1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年二月二十八日(木曜日)
午後五時十八分開議
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議事日程 第十六号
昭和二十七年二月二十八日
午後三時開議
第一 国民金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第二 開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/0
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001・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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002・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
この際お諮りして決定いたしたいことがございます。通商産業委員長から、中小企業の最近の窮状を実地調査するため、新潟県、石川県及び福井県に山田佐一君、境野清雄君、小松正雄君を、三月四日より六日間の日程を以て派遣いたしたい旨の要求書が提出されております。委員長要求の通りこれら三名の議員を派遣することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/2
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003・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求の通り議員を派遣することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/3
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004・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、国民金融公庫法の一部を改正する法律案、日程第二、開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/4
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005・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事大矢半次郎君。
〔大矢半次郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/5
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006・大矢半次郎
○大矢半次郎君 只今上程せられました国民金融公庫法の一部を改正する法律案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
御承知のごとく、国民金融公庫は昭和二十四年資本金十三億円を以て発足いたし、爾来五回に亘つて増資を行い、昨年十二月末までに普通貸付約百二十一億円の貸付を行い、国民大衆の生活安定に多大の寄與をなして参つたのでありますが、明年度におきましても公庫に対する資金需要は依然相当の額に上ることが予想されますので、昭和二十七年度予算におきまして、公庫に対する出資金として三十億円を計上いたし、これに伴い公庫の現在の資本金七十億円を百億円に変更増額しようとするものであります。なお明年度におきましては、この増資額三十億円のほかに、資金運用部からの借入金二十億円及び従来の貸付金の回収金を加えまして、少くとも約百十六億円の新規貸付資金が確保される予定になつております。
委員会の審議に当りましては種々熱心なる質疑応答がなされたのでありますが、詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。質疑を終了し、討論に入り、油井委員より、「国民金融公庫の使命を達成するためには、この程度の出資金では十分なものとは思われず、一層の増額を図ると共に、職員の待遇政善についても善処を要望する」との賛成意見が述べられ、次いで大野委員より、「公庫の貸出状況を見ると、現在申込に対して貸出はその三〇%に過ぎない実情に鑑み、三十億円程度の出資金では到底国民大衆の金融機関としての役割を果すことは困難である。従つて日本社会党第二控室としては、昭和二十七年度予算案について、防衛支出金等で一千八百十八億円の削減を図り、これを財源として国民金融公庫に更に百五十億円の出資を行いたい修正意見を持つており、政府当局としても出資金の増額を図るべく努力されたい」との兼業を附して賛成意見が述べられました。
かくて討論を終局し、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。、次に開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案について御報告申上げます。
開拓者資金融通法による農地開拓者に対する貸付金の財源は、従来、開拓者資金融通特別会計の負担で発行する公債又は借入金によつて調達して参つたのでありますが、健全財政の見地から、昭和二十四年度以降は毎年一般会計からの繰入金を以て充当いたすこととし、昭和二十七年度においても、営農及び共同施設資金として十三億一千四百十五万円、営農促進対策資金として二億一千七百六万円、合計十五億三千百二十一万円を一般会計から繰入れまして、その貸付の財源に充てようとするものであります。なお、この繰入金については将来貸付金が償還されることが予想されますので、その繰入金に相当する金額に達するまで、予算の定めるところにより、一般会計へ繰戻すことを規定いたそうとするものであります。
委員会の審議に当りましては種々熱心なる質疑応答がなされたのでありますが、その詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
右報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/6
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007・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/7
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008・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/8
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009・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 岡崎国務大臣から、日米安全保障條約第三條の規定に基く行政協定に関して発言を求められました。この際発言を許します。岡崎国務大臣。
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/9
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010・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 行政協定につきましては、かねてからラスク大使、ジヨンソン陸軍次官補一行と交渉をして参りましたが、本朝、日米両国政府間に完全な意見の一致を見まして、相互協定の調印、附属文書の交換を了するを得ました。調印者は、アメリカ側はラスク大使及びジヨンソン次官補でありまして、日本側は私でありました。
この行政協定は外国軍隊の国内における配備の條件を定めるものでありまするから、両当事者間に最も友好的な相互信頼の関係がなければ(「飛んでもないこと」と呼ぶ者あり)実効を挙げ得ない性質のものであります。従いまして、今回の交渉は互いに権利を主張し合うものではなくして、日米両国関係の将来を勘案し、互いに現状に即して最も適当と思われる協定の案を披露し、相互に相手方の意を了解するに努め、かようにして最も合理的と思われる協定案に落ち着くよう、日米双方において努力いたしました。その結果、両国政府にとつて最も満足すべき協定を締結し得たとひそかに信じておる次第であります。
以下交渉の経緯と協定の大綱について御説明をいたします。一月三十八日ラスク大使と非公式に会談して交渉の進め方について打合せました結果、公式会議を開催するほか、一般的性質の事項については両者間で随時非公武に会合することとし、(「秘密会だよ」と呼ぶ者あり)又技術的事項については専門委員会を設けて、双方の専門家の間で討議させることになりました。二十九日第一回の公式会議を開きましたが、それ以来十一回に亘り公式会議を開催いたしました。公式会議後、その都度、日米間に意見の一致を見た事項につきましては、その件名と内容の要約を発表して参りました。専門委員会は二十回近く会合いたしました。ほかに起草委員会を設けて案文の整理に当らせた次第であります。
協定は前文と本文二十九ヵ條から成つております。別に附属の交換公文が一つあります。更に正式の議事録があります。これは印刷でき次第御要求の向きに配付するつもりでおります。
協定の第一條は、協定に使用されている軍隊の構成員、軍属、家族という字句の定義を定めております。
第二條は、米軍の使用に供する施設及び区域の決定の仕方を定めております。この決定は両国政府の合意によつてなされるものでありまして、個々の施設及び区域に関する合意がこの協定効力発生の日までに成立実施されていないものにつきましては、協定によつて設置される合同委員会によつて協議決定することになつております。施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなつたものについては、いつでも日本に返還することになつております。又射撃場や演習場のような必ずしも常時米国軍隊によつて使用されないものは、日本の政府当局及び国民が随時使用することができ、且つかような施設及び区域にこの協定の規定をどの程度適用するかは合同委員会で決定することになつております。なお、附属の交換公文は、平和條約発効と同時に現在の占領徴発は終了し、爾後は両国政府間の合意の基礎の上にのみ施設及び区域の使用を米軍において行い得るものであることを明らかにし、且つ施設及び区域の決定を至急に行うために予備作業班を設け、作業班の決定は成るに従つて実施に移される旨規定しております。これはお互いに誠意と熱意を以てやりますれば必ずや速かにまとまるものと考えますが、遅くとも平和條約に定めてあるその効力発生後九十日という期間内にはできるものと考えております。
第三條は、施設内及びその近傍において米国側が持つ権利権能を定めたものであります。但しこれらの権利権能が施設及び区域外で使用される場合には、合同委員会を通じて両国政府間で協議することになつております。
第四條は、米国が日本に施設及び区域を返還する場合には、それが米軍に提供されたときの状態に回復しなくてもよろしいこと、及び日本が施設及び区域に加えられた改良又は残された建物等に対して米国に補償の義務のない二とを明らかにしております。
第五條乃至第八條は、比較的事務的の規定でありまして、第五條は米国の船舶及び航空機が無料で日本の港又は飛行場に出入することができること、米国の船舶、飛行機、車両及び米国軍隊が、米軍の使用する施設及び区域に出入し、その間を移動し、及び施設及び区域と日本の港の間を移動することができることを明らかにしております。第六條は、日米双方の航空交通管理及び通信の体系間に緊密な協調を保持してその発達を図ることを明らかにしております。第七條は、米国軍隊が日本政府の各省各庁と同様の條件で日本における公益事業及び公共役務を利用し得ることを定めております。第八條は、現に日本が米国軍隊に提供している気象観測上の協力を現在の手続で引続き提供することを明らかにいたしております。但しその手続は、随時両政府間で合意される変更、又は日本が国際民間航空機関若しくは世界気象機関に加入した場合、その結果として生ずる変更を受けることになつております。
第九條は、米軍関係者の入国について規定しております。米国軍隊の構成員は日本の旅券に関する法令の適用を受けず、又軍隊の構成員、軍属、家族は、外国人の登録及び管理に関する日本の法令の適用を受けません。けれども、軍隊の構成員は身分証明書又は旅行命令書を携行しなければならないし、軍属及び家族は米当局が発給した適当な文書を携行しなければならないことになつております。
第十條は車両に関する規定であります。米軍と日本人の日常の接触面で自動車というものが一つの大きな要素になつておりますので、細かいことのようでありますが、登録番号標、標識等について規定することといたした次第であります。
第十一條は輸入に関する規定であります。米国軍隊、その公認の調達機関、又はPXのような機関が、米国軍隊の公用のため、又は軍隊の構成員、軍属、家族のため輸入する物品は、関税その他の課徴金を免除されることを原則といたします。本條は、その他関税手続上の詳細な事項、並びに日本税関当局が執行する法令に対する違反行為を防止するため、日本当局及び米国軍隊間の協力について詳細規定しております。
第十二條は、米国軍隊の日本における物資や労務の調達に関する規定であります。物資や労務の調達で、日本の経済に不利な影響を及ぼす虞れのあるものは、日本の権限ある当局との調整の下に、且つそれが望ましいときは日本の権限ある当局を通じ又はその援助を得て調達することになつております。物資の調達は内国税免除を原則といたします。労務の調達につきましては、直接雇用か間接雇用かということが問題となりましたが、協定ではそのどちらにも限定しないで、現地の労務に対する需要は日本当局の援助を得て実情に即するよう充足することになつております。又雇用及び労働の條件、労働関係に対する労働者の権利等は、日本の法令に定めるところによらなければならないことになつております。
第十三條は、米国軍隊が日本で所有、使用、移転する財産について課税されないし、米軍の軍人、軍属、家族が日本の所得税の課税を受けないことを明らかにいたしております。尤もこの免除は、日本における投資のため若しくは事業を行うため所有される財産、又は日本で登録された無体財産権には適用がありません。又私有自動車に対する自動車税は免除されないのであります。
第十四條は、米国軍隊との契約履行のみを目的として日本に来る通常米国に居住する者に対して、この協定の特定の條項の利益を享有させる趣旨のものであります。当初先方はこれらの者も軍属として取扱いたいとの希望でありましたが、我がほうは、これらの者の活動に必要な限度において協定の利益を與えることを主張いたしました結果、この一條を設けてその取扱を一まとめにしたわけであります。米国政府としては、従来もそうでありましたように、できるだけ現地の業者で間に合せる方針であつて、どうしてもそれができない高度の専門技術を要するような場合だけ米国から呼び寄せるとのことでありました。
第十五條は、米国軍隊が、軍人、軍属、家族の用に供するため、PX、社交クラフ等を施設及び区域の中に設ける二とができることを定めております。
第十六條は、日本の法律を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に政治活動を慎しむことが、米国軍隊の軍人、軍属、家族の義務であることを明白にいたしております。私は今後日本に駐在する米国軍隊所属員が本條の精神に十分徹せられることを期待しているものであります。
第十七條と第十八條は、国会においても又国民一般においても多大の関心を示されました裁判管轄権に関する條項であります。刑事裁判権につきましては、施設又は区域の内外を問わず、日本人は日本の裁判権に、米国軍関係者は米軍の裁判権に服するというのが原則であります。御承知のように、北大西洋條約当事国の間には、昨年六月十九日、ロンドンで軍隊の地位に関する協定が締結されております。この方式は各自の軍隊を有する同盟国間において、一国の軍隊が他国に駐屯する場合に起る裁判権の関係について相互平等主義を決定した最も飛躍的な方式であろうと考えております。今次の交渉に当りまして、この方式によることを我々は強く希望いたしましたところ、先方におきましても、主義上は異存はないけれども、上記の北大西洋條約協定が未だ合衆国について効力を発生していないため、前記のような方式を暫定方式として採用することとなつた次第であります。前記の原則を採用しつつも、日本の国民感情に応ずるよう可能な範囲において努力されたことは、交渉当事者としての私がここに申上げて憚らないところであります。(「嘘を言え」と呼ぶ者あり)
やや詳細に規定を説明いたしますと、先ず軍隊の地位に関する北大西洋條約当事国間の協定が合衆国について効力を生じましたときは、日本が申出れば米国は直ちに同協定の方式に従つて刑事裁判に関する協定を締結いたしますことを承諾いたしました。第十七條の1にこれが明白にされております。又行政協定が発効いたしましてから一年たつても、なお北大西洋條約の協定が効力を生じていない場合には、米国は同じく刑事裁判権に関する問題を再考することを約しております。第十七條の5がこれを明らかにしております。即ちこの行政協定に定める刑事裁判権の方式は、短かければ数ヵ月、長くても一年の暫定方式であることを御了承願いたいのであります。この過渡期間におきましては、米国軍隊の軍人、軍属、家族等が日本で犯す罪について米国が専ら裁判権を行使します。日本人は施設及び区域の内外を問わず、その犯した罪について合衆国の裁判権に服する場合は絶対にないことは当然であります。日本の当局は、施設及び区域外において、米国軍の軍人、軍属、家族を犯罪の既遂又は未遂について逮捕することができますが、逮捕した際は米国軍隊に引渡します。米国当局は施設又は区域内において犯罪の廉で日本人等を逮捕した場合は日本の当局に引渡すことになります。日米双方の当局は、各自の裁判所における刑事訴訟のため証人及び証拠を提供することについて協力し、且つ捜査を行うことについて相互に援助することになつております。日本人として最も関心を持つ点、即ち日本の法令に違反する犯罪を行なつた米国の軍人、軍属、家族につきましては、これを裁判し且つ処罰する意思及び能力を米国の軍事裁判所及び当局が有すること、並びに軍人、軍属、家族が犯したと認められる犯罪で、日本の当局が通告するもの又は米国の軍事裁判所及び当局が発見するものを捜査し且つ正当に処罰する意思及び能力を合衆国の軍事裁判所及び当局が有することを約束しております。又米国政府はこれらのすべての事件について米国の軍事裁判所が行なつた処分を日本の当局に通告することを約束しております。更に又、日本政府が米国の裁判権の放棄を特に重要と認めるものについて、日本当局がその放棄を要請するときは、この要請に好意的考慮を與えることになつております。米国の裁判権の放棄があつたときは日本国が裁判権を行使することは明白であります。(「そんなことは何にもならん」と呼ぶ者あり)以上明らかなごとく、これは日本法律が国内全部に適用されることと相待ちまして、いわゆる治外法権的のものでないことは明瞭であります。(「嘘をつけ」「ごまかすな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
民事裁判権について説明いたします。第十八條の規定であります。民事裁判権は原則として日本にあります。少しく詳しく説明いたしますと、両国政府は、その軍人又は政府職員が公務執行中にこうむつた負傷又は死亡については、負傷又は死亡が公務執行中の他方の軍人又は職員によるものであるときは相互に請求権を放棄します。両国政府は、日本において所有する財産につきまして、その損害が公務執行中の他方の政府職員又は軍人によるものであるときは相互に請求権を放棄します。公務執行中の米国軍隊の軍人若しくは被用者の作為、不作為又は米国軍隊が法律上責任を有するその他の作為、不作為若しくは事故で第三者に損害を與えた場合、日本側におきましては、日本の法令に従つて審査、解決又は裁判し、決定された補償金は先ず日本で支拂い、これに要した費用は後日両国政府が合意した條件で分担することになつております。この公務執行により第三者に與えた損害に対する補償に関する日米両国間における費用の分担の條件は、分担の率及び資金の出所について合同委員会において決定することになつております。
最後に、日本人として多大の関心を持つ点、即ち日本における公務執行でない不法の作為又は不作為で米国軍隊の軍人又は被用者に対するものにつきましては、次のような方法で処理されることになりました。即ち日本の当局でかような事件に対するすべての事情を考慮して、公正に請求を審査し、補償金を査定し、報告書を作成します。報告書は米国の当局に交付します。米当局は延滞なくこれに対し慰藉料を拂うかどうかを決定いたします。請求人がその請求の完全な弁済として受諾するときは、米当局は直ちに支拂をし、その旨を日本当局に通知することとなつております。以上の方法は、請求の完全な弁償として支拂が行われたのでない限り、軍人又は被用者に対する日本裁判所の裁判権に影響を及ぼすものではありません。なお米国軍隊及び当局は、日本裁判所における民事訴訟について証人及び証拠を提出すること、地殻及び区域内で日本の法律に基き強制執行を行うことについて日本裁判所に協力することになつております。又半国軍隊の物資及び労務の調達に関する契約から生ずる紛争で契約当事者によつて解決されないものは、合同委員会の調停に付託することができることを明らかにいたしております。
第十九條から二十二條は再び事務地な規定になりますが、第十九條は外囲為替管理の関係についての規定でありまして、米軍の軍人等は日本の外国為替管理に服するものではあるが、米軍の公金や軍人の俸給等の送金は自由にできること等を定めております。そうして、この種の特権が濫用されることがないようにするため、米国の当局は適当な措置をとることになつております。第二十條は、軍票の使用に関する規定であります。この関係でも、種々の弊害が生じないようにするため、相当詳細な規定を設けております。第二十一條は、軍事郵便局に関する規定でありまして、米国軍のための施設及び区域内においてこれを設置すること芝ができることになつております。第二十二條は一日本に在留する米国人を予備役に編入して訓練する場合についての規定であります。
第二十三條は、米軍その構成員等の安全を確保するため、日本側が協力すべきことを定めたものであります。これについては立法措置を講ずる必要がありますので、関係法案について御審議を願うことになるはずであります。
第二十四條は、日本区域で敵対行為が現に起つたとか、今にも起りそうだとかいう場合に関する規定であります。元来、安全保障條約は、そのような事態が起らないようにするために、少くともその可能性をできるだけ少くするために締結されたものであります。それでも絶対に起らないと断定することはできないことは申すまでもありません。逆にそういう可能性が幾らかでもあるからこそ安全保障條約も必要になつたのであるとも言うことができるわけであります。従つてそういう場合にどうするかということについては’少くともその原則は明らかにしておくべき筋合いであると思います。そこでこの協定では、そういう場合には日米両国政府は、日本防衛のため必要な共同措置をとるため、及び安全保障條約第一條の目的を遂行するために、直ちに協議すべきことを定めております。これは当然で、別に規定を要しないほどのものとも言えますが、現実の場合をあれこれと想像して、あらかじめ細かいことを規定しておくことは不可能でありますので、具体的の場合に最も適切な措置をとるほかはないのであります。そのためには、直ちに協議して緊密に連絡し、協力して行く趣旨の規定にとどめた次第であります。
第二十五條は経費に関する規定であります。これについてはすでに大蔵大臣から内容について説明がありましたから、詳細は申しませんが、この規定は、要するに、日本はこの協定の目的のため米国が使用する施設及び区域を協定の存続期間中米国に負担をかけないで提供し、且つ施設及び区域の所有者及び提供者に補償を行うことと、定期的に再検討した結果、新たな取極めをするまでの間、米国が輸送その他の役務及び需品を日本で調達するため、日本政府は年額一億五千五百万ドルに相当する円貨を提供することの二つの義務を負うけれども、それ以外のすべての経費は、この協定の存続期間中、米国が負担することを明らかにしておるのであります。
第二十六條は合同委員会に関する規定であります。これはこの協定の実施に関して協議を必要とすることは何でも協議するための機関であります。特に、施設及び区域を決定し、これを変更することをその重要な任務とするものであります。合同委員会は、日米それぞれ一名の代表者で構成し、これに代理及び必要な職員を付けることになつております。この合同委員会で処理し切れない問題は政府間の交渉に移すことにいたしております。
第二十七條は効力の発生に関する規定であります。この協定は安全保障條約と同時に効力を生ずることにすべきものであることは申すまでもありません。併しながらこの協定にはそれを実施するために予算及び立法上の措置をとる必要のあることがあると考えます。従つてこのようなものについては必要な措置を立法機関に求めることを約束しておる次第であります。政府の累次の言明もありましたので、この点について特に明文の規定を協定中に設けることといたした次第であります。
第二十八條は、協定の改正に関する規定であります。この種の協定に当つては、実際にやつてみて改善の余地の発見される面も種々出て来ることがあり得るわけでありまするから、当然のことながら、そういう場合には、どちら側からも、この協定のどの條項についても、いつでも改正を要求することができ、その場合には適当な経路を通じて交渉することを明らかにいたしております。
第二十九條は、有効期間に関する規定でありまして、効力発生の場合と同様、安全保障條約の有効期間と同じくするということになつております。
以上が行政協定の大綱であります。この種の協定は、相互に相手方の立場を尊重し、相互に信頼の精神を以て当らなければまとまるものではないし、又協定を作つてみたところで円滑に運用できるものでもないことは申すまでもありません。今回の協定についても、政府としては、互譲の結果、妥当なところに落ちついたと考えるものでりまして、日本国民と米軍の双方がこれをよく守つて行くならば、日米両国民の融和協調を確保するに足り、又安全保障條約の根本目的の達成を保障するに足ると信ずるものであります。
以上御報告をいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/10
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011・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 只今の国務大臣の発言に対し質疑の通告がございますが、この質疑は次会に讓りまして、本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/11
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012・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時五十八分散会
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○本日の会議に付した事件
一、議員派遣の件
一、日程第一 国民金融公庫法の一部を改正する法律案
一、日程第二 開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案
一、行政協定に関する岡崎国務大臣の報告発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X01719520228/12
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