1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年七月二十一日(月曜日)
午前十時三十七分開議
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議事日程 第六十八号
昭和二十七年七月二十一日
午前十時開議
第一 消防法の一部を改正する法律案(衆議院提出)(委員長報告)
第二 行政管理庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第三 労働省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第四 文部省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第五 厚生省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第六 建設省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第七 法制局設置法案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第八 調達庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
第九 法務府設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報)
第一〇 小笠原諸島への帰島に関する請願(委員長報告)
第一一 講和会議協力国代表を貴賓として招請するの請願(委員長報告)
第一二 在外同胞引揚促進等に関する請願(委員長報告)
第一三 在外同胞引揚促進に関する請願(委員長報告)
第一四 戰犯者の内地送還等に関する請願(委員長報告)
第一五 阿蘇北部、外輪山一帯の米軍演習地使用調達反対に関する請願(委員長報告)
第一六 爆撃演習地の施設地域指定除外に関する請願(委員長報告)
第一七 千島列島の帰属に関する陳情(委員長報告)
第一八 真珠貝採取事業に関しオーストラリア政府と漁業條約早期締結交渉の陳情(委員長報告)
第一九 沖縄に在外事務所設置の陳情(委員長報告)
第二〇 海外抑留戰犯者の内地送還等に関する陳情(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/0
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001・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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002・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
〔曾祢益君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/2
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003・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 曾祢益君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/3
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004・曾禰益
○曾祢益君 私はこの際、国連軍との協定に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/4
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005・菊川孝夫
○菊川孝夫君 私は只今の曾祢益君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/5
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006・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 曾祢益君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/6
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007・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。曾祢益君。
〔曾祢益君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/7
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008・曾禰益
○曾祢益君 私は国連軍との協定に関しまして、政府に緊急質問をいたしたいと存ずるのであります。
平和條約第六條(a)項によりますれば、すべての占領軍は、日米安全保障條約に基く駐留軍は別といたしまして、如何なる場合におきましても、平和條約の効力の発生後九十日以内に日本から撤退しなければならないのであります。安全保障條約署名に際しまするアチソン・吉田交換公文によりますれば、平和條約第五條によつて、日本が国連に対しまして、国連憲章に従つてとる行動についてあらゆる援助を與えることを約しておりまするから、平和條約の発効後も、国連加盟国の軍隊が極東における国連の行動に従事する場合には、加盟国がこのような軍隊を日本国内及び附近において支持することを許し、且つ容易にすることを約しております。軍隊を支持するというのは非常にあいまいな言い方でありまするが、サポートという言葉を使つております。以上の二つの国際約束から出て来まする結論は、従来日本に英連邦軍が占領軍としておつたのでありまするが、これらは七月二十六日までに撤退しなければならないということが第一の原則でございます。但し朝鮮動乱が現に継続中でありまするので、この国連の行動に従事する軍隊を日本に支持することは日本が許容すべきものでありまするから、その許容や便宜供與の條件につきましては、改めて、日本と当該国通加盟国との間若しくは国連当局との間に協定を結ばなければなりません。若しその協定が七月二十六日までにできないといたしまするならば、やはり原則は動かし得ません。英連邦軍は撤退しなければならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)七月二十七日以後におきまして、このような協定ができていない場合には、その場合におきましても、吉田・アチソン交換公文があるのであるから、英連邦軍は日本に残つておつてもいいのだというような議論は断じて成立いたしません。何となれば、この交換公文というものは、この国連軍部隊を日本に支持することに対しまして、これを許諾し又は便宜を與えるという一つの予約に過ぎないのであります。これは協定そのものではございません。又これは一般的な心構えというようなものでありまして、従つて、従来日本におりました旧占領軍に対しまして、それが留まつてもいいという法的根拠を與えるものではないのであります。飽くまでも原則は、平和條約第五條の、先ほど申上げました発効後九十日以後は留まることはできないということになるのでございます。以上のような関係から、本員といたしましては、再三再四国会におきまして、外務委員会におきまして、政府に対しまして、この協定を締結しろ、かように督促して参つたのでありますが、すでに七月二十六日は目睫に迫つているのであります。而もここに何らの協定ができておらないことは、甚だしき政府の重大なる怠慢であると言わなければなりません。(拍手)かようなわけで、私が今日、本会議におきまして質問する緊急性をおわかり願いたいと思うのであります。
而もこの協定がまだ遷延して成立されないために、実際上いろいろな不詳な事態或いは紛糾が起つているのであります。例えて申しますならば、呉地方におきましては、国連軍と日本の労働者との間にいろいろな紛争事件が起つておりまして、海員組合及び進駐軍労働組合からしばしば政府に対しまして陳情並びに抗議が行われ、そのたびに我々は政府の善処を要望して参つたのでありまするが、今日に至るまで何ら改善されておらないのであります。従つて、先に一万の進駐軍労働組合がストライキをするというような不祥な而も重大なる事態を惹き起したのであります。このことは、国連軍に対しまする労務提供が果して直接雇用であるか、或いは間接雇用であるか、これらの原則すら確立されておらない。又仮に直接雇用だということになれば、当然に日本の関係法令が全面的に適用されなければなりません。更に又、日本の労働者が不利な條件を押し付けられることのないように、雇用條件につきましては十分なる保護の措置がとられなければなりません。例えばいわゆるプリヴエーリング・ウエージというふうなことが守られなければならないのであります。而もそこに何らの見通しがないというようなことから、以上のような紛争が起つているのであります。
更に施設又は区域の提供につきましても、英連邦軍は従来のような占領態勢の下における広大な施設及び区域を要求し、且つこれを当然に無償占有することを主張しているようでありますが、政府は、吉田・アチソン交換公文にいわゆる軍隊の支持(サポート)をあたかも駐屯の許容であるかのごとく解釈しておられるために、何ら解決がなされていないのであります。それのみならず、伝えられるところによりますれば、連邦軍は、この施設、区域のみならず、一切の点につきまして、安全保障條約に基く駐留軍と同等の待遇を要求している由でありますが、これは甚だしく不当なる要求と言わなければなりません。若し朝鮮におきまする戰闘に従事することが日本の安全のためになるのだから、駐屯の費用等は日本が負担しろという議論で来るならば、北鮮や中共に対する戰略物資の禁輸によつて最大の経済的な犠牲を拂つているのは一体どこの国であるか、又朝鮮動乱が拡大された場合に、最初の而も最大の危険をこうむる地域はどこの国であるか、それは日本じやないかと私は反問したいのであります。侵略者に対する共同制裁につきましては、国際平和と安全の維持という崇高な各国共同の目的から協力しているのでありまして、それが特定国の当面の利益に合致するしないということは、これはまた別問題でなければなりません。
特に最近国民の神経を最も焦ら立たせているものは、国連軍に所属する軍人の犯罪につきまして、その捜査逮捕に関する司法警察権と、処罰に関する裁判管轄権の帰属が不確定な点でございます。呉市におきます英連邦軍所属軍人の犯罪が果して最近非常に激増したのであるかどうか、この事実につきましては、私自身として判断の資料は持つておりませんが、併し、かかる問題が起つた、よつて来たるゆえんのものは、政府の怠慢により現に協定ができておらないからであることに間違いはないと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
そこで、先ず次の点につきまして政府の所信を伺いたいのであります。
先ず外務大臣に対しましてお伺いいたしまするが、国連軍との協定はいつまでに締結するおつもりであるか、又国会の承認はいつ如何にしてお求めになるおつもりであるかを伺いたいのであります。更に協定の相手方は誰であるか、国連軍当局であるか、或いは関係国連加盟国各別であるか、この点を伺いたいと存じます。次に労務提供について伺いまするが、これは間接雇用の方式をとるか、或いは直用の方式をとられるか、若し直用であるといたしまするならば、日本の法令の遵守とプリヴエーリング・ウエージ條項の設定を、事実上雇用條件が悪化しないような保障を如何にして協定内に取り付けるお考えであるかどうかを伺いたいと存じます。
次に、司法警察権と裁判管轄権の帰属については、少くとも軍隊の地位に関する北大西洋條約当事国間の協定にならつて、日本の安全に関する犯罪や、日本の領域内で犯し日本の法令で罰することのできる犯罪に関しましては、公的な任務の遂行上行われた犯罪を除きましては、日本が裁判管轄権を有し、且つ司法警察権を持つこととなるべきではないかと存じますが、この点はどうなるかをはつきりと伺いたいと存じます。それから国連軍部隊でない国連軍の個々の軍人の犯罪、例えば横須賀におけるフイリピン軍人の犯罪事件のごときは、当然に日本の管轄権に属すると思いまするが、これは協定に盛るつもりであるか、それとも協定によらずともその点を明確にし得るお考えであるかを伺いたいと存じます。次に、外務大臣及び大蔵大臣に伺いたいと存じます。吉田・アチソン交換公文によりますれば、国連軍部隊の日本の施設及び役務の使用に伴う費用は、現在通りに、又は日本国と関係国際連合加盟国との間で別に合意される通りに負担されるものとすることになつておりまするが、当然に関係国の負担においてなすべきであり、日本が占領軍に対してなしたと同様に日本の負担ですることは理由がないと思いまするが、その点は如何にお考えであるか。費用の負担の問題ではございませんが、実は供與すべき便宜は占領軍に対するものではなく、従つて軍隊の支持に必要な程度に限らるべきではないか。従つて施設、区域の提供等につきましても、当然に従来と変つた非常に制約的なものにならなければならないと思いますが、その点はどうか。労務その他物品の需用等につきましても説明を求めたいと存じます。又伝えられるところの回転資金とは如何なるものであるか、その予算措置をどうするかにつきましても大蔵大臣に伺いたいと存じます。
以上の点につきまして伺いました上で、再質問も許して頂きたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/8
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009・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) お答えいたします。先ず英連邦軍の地位の問題でございますが、英連邦軍は講和発効までは占領軍の一部であつたことは勿論でありまするが、発効後は極東における国連の行動に従事する国連加盟国の軍隊たる性質を持つに至つたのであります。従いまして、吉田・アチソン交換公文によりまして、かかる軍隊の日本に存在することは認められているのであります。而してその條件については只今具体的に交渉中でありまするが、七月二十六日という只今曾祢君の指摘されました期日は、これは占領軍の撤退期限であります。で、英連邦軍は只今申しましたように、吉田・アチソン交換公文によつて認められました国連軍の一部となつているのでありまするから、この七月二十六日という期限と国連協定による期限との間には直接の関連はないと政府は考えております。(「嘘だよ」と呼ぶ者あり)従つて国連軍との協定が七月二十六日までに成立しなければならんという理由はないと信じております。
なお、それではこの協定ができるまでの間、如何ような取扱をするのかということになりまするが、これは国際法並びに国際慣行によりまして種々の規定があるのであります。その規定は、例えば今指摘されました裁判管轄権とか、或いは税の問題とか、その他いろいろありまするが、大体においてこの国際法なり国際慣行なりによりまして規律できると信じております。只今のところは未だ協定ができておりませんので、それ以外の明確でない場合がありましたときは、両国間の交渉によりまして、事件々々によつて適当な措置を講じようと考えているわけであります。
又、裁判管轄権の問題は一番困難な問題でありますが、これも最近の国際慣習及び一般の国際原則に基きまして、双方の立場を考えて、最も合理的な方式に落ち着けようと思つて、只今交渉中であります。先方はもとより、国連勧告に基いて朝鮮で共同に平和擁護の行動に当つている軍隊が、日本において差別的な待遇を受けることは、軍隊の士気を維持する上にも困難であるという主張をいたしております。政府としましては併しながら、できるだけ国連協力の趣旨は貫く考えでありますが、そうかといつて直ちに行政協定と同様の取扱をいたすべきかどうかということにつきましては、考慮を要する点があるのであります。従つて、只今種々研究中であり、又事実協議中であります。なお、曾祢君の指摘されました北大西洋條約に基く軍隊の地位に関する協定、これの方式はいずれの国においても最も進んだ取扱の方式と考えられていると思いまするが、遺憾ながら未だこれは批准を完了していない、案でありますので、(「いつ批准されるか」と呼ぶ者あり)これは只今のところ直ちに適用する段階に立つてないと考えております。
なお、呉市に起りました種々のトラブルについてのお話がありましたが、これも先に労務者がストライキをやつたという点は決して喜ばしいことではありませんけれども、併しながら、労働者が自分の国内法に基いて自分の権利を擁護するということをすでに認められてストライキを行なつているという事実が、英濠軍がすでに占領軍の性格は帯びていないということをそのまま物語つていると考えております。そうして労務者としては、当然国内法によりまして、種々の権利を持つて労働條件を維持するように努力する権能があるわけであります。なお、この点につきまして、未だ協議中でありまするから確定はいたしませんけれども、今お話のプリヴエーリング・ウエージというようなものを維持するという点につきましては、私も同感であります。協定に入れる入れないは、これは今後の交渉によるわけでありまするが、実質的にはブリヴエーリング・ウエージの趣旨を貫くべきものと考えております。
直接雇用であるか間接雇用であるか——これは米駐留軍のときも問題になりまして、当然直接雇用であることが原則でありますけれども、間接雇用を希望する労務者の声に応じまして、間接雇用の方式を米駐留軍については原則としてとつておるのであります。併しこれには種々の費用が要るわけでありまして、その費用の問題が英濠軍との間に解決できれば、間接雇用の方式もとれると思つておりますが、只今そういう点について交渉中であります。
なお、呉市における種々の犯罪の問題も御指摘になりましたが、これは我々のほうでも関係者を派遣いたしまして、現地の調査をいたしました。その結果は、必ずしも一部に伝えられておるほどのものではないのでありまして、呉市自体については決して不安の状況ではないということを信じております。なお、この事件の件数が占領中よりも増加しているのではないかということにつきましても詳細に調査いたしましたが、事件の増加という事実は認められないのであります。(「大変なものだ」と呼ぶ者あり)併しながら政府としては、できるだけ速かに協定を締結いたしまして、こういう問題も根本的に解決いたすつもりでおります。
なお、いつ一体協定を国会に提出するかというお話でありまするが、これは勿論話合いが付きましたならば一番近い国会に提出する予定で只今話合いを進めておるのでありまするが、先にも申しました通りまだ交渉中でありまするし、他方七月二十六日という期限はこの交渉には直接関係はないと信じております。
最後に、費用の問題については、大蔵大臣からもお答えがあると思いますが、政府としては、原則的には、これは国連軍の費用は国連軍が負担すべきものと考えております。その趣旨でいろいろ只今交渉中であります。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/9
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010・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。
国連軍の費用負担の問題につきましては、先ほど岡崎国務大臣がお答えになつた通りでございまして、原則といたしましては、これは関係国が負担すべきもの、日本が負担すべきものではないと私は考えております。只今のところ実際問題といたしまして、いろいろな費用は国連軍で負担しております。今お触れになりましたように、いわゆる回転資金の問題が新聞にも載つておりましたし、又事務当局からも或る程度のことは聞いておりますが、今ここでお答えするだけの段階に至つておりません。検討を加えている状況であるのであります。(拍手)
〔曾祢益君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/10
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011・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 曾祢君、何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/11
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012・曾禰益
○曾祢益君 再質問をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/12
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013・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) よろしうございます。曾祢益君。
〔曾祢益君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/13
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014・曾禰益
○曾祢益君 只今外務大臣から御答弁があつたのですが、先ず基本的な問題といたしまして、この吉田・アチソン交換公文によつて国連軍が日本にいるということは、これは先ほど私が申上げましたように一つの心構えでありまして、それは従来日本におつた占領軍であつた英連邦軍というものが、この吉田・アチソン交換公文さえあれば、いわゆるそれだけで日本に法的に存在する——外務大臣は存在するという言葉を使いましたが——根拠には断じてならない。これは飽くまで政府としてもそのつもりで、何とか九十日の余裕期間中に協定を作るごとく試みた形跡も大いにあるのでありますが、できない。できない場合には吉田・アチソン交換公文があれば何とかそれをカバーできるという非常な無理な解釈をしておられると言わなければならない。(「売弁的解釈」と呼ぶ者あり)これは断じてさような解釈は認められないのでありまして、そういうことになりますれば、平和條約第六條に、一切の国連、否、連合軍の部隊は九十日以内に撤退しなければならないという、この大原則は何のために作つたかわけがわからない。(「その通り」と呼ぶ者あり)これでは、安全保障條約の場合は別としても、外国軍隊、占領軍がそのまま日本に残つておつても差支えないという重大なる結果を招来するのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私はこの意味におきまして、七月二十六日までにこの協定ができなかつた場合の政府の責任は極めて重大である。(「その通り」と呼ぶ者あり)
第一に、平和條約第六條に規定しました、あのすべての外国軍隊は安全保障條約ができない限りは撤退させる、その撤退させることを怠つたという国権損失上の重大なる外務大臣の責任がある。そのことを申上げたいのであります。(拍手)
第二には、この問題は重大なる政府の国会軽視であるということであります。即ち、我々の承知するところによれば、この議会は七月三十日で、もうこれ以上日延べは私はあり得ないと思うのでありますが、そういうことにいたしますれば、この協定がいつできましても、協定ができたときには、協定が先に調印されて、国会の事前承認の憲法第七十三條の原則は覆えされるのではないか。(「その通り」と呼ぶ者あり)私の承知するところでは、このような協定は原則として批准條項はないと思います。して見れば、批准條項なき條約につきましては、国会の事前承認が憲法第七十三條の大原則であるのであります。(拍手)国会閉会中に政府はこの国会尊重を如何なる形においてなされるかということを伺いたいのであります。
本日は、私は結論を急ぎまするが、総理大臣が御出席になつておらないのは、私は甚だ当を得ないのであります。(「その通り」「所労だ」と呼ぶ者あり)総理大臣に質問いたします。おられませんけれども、あとで御答弁を願いたい。今のような重大な外務大臣の責任に対して、総理大臣は如何なる措置を考えておられるか。而もこの問題は憲法第六十六條の原則に従つて、ただ單に外務大臣だけの責任ではございません。内閣の連帯責任の点から総理大臣はこの点をどう考えられるかということの点について、明確なる御答弁を承わりたいと思います。
只今岡崎大臣の言われた点につきまして、更にいろいろな点について納得できないのでありまするが、特に北大西洋條約当事国間の軍隊に関する協定は未だ批准されてないから、従つてこの問題に適用がないとおつしやいましたが、それはあなたが行政協定に関する問題と間違えられておるのではないか。北大西洋同盟條約当時国間の軍隊の地位に関する協定の精神がいいというならば、それが批准されておろうがおるまいが、少くともあの再び行政協定に関するごとき国権損失的な問題を作らずに、少くとも国連軍との協定においては、北大西洋同盟條約が批准されておろうがおるまいが、それと同等或いはそれ以上の裁判権に関する協定を作るべきではないか。この点に関して、いま一つ明確なる御答弁を願います。(拍手、「批准がいつまでもできないぞ」「しつかりしていないぞ」と呼ぶ者あり)
〔国務大臣岡崎勝男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/14
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015・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) お答えいたします。
只今曾祢君は、吉田・アチソン交換公文は、一種の心構えというか、或いは予約というか、そういうものであるというお話でありますが、政府はさように考えておりません。これは国際取極の一種と考えましたので、特に国会に提出いたしてその承認を求めております。(「その通り」と呼ぶ者あり)国会は承認をいたしております。従いまして、これは私は国際約定であると信じております。
なお、平和條約の第六條は占領軍の撤退に関する規定であります。そこで、占領軍の性格というものは、只今も申上げた通り国連軍の性格とは全く違うものでありまして、占領軍はすべての国権の上に位するものであります。占領軍最高司令官と申すものは、日本の天皇を含めた三権を制限する性格を持つているのであります。国連軍は全然そういう性格を持つておりません。従いまして、占領軍と国連軍とは違うのでありまして、国連軍が日本に駐留を認められるといたしましても、これは占領の継続でないことは明らかであります。
なお曾祢君は、この国会の事前承認を求めるべきであつて、(「その通り」と呼ぶ者あり)今交渉しておりまする協定は批准條項を入れるものでないと、こういうふうに結論をされまして、国会軽視ということを論じられましたが、私は批准條項を入れるつもりで交渉をいたしておるのであります。従いまして曾祢君のお考えは当らないのであります。
なお、政府は非常に怠慢ではないかというお話でありまするが、政府といたしましては、徒らに国権、何と申しますか、尊皇攘夷のような考えでやつているのではありませんので、(「冗談言うな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)これは国連協力という趣旨がすでに示しております通り、(発言する者多し)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/15
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016・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 靜粛に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/16
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017・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) (続) できるだけ国際的に協力いたしまして、その間に日本の安全も保障し、日本の経済も自立に導こうということに努めておりまして、北大西洋條約でも、曾祢君はよく御承知と思いまするが、お互いに国権の一部を犠牲にいたしまして集団安全保障の体制を作つているのであります。(「笑わせるな」と呼ぶ者あり)従つて、今回の国連協力の問題でも、でき得るだけ国際協力の趣旨を貫いて協定を結ぼうと考えているのでありまして、そのために時日がかかりますけれども、併し時日がかかつても、できるだけいい協定、正しい協定を作るという趣旨で努力をいたしておるのでありますので、さよう御承知を願いたいと思います。(「腹が痛いよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/17
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018・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 内閣総理大臣の答弁は他日に留保されました。
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〔波多野鼎君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/18
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019・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 波多野君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/19
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020・波多野鼎
○波多野鼎君 私はこの際、安全保障諸費に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/20
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021・菊川孝夫
○菊川孝夫君 私は只今の波多野鼎君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/21
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022・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 汲多野君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/22
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023・佐藤尚武
○護長(佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。よつてこれより発言を許します。波多野鼎君。
〔波多野鼎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/23
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024・波多野鼎
○波多野鼎君 私は安全保障諸費の使い方についての緊急質問をいたしたいと思います。
二十七年度の予算審議におきまして、いろいろな問題が不明確のまま国会の議決を終るに至りましたことは、当時我々の甚だ遺憾とした点でありますが、その不明確な経費のうち、特に安全保障諸費というものにつきましては、幾度も質疑応答が重ねられましたけれども、最後までこれは明確にならなかつたものであります。なぜ明確にならなかつたか。その主なる原因を考えてみますと、第一にこういう点が挙げられると思います。即ち安全保障諸費として五百六十億円という多額の経費が計上されておりますが、この経費の大部分は、占領軍が駐留軍に変るに応じて、六大都市から地方に移転をする、その移転の費用が大部分である。然るに日本独立後、駐留軍としてどれほどの部隊が留まるのか、これによつて営舎の建設その他の経費の大小がきまるのでありますが、どれだけの部隊が駐留するかについては最後まで秘密にされておりました。従つて、安全保障諸費中、占領軍移転の経費なるものの算定の基礎が全く不明のままで五百六十億円なるものの議決がなされたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ち政府は、これだけの経費を承認してもらいたい、併しながらこの経費算定の合理的な基礎たる駐留軍の部隊の数などについては、これを明らかにすることができぬという態度で、與党の多数を頼んで押し切つたのであります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)
第二に、この経費が不明確でありました理由は、安全保障諸費につきまして、三月中旬、時の占領軍最高司令官リツジウエイ大将が一つの重大なる意見の発表をしたことがあります。即ち当時の最高司令官は、占領軍が駐留軍に変つて六大市から周辺の田舎に移転するに要する経費については、日本側にこれを負担させるつもりはないということを明確に述べたのであります。よつて予算委員会におきましては、安全保障諸費を削減して、他の緊急なる民生安定の経費に廻すべきであるという見解が相当強くなつておつたのであります。然るに大蔵大臣は、このリツジウエイ司令官の意向なるものは、これは個人的な希望的な見解に過ぎないと主張いたしまして、強引に五百六十億円の議決を要請いたしたのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)かくて安全保障諸費は性格不明確のまま今日に至つておるのであります。ところが、最近聞くところによりますと、リツジウエイ元最高司令官の見解は、單に個人的な希望的な意見ではなくて、十分根拠のある、而もアメリカの予算の裏付けができた意見であるということが伝えられております。そこで大蔵大臣に対して次の諸点を質したいと思うのであります。
第一は、政府は安全保障諸費のうち、三百六十億円乃至三百八十億円が駐留軍移転費用として計上されておるが、これが不用になるかも知れない。或いは不用になるかのごとく想定して、いろいろ計画を立てておるということでありますが、これは事実であるかどうか。第二に、不用になるといたしますと、二十七年度予算の総則におきまして、この安全保障諸費なるものは、これを警察予備隊並びに海上保安隊の経費に移用流用することを認めてあります。そこで駐留軍移転費のうち不用になつた部分を、或いはその一部を、警察予備隊又は海上保安隊の経費に流用することを考えておるかどうか。これが質問の第二点であります。第三に、駐留軍移転費用中、不用の部分をその他の経費に振向ける意向があるかどうかという点であります。聞くところによりますと、池田大蔵大臣は、近ずく総選挙を前にいたしまして、貧乏人を楽にせよというスローガンを発明されたそうであります。(笑声、「本当ですか」「麦を食えばどうした」と呼ぶ者あり)これは貧乏人を楽に生活させようという意味で、(「米を食わせるか」と呼ぶ者あり)貧乏人を楽に往生させようという意味では断じてないことを信ずるものでありますが、若し不用部分が生じたならば、民生安定のためどのような経費に振向ける構想を持つておいでになるか、これを承わりたいのであります。戰争の犠牲者や、傷痍軍人の援護の問題、生活保護費の増額の問題、給與ベースの引上げの問題、地方財政平衡交付金の増額の問題、こういつたような諸問題は、二十七年度予算の審議中において各委員から熱烈に希望された点でありますが、そうしてこれらの希望を満たすためには財源は幾らあつても足りないという状態でありますが、幸いに或いは仮に三百億円以上の駐留軍移転費が不用になれば、こういうような経費のうち、これをどういうふうにお使いになるかということをお伺いいたします。これを他の経費、即ち警察予備隊と海上保安隊以外の経費に振向けようとすれば、予算の補正をする必要がございます。補正予算は来たるべき繰上げ国会に提出するかどうかということについて、政府のほうではまだ意向がきまつていないように承わつておりますが、この際このような不用の費用が出たのに応じて、予算の補正をする意向があるかどうかをはつきり承わつておきたいと思います。我々の国民の血税であるものが、三百億円以上その使途不明になろうとしておる現状であります。行方不明になるかも知れない。これは誠に看過すべからざる事態であります。蔵相は以上の諸点について、国民に対し事の真相を明快にする意味の答弁をしてくれるように私は強く要望するものであります。
以上お尋ねいたします。
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/24
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025・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。安全保障諸費五百六十円につきましては……(笑声)五百六十億円につきましては、先般、予算委員会、本会議で申上げたところと何ら変づておりません。内容不明とおつしやいまするが、内容は御説明したはずでございます。又リツジウエイ司令官のお話の点につきましても、あなたがここでおつしやつたような気持は今も変つておりません。(「気持か」と呼ぶ者あり)従いまして、五百六十億円のうち三百六十億円余るとか三百八十億円出て来るというふうな考え方は、私は持つておりません。こう答えますると、もうこの次のことにつきましては、お答えする必要がないのでありまするが、お話の通りに海上保安庁或いは警察予備隊のほうに流用移用の規定はございます。必要が起れば流用移用は或る程度議会の承認なくてもできるのであります。ただ若し万が一、万が一そういうことが起つた場合に、何百億というものの予算の流用移用というものは、予算の法規上はできましても、政治的には相当むずかしい問題じやないかと思うのであります。ただ問題がこの前の国会で協賛を得ましたときと変つておりませんので、只今この問題につきましてはお答え申上げることはできません。なお、昨日の問題で、貧乏人を楽にするという点について、楽に往生させるなんてとんでもない話で、(「それが方針じやないか」と呼ぶ者あり)社会党その他はインフレ政策をやつて貧乏人を苦しくしたのであります。我々は安定経済政策をやりまして、貧乏人を楽にして行く、今後も、より楽にしようといたしておるのであります。(拍手、「重ね重ね腹が痛くなるぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/25
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026・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、消防法の一部を改正する法律案(衆議院提出)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。地方行政委員長西郷吉之助君。
〔西郷吉之助君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/26
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027・西郷吉之助
○西郷吉之助君 只今議題となりました消防法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
本法案は衆議院提出にかかるものでありまして、法律に基き、職務によらないで、一般人として消防吏員、消防団員等の行う消防作業に協力従事した者が、そのために災害を受けた場合に、その者に対しまして療養その他の給付を行うことを内容としているものでございます。即ち消防法の規定によれば、火災その他の災害発生の場合、当該消防対象物の関係者その他命令で定める者は、消防隊が災害現場に到着するまで消火、延焼防止、人命救助を行うべき義務があるが、この場合、現場附近にある者は、これの消防活動に協力しなければならないことに相成つております。又消防吏員又は消防団員は、緊急の必要があるときは、災害現場附近にある者を消火その他の消防作業に従事させることができる旨を規定されております。然るに現行法におきましては、これら消防作業に協力従事した者が不幸にして災害を受けても何ら補償の途が講ぜられておりません。そこで、今回これらの人々がそのために死亡し、負傷し、若しくは疾病に罹り、又は癈疾となつた場合におきましては、これに対しまして市町村はそれぞれ條例の定めるところによりまして療養その他の給付を行うことに規定せんとするものでございます。
地方行政委員会におきましては、七月十七日、衆議院議員川本末治君より提案理由の説明を聞き、更に政府関係者との間に質疑応答を重ねましたのち討論に入り、社会党第四控室の若木委員及び同第二控室の吉川委員より、本法律案は災害給付を市町村の條例の定めるところに委ねているが、その財源については国において十分考慮されたいとの希望條件を付して本法案に賛成する旨を述べられ、採決の結果、全会一致を以ちまして、本法案は原案の通りこれを可決すべきものと決定いたした次第でございます。
以上御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/27
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028・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/28
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029・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/29
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030・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第二、行政管理庁設置法の一部を改正する法律案、
日程第三、労働省設置法の一部を改正する法律案、
日程第四、文部省設置法の一部を改正する法律案、
日程第五、厚生省設置法の一部を改正する法律案、
日程第六、建設省設置法の一部を改正する法律案、
日程第七、法制局設置法案、
日程第八、調達庁設置法の一部を改正する法律案、
日程第九、法務府設置法等の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院送付)、
以上八案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/30
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031・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。
〔河井彌八君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/31
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032・河井彌八
○河井彌八君 議題となりました法律案八件は、政府の重要政策の一つとして今回国会に提出せられました法律案二十七件の一部でありまして、いわゆる行政整理の計画に基いて立案せられまして、いずれもかれこれ緊密な連関を持つておるものであります。この二十七件のうちで二十六件は行政機構の改革に関するもの、一件は行政機関定員の改正に関するものであります。これらの二十七件の案名はここに朗読を省略いたします。内閣委員会は五月七日から右各案の審査を付託せられまして、十二日から予備審査に入り、三十日から本審査をいたし、委員会の開会はこの関係諸案だけで四十回に上つております。このうち九つの常任委員会、即ち地方行政、経済安定、電気通信、郵政、通商産業、人事、法務、厚生及び大蔵の各委員会と連合会を十七回開いております。又参考人の意見も二回聽取しております。その聽取いたしました案件は、保安庁法案関係及び外国為替委員会関係の二つであります。本日上程の法律案八件と、本日は上程されておりませんが、資源調査会設置法案、これは七月十四日に審査を終了いたしまして、報告書を提出いたしたのでありまして、爾余の十八件はこれから審査を続行せんとするものであります。
先ず順序といたしまして、政府の行政整理計画の大要を御紹介いたします。前国会におきまして定員の整理をいたしましたが、これに引続きまして今度の国会におきましては機構改革を企図いたしておる。これがこれらの諸案であるのであります。
この機構改革の目的をどこにおいておるかという点でありますが、行政機構の簡素化をいたし、責任体制を確立し、以て日本の国情に適して、最近のこの新事態に即応せしむることを目的とするという説明であります。
第二といたしまして、行政機構改革の基準をどこにおいておるかと申しますと、八点あります。一つは、行政委員会の廃止、審判的機能を有せざるものを廃止するというのであります。二には、外局たる庁の廃止。三には、官房及び局の中の部を廃止する。四には、総務府のあり方を、もつと強力な、而うしてこれまでのように雑然といろいろな行政機構が入つておるものをもつと簡素なものにするということ。五には、監察制度の整備強化。六には、治安機構の整備。七には、電気通信の公共企業化。八には出先機関の整理であります。
その内容について申しますれば、行政委員会の廃止に関しましては、統計、全国選挙管理、公益事業、地方財政、外国為替管理、電波監理、中央更生保護、証券取引、公認会計士管理及び外資委員会の廃止でありまして、これまで二十三ありました行政委員会をば十四といたすというのであります。次には庁の廃止でありますが、これは入国管理、国税、引揚援護、食糧、林野、資源、中小企業、海上保安、航空、経済調査の廃止でありまして、更に印刷庁、造幣庁、工業技術庁は附属機関とするのであります。次には局の廃止であります。九十二ありますものを七十四といたすのであります。この中に外局にある庁が三つ入つております。四には部の廃止であります。部は百二十九ありますけれども、四十五といたします。この中で行政組織法の二十四條第二項によるものが三十五あります。これが廃止せられるものの中に入ります。これに代りまして監を置くもの、これが九つあります。監は衆議院の修正によりまして十四と相成つております。
三番目の事項といたしまして主な廃置……廃止、設置の事例を申上げますれば、第一には、人事院、即ち行政組織法の機関でないところの現在の人事院を廃止いたしまして、総理府の外局の国家人事委員会とすること、二には、保安庁の設置、これは総理府の外局とすること、三には、経済安定本部を廃止いたし、総理府外局の経済審議庁を設置すること、四には、法務府を、省、即ち行政組織法の機関の中の省に移すということ、そうして法制意見の三局をば法制局といたしまして、これを行政組織法以外に移しまして、内閣に法制局を設置するというのであります。五には、電気通信省を廃止いたし、公共企業体とすること、この中には国際電気通信というものは政府出資の特殊会社とするという案であります。
第四は、只今の構想に基きまして定員法の定員の整理関係が出て参りまして、およそ三千五百人ということになつております。この三千五百人の整理に関しましては、それの措置といたしまして定員外制度を設けること、それから退職手当をこの前の整理と同じように八割を與えること、その他、法律には関係ありませんが、転職斡旋を十分にするというようなことであります。
第五には、施行期日といたしまして、本年の七月一日ということになつておるのでありますが、これは当然修正をいたすべき点であります。
第六には、これに関しましてそれぞれ予算措置がとつてあるのであります。
第七といたしまして、委員会は各案の審査に当りましてどういう措置をとるべきかということをたびたび懇談会を開きまして検討をいたしたのであります。而してこれは極く大体の決定でありますから、個々の案につきましては必ずしもこの通りに行つておりませんが、大体の方針を申上げます。第一には、行政委員会、即ち外局、これの存廃につきましては、政府は審判的性質を有するものを存置いたして、それ以外のものは廃止するという方針であるという説明でありましたけれども、特に必要あるものは審判的の性質がないものであつてもこれを存置するという意見であります。第二は、外局の庁の存廃につきましても、行政委員会に対すると同じ考えを持つております。第三には、官房又は局にあるところの部、特に必要あるものはこれを国家行政組織法の附則別表第二に移しまして、二十四條の二の第一項、第二項の「昭和二十七年七月三十一日までは」というのを「当分のうち」といたしまして、これを認めました。併しこれは今後の濫設を嚴に戒める考えであります。第四には、監、これは改正案において新設いたしました。監はこれを認めない。その理由は、この性格が甚だ不明であるということと、行政上の責任の所在が明確でないということであります。第五には、次長……局長の次の次長、これは原則として認めない。併しその所掌事務の性質及び事務分量等を勘案いたしまして、特に存置の必要ありと認めたものに限つてこれを存置するということ。第六の官房長も同様であります。第七には、部、次長、官房長を原則として認めない。只今申しました通りそういうのは各省庁におきまして濫設の弊に陷つておるところの課を整理して、有力なる課長を置き、これを中心とする行政の運営を期待する、こういう点であります。
これから日程に上つておりまする各案につきまして、委員会において審査いたしました経過並びに結果を報告いたしますが、詳細を盡すことを避けまして、努めて各室の内容を申上げまして、なお最も論議を盡しました諸点を明らかにいたします。原案に対して提出せられたる修正個條を正確に御報告申上げようとするのであります。
行政管理庁設置法の一部を改正する法律案について申述べます。
提案の理由といたしましては、現行の行政機構の簡素化を図るという方針の下に、統計委員会及び経済調査庁を廃止する。統計委員会についてはその所掌事務の全部を、経済調査庁につきましてはその一部を、それぞれ行政管理庁に統合すると共に、行政監察機能を整備強化して、能率的且つ合理的な行政運営の確立を図ることにするというのであります。
その案の内容について概略申上げますれば、第一に、政府の今次の行政機構改革の方針として、各種の行政委員会は審判的機能を主とするものを除いて他は廃止することになつておりまするが、この方針に従つて、総理府の外局たる統計委員会はこれを廃止する。その所掌事務と権限の全部を行政管理庁に統合いたしまして、これを掌る内部部局といたしまして、従来の管理部及び監察部のほかに新たに統計基準部を加えることとしているのであります。第三には、経済統制の撤廃に伴つて、従来主として経済法令違反行為の調査を行なつた経済調査庁を廃止して、その所掌事務のうち行政機関及び各公共企業体の監査又は調査に関する部分のみを行政管理庁に吸收統合することといたし、新たに行政管理庁の所掌事務及び権限として、各行政機関の業務運営の監察に関連する限りにおいて、公共企業体の業務と国の委任又は補助にかかわる業務との実施状況を関係者行政機関と協力して調査することができることといたしております。又これらの監察乃至調査に関する事項の処理に当るところの部局はこれを監察部といたし、更にこの事務を分掌させるため行政管理庁の地方支分部局として全国八カ所に地方監察局を設置し、各局に内部部局として二部を置くことにいたしました。このほかに、監察上必要ある場合には、行政管理庁長官は公私の団体その他の関係者の協力を得て所要の資料の提出を求めることができるようにいたしております。第三には、行政管理庁に新たに行政審議会及び統計審議会の二つの附属機関を置くことにいたしております。行政審議会は行政制度及び行政運営に関する重要事項と監察の結果に基く重要な勧告事項を調査審議する諮問機関でありまして、又統計審議会は、統計調査の審査、基準の設定及び総合調整並びに統計報告の調整に関する重要事項について調査審議いたし、並びにこれらの事項に関して長官に建議する機関であります。第四に、経済調査庁法を廃止すると共に、同法の規定によつてこの法律施行前に経済調査官等が行なつた証明、証拠の提出等の行為は、同法廃止の後もなお効力を持つことといたしておるのであります。なお府県の段階の機関といたしまして設置されておりまするところの地方経済調査局は、残務処理のために昭和二十八年三月三十一日までの間新設地方監察局に附置することができるものといたし、それ以前でも残務処理が終了すれば政令で以て定めるところによつて廃止する措置をとることになつております。
内閣委員会におきましては、経済安定委員会との連合委員会を三回、内閣委員会みずからを四回開きまして審査いたしたのであります。論議の中心となりました点は監察機構に関するものであります。政府が原案の監察機構の構想について説明するところによりますと、行政監察は現在各行政機関の手で部内監察を行なつておるものでありまするが、なお監察の周到を期するために行政管理庁の監察部の手によつて外部監察を行わんとするものでありまして、地方支分部局として全国に八つの管区に地方監察局を設置いたし、中央地方を通じて千二百二十八名の定員が予定せられておるという説明であります。現行の経済調査庁は経済法令の励行が主な任務でありまするが、今後この種の事務は各省の手で行わしめることといたしますので、この際、経済調査庁法を廃止いたしまして、経済調査庁もこれに伴つて廃止することにいたすのであります。而して現在の経済調査庁職員のうちで約六割を新機構に收容いたしまして、これらの人々の監察に関する知識経験を活用せんとするという説明でありました。委員の側からは、監察の周到徹底を期するがためには、原案のごとく八つの地方部局を置くだけでは不十分であると思われる。なお各都道府県にも下部機構として地方監察局を設ける必要があるのではないかという強い質疑があつたのであります。これに対しまして政府は、小さな地方局を数多く置くよりも、八つの管区にまとめて強力な監察局を置いて、この強化された機構によつて機動的に監察業務を行うことが最も能率を挙げ得るものであるとの答弁がありました。併し委員の多数は、監察の手足となるべき第一線の各都道府県に地方監察局を配置いたして監察の周到を期するのは今日の実情に照らして最も必要であるという結論であります。
討論の段階に入りまして委員全体から次の修正案が提出せられたのであります。これはお手許に配付してありまするから朗読を省略いたします。但しその趣意を申上げますると、現在の行政管理庁の地方支分部局であるところの八つの地方監察局をば管区監察局と改称すること、第二には、右管区監察局の所在地以外の都道府県に地方監察局を新設するように改めること、第三に、この改正法律の施行期日を、原案では、本年の七月一日とありまするのを、本年の八月一日に改めるということであります。改正の理由につきましては説明する必要がないと認められまするからこれを省きます。
討論に入りまして、竹下委員から、この終戰後に道義が乱れて不正事件が頻発しておる今日に、かような監察制度を確立いたして監察の周到を期するために、地方監察局に重点を置いて監察業務を運用することが絶対に必要であるという意味を以ちまして、この修正案を含む原案について賛成の意を表せられたのであります。従いまして採決の結果は、この修正案を入れまして原案は全会一致を以て可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に労働省設置法の一部を改正する法律案について申述べます。
提案の理由といたしましては、やはり行政機構改革の方針に従いまして労働省におきましても労働統計調査部を廃止して、特別な職といたしまして統計調査監を置くということ、なおこの際、婦人少年室を本省の地方支分部局として設置法に規定することであります。内容といたしましては、只今申上げました労働統計調査部の廃止及びこれに代るところの統計調査監の設置、第二点といたしましては、只今申しました本省の地方支分部局として各都道府県ごとに婦人少年室を設けて本省婦人少年局の所掌する婦人及び年少労働者に特殊な労働條件の向上と保護を図ること、婦人及び年少者に特殊な労働問題に関すること等の事務を取扱わせるというような点であります。この婦人少年室は設置法に基く地方支分部局としては新設の機関でありまするが、従来、本省の婦人少年局の職員を各都道府県に常駐せしめて、これらの事務を行わせておりましたものを、この際、機構として中に入れようというのであります。第三点は、労働に関する団体の役職員への就職禁止に関する労働省の権限事項を削除いたした点であります。これはポツダム宣言の受諾に伴い発するところの命令に関する件に基く労働省関係諸命令の廃止に関する法律の施行によりまして、労働省の事務としてはなくなつたものでありまするから、これを整理するのであります。
内閣委員会は委員会を開くこと四回、その際に論議の中心となりましたのは、原案におきましては大臣官房に置かれておりまするところの現在ありまするところの労働統計調査部を廃止いたし、これに代えて統計調査監一人を置くという点であります。労働統計は労働行政における基本的の業務でありまして、例えば労資間における紛争の処理に当つて労働統計が如何に重要な役割を果しておるか、又日本が国際労働機関に加入いたす以上は、将来この労働統計を完備することが如何に重要であるかということを考えまするときに、この部を廃止せんとする政府の原案は甚だしく労働統計の重要性に関する認識を欠く感ありという意見が強かつたのであります。そうして実際におきましても、これを廃止して統計調査監を置いてみましたところで、何ら事務の簡素化になるという実を挙げるとは認められないのでありまして、のみならず却つてその責任の所在が不明確になるという虞れがあるということでありまして、結局他の法律案においても同様な取扱がありまするが、部制を復活いたしまして監を廃止するということになつたのであります。そうして次のごとき修正案が発議せられました。これもお手許にありまするから朗読を省略いたしまして内容を申上げますれば、大臣官房に現在通り労働統計調査部を存置して原案の労働調査監を削る、又次に、この改正法律の施行期日をば原案では昭和二十七年七月一日とあるのを昭和二十七年八月一日に改めんとするものであります。
この修正を含むところの原案を採決いたしましたところが、全会一致を以て修正可決すべきものと議決いたした次第であります。
次に文部省設置法の一部を改正する法律案を説明いたします。
文部省の機構改革は同様に行政簡素化の趣意に則つたのでありまするが、そのほかに、従来の機構のうちで不合理であり又不便な点があるので、これを改めまして、日本のこの実情に即した所要の調整を加えようとするのであります。これが提案の理由であります。その内容といたしまして、第一には、内部組織を簡素化する趣意によりまして、管理局の教育施設部を廃止し、又大臣官房の事務を本来の事務である人事、総務、会計に関するものに限定いたし、他の事務はすべてそれぞれ関連ある局の所掌に属せしめるということにいたしました。なお調査普及局という局をば調査局と名称を改めまして、結局、新機構におきましては官房とそのほかに五局とするというのであります。第二点は、従来の機構の不合理、不便な点を改めたことでありまして、旧機構では指導行政と管理行政とを分離する方針をとられておつたのであります。これは連合軍司令部の考えに基いたものでありまするが、併し、従来の経験によりますれば、これはよい面もありまするけれども、他において不合理、不便な点がありますのみならず、責任の所在が明らかでないという遺憾なことがありましたので、これを合理的に且つ能率的に運営のできるように改めたのであります。この観点から改革の主なものとして例を申上げますと、先ず教科書行政に関するものといたしましては、従来教科書の内容に関する事務は初等中等教育局、教科書の刊行に関する事務は調査普及局、教科書の検定に関する事務は管理局でそれぞれ扱うことになつておりまして、教科書に関する事務が三局にまたがつておつたという不便なことがありました。これをこのたびは初等中等教育局で一体的に処理することができるようにしたのであります。もう一つの例は、大学の設置認可に関する事務は従来管理局の所掌とせられ、内容面を取扱つておりまする大学学術局が管理局に対して所要の勧告をするという形になつておつたのであります。これらの二重行政を改めまして、大学の設置認可に関する事務はすべて大学学術局において行うことといたしておるのであります。かような方針で、初等中等教育局、大学学術局、社会教育局、調査局、管理局等の所掌事務についてそれぞれ調整を加えたのであります。従つて今度できまするところの新機構の官房五局の所掌事務を説明すべきでありますが、これは省略さして頂きます。最後に第三点といたしまして、現行法上疑義を生じ易い規定とか重複する規定とかいうものを整理いたした点であります。
内閣委員会におきましては四回委員会を開いております。この結果明らかにされた点の主なものを申上げますと、第一には、現行の文部省の機構は、総司令部の指示に基いて、いわゆるチエツク・アンド・バランスの精神に基き、指導行政と管理行政とを分離して、文部大臣の専断を防止せんとする趣旨に基いてできたものでありましたが、この制度は、従来の経験に鑑みまして、例えば大学の設置、それから教科書の只今申上げた例にかつても明らかであるごとく、行政簡素化から見ましても、責任の所在を明確にするという点から見ましても、適当でないと認めたのであります。委員会もこの点につきましては政府の考え方を是認いたしております。第二点は、現行制度においては管理局の中に教育施設部が置かれておるのでありまするが、この教育施設部の所掌事務は管理局のほかの事務と著しく性質を異にするばかりでなしに、その事務も文部行政の上で重大な比重を持つておりまするが故に、單に部制整理という理由で以てこの部を廃止せんとする原案には賛成しがたいという強い意見が出たのであります。
討論の段階におきまして、内閣委員会の全員から原案の一部を修正する次の修正案が発議せられました。その修正案はお手許にありまするから朗読を省略いたすのであります。内容を申しますと、管理局に現行通り教育施設都を置くというのであります。そうして施行期日につきましては、他の法律案と同じように本年七月一日とあるのを本年八月一日に改めんとするのであります。修正の理由につきましては明瞭でありまするからこれを省略いたします。
かくいたしまして修正案を含むところの原案について採決をいたしましたところが、全会一致を以て修正可決すべきものと議決いたしました次第であります。
厚生省設置法の一部を改正する法律案について申述べます。
提案の理由といたしましては機構簡素化の目的で本案を提出したのであります。
その内容を申しますと、第一には厚生省外局であるところの引揚援護庁を廃止して、内部部局として引揚援護局を置くことにしてあります。第二には、内部部局であるところの統計調査部、国立公園部、環境衛生部を廃止することといたしたのでありまして、環境衛生部の事務は公衆衛生局に移しまして環境衛生課において処理することになつております。第三は、厚生省の地方支分部局であるところの駐在防疫官事務所を廃止して、引揚援護庁の地方支分部局である引揚援護局、復員連絡局及び地方復員部をそれぞれ厚生省の地方支分部局とした点であります。第四は、特別な職として従来設けられていた医務局の次長を廃止し、大臣官房に統計調査監及び国立公園監を、引揚援護局に次長二人を置くこととした点であります。なお、このほか必要な字句の修正等條文の整理を行なつておる点もあります。
内閣委員会は、厚生委員会と連合委員会を一回、又内閣委員会自身の委員会を三回開きまして審査に当つたものでありますが、重要な論義の点について申上げます。第一点は、厚生行政において統計調査の事務は重要な中枢的の地位を占めておるのみならず、今後厚生行政の機能を十分に発揮するがためにはこの部の活動に期待することが多大であるにかかわらず、原案ではこの部を廃止せんとしておるのであるが、この部を廃止する理由については全く了解ができない。国立公園部の廃止についても又同様であるという意見が出ております。第二点は、医務局には現在国立病院の地方移譲という重大な懸案が残されておるほかに、技術出身の局長の下に事務補佐の次長が特に必要であるのに、この次長を廃止するのは失当である。又こういう公衆衛生局の環境衛生部を廃止することも当を得ないという意見が強く述べられたのであります。第三点は、原案では政府の外局整理の一般的原則によつて引揚援護庁を内局にすることになつておりまするが、過般戰傷病者戰没者遺家族等援護法が成立いたしまして、来年三月末日までに二百万人に近い全国戰傷病者、戰没者、遺家族等に対してこの法律に基く措置をいたさなければならんのでありまして、その事務は主としてこの引揚援護庁の手によつてなされるのであるにかかわらず、今直ちにこの機構に改変を加えることは当を得ないという点から、この引揚援護事務の終結する明年の三月三十一日までは現在のまま外局として存置すべきものであるという意見が時に強く述べられたのであります。
討論の段階におきまして、内閣委員の全員から原案の一部を修正する修正案が提出せられました。これもお手許に差上げてありまするから朗読をいたしませんが、その修正の要点は次のごときものであります。第一には大臣官房に現行通り統計調査部及び国立公園部を存置すること、第二には、右に伴い原案の統計調査監及び国立公園監を創ること、第三、医務局に現行通り次長一人を置くこと、第四、公衆衛生局に現行通り環境衛生部を存置すること、第五、引揚援護庁を昭和二十八年三月三十一日まで現行通り存置すること、第六、この法律の施行期日をば本年七月一日とあるのを八月一日に改めることであります。修正の理由につきましては説明を要さないと認めます。かくてこの修正案を含むところの原案について採決をいたしましたところ、全会一致を以て修正議決すべきものと議決いたした次第であります。
次に建設省設置法の一部を改正する法律案について説明申上げます。
提案の理由といたしましては、建設省の内部部局の組織を改めること、総研府の外局たる首都建設委員会を建設省の外局として置くこと、又これらの改正に伴う建設省の所掌事務に関する規定について所要の改正を行い、併せて建設省所管行政の監察機構を整備するというのであります。
内容について申上げますれば、改正の第一点は、建設省の内部部局が、従来管理局、河川局、道路局、都市局及び住宅局並びに営繕部の五局一部でありますが、これを改めまして、計画局、河川局、道路局、住宅局及び営繕局の五局及び官房といたすものであります。その各改正案におきまする各局の所掌事務につきましては説明を省略いたします。第二点は、総理府の外局として置かれておりまするところの首都建設委員会をば建設省の外局として置くことといたし、委員会の事務局の職員は建設省計画局の職員のうちから兼ねて任命することにいたした点であります。第三点は、技監制度を廃止いたし、これに代えて建設技術会議を附属機関として設置し建設省の所管行政にかかわる技術に関する重要事項を審査することといたした点であります。第四は、本省に監察官十人以内を置いて所管行政の監察を行わせると共に、建設大臣が必要ありと認める場合には、建設省の助成にかかわる事業の実況の検査を行わせることができることといたし、建設省の所管行政特に建設工事の適正な施行を確保いたそうとする点であります。第五点は、従来経済安定本部物価局において所掌しておりまする地代及び家賃に関する事務を、経済安定本部の廃止に伴いまして建設省の住宅局の所掌事務といたし、住宅の緊急措置に関する事務、及び連合国最高司令官から政府に返還されたいわゆる特殊物件に関する事務を整理することといたしたのであります。改正の第六点は、測量審議会は昭和二十七年三月三十一日限りで廃止になることになつておりましたが、この審議会において審議するを適当とする事項については一部審議が未了のためにいま一年その廃止を延期することといたしまして、これに伴いまして測量法に所要の改正を加えんとするのであります。
内閣委員会は五回開会いたしました。その審議の間におきましての重要なる意見を申述べます。第一点は技監制度を現行通り存置せしめようとする点であります。これに関しましては建設委員会よりも現行通り技監一人を存置すべしという強い要望があつたのであります。内閣委員会におきましても、建設省内の技術官の最高指導者としての技監を現行通り存置することは建設行政を円滑に遂行し得るゆえんであるとして、技監制度の存置について強い主張がなされたのであります。第二点は原案の建設技術会議の点であります。政府の提案理由によりますれば、現行の技監制度を廃止して、これに代えて建設技術会議を建設省の附属機関として設置することになつておるのでありまするが、現行の技監制度を存置する限り建設技術会議はもはやその設置の理由がないという意見が強く述べられたのであります。第三点といたしましては、建設委員会から、荒廃林地復旧事業と建設省の砂防事業とを統一して建設省に砂防局を設置すべしという強い要望が出たのであります。この点につきましては、内閣委員の多数は、砂防機構の強化とこれを実現するための一元化とは、災害頻発の国情に照らしまして最も必要と認めたのでありまするが、今回の機構改革においては修正案は提出せず、政府においてこの問題について十分検討いたした上に、最近の機会において砂防局の実現に努力せられたい旨の強い要望がなされたのであります。
かようにいたしまして、討論の段階におきまして、内閣委員長から各委員多数の意向に基いて作りました修正案を提出いたしたのであります。その発議いたしました修正案はそのままお手許に差上げてありまするから朗読を省略いたしまするが、その要点は次の三点であります。第一点は、原案の建設省の附属機関である建設技術会議を削ること、二は、現行通り技監一人を存置すること、三は、この法律の施行期日を昭和二十七年七月一日とあるのを八月一日に改めることであります。修正の理由はこれを略します。
そこで、この修正案を含むところの原案について採決をいたしましたところ、全会一致を以て修正議決すべきものと決定した次第であります。
次に、法制局設置法案について説明を申上げます。この法律案の提案理由は、内閣における法制の整備統一に関する機能を強化するために、これまで法務府の所掌事務となつておりました内閣提出の法律案及び政令案の審議立案、條約案の審議、法律問題に関する意見の陳述並びに内外及び国際法制に関する調査研究等の事務を内閣に移して、法制局を設置せんとするものであります。
内容について申上げますれば、第一に、只今説明申しました事務をば内閣に置かれるところの法制局をして行わしめんとする点であります。この機関は総理府の所属といたさずに内閣の直属機関といたしているのであります。その理由は、この機関の任務が法制に関して直接に内閣を補佐するものであるというのであるからであります。第二は、法制局の組織といたしましては、その長は内閣が任命するところの法制局長官といたし、その下に次長を置き、更にその下に意見部、第一部及び第二部の三部並びに長官総務室を置くこととなつております。なお、法制局には、長官、次長のほかに、その職員といたしまして、参事官、事務官等が置かれ、部長は参事官を以て充てることといたし、その定員は現在の法務府における相当部局の定員を基礎といたしましてこれを定め、長官、次長を含めて全部で六十一人となつております。第三に、法制局長官は内閣官房長官と並んで法律問題に関し内閣を補佐する職でありますので、その地位に鑑みましてこれを特別職とすることにいたしております。第四に、関係法律の一部が改正せられまするのは、国家公務員法、特別職の職員の給與に関する法律、恩給法及び国家公務員のための国設宿舎に関する法律であります。
内閣委員会は、委員会を開くこと五回、この案につきまして審議をいたしたのでありますが、その結果明らかになつた点、又は委員から述べられた主な意見を申上げますれば、第一には、この法律案で新設される法制局は、以前の内閣制度の下において存在しておつた法制局とほぼその構想を同じくするものであります。即ちこれは内閣法上の機関でありますが故に、その組織及び定員については、国家行政組織法、行政機関職員定員法によつて規律されるものでないという点であります。第二は、原案では法制局の内部部局といたしまして第一部、第二部とは別に意見部が置かれているのでありまして、意見部では、平素、法律案、政令案、條約案等の審査に当らないことになつているとの政府の説明でありますが、これに対して委員側の意見は、平素これらの法律案等の審査に当つている者が、これら法制上についても最も適切な意見を述べ得られるのであるから、法制局の三つの部はいずれも平素各法律案等の審査に当るようにするのが適当であるという強い主張が述べられたのであります。
討論の段階においては、内閣委員長は委員の多数の意見に基きまして、一部本案の修正案を提出いたしました。その提出案はここにお手許にありまするから朗読を省略いたします。内容といたしましては、原案の内部部局として置かれるところの意見部、第一部、第二部をば、第一部、第二部、第三部と改めること、そのほかに施行期日については他の法律案について申上げたと同様であります。討論に入りまして上條委員から、この修正案を含むところの原案は、法務府設置の当初の趣意に反するという理由を以ちまして反対の意見が述べられました。採決の結果は、この修正案を含む原案は可決すべきものと多数を以て議決せられたのであります。
次に、調達庁設置法の一部を改正する法律案について申述べます。総理府の外局の一つでありまするところの調達庁におきまして、その組織の簡素化を図ることとして、調達庁設置法に所要の改正を加えたのが本案提出の趣意であります。
内容といたしましては、内部部局の整理の点であります。即ち調達庁の内部部局は官房及び財務、業務、管理、労務の四部で構成されておりますのでありますが、これを整理いたして、総務、不動産、労務の三部にいたしますると共に、特別の職として置かれておりますところの次長、顧問、官房長、部の次長を廃止せんとするものであります。即ち内部部局でありまする総務、不動産、労務の三部の所掌事務につきましては説明を省略いたします。第二点は、調達庁長官の権限の委任に関する点であります。調達庁長官は、労務に関する事務と、行政協定第十八條に基いて駐留軍の行為によつて生じた損害に対する賠償についての請求の処理に関する事務の一部を、都道府県知事に委任できるという改正をしようとするのであります。第三点は、地方支分部局の整理の点であります。調達庁に置かれてありまする札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、呉、福岡の八つの調達局の中で、呉調達局を廃止して、その所掌事務を大阪調達局に移管せんとするのが原案であります。第四点は、地方支分部局の調達局の内部組織の整理の点であります。即ち、調達局は官房並びに五部で構成されておりまするが、これを整理いたしまして、総務、事業、不動産の三部にせんとするものであります。なお、附加えておきますが、この整理によるところの定員の減少は千九百九十一人でありまして、現在五千百七十三人であるのでありますが、三千百八十二人となる次第であります。
内閣委員会は、委員会を開くこと七回、本案の審議に当つたのでありますが、そのうち主な点は、第一に、従来調達庁は占領軍の下部組織のごとき働きをいたして調達事務を処理して来たものであつたのが、講和條約発効後の今日、調達庁の性格、その任務は変つておるかという点につきまして検討せられました。政府の説明によりますれば、駐留軍に対する調達方式が大部分は直接調達となつた今日におきましては、調達庁の事務は大体残務整理の程度のものになつて、渉外関係も減少するものと考えられる。従つて政府は、本庁の四部を三部に減少するほか、特別の職として置かれておるところの庁の次長、顧問、官房長及び部の次長を廃止いたし、又地方支分部局の呉調達局を廃止して、これを大阪調達局の管轄に移さんとするものであるということを申したのであります。この構想に対しまして各委員から激しい批判が加えられたのであります。今日、調達方式が需品及び労務の大部分が直接調達に変つたがために、いわゆる出血入札が行われて、延いては日本の経済に大きな悪影響を及ぼす虞れもあるのであつて、従つて今後は被害者に対する補償、被害者保護等、自立経済の確立の立場から更に調達庁の任務を考うべきものであるという意見が述べられたのであります。第二点は、庁の次長、部の次長に関する問題であります。今後調達庁においては渉外事務も依然重要な事務として残るのみならず、労務、不動産に関する事務は従来に比してその重要の度が加わり、且つ又今日直接調達の方式によつて、需品、労務の調達が行わるるに当つて、調達庁はその調達が適正でありや否やを周到に監視する責務があると思う。このような見地から見て、今日漫然とこられの次長を廃止せんとする改正案には賛成しがたいという意見が多数の委員から述べられたのであります。第三点は、呉調達局の廃止の点であります。呉調達局の事務分量は、他の調達局と比較して特に少くなつておるというのではない。その管轄区域のごときも、中国、四国を含んだ広い地域でありまして、而も政府の答弁によれば、この呉調達局を廃止して、これを大阪調達局の支局となすというにとどまつて、事務分量も職員の定員も現状通りであるという説明でありましたから、結局はこの整理は形式的のものにとどまつて、多数の国民の利便はこれによつて犠牲に供せられる結果となるが故に、この呉局の廃止は納得ができないという意見が強かつたのであります。更に第四点といたしましては、調達庁と国連軍との関係に関するものであります。我が国の独立した今日においても、各調達局がアメリカ駐留軍に対して日米行政協定に基いて調達業務を行うことは理解できるが、従来英連邦軍が駐留しておる地区に置かれておる呉調達局等が、今日なお依然としてこれら国連軍のために事実上調達業務を行なつておるのは如何なる法的な根拠に基くものであるか。国連軍との間に具体的な協定が成立し、又法律の規定の上で調達局がかかる業務を行い得ることが明らかにされた上ならばともかく、国連軍との協定は現在なお交渉中の段階であるのにかかわらず、呉調達局等が英連邦軍のために事実上調達業務を行わざるを得ないという不合理な現状は理解に苦しむという強い意見が発表せられておるのであります。
かようにいたしまして討論の段階に入りました。内閣委員長は、委員多数の意見に基きまして、原案に対する修正案を作りまして、これを発議いたしたのであります。この修正案は可決せられまして、お手許に配付せられておりまするから、朗読を省略いたします。
要点は、一、庁の次長、不動産部及び労務部の次長を現在通り存置すること。二には、呉調達局を現在通り存置すること。三には、施行期日を原案の七月一日とあるのを八月一日に改めることであります。修正案の理由の説明は省略いたします。本件に対しまして波多野委員から、この調達庁の機構改革は国連軍との交渉の妥結の後においてなされるのが適当と認むるが故に反対であるという趣意の発言がありました。
かくいたしまして、修正案を含むところの原案について採決いたしましたところが、多数を以て修正議決すべきものと議決されたのであります。
最後に法務府設置法等の一部を改正する法律案について説明をいたします。
提案の理由といたしましては、機構を簡素合理化するというのであります。内容におきましては、第一に、内閣に法務総裁が置かれる現行制度を改めることといたし、法務府をば法務省とし、その長を法務大臣に改めたのであります。又現在の法制意見長官及び法制意見第一局乃至第三局の機構を内閣に移しまして、これに伴つて新たに内閣に法制局を設置したのであります。この点につきましては先に説明いたした通りであります。従いまして現在法務府の所管するところのこの内閣提出の法律案及び政令案の審議立案、條約案の審議、並びに内閣、内閣総理大臣及び各省大臣に対する法律問題に関する意見の陳述の事務は、内閣の法制局に移管されることとなるのであります。第二は、現行の法務本府の機構といたしまして置かれておるところの法制意見長官、刑政長官及び民事法務長官の二長官制を廃止いたして法務省に各省と同様に事務次官を置くことといたしておるのであります。第三に、法務府の外局たる中央更生保護委員会を廃止し、その所掌事務を担当せしめるために、法務省の内部部局として保護局を、又同省の附属機関として中央更生保護審査会を設けることとし、この中央更生保護審査会においては、個別恩赦の申出及び地方更生保護委員会の決定に対する不服申立に関する裁定並びに平和條約第十一條による戰犯者の赦免、刑の減軽及び仮出所の勧告に関する決定をする権限のみを有せしめ、爾余の事務と中央更生保護審査会の庶務は保護局をして所掌せしめることにいたしております、なお中央更生保護審査会の委員は三人とし、国会の同意を得て法務大臣が任命し、その服務は非常勤といたしております。第四に、現在外務省に置かれておる入国管理庁を廃止いたし、その所掌事務を法務省に移管することとし、そのために内部部局として入国管理局を設け、同局に次長一人を置き、又、入国管理庁の附属機関及び地方支分部局をすべて法務省の附属機関及び地方支分部局に改めることといたしてあるのであります。第五に、法制意見第四局を廃止して、その事務を民事局、刑事局及び大臣官房に移管し、民事訟務局及び行政訟務局を統合して訟務局とし、その局に次長一人を置き、人権擁護局はこれを廃止して、その事務を民事局に統合いたし、人権擁護課にて取扱うことにいたしたのであります。又官房経理部をも廃止し、更に現行の法務府研修所、検察研究所及び入国管理庁研修所を統合して、法務研修所といたしております。これらの改正は、いずれも機構簡素化の方針に従つた措置でありまして、その結果、法務省の内局は全部で六局に縮小されるのであります。第六に、更生保護関係の地方機関を簡素合理化するために、現行の地方少年保護委員会及び地方成人保護委員会を統合して地方更生保護委員会とし、又少年保護観察所及び成人保護観察所を統合して保護観察所とすると共に、保護観察の事務が従来地方少年保護委員会及び地方成人保護委員会の所管とされていたのを、保護観察所の所管に改めることといたしております。第七に、行政機関の名称の変更でありまして、検務局を刑事局に、矯正保護局を矯正局に、中央及び地方の矯正保護研修所を矯正研修所に、矯正保護管区本部を矯正管区に、少年保護鑑別所を少年鑑別所に、入国管理庁出張所を入国管理事務所にそれぞれ改称することにいたしております。
以上が法務府関係の機構改革案の概要でありまして、このため法務府設置法及び犯罪者予防更生法の一部を改正し、又入国管理庁設置令を廃止すると共に、同令中所要の規定を出入国管理令に織り込み、更にこれらに伴う関係法令の整理をいたしておるのであります。
内閣委員会は、法務委員会と連合委員会を二回、内閣委員会を一回開きまして、本法律案の審査に当つたのでありますが、その中で論議の中心となつた問題は、現在の人権擁護局を原案ではこれを廃止し、その事務を民事局に移し、人権擁護課において所掌することの是非に関する点であります。政府委員の答弁によりますと、人権擁護の問題は政府においても決してこれを軽視するものではないのでありますが、現在この局の定員は僅かに六十五名の少数であり、且つ事務分量から見ても、一局として存置するのは局としての体裁をなさないから、これを廃止して、民事局をしてこの事務を行わしめんとする考えである。政府は、元来人権擁護の問題は、單に政府の機関のみに依存すべき問題でなくて、在野法曹の努力によつて、一般国民が人権に関する認識を深め、人権擁護に目覚めるのが本筋であると考えるという説明をいたしております。これに対しまして、法務委員、内閣委員から、現在の人権擁護局は、その規模、定員が局として存置するには小さ過ぎるのであるという説明であつても、政府の人権擁護に対する至誠と熱意とを示す意味においてもこの局を廃止すべきものではない。元来その所掌する事務が極めて重要なものであるならば、その規模、定員にかかわらず局として存置すべきである。人権侵害事件として取上げられた件数は、昭和二十三年には四十八件であつたが、その後、逐次その数を増加して、二十六年には一万五千五百八十九件の多数に上つておるという状況であるのみならず、今般破壊活動防止法が成立いたしまして、今後この法律の運用に当る公務員によつて人権が不当に侵害される場合の発生することを予想するときには、なお更この人権擁護の重要性が認められるが故に、局の廃止には反対であるという意見が強く述べられたのであります。又人権擁護局の予算は、人件費を含めて年間五百六十六万円、地方法務局に配付になつておりまする人権擁護関係の予算は一千六百万円余であつて、人権擁護の重要な事務を処理するための人件費及び事務費は如何にも僅少であるが故に、今後政府において人権擁護に関する予算の増額についても一段の努力をなされたいという希望意見が強く述べられたのであります。
討論の段階におきまして、内閣委員の多数の意見に基きまして、委員長から原案を修正する修正案を発議いたしたのであります。その発議されました修正案は、議決を経ましてお手許に配付されておりまするから、朗読を省略いたします。
その修正の要点は、第一には、現行の官房長を廃止して、現行通り大臣官房に経理部を存置するということ。第二には、人権擁護局を現行通り存置すること。第三には、この改正法律案の施行期日をば他の法律案と同じように本年の七月一日とあるのを八月一日に改めることであります。修正の理由につきましては説明を省略いたします。
討論に際しまして、楠見委員から、人権擁護機構としては将来委員会制をとるのが適当であると思うが、これは今後の課題といたしまして政府において研究せられんことを要望して、修正案を含むところの原案に賛成の旨の発言がありました。三好委員からも、右と同一趣旨で賛成であるが、ただ原案では、外務省の入国管理庁が廃止されて、法務省の内局として入国管理局が新設されることになるが、政府当局において今後仕事の性質を十分に考慮して、事務の運営について遺憾なきを期せられたいという、極めて蘊蓄の深い発言があつたのであります。栗栖委員からは、人権擁護関係の予算が僅少に過ぎるから、将来政府においてこの点を十分に考慮せられたいという希望を付して、修正案を含む原案に賛成の発言がありました。上條委員及び成瀬委員からも、修正案を含む原案は、法務府設置の当初の趣旨から見て適当でないという意味を以て、この両委員からは反対の発言があつたのであります。
次いで修正案を含むところの原案について採決をいたしましたところが、多数を以て修正議決すべきものと議決いたした次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/32
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033・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 調達庁設置法の一部を改正する法律案に対し討論の通告がございます。発言を許します。波多野鼎君。
〔波多野鼎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/33
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034・波多野鼎
○波多野鼎君 調達庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、社会党第二控室は反対の意向を申述べたいと思います。
反対の理由は、本日午前中に曾祢君から縷々説明がありましたように、イギリス連邦軍が日本に引続き駐留することについてはまだ明確な條約ができておらない。或る意味においては事実上の駐留であつて、法的な根拠が十分でないという点を申述べましたが、それと同じ根拠に立つて、私はこの調達庁の設置法案の修正案に反対するものであります。と申しますのは、英連邦軍が日本に駐留しておりまして、而もこの労務などの調達につきまして日本政府がその事実上の関與をいたしております。ところが調達庁設置法案によりますれば、これは專ら日米安全保障條約に基いて駐留するアメリカ軍隊、これに対する調達を行うのが本来の任務でありまして、條約がまだできておらない英連邦軍に対して調達を手伝うということは違法であると私どもは考えております。政府側の答弁によりますと、第三條の「條約に基いて日本国に駐留する外国軍隊」、條約に基いて日本国に駐留する外国軍隊というものの中には英連邦軍も含まれておると解釈いたしておるようでありますが、我々はその解釈を承認することができないのでありまして、これは日米安全保障條約に基いて日本国に駐留する外国軍隊、こういう意味に限定して考うべきものであるという立場をとつております。又調達庁が事実上英連邦軍に対して調達の手伝いをしておりますことは、これは事実行為としては例の吉田・アチソン交換文書によつて行い得る理由はあるかも知りませんけれども、併し法的にほ十分か根拠となり得ないものである。あの吉田・アチソン交換文書は十分な法的根拠となり得ない。なぜならば、あれが仮に一種の條約であるといたしましても、その條約に基いて日本国民が英連邦軍との法的な関係において何によつてその関係を規律するかという根拠法が全然欠けております。そのために、例えば呉地区などにおきましてはいろいろなトラブルが起つておるということは、今朝ほど曾祢議員が指摘した通りであります。このような意味におきまして、我々は、調達庁のほうの修正をするならば、今進行中の英連邦軍との交渉の結果を待つてこれをなすべきである。それでも遅くはない。何も急いで今交渉過程中において、こういうような一部改正をやる必要はないという立場をとつておりますので、その意味で我々はこれに反対をいたすものであります。
以上の反対の理由を簡單に申述べました。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/34
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035・佐藤尚武
○団長(佐藤尚武君) 法務府設置法の一部を改正する法律案に対し討論の通告がございます。発言を許します。上條愛一君。
〔上條愛一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/35
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036・上條愛一
○上條愛一君 私は社会党第二控室を代表しまして、只今議題となりました法務府設置法の一部を改正する法律案に反対するものであります。
本法案は、従来の法務府を廃止して新たに法制局と法務省を分離設置し、更に従来法務府の外局でありました中央更生保護委員会を廃止して、この仕事を法務省の保護局において行わしめんとするのがその主要点であります。
然るに法務府の前身である法務庁設置の際の提案理由の説明は次のごとく述べております。
「新憲法下、三権分立の大原則に基き、司法大臣の権能が挙げて最高裁判所に委ねられたので、司法省の任務及びそのあり方について百検討の結果、新憲法下における行政権行使の適法性を確保するために、行政府全体における法律事務を総合的に統轄して行くべき職責と任務を有する新機関を設置することを構想した。即ち、新憲法は国民の不可侵且つ永久の権利として基本的人権を保障し、健全なる民主政治国家り確立のために、最高裁判所に対し、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を與え、又裁判所に対し、民事、刑事の裁判権のほか、すべての行政事件その他の法律的争記を裁判する権限を與えておるのであります。従つて政府が憲法及び法律を忠実に施行するためには、政府自体においても、憲法及び法律の解釈適用を統一して、自主的に法に則つた政治を確保することが絶対に必要であります。このためには、政府に一元的な法務に関する統轄機関を設け、法律問題に関する政府の最高顧問として、行政部門に対し法律上の意見の陳述又は勧告をさせることが適当である。これが即ち法務総裁であり、法務総裁の管理する事務は法務庁でこれを掌るのであります。特にこの官庁は行政全体にまたがる任務を途行するものであるので、独立総合的官庁として内閣に設置したのであります。」
以上の提案理由に明かなるごとく、法務府並びに法務総裁は、新憲法の民主的運営のために、憲法と法律の解釈適用を統一して自主的に法に則つて政治を行うために、政府の一元的の法務に関する統轄機関として、又法律問題に関する政府の最高顧問としての権能を付與せられたものであるのであります。
然るに今回の改正は、この法務府と法務総裁の権限と権威を放棄して、旧憲法時代の軍に行政事務を取扱う法制局と法務省に分離せしむるものであるのであります。かくのごときは、新憲法治下における民主政治を軽視し、法律の解釈適用を統一して法務に関する一元的な統轄をなすことを困難ならしむるものであります。今や破防法が制定せられまして、その実施については深甚なる対策を必要とし、国家の治安と国民の人権の保障に重大なる影響があります。すでに本日から施行せられます破防法の運用について、最高検と国家警察との間に意見の対立を生じておると新聞紙は報じております。又占領治下に行われた多くの法律は改廃せられまして、独立国家の出発に際しては新らしき幾多の法律が実施せられんとしておるのでありまして、これら新らしき立法に対する解釈適用を統一して自主的に法に則つた政治を確保することがますます緊要を加えつつあるのであります。この際、法務府と法務総裁の廃止を見んとするがごときは、断じて私どもの承服し得ないところであるのであります。
更に又、政府は、今回の改正によりまして、従来法務府の外局でありました中央更生保護委員会を廃止いたしまして、これを新設の法務省の保護局の所管といたしたのであります。御承知のごとく我が国は、戰後民主国家として出発するに当りまして、行政の民主化の一方式として各種行政委員会が設置せられたのでありまして、特に出獄者の更生保護及び保護観察、犯罪の予防活動、特赦、減刑、刑執行免除等の事業は、国民の生活と犯罪に理解と同情を必要といたしまして、且つ民間の協力を得て、初めてその目的を達するものと言わなければなりません。従つて中央更生保護委員会のごときはこれを存置いたしまして、十分広く国民の総意を反映せしめ、国民の協力に待たねばならないのであります。然るにこれを法務省保護局に移しまして官僚行政に委ねんとするがごときは、国民の納律し得ないところと信ずるのであります。
以上の理由を以て、人権擁護局を存置せんとする修正案に対しましては賛意を表するものでありまするが、私はこの改正案の根本方針に反対を表明せざるを得ないのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/36
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037・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。
これより採決をいたします。
先ず行政管理庁設置法の一部を改正する法律案、労働省設置法の一部を改正する法律案、文部省設置法の一部を改正する法律案、厚生省設置法の一部を改正する法律案、建設省設置法の一部を改正する法律案、以上五案全部を問題に供します。委員長の報告はいずれも修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/37
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038・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて五案は委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/38
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039・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 次に、法制局設置法案、調達庁設置法の一部を改正する法律案、以上両案全部を問題に供します。委員長の報告はいずれも修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/39
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040・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて両案は委員会修正通り議決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/40
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041・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 次に、法務府設置法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/41
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042・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。(拍手)
議事の都合により、本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/42
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043・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十三分散会
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○本日の会議に付した事件
一、国連軍との協定に関する緊急質問
一、安全保障諸費に関する緊急質問
一、日程第一 消防法の一部を改正する法律案
一、日程第二 行政管理庁設置法の一部を改正する法律案
一、日程第三 労働省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第四 文部省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第五 厚生省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第六 建設省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第七 法制局設置法案
一、日程第八 調達庁設置法の一部を改正する法律案
一、日程第九 法務府設置法等の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315254X06719520721/43
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