1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年五月二十九日(木曜日)
午前十時四十四分開会
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出席者は左の通り。
委員長 中村 正雄君
理事
安井 謙君
波多野林一君
村尾 重雄君
委員
上原 正吉君
九鬼紋十郎君
一松 政二君
早川 愼一君
菊川 孝夫君
重盛 壽治君
堀木 鎌三君
堀 眞琴君
委員外議員 高田なほ子君
国務大臣
労 働 大 臣
厚 生 大 臣 吉武 惠市君
政府委員
労働省労政局長 賀來才二郎君
労働省労働基準
局長 亀井 光君
事務局側
常任委員会専門
員 磯部 巖君
常任委員会専門
員 高戸義太郎君
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本日の会議に付した事件
○労働関係調整法等の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○労働基準法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○地方公営企業労働関係法案(内閣提
出、衆議院送付)
○ILOにおける母性保護に関する議
題の件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/0
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001・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 只今より会議を開きます。労働関係調整法等の一部を改正する法律案、地方公営企業労働関係法案、労働基準法の一部を改正する法律案、以上三案を議題といたします。通告順に従いまして質疑を許します。早川愼一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/1
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002・早川愼一
○早川愼一君 私御質問申上げたい点は四点あるのでございます。一つはゼネスト禁止法の問題について、それから第二は緊急調整、第三は国家公務員及び地方公務員の現業職員に対する公労法の取扱いのことについて、それから第四は労働法規改正案が国会に提出されるまでの経過について一応御質問申上げたいと思います。順序に従つて一つ一つ御質問申上げますからお答え願いたいと思います。
先ずゼネスト禁止のことに関しましては、昨日菊川委員の質問がこの議事運営に触れまして労働大臣の御見解があつたようでありますが、承わりますとまだ政府では慎重に検討中であつて、今国会に出すか出さんかということもまだはつきりしておらんという御答弁のようでありました。併し私はそれよりも、今国会に出す出さんということは、この法案の審議の上には非常に影響があるということについては、菊川委員と同じような意見を持つておるものでありますが、それよりも先ずこのゼネスト禁止ということに対する政府の根本的の方針はどうであるかと
いうことをお伺いしたいのであります。と申しますのは、昨年の六月でありましたか、いわゆる政令諮問委員会の答申に、労働法規に触れまして、現在の政令三百二十五号の廃止後の、いわゆるゼネスト問題についての立法的な措置を要するという答申があつたように承知しております。それからなおゼネスト禁止という政令の三百二十五号というものは、一部の意見では占領目的のためにできておる、いわゆる占領目的を阻害するものに対する措置としての政令である、従つて占領の事実がなくなれば当然そういう措置は要らないのだという意見が一部にあります。それから又労働の基本権といえども公共の福祉が著しく阻害される場合には禁止又は制限せられることも……ゼネストのごとき禁止の措置を取るということは、いわゆるなんと言いますか、一つの理念或いは民主国家の立場としては、当然取らるべき措置であるというふうに解釈せられておる議論もあります。それから又現実の問題について曾つての二・一ストの場合のごときものが将来も発生する危険に対する保障があるかどうかという問題も、併せて慎重に考慮すべき問題だと思いますが、これらについての政府、或いは又労働大臣としての御見解を一応お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/2
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003・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 只今早川さんからのゼネスト禁止に対する見解の御質問でございますが、お話のごとく占領中は例の二・一ゼネストの際に発せられましたマツカーサー元帥の指令というものがございまして、ゼネストは禁止されていたのでございます。それが独立と同時に、これは指令でございましたので効力を失つておる状態でございます。そこでこういうものは独立後必要か必要でないかという問題でございますが、これは若し二・一ゼネストのような、ああいう事態が起り得るであろうということを考えますと、その必要がないとも言えないと思うのであります。併しながらその後の日本の労働組合は御承知のごとくだんだんと正常に復しつつある現状でございます。全然その心配がないかどうかというと、御承知のように他に極左的な分子がありまして、この健全化しつつある組合に常に働きかけようという動きのあることは、皆さんの御承知のところでございまするので、従つてその心配なしとも言えないのでございますが、併し組合自体は逐年正常化に復しつつある現状でございまするので、これが取扱につきましては、やはりその動向をも十分勘案いたしまして、慎重なる態度を以て臨まなければならない。かように存じまして昨日もお答えいたしましたごとく、これにつきましては目下慎重に検討しておる状況でございます。一に私は今後の労働組合の動向、あり方というものが相当このゼネスト禁止法案を出すか出さないかということにかかつて来るのじやないか、かように存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/3
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004・早川愼一
○早川愼一君 重ねてちよつとお伺ししたいのですが、例えば破防法に対するとか、或いは労働法の改正とかいう問題について、いわゆる世間で言う政治ストライキというものはゼネストと同様にお考えになるのでありますか、或いはこういうものはゼネストとはお考えならんのでありますか、その辺のところをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/4
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005・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 先般行わしました政治ストは、政府もしばしば申上げまするごとく、元来ストライキしいうものを憲法二十八條が保障いたしまするゆえんのものは、使用者側との団体交渉において意見が一致しない場合における労働者の最後の手段として認められたものでございます。従いまして政治目的のため、即ち自分たちの政治的な見解、或いは法律というようなものについて反対する、或いは主張するというために、このストライキが行われるということは、憲法の保障していないところでございまして、従つてかようなストライキは健全なる労働組合のやるべきものでないことは、これは当然でございます。併しながらゼネストの禁止と申しますか、マツカーサー元帥が占領下に発しました指令は二・一ゼネストの前夜に発せられたのでございまして、あのようなすべての企業に亘つて全国的なストライキというものが若し起るとするならば、それこそ国民生活を危殆に陥れる問題でございまして、そういう非常時における措置として発せられたものであるのであります。従つて政府が慎重に考慮しておるというのは、そういう緊急事態に対する処置として立法の必要があるかどうか、即ち治安立法として考えておるわけであります。従つて政治ストが若しさような規模において行われるとするならば、同じ処置が必要だということでございまするけれども、政治ストには、そういう大規模なものもあれば、或いは小部分のものもございまして、いわゆるゼネスト禁止と政治ストに対する処置とはおのずから違うものがあるのじやないかと、かように存じておる次第であります。政治ストにいたしましては大規模であろうと小さい規模でありましようと、それ自体が憲法の保障するものでございませんので、これは健全なる組合としてはできるだけ一つ自省をして欲しいと、かように存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/5
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006・早川愼一
○早川愼一君 それでは引続きまして緊急調整の項目に亘つて、ゼネストの関連においてお尋ねいたしたいと思いますが、緊急調整という今度新らしい立法ができ上るわけでありますが、これに関しまして何かちよつとゼネスト禁止に代るもののごとく考えられておるように思われるのですが、そういう点はございませんでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/6
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007・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) この緊急調整は、條文にもはつきり明示しておりまするごとく、公益事業でありまするとか、或いは大規模の争議又は特別の政治的の争議でございまして、公共の福祉に著しい障害になる労働争議であつて、而もそれが放つておいたならば国民生活に重大な損害を及ぼすと認められるときに発動する処置でございます。その場合に、これを放つておくわけに行きませんから、公正な機関たる中央労働委員会にお願いをいたしまして、斡旋なり調停を願おうという制度なのでございます。いわゆるゼネスト禁止というのは、先ほども申しましたごとく、二・一ゼネストのごとく非常に国家非常の事態にあつて行いまするいわゆる治安的な処置として出ておる問題でございますから、いわゆる労働問題以上の問題を考えておるわけであります。私どもこの緊急調整は、労働問題の解決としては先ずこういう処置で何とか収められはしないかというつもりで緊急調整の制度を考えておる次第でございます。緊急調整の制度でもうまく行かないで、事が非常に重大に至るということは余りないかとは思いますが、若しそういう事態を考えますれば、治安立法の処置が必要になつて来るかと、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/7
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008・早川愼一
○早川愼一君 そこで重ねてお尋ねいたしたいのでありますが、多くの労働争議、例えば只今おつしやつた緊急調整の発動を予想せられる場合、そういう場合に純然たる一体経済的な問題だけの争議であるか、或いは更に経済的の目的も表面にはあるけれども、実はそのほかに大きな、いわゆる政治ストと言いますか、他の目的を以てこういうような状態が生じた場合、いわゆるゼネストという問題とはどういう区別をされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/8
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009・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 労働問題として解決をいたしまする問題は、主として経済的な問題でなければ解決の途もないかと思うのでありますが、経済的な問題でそういう事態になる場合は非常に少いとは思うのでありますが、それでは全然ないと言えるかと言いますると、そうも処かないだろうと思うのであります。今回のこの緊急調整の制度は、アメリカにおけるタフト・ハートレー法における緊急調整の制度とやや似た点もございますが、アメリカの労働争議は御承知のごとく大体経済的な争議というものを行なつておるのでありますが、そういう国でもなお緊急調整の必要を認めまして立法化しておるような状態でございますから、私は日本におきましても、この発動になるような場合はそう多くはないと思いまするけれども、あり得ることではないか、かように存ずるのでございます。併し争議には往々にして経済問題とは申しまするけれども、その裏に政治的なにおいのするものも多分にございますが、併しこの緊急調整ではいわゆる事実調査等を行うと申しまするのも、要するにその中から経済的な問題を取出しまして、これを公正な機関にかけて、そうして解決の途を図る。かような趣旨からこの問題を取上げておるわけであります。それならば今後純政治的な目的でかような事態が起るとは考えないかという問題が出て来るのでありますが、これは先ほど申しましたように、日本の今後の労働組合運動が如何なる動向に向うかということにも関係して来ることでございまして、終戦直後の状態からいたしますればその心配が多分にございましたが、近年だんだんと健全化に向いつつある状態でございますから、全然今後はないとは申しかねますが、傾向としては健全化に向いつつあるというふうに私どもは考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/9
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010・早川愼一
○早川愼一君 なおこの緊急調整につきましては、いずれにしてもゼネストの関連におきましてまだ疑問が相当残つておりまするが、これはまあ逐條の場合に譲ります。
次には、国家公務員と地方公務員の現業職員に対しまして公労法の扱いをする、こういう問題についてでありますが、これに関しまして、現行の国家公務員法との関連に多少私疑問を持つておるのであります。その点について一つ労働大臣の御見解を承わりたいのでありますが、先ず現在の国家公務員法を見ますというと、およそ国家公務員というものは、たとえ現業職員であろうとも国家公務員であるというふうな規定になつておりまして、ただ特別職として除外されておるものが若干ございまして、併しこの法を貫いている精神は、いわゆる公共とか国家とかに奉仕する職員というものに対する身分の保障、その他一切のことは人事院というものを設置して、それで扱わせる、福祉その他を含んで解決するような方法に国家公務員法の制度が貫かれておる。又この法律自体としては、なかなか他の法律で変更するとか何とかということが一応できない。私のこれは聞き違いかも知れませんが、なかなかむずかしい規定が置いてある。然るにかかわらず、今回この公務員にストライキ権があるかないかということは別問題にしましても、現行の公務員法の建前から行きまして、一体労働法でいうことを改正になることが解釈上できるかどうか。又公務員法を全然いじらずに、現在のような公共企業体労働関係法のほうに一括して労働法規を当てはめるというような措置を取られたことに関する労働省の御見解を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/10
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011・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もでございまして、国家公務員につきましては、現業であろうと現業でなかろうと公務員でございまするから、お説のごとく公務員という性格から申しまするならば、同じく人事院規則等によつて規律されるべきものだと思うのでございます。ただ、公務員とは申しまするけれども、現業、即ち令回改正をいたそうと思つておりまする印刷庁の従業員のかたとか、或いは造幣局の従業員のかたあたりは、その実体におきましては国鉄或いは専売あたりと非常に似た点がございますし、又曾つてはこれらの従業員が労働組合というものを組織しておつたのでございまするから、公務員という性質につきましては公務員たる以上これをどうにもできませんが、いわゆる給與その他の労働條件につきましては、ただ人事院が一方的にきめるというよりも、団体交渉によつてそれを基礎にして給與規則をきめるということが穏当ではなかろうかと、かように存じまして、そういう給與その他の労働條件だけは外しまして団体交渉に移すのでございます。従いまして公務員たる性質、性格に基きまするものは、公務員である以上止むを得ません。人事院規則に残るという状態になつたのでございまして、両方のフアクターを持つておりますために、お話のような事情が起つて来るのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/11
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012・早川愼一
○早川愼一君 細かく一々規定を挙げて御説明を願うことはこの場合避けるといいますか、根本的に公務員法の考え方なり、又現行の人事院というもののあり方等を度外視して労働法規だけでこれが適用になるという御見解についてちよつと承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/12
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013・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 法律の作り方といたしましては、人事院規則、いわゆる公務員法というものの中から或る程度のものを適用除外して行くという方法もつくかと思います。併しながらその実体は、大体国鉄、専売あたりと同じに取扱おうという考えを持つておるのでありまするから、従いまして公労法内に規定をいたしまして、公労法で人事院規則のそういう給與その他の労働條件に関する事項を外しまして、そうして団体交渉に移して行く、かような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/13
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014・早川愼一
○早川愼一君 重ねてその点にもう一点触れておきたいと思いますが、人事院というものはまあ私どもの考え方といたしましては、まあ政府の機関ではありますが、政府の行政機関より独立していろいろの特別な方式の下にいろいろの問題を扱つておる、それをそのままにして労働法規だけで、只今言つたようなお取扱いができるという、又それがいわゆる内部的に人事院との御交渉も済みまして、こういうような立案がされましたかどうか、その点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/14
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015・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) この点はいわゆる公務員たる性格の点と、それから国鉄、専売あたりの現業に似通つた点との両方のまあ性格を持つておるもので、従つて国鉄、専売に似たような点につきましては、それを外して同じ取扱いをしよう、こういたしましたので、お話のように、そこの間の兼ね合いの点が出て参ります。この点は人事院ともいろいろ立案につきましては相談をいたしまして、従つて公務員たる性格のものは残しまして、給與その他の労働條件に関するものは外すという基本的な考え方からこの整理をいたしまして、公労法の規定の中にその部分だけを外して行つたわけであります。二の点は人事院とも十分話がつきまして了解を得たわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/15
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016・早川愼一
○早川愼一君 なおこの問題については未だにいろいろ疑問の点がございますが、これは又そのときに譲りまして、最後にお伺いしたいのは、国会へ労働法の改正案を御提出になるまで非常に長い時日を要している。かねがね労働委員会においても政府は今国会に間に合わせるように御提出になるかどうかというようなたびたび労働大臣の言明を得ておつたわけであります。そこで一体今回政府がこの改正に到るまでの経過のうちで、特に私が今日お伺いしておきたいのは、労働関係法令審議会というものを閣議で御決定になつて、そういうものを設置されましたが、これは一体常置機関として御設定になつたのかどうかということを一つ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/16
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017・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 実は最初政令諮問委員会にかかりまして、労働法についてはどういうふうな考えをお持ちであろうかという諮問をいたしまして、その結果極く基本的な考え方の答申がございまして、従いまして政府といたしましては、それに基いて更に臨時に労務法制審議会というものを作りまして、労働側或いは使用者側、それから中立公益側のこの三者構成を以ちまして、昨年の秋政令諮問委員会を作りました。これに労働調整法或いは労働組合法、公労法のいわゆるそういう関係の法律の諮問をいたしました。それから一方労働基準法につきましては、これは法律の中に労働基準審議会というものがございまして、これにかけるようになつておりまするから、このほうの法律は労働基準審議会にかけまして、昨年の秋以来百数十回にたしか亘つて審議をして頂いたわけであります。それで今回提案いたしました法案も労働基準法の改正につきましては、労働基準審議会で答申されましたそのままを法文にいたしまして提出したわけでございます。それから労務法制審議会のほうは先般本委員会でも中間的に御報告申上げましたが、長い間相当回数を重ねて審議をされまして、到頭最後には審議の中で三者とも意見の一致したものだけを答申に出す、その事項につきましては大部分今回の法律の中に掲げまして提出をいたしておるわけであります。ただ問題になりましたのは労務法制審議会で最後まで問題になりましたのが、いわゆる公務員の現業に団交権を與えるのがいいかどうかという問題と、いわゆる緊急調整の問題でございます。この二つの問題はこの両方の案とも実は労務法制審議会の公益側の委員から二つとも提出された事項でございます。これは到頭最後には三者の意見が完全に一致というわけに行かなかつたものですから、それを一致させるのには相当の時間を要するし、又果して一致するかどうかという見込も付きかねましたので、たしかあれは三月の二十日頃でありましたか、一致したものだけの答申を出す、政府といたしましては現業公務員の団交権復活の問題にいたしましても、又緊急調整の問題にいたしましても、独立後の日本といたしましては、両者ともやはり改正するといたしまするならば、取上げざるを得ない問題であると考えまして、今回の改正にこれを取入れて皆様の御審議を仰ぎたい、かような経過でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/17
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018・早川愼一
○早川愼一君 そこで重ねてお伺いしたいのですが、一体労務法制審議会と言いますか、そういうものは臨時に置かれた、而もその構成は三者構成だ、これは恐らく前にはそういうことはなかつたと思いますが、前には労働者が立案をされまして、それを各地において公聴会をお開きになり、そして労働省案をまとめられて御提出になつた、今回に限つて三者構成ということをやられた、この三者構成ということは利害の相反するものと、それから又中立という関係で公益委員と、併しながら私も実はこの厖大な議事録を拝見いたしますと、なかなか実に議事の進行を見てますというと、手続だとか、議事規則だとか、なかなかそういう部分の議論が非常に多くて実質的な問題の焦点は殆んどまあ極く簡単と言つては相済みませんが、意見の対立のままで終つたというに過ぎないようであります。それで大体こういうものを置かれて諮問せられる場合に、政府が或る一定の方針というものを持たずに御諮問になつておるということから、結果は非常に長い時日を要して、得るところは余りなかつたというふうなことを我々は印象付けられるわけなんです。これらについての今後のこともありますし、又今回の措置についてのお考え方も一つ承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/18
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019・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もな御質問でございまして、従来は政府が案を作りまして、それを諮問して御意見を承わつて行くという例を取つておつたのでありますが、実はまあいろいろ考えましたけれども、政府で案を作つて出しまするというといろいろ先入感を與えるとか、或いは誤解を受けたりいたしまして、却つて思わざることになりますので、それよりも今日の状態は使用者側にいたしましても、組合側にいたしましても、よほど実質的に御研究になつておるわけでございまするから、こういう三者構成の民主的な機関に白紙で意見を聞いたらどうだろうか、どういう結論が出るかわからないけれども、政府が下手に法案を作つて、そしてその先入感を與えた上で議論をして頂くというよりも白紙でお願いして、そして出た結論というものは民主的な公正な意見が出るじやないだろうかという感じで、実は今までに例はございませんけれども、委員会に打つつけてお願いしたわけであります。お話のごとく最初はいろいろな形式的の議論で相当の日数を費やしておりますけれども、実は審議会は表向きに速記録に載せておりますもの以外に、小委員会もしばしば開きまして実質的に非常に勉強して頂きました。私はこの点につきましては日本のこの労働問題に対して労使共に非常にまじめに実質的な討議がされておるという点につきましては敬意を表しておるわけであります。その結果今回のような答申が生れたようなわけでございまして、いろいろな組合側から言いますというと御非難があろうかと思います。私どもは労務法制審議会で出されました一致した意見にいたしましても、一致を見なかつたが公益委員の出されました案につきましても、先ず日本の独立後の労働問題に対する法制の改正としては公正なところではないか、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/19
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020・早川愼一
○早川愼一君 最後に一点お伺いしておきたい。根本的な問題で、即ち先ほど労働大臣がおつしやつたいわゆる国家公務員の一部に団体交渉権を與え、或いは争議権を與えるというような基本的な問題です。これらに政府はどういう考えを持つておるかということを明らかにされるべきではないかと思います。これは根本の問題であります。それから公益事業に対する争議の制限の問題のごときもやはり現状から政府はどう見ておるかという一つの見解があるべきだ。それを民主的だと言われて、そういう問題についてさつぱり政府がどういうつもりでお出しになつたのかわからないような状態でこの三者構成の下で非常な時日を……私は敢えてこの審議会がだらだらしておつたとは申しません。熱心に討議されたのでありますが、それぞれ立場の違う観点から労働法規を見ておるものばかりでありますから、なかなか三者の意見をまとめて答申案を得られることを期待されたとすれば、これは非常に大きな間違いじやないか、むしろそれに対する意見が承知できればいいので、あと
の残余の三者の一致した意見のごときは、これは手続きのいろいろ問題でありまして、そう大して今日労働法規改正に対して大きく騒ぐような問題ではないと思います。とにかく国会に提案すべく準備された結果十月から三月までかかつたというようなことは、どうかと思うのであります。この点重ねてお伺いして今後のことに対しても若し御見解があれば承わつておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/20
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021・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もな御意見でございまして、お話のごとく従来は政府で案を立てまして諮問するのが普通でございます。ただ独立後の最初の改正でございますし、又労働法規につきましては非常に問題のある点でありますので下手に政府が初めから案を作つて出しますということは、とかくいろいろ曲つた解釈をされるきらいがございますので、それから今日の使用者側にいたしましても、労働者側にいたしましても過去七カ年間の問いろいろ経験を経て来ておることでありまするから、公益委員も含めまして白紙で打つつけまして御議論を願うことが、却つて妥当な結論が出るんじやないかということで、異例ではございましたがやつたわけでございます。今後こういう形でやるかどうかにつきましては、お話のごとく或いは政府で一応の案を作つて行くということも考えなければならないかと思いますが、何と申しましても独立後の最初の労働法の改正のことでございまするので、政府としてはできるだけ慎重な態度を取つたという点で御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/21
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022・菊川孝夫
○菊川孝夫君 今日は総括質問ということになつておりますので、條文の詳細に亘りましては逐條審議の際に譲るといたしまして、先ず第一に私労働大臣にお伺いしたいのは、平和條約の効力発生後における政府の労働政策の基本方針についてお伺いしたいと思うのであります。と申しますのは、この法案を出して来られる前提となる政府の考え方でございますが、労働組合を成るべくたくさん法律を設けて、それで組合運動を規正をして行くという考え方を持つておるか、それともこれは労働運動は歴史的に見ましても、どうしても労使双方の長い間の慣行として徐徐に打立られて、正しいルールというものが私はできて来るだろうと思うのであります。従つて、或いはその間におきまして突発的な事件ということも起りますが、それが起つた場合に、こういうのは輿論の批判等もございまして、どういうふうに処理されるのがいいかということは、そこで一つの結論が出るわけであります。それは一つの判例となりまして、今後双方そういうようなことの起らないように努めて、そうしてだんだん民主的な労働規律というものができて来るだろうと思うのでありますが、こういう考え方で臨む方針と二つあると、まあ大体考えられるのでありますが、現在吉武労働大臣はどういう方針で臨もうとしていられるかとうい点についてお尋ねしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/22
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023・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もでありまして、私ども労働問題、或いは労働組合に対する考え方といたしましては、只今菊川さんがお話になりましたように、やはり労働組合のあり方がどうあるか、どうあるべきかということに重点を置くべきだと私は考えております。法律の問題でことが解決し、又やつて行けるという点よりも、むしろ今後の労働組合というものが実際にどういうふうにあり、どういうふうに進んで行くかという点に重点を置くべきだと私は考えます。ただそうだからと言つて、法制的な処置は全然考えないでいいかと申しますると、そうも行きませんで、今回改正をいたしまする趣旨も最初申上げましたごとく、憲法で保障されました労働者の基本的な人権はできるだけこれを尊重して行くことと、もう一つは独立後における経済の自立達成の上においては、どうしても労使協力を願わなければならない。それにつきましては、できるだけ公正な機関にかけて、公正な解決を図つてもらうという行き方を取りたいというところから、この二つの点に立脚をいたしまして、今回の改正を立案したのであります。法律によつて組合対策をするという点に重点があるわけではございませんで、むしろ重点は今後の労働組合というものが、日本の経済自立の上において如何なる方向に進んで頂かねばならないかという点に実は非常な関心を持つておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/23
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024・菊川孝夫
○菊川孝夫君 次に吉武労働大臣がたびたび国会における質問に答えられまして、労働組合の健全なる発達を期待するということは言つておられまするが、この健全なる発達という意味でありますが、我々はどうも現在の政府が健全なるという意味を、これは誤解であるかも知れないが、ストライキをやらない組合が健全である、いわゆるストライキをやるものはすべて不健全だというふうにどうもお取りになつておるようなきらいがなきにしもあらずだと思うのでありますが、併し労働組合でストライキをようやらんような組合は、これは不健全な組合だと私は思うのでありまして、ただそれをむやみに濫用するという場合には、これは不健全でございましようが、ストライキをやり得ないような労働組合は不健全なるものと私は考えるのであります。併しそれを濫用せずに十分ストライキをやり得る能力がありつつも、でき得る限り平和的手段によつて解決をする、併し最悪の場合資本家側が無理な態度に出た場合には、堂々と何日間でもストライキをやるという能力をどの組合でも蓄積しておる、これが私は健全な組合だとこういうふうに考えるのでありますが、この点につきまして一つ労働大臣の健全なるというのはたびたびお聞きしておるのでありますが、一体健全というのはどういうことを指しておるのか、この点をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/24
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025・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) お話のごとく、私どもストライキをやるから健全でないというような考えは決して持つておりません。憲法で保障いたしておりまする団体交渉の結果なかなか意見が一致しない場合もあるのでありまして、その際に労働者はストライキ権を持つということは、これは当然でございまして、私はそれ自体について決して文句を言つておるのではございません。ただ労働組合は、私から申上げるまでもなく、菊川さんも御承知のよう場に憲法が保障いたしておりまするゆえんのものは、労働者の労働條件の維持改善のために個々の労働者というものは力が弱いがために団結権を許して、団結をしてそうして使用者側と対等の立場で折衝する、そうして意見が一致すればいいが、一致しないときはストライキ権も発動するというために憲法が保障しておるのであります。いわゆる私は健全なる組合というのはこの組合主義の上に立脚するところの組合でなければならないのであると、かように存じておるわけであります。ところがとかく終戦直後の状態を見まするというと、これ戦前にいろいろ行われました施策に対する一つの反動的な現われもあつたでございましよう。併しながらこの労働者の労働條件の維持改善という目的から離れまして、政治的のために組合というものが、利用され或いは走りがちであつたということも私は否むことのできない事実ではなかろうか、かように存ずるわけであります。政治目的達成のためには政党というものがございまして、その政党によつて自己の抱くところの見解を主張するというのが民主政治のあり方ではないか、労働組合は勿論政治に関心を持たれることは当然でありますが、政治目的達成のために団結をし、そうしてストライキ権を発動するということは、これは私は健全なる組合のあり方ではないと考えております。そういうことをすることは一時はできましても、決して労働組合を強め、維持するゆえんではないのじやないかとかように私は存じるわけであります。従いまして健全なる組合は法律が認めた方法によつて自己の主張を通すべきでありまして、法律の認めない方法をお取りになることは、私はやはり将来の健全なる労働組合のために取らないところではないか、かような趣旨で、先般来行われました政治ストにいたしましても、これはどこの国の法律を見ましても、やり方を見ましても、又日本の国の判例を見ましても、政治目的のためにストライキをやるということは、これは決して認めておるところでございませんので、かような処置を取ることはよくないと、かような見解を持つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/25
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026・菊川孝夫
○菊川孝夫君 今政治的というようなことを何回も言われましたが、労働組合におきましても政治活動というものは当然又なされなければならんと思うのですが、というのは成るほど地位の向上、経済的要求獲得のためということになつておりますが、併しこれはストライキそのものを政治活動の直接手段に使うということについては、我々も決して賛成するものではございませんが、併しアメリカの労働組合におきましても、やはり政治委員会というようなものを設けまして、それから政治的な教育もやる、或いはイギリスにおきましてもすでに御承知の通りにイギリスの労働組合会議、労働党の系統も労働大臣に今更申上げるまでもなく御承知のはずであります。なお又資本家側といたしましては自己の支持する政党に対しまして莫大な、莫大なと申しますか、政治的な献金も堂々と、これは政治資金規正法の定めるところに従つて献金をして、みずから有利なような立法措置を講ぜしめる運動をするのは、これ又許されておることだと思う、現になされておるのであります。又労働組合がそういう意味におきまして政党を支持し、且つそういう分野において政治的な活動をすることに対しまして、労働大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/26
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027・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤でありまして、私は決して労働組合が政治的な見解をお持ちになり又政治的な活動をなさることは絶対にいけないというつもりはございません。勿論お話のごとくイギリスにいたしましても、やはり労働組合は労働組合のためにやつてくれるであろうと思う政党を支持されておることでございまして、組合がどの政党を御支持になるか、これは私は自由であり又当然のことであると思います。私が先ほど申しましたのは先般の十八日に行われたストの例を取るのもどうかと思いますけれども、政治的な活動をなさることは御自由でありますが、そのために憲法が保障しておるいわゆる経済的な問題に対するストライキをあえてやられるということは、私はこれは外れておるのじやなかろうか、かように言つておるわけでありまして、労働組合が或る政治的な見解を持ちまして演説をされようと、或いは或る意味の示威をされようと、それは私は当然のことである、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/27
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028・菊川孝夫
○菊川孝夫君 今度は政治的な関係においてでありますが、現在政府としては例えば電源の開発は、これはもう是非ともやらなければならない、又、アメリカ等におきましては軍備の拡張をやらなければならんと言つておる場合に、日本においては電源開発事業におきまして、ストライキが起るということになりますと、国家のこれは一つの政治目的だと私は考えられるのでありますが、併しそれは組合としてはそこにおいて経済的な要求でストライキをやるわけでありますが、現にアメリカにおきましては、戦争中に、日本ではもう産業報国会に全部切替えられ、労働争議というものは殆んど跡を絶つていたにかかわらず、アメリカにおいては軍需会社におきましても戦時中でもストライキを起しておるというような写真を盛んにこれは軍備の逆宣伝の方法として我々に知らしたことがあつたと思うのでありますが、こういう場合に一体政治的であると考えるかどうか、この点について吉武労働大臣はそれは飽くまでも組合の闘争目的は賃金の値上げ、労働協約の改訂等の経済的要求をやる場合に、たまたま政府の施策に支障を来たしても政治的ストと考えられないか、この点一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/28
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029・吉武恵市
○臣務大臣(吉武惠市君) 御尤もでありまして、これはなかなか実際の問題になるとむずかしい点もあろうかと思うのですが、御指摘になりましたように、アメリカにおきましては戦時中におきましても組合を認め、組合活動を許して一向支障がなかつた、というのはやはりアメリカの労働組合というものは私は組合主義の上に立脚しておつたからと思うのであります。従いまして戦時中にもアメリカではストライキがあつたようであります。併しそれはどこまでも経済的な要求のためであつたわけでありまして、戦争に反対だからストライキをやつたというふうには聞いていないのであります。併しそれは経済的な目的にやりましたストライキが影響をするということがあり得ると思いますが、影響があつたからそれはストライキが政治的であつたというふうに解すべきでないと私は思つております。従いまして私は決して先ほども申しましたように、労働組合が経済的のためにストライキをやられることを、私はこれは健全な組合でないなどということは私は決して言つておるのではないのでありまして、どこまでも労働者の労働條件の維持向上というために組合が発達して行くように念願をしておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/29
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030・菊川孝夫
○菊川孝夫君 次にゼネストという言葉を軽々しく、少し大規模なストライキに対してすぐゼネストというような言葉を……お互いにゼネストという言葉は取り方によつてはいろいろあるだろうと思うが、我々の解釈するゼネストと吉武さんのゼネストというものは、これは大分違うように考えるのでありますが、ここで吉武労働大臣はたびたびゼネストというお言葉をお使いになりますが、一体ゼネストというものの定義をどういうふうにお考えになつておるか、この点はつきりしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/30
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031・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) これはなかなかむずかしい問題でありまして、私は最近ゼネストという言葉を濫用されておるのじやないかと、私も思うのでありまして、先般の十八日のストライキの状況を又例に引くのはいやですが、総評あたりで第二波ストを、ゼネストをやるのだと言つておられますが、実際やられました実態はどうかというと、職場で大会をやられたりなんかしたのも、皆んなゼネストの中に含めて百万がゼネストに参加したというふうに言われておるのでありますが、ゼネストというのは本当は各産業に亘つて一時にストライキに入る状態を本当のゼネストというべきじやないかと思うのでありますが、併し一産業だけについて、全面的に行われるものもやはりゼネストと言つておりますから、ただゼネストを一口に定義付けるということは私はむずかしいのではないかと思います。確かに最近ゼネストという言葉を使われておるのには非常にまあ漠然と濫用されておるように私も思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/31
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032・菊川孝夫
○菊川孝夫君 別に十八日のストだとかいうことをたびたび申しますが、そのときに組合がゼネストだという言葉を使つてはいないと思いますが、たまたま言論機関等で少し大規模になるとゼネストというような表現をされたかも知れませんが、組合としては決してゼネスト敢行というような言葉は一言も使つていないと思うのでありまして、ゼネストというものは私は狭義に解釈すべきだと思うのであります。例えば時の政権を打倒する目的を以つて行われる大規模のストライキと、このくらいに考えなければならんと思うのです。政治的目的と申しましても、今の政治と経済との分れ方というものは非常にこれもむずかしくなつて来る問題でありまして、政権をストライキによつて変更させようという意図があつた場合には、これはゼネストとして我々としても取るところではないのでありますが、そうでないのに、これはどうしましても日本のような経済の基盤がまあ浅い、底が浅いと言われておりますが、従いまして一朝少し朝鮮動乱のような影響が、この朝鮮動乱の解釈如何によりましては、直ちに日本の経済に響いて参ります。そうするとどの産業にも影響が一遍に参ります。今のような跛行的なのは、これは朝鮮動乱の動向によつてでありますが、一度にやはり失業問題、賃金問題がどこにも山積して来るだろう。従つてそういう場合にたまたまどうも大きくなるのは当然だろうと思うのであります。併しただ大きく同日に行われたからと言つて必すしも……それが政権が変るまでは、このストライキをやめないという目的でもつてやつた場合にはゼネストと言つていいだろうけれども、当然これは自然の勢いでそういうふうにたまたま時期が一致したくらいでもつて、これをゼネストというふうに軽々しく私は使うべきではないと思うのでありますが、その定義等については、もつと慎重に検討して、これはゼネストという言葉を使つてやるときには堂々とやるべきであるが、軽々しく使うべきではない、こういうふうに私は考えるのでありますが、それは意見になりますから措きまして、そこで政治的というのと経済的という判別は極めて私は困難で、すぐ政治的に引つかかつて来ると思うのです。引つかけるようと思えば何でも政治的だというふうに引つかけ得るし、又これを経済的だと抗弁しようと思えば、これは幾らでも経済的だと言つて抗弁する方法もあるし、そういう手段も又私は取り得ると思うのでありますが、そこで従つてこのゼネストの解釈は、私は飽くまでも政権奪取を最終目的として行われるストであるというふうに解釈すべきだと思うのでありますが、この点について労働大臣に一のお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/32
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033・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) なかなかむずかしい問題でありますが、ゼネストが起るという事態は、お話のごとく或いは政権打倒というようなときでないとなかなかそういうものは起らないかも知れません。併しながらゼネスト即政権打倒だということも、これは言えない問題であろうと思うのでありますが、要するに菊川さんのおつしやることは、労働組合と言つても政治というものにかなりの関係のある問題もあるから無関心たり得ないぞという御説だと思いますが、私は御尤もだと思います。従つて先ほど申しましたように、労働組合であるから政治活動をしてはいけないとは私は言つておりません。ただ政治目的というためにストライキをやるということは、私は憲法の保障した趣旨でないと思うのでございます。そういう以外ないわゆる政治活動の方法というものがあるのじやないかと、かように存じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/33
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034・菊川孝夫
○菊川孝夫君 次にもう一つお伺いしたいのは、今の日本の労働問題は何と申しましても人口問題、失業問題が一番私は中心だと思うのでございますが、労働大臣としましてどう考えられるか。例えば日本の完全失業者は、労働省で統計を取られただけでもだんだんと増加の傾向を辿つております。昨年度と比べましても、今年の一月になりますと四百九十万になつておる。昨年の一月は三百七十万、労働省の統計だけでもこういうふうに統計が出ているわけでありますが、失業問題でもこれだけやはり二十七年には殖えつつある。この失業問題の根本対策といたしましては、労働大臣は日本の経済の行詰りをどういうふうに打開されるか。特に中国の本土を含む貿易がこのような状態である場合におきましては、これは頭打ちになるのだ。どこへ求めるかということをよく質問しますと、現在の政府は、東南アジアの開発ということを盛んに言われますが、労働大臣は、この失業問題、これは今後農村の次男坊、三男坊の問題にも響いて来るだろうし、それからもすでに東北方面におきましては、青少年或いは少女の身売りというような問題にまで発展しているのでありますが、これはやつぱり失業問題に大きく……、失業解決ということが何と言つても労働政策に最も大事な問題だと思うのですが、この人口問題、失業問題、なかんずく失業問題について、これが対策についてどこに解決策を見出そうとしておるのかという点について、簡単でよろしうございますが、基本方針だけお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/34
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035・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もでございまして、領土が狭くなつた上に、日本では毎年人口の純増は百万を超えておる状態でございまして、これは将来にとりましても相当大きな問題だと思います。この問題は、私まあ厚生大臣を兼ねておりまする関係もございまして、いろいろ民間の権威あるかたがたの御意見も聞いておるのでありますが、勿論一方には人口調節の必要があるかと思います。併しながら人口調節だけでこの問題が解決されるかというと、私はなかなかむずかしいと思う。やはり基本は、日本の産業規模を拡大いたしまして、いわゆる貿易に持つて行くよりほかにないのじやないかと、かように存ずるわけであります。併し貿易と申しましても、相手のあることでありまして、簡単にできないことでありますが、やはり日本の労働者諸君は何と申しても非常に勤勉なのでありまするから、国際市場においましても一つの私は強みであり、努力をすれば国際市場において日本の商品の進出の余地はまだ十分あるんじやないかと、かように存ずるわけであります。併しながら、それは従前行われたように労働者だけの犠牲においてやるということだけでは、いわゆるソーシヤル・ダンピングのそしりもあることでありまするし、又労働者諸君にも気の毒でありまするから、私はやはり日本の産業における設備の合理化というものを思い切つてこの際やつて能率を上げる、そうして勤労者の勤勉等を加えまするならば、私は国際市場において決して劣るものではないと思うのであります。中共貿易の問題も相当大きな問題ではございまするけれども、この問題はいろんな事情もございまするし、又中共だけと仮に貿易いたしまして、他の面において非常なマイナスがあるということになりましては、決していいことじやございませんので、まだアジア諸国におきましても市場は相当あることでありまするから、私はやはり産業の振興という点に重点を置いて、それに人口調節も勿論加味しながら両方でもつて解決をして行く必要がある。勿論移民の問題も、国際的な信用の回復ということを待たなけりやならんかと思いますが、この問題につきましても、独立いたしました日本といたしましては極力折衡をいたしまして解決を図るということも私は忘れてならない問題ではないかと、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/35
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036・菊川孝夫
○菊川孝夫君 それが一つの大きなネツクになつておるために、どうしても労働問題というものは尖鋭化し、いろいろ争議も頻発して来ると思うのでありますが、簡単なちよつと統計を見て見ましても、去年の一月から本年の一月までの一カ年の物価の値上りと賃金の上昇率、賃金指数と、それから物価の指数とを比べましたときに物価のほうは上つておる、それから賃金指数のほうはそれに大体見合うようには上つていない、又生産指数が鉱工業の生産指数は上つているが雇傭の指数のほうは上つていない、これはこれに伴つていないということが一つの大きな……、ここにいろいろあなたの労働省として心配になる争議が大きくたくさん出て来るという一番根本的な私は原因があるんじやないかと、かように考えるわけでありますが、この問題につきまして今どこの組合でも成るほど破防法については成立することは反対すると言つていますが、この一つの物価の上昇或いは生産の上昇に比べて、雇傭、賃金がそれに伴つておらないということに対する不満をこれを何とか解決したいという要求をみんな掲げて闘つておると思うのでありまして、十八日のストライキも大体においてそこの要求が皆伴つておると思うのであります。たまたままあ破防法というような問題もあつたかも知れませんけれども、私はまあそういうふうに考えるのでありますが、これはますます今後どうしても大規模になると思うのでありますが、この賃金と物価の釣合の不均衡な点、雇傭と生産指数との不均衡な点についてどういうふうにこれを解決しようと……、これを解決しない限り法律をいくらこしらえたつて無理だと思うのですが、これが解決についてどういう方策をお持ちでおられるか、この点について一つ簡単で結構ですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/36
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037・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もでありますが、実は私ども決して悪くなつているとは思わないのでないのであります。賃金も決してそう思うようには行きませんが、終戦後だんだんと実質賃金の上昇をいたしております。それから物価も上つておりますが、物価の上り方と賃金の上り方と比べまして、いわゆる実質賃金の上昇率を見まするというと、僅かずつではありますが、上りつつある状態であります。生産指数につきましては、御承知のごとく、戦前に比べましてすでに一四七ぐらいまで上つておる。ただそれにつれて賃金がまだ戦前に比べて八〇までしか上つていないということは甚だ遺憾でありますが、併しながら賃金が物価につれて釣合わないで下るということはございませんで、物価の上るにつれて賃金も又上つて、実質的には少しずつではありますが上つておると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/37
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038・菊川孝夫
○菊川孝夫君 ではこれは又後で…。いよいよ法案について少しお尋ねしたいと思うのでありますが、今回出される際に労働関係調整法等の一部を改正する法律案として提案されまして、労働関係調整法、それから公共企業体労働関係法、労働組合法、これを一つの法律案としてお出しになつた。どうも労働省のお役人がたの頭のいいところであつて、例えば緊急調整というので一つぶつかけて、これは民間の組合が大きな影響を受ける。ところがちよつぴりと今まで公務員であつた団体交渉を認めておらないところに少し団体交渉を與えろ、交渉権を與えろと、形式的ではあるが団体交渉権を與える。これは今までよりも進歩しておるのじやないか、ところが一方において制約を受けるところを設けて、これを噛み合わして一つにして一括不可分の採決をせいというような出し方をするのでありますが、一体この法律の出し方は、労働関係調整法、公共企業体労働関係法、労働組合法を一緒にして、そして基準法だけは別に離して出しておりますが、これは一体どういう御趣旨で又一括してお出しになつたか、この点を簡単でよろしゆうございますから一つ、誤解を招きますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/38
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039・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 実は法律の体系が、歴史的に言いますと、組合法が先に出て、それから労調法が出て、労働基準法が出て、公労法が出るというふうにばらばらになつたのでありますが、法の体系から申しますと、労働基準法はこれは別の体系で、一つの労働保護法としてある。それから労働組合法や労調法や公労法というものは、これは一つの労働関係法であります。最初はこれを一本のまとまつた一元的な法律で出そうかということでいろいろ立案もしておつたようでありますが、これをこの際一つの法律にして出しまして、いろいろな條文を揃えまするというと、又初めからやりかえるような恰好になつて非常な手数をふむものですから、一応これを一まとめにするのは将来の問題にして、一応形式はもとの形式をとつて改正をしようということで、相互関連のある問題でございますので、一括をしたわけでございまして、別に他意はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/39
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040・菊川孝夫
○菊川孝夫君 我々の見るところによると、これは別に離して出しても差支えない、又離して出したほうが便利だと思うのですが、ここに一つに出したのは、ここで少し與えてここで大きなものをぽつこりと取るのだが、これを與えるほうの連中にはこれを賛成と言わせ、取られるほうの連中には反対だといつたような運動を起させるために、わざと期待したように誤解される向があるのでありますが、これは見解の相違で、その点を私ははつきり申上げておきたいと思います。
次に教員だとか、それから建設省の現場の職員等につきまして、従来この現業と非現業という問題で大分いろいろ揉んだのでありますが、というのは直接行政面に携わる公務員と、単なる政府の機関であるけれども、国民に対してサービスをするのは現業だ、こういうふうに分けていろいろこれはむずかしい監督や行政面に携わる者は純粋な公務員だけれども、サービスをする者はそうじやない。今度一部林野庁であるとか造幣というのは団体交渉権を認めるという一歩進んだ考え方を持ち得ないのですか。教員とか建設省の現場で働いておる公務員には、どういうふうな御処置をお取りになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/40
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041・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 公務員の中は現業的なものと、それからそうでないものとがございますることは御指摘の通りでありまして、私は教員なんかはやはり現業と認むべきものではないと思つております。併し建設で土木や建築の現業に従事されておるような従業員はこれは現業的なものと見るのは差支えないと思つております。そこで私どもは今度の立案をいたします際に、公務員の現業と認められるもので国鉄や専売などと実質上似たようなものは、できるだけ同じような取扱いをして、団交権を與えるべきであるという趣旨で出したわけであります。ただその際に一応国鉄にいたしましても、専売にいたしましても国家の一つの企業体をなし、企業体に従事しているものは働けば働いただけその能率というものについて或る程度の関係を持つて来る企業でございまするから、そういうものにつきましては団体交渉によつて労働條件をきめて行く、又お互いに相談をして能率を上げて行くということが望ましいということで、国家にしましても今度の地方公共団体にいたしましても、そういう企業体をとつたもけであります。従つて印刷庁であるとか、郵政でありますとか、造幣というものは、そういう企業体は全部拾つたつもりであります。で、建設のような事業は現業ではございまするが、企業体でございませんから、これに若し団体交渉権を認めるにいたしましても、同じ法律体系で果してやつて行けるかどうかには、私まだ実は疑問の余地があると思うのであります。これはやるならば別個の法律体系でそういう団体交渉権を認めて行つて、そうして何か最後には仲裁裁定のような方法で解決をして行くということが考えられるんじやないでしようか。これは地方公務員につきましても、現業でいわゆる単純労務につきましては地方公務員法の附則第二十一号に掲げられておるのでありまするから、この中でやはりいわゆる縦割現業と申しますが、こういうものと併せて別個に至急考えて行かなきやあならんのじやないか、かように存じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/41
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042・菊川孝夫
○菊川孝夫君 それでは企業につきましては、これはこの職員の即ち労働者の勤勉、能率の効果を挙げることによつて得たところの成果は、或る程度その企業内における労働者に還元をさして待遇の改善に報いたいというのが根本方針である、こういうふうに解釈してよろしゆうございますね。それでその上に立ちまして、もう時間がございませんので、これは最後の質問となると思いますから、一つ公共企業体労働関係法についてお尋ねしたいのですが、公共企業体労働関係法が実施される際には非常に公共企業体労働関係者に大きな期待を與えて、我々もこれを期待したのであります。ところが実際に運用されてみると、非常にいろいろむずかしい問題が生じまして、なかなか最初に企図したような方向には向かなかつた。例えば仲裁の裁定にいたしましても、仲裁裁定は最終的な労使間を拘束するものであるというので、仲裁の裁定が少くとも出た以上は、これはまあスムーズに守られて通つて行くだろうというふうに常識的に考えておつた。ところがほうぼうに行つてぶつかつてしまつて、なかなかこれを実施されるに当つても困難な問題が幾回ともなくあつた。これはまあむしろああいう騒ぎを起したということは、政府にとつても大きな責任があると思うのでありますが、そういうふうな仲裁の裁定が下つた場合に、もうあとでこれが法規裁量だ、自由裁量だという問題の起きないように、或る程度こういうふうだというふうに明確化するような改正が必要であつたかというのでありますが、そういう点について考慮されておらない、何ら実質的な配慮はされてないように思うのであります。その点について一つ労働大臣にお伺いしたいと思います。それから第二点が労働組合の発達して行つた歴史から考えて見ましても、職員組合主義というものを戦後の労働運動は、どちらかと申しますと、僕は率直に申しまして、我々もアプレのほうでありますが、労働組合を結成して見ますると、共産党の指導者の人達が盛んにボスを排撃するという口実の下に労働運動の経験者であるが、現に現役の職員でない者を、その組合から排除しようという運動を盛んに初期においてはなされたのでありますが、それはなぜかというと、もう長い間十年も二十年もやつて来た者はいろいろ裏も表も知つている、こういう連中が組合の内部に留つておつたのでは、その指導権をフラクを通じて掌握するに極めて困難だ、だからそういうボスは、ああいうものは排撃せいというわけで、排撃してしまつた。併し戦前におきましては労働組合は職員組合主義をそう守るのじやなしに、飽くまでもこれは外国の労働組合の組織を見ましても、そう職員組合主義を厳重に守れというような法律の制約は私はないと思うのでありますが、公共企業体労働関係法並びに地方公共労働関係法の法案におきましては、この職員組合主義を強く守らそうとしているのでありますが、これは少し行き過ぎではないかと思うのでありますが、この点について、諸外国の例等も一つ当然考慮をされてのことだと思いますが、これを少し緩和するというお考えがあるかないかどうか、この点についてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/42
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043・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 第一点について申上げますが、恐らく御指摘の点は公労法の三十五條の問題と、十六條の問題に関係したことであると思いますが、公労法の三十六條はいわゆる仲裁製定があつた場合は、両当事者を拘束するという原則に立つております。これは私から申上げるまでもなく、労働法においてはいわゆる調停と、それから仲裁というものがございまして、仲裁につきましてはその結論が出た以上は両当事者を拘束するというのが建前でございます。従つて仲裁が出た以上は政府も拘束されるべきじやないかという見解を持たれるのは、一応御尤もと思いますが、問題は政府である場合は予算というものは国会で審議され、国会が決定するもので、従つて仲裁裁定で出たものが政府を拘束するということであれば、いわゆる国会で予算を審議することも拘束してしまうことになるわけであります。でありまするから、それは今日の国会というものを考えまする上においてはできないことでありまするので、従つて三十五條には但書をおきまして、但し十六條に該当する場合はこの限りでないぞという條件付で三十五條が謳われているのであります。ですから仲裁裁定だけを御覧になると仲裁裁定が出た以上は、政府も拘束するのだぞというお考えになるのは御尤もでありますけれども、事が政府である場合は、国会の審議を待たなければなりませんから、但書で以て條件を附して、そこで十六條はどういうことを言つているかというと、予算上資金上不可能である場合は政府を拘束しない、併しながらこの場合は政府は国会にかけて、国会で御承認を頂くのか頂かないのかを先ず聞く、こういう処置を取つておるのであります。実際の例といたしましては、最初一昨年の暮に国鉄の裁定が出た際にいろいろごたごたがございましたが、国会はやはり公正に審議をされまして、最初のときには全部は呑めないけれども一部呑むという形で解決をいたしまして、その次には昨年の三月の専売裁定の際は、政府はこれは不可能であると言いましたが、国会ではいろいろ審議をいたしました結果、できるのじやないかということで承認をして政府に出さしたのであります。昨年の暮も同様な処置を取つたのでありまして実際の運用といたしましては国会はやはり公正な目で審議するのでありまするから、実質的にはお話のように現在運用されえいると私どもは思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/43
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044・菊川孝夫
○菊川孝夫君 僕が言うのは国家を拘束するのだということは、法律できめようということを言うのではなく、国家に対する予算の提出権が政府にあるんだから、だから予算措置を通して、その予算がいいか悪いかという判定は国会がすべきではないか、今の行き方で行きますと、もう仲裁委員会よりむしろ国会の労働委員会におきまして最後の判決を下すというようなきらいがある。仲裁の裁定が下つた以上は、それをどういうふうに実施するのかというのが国会においてきめらるべきであつて、そうでなしにこれがいいか悪いか、承認するかしないかというふうなことについて、国会が騒ぎ出して承認されそうになつて予算を出すということを吉武さんが言つておられる。それだつたらもう一度仲裁裁定が出来た、それが正しいか正しくないか、今の事情に照らして正しいか正しくないかということを論議してかからなければならんのであつて、そうなると、屋上屋を架するということになると私は思うのでありまして、ただその実施をするかしないか、実施をどうしてするかということが国会の審議の対象になる、こういうふうに我々は考えておるので、又そうしなければ仲裁委員会といものの存在価値が私はなくなる、こう思うのでありますが、そういつたことが今後條文の審議の際にもつと詳細に、今までの過去の経験に徴しまして、十分我々としても又政府の所信を質し、我々も意見を開陳して臨みたい。もう時間が切れたそうでございますから、これを以て私の本日の総括質問を打切ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/44
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045・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 午前中に引続きまして午後再開いたします。ちよつと休憩前に、皆様に御了解を願いまして、お運びしたい点がございます。それは婦人団体等から相当要望がありまして、ILO出席者のことにつきまして、高田なほ子君の委員外発言を五分ほど求められております。この際許可いたしたいと思いますが、御異議ござざいませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/45
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046・中村正雄
○委員長(中村正雄君) では高田君に発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/46
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047・高田なほ子
○委員外議員(高田なほ子君) 重要な委員会に罷り出まして、御発言の機会をお許し頂きましたことに対して哀心より感謝いたす次第でございます。先ずお伺いしたいことは、今回のジユネーヴの総会における議題の中に特に母性保護に関する大きな議題が出ておるのでございます。国内においてたまたま労働三法の改正に絡んで、労働基準法の改正の問題も取上げられております折から、こうした国際的の会議に母性保護の問題が議題として取上げられることについて、恐らく日本の労働編入は大きな関心を持つておるということは、政府におかれても十分御理解のことと思うのであります。この機会に際しまして政府は国際会議の母性保護の問題についてどのような基本的な態度を持つて臨まれるのか、その基本的なお考えについ、簡単でよろしゆうございますからお伺いしたいと思うのが一点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/47
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048・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 今度のILOの総会に母性保護に関する議案がございます。私どもといたしましても、この母性保護につきましては、できるだけ関心を持ちまして遺憾なきを期したい、かように存じております。今度の会議にそういう問題がございますから、御婦人の代表も送るというふうなことも考えなければならんかと思いましたが、御承知のごとく今日のILOの代表は、労働代表としては総同盟、総評による推薦協議会というものがございまして、それに諮問してそれの答申を得ました者を政府はそのまま任命いたしております。使用者側も同様でございます。そういうような状況でございまして、今回の代表はその推薦協議会から出ましたけれども、そのまま取つたような次第でございまして、決して婦人問題を考えなかつたというわけではございませんので御了承頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/48
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049・高田なほ子
○委員外議員(高田なほ子君) 婦人の労働問題について政府が重大な関心を持たれておられます御意思のほどは十分にわかつたのであります。然らば推薦協会議におけるその推薦を政府が鵜呑みにしたというわけではありませんが、結果的において御承知のようにILOの條約の中に、第三條で各代表は顧問を伴うことができる、顧問は会合の議事日程の各議題について二人を超えてはならない、婦人に特に関係がある問題が審議されるときは顧問の中から少くとも一人は婦人でなければならない、こういう條約のあることはすでに御承知のことであろうかと思います。然らば推薦協議会において、これがたとえ絶対的なものでないにしても、政府が日本の婦人労働が過去から現在に至るまで極めて国辱的な立場に置かれておるということを十分に御了解ならば、なぜそういう御指導の任に当られなかつたか、この経過について伺いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/49
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050・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もでありますが、この労働代表を政府からどなたはいい、どなたは悪い、どこから出せと、こう言い出しまするとなかなか干渉がましくなりましてよくないと思いまして、私どもはもうできるだけ、組合側にしましても、使用者側にしても、御推薦になればいろいろ意見がございましても、それを尊重して行くということにしておるわけでありまして、将来の問題としてはそういう問題もあろうかとも思いまするから、その問題は組合内部で相当御議論になるでありましようし、私のほうも勿論気を付けて行きたいと思いますが、推薦の行き方としては組合側から出されたものに政府が余り文句を付けるという行き方は私は差控えたほうがよかろうと、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/50
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051・高田なほ子
○委員外議員(高田なほ子君) 組合側の推薦に対して政府が干渉するというこの態度は、これは決して望ましいことではないと私も思います。併しながら現在の日本の婦人労働は極めて重要な問題であり、特にそういう観点から、初めてこの母性保護の面が取上げられる国際会議に対して看過されておるというような面があつたならば、これは御遠慮なく政府がアドヴアイスされるべきである、それを採る採らないは、これは労働組合の自主的な問題でなかろうかと思う。特に私はここで御指摘申上げたいことは、この議題があのILOで取上げられるということは、特にこの労働省内における婦人労働課においても御承知であり、而も本年度の予算編成において、婦人労働課は女性の代表をでき得れば国際会議に送らなければならない、現在の日本婦人労働の段階において特に送らなければならないという、非常な熱意を示されて予算の中にその費用を組まれたと聞いておる。ところが労働省みずからは国際労働課のほうでこれは考えたのだから、こういう特定な予算はまあ考慮してもらつて、こちらのほうにお任せを願いたいというようなことであつたので、遂にそれらの予纂が削られて、うやむやになつてしまつた、こういうことを私は情報として聞いておる、初めからそれだけの、そういうことが論議の的になり、而も労働省自体としてお考えになつたとするならば、結果としてそれが婦人の問題を討議するのにふさわしくない、不適当な條件であるとするならば、婦人労働に対する御熱意が本当にあるならば、これは干渉という意味でなくて、善意のアドヴアイスをされるということは、これは当然のことであろうと思うのです。この点についてのお考えと、更に今後二回、三回とこういう問題が重ねられるでございましようから、結論として今後どういうふうになさるのか、それだけ結論として伺つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/51
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052・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) ILOは御承知のように非常に今重要な歴史のある会議でございまして、ただ婦人の代表であるとか、何の代表であるということでなしに、労働団体の代表、それから使用者団体の代表、そうして政府、こういう三者構成である組織でございまするから、従つて代表というものは組合側は組合側の意思によつておきめになつたものを出すという行き方につきましては、私はこれは尊重して行かなければならんと思います。その際に御指摘になりました婦人問題がある場合は、婦人という問題を相当考えよということにつきましては、私御尤もと思いまするので、今後十分気を付けて行くつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/52
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053・菊川孝夫
○菊川孝夫君 この国際会議の今年の旅費でございますが、これは国会或いは各省等においても非常に国際会議の旅費というものを要求したのです。ところが大蔵省のほうでは濫用に陥る危険があるということで、全部一本にされることによつて国際会議の旅費というものは縮小されたのであります。従つて国際会議の旅費というものは大蔵省にあるのでありますから、こういう場合特に婦人問題の多い、それから特にイギリスの辺りはソシヤール・ダンピングと言つて、日本の紡績に対して批判がやつて来るだろう、誤解に基く批判も出て来るだろう、そういうときに婦人労働者をやつて、いやそうじやない、喜んで働いているなら喜んで働いている、決して我々は不当労働を受けていないなら受けていないというふうに、堂々と発表させるようにすべきだと思うのでありますが、そこで今回の処置として労働大臣にお尋ねしたいのは、あの三名よりも労働者の代表の旅費を取上げなかつたというところに問題があると思うのであります。大蔵省に折衝せられてもう一名ずつ取るのは、そう私は国の全般から考えて無理じやないと思う、特にこの間のサンフランシスコの会議のごときはたくさんあのときに行つて、吉田さんでさえもいやもうこう多く行くのはと言つても、押切つて旅費を出しておる。今あのときにもう一名分の旅費を貰つておつたら総評としてもやれるだろうし、又勿論総評なり或いは婦人の推薦委員会に対して、もつと働きかけるべきであつたと思うのであります。この点においてもぬかつておつたと思いますが、労働省においてもその点が足りなかつたが、この折衝模様はどうですか。今後の毎年の問題だと思うのですが、一体今後は大蔵大臣にこれが増加方を折衝されて、それはどういう点で不可能になつたか、この点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/53
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054・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 私もILOの会議は歴史的な会議でありまして、重視すべきだと思つております。併し実は国際会議はILOばかりでございませんで、たくさんございます。私のほうにいろいろな関係からお世話しておる問題も相当ございます。でありまするから政府自体から考えまするとILOだけであれば、何も二人、三人殖やされても大したことはないのでありましようけれども、各種の国際会議が行われておりまするので、全体から見ますると相当に上つておるわけであります。併し今菊川さんも話されましたように、私はこの労働会議というものは相当重要な会議でありまするので、先般一応大蔵省としては労働者側も使用者側も代表と顧問を入れまして二名ということできまつておりましたが、その後実は折衝いたしまして三名にしてもらつたのであります。でありまするから相当努力したわけでありまして、努力が足りないというお叱りは止むを得ませんけれども、私どものほうとしては相当努力をして一名殖やしたという点は一つ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/54
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055・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 一応午前中の日程はこれで終りまして、午後一時半まで休憩いたします。
午後零時十九分休憩
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午後一時五十七分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/55
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056・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 午前に引続いて再開いたします。通告順に従いまして発言を許します。村尾重雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/56
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057・村尾重雄
○村尾重雄君 私は大体総括質問において四点に亘つてお尋ね申したいのでございますが、質問に入るに先立つてこの際一質だけ労働省の御見解を承つでおきたいと思います。それはすでに御承知になつておること、又これに対する御意見も発せられたかも知れませんが、全国選挙管理委員会が労働組合の破防法反対、労働関係法改悪反対運動に対して、これは政治運動である、それから政治資金規正法に基いて届出をしてもらわなければならんという見解を以て命令を全国に発したということであります。これに基いて大阪選挙管理委員会がそれぞれ労組に対してこの届出をすることを五月二十一日に通達して参つたのであります。これはどうかお考えになつても、今日の労組が選挙運動をなすときにこの届出をなして今日までやつて参つたことは、これはもう今日やられておる問題でありますが、今度新たに、こうした破防法なり労働法改悪に対する反対運動という名目の上に行われておる運動が、この法の取締りで届出を受けなければならんということはなんといつてもこれは一つの干渉になり、弾圧になると思います。これに対する労働省の見解をこの際明確に承わつておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/57
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058・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 只今の御質問御尤もでありまして、労働組合は労働組合法にも言つておりまするように、労働組合がそのかたわら政治的な活動をなすということもあり得ることでありまして、それが即ちすぐ政治資金規正法で規律されるということは、ちよつと行き過ぎじやないかと私どもは思つております。ただ主管が違いますので、どういう見解を持つておるか存じませんが、私どもも選挙はこれは別でありますが、そうでない平素組合運動のかたわら政治的な見解をお持ちになり、従つてそれに対しての活動もあり得ることでありまするから、これがすべてその政治資金規正にかかるということになりますると、非常に窮屈なものじやないかと存じております。その方面につきましても私ども折衝してみようかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/58
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059・村尾重雄
○村尾重雄君 その見解非常に結構だと思います。その点善処を煩わしたいのでありますが、繰返すようですが、選挙のときのこの法に基く届出、これは非常に選挙運動をちじ込められておるわけなんです。そうした問題がとても重大だと思うので、これは労働省として明確に善処されるよう希望しておきます。
そこで、先ず私は第一に労相の御意見をお伺いしたいのは、破防法から続いて労働関係法の改正、又集団示威等の取締法、警察法の改正、そうしてなお又ゼネスト禁止法を考慮中だという、こういつた政府の治安及び労働関係法の提出をめぐつて、これがどう社会的に反響を起しておるかということですね、これに対する労相のお考えを私は伺いたいのでありますが、少し具体的に申上げますと、例えば第一波スト、これが労働省の見解では小規模に終つたと、実数二万六千とかという発表を受けておりますが、第二波は御承知のように炭労だけでも二十数万の参加者があり、ああした時間的なストをやり、職場における大会であるとか、又休日の変更であるとかいうような内容においては雑多ありますが、ああした大規模なストが決行されております。まあメーデーにおける皇居前広場におけるああいう事件が起つた、これに対処するためか、便宜上これによつてやられたのか知れませんが、政府が急に破防法に続いて労働関係法その他の治安対策法が提案されたのであります、これは非常な社会的に反響を私は與えていると思います。これをどう労相は今日の情勢を察知されているか、一つ御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/59
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060・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) お話のごとく、破防法はじめ労働法が労働組合に対して非常な影響を與えておるという事実につきましては、私どももそう感じておるわけでありますが、御承知のようにこの破防法もその内容の実体はいわゆる極端な暴力行為を防止しようということで、大体政府が何を考えておるかということは恐らく村尾さんも御了察願えるのじやないかと思います。それから労働法は何も今始まつたことではございませんで、もう昨年来独立したならば自立的に行かなければならんので、それにどう対処しようかということで、この内容ももう繰返すまでもなく一方は団交権の復活を図り、一方は公共の福祉から考えての合理的な解決方法を取ろうというものでありまして、いずれも私は静かに日にちをかけてお考えを頂ければ御了解頂けるものだと私は感じておるわけであります。併しいずれも労働運動をなさつておるかたがたにとりましては、この運用を誤まるというと基本的な権利に対する抑圧になる虞れがありまするので、御心配になつておるという点につきましては私は御尤もだと思います。又政府としてもその運用の面につきましては、十分気をつけて行かなければならんと私は信じておるのでありますが、いずれの法律にいたしましても、今日の民主主義下におきましては、曾つて治安維持法を運用したような極端な解釈をするということは私は到底許されない。又政府もするつもりもございませんし、それではこういうものは要らないかというと、御承知のように過般のメーデーでも御承知のごとくやはり国内には一部の極端なる分子がいるわけであります。これを放つて置くわけには参らないのでありまするから、やはり私は破防法につきましても必要じやないか、それから労働法も内容を御検討頂きますれば、決してそう労働者の権利を抑圧するというものでもないのでありまするから、この点は十分一つ御了解を頂くと同時に、我々も又その運用につきましては各組合の御心配になる点を十分反省して、遺憾なきを期さなければならんと、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/60
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061・村尾重雄
○村尾重雄君 労相のお考えになつておることの是非についての判断、批判は先ずここにおきまして、労相は只今のような考え方で、これは改良的な方向に向つているのだという考え方を持つておられるように私は常に察知しているのでありますが、それと現実の学生運動、それからその他の社会人或いは文化人の行動というものに対して私は今日対象にするのじやないのです。殊に労組の動き方なんです。例へば例を挙げますというと二十七日の炭労の神田教育会館における第四日目の大会で運動方針が審議された、最後の決定を見るときに、北大西洋條約の破棄を含むべしという是案を出した北海道の一部代議員の提案に対して、これは御承知のようにたしか百十五票に対して七十三票という差でこれが採択されております。それと同時に常磐炭鉱の代議員から出した国際自由労連に、たしか言葉は総評全体をして国際自由労連に参加促進をすることという議題を挿入すべきであるということを提案いたしております。これは多数において否決されております。これと同じように二十八日の芝浦における組合の全国大会で、これ又議案としての国際自由労連参加の議案は、これは否決を見ているのであります。こういうような重要な単組の最近の動きというものを見まするときに、私は非常に左旋回の急激な動きが高まつているということを見逃すことができないと、こう思うのであります。これは私は明らかに政府の最近における労働並びに治安における反動政策が明確にこれらの作用を来しておるものだと、我々はかように察知いたしておるのであります。これとて全体の労働組合の動きではありませんが、主要な労働組合の運動にこうした左旋回の一つの機運というものが今回かもされておることをば我々は察知せなければならないとかように存ずるのであります。御承知のように国際自由労連は世界労連に対するイギリスにおける民主労働組合を中心としたこれらの勢力の結集であります。我が国の労働政策というものは、これの是非は抜きにして労働組合の民主的なあり方というものはこうした一つの世界の国際自由労連に関連した一つの動き方として今後進むべきことであろうと思う。又労働省としてこういう立場を明確にとつておられると察知するのです。こういうような点から私は今日の政府の取つておられる諸政策というもの、特に労働及び治安関係法案の提出というものが非常な労組の左旋回に大きな影響を與えるということは労相としては察知さるべきだと思うのですが、この点どうお考えになるか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/61
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062・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) お話のごとく、組合が左に向わんとしておる動きのあることも私は存じております。政府の施策においても十分考えなければならん点もあると思うのでありますが、この傾向はただ政府の施策というよりも今日の国際的な情勢と絡み合せて、私はやはり日本の極左分子の相当の活動というものが影響しておると思うのであります。で先ほども申上げましたように日本の労働組合がとかくそういう政治的な方面に利用されるといいますか、左右されるという傾向のあることは、私は将来の日本の労働組合がまつすぐ進んで行く上において非常に禍いをしておると私は思うのでありまして、これは私は長い時期を要するのじやなくてやがてわかつてもらえる時期が来るのではないか。もうすでに終戦直後の状態から今日までを見ますれば、私は格段な相違を来しておると思うのでありまして、又それから脱却できない点は遺憾でありますが、もう少し時間をかければ、私はそういう政治的な変更の状況というものは脱却して行けるものだと存じております。従つて我々といたしましても、今後の施策につきましてはその点は十分心得て行くつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/62
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063・村尾重雄
○村尾重雄君 私は吉武さんが常に言われ、常に思つておられる非常にいい法案を自分は考えているのだ、改良的な考え方から、改良的な法案だということの考えを持たれる前に、やはり自由党の一つの政策がこうした労組の今後の動き方に大きな影響を與えるということは、やはり私は看取さるべき事実がたくさんあると思うのです。こういう点を私は特に希望を申上げておくものであります。
次いで私がこの際はつきりしておきたい問題は、この労働関係法審議と共に今後重要な問題になると、こう思うのであります。というのは破防法反対の第三波が労働法規改正に対する第三波に転換されつつあることは明白に察知されると思つておるのであります。で私がこの際あなたがたにお聞きしたいのは、第一波の当時の労働省がとられた各単組、特にこの炭鉱労組との、又主要人物としての武藤君なりその他各単組の幹部との間にとられたいろいろな交渉であります。もとより当時の第一波をば回避するために労働省として非常に良心的に交渉されたと我々は察知するのでありますけれども、破防法案が提案される前の行動として、破防法が一応政府の閣議で決定し、それが提案された後においても、やはり国会審議外においてこの破防法を中心としての労組と労働省内郷のいろんな交渉、まあ悪い言葉で言えば取引が相当私は行われた感を今日持つておるのであります。その点の真相は私はどうか知りませんが、一応当時の破防法を中心としての、労働省は国会に上程された当時における取扱い方に対して、我々は一応労働省の取つた態度を御説明願えれば結構だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/63
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064・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 実は破防法につきまして国会に提案する前に、労働組合の動向を見て修正をしたということについてはいろいろ御批判がございます。私もこういう問題は国会に出て、そうして国会を通じて改むべきものは改めて行くということが正しい行き方であるとは思つておりましたが、御承知のごとく提案をいたす直前に、組合のほうが十二日にストをやるということを決定しまして、放つておけばもう殆んど不可避的に入る情勢でございます。そこで私どもは組合がどういうふうか知りませんが、組合の中にはもう絶対反対だという線と、絶対反対だとは言つているけれども、労働組合の正常な活動に影響のないようにという実質的な見解を持たれるかたとがあつたようでございまして、世間ではいろいろ私が武藤君と取引をしたように言つておりますが、私全然そういうことはございません。武藤君とも会つてもおりませんし、それからどこをどういうふうに直したらいいかということは実はわからん。わかりませんが四日の日に総評の幹部の者と、私の部屋で木村法務総裁を呼んで説明を願つたときに、いろいろ意見が出て、意見を聞いてみると、皆組合運動に対して影響があるということを非常に心配される。これは私は御尤もだと思います。それで木村さんにそういう誤解を受ける点を改めるだけ改めたらどうか、趣旨はそういう正常な組合活動をこれで抑制する考えは毛頭ないのだからということを申しまして、いよいよ十二日に入る前の十一日でありますが、私は閣議でそれを提案したのであります。そこでそのときもどこの條文をどう直すとうことを、大筋の三カ條を示しまして、第一には、正常な組合活動を抑圧しないということをはつきり書く、それから第二には、若し過つた運用をしたときに救済の途を考える。それから第三は、審査委員会という処分の決定権を持つものの中には、労働組合の代表も入れたらどうかという三項目を提案しまして、その当時閣議でもこれをでは実行してストライキがとまるのかという質問はありましたが、それは私はわからない。組合と相談してやつているんではないからわからんが、政府は少くとも誠意を示したらどうか、若しそれによつて組合側が了解してくれればいいんだということを言つて、実は了解を得て十一日にあれを発表したわけであります。それを武藤君は採りまして、政府が修正するということだから、どの程度修正するか見た上でいいじやないかということで、炭労はストに入らなかつたわけであります。一部の極左分子がデマを飛ばしているようですが、私はそういう事実はございません。事前にそういうことを修正したということは私は遺憾に思いますが、併しそれによつて独立直後にそういう大規模のストライキというものは私は余り香ばしくございませんので、労働大臣としてはできるだけこれを避けたいという考えから取つた処置でございまするから、御了解を頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/64
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065・村尾重雄
○村尾重雄君 私は破防法に対しての国会上程前に取られた態度云々を今日我々は問題にしようとは思つておりません。それは十分に了解している点であります。ただ今後労相にお願いもし、又労相の御意見を承つておきたいのは、今度は労働関係法規の労働省直轄の問題なんです。そこでこれは非常に内容が多岐に亘つております。而も法案が五つに亘つております。影響する労組の個々の問題が非常に多いのであります。そこで何かと法案が労働省において立案を見、これが国会に提出されるに至るまでに、幾多そうした労働組合の陳情なりいろいろ話合があつたと思います。今後例えば国会審議中においてこれらの内容の国会審議に関連して、例えば修正点なりいろいろな点について、私は労働省としてやはり相当注意した今後は行動を取つて頂きたいということをお願いしておきたいのであります。と申しますのは何かといいますと、私個人では直接会つたこともありましようが、各政党に対する労組側のいろいろと陳情並びにまあことを悪く言えば、そういう一つの動き方に、一つの表現される言葉に直接関係のない議員のかたがたには誤解を受ける言葉が非常に多い。その点が例えば一つ労働者では非常にここは修正はこうあるべきだ、労働省としてはこう考えるんだが、併し国会内部における一部、例えば自由党の一部のかたにこういう反対があるとか、或いは政府の一部にこういう反対があるとかということが障害になつているんだから、こういうふうに動き出せという運動の、国会活動の方針が労働省から指示を受けているかのごとき、これは事実あるんです。これらの点は私は今後の第三波ストが特に労働関係ストに極限されようとしておる。主力が置かれようとしているときには、相当国会の審議と国会外における労働省の人々の考え方は、まあ良心的な立場から言われるかも知れませんが、影響は非常に大きいと思う。特に国会の審議権に対しても、これはやはり相当考えるべきことになると思いますので、その点労働省として十分善処されることを私は望む次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/65
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066・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御注意の点は御尤もでありまして、十分気を付けますと共に、私どもは国会の審議というものを一つ十分尊重して行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/66
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067・村尾重雄
○村尾重雄君 それからたびたび午前中にも、それから衆議院においても、たびたび論議の的となつたゼネスト法を提案するかしないか、又労相の慎重に考慮しているという態度ですが、重複を避けまして、私は昨日も述べましたように、極く簡単に労相に聞きたいのは、衆議院における審議においてもその他の機会においても、労相は労働組合の今後の動きを相当注意しているんだということが、ゼネスト法がいいとか悪いとか、この際出すことがいいとか悪いとかというあなたの考え方を表現する前の、一つの前提になつているんです。即ち労働組合の今後の動きを相当注視しているのだ、だから動き方においては自分としては提案をすることも賛成するんだという御意見が加味されていると、こう取れるような言い方なんであります。そこで私は労働大臣として先ほどから話があつたように、マツカーサー元帥から三百二十号の政令としてゼネスト禁止、いわゆる争議禁止令を出された当時の日本の状態、それと今日とを対比して比べた場合において、ああしたゼネスト禁止法というようなものが当然今日取上げられていい問題ではないということは明白だと、こう思うんです。そこで労相として私は例えば、是非は別として、今度出された労調法の改正の緊急調整というような問題が今日出されて、それから推して労相は明確にゼネスト法というようなものは今日出すべきでないという態度を明白にされることが、私はいいんじやないかとこう思うんですが、如何でしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/67
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068・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もな御意見でございまして、私どもも今度の緊急調整という制度をお認め頂けるならば、大体ゼネスト禁止法を出さなくてもやつて行けるんじやないかと実は思つてはおりますが、御承知のように今日の組合につきましては、大体心配がないとはいいながら、他からいろいろ働きかけをいたしておりまするので、全然心配がないかというと、どうも心配なしとも言えない、そこにゼネスト禁止法は出さないぞということも言い切れない点があるわけであります。併し午前中も申しましたように、終戦直後に比べれば労働組合もだんだんと正常化しつつあるのでありまするから、その点を十分考えて慎重なる検討をしなければならんと、かようにまあ存じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/68
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069・村尾重雄
○村尾重雄君 まあ今の労相のお言葉を承わつても、緊急調整ということはゼネスト禁止的性格を含んでおるものだと、我々の想像通りとつていいと思うんです。
私は最後にお尋ねしたいことは、このたび出された労働関係法の提案理由の説明においても又その他の公式な機会においてしばしば労相が、今後の労働法改正について、自分が一番考えていることは、それは講和発効後における労使間の安定という問題だと、これは常にこれを考慮しているんだという説明が常にあつたんであります。そういう点から言つて今度の労働法の改正が、その重点が早期の調整にあるということは言を待たないと、こう思うのであります。そこで政府は今後改正案提出に当つて約半年間労働法審議会並びに基準審議会において、練りに練つて一つの法案の今日の基礎を作られたのであります。いよいよ国会提出に当つて政府の言明を見ますと、こうであります。我々は労使、公益三者の意見の一致したものは、これを全面的に採用し、一致しなかつたものは公益側の最終案を参酌したと、常にこれを説明されているんであります。ところが一番中心の的となつている緊急調整でありますが、いわゆる早期の調整の問題に関して、公益委員側の意見書をあなたは参酌されてからないだけでなくして、これを取上げておらんのであります。そこで私は今度の提案説明におけるあなたの説明、それから常に取つておられた態度というものが、この審議会の三者の意見の一致、それのできないものは公益委員側の意見を尊重するということに対して非常な私は疑義を持つんですが、これについてあなたの御説明を願いたいとこう思うんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/69
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070・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 私は大体申上げましたように、一致した点は殆んどこれを採用しましたし、それから一致しない点で重要な部分は公益委員会の意見を殆んど尊重しておるつもりでございます。ただ文字的に言いますると若干の違いがあつたかと思いますが、大体の筋は私公益委員の出された筋を採用しているように思うのでございまするが、その点は細かい点になれだ多少字句等において違つた点があるかも存じません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/70
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071・村尾重雄
○村尾重雄君 この問題は後日の緊急調整を取扱うときに又お互いに私たちの立場から論議いたすことにして、私は今日はこれでやめたいと思うんですが、これは午前中に菊川君も触れられたように、それから衆議院でもたしかどなたかが討論のときにおつしやつておられたように、例えば羊頭を懸げて狗肉を売るということを、非常に地方公務員法において、又地方公共企業法ですか、それから公労法において、又労組法等の改正においてそれぞれ単組が大局を離れた一つの小さな問題について改良的な措置を講じて、大筋においてゼネスト禁止的性格を持つ緊急調整の問題を政府が今日取上げて法の改正を行うということは、何と言つても私は了解しがたい問題なのであります。これの説明はなお今後の問題に残しますといたしまするが、確かに今度の労働法の改正は以上の点で細かい点において、まあそれぞれ関係労組においては重要な問題か知りませんが、僅かを與えて、大筋において労働運動の中心問題ともいうべき、又罷業権の中の最も中心問題というべき問題を制約するという点が、今度の改正の中心になつておるということは、私遺憾に堪えないのであります。これはのちに譲ることにいたしまして、大筋において私は今度の改正法案というものが非常に労働運動を制約するものであり、労働組合に取つては致命的な問題を含んでおる。こう取つておるのでありますが、重ねて労相の御意見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/71
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072・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 私いろいろの御批判はこれはおありになろうと思いますが、私自身これは先ほど申しましたように、委員会の意見及び委員会中の公益委員の意見を尊重して出したばかりでなく、私自身においても決してこの労働者の権利を抑圧しようという趣旨ではないのであります。私はまあ、それは君は立場が違うから、そうであろうとおつしやればそれまででありますが、私はいろいろな点を考えて、こうすることが結局労働組合にも決して悪くならないぞ、ただ争うだけがいいのじやなくて、やはり何とかして解決をするということが大事なんじやないだろうかという点で、まあ最悪の場合に対する処置を考えておるわけでありまして、なお片方占領中に制限を受けましたものにつきましては、できるだけ回復をして行くという処置を構ずべきじやないかという点で、私はこれは自分に顧みてそう遺憾とは思つておりませんが、これはまあ見解の相違でございまするから、これ以上申上げません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/72
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073・村尾重雄
○村尾重雄君 最後に極く簡単に、第三波が時間的な問題となろうといたしております。そこで私は参議院における労働法の審議ということ、それからどう修正されるかということは非常に重要だと思うのであります。その点で第一波、第二波に対して真剣にこれに取組まれた労働省当局として、これは第三波を防ぐ意味において、私は十分にこの参議院の今後の審議及び修正に対して非常に熱意を持つて協力されることが、第三波に対して或いは労相として一番正しい行き方だと思う。特に今後の労働法の審議に対して熱意を喚起するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/73
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074・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 私どもも十分その点は考えておる点ではございますが、先ほど来申上げましたごとく、今回提案いたしました趣旨は、私は基本においては御了解願えるものであると信じております。併しいろいろの取扱いその他につきまして、参議院においても十分慎重な御審議のあることだと思いまするから、その点は十分私どもも尊重して行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/74
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075・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 続いて堀木君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/75
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076・堀木鎌三
○堀木鎌三君 午前中からいろいろ各方面に亘つて各委員から触れられましたので、それらに関連いたしまして成るべく重複を避けたいと思うのですが、重要な点については幾分重複いたすのも止むを得ないと、こう思うのですが、何と申しますか、独立後の労働政策というものの重点がどこにあるのかということで考えてみますと、どうも政府の御説明は、経済自立という問題を非常に大きく掲げられておる。経済自立を急ぐ余りに、もう一本の柱の労働者の基本的権利というものに対する尊重というものとの調和性をどこに求めるかという点については、私は幾分欠けるところがあるのじやなかろうか。経済自立の問題は、まあ今の内閣としても又国としてもこれは大切なことであることは私うなずけます。それは通産大臣も熱心に説くでしようし、大蔵大臣も熱心に、経済閣僚というものはこの頃は馬鹿の一つ覚えのように経済自立、経済自立と言えば何でも通るというふうな考え方に近いのじやなかろうか。私は労働大臣に望みたいことは、そういうふうな、無論国家として経済自立は非常に大切だということについて私は否定しようとは思いません。併しその空気、それだけですべてを流そうという空気が起つて参りますと、その前に日本の民主化のバツクボーンとしてのこの労働者の基本的権利というものがとかく軽視される傾きになつておる。吉武労働大臣は労働省にも労働行政にも長く御経験になつておる。私はこういう大臣が来られたときに、せめて守つてもらいたいのは、ほかの大臣の言つておるようなことでなしに、その間に立つて一体労働者の福祉をどうするかということをお考え願わなければならない。この労働省の官僚は無論労働者の福祉と、職業の確保を図ることであり、労働組合法の目的は労使の対等な地位を確保して、その間に立つて労働者の正当な地位を占めよう、そうしてやることが経済の興隆に寄與するのだ、こういう考え方を、それこそ労働大臣そのものが熱心に守つて頂かなければならん問題だと思う。そう言いますと労働大臣だから決してそれを否定されない、いやもうその通りだとおつしやるにきまつている。御答弁は殆んど要らないのです。ところがおやりになること自体は決してそうではないと私は思います。今日は初日ですから私余りたくさん具体的実例を挙げません。挙げませんが、まあ一例を取つて見ますれば、公労法の関係から先ほど非常に御用意があつて、雄弁に御答弁なすつていらつしやるが、十六條の問題でも法の制定のときはそういう精神ではなかつた。併しながらこれが第一次裁定が出て見ればこれは大変。それで大蔵大臣が予算総則をつけて、予算総則に人件費の総額の制限をする。或いは公社法を改正する。そうして予算との結び付きをつける。これは明らかに団体交渉権の内容を収縮せしめるものである。私はそういう解釈をするなら吉武さんと五日でも六日でも、この問題だけでもやつて御覧に入れるが、そういうことを言つておるのじやございません。併しそういう事柄が起つて来ること事態は、団体交渉権を與えると称しながら団体交渉権の内容を奪つてしまう。だから企業体の首脳者は団体交渉能力のない無能力者に化してしまう。これは明らかにあなたの内閣でおやりになつておる。今度の場合でも緊急調整の問題をつかまえて見ましても、今労働法及び労働関係調整法等で與えてあることでも、まだ十分に利用されていないというか、活用されていない状態においても、それを活用するということを考える前に、やはり緊急調整の問題をお出しになる。これらについては別個にいたしますが、こういうふうなことを考えて参りますと、おつしやることと実際に行われることとは従来とも違つておる。じや今回はせめてあなたが来られたのだから、よほど違つた方一向に出るだろうということを我々期待した。そうすると成るほど国家公務員に対して現業的の性格のものには公共企業体労働労関係法の適用があり、地方公営事業についてもその線に準じて、法規ができるということなんですが、内容を見ますと、労働者が普通持つべきものが非常に制約されておるというふうな点が十分考えられる。それから従来の我々が労働法に関係して来てやつて参りましたことで、今回特に考えられることは、やはりこの労働関係法規について、成るほど法令審議会をお開き願つた。これは私も議会で主張して、労働省で御採用になつたとは言いませんが、労働省がその線に沿つておやりになつたことはわかる。併しこれだけの改正について、各関係方面の意見を広く聞くという従来行われておつた公聴会の制度が行われていない。それから先ほど別な委員からお話になりましたように、成るほど労使双方が一致を見なければならないものについては、公益委員会の意見を参酌して取入れたというように私は思う。これは素人ならそう言つてもいいのだが、労働法規に明るい吉武大臣が、例えば緊急調整の問題についてもどういうところにポイントがあるか、労働大臣の発動というものが一方的に国家権力を持つておる者だけの判断で行われないというところに私は公益委員の意見の重点がある。これはほかの人が、素人が言うならいいのですが、吉武さんが言うのは少しおかしい。それからもう一つですね。そういう問題に関連して申上げますれば、この労使間の問題について権力の直接の介入を避けようということは、これは従来労働関係の問題について非常に守られて来たことなのです。これは労使双方とも避けよう、労使双方とも都合のいいときは国家権力を利用するが、都合の悪いときは国家権力でやられちや困るという傾向はありますよ。併しとにかく基本線としては、労働問題については労使直接の介入を避けよう。ところが労働者の官僚、あなたのそばに座つている官僚は、これはなかなか労使間に介入したい。それから賀来試案なんというものがその法令審議会に出たことは明らかなのです。そういう点から見ると、今度はどうもそういう関係から労働大臣も権力に介入したいという気が起つて来のかも知れない。こういう気も私はする。そういうふうな実例を挙げますと、実は私ども従来労働問題を扱つて来た者から見ると違つた形になつて来ておるのです。ここで私はその点について、今日は初日でもありますし、余り細かいことに入りませんが、そういう点についてあなたとしてはどういう考えでおられるか。この労働法規関係の改正については広く朝野の意見を求めるということ、そうして改正について国民が納得するという手段方法を講ずるということは、私はもう非常に労働省がやつて来たいい慣行であり、民主的な慣行だ。手続的にそういう点が取られた。それについて吉武さんは他の委員に対して別な機会に非常に事急を要する、こういうことを言われるのだが、それについてはその急を要することが又今度はわからなくなつて来る。そういうような点につきまして、労働大臣の意見をこの際承わつておきますことが、私どもこの法案を審議する上に立つて非常に必要なことだと思いますので、それらについてのお考えを承わりたい、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/76
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077・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もな御注意でございまして、私どもも実はその点は十分考えたつもりでございます。第一は御指摘になりました経済自立が大事であるが、同時に又労働者の基本的な権利を考え、同時に又福祉も考えなければならんということは、これは当然でございまするし、又大事なことであると私は考えております。従いまして今度の改正にも、或る方は羊頭を懸げてというふうにお考えになるかも知れませんが、私としては基本的な権利の制限されておるもので、これはどうもこのまま放つておいては気の毒だなと思うものには、十分ではございませんが、できるだけ早い機会に回復しようという努力を尽したのでございまして、僅かだと言われればそうでございますが、今回の現業の一部を国鉄その他と同じようにするにつきましては相当の努力を払つたつもりでおるのであります。なお公労法につきましては、堀木さんも御関係があつただけに印象が深いと思いますが、これは当初の裁定のときには成るほど意外にお考えになつたかも知れませんが、やはり輿論というものは落着くところに落着くものでありまして、二回目からの裁定につきましては、国会も大体裁定というものを尊重してこれを承認をし、政府も又それを認めざるを得ない状況になつておりまするので、法律はいろいろの点があるかも知れませんが、今日この法律の運用におきましては、私は大体遺憾なきを期しておるのではないかと存ずるわけであります。なお緊急調整につきましては、いろいろ御議論があるでありましよう。現在の強制調停もあるのじやないかというお話だと思うのでありますがございますけれども、それは又それとしての活用の途があり、それを余り適用もしていないというお話でありますが、私どもこの緊急調整というものは、文字に示すように本当に緊急の際の調整でございまして、争議があるたびにこれを適用してやろうというつもりはないのであります。実はそれじやこういう緊急調整の必要な場合があるかと言われますと、私はまだ日本の現状におきましてはあり得るのじやないか。で文字にも示しておりますように、公益事業であるとか、大規模の争議で公共の福祉に重大な障害を及ぼす争議であり、而もそれを放つておいて、とにかく国民生活に大きな損害を與えても政府としては介入できないのだから仕方がないから放つておくのでは、私は今日世間がすまないのじやないか。従つてそういうときには政府が暫らくお待ち下さい、そうしてこれを中労委に何とか解決してもらおうじやないかということを、政府が直接関與するのじやなくて、三者構成の中央労働委員会にお願いをするという態度を取るのでありますから、これも私は了解を得るのじやないか。占領下の話は申したくもございませんけれども、堀木さんも御承知のように占領下におきましては、単なる十八條の改正、調停以外のいざという場合は、やはり司令部の権威において或る程度解決したという事例も一、二に限らないのでありまするから、それが独立した途端に、そういう必要がなくなるとも私は考えないのであります。やはりまだ日本の労使双方にこれは責任のあることでありますが、やはりそういう緊急事態というものはあり得るということは一応考えなければならん。そのための処置を従つて考えておくということは私は必要だと思うのであります。
法令審議会につきまして公聴会を開かなかつた点は、私も実は遺憾に思つております。併しこれは先般も申しましたように、その予定でおりましたが、意外に法案が遅れまして、十日までに提案をしなければ、もう殆んど参議院の審議はむずかしいようなふうでございましたので、止むを得ず公聴会をぬきにして提案をいたしましたが、併しながらこの緊急調整にいたしましても、その他にいたしましても、速記録をお読み頂けばわかるように、昨年の秋以来とにかく百数十回に亘つて委員会で論議をされました。そのときの論議はただ個人の意見でなくて、相当労働組合は労働組合側の意見を代表されて意見を述べました。使用者側も使用者の個人の意見にあらずして、大体使用者側の意見を代表して述べられた、こういう状況でございまするから、公聴会を開きましても同じ議論が繰返されるのじやないかということは、先ず私は想像にかたくないのじやないかという感じがいたすのであります。先般衆議院で公聴会がございました際も、私は終始出て聞いてみましたが、やはり御議論は労働法令審議会で御議論になつたようなことが蒸し返されておつたように記憶するのであります。即ち労使間に政府が介入をするというつもりはございませんで、まあ最悪の場合には、ちよつと暫らくお待ち下さいと、そうして中労委にお願いしようじやないかといつて、挙げて中労委の解決を願うという態度でございまするから、この点は一つ堀木さんの御賢察をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/77
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078・堀木鎌三
○堀木鎌三君 大体御答弁にあるような言葉を予想しておつたのですが、率直に申上げまして、無論公聴会を開いていろいろな意見が出るということも、法令審議会の中で行われたあれだけの広汎な議事録がありますから、あれにまあ大同小異であろうということも十分考えられるのです。併し同時に広く聴く、一つの粋の中でものをやらないで、広く世間に訴えるということは、これはやはり別な形式がある。議会にしぼつて参りましてやることも一つでしようが、議会でやることだけではもうすでにしぼり上げられた上に立つている。そういうふうな点から見ますと、これは労働省が従来の長い慣行というものを、この労働関係法規についてなすつた慣行はやはり守るべきものであろう。今後の改正については十分御考慮願わなければなるまいというふうに考えます。
それから緊急調整の問題はあとから申上げますが、ところが何と申しますか、実際のところ今は法規的な関係だけで並べたのですが、これを実質的にいうと、さつき菊川君も言つたように、又あなた自身も理由を挙げられたように、日本の経済の復興というものは或る程度急速になつて来た。内閣の安本が最初計画したよりも実績はそれを上廻つて経済復興はできておる。これは確かなんです。併しあなたが挙げられたようにそれに即応して労働者の幸福が同じようなバランスを取つて行つておるか。これは私は数字を並べれば幾らでも並べますが、この点はやはり労働者を守るという実際の実質的な姿、それからこういう法規の改正に当つても、或いは法規の運用に当つてもなさる姿がそれに伴つておるということが、私はそれは根本的に一番必要なことであつて、それで以て労働者が反動的と言うことも、そういう事実が上つていれば相当の疑いというふうなものも、非常に実質的に疑いを持たなくなる基盤ができる。そういう基盤ができて行くことが労働大臣としては一番必要じやないか。ところが実積から見ても手続から見ても、やや私は現在の労働省のおやりになつておることが足りないのじやなかろうか。
もう一つ、どなたもお触れになりません点で、もう一つ触れておきたいと思うことは、労働関係の国際性という問題については、これはもう労働大臣としても十分お考えだと思いますが、独立した、今まで占領下の圧力があつた、これがなくなつたのだ、なくなると、あの権力が背後にないというとどういうことが起るのかという心配をされ過ぎる。今朝もマーフイーでしたか、まあともかく占領下ですから、占領下におけるところの或る程度の国民のレジスタンスは起るのだ、併し日本の国民を信頼しておるのだという、そういうふうなことを言つておりますが、どうもあなたがたの態度は権力がなくなつたら何やるか日本人はわからない。それは無論一部にメーデー事件のようなこともあるかも知れない。これはレジスタンスが一部出たのだ。併し全体としてはどうだというお考えもなさらなければ、余りにその一つ一つの目先のことにお考えが行き過ぎるのだ、かたがた国際性の問題から行きましても、平和條約の前文でも、又今度はILOに加盟する條約を結んだ場合にでも、これは日本政府としては約束しておるわけなのです。だからいやしくも労働者の権利を制限するということは、普通に考えるような考え方であつてはならない。常に労働大臣としては労働者の権利、福祉を増進する、こういう方向に私は向けて行かれるべきものだとこういうふうに考えるのですが、その点についての御意見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/78
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079・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 第一の公聴会を開くべきであるという御意見は私もそう思いまして、この間は時間がございませんでしたが、勿論今後にいたしましても考えるべきだと思つております。
それから最後の国際的な関係も勿論考えるべきでございまして、いろいろ国際的にも誤解の点があるようでございますが、私どもは今回のこの改正しようとしておる法律及び破防法にいたしましても、内容を仔細に御説明すれば、私は今日自由党をモツトーとする諸国におかれましては、私は御諒察ができるのじやないかと、かように存じておるわけであります。ただ労働組合に対する態度でございますが、それは堀木さんがおつしやる通り、私も日本の労働組合は信頼をしておるつもりでありまするし、又信頼しなくちやならんと思つておりますが、併しそれでは心配が全然ないかと言いますと、御承知のように今日の情勢はいろいろな方面からの動きかけがございまして、なかなかそう心配ないとも言い切れんところがございますから、やはりそれに対する処置というものは考えて行く必要があろうかと、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/79
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080・堀木鎌三
○堀木鎌三君 もう少し立入つたことを申上げると、こういう緊急調整なりゼネストを心配する、憂いなしとしないというふうなことを言われないでいいように労働政策が行われること自体が、これは労働大臣の御責任であつて、ほかのほうは労働問題じやありません。それ以外に起つて来ることは、それ以外のことは、別な方面で起つて来る。そういうふうに私は特にこの際にお願いしておきたいと思います。
第二段として、今日は時間もありませんから、ただ国際問題についてもう一つ、如何にも安心をしておられるようですから、一言だけ注意を喚起しておきますが、あなたのところに手本という次官がおります。寺本次官が前のILOに出て誓言したわけですね、いろいろ日本はこうするのだと……。ところがこういうふうなこと、これは特にあなたの注意を喚起しておかなければならんが、過般来たILOからの書面では、寺本次官が先の国際労働総会において、国際自由労連に属する世界の自由な労働組合の代表者が、政府の行われた誓言を信用して日本のILO加盟に満場一致で賛成投票したことを思い出せば、にもかかわらず、どうも最近の情勢はそうでなかろうかということを、これは私の言つていることが根拠のないことでもないし、誤解だけとは言い切れないものがある。私はその点についてはもう少し審議が進みますにつれて申上げたいと思いますが、決して私自身が勝手な考え方であなたに申上げておるのでないことだけを附言しておきます。
次の問題に移りますが、次の問題で考えられますのは、まあ労働法関係は全体として一つの一貫した思想体系が貫かれていなければならない。菊川委員がどうも労働大臣が三つ一本に出したのは議会作戦だろうというふうに、或いはそういうこともあるかも知れませんが、併し善意に解釈して、労働関係は一本の思想で似て貫かれていなければならんごとも事実であります。法案の取扱いはどういう取扱いをしようと、そういう関係は明らかでなくちやならん。今朝ほど早川委員から指摘せられましたように、国家公務員の身分を保有しつつ公共企業体労働関係法の適用を受けるところの特殊の人々、それから地方公営企業労働関係法ですか、この関係を受けるところの人々、そして地方公営企業法との関係、こういうように考えますと、ざつと考えましても、国家公務員で公共企業体の適用を受ける人には別個に、丁度地方公営企業のようなものでなければいけないのだ。それでなければ統一したものがないのだ、こういうように考えられますね。そこで身分関係についても、これらについては団体交渉の対象になり得るものは入れたのだとおつしやるが、団体交渉の対象になるものが制約されておるわけです。そういうふうな考え方に私は一つの貫いた思想がないような気がいたします。又ここまでお進めになれば、前々から問題になつていた単純労務者のごときは、端的に労働組合法の適用を受けるべきだというふうな思想に労働者としては貫かなければならない問題だ、こういうふうに私は考えますが、その間に束縛のあるのはどうも粗雑だ。有能な労働省の官僚のお作りになつた法案にしては、実に穴だらけで粗雑だ。そうして思想が統一していない。それはいずれも逐條審議に一々お目にかけるつもりでおりますが、そういう点についてどうお考えになりますか、その点をお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/80
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081・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 第一の点は御指摘のごとく手本君から曾つてILOにたしか御返事を申上げた事項についても、重ねての国際自由労連からの抗議であつたかと思いますが、それはたしか二月頃だと思います。実はその時には御承知のごとく破防法にいたしましても、労働法にしても、まだ内容が我々自身もきまつていない。労働法制審議会にかかつている途中であります。併し日本の労働組合のほうでは昨年の暮から労働法三法、それから公企法或いはゼネスト禁止法といつたものを国際的に働きかけて行つたのであります。従つて国際自由労連も抽象的なる題目を取上げて抗議をされているものだと私は思うのでありまして、内容を見てこれが我々の考えと違つているという意味の私は抗議ではなかつたと思う。その後労働法制審議会の答申も三月の終りになつて答申され、我々もそれを尊重して必要だと思つて提案して御審議願つておるのであります。私どもは実は先ほどからいろいろ御意見はありましようが、労働者の基本的な権利も勿論尊重しながら、一方今後の日本の自立経済をも考えながら公共の福祉との関係を調整するという点をも考えておるのでありまして、私は他の国の立法と比べまして決して日本が労働者の権利を抑圧しておるとは考えていないわけであります。その点が私は国際的にも説明すれば理解を受けるところではないだろうかと言つたわけでありまして、折角来月早々国際労働会議も開催されることでございまするから、私どもは目下政府の考えておりまする点は、正直に国際的にも御説明申上げて御批判を受けるつもりでございます。
それから第二の、この労働法については一貫した思想が必要だということは御尤もでございまして、できるだけ私どもはその点を一貫すべく努力をしつつございますが、一挙に全部が一まとめにはなりませんけれども、徐々に調整をして行こう、従つて国鉄、専売に大体似通つた現業はそれに歩調を合わして行こうという努力をいたしますのもその一端でございます。それから御指摘になりました単純労務についても、いろいろ御意見はございましようが、やはり公務員であるという性質は、これはまあ一つの大きなフアクターではないかと思うのでございます。又一方現業については、国鉄、専売等と似通つた点があるということも、これも又一つの大きなフアクターでございます。この二つの要素を噛み合わして、できるだけ一貫性を保つて行こうという努力を払つておるわけでございまして、今回単純労務は取上げておりませんが、午前中にも申上げましたごとく、これらにつきましても大体一貫した思想の下に調整をして行く必要があろうということで、単純労務につきましては追つかけて実は立案をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/81
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082・堀木鎌三
○堀木鎌三君 地方公営企業法の関係、それから公共企業体法の関係、単純労務との関係は細目に亘りますので、いずれ逐條審議に譲りたいのですが、最後にもう一点だけ、私としてもやつばりこのゼネスト禁止法の問題にも触れざるを得ないと思うのです。各委員が全部同じようにゼネスト禁止法について触れておる。そうするとあなたは、目下慎重に考慮中ということ一点張りで御答弁なすつておられる。だからあなたの御答弁を伺つておつても、緊急調整もめつたに発動しないんだが、発動するときもあるかも知れないと、そういう虞れなきにしもあらず、その上に又もう一つゼネスト禁止法も要る場合があるかも知れない、そういう心配なきにしもあらずと、こう言つておられるくらい関連性があるのです。事実、そして経過的に見ましても、政令諮問委員会で治安立法的なものが要るだろうと、それから法令審議会でもゼネストとの関連において緊急調整が論ぜられている。これはもう経過的な事実としてあるのである。そういたしますと私は実は考慮中は困るのです。考慮中だと、この法案の緊急調整に我々はどう対処していいかわからない。どうしてもこの法案審議に当つてはその点を明らかにして頂きたい。本日できませんならば、関係閣僚の会議でその点この法案審議に当つて絶対必要な要件ですから、内閣の方針を明らかにして頂きたいということをお願いいたします。若しも明らかにされないならば、今申上げたような過程を通つて来た緊急調整であるにかかわらず、ゼネストを別個に考えられるどういう理由があるのか。普通の頭脳じやちよつと私は考えられないと思う。私どもここにいる委員がすべてこの法案を審議して行く上においては、それが明らかになることによつて諸種の問題に対する、殊に緊急調整に対する考え方が変つて来る。だからその点は恐らく労働大臣としても私の考え方を御是認なさるだろうと思うのですが、この点について法案審議に当つてそれを明らかにされるおつもりか、しまいまで慎重考慮中と言つてお通しになるつもりか、れの点を明らかにして頂きたい、こう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/82
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083・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) この点は御尤もの点ではございますが、私しばしば申上げておりまするように労働問題として考える場合にやはり緊急調整という問題は必要でもあり、又これによつて解決をするものも相当あるだろうという感じを持つております。それからいわゆるゼネスト禁止というのは、労働問題以上の問題であり治安的な問題として、そういう事態が若し起るとすれば、それに対処する立法が必要ではないかどうかという点でございまして、私は必ずしも同じものではないとかように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/83
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084・堀木鎌三
○堀木鎌三君 そうおつしやると又重ねてお伺いしなくちやならないのですが、ゼネストなるものは政治問題だけで起るとは考えられないのです。私はそう思います。現に例えばインフレーシヨンが非常に起つた、そして労働者が非常に困つた立場に追込まれている、そして一つの所でその労働者の待遇改善が起つて来た、あちらでもこちらでも起つて来たということは、それは当然想像できることだと思うのです。そして労働組合として当然横の連繋も起つて来るでしよう。ですからゼネストは、もうそれが暴力的な行動が出て参るとかいろんな問題でしたらともかくとして、そういう問題についてあなたのほうとしてこれはお考えにならなくちやならないのじやないか。労働大臣としてゼネストの問題は切離して考えていいんだという、私はそうなつて来るとゼネストの定義から入らなくちやならないと思いますが、それらの点については、少くともここでもつて私はこれだけの関連性のあるものについての態度、政府の施策ということを発表されるだけの勇敢性をお持ちにならなければ政策に忠実だとも思われない。そういう点をうやむやにされては、私どもとしてどうしてもこの法案に対処することはできないというのが恐らく皆さんの同じお気持じやないか。それだから各委員とも重複を知りつつこの問題に触れざるを得ない。こういうふうに考えられるのですが、重ねてその問題についての御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/84
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085・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 従つてこのゼネストという言葉だけでは問題がいろいろ解釈される虞れがあるのでありまして、それで私はゼネストであるからこれを禁止しなければならないという考え方は、自分も必ずしも賛成していない。併しながら治安上緊急事態になつて、これは手が着かないんだということでは済まされませんから、そういう際の治安的な立法というものは必要ではなかろうかということを申上げているわけでありまして、ゼネストというのがいわゆる労働問題として起る場合におきましては、これは私はどこまでも労働問題として解決すべきものじやないだろうかと、かように存じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/85
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086・堀木鎌三
○堀木鎌三君 もう一点その点で…、そうするとお考えに入つて行かなければならんのは、ゼネストといえども禁止するつもりはないんだ、従つてそれについては慎重に考慮するというのだと……、つじつまが合わないのです。だから禁止するつもりがなければしなきやいいんで、しないつもりだとおつしやればいいです。殊にその行動が別個の治安に触れる場合には今度はすでに破防法というものを政府としては一つお出しになつておる。そうするとその破防法とすべての一貫性において考えられるのが大臣としての当然の御方針でなくちやならない、こう私は考える。そういう点から見まして私は労働大臣としてのお考えを抽出して言えば、ゼネスト禁止法は出さないんだということだと考えられますが、そう言つたら又、いや心配なきにしもあらずと、こうおつしやるのだから、それならば一遍閣議で決定されて臨んで頂きたいとこういうことを重ねて要望したいのです。その点について、まあ今日はどうもほかの委員にはつきりした答弁をしなかつたから、私にもはつきりした答弁をしにくいということもわかりますが、御遠慮は要らないと思います。(笑声)御遠慮は要らないと思いますから、もう一回重ねておつしやつて頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/86
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087・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 問題は、まあ言葉の意味からきめて行かないと誤解を生ずることでありますが、いわゆるゼネスト禁止法を出すか出さないかということは別問題といたしまして、治安上憂慮すべき事態の際に、ゼネストという恰好で出て来ないとも限らないわけであります。だからゼネスト禁止はやらないやるという問題を、ただ治安問題のときにそれだけで私は言い切れないんじやないかと、かように存ずるわけであります。でありますから、どこまでも治安上憂慮すべき事態が若し考えられるならば、それに対処する処置は必要だということであります。併しそういうことが現実に考えられるか、急いで立法しねばならんかどうかという点はこれは慎重に私は考えなきやなりませんが、ゼネストだつたら労働問題だからそういう必要がないんだとは言えない。併しゼネストが労働問題として発生する場合は、先ずここの今回提案いたしておりまする緊急調整で以て何とか解決が付くんじやないだろうかという感じを持つて出しておるわけでありまして、それでいわゆる治安上考えられるところの立法につきましては、これは先ほど来申上げまする仮に或いはゼネスト禁止という名前になるかどうか存じませんが、これは目下慎重に考慮しているところでありまして、今後のいわゆる動向等も考えませんと、ただ観念的に、こういうものが必要だということがあり得るから直ぐやるんだというふうなことも私はできないのじやないかということで、慎重に検討をしておる。かように申上げておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/87
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088・堀木鎌三
○堀木鎌三君 もう一点だけ……、大体わかるのですが、そこまでは事務的には非常にそつのない答弁なんです。だけれども、大臣としてはそれじや困るんじやないか。私は空に学問的な或いは事務的な準備でなしに、この国会が六日に済むのを幾日延ばすかというときなんですよ。破防法は出ておりますよ。破防法で労働組合の正常なる運動は禁止しないが、労働組合運動でなくなつた場合には別なんだと、こうまで言ておる。そういうものを背景にしてのものを言つておることは明らかなんです。そうすると労働大臣としては、率直に言えば私自身があなたと位置が変れば、もうこれは今国会に出ないことはきまつているはずだと思う。それを何か慎重に……、そういうことだから労使の関係なり、労働者と政府との関係が常に猜疑心を持つのです。だからはつきりと御答弁なすつたらどうなんですか。そんなものを右手にちらちらなさるのは、これは信頼性がないのです。少くとも我々に対して、ここで審議している以上は、私はその点を明らかにしなければこの問題に対する審議ができんと思うのですが、如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/88
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089・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) その点はたびたび申上げおるのでございまして、堀木さんには大体私は御諒察できると思うのでありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/89
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090・中村正雄
○委員長(中村正雄君) それは緊急調整の問題でありますので、その問題は逐條に入りました時に審議することといたしまして、続いて堀君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/90
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091・堀眞琴
○堀眞琴君 私は各委員が大体質問されたことでありますが、できるだけそれと重複しないように、極く二、三の点だけについて質問いたしたいと思います。先ず今堀木君から問題の出されたストライキの問題であります。午前中も重盛君から質問が出され労働大臣からの答弁があつたわけでありまするが、そのストライキの中でも私は先ず第一にお聞きしたいのは、政治的なストライキの問題であります。労働大臣の御説明によりまするというと、経済的な目的を持つたストライキは憲法上に保障してあるところのストライキであり、従つてこれは問題ではないが、併し政治的な目的を持つたものについてはこれを認めることができない、こういう御説明なんであります。ところが日本のような国は、御承知のように社会的な構造の面から申しましても、或いは又政治の現在の遅れている状態から見ましても、経済的な問題が同時に政治的な問題に発展する、乃至は経済的な問題の背後に政治的な問題が含まれている。例えば公共企業体の労働者の場合をとつてみましても、労働條件の改善の要求は同時に国家予算或いは資金上の問題に重大な影響を持つ問題なんであります。そればかりではない。例えば條約反対の政治的な目的を持つストライキは政治的なものであるからして、これはいかんと申しましても、労働者の側から申しますというと、條約によつて労働者の地位がますます低下しはしないだろうか、或いはこれによつて政府の低賃金政策が強行されるのではないだろうか、企業の合理化が進められはしないだろうかというような心配があるわけであります。従つて労働者としては労働條件の改善のためには同時に例えば両條約の反対とか、或いはその他の政治的な目的を掲げて闘争するということは、私は避けられないと思う。又その点ばかりじやなく、労働組合の果す民主政治制度の下におけるところの意義の上から言つても一種のプレツシヤー・グループとしての役割を持つておるわけであります。国民の意思を政治に反映するのが民主政治であると、こう申しましても個人々々の国民の意思は選挙によつて一応の表現ができるかも知れません。併し普段の国民の一人一人の意見がそのまま政治の上に反映するということはなかなか困難であります。だからアメリカでもイギリスでも、労働組合を一種のプレツシヤー・グループとして政治上その重大なる意義を認めておる。こういうような意味から申しましても私は政治的なストライキを認めないという労働大臣の理論的な根拠を私は先ず第一に承わりたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/91
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092・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 堀さんのお話のごとく労働者の経済的な問題は政治的な問題に繋がりがあるということは、これは私はお説の通りだと思う。併し憲法二十八條が労働者の基本的人権としてストライキ権を認めておるゆえんのものは、労働者と使用者との間における労働條件の維持改善のために労働者は団結権を持ち、そして対等な立場で交渉がうまく行かんときにおいてストライキも行えるということを保障しておるのであります。で、政治の問題は経済に関係はございますからと言つて、政治の目的を達成するために、即ち條約が同時に労働者の経済にも影響があるからと言つて、條約に反対するためにストライキをやつていいという権利までも憲法二十八條は保障していないことは、これはどこの国でも明瞭であります。又日本の憲法についての解釈と申しますか、最高裁判所の判例においてもその点は過去においても又しばしば判例の出ておるところであります。で、労働組合といえども国民の意思を組合を通じてこれを働きかけるということはこれはあるでありましよう。先ほどありましたように、労働組合というものは主として労働者の労働條件の維持改善ということを目的としますが、同時に政治的な見解を持ち、そうして政治的な活動をするということもこれは許されておるところであります。でありますから労働組合がそういう政治的な活動をする一切の行為を私は否定しておるわけではございません。これは労働組合が労働組合としての大衆活動をされる点はあるでありましよう。先ほど申しましたように組合が演説会を開催して、そして自己の所見を述べられる、或いは示威運動によつてこれを国民或いは議会に訴えるという行動は、これは当然あり得ていいと思う。ただそうだからと言つてストライキまでこれによつてやり得る権利があるということは、私はこれはいささか逸脱した御見解ではないか、それであれば我々はあの内閣はいやだ、ああいう物の考え方はおれらは反対だ、それだから鉄道もとめる、電気も消す、これは当然憲法に保障した権利であるということでは、これでは私は民主政治は行えない。その政治目的の達成は議会を通じ、言論を通じ、そして国民の代表が最高の機関であるところの国会で決定して行くということが、私はこれが民主政治の常道ではないか、かように存じまして、私はやはり政治ストは労働組合の正常な活動方式ではない、こう申上げておるので、政治活動一切をやつてはいけないと、こう申しておるのではないのでありますから、その点を一つ分析をしてお考えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/92
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093・堀眞琴
○堀眞琴君 私は労働組合が政治的なストライキをやれというような、或いはそれをやることが正しいんだという意味で申上げておるのではないのです。どこの国の労働組合のストライキにしましても、特に日本の場合はそうだと思うのですが、その経済的な要求の蔭には必ず政治的な要求が掲げられておるわけです。最近の外国の例に見ましても、まあアメリカはともかくとしまして、例えばフランスやイギリスの場合について見ますと、単に経済的な要求を掲げてだけのストライキではなくて、やはり例えば古くは普通選挙法を布けとか、或いは何々労働法を改正せよというような要求を掲げておるわけです。アメリカの場合でもタフト・ハートレー法に対する労働組合の反対というものは御承知だろうと思う。又日本の場合でもやはり同様であります。どの組合でもそういう形で政治的な要求を掲げておると思います。然らば政治的な要求だけで組合がストライキがやれるかということ、これは実際問題としては政治的な目的だけでは、日本でもそうですし外国でもなかなかストライキはやれんし、又実際にそういうことをやつた例は殆んどないと言つてもいいのです。ゼネストの場合、さつき重盛君はその政権奪取が目的なんだというようなお話がありましたが、政権奪取のためにストライキが行われたという例は殆んどない。あるとすれば革命の前夜、むしろ革命の手段としてストライキが行われるというようなことでありまして、これはストライキの部類に私は入るものじやないと思う。これは革命の段階に入つているんだと、こう解釈すべきではないかと思うのです。従つて只今憲法二十八條の労働者に保障している権利の中には経済的な要求を掲げてのストライキをあそこでは保障しているのであつて、政治的な要求を掲げたものは、これを保障しているのではないというようなお話は私は承服できない。その点について重ねて御見解をお聞かせ願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/93
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094・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 過去においてよその国にも政治的な目的のためにストライキをやつた例はございます。イギリス、だつたかと思いますが、併しそのあとではやつぱしそれはいけないということで、政治ストはいかんという立法をしておると思います。たしかフランスもそうだつたかと思います。でありまするから立法の有無にかかわらず、政治目的のためにストライキをやるということは、私はこれは基本権として認めている国はないし、又認むべきではないのではないか、かようにじます。それから労働組合が経済的目的と共に政治目的を掲げてやるということは、これはあり得るのでありますが、そのときの政治目的についての活動は私はストライキではない。先ほど来申しましたように、組合の名においていろいろな示威運動をやるということは、これはあり得るのであります。タフト・ハートレー法の際にもアメリカの労働組合がいろんなカードその他を出し或いはポスターなんかを出して、そしていろいろやられた例は私は知つております。だからそういう実際の活動を私はいかんと言つているんじやないのでありまして、ストライキというのは団体交渉の際に相手方と意見の不一致の際に、相手方にそれを呑ますためにやる手段としての行為であります。政治的なるために使用者側にそういう行為をしたつて何らの関係はないのであります。そういうものを憲法は保障するはずはないということを申上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/94
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095・堀眞琴
○堀眞琴君 それに関連して私は基本的人権と公共の福祉という問題についてお尋ね申上げたい。ゼネストは国民生活に重大な支障を来たすから、これを認めることはできない。つまり公共の福祉に反するから労働者の権利としてのストライキもそこで制限されると、こういうことを意味しておるんだろうと思うのです。ところで基本的な人権というのは御承知のように、まあ永久の権利であり、侵すことのできない不可侵の権利であるということが憲法に規定され、又国民の不断の努力によつてこれを守らなければならないものだということが掲げられてあるわけです。併し又地方では十二條、十三條ですか、公共の福祉に反してはならんという、こういう制約も憲法の上には規定されておるわけです。で、私はその公共の福祉と基本的人権の関係をどういうふうに解釈したらいいかということが非常に大きな問題だろうと思う。これは又あとで木村法務総裁なり、吉田さんにもお尋ねしようと思つておるのですが……。ところで公共の福祉に反し場合には基本的人権は基本的人権として認められないということも一応考えられるとしても、又他面から言うと基本的人権そのものが公共の福祉であるということも考えられる。従つて基本的人権と公共の福祉の関係という問題は言い換えれば公共の福祉とは何ぞやという問題に帰着すると思う。若しその公共の福祉ということをそのときの政治の権力者が自分の都合のいいように解釈すれば、どのようにもでも解釈できるんじやないか、だから私はストライキの問題にも関連し、その他の問題にも関連するものとして、この公共の福祉とは何ぞやということについて労働大臣のそれに関する所見を承わりたいと、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/95
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096・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) お話のごとく憲法二十八條は労働者の基本権を規定いたしております。憲法十二條及び十三條は公共の福祉について規定いたしましております。これは私は両方とも尊重しなければならん問題だと思います。それからお話のように基本的人権もそれは労働大衆の基本権であるから労働大衆も又公共の中に考えるべきものではないかという点もあるでありましよう。あるでありましようが、その場合における労働者というのはやはり公共全体から見れば一部で、数は多いかも知れませんが、その一部のために国民一般の福祉が犠牲になつていいというわけには行かないのであります。そうかといつて何でもかんでも公共の福祉だと言つて、この労働者の基本的な権利ろ制限されたんでは、憲法二十八條の規定というものを無視することになりますから、私はこれは両方とも尊重して行かなければならん、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/96
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097・堀眞琴
○堀眞琴君 そうすると労働大臣の見解では公共の福祉というのは国民一般の福祉である、こういう工合にとつてよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/97
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098・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/98
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099・堀眞琴
○堀眞琴君 国民一般の福祉ということになりまするというと、又そこに問題が私は起つて来ると思うのです。御承知のように国民とい一つ観念は歴史と共に変遷を遂げておるわけです。曾つては国民という言葉が使われた最初においては、それは市民という意味を持つておつたと思う。併し国民というのは今日では市民という意味からはもつと拡げられて解釈されて来ておるわけです。従つて国民一般の福祉という考え方もそれに伴つてその内容が拡大されて来ておるという場ことは、大体においてまあ一般公法学者ならば認めるんじやないかと思う。その点に関しまして労働大臣はどのようにお考えになりますか、お尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/99
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100・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 国民一般というものの内容につきましては、これはもう十分考えなきやならん点でありますが、堀さんのお考えになつているように、国民一般というものを階級的に分離して考えるということになりますると、これは私はいろいろな問題が出て来ると思う。併し国民一般というものは各階層の集りであります。ですからたとえば或る私鉄において争議が起る、そして電車がとまつた、それによつて今度は公共の関係から迷惑するものはどうかというと、それは数多くの中には労働者階級の者も沢山おられるでありましよう。併しそれは同じ階級の者の基本的権利のために争議が起ると、或る程度は辛抱しなければなりません。併しその電車を奪われたために、それによつて利用されるところの一般の労働者諸君も足を奪われたために仕事にも出られない。何日も休まなければならない。自動車を雇つて行くには相当な金がかかるということになれば、同じ労働者階級であるとは言いながら、やはり公共の福祉という点において迷惑する部分も沢山出るんじやないか。でありますから国民一般をただ観念的に階級に分けて、同じ階級のものであるからというふうにこの公共の福祉というものをお考えになるのは無理じやないかとおもう。やはり国民全体の立場から見て福祉に重大な影響があるかないかという点で、この基本的な権利というものも多少の制限を受けることは止むを得ないのじやないか、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/100
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101・堀木鎌三
○堀木鎌三君 私が何か階級的な観点から申上げているようにお取りになつているようでありますが、私は別にここで階級的な立場がどうのこうのというようなことは申上げておらんのであります。従つて国民一般の場合の内容についても、勿論私は階級的な分化が当然行われ、そしてそれが相互に対立するものだということは信じておりますが、併し必ずしもここではその問題を中心に公共の福祉の内容をお尋ねしておるわけではないのであります。私は一般的に申しまして、市民的なものから大衆的なものへ発展して来ているのが最近の権利概念の内容ではないかという工合に考えるわけなんです。あなたのお話のようですと、労働組合の組合員は国民の中から言えば一部である、こういうことであります。確かに一部であるかも知れない。併し又あなたのお考えをもう少し深めて行かれるならば、一体国民の社会的な構成というものはどうなつているかということをお考えになれば、この点は又違つて来るのではないかという工合に考えられるわけであります。従つて私はもう一度重ねてお尋ねしたいのですが、一体労働大臣は公共の福祉というものを、国民一般というような抽象的な考え方で考えておられるのかということ、国民一般という言葉ぐらい抽象的な言葉はないのです。あなたは階級的なということをお話になりましたから、それをそこに附加えてお話になつても結構だと思いますが、国民一般という言葉が非常に抽象的であり、従つてそれによつて規定されるところの公共の福祉ということも極めて抽象的なものになり、従つて又それを利用する政治権力者の考え方によつては如何ようにでもこれが解釈できるようになる。こういう結論になるのではないかと思いますが、これらの点について御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/101
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102・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 私は多少議論をはつきりさして申上げたほうがいいと思つて……、言い過ぎました点は取消してもよろしうございますが、恐らく堀木さんのお考えは国民一般というものが、今日では国民大衆というものを考えなければならんという点を御指摘になつたと思うのです。でありますから、それをもう一歩進めて行くと、国民一般という言葉は国民の一部のための利益であつてはならない、国民大衆のためのものでなければならないということだと思うのです。私はそれで結構だと思うのですが、その際の考え方としては、先ほど電車に例をとつて申上げましたように、同じ国民大衆であると言つても、これを言い換えて言うならば、或いは労働者大衆であると言つても、労働組合のいわゆる基本的権利として主張される場合の労働者諸君は、やはり一部であり、そうしてそれによつて影響を受けるところの公共の福祉の対象になる国民というのは、やはり一般国民になるわけでありまするから、その点の噛み合せと言いますか、睨合せというものは私はどうしても出て来る問題だ、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/102
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103・堀木鎌三
○堀木鎌三君 次にお尋ねしたいのは、昨日の委員長の質問に対しても答えられ、今日の村尾君の質問に対しても労働大臣は答えられているのですが、占領中制限を受けたところの労働者の権利というものを、今度の労働法規の改正によつて回復しているのだ、こういうお話であります。その例として挙げられたのが、公務員の現業職員についての団体交渉権であるとか、或いは地方公営企業の職員の団体交渉権であるとかいうようなものを挙げられておるわけであります。ところで日本の占領後の労働組合の今まで辿つて参りました道を振り返つて見ますというと、曾ては公務員も団交権は勿論のこと、或る意味においては罷業権をすら認められておつた時代があるわけであります。ましてや公営企業や公共企業の職員については言うまでもない。それから又一般労働組合については殆んどマッカーサーの指令以前においては、ゼネストを含めてのストライキというものが認められておつた。ところが今度の労働法規の改正によりまして、一方では団体交渉権を認めたのだから制限を受けておつた権利は回復された、こう申しますが、各委員によつて取上げられておるところの緊急調整の問題、或いは調停申請却下の問題、これらはいずれも労働組合或いは労働者の権利をより制限する方向に向つているのではないかという工合に考えられるのでありますが、占領中制限を受けておつた権利の回復とは、その現業職員の団体交渉権を認めたというところのものなのですか、そのほかにもあるのでしたら、どうぞお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/103
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104・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) お話のごとく、戦争中に制限を受けたものにつきましては、私どもできるだけ権利の回復を一方において図りたいと思つております。堀木さんはこれは十分でないという御見解だろうと思います。私どももこれが十分だけとは思いませんが、併し公務員につきましては、やはりそれがこの国家全体に対するところの奉仕者であるという建前から、ただ普通の労働者と同じような取扱いということは、私はこれはどうであろうかという感じを持つております。併し現業につきましては、先ほど来申しましたように、国鉄、専売でさえ団交権を持つておるのに、ただ公務員であるからというだけで以て一切の権利を制限されるということは、私は行き過ぎだと思つて回復を図つておるのでありまするが、私どもはでき得る限り回復すべき権利は回復するつもりでおります。不十分だという点でございますれば、私どもは今後もなお努力するつもりでございます。
それからなお緊急調整やその他の問題も、これは回復したものと、それからこういう制限のものと、何か目方を計つてつり合わしておるというようなことは全然ございませんので、これは別の観点から制限すべきものは制限しなければならんし、回復すべきのは回復するというだけでございまして、緊急調整といえども、先ほど申しました公共の福祉に重大な関係のある際に労働委員会で解決してもらうということでありまするので、私はそう基本権の制限とも考えていないわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/104
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105・堀木鎌三
○堀木鎌三君 私も公務員が一般労働組合員と同じように、ストライキもやれるのだ、何もやれるのだということを必ずしも私は認めようとは思わないのです。その職務の内容から申しまして公務員が或る種の制約を受けるのは当然だと思います。又公務員全体としては一種の中立性を保つべきだということも私は認める。併し公務員によりましては或る程度の労働上の権利をこの際回復することが必要ではないか、又特種の組合については、公務員については相当の制約は今後も続けられるかも知れない、その他のものについては労働上の権利を回復せしめることが必要ではないかという工合に考える。
それから公労法の適用を受ける組合につきまして団体交渉権を認める、併し団体交渉によつて双方の間に成立した仲裁裁定の問題、先ほど堀さんから出ましたが、それにしましても極めてその実行を期することができない、むしろそういうような労働組合には或る程度の制約を附しながらやはり争議権の行使を認めるというようなことが、私は労働者の保護という建前から当然考えられることではないかと思うのですが、その点について今後労働省としてどのような方針で行かれるか、それをお尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/105
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106・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 私は基本的な考えとしては堀木さんの今仰せにたりました点とそう変つていないと思います。従つてこの単純労務なんかは今度取上げておりませんが、こういう問題はやはり現業と同じように何らかの団交権の問題は考えて行かなければならんと思つて締りますが、ただ同じように取扱うことが多少無理な点もございまするので、今度はこの点に触れかかつたわけでありまするが、今後私戸もは努力するつもりでおります。
それから公労法につきましてはいろいろございます。堀木さんからもお話がありましたが、これも併し実際過去の二、三年間の運用によつて大体立法の趣旨は実現されつつあるのでございまするので、その点でこれについては触れなかつたわけであります。なおこれらにつきましても、逐次改むべきものは改めて行かなければならん、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/106
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107・堀木鎌三
○堀木鎌三君 最後に失業問題についてお尋ねしたい。これはどなたでしたか、菊川君が失業問題についてお尋ねになつたのですが、それに対しまして労働大臣としては、日本経済の規模を拡大して、特に貿易の振興を図ることによつて失業問題を救済する、そういうお話があり、而も日本の経済は漸次上昇の線を辿つておる、生産は一四〇いくつに回復した、実質賃金も八〇何%になつたのだというお話があつたのですが、非常に楽観的に失業問題の将来というものを考えておられると思のです。私はこの失業問題の中で今後一体失業者が殖えるという見通しを持つておるのか、それとも現在の状態を、大体においてじぐざぐの道は通りながらも、或る程度推移して行くのだという工合に考えるかという点を一点と、それからもう一点、日本産業規模の拡大、貿易の振展という問題でありますが、労働大臣が言われるようにそう簡単に、例えば産業規模の拡大や貿易の振興が図れるかという問題であります。特にあとの問題につきましては、先ほどもお話になつたように承わつているのですが、例えば東南アジア方面の貿易の問題ですが、これすらなかなか現在の状態において湯華国との関係もございましよう。併し又将来を相当長い目で眺めた中国との関係というものも、相当東南アジアの貿易には深い関係を持つて来ると思う。殊に東南アジアの商業面を担当しているのが華僑であるというような事実と関連して考えますると、その点は相当困難でないか、そうするというと産業規模の拡大、従つて生産の一四〇何%というようなお考えも極めて楽観に過ぎ、而も実際問題として生産の一四〇何%という増加というものが、例の特需なり新特需なりのおかげをこうむつている面が相当あると考えられるときに、どうして日本の産業規模の拡大を図り、どうして貿易の振興を図ることができるか、そして又それがどのようにして失業対策の上に具体化されるかということについて労働大臣の御所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/107
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108・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 失業問題につきましては、午前中もお話がございましたように、私どもも決してそう楽観はしておりませんが、一時即ち朝鮮動乱前に比べまするというと、漸次失業者は減つております。大体朝鮮動乱前の完全失業者が四十八万人くらいでございますが、昨年の夏頃にはずつと減つて参りまして、三十五万台くらいになりまして最近又若干殖えております。三月頃のあのいろいろな繊維その他の関係もございまして殖えておりますが、併し一時に比べますれば減つておる状態であります。それから片一方の失業保険の関係を見ましても、朝鮮動乱の当時の失業保険の受給者に比べますると、昨年の夏頃からずつと減つておりまして、今年の三月頃になつて若干増しては来ましたけれども、一時に比べますれば、まだずつと減つております。それから失業対策で失業者を対策事業に使つておりますが、稼動日数大体二十一、二日くらいになつておりまするので、そういう一時のような心配はいたしておりません。ただこれからどうなるかという問題は、一にまあ経済の関係になつて来て、私どもも決して楽観はしておりませんが、何と申しましても日本人、日本の労働者のこの勤勉力というものと生産力という一ものは、私は決して国際的に劣らない、勿論アメリカその他は非常な優秀な機械を持つておりまするから簡単に言えませんが、私は国際市場においてそうひけをとらないのじやないかと、こう思つておるわけであります。それには従来のように、今朝ほども申しましたが、ただ労働者の賃金を切下げるということが、国際市場に優位を占めるということは、これは言い得るのではございませんで、産業設備機械の合理化等をできるだけ急速にいたしまして、生産の能率を上げて行くという点を君えますれば、私はまだ発展の余地は十分あるのではないかと、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/108
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109・堀木鎌三
○堀木鎌三君 今の点に関連して…、やはり労働大臣は非常に楽観しておいでになるのです。今産業設備の改善その他によつて産業を合理化する、労働者を犠牲にはしないのだというお話でありますが、産業合理化が過去において辿つた途というものは、私がくどくどしく申すまでもなく御承知だろうと思うのです。一九二四年の暮ですか二十五年の初めですか、ドイツにおいて産業合理化が決定され、労働者の犠牲においてではないのだということが声明されたにもかかわらず、二十七、八年度になりまして御承知のような状態になり、三十年に或いは五百万なり六百万という失業者をドイツにおいては出しておるわけであります。今回はそういう経験もありますから、それらを或る程度是正しながら産業合理化が行われるのじやないかと予想されるのでありますが、それにしても資本家たちもやはり産業合理化と言えば結局は労働者のほうにその犠牲が強制されるということは、これはもうどうしても避けられないのじやないかと思います。あなたのおつしやるように、機械を改善するとか、設備をよくするとかいうようなことだけでもつて企業の合理化とか、産業の合理化が行われるならば、それは結構だと思いますけれども、併しその前提には蓄積された資本というようなことも問題になりましようし、そう簡単にはおつしやるように楽観できないのじやないか、そうしますると失業者も当然増加することが予想されますし、殊に海外に進出されることについての楽観論もともかくとしまして、海外に進出するというためにはどうしてもやはりそこにしわ寄せが行われるということは避けられないと思います。そういう点に関連しまして、もう少し具体的にお話を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/109
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110・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 勿論労働者にも或る程度の関係を持つておると思います。思いますが戦前の時と違いまして、戦後には労働者のほうにも労働組合というものががつちりできておりまして、そう簡単に労働者だけに犠牲を強いるということは私はそう起らないのじやないかと、こう思います。まあこの点は全然関係があるかないかはいろいろな経済の状況によつて変つて参りまするから、冒には言えんでありましようが、戦前のような状態は私は起らないのじやないかと、こう感じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/110
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111・重盛壽治
○重盛壽治君 それじや続いて……私は昨日来よりお願しておきましたように、総理大臣に出てもらつて、そうして最近における労働行政をどのように扱つて行く考えか、日本の将来が産業と労働問題とどのように処理するかということの基本をお聞きして、それらと関連いたしまして労働大臣に御質問したいという考えを持つていたのでありますが、ところがまだ大臣がお出でになりませんので、その他の問題に関しては大体諸君から言い尽されておるのではないかと考えますから、できるだけ簡単に一つ二つだけをお聞きしてみたいと思います。あとは逐條審議のほうに……。
結論から言いますれば、私は講和が発効した今日のような段階に直ちに労働組合法を改悪して、私は敢えて改悪と言います。そして労働者全体に不安を與えるというようなことは避けるべきである。こういうことは私は申上げるまでもなく、日本の将来は何と言つても本当にただ今独立したという形だけの独立であつて、真の独立ができたということは、いわゆる経済の自立ができるときでなければならんし、経済の自立をさすということは、これはあらゆる産業の振興を図る、あらゆる産業の振興を図るということのその根幹となるものは、労働行政を如何に扱つて行くかということに掛つて来るのではないか、そのときに今の政府の労働行政を見ておりますると、労働組合に対しては労働組合の運動と政治運動とが、これはあとで御説明申上げたいと思いますが、離すことのできない運動になつて一つの運動をしておるが、政府のほうは逆に、労働省は労働省だけ、大蔵省は大蔵省だけ、地方自治は地方自治存という考なばらくの形で、いわゆる総合政策が打立てられておらんことのために、確固たる労働政策が打立てられずに機械的な圧迫を加えられておるような感じが持たれておるのであります。今の政府のやり方を労働省はどういうふうに考えておるか知りませんけれども、これをやはり相当強く労働省設置当時の、労働省は単なる法律を作り、そして、労働者を今抑えて行くというような形でなくて、あの作つた当時の労働省の仕事自体がサービス省である。この感覚が今でもおありになるかどうか、これを一つ。そうして私どもは、労働者があれだけ反対をし、あらゆる組合が、先ほど来ゼネストゼネストと言つておりますが、ゼネストを以て闘うというようなときに、主たる労働法を変えないで、勿論講和になつたのだからいろいろの勅令等が廃止されて運営ができないというような御議論があると思うが、それこそ臨時措置を取つて、そうして当分の間従来の方法を以て講和後の労働運動を十分把握して、どういう動き方をするかという上に立つて労働組合法を改正するなら改正する、而もそれには国民が納得が行くように、労働組合の諸君の納得の行くような形に立つて改正しても遅くないではないか、こういうふうに考えておりますが、その点労働大臣どのように考えておりますか。
更にこれは私が言わんでもおわかりになつていることだと思いますけれども、労働大臣が本当に日本の労働者の気持を掴んで頂けたならば、私は今度のような問題は起きて来ない。そうしてこういう大きな反対も起きて来ない、ということは、これは私が説明しなくても日本の労働者、日本の国民全般に当て嵌まる言葉でありましようが、法律でぐつと縛り、たたけばぐんぐん反撥して行く性格を持つておる。併しそれを逆にあの悲惨な戦争で日本が負けて漸く講和ができて立直つたのだから、協力して一つ日本の再建をしようじやないかと、こういう大義名分を明らかにして協力を要請するという態度に変つて来たとするならば、このことによつて逆に命を投げ出しても日本の再建のために行こうじやないかという民族性の現われによつてこれはきまりが付いて来る、もつと労働省としても政府としても、国民を、特に勤労階級を、労働者を信用して、信頼してものをやつて行くという態度を取れなかつたか、その点どうですか、お聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/111
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112・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) この今回の改正でございますが、重盛さんは改悪だと言われますけれども、私どもは、先ほど来しばしば申上げましたように、労務法制審議会の意見を尊重しておるごとく私は必要であると思つております。併しながら御指摘のように法律で以て労働問題を解決しよう、法律に頼つてだけ事を処置するというつもりはございません。御指摘のごとくそれはどうしても組合の実態というものを掴み、実態が立直るということが一番大事であることは、これはもう私が申上げるまでもないところでありますが、併し占領下は御承知のように大体この基本的な労働法につきましては整備をいたしております。私どももそれは尊重して行きたいと思つておりますが、併しその中にはやはり或る程度回復しなければならん点もあるわけでありまして、これはまあゆつくりでいいというわけには行かん、独立すればやはり回復するものは回復する、それから調整すべきものについても、占領下は御承知のようにとかくGHQの権威によつて物が処理されて来たということも、これももう一つの事実であるのであります。それが独立後においてはやはり解消いたしますれば、それらに対する若干の処置というものを考えておくということは、これは私そう独立したからと言つて急に変るとも考えられない、その点からまあ緊急調整の制度を少くとも必要とするのじやないかと私どもは考えておるわけであります。で労働省は決して労働組合を向うに廻して闘うのだというような考えは毛頭ございません。私どもも労働組合のかたとはどうしても手を握つて行つて御協力願わなければならんと思つておるわけでありまして、この点は今後も十分私は気を付けて行くつもりでおりますが、併し今日の労働組合でも重盛さんも御承知のように、あなたがたは非常に健全化のために御奔走願つておりますが、一部には外からいろいろな働きかけもあるわけでありますから、その点あたりもやはり皆様がたと共にこれは十分健全化に御協力願わなければならんかと、かように思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/112
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113・重盛壽治
○重盛壽治君 法務審議会にお願いしたということを最初から何度も言われておるが、これは一番先にどなたか御質疑があつて、又そのあとで早川さんの御質疑の中であつたかと存じますけれども、これはまあはつきり言うと少し労働省のずるさであつて、自分で作つてそうしていろいろ因縁つけられるよりは三者構成の中で作つたのだからこれが公正だと言い、それから双方が意見が調整付かないところは公益委員の意見を主として入れたというようなことを言われておりますけれども、これは私はあの御苦労なさつた人たちのことをとかく批判はいたしたくありませんけれども、早川さんから一番最初大変いいところをおつしやつて、長い間掛つてもいろいろな機構を作り、いろいろな制度を立ててあの雲議したけれども結論は期待するようなものは出なかつた、そのときに労働省はきまつたものはいいと、こういたしましてもきまらない部分は公益委員で作る、公益委員の意見を取るということはむしろ私は逆じやないか、が本当に突込んで言うならばあの法律を私は全部是認しての立場に立ちませんけれども、あれだけを扱うにいたしましても公益委員の意見を一つ取つたならば、労働者委員の意見も一つ取つて行く、資本家側の意見も一つ取つて行くというような、やはり調整したものを出して来るという考え方がなければうまくあの審議会を労働省が利用した、こういうふうに考えられる向きがあるのですが、その点もう一遍はつきり聞かして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/113
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114・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) これは今朝ほども申しましたように、本当にこの労務法制審議会には私ども案を示さなかつたのであります。いろいろ考えようかという意見もあつたけれども、私はこれを止めて、それはいかん、若しそういうことをすれば却つて先入感を與えたり誤解を受けるから、とにかく白紙で委員会にぶつけて先ず意見を聞いて見ろ、きつとそれが公正な意見が出るだろうからということで、本当に働きかけをいたしておりません。それで出ました結論というものは、これはいろいろな見方があるでありましよう。又この間に誰だつたか重盛さんあたりから御覧になると御不満のこともあるかも知れませんが、又使用者側の立場にあるかたがたから言えば、又そのほうについての言い分もあるわけでありまして、私は公正に見まして、全然案を示さなかつたけれども、あれが現在の段階においては先ず公正な意見じやないだろうかと私は信じております。これは皆様が御自由に御審議になつて御批判を願いたいと思いますけれども、従つて相当考慮を払つておるので、権利を認むべきは認め、又調整すべきものは調整しておるつもりでありまして、利用したいという点は全然ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/114
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115・重盛壽治
○重盛壽治君 その点は又別に逐條審議のときに議論したいと思います。今労働大臣は占領下に置かれておつたが独立国になつたのだから労働関係法を改めなければならない。それならば労働組合は喜んで……占領下は御承知のように一番最初は先ほど堀さんが言われたように、労働三法全部をあらゆる労働者に與えて、そうしてマ書簡が出、マ書簡の出た後は司令部の労働政策というものはいわゆるフーバー政策というやつになつて、フーバーが実権を握つて一切を処理し、それには私は必ずしも今労働大臣のお話を聞いておつても、労働大臣自身としても日本政府としても、全部満足だつたとは考えておらない。これは何もフーバー政策に反対するとかなんとかいう意味ではなくて、十分に日本の労働事情を把握してもらえていなかつたということが第一点、それから米国の労働政策という一貫した方針がその中に含まれている。こういう点から言つて最近までにおけるところの司令部の取つて来た労働政策に日本の労働者も満足しておらんし、政策の一部もはつきり認識してもらえないという点で満足しておらなかつた。それだから今度変えるのだ、それならば労働組合は喜んで全部双手を挙げて賛成しなければならんのになぜ反対しておるか。そこには本当に独立国になつたのだから、独立国としての憲法二十八條によるところの労働者の団結権、交渉権、こういうものを一切認めて行くという政府の考え方が実際に織込まれておらない。それだからこそ労働者はこの労働三法を通すことが労働運動の将来に大きな影響をもたらすのだと言つて、あなたの考えておることとはおよそ違つた方向に行つておるのじやないか、こういうことについて労働大臣はどういうふうに考えておるか、今からでも私は遅くないと思うので、総評ストの第三波というようなもをのを、何も破防法だけで何とかするというのでなしに、むしろ破防法よりは労働組合法の改正が不満足である、私はここにかかつておると思うので、こういうものをはつきりあなたがつかんで、言い換えればそれは政府部内においても、これもあとで申上げたいと存じまするが、労働省がまあ吉武さんにしては私は相当に発言権も強いし、副総理ぐらいに考えておるけれども、(笑声)従来の労働大臣はややもすれば伴食大臣だというようなことで、みんな首相の言うことやら法務総裁の言うこと、いわんや大蔵大臣の言うことには全然頭が上らんという状態だつたけれども、ここで吉武さんとしては幸い自由党においても相当経験もあり、我々も古くから知つており、信頼もしておる労働大臣ができたのだから、そのお考えが今あなたが言われたような、折角独立したんだから、従来のマ書簡で拘束せられた線から、フーバー政策の線から少し飛躍したいという考えがあるならば、これは身を張つて一つ本当に内容のあるものにして頂かなければならないと私は思う。今出ておる将内ならば、私は先ほど言うようにまあ当分このままにしておいて便宜的な措置をとつてやつてみて、その中から実際に生まれて来る労働組合の声、一般大衆の声、国民の声、こういうものと睨み合せてやつても遅くはないんじやないかと思いますが、私は重ねて申上げますが、その点どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/115
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116・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 重盛さんが、まあ労働組合的な角度から御発言になる点は、私は御尤もな点だと思うのでありますけれども、一方やはり労使関係の問題は公共の福祉の面もございまするから、その点の考慮も要るわけでありまして、組合側からはお喜びになりませんけれども、やはり大きい眼で見れば、それがやはり労働組合というものも健全に育つゆえんであり、又労働條件も改善されて行くことになると思うのであります。この点は私は過去の経験に徴しまして、そういうふうに私は信じております。
それから権利の回復の点でございますが、先ほど堀さんにも申上げましたように、恐らく重盛さんあたりから御覧になると御不満の点がたくさん目にお付きになると思いますが、これはなかなか一挙にというわけには参りません。このことは同時に私は重盛さんあたりにも、労働組合のあり方という点についても又一つお考えになつて頂き、相共に労働者の権利の確保ということに向つて行きたいと思うのでありまして、今後とも努力はするつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/116
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117・重盛壽治
○重盛壽治君 どうも私がしやべると労働組合側、労働組合側、だとおつしやいますけれども、私も労働組合から出て来たことは出て来たようですが、(笑声)労働組合側という側に立つて議論しておるものじやなくして、参議院の労働委員会として日本の将来の労働問題をどう処理して行くことがいいかという角度に立つて申上げておるのであつて、私が労働組合側だという解釈を持つならば、労働大臣の答弁はすべて資本家側の答弁になつてしまうのでありまして、(笑声)そういうことは抜きにして話をしてもらいたい。
そこで昨日から何度も問題になつておるし、今度の議案の審議に非常に重要なポイントをなすものであろうと思いますが、いわゆるゼネスト禁止法、これは内容は申上げませんけれども、何度聞いてもあなたの態度が明瞭に打ち出されておらん。これは簡潔に、ゼネストの定義についても菊川さんとあなたとの一問一答、それから早川さんとのお話も承わつた、そういうことは措いて、労働大臣としてこの際、私どもの考え、あなたが言われたような、国家が平和に回復して、そうして労働行政をより向上せしめなければならないという角度に立つ場合に、果してそういうものが必要であるかないか、こういうことになると、あなたは将来の労働組合の推移と睨み合せて考えなければならない、将来のことはようございますけれども、ここで労働大臣としてはこれをどうすべきか。もつと率直に申上げれば、法務府にやらしたというなら法務府、或いは木村法務総裁はこれはやらなければならんと言つて出して来たときに、労働大臣としてはどういうように処理なさるのか。これを必要なしとするのか、法務府のほうで作る法律だから、おれのほうでは知らない、止むを得んということでお呑になるのか、もう少し明確に態度を表わして頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/117
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118・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) この点は午前中も、又午後堀木さんに対しましても申上げたところでありますが、私は労働問題としてはゼネストを禁止するということは考えておりません。これはゼネスト禁止とゼネストという言葉にいろいろな、これを内容を分けて考えんというと誤解を生ずるわけでありますが、即ちゼネストの形をとつて治安上憂慮すべき事態が起つたとしたときに、それに対する措置としての治安立法が必要であるか必要でないかということになりますると、私はそういう治安立法は必要であろうかと思います。併しそれを出しまするにつしましては、今日の事態でそういう治安立法をすぐ出す必要があるかないか、又その内容はどんなものであるかという点につきましては、これは慎重に私は検討を要すべきものじやないか、かように存じましているわけであります。従いまして法務府でいろいろな御意見ありましても、私としてはこれに対しては慎重な態度を以て臨むつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/118
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119・重盛壽治
○重盛壽治君 そうすると、あなたの場合慎重な態度をとつて労働運動の埒内でのゼネストであるという考え方である場合には、ゼネスト禁止法というものは出す必要がないのだ、こういうふうに解釈してよろしゆうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/119
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120・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 先ほども申上げましたこのゼネストというものがいろいろな意味に解釈されますので、誤解を生ずると悪うございますが、労働問題として考えられるものにつきましては、この労働法で以て何とかして処理して行きたいと思つております。併しゼネストの形をとつて治安上憂慮すべき事態というものを考えるならば、その際の治安立法が必要であるかないかという点になると、私は治安立法というものは必要であろうかとも思うのであります。ただ今日そういう治安立法をすぐ出す必要があるかないかという点につきましては、慎重に考慮しなければならんということを申上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/120
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121・重盛壽治
○重盛壽治君 それからゼネストを通じてばかりでなくて、一般に政治運動と労働運動との問題が論議されて、労働運動として正しい労働運動をする分には抑えないとか抑えるとか、或いは政治運動と見られた場合にはどう処置するのかということを常に言われておりますけれども、今日労働運動と政治運動と、はつきり切離しての運動はでき得ないのじやないか、紙一重のようなものなものじやないか。例えば一つの例を国鉄労組において見ても、国鉄労組が人事院で賃金の裁定を出してもらつた、ところが政府のほうは予算上、資金上そういう賃金は出すことはできないということになつた、これに対して、政府に対してそういうことでは困るじやないかという運動を起すことは、これは労働組合側から見れげ飽くまで労働運動の範囲内でやつている。そういう場合に政府はやはり政治運動であるという解釈をどうもやつているように見られる、或いは労働省希考えておる政治運動だとする。ところがそういうことは当然政治運動じやなくて、当然なる労働運動であつて、そういう限界が非常にむずかしくなつておるので、労働省において政治運動と労働運動との限界というものをどこに線を引いて、どういう場合は政治運動である、どういう場合は労働運動である、こういうふうに、その定義を下しておるかどうか、その点を一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/121
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122・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) これは先ほども議論になつたところでありますが、労働組合の運動は主として経済的な問題でなければならんということは申上げるまでもないことでありますが、同時に経済は政治に関連の多い問題でありまするから、政治活動をされる場合もあろうかと思います。こう私は決して否定しているわけではございません。それで問題は経済問題と政治問題が常に問題になりまするのは、只今御指摘になりました国鉄が仲裁裁定について、これをどうするかという問題は、これは明らかに私は経済問題であり、労働者の労働條件に関するものでありますから、これを政治問題とは申上げませんが、常に問題になりまするのは、例えば破防法なら破防法といつた法律の問題が出て来る、これは労働者には関係はあるのでありましよう、あるでありましようが、そのためにいわゆるストライキをやるということになりまするのは、これは政治目的達成のためのストライキであるから、これはよくないということを申上げておるのであります。それじやそういう法律に対しては労働組合は一切の政治活動をしてはいかん、ただじつと国会の審議を黙つて見ているということを言つておるのじやございまんで、それは組合としてはいろいろな意思表示をされることは、これはあり得ると私は思います。そのために憲法の二十八條に保障したところのストライキをなさるということは、これは憲法も認めていないし、法律も認めていないのだという点を申上げておるわけであります。常に経済問題は政治問題が絡んでおることはあり得ることと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/122
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123・重盛壽治
○重盛壽治君 それからもう一つお聞きしておきたいことは、労働省の使命といいますか、労働省が今まで取つて来た態度は、私は実を言うと不満です。ということは例えば定員法なら定員法がきまる場合に、各省同じようにお附合だというので首切りをやるですね、その場合に労働省の現実などを現地に行つて見まするならば、現地の労働省の出先機関の官吏諸君は転手古舞をして、特に基準局の出張所だとか或いは労働事務所の出張所だとか、すべてが非常な人手不足の中で努力をしているときに、中央ではやはり定員法がきまればお附合で労働省も五%引かねばならんとか、解雇しなければならんとかということを平然とやつておるようでございますけれども、今もうすでに労働省の出先機関は非常に危機に瀕しているのであります。若の今後極めて近いうちにそういうことが行われて、それを今までのような形でやつて行くといたしますならば、労働省の出先機関は殆んど萎縮してしまつて、もう機能も発揮できなくなるんじやないか、これらに対して労働大臣としては逆に、私どもは悪い法律というか、締付け法律をいろいろ作るよりは、労働省ぐらいは特に資本家に対しても労働者に対しても、もつと労働組合法、特に基準法などを実行してもらうようにまだまだ日本の現実では指導して行かなければならんというところにあるので、これは特に殖やして行くような考え方を持つて頂かなければ、労働省は労働省としての使命は全うできないんじやないかと考えておりますが、この点労働大臣としてはどのようにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/123
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124・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 労働省は戦後にできた行政官庁でございまするし、又今後伸びて行くべき官庁でありまするから、お説の点は御尤もだと思います。併しながら国、政府といたしましては全体的にこの行政機構が非常に膨脹いたしまして、戦争に負けた国として戦前より役人の数も約三倍ぐらいになつているという状態でございまするから、これがすべて国民の負担において行われるということを考えますときに、私はやはり政府としては全体的に或る程度思い切つた縮小をすべきではないかと思うのであります。従つて労働省の面につきましてもその点は同様に或る程度は考えて行きたいと思います。併しながらそれには限度のあることでありまするから、特に新らしい省のことでもございまするので十分気を付けて参ります。併し私はこの労働行政の面につきましてもただ頭数というよりも、内容の充実ということが私は一番大事だと思います。質の向上という点が……、ただ末端の機関におきましても数が多いというだげではいかん、本当に労働者の相談役になり、又基準法の監督にいたしましても、実質が上るという行き方が必要じやないかと、私はまあ個人的には考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/124
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125・重盛壽治
○重盛壽治君 これは吉武さん、私は悪口を申上げるわけではないですが、戦前の役人の数よりも戦後の役人の数が殖えたということは、戦前の国内態勢と戦後の国内態勢とは変つているんですね。これは私が説明せんでもそのことだけでわかると思います。その場合戦前を引例することすらおかしいし、内容の充実、これは結構ですよ、結構でありますけれども、もう出先では二人なら二人、小さな、例えば南九州などへ行つて基準局長の下に出先の財務会計をやる人が何をやつているかというと、一人で一切をやつている、それを内容を充実して一人を滅せばゼロになります。できないことを言われておるんだが、まあこれは決して文句を言うわけではありませんけれども、労働大臣自体が出先の実情をもつとお掴みになつて頂く必要がありはしないかと思います。これは枝葉末節になつ「て来ますから、この点はこの程度にとどめておきます。
独立になつて、それで更に連合軍司令部に日本の労働者が相当使われておるんだが、これは当然日本の労働三法を適用しなければならんと思いますし、労働大臣もししば言明しておつたんですが、この人たちを将来労働大臣はどういうふうにしようと考えておるか、今度の労働法改正の中には見受けられないように考えますが、その辺の措置をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/125
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126・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) これはしばしば申上げましごたことく、駐留軍に雇用されまする労働者につきましては間接雇用の形式を取つておりまするが、労働三法につきましては完全に適用するつもりでございます。別に特別の取扱いをいたすつもりはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/126
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127・重盛壽治
○重盛壽治君 これは逐條審議の中に入ると思いますが、まだそのお言葉だけでは進駐軍の労務者諸君は安心しておられないと思います。ので、外務省を通じてもう少しはつきりした態度をこれに対して表わして頂きたい。それから今度の地方公企労法の点ですが、場公企労法から来たようにも考えられるし、労働三法に基いて、まあ両方から来たと言えばこれは済むんだが、いずれを主体にしたのか、ちよつと聞かして頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/127
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128・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 地方公労法につきましては大体専売或いは国鉄の例に倣つておるのでありまして、その内容は団体交渉権を認めるということ、それから労働組合は勿論のことで、それから労働基準法を適用するということ、これらが内容になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/128
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129・重盛壽治
○重盛壽治君 もう一つ、これは労働基準法改正のところで論議すべきだと思いますが、今までいろいろ問題になつております炭鉱労務者のいわゆる珪肺病というもの、これの処置をどうしようというのか、できれば特別立法でも作つて行こうというのか、処置するについての考え方を持たなければならん重要な問題と思いますが、これをどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/129
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130・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 珪肺病の問題は実際お気の毒であります。この点につきましては、政府といたしましてもなお十分の努力をしなければならんと思つております。それで今現在鬼慈川に一つ病院を作りまして、そこに収容して治療なり何かいたしておりますると同時に、最近又秋田にもこの珪肺を主としての労災病院を作るつもりでございまして、漸次拡張して参ります、それからこの予防の処置も講じなければならんと思い、それで予防の処置につきましても、経営者側に私は十分の注意を促したいと思つております。現在衆議院でも問題になりました点はの珪肺に罹つた人々の療養打切期間を三年間の打切りを五年にしたらどうかという意見があるわけであります。併しこれは御承知のように珪肺だけが職業病でございませんで、ほかに鉛の中毒だとか或いは身体障害につきましても脊髄障害は一生寝ておらなければならんという問題もございまして、気の毒なかたはほかにも又あるわけでありまして、珪肺だけを取出して行くということはちよつとむずかしくなるかと、こう思つております。併し何も一緒にやる必要はないから、一つずつやつて行けという点もありますけれども、これらの点につきましてはやはり労災につきましては、労、使、中立の三者構成の委員会がありまして、常にそこに諮問してやつて行く手筈になつておりまするので、私ども早速この委員会に意見を聞きまして、できる限り改善の途を講じたい、かように存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/130
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131・重盛壽治
○重盛壽治君 最後に、今度政令二十一号でしたか、地方の単純労務者をどうするかということと、それから縦割現業という問題が出ておるが、労働大臣としては実際の仕事の内容で労働者に労働法規を当て嵌めるのか、それとも予算を中心として当て嵌めて行くのか、極く簡単ですからこのことをお聞きしたい。
それから更に、これは労働大臣だけの問題でない政府の問題になると思いますが、これからも我々は公聴会を開く、或いは破防法でも公聴会を開きますけれども、公聴会を開いて公聴会の公述人の中で大多数が反対をしても、それは単なる聞き置く程度に過ぎなくてそして実際に修正の中に織込まれておるのは少いように考えられるんだが、この点特に労働関係などは労働大臣はよほど積極的に公聴会の公述人の意見を取上げて行くということでなければ、公聴会自体の権威を失する。いわゆる国会の権威も失して行くのではないか、そうして今度は公述人自身も真面目に公述する気魂に欠けて来るのではないか、正しい意見がもう聞かれなくなる、どうせ何を言つたつて聞き放しなんだと、形式に終るんだという声が強くなつておりますが、これらに対しては労働大臣としてはもう少し積極的に取上げてもらわなければならんと思いますが、どういうふうにお考えになつておるか、この三点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/131
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132・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 第一点の単純労務でございますが、これは地方公企法の附則二十一條にも掲げられておることで、これはこう私は考えて行かなければならんと思いますが、この単純労務につきましては内容的には御指摘になりましたように、純粋の、例えば小使さんとか何とかいうような単純の労務と、それから縦割現業と申しまするか、これを一緒にしたらいいか、別々な法の体系で考えるかという点につきましては、もつと私は研究して見なくちやならん。或いは別でなければならんのじやないだろうかという感じが今のところはいたしております。別にした場合に、今回取上げました地方公営企業と同じにするかどうかという点になりますと、あれは一つの企業体でございまするから、企業体と、ただ事業が現業であるというのとは必らずしも法の内容が全然一致では困る場合がありはしないかという点も考えておるわけであります。従いましてこの問題を二つとも至急検討いたしまして早い機会に実現を期したい、かように存じております。
それからもう一つの公聴会でございますが、私もこの間実は自分自身で公聴会を開きませんだつたもんですから、衆議院の公聴会二日間につきましては終始私は出席しまして意見を聞いて見ました。聞いて見まするというと、大体労働側から出られましたかたの公聴会の陳述は、一般に言われておるようなことでございます。それから使用者側から言われる点も大体同じ、それから中立と認められるかたの御意見は多少の差異はございますけれども、やはり緊急調整は必要だと言つておられまして、ただその運用なり字句等につきましては若干の意見がございましたけれども、大体この全体についてそう間違つていないように私は思つております。でありまするから十分公聴会の意見は私は尊重するつもりでおりますけれども、立場々々で相当の意見の違いがあるという点は一つ十分御了察を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/132
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133・重盛壽治
○重盛壽治君 どうも時間がないようですから、私は逐條審議の際にいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/133
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134・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 引続いて一松君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/134
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135・一松政二
○一松政二君 労働大臣は朝から大分お疲れのようですが、極く端折つて。
中小企業の従業員について労働省は一体どういうことを考えておるか、つまり日本の産業は、もう口を開けば殆んど中小企業が、もう人によると全部を占めておるようなことまで言う。で、通商産業省には特別に中小企業庁というものを設けて、これを中小企業局にするしないで今問題になつておりますが、アメリカにおいても特に中小企業という問題については特別な考慮を払うようになつておると思うのです。ところが労働立法になると、これは全部一本の法律で以て行政をやつて行く、産業の組織を見れば大企業から一人や二人の極くお粗末な企業もあるわけです。殊に不景気なときになると失業者になるよりは少々時間を延長しても、或いは我慢をしても仕事を続けてもらいたいという人は、私は今日相当の数に上つてやしないかと思うのです。で、これを一つの法律で縛るということは非常にむずかしい問題でもあるし、それかと嘗てどこかに線を引いて、これに特例を設けるということもなかなか実際面においてむずかしい問題もあろうかと私は考える。考えるけれども中小企業というものを大企業から離して、或る種の特別扱いなり保護なりを加えようという考え方があれば、労働行政においてもこれに呼応する何らかの取扱上の幅を持たせるなり何なり一応考慮せなければ、結局基準法の標準を実際においては守り得ないというものが沢山いるんじやないかと思う。で、こういう問題について今度の労働法規の改正についてはたしか触れていないのじやないかと私はまあ考えるわけですが、この中小企業、殊に医者などの話を聞いて見ると、一人の看護婦を使つておるような人も、もう看護婦は置けない、それから又それに対して基準局も非常に勧告があつたり、又やかましく言つたりするので、手をやいているというようなことも耳にしたことがあるのですが、この運用について何か労働省はお考えになつておりますか、その点ちよつと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/135
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136・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もな点でございますが、労働省の基本的な権利の面につきましては、これは中小でございましても大きい事業場でございましても、私はこれは同じに尊重して行かなければならんじやないか、これは一松さんも御異論のないところと思います。問題は例の労働基準法と申しますか、労働保護法の問題であろうと思います。これは確かに日本の現在の労働基準法の問題は、どんなに小さい二人か三人雇つておるところも何万も雇つておるものと一律な基準法で取扱つてありますので、そこに実情に副わぬ点は多分にございます。ございますが、この労働基準法は労働者保護の実は最低線をきめたものでございますから、従つて中小企業であるからその最低線が下廻つていいというわけにも参らない点があるし、むしろ大きいところは労働組合がございまして、団体協約で或る程度基準法に規定した以上のものを獲得してありますので、むしろその意味から言えば労働基準法というものは小さいと言えるんでございますが、現在の状況で一番不平があるのは基準が高いというのも一つでございますけれども、手続が煩項である。小さい、二、三人雇つておるところでも大きい企業がやらなければならないような、やれ賃金台帳だとか、名簿だとかいろんな煩頑な手続を要求しております。これが私は非常な不平の種になつておりまするので、この点は今度の労働基準法の改正と共に、そういう小さい中小企業については手続を私は簡素化して行つたらどうか、そういう点で今諮問委員会に諮問しているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/136
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137・一松政二
○一松政二君 そこで今朝も人口問題についてお話がありましたが、日本の今日の現状及び将来を考えて見ても、なかなか戦前の水準に生活がなつてくことが、まあ三十二年とかいう一応の基準に設けておつてもかなりむずかしい問題だろうと思うのです。そこで今度は労働立法のほうは、これは殆んど世界の一流の水準或いはそれ以上になつておる。そこで大きな産業なりそれから設備なり、金融上優位を占めておる産業に従事しておる者、或いは公共企業体におるような人は、これはかなり私は保障されていると思うのです。だけれども中小企業というものは、極端に言えば浮き沈みをしている階級の産業がいわゆる中小企業であると思うのです。非常にむずかしい問題ではありますが、やはりこれに対しては基本的な労働者の権利は勿論尊重せなけりやならんけれども、それに従事しておる人も私は相当の数に上るであろうと思うのです。多くの場合、この労働立法についても何を考え或いは議論をするときでも、大体まとまつた組織労働者の考え方なりそういう意見が多く労働省に反映して、労働省はそういうものを対象に物を考えやすくなりはしないかと、私はまあ一応自分自身で考えて見るわけです。そこでそれらに意見を具申し得ない、或いは請願書を出しおつてもなかなかその考にならん多くの、私は顧みみられざると言つては語弊がありますが、労働組合としてもなかなか手が届かないような、実際問題としてはなかなか厄介な手をやいている問題もあろうと思うのです。そういう点について私は今度立法ができなかつたら、近き将来においても通商産業省で中小企業問題を取上げれば、それに対応する労働行政においてもやはりこれらは何らかの考え方が必要であろうと思いますから、私はその点について重ねて質問はいたしません。何らかの考慮を払うべきであろうという私の意見を添えて今日の質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/137
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138・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 以上で本日の日程は全部終了いたしました。明日午前十時から第三号委員室におきまして、破壊活動防止法案に関し法務委員会と連合して審議をいたしますから御出席を願いたいと思います。
なお昨日から引続きまして会期末まで連日委員会を開く予定になつておりますので、開会時刻の厳守並びに出席方につきましては、各委員の御協力を要望いたしまして、本日は散会いたします。
午後四時四十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X01419520529/138
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