1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月十九日(木曜日)
午前十時五十七分開会
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出席者は左の通り。
労働委員
理事
安井 謙君
波多野林一君
村尾 重雄君
委員
上原 正吉君
木村 守江君
一松 政二君
小林 政夫君
早川 愼一君
菊川 孝夫君
重盛 壽治君
堀木 鎌三君
堀 眞琴君
人事委員
委員長 カニエ邦彦君
理事 北村 一男君
委員
木下 源吾君
森崎 隆君
地方行政委員
委員長 西郷吉之助君
理事 中田 吉雄君
委員
宮田 重文君
岡本 愛祐君
館 哲二君
若木 勝藏君
原 虎一君
吉川末次郎君
深川榮左エ門君
国務大臣
労 働 大 臣
厚 生 大 臣 吉武 惠市君
政府委員
労働省労政局長 賀来才二郎君
事務局側
常任委員会専門
員 高戸義太郎君
常任委員会専門
員 磯部 巖君
常任委員会専門
員 熊埜御堂定君
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本日の会議に付した事件
○労働関係調整法等の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○労働基準法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○地方公営企業労働関係法案(内閣提
出、衆議院送付)
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001・村尾重雄
○委員長代理(村尾重雄君) では只今から労働、人事、地方行政の連合委員会を開会いたします。
前例に従いまして私が連合委員会の委員長の職務を行わせて頂きます。本日は人事委員会からの審議を行うことに予定いたしておりますので質疑通告順に従いまして発言をお許しいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/1
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002・木下源吾
○木下源吾君 一つ誰でもいいから答えて下さい。私これのほうをやつておらんので素人ですから聞かねばわからんのですが、一体何のために改正をやるのか、どういうところが主として改正されるのか、そんなことを一つ聞かして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/2
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003・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 今回提案いたしました労働関係の改正の狙いどころの主な点を申上げます。(「簡単々々」と呼ぶ者あり)第一点は現在国家公務員のうちで現業に従事しておるもの、例えば郵政関係でありますとか、或いは印刷庁の職員でありますとか、或いは営林関係の伐採に従事しているこういう現業の公務員に御承知のような国鉄、専売が現在公労法によつて団体交渉を認められている、だからそれと同じような団体交渉権を復活しようというのが一つの狙いであります。従つて地方の現業公務員、即ち市電でありますとか水道、こういうふうなのも国鉄、専売と同じように団体交渉権を認めよう、これが第一点であります。
それから第二点は新聞その他においていろいろ論議されておりまするように、緊急調整の問題であります。御承知のように独立後になりまして経済自立の上においては労使の御協力を願わなければならない、で、争議は自主的に解決せらるべきものであろうことは勿論変らないのでありますが、国民生活に著しい障害を来たすような場合においては、緊急調整という方法で中央労働委員会にその斡旋調停をお願いをする、その間五十日間争議を中止する、こういうのが主な狙いであります。そのほか現在ございました三十日間の公益事業のクーリング、タイムが現在無意味になつておりますので、これを十五日に縮めますと共に、余り団体交渉をしないで持込む場合にはもう一度よく御相談なさつたらどうかという却下の方法というものを講じよう。その他は細かい若干の修正でございまして、いずれも労働基準法については労働基準審議会にかけた方針によつておるのであります。それから労調法関係、組合法、公労法等の関係は労務法制審議会にかけまして、その答申によつておるのであります。ただこの緊急調整と、今申しました現業に団体交渉権を復活するという二点につきましては、三十日間のクーリング・タイムを十五日にして却下の方法をとろうという問題につきましては、審議会では労使間の意見が一致しませんで中立側だけの意見に従つたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/3
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004・木下源吾
○木下源吾君 それで何ですか、大臣にお尋ねするが、いろいろ今までのいきさつはよくわかりませんが、この改正は資本家側がどういう態度であるか、労働者側がどういう態度であるか、その要点だけでも一つ話して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/4
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005・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) これは労務法制審議会にかかつておる当時から大体今日まで同じような論調で進んでおりますが、基準法については労使、公益、三者一致をいたしましたから大した問題はございません。問題は、今の現業に団体交渉権を復活する問題であるとか、緊急調整の問題であるとか、或いは却下制度でありまするとか、こういう点につきましては使用者側はこの緊急調整の制度では生ぬるい、もつといざ緊急の場合においては、このゼネスト禁止というような方法を講じて置かなければいかんじやないだろうかという意見でございます。それから組合側は緊急調整という方法はいわゆる争議権に対する一つの制限であるから、こういうものは好ましくない、又却下制度というものは濫用されると困るから、その点は考え直してくれないかというようなところが主な意見の分れ目でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/5
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006・木下源吾
○木下源吾君 それでは先ず第一に団交権をやるということなんだが、これは大体二つ今度の法律にはくつついておりますが、切離すわけには行かないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/6
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007・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) これはいずれも労働関係に関する法律でございまするから、一つの法律の中に織込まれております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/7
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008・木下源吾
○木下源吾君 そうしますと、人事院との関係はどのように考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/8
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009・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 人事院との関係は先ほど申しました郵政関係、或いは印刷庁の現業職員、或いは営林関係の現業職員、こういうものは従前は一般公務員と共に人事院がすべて給与その他について勧告をし、それに基いて処置をするという行き方であります。その点が今回団体交渉権を付与いたしますると同時に、給与等に関しましては人事院から外れまして、団体交渉の結果妥結すればそれによつて行く、妥結しない場合には調停、或いは仲裁の制度によつていわゆる国鉄と同じように裁定が下され、それを国会が承認したらそれに従つて処置する、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/9
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010・木下源吾
○木下源吾君 そうすると、今のお話で団体交渉の点だけは公務員法から除外されるということであつて、ほかの点では公務員法とは関係がなくなるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/10
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011・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) その点では公務員には変りはございませんから、公務員の身分に関しましては人事院に残るわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/11
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012・木下源吾
○木下源吾君 一体どうしてそういうややつこしいことをせなければならん理由がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/12
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013・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) その点は公務員でありまする以上は、机の上で事務をとりましようと、或いは外で筋肉労働をいたしましようと、本質においては変りはないわけであります。従つて従前はこれを一本に人事院で取りまとめてやつて来たわけであります。それも一つの方法ではありますが、併し御承知のように郵便関係の現業でありまするとか、或いは印刷庁あたりに働いておられまする現業というものは、昔から労働組合というものを持つておる。それからその仕事の内容は国鉄或いは専売と似通つた点も多いのでありまするから、給与等の労働条件については人事院なり政府が予算できめるという行き方よりも、団体交渉によつてきめるほうが、いわゆる人権を尊重する上において好ましくないかというところで、その点だけに特例を認めておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/13
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014・木下源吾
○木下源吾君 これは従来公務員法で制限を受けられておるのが、今度はその制限を解除するということになるわけでありますが、この情勢は一体どう、いう情勢と認識してこういうようにせられたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/14
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015・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 別に情勢がどうということはございません。ただ地方公務員の、いわゆる市電の従業員でありまするとか、水道の従業員等につきましては、曾つて地方公務員法の御審議の際に附則第二十項においてこれらについては特別の処置を講ずるまでは従前の例によつて行くということで、或る程度今回のような処置というものがいわゆる審議されておつたと思います。その点は地方公務員のみならず、国家公務員についても現業の職員については国鉄のような取扱をすることが私は望ましいことであろうと考えまして提案をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/15
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016・木下源吾
○木下源吾君 従来とも政府職員は公務員法を撤回してもらいたい、こういう要請が常にあつたわけですが、なぜやるならば全体の公務員法を撤回して、そうして労働関係法に全部を任せるということには行かないのですか。そういうようなことに行かない理由は、何かそういうことをしなければいかんというようなこういう情勢とい、うか、何か契機がなければいかんと思います。そういう点はただ便宜上でおやりになるというのか、どういうのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/16
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017・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 公務員について全部これを外して一般の労働者と同じように取扱つたらという御意見もございます。併しながら御承知のように今日公務員について労働三法は適用されておりませんゆえんのものは、公務員というものは国家或いは又地方公共団体の全体に奉仕しておる立場に置かれておる、従つてそれが独立の団結権を持ち、そうしてその奉仕すべき国家又は公共団体に対等で交渉をする、争い得るということは私は公務員の本質に反すると思う。従つてこの公務員を外すということにつきましては御賛成申上げることはできないのであります。そういう議論から行きますれば、先ほど申上げましたごとく、机の上で事務をおとりになるかたであろうと、外で筋肉労働をされようと同じはずでございます。併しながら先ほど申しましたように如何に仕事の実態が国鉄、若しくは専売に似通つておるものにつきましては同じような取扱をできるだけするということが私は基本的な人権というものを尊重するゆえんであろうということで、今回こういう措置をとつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/17
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018・木下源吾
○木下源吾君 今お話のように公務員は全体の奉仕者だから基本的人権も制約されることがあり得るということは、マ書簡によつて明瞭になつておるが、やはりマ書簡の中には同時に保護の手段を講ずることが明瞭になつておるわけです。従つて保護の手段は公務員法によつて規定されておる内容においては身分保障とか、或いは勧告とかいうことになつておる、手段としては。我々はそれは手段だろうと思つておるのですが、そういう特別な保護の手段を外してしまつて、労使の対等の権利でやらせようということについては基本的、根本的に公務員法を作つた精神とはこれは変つて来た、私はそう思う。変つて来るなら変つて来るだけの理由が明確でなければいかん。一方はいろいろに制約しているものをその代りに制約されておるからこうするのだということが明瞭になつておる、ところがそれを若し保護をしなくてもいいのだ、保護の手段を講ずるということを法律で明確にしなくてもいいのだということになれば、私は団体交渉だけではこれはいけないのじやないか、やはり基本的権利のストライキの権利も与えなければ不公平になるのじやないか、こういうふうに考えるのですが、そういう点については何か御検討になつたことがあるのですか。ただ単に審議会がこうだからとか何とかいうようなことでなく、やはり政府自身がおやりになる以上は何かそこらにはつきりした明確な何がなければならんと思うのですが、そういう点について一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/18
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019・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もでございまして、私どもは保護の点についてこれを変える処置をとるつもりはございません。従いまして先ほど申しましたごとく、今回の団体交渉権を付与いたしましても、身分関係については、残るわけでございます。従つて人事院その他においての保護の処置は、十分考えてございます。それ以上に給与等について、ただ人事院の勧告に従つて政府が予算を出してきめるという行き方でなしに、そういう給与その他の条件は、一応団体交渉をして、そうして話がつかなければ調停なり、仲裁裁定を求めて、そうしてそれに従つて行く。勿論最後は国会の承認を求めなければなりませんけれども、国会がよろしいということであれば、それに国家は従つて行くということでございまするから、その点は私は保護という点においては、別に悪くなるとは考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/19
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020・木下源吾
○木下源吾君 そういうようなお考えなら初めからマ書簡なんというものは私はやらないもんじやないか。マ書簡がああいうふうに出たのは、今のようなことでは不十分だから出たんではないか。外すなら、全部外してしまわなければ一貫しないのじやないか。こういうように考えるのですが、どういうように……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/20
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021・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) その点は、マ書簡にて謳つておりまするごとく、鉄道、国鉄でありますとか、或いは専売なんかはこれを国家の機関から外して、公社のようなコーポレーシヨンにして、そうして団体交渉によつてやるような方法がよかろう。それから一般の公務員については、そういう方法を講ずるわけにいかんから、まあ人事院のようなものを作つて、そうしてやつて行くというようなことがマ書簡の趣旨であつたと思います。そのときの趣旨から言うと、今私どもが提案しておりまする郵政とか、営林とか、印刷なんかもコーポレーシヨンと同じ取扱をすることはどうかと思いますけれども、併し如何に以てしても仕事の実態が似ておるのに、労働組合も作れないのだ、そうして対等で団体交渉もできないのだということを私は長く放置することは面白くないのじやないだろうか。やはり実態の似たようなものは似たような取扱をしてできるだけ人権の尊重という方向に向うべきじやないかと存じまして、立案したわけでございまして、只今木下さんの御心配になる人事院から外したために保護を受けないで困るようなことはないだろうかという御心配でございますが、その点は私は先ずないものとお考えになつて結構じやないか、そういうように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/21
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022・木下源吾
○木下源吾君 私どもはその逆なんで、全部外してしまつてやつたらいいんじやないかという考え方なんです。公務員法にまだいろいろ縛られておるですね。このほかにこの縛られておるということを外してしまつたほうがいいんではないか。そうして団体交渉権、ストライキ権までもやつたらいいじやないか。こういうように私は考えておるわけなんです。併しまあそれはそれとして、あなたのお考えは別に確固たる情勢の、契機があつたというわけではなく、そういう方向に独立後にはして行つたらいいだろうというお考えは諒としましよう。ところで今お話の中で調停だとか、仲裁裁定ということが出て来ましたが、この仲裁裁定によつて、そうして最終的には国会でということがいわゆる保護の手段と、こういうようにまあ承わるわけですが、さて仲裁裁定ですが、公企労法の三十六条ですね、この三十六条の適用を政府は今日まで……。従つて十六条とからみ合せて実質的には仲裁裁定というものは、保護の手段に私どもはなつておらないのじやないか、こう考えますが、労働大臣はどういうようにこの点を考えておらつれるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/22
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023・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 公労法の現在の三十五条だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/23
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024・木下源吾
○木下源吾君 三十五条です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/24
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025・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 三十五条と十六条の関係につきましては、いろいろ論議されておるところでございます。折角仲裁裁定ができたにもかかわらず、三十五条なり、十六条によつてはそれが拘束を必ずしもしないようになつておるので、意味がないのじやないかという御議論がよくございます。その点は労働委員会でも随分論議されたところでございますが、御承知のように、この労働法制上、仲裁というものは、裁定が出れば拘束することが原則であります。ですから、その意味においては、拘束すべきものであると私も思います。併しながら相手が国家である、相手が民間の団体でございますれば、労働法上、これは両当事者をすぐ拘束して、協約と同じ効果を生ずるのであります。ところが相手が国家でありますから、国家がそういう仲裁をしたからといつて直ちに拘束を受ける、政府が拘束を受けるということは今日のこの国家機構の上においては好ましくないというところから三十五条但書を置きまして、但し十六条に該当する場合はそれに従わなければならないということとわざわざ念のために置いてある。そこで十六条が働いて参りまして、十六条はどういうことが書いてあるかというと、予算上、資金上支出が不可能である場合には政府を拘束しない、併し拘束しないからといつて放つて置いていいとは書いてございませんで、二項に十日以内に必ず国会に出して承認を求める、そして国会が承認をするとおつしやればそれに従う、これが根本の建前でございます。それでは国会が不承認になれば意味がないじやないかということになります。併しそれは私は国家全体の最高の意思決定をいたしまする国会がいいか悪いかということの、呑むか呑まないかということの私は自由な御決定があつて然るべきだと、それでは国会が次にそういうものを跳ね飛ばしていいかということでございますが、一昨々年の暮に初めて国鉄の仲裁裁定がございましたが、そのときには政府が呑めない、それを国会がどういうわけで呑めないと言つていろいろ検討いたしまた結果、成るほど全部は呑めないにしても約六割方でございましたか、財源があるじやないかということで、いわゆる六割程度を呑むということで解決をしておる。その次は昨年の三月の専売のときの裁定でございますが、このときも政府は予算がないから呑めないと言つておりましたが、国会はいろいろ審議を重ねました結果、財源を見出しまして承認をして、政府もこれに従つており、昨年の暮も同様でございます。従いまして私は仲裁というものだけから御覧になると今言つたような直もに拘束しないといういやな点がお残りになるでありましようけれども、相手が国家である。而も国会というものはいわゆる労働者に対する使用者側、資本家側の考え方で、御決定にはならない、常に諸般の情勢を勘案をして適当なる決定をなされまするので、私は現在の制度を以ていたしましても趣旨は通つておる、かように存ずるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/25
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026・木下源吾
○木下源吾君 今までの行き方を見てみますと、原則が従になつて、いわゆる但書が主たるものになつておるように私どもは考えられる、実際の問題は……。ですから私は保護の手段にならんではないか。仲裁裁定は最終的なあれは規定です。国会へ持込んで来る。勿論国会は何でもきめれば如何なることでもできるというふうになる。そこまで持つて来るまでにこの法律の中でこれは最終だと言つて決定しておるわけなんでして、で、これがどうしても拘束力が薄弱ならこんな見せかけのものの条文はやめてしまつたほうがいいじやないか。私どもはそういうふうに今まで考えて来ておる。それはやはり拘束力を持つておる。だから但書にやつたやつが結果によつてはよくなる場合もあろうが、今までは一昨年も昨年も並大抵であれは解決しておらんわけですね。これは私は大蔵大臣やなんかならばそんなことはお伺いしませんけれども、労働大臣は少くとも労働者のサーヴイスをモツトーとしておられるので、労働大臣としてならばもつと私は積極的に労働者にサーヴイス的な見地に立つて率直にもう少し意見を言われたらいいじやないかと、こう考えるのですが、そういう点についてはどうですかな、大臣は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/26
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027・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) お話のごとく、労働大臣は労働者諸氏のために努むべきことは当然でございまして、私も微力を捧げておりますが、只今の御指摘になりました制度につきましては、先ほど申しましたごとく、相手が国家であるということの本質はこれは私重要視せなきやあならんと思います。両当事者で妥結がつかない、それでその間に仲裁が入つて話をきめた、そのきめたことが国家の最高意思の決定を経ずして直もに国家を拘束するというやり方というものは、私はこれは慎重ではない。そうしてそれならば先ほど言つたように国会がそういう仲裁裁定のようなものを全く無視して、そうして勝手な承認、不承認をするかというと、過去の幾たびかの実績を見ましても、そういう処置はとられていない。でありまするから、私は決して仲裁裁定というものが無意義になつていない、その裁定があつたらばこそそれを基礎にして国会で慎重に御審議になつて政府は財源がないといつても、その点にいろいろ検討を加えられて苦心の結果財源を見出してやるという処置がとられているんでありまするから、私は決して無意義になつていない。而も労働者諸君のためにそう私は悪い制度ではないとかように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/27
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028・木下源吾
○木下源吾君 成るほどそれは国家には違いませんけれども、形の上では独立採算というもの、いわゆる国有鉄道法というもので任してあるのですね。国が任しておるものの権限というものは今の法律の解釈で行けば極めて縮小されたものである。あつてもなくてもいいようなものだということになる。殊に予算上、資金上の問題については大蔵大臣の承認か許可か何かが要ることに書いております。この大蔵大臣はその場合において国会にそのまま持込んで来るのであれば私はあんな規定は要らないのじやないか。国鉄それ自体の予算上、資金上の問題を検討してただそのままを出して来ればいいのじやないかと、こう思うのですな、わざわざ大蔵大臣をあすこの中に入れておいて、そうして仲裁裁定のいいか悪いかということを国会に裁判をさせるというようなそういうような行き方がどう考えて見ても私は解せないのですね。相手は国家だということはわかつておる、だが併し国家はそれを法律で任せてある。公共企業と体して任せてある。任せてあるならば、同時にそれは単なる形の上で任せているのではなく、そういう企業体というものはそれ自体一個の有機体としてそうして自分たちの働きによつて業績を挙げる、いろいろなそういう特殊の関係があるのであるから、従つてそのことによつての成果、そこから生れて来るものはやはりそういうものの自由意思を尊重してやるべきではないか、そういう建前に立つ以上は、あなたのおつしやるように、公企労法のあの制度というものは、私は労働者の利益になるならないは別として、国自体として先ず考えなければならん、こういうように考えておるわけです。殊に労働大臣の認可とかなんとかというのを私は三十五条ですか、あの基本的なつまり規定が、あの規定が、あの法律があなたのおつしやるように拘束をするものであるという建前が根本であると言うならば、あの法律の中にある但書から生れて来る大蔵大臣の裁量というものはやはりこの三十五条によつて拘束された、いわゆる法律的な裁量でなければならん、法規裁量でなければならん、こういうように私は考える。大蔵大臣はただ自分がやりたくなければやらないということもでき得るような自由裁量であるというようなことが大体今日の民主主義下における給与の本当の制度、民主的制度には私は合致しないのだ、使用者側がただ自分の気分で、気持で、この野郎よく働くけれどもおれはどうも気に食わん野郎だからこのぐらいやつておけというような封建的な制度というものに極めて密接に繁がつているような解釈が自由にできる、ああいう私は法律というものはどうしても私は改正しなければ労働者の利益にはならない、こういうようにまあ考えるわけです。こういう点についてもやはり労働大臣は、今までおつしやつたように相手は国だから国のほうで、国会でやるのだ、こういうように考えになつてやはりおられるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/28
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029・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 国鉄に例をとつて申しますると、公社に載る程度独立採算制をとつて、任してある、だから任したらどうかという御意見でございますが、従つて国会が予算をきめまして許しておる範囲につきましては拘束をするわけであります。ただ問題は国会で御決定になりました予算上、資金上支出が不可能である場合は国会の承認を求めてからということであります。これは先ほど申しましたように相手が国家でございまする場合においては、やはり政府といえども国会で審議された予算に従うべきであります。それが裁定が下つたから予算は別に審議して決定しているけれども、裁定が下つた以上は別のところからでも金を出していいということでは、折角最高の国家意思として決定されました予算というものが他の意思によつて曲げられるということになる。でありまするからそういう場合は政府は拘束はしない。それじや拘束しないから大蔵大臣が自由裁量で勝手になるかというと、そうはしてございませんで、二項に十日以内に必ず国会に承認を求めて出さなければならない。そこで国会はこれは尤もの裁定である、政府はこういうふうな方法でやればやれるじやないかということになればそれに政府は従う。成るほど政府が言つているようにおれたちが決定したこの予算はこういうふうに使うべきものだ、成るほど裁定は下つたけれども併し予算はそういうふうに廻わすべきものじやないということになれば執行ができないから従つて支払うべきでない。これは国会というものが最高の国家意思の決定機関であり、予算というものが国会によつて決定される以上は私はそうあるべきものである、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/29
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030・木下源吾
○木下源吾君 それは御説明を聞いていると成るほど御尤ものように聞こえるのです。併しながら予算をやはり編成するのは政府なんです。それはもう申すまでもないことなんです。従つて今のような、つまり予算総則で給与総額というものをきめて、これはもう一定不変なものだ、こういうものを動かしてはいけないのだというならば、これは別でありますけれども、それは大蔵大臣は自分では予算の編成権を持つておる、政府が持つておるのです。であるから自分が一切の何でも全部持つておるのだから仲裁委裁定の決定に従つて予算を捻出する、予算をやりくりするということもできるわけなんですが、私はそういうような考え方で申上げておるので、一旦決定しておるからして何でもこれでやらなければならんのだ、こういうことになつて、それは実際において国家の利益にばかりなるならばいいのですよ、不利益になることであつてもこういうふうに予算で決定しておるのだからということで行かれるならば、極端なことになれば日暮里駅の橋がぶつ壞れて人間が何人も死んだということになる。ですからこの問題はやはり公企労法の問題を解決すると同時に、やはり私は予算総則の面においても考慮しなければならぬと考えておりますけれども、少くとも労働省所管においてはこんな不合理な、そうしていつでも仲裁裁定が下つて、而もこの前、一昨年の場合などは仲裁裁定が下つてそうして裁判にかけて、裁判がこれをいけないと言つても政府はこれは無理やりにこうしなければいかんのだというような、ああいうことができるような法律は私は速かに改正して、国会がやつてくれというなら国会にいきなり持つて来い、そしてそこでは今の仲裁委員会のようなもの、何か審議会のようなものを国会に附属しておいてやつたほうがいいのではないか、わざわざ法律をこさえてそうして保護するがごとく見せかけて、実質的には何らの保護にならない、こういう点を私は経験によつて承知しているので、こういう機会においてはこれを直して、折角団体交渉権を与えて、そして又労働者はこのほうが便利である、労働者の利益になるのだという考え方を進めて行くならば、先ず公企労法それ自体から私は直して、予算総則も同時にこれは直して行く、こういうなうにしなければ私はいけないのじやないか、そうしてこそ初めて……。それならばというて、国の金が無秩序にどんどんどんどん労働者に流れて行くというようなことは私は考えておらないのである。正常な手続を経、そうして最終的に決定したものはこれは拘束を受けて、そうしてよそに使わなければならぬ金でもこの拘束を受けた以上は支払わなければならないというようなちやんと原則を確立することが労働者のためになるのじやないかというふうに考えるのですが、労働大臣はまだやはり現行の制度というものが完璧なものだ、これを変える意思はないのだというようにお考えになつているのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/30
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031・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 先ほど申しましたように、御決定になつた予算の範囲において可能である限りは拘束されるべきであります。不可能な場合には国会の承認があつて然るべき処置をとるべきものである。実質的に意味がないというお話でございましたが、その点は先ほど申しましたごとく、裁定の結果が実質的には尊重されていると私は存じまするので、改正する意思を持つていないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/31
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032・木下源吾
○木下源吾君 今申上げたことで片鱗はおわかりだろうと思うのですが、国会に持込む場合においては、いわゆる三十五条の精神によれば、この予算を付けて国会に出すのは私は当り前じやないか、こういうように考えるのです。そうでないというと仲裁裁定のようなことを、それをそのまま持つて来たのでは国会が仲裁するのと同じ意味になつてしまうのじやないか、この点についてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/32
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033・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) その点は、仲裁は仲裁機関が決定するのであります。その決定した仲裁の条項が国家を拘束する場合においては国会の承認を得る、そして国会が承認をする、それに政府が従うということが私は適当であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/33
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034・木下源吾
○木下源吾君 国会が承認すればいろいろなことをしてから予算を変えるというのですが、元来が予算の権限が政府にあるのが根本なんですね、であるならば私はそれを付けて出すのが当り前じやないか、若しそれがそういうことはやり方が間違つているのだということであるならば、これは別にそういうことにならないような方法を私は樹立すべきじやないか、こういうようにまあ考えているのです。何かほかの方法はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/34
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035・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 私は、先ず国会の意思を尊重し、国会の意思の御決定があつて政府は処置をとるべきだ、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/35
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036・木下源吾
○木下源吾君 それでは先ほどから言うような国会にすぐ持込んで来るようなことにしたらどうですか、中間の公企労法というようなことを抜きにしてしまつて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/36
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037・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) そういう場合に仲裁機関を除けて国会が仲裁機関になるという方法もとればとれんこともないでありましようが、併しそういう紛議の仲裁を一々国会が間に入つて御折衝になることは私は適当ではない。やはり労使双方から公正に構成されているところの調停若しくは仲裁機関にかけてどこまでも裁定というものはその線で出す、そうして最後にこれを国会に諮つて予算上、資金上不可能な場合にこれをどうするかということは、これは国家の最高の意思決定機関である国会がきめるべきである、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/37
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038・木下源吾
○木下源吾君 それでは次に、緊急調整ということはどういうことですか。これは労働大臣か誰かが争議を停止するということですね、争議をやらせないと、こういうことなんでしよう。(「違う違う」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/38
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039・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 緊急調整につきましてはその中に書いてございまするように、公益事業でありまするとか、或いは大規模の争議でありますとか、そういうもので公益上公共の福祉に著しい障害を来たすような争議で、而もそれを放つといたならば国民生活に重大な損害を及ぼすようなときには緊急調整に移す、それが中労委にお願いをして斡旋調停なり仲裁の方法を講じてもらう、その間つまり五十日間争議を中止する、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/39
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040・木下源吾
○木下源吾君 これは誰がやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/40
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041・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) それは中労委がやるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/41
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042・木下源吾
○木下源吾君 中労委に移すのは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/42
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043・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 移すのは労働大臣でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/43
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044・木下源吾
○木下源吾君 労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/44
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045・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/45
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046・木下源吾
○木下源吾君 そういう公益事業とか、或いは大争議、つまり著しい影響というのは、その限界がどういうところにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/46
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047・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) それは名前の示すごとく緊急調整といえば、放つとけば国民生活に重大な損害を及ぼすというので放つて置けない、こういうことであります。御承知のように争議というのはやはり基本権として許されておる、そうすれば争議はできる、できるけれどもそういうふうな公共の福祉に重大な障害のあるもので、而も放つといたならは国民生活に著しい損害を及ぼす、放つとけないというときに、これは基本権であるから仕方がないんだというわけには行かないのです。でありますから、そういうときには政府がみずから解決をすることにあらずして、中労委というような公正な機関にかけて一つ何とか解決して下さい、この処置が緊急調整の制度であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/47
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048・木下源吾
○木下源吾君 その認定は誰がやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/48
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049・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 先ほど申しましたごとく労働大臣であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/49
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050・木下源吾
○木下源吾君 その基準は何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/50
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051・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 基準はそこに示してある通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/51
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052・木下源吾
○木下源吾君 著しいとか何とかいう……、放つとけば国民生活に重大な損害とか、その基準はどこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/52
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053・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) その基準はその文字で御解釈を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/53
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054・木下源吾
○木下源吾君 この文字以外にはないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/54
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055・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/55
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056・木下源吾
○木下源吾君 如何なる争議といえども大なり小なりその面においてはそれは異常を来たすことは当然なんです。その限界が明らかにならない法律というものはこれ法律になるまいと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/56
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057・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) これを放置しておけば国民生活に重大な損害を来たすということは、もうどういう文字をお使いになつても、文字はいろいろ使うことができるでございましようけれども、これはそう放つとけないということの表現でありまするから、そう限界を文字の上で具体的に現わすということはできない。その事態の情勢というものが、これは成るほど輿論もこれは放つとけない、何とかならんかというときに、いや何ともなりません、争議というものは憲法で保障しておりますので何ともなりませんというわけには参らんと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/57
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058・木下源吾
○木下源吾君 どうも甚だ抽象的で私にはピンと来ないのですが、まあ例えて言えば今日のストライキ、第三波とか第二波とかやつておる。これは非常に罪悪なように、そうして非常にあなたのおつしやるようなことにも該当するかもわからん。併しながらあなたのおつしやるように、そうやることが国民生活、国民に非常な悪い影響を与えるんだと、こういうことで行けば、そういうふうにも認定できるんですな。併し一方においてはそういう行為をやる対象がこういう法律を作つたり、政府が、或いは資本家がこういうことをやつたりすることは再び戦争が起きるんだ、戦争の惨禍というものに比べれば極めてこれは軽少なつまり損害でしかないんだ、従つてこれをやることで戦を防ぐことができるならば、(「脱線だ、質問が」と呼ぶ者あり)何が脱線だ、黙つて聞け、もののわからんやつは。(「わからん質問をするんじやない」と呼ぶ者あり)黙つて聞きなさいよ、だんだんわかるようにしてやるから。そういうこと言うと何ぼでも言つてやる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/58
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059・村尾重雄
○委員長代理(村尾重雄君) お静かに願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/59
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060・木下源吾
○木下源吾君 破壞活動防止法のようなものを作るということは、これは作るものは勝手に作つてもよかろうけれども、これを作つた場合には……何故にこれを作るんだ、これは戦争をやるために作るのであつて、これを阻止することが戦争を防止することである。市電、国鉄がストライキをやつて乗客の足を奪う、成るほどその現象は極めて悪い現象である。けれども長い間の戦争中に国民が足を奪われ、電燈を消され、食糧が窮屈になり、そういう長い苦しみをこれで食いとめるんだという考え方を持つたものからすれば、これほど私は国家国民のためになるものはないんじやないか、こう考える人もあるだろうと思うのです。然るに戦争をやつたほうが金は儲かるんだと、軍需品を納めておれば金は儲かるんだと、こういう考え方をする人から行けば、それは別なんですね。そういうことで一時的なストライキをやることは罪悪だ、こういうことになる、そこで私はお伺いしておる。これは自分が立つておる地点において主観的にはいろいろものは考えられる。併しいやしくも法律を作る以上は具体性がなければならんじやないか。そういうものの考え方をするときに、その人の思いつきだけではなく、歴史的にそうして根拠のある、そういうことを私はお伺いしておる。具体的に一体著しい損害を与えるということはどういうことなんです。こういうことをまあお尋ねしておる。労働者といえども御案内の通り日本の再建自立は我々の手でというスローガンを掲げておるのであつて、国の亡びることを念頭に置いておるのではないと私どもは確信しておるのです。でも労働者と見れば破壞するものである、国を亡ぼすものであるかのごとき認識を以てかかればこれは明らかにそうなる。ストライキといえども、つまり国民に、その現象においては、ストライキの及ぼす影響だけを見れば、これは悪い影響を与える、不利益を与えるということになる。ですから私は具体的に一つこれはお聞きしておるわけなんですが、労働大臣はこの防止以外にないと、こうおつしやるのだから、これ以上にお聞きしてもしようがないのですが、私はそういう考えを持つておるのであつて、労働大臣もやがてこの法案がそれぞれの方面において検討された結果、何らかの結論を得るというときに、少くも私の申上げたようなととが何か理由の一端にでもなるというときにはよく一つお考えを願つて、いずれが一体国のためになるのであるかということについて本当に客観的にこれを見て、そうしてこれを私は決定してもらいたいと、こう思つておるのです。
次に今のお話を聞きますと、中労委にこれをやらせるのだというけれども、勿論中心は政府の側で常に目的が明らかなんですね。目的が明らかでこれを中労委にやらせるということになるのですが、これはやはり一つの争議権に対する私は制約だと、こう思うのですが、そういう点についてはどうお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/60
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061・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 争議権に対する一つの制限であることは事実であります。それは御承知のごとく憲法二十八条において労働者の基本権を規定いたしますると同時に、憲法第十二条におきましては同時に公共の福祉について規定をしております。先ほど申しましたように、これを放つといたら国民生活に重大な損害を及はすというような場合に、憲法二十八条の基本権であるから仕方がないんだ、公共の福祉がどうなつてもいいということはこれは許されない、従つてそういう場合には或る程度の制限を受けることは私は止むを得ないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/61
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062・木下源吾
○木下源吾君 そうしますと、曾つてはマ書簡によつて国家公務員がそういう趣旨の制約を受けた、今は現政府は独立になつた機会において、自由であるべき民間労組に対してもそういう制約をつけなければならないのだ、こういうつまりお考えになつたと思うのですが、その考えが起きる根拠はどこにあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/62
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063・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 根拠は先ほど申しましたように、若しそういう事態があれば公共の福祉のために放つて置けないと思うからであります。なおお言葉がございましたから申上げますが、占領下でないのに占領後こういう規定をということでございますが、御承知でもありましようが、占領下にはマッカーサ元帥の声明としてゼネストは禁止されております。従つてそういう事態にはそれによつて抑制された事実は一、二にとどまらなかつたと私は存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/63
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064・木下源吾
○木下源吾君 労働大臣は大分労働行政には堪能なかたなんですが、我が国のストライキというものがゼネスト禁止当時のストライキと今日のストライキと、ストライキの方法、ストライキの現象等が同一のものとお考えになつておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/64
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065・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 日本の労働組合が終戰直後の状態に比べて今日どうかということにつきましては、私はだんだんと健全化に向いつつあると思います。それならば今日の労働組合は全然そういう不安なしかということになりますると、私はまだ一抹の不安を持つておるものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/65
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066・木下源吾
○木下源吾君 一抹の不安があるからこの法律をこういうようにせにやならんということになれば重大だと思いますが、一抹の不安とは具体的に例示でもよろしいからどういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/66
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067・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 先ほど申しましたごとく、放つといたならば公共の福祉に重大な支障を来たすような争議が起らんとも限らないということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/67
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068・木下源吾
○木下源吾君 曾つての争議は争議といえばすぐ破壞を連想させた、レールを外したり、機械を壞したりということが争議というように連想させられた。ところが今日のストライキはすでにしばしば御承知の通り、文字の示すがごとく業を罷める以外に何もやつておらんのです。業を罷める以外に何もやつておらない、こういう現在の情勢において、一抹の不安とは、やはり今日のストライキでもどこかのレールを外したり、機械を壞すストライキをやるというような、そういうところが一体あると思うのですか。そういう心配を起さなければならんような理由を明示してもらいたい。それはあなたがおつしやるように、今日は健全であるということで私は十分だと思うのですが、一抹の不安ということについては十分私はお尋ねして置かなければならんと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/68
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069・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 私は争議のやり方において、レールを外すとか汽車を引つくり返すとかいうような危害を加えるとは申しておりません。争議が大規模になつてなかなか収束しない、而もそれを放つて置けば国民生活に重大な支障を来たすということはあり得ると思います。現にこの法律は決してアメリカの真似をしたわけではございませんが、アメリカの労働組合は決して私は健全な組合でないとは考えません。FLOとかCIOにしても、共にこれは民主的な労働組合である、それにもかかわらずやはりアメリカでは緊急調整の規定を以ちまして八十日間争議を禁止して、そうして解決をしようという手段も講じておるのであります。でありますから私は今日の置かれた日本の状態においてもその程度の規定は私は必要である、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/69
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070・木下源吾
○木下源吾君 たまたまアメリカの話ですが、アリメカの状態はそれは御説の通りです。併しながらアメリカの労働者と日本の労働者との生活環境においても、実質的な、つまり賃金においても著しい等差があることは御承知でありましよう。すでに今日アメリカの鉄鋼の労働組合の六十五万人ストライキをやるという主たる目的は、一時間に二十六セントの賃金値上げ、日本に換算いたしますというと、これは幾らになりますか、八十円くらいになるでありましよう。八時間労働ならば五、六百円になる、一カ月一万五、六千円にもなるでしよう。アメリカの労働者は賃金値上げを要求するとき、すでに日本の基本給以上の値上げを要求しておるのです。而も会社側は二十四セントを出すということを言つておるのです。そういう経済的にも環境においても違う労働者なんです。そういう点に対しては眼を蔽つて、ただアリメカでもこういうことをやつているんだから日本でもこういうことをやるべきだというようなお考えではなかろうと思いますが、例を引かれたのですが、わからん者が聞けば、成るほど表面から見れば日本でもやらなければならんと考えるでしようが、それほど違つていることは労働大臣すでに御承知なんです。そういう賃金下に置かれておる我が国の労働者であればこそ、同時にやはりその賃金と自分たちの実質収入というものを、生活費を賄えるだけのものを何とかして購わなければならないというその一つの手段として曾つては破壞的行為もやつたでしよう。けれども今日の労働者は健全に、民主的労働組合はそれこそ健全に、そうして罷業を以て応えておる。そうして自分たちの賃金というものを、生活の保障というものを得ようとするその手段を今奪つたらば、アメリカのように八十日も冷却期間を置かれて我慢のできるような生活状態でないということは百も承知でございましよう。私はかかる意味においてももつと保護の手段、労働者に対する利益を守る手段を私は先ず先に考えなければいかんのじやないか、こういうように私は考えます。今回の場合でも、国家公務員においても、すでにあのメモランダムにおいて基本的人権は制約する。けれどもあれは保護の手段を講じなければならん義務を政府に負わしているでしよう。従つて政府はこれを正当に本当に解釈すべきなのであるが、勧告を単なる字句の勧告にとどめて、メモランダムのこの精神を全く歪曲して、そうして単なる勧告る字句より適用しておらない。それでもやはりそういう保護の手段というものを、公企労法においては仲裁裁定というものを具体的に設けておる。今度は一般労働者に対してこれほどの制限をする場合において、体賃金に対する保障というものは、政府は一体その点において何らかの考慮をしておるかをお尋ねしたい。若し賃金に対してそういう法律を作つておるものがあるならばお示しを願いたい、なかつたならばどういうことをおやりになるお考えでありますか、それも一つお尋ねしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/70
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071・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) アメリカは生活水準が高いから、日本は低いからというお話でございますが、私は労働問題については同じだと思います。而も先ほど申しましたように、成るほど労働者諸氏の生活権というものは考えなきやなりません。併しながらおれたちは困るからといつてそれのために公共の福祉に重大な支障を来たしてもそれは仕方がないのだといつてこれを放置するわけにも行きません。問題は憲法二十八条に規定されておる基本的人権と十二条に規定されておる公共の福祉というものは私はかね合わして考えなければならん。而も今回我々が提案いたしました緊急処置は、緊急処置によつて五十日間争議は制限されます。併しながら制限してそれをそのまま放つて置くというわけではございません。問題は争議をやめて中労委という合理的な機関で解決をして頂こう、こういうことであります。でありまするから御承知でありましようが、争議というものをやればすべて労働者の意見が通ると限つたものではございません。犠牲多くして、而も得るものが少いという例もしばしばございます。でありまするから争議というものはできるだけ自主的に解決する手段としては、これに余りな制限を加えるべきでないという原則は私は決して変つておりませんが、今申しましたように公共の福祉に重大な支障があつても、なおそれは放つて置くのだ、そうしてそれが争議をやつた結果労働者側に獲得するものがあろうとなかろうと、それは政府の知つたことではないのだということは私はやはり労働大臣としてとるべき手段ではない、やはりそういうときには間に人が入つて仲裁裁定じやありませんが、仲裁機関或いは調停機関にかけて解決してもらう。これは私は単なる労働争議ばかりではない普通の世間の間における争いにおいてもあり得るのであります。二人が争つておるのだから放つてお置いたらいいじやないかといつて済まされるものではない、やはり見るに見かねたときには間に人が入つて解決するということはこれは私は当然あるべきだと思います。それならば労働委員会が間に入つて常に労働者のために不利な取扱をするかというと、若しそんなことをするならば中労委なんというものは労働者諸氏から信任を受けるはずはございません。今日終戦以来七年になつてだんだんと中労委というものが労使双方から信頼を受けておるゆえんのものは、しばしば取扱つた解決の中にやはり公正な処置をとつたためであると私は信じます。従いましてそういう場合にはそういう公正な機関でできるだけ話をつけさせたい、それも押しつけるわけではございません。強制してこれを必ず呑め、呑まなければ許さないぞということを言つておるわけではない。どうしてもおれは呑めないと言われれば五十日たてばやはり争議になるかも知れません。併し政府としては先ほど申しましたように、そういうもう放つて置けないような状況に立入つたときに、又これを基本権であるから仕方がないのだ、政府はどうにもこうにも手が出せませんということは私は今日の状態において考えるべきではない、私はかように存じて提案した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/71
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072・木下源吾
○木下源吾君 今のお話でだんだん明瞭になりましたが、労働大臣はアメリカの労働者と日本の労働者と賃金生活者というものは別に問題にしてはおらんようです。併しながらこれは問題にすればするほど政府自体の責任になるわけなんです。政府自体の責任になる。そこで政府が自分の責任で自分が負わなければならんことを隠してしまつておる。表面に現われた現象だけを、これはこの仲裁裁定が一番民主的な機関であるというようなことでそれでごまかしてしまうことになる。私は逆に言うわけではありませんが、労働者がまじめな、あなたの言う健全な労働組合がストライキを起さなければならん、而も公共の福祉に著しい悪い影響を与えるというようなことまでもやらなければならんというような事態が引き起る場合は、それは挙げて政府の責任だと思うのです。今のお話を聞いておると労働者は自主的に解決する能力がないというようにまあ認定されておるようです。勿論相手方の経営者側の頑冥不霊ということも考慮に入れなければならないのですが、併しながら今日まで労働者は頑冥不霊は資本家の一方的な権力に対して割引しながらも耐え忍んでやつて来ておる事情をよく御承知でありましよう。政府がみずから負わなければならないような責任を転嫁して、そうして法律で基本的人権をさえも抑えるような法律を作つて、そうして政府だけが便々としておられると考えるということは、私はよほどこれは考えてもらわなければならんと思うのです。 私は労働大臣が、政府がそれに一体そういうことに介入するという意図が明確ではない、民主主義が発達する過程において自主的にものごとを解決するということは常識ですよ。今占領下から独立になつたと、こうおつしやつておるんだが、独立になつたからおつ放せば野獣のようになるんだというような考えがあるならば別であります。我々は少くともやはり民主主義的な水準が高まつておると、こう考えるときに、逆に政府がこういう問題に介入して、そうして政府の権力によつて基本的人権が剥奪されるというようなこういう法律は逆コースであると、私はそう考える。飽くまでも労働大臣は現内閣の方針として労働者は自主的に解決する能力を持たない故に政府が介入するのである、こういうように我々が受取つてよろしいのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/72
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073・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 争議について勿論政府に責任がないと思いません。先ほど申上げましたごとく、そういう公共の福祉に重大な炭庫を来たす場合においては、私は政府の責任であればこそこれを平和裡に解決しようという手段をとるわけであります。その際に政府が直接介入することは、私は公正なる解決の結果をもたらさないと思いまするが故に、中労委のごとき公正なる機関に一切をお願いして解決を図つておるわけであります。今日の労働組合が自主的にに解決する能力があるかないか、私は決して組合が能力がないとは申しませんが、御承知のように争議というものは相手方があるのであります。相手方のある問題でございまするから、なかなか一方的にこうだと思いましても話はつかないわけでありまするから、最悪の場合にこういう措置を講ずることは必要であると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/73
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074・村尾重雄
○委員長代理(村尾重雄君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/74
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075・村尾重雄
○委員長代理(村尾重雄君) 速記を始めて。ちよつとお知らせいたします。人事委員会から木下委員の次に質疑通告のありました千葉、森崎委員が都合により棄権いたしましたので、労働関係調整法等の一部を改正する法律案等に対する人事委員からの質疑通告者の発言はこれで終局いたしました。それでは本会を以ちまして労働、人事、地方行政の連合委員会は終了することに決定いたします。これにて散会いたします。
午後零時十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315286X00319520619/75
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