1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年五月二十六日(月曜日)
午前十時四十五分開議
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議事日程 第四十二号
昭和二十七年五月二十六日
午前十時開議
第一 労働金庫法案(中村正雄君外十名発議)(委員長報告)
第二 工場抵当法及び鉱業抵当法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第三 最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第六 国民貯蓄債券法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 設備輸出為替損失補償法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第八 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の出張所及び監視署の設置に関し承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
第九 昭和二十五年度国有財産増減及び現在額総計算書(委員長報告)
第一〇 昭和二十五年度国有財産無償貸付状況総計算書(委員長報告)
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001・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/1
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002・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
〔松浦清一君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/2
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003・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 松浦清一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/3
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004・松浦清一
○松浦清一君 私はこの際、漁業対策に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/4
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005・小笠原二三男
○小笠原二三男君 私は松浦君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/5
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006・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 松浦君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/6
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007・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。松浦清一君。
〔松浦清一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/7
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008・松浦清一
○松浦清一君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、アメリカにおける日本の輸入冷凍まぐろに関する関税の問題その他緊急を要する漁業條約の問題等につきまして、政府の所信を質したいと存じます。最近の新聞紙の伝えるところによりますと、今月九日の米国上院財政委員会は、生及び冷凍まぐろに対する輸入関税創設の法案を可決したとのことでございます。尤もこの法案はなお上院本会議において審議されることでもあり、且つこの上院財政委員会の態度に対しましてアチソン国務長官は、国内における少数業者の利益を図るために経済的国家主義政策をとることは、必ずや自由主義国家群の結束を乱し、モスクワに乘ぜられる隙を與えることになるであろうと、強く反対の意思を表明しておりまするので、これが最後的な決定ではないと思いまするが、今日までの米議会の下院をすでに通過いたしておりまする経緯、上院財政委員会に対する業界よりの圧力等から推測いたしまして、甚だ楽観を許さざる状態にあることは事実であります。この法案は昨年の十月に下院を通過いたしまして上院に送付せられまして、爾来財政委員会で審議中のものでございましたが、法案の内容は、生及冷凍まぐろ一ポンドに対し三セント、即ちトン当り六十ドルの税金を新たに課そうとするものであります。米国はすでに昨年の一月、油漬まぐろに対する輸入税を、従来の二二・五%から四五%に大幅の改訂増税を実施いたしまして、そのために日本の油漬まぐろの対米輸出は昨年度においては全滅の惨状となり、止むなく、外貨獲得上多大の不利を甘受しながら、比較的加工度が低くて税率の低い塩漬及び税金のかからない冷凍物に切換えて、辛うじて難局を切抜けて来た実情であります。而もこの間、あらゆる統制を撤廃するという自由主義経済を信條とずる吉田内閣の下において、この漁業に関してのみは、輸出貿易管理令に基きまして、まぐろ鑵詰類は年間百万箱、冷凍まぐろについては年間一万二千トンに制限を受けておるのであります。又国内消費量も御承知の通りすでに限度に達しておりまするので、業界においては、あたら旺盛な生産意欲を抑制をいたしまして、政府の外交的な措置によつて明るい途の開かれることをひたすらに待望しておつたのでございます。併しこの種の外交は政府対政府の責任に帰する問題でありまして、如何に外交通で、アメリカ政府に信頼の厚い吉田総理でも、日米安全保障條約に基く行政協定でアメリカに対する信用を一段と高められた岡崎外務大臣でも、アメリカ議会に対してまでなかなかその手の及ばないことは、まるつきり理解ができないことはございません。併しながら今までの我々の常識として、この種の関税障壁を設ける場合は、輸入商品が極度にダンピングされるとか、或いは又国内商品に対して外国商品が不当な競争を以て挑戰して来て、国内産業が極度の圧迫を受けるときには、適度の関税障壁を設けまして、国内商品と外国商品との価格の調整を図つて行くということはあり得ないことではございません。併しながら今度の場合は、日本側においてあらゆる自粛をして、アメリカ上院の財政委員会が日本の立場を理解した結論を出すことを期待しておつたのでございます。それにもかかわらず、このような結果を見たということは、一体どこに原因があるのでございましよう。アメリカ議会が一部の業界の圧力に屈して、日本経済の自立は、即ち米英を中心とする自由主義国家群の総体的な経済力を強固にするという、連帯的な責任と理想を捨てた結果であると断定してよいのか、それとも日本政府自体の外交的な手腕の拙劣な結果に基くものであるのか、この点、岡崎外務大臣の的確な判断に基いて懇切にお教えを願いたいのであります。又この関税がアメリカ上院本会議を通過して正式に制定されることになると、対米輸出一万二千トンのまぐろは引合いがとれなくなりまして、曾つて前例のない、自由漁業海域におけるまぐろ漁業も、自然的な制限を余儀なくされる虞れがあります。我が国における戰前戰後の漁獲総量の比は、戰後、ソ連領、北千島、北太平洋、台湾、朝鮮、南洋群島等の海域において、三十八万四千三百二十六トンの漁獲量が失われております。講和條約の発効に伴い、日米加漁業條約も発効して、僅かに「さけ」、「ます」漁業の三船団が先般北洋に向つて出て行つた。少しは漁獲量も殖えて、国内消費も楽になり、輸出水産物も殖えて来て、日本の水産界に明るさを増して来た途端に、このまぐろの関税障壁は、事実上の操業制限を食つたようなものであります。マツカーサー・ラインがとれても、北洋ソ連関係や東支那海の漁業は、今までと少しも変らない暗雲に閉ざされております。又沿岸の魚族はすでに枯渇して、昭和三十一年までには一万八千隻の小型底曳網漁船を整理しなければならんという実情であります。魚が單なる嗜好品ではなくて重要な食糧であるということがおわかりになれば、農林大臣は日本の漁業の将来をどのような方向に持つて行こうとしておられるのか。具体的な現実問題としては、アメリカのまぐろに対する関税問題に対しどのような途を開いて行かれるのか。御所信のほどを伺いたいと思います。以上お伺いいたしました点から考えてみて、政府は速かに代表なり使節団なりをアメリカ議会に派遣して、十分の理解を求める必要があると思いますが、外務大臣や農林大臣は、そんなことをしなくても上院の本会議では大丈夫だと思つておられるのか、又はこの法律には大統領が署名しないとでも考えておられるのか、又他の有効な方法を考えておられるのか、或いは又もう匙を投げておられるのか、ここは非常に重要なところでありますから、メモを抜きにして、お考え通りを率直にお答えを願いたいと思います。更にもう一点は、以上述べましたように、沿岸における漁獲量がすでに限度に達しているとすれば、これからの日本漁業は遠洋漁業を目指して行くよりほかに途はございません。従つて、中共、ソ連は暫らく別として、條約可能と考えられるインドネシア、インド、ノールウエー、オーストラリア、フイリツピン等に対して、今日まで政府のとつて来られた態度、殊に韓国に対しては、李承晩ラインの宣言がありまして以来、本年二月頃から交渉が進められているとのことでありますが、その内容と現在までの経過等に対して、外務大臣の御説明を願いたいと思います。又最近濠洲連邦議会におきましては、一九五二年真珠貝漁業法を制定して、公海における操業の自由に対して強い制限主義をとつております。これは丁度韓国における曾つての李承晩ラインと類似の内容を持つているようであります。濠州近海、アラフラ海における日本人による真珠貝の採取の歴史は古く、昭和十一年度における各国の生産高五千六百二十二トンに対し、我が国の生産高は三千八百四十トンに達し、今日の通り相場にいたしますると、実にその額十九億円に達しているのであります。日本の真珠貝採取業者は、すでに講和後における操業の準備態勢を整え、アメリカのバイヤーとも、生産高、取引可能の限度等についても大体の相談がまとまりまして、日濠間の條約が成立するのを待機いたしております。この真珠貝の採取期は六月から九月までを最盛期とされておるのでありますが、政府はこのような事情については少しの考慮も拂つてはおられないのでありますか。本年は北洋ブリストル湾のかに五億円を逃がし、又してもアラフラ海の真珠貝五億円をみすみす取逃がそうとしているのであります。政府は速かに濠州との間に漁業條約を締結して、ブリストル湾の「かに」の二の舞を踏まないよう努力してもらいたいのでありますが、このことに対し、政府はどのような手を打つておられるのでありますか。又おられないのか。今後どのように善処されるおつもりでありますか。岡崎外務大臣並びに所管農林大臣の率直な御答弁をお願いいたします。なお本日は農林大臣御欠席でありますから、農林大臣の御答弁は後日、詳細にお願いをいたしまして、私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/8
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009・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) お答えをいたします。先ずアメリカのまぐろ等に関する法案でありまするが、これは先に下院を通過しまして、更に上院の財政委員会において可決されておることはお話の通りでありまして、ただ、上院に上程される日程は未定であります。で、政府は本件の重要性に鑑みまして、米国政府に対し、又は米国の官民に対しまして、いろいろの方法を以て、従来日本政府の、或いは日本の国としての立場を正確に認識し且つ理解せしむるように、繰返して各方面に努力を続けて来たのであります。その結果かどうかはわかりませんが、今お話のように、アチソン国務長官は十四日の記者会見で、本法案に反対であるということを述べておられるのでありまして、米国政府としても、本件が日米双方にとつて重要な問題であるということは十分理解し、且つこれに関心を持つておると思われるのであります。併しながら、アメリカの国会の立場はおのずから又異なるものがありますので、政府としては今後とも米国官民が本件について十分理解を深めるように善処いたすつもりで、引続き努力をいたしておるのであります。ただ、只今御意見がありましたような方法も考慮はされまするが、外国政府が米国の上院の審議を牽制するのであるというような印象を與えることは、却つて逆効果を生ずる場合もありますので、この点については十分考慮を要するものと考えております。又、日韓の漁業協定につきましての御質問でありまするが、韓国との間には先般日韓会談を行いまして、漁業協定等を双方から提案いたしております。質疑等も詳細に行いまして、双方の主張はほぼ明確になつたのでありまするが、日韓会談が不幸にして中断されたために、漁業協定も妥結に至らなかつた次第であります。韓国との漁業協定締結に関する政府の政策としては、サンフランシスコの平和條約第九條に則ることは当然でありまするが、特に公海自由の原則の遵守及び科学的基礎に基く漁業資源の共同保存措置を講ずるという点にあるのであります。又、濠州についてのお話でありまするが、オーストラリアの態度はいろいろ風評としては伝わつておりまするが、まだ漁業交渉についての申入れ等はないのであります。政府としては、でき得るならば日米加漁業條約の趣旨に副いまして、今後成るべく速かに條約締結の交渉をいたしたいと考えて、只今準備中であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/9
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010・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 農林大臣の答弁は他日に留保されました。
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011・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、労働金庫法案(中村正雄君外十名発議)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。労働委員長中村正雄君。
〔中村正雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/11
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012・中村正雄
○中村正雄君 只今議題となりました労働金庫法案に関しまして、法律案の内容並びに委員会における審議の経過及び結果を御報告いたします。労働金庫設立の目的は、労働組合、消費生活協同組合その他の労働者の団体が福利共済活動を行うため、金融の円滑を図り、その健全な発達を促進すると共に、労働者の経済的地位の向上に資することにあるのでありますが、本法律案は、この目的を達成するために必要な労働金庫の設立要件、組織、事業内容及び合併や事業譲渡等に関する規定を定めたものであります。
現在労働金庫と称せられまするものは東京都を初め十六の都道府県下に設立されておりまするが、これらはいずれも中小企業等協同組合法の規定に基く信用協同組合でありまして、今申上げました消費金融的な金庫本来の目的から言いますと、その根拠法といたしましては誠に適当だとは言えないわけであります。労働組合等労働者の諸団体を中心とする労働金庫設立の運動は戰後急速に盛んになつたのでありますが、この現実の情勢にもかかわらず、従来はこれを善導し規制するに適当な法制がなかつたため、信用協同組合として発足して参つたのでありまして、これがため金庫はその設立運営等に関しまして非常に不便と無理を冒して今日に至つたのであります。労働金庫法案におきましては、かかる現状の不備な点を考慮し、従来の不合理を是正いたしまして、その本来の目的に適合するよう新たな規定を制定いたしておるのであります。次に、本法案の特徴でありまする三、三の点につきまして御説明申上げます。第一は、労働金庫の会員となる資格を有する者は、労働組合、生活協同組合等の労働者を主たる構成要素とする団体でありまして、この建前に立つて、議決権、役員の選任等の規定を設け、個々の労働者は会員たるの資格を持つておらないのであります。これは労働金庫の設立運動が労働者団体を中心として行われて来た過去の経緯から考えると、個人加入を認めておりまする現在の状態は、中小企業等協同組合法の要件に適合させるためあえて無理を冒しておるのでありまして、当然是正せられるべきものであり、又将来の福利共済活動のための金融事業の健全なる発達を考えると、それは全く必要な措置として規定されておるのであります。かくすることによりまして、初めて預金の吸收が広汎に行われ、貸付の適正、経費の節約等が可能であると考えられているからであります。第二は、労働金庫は一種の金融機関でありまして、その組織運営に関しましては、公益的見地からいたしまして、中小企業等協同組合法と比較いたしますると遥かに行政庁の監督権限を強化し、又金融機関として必要な規定を種々取入れているのであります。併しなら本法案の意図は、しばしば申上げておりますように、団体を通じて行う労働者の相互扶助の組織でありますので、金融機関たるの性格に反しない限り、できるだけ自主的な協同組織体としての原則に立つて、それに応じた規定を設けておるのでございます。第三は、この法律案に基く労働金庫の事業は、広く労働者の福祉の増進と労働組合運動とに直接且つ密接な関連を有します関係上、法律の施行の任に当る行政官庁といたしましては、大蔵大臣の専管とせず、労働大臣と大蔵大臣の共管といたしている点であります。この規定によりまして、労働行政上の必要から労働大臣が法の施行に関與すると共に、金融行政上の面からは大蔵大臣がその任に当ることとなり、労働者の貴重なそして零細な資金を預かる上に支障なきよう万全を期しておる次第であります。法律案の要旨は以上述べた通りでありますが、次に委員会におきまする審議の経過並びに結果につきまして申上げます。労働金庫法案は、労働委員でありまする全会派の有志議員の共同によりまして、去る五月二十日、本院に提出され、労働委員会に付託となつたものであります。労働委員会は二日間に亘りまして委員会を開催し、特に二十三日には大蔵委員会と連合委員会を開き、審議いたしたのであります。連合委員会におきましては、大蔵委員より、労働金庫の設立免許又は行政庁の監督等の基準に関連し、政府の政治的意図により金庫の公正な発展が妨げられるようなことはないかとの質問がありましたが、政府委員より、さようなことはいたさない旨の答弁がありました。そのほか、他の金融機関との競合の問題、労働金庫経営の健全性と将来の見通し等に関し質疑がありましたが、それぞれ提案者側より説明があり、政府側よりの意見の陳述がありました。詳細は速記録を御覧願いたいと思います。かくて五月二十四日採決をいたしましたところ、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/12
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013・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/13
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014・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/14
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015・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第二、工場抵当法及び鉱業抵当法の一部を改正する法律案、日程第三、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案、日程第四、裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)以上三案を一括して議題とすることに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/15
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016・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。法務委員長小野義夫君。
〔小野義夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/16
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017・小野義夫
○小野義夫君 只今上程されました工場抵当法及び鉱業抵当法の一部を改正する法律案について、委員会における審議の経過並びに結果について御報告いたします。
御承知のごとく、財団制度は、経済の進展に伴つて利用度はますます高く、利用の範囲はますます広くなつて参つておりますが、現行法は明治三十八年の制度にかかり、今日においては種々不便な点が生じて来たのでありまして、かねて経済界より改正の要望が高まつていたところであります。本法案はかような事情に鑑み、工場抵当法及び鉱業抵当法に諸般の改正をなさんとするものでありますが、その主な点を申上げますと次の通りであります。
第一点に、現行工場抵当法では、財団の分割及び合併が認められておりませんので、財団の余剰担保価値を利用するためには、財団の組成物件の一部を分離して、新たに別個の財団を設定し、或いはこれを他の財団に追加するごとき複雑な手続を要するものであります。そこで本法案では、新たに分割合併の制度を創設せんとするものでありまして、そのほかに、財団の所有権保存登記の効力の存続期間を延長すること、即ち財団の成立がその抵当権の消滅によつて直ちに消滅しないで、一定の期間存続すること等であります。第二点に、現行鉱業抵当法については、租鉱権を認めることに伴う所要の改正をなすことであります。
委員会におきましては、本法案が我が国の金融界に及ぼす影響の大きいことに鑑みまして、愼重に審議を行い、各委員より重要な質疑がなされたのであります。その間、電波放送の施設を本法にいわゆる工場となすべきや否やの問題に関し、民間放送施設の視察をも行なつたのであります。なお審議中におきまして、委員外発言として栗栖議員より、財団抵当権の実行に当り設立中の会社が競売手続に加入すること、及び電気事業会社の財団については競落人が水利権を取得し得ることの二点が可能になるよう措置せられたいとの意見が述べられたのであります。討論に入りまして、伊藤委員より、放送施設を工場とみなす物のうちに加えること、及び財団登記の効力存続期間を六ヵ月とする趣旨の修正案が提出され、更に栗栖議員の提唱にかかる二点については、これはいずれも適切ではあるが、この改正は、民事訴訟法、競売法や会社法にも影響を及ぼすものであり、かたがた工場抵当法その他各種の財団抵当法については根本的な改正機運が見られるので、この二点の改正はその際に讓ることとし、今回は財界の要望に応え、差当つての改正にとどめたいとの趣旨の発言がなされたのであります。かくて討論を終り採決をいたしましたところ、伊藤委員提出の修正案及び修正点を除く原案は、いずれも全会一致を以て可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。
只今上程されました最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案の委員会における審議の経過及び結果について御報告いたします。
戰後諸法令の整備が広範囲に亘つてなされたのでありますが、民事訴訟法はまだそのままになつているのであり、改正の機運はかなり熟しているのであります。かような情勢に鑑み、委員会においては、かねてより民事訴訟法改正に関する小委員会を設置し、改正に対する調査研究を進めておる次第であります。そこで委員会は本法案をこの小委員会に付託して審議をさせたのであります。
最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律は、最高裁判所の事件が輻湊しているのを整理救済するため、上告事件中憲法違反等の特に重要なものを除きまして、一般のものについては重要と認める点について調査をなぜば足りるとするものでありますが、この法律は来たる六月一日から効力を失うのでありますが、まだ上告事件の整理ができないので、更に二ヵ年施行期間を延長せんとするものであります。
小委員会におきましては、最高裁判所その他東京の裁判所を視察し、或いは資料を要求し、熱心且つ慎重に審議をなし、伊藤小委員長等より重要な質疑が行われたのであります。その結果、小委員会においては、本法案は原案通りで異議ないことと決定したのであります。小委員会においてさような次第となりましたので、委員会におきましても、小委員長より大略前に申上げました通りの報告がありました。特に質疑、討論もありませんので、採決いたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定したのであります。
次に只今上程の裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案につつきまして、委員会の審議の経過及び結果を御報告いたします。
本改正法案は、第一に、裁判所事務官及び雇合計七十人、裁判所技官及び看護婦合計十四人、総計八十四人を増員しようというものでありまして、裁判所事務官及び雇の増員は、これを下級裁判所の法廷の秩序維持、即ち警備に当らせようとするものであり、裁判所技官及び看護婦の増員は、これを家庭裁判所に配置して、家事審判事件、少年事件その他の事件の処理について、医学的見地からの調査に当らしめようとするものであります。第二に、前回の国会において成立した裁判所職員定員法等の一部を改正する法律につきまして、同法により整理される裁判所職員については国家公務員法に定める審査請求に関する規定の準用を排除されることになつているのでありますが、この法律と同趣旨の下に立案された行政機関職員定員法の一部を改正する法律におきましては、国会において右のごとき規定が削除されましたので、その結果として生ずる裁判所職員と一般公務員との間の不均衡を是正するための措置をとろうとするものであります。第三は、検察審査会事務官は裁判所事務官の中から命ぜられることになつておるのでありますが、前国会の行政整理による定員法の改正によつて、裁判所職員の定員が減員されましたので、これに伴い、検察審査会法の関係規定についてこれが調整をいたすこととしたものであります。
以上が本改正案の内容でありますが、委員会におきましては愼重に審議を重ね、各委員より熱心な質疑が行われたのであります。特に伊藤委員よりは、先般裁判所職員についても行政整理を行なつたばかりであるにかかわらず、早々に又その増員を図ることは裁判所当局の無定見を示すものではないかとの強い質問がされたのでありますが、裁判所の説明員よりは、今回の増員は先般の行政整理とはおのずから事情を異にするものがあり、必要止むを得ない増員である旨の答弁があつたのであります。
委員会におきましては、討論終結の上、採決いたしましたところ、全会一致を以て本改正法案を可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/17
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018・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。
先ず工場抵当法及び鉱業抵当法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/18
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019・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/19
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020・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 次に、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案、裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案、以上両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/20
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021・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/21
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022・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第五、恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。
〔河井彌八君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/22
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023・河井彌八
○河井彌八君 恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
先ず順序といたしまして、この法律案の提案の理由とその内容とを御説明いたします。この法律案は、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く恩給法の特例に関する件と題する昭和二十一年勅令第六十八号につきまして、講和條約の効力発生に伴う所要の措置を講じようとするものであります。旧軍人軍属及びその遺族に支給する恩給及び扶助料の措置を如何にするかという事柄であります。昭和二十年十一月二十四日、連合国最高司令官から日本政府に発せられました覚書によりまして、この勅令が制定せられまして、昭和二十一年二月一日から施行せられることになつたのでございまするが、この勅令によりまして、軍人及びその遺族並びに昭和二十一年閣令第四号第一條に規定する者以外の軍属及びその遺族の恩給給與は禁止又は制限せられて今日に至つておるのであります。政府は、これらの廃止又は制限せられた軍人軍属の恩給の講和條約の効力発生後における復元の措置につきましては、その復元の措置如何が国家財政その他各方面に及ぼす影響の大いなることを考慮いたしまして、特に愼重を期することといたし、講和條約の効力発生後、新たに総理府の附属機関として恩給法特例の審議会を設置いたし、その審議会の公正妥当な結論に基いてこの問題の措置を講ずることとし、明年、即ち昭和二十八年三月三十一日まで、右に述べました軍人軍属及びその遺族に対し、現在のごとき恩給取扱を継続することといたしまして、恩給法の特例に関する件と題する勅令をば、この法律施行の日以後昭和二十八年三月三十一日までは法律としての効力を有するものとして存続せしめようとするのであります。即ちこの法律案の第二條及び第三條並びに附則第三項の規定がこれに当るものであります。以上がこの法律案の主要な規定の内容でありますが、なお、そのほかに恩給法の特例に関する件と題する勅令中、講和條約の効力発生に伴つて不要となりまする規定を削除することとしてあるのであります。即ちこの法律案の第一條及び附則第二項の規定がこれに関するものであります。内閣委員会は、厚生委員会と連合委員会を二回、内閣委員会を四回開きまして、この法律案の審査に当つたのであります。元軍人軍属及びその遺族の恩給に関しましては、第十三回国会の開会以来当院に提出せられました請願は百六十四件、その請願者の数が四万九千六百十六人、又陳情は六十七件、その陳情者の数が七千四十八人という極めて大いなる数に上つているのであります。如何に多数の元軍人軍属並びにその遺族の人たちがこの恩給の問題について重大な関心を持つて心を痛めているかということが、これによつても窺われるのであります。内閣委員会は、かような事情をも考慮いたしまして、この法律案を極めて愼重且つ熱心に審議をいたしましたのであります。法律案の全般の問題につきましては、保利内閣官房長官、池田大蔵大臣、三橋恩給局長より、又特に法律問題につきましては、佐藤法制意見長官、奥野参議院法制局長から説明を求めたのでありまするが、内閣委員会及び内閣・厚生連合委員会におきます審議によつて明らかにされました点を次に申上げます。第一点は、軍人恩給に対する政府の方針についてであります。一般のポツダム勅令、ポツダム政令は、講和條約の最初の効力発生の日から六ヵ月で効力を失することとなつているのに、軍人等の恩給停止を規定しているポツダム勅令第六十八号だけを特に約一年間有効にせんとする理由は如何。元軍人に対しこの際何らかの暫定的な援護措置を講ぜずしてこれを放置いたし、依然として恩給停止の状態に置くことは、結果において元軍人に対する懲罰の意味と解するのほかはないが、政府は元軍人特に老齢の元軍人に対して、この一年間を待たず暫定的な措置を講ずる考えを持つてはいないか。政府は軍人恩給の復元の時期を繰上げて、今年度の補正予算において軍人恩給の支給の措置を講じ、復元の実現を促進する考えはないかというような点につきまして、多数の委員から質疑がなされたのであります。これらの質問に対しまして、保利内閣官房長官は次のように答弁いたしているのであります。「政府は軍人恩給の問題を極めて重要な事項と考えて考慮を加え来たつている。法律で恩給の支給を確約しておつたことが終戰後履行ができず、反故のような状態に陷らざるを得ない事柄になつたことにつきましては、元軍人のかたがたの心持は察するに余りありと思つております。我が国は、被占領中はいたし方がないといたしましても、独立後の今日においては、政府も国会も挙げてこの軍人恩給の問題について、我が国の現下の財政経済状態等を勘案いたしました上で、一般世人の納得の行くような解決を図ることが必要であると考えている。政府は終戰後軍人軍属及びその遺族に対して十分な措置を講じようと努力して来たつたのでありまするが、何分被占領下にあつたがために十分な解決ができずに今日に至つている次第であつて、ただ僅かに戰傷病者と職長者の遺族の援護について、先に総司令部の承認を得まして暫定措置を講ずることができたのでありました。今日我が国は独立の地位に立つことになつたのであるから、この法律案によつて恩給法特例審議会というものを設け、この審議会によつて軍人恩給の問題を調査審議して、結論を得て、実現の段階に至るまでには一年間くらいの期間を必要とするだろうと考えまして、この法律案を提案した次第である。政府は過去日清日露等の戰役において一身を犠牲として国家のために盡した元軍人のかたがたに対して、十分な恩給の処遇を講ずることは緊急な問題と考えて、今後も十分誠意を以て軍人恩給の復元に努力する決意であつて、本年度に実現するということを言明することはできないけれども、若し財政上本年度内においても実現し得る見込が付くならば実現に努力したいと考える。要するに、政府はこの軍人恩給に関する問題については、すべてこの審議会の今後の調査審議に期待をかけているのであつて、軍人恩給についてかくかく具体的措置を講ずるということを言明することのできないということの事情を了承してもらいたい」というのでありました。又池田大蔵大臣は財政当局の立場から次のような答弁をいたしております。「元軍人軍属のうちで戰傷病者と戰歿者の遺家族の援護は一日も遷延しがたい事情にあるので、政府は先にこれに関する法律案を提出いたし、その実現を見ることとなつたが、元軍人軍属の恩給の処遇につきましては、でき得る限り速かに、又財政の許す限り十分な支給をなし得るように誠意を以て考慮しております。昭和二十七年度中に準備を整えて、二十八年度から実現したい考えである。元軍人軍属の恩給加算を元のままで実現するとするならば如何ほどの額を要するか、又この加算をいま少し圧縮するとしたならば如何ほどの額になるのであるかというような問題を、只今財務当局として調査中である。昭和二十七年度中に軍人恩給を絶対に実現しないという考えではない。若し本年度中に審議会で結論が出て財政が許すならば、本年度内にも実現したいと考えている。元軍人軍属に対して恩給復元の実現に至るまで、本年度内に暫定的援護措置を講ぜよという問題につきましては、この問題は軍人恩給全体の問題と見合せて解決すべき問題であつて、これを切り離して実現することは困難であると考える」という説明でありました。かような答弁によりまして、この軍人恩給復元の問題につきましては今後でき得る限り十分な努力をするという、政府の誠意のあるところを窺うことができたのであります。
第二点は、恩給法特例審議会についての点であります。この法律案第三條第二項におきまして、審議会の組織等は政令で定めるということになつているのでありまするが、恩給事務当局の作成した政令案によりますると、この審議会は、内閣総理大臣に建議し、内閣総理大臣の諮問に答申する機関となつておるのであります。又その審議会は委員十五人以内を以て組織し、必要があるときは臨時委員若干人を置くことができるとなつております。これらの委員及び臨時委員は関係行政機関の職員及び学識経験者のうちから内閣総理大臣が任命するということになつております。この委員の選定につきまして、政府は権威ある者を挙げるということを言明いたしたのに対しまして、委員会におきましては、この委員の選任は政府の最善の選択に任すのであるけれども、そのうちに国会議員を入れるかどうかというような点に関しましては、委員のうちではこれを否とする意見が強く出ておりました。又受給者即ち元軍人側から入るべきかどうかという点につきましては、全会一致の意見として、それを入るべしということの意見が出ておつたのであります。
第三点は、先に挙げました昭和二十一年勅令第六十八号恩給法の特例に関する件の第一條の規定の解釈に関する点であります。この規定によりまして、元陸海軍の軍人軍属又はその遺族の恩給は、單に停止せられたものと解するのか、或いは廃止せられたものと解するのかにつきまして、法文の上から必ずしも明確な解釈を下すことができずに、いろいろな疑問の点がありましたので、この解釈の問題につきまして佐藤法制意見長官と奥野参議院法制局長に対して質疑をいたしましたが、その結果はかようであります。佐藤長官と奥野局長との答弁は大体一致しておりまして、「前述の勅令第六十八号第一條の「恩給はこれを給せず」という表現は、恩給法上の用例から停止の意味と解すべきものではなく、廃止の意味に解すべきである。併しながらこの勅令はほかのものと異なつて、総司令部の日本政府に対する覚書に基いて、恩給法の特例という形でできておつて、基本法の恩給法には何ら手を着けていない。即ち勅令第六十八号は特別法であり、恩給法は基本法であつて、この特別法である勅令第六十八号が失効することになれば、基本法である恩給法は軍人恩給について働き出すこととなり、軍人恩給は復活すると同じ結果になる」という解釈であります。 第四点は、軍人恩給が復元した場合の軍人年金恩給受給者の数と恩給金額の点であります。三橋恩給局長は次のような説明をいたしております。「軍人恩給の既得権者の数を基礎にいたしてこの軍人恩給の受給者の数を推定いたしますると、軍人恩給が廃止になつた昭和二十一年二月一日現在におきましては七百二十五万人となり、その恩給金額は、軍人恩給廃止当時の支給水準によつて計算すれば約二百四十二億円、又一般文官の恩給改定の例に準じて現在の支給水準に引直して計算いたしまするならば約二千三十一億円となる。次に、軍人恩給が廃止せられた後、今日までの六年間に死亡等による失権を想定いたしまして、これを控除したる場合(第七項症の増加恩給受給者及び傷病年金受給者はこれを除き、又普通恩給と普通扶助料については実在職年に対する加算を考慮せずして計算した場合)には、その人数は百四十四万六千人となり、現在の支給水準によつて計算した恩給金額は約七百十五億円となる。」という説明でありました。 内閣委員会は、以上申述べましたような愼重な審議の過程を経ました末に、軍人恩給問題に対する政府の意のあるところを知りまして、又この法律案の内容を了解するに至りましたので、一昨日の委員会におきましては次の希望意見を表明することに出席委員一同の意見の一致を見たのであります。一、恩給法特例審議会においては、軍人恩給の問題を調査審議したる上、成るべく速かに結論を得るよう取計らわれたい。又高齢の元軍人軍属及びその遺族に対しては特に急速に実施の必要を認めるから、その点についても特に配慮を望む。一、元軍人軍族及びその遺族へ支給する恩給の額は、国家財政の許す限り、他の事項とも均衡を図りたる上、成るべく多額に支給されんことを望む。
一、元軍人軍族及びその遺族へ支給する恩給の額は、国家財政の許す限り、他の事項ととも均衡を図りたる上、成るべく多額に支給されんことを望む。
というのであります。これに対しまして保利官房長官は、国会の意見はすべてこれを尊重して、これを審議会の審議に反映せしめますため、会議の議事録をば審議会の委員に配付することといたしたい所存であるということを言明いたしたのであります。
かくいたしまして、内閣委員会は一昨日の会議において討論の段階に入りましたところ、鈴木委員から次のような修正案が発議せられました。その修正案は、
恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案に対する修正案
恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案の一部を次のように修正する。
附則第一項中「日本国との平和條約の最初の効力発生の日」を「公布の日」に改める。
これは説明を申上げる必要はないと思います。そこで鈴木委員から、右修正案の発議の後に原案賛成の意見が出たのであります。次に竹下委員から、恩給法特例審議会に対して軍人恩給を平和條約の効力の発生の日に遡つて支給するようにその実現に努力せられたいという強い希望が述べられましてそうしてこの修正案を含む原案に賛成せられたのであります。又三好委員からは、恩給支給の時期を平和條約発効の日に遡ること、恩給額は給與水準に対応して決定すること、この二点について審議会は適当なる結論を出されんことを希望し、且つ老齢軍人に対しては特に早急の措置を講ぜられんことを政府に希望して、修正案を含む原案に賛成の発言がありました。又栗栖委員からも同様の賛成の発言があり、最後に松原委員からは、「政府は審議会委員の人選に愼重を期してもらいたい。審議会の結論は早急にこれを得るように努力して、明年早々軍人恩給の実現を見るよう政府の配慮を望む。なお、その実現までの間に援護措置をも講ぜられたい。又軍人恩給は成るべく遡及するような措置をとつて欲しい」という希望意見を述べて、修正案を含む原案に賛成せられたのであります。かくのごとくにいたしまして、出席しておつた各党各派からそれぞれ熱心な賛成意見が発電せられたのでありました。
討論終了の後に先ず修正案について採決をいたしたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定せられ、次いでその余の原案について採決をいたしましたところ、これ又全会一致を以て可決すべきものと議決せられた次第であります。これを以て報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/23
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024・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/24
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025・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/25
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026・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第六、国民貯蓄債券法案、日程第七、設備輸出為替損失補償法案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)日程第八、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の出張所及び監視署の設置に関し承認を求めるの件、(衆議院送付)以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/26
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027・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長平沼彌太郎君。
〔平沼彌太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/27
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028・平沼彌太郎
○平沼彌太郎君 只今上程されました国民貯蓄債券法案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。
本案は、資本蓄積の一環として国民貯蓄債券を政府が発行し、いわゆる浮動購買力を吸収し、その資金を以て資源の開発及び経済再建に緊要なる産業の建設資金の一部に充てることを目的といたしておるのであります。次に本案の内容について申上げますれば、第一に、国民貯蓄債券の発行による收入金相当額は、資金運用部において、資源の開発その他経済再建に緊要な産業施設の建設のため必要な資金を供給するため、資金運用部資金法の規定により運用することといたそうとするものであります。第二に、この債券は政府が直接発行することとし、その発行は毎年度純増百億円を超えない限度にとどめることといたそうとするものであります。二十七年度においては初年度として純増六十億円を予定しておるのであります。第三に、この債券の発行による收入金は資金運用部資金として管理することとし、発行及び償還に関する経費は資金運用部特別会計において負担することといたそうとするものであります。第四に、この債券の発行條件は、無記名式で割引の方法により売出すものとし、額面金額は一万円以下となつております。償還期限は五年でありますが、発行後一定の期間を経過したものについては所持人の請求に応じて買上げ償還ができることといたそうとするものであります。なお、この債券の応募者平均利廻りは一般金利水準との権衡を失しないように定めることといたそうとするものであります。第五に、この債券の売りさばき、償還及び買上げに関する事務並びにこの債券の割増金の支拂に関する事務は主として郵便官署で取扱うことといたそうとするものでありますが、相互銀行、信用金庫その他政令で定める金融機関及び証券業者も大蔵大臣の委託を受けてこの債券の売りさばきに関する事務を取扱わせることができるようにいたそうとするものであります。
本案審議の経過につきましては速記録によることを御承知願いたいと存じます。かくて質疑を終局し、討論に入り、木村委員より、「本案は、電源開発のための外資導入が困難であるので、その資金の調達のために国民貯蓄債券を発行しようとするものであるが、政府は資金を電源開発に集中し、その他の中小企業及び平和産業に及ぼす金融的影響を考えていない。又、国民貯蓄債券は経済的には公債であるので、財政法第十四條、第四十四條の趣旨よりして妥当ではない。更に、政府の資本蓄積対策は合法的な脱税を認めているが、税制上の不均衡の一環として、国民貯蓄債券に免税の規定を設けることに反対であり、以上の点から本案に反対する」との意見が述べられ、下條委員より、「政府の経済政策は大企業中心であり、中小企業に対する確たる政策を欠いている。本来、中小企業に廻るべき資金を電源開発その他の緊要産業に廻すことには反対であり、本案に反対する」との意見が述べられ、田村委員より、「政府の貯蓄事業は非能率的であり、且つ特殊産業に重点な指向し過ぎて民業を圧迫しないように注意して欲しい」旨の希望を附して賛成意見が述べられ、採決の結果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定した次第であります。
次に設備輸出為替損失補償法案について御報告申上げます。
先ず本案の内容について申上げます。
第一は、設備を輸出する者が外国為替相場の変更に伴つて受ける損失を補償する制度を確立し、重要物資の輸入の確保に貢献する設備輸出の促進を図ろうとするものであります。第二は、その為替損失を補償する契約を締結するための條件としては、設備輸出が、重要物資の輸入市場を国際収支上有利な地域に開拓し、又は国際収支上より有利な地域へ転換することに役立つと認められる場合といたし、この場合、大蔵大臣は総額百億円の範囲内で期間五年以内の為替損失補償契約を行い得ることといたそうとするものであります。第三は、補償契約を締結した設備輸出者は国庫へ補償料を納付しなければならないこと、又補償契約に基く補償金の交付及び為替利益の納付について、それぞれ所要の規定を設けようとするものであります。第四は補償契約と輸出信用保険法との関係でありますが、補償契約の対象となつた輸出対価について輸出信用保険の事故が発生して保険金が支拂われた場合は、その保険金にかかる輸出対価の部分については補償契約に基く補償金の交付及び納付金の納付は行わないこととしようとするものであります。第五は補償契約の解除についての規定であり、設備輸出者の責に帰することのできない事由により解除された場合、及び設備輸出の対価を当初の受領予定日までに受領することができないことが明らかになつた場合には、大蔵大臣はこれに応ずることができるものとし、解約が行われたときは解約後の期間分の補償料は免除いたそうとするものであります。なお、補償契約の対象となつた輸出為替については売予約を禁止する等について所要の規定を設けようとするものであります。
本案は、質疑の後、討論に入り、下條委員より、国際的に通貨事情の不安定の折柄当然の措置であるが、逆に悪用されないように運用面で十分注意されたいとの希望を附して賛成意見が述べられ、木村委員より本案は重要物資の輸入確保が目的であるが、安い、よりよい物資は中国からの輸入が得策であるから、政治的問題を別にして、これらの輸入が実現するよう努力せられたいとの希望を付して賛成意見が述べられ、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定した次第であります。
次に、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の出張所及び監視署の設置に関し承認を求めるの件について御報告申上げます。
本件は、最近における外国貿易の趨勢、密貿易の動向及び北緯二十九度以北の島嶼の我が国の行政権下への復帰等に鑑み、税関行政の円滑な遂行及び密貿易の監視取締の完全を期するため、津久見税関支署佐伯監視署ほか一監視署を出張所に改めると共に、監視署の配置転換を行い、神戸税関飾磨監視署ほか二監視署を設置しようとするものであります。本件につきましては、格別質疑もなく、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り承認することに決定いたした次第であります。
右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/28
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029・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もな ければ、これより採決をいたします。
先ず国民貯蓄債券法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/29
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030・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/30
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031・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 次に設備輸出為替損失補償法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/31
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032・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/32
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033・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 次に、地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の出張所及び監視署の設置に関し承認を求めるの件を問題に供します。委員長報告の通り承認を與えることに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/33
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034・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本件は全会一致を以て承認を與えることに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/34
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035・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第九、昭和二十五年度国有財産増減及び現在額総計算書、日程第十、昭和二十五年度国有財産無償貸付状況総計算書、以上両件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/35
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036・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。決算委員長岩男仁藏君。
〔岩男仁藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/36
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037・岩男仁藏
○岩男仁藏君 只今議題となりました昭和二十五年度国有財産増減及び現在額総計算書並びに昭和二十五年度国有財産無償貸付状況総計算書に関する決算委員会の審議の経過並びに結果につきまして御報告いたします。
先ず本件の内容の概略を申上げますと、昭和二十五年度におきまして、一般会計、特別会計を合計して国有財産の増加額は六百二十七億余万円、減少額は四百三十九億余万円でありまして、差引純増加額は百八十八億余万円となつております。年度末即ち昭和二十六年三月三十一日現在の国有財産の総額は二千七百十六億余万円でありまして、この内訳は、行政財産九百三十五億余万円、普通財産一千七百八十億余万円となつております。行政財産を更に分類いたしますと、公用財産二百八十億余万円、公共福祉用財産一億余万円、皇室用財産一億余万円、企業用財産六百五十二億余万円となつております。
次に、国有財産を無償で貸付けましたものは、一般会計、特別会計を合計して昭和二十五年度における増加額は五千百余万円、減少額は一千百余万円、差引純増加額は三千九百余万円でありまして、年度末における無償貸付の総額は七千余万円となつております。
決算委員会におきましては、右二件につきまして政府の説明並びに会計検査院の検査報告を聴取いたしました上、愼重審議いたしました。委員会における質疑応答の主なるものを申上げますと、先ず「国有財産法第十三條の規定によれば、公共福祉用財産又は皇室用財産とする目的で財産を取得し、又は公共福祉用財産若しくは皇室用財産以外の国有財産をこれらの財産としようとするときは、国会の議決を経なければならないことになつているのに、この計算書の中にはこの手続を経ていないものが含まれているが、これに対する政府当局の見解はどうか」。この質問に対しまして、「御指摘の通り法律の規定に違反したものがありましたことは申訳ないことでありますが、これらは極めて少額軽微なものでありまして、特に国会の議決を仰ぐほどのものではないと考えられますが、法律には例外を認める規定がありませんために、このような結果となつた次第でありますので、近くこの法律について改正をお願いしたいと考えております。」との答弁がありました。右の件については、法律違反の事実は明らかでありますが、一面、法律の規定が実情に合致しないと認められる点もありますので、一応警告を付してこれを承認することといたしました。その他にも二、三質疑応答がありました結果、国有財産の管理処分等に関し、処理の適正でない点については、別途昭和二十五年度決算審査においてこれを調査することにいたしまして、この二件の計算書は、前に述べましたように、「この計算書は、国有財産法第十三條の規定に違反する事項を含むものと認める。内閣は、速かに適当の措置をとり、以て法律の円滑な運用を期すべきである。」という警告を付けまして、これを承認することに異議がないと議決いたしました。
右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/37
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038・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより両件の採決をいたします。両件は委員長報告の通り決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/38
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039・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて両件は全会一致を以て委員長報告の通り議決せられました。
本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時九分散会
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○本日の会議に付した事件
一、漁業対策に関する緊急質問
一、日程第一 労働金庫法案
一、日程第二 工場抵当法及び鉱業抵当法の一部を改正する法律案
一、日程第三 最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案
一、日程第四 裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案
一、日程第五 恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案
一、日程第六 国民貯蓄債券法案
一、日程第七 設備輸出為替損失補償法案
一、日程第八 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、税関の出張所及び監視署の設置に関し承認を求めるの件
一、日程第九 昭和二十五年度国有財産増減及び現在額総計算書
一、日程第十 昭和二十五年度国有財産無償貸付状況総計算書発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X04319520526/39
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