1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年三月二十五日(火曜日)
午前十時二十五分開議
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議事日程 第二十三号
昭和二十七年三月二十五日
午前十時開議
第一 日本国とアメリカ合衆国との間に締結された行政協定の国会承認に関する決議案(椿繁夫君外八名発議)(委員会審査省略要求事件)
第二 塩田等災害復旧事業費補助法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第三 農林漁業資金融通特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 日本專売公社法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 日本輸出銀行法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第六 私立学校振興会法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 放送法第三十七條第二項の規定に基き、国会の承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第八 日本放送協会昭和二十五年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書(委員長報告)
第九 岩手県雫石川沿岸の土地改良事業国営に関する請願(委員長報告)
第一〇 はつか蒸留技術研究費等助成に関する請願(委員長報告)
第一一 警察予備隊の農地買收反対に関する請願(委員長報告)
第一二 小地区の土地改良事業費国庫補助に関する請願(委員長報告)
第一三 畑地かんがい施設費国庫補助に関する請願(委員長報告)
第一四 海岸砂地造林施設等拡充に関する請願(委員長報告)
第一五 土地改良事業費国庫補助増額に関する請願(委員長報告)
第一六 北陸農業試験場に園芸部、畜産部設置の請願(委員長報告)
第一七 岩手県黄海村地内国有林解放に関する請願(委員長報告)
第一八 岩手県籔川村外山牧場地区解放に関する請願(委員長報告)
第一九 三面川左岸用水改良工事施行に関する請願(委員長報告)
第二〇 無家畜農家解消に関する請願(委員長報告)
第二一 積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法に基く国庫補助増額等の請願(委員長報告)
第二二 労務加配米制度継続に関する請願(委員長報告)
第二三 蚕業技術指導強化費国庫補助増額に関する請願(委員長報告)
第二四 でん粉工業救済に関する請願(二件)(委員長報告)
第二五 長崎県壱岐土地改良区の排水改良事業に関する請願(委員長報告)
第二六 家畜および畜産物の取引円滑化に関する請願(委員長報告)
第二七 当別川上流にかんがい用水ダム等築設の請願(委員長報告)
第二八 蚕業技術指導強化費国庫補助に関する請願(委員長報告)
第二九 浄信寺川河口排水施設に関する請願(委員長報告)
第三〇 長野県塩崎村田用水取入口施設完備に関する請願(委員長報告)
第三一 積雪寒冷單作地帶の土地改良事業面積制限廃止に関する陳情(委員長報告)
第三二 昭和二十七年度民有林造林国庫助成拡充に関する陳情(委員長報告)
第三三 国有林野整備臨時措置に関する陳情(委員長報告)
第三四 積雪寒冷單作地帶の振興促進予算確保等に関する陳情(委員長報告)
第三五 東北農業試験所に水田裏作研究施設設置の陳情(委員長報告)
第三六 農業災害補償国庫補助等に関する陳情(委員長報告)
第三七 農業改良普及事業に関する陳情(委員長報告)
第三八 農林省令第五十八号中一部改正に関する陳情(委員長報告)
第三九 森林法中一部改正に関する陳情(委員長報告)
第四〇 国立い業指導所設置に関する陳情(委員長報告)
第四一 長野県りんご生産農家の被害救済に関する陳情(委員長報告)
第四二 積雪寒冷單作地帶の土地改良事業に関する陳情(委員長報告)
第四三 農業改良普及事業の強化拡充に関する陳情(委員長報告)
第四四 農林水産業施設災害復旧事業国庫補助の暫定措置に関する法律中一部改正の陳情(委員長報告)
第四五 繭糸価安定法運営等に関する陳情(委員長報告)
第四六 耕地改良事業費国庫補助等に関する陳情(委員長報告)
第四七 労務加配米制度廃止反対に関する陳情(委員長報告)
第四八 昭和二十七年度治山関係予算拡充強化に関する陳情(委員長報告)
第四九 旧農林省農事改良実験所県移管事業費全額国庫負担に関する陳情(委員長報告)
第五〇 バターの輸入問題に関する陳情(委員長報告)
第五一 市町村農業委員会経費国庫補助増額に関する陳情(委員長報告)
第五二 傾斜農業地帯の農業振興対策に関する陳情(委員長報告)
第五三 上唐沢川地区土地改良事業施行に関する陳情(委員長報告)
第五四 畜産振興対策に関する陳情(委員長報告)
第五五 無家畜農家解消等に関する陳情(委員長報告)
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001・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/1
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002・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
この際お諮りいたします。高良とみ君から海外旅行のため会期中、佐多忠隆君及び藤原道子君から同じく三十四日間、工藤鐵男君から病気のため三十二日間、それぞれ請暇の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/2
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003・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつていずれも許可することに決定しました。
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004・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 議員平岡市三君は去る二十日逝去せられました。誠に痛惜哀悼の至りに堪えません。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/4
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005・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 梅原眞隆君から発言を求められました。この際発言を許します。梅原眞隆君。
〔梅原眞隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/5
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006・梅原眞隆
○梅原眞隆君 只今議長から御報告になりました通り、議員平岡市三君は去る三月二十日、日本大学附属病院において急逝せられました。私ども同僚といたしましてとりわけ私は文部委員長といたしまして、誠に痛惜哀悼の念禁じがたいものがあります。ここに一言、同君の生前を回顧し、哀悼の意を捧げたいと存ずる次第であります。
平岡君は、明治三十一年静岡県に生れ、大正十二年日本大学商学部を卒業されましたが、翌年母校の命により北米合衆国に留学、ワシントン大学、アリゾナ大学及びサンタマリヤ大学等において経済学を專攻され、マスター・オブ・サイエンス・イン・コンマースの称号を受けられました。帰朝後は、母校日本大学において、或いは教授として、或いは学監として、又は幹事として、一意後進の教導に專念せられましたが、その学徳兼ね備わる温雅な御人格は学園を挙げて敬仰の的とされたのでありました。
新憲法の施行せらるるや、同君は郷里静岡県より衆望を担つて参議院に出馬され、爾来、大蔵政務次官として、又石炭増産協力会委員として、その該博なる学識と、真摯なる熱意とを傾倒し、よく国歩の艱難を支えられたのでありまするが、昭和二十五年再度参議院議員に当選せられまして以後は、終始專ら文部委員として我が国文運の向上発展のため寄與せられるところ多大なるものがありました。君は又この間、日本会計研究会理事、日本経営学会会員、大昭和製紙、日昭物産両株式会社顧問、日本女子経済短期大学学長、田子ノ浦高等学校長などの要職にあつて、公務極めて多端なるにもかかわらず、昭和三十二年には「社債の経営学的及び会計学的研究」により経済学博士の学位を得られたほか、その数多くの著書が物語つておりますごとく、孜々黽勉倦むことを知らざる学究的態度こそ、君の真骨頂を如実に示すものでありまして、私どものひそかに畏敬してやまないところでありました。今や講和條約もまさに発効を見んとし、待望久しかりし祖国独立の日を目睫に控えたる今日、いよいよ円熟の境に入られた君が、今後ますます政治家としての真価を発揮せられるであろうことをひとしく期待していたのでありましたが、かりそめの病に倒れ、遂に忽焉として幽明境を隔てましたことは、誠に遺憾の極みであり、外国に多くの知己を持たれた同君のごとき逸材を失いましたことは、国家のため惜みてもなお余りありと申さねばなりません。
ここに謹んで哀悼の誠を捧げますると共に、私どもは、同君の御遺志を継ぎまして、祖国再建と世界平和の確率に不断の努力を傾けんことを、故人の英霊にお誓いする次第であります。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/6
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007・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) お諮りいたします。議員平岡市三君に対し、院議を以て弔詞を贈呈することとし、その弔詞は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/7
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008・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。議長において起草いたしました議員平岡市三君に対する弔詞を朗読いたします。
参議院ハ、議員平岡市三君ノ長逝ヲ哀悼シ、恭シク弔詞ヲ呈ス
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〔高田なほ子君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/8
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009・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 高田なほ子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/9
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010・高田なほ子
○高田なほ子君 私はこの際、教育環境整備に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/10
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011・相馬助治
○相馬助治君 只今の高田なほ子君の動議に私は賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/11
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012・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 高田なほ子君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/12
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013・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/13
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014・高田なほ子
○高田なほ子君 文部大臣の御出席を要求いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/14
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015・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 発言を許します。(「文部大臣どうした」と呼ぶ者あり)文部大臣は間もなく見えるそうであります。高田なほ子君。
〔高田なほ子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/15
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016・高田なほ子
○高田なほ子君 私は教育環境の整備に関しまして、社会党第四控室を代表いたしまして緊急質問をいたします。
先ず吉田首相にお尋ねをいたします。教育環境は破壞されております。家庭、学校、社会を含む一切の教育環境はまさに破壞の途を辿りつつあります。重税と物価高による生活水準の低下、更に敗戰後の住宅難、これによります雑居生活は、必然的に子供たちの性的早熟を来たしまして、青少年不良化への大きな原因を作つております。生活打開のための闇行為は日常茶飯事となつておりまして、更に肉親の者がすでに多くパンパンガールというようないわゆる闇の女に転落し、なお且つこれらの生活難より不就学の児童が今日約百二十万という数を数えております。背に腹は替えられないというたとえのように、食べることに追われ通しの母親たちは、過去の愚民政策と相待ちまして、家庭教育などは殆んど放りつ放しの状態に追い込まれております。兒童憲章におきましては、「すべての兒童に愛護と教養に満ちた家庭が保たれ、家庭に恵まれない兒童にも家庭的な保護が與えられなければならない」と全国民の名において制定されております。兒童は、その正常な発育のために必要な物心両面の生活が與えられなければなりませんが、現状は以上のような教育環境の中にありまして、この第一の要素である家庭の教育環境を打開するための物心両面について兒童をどういうふうにして守つて行くか。ややともすれば、女や子供の問題は忘れられがちでございますので、この際その基本的な條件をどこに求められるか。小さい人たちのために首相の親心のある御答弁を承わりたいと思うのでございます。
第二の要素であります学校施設も又総予算に対する僅か四・一%の低率でありまして、先頃この議場から私が申上げたように、電車の車体を改造した電車学校、「おむつ」が風にひらひらと飜つているいわゆる都営住宅と雑居している「おむつ」中学校、又、晝なお暗い洞窟学校、掘立小屋の待合室に午前授業の終りを待たせている二部三部の学校など、PTAの百億を超える負担によつてもなお未解決の問題が山積をしております。加えて占領軍吏に警察予備隊などの学校の接收、又これに加えまして学校施設を目標として現に起りつつある警察予備隊誘致運動等々、誠に心を痛ましめるものがあります。このような状態で子供たちのオアシスが失われつつあるのでございますが、これに対しまして緊急に必要なものは教育財政の確立でなければなりませんが、最近の再軍備予算においては、果してこの教育財政を確立し、この教育環境を打開することが可能かどうか。再軍備と教育の完全実施は果して両立し得るかどうか。この点についての文部大臣の御所見を十分に承わりたいと思うのであります。
第三に子供を取巻く社会環境はどうか。敗戰による虚脱状態の中に、射倖に便乗した宝くじ政策、競馬、競輪、ボート・レースを初めとする賭博財政による地方財政窮乏の打開は、次第に特飲街の氾濫となり、売淫は公然として横行し、この頽廃気分は未曾有のパチンコ全盛時代という珍現象を呈し、青少年不良化への温床と化しつつありますが、この中でどれだけ子供のための健全施設がございましようか。これに対しまして天野勅語や漢文の必修によつて背骨を通そうなどということは、まさに木に登つて魚を求めんとする愚に等しいことでございます。以上は戰後国内に累積された青少年を取巻く惡環境でございますが、ここで忘れてはならないことは、占領軍の駐留以後新たに惹起されました諸問題であります。
過般読売新聞に掲載されました西多摩中学校の綴方事件、更には神崎清レポートによる山梨県のいわゆる山中村の子供を救えという問題、さては横須賀、厚木、立川、横浜、木更津、佐世保、岩国等々、北は北海道から鹿兒島に至るまで、いずれも軍事基地と教育環境の関連は重大な社会問題となつて参つておりますが、この真相は一体どうなつておるのでございましよう。先ず西多摩中学校の綴方問題につきましては、基地立川市よりたくさん盗れて来るいわゆる夜の女たちが農家の部屋を平均五千円から六千円で借受け、文化村といわれた農村は八軒に一軒の割合でこの怪しげな女の宿となつておりまして、川原部落のごときは四十数戸中、実に三十軒近くもが、外人兵士を相手にして、夜となく、晝となく、極めて無恥な露骨な狂態を演じておる始末でございます。加えて設備不完全な農家は、障子の隙間からでも、窓からでも、始終(笑声)これらの卑隈な行動を逐一目撃することができるのでございます。子供たちは、新聞を配達に行つても、友だちの家に遊びに行つても、こういう問題を始終眼にしなければならないのでございます。子供たちのためにこれを如何にして支えるかという教師の熱意だけでは、もはや如何ともできないような状態にございます。横須賀市のパンパン宿の密集する中にある汐入小学校のごときは、千七百名に近い兒童のうちのその殆んどがこれらのいわゆる性的行為を目撃しておるという事実、こうした部屋を提供しておる家庭の子供等が必要に応じて外に追い出され、夜の十一時頃までは家庭から追い出され、町を行く所もなく、さまよつておるような始末でございます。こうした子供たちが学校の兒童の三分の一を占めるというこの現状は何としたらよいものでございましよう。更に、夜ともなれば、これらの婦人たちが校庭にまで進出して、不潔な性具が校庭に散乱し、兒童がこれを長靴と呼んで、子供たちはいつの間にか性的な隠語までも覚えておるという始末であり、更に不幸なことは、これらのことに関連いたします病毒の感染によつて幾多の兒童が病魔に冒されているという報告も又来ておるのでございます。まして小さな子供が屏風を持ち出してパンパンごつこをするという所業に至つては、まさに言外のことと言うべきでありましよう。こうした影響の中で、教師、PTA、母親たちは、真劍にこの問題と取組み、土曜、日曜までも、この種の行為の頻発する時期には学校に集めましてできるだけ兒童の注意を外にそらすようにしておるのでございます。更に、このような支えの中でも防ぎ得ず、遂に恐るべき事態が発生してりおります。それは閑散時におけるこれらのいわゆる夜の女たちは、その生活を支えるために遂に中学生にまで手を伸ばして、甚だしきに至つては、西瓜を持つて来たら遊んでやる、塩鮭を持つて来たら遊んでやるというような状態で誘惑いたしました。このために、この害毒は遂に学生の内部まで食い込んでおるということは余りにも悲惨なことではないでございましようか。去る一月二十三日の毎日新聞では、中学生、高等学校生の妊娠中絶を報じております。青森下に例をとつて、この妊娠中絶者数の中で十五歳の者は五名、十四歳の者は三名、十三歳の者は一名、十八歳から十六歳までの高校生は実に四百名に及び、この中絶によつての死亡率は〇・二%で、重態に陷つた者また二・五%という驚くべき数字を掲げ、娘である母親の誕生は現在日本の悲劇であるという警告を発しておるのであります。こうした事態の発生は、古今東西を問わず、軍隊に女は付きものだという野蛮的な考え方、婦人の身体の提出を許容して恬として恥じない、誠に誤まれる社会通念の必然性と見るべきでございましよう。更に、ここには神崎清氏のレポートによる「娘売ります」というものが出ました山梨県下における極めて……村長初め村会議員、更には先生までもが一緒になつてパンパン置屋に協力をしておるということが報じられておるのであります。(「質問をしろ」「よく聞け」と呼ぶ者あり)そこで(「質問は何だ」「パンパン演説か」「黙つて聞きなさい」「黙つて聞いてらつしやい」と呼ぶ者あり)これは誠に重大な問題でございますから、よくお聞きになつて頂きたいと思います。(「もう少し政治に良心を持て」「馬鹿野郎どもが」と呼ぶ者あり)更に驚くべきことには、北海道の千歳村では、警察の署長名を以て、オンリー・ワン・パスを発行して、「右の者米軍〇〇と同棲中の者であることを証明する」と云々という写真入りのパスで、国際結婚ならこれは考えようがございましようが、全くこれと違うパンパン擁護の方策を立てておるということは、誠に驚くべきことであります。
こうした一連の教育環境破壞問題に対しまして、文部委員会の席上において岡崎国務相は、「この話は」、この話はということは教育環境が壞されている問題でありますが、「非公式ではあるけれども話をした。先方でも大変困つている。日本のいかがわしい婦人はそばに寄らせないようにという希望があつた」と言われました。更に「文教地区内のこれら醜状に対しては、これは殆んどもう名案がない」と言つておられます。又天野文部大臣も、「向うばかりが惡いのじやない。こつちも惡い者がたんといる。」(「その通り」と呼ぶ者あり)「これよりほかに、もう途はないではないか」と、これ又、手を、(「時間だ」と呼ぶ者あり)これ又、手をつかねているのでございます。岡崎国務大臣も、更に文教の当面の責任者であられる天野文部大臣も、このようなことであつては、どうして一体私たちの子供を安全に育てて行くという環境を保持することができるでしよう。こういうことであるならば、安保條約に基く米軍の駐留が多くの地域において今後基地を求められて進められて行つた場合、占領下という嚴しい名の下においてさえこのような状態であるならば、何ら対策なしには、この害毒は遂に青少年を中心として民族破滅の大きな原因を作ることになるのではないでしようか。(「その通り」「植民地に……」と呼ぶ者あり)原子爆彈のみが民族を破壞するものではないと思うのでありますが、日本の純潔を守るためには、一切の外国軍隊の駐兵を(「簡單々々」「質問をしろ、質問をしろ」「売国奴」「黙つていらつしやい」と呼ぶ者あり)駐兵を拒否しない限りは、(「緊急質問をしろ)と呼ぶ者あり)このていたらくにおいては到底この害毒を一掃することはできないと思いますが、首相の御所見をお伺いしたいのであります。(「社会党代表か」と呼ぶ者あり)若し駐兵を強行なさるとするならば、(「演説会じやない」と呼ぶ者あり)この現実に対して、政府は当然これらに対する具体策を持たなければならないと思いますが、これは政府の責任ではないでしようか。(「何が質問なんだ」と呼ぶ者あり)若し具体策があるとおつしやるならば、それをどうぞ明示して頂きたいと思うのでございます。(「時間だ」と呼ぶ者あり)
日米経済協力ということがございますが、道徳の面においても日米道徳協力体制が確立されることは、これは如何でございましようか、(「議長、時間時間」「落ちついて」「平気ですよ」「しつかりやりなさい」「落ついてゆつくり」「演説会じやない」と呼ぶ者あり)過般の閣議においては、国連加入の閣議決定があられるように新聞の報道を見たのでございますけれども、一九四九年の国連総会におきまして、売春及び売春の目的で人身を売買する附随的惡徳が人間の尊嚴及び価値に反し、且つ個人、(「時間はどうしたのだ」「静かにしろ」と呼ぶ者あり)家族及び社会の福祉を危うくするが故に、売春の目的で(「時間を超過しておるのだ」と呼ぶ者あり)婦女を誘引し、勧誘したりする一切の売春行為を禁じておるのでございます。(「何をごちやごちや言つておるのだ」と呼ぶ者あり、笑声)これらの国際的な條約に対しまして、この條約の精神を尊重して、独立国家として今後お話合いを進めて行かれる御用意がございましようか。首相にお尋ねをいたします。(「時間だよ」と呼ぶ者あり)更に文部大臣は、何かいい案があつたらというような消極的な態度であつてはなりません。あなたの愛の手を持つている三千八百万に上る子供たちのために、これから進駐しようとする米軍にこれが解決を双方の責任において求めようとされる熱意はないのか。その御所見を承わりたいと思うのであります。更に戰争の結果において、いわゆるオキユバイド・ベビー、つまり売春行為の結果生れた混血兒が今日約十万という多数に達し、これらは、すでに就学年齢に達しておりますが、これらの進学対策に対する具体的な方策はないのか。これについて大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
最後に厚生大臣にお伺いいたしますが、厚生大臣はこれによつて基因する性病対策に対し、過般行政監察特別委員会において、或いは予算委員会において、赤線区域の復活を黙認するがごとき御発言がありました。誠にこれは以て解しかねる御答弁でございます。こうした人身売買を一体あなたは認められるのかどうか、又性病予防についての明快なるこの際御答弁を頂きたいと思うのでございます。
最後にもう一つ木村法務総裁にお伺いをいたしますが、オンリー・ワン・パスといつたような、このような人身売買を公けに許すような一体警察は、これはどういう一体法律に基いてこういうことを許しておられるのか。更にこのような私娼が氾濫いたしまして、このような害毒が現に現われておりますときに、現行法において、この怠慢な取締、怠慢な厚生施設によつて、果してこれらの不幸な境遇にある婦人たちを救い上げることができるかどうか。若し売春に対するあなたの取締の立法的な措置がおありでございますならば、これについて御所見を伺いたく、同時に、ありとするならば、その取締に対する基本的な方策についてお伺いしたいと思うのであります。以上で質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣吉田茂君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/16
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017・吉田茂
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。
教育環境の整備に関し、又風紀問題に関し、又教育費問題についての御意見御尤もでございます。教育環境の整備については今後十分注意をいたしまするが、同時に関係地方の官民等においても政府に十分協力してその目的を達成するようにいたされたいと思います。教育費については今日予算の許す限りできるだけのことをいたしておるのであります。これも更に財政の余裕を見て一段と考えたいと思います。人身売買については一層取締を嚴重にいたしたいと思います。
〔国務大臣天野貞祐君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/17
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018・天野貞祐
○国務大臣(天野貞祐君) 教育財政の不足ということについてはお説の通りでございますが、現在の事情止むを得ないと私は思つております。(「どういう事情か、おかしなことを言うな」と呼ぶ者あり)それ故に、教育財政の確立ということについて今考えておることは御承知の通りだと思つております。又社会一般に非常に不健全な思想が漲つておるということも、私は非常に同感でございまして、こういうような点もできる範囲においては是非やめて、子供たちに惡い影響を及ぼさないようにしたいと思つております。それから又、外国の兵隊が来ているためにいろいろ風紀を乱しておる、而もそれが子供たちに惡い影響を及ぼすということについても、全く同感でございます。けれども、これは今高田議員もおつしやつたように双方の責任だというお言葉がございましたが、その通りで、こちらにも考えなければならん点もあると思います。(「それだから黙つているのか」と呼ぶ者あり)これは、やはり一般教養の向上ということを待たない限りはできないことです。差当り文教地区の設定というようなことによつてこれに対処したい。文教地区の設定ということは現在いろいろな点において効力を示しておる。現に学校の周囲にいろいろよくない設備などされるときには、それを輿論の力、又教育委員会の力によつてこれを改めておることは、高田さんも御承知の通りであります。そういう線に沿つて努力をいたして行くというふうに私は考えております。(拍手)
〔国務大臣吉武惠市君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/18
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019・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) お答えをいたします。
赤線地区についてのお尋ねでございますが、これは決して公認しておるわけではございません。ただ、これを強いて散在せしめますると、却つて衞生上或いは風紀上に及ぼす害が少くございませんので、この地区内に特に衞生教育或いは健康診断の励行等をいたしまして、衞生上遺憾なきを期しているだけでございます。決して公娼制度を復活させようなどという考えではございません。(「黙認しておると言つたではないか」と呼ぶ者あり、拍手)
〔国務大臣木村篤太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/19
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020・木村篤太郎
○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。
売春行為につきましては、これは政府のほうにおきましても看過しておるわけではございません。各市町村條例によつて売春行為そのものは取締られておるのでありますが、法令によつて取締つておるのは、勿論十分とは言えませんが、只今のところでは勅令第九号、兒童福祉法、性病予防法、職業安定法、これらの各方面の法令を以て取締を強化しておるのであります。殊に人身売買については我々は十分に注意を拂わなければならんという構想の下に、これは刑法で処罰されております。現に新聞紙上でも御覽の通り、この点については政府は十分愼重に取扱つおります。今後ますますこの方面の取扱については強化して行きたいと、こう考えております。(拍手、「パスの問題は」と呼ぶ者あり)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/20
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021・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、日本国とアメリカ合衆国との間に締結された行政協定の国会承認に関する決議案(椿繁夫君外八名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題といたします。
本決議案につきましては椿繁夫君外八名より委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求の通り委員会の審査を省略して、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/21
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022・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明の発言を許します。岩木哲夫君。
〔岩木哲夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/22
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023・岩木哲夫
○岩木哲夫君 只今提案されました決議案に対するその提案理由の二、三を申上げたいと存じます。
これはお手許にそれぞれ理由書を御覽に供しておりまする通り、基本的におきましては、日本国憲法第七十三條の規定する條約というものは、国家間の文書による法的拘束力のある合意を意味するものでありまして、狭義の條約のみでなく、あらゆる協約、協定、取極その他の規約、憲章、議定書、宣言、決定書及び交換公文等のすべてを包括したものの意義でありまして、例外的なものを認めていないことは、日本のすべての国際法学者及び憲法学者の一致した決定的見解であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて、今回の取極められました行政協定は、先ず基本的に国会の承認を得べき性質性格のものであることは、すでに吉田総理が本院予算委員会で言明いたしておる趣旨が、即ち国会の承認を得べき條約であることを本質的に裏書しておるものでありまして、取消のお好きな総理がこれを取消しておらない現段階においては、当然これは條約と認定すべきものであります。ただ政府が国会審議の必要なしと所論する点は、先の安保條約第三條において総括的に委任されておる事項で、仮にそれが條約の一部であつても、それはただ單なる施行細目に過ぎないと弁解いたしておる筋であります。併しこれは国会の議定を要せないと主張する條約の施行細目が他の法律と同一の効力が発生するかどうかには、大なる誤謬があり、且つその内容が違憲に亘るもの多々ありと判定されるものがあれば、当然その違憲に及ぶと思われるものの取扱に対しましては、憲法第八十一條の最高裁判所の法令の合憲性判定の権限規定中に條約を除外しておるのでありまするから、当然、條約の合憲性如何の判定審議は、無論国権の最高機関たる国会がこれに当らねばならんことは当然であり、又憲法が明瞭にこの点を記しておるところであります。又安保條約が平和條約第何條かに基いて生じたことは、安保條約の前文においても明らかごことく、この二つの條約は相互一体をなすものとしても、別々にすでに国会に承認を求めていたような工合に、この行政協定も当然安保條約の第三條に基いて別に生じた別個の内容を持つ歴然たる條約である以上、国会に付議すべきは当然であります。(拍手)又その内容が仮に国連憲章によるあらゆる協力義務の範囲であるといたしましても、それは又別個の国連條約において取極められるべきものでありまして、これを日米安全保障條約による行政協定において集約取結ぶべきことでないことは今更論ずる余地がありません。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)而もこの内容が、国権と国民の権利義務に及ぶ、実に有史以来の、独立日本の将来を卜する深刻且つ広範囲の特権を具体化しておる以上、それ自体がすでに委任事項以外に亘る非法理的、違憲的性質を持つておるのでありまして、(「緑風会よく聞いている」と呼ぶ者あり)その内容の事実が全く国会の審議にかけるべき憲法第七十三條の條約責務を持つておることは、(「緑風会違憲をやるな」と呼ぶ者あり)もはや国会内外の輿論に徴しましても一点の疑いも生じないところであります。又行政協定という一種の條約取極を仮に委任したといたしましても、新たにできたこの條約、即ちこの行政協定の承認権を国会が断じて放棄したことにはならないのでありますると共に、又放棄し得ないのであります。一体、條約中国会の承認を要しない條約とは憲法の第何條に基いておるのでありますか、どうか。政府が国会で承認をしようとする意思と権限を何故制限をいたそうとするのでありますか。我々は全くわからないのであります。
第二の理由は、これは先般来本院の外務、予算両委員会におきまして陳述証言せる各大学の専門権威者の意見に徴しましても、仮にこの行政協定が安保條約第三條による総括的な委任事項であるとしても、それは安保條約によつて両国政府間で取極めることを委任された意味の條約で、法理的には一定の限度があつて、いやしくも国権や国民の権利義務に及ぶ委任事項は生じないと断定しておるのであります。而もその当時は、アメリカ側から内容が日本側に提示されていなかつたのでありまするし、又日本側においてもその案を持ち合せておらないということは、衆参両院の安保條約審議過程においても、政府も国会も相互にその内容を知るべくもなく、いわゆる五里霧中の手探りで、あなた任せであつたことは、吉田総理の答弁でも、この経過においても明らかでありまして、ラスク大使に会つて初めて提示された案を仰せ御尤もに受諾したこの事態に対し、仮にこれが政府の言う條約の施行細目と殊更国民の前に過小評価せんとしても、その現実は蔽うべくもなき重大性を帯び、(「そうだ」と呼ぶ者あり)而も法理的にもたくさんな委任事項以外の問題、取り分け三権分立の基礎を危くするがごとき取極めは、日本が独立し得るか否かの基本的問題でありまして、国権と共に憲法を擁護すべき第一の責任体である内閣が、これを国会の審議にかけないということは、全く專制政治の権化とも言うべきで、(拍手)断じて民主政治に忠実なるゆえんではありません。又仮に政府の言う国際慣例とかアメリカは国会にはかけられないとか主張しているようでありますが、これはアメリカ独特の国体と憲法上の措置でありまして、日本としては日本自体の国法に基いてなすべきでありまして、いやしくも日本の民主憲法と同一視してはならないのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)又アメリカはこの協定によつて、アメリカ主権の拡大こそあれ、決してその主権も国民の権利義務も何ら侵害拘束されないことであります。これに反しまして、これが日本の場合のごとく、貴重なる犠牲を拂つて漸くかち得んとするこの独立自主の国権が、(「担当大臣どこへ行つた」「逃げた逃げた」と呼ぶ者あり)再び占領下中と殆んど同様の制圧を受け、国民の権利義務は余りにも著しく必要以上に拘束を受けるに至りましては、日本を中心とする将来の共同防衛の基礎に立つ観点から見ましても、極めて深い問題が生ずることであろうと思うのであります。又国会が安保第三條において委任したと申しますが、これも、国権が無期限に侵され、且つ国民の権利義務の制限が殆んど四つの島全土に而も無期限に及ぶがごときは、今や委任の法理が及ぶなどはあり得ないことでありまして、仮に然らずとしても、当然国権の最高機関の承認を得べきことは、政治的に見ましても、民主憲法の秩序に立つ日本独立精神の観点に見ましても、良心ある責任内閣のとるべき態度であらねばならんと信ずるのであります。
更にその第三の理由は、先の安保條約審議のときは、衆参両院を通じて、この行政協定を行うについては、第一に憲法に違反しないこと、第二には、その第三條に指摘しておりますように、即ち「合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する條件」の範囲を超えてはならないことに、吉田総理はもとより政府各大臣の明らかに約束且つ堅く相互に言明されたところであります。然るにこの行政協定を見まするに、政府の行政的意思によつて憲法に明定されておる事項を制限したり或いはその適用を拒否するがごとき違憲的措置をとつたことは、議会における約束を破つたものと言わなければなりません。(拍手)殊に注目すべきことは、先に行なつた米比、米英、米濠その他の協定に比しまして、今度の日本の場合は著しくその国権と国民の権利義務に対する差別的失当の制圧を受け、あたかも日本が米国の隷属国か植民地になつたかの感を抱かしめるに至りましたことは、(「そうだ」と呼ぶ者あり)将来米国と共に共同防衛に立たなければならない祖国防衛精神を蹂躙破壞される虞れあるものとして、(「そうだ」と呼ぶ者あり)民族独立の上に誠に由々しき障害と言わなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)同時に、この重大なる国権や国民の権利義務に関する條約を、ただ報告を受けただけで国権の最高機関たるこの国会が無審議で済ますということになりますと、何のために国権の発動機関である国会があり、又国民の代表議員として国民の期待と責務はどこで果そうとするのか。まさに民主議会政治の前途に極めて暗影を投ずるものと言わなければなりません。(拍手)
そこで私は、然らば果して安保條約第三條の委任事項たる米軍の日本及びその附近における配備規律の條件以外の事柄を協定しているかどうかについて、この際、三、四その具体的事実を指摘いたしてみたいと思うのであります。
即ちそれは、この協定の大半を占める軍隊の組成要素である軍人軍属以外のそれらの家族、即ち單なる一私人たる地位を有するに過ぎない者に対して、米国の商人等に対してまで、委任事項以外の次のような事柄を協定していることであります。例えば行政協定の(「官房長官はどうした」と呼ぶ者あり)第五條の2、第九條の1、2、4等の(「誠意がないじやないか」と呼ぶ者あり)米国民の入国及び移動に関する事項、それから第十條の1、3の民間運転手免許証及び私有自動車に関する事項、又第十七條の3(f)の民間人退去命令の專属権の問題、第二十三條の民間財産の保全に関する事項、十條の2、3、十二條の2、3の課税免除の規定、第十七條の刑事裁判権に関する事項、第十九條の2にある為替管理に関する事項、第五條の船舶及び民間航空機の入国に関して規定される事項等は、米軍の配備規律に関するもの以外の民間人に対するものでありまするが、更に米軍の配備規律の條件以外のものといたしまして問題点の多い諸点は、特に第四條の施設及び区域の返還の際における原状復帰又は補償義務の相互免除の事項、第十一條—第十五條の米国の請負業者等の課税の免除、(「うるさい、やめろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)第十七條中の属人主義の刑事裁判規定及び第十四條7の米軍と契約者個人に対するアメリカの第二義的刑事裁判管轄権に関する規定、第十條の民事裁判権の問題、第二十四條の日本区域において敵対行為の生じた場合に日本が合衆国と共同措置をとる義務を受諾するの規定、更に第二十五條の日本国の経費負担に関する事項等は、明らかに委任事項以外の重大問題として歴然と判定される事項であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
又その第四の理由は、この行政協定の内容には、憲法違反に及ぶと疑問を持たれる諸点といたしまして、特に第一に、第二十四條におきまする外敵の脅威に対する武力行動に関する緊急共同措置の判定及びその指揮者の判定権次第では、日本の国権発動、指揮統帥権、緊急事態の認定主権、及び国土や国民の財産、生命等の権利義務に関連するところの著大でありまして、これらはまさに委任事項以外の、而も憲法に牴触する虞れある重大なる問題として指摘し得るのであります。(拍手)第二は、第十七條の3(b)の施設及び区域内における合衆国当局の(「中止しろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)專属逮捕権、及び第十八條6(b)の規定にありまするアメリカ軍が直接その接收する土地建物に対する委任差押権の付與。第三は、行政協定と同一効力があるとしておりまする岡崎大臣からラスク大使に宛てました附属公文書にある日本官有及び私有個人財産の土地建物を米軍が必要とするものを平和條約発効後といえども政府がその所有者に無断で勝手にアメリカ軍に使用許可を與える約束をしておる事項等は、真つ向から日本憲法に違反するものでありまして、これはただ政府が單なる施行細目であると強弁を張つてみましても、かくのごとき状態では、憲法を二束三文に蹂躪されては、(「岡崎大臣どこへ行つて来たか」と呼ぶ者あり、笑声)もはや日本国内においてアメリカ合衆国が建設されたと同様の感を国民にも国際的にも與えるのみであります。殊に行政協定が軍事的協定と見られる第二十四條の内容は、政府は明らかにしませんが、この條項を具体化する日米合同委員会が何らの法的根拠もないにかかわらず異例の権限権能を持つておることでありまして、これによつて重要なる軍事作戰あらゆる行動に及ぶ等の取極をなし得るこの遂行機関として認められんとすることは、重大なる違憲行為であります。又第二十五條によりまして、この行政協定即ち條約を今後幾年に亘つて定期的に改正することの権限を政府に與えんといたしておることは、注目すべきことでありまして、(「ノーノー」「その通り」と呼ぶ者あり)若し政策、主義の違つた内閣が代つた場合、その内閣がこの変更をなし得る可能性等を想定いたしますれば、これは国際信義の上におきましても重大なる問題を投ずる非常なる事態が起ることを恐れるのでありまして、飽くまでも国会の承認を得べき諸般の事態が明瞭にここに指摘されるのであります。
これを要しまするに、平和條約の発効後なお九十日の占領軍の駐留期間がありまするから、その後における即ち日本独立主権が回復の上に立つて十分日米対等の安保相互條約を結ぶべきであるにかかわりませず、吉田首相は平和條約を取結んだその翌日に單独で安保條約を結び、なお占領下中にこの行政協定を取結ばねばならなかつた羽目に追い込められたその責任とこの処置は、(「賛成したのはどうしたのだ」と呼ぶ者あり)殊にこれを国会に付議しないという態度こそ、まさに重大なる失政でありまして、吉田内閣は日本の後世に将来拭うべからざる刻印をみずから負わなければならんと思うのであります。(「その通り」「趣旨が一貫しないぞ」と呼ぶ者あり、拍手)然るにアメリカは日本との行政協定を先ず日本と反対に先に結んで、これを見極めてからのちにゆるゆる平和條約と安保條約の審議にかかつた。この経過、この事態はこの行政協定が、平和、安保條約の骨格であり、中枢であり、極めて重要な條約で、両條約批准の條件は全くこの行政協定、ここにあつたというような事態に顧みましても、日本が先のこの平和、安保條約批准後でありますればあるほど、アメリカの場合以上にいろいろの国権や国民の権利義務が侵害されておる事項でありまするが故に、当然これはあとより国会にでもかけなくてはならんことはもう明瞭なる事態であります。(「そんなことはない、明瞭じやない」と呼ぶ者あり)若し各位にいたしまして、この行政協定を国会に付議しないと、それでもいいと判断されるようなかたがありますれば、それは国権の最高機関の権威と責任をみずから放棄したものでありまして、(「ノーノー」と呼ぶ者あり、拍手)決して国民の負託に副うものでもないのでありまして将来再び安政條約の轍を踏むそしりを終生いつまでも負わなければならないと思うのであります。
ここに私は以上の提案理由の説明を述べまして、何とぞこの重大な行政協定を、国権の最高機関の責任者である皆様におきましては、且つ国民の負託に副い得るゆえんといたしましても、当然国会に付議すべきことに御協力御協賛を願いたい次第であります。以上を以ちまして私の提案理由の説明といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/23
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024・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 本決議案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。草葉隆圓君。
〔草葉隆圓君登壇、拍手〕
〔「何を言うのだ」「国会議員をやめろ」「よく聞け」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/24
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025・草葉隆圓
○草葉隆圓君 私は自由党を代表しまして本決議案に反対するものであります。その理由を、第一には国際法上から又純法理論的な立場から、第二は実際的な政治的な立場から、この二つの立場から時間の範囲内において十分検討いたしたいと存じます。
第一の場合におきましては、この理由書が只今配付になりましたが、理由書の第一より第三、なお第八の問題について、純然たる国際法的な理論的な立場から申上げたいと思います。(「大きいぞ」「君は知つているのか」と呼ぶ者あり)日本国憲法によりますると、内閣が国際的に又国家間に取り交しました取極は、ここにもありまするように、憲法第七十三條第三号によつて「事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」となつておりまするが、併しこのこと自体は必ずしもただ單に形式のみの問題ではないことは勿論であります。この理由書に引例されておりまするが、外国の慣行におきましては、大統領の権限で締結し得る行政協定、或いは行政機関だけで締結し得るもの(「そんなことはどうでもいいのだ、外国のことは」「日本のことを言え」と呼ぶものあり)即ち技術的取極のごとき慣例があるが、外国の先例は日本に必ずしも引用はできませんが、(「明治憲法の時代だ」「よく覚えた」と呼ぶ者あり)日本におきましても先例があることは御承知の通りであります。いわゆる阿波丸事件におきまする取扱は諸君十分御承知の通りであります。(「阿波丸とは違う」と呼ぶ者あり)これは両院において決議して、その両国政府間の協定は国会の承認を求めずして、それに基いて第八国会において法律案として諸君の御議決を願つた通りであります。(「その通り」「ノーノー」と呼ぶ者あり)併しながら、私は、この問題によつて必ずしも行政協定自身を国会の承認を必要としない條約であるとは申上げません。(「その通り、当り前だ」と呼ぶ者あり)行政協定は、安全保障條約がなかつた場合におきましては、当然国会の承認を受くべものでありまするが、本協定は安全保障條約第三條による実施細目であつて(「どこが実施細目だ」と呼ぶ者あり)両国政府間において取り結び改めて国会の承認を受けないことをはつきりと明示して(「でたらめを言うな」と呼ぶ者あり)第十二国会において諸君の議決を願つたのであります。従つて再びここで承認を求めるということは二重承認であり、重複承認となるのであります。「ノーノー」と呼ぶ者あり、拍手)又かくのごとき本條約の細則的な問題は、本條約が承認を受けた場合に、その細則的な問題の承認は省略しておる場合は、他の條約を御覽になつたらわかるのであります。(「売国條約だ、そんなものは」と呼ぶ者あり)
又理由書の第四、第七におきまして、「決定する」とあつて「委任する」とないから委任ではないのだ、「両政府」とあるが、当然條約締結は内閣の行政事務の一つであるから、「両国政府」と書いてあつても、これは承認を要しないという理由にはならないという問題であります。(「当り前じやないか」「その通りだ」と呼ぶ者あり)これは国際慣行の一般條約の用語例を十分御研究になりますと明瞭なことであります。(「君が研究して来いと呼ぶ者あり)「委任する」と書いてある場合はないのであります。常にこれは多くの場合「決定する」という用語を用いております。又「両国政府間」とありまするのは常に国際間の一般に用いられておりまする用語でありまして(「馬鹿を言え」と呼ぶ者あり)これはきまつておるのであります。(拍手、「恥を知れ」「政府と国民と離れておるのか」と呼ぶ者あり)
又、軍の配備を規律する條件を逸脱しているという問題であります。(「君が逸脱しておる」と呼ぶ者あり)これは只今御引例になりました各條につきまして、おのおのはつきりした理由を以てお話申上げて反駁し得ると存じまするが、(「中学の社会科へ行つて勉強して来い」と呼ぶ者あり)仮に第二十四條を例に取つて考えてみます。いわゆる最も大きい日本の非常事態の場合にあつて、政府は或いは非常事態の宣言をなし、或いは日本と米国の政府とが日本防衛のために緊急の共同措置をとり、且つ安全保障條約の目的を達成するために協議をいたしますることは、むしろ当然なことであります。(「いつそんなことをきめた」と呼ぶ者あり)そうして具体的措置は、敵対行為のその状況によつて定むべきものであります。当然のことを規定しておりまするし、決して委任の範囲を逸脱しておるのではないのであります。(「誰が委任したか」と呼ぶ者あり)又治外法権という言葉を用い、或いは又安政の不平等條約と等しいという語がたまたま巷間に聞かれるのでありまするが、(「三百代言」と呼ぶ者あり)これはすべての今までの外国におきまする(「外国の例は駄目だよ」と呼ぶ者あり)取り交されました軍隊の外国における配備の問題について先例を十分御研究になりますると御了承頂けると存じます。提出理由の説明におきまして先ほど縷々お話になりましたが、私は今まで諸外国で取り交されましたすべての條約を全部比較研究いたしまして、決してこの種協定に比して過大ではなく、領土外的資格という意味の治外法権的色彩を持つているものではないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)又安政の不平等條約などに等しいというに至つては誠に言語道断の説であると存じます。(拍手)安政條約は軍人や外交官のみならず一般在留外人に対しましても広く法権の適用名を免除したものでありますが、今回の場合は、イギリス・アメリカ間の條約と内容を同じくするものでありまして、いわゆる駐留の軍人軍属及びその扶養家族に限つて、これらの人々も日本の法令を尊重する義務を負わせたのでありまするから、おのずからそこに、はつきりと明瞭なことが生じておると存じます。
第二の場合につきまして、政治的な立場からこれを検討いたしてみたいと存じます。実は(「大いにやり給え」と呼ぶ者あり)第十二国会におきまして條約の審議のため(「後世の記録になるよ」と呼ぶ者あり)本院は特別委員会を設置され、衆議院におきましても同様であります。衆議院におきましては九回、本院におきましては二十一回連日熱心に審議をされたのでありまするが、私は一日もこれに欠席せずに拜聽いたしておつたのであります。安保條約の審議の中心は行政協定であつて、政府は終始一貫、行政協定は、勿論広い意味の條約ではあるが、安保條約の実施細目であるから、(「馬鹿言え」と呼ぶ者あり)改めて国会の承認を求むるのではないことを繰返し繰返し説明し、これを含めて安全保障條約の承認を求めましたことは、十分速記録においても明瞭なことであります。
当時国民民主党は、十月二十四日、行政協定の内容について文書による申入れをなされ、三木幹事長は衆議院の特別委員会の最後の討論採決の際、わざわざ時間を求めてこれを吉田総理に質問をして了解をし、党議として決定をして、かくて民主党は当時賛成をして白票を投じたのであります。(拍手)又本院におきましては、曾祢君は十月二十九日の委員会におきまして、行政協定ができてから安保條約を締結して国会の審議を待つべきではなかつたかという点を質されたのでありますが、他は多く殆んど白紙委任にあらずやという論議で終始したのであります。これに対しまして当時政府は、「決して白紙委任状ではない。一国の軍隊が外国に駐留した場合、施設や区域を使用し、或いは一種の特権を有することは当然であり、配備を規律する條件がこれらの事項を含むことは国際間の常識である。」そうして、この行政協定はむしろ秘密ではないか、秘密事項があるのではないか、これを公表する意思があるかどうかという点について強く論議されたのであります。実は、本日のこの決議文の提案の賛成討論の中に、当時の委員でありました兼岩君並びに堀君が後ほど討論をいたされるそうでありますから、特にこの二人の御所説を改めて私は引用いたしたいと思う。十一月十七日の委員会で兼岩君は、衆議院の先に申しました三木幹事長の質問を引用して、吉田総理の答弁は「私はちつともわからない」と言つて、「秘密協定はないのかどうか、」この質問に対して総理は、「ありません」と答えられますると、「明快に御答弁になりましたので、国民は満足をいたしております」と言われました。(拍手)又堀委員もそれに引続いて「行政協定が成立いたしましたならば、政府としては行政協定の内容を国会に公表される意思があるかどうか」と問われたのであります。これに対しましてはつきりと国会に公表する意思がある旨を答えたのであります。従つて安全保障條約の審議に当つて、行政協定の問題は、白紙委任ではないか、秘密事項があるのではないか、国会に公表する意思があるかどうかということが論議の中心に相成りましたことは十分御了解頂けると思います。いわゆる行政協定は国会の承認を要する事項であるというのではなくて、これを公表するか、政府が締結した行政協定は公表する意思があるかどうかというのが問題の中心である。実は安全保障條約の承認に反対でありました諸君が、これによつて結んだ行政協定を承認を求めよと主張されることは、いささか私は理論的に矛盾ではないかと存じます。又行政協定を含むことを條件として安全保障條約の承認を求めた際に賛成いたされました諸君が、若しこの決議案に賛成されましたならば、私はむしろ政治生命の喪失であると言わなわればならんと思う。
菊川君は、先日の議院運営委員会におきまして、この問題は政党政派を超越して扱うべき問題であると言われた。誠に私は同感であります。(「その通り」「アメリカ人」と呼ぶ者あり)この決議案は、私が今申上げましたように、理論上からも、実際上からも、或いは政治的立場からも、我が参議院は議院の名誉にかけて総員否決すべきものであると信ずるのであります。(拍手)恐らく提案者の諸君も我々もこの論議に対しまして、(「少し良心を持ちなさい」と呼ぶ者あり)釈然として提案者自身が十分良心的に反対されるものであると存じます。目睫に迫りました独立日本の門出を国民と共に国を挙げて祝福することを期せねばなりません際に、(「憲法が泣くよ」と呼ぶ者あり)賢明なる参議院の諸賢は、政党政派を超越して、釈然としてこの決議案を否決されるということを信じまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)私はこの決議案に反対するものであります。(拍手、「大政翼賛会議員」「憲法否認論者は反対しろ」「うるさいぞ」「十年たつたら変るだろう」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/25
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026・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 菊川孝夫君。
〔菊川孝夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/26
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027・菊川孝夫
○菊川孝夫君 私は社会党の第四控室を代表いたしまして、只今議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の行政協定の国会承認に関する決議案に賛成の意見を申述べます。
今日まで政府は、行政協定を安全保障條約の單なる実施細則であり、安全保障條約の第三條に「両政府間の行政協定で決定する。」とあつて、安全保障條約はすでに国会の承認を経てあるから、行政協定は国会の承認を経る必要がないと言明し続けて参りました。(「その通り」と呼ぶ者あり)ところが、本院の各委員会における追及に会いまして、行政協定は国家間の合意であるから條約であると岡崎君も言明せざるを得なくなつたのであります。(「初めからそうだよ」と呼ぶ者あり)一方、院外学者の見解も、言論機関の論調も、ほぼ行政協定は憲法にいう條約であるということに一致して参りました。これは我々のかねてから主張して来たところであつて、この点に関する限り一応国論が統一されて来たものと言い得ると思います。(拍手)さて、行政協定は憲法にいうところの條約なりといたしました場合に、憲法に規定されておりまする條約の取扱をしなければならんことは申すまでもございません。憲法上條約という字句は四カ所出ているだけであります。第七條の天皇の條約公布権の規定と、第六十一條で国会承認の場合における両院の関係を規律する規定と、第七十三條の内閣の締結権と国会の承認権、第九十八條に條約を遵守するところの宣言規定、この四カ條に條約という字は見られるだけであります。條約について何らの異つた取扱をする規定がなく、以上の四カ條によつてそれぞれ処理されなければならないことは申すまでもないと思うのであります。
只今問題になつておりますのは、その第七十三條によつて、事前に又は時宜によつては事後に国会の承認を必要とする点でありまするけれども、政府は、安全保障條約承認の際に包括的に委任されたものであると強弁しておりまするし、(「その通り」と呼ぶ者あり)前の政務次官である草葉君もそれを強調しておられました。(「その通り」と呼ぶ者あり)併しながら、安全保障條約の第三條に「両政府間の行政協定で決定する。」とありまするのは、政府と政府の間、国と国とが合意の上で決定するという原則を規定しておるのに過ぎないのであつて、例えば米軍の配備規律について、軍司令官と日本政府との間に、又は部隊長と自治体の長との間に如何なる協定を行なつてもそれは無効であつて飽くまでも責任ある政府間の合意に基く決定でなければならないという趣旨であります。これによつて、憲法七十三條の承認を経ずに、政府にその決定を包括的に委任しておるものと解するわけにはならないと思うのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)安全保障條約の承認を求めるに当りまして、政府から委任をしてくれという要求もなかつたと、又国会が承認するに当りまして委任の決議もした覚えはないのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)一体、当時政府におきましても、今度のような行政協定が締結されることは誰にも私はわかつておらなかつたと思うのであります。政府にも国会にも内容の全然わからないものを白紙委任するがごときことはあり得ないことなのであります。(「その通りだ」「第三條を読み直して来い」と呼ぶ者あり)又安全保障條約と行政協定の関係は、国内法における法律と政令の関係はあるものでないことは條約であるという見解によつて明らかなところであります。国内法の政令に相当する場合は、成るほど憲法七十三條の二号の、「外交関係を処理すること。」という規定によつて国会の承認を経る必要はありませんけれども、條約である以上は、同條の第三号によつて国会の承認を必要とすることは論議の余地のないところであると思うのであります。又岡崎国務大臣は、国際慣習であると言つてアメリカの例を引用しておりまするけれども、アメリカにおきましては、條約の場合、上院の出席議員の三分の二以上の同意を必要とする憲法の規定があるために、大統領が條約を締結する場合にそれに必要な條件である上院の同意を得ることは容易でないので、アメリカ特有の大統領の條約締結権制度の欠陷を補うことの必要上生れて来た慣習法に過ぎないのであります。アメリカと日本が同じ憲法上の原則に基いておるといたしましても、総理大臣と大統領の権限にいたしましても、議会の権限にしましても、多くの異なつた点があるのであつて、アメリカがそうであるから日本もそうでよいという理由にはなりません成るほどアメリカ側からそのようにせよという命令をされておることは我々も了解しておる。そういうふうに思うのでありますが、そういうことを言われておるということはわかりまするけれども、それに従わなければならないという理由はないと思うのであります。(拍手)そのアメリカにおきましても、行政協定の濫用については批判があり、現に先日の対日平和條約、安全保障條約の批准に当つても、行政協定の全貌が明らかになつて、合衆国にとつて不利益でないことが確認されるまでいろいろと理由を付けてその承認を引延ばして参りまして、憲法と慣習法との運用の妙味を発揮しておるのであります。(「そうじやない、そうじやない」と呼ぶ者あり)この場合、アメリカの軍隊が外国に駐留しましても、アメリカの国民の権利が侵害されるようなことがないので、そうやかましく言わなかつたのでありましようけれども、逆の場合を想像して御覽なさい。慣習法であるからといつて、黙つてアメリカの議会がこれを承認するはずはないと思うのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)勿論、国際情勢の判断或いは世界観の相違によりまして、我々のようにこの行政協定に絶対反対の立場をとる者も、又止むを得ないとする者も、喜んで自由党の諸君のように賛成する者もありましようけれども、外国軍隊の駐留というような前古未曾有の事実に対処して、憲法の正しい運用をして国民の負託に応えたいという念願においては一致するものであると私は信ずるものであります。(拍手、「耳が痛いだろう」と呼ぶ者あり)
而も、行政協定は日本民族百年の運命を左右する重大なる幾多の内容を持つておることを我々は見逃してはならないと思うのであります。(拍手)その第一は、何といつても原爆に対して制限規定のないことであります。今や原爆は全人類の課題となつておりますし、若し日本に原爆基地が設定されましたならば、非常の場合、当然日本が再度原爆の洗礼を受ける危險にさらされるのであつて、それは日本民族の滅亡を意味する以外の何ものでもありません。我々は原爆基地の設定と原爆の日本への持込みについては民族的に関心を高めまして、そして民族の輿論としてこれは対処しなければならんと思うのでおります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)第二には、不幸にして第三次大戰が勃発した場合、又は極東における局地戰が拡大いたした場合に、一時的にでも情勢が不利になつた場合には、アメリカ軍が戰略撤退する場合があるかも知れぬと思うのであります。現に第二次大戰のときにもアメリカ軍の戰略撤退というものはほうぼうでなされております。そのような場合に、日本にある施設及び区域又は重要なる生産設備を爆破しまして、敵軍に利用されることを防ぐのは、これは近代戰における戰略上の常識でありますが、若し駐留軍がそういう行動をいたしました場合に、それによつて被害をこうむるのは誰か。みんなお互い日本人であるということを我々は最も恐れるものなのであります。第三には、無期限に日本全土の不定数の地域に不定数の軍隊の駐留を認めたことでありますが、大体、小国が大国に対しましてこのようなことを認めました場合に、その小国の辿つた運命は歴史の教えるところでありまして、ここに多くを語る必要がないと思うのであります。岡崎国務大臣は議運の答弁において、フイリピンに慣例があると言つて平然といたしておりましたが、我が国をフイリピンと同様の位置に置くというのであれば我我は何をか言わんやでありますが、岡崎君初め霞ヶ関の官僚が完全に占領ぼけしてしまつたことを雄弁に物語つていると思うのでありま先(拍手)第四に、刑事裁判上の特権、即ち草葉君が治外法権ではないと強弁しておられますが、明らかにこれは治外法権であります、これを大幅に認め、その他、免税、軍票の使用等、各種の特権を認めておりまするために、今後数十万のアメリカ軍隊の構成員、軍属及びその家族がこれらの特権を享受することによりまして、我が国の権限利益が著しく侵害されることは明らかであります。第五に、米・ソが仮想敵国として深刻に対立しておりまする現在、一国にこのような特権を認めることは、逆に他の一国を刺激することは必然であつて、安全保障どころか、むしろ危險保障になる虞れが十分にあると恐れるのであります。現に米国軍の基地附近ではしばしば空襲警報が鳴り響きまして、日本人に戰時中の惡夢を呼び醒させているそうであります。これは国籍不明機の侵入による警報であるということでありますけれども、日本人にはその真相すら知らされないし、勿論特選の方法も講じられておらないのでありまして、思うだに慄然とするものがあるのであります、(「その通り」と呼ぶ者あり)ちよつと拾いましただけでも、このような内容と危險性を持つた協定を締結しておきながら、総理大臣は国会の承認を経ようとしないのみではなく、この議場から、こんな結構な協定ができて、これを批判する反対党の難度は大体怪しからんといううなことを嘯いておりますけれども、これは今日は総理大臣がおいてになつておらんから岡崎君からよくお伝えを願いたいと思うのでありますが、地下に眠つているところの陸奥宗光であるとか、小村壽太郎とか、或いは山座円次郎だといつたようなかたがたは、即ち霞ケ関の先輩たちは、こんな腰拔けな後輩を養成した覚えはないと言つて(笑声)地下では地団駄踏んで悔しがつていると私は思うのであります。(「腰拔けならばもうちつといいよ、売国奴だよ」「陸奥宗光の真似をしたいのか」と呼ぶ者あり)
参議院といたしましては、こんな総理に盲従して憲法の運用を誤まつて悔を千載に残してはならないと思うのであります。今こそ我々は超党派的に立ちまして、丁度大津事件の際に大審院の判事が法を守つたように、我々参議院が超党派的に一致いたしまして法を守り、とにかく行政協定を認めなければならんとするような人も、自由党のように喜んで賛成する人も、国会において十分に審議して、そうして憲法上の手続を経なければならないと私は思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この意味におきまして、同僚議員各位の圧倒的な賛成が寄せられるであろうことを確信して、私は賛成いたす次第なのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/27
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028・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 小林亦治君。
〔小林亦治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/28
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029・小林亦治
○小林亦治君 私は日本社会党第二控室を代表しまして、只今の決議案に対して賛成の討論をなさんとするものであります。(「もういいよ」「黙つて」と呼ぶ者あり)
先ず第一に、吉田内閣が幕府にあらずと言うならば、念のためにもう一遍日本国憲法を読み直さなければならんことであります。諸君御案内の通り(「的を外すなよ」と呼ぶ者あり)日本国憲法は、政府の行為によつて再び戰争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、国の主権が国民に存することの大前提の下に、その第四十一條に国会は国権の最高の機関であることを明確にいたしております。アメリカでは大統領が元首であるが、日本においては国会が国の最高機関であります。そこで、国家間の條約はすべて国会の承認を得なければならぬことは、憲法第七十三條が燦としてこれを明定し、何らの例外をも許しておらないのであります。アメリカの属国又はその一州にもあらざる日本の内閣は、日本の憲法に従わなければならないことは当然であります。(拍手)然るに政府の態度は、安保條約がすでに国会の承認を得た以上、その具体的細則を定むる行政協定については承認は要らぬと強弁するにあるが、これは恐るべき曲解であると申さなければならんのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)法理論の上から申しますれば、安保條約そのものは、国民に対しては間接的且つ抽象的であるところから、その性格は一個の法規の前文である。却つてむしろ行政協定こそ、裁判権、損害補償、防衛分担金、駐留軍に関する国民の権利義務等、広汎にして而も具体的な直接規定を内容としており、これこそ本質的なる條約そのもの、即ち行政協定こそ国家国民を拘束するところの條約の本体であると考えるものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて、一般の委任立法の理論を以てするも、委任すべからざる事項を内容としているので、末端的な細則を取極める場合の委任と混同すべきものでは断じてない。(「委任していない」と呼ぶ者あり)若しこれをただ單なる細目に過ぎないと解釈する者があつたといたしましたならば、その者こそ吉田総理御案内の曲学阿世の徒であると私は考えておるのであります。政府は飽くまでも従来の詭弁を以てこのまま罷り通らんとするにおいては、吉田内閣は国民の前に三百代言となり、延いては国会の審議権を無視すると同時に、政府みずからが憲法を蹂躙するものと言うべきであります。(「ノーノー」「そうだ」呼ぶ者あり)保安條約の第三條が白紙委任状と同様なりとするなれば、国会は曾つての翼賛議会と何ら変ることなく、吉田内閣は第二の東條内閣となつて、再び国を誤まるの危險を孕んでおるものと認めざるを得ないのであります。(「その通り」「独断だ」と呼ぶ者あり)
以上、私は、国会尊重、憲法擁護の立場から、行政協定については政府は速かに国会の承認を求むるの手続をなすべき本決議案に対して(「そんな必要はなし」と呼ぶ者あり)同感の意を表し、賛成の討論をいたした次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/29
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030・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 松原一彦君。
〔松原一彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/30
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031・松原一彦
○松原一彦君 第一クラブは個々人の意思によつて動いておりますから、代表するということは滅多にないのでございますが、この賛成だけは全員の代表としてお聞きを願いたいと思います。(拍手)
この日米行政協定が憲法の下における性質と更に法理論的な問題については、もう只今まで言い盡されておりまするからして、私は縷説を省略いたします。極めて簡單に、私は、この條約の本質とその国民に及ぼす政治的影響、並びに政府の求められておる効果が果してこのような態度の下に行われて挙がるものか否かということに、深く懸念を持つものであるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)外務省から発表せられておりまするところの行政協定の解説によりまするというと、この協定は、外国軍隊の国内における配備の條件を定めるものであつて、当事者間に最も友好的な相互信頼の関係がなければ実効を挙げることができない性質のものであるということが記されております。更に又、日米両国の共通の利益のためにこれを実施するものであるから、当然に両国民間の親善関係を助長するようなものでなくてはならないとも記されておるのであります。誠にその通りであろうと思います。米国側から申されたならば、多額の費用を使い、多数の軍隊をわざわざ日本に駐留せしめて、日本の安全を保護してやろうという米国側の好意に出たものと思われるのでありまするけれどもが、併しながら受身の日本の側から申しまするというと、これは誠に容易ならざる、国民感情の上にむずかしい悲劇を引き起す場合がたくさんある。いわんや只今までもたくさんのかたがたが言われましたように、この協定の内容には、多くの法律を以て規定せねばならないものがあり、予算を要するものがあり、その他、憲法にも疑義の起るようなものがたくさん盛られておる。して見るというと、この協定の効力を全面的に満足に発揮せしむるためには、政府はもつともつと親切な態度をとらなくちやならない。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)そうして、当事者というのは必ずしも政府じやない。全米国民と全日本人との間における真の友愛と信頼とがぴつたりくつ付くものでなくてはならないのであります。(拍手)それに対しまして今政府がとつて来ておるところの態度は何かというと、ややもすれば字句の末節に拘泥して、そうして、国民に対して深く理解せしめ、親切にこれを指導し、その目的をば十分に達せしむるような態度がない。御覽になればわかりまするように、第三條で以てこれはすでに決定しておることであるから政府の一存でできるというようなことは、これは一つの詭弁であつて、あけて見るというと、その協定の内容には幾多の疑問が盛り込まれておる。その兵隊の数、軍隊の数が一体幾らであるか。今後何年間の駐留であるか、更に又日本の憲法においては、現憲法においては許すべからざる防衛力の漸増が、アメリカ側において恐らく満足せられるという点にまで達せられなかつたならば、この軍隊の撤退はないのであります。これは明らかに日本の憲法に牴触いたしておる。できないことがここに條件となつておるのであります。(「ノーノー」「ノーじやない、その通りだ」と呼ぶ者あり)いわんや、私は今日愚痴を申すのではない。苦しかつた過去を繰返したくはございませんけれどもが、つい、この間まで、日米両国は鎬を削つて戰い続けた敵対関係にあつたのであります。敗戰の結果、戰勝国の軍隊の進駐の下に、事実我々は戰々兢々としたる幾年かを過ごして参つたのでありました。希くは一日も早く、たとえ小さくても昔日の独立日本に立ち帰つて、伸び伸びと日本の運命を日本国民の義務と責任とによつて再建したいと、楽しい夢を実は描いて参つたのでありますが、何ぞ図らん、講和独立の條件は相も変らぬ外国軍隊の無制限無期限の駐留となつたのであります。して見れば国民の間には誠に割り切れないものを包蔵せざるを得ないのであります。国民が喜んでこの米国軍隊の駐留を迎えるか否か。これに対して吉田首相その他政府の諸君がおとりになるところの態度を見ておりまするというと、飽くまで強引である。そうして政府のとつた態度に対してはこれに聽従せよと言われる。あたかも民主政治以前のごとき態度を以て政治に臨んでおらるることは、この日本の国が独立して、真に自由主義の諸国の間に伍して、世界に平和を求めて行こうとする将来の運命の上に加えるものがあるかどうか。私は非常な妨げになる点が多くはないかということを心から憂うるものであります。政府の諸公も、單に一片の法理論的な押え付けだけでなく、事あるごとに、例えばルーズヴエルト大統領が炉辺談話を発表して、諄々として国民に啓蒙した。いつ吉田首相がラジオを以て日本国民にかような大事をば諄々と啓蒙せられたことがありますか。又この行政協定のごときも、單なる行政協定ではないことは只今までもたびたび繰返されましたが、それを協定であると押付けられて、そうしてこれで以てすべてのことが行われると一体お考えになつておるのでありましようかどうか。仮に一例を挙げましても、この中に法律において決定せられなければならないものはたくさんある。予算を要するものがあつたときに、その一々がどうしても国会を通らざるを得ません。その通つたときに、これが成立すればよろしいが、否決せられた場合においては、この協定はアメリカ側では有効であつても、部分的には日本国内においては有効でないことにもなる虞れがある。よく納得せしめ、国民の総意の上に十二分の納得を與えて後に、この重大なる問題はその効果を発するものでなくてはならないのであります。私は政治上のテクニツクとしても、かような国運の将来を左右する大問題につきましては、もつともつと親切な態度を以て、十二分に国会を通して国民の了解を求めるようにされるべきである何故に国会の承認を求める態度をばおとりにならないか。実にわからないのであります。その親切が足らないと私は思う。
米国は巨額の費用を使つて日本のために守つてやろうというのであります。従つてその好意に報いるために、日本はどうしたならばこの効果が十二分に挙がるかを考えなければならないのでありまするが、政府の取扱い態度如何によりましては、或いは逆の効果が眼前に現われないとも限りません。何となれば、日本国民は未だ曾つて外国から兵隊の駐留を受けたる経験を持たないのであります。敗戰の結果、ここ七年間は、只今申上げましたような苦しい境遇の上に、将来の運命をば……楽しい自立の夢を持つて参つております。只今自衛権について幾多の問題が起つておりまするけれどもが、私は自衛権などというものは議論の問題ではないと思う。自衛とは生命を持つた者のおのずから持つておるところの本能であつて、一寸の虫にも五分の魂がある。如何なるものといえども、生命がある以上は、おのずから自分の身を守ることは、これは当然の本能であります。独立した後に日本の国民が自己の意思を以て自分の国を守る、これは私は御心配は及ばんと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)あらゆる面から考えて、力相応に、黙つて殺されはいたしません。二千年の伝統と歴史を持つ日本民族が、この民族国家がさように簡單に亡びるものではない。然らば独立後の日本国民が、独立の意思を持つて、これを対等の下に、一方も威張らず、一方も卑下せず、対等の下にかような問題を扱つて参つたならば、或いは双方共に納得して、よい効果を挙げることにもなろうかも知れません。
我々はこの安保條約をば否認いたし、ました理由も、まだあれは念の入れ方が足らなかつたのであります。第三條のごとき、その内容の空疎なものをば丸呑みに呑めなかつたからであります。丸呑みにお呑みになつた当時の賛成の諸君も、蓋を開けて見たならば、かような大きな問題が飛び出したことにつきまして、今は私は非常な不安をお持ちになつておるだろうと思う。(拍手)お持ちになつておらんかたがたがおありになつたならば、それはどうかと思うのであります。(拍手)学者も、国会は非常な不用意であつた、あの時、なぜもつと念を入れておかなかつたかと申しておる。さような、事、国交の問題、外交の問題に関しまするというと、我々は十二分に念を入れておきませんならば、あとで取返しの付かないことが起つて参るのであります。只今までは外国の軍隊がおりましようとも、それは占領治下であります。いたし方ございません。併しながら日本国民は由来非常に短気な国民である。癇癪持ちの国民である。而もかような敗戰の経験を持たない国民であります。この欝屈したる敗戰後の国民が、いよいよ独立した曉に、果して今まで通りの態度を以て外国の軍隊に接し得るかどうかにつきましては、私は疑いを持たざるを得ないものがあるのであります。懸念を有する。従つて政府におきましても、こういうような問題に対しましては、一片の理論にとらわれず、形式論にとらわれないで、親切に国民に示すために、潔くこの行政協定のごときものは国会を通して国民に了解を求める態度に出られるべきものである。これが日本のために最も親切なる政治であるということを申しまして、私はこの決議案に賛成の意を表するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/31
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032・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 堀眞琴君。
〔堀眞琴君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/32
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033・堀眞琴
○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして本決議案に賛成をいたすものであります。
これまで政府の説明乃至はこの壇上におきましても只今草葉君から説明されましたように、政府の見解は、安全保障條約第三條に基くものであるからして、行政協定についてこれが国会の承認を必要とするものではないと説明いたしておるのであります。併しながら安全保障條約第三條は、合衆国の軍隊が日本の国内乃至はその附近に駐留するについての配備の規律に関するところの條件につきましては、両政府間の行政協定でこれを決定するということを規定しておるのでありますが、これは安全保障條約そのものの中に配備の條件を規定したものではなくて、別個の行政協定を以てこれを決定するということを取極めているに過ぎないのであります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)従つて両政府間に取極められるところの行政協定は、又改めて国会の承認を必要とすべきものであり、安全保障條約第三條に基いてすでに包括的にこれが承認を得たものであるからして政府はその権限においてこれを取結ぶことができると解釈するがごときは、安全保障條約第三條によつてもできないものと申さなければならんのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
仮に政府の言うがごとくに、安全保障條約第三條によつてその権限を與えられ、行政協定を取結ぶ権限を委任されたといたしましても、それは極めて限定されたものでなければなりません。然るに行政協定の内容として取極められたものは、御承知のように極めて広範囲なものであり、而もその内容は、安全保障條約が国会の承認を得た当時におきましてはまだ明確ではなかつたのであります。内容の明確でないものについて包括的にこれを委任するということは到底考えられないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)従つて若し政府の見解をとるといたしましても、我々は行政協定の内容につきまして到底これを承認することはできないのであります。
政府では又この行政協定に関しまして、しばしば国際的な、特にアメリカの慣行について申しておるのであります。確かにアメリカ合衆国ではこの種の国際間の取極は行政協定で可能なものといたしております。なぜならば、その内容が合衆国の主権なりその国民の権利義務に対して何ら制限するものではないからであります。併しながら、いやしくもその主権を制限し、その国民の権利義務に対しまして拘束を與えるものにつきましては、よしんばそれが行政協定であろうと或いはその他の名前を以て呼ばれようとも、国会の承認を必要とすることは、昨年六月締結されましたところの北大西洋條約に基く協定がその例証であると申すことができるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)アメリカばかりではありません。フランスの第四共和国の憲法につきましても、国の財政に負担を與える條約その他国際間の取極或いはフランス国内法に対して何らかの変更を與えるような條約その他の取極につきましては、法律によつて批准されなければならないということが規定されております。又イタリア共和国の憲法につきましても、フランス第四共和国憲法と同じような規定が認められるのでありまして、外国の事例に徴しましても、この種の協定が国会の承認を必要とするということは一般の慣習であると申しても差支えないのであります。
又その内容でありまするが、これは先ほど申しましたように、單に安全保障條約第三條に基くところの細目的な取極以上のものであります。例えば裁判管轄権に関する條項であるとか、或いは関税法その他税法上の特権の付與であるとか、或いは出入国の自由であるとか、或いは地域及び施設等の使用上の便宜を與える件であるとか、或いは財政上の負担を與える件であるとか、主権の制限、日本国民の権利義務に大なる拘束を與えるものをその内容といたしておるのであります。政府はこれに対しまして、「行政協定の内容については従来国際慣行がある。従つて二の国際慣行によつてその條件を決定したのである」と、このように説明しております。併しながら、国際慣行とは申しながら、戦時中の特例を除きまして、対等国間にこのような内容の行政協定乃至はその他の條約が果してあつたでありましようか。政府はしばしば戰時中の米英の協定を挙げてこれが説明といたしているのであります。併しながら、この米英協定は丁度一九四一年の三月結ばれたものでありまするが、ダンケルクの敗戦の後であります。イギリスは第二次大戦に対しまして非常な敗戦の憂目を見ておつた時であり、アメリカが漸く武器貸與法によりまして西ヨーロツパの諸国に対して援助の手を差延べて来た時であります。従つてイギリスとしては、アメリカのこの援助によりまして敗戦を好転せしめようと努力しておつたことは申すまでもないところであります。従つて、イギリスがアメリカの申出によりまして、大西洋上のバーミユダその他の諸島嶼に軍事基地を設定することを認めるに至つたものとしなければならんのであります。而もこの米英協定について見ましても、例えば裁判管轄権であります。この米英協定に基くところのイギリスの法律によりますというと、裁判管轄権について、アメリカの専属とせられてありますものにつきましては、先ず軍隊の所属員のみを対象といたしております。その家族については何らこれを及ぼすものとはしておらんのであります。なお法律には「アメリカ合衆国軍隊の所属員とは、合衆国の法律によつて現に同国の陸海軍法の適用を受けているすべての者」と、このように規定してありまして、何らそこには家族を含んでおらんのであります。又その犯罪につきましても、叛逆罪を含むところの軍事的な性質の犯罪及び軍の安全に関する犯罪と限定されているのでありまして、日米間の行政協定のごとくに、すべての犯罪に及ぶものではないのであります。従つて米英協定と今回の行政とを比べるならば、そこに、その内容について格段の違があると申さなければなりません。勿論対等国でないところの国家間の條約なり協定なりには不平等のものもあります。屈従的な取極も見られるのであります。例えば一九四七年の三月の米比軍事基地協定であります。併しながら、この場合でも、又裁判管轄権について見まするというと、基地内はともかくといたしまして、基地外におきましては、犯人も被害者も共に合衆国の軍隊の所属員であるもの、次には犯人が合衆国軍隊の所属員で合衆国の安全に反するものについてのみこの裁判管轄権を認めているのであります。尤も、戰時にあつては、すべての軍隊所属員の犯罪に対してこれを認めるという但書はありまするが、併し米比軍事基地協定においても犯人並びにその犯罪の限界が明確に示されているのでありまして、家族についてこれを認めていないことは言うまでもないのであります。従つて国際慣行に口をかりまして、主権の制限、国民の権利義務を拘束するような條約を結び、すでにこれが包括的に委任せられたものとして国会の承認を必要とせずとするがごときは、大なる憲法違反であると申さなければならんのであります。
而もこの日米行政協定は軍事的な協定の性格を持つものであります。行政協定の第二十四條、つまり緊急事態の発生した場合のことでありまするが、日本区域の防衛のために必要な共同措置をとるということが規定されております。これは具体的にはアメリカの軍隊と日本の警察予備豫その他とが共同行動をとるということであります。日本の警察予備隊そのものがすでに予算委員会その他におきまして日本の憲法違反である戰力を構成するものであるということが論議されておりまするから、私はそれに触れないのでありまするが、併し防衛のためとは言いながら、果してアメリカ軍と共同して戰争を行うことができるであろうか。憲法の第九條の第二項の後段の交戦権を持たないという規定は、これを禁止しているものと言わなければならんのであります。而もこの行政協定におきましては、両者の共同行動をとる場合を想定し、憲法違反をも顧みずに、着々日本の防衛のためと称して再軍備の道を歩んでおるものと申さなければならんのであります。
私は、なお、このほかにも行政協定が国会の承認を必要とすることにつきまして申上げたいのでありますが、最後に私は、曾つて我々の先輩たちが、数十年の長きに亘つて屈従とその隷属のために悲惨な歴史を嘗めた例の安政條約と今度の行政協定とを比較してみたいと思うのであります。安政條約が結ばれましたのは、アメリカ合衆国との條約は安政五年、オランダとも同一年、それ以後明治の初年に至るまで各国との間に結ばれたものでありますが、ところが、この内容を見ますると、領事裁判権と協定関税率制度を認めておりまして、何ら関税の自主権がない。日本に裁判の管轄権を認められなかつたところの不平等な、極めて屈辱的な條約なのであります。これがために、日本の国民はもとより、日本の政府もこれが改正のために数十年の長きに亘つて努力いたし、その間には幾多の犠牲をすら拂つているものであることは、すでに皆さん御承知の通りだと思うのであります。
ところがこの安政條約と行政協定と比較してみるときに、私は安政條約よりも更に苛酷なる條件が行政協定の中に含まれていることを認めざるを得ないのであります。先ず第一に、安政條約の、これはアメリカ合衆国との條約でありまするが、第十三條によりまするというと、期限が定められております。即ち一八五八年調印の日から百七十一カ月、即ち一八七二年七月までをその期限とし、そのときに至つて両政府間で修正又は変更の協議をすることができる。但し一年前にこれは変更乃至修正をする側から通告するということになつております。この規定に基きまして明治政府は、只今申しましたように、数十年の長きに亘つて改正の努力をいたしたのでありまするが、実際にアメリカとの間に新條約が結ばれたのは一八九五年であります。明治の二十八年、日清戦争の最後の年であります。このように、安政條約にはともかく期限が附せられておつたのでありまするが、行政協定には御承知のように何ら期限の定めがないのであります。更に安政條約第三條には、五つの開港場並びに東京及び大阪の居留地の規定が載せられております。この居留地の地域内においてはアメリカ人はいわゆる治外法権を認められておつたのであります。ところが行政協定におきましては、施設、その区域は限定されておりません。無制限に全国にこれを拡大し得ることも予想されるのであります。このような工合に、行政協定は安政條約に比べまして極めて苛酷なものであります。而も安政條約第四條を見まするというと、アメリカ人は輸入関税を一定の税率に限定する、そうしてその物品を日本に輸入することができるということになつておりまするが、行政協定におきましては、これは完全に無税ということになつているのであります。なお安政條約は通商航海條約であります。従つて領事裁判権なり或いは協定関税率制度を改め、そうして裁判管轄権を日本が獲得し、関税自主権を獲得するならば、條約そのものは必ずしも日本に対して隷属乃至は屈従を強制するものではないと申すことができるのであります。ところが行政協定の場合は、裁判管轄権その他の特権を廃止乃至は修正いたしましても、なお外国の軍隊が我が日本に駐留するのであります。外国の軍隊そのものに伴うところの国際法上の特権は従つて依然として残存するものと申さなければなりません。このように行政協定は、安政條約に比較しましても、我々国民に対して重大なる拘束を與えるものであり、我が国を隷属とそうして屈従との底に降れるものだと申さなければならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
吉田内閣はこの重大な行政協定を国会の承認を経ずしてこれを国民に押し付けようといたしております。国権の最高機関であり、国民を代表する国会が若しこれを見逃すとするならば、国会自身その審議権を放棄したものと言わなければならず、国会の権威はもはやどこにあるかと問わざるを得ないと思います。我々は、国民に対する我々の責任を全うするためにも、この行政協定を(「時間々々」と呼ぶ者あり)国会の承認に付すべきものである、こういう工合に考えるのであります。
以上が私の賛成意見であります。(拍手)
〔「予算委員会は休憩だ、総理はどうした」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/33
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034・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 兼岩傳一君。
〔兼岩傳一君登壇、拍手〕
〔「総理の出席を求めろ」「総理を出せ、予算委員会は休憩だ」「発言をしないか」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/34
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035・兼岩傳一
○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表して本決議案に賛成いたすものである。
理由は、この行政協定こそ、平和、安保両條約の具体化であり、この実施によつて、労働者、農民は勿論、いやしくも平和と独立を愛し、アメリカ軍の日本駐留に反対し、アメリカ軍、御用商人の手先になることを潔しとしない全国民の生活が、極度に圧迫されるのみか、遂には日本が大戦争に巻き込まれ、祖国を焦土と化し、民族を破滅させるものであるからであります。本年一月二十二日、アメリカの国会においてスパーグマン上院外交委員会極東分科委員長は、「アメリカでは行政協定が調印されなければ講和條約の批准は行わない。」と言明している。ところが日本の国会においては、その当時、この点を追及された岡崎国務大臣は、「ラスク氏が行政協定を講和條約を批准する傑作とはしないと言明しておられるから、そのようなことはない。」と言う。どう考えましても、五十の坂を越した成年の男子で、如何に「かいらい」政権とは言え、国務大臣の要職にある者の答弁とは信じられない答弁を平然としてやつてのけているのであります。ところが二月四日、ロンドン・デーリー・メールの東京特派員は、「ラスク氏が現在トルーマン大統領の特使であること、この肩書が普通の技術的な協定の代表に與えられるものではないという事実が、今回の日米交渉の重要性を何よりもよく証明している。ラスク、岡崎両氏は、ときどきただ二人きりで個別会談を開いているが、この個別会談には軍部代表ジヨンソン陸軍次官補さえ故意に席を外したことが再三あつたものと了解される。」と会談の模様を伝えて、朝鮮戰乱についての問題が討議され、公表されない秘密な重要取極のあることを指摘しているのである。その後、行政協定ができ上り、アメリカの上院が講和條約の批准の審議を進めるや、この頃からアメリカの朝野を挙げて国連空軍による満州基地爆撃の問題が取上げられ、伝えられるところによれば、これを敢行する権限はすでにリツジウエイ大将がワシントンから委任されており、要すれば事前に英仏等に通告してから行われるが、急を要する場合には事後通告でも止むを得ないと、三国の意見が一致しているとの由である。(「そうだ」と呼ぶ者あり)あたかもこの情報を裏付けるように、二月二十日、アメリカ下院では、トルーマン・チャーチル会談の内容に関する完全な報告をアチソン国務長官に要求する決議案を多数を以て決定しているが、アメリカの下院が政府の意に反して今回のように外交政策に大影響を及ぼす決議案を承認したのは、故ルーズヴエルト政権発足から二十年間最初の出来事であつたと言われている。即ち極東における今日の情勢は、今やアメリカ軍が朝鮮において重大な敗北を喫し、中華人民共和国による台湾の解放がすでに日程に上り、仏印においてはハノイが危殆に瀕し、フイリピン、マレーの民族独立運動又着々強化し、これに対しアメリカ帝国主義者は、この敗け戰さを挽回し、新らしい大戦争の準備のために、日本に軍事基地と、地上軍と、軍需産業を決定的にその掌中に握ろうとしておるのである。一昨年マツカーサー元帥が北鮮に——して大失敗をやつて罷免され、休戦会談を受けざるを得なくなつたときに、平和、安保両條約がアメリカのお手盛りで急速作り上げられ、日本に押し付けられ、今、朝鮮で休戦会談をアメリカ側がこれ以上どう延ばそうにも延ばせなくなつて来たので、両條約の仕上げとも言うべき行政協定が秘密裡に作り上げられて日本に押し付けられて来た。この点は我が党が繰返し繰返し日本国民に警告して来たところであるが(「わかつたわかつた」と呼ぶ者あり)今やアメリカ本国においても、ブラッドレー統合参謀本部議長が上院外交委員会の聴聞会で、行政協定の締結が遅れると朝鮮の作戦に重大な支障を来たすと述べておるのを見れば、如何に我が党の従来の警告が正しかつたかは明白と言わなければならない。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手、笑声)
従つて行政協定の第一の特質は、それが日本の全国土を挙げてアメリカのアジア大戦争の作戰基地と化するものである。吉田総理は日本に基地はないとしばしば言明して来たが、この嘘を最も特徴とする老宰相の言明と全く事態は反対であつて、行政協定第三條によれば、アメリカ軍は、陸海空の基地は無論、原爆基地であろうとも、思うがままに建設できるが、日本人はその内部を窺うことすら許されない。若しそのようなことをすれば、第二十三條によつて軍機に触れるものとして厳重に罰せられるのである。この基地は絶対に日本を防衛するためのものではない。この点も政府の説明は嘘である。第一條、第五條によつて、現に朝鮮で作戦に従事しておるアメリカ軍や、台湾を占拠しておるアメリカの艦隊や、ヴエトナムに軍需物資を輸送するアメリカ船団が、ことごとく日本に自由に出入りし、アメリカ駐屯軍としての特権を無制限に享有できるのである。而も第二條によつてこの作戦基地は無制限に拡張できるし、期限は無期限である。これを要するに、現在国連軍の名の下に朝鮮戦争に従事しておる厖大なアメリカ軍がほしいままに日本に作戦基地を設定し、基地とその周辺で絶対的な権力を握り、日本国内を自由に往来し、日本を挙げてアメリカ軍のアジア——の踏み台とするのが本協定の真の目的とするところである。(「そうだそうだ」「大概にしろよ」と呼ぶ者あり)
第二に、本協定は、アメリカ軍、御用商人その他に対して無制限の特権を賦與するものである。第十七條によつて、彼らは基地の内外を問わず、公用たると私用たるとを問わず、軍人軍属はもとより、家族に至るまで、日本の裁判権には服しないという、かのアメリカ・フィリピン協定にも見られぬところの世界に類を見ないまでに屈辱的な條約である。而も彼らは第四條によつて、農地であろうと、学校であろうと、ほしいままに接收し、それがどんなに荒されようとも、原状に回復し或いは損害を補償する義務を負わない。彼らは第十一條によつて、国外の物資を無税で輸入し、税関の検査なしに日本国内に持ち込み又持ち出すことができる。第十二條によつて、彼らは日本国内で無制限に物資を調達できる。アメリカ軍の公認調達機関の証明さえあれば、物品税、通行税、ガソリン税、電気ガス税その他が免除される。日本の公益事業とその労働者を随時徴用して軍夫同然に使用し、第十九條、二十條によつて、日本の為替管理を免かれて、ドルを自由に持ち込み、自由に持ち出し、基地内では軍票を無制限に使用することができる。第十八條によつて、彼らは戰鬪行為によつて日本人に損害を與えても損害賠償の責任を負わない。従つてB二九などの墜落による損害は彼らの関知するところではない。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)
要するに、彼らはアジア——作戰の結果、日本国民に堪えがたい負担をかけることも関知しないし、又アジア作戰の敗北によつて日本が荒廃しようとも、その責を負わない。而もアジア作戰によつて大儲けするのはアメリカの大資本家、御用商人であり、この御用商人の選抜はアメリカ軍の自由で、日本には何の権限もないということである。
第三に、本協定はかくて日本経済の支配権をアメリカ人とその手先に渡し、日本の民族産業を破滅させるものである。(「ノーノー」「協定の内容の問題じやない」と呼ぶ者あり)なぜならば、第十一條によつて、アメリカ軍の公認調達機関とその御用商人は、関税の検査もなく、無税で輸入するから、日本の商社はこれとは太刀打ちができなくなるし、彼らはアメリカ軍の威をかりて、鉄道、電力、石炭などの公共事業とその役務を優先的に使用し、物資は日本国内で無制限に税金なしで調達できるから、その結果、日本人のための平和的な産業がこれと太刀打ちできず、破滅の途を迫るのは明かである。
第四に、本協定は日本の政治の指導権をアメリカ人に渡し、国民の要求を—————————————によつて弾圧しようとするものである。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)成るほどこの協定の実施については、第二十六條によつて日米の合同委員会で協議すると言う。併しこれはごまかしで、現に合同委員会の最も重要な仕事であるアメリカ軍の基地の決定について、アメリカ側が承認しないときは、アメリカの意のままになることは、協定附属の岡崎ラスク交換文書に規定せられている通りではないか。日本の予算もアメリカ人に握られる。アメリカ軍は電波を独占するのみか、(「よせよせ」と呼ぶ者あり)第十五條によれば、アメリカ軍の公認新聞に税金その他の制約なしで日本の公衆に販売される。アメリカ軍の軍人軍属は言うに及ばず、その家族に対しても抵抗した日本人は直ちに処罰される。即ち第二十三條によつて、アメリカ軍は、アメリカ人及びその財産の安全を図るためには、随時に必要となるべき措置、即ち何でもできるのは無論、アメリカ軍の軍需品を製造する工場でストライキやサボタージュを行なつた日本人労働者や、基地設定に反対する農民、漁民の陳情運動も、防諜の各の下に脅かされ、処罰される。
第五に、最後に本協定は非常大権をアメリカに売り渡しており、これを規定する第二十四條こそ本協定の最大眼目である。本協定は、この條項によつて、現に朝鮮、台湾に出兵しておるアメリカ軍の作戰を既成事実として合法化し、日本を挙げてこれに協力させ、これによつて日本を大戰争に駆り立てる。なぜなら、この協定は「日本区域」の範囲を明らかにしていないし、敵対行為の内容を明らかにしていないから、若し不幸にして朝鮮の休戰会談が決裂して、アメリカ軍が朝鮮半島から追い出されて、壱岐、対馬に退却する場合、或いは台湾のアメリカ艦隊が沖縄基地に退却する場合には、「敵対行為の急迫した脅威」と認定される虞れがある。且つ二十四條で規定しておる「共同措置」の内容は明らかにされておらぬから、アメリカ軍が朝鮮、台湾から追い出されて、なお戰争を継続する場合、日本の警察予備隊はもとより、日本国民が根こそぎ動員されることにならないという如何なる保障もない。従つて原爆を以て満州爆撃が行われた場合、日本人が大戰争に巻き込まれることは、今本協定を拒否しない以上絶対に避けられないのである。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)日本の再軍備、国民の徴兵と動員、日本の戰場化を前提とし、(「話が違う、話が」と呼ぶ者あり)日本全土を基地化し、アメリカ軍とアメリカ人にあらゆる特権を與え、日本国民の反抗をことごとく弾圧し、戰争参加を決定する非常大権をアメリカに売渡すところの本協定が国会の審議にすらかけられないということは、まさに民族の悲劇とも言うべき不幸であり、国会の権威を地に落し、国会議員を「かかし」同然に堕落させる。今、院外では何が起りつつあるか。すでに神奈川県相模原の米軍最大の兵器補給廠では廠長ドーソン大佐の命によつて大拡張が開始され、六月三十日までに立退けという苛酷な土地取上げに対し、町長以下全町民の反対が起つておるし、青森県三沢飛行場では鉄條網を潜つて農民が種子を蒔いているし、大阪伊丹飛行場の大拡張に対しては、農民の小さい子供たちまでも、アメリカ文字入りの拡張の木杭を動かすために、生命の危險を顧みず、夜、自分の畑に忍び込んで行く。又、軍命令を名として馘首された東日本重工、全化学、全建設省などの労働組合の労働者を中心にして、全労働者が鬪争を始めている。果して国会が、国会議員が、自由党を除く全政党が、これらの闘う国民の要求を裏切るかどうか。参議院は、今、全国民の注視の真只中に立たされているのである。(「終り」と呼ぶ者あり、拍手、「議事進行」「どうするのだ」と呼ぶ者あり)
〔相馬助治君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/35
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036・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 相馬君、何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/36
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037・相馬助治
○相馬助治君 議事進行について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/37
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038・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) よろしうございます。発言を許します。相馬君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/38
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039・相馬助治
○相馬助治君 私はこの際、採決に入る前に、特に吉田内閣総理大臣の本会議出席を要求いたします。(拍手)このことは議運の了解事項でありますし、仮に出席することがどうしても不可能な場合におきましては、議長において全員が了解付くように報告を私は要求いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/39
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040・菊川孝夫
○菊川孝夫君 私は只今の相馬君の動議に賛成いたします。(「議長、議事進行」「異議なし」「採決々々」「なぜ出られない」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/40
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041・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 只今の相馬君の御発言は総理の出席を要求せよということであると了解いたします。(「採決採決」と呼ぶ者あり)議長は先ほど来出席を要求しておりまするが、更に只今の御発言によりまして、改めて総理の出席を要求いたします。
〔「進行々々」「採決々々」「自由党が許しても議員が許さないぞ」「休憩休憩」「議事進行」「議会がきめればいいのだ、議会が」「引張り出せ」「この醜態は何だ」「国会自体がきめることじやないか」「何をぼんやりやつているのだ」「自由党は野次るだけか」「さつさと呼びなさいよ」「休憩々々」「総理逃亡」「一体この醜態は何だ、議運は何だ、この醜態は」「運営委員長何しているか、議長は何しているか、準備が悪いぞ」「自由党が約束を実行しないから、こういうことになるのだ」「これは何だ、議事をやつているのか、何をやつているのだ」「真室状態だ、国会は真室状態だ」「速記しつかりやれ、野次をみんな書け」「運営委員長、何をやつているのだ」「議運は何だ」「休憩しろ休憩しろ」「国会の権威に関するよ」「議長、経過報告、中間報告しろ、後日の証拠に写真に撮つておけ、この醜態を」「お茶にでも行こう」「議員の発言は一分間でもやかましく言つておいて、何だこの状態は」「国会の名誉を守れ」「運営委員長どうした」「休憩々々」「いつまでこうしているのだ」「議長、やるのか休憩か、どつちなのだ、いつまで待たせるか」「自由討論をやれ」「お茶を配れ」「やれやれ」「幕あきが長いぞ」「いつまで待つのですか、無制限に待つのですか」「行政協定と同じですか」と呼ぶ者あり、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/41
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042・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 議事をこれより進行いたします。
これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより本決議案の採決をいたします。本決議案の表決は記名投票を以て行います。
〔議場騒然〕
〔小笠原二三男君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/42
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043・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 静粛に願います。小笠原二三男君、何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/43
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044・小笠原二三男
○小笠原二三男君 議事進行。先ほど来、相馬君から総理大臣の出席について議長に取扱い方を要求したのでありまするが、総理大臣が本日のこの重要案件の本会議に出席せらるることについては各会派了承しておるところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)而も本朝の議運の小委員会におきましては、総理大臣は予算委員会に、十一時から一時間、午前中御出席になるということでありましたが、その点についても、本会議の権威保持のために、了承するということではなく、その場合退席することもあり得るだろうということを聞きおいたに過ぎないのであります。然るに十二時過ぎましてから予算委員会は休憩に入り、未だに休憩をしておるのであります。然るに総理大臣はこの会議場に御出席がなかつたために、先ほどのような議事進行について重大な支障を来たしたのであります。従つて議長においては、総理大臣が如何なる理由によつて只今まで本会議に出席しなかつたか、その理由の釈明を求めらるるようにお取計らい願いたい。(「賛成」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/44
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045・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 先ほど相馬助治君からの発言で、総理の出席を要求するようにということでありましたから、議長は要求したのであります。只今総理は出席に相成りました。議事はこのまま進行いたします。
本決議案の採決をいたします。本決議案の表決は記名投票を以て行います。本決議案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/45
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046・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。
〔議場開鎖〕
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/46
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047・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数百九十八票。
白色票(即ち本決議案を可とするもの八十二票。青色票(即ち本決議案を否とするもの)百十六票
よつて本決議案は否決せられました。(拍手)
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〔参照〕
賛成者(白色票)氏名 八十二名
山本 勇造君 有馬 英二君
小川 久義君 西田 隆男君
境野 清雄君 大隈 信幸君
木内キヤウ君 重盛 壽治君
門田 定藏君 江田 三郎君
小林 孝平君 三橋八次郎君
若木 勝藏君 小酒井義男君
栗山 良夫君 梅津 錦一君
深川タマヱ君 荒木正三郎君
内村 清次君 羽生 三七君
岩男 仁藏君 紅露 みつ君
松浦 定義君 高田なほ子君
森崎 隆君 吉田 法晴君
和田 博雄君 山崎 恒君
深川榮左エ門君 岩木 哲夫君
菊川 孝夫君 岡田 宗司君
河崎 ナツ君 一松 定吉君
堀木 鎌三君 小笠原二三男君
椿 繁夫君 木下 源吾君
金子 洋文君 須藤 五郎君
岩間 正男君 兼岩 傳一君
千葉 信君 木村禧八郎君
堀 眞琴君 水橋 藤作君
鈴木 清一君 岩崎正三郎君
大野 幸一君 上條 愛一君
千田 正君 東 隆君
松原 一彦君 田中 一君
加藤シヅエ君 山田 節男君
齋 武雄君 大山 郁夫君
羽仁 五郎君 矢嶋 三義君
村尾 重雄君 吉川末次郎君
カニエ邦彦君 島 清君
佐々木良作君 小林 亦治君
松永 義雄君 相馬 助治君
中村 正雄君 山下 義信君
堂森 芳夫君 赤松 常子君
小松 正雄君 伊藤 修君
棚橋 小虎君 小泉 秀吉君
三木 治朗君 波多野 鼎君
原 虎一君 下條 恭兵君
松浦 清一君 片岡 文重君
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反対者(青色票)氏名 百十六名
中山 福藏君 早川 愼一君
波多野林一君 野田 俊作君
西田 天香君 徳川 宗敬君
伊達源一郎君 館 哲二君
竹下 豐次君 高橋龍太郎君
高田 寛君 高瀬荘太郎君
高木 正夫君 田村 文吉君
杉山 昌作君 新谷寅三郎君
島村 軍次君 西郷吉之助君
小林 政夫君 小宮山常吉君
楠見 義男君 河井 彌八君
柏木 庫治君 加賀 操君
岡本 愛祐君 尾崎 行輝君
小野 哲君 梅原 眞隆君
飯島連次郎君 伊藤 保平君
井上なつゑ君 赤木 正雄君
結城 安次君 山川 良一君
村上 義一君 小滝 彬君
島津 忠彦君 森田 豊壽君
岡田 信次君 石原幹市郎君
玉柳 實君 中川 幸平君
大矢半次郎君 郡 祐一君
廣瀬與兵衞君 岡崎 真一君
松平 勇雄君 楠瀬 常猪君
加藤 武徳君 城 義臣君
植竹 春彦君 山本 米治君
古池 信三君 山縣 勝見君
石川 榮一君 木村 守江君
西山 龜七君 山田 佐一君
大谷 瑩潤君 一松 政二君
深水 六郎君 加納 金助君
仁田 竹一君 草葉 隆圓君
徳川 頼貞君 左藤 義詮君
大島 定吉君 黒田 英雄君
小林 英三君 中川 以良君
川村 松助君 寺尾 豊君
溝口 三郎君 堀越 儀郎君
小野 義夫君 小串 清一君
野田 卯一君 重宗 雄三君
入交 太藏君 宮田 重文君
西川甚五郎君 宮本 邦彦君
平井 太郎君 杉原 荒太君
田方 進君 松本 昇君
秋山俊一郎君 鈴木 直人君
石村 幸作君 長谷山行毅君
堀 末治君 鈴木 恭一君
愛知 揆一君 安井 謙君
平林 太一君 長島 銀藏君
平沼彌太郎君 竹中 七郎君
溝淵 春次君 團 伊能君
瀧井治三郎君 池田宇右衞門君
駒井 藤平君 北村 一男君
中山 壽彦君 白波瀬米吉君
岩沢 忠恭君 鈴木 強平君
木内 四郎君 林屋亀次郎君
大屋 晋三君 泉山 三六君
黒川 武雄君 横尾 龍君
石坂 豊一君 稻垣平太郎君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/47
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048・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これにて午後二時半まで休憩いたします。
午後一時二十四分休憩
—————・—————
午後三時一分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/48
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049・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。
この際、日程第二、塩田等災害復旧事業費補助法の一部を改正する法律案、日程第三、農林漁業資金融通特別会計法の一部を改正する法律案、日程第四、日本専売公社法の一部を改正する法律案、日程第五、日本輸出銀行法の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)以上四案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/49
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050・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長平沼彌太郎君。
〔平沼彌太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/50
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051・平沼彌太郎
○平沼彌太郎君 只今上程せられました塩田等災害復旧事業費補助法の一部を改正する法律案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
本案は、昭和二十六年に発生した災害により激甚な被害を受けた地方の塩田等の災害復旧事業につきましては、現行の塩田及び濃縮施設については事業費の十分の五、塩田防災施設については十分の六・五の補助率では、事業施行者がその負担に堪えられない状況にありますので、塩の生産を確保するため補助率の特例を設けることとし、災害復旧事業費が政令で定める額を超える場合には、その部分について補助率を、塩田及び濃縮施設については十分の八、塩田防災施設については十分の九に引上げることとしようとするものであります。
本案は、質疑の後、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に農林漁業資金融通特別会計法の一部を改正する法律案について御報告申上げます。
本案は、農林漁業資金融通特別会計の貸付金の財源に充てるため、昭和二十七年度以降におきまして、米国対日援助見返資金特別会計から資本繰入を行わず、これに代えて借入金をいたすこととなりますので、新たに米国対日援助見返資金特別会計から借入金を行い得ることを規定すると共に、資本の額を超えて借入金をすることができるように規定いたそうとするものであります。
本案は、質疑の後、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に日本専売公社法の一部を改正する法律案について御報告申上げます。
本案は、専売事業の円滑な遂行に資するため、新たに明許繰越の制度を設け、事故繰越の範囲を若干拡張し、予備費を使用してもなお事業のため直接必要な経費に不足を生ずる場合の経費使用の途を開くと共に、公社業務にかかる現金の預託機関に大蔵大臣の指定する金融機関を追加しようとするものであります。
本案は、質疑の後、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。
次に日本輸出銀行法の一部を改正する法律案について御報告申上げます。
本案は、日本輸出銀行を日本輸出入銀行に改め、我が国の外国貿易を促進するため、一般の金融機関が行う輸出入金融を補充し促進せしめるために必要なる措置を講じようというのであります。
改正の主な点について申上げますと、第一に、日本輸出入銀行は、プラント輸出促進のための輸出金融業務と併せて我が国の輸出の振興に役立つ原材料その他の物資の外国からの輸入に関し、その対価の一部の前拂いが行われる等、特定の場合について、輸入金融業務を行うことができるようにいたそうとするものであります。第二は、我が国のブラント輸出契約の実情に鑑み、その融資期間を最短期間六カ月から三カ月に短縮いたそうとするものであります。第三は、新たに債務保証業務を行うことができることといたそうとするものであります。第四は、利益金の一定割合を国庫に納付せしめることといたし、これに伴い法人税等の非課税の取扱をいたそうとすることであります。第五は日本輸出入銀行の資本金に関する規定を設けようとするほか、政府からの借入及び外国からの外貨資金の借入を認めることといたそうというのであります。
本案は、質疑の後、討論に入り、小林委員より各派共同提案にかかる修正意見が提案せられました。その修正要旨は、日本輸出入銀行法第四條に規定する同行の資本金は大蔵大臣の認可により増額できる等の規定を改め、同行の資本金を二百十億円とし、その額を明確に規定いたそうとするものであります。なお同委員から、政府出資による金融機関についても資本金に関する法律の規定を速かに統一されるよう要望意見が述べられました。
討論を終了し、採決に入り、修正案は全会一致を以て可決せられ、修正個所を除く原案についても全会一致を以て可決すべきものと決定いたし、本案を修正議決いたした次第であります。
右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/51
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052・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより四案の採決をいたします。
先ず塩田等災害復旧事業費補助法の一部を改正する法律案、農林漁業資金融通特別会計法の一部を改正する法律案、日本専売公社法の一部を改正する法律案、以上三案全部を問題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/52
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053・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて三案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/53
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054・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 次に日本輸出銀行法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/54
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055・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/55
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056・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 日程第六、私立学校振興会法案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。文部委員長梅原眞隆君。
〔梅原眞隆君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/56
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057・梅原眞隆
○梅原眞隆君 只今上程されました私立学校振興会法案に関する文部委員会の審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
本法案の提案理由についての政府の説明によりますと、私立学校法第五十九條による私立学校助成では不十分であり且つ遺憾の点が少くないので、私立学校振興会と称する特殊法人を設立し、私立学校の経営並びに教員の福利増進のために資金の貸付又は助成を行う恒久的制度を樹立しようとするものであります。その内容とする主な点を申上げますと、第一、その目的とするところは如上の趣旨に基くものでありまして、経営費の貸付、教職員の研修、福利厚生等の事業に対する貸付又は助成であること。第二、約二十一億四千万円を以て資本金とし、うち三億九千万円は現金、十七億五千万円はすでに国から直接又は間接に貸付けた貸付金の債権であること。そうして現金としては本年度において一億三千万円、来年度即ち二十七年度において二億六千万円を政府が出資すること。第三、役員に関しては、いずれも文部大臣の任命によるものであり、且ついずれも本法案の運営上、必要な広い知識と経験を有する適材を求めるということ。評議員についても同様であること。第四、政府としては資本金の全額出資をいたすのであり、又その運営如何が私立学校の振興に重大な関係がありますので、必要にして且つ十分な文部大臣の監督権を認めてあることなどであります。(「そこが問題だ」と呼ぶ者あり)
本委員会におきましては、極めて愼重且つ詳細に本法案を検討審議いたしたのでありますが、その間、委員各位の質疑に対する政府の見解等の答弁のうち、その主なるものを挙げますと、おおむね次のごとき諸点であります。第一に、私立学校の振興は、單に経営の合理化を図ることだけでなく、教職員の待遇を改善すること、共済組合の組織に対して能う限りの助成をなすことであつて、政府としてはこの点については能う限り助成又は貸付等につき努力し、なお立法化等を考究し、一般の期待に十分副うつもりであるということ。第二に、資本金は少額ではあるが、その運用よろしきを得るのみならず、政府の出資金増額については今後十分の努力を傾倒する考えであるということ。第三に、役員の選任に当つては、政治的色彩の強い人はこれを避け、私立学校の振興に熱意と理解を持つている人物を求めるということ。評議員の選任については、その半数程度は必ず私立学校の関係者から求めるということにし、なお、その中には当然校長及び教職員も含まれているということ。第四に、運営に当つては少数のボス的人物に左右されることなく、又一部有力な学校等にのみ貸付けられるということのないよう、公正な取扱をするよう指導監督をするということ。
かくて質疑を終り、討論に当りましては、高田、相馬、矢嶋、堀越、加納の各委員より希望條件を付して賛成の趣旨の開陳がありました。希望條件の概要は次のごときものであります。第一、私立学校振興会は、私立学校の経営の援助のほかに、教職員の福利厚生施設に十分な助成をなすべきことは勿論、共済制度の確立についても政府は今後格段の努力を拂い、その立法化及び適正な助成措置を講ずべきこと。第二、運営の適正を期するため、役員については政治的色彩なき公正な人物を選任し、評議員については、私立学校振興と密接不離の関係にある理事、校長及び教職員のうちから必ず半数程度選任し、これについては民主的団体の代表者をも十分考慮すべきこと。第三、運営に当つては、政争の具に供さるることのないよう、政府は監督のよろしきを得るよう十分配意すること。第四、出資金の増額については政府は最善の方途を講ずべきこと。
討論を終り、採決の結果、本法案は、先に述べました希望條件を政府は、十分尊重するとの言明がしばしばなされましたのに鑑み、本法案の成立が私立学校の振興に寄與すること大なるものがありとして、全会合致を以て可決いたしました。
委員会の審議の詳細につきましては、速記録を御覧頂きたいと存じます。以上審議の経過並びに結果を御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/57
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058・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 本案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。相馬助治君。
〔相馬助治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/58
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059・相馬助治
○相馬助治君 只全議題と相成りました私立学校振興会法案につきまして私は社会党第二控室を代表いたしまして賛成の意思を開陳せんとするものであります。
私立学校が、数的に見ましても、質的に見ましても、我が国学校教育上に極めて重要な地位を占めて参りまして、従来財政的には極めて困難な立場にあつたにもかかわりませず、私学経営者の努力、関係職員の犠牲的奉仕、関係父兄の積極的協力によりまして、それぞれ特有の伝統と学風とを以ちまして、我が国学校教育の進展に貢献して参りましたことは、改めてここに申上げるまでもないところであります。従つて私学教育の振興を図りますことは、我が国の学校教育全般の振興を促すものでありまして、延いて文化日本建設の基盤を培うものであることは、あえて今日異論のないところであろうと思うのであります。今般政府が本法案を提案いたしましたことは、時期的にやや遅きに失するとはいえ、本法案の持つ積極的意味に鑑みまして、私は政府に対して敬意を表するにやぶさかではございません。(「金のために自由を売らなくてはならん」と呼ぶ者あり)由来、文部省に対する世評を見まするというと、文部省という省は財政的には無力であり、予算獲得の能力少く、みずからの権威を守ることに甚だ怯懦であり、みずからの要求を主張する勇気を失つていたと批評されて参つたのでありますが、この際この法案を積極的に提案したことにつきましては、私は率直に文部当局に対しましても深く敬意を表するものでありますると共に、願わくは従来の文部省に與えられましたる世評を率直に教訓として学ばれまして、今後本法案の全き運営を図るために、私学振興のために、財政方面におきましては勿論のこと、役員の人的構成の面におきましても十分なる注意を拂われんことを先ず要望して止まないものでございます。
由来、国家財政の窮迫に際しましては、限られた予算の範囲内において国家全般に亘るもろもろの施策を実施せんといたしますならば、いずれかの面においてその適正を欠くに至ることは、けだし当然の帰結であると言わなければなりません。而もその当然の帰結たるや、往々にいたしまして、従来政治権力と縁遠いところの教育の面にしわ寄せとなつて現われるのを我が国においては通例として参つたのであります。なかんずく私立学校に対しましては最もこのことが苛酷であつたということは、今日何人も否定し得ない事実であろうかと存ずるのであります。教育が国家百年の大計の根抵をなすものであることは万人ひとしくこれを肯定するところであるにもかかわりませず、ややもいたしますれば、これをないがしろにして顧みないというところの極めて大きな矛盾と錯誤とを、政府や、或いは政治家や、或いは又一般の有識者と言われる人々も、知らず識らずの間に今日まで犯して参つたゆえんのものは、恐らくは教育の本質そのものがむしろ形而上的な目的に立ちまするがために、他の生産部門に関係ある諸施策のごとく、その成果を比較的短期間に、而も目の前にありありと如実に生み出すことのできないところにあつたかと思うのであります。過去の日本ならばいざ知らず、今日、政府は勿論のこと、あらゆる機関を通じまして文化日本の建設が呼号されておりまするこの関係において、政府は積極的に文教政策を確立し、これのためには惜しみなく国費を支出すべきであることは理の当然であろうと思うのでありまして、本法案の成立によりまして、今後国が私学振興のために支出すべき国費というものは、飽くまで政府みずからの当然の義務として国家財政の許す最大限において計上されるべき性質のものでありまして、かりそめにも富める者が貧しき者に物を投げ與えるといつたような恩恵的態度を以てこれをしてはならないことを、私は今日皆さんと共に確認したいと思うのであります。この根本方針、この根本趣旨というものが確守されない限りにおきましては、たとえ本法案がここに成立を見ようとも、徒らに明文倒れとなり、死せる法案といたしまして、私学関係者は勿論、一般有職者の失望と憤激を将来買うであろうことを、この際、声を大にして政府特に文部省に対して申上げざるを得ないのでございます。只今梅原委員長の報告においてすでに明らかでありまするように、本法案の審議に当つて特に委員の質問は、又論議は、この財政の点に集中されたのであります。我々がこの際、本法案をつぶさに検討しまするときに、財政及びその他の二、三点につきまして、いささか将来懸念なきを得ないのであります。
先ず第一に、本法案の「かなめ」とも言うべき資本金及びその運用の面について規定しておりまする第五條についてでありまするが、この第五條を今日私が批評いたしまするに、美称を以てするならば、彈力性ある規定であると言うことができましよう。罵評を以てこれをするならば、誠に明確を欠き、あいまいなる規定であると断ずることができるかと思うのであります。即ち振興会の資本金は二十一億四千万円としてありまするが、うち十七億五千万円はすでに国から貸付済みの債権であります。一片の証文であります。この債権に対してかかる言辞を以てするは、やや早計のそしりを免れ得ないとは思うのでありまするが、出発早々の振興会それ自身の立場から見まするならば、この債権はまさに一種の不渡手形であると断ずることすらも許されるのではないかと思うのであります。而ういたしまして、現金は僅かに三億九千万、而も二億六千万円は明年度即ち昭和二十八年度予算に計上の予定と相成つておりまするが故に、本年度振興会がめでたく法案の成立によつて出発いたしますといたしましても、驚くなかれ自由に使える現金というものは僅かに一億三千万円にとどまるのであります。この点に関しまして、委員会の討論におきまして、自由党の加納金助委員は、二階より目薬と批評されました。緑風会の堀越儀郎委員は、あることはないことに勝ると申されたのでありまするが、これは皆様單なる皮肉ではありません。この二つの批評というものが本法案第五條の持つ欠点を残念ながらずばりと言い得て妙であると思うのでありまして、誠にこの点に関しまして、私はここで賛成討論を行いつつも、一点の疑念なきを得ないことを諸君と共に悲しむものでございます。私学振興という面におきまして、今日まで経営者は例外なく金融に苦しみ、関係職員はその給與の面におきまして公立学校に比して甚だしく劣悪でございます。従いまして、この程度の現金を以てしては、如何なる有能の人を役員の席に着けるとも、関係学校職員の研修であるとか或いは進んで福利厚生等に手の廻りかねることは、すでに火を見るより明らかであり、本法の成立に対して鶴首して待ちつつあるところの私学関係者の期待を裏切ること極めて重大なるものあることを、私はひそかに今日懸念するものであります。次の補正予算におきまして、少くとも十億程度の資本金を政府は考うべきであるとの我々の主張に対して文部当局は努力する旨の答弁をいたしましたが、この際、文部大臣に対しまして、この答弁に対し忠実なるよう重ねて私は第一点として要望するものであります。
第二は役員の構成についてでありまするが、振興会が所期の目的を十二分に達するためには、先ずその役員に民主的にして而も有能なる人を得るということが大事であろうと思うのでありまして、最近各種行政委員会に対しまして無用論が大分出ておりまするが、これは法制上の欠陥に基因することもありまするけれども、実のところは、不用意にも、この種の委員会ができるときに、古手官僚や民間人でも事勿れ主義の隠居級の人間を持つて来てこれに充てるというところに大きな原因があつたということを、今日、政府特に文部省は教訓的に学びとりまして、振興会の重要性に鑑み、その人選に対しましては、飽くまで誤まることなきよう、私は文部大臣に対して強く要請するものであります。木振興会の出資が全額政府によつてなされまする建前から、政府側から幾ばくかの役員が参與することは当然であります。併しその政府側を代表する者はむしろ予算の獲得に努力することが本務でありまして、むやみやたらに些細な点にまで容喙し、或いは威嚇的態度を以て私学の自主性を損うことなきよう、私は要望いたします。第二十條によりまする評議員会の構成につきましては、先ほどの梅原委員長の報告に盡きておるのでありまするが、この点も特に重大なる関心をお願いして止まないものであります。
諸君、本法案の成立によりまして私立学校がその経営の円滑なる発展を期され、校舎、校具等の設備をいたし、教職員の副利厚生の増進を目途として共済事業を拡張いたし、いよいよますますそれぞれの私学としての個性を発揮いたしまして、国家有為の人材を輩出し、以て新日本建設に寄與されんことを、心から私は念願いたしますると共に、政府みずから文化国家建設の観点から、且つ又敗戦国民当然の責務といたしまして、義務教育費等は全額国費を以て支弁するという線を推し進めますと共に、私学振興、社会教育振興等に関しましても、積極的に恒久的財政措置を行うべきことを私は要求いたします。この観点において、私は本法案の上程を心から再び、財政方面において政府みずから積極的態度を堅持することと、文部当局は教育財源獲得に関し今後より大きなる努力と且つ比類なき勇気を振起すべきことを強く要望いたしまして、ここに私は賛成の討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/59
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060・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 矢嶋三義君。
〔矢嶋三義君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/60
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061・矢嶋三義
○矢嶋三義君 私は第一クラブを代表いたしまして、只今上程になりました私立学校振興会法案に賛成の意を表明するものであります。
民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようと、その決意を我々は日本国憲法に明示したのでありますが、この理想実現の基盤が教育にあることは、教育基本法の前文に明記するところでありまして申上げるまでもありません。教育の振興と民主化とは、教育が国家的事業であるその公共性からして、国立、公立と私立とを問わず、同様に車の両輪のごとく行われなければなりません。終戦後、戦争による被害とインフレの悪條件下に新学制の実施は極めて苦難の連続でありましたが、特に私立学校においてはそれが甚だしかつたことは諸君御承知の通りであります。私立学校の自主性を倉重しつつその公共性を高め、私立学校の健全な発達を図る目的を以て昭和二十四年法律第二百七十号を以て私立学校法が制定され、その自主的経営の強化を図ると共に、私立学校の公共的性格に鑑み、国家、地方公共団体の保護助成の途を開いたのでありまするが、十分の成果が挙らず、我が国私学教育は局機のまま今日まで放置されたことは、文化国家建設を念願する我々にとつては誠に遺憾極まりないことであつたのであります。只今本院において審議中の八千五百余億円に及ぶ昭和二十七年度一般会計予箕案は再軍備の性格を露呈したものでありまして文化国家を指向する国家予算の性格がらは、ほど遠いものであります。その中に二億六千万円という、誠に少額とは申しながら、私立学校振興会に対する出資に必要な経費として計上されていることは、国家の予算案にささやかなりとも文化的性格を與えるものとして、せめてもの慰めであります。本法案は債権出資十七億五千万円と合せ資本金二十一億四千万円を以て危機にある私学教育振興の突破口の役割を果さんとするものであります。我が国の大学程度の学校において、その学校総数の実に約六八%と総学生数の約六六%は私立関係であり、更に高等学校においては、総学校数の約二六%、生徒総数の約一六%、幼稚園に至りましては、学校数の実に約六一%、園児数の約五六%は私立関係で占められていることを思うときに、私学教育の振興とその使命の重大さが十分窺えるのであります。私立学校の全收入中、本質的性質を有する授業料については、大学程度の学校においては、昭和九十一年度において約五三%であつたものが現在約四〇%程度に低下し、高等学校以下の学校においては約八〇%から約六二%にその比率が著しく低下し、一方、不確定的な寄贈金收入の比率が、大学程度の学校については約五%から約八%へ、高等学校以下については約五%から実に一四%と、その寄贈金收入の比率が増大しているということは、私立学校の経営状況が、不安定、不健全な状態にあることを雄弁に物語るものであります。その現われとしまして、受験料約千五百円、入学料約五千円、授業料が年額約一万二千円から二万円、設備寄贈金約五千円から多きは数万円の大金を要する現代の私立大学は、一部有産階級子弟の独占物と化し、教育の機会均等の原則に反しつつあることは、見逃すことのできない重大問題であります。更に学生の学費は、国立、公立学校に比し約三割高でありまして、授業料のごときは、国立大学のそれは、このたび六割六分の大幅引上げをして年額六千円となるに対し、私立大学のそれは実に二倍から三倍の一万数千円の高額という実情であります。これに反し教職員の給與は、国立、公立学校教職員のそれに比べて大学においては約二割五分、高等学校においては約三割五分それぞれ低額にあつて、その給與は健康保険の被保険者の平均報酬月額より低位にあるため、私立学校教職員は健康保険に加入を認められないというほどの低額の実情であります。
かかる私立学校教育の振興を図る本法の立法趣旨を具現するために、その運営に当つては幾多の注意すべき問題があり、以下若干指摘して政府の適正なる法の運用を強く要望するものであります。
その第一は、資金の貸付助成という特殊業務を行う振興会が私学の教育経営に過分の干渉をもたらし、私立学校の特性とその自主性を損なつてはならないということであります。
第二は、劣悪なる勤労條件下に喘ぐ私立学校教職員の福祉厚生対策については、教育基本法第六條の二項に謳われる「法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」という精神に基いて、国立、公立の教職員と均衡を保てるよう積極的方途が講ぜられなくてはなりません。本法案は学校経営に対する資金の貸付並びに助成と並行的に教職員の共済事業を実施することを期しているということは、政府委員の再三力説したところであります。国立、公立学校の教職員が共済制度の実施によつてその生活を保障され、又一般の勤労者が健康保険によつて保障されているにもかかわらず、私立学校教職員の大部分は共済制度もなく、健康保険にも加入できず、福利厚生機関の恩典には殆んど浴せない悲惨なる状況にあるのであります。教職員の生活を安定し、その安定感の下に私学教育の振興を図るためには、政府委員の確約した、公立学校共済組合と同程度の共済事業を一日も早く実現しなくてはなりません。共済事業に関する昭和二十七年度予算は、教職員の加入率を三五%に押え、約八千八百万円となつておりまするが、公立に準じて実施するならば、少くとも二億円近くの予算がなければその成果は挙げることはできないと思います。
第三点としましては、本法案の民主的運営を期し、私学の特性を活かし、その自主性を助長する立場から、振興会の役員並びに評議員等には私学関係者を過半数任命することが極めて肝要であることは、相馬委員も指摘したところであります。この点につきましては委員会における審議の過程において、社会党第四控室から修正案の用意がある旨発言されたのでありまするが、これに対しまして政府委員は、責任を以てその趣旨に副うという確約が與えられましたが故に、更には一日も早く本法案を通過させる必要がありましたので、社会党第四控室におきましてはその修正案提出を撤回した経過をも政府当局は十分考慮しておくべきだと考えます。更にはこの振興会の役員並びに評議員が文部官僚の姥捨山となることは嚴に謹しまなければなりません。特に共済事業を行う財団法人私学振興会の役員については、私立学校法の委員任命の規定に準じて民主的教育団体の推薦する一般教職員の代表者を半数構成員として入ることが強く要望されるところであります。財団法人私学振興会の行う共済事業の事務費は全額国庫負担であり、又特別法人私学振興会から資金の貸付又は助成をなすのでありますから、政府はその役員構成については、審議の過程において政府委員が善処を約した通り、その実行を強く要喫する次第であります。
最後に、私立学校教職員の待遇改善、戰災復旧並びに学制改革と教育方針の改正に伴つてその施設設備改善に要した借入金の返済、更には施設設備に要する長期融資等を解決し、学校経営の基礎の安定化を図つて、私立学校教育の振興を期することを思えば、急速に資本金の増額に努めなくてはならないと考える次第であります。当初文部省は十三億円の現金出資を要求しまいたが、大蔵当局の容れるところとならず、明年度僅かに二億六千万円の現金出資に終つたことと、貸付助成の対象として約三千五百校を予定していると政府委員が説明していること等を併せ考えるときに、資本金の増額の緊要性を痛感するものであります。
以上、政府に対する要望を申述べ、私立学校教育の逞ましき進展を心から所念して私の賛成討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/61
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062・三木治朗
○副議長(三木治朗君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/62
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063・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/63
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064・三木治朗
○副議長(三木治朗君) この際、日程第七、放送法第三十七條第二項の規定に基き、国会の承認を求めるの件、(衆議院送付)日程第八、日本放送協会昭和二十五年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書、以上両件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/64
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065・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。電気通信委員長鈴木恭一君。
〔鈴木恭一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/65
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066・鈴木恭一
○鈴木恭一君 只今議題となりました放送法第三十七條第二項の規定に基き、国会の承認を求めるの件について、電気通信委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
本件は、竹本放送協会の昭和二十七年度の収支予算、事業計画及び資金計画について、国会の承認を求めんとするものであります今その内容を申上げますと、先ず収支予算におきましては、総額は收支おのおの七十三億九千万円でありまして、前年度に比べそれぞれ十億一千万円の増加と相成つております。收入は、資本収入及び事業収入から成り立ち、資本收入十二億円の五〇%は放送債券収入であります。又事業收入は六十一億九千万円でありまして、その九五%は受信料収入であります。この受信料は月額五十円で、二十六年度と同額据置となつているのであります。次に支出は、資本支出十四億円、事業支出五十九億四千万円及び予備金五千万円から成り立つておりまして、資本支出の七一%は建設費、即ち放送施設の拡充整備の費用であります。又事業支出は前年度に比べ九億円の増となつておりますが、これには前年度には計上されていなかつた連合軍関係及び国際放送に要する経費並びに職員の給與ベース一八%引上げに要する経費を含んでいるのであります。次に事業計画におきましては、その主眼を、番組の充実、施設の拡充整備に置き、又資金計画におきましては、受信料の収納状況、建設工事の進捗状況等を睨み合せ、資金の出入に関する計画をいたしているのであります。
電気通信委員会は本案につきまして愼重審議をいたしましたが、その審議の過程において明らかになりました大要を申上げますと、先ず昭和二十七年度の日本放送協会の運営の根本方針は、講和後における日本の立場と国際的諸情勢を正しく把握して、公共放送としての使命達成を図るため、放送番組については、国際知識の普及徹底並びに奇少年教育放送、報道及び健全明朗な娯楽放送の充実に重点を置き、又建設の面におきましては、中継放送局の新設及び既設局の整備等を行い、二十七年度の工事完了によつて、第一放送は全国の九八%、第二放送は九二%の地域において聽くことができるようになること、受信契約の数は、二十七年度初頭九百五十万、年度内の増加四十五万、年度末現在九百九十五万と見込んでおること、北海道その他において主として僻陬の地に施設されておりまするラジオの共同聴取施設の聽取料金の問題につきましては、料金としては減額しないが、何らかの方法によつて協会から協力をするつもりであること、本年二月十日から再開している国際放送につきましては、受信している各地から反響があるが、極めて好感を持たれており、特に在外同胞からは大歓迎を受けていること等であります。その他、各委員より熱心詳細な質疑があり、政府当局のほか、参考人として日本放送協会会長及び理事より懇切綿密な答弁がありましたが、詳細は速記録によつて御承知を願いたいと存じます。
かくいたしまして三月二十日質疑を終え、討論に入りましたところ、日本社会党の山田委員より、日本放送協会は、民間放送の開始、講和條約の発効、テレビジヨン放送実現等によつて、二十七年度は従来と異なつた條件の下に置かれておることを指摘せられ、番組の充実、放送施設の拡充整備による聴取不能地域の解消及びテレビジヨンの実験研究にいま一段の努力を希望せられ、自由党の大島委員より、本案は現在の受信料その他から見て妥当なものであるが、聴取不能区域の解消を強調せられ、緑風会の新谷委員より、共同聴取については協会より適当な援助方法を講ずること、技術研究費の増額及び研究の成果の公開利用について一段の工夫努力を希望せられ、民主クラブの稻垣委員より、技術研究について一段の考慮を希望せられ、いずれも本案の承認に賛成の意見を述べられたのであります。かくいたしまして討論を終え、採決に入りましたところ、全会一致を以て原案通り承認すべきものと議決いたした次第であります。
次に議題となりました日本放送協会昭和二十五年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書について、審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
本件は放送法第四十條第三項によつて会計検査院の検査を経て内閣より国会に提出されたものであります。日本放送協会は、一昨昭和二十五年六月一日、社団法人日本放送協会から資産及び負債を承継して新たな性格を以ちまして発足したのでありますが、昭和二十五年度末の資産総額は三十四億五千百八十四万円、負債総額は十二億一千百二十二万円でありまして、旧協会から承継当時に比較いたしますと、資産において約二十二割二分、負債において約三割四分の増加となつておるのであります。又同協会の二十五年六月一日から二十六年三月末日までの期間の損益は、事業収入総額三十二億三千二十九万円に対しまして、事業支出総額三十一億八千九百二十四万円であり、差引剰余金四千一百五万円となつておりますが、これらについての詳細は本件説明書について御覧を願いたいと存じます。
次に本件に関する当委員会の結論を申上げますと、先ず会計検査院が検査報告中に指摘しております事項につきましては、いずれもその検査報告と見解を同じくいたすものでありますが、右のうち、特に社団法人当時、電気興業株式会社に投資した三十二万二千円及び同じく株式会社日本放送出版協会に対する十九万五千円につきましては、放送法の趣旨により速かなる整理を要望するというのであります。電気通信委員会は内閣提出の報告につき愼重に審議いたしました結果、全会一致を以ちまして以上述べました通り議決いたした次第であります。
右御報告申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/66
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067・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
先ず放送法第三十七條第二項の規定に基き、国会の承認を求めるの件を問題に供します。委員長報告の通り本件に承認を與えることに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/67
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068・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 過半数と認めます。よつて本件は承認を與えることに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/68
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069・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 次に、日本放送協会昭和二十五年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書全部を問題に供します。委員長報告の通り決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/69
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070・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本件は全会一致を以て委員長報告の通り決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/70
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071・三木治朗
○副議長(三木治朗君) この際、日程第九より第三十までの請願及び日程第三十一より第五十五までの陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/71
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072・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。農林委員会理事西山龜七君。
〔西山龜七君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/72
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073・西山龜七
○西山龜七君 農林委員会付託請願及び陳情に関する審査の報告を申上げます。
今日までに付託せられました請願及び陳情のうち、文書表第一回乃至第五回報告、即ち請願については第一号から第六百七号まで、陳情については第一号から第二百九十三号までの間において農林委員会に付託せられました請願三十件、陳情三十四件につきまして、このほど審査を行いましたので、ここに議題に従つて農林委員会におけるこれら審査の経過及び結果について、その大要を御報告申上げます。
右の請願及び陳情の趣旨は甚だ多様でありまするが、これを大別いたしますると、積雪寒冷單作地帶或いは傾斜地帶等特殊地帶の農業振興に関するもの三件、市町村農業委員会経費国庫補助増額に関するもの一件、農業災害補償制度の拡充に関するもの一件、藺、薄荷及び林檎等の特殊農産物の生産改良及び災害救済に関するもの三件、警察予備隊の農地買収反対に関するもの一件、農地及び農業施設の改良、或いは災害復旧の促進拡大に関するもの十五件、農業改良に関する研究及び普及事業の拡大強化に関するもの五件、無畜農家の解消及び畜産の振興に関するもの五件、公営競馬の継続或いは民営移管反対に関するもの四件、畜犬競技法に関するもの三件、繭糸価格の安定及び蚕業技術指導強化その他蚕糸業に関するもの五件、主食統制の是否或いは改廃並びにでん粉工業の救済等、食糧政策に関するもの九件、国有林野の整備及び造林の促進等、林野政策に関するもの九件であります。
委員会におきましては、これらの諸件につきまして、政府当局の意見をも徴し、愼重審議を遂げ、主食統制、競馬制度及び畜犬競技等の諸件に関しましては、これが性質上容易に結論を得ることが困難なため、問題を後日に残すこととなし、又昨年産米の供出割当の是正及び積雪寒冷單作地帯の指定等すでに問題の処理を終つたものを除いて只今議題となりました請願二十三件及び陳情二十五件は、いずれも農林業の振興、農林生産の増強及び農家経済の安定のため重要な問題と考え、全会一致を以て議院の会議に付し、採択の上、内閣に送付し、政府を促して速かにこれが実現を期すべきものと決定いたしました次第であります。
右御報告を申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/73
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074・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情は委員長報告の通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/74
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075・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情は全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。
本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時三分散会
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○本日の会議に付した事件
一、議員の請暇
一、故議員平岡市三君に対する追悼の辞
一、故議員平岡市三君に対し弔辞贈呈の件
一、教育環境整備に関する緊急質問
一、日程第一 日本国とアメリカ合衆国との間に締結された行政協定の国会承認に関する決議案
一、日程第二 塩田等災害復旧事業費補助法の一部を改正する法律案
一、日程第三 農林漁業資金融通特別会計法の一部を改正する法律案
一、日程第四 日本專売公社法の一部を改正する法律案
一、日程第五 日本輸出銀行法の一部を改正する法律案
一、日程第六 私立学校振興会法案
一、日程第七 放送法第三十七條第二項の規定に基き、国会の承認を求めるの件
一、日程第八 日本放送協会昭和二十五年度財産目録、貸借対照表及び損益計算書並びにこれに関する説明書
一、日程第九乃至第三十の請願
一、日程第三十一乃至第五十五の陳情発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X02419520325/75
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