1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年六月二十日(金曜日)
午前十一時三十五分開会
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委員の異動
本日委員木村守江君辞任につき、その
補欠として石川榮一君を議長において
指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 中村 正雄君
理事
安井 謙君
波多野林一君
村尾 重雄君
委員
石川 榮一君
上原 正吉君
九鬼紋十郎君
一松 政二君
小林 政夫君
早川 愼一君
菊川 孝夫君
重盛 壽治君
堀木 鎌三君
堀 眞琴君
国務大臣
労 働 大 臣
厚 生 大 臣 吉武 惠市君
政府委員
地方自治庁公務
員課長 佐久間 彊君
法務府法制意見
長官 佐藤 達夫君
法務府法制意見
第一局長 高辻 正己君
労働政務次官 溝口 三郎君
労働省労政局長 賀来才二郎君
事務局側
常任委員会専門
員 磯部 巖君
常任委員会専門
員 高戸義太郎君
説明員
労働省労政局労
働法規課長 大島 靖君
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本日の会議に付した事件
○労働関係調整法等の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
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001・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 只今より会議を開きます。
前の委員会で法務関係の御答弁を保留されておりました法制意見長官が本日出席いたしておりますので、発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/1
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002・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 前回政治資金規正法と、先般の選挙管理委員会から出されました通牒でございますが、それとの関係についてお尋ねがありまして、一応他の政府委員からお答えはしたのでありますが、なお私から重ねてお答えを申上げます。
当該問題は政治資金規正法の三条の第二項の関係になるわけでございます。で、この第二項はすでに申上げたと存じますけれども、本来他の目的を持つておる団体が、かねて政治上の主義、主張、施策の支持或いは反対を目的とする場合において、この政治資金規正法を適用するということを言つておるのでありまして、その趣旨は経済団体或いは労働団体その他諸般の他の目的を持つておる団体において、或る当面の問題になつておる政治上の主義、施策の問題に関連して、その主張或いは支持或いは反対に関しまして団体としての意思に基いて、且つその当該事項の支持或いは反対について一種の計画性を以て行うということによつて、その目的を持つておるというふうにこれは認定されることは止むを得ない当然のことであろうと思います。ただ偶発的に一回限りの行動としてそれをなされるということだけを以て、これを目的としておるという認定は、これは困難であろうというふうに考えておるわけです。そこで先般の選挙管理委員会の出しました通牒は私もその後見たのでございますが、これは政治上の主義、施策云々の関係を具体的に例を挙げまして、地方自治法、労働法の改正、破壞活動防止法の制定等に反対し云々という言葉が加わつております。これは問題の具体性を明らかにしたものであると存じますが、その他の文章の部分はこれは実は今の法律第三条第二項に上つております言葉を使いまして、ただその言葉の組み合せが多少前後しておりますために法律の趣旨を逸脱しておるのではないかという御懸念が出て来る可能性もあるわけでございますけれども、私の見ましたところでは、言葉の使い方の上手下手は別として、法律の条文そのままの趣旨をただ謳つただけで、プラス自治法、労働法というような具体的な事例を掲げたというふうにまあ読めるというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/2
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003・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 只今御答弁がありましたが、先般の委員会で出席なさいました政府委員に質問したときにも再質問しましたように、政治資金規正法の法律解釈のみをお聞きしているわけではないのでありまして、現実に出されておりますそれが法律解釈上当然だ、こういうのであれば従来におきましても同じ例がたくさんあるはずだと、特に現在この国会に問題になつておりまする例示されました案件につきましても、日経連を初めとした経済団体も同じような、而も相当な金を用意して相当の運動をやつておる、又今参議院で問題になつておりまする地方自治法の改正につきましては過去二カ年間に亙りましてこれらの団体がこれ又相当な金を使つて、いわゆる修正運動をやつておる。そういうのに出さずに労働組合にのみ出すのはおかしいのではないか。この現実の問題に対しまして監督の責任にある内閣として、どういう措置をお取りになるかという政治的な措置についての質問が重点であるわけです。従つてこの前にも申上げましたように、政府委員では答弁ができない、こうおつしやいましたから、それであれば責任者である法務総裁であろうと総理大臣であろうと出席を願つて、政治的な措置についての答弁を願いたい。これが質問を再三しました要点になつているわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/3
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004・佐藤達夫
○政府委員(佐藤達夫君) 今お尋ねの具体的の点は、これは法務総裁であろうと私であろうと、立場は実は同様であろうかと思うのでございますけれども、もとより国務大臣としての法務総裁ということになれば、これは別でございますけれども、この実施の面はこれは全国選挙管理委員会において一応責任を持つて扱つておることでございまするから、私どもといたしましては、只今の法律的の見解を申上げるほかは、具体的の運用等につきまして申述べるべき立場にはないと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/4
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005・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 従つて質問の趣旨は法律解釈でなくして、そういう通達を出した全選管もやはり内閣が責任を持たなければいけないことは当然でありますので、内閣としてこういう我々が考えると片手落ちのような通達に対しまして、どう処置されるかという点は佐藤君では答弁できないと思いますので、内閣の代表者としての国務大臣かどなたか御出席になつて答弁願いたいということで、次の機会で結構でありますから十分協議願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/5
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006・村尾重雄
○村尾重雄君 それに関連して、この問題は今の委員長の御意見で明白になつておると思いますが、現実の問題として全選管のその通達を受けて大阪府の選管がやはりこの問題を取上げて、労働組合にすでにその通告をいたしておるわけであります。それに続いて福岡県でもこの問題を福岡県の選管が取上げて、その通告を労組にいたしておるわけであります。現実にすでに問題になつておるので、この現実の問題となつたこの通達が非常に今日問題を起して、これの解釈、これに対する政府の意見というものはどうだということをはつきり問合わすというのでこの国会へ盛んに各労組の関係者からいろいろと申込みがあるのでありますから、どうしてもこの回答というものは急を要する問題なので、この問題に対する回答を一つ成るべく速急にして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/6
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007・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 只今村尾君から発言がありましたように、現在この委員会で審議しておりまする法案に直接かかつております問題でありますので、明日の委員会までに政府としてもはつきりした態度を決定して、どの国務大臣でも結構でありますから、これに対する措置を答弁願わないと、この法案の審議にも相当渋滞を生ずると思いますので、併せて御注意申上げて置きます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/7
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008・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 労働関係調整法等の一部を改正する法律案を議題といたします。先ず村尾君の発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/8
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009・村尾重雄
○村尾重雄君 昨日労調法並びに労組法関係の同僚議員の質問に続いて、私は成るべく重複を避けた立場からと思つておるのでありますが、事労調法並びに労組法のことでありますので、あえて重複を承知の上で少し重要だと思う又少し異なつた立場から二、三お尋ねしたい、こう思います。先ず最初にお尋ねしたいのは、政府がこの法律の作成に当つて基礎になすつたことはたくさんあるだろうと思いまするが、非常に慎重な態度を取られて中央労働審議会の委員を委嘱され、その中央労働審議会の答申、並びに答申の一致を見ないものは公益委員の意見というものを尊重されたということは、この法案提出に当つての労働大臣の提案説明においても、それは明白になつておるのであります。そこで私はくどいことは申上げませんが、審議会委員が金員一致で答申したその答申案なるものについては、この法案とは非常な関係があるので一応御意見を伺いたい点があるのであります。それは先ず労働委員会制度についてでありまするが、答申案は現状維持を原則として意見をまとめておられます。その労働委員会の現状でいいという線を出されたことについては、これは非常に大きな異議があると思います。そこで昨年出された労政局の試案等を通じてこの労働委員会の現状維持というこの答申案に対する原則と言いますか、案に対して、労働委員会の今後の答申案に基いての法案作成に当つていろいろ審議されたと思いますが、労働大臣のこれに対する御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/9
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010・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 御尤もな御質問でありまして、労働委員会が今後どうあるべきかということは、過去七年間の経験に基いていろいろ御議論があつたのであります。お話のごとく諮問をいたしまする前から、私就任する前の話でございますが、就任して聞いてみますると、御指摘のごとく労政局案というようなもので一つの研究をいたしておつたようであります。その案は正直に申しまして労働委員会というものはだんだん発達して来るに従つて専門部門別に設けて行つたらどうだろうかというような構想を持つていたようであります。私はその意見を聞いたときに、それも一つの考え方ではあるけれども、およそ制度というものはだんだん苔がついて来ないと本当の運用の真価というものは発揮しないんだ、過去七年間に漸く労働委員会というものに苔がついたと申しますか信用を得て、昨年の暮あたりの争議は労働委員会の手によつて解決されたものも非常に多いじやないか、ここで新らしい又感覚を持つてやるということ、それが仮にいいにしても、それが落着くまでには相当の時間がかかることだから、非常に悪い点があれば格別だけれども、そうでなかつたならば今日あるものをよりよくして行くという途を講ずべきであろうということで、その意見は出さないでくれということで、先般も申しましたごとく、今回のこの労働法の改正に関しましては、労務法制審議会にも一切労働省の試案というものは出さなかつたのであります。白紙で以てどういうふうにお考えを頂いたらいいでしようかということでぶつつけたわけでございまして、その答申は先般申上げましたごとく、やはり現在の労働委員会というものを中心として、これを強化して行くべきであるという答申がなされております。私はそうあるべきだと今も考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/10
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011・村尾重雄
○村尾重雄君 この問題重ねてでありまするが、労働委員会制度は六年間の経験及びその運営等を見て、これが何らかこれに対する労働委員会のなお一層その機能を高めるための経験から割出した一つの改組というものが、今日これをなされなければならんということは関係者が深くこれは感じておるところだと思います。そこで私は現状維持という答申に基いて一応現状維持の線を持たれたとおつしやるが、現状維持の考え方について、例えば一つの試案が一応過去において提示された、その試案に対して反対の意思を明確にするために現状維持をとられたということ以外に、現状維持ということ自身にも相当みずからの保身と言いますか、余り我々の考え方から言つても欲しない考え方が含まれておつたということも考えられる。というのはやはり労働委員会の関係者がこの審議会においてもやはり大勢おられたというような関係から言つても、又労働委員会のこの問題に対するいろいろな意見の開陳を伺いましても、かなり自分の保身の立場から現状維持という考えを出されたこともあると思います。そこで労働委員会に対しての改組ということは語弊がありまするが、なお一層労働委員会の本来の機能を高めるために、私は相当今度の改正においてはいま少し進んだ考え方というものは当然これに加えらるべきものであつたと思います。この作成に当つてこういう点についての御意見はなかつたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/11
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012・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) お話のごとく審議会が現状維持を答申されました点について、或いは現在の労働委員会の関係者もおられたという点もないでもないかとは思います。併しながら私正直に言つて現在の労働委員会は過去七年間の経験に微してだんだん信用を失墜しつつあるか、或いは高めつつあるかというと、私は高めつつあると思うものであります。それは昨年の暮の争議等をじつと見ておりますると、あれが労働委員会にかかつて大体みな解決をしておるという点で、私はその点非常に深く感じたわけでありまして、従つて改善をすべき点はいろいろあるでありましようけれども、本質的には今日の労働委員会というものを育て上げて行くという行き方が一番労使間の調整にはいいのじやないか。それで強化の点でありますが、強化というとすぐ人数を殖やすとか何とかいうことになりますが、この点は全数を殖やすことが必ずしも強化にならない、むしろ小さい府県あたりになりますと、人数が多くて仕事が少いために、却つて手持無沙汰という点もございまするので 今回の提案ではそういう争議件数の余り少いところは小人数でまとまつたほうがよくはないかという感じを持つております。それから、この強化という点について私一つ考えましたのは、これも答申の趣に従つたのでありますが、緊急調整というようなこういう重要な事項も、勿論発動については政府の責任でいたしますが、そのあとの調停というものを政府が関与してどうするこうするということでなしに、そういう労働委員会にお任せをして御解決を願いたい、そのときに別の委員会を作るとか何とかいう御意見も往々あるわけでありますが、そういうものを又別個に作りますというと、折角育つべきものが育たないでほかのほうへ行く虞れがありますので、どこまでも中央においては中央労働委員会を中心とし、地方においては地方の労働委員会を中心として、そこに労使間の解決を一つやつてもらうようにしたい、こういう構想を持つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/12
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013・村尾重雄
○村尾重雄君 大臣の答弁と私の質問する要旨とは、大分基本的に考え方が違つておるようであります。私はこれをなお深く申上げようと思つておりませんが、誤解があつたら申上げておきたいのですが、労働委員会が非常に功績を挙げていること自体は明白なのです。そこで私はこれはなお強化せよというのではありません。労働委員会の本来の機能をなお高めるためには、新らしい時代に応じての労働委員会の機能というもの、内部機構というものについては、なおより以上能率を挙げるため、又その本来の目的を達するために、やはりこの労働委員会というものがもう少し機能を高めるための組織の問題は一応取上げらるべきだとこう考えております。この点についてもう一応誤解のないように一つして頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/13
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014・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 私多少誤解しておりましたが、この労働委員会でいいけれども、もつと改善すべき方策を研究せよということだと思いますが、そういう御趣旨であれば私も同感でございまして、そういう点には努めるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/14
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015・村尾重雄
○村尾重雄君 そういう点は取上げられるかどうかということを聞いたのですが、そこまで触れられなかつたらしいですが、この問題は一応私はわかりましたことにしておきます。
それから同じ問題で、問題が少し小さくなるのですが、委員の答申は三名乃至七名と、それぞれ府県の実情に応じて数の点においてやはり採択をさせることになつております。例えばこれは政令によるとか或いは条例によりましてはこうなつているのですが、明確にこれが三名、五名、七名とされておるのでありまするが、この答申案の一致の意見というものも相当考慮されていいのじやないかと思うのですが、如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/15
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016・賀来才二郎
○政府委員(賀来才二郎君) 委員会におきましても、先ほど大臣からお答え申上げましたように全国一律に五人だというふうなことは却つて実情に合わないのじやないか、従つて数字を地方の実情に応じて変えてもいいのだ、併しその変えるときには委員会の意見を聞いてくれろという御答申があつたわけであります。我々としましては実はこの委員会の定数は従前は法律に書くようになつておりました。ところが法律に書いてありますと、その都度その実情に応じて変えることは非常に困難でございますので、今度は政令で行きたいというふうに考えて法案を作つたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/16
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017・村尾重雄
○村尾重雄君 次に答申案でやはり労働委員会制度についての(3)として要望されている労働委員をはつきり特別職にして頂きたいという意見があるのです。この点、これを特別職として取上げられない理由を一つお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/17
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018・大島靖
○説明員(大島靖君) 現在におきましても、労働委員会の委員は大体人事院規則におきまして諸種の公務員としての制限を排除されておりまして、大体実情は同じようなことになるのじやないかと思いまして、現状のままで行つておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/18
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019・村尾重雄
○村尾重雄君 その点答弁がありましたが、実質上現在人事院においてはこれが除外されている、それはその明白なことをわかつた上においてやはり支障を来すという立場から、特別職ということが要求されていると思うのですが、人事院で一つ除外されているからということで、この問題を今度の改正に当つて取上げられなかつたというのは、この三者決定の要望を少し軽く扱われておられる嫌いがないか、当然なし得られることなら、この法の作成の趣旨に基いてこういう問題はやはり改正されたほうがよかつたのじやないか、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/19
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020・大島靖
○説明員(大島靖君) その点各種の委員会の委員との関係、或いはその他の公務員との関係上やはり一般職であるべきだという結論になつております。まあ実質において大体支障なくやれるのじやないか、こういう意味で改正しなかつたのであります。御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/20
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021・村尾重雄
○村尾重雄君 次に二における不当労働行為の問題は一応おきまして、三として答申案に答申なされておる「斡旋、調停及び仲裁」の(2)の現行労調法十一条第二項を削除するということなのですが、これは御承知の労働委員が斡旋員を兼ねられるという条項なんですが、第五回国会で前の改正をなされたときに、斡旋と調停というのを一つこの際明確化するため、混同を起さないために兼ねられないという一つの改正案が取上げられたわけなんです。それが今度は労働委員が斡旋員を兼ねられるというふうに改正されているのですが、私この際明白に伺つておきたいことは、従来の争議の斡旋、調停を通じてこの問題は非常にデリケートな又重要な問題なんです。そこでこの斡旋と調停ということについての現在の労働省の考え方を一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/21
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022・賀来才二郎
○政府委員(賀来才二郎君) 只今御指摘のように、この前の改正のときには斡旋と調停を兼ねられないということに改正をいたしましたのであります。これは当時司令部の非常に強い示唆によりまして、又当時の斡旋と調停のやり方につきまして、司令部から指摘されました欠点につきまして成るほどと思われる点もありましたので、我々はその示唆に従いまして兼ねられないというように改めたわけであります。と申しますのは、実は御承知のようにアメリカでは、斡旋と調停とは明確に区分して実際のやり方においても取扱われておるのでありましたが、日本におきまする取扱い方を見ますると、初め斡旋で入る、それからどうも工合が悪いというので調停をやりまして、調停が成り立たんと言つては又斡旋に入る、こういうふうな斡旋と調停とを同じ調停委員が繰返して行くというような事情がありまして、どうも解決上適当でない、これは村尾委員の十分御経験もあるように、斡旋と申しますのは、これは両者の間に人が入りまして、自主的な折衝が円滑に行くように斡旋をするというのでありますから、その斡旋委員から案を示しまして、ここでどうだというふうなことを示すべきやり方ではないのであります。調停委員ということになりますると、両者の意見を十分聞きまして、そこで間に入りまして、調停委員がこの案で行つたらどうだという案を出しまして、それに労使が又検討して行くというふうなのが、調停の趣旨になつておるわけなのであります。ところで、さような区別があるにかかわりませず、先ほど申しましたように、日本におきましては、斡旋案を出したり、調停案を出したり、又斡旋案を出して行く。こういうことをやりますと、甚だ明確じやないじやないか。労調法の大体の趣旨は、たびたび申上げますように、又労働者としても、方針としては、原則は労使の自主的交渉で解決するというのが非常にいいんだ。従つて、斡旋制度というものは、これは重要視すべきであつて先ず斡旋段階において片付くのが一番いいわけであります。それには斡旋者というものを、実情に即した有力な斡旋者によつてやつて行く、その斡旋が成功しないときには、又立場を変えた人、別の人を以て調停に当らせるというのが、これが至当ではないかということから、前の改正のようにいたしたのであります。ところで、変えてみまして、その後の実情をずつと見ておりますると、やはりもう以前できました慣行というものも、なかなか捨てるのが困難であると見えまして、事実上やはり斡旋者が調停をやる。調停者が又斡旋をやるということが繰返されて参りました。で而もこの斡旋と調停とを画然と区別いたしますことになりますると、中央におきましてはともかく、地方においてはなかなか適当な人が得られない。労働委員会の委員につきましても、すでに地方によりましては適任者の選任に困つているという状況の際に、更に斡旋もできないということになれば困るじやないかというような議論も出て参りましたので、実情を聞きますと成るほどそういうところも認められるわけでありまして、今度の審議会においても、これが答申に出て参つたわけであります。そこで、労働省といたしましては、やはり斡旋のやり方と、調停のやり方とは、截然区別をすべきものであると考えますけれども、それに当りまする人間といたしまして、現在の労働委員の中から斡旋者も出し得るし、場合によつてはそれがその立場を変えて調停もやり得るというふうにするほうが実情に合うだろうというので、委員会の御意見のように、この区別をなくしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/22
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023・村尾重雄
○村尾重雄君 今度のこの改正の削除の点について、便宜的な方法を取られたということは了解できるのです。ところが、大体斡旋から調停に移り、又その調停が斡旋に移るというこの現状については、これを我々は認めるのでありますが、ここに一つの私は危険があるのじやないかと、こう思うのです。実際上の取扱いについて、単に人を兼ねられるような現状にして置いて、斡旋と調停について明確な判断を持つということについては、相当ここではその問題の解決に私は少し疑点が生れる点があるのではないかと、こう思うのです。これはまあ実際上扱つておつて感ずる点なのでありますが、例えば、調停は、一つの案を提示するとか、又は争議の解決の指導者の立場に立つように、非常に指導的な立場なんです。斡旋は御承知のように媒介者とも言い、非常に又争議の解決の協力者という立場から、これも非常にデリケートな、争議に介入して行く人なのであります。そこで、大体斡旋は労働委員会の会長がこれは即座に任命できることになる。調停委員というものは、労働委員会が任命するという工合に、明確に、その任免も明確になつておるのです。そこで私は人が兼ねられるという行き方は、この斡旋と調停が混合してもいいという立場ならばこれは別個でありますが、斡旋と調停はやはりそこに明確に限界を持たなくては、この労調法それ自体の精神から言つても、平和的に解決するということは勿論同じでありましようが、直接当つて争議に対する世話役と申しますか、斡旋者とそれから調停者となつた場合において、明確にやはり区別しなければならないと思う。その区別が今度のこの十一条の第二項の削除ですがね、削除で私は非常な危険が起りはしないかということを憂えるのですが、この点は混同されてもいいというお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/23
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024・賀来才二郎
○政府委員(賀来才二郎君) 個々の実情によりまするといろいろな場合がありまして、明確にさような規定をすることは非常に困難でありますが、併し御趣旨につきましては、我々村尾委員の御意見に賛成でございます、先ほども申しましたように、労働省といたしましても、斡旋と調停はそのやり方においては明確化すべきである。従つて従来のように斡旋案を出したり、調停案を出したり、結局同じ問題につきまして、じりじりあとに上つて行くだけである。或いは延びるだけであつて、結局解決が長びくという結果になるということは、非常にいけない行き方だと考えておるのであります。更にやはりできたら斡旋で解決するのが一番合理的な解決である。かようにも考えておるわけであります。そこで御注意もございまするし、我々といたしましても、十分その点につきましては、今度の改正に伴なつて又以前のような弊害が起らないように注意をいたして行かなければなりませんので、中労委と十分今後連絡をとりまして、この点の欠陥が起らないように、実施に当りましては注意をして行きたい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/24
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025・村尾重雄
○村尾重雄君 もう一点、この緊急調整に入る前にお尋ねしたいことがあるのですが、やはりこの答申案に団体交渉の項を作つて、現行通りにするという点が謳われております。わざわざ現行通りにということは、先ほど労働委員会の制度についての点に、私がお話申上げましたように、わざわざ団体交渉を現行通りにするという答申案が出たということですね。何かここに一つの意味があると思うのです。この点についてどうお考えになるでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/25
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026・賀来才二郎
○政府委員(賀来才二郎君) 実は、団体交渉の問題につきましては、先ほど大臣から申上げましたように、この審議会ができます前からいろいろな意見があり、特に当時占領軍から強い一つの意向といたしまして、示唆というところまでも行きませんが、意向といたしまして、我が国におきましては、民間労組におきましても交渉単位制を取入れるべきであるという意向が強く我我に示されておりました。で労働省といたしましては、一応理論上はさようなことも考えられるけれども、アメリカの労働組合の発達の経緯と、日本の労働組合の発達の経緯とは事情を異にするというふうな建前からいたしまして、この意見に対しては慎重な態度を取つて参つたのであります。で松崎法規課長がこの団体交渉単位制について特に研究をするという目的でアメリカの現地に勉強に行つて帰つたというふうなことまでいたしたのでありますが、どうしても労働省といたしましては、団体交渉につきさまして交渉単位制を取るというふうなことについては、にわかに賛成をするわけに行かないという状態でこの審議会が始まつたような状況であります。そこで審議会は、この労働省の考え方を基にするという立場でなくして、先ほど大臣から申上げましたように、白紙の立場で一切の問題を審議して頂くことになつておつたわけでございまするが、当時かような問題があつたということは十分御存じであつたわけであります。それからなお団体交渉につきましては、現在の七条二項の問題で、労働組合側が団体交渉を拒否した場合、これは不当労働行為にすべきであるというふうな議論も行われておりましたし、その他団体交渉に当りまして交渉単位制はとらなくても、例えば昨年の春行われました化学繊維の争議におきまして、組合側は連合体としての一体交渉をやりたいと言い、会社側はそれは実情に合わないから会社別の個別交渉で行きたいということから、遂に罷業まで行われたような例もありましたし、又全国繊維にいたしましても、常にこの全体としての連合体、全体としての交渉を要求するに対して、会社側は飽くまで個別交渉で対立して交渉の実体に入らずして、その交渉方式自体で問題を起したような例は最近は非常に多くなつて来たわけであります。これは交渉単位制を取るという立場を離れて、一応その問題を解決しなければ今後もそういうことは非常に起りやすいのではないかと思う。と申しますのは、労働組合は成るべく広く同種の組合が連合体を作り、或いは単一組合になつて行こうという傾向があるのに対しまして、会社は経営が現在のような逐次統制を外されて行くような状況下においては、同一の立場で共通の賃金制度に持つて行くことは非常に困離ではないかという立場がだんだん出て参りまして、これは成るほど両方とも立場はよく我々は了解できるのでありますが、と言つてこの問題を解決しないというわけには参らんじやないか。これは問題点である。こういうような問題点をいろいろ取上げられたのでありまするが、とにかくまあそういう問題をどうするということでなしに、団体交渉については現行通りで一応行こうというような答申になつたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/26
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027・村尾重雄
○村尾重雄君 アメリカの示唆があつたことに対する意思表示ということだけじやなしに、とかく労働省においてもいろいろ考えられておつたいわゆる交渉単位制に対して、まあ反対だという意思表示がなされたものだと、こう受取つてよろしうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/27
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028・賀来才二郎
○政府委員(賀来才二郎君) 大体その通りです。併し明確に交渉単位制に反対という意思表示は出ておりませんが、かような答申はそういうことも含んでおると、かように了解をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/28
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029・中村正雄
○委員長(中村正雄君) 村尾君の御質問も相当残つておると思いますが、お昼の時間になりましたので午前の質問はこの程度で打切りまして、午後一時半まで休憩いたします。
午後零時十四分休憩
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午後四時二十九分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/29
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030・中村正雄
○委員長(中村正雄君) それでは休憩以前に引継ぎ委員会を開きます。本日はこれにて散会いたします。
午後四時三十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315289X02319520620/30
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