1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年三月七日(金曜日)
午前十時十六分開議
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議事日程 第十九号
昭和二十七年三月七日
午前十時開議
第一 企業合理化促進法案(衆議院提出)(委員長報告)
第二 連合国占領軍の為す郵便物、電報及び電話通話の検閲に関する件を廃止する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第三 郵便貯金法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/0
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001・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/1
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002・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
この際お諮りいたします。鬼丸義齊君から病気のため二十五日間請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/2
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003・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/3
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004・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) この際お諮りして決定いたしたいことがございます。通商産業委員長から、石油及び天然ガス採取の現状を実地調査するため、秋田県及び新潟県に、結城安次君、中川以良君及び栗山良夫君を本月十日より二十日までのうち五日間の日程を以て派遣いたしたい旨の要求書が提出されております。委員長要求の通りこれら三名の議員を派遣することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/4
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005・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求の通り議員を派遣することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/5
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006・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、企業合理化促進法案(衆議院提出)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。通商産業委員長竹中七郎君。
〔竹中七郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/6
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007・竹中七郎
○竹中七郎君 只今上程されました企業合理化促進法案に対する通商産業委員会における審議の経過並びに結果について報告いたします。
先ず法案の内容を簡単に御紹介いたしますと、企業合理化促進法案は、第一に、試験研究用機械設備等について三年間の均等償却を内容とする特別短期償却を認めること並びにその固定資産税等の減免。第二に、一定の近代的機械設備等について初年度五〇%の償却を内容とする特別短期償却を認めること並びにその固定資産税等の減免。第三に、現在実施している試験研究に対する補助金の交付、原単位の改善及び中小企業に対する診断等に法的根拠を與えること。右のような税制上の特別措置と法的措置によつて企業の合理化を促進し、以て我が国経済の自立達成に資せんとするのがその狙いになつているのであります。かように、本法案は税制措置が骨子となつており、それを通して、産業の基本的な問題、即ち今後の我が国の産業構造にも波及すべき重要且つ複雑な問題も内包しておりますので、通商産業委員会におきましては、特に審議に愼重を期したのであります。もともと本法案は、去る第十二回国会末に、衆議院の各派共同提案の形で提出されたのでありまするが、会期も乏しく、直ちにこれを継続審査に移し、次いで第十三回国会に入るや、衆議院におきましては、十二月十二日、本法案を可決、当院に送付して参つたのでありますが、我が通商産業委員会におきましては、爾来今日まで九十日になんなんとする日子を費して審議に当つたのであります。勿論その間には年末年始の自然休会で事実上審議不可能の期間もあつたのでありますが、何故かように多くの審議日数を要したかと申しますと、先にも一言いたしましたごとく、本法案が税制に関するものであり、従つて、各省所管に属する多くの産業に直接間接に影響するところ大なるものがありますので、我々といたしましては、往々に陷りがちな主査委員会の独善的法案処理を極力回避すべく努力し、そのため大蔵、経済安定、運輸など、関連ある委員会との間に屡次に亘る連合委員会を持ち、関係委員諸君に十分なる発言の機会と愼重なる研究の期間を提供したことがその理由の一点であります。又、本法案第六條にいわゆる重要産業の業種指定について政令で定めらるべき業種並びに機械設備等の範囲を明らかにするのでなければ、本法案を審議したことにならないという立場から、これに関する政府当局の態度決定を待つたことが、審議遷延の第二の理由であります。
併しながら、その結果として、衆議院においては殆んどノー・タッチで見逃した、本法案中最も重要なる業種指定の全貌を明らかにすると共に、資料に基いて計数的にもその内容を分析し、本法案の持つ性格を縦横に審議し盡し、当院に寄せられた期待に十分応え得たことを、諸君と共に喜びといたしたいと存じます。いずれにいたしましても、相当長期間に亘る審議を行いましたので、その詳細は全部会議録に讓り、ここでは特に論議の焦点となつた諸点を挙げ、これに対する本法案の提案者、並びに政府当局の見解を報告しておきたいと思います。この点につきましては、特に委員中におきまして、西田、栗山、結城、中川、島の諸君から特に突込んだ質問があつたのでございます。
第一点といたしましては、「本法案の中心をなしている第四條及び第六條のごとき租税に関する規定は、税法の規定に讓るべきであり、このような單独法案によるべきでない」という論であります。これに対する答弁は、「本法律案は、企業の合理化を促進するためには、技術の向上、機械設備の近代化、原単位の改善等の諸方途を並行して推進することが必要であり、而も、これらの諸方途を一つの法律にまとめて規定することが、合理化をより強力に推進するゆえんであるとの立脚点に立ち、租税に関する規定もこの目的を達する手段としての範囲内に限られているのであつて、本法律案の中に規定せられるほうがより適切である」としているのであります。併しながら、連合審査に当られました大蔵委員会においては、減価償却は税法上基本的且つ一般的な問題であるから、これが特別措置とする場合には、税法体系及び租税総收入等の観点から、他の税法と関連して愼重審議の上決定せらるべきものであり。かような意味から、本法案中減価償却に関する部分は、これを本法案より切離して別途、租税特別措置法自体の改正に待つべしとする論が強調されたことを、特にここに附言しておきたいのであります。
第二点は、「第六條の適用を受ける対象を政令によつて制限する理由如何」という点であります。これに対する答弁は、「本條は、でき得ればすべての産業を適用の対象とすることが望ましいが、我が国の現状は、多大の財政資金を必要とする時期でもあり、或る程度以上の租税收入減少は国家財政上支障を来たす虞れなしとしないので、この際は、本條の適用は、特に機械設備等を急速に近代化する必要が大きい産業のみに限定せざるを得ない。なお、その限定の仕方を政令に讓つた理由は、国際、国内両情勢の変転による財政收支見込の変化、及び産業合理化の進捗状況に応じて、機動的に対象業種の範囲を変更する必要があるからである」というのであります。
第三点は、法第六條の指定事業は如何なる基準によつて定められるかという点で、これに対する政府当局の見解は次の通りであります。
「現在、租税特別措置法において、特定の機械及び船舶については、取得の年以後三年間に法定償却額の五割増償却を認めておる。その措置の上に、今回の合理化促進法第六條によつて特別償却を認めることになるのだから、その業種の範囲もおのずから限定されて来る。事務的には大別して四つの基準を考慮しておる。その一つは、業種及び業種の使用する設備について特別償却を認めることによつて、合理化がどの程度行い得るか、コストの低下、品質の向上がどの程度に期待し得るかという点、第二は、できるだけ基礎産業を取上げ、関連産業への好影響大なるものを考慮する。その三は、貿易收支の改善に役立ち得るもの、特に現下の貿易事情からして、ドル收支の、バランスの改善に役立ち得るものを考慮する。第四は、企業が資本蓄積のためどの程度熱意を示しておるか、又企業の收益率からして、初年度五割の償却をすることができるかどうかという点、以上大別して四つの観点から、これを総合して業種の指定をする」というのであります。その結果、通商産業、農林、運輸、建設、厚生、各省の所管に属する三十二業種が現在のところ内定しておるのであります。
問題の第四点は、本法案の実施によつて、初年度の税收減少はどの程度に予想されるかという点でありまするが、これに対する答弁は、「企業の近代化のための機械設備等の取得状況の如何にすつて変化するので、正確なる見込をつけることはむづかしいが、現在内定しておる三十二業種について試算すると、第六條関係で十六億七千七百余万円、ほかに第四條関係の試験研究用機械設備等に対する免税予想が七千二百八十余万円になるので、この両者を合算いたしますと十七億五千万円程度となる見込である」と言つております。
問題の第五点は、本法案は、第六條の構成に端的に表現されておるように、特定産業の特定企業に対する特典供與の法案であり、企業合理化の必要を痛感しつつも、資力の乏しいため、それをなし得ない、いわゆる中小企業に対しては特典が及ばないのではないかという論であります。この点につきましては、各委員から痛切なる質問があつたのであります。これに対する答弁は、「法律論的見地からは、大企業たると、中小企業たると、その間何らの差別もつけていない。ただ実際問題として、第六條の短期償却が可能なのは大企業に属し、且つ相当の收益を收めておる事業が多いであろう。併しながら、基礎産業に属する大企業が合理化をされて来れば、必ずや関連する中小企業にも好影響を及ぼすであろうことを期待すると共に、従来單なる行政指導によつて実施されて来た中小企業の診断制度に法的根拠を與えると同時に、これを強化して行く考えであり、又、第三條による国有機械設備等の貸與についても、中小企業に優先的に進めて行く方針で、中小企業の合理化促進を無視したものでは決してない。もとよりこの法案の構成からして、中小企業対策一般を盛り込んだものでないことは認めるが、その問題は別個の立場から解決さるべきである」としておるのであります。
その他、この法案の立案過程において問題となつた積極的な助成措置がなくなつた点、或いは近代化機械の取得に要する資金関係について何らの融資規定もないこと等、いろいろの重要審議事項がありますが、これらはすべて速記録において御承知を願いたいと思います。
かくして質疑を終了、討論に入りましたところ、古池委員、結城委員、島委員より、本法案に関する政令事項の運用に万全を期すること、更に中小企業対策なかんずく中小企業金融に政府は格段の努力を集中すべきことを要請して賛成し、栗山委員は、産業の近代化には反対ではないが、本法案の構成を以てしては恩典に浴するものは特定産業に限定され、その結果、中小企業にはここでも「しわ」寄せされる危險がある旨を強調して反対を表明、次いで採決に入りましたところ、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/7
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008・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 本案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。栗山良夫君。
〔栗山良夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/8
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009・栗山良夫
○栗山良夫君 只今上程せられました企業合理化促進法案に対し、日本社会党第四控室は反対の態度を決定いたしました。
本法案は、御承知の通り、先ほど委員長の報告の中にありましたるがごとく、衆議院各派共同の議員提出法案でありまして、委員会の開催は九回、十六日の審議期間を経まして、昨年十二月十二日可決決定となつて本院に回付せられたものであります。本院におきましては、予備審査を含めまして実に委員会の開催二十回に及び、審議日数は百余日を以て愼重に審議せられたのであります。その結果、衆議院の審議では十分でなかつた本法案の性格の検討が完全に盡されたのであります。そして本法案の名称と内容には非常に食い違いのあることが明らかとなりましたので、委員会の各派の賛成討論においてすら重要な條件が附されたのであります。以上の経過に鑑みまして、私は反対の理由を明らかにいたし、良識ある議員各位の御賛成を請う次第であります。
反対の第一点は、企業の積極的合理化促進法案ではないということであります。本法案の内容は、技術向上の促進、機械設備等の近代化の促進、産業関連施設の整備、中小企業の診断等がその中心であります。この中で、技術の向上の促進と中小企業の診断とは、現在実施中のものをそのまま本法案に整備統合したのみでありまして、予算の拡大等のこともなく、何ら新機軸を認めるわけには参りません。又機械設備の近代化等は、その謳つている表題は極めて立派でありまするが、その内容は本来ならば税法にゆだねるべきものであります。企業者が政令で定められたるところによつて近代化すべき設備を取得いたしましたる場合に限つて、減価償却の特例が認められたのに過ぎないのであります。まさに、企業家が自己の力を以て指定設備の近代化を行いました場合、その行為に対する報奨制度のごときものでありまして、間接的に設備の近代化を刺戟する程度にとどまり、積極的な設備の近代化の思想はないのであります。従つてみずからの力を以て近代化のでき得ない企業はこの法律の恩恵に浴することができないのであります。
反対の第二点は、この法律の恩恵に浴するものは大企業偏重になつているということであります。しばしば本院の請求によりまして提出せられた政府の計数的資料によりましても、大企業に偏重であり、而も優良企業に限られることが明らかになつたのであります。例えば二十七年度税径減額の予定は十三億余円と相成つておりまするが、その中で七二%は製鉄業と石炭鉱業に引当てられているのであります。而もその九〇%は優良大企業を目標といたしているのであります。これらの大企業は国の恩典を賦興しなくても当然みずからの力で設備の近代化を進め得る能力を備えているのであります。真に我が国の産業の総合的生産効率を高め、原單位の引下げを図るためには、自力では到底設備の近代化を行うところの能力を有しない業績不振の大企業、又は資金難と税金攻勢にあえぐ中小企業に対する積極的な近代化の助成が必要であります。全産業への機会均等的合理化促進法案であるとの提案者の主張は偽わりであつたことが、本院の審議で明らかとなつた次第であります。この重要ポイントをはずした本法律案は、まさに特殊優良大企業税軽減法案とも称すべきものであります。大企業と中小企業との技術の差、原單位の差は、ますます拡大いたしまして、弱小産業を圧迫するでありましようことは、火を見るがごとくに明らかであります。
反対の第三点は、この法律の恩恵に浴する企業の経営指導に関しまして見るべき方策のないことであります。この法案の狙いは、企業の合理化の促進によりまして、原單位の引下げを行い、経営の合理化を併せ行いつつ、品質の向上と価格の引下げを図り、広く国民にその利益を還元せしめんとするところにあると考えられるのであります。然るにこれらに対しましては、ただ資本の蓄積を行わしめる、資産の健全化を図らしめるといつた抽象論のみでありまして、企業の経費支出に関し浪費を戒めて必要最少限度にとどめしめるとか、或いは又利益金の処分に関しまして嚴重なる監視を行い生産価格の引下げを図るとか、国から受ける恩恵への代償として当然取上げられるべき重要問題が漏れているのであります。即ち大企業がともすれば陷りがちであります放漫経営とか、或いは独占的な大資本が振舞うところの横暴性を矯めるための何らの具体的施策がないのであります。
反対の第四点は、本法案が持つ利権的性格についてであります。第六條の業種の指定を受けまするためにも、又特別償却を認めるところの近代化設備の指定を受けまするためにも、今日まですでに相当激しい運動がありましたことは、私どものよく承知をいたしているところであります。今後この法律が若し施行せられまして、そうして相当大きな利益のあることが普及いたしまするならば、恐らくその適用範囲の拡張のためにあらゆる政治的運動が展開せられるでありましよう。何人といえどもこれを否定し得ないものと信ずるのであります。産業の合理化のために、この法律のように枠を設ける等のことを避けまして、全産業に亘つて開放し、企業者の熱意と創意のみによつて自由に促進され得るようにすべきではないでありましようか。聞くところによりますると、昨年春頃、通商産業省が当初に企画せられました産業近代化の構想はこの趣旨のものであつたと存ずるのであります。然るにこの構想は、財政の立場からする大蔵当局の容るるところとならずして、この妥協案を生んだと聞いておるのであります。成るほど財政の点を無視するわけには行かないでありましようが、併し財政偏重の産業政策は産業の発展を著るしく阻害するものでありまするから、政府は財政と産業とは対等の立場においてその調整を図るべきであると信ずるのであります。
反対の第五点は、政府の産業政策が余りにも中小企業に対して冷淡であるということであります。すでに述べましたるごとくに、この法律の集中的対象となる大企業はみずからの力を以てよく近代化を促進し得る立場にあります。又その生産品はいわゆる特需向けのものが多いのでありまして、直接又は間接にこれに関係を持つておるものが多いのでありまして、従つて販路も又安定いたしておると言い得るでありましよう。然るに今日真に合理化を必要とする弱体大企業或いは又中小企業は、近代化いたしたくもその能力なし。又、仮に近代化をいたすといたしましても、その生産品は、国内購買力の減退と海外市場の不安定のために、その将来は暗い気通しに閉ざされておるのであります。そういう平和産業が大部分であります。然るに、これらの企業の近代化、坂路の拡張、海外市場の開拓等に対しまして、積極的な政策がなく、全く置き去りにせられている状況であります。本院が中小企業の振興のために今日まで傾けて参りました努力の跡を顧み、一するとき、これに応えるべき政府の態度は全く遺憾であると言わざるを得ないのであります。中小企業の合理化を促進いたしますると共に、ドル、ボンド両域の貿易の前途が楽観を許さない今日にありましては、英国が拂いつつあるあの努力にも倍加をいたしまして、我が国が中共貿易の促進に努め、貿易規模の拡大を図ることなどは、真つ先に取上げなければならない大きな意味での中小企業の合理化方策ではないでありましようか。(拍手)私は大企業が我が国産業の根幹としてその隆昌を希う気持は人後に落ちるものではございませんけれども、併しながら、我が国産業構造の特質からいたしまして、全産業の母体であるところのこれら中小企業の萎縮沈滞を手を拱いて見送るというようなことがありまするならば、直ちにこれは失業者の洪水と社会不安の醸成を意味するものである。これではなりません。(拍手)これは治安立法や或いは又予備隊の増強等では防ぎ得ないものであるということを政府に強く警告をいたすものであります。
以上五点を指摘いたしまして反対の理由といたす次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/9
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010・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 木村禧八郎君。
〔木村禧八郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/10
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011・木村禧八郎
○木村禧八郎君 私は本案に反対するものであります。
反対の第一の理由は、この法案が企業を合理化するという政策から見て、本末を顛倒しておるという点にあるのであります。この企業合理化促進法案の提案理由を見ますと、こう書いてあります。「講和條約の成立によりまして、我が国は近く完全に独立することとなるわけであるが、これに伴い我が国の経済も又完全に自立しなければならないのであります。従いまして、我が国の産業を振興し輸出を増大させることは刻下の急務でありますが、そのためには、企業の急速な合理化を促進することによりまして、優良な商品の廉価な生産を図り、我が国の産業が国際的競争に打ち勝つようにすることが最も必要であると存ずるのであります。我が国の企業は、戰時中及び戰後の空白期間を通じて、その技術、機械設備、原材料、動力等の諸点において著るしく国際的水準に立ち遅れを来たしておりまするので、この際これらの諸点につきまして、それぞれ合理化促進に必要なる事項について立法化することといたしまして、本法律案を提出いたします次第であります。」こう書いてあるのであります。要するに、講和後日本が世界経済の中に入つて行くに当りまして、その競争力を大きくするためには、廉価な商品を作らなければならん、コストを切下げなければならん、そのコスト切下げの一環としてこの法案を提出する、こういう意味でありますが、然らばです、然らば今後日本が講和後において外国の商品と競争する場合、コスト切下げのために拂わなければならない努力がこの法案以外にたくさんあるのであります。よそから高い原材料わざわざ買つてコストを高くしながら、他方において單なる二十億程度の減税措置によつてコスト切下げをしようとしておる。例えば塩についてはドル地域から一トン二十二ドルの塩を買つてる。ところが中国から買えば九ドルで買えるのではありませんか。粘結炭はドル地域から買え一トン三十ドル、中国地区から買えば十五ドルじやありませんか。半分で買える。鉄鉱石、これについても同じであります。このように、ドル地域から高いものを買つてコストをわざわざ高くしておいて、そうしてコストを切下げようとしても、対外的に競争できるはずがないのであります。更に又、最近では政府の貿易政策の無計画性から、紡績については三割を操短する、この事実は何を意味するか。それだけオーバー・インヴエストメントをやつたことだ。過剰投資をしたわけであります。無駄な紡績の設備をそれだけやつたわけであります。この日本で資材が少い今日、操短をせざるを得ないほどの設備を拡張する、こんな不合理なことをやつて、それによつてコストが上がることは当然じやありませんか。こういうようなことを他にやつておいて、そうして企業合理化とは何ですか。全く本末を顛倒していると思う。他方においてコストを高くするような政策をとりながら、このような法律案を出したところで、何ら意味がない。羊頭狗肉です。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は、政府が総合的な計画的な経済をやつて、この資材の少い今日、紡績に対して三割操短せざるを得ないほどに過剰投資をさせるような、こんな不合理をやつておいて、どうしてコストの引下げになるか。どうして外国と競争できるでありましようか。(「その通り」と呼ぶ者あり)このようなことをやつておいて、そうして企業合理化促進法案という、このような法案を出したつて、私はこれは本末顛倒したものだと思います。この点で、かくのごとき法律案を出す前に、私はもつともつとやらなければならん、企業合理化のためにやらなければならん重大な問題がたくさんあると思うのであります。自由党の諸君は提案者になつております。又社会党の諸君も恐らく企業合理化促進法案という名前にとらわれて、誘われて、賛成されたのじやないか。この提案者になつておる。一部の、栗山さんのほうはそうではありませんが、なつております。(笑声)これは私は名前にだまされたと思うのです。非常に議員提出法案としては不見識極まると思う。
第二の反対の理由の根拠は、この議員提出法案がどうも利権法案に流れる危險があると思うのです。これまで例えば競輪の法案とか、或いはドツグ・レースとか、そういうばくち法案とか何とか、そういう利権法案に流れる。どうも私はこの企業合理化促進法案も一種の減税を狙つた利権法案に過ぎないのではないかと、こういうことを憂うるのであります。この法案の全体を通じて見まして、一番の肝腎なところは第六條であります。産業の近代化という名によつて、そうして五割、半分の減価償却、特別償却を認めるということがこの法案の骨子なのであります。これは減税法案なのです。勿論これによつて税金が絶対に免れるわけではありませんが、減価償却を多くすることによつて納税の時期をずらすという形でありますが、一面において中小企業が非常に困難を感じているときです。先ほど栗山氏が指摘されましたように、これは今度の法人税が三割五分から四割二分に上つた、そこで、その調整をとるために、他方において大幅な減価償却を認める。又地方税についても固定資産税をこれで減らしてやるのです。更に又地方の法人税は、今まで法人の住民税一割五分を今度は一割二分に引下げるのであります。こうやつて法人税は三割五分を四割二分に引上げたけれども、大法人についてはそういう大幅な減価償却を認め、固定資産税の減税を認め、住民税を一割五分から一割二分に引下げる、こういう形において、全くこの負担の増加にならないようにしてやりながら、中小企業はこの法人税の増徴の影響を直接まともに受ける。先ほど栗山氏が言われたように、中小企業は、蓄積がありませんから、近代化をやろうと思つてもできやしません。蓄積の多い大企業のみがこの恩典をこうむる。私はこういう意味で、この法案は名前は企業合理化促進法案と、いかめしいのでありますけれども、中身は大企業の減税を狙つておるところの一種の利権法案である。私は議員立法としてこういうような法律がたくさん出ることはよほど考えなければならんじやないか。全く議員立法としては、企業合理化を促進されるならば、大所高所に立つての、本当にコストを引下げ、日本の商品の外国への競争力を実質的に増加させるような法案を、私は提出すべきではないかと思うのであります。こういう意味において私はこの法案に賛成できないのであります。
第三の反対理由は、これはもう先ほど栗山氏が指摘されましたから、私は省略いたしたいと思いますが、それは中小企業と大企業との税負担が不均衡になることであります。成るほど一歩讓つて、大企業の設備の近代化を促進せしめるために税法上特例を設けることも必要かも知れません。それを認めるとしても、それならば他方において中小企業に、その均衡上、やはりそれと均衡のとれるような措置を、税法上或いは金融上、私は講ずべきであると思う。そういう措置を講じないで、そうしてこの大企業のみが恩典をこうむるような、こういう法案の出し方は、私はこれは議員立法として非常に不適切であると思うのであもます。
更に反対理由の第四は、この企業の近代化或いは発明等を奨励するために、この第十二條におきまして「地方公共団体は、中小企業の合理化を促進するため、中小企業者の申出に基き、当該企業の経営の状況について調査及び診断を行い、その改善に関する勧告を行うことができる。」こういうふうに書いてありまして、如何にも中小企業にとつて有利な條項のように見えるのでありますが、併しながらこの第十三條におきまして、「主務大臣は、前條の調査及び診断並びに勧告を行う地方公共団体に対し、予算の範囲内において、その経費の一部を補助金として交付することができる。」となつております。併しながら、政府はその経費の一部を補助金として交付するとありましても、地方公共団体が財政困難な折柄、政府はその一部を負担するのであつてその他は地方公共団体が勧告した場合には負担しなければならないのでありますから、こういう財政困難な折、地方公共団体は補助金を出さなければならんということになれば、勧告をなかなかしないと思うのです。予算関係から言つてそれは困難になると思います。(「やつておる」と呼ぶ者あり)これはむしろ、それほど中小企業を振興するというなら、なぜ国家が全部これの補助をやるようにしないのか。それは一部の特定の富裕な地方公共団体には、やつておる所もあるかも知れませんが私は実際問題として、どうしてもこういう形では、財政困難な地方公共団体においては勧告を澁ると思うのです。中小企業の診断を通じて補助金制度を活用するというのは、大企業を有利にする均衡上、中小企業を多少有利にしなければならんので、こういう條項を入れたのかも知れませんけれども、これは私は実際はごまかしだと思う。実際にはなかなかそう行われないと思う。これは余りに大企業を保護し過ぎるので、何か刺身の妻のように中小企業に謳つておかないと、ちよつと体裁が悪いので、刺身の妻としてこういう條項を入れたと思うのです。私は実質的にはごまかしだと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)それは今後の実績を見ればわかります。
以上の四点から私はこの法案に反対するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/11
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012・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/12
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013・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/13
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014・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) この際、日程第二、連合国占領軍の為す郵便物、電報及び電話通話の検閲に関する件を廃止する法律案、日程第三、郵便貯金法の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/14
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015・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。郵政委員会理事中川幸平君。
〔中川幸平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/15
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016・中川幸平
○中川幸平君 只今議題となりました連合国占領軍の為す郵便物、電報及び電話通話の検閲に関する件を廃止する法律案につき、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
この法律案で廃止せられんとする昭和二十年閣令第四十三号は、ポツダム宣言受諾に伴う勅令第五百四十二号に基いて制定せられたものであります。
終戰以来、郵便物、電報、電話通話等は占領軍の検閲を受けておつたのでありますが、昭和二十四年十月限り、この検閲は事実上廃止せられておりますが、平和條約発効後は、この閣令は当然廃止せられる性質のものであります。本法案につきましては、委員会におきまして格別の質疑もありませんので、討論を省略して、直ちに採決に入りました結果、全員一致を以て可決すべきものと議決した次第であります。
次に郵便貯金法の一部を改正する法律案につきまして、委員会における審議の経過並びに結果の御報告を申上げます。
この法律案は、郵便貯金の貯金総額の制限額及び利率を引上げると共に、積立郵便貯金及び定額郵便貯金の預入金額を引上げることによつて、郵便貯金の利用を増進し、貯蓄の吸収を図ろうとするものであります。即ち第一は貯金総額の制限額を現行の三万円から十万円に引上げんとするものであります。第二は金利の趨勢に即応し利率を引上げんとするものでありまして、即ち通常郵便貯金においては年二分七厘六毛を三分九厘六毛に、積立郵便貯金においては年三分一厘を四分二厘に、又定額郵便貯金においては、預入期間の長短に応じて、現在年三分乃至四分であるものを、四分二厘乃至六分に改正しようとするものであります。第三は積立郵便貯金及び定額郵便貯金の貯入金額の改定でありまして、積立貯金については一回の最高預入金額を現行の千二百円から四千円に、又定額貯金の預入金額については新たに五千円及び一万円のものを加え、現行の六種を八種に増加しようというのであります。
本法案は、去る二月十九日当委員会に付託せられまして以来、数次に亘る審議におきまして、委員より、「一、最高制限額を十万円と定めた根拠並びに利率を本法案の通りに定めた理由如何。二、最高制限額十万円を以て本年度郵便貯金増加目標の六百二十億円を達成し得る自信ありや否や。三、本年度大蔵省は六十億円に上る貯蓄債券の発行を企図しており、その大部分は郵便局をして発売せしめることになつているが、郵便貯金の吸収、殊に定額貯金の募集に影響を與え虞れはないか、又貯蓄債券売捌きのため郵便局従事員に過重労働を強いるととならぬか」等、政府との間に熱心なる質疑応答が行われましたが、その詳細は速記録によつて御了承を願いたいと存じます。
かくて質疑を打切り、討論に入りましたところ、中川委員及び駒井委員より原案賛成の討論があり、採決の結果、全員一致を以て可決すべきものと議決した次第であります。
右御報告申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/16
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017・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。
先ず連合国占領軍の為す郵便物、電報及び電話通話の検閲に関する件を廃止する法律案全郡を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/17
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018・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/18
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019・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 次に郵便貯金法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/19
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020・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時七分散会
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○本日の会議に付した事件
一、議員の請暇
一、議員派遣の件
一、日程第一 企業合理化促進法案
一、日程第二 連合国占領軍の為す郵便物、電報及び電話通話の検閲に関する件を廃止する法律案
一、日程第三 郵便貯金法の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02019520307/20
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