドイツ皇帝を処罰するという規定を設けますときに、日本は強く反対をいたしました。それからアメリカも同じく反対したのであります。併しながら、イギリスの希望によつて、遂に條約文に挿入することに結着したのであります。けれども連合国の中の心持ちが初めからそういうふうでありましたから、その実行も最初のやかましく言つたほどには行われなかつたのであります。そこで、結局本当に戦争犯罪、平和の罪を含む戦争犯罪を処分したのは、今回の戦争が初めてと言つてもいいくらいなんであります。第一次大戰のときに、そういう考えはあつたのでありますけれども、事実上実行せられずに済んだのでありますから、ここで今回の連合軍の戦争犯罪処罰の例というものは、これは御承知の通り、非常に嚴重に行われ、今までの殆んど国際慣例とまで認められておつたものに対する非常な例外を作つたような恰好になつたのであります。或いはなりかけておるのかも知れません。こういうわけでありますから、先はどもたびたび申上げましたように、講和條約の際は、お互いに古いことは忘れて、悪いことはお互いに忘れて、将来の国際平和のために協力するという建前で行くことを第一の主眼としなくちやなりませんので、殊に日本がこの間のサンフランシスコ会議において、各連合国から受けた待遇などから考えまして、又日本の地位から考えまして、アメリカと非常に緊密な関係にあらなければならず、アメリカのみならず、そのほかの連合国とも緊密な関係にあらなければならず、お互いに胸襟を開いて進んで行かなければならない状況でありますから、少くともサンフランシスコ会議で以て日本に同情してくれた国からは、やはり昔のいやな思い出はすつかり捨ててもらうことが、理窟の上から言つても又感情の上から言つても適当で、それが又将来のために非常に効果があるんじやないか、こういうふうに考えるのであります。そういうふうな見地からしまして、この今度できました平和條約の規定第十一條を見ますと、どうもこの條文をただ文字通りに解釈せずに、その精神をつかまえてできる限り各国と日本との関係が円満に行くように、そういう結果をもたらすように解釈することが必要じやないかと思うのであります。この條約の條文を見ますれば、日本が極東国際軍事裁判所又は他の連合国戰争犯罪法廷の裁判によつて刑に処せられた者を、日本がその刑の執行をするようになつておるのでありますが、これは見ようによると非常に無理な規定でありまして、普通の考え方から言えば、犯罪人というものは純粋に国際法上の犯罪人である。国際法を破つた、国際法に違反したために刑に処せられているものでありますから、これを日本の官憲が拘禁しておくということは、これはちよつと妙なことになるのではないかと思うのであります。そこでこの條約の條文のうちに赦免、減刑、仮出獄の権限の一部も日本の政府へ委ねられておるのでありますから、單にこの刑の執行だけを重く見ず、むしろこの後段の、あとで申しました赦免、減刑、仮出獄、このほうを重く見て世界における日本の地位及び連合国の大部分の日本に対するよい感情、それから従来の国際法の慣例などから併せ考えますと、どうもこの條項のこの部分を重視して、これを活用することが一番平和條約の精神にも副うのじやないかというような気がするのであります。次にこの平和條約の中の赦免、減刑、仮出獄などとありますのは、この赦免は非常に広い意味を含んでおるのではないかと思います。大赦をも含んだ意味の赦免の意味であろうと思います。或いは刑の執行を日本政府に委されている以上は、大赦ということとは両立しないのじやないかというような考え方もあるかも知れませんけれども、それはこの刑の執行と赦免に関する規定とを全然同一価値に見た場合の話であります。只今もしつこく申上げましたように、将来の日本の立場を明らかにし、それから世界の平和に貢献する上から言つて各国とも最も緊密な、友好な関係を維持して行く上においては、古いことを思い出すようなものをすつかりなくしてしまうことが一番大切と思うのでありますが、刑の執行とこの赦免との両事項を同価値に見ずに、この赦免のほうを更に強いものに考えて行けば、或いは場合によつては、この刑の執行に関することは要らなくなる場合も生じて来るのだというふうにも考えられる。又そう考えることも、あながち無理ではないとも考えられるのであります。そうして又私たちとしては非常にそれを希望するわけであります。拘禁されている人は或いは上官の命に服して誤まつて罪を犯し、或いは上官としては又それが国家に盡す唯一の道であると思つて、少し無理とは思うが、それをあえてしたというような場合もあつてその情状においては、いわばむしろ愛国の至情から出たとも言えるのでありますから、犯罪の本質の犯意というものは、一体本当のいわゆる悪い心持というものはなかつたのじやないかと思われる点もあります。それから又、こういうことを申上げていいかどうか、ちよつと憚りがあるかも知れませんが、戦争裁判をやります上において相当に無理なこともあつたんでありまサ。それから又、言葉の関係もありまして、十分こつちの意を盡すこともできず、証拠なども十分に有利な証拠を提出する機会もなかつた、或いは検察官側から提出して宣誓口供書などありましても、それに対して反対尋問をすることができない。当人は遠方に行つてしまつて呼ぶこともできないというような機会も随分多かつたんでありまして、現に私の知つている重刑に処せられた現に巣鴨にいる人などは、敵の捕虜を、ときどき行つて、外国の言葉はよくできるものでありますから、非常に慰めて、行く度に、監督している兵隊などに大切にしてやれ、捕つている人がこういう点を不平を言つているから直したらどうだということを行くたびに言つたのでありますが、それが却つて害をしまして、結局名前を覚えられてしまつた、名前を覚えられてしまつたために妙な口供書がたくさん出てしまつて、結局あそこで虐待したのは彼がみんな教唆してやつたのじやないかというような疑いの下に、非常な思いもよらない刑に処せられて、現に拘禁されている人間もあるというような、そういうふうな場合も、まあこれは特殊の場合かも知れませんけれども、併し必ずしも特殊とは言えないそういう例が相当あるのでありまして、そういう点から見ましても、服役している人間も自分がこれだけ悪いことをしたから、これだけの刑に処せられることは止むを得ないのだというふうに、得心ずくで服役しているという者ばかりではないのであります。何が故にこういうことになつたかということを、どうしても了解できない人間が相当にあるというふうなことになつて来ますと、どうもそういう人の考え方からすれば何だか余ほど偉らい人でもない限りは、やはり内心平らかならざるものがあつて、結局は日本が最も大事にしなくちやならない国を却つて恨むというような結果を生じて来て、結局国際間に最も大切であるべき国際関係を却つて阻害するというふうな種を作るというような虞れさえないとは言えないのでありますから、そういう点から見ましても、これは特にこの赦免の規定を重視せられて、赦免というものはこれは特赦以下のものであつて、大赦などは入らないのだというふうに解釈せられないように私は希望する次第であります。それで今度のこの法律案を拝見いたしますと、平和條約十一條による赦免、減刑及び仮出獄が適正に行われることを目的としてこの法律ができる予定なのでありますが、この赦免に関することはこの法律によらなければできないように規定されているように、私はちよつと拝見したのであります。他の方法では赦免のことはできない、而もこの赦免する場合には各個人個人を具さに状況を調べて、それで調べ方が足りない、資料が足りないときには関係国にもよく相談して資料を十分に集めて、そうして赦免の決定をするということになつていますから、大赦などはもうどうも入つておらないように、ちよつとこれは誤解かも知れませんが、そういうふうにも見えますので、平和條約には必ずしも大赦は除外してはないにかかわらず法律案ではそれを除外してあるのだということになりますと、ちよつとそこのところに齟齬を来たすのではないかというふうな、まあ老婆心かも知れませんが、そういうようなふうにちよつと拝見できるのであります。そうなりますと少し遺憾のような気がします。大赦ということが或いは行われにくいかも知れませんけれども、併し日本としてはできるだけ一応それに盡してみたいような気がするのであります。まあ大体論はそれくらいでございまして、この法案についてちよつと疑問の点がちよいちよいあるのでございますが、これは余り細かくなりますから、何か機会が、ございましたらば申上げることにいたしまして、一応これで……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/3
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004・岡部常
○委員長(岡部常君) 御質疑のあるかたはどうぞ御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/4
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005・一松定吉
○一松定吉君 今の榎本教授のおつしやつた大赦ですね。これはこの刑の執行及び赦免等に関する法律案の第三條の後段によると、この法律の定むるところにより委員会が管理する。即ち「赦免、刑の軽減、仮出所及び一時出所に関する事項は、この法律の定めるところにより、委員会が管理する。」、だからこの法律として見ると、赦免、減刑、仮出所というものはこの法律によらなければならない、この法律は併しながら平和條約の第十一條を基礎にしてできたもので、第十一條の規定によると、「拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。」と、こうありますね。するとですね、日本政府が今度の條約の発効によつて大きな恩典である大赦ということをさせるときに、この平和條約十一條でこの制限を受けはしないか、それなんですよ、問題は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/5
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006・榎本重治
○参考人(榎本重治君) 十一條は……無論、大赦をする場合には関係国の了解を得なければならないことは勿論であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/6
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007・一松定吉
○一松定吉君 関係国の了解を得るということは、日本国の勧告に基いて、日本が今度こういうふうに大赦を行うんだが、これに対して一つ大赦をしたいからということの了解を得て、そうして関係国の一又は二以上の政府の決定を待たなければならん……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/7
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008・榎本重治
○参考人(榎本重治君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/8
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009・一松定吉
○一松定吉君 だからして、その点がこの辺少し明確を欠いておるように思うんだが、政府はそういうような意見を持つて今度のことに臨むというような処置をとつているだろうか、どうだろうか、政府の……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/9
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010・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 只今、一松委員の仰せの通りに関係国の決定が必要でございまして、日本の法律によつてアメリカの裁判したものも濠洲の裁判したものも全部赦免するということは、ちよつと事実上できないかと存じます。併しながら関係国、その国々を相手にして三十人なら三十人の人が、本人からの申請或いは親族、知友その他の関係者からの願出で、或いは巣鴨プリズンからの申出がない場合も委員会は職権で審理をして勧告をすることができまするから、それは三十條の第二項でございまするが、職権の途を開いておりまするので、実際上においてその国の三十人なら三十人の人についての勧告をし、そうしてその決定があれば大赦と同様の措置がとり得るものと、又それを平和條約十一條は決して阻止しているのではないと、こういうふうに解釈して、法案は準備いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/10
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011・一松定吉
○一松定吉君 三十條かね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/11
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012・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 三十條の第二項でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/12
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013・一松定吉
○一松定吉君 三十條の二項の「赦免又は刑の軽減について、申請、願出又は申出がない場合でも、必要と認めるときは、職権により審理を開始することができる。」、これはわかるが、これは委員会の独自の考えでやるんだ。そのときに委員会は今度はこういろような、日本では講和條約実施に伴うてこういう大赦ということをやるのだ。ついてはこれを是非一つあなたのほうが認めて決定して容れてくれというようなことがこの三十條のどこにあるのだね、それは審理を開始することはできるがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/13
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014・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 審理を開始いたしまして、この三十條の五項で十九條の準用がございますので、それで十九條の三項から五項までを準用いたしてございます。そうして審理の結果に基いて勧告を相当とする場合には決定をいたしまして総裁に報告いたし、総裁から対外折衝に移すというような運びにいたしますので、事実上これによつて窓口を開いてあれば、結局大赦と同じ効果を生むことによつて可能であると、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/14
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015・一松定吉
○一松定吉君 そうすると第十九條の第四項だね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/15
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016・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/16
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017・岡部常
○委員長(岡部常君) 先ず参考人に対する直接の御質問をやつて置きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/17
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018・吉田法晴
○吉田法晴君 榎本さんにちよつとお尋ねいたしますが、そこに御経歴と申しますか、御資格と申しますか、元海軍教授、国際法学者と書いてございますが、国際法学的な見地から御意見をいろいろ委員会で求めたいと考えるのであります。先ほどのお言葉を承わつておりますと、戰争犯罪者として処罰されたものにしても愛国の至情から出たものであろうと、まあいわば悪い意味から出たものではなかろうと、こういうお話でありましたが、問題は法関係、国際法関係、そしてそれが国内法に入つて来ている、この点の問題は刑の本質の問題その他でいろいろ問題になつたのですが、法関係なら法関係をはつきりしますのと、その法関係の中で、それでは赦免、減刑等についてどういう方法があるかと、まあ榎本さんにお尋ねをするのはこういう点だと思うのでありますが、その中で多少法関係について御説明が、私どもまあ伺つておりまして多少何と申しますか、失礼でございますけれども、私ども承わつておりまして少し足りなかつたような感じがするのですが、握手したのだ、いわば戰争をしておつたものが戰争をやめた、講和した。そこでこの戦争の原因、責任を負つた者とか、或いは戦争法規に違反した者その他についても御破算になるべきじやなかろうかといつたようなお言葉によると、前の法理それから現在の国際法上の法理、これは相当やはり大きな変化があるように思います。或いは私どもこの「ドイツの国家社会主義及び軍国主義からの解放のための法律」、これは勿論ドイツの国内法でありますけれども、国際法的な考え方或いは体系が国内法に移つている。で、日本の場合にも、この講和條約十一條に基きます法律、これはまあ国内法でありますが、国際法との連繋がここに来ている。或いは武力の放棄その他は憲法の中に出ております。この新らしい国際法体系、そうして国内法との結び付き、その中でどういう具合に問題が可能であるか、こういう点をこれは御説明を頂きたいとまあ考えるわけでございます。国際法的なこの推移、講和ができたのだから、もう戰争の原因になつた責任その他、或いは戦争法規に違反した点についてはこれは忘れて然るべきではないかと、こういうまあ常識論と申しますか、それだけでは問題が済まぬのではないかと、こういう感じがするのでありますが、その点もう少し承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/18
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019・榎本重治
○参考人(榎本重治君) 新らしい国際上の法律といいますか、平和を紊す行為を一つの国際犯罪と見て処断する、それから又、戰争法規違反者は昔からこれは処断しても差支えないということになつております。新らしい点は平和の罪を入れたことなんでありますが、罪の種類としてはですね……。併しそれを講和條約ができても、なお、その刑の執行を許さず、その国際間の法の秩序を維持するために、法の秩序を紊した者は嚴重に処罰するのであるという考え方も一つの新らしい考えであるかも知れませんけれども、それが果して現在の世界情勢に照らして、そういうふうな考え方を押し通すことが妥当か否かという点が残つて来るのであります。これは或いは国際政治の範囲で法理論ではないかも知れません。併しながら、実際の利害関係、実際の問題を離れて空な法律というものは存在するはずはないのであります。この法律といいましても、第一次大戰後芽が吹いて来て、今度の戰争で初めて一応まあ花が吹いたといいますか、そういうふうな実を結んだといいますか、そういうふうなことになつたのであります。それがすでに国際間に確かに承記せられた原則と見ることができるか否かについては、まだそこまで断定はできないと思います。戰争が講和になつた、まあ古いことはすつかり忘れてしまうのだというような一種の常識論に過ぎないと言われるかも知れませんけれども、そうではないのでありまして、国際法というものは大体常識論で今までやつたことが積み重なつてでき上つたに過ぎないのでありますから、そんな深遠な理窟からでき上つているものではないのでありますから、それをたび重ねてやつて、世界のためにいいか悪いかを判断して、よいほうを取つて行くのが大体国際法の進んで来た道じやないかと思います。従つて新らしく世界の法の秩序を維持するために、そういうものを嚴重に処分するのだという考えが起つたからといつてそれがすべて正しいものだ、如何なる場合でもそれを適用すべきであるということを言い得るか否かについては、私は疑問を持つているのであります。甚だ常識論のようで申し訳ありませんが、私の考えは大体そうなんでございます。今の世の中に照らして見てそれが果して適当であるかどうか。余り適当でないと思えば幾ら古い器であつても又それを持ち出して、それに酒を入れるのもいいのじやないかというわけなんであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/19
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020・吉田法晴
○吉田法晴君 まあ疑問を持つというお話でございますが、勿論一つの御意見としては承わらなければならんと思いますが、例えば実際の問題は、平和條約、講和條約の十一條、これをまあどういう工合に解釈するかということから出発するのでしようが、一応「連合国戰争犯罪法廷の裁判を受諾し、」ということがございますので、これをまあ受諾しないというわけには参らんと思う。そして十一條の規定に基いて赦免、減刑、仮出獄等の問題を考える。赦免の中に大赦、特赦も含ませて考えるべきであろう。こういう何と言いますか、條約なら條約の中から出て参りました御意見はこれは御尤もでありますし、又一応の建前を前提にしてのお考えかと思うのですが、疑問を持つことによつて原則は覆らんわけでございます。そこで例えば私どもの手許に「アメリカ陸戰法規における部下の責任について」というものを、命令に従つて戰争犯罪を行なつた者についてはその責任をこれは解除すべきではないか、解除すべきであるといつたような、アメリカの陸戰法規第三十六條というものを、まあもらつているのです。そういう国際法規、まあ国際法規も常識だと言われれば常識かも知れませんが、やはり国際法的な、実定法的なところから話をして行かんと、何と言いますか、気持或いは疑問というものからは話が進まんのじやないかと思つて、こういうお話も申上げるのでありますが、御意見は御意見として承わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/20
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021・榎本重治
○参考人(榎本重治君) 私もこの講和條約ができて、十一條が承認をされている以上は、これを無視して大赦をがむしやらにやれ、お願いするという意味ではありません。勿論この十一條に基いてやらなければならんのであります。そうして十一條のただ解釈というよりは、むしろ運用をお願いしたわけなんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/21
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022・岡部常
○委員長(岡部常君) それでは大西君がまだ見えませんから、政府関係でありますが、常に巣鴨との折衝を保たれていろいろとお世話下さつている復員局の井上さんの御説明を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/22
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023・井上忠男
○説明員(井上忠男君) 復員局におきまして連合軍の要求に基く調査を行うということで、戰争裁判の適正、その迅速な実施に協力をして来たわけであります。従つて私のほうからいろいろ検事側の要求する資料も提出いたしましたり、連合国側の資料も提出いたしました。又海外に行われました軍事裁判に対しまして弁護人も派遣をいたしました。当初は勿論そういう段階でありませんので、主に海外におきましては比較的適任者と思われる、例えば司政官のごとき人たちが弁護人に当ります。その一番最初におきましては日本側の弁護人は附されないというようなことがありましたが、それにいたしましても部隊が帰つて参りますに連れまして、いろいろ記録等は持つて帰つたわけでありまして、それらの記録につきましては私どものほうで或る程度は保管をいたしております。それらの面におきまして私は戦争裁判というものに関係して参つたわけであります。昨日この平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を頂きまして、拝見いたしまして、多少の意見を申述べたいと思うことにつきまして、第九條、それから第十六條、第十七條、第十九條、それから第五章赦免及び刑の軽減の第二十八條、第二十九條、第三十條、それから第三十二條、第三十五條、第三十九條、これらにつきまして所見がございますのでそれを申述べたいと思います。
先ず一番大事な第五章の赦免及び刑の軽減の問題でございますが、先ほども榎本さんからお話がございました通り、この條約に書いてありますクレメンシイという意味は非常に広い意味でございまして、勿論大赦という意味が入つているわけでございます。而してこの法案に基きましてのみ第十一條に基く勧告がなされるということになりますというと、第二十九條を拝見いたしますと、ことごとくこれは個人審査であるようでございます。で、先ほど斎藤事務局長からお話がございました第三十條の「職権により審理を開始することができる。」という場合におきましても、やはり個々の人の審理ということであるように思われます。で、個々の審理をいたしまして、その結果向うに勧告をする。向うがやはり個々の審理をいたしまして赦免の決定をするということになりますというと、果してそれだけの資料を我々は日本政府として持つているかどうかということになりますと甚だ疑問でありまして、到底相手国が飽くまで戰争犯罪人の浅期を服役せしめるごとく追及をして参りましたならば、これはその個々の審理におきまして、いろいろの問を出そうといたしましても到底対抗はできないものと考えます。第十七條の二項の、「申請書には、左の事項を記載しなければならない。」と書いてあります。この第二号の、「戰争犯罪にとわれた事実、共犯者との関係及びしやく量すべき情状」というような問題が、これが審査をいたしまして、こちらから個々の人につきましての勧告をいたす場合に、向う側として最も取上げる点だと思うのでありますが、これらにつきましては、私どもずつと記録等を取扱いました結果は、到底これらのことにつきまして、先方に対抗するだけのものはない。個々の審理が原則となり、これに基きまして個々の勧告、たとえそれは寄せ集めましても、結局は大赦とは意味が違うのでありまして、個々の人の審理を寄せ集めて、そうして出すだけでありますから、寄せ集めて出せば、向うも個々の審理をして来て、個々に決定をして来るわけでありましよう。そういたしますというと、対抗するだけの資料というものを出すことは不可能だと、然らば折角この第十一條に恩赦に関して日本政府に勧告権が與えられておるにかかわらず、これは放棄したと同様ではないか、勧告とは今申します通りに、先ほども申されました通りに、一般に、いわゆる大赦のごとくすでにこの時期が来たから、或いはすでに服役何年になつたから、或いはたとえて申しますと、英国女王の戴冠式が行われるから、この際英国でも大赦があつたから、これに乗じて英国関係の者は一律にこうやつてくれと、こういうふうな勧告が実際はできるのでありまして、それ以外の個々の審理に基く勧告というものは殆んど不可能である。こういうふうに判断します。そうすると、折角十一條にきめてありながら、勧告権を放棄したと同じだと、こういう感じを持つわけであります。或いは言葉が足りませんかも知れませんが……
その次は最初に帰りまして、第九條の問題でございますが、これにつきましては、私が今まで巣鴨の連絡官のような仕事をして、相当中の人たちと接触いたしました体験に基きまして申上げますならば、この未決日数の通算ということは、これは中の人にとつては相当な問題でありますにかかわらず、アメリカ以外の殆んどその他の国は判決の日から刑期を起算をいたしておりまして、アメリカ側に引渡す際に、寄越しましたレポートの上には、その入所した、つまり抑留されましたところの、拘禁されましたところの目附というものは書いてないのであります。本人に聞きますればその事情はよくわかるわけでありますが、本人の申立というものは信用いたしません。そこで、私どもは、当時一緒に拘禁をされ、或いは無罪となつて出た人、或いは当時の上官あたりを尋ねまして、そうしていろいろ証明書を作つて、リーガル・セクシヨンに提出をいたしましたけれども、それらにつきましても殆んど採用せられない。辛うじて二、三の明瞭なる例が採用されたことがありますが、殆んど不十分なままに、そのまま過ぎて来ておる。で、結局終いには一カ月とか二カ月とかいうような、大ざつぽなきめ方をしてくれたこともあります。いわんや、これがアメリカ側ならばよろしうございますが、イギリスであるとか、或いはオランダであるとかいうところに照会をして、それを決定するということになると、殆んどGHQに対して返事を寄越さないのがまあ実情であります。勿論返事を寄越しましても、それが二、三カ月くらいはかかつておりまして、とうにもう時期は過ぎてしまつておる。これはそういう実例でございまして、例えば、ミスター・へーゲンという人があそこでこれを特別にやつておりましたが、彼自身がむしろ憤慨いたしまして、オランダ側は一向に返事を寄越さないというようなことを申しておつた実情でございまして、今後これを実際に行う上におきましては、よほど事前に手を打たれるか、或いは何かうまい別の交渉をされるかなさいませんというと、むずかしい問題だと、こう考えます。
それから、次は第十六條でありますが、これはすでに御存じかと思いますけれども、国によりまして有期刑の最高刑というものに非常な差があるわけであります。本法案は、全くこのアメリカの今までやつておりました、巣鴨に適用しておりました法をそのまま、そのままというと甚だ失礼でございますが、その形をそのまま残されておるのでありますので、従つて、刑期四十五年未満というようなことが書かれてありますわけでありますが、その他の国におきましては、大体二十年が最高であります。中国におきましては十五年でありまして、刑が二つ重なつて二十年となつておる人が一人おりますけれども、それ以外の者は十五年、それから他の国におきましては、ことごとく二十年であります。そこでこの点につきましても、いろいろと問題が起つて来るわけであります。例えて申しますと、少しこれは飛びますが、最後の三十九條の二項でございます。「第九條及び第十一條の規定は、関係国の同意がないときは、当該関係国が設置した連合国」というのはよく意味がわかりませんですが、「戰争犯罪法廷によつて刑を科せられた者については、適用しない。」、こういうふうに、未決通算の問題につきましても、今までオランダ、英国その他の国はやつておらないのでありますが、これらが同意しなかつたならば、巣鴨におりましても、この未決通算の問題が行われないということになつて来るわけであります。これだけを調べて取上げられておられますが、然らば英国なり、蘭印なんというものは、その他の減刑処置はなかつたかというと、これはあるのでありまして、この点が触れてありませんが、終身刑は大体二十年乃至二十一年と考えております。これはイギリスで同じ地区で甚だおかしな問題が起つておるのでありますが、例えばピナンというところの刑務所がございます。そのピナン刑務所は、民政でありましたために、終身刑の人を二十年とみなし、その他のところは二十一年となつております。そうしてその三分の二を服役すればよろしいということでありますから、二十一年と考えても十四年ということになります。十四年を服役すれば出られるわけであります。ところがその点はこれに触れておりませんから、例えば、万一英国関係が未決通算を断わつて来たならば、十四年服役していいものが十五年服役しなければならん、こういう問題がそこに起つて来るわけであります。
次は第十七條の四項に判決書の写しというのがございますが、実は判決書の写しはある所もあり、ない所もあり、誠にまちまちでございまして、恐らくこれを入手するということは非常に困難なことだと思います。承わるところによりますと、英米法では判決書というようなものを裁判所が出すことはないのだそうでありまして、要するに有罪何年、或いは第一項有罪、第二項無罪、こういうアナウンスをするだけでありまして、そうしてあとの報告書、レポートは、これは横の者が書いている。決定的な判決書というのは中国関係と、ここに各国の私どもの集めました裁判記録を一例として持つて参りましたが、中国関係ならば判決書というのがございます。オランダもあります。併しながらその他の国はどうも見当りません。
三十二條の記録の点につきましても、今まで申したところでございまして、中央更生保護委員会が御要求になりますれば、私どもできるだけこの書類、記録等を提出いたしたいと思いますけれども、何分にも頗る不備なものであります。不備なることにつきましては後ほど又その理由を申上げたいと思います。
この法案につきまして、私が気の付きました点は以上の通りでありますが、なお二三の点につきまして、二、三B、Cクラスの戰争裁判につきまして、私どもが感じました所見を申述べたいと存じますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/23
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024・岡部常
○委員長(岡部常君) どうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/24
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025・井上忠男
○説明員(井上忠男君) すでに御存じの通りに、B、Cクラスの裁判というのは、これはおのおの国の軍事裁判、つまり日本で申しますと軍律会議で処断をされたのであります。これは裁判所でもありませねば、司法の活動の一部でも何でもない、要するに軍事何と申しますか、この本を読んでみますと、戰争を遂行するために最もこれを有利にやらせる一つの手段というふうに書いてございます。そういうものでありまして、そうしておのおの各国が、戰争裁判にございまするように、戰犯刑法でありますとか、或いは戰犯規定とか、こういうものを設けておりますが、設けたのも、例えばオランダの例でございますと、オランダでも終戰の翌年、一九四六年でございます、その戰犯刑法の中にも、例えばいろいろ問題があるわけであります。戰犯の未遂、その共犯及び通謀はその犯罪と同等に処罰せられる。未遂までも処罰しておる。それから、「戰犯とは、戰時に敵国市民若しくは敵の公務に従事する第三国人についてなされた戰争法規に違反せる諸行為をいう。」、「例えば」と、こう書きまして、一乃至三十六を並べておるのでありますが、これらのうちにも、必ずしも現行の国際法規の中だけを書いておるのじやないので、そのときの思い付きがたくさん書かれております。つまり事後法による欠点というか、こういうものが明瞭に現われておるのでありまして、この最後のところに、インドネシアの独立がありましたので、これをまあ抑えるためだと思いますが、停戰條約に反し敵対行動をなし又は第三者に対して敵対行動を煽動し又はこれに関する情報を與え、機械或いは器具を供與するというようなことなんかも、ちやんと出ておるわけであります。或いは貨幣の偽造、変造、或いは偽造通貨の発行というようなことも載つておるわけであります。つまり軍票を出すということを処罰するというために、こういう規定が載つておるわけであります。その他も、こうやつてみまして、これは私ども到底その任ではないわけでありますが、将来今次戰争裁判において如何なる法令に基いて裁判を受けたか、これを現行の国際法と照らし合せてみたときには、いろいろ矛盾が起つて来る、こういうふうに考えます。戰争を遂行するために必要なる行政的な措置であつた……而も、戦争が継続されておりましたけれども、戰が終つたあとでこの裁判が開始され、そうして、その後にできましたいろいろの規則に基いて処罰されたということにつきましては、私どもは非常に疑問に思うところがあるわけであります。それから、然らば裁判の開始される前の捜査はどんな状況であつたかと申しますと、これは場所によつていろいろ異なるわけでありますけれども、例えば、私が最近会いまして話を聞きました。マライのピナンという刑務所に長いことおつて、よく状況のわかつておる、明日出る人の話を聞いたのでありますが、そのピナン刑務所に収容された憲兵或いは警察署長、これらの人は、九月二十一日頃逮捕されたのでありますが、逮捕しに来た人はどういう人かと申しますと、これは戰時中匪賊の中にもぐり込んでおつた英軍の将校、これが先頭に立つて、そうして進駐して来た。そうしてどんどん逮捕して行つたというように、当時は戰争が終つたその直後恐らく常識で考えましても、匪賊として逃げ廻つておつた人が逮捕したのでありますから、いずれは、法的というより、むしろ復讐心に燃えて逮捕しに来て、そうしていろいろと條件をつけた、こう言わざるを得ないのであります。戰犯調査団というのが設けられまして、そうして各地域を調査いたして廻つたのでありますけれども、これは多くは当時の俘虜であつた人たちであるとかという将校あたりがその調査団員となりまして、そうして各地を廻つて逮捕して廻つたのでありますが、それらの点につきましても、誠に裁判の実施という面については非常な不備があるように思います。それから最後にちよつと言いますが、捜査について非常な不備があるように思います。それから裁判の実施につきまして、ここに私は一人の、樽本重治という人の手記があるのでありますが、これを読ませて頂きます。「我々は一般的に戰犯者と呼ばれているが如何なる罪を犯して戰犯となつたかを知らないものが多いでしようと思います。例えば私は俘虜虐待の廉を以て無期刑を宣告されました。俘虜虐待が罪となることには一見異論がないように見えるけれども、問題は如何なる行為が俘虜虐待かと言う点なのであります。ところが判決において示されたのは俘虜虐待という抽象的なものだけで、私の為した如何なる行為が俘虜虐待となつたかの事実は示されていないのであります。成程起訴状には私の責任とされている事実が可なり具体的に述べられてはあまりしたが、それらに対しては私自身証人として宣誓した後、それらが事実、法外な誇張であり誤解であり、或は全く無根であることを極力陳弁して置いた筈であります。若しもかかる私の証言にもかかわらず、なお事実が起訴状の通りに認定せられたとしたならば、その場合にも何故私の証言が斥けられたかの理由が示されなければならないのであります。然るに判決にはそんな理由はおろか、何故或る事実が認定せられたかの理由さえ、否、その事実そのものすらも示されていないのであります。」、大体そういうようなのが裁判の一つの例であります。例えばこの中に海軍の金子という兵曹の場合は、「公判において起訴状の事実を極力否定したのでありましたが、裁判長は次の如く言つたのであります。「被告がこの事件に関係のないことはよくわかつた。然し被告は他のもう一つの事件に関係している筈である、よつて有罪」で、彼は死刑を宣告されたのでありますが、死ぬまで、そのもう一つの事件というのが何かわからなかつた。」というのであります。何となればそれは起訴状に何も示されてなかつたからであります。というような状況であります。先ほども申しました通りに軍事法廷でありますので、裁判長の権限というものは非常に広汎でありまして、スミス笑えば人を斬るというようなことを言つて恐れたというような例もありますし、とにかく裁判長の裁量が非常に多くて、而もそれは軍人で、なお敵腐心に燃えた状況におきましての裁量であつたので、その中に非常な不当な裁判が行われたということは明瞭だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/25
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026・岡部常
○委員長(岡部常君) 御発言ありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/26
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027・吉田法晴
○吉田法晴君 アメリカ以外の国では、未決日数が通算されておらんところがあるというお話でありましたが、通算されておる国々のあれを正確にお挙げ頂けますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/27
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028・井上忠男
○説明員(井上忠男君) 未決通算されておりますのは、つまり巣鴨へ帰りますと、これは全員が巣鴨の規則に基いてやりますから通算されます。それだけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/28
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029・吉田法晴
○吉田法晴君 そうすると、ほかのところは例えば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/29
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030・井上忠男
○説明員(井上忠男君) 現在それで残つておりますのは、フイリピンとそれから濠州のマヌス島でございますね、ここだけに残つておるのでありまして、これはまあ今回のこの條約には関係ないわけでありますが、あとの国は全部巣鴨に移されております。従つて現状と言いますか、今までは未決通算がされて来たのであります。併しながら英国は、巣鴨に移つているのは英国ですね、それから濠州の一部もこれは帰つて来ております。それから中国、フランス、オランダ、これだけでございます。これらの国については共に未決通算はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/30
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031・吉田法晴
○吉田法晴君 ちよつともう少しその辺を承わるのですが、オランダ或いは中国、フランス、オーストラリア、こういうところについても巣鴨に移されておるけれども、初めの書類がない云々ということで、実際には日にちはわからんと思う。いつ拘束されたかわからん、そこで初めつから巣鴨におる人たちは通算されておるけれども、あとは通算されておらないというわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/31
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032・井上忠男
○説明員(井上忠男君) 大体そういうふうになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/32
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033・長谷山行毅
○長谷山行毅君 先ほどの判決書の写の入手が困難だというお話、御尤もだと思いますが、判決書の写が取れるような見込のある所はどのくらいあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/33
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034・井上忠男
○説明員(井上忠男君) 判決書の写というものは、正式に日本政府にもらつたものは一つもないわけであります。要するに弁護人が持つて来たものを讓り受けたわけであります。従つて、その書類そのものは頗る完備しておりません。そうして判決書を手に入れるのには、これはどうしてもGHQから取寄せるほかないわけであります。GHQには向うの判決書はないわけでありますが、レコードはあるわけでありまして、そういうものを取寄せることは許してくれれば手に入るかと思います。然らば私どものほうにどれだけの記録があるかと申しますと、濠州裁判の記録、殊に一番最近にやりましたマヌス島の裁判記録そのものは全部弁護士が持つて帰つて来ておりますので、これは入手できます。それから濠州関係は比較的そういう点でまとまつたものがございます。併し昭和二十年頃から始まりましたシンガポールの初期の裁判というものは、英人弁護士だけでやられておりましたので、それらがどういう裁判で裁かれたかということすら甚だ不明確であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/34
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035・長谷山行毅
○長谷山行毅君 本人が所持しているというものは一部もないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/35
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036・井上忠男
○説明員(井上忠男君) 海外から帰つて来た者はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/36
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037・吉田法晴
○吉田法晴君 先ほど井上さんからお話のありましたことについて、政府のほうではどういうように考えておられるのか、或いはそういう判決書がある、或いはこういう事実上のアンバランス、そういうものについて処置をせられるつもりなんですか、その辺をこの機会に承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/37
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038・斎藤三郎
○政府委員(斎藤三郎君) 仮出所の申請の場合に、この法律では判決書を添付するように書いてありますが、現実刑務所にない者は、これはいたし方のないことでございまして、ない者まで要求するつもりはございませんで、ないままでそれを委員会としては正式の申請とみなす、又審理の必要上そういうものが是非見たい、見なければ審理ができないというような場合には、関係方面に八方手を盡して関係書類の写を取るようになると存じます。
それから先ほど大赦のことについて、何かこの法案がそれを全然諦らめてしまつたというふうに井上さんからお話がございまして、その理由として、この職権で審理はできるが、その審理の際には、個々の犯罪事実というものを取入れて審理をするから、それに対する対抗ができないのじやないか、こういう仰せでございましたが、実はその点は国内的に委員会で審理をする場合には、できるだけ判決書を見たいという気持はございますが、対外折衝にいつて如何なる書類を出すかということについては、この法律には規定がございません。従いまして、関係国の皇室の慶事等の場合には、何も判決書の写を出さんでも、外務大臣から適切なるその状況に応じたような対外折衝をやつて頂く、それでこの法律には決して違反はない、こういうふうに存じておりますので、事実上大赦と同一のことがこの法律によつて可能である。ここに書いてあります判決云々ということは審理の際の規定でございまして、対外折衝の場合にはそういう規定はございませんので、その点は、この法律の拘束を受けて、何かそういう、こちらのほうで向うから、こういう事実があるじやないかと言われて、それに対抗するものを揃える、そういうことはいたさなくてよろしい、向うで国家の何かめでたいこと、或いは悲しみ事があつて、一般に国内で恩赦、大赦をやるという場合に、こちらで折衝する場合には何もそういう事実を出す必要はなかろう、こういうふうに存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/38
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039・吉田法晴
○吉田法晴君 割合に政府委員は、のんきなような気がするのですが、これは向うのやり方として、個々にやはり理窟が通らなければと思いますので、その点はむしろ井上さんの考えみたいなことに私どもも同感を感ずるのですが、いま一点、例えば判決書の点は御答弁を頂きましたが、仮出所の問題についても判決前の記録がない、こういうアンバランス、或いは先ほどの十四年、十五年というお話が出た最長期の問題等、こういう国によつての違いはどうでありますか、その点一つ。或いは個々の例によつて記録があり、集鶴の場合には未決期間が通算されている、その他のものは通算されていない。これも先ほどの御答弁で行くと、記録のないものはしようがないんじやないか、こういう御答弁なのか、その辺を一つ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/39
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040・古橋浦四郎
○政府委員(古橋浦四郎君) 三十九條にございます未決日数の通算につきまして御発言がございましたので、それについて申上げたいと思います。只今巣鴨におきましては連合軍の下で通算しておりますので、私どもの方針としてはそれは全部そのまま通算することにいたして行きたいと思つておるのでございます。ただかような條文を置きましたゆえんは、それが恩典的なものでございます。つまり未決拘禁の日数を刑期に算入いたします。さような点を考慮いたしまして関係国の同意にかからしておるのでございますが、方針といたしましては、軍が只今やつております通り通算する方針で、各関係国に対して飽くまでその方針を以て了解を得ることにいたしておるのでございます。又この未決拘禁の期間の計算につきまして非常に困難があるということを、私ども最近引受けましてから十分その点の事情もわかつておりますので、その点につきましてはあらゆる手段を盡しまして御注意に従つてその拘禁の日時を確かめて、少しでも多く通算せられるような努力をいたしたいと思つております。なお、これらの判決並びに執行に関する書類につきましては、実は巣鴨の軍で持つておりまする書類も、米国等を除きましては余り完全なものがないのでございます。米国関係のはそれぞれ写しがございますが、その他につきましてはまだ十分なものがございませんので、それらはできるだけ追完したいと思つております。オランダ、中国等の関係につきましては、なお足らんものが相当ございます。それにつきましても十分手を盡して行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/40
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041・吉田法晴
○吉田法晴君 問題はこの筋を通す、或いはアンバランスをなくして云々という点が一番大事な点だと思うのですが、井上君にちよつとお伺いしたいのですが、先ほど読み上げられましたように、犯罪についての拒否がない、これはまあ或いはそのほかに例えば上官の命令なら上官の命令を受けてやつた行為についても、個々の例を見ますと責任の問い方が違つておる。こういう問題について、いわゆる判決自身について公平に見まして合理性の足りないところを、或いはないところもあるかも知れない。そういうものについての救済は、これは個々の赦免、減刑の理由になると思うのですが、それについてどういうとるべき方法を考えられたか。今までのいきさつ、或いはやつて来られました、先ほど挙げられました具体的な例をも含めて、お話を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/41
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042・井上忠男
○説明員(井上忠男君) 殆んどの戰犯者は自分の受けました刑について不満を持つております。併しながら、このいわゆる再審によりまして刑の軽減をするということにつきましては、これは裁判をいたしました国がみずから発動しない限り、何もこちらからいろいろ注文をつけまして書類等を出しましても、それによつて動いたということは殆んど例がございません。いろいろ嘆願書等は出ておるのでございますけれども、それを取上げたかどうか、それは不明でありますが、そうじやなくて、自分で気が付いたときにおいてのみ大体行われておるように思います。受刑者の立場において出しました嘆願書というものは、大体において取上げないという状況で参りました。死刑から無罪になつた人もあります。例えばその例を申しますというと、フイリピンで絞首刑の言渡を受けて、アメリカの裁判が最初ございましたから……、そうして巣鴨に移された人であります。彼は明瞭にその現場に、当時フイリピンには在住をしていなかつたことが明瞭であつたのでありますけれども、絞首刑の宣告を受けたまま内地へ帰つた。ところが、たまたま満洲から赴任をする途中に送金のために電報を打ちました。その電報が残つております。その電報の日附は事件の起つたよりもあとの日附であります。それらのことを私どもには何も知らせずに、どこから探知をいたしたかということは私もわかりませんが、私のほうに連絡に参りまして、いろいろ捜査して、その結果は無罪となりました。非常に今までにおきましては再審の結果減刑をするというようなこともこちらの発動で動くということは非常に困難であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/42
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043・吉田法晴
○吉田法晴君 そうすると個々の事例について、事案について赦免、減刑の審査を受ける、或いは委員会なら委員会の意見を申出るとしても本人の言い分は今までのところ余り問題にならなかつた、こういうことになるのですが、そうすると、その赦免、減刑の理由というものは、委員会なら委員会自身でやる、本人の言い分というものは余り取上げられん。これは今後の方向になりますけれども、そうすると非常に困難になる。判決書のあるものと判決書のないものとある。或いは言渡しを受けたけれども、それが記録に残つてない、或いは判決文に出てない。そうすると非常に実際上條文にこう謳つて見ても、今のお話ですと、向うの発意がなければ非常に困難だという感じを受けるんですが、その辺について御感想或いは具体的な方法についてお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/43
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044・井上忠男
○説明員(井上忠男君) 今お述べになりました御感想は私も全然同感でありまして、個々の審理につきましていろいろこちらから申出て、或いは場合によれば本人から申出て、それを採用されるにつきましては非常に困難だと思います。そこで先ほども申しました通りに、これはやはり大赦というような精神に基きまして、どうしても一律に何か下げてもらう、赦免をしてもらう、減刑してもらうというような方向で行かない限りは、実際勧告ということは非常にむずかしいと思います。個々の審理にいたしましても勿論中央更生保護委員会が政府の名においてなさるわけですから、従来のように個人のほうから嘆願をいたしましたものとは性質を異にしますので、それを取上げてくれるかも知れませんが、一にこれは相手国の態度如何でありまして、誠に頼りないものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/44
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045・岡部常
○委員長(岡部常君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/45
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046・岡部常
○委員長(岡部常君) 速記を始めて。本日はこれを以て散会いたします。次回は追つて御通知申上げます。
午後零時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315237X00719520417/46
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